IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許7641273プラストマー靱化/剛化ポリオレフィン多層フィルムおよびそれを含む積層体
<>
  • 特許-プラストマー靱化/剛化ポリオレフィン多層フィルムおよびそれを含む積層体 図1
  • 特許-プラストマー靱化/剛化ポリオレフィン多層フィルムおよびそれを含む積層体 図2
  • 特許-プラストマー靱化/剛化ポリオレフィン多層フィルムおよびそれを含む積層体 図3
  • 特許-プラストマー靱化/剛化ポリオレフィン多層フィルムおよびそれを含む積層体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】プラストマー靱化/剛化ポリオレフィン多層フィルムおよびそれを含む積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20250227BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20250227BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250227BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20250227BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20250227BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/40
B65D65/40 D
C08F10/02
C08F10/06
C08L23/06
C08L23/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022516426
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020053222
(87)【国際公開番号】W WO2021067240
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】19382838.1
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ハブロット、エロディ
(72)【発明者】
【氏名】ザリオーイ、サルマ エル マラッセ
(72)【発明者】
【氏名】サンドキューラー、ペーター ヘルマン ローランド
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/104017(WO,A1)
【文献】特開昭63-062730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0279910(US,A1)
【文献】Technical Information VERSIFY TM 3200 Plastomer,2011年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体であって、
(i)二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸配向ポリプロピレンフィルム、または配向ポリエチレンフィルムを含む、基材フィルムと、
(ii)多層フィルムであって、前記多層フィルムが、
第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層であって、
(a)前記第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく重量%で80~99.9重量パーセント(重量%)の、ASTM D792に従って測定して0.935~0.966g/cm の密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.3~8g/10分のメルトインデックス(I )を有する高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ならびに
(b)少なくとも60重量%のプロピレンに由来する単位および少なくとも0.1重量%のエチレンに由来する単位を含み、ASTM D792に従って測定して0.850~0.900g/cm の密度、およびASTM D-1238に従って230℃/2.16kgで測定して0.1~15g/10分のメルトインデックス(I )を有する、前記第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく重量%で0.1~20重量%のプロピレン-エチレンコポリマー熱可塑性エラストマー(TPE)、
から本質的になる、第1の層、および、
前記第1の層上のシーラント層と、を含む、多層フィルム、および、
(iii)前記基材フィルムおよび前記多層フィルムの前記第1の層と接着接触しているポリウレタンを含む接着層であって、前記ポリウレタンの弾性率が、ASTM D412に従って測定して、前記接着層が無溶剤接着剤から形成される場合、前記接着層が25MPa超の弾性率を有し、前記接着層が溶剤系接着剤から形成される場合、前記接着層が0.30MPa超の弾性率を有する、接着層と、を含む、積層体。
【請求項2】
前記基材フィルムが、8~20μmの厚さを有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材フィルムが、15~50μmの厚さを有する二軸配向ポリプロピレンフィルムである、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記基材フィルムが、15~50μmの厚さを有する二軸配向ポリエチレンフィルムもしくは一軸配向ポリエチレンフィルムである、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記接着層が、1~5μmの厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記多層フィルムの前記第1の層の前記第1のポリオレフィン組成物が、5~15重量%の前記プロピレン-エチレンコポリマーTPEを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記多層フィルムが、ブローフィルムまたはキャストフィルムである、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体
【請求項8】
前記多層フィルム中において、前記プロピレン-エチレンコポリマーTPEが、DSC Tmピークで取得して50~130℃の融解温度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記多層フィルム中において、前記プロピレン-エチレンコポリマーTPEが、ASTM D790に従って測定して20~60メガパスカル(MPa)の曲げ弾性率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記多層フィルム中において、前記第1のポリオレフィン組成物が、90~98重量%の前記HDPE樹脂と、2~10重量%の前記プロピレン-エチレンコポリマーTPEと、を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記多層フィルム中において、前記第1のポリオレフィン組成物から形成された前記第1の層が、30~150マイクロメートル(μm)の厚さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
前記多層フィルム中において、前記シーラント層が、前記シーラント層の50~100重量パーセントの、0.880~0.915g/cm の密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.5~5g/10分のメルトインデックスI 、および85℃~105℃の範囲のピーク融点、および2.0~3.0の範囲の分子量分布Mw/Mnを有するポリエチレンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の積層体を含む、パッケージ。
【請求項14】
前記パッケージが、自立式パウチである、請求項13に記載のパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ポリオレフィン多層フィルム、より具体的には、プラストマー靱化/剛化ポリオレフィン多層フィルム、およびそのような多層フィルムを含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自立式パウチ(SUP)の多層フィルムまたは積層体で使用される典型的な高靭性ポリオレフィンフィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒LLDPE(m-LLDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)ブレンドで作製され、フィルムが、50~150μmの厚さを有し得、個々の共押出層が総厚の一部である。そのような系の組み合わせは、高い剛性および高い靭性を組み合わせた最終多層フィルム/積層体構造を目的としている。
【0003】
多層フィルムおよび/または積層体で使用されるポリオレフィンフィルムのさらなる改善および薄化には、厚さの低減による曲げ剛性の損失を補うために、フィルムがより薄くなるにつれてより剛性である必要があるという相反する目的を、これらのフィルムが満たす必要がある。しかしながら、剛性を改善するための以前のアプローチはまた、フィルムの靭性および速い耐変形性を低減させた。この靭性は、より薄いフィルムが依然として有する必要がある第2の相反する特性である。(ダーツ、パンクチャー、および引き裂き試験で見られる)フィルムの靭性は、超直鎖状低密度ポリエチレン(ULLDPE)またはm-LLDPEのようなより低い密度のポリエチレン樹脂を選択することによって改善され、これによって、典型的にはフィルムの剛性が低減する。したがって、多層フィルムおよび/または積層体構造を意図する共押出ポリオレフィンフィルムの剛性と靭性とのバランスをとることに向けた改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、第1の層およびシーラント層を有する多層フィルム、ならびに多層フィルムを含む積層体を提供する。本開示の多層フィルムは、第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層に部分的に起因して、積層体の高い剛性および高い靭性を達成するのに役立つ。本明細書で論じられるように、第1の層によって提供される剛性と靭性とのバランスもまた、他のエラストマーの使用と比較して驚くほど改善される。多層フィルムを有する積層体の1つの主な用途は、剛性と靭性とのバランスを改善する必要がある自立式パウチである。多層フィルムを有する積層体はまた、頑丈な輸送用袋などの他の種類の用途に有用であり得る。
【0005】
様々な実施形態では、本開示の多層フィルムは、第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層と、第1の層上のシーラント層とを含む。本開示の第1のポリオレフィン組成物は、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂と、プロピレン-エチレンコポリマー熱可塑性エラストマー(TPE)と、から本質的になる。具体的には、第1の層は、(a)第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく重量%で80~99.9重量パーセント(重量%)の、ASTM D792に従って測定して0.935~0.966g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.3~8g/10分のメルトインデックス(I)を有するHDPE樹脂、ならびに(b)少なくとも60重量%のプロピレンに由来する単位および少なくとも0.1重量%のエチレンに由来する単位を含む、第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく重量%で0.1~20重量%の、ASTM D792に従って測定して0.850~0.900g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って230℃/2.16kgで測定して0.1~15g/10分のメルトインデックスIを有するプロピレン-エチレンコポリマーTPEから本質的になる、第1のポリオレフィン組成物から形成される。追加の実施形態では、第1のポリオレフィン組成物は、90~98重量%のHDPE樹脂と、2~10重量%のプロピレン-エチレンコポリマーTPEと、を有し得る。様々な実施形態では、第1の層は、30~150マイクロメートル(μm)の厚さを有する。様々な実施形態では、プロピレン-エチレンコポリマーTPEは、示差走査熱量計(DSC)Tmピークで取得して50~130℃の融解温度を有する。加えて、プロピレン-エチレンコポリマーTPEは、ASTM D790に従って測定して20~60メガパスカル(MPa)の曲げ弾性率を有する。
【0006】
様々な実施形態では、シーラント層は、シーラント層の50~100重量パーセントの、0.880~0.915g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.5~5g/10分のメルトインデックスI、および85℃~105℃の範囲のピーク融点、および2.0~3.0の範囲の分子量分布Mw/Mnを有するポリエチレンを含み得る。
【0007】
本開示の積層体は、(i)基材フィルム、(ii)本明細書で提供される多層フィルム、および(iii)ポリウレタンを含む接着層を含み、接着層が、基材フィルム、および本明細書で提供される多層フィルムの第1の層(第1のポリオレフィン組成物)と接着接触している。様々な実施形態では、基材フィルムは、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸配向ポリプロピレンフィルム、または配向ポリエチレンフィルムを含む。様々な実施形態では、第1の層は、上および本明細書で提供される通りである。様々な実施形態では、第1の層と接触するシーラント層は、本明細書で提供されるようにポリエチレンから形成され得る。様々な実施形態では、基材フィルムおよび第1の層と接着接触しているポリウレタンを含む接着層は、ポリウレタンの弾性率が、ASTM D412に従って測定して、接着層が無溶剤接着剤から形成される場合、接着層が25MPa超の弾性率を有し、接着層が溶剤系接着剤から形成される場合、接着層が0.30MPa超の弾性率を有する。
【0008】
本開示の積層体の実施形態は、基材フィルムが、8~20μmの厚さを有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであるものをさらに含む。本開示の積層体の実施形態は、基材フィルムが、15~50μmの厚さを有する二軸配向ポリプロピレンフィルムであるものをさらに含む。本開示の積層体の実施形態は、基材フィルムが、15~50μmの厚さを有する二軸配向ポリエチレンフィルムまたは一軸配向ポリエチレンフィルムであるものをさらに含む。本開示の積層体の実施形態は、プロピレン-エチレンコポリマーTPEが、DSC Tmピークで取得して50~130℃の融解温度を有するものをさらに含む。
【0009】
本開示の積層体の実施形態は、プロピレン-エチレンコポリマーTPEが、ASTM D790に従って測定して20~60メガパスカル(MPa)の曲げ弾性率を有するものをさらに含む。本開示の積層体の実施形態は、第1のポリオレフィン組成物が、90重量%のHDPE樹脂、および10重量%のプロピレン-エチレンコポリマーTPEを有するものをさらに含む。本開示の積層体の実施形態は、第1の層が30~150μmの厚さを有するものをさらに含む。本開示の積層体の実施形態は、接着層が、1~5μmの厚さを有するものをさらに含む。本開示の積層体の実施形態は、第1のポリオレフィン組成物が、5~15重量%のプロピレン-エチレンコポリマーTPEを含むものをさらに含む。様々な実施形態では、シーラント層は、本明細書に記載のようにポリエチレンから形成され得る。
【0010】
本開示の実施形態はまた、本明細書で提供される積層体を含むパッケージを提供する。例えば、一実施形態では、積層体を含むパッケージは、自立式パウチである。本開示の実施形態はまた、本明細書で提供される積層体を作製する方法を提供し、方法が、フィルムブローイングおよびフィルムキャスティングプロセスのうちの1つ以上によって第1のポリオレフィン組成物からフィルムを形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施例および比較例の単一フィルムの機械方向応力/ひずみデータを提供する。
図2】本開示の実施例および比較例の単一フィルムおよび共押出フィルムの靭性/剛性バランスを提供する。
図3】本開示の実施例および比較例の溶剤系および無溶剤の剛性および可撓性接着剤を用いた積層体の限界落下高さを提供する。
図4】本開示の実施例および比較例のいくつかの接着剤を用いたPET/共押出フィルムで作製された積層体の引張特性を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、第1の層およびシーラント層を有する多層フィルム、ならびに多層フィルムを含む積層体を提供する。本開示の多層フィルムは、第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層に部分的に起因して、積層体の高い剛性および高い靭性を達成するのに役立ち得る。本明細書で論じられるように、第1の層によって提供される剛性と靭性とのバランスもまた、他のエラストマーの使用と比較して驚くほど改善される。多層フィルムを有する積層体の1つの主な用途は、剛性と靭性とのバランスを改善する必要がある自立式パウチである。多層フィルムを有する積層体はまた、頑丈な輸送用袋などの他の種類の用途に有用であり得る。
【0013】
様々な実施形態では、本開示の多層フィルムは、第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層と、第1の層上のシーラント層とを含む。本開示の第1のポリオレフィン組成物は、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂と、プロピレン-エチレンコポリマー熱可塑性エラストマー(TPE)と、から本質的になる。具体的には、第1の層は、(a)第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく重量%で80~99.9重量パーセント(重量%)の、ASTM D792に従って測定して0.935~0.966g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.3~8g/10分のメルトインデックス(I)を有するHDPE樹脂、ならびに(b)少なくとも60重量%のプロピレンに由来する単位および少なくとも0.1重量%のエチレンに由来する単位を含む、第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく重量%で0.1~20重量%の、ASTM D792に従って測定して0.850~0.900g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って230℃/2.16kgで測定して0.1~15g/10分のメルトインデックスIを有するプロピレン-エチレンコポリマーTPEから本質的になる、第1のポリオレフィン組成物から形成される。
【0014】
様々な実施形態では、多層フィルムのシーラント層は、ポリエチレンまたはポリエチレンのブレンドを含み得る。いくつかの実施形態では、多層フィルムのシーラント層は、50~100重量パーセントの、0.880~0.915g/cmの密度、ASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.5~5g/10分のメルトインデックスI、DSC Tmピークで取得して85℃~105℃の範囲のピーク融点、および2.0~3.0の範囲の分子量分布Mw/Mnを有するポリエチレンを含む。いくつかの実施形態では、シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンとポリオレフィンプラストマーとのブレンドを含む。しかしながら、シーラント層は、シーラント層用の単一のポリオレフィン成分のみを含み得る(例えば、シーラント層は、100重量パーセントの直鎖状低密度ポリエチレンまたは100重量パーセントのポリオレフィンプラストマーから形成される)ことが理解される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「から本質的になること」または「から本質的になる」は、本開示の範囲を、本明細書で提供される第1のポリオレフィン組成物の特定の材料、および本開示の第1の層で使用される第1のポリオレフィン組成物の基本的な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定することを意図する。本明細書で提供されるように、基本的かつ新規の特徴は、以下の開示のHDPE樹脂のセクションに提供される。
【0016】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、組成物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む、材料の混合物を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「多層フィルム」という用語は、長さおよび幅の寸法を有し、その間に厚さを有する2つの主要な表面を有するシート、ウェブなど、またはそれらの組み合わせを指す。多層フィルムは、以下の方法:共押出、押出コーティング、蒸着コーティング、溶剤コーティング、エマルションコーティング、または懸濁コーティングのうちの1つ以上によって一緒に結合される2つ以上の層を有する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「積層体」という用語は、2つ以上の個々に形成されたフィルム、および/または次いで、例えば接着剤で一緒に結合される多層フィルムの組み合わせを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類または異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、総称であるポリマーという用語は、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられる「ホモポリマー」という用語、ならびに2種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」という用語を包含する。
【0020】
「ポリエチレン」は、エチレンモノマーに由来する、50重量%超の単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(単位が2つ以上のコモノマーに由来することを意味する)を含む。当該技術分野において既知の一般的なポリエチレンの形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度(Ultra Low Density)ポリエチレン(ULDPE)、極低密度(Very Low Density)ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状および実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。これらのポリエチレン材料は、一般に、当該技術分野において既知であるが、以下の説明は、これらのいくつかの異なるポリエチレン樹脂の違いを理解するのに有益になり得る。
【0021】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐状ポリエチレン」とも称され得、ポリマーが、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)超の圧力で、オートクレーブまたは管状反応器内で、部分的または完全に、ホモ重合または共重合されることを意味するように定義される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US4,599,392を参照されたい)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.940g/cmの範囲の密度を有する。
【0022】
本明細書で使用される「ポリオレフィンプラストマー」という用語は、エラストマーとプラスチックとの両方の品質を有するポリマー材料を指し、そのようなポリオレフィンプラストマーの例には、0.870~0.905g/cmの密度、および(DSC、DOW方法を使用して決定して)55℃~108℃の融点を有する、直鎖状低密度ポリエチレン、プロピレン-エチレンコポリマー、およびエチレン-アルファオレフィンコポリマーが含まれる。
【0023】
「LLDPE」という用語は、従来型のチーグラーナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、ならびにメタロセンなどのシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂(時折、「m-LLDPE」と称される)の両方を含み、直鎖状、実質的に直鎖状または不均一のポリエチレンコポリマーまたはホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも短い鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号における組成物などの均一分岐直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたポリマーなどの不均一分岐エチレンポリマー、ならびに/またはそれらのブレンド(US3,914,342もしくはUS5,854,045に開示されるものなど)を含む。直鎖状PEは、当該技術分野において既知の任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相および溶液相、またはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせを介して作製され得、気相およびスラリー相反応器が最も好ましい。
【0024】
「HDPE」という用語は、約0.940g/cm超の密度を有するポリエチレンを指し、一般に、チーグラーナッタ触媒、クロム触媒、またはさらにメタロセン触媒で調製される。
【0025】
本発明において、以下の分析方法を使用する。
「密度」は、ASTM D792に従って決定される。
【0026】
「I」とも称される「メルトインデックス」は、ASTM D-1238に従って(本明細書に提供されるように、230℃、2.16kg、または190℃、2.16kgのいずれかで測定して)決定される。
【0027】
ピーク融点は、フィルム(厚さ0.1~0.2ミル、3~10mg、直径6mmの試料)を、180℃で5分間調整した後、毎分10℃の速度で-40℃の温度まで冷却する、示差走査熱量計(DSC)によって決定される。フィルムを5分間-40℃に保持した後、フィルムを毎分10℃の速度で200℃まで加熱する。
【0028】
分子量分布または「MWD」という用語は、重量平均分子量対数平均分子量の比(Mw/Mn)として定義される-MwおよびMnは、従来のゲル透過クロマトグラフィー(従来のGPC)を使用する、当該技術分野において既知の方法に従って決定される。
【0029】
第1の層のHDPE樹脂
第1の層のHDPE樹脂は、ASTM D792に従って測定して0.935~0.966g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.3~8g/10分のメルトインデックス(I)を有する。様々な実施形態では、HDPE樹脂は、追加の密度およびI値を有し得る。例えば、第1の層のHDPE樹脂は、ASTM D792に従って測定して0.945~0.966g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.3~2g/10分のIを有し得る。好ましくは、HDPE樹脂は、ASTM D792に従って測定して0.955~0.966g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.4~1g/10分のIを有する。いくつかの実施形態では、HDPE樹脂は、ASTM D792に従って測定して0.955~0.966g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.5~1g/10分のIを有する。いくつかの実施形態では、HDPE樹脂は、ASTM D792に従って測定して0.962~0.966g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.8~0.9g/10分のIを有する。
【0030】
様々な実施形態では、HDPE樹脂はまた、500~2000MPaの弾性率を有し、弾性率が、ASTM D882-18に従って測定される。ASTM D882-18下で試験される弾性率は、HDPE樹脂の薄いシート(例えば、0.1mm~0.25mm)の剛性の指標を提供し、HDPE樹脂の靭性が、HDPE樹脂の薄いシートの単位体積当たりの破裂点までに吸収された総エネルギーとみなすことができる。いくつかの実施形態では、HDPE樹脂は、700~1500MPaの弾性率を有し、弾性率が、ASTM D882-18に従って測定される。いくつかの実施形態では、HDPE樹脂は、1000~1200MPaの弾性率を有し、弾性率が、ASTM D882-18に従って測定される。
【0031】
本開示のHDPE樹脂は、単峰性の分子量分布または二峰性の重量分布を有し得る。様々な実施形態では、本開示のHDPE樹脂は、当該技術分野において既知の反応器または反応器構成を使用して、気相、溶液相、またはスラリー重合、またはそれらの組み合わせを介して形成され得る。HDPEは、実質的に直鎖状のエチレンポリマー、均一に分岐した直鎖状エチレンポリマー、不均一に分岐したエチレンポリマー、および/またはそれらのブレンドとして形成され得る。
【0032】
HDPE樹脂の商業的な例には、The Dow Chemical Companyから入手可能な商標ELITE(商標)の下で販売されているものが含まれる。ELITE(商標)HDPE樹脂の具体例には、とりわけ、ELITE(商標)5960Gが含まれる。
【0033】
第1の層のプロピレン-エチレンコポリマー熱可塑性エラストマー(TPE)
本開示のプロピレン-エチレンコポリマー熱可塑性エラストマー(TPE)は、非官能化プロピレン-エチレンコポリマーであり、これは、プロピレン-エチレン交互コポリマーを含み得る。TPEは、少なくとも2つのセグメントを含有し、一方は、熱可塑性であり、他方は、元の長さを超えて延伸することができるエラストマーの特性、およびまた解放されると実質的に元の長さに収縮する能力をプロピレン-エチレンコポリマーTPEに提供するのに役立つエラストマー性である。プロピレン-エチレンコポリマー熱可塑性エラストマーTPEはまた、熱に曝露されると軟化し、室温まで冷却されると実質的に元の状態に戻る能力を有する熱可塑性のもののように加工することができる。
【0034】
本明細書で論じられるように、本開示の第1のポリオレフィン組成物は、組成物で形成された多層フィルムの靭性と剛性とのバランスの全体的な特性を向上するプロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂で配合される。プロピレン-エチレンコポリマーTPEは、第1のポリオレフィン組成物の0.1~20重量%を構成する。いくつかの実施形態では、プロピレン-エチレンコポリマーTPEは、第1のポリオレフィン組成物の5~15重量%を構成する。いくつかの実施形態では、プロピレン-エチレンコポリマーTPEは、第1のポリオレフィン組成物の5~10重量%を構成する。
【0035】
様々な実施形態では、プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、プロピレンに由来する少なくとも60重量%の単位、およびエチレンに由来する少なくとも0.1重量%の単位を含む。例えば、プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、プロピレンに由来する60重量%~99.9重量%の単位、およびエチレンに由来する40重量%~0.1重量%の単位を含み得る。プロピレンに由来する60重量%~99.9重量%の単位およびエチレンに由来する40重量%~0.1重量%の単位のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、本明細書に開示される。例えば、プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂のプロピレンに由来する単位は、60、65、70、または75重量%の下限~80、85、90、95、または99.9重量%の上限であり得る一方で、プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂のエチレンに由来する単位は、0.1、5、10、15、または20重量%の下限~25、30、35、または40重量%の上限であり得る。具体例には、プロピレンに由来する60~99.9重量%の範囲のプロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂を含み、エチレンに由来する単位が、0.1~40重量%である。好ましくは、プロピレンに由来する65~95重量%の範囲のプロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂、およびエチレンに由来する単位が5~35重量%である。より好ましくは、プロピレンに由来する65~95重量%の範囲のプロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂、およびエチレンに由来する単位が、5~35重量%である。
【0036】
プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、ASTM D792に従って測定して0.850~0.900g/cmの密度、およびASTM D-1238に従って230℃/2.16kgで測定して0.1~15g/10分のメルトインデックス(I)を有する。0.850~0.900g/cmの密度および230℃/2.16kgで測定して0.1~15g/10分のメルトインデックスIのすべての個々の値および部分範囲が本明細書で提供される。例えば、プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、ASTM D792に従って測定して0.850、0.855、または0.860g/cmの下限~ASTM D792に従って測定して0.865、0.870、0.875、0.880、0.885、または0.900g/cmの上限の密度を有し得る。具体例には、ASTM D792に従って測定して0.855~0.895g/cm、ASTM D792に従って測定して0.860~0.885g/cm、またはASTM D792に従って測定して0.862~0.865g/cmの範囲の密度が含まれる。
【0037】
プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、ASTM D-1238に従って(230℃/2.16Kgで)測定して、0.1~5g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。0.1~5g/10分のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれかつ開示されており、例えば、Iは、0.1、0.2、0.5、1.0、または1.5の下限~5、4、3、または2.5g/10分の上限であり得る。例えば、プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、0.5~3g/10分、または代替的に1.5~2.5g/10分の範囲のIを有し得る。
【0038】
プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、3.5以下、代替的に3.0以下、または別の代替的に1.8~3.0の、数平均分子量(Mw/Mn)によって除算した重量平均分子量として定義される分子量分布(MWD)を有する。
【0039】
プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、ASTM D790に従って測定して20~60メガパスカル(MPa)の曲げ弾性率(1%の割線)を有し得る。20~60Mpaのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれかつ開示されており、例えば、曲げ弾性率は、20、25、30、または35の下限~60、55、50、または45Mpaの下限であり得る。例えば、プロピレン-エチレンコポリマーTPE樹脂は、25~55Mpa、または代替的に35~45MPaの範囲の曲げ弾性率を有し得る。
【0040】
特に望ましいプロピレン-エチレンコポリマーTPEは、当該技術分野において既知であるように、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定して50~130℃の融解温度を有し、融解温度(Tm)が、DSCピークとみなされる。DSCピークでの融解温度は、フィルム(厚さ0.1~0.2ミル、3~10mg、直径6mmの試料)を、180℃で5分間調整した後、毎分10℃の速度で-40℃の温度まで冷却する、示差走査熱量計(DSC)によって決定される。フィルムを5分間-40℃に保持した後、フィルムを毎分10℃の速度で200℃まで加熱する。
【0041】
そのような非官能化プロピレン-エチレンコポリマーの例には、限定されないが、The Dow Chemical Companyから入手可能なVERSIFY(商標)DE-2400.05が含まれる。
【0042】
シーラント層
様々な実施形態では、シーラント層は、本明細書で提供される多層フィルムおよび/または積層体の外層(external layer)または外層(outer layer)のうちの少なくとも1つを指し、シーラント層が、多層フィルムもしくは積層体のそれ自体へのシーリング、またはパッケージと接触してパッケージを閉じるためのパッケージへのシーリング(例えば、自立式パウチ)に関与する。
【0043】
様々な実施形態では、多層フィルムのシーラント層は、ポリエチレンまたはポリエチレンのブレンドを含み得る。例えば、様々な実施形態では、シーラント層は、50~100重量パーセント、好ましくは少なくとも60、70、80、90、またはさらには100重量パーセントの、0.880~0.915g/cm、好ましくは0.895~0.905g/cm3の密度、ASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.5~5g/10分、好ましくは0.8~1.2dg/分、より好ましくは0.9~1.1dg/分のメルトインデックスI、およびDSC Tmピークで取得して85℃~105℃、好ましくは90℃~100℃の範囲のピーク融点、および2.0~3.0の範囲の分子量分布、Mw/Mnを有するポリエチレンを含む。いくつかの実施形態では、シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレンとポリオレフィンプラストマーとのブレンドを含む。好ましくは、存在する場合、ポリオレフィンプラストマーは、好ましくは、ポリエチレンプラストマーである。しかしながら、シーラント層は、シーラント層用の単一のポリエチレン成分のみを含み得る(例えば、シーラント層は、100重量パーセントの直鎖状低密度ポリエチレンまたは100重量パーセントのポリオレフィンプラストマーから形成される)ことが理解される。
【0044】
好ましくは、ポリエチレンまたはポリエチレンのブレンドは、90℃で少なくとも25N/25mm、より好ましくは少なくとも30、さらにより好ましくは少なくとも35N/25mmのヒートシール強度をシーラント層に提供する。シーラント層は、5~15ミクロンの範囲、好ましくは10~15ミクロンの範囲の厚さを有することも好ましい。
【0045】
シーラント層はまた、他の可能なポリオレフィン組成物を含み得る。これらの他のポリオレフィン組成物の例には、エチレン酢酸ビニル(EVA)およびエチレンメチルアクリレート(EMA)コポリマーが含まれ、これらは、ヒートシール特性を提供することが知られており、ポリブチレンまたはアイオノマーを組み込むことによって剥離可能にすることができる。プロピレン系エラストマーまたはプラストマー(Dow Chemical Companyから入手可能なVERSIFY(商標)樹脂ファミリーなど)は、特に好ましくはポリエチレンおよびスチレンポリマーからなる群からの第2のポリマーと混合されると、いくつかの実施形態のシーラント層としての使用に良好に好適になる範囲のシール強度を有する。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の層をシーラント層として使用することもでき、その場合、シーラント層の厚さを使用して、シールを開くのに必要な剥離力を決定することができる。
【0046】
第1のポリオレフィン組成物
様々な実施形態では、本開示の第1のポリオレフィン組成物は、両方とも本明細書に提供される、(a)80~99.9重量パーセント(重量%)のHDPE樹脂と、(b)0.1~20重量%のプロピレン-エチレンコポリマーTPEと、から本質的になり、重量%値が、第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく。(a)80~99.9重量%のHDPE樹脂、および(b)0.1~20重量%のプロピレン-エチレンコポリマーTPEのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれかつ開示される。例えば、好ましくは、本開示の第1のポリオレフィン組成物は、両方とも本明細書に提供される、(a)90~98重量%のHDPE樹脂と、(b)2~10重量%のプロピレン-エチレンコポリマーTPEと、から本質的になり、重量%値が、第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく。1つの特定の実施形態では、第1のポリオレフィン組成物は、90重量%のHDPE樹脂と、10重量%のプロピレン-エチレンコポリマーTPEと、を有する。
【0047】
上に論じられるように、本開示の第1のポリオレフィン組成物は、両方とも本明細書で提供される、(a)HDPE樹脂と、(b)プロピレン-エチレンコポリマーTPEと、から本質的になる。「から本質的になること」または「から本質的になる」は、本開示の範囲を、本明細書で提供される第1のポリオレフィン組成物の特定の材料、および本開示の第1の層で使用される第1のポリオレフィン組成物の基本的な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。本開示の第1の層で使用される第1のポリオレフィン組成物の基本的な特徴に実質的に影響を及ぼさない、本開示の第1のポリオレフィン組成物に添加することができる他の成分には、無機充填剤、導電性充填剤、顔料、核形成剤、清澄剤、酸化防止剤、酸スカベンジャー、酸素スカベンジャー、難燃剤、紫外線吸収剤、ステアリン酸亜鉛などの加工助剤、押出助剤、スリップ添加剤、透過性調整剤、帯電防止剤、粘着防止添加剤、およびそれらの組み合わせなどの当該技術分野において既知の添加剤が含まれる。そのような添加剤は、第1のポリオレフィン組成物の最大10重量パーセントの典型的な量で存在し得る。
【0048】
本明細書で論じられるように、本開示の多層フィルムは、以下の方法:共押出、押出コーティング、蒸着コーティング、溶剤コーティング、エマルションコーティング、または懸濁コーティングのうちの1つ以上によって一緒に結合される2つ以上の層を含む。本開示の多層フィルムは、第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層と、第1の層上のシーラント層とを含む。様々な実施形態では、多層フィルムは、第1の層およびシーラント層の各々のうちの2つ以上(例えば、2つ以上)を含み得る。例えば、シーラント層は、多層フィルムの第1の外層であり得、第1の層の1番目が、第2の外層であり得、第1の層の2番目が、多層フィルムの第1の外層と第2の外層との間のコア層であり得る。そのような実施形態では、第1の層の1番目および第1の層の2番目の第1のポリオレフィン組成物は、同じであっても、多層フィルムの意図された目的に応じて異なってもよい。追加の実施形態では、多層フィルムは、第1の層、シーラント層、および追加の層のうちの1つ以上を含み得、シーラント層および第1の層が、多層フィルムの外層を提供し、追加の層が、1つ以上のコア相を提供する。そのような実施形態では、追加の層は、第1の層(複数可)の第1のポリオレフィン組成物、およびシーラント層の第1のポリオレフィン組成物のいずれかとは組成的に異なるポリオレフィンであり得る。追加の実施形態では、多層フィルムは、第1の層、シーラント層、および追加の層のうちの1つ以上を含み得、シーラント層および追加の層が、多層フィルムの外層を提供し、第1の層が、1つ以上のコア相を提供する。そのような実施形態では、追加の層は、第1の層(複数可)の第1のポリオレフィン組成物、およびシーラント層の第1のポリオレフィン組成物のいずれかとは組成的に異なるポリオレフィンであり得る。有利には、追加の層(複数可)は、プロピレン系プラストマーもしくはエラストマー、プロピレンホモポリマー、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン系プラストマーもしくはエラストマー、またはそれらのブレンドからなる群から選択されるポリマー材料を含み得る。そのような追加の層は、存在する場合、当該技術分野において一般に既知であるような追加の機能を提供するように選択され得る。
【0049】
本開示の多層フィルムは、10μm~400μmの範囲の総厚を有し得る。50μm~400μmのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれかつ本明細書に開示されており、例えば、総厚が、50、60、70、または80μmの下限~200、300、350、または400μmの上限を有し得る。例えば、多層フィルムは、60μm~350μm、または代替的に70μm~300μm、または代替的に80μm~200μmであり得る。
【0050】
本明細書で論じられるように、第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層は、30~150マイクロメートル(μm)の厚さを有する。様々な実施形態では、第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層は、多層フィルムの総厚の30~70%に相当し得る。30~70%のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれかつ本明細書に開示されており、例えば、第1の層は、多層フィルムの総厚のパーセンテージの厚さの30、35、または40の下限~55、65、または70%の上限に相当し得る。例えば、第1の層は、フィルム総厚の30~70%、または代替的に40~65%、または代替的に50~65%であり得る。
【0051】
本開示の多層フィルムは、個々の層を共押し出しすることができる、ブローフィルムおよびキャストフィルムを含む当該技術分野において一般に既知のプロセスを使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、本開示の多層フィルムはまた、フィルム形成ステップに続いて、機械方向もしくは交差方向、または機械方向と交差方向との両方に配向され得る。
【0052】
積層体
本開示はまた、(i)二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸配向ポリプロピレンフィルム、または配向ポリエチレンフィルムを含む基材フィルムと、(ii)本明細書で提供される多層フィルムと、(iii)基材フィルムおよび本明細書で提供される多層フィルムの第1の層と接着接触するポリウレタンを含む接着層と、を含む、積層体であって、ポリウレタンの弾性率が、ASTM D412に従って測定して、接着層が無溶剤接着剤から形成される場合、接着層が25MPa超の弾性率を有し、接着層が溶剤系接着剤から形成される場合、接着層が0.30MPa超の弾性率を有する、積層体を提供する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「積層体」という用語は、2つ以上の個々に形成されたフィルム、および/または次いで、例えば接着層で一緒に結合される多層フィルムの組み合わせを指す。「接着層」という用語は、直接隣接するかまたは連続する層に、例えば、両方とも本明細書で提供される多層フィルムと基材フィルムとの層間に、層間接着を提供することを主な目的とする内層を意味する。
【0054】
様々な実施形態では、本開示の積層体は、(i)基材フィルム、(ii)多層フィルム、および(iii)基材フィルムおよび多層フィルムの第1の層と接着接触している接着層を積層することによって形成され得、(i)、(ii)、および(iii)の各々は、本明細書で提供されるものである。そのような積層プロセスのプロセスには、当該技術分野において既知であるような押出積層プロセスが含まれる。
【0055】
基材フィルム
積層体の基材フィルムは、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸配向ポリプロピレンフィルム、または一軸配向ポリエチレンフィルムであり得る。様々な実施形態では、基材フィルムは、好ましくは、8~20μmの厚さを有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであり得る。代替的な実施形態では、基材フィルムは、15~50μmの厚さを有する二軸配向ポリプロピレンフィルムであり得る。基材フィルムはまた、15~50μmの厚さを有する二軸配向ポリエチレンフィルムまたは一軸配向ポリエチレンフィルムであり得る。
【0056】
接着層
本明細書で提供されるように、接着層は、基材フィルムおよび第1の層と接着接触しているポリウレタンを含む。いくつかの実施形態では、接着層は、無溶剤接着剤または溶剤系接着剤から形成され得る。実施形態では、接着層は、基材フィルムと第1のポリオレフィン組成物の第1の層との間に直接接触して位置し、基材フィルムと第1の層との間に介在するコーティングまたは層が適用されない。接着層でコーティングされるであろうフィルム表面は、表面エネルギーを増加させ、接着剤成分に十分な湿潤性を提供するようにコロナ処理され得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、接着層は、ポリウレタンを含む。1つ以上の実施形態では、接着剤は、触媒および希釈剤などの任意選択的な成分を含む、2成分のポリオールおよびイソシアネート混合物である。例示的な無溶剤積層体二成分接着剤は、イソシアネート末端プレポリマーである第1の成分を含むポリウレタンを含む。ポリウレタンの第2の成分は、直鎖状および二官能性ポリオールで作製されたポリエステル/ポリエーテルである。例示的な溶剤系接着層は、希釈剤としてメチルエチルケトンをベースにした100%ポリエステルである第1の成分を含むポリウレタンを含む。第2の成分は、イソシアネート末端プレポリマーである。例えば、使用に好適な無溶剤接着剤には、限定ではなく例として、(1)MOR-FREE(商標)698A+MOR-FREE(商標)C79、または(2)MOR-FREE(商標)698A+ポリプロピレングリコール(例えば、Mn446)を含むMOR-FREE(商標)の名称のThe Dow Chemical Company(Midland,MI,USA)からの市販の成分を使用する2成分ポリウレタン接着剤系が含まれ得る。使用に好適な溶剤系接着剤の例には、限定ではなく例として、(1)ADCOTE(商標)563EA+Catalyst F、または(2)ADCOTE(商標)811+MOR-FREE(商標)200CなどのThe Dow Chemical Companyから市販の成分を使用する2成分ポリウレタン接着剤系が含まれ得る。上の接着層組成物は、接着層が無溶剤接着剤から形成される場合、25MPa超の弾性率を有する接着層を提供し、接着層が溶剤系接着剤から形成される場合、接着層は、0.30MPa超の弾性率を有する。弾性率は、ASTM D412に従ってポリウレタンについて測定される。
【0058】
様々な実施形態では、接着層は、1~5μmの厚さを有し得る。ある特定の実施形態では、接着層は、約0.5g/m~5g/m、より好ましくは1g/m~3g/mの平方メートル当たりの重量を有する。接着層は、任意の好適な様式で第1および第2のフィルムに適用され得る。例えば、本開示の方法には、限定ではなく例として、積層マシン、グラビアコーティング、ロールコーティング、ワイヤロッドコーティング、フレキソ印刷、スプレーコーティング、スクリーン印刷などの使用が含まれ得る。
【0059】
フィルム成形技法
本開示の本開示の多層フィルムおよび/または積層体は、当該技術分野において既知の技法を使用して形成され得る。例えば、本開示で提供される第1のポリオレフィン組成物から作製された第1の層、およびポリオレフィン組成物から作製されたシーラント層の両方を有する多層フィルムは、従来の単純な気泡またはキャスト押出技法を使用して、ならびに「テンターフレーミング」または「ダブルバブル」プロセスなどのより精巧な技法を使用することによって作製され得る。「延伸された」および「配向された」は、当該技術分野で使用され、本明細書では互換的に使用されるが、配向は、実際には、フィルムが、例えば、チューブ上で内部空気圧を押し付けることによって、またはフィルムの端部を引っ張るテンターフレームによって延伸される結果である。
【0060】
単純なバブルフィルムプロセスは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、The Encyclopedia of Chemical Technology,Kirk-Othmer,Third Edition,John Wiley & Sons,New York,1981,Vol.16,pp.416-417 and Vol.18,pp.191-192に記載されている。米国特許第3,456,044号(Pahlke)に記載の「ダブルバブル」プロセスなどの二軸配向フィルムを製造するためのプロセス、および二軸延伸または配向フィルムを調製するための他の好適なプロセスは、米国特許第4,865,902号(Golike et al.)、米国特許第4,352,849号(Mueller)、米国特許第4,820,557号(Warren)、米国特許第4,927,708号(Herran et al.)、米国特許第4,963,419号(Lustig et al.)、および米国特許第4,952,451号(Mueller)に記載されており、これらの各々の開示は参照により本明細書に組み込まれる。多層フィルム構造はまた、配向ポリプロピレンに使用されるものなどのテンターフレーム技法に記載のように作製され得る。
【0061】
ブローバブルプロセスでは、本開示の多層フィルムは、例えば、2.5:1以上の高いブローアップ比を使用して形成され得る。本明細書で「BUR」と略されるブローアップ比は、等式:BUR=気泡直径/ダイ直径によって計算される。他の多層フィルム製造技法には、Packaging Foods With Plastics, by Wilmer A.Jenkins and James P.Harrington(1991),pp.19-27、および”Coextrusion Basics”by Thomas I.Butler,Film Extrusion Manual:Process,Materials,Properties pp.31-80(TAPPI Press (1992)による出版)に記載のものが含まれ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本開示の積層体はまた、既知の技法から形成され得る。そのような積層プロセスのプロセスには、当該技術分野において既知であるような押出積層プロセスが含まれ、層を接合するための積層プロセスが、最終層フィルム形成プロセスの二次操作で行われる。積層プロセスは、各々本明細書で提供される接着層を使用して多層フィルムを基材フィルムと接合し、そのようなプロセスが、K.R.Osborn and W.A.Jenkins in”Plastic Films,Technology and Packaging Applications”(Technomic Publishing Co.,Inc.(1992))に記載されている。多層フィルムおよび/または積層体はまた、二軸配向プロセスなどの他の押出後技法を受け得る。
【0063】
他の層もまた、この積層体成形プロセスに含まれ得る。例えば、本開示の積層体はまた、限定されないが、バリア層、および/またはタイ層、および/または構造層を含む他の層を含み得る。これらの層には様々な材料が使用され得、それらのうちのいくつかは、同じ積層体構造内の2つ以上の層として使用される。これらの材料のうちのいくつかには、箔、ナイロン、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンテレプタレート(PET)、配向ポリプロピレン(OPP)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)コポリマー、LLDPE、HDPE、LDPE、ナイロン、グラフト接着ポリマー(例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン)、および紙が含まれる。
【0064】
様々な実施形態では、積層体はまた、積層体の少なくとも1つの層に印刷されたトナーまたはインク画像を含み得る。ある特定の実施形態では、積層体の外面は、印刷を含み得る。積層体のフィルムおよび/または多層フィルムのうちの1つ以上の他の表面もまた、印刷を含み得る。積層体への印刷は、コロナ印刷、デジタルプレス、および液体トナー/インクを使用するなどの、当該技術分野において既知の機械およびプロセスを使用して達成され得る。
【0065】
本開示の実施形態はまた、本明細書で提供される積層体を含むパッケージを提供し、そのようなパッケージングが、飲料、食品、化粧品、および医薬品などの液体、固体、および/または粒子に使用され得る。パッケージは、限定されないが、可撓性のパッケージング、パウチ、バッグ、および自立式パウチを含む、液体および/または固体を保持するのに好適な任意の形式を有し得る。一実施形態では、積層体を含むパッケージは、自立式パウチである。他のパッケージ構造には、限定されないが、本明細書に開示の第1の層および/または積層体のうちのいずれかから形成された可撓性パッケージが含まれる。特定の態様では、パッケージは、例えば、VFFS、HFFS、およびDoypack設備を含む、従来のパッケージング設備での加工に適している。
【実施例
【0066】
本開示のいくつかの実施形態は、以下の実施例で詳述され、すべての部およびパーセンテージが、別段指定されない限り重量による。実施例では、以下の材料および試験を使用する。
【表1-1】
【表1-2】
【0067】
ポリオレフィン組成、第1の層および方法の説明
【表2】
【0068】
ポリオレフィン組成物の混和
46ミリメートルのL/D比を有する単一の混合スクリューを備えたBuss Compounder MDK/E46(Buss AG,Switzerland)を使用して、表2に示される比較例(CE)および実施例(Ex)のポリオレフィン組成物を混和する。Buss Compounderの温度プロファイルは、190/200/210/210℃であり、出力は、12kg/時間であり、水中ペレット化およびペレット乾燥の後に収集した。
【0069】
第1の層の生成
Dr.Collin Line(ダイ60mm、出力9kg/時間、ダイ温度230℃、および2.5のブローアップ比)、ならびに表2に見られるCEおよびExのポリオレフィン組成を使用する研究室規模、またはAlpine Line3層押出ライン(ダイ200mm、出力100kg/時間、ダイ温度230℃、およびブローアップ比2.5)を使用する大規模のいずれかで、第1の層を生成し、表に2に見られる重量パーセントのHDPE樹脂およびプロピレン-エチレンコポリマーTPEを、ブローフィルムラインの押出機で直接乾式ブレンドする。第1の層は、100μmの厚さを有する。
【0070】
落下ダーツ衝撃試験
ISO6603-4に従った落下ダーツ衝撃試験で、第1の層を試験する。落下ダーツ衝撃試験は、プラスチックフィルムの衝撃強度または靭性を評価する。落下ダーツ衝撃試験は、ダーツの重量を変動させながら、単一のダーツ構成および単一の落下高さを使用する。
【0071】
たわみ試験
ISO178に従ったZwickZ010 Universal Testing Machine(Zwick/Roell)の使用に従って、第1の層の応力-ひずみ挙動を試験する。
【0072】
弾性率/割線弾性率試験
ASTM D882に従ってZwick Z010 Universal Testing Machine(Zwick/Roell)を使用して、割線弾性率を決定する。
【0073】
高速引張試験
Zwick Roell HIT25P(Zwick/Roell)で、最大2m/秒の速度、および2.5kNの力で高引張試験を記録する。
【0074】
落下試験
以下のように落下試験を行う。異なる高さでの20回の落下事象からなるステアケース法を使用し、破損が発生するまで、落下の高さを200cm刻みで増やす。試験を繰り返すが、ここでは試料(例えば、パウチ)が破損を示さないところまで、各落下事象の高さを200cm下げていく。ステアケース法(ASTM D2463-10b試験)は、最大の非破損高さ、最小の非破損高さ、および平均破損高さを提供する。平均破損高さは、試験するパウチの半分が破損する可能性が最も高い高さを表し、平均破損高さを使用して、試料を比較する。
【0075】
降伏応力、ネッキング応力、およびネッキング応力試験に対する相対低減率
流動として、降伏応力、ネッキング応力、およびネッキング応力試験に対する相対低減率を行う。70ミリメートル(mm)×15mmのCE A、CE B、およびEx1のフィルムの試験片を調製する。耐振動テーブル上に、パッケージング用途での変形速度の範囲である最大3.8m/秒の衝撃速度を制御するように装備された振り子式引張衝撃試験一式(25J Pendulum Ceramic Impact Measuring Instrument)を設ける。純粋なフィルム衝撃引張およびヒートシール衝撃引張の振り子式引張衝撃試験一式で、2つの異なる衝撃試験を行う。事前に確定した位置に各試験片を配置し、所望の速度(位置または角度)に振り子を調整する。最大3.8m/秒の任意の速度および2.5kNの力で、試験片の応力-ひずみ曲線、最大試験力、エネルギー、変位、および他の試験パラメータを測定する。測定周波数は、チャネル当たり最大4MHzである。表3は、これらの試験の結果を提供する。
【表3】
【0076】
図1は、本明細書で提供されるCE A、CE B、およびEx 1のポリオレフィン組成物の各々を使用して大規模で調製した厚さ100μmのフィルムの引張曲線を表している。CE C、CE D、およびCE Eのデータは、CE Bのものと同様の引張特性を示した。加えて、表3に示される機械方向(MD)データは、CE A、CE B、およびEx1で調製したフィルムについてのみ提供しており、交差方向(CD)で得た結果は、MDと非常に類似していた。
【0077】
靭性/剛性バランス
図2は、本明細書で提供されるCE A、CE B、およびEx1の混和配合物の各々を使用して、上に論じられる大規模および実験室規模で調製した厚さ100μmのフィルム(単一フィルムおよび共押出フィルム)の靭性/剛性バランスを表している。厚さ100μmのフィルムは、CE A、CE B、およびEx1の混和配合物の各々で形成した100μmの単一の層のいずれかであるか、またはCE A、CE B、またはEx1のいずれかと同じ混和配合物の3つの別個の層を共押し出しすることによって形成した多層フィルムである。
【0078】
図2に見られるように、CE AまたはC EBのいずれかで形成したフィルムと比較して、Ex1の混和配合物で形成したフィルムの靭性に、大幅かつ驚くほどの増加がある。研究室規模:単一の100μmフィルム(ダーツ落下エネルギー×2.90)、共押出フィルム(ダーツ落下エネルギー×2.59)、または大規模:単一の100μmフィルム(ダーツ落下エネルギー×1.75)、共押出フィルム(ダーツ落下エネルギー×2.39)で作製したフィルムでのこの観察は、妥当である。このデータは、ENGAGE(商標)8842(CE B)などの他の熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPE)と比較した、VERSIFY(商標)DE2400.05(Ex1)の靭性性能を強調しており、研究するフィルムの種類に応じて、ダーツ落下性能が1.17~1.22のみ増倍する。
【0079】
TPEの添加はまた、剛性に影響を及ぼす。10%のVERSIFY(商標)DE2400.05をEx1に添加することによって、大規模でのヤング弾性率の20%の減少をもたらし、これは、この濃度のTPEをHDPEマトリックスに使用した場合の剛性の予想される減少の範囲内である。
【0080】
PET/単押出フィルムおよびPET/共押出フィルムを用いる積層体
12ミクロンの厚さを有する市販の二配向PETフィルム(BOPET)を使用した。フィルムは、Mitsubishi Polyester FilmからHOSTAPHAN商品名で購入した。表1の積層接着剤系を使用して、NORDMECCANICA LABOCOMBIL400で、共押出および単押出フィルムを用いるBOPETの積層体を製造した。
【0081】
BOPET/単押出フィルムおよびBOPET/共押出フィルムをいくつかの無溶剤および溶剤系の剛性および可撓性の接着剤で製造した。使用した接着剤の詳細を表4に記載する。
【表4】
【0082】
表4では、ポリウレタン接着剤は、以下の特徴を考慮することによって、剛性から可撓性に分類した:(1)平均官能価-平均官能価が高いほど、接着剤はより剛性であり、その逆も同様である、(2)芳香族/脂肪族の重量%-芳香族の濃度が高いほど、接着剤はより剛性であり、その逆も同様である、(3)エーテル基、エステル基、およびウレタン基のモル%画分-エーテルの濃度が高いほど、接着剤はより可撓性である。対照的に、エステルおよびウレタンの濃度が高いほど、接着剤はより剛性である、(4)理論的なハンセン溶解度パラメータ-このパラメータは、系の極性を説明する。ハンセン溶解度パラメータが高いほど、極性基材への接着剤の接着性がより良好である。
【0083】
BOPET/単押出フィルムを用いた積層体
【表5】
【0084】
図3は、表4に記載の範囲の接着剤で調製した積層体の限界落下高さを比較している。積層体は、上の表5に見られるように、厚さ12μmのBOPETフィルム、および100μmのCE Aの混和配合物、CE Bの混和配合物、または実施例1の混和配合物のフィルムで調製した。図3に示されるように、剛性接着剤(溶剤系または無溶剤)の使用に関連してTPEを含有する積層体を使用すると、より高い落下性能値に到達する。
【0085】
シール性能
PET/共押出フィルムを用いた積層体:引張特性および落下高さ
性能
落下高さ性能は、シール性能に関連し得る。高速引張試験を使用した試験シール性能は、上に論じている。落下高さ試験で使用した積層体を用いるシールに関して得た結果を、表6および表7に要約する。
【表6】
【表7】
【0086】
シール強度の研究は、上の表6および7に見られるように、Ex1の混和配合物で作製したフィルムを、剛性溶剤系接着剤と一緒に使用すると、最大のシール性能が観察されたことを強調している。
【0087】
図4は、いくつかの接着剤を用いた、PET/共押出フィルムで作製した積層体の引張特性を要約している。単押出フィルムで作製した積層体に関する研究と同様に、この研究は、その共押出フィルム(実施例1)中に無溶剤接着剤と一緒にVERSIFY(商標)DE2400.05エラストマーを含有する積層体の関連を使用すると、応力、破断点ひずみ、および最も重要な破損高さの観点で、より高い性能に到達することが強調されている。
【0088】
上に見られるように、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、特にVERSIFY(商標)TPEを薄いフィルム(最大100μm)に添加することによって、剛性の減少を制限しながら、HDPEフィルムの耐衝撃性を顕著に増加させることが可能になる。さらに、PET層と積層体化した単層または共押出層にTPE(例えば、VERSIFY(商標)TPE)を添加してパウチを形成することによって、特に、本明細書で見られるフィルムが、無溶剤剛性接着剤で積層体されると、自立式パウチの落下性能に顕著かつ驚くほどの改善を生じる。
【0089】
本開示の多層フィルムの追加の実施例は、2.5のブローアップ比、および25/5
0/25の各層の厚さパーセントを有する、Alpine3層押出ラインで形成した10
0マイクロメートルの総厚を有する3層構造(A/B/C)を有するものを含み、Aが、
ELITE(商標)5940ST+10%のVERSIFY(商標)2300であり、B
が、ELITE(商標) 5940ST+10%のVERSIFY(商標)2300であ
り、Cが、AFFINITY1881Gシーラントである。MOR-FREE(商標)接
着剤系:L+/CR121を使用した12ミクロンのBOPETフィルムを用いて、No
rdmeccanicaパイロットラインで、この多層実施例を積層体化する。370m
lの水を満たした自立式パウチ(SUP)に積層体を変換する。ステアケース法に従って
パウチ落下試験機でこれらのパウチに落下試験を行って、残存する限界パウチ落下高さ(
この高さから落下させた場合の、パウチの50%が失敗/破断する)を決定する。実施例
の平均パウチ残存落下高さは、291ミリメートルであり、これは、Versify 2
300のような少量のエラストマー材料で改質した中密度から高密度のコア層の本発明の
系では、(DOWLEX(商標)50656Gで作製した0.920g/cm3の参照フ
ィルムと比較して)はるかに剛性のPEフィルムの限界落下高さ、非常に類似する限界落
下高さを達成することができることを示しており、これは、単純に中/高密度フィルム単
独によっては可能ではない。加えて、このデータは、より剛性のPEフィルムの適切な落
下試験性能を確保するために、AFFINITY(商標)1881またはDOWLEX(
商標)5056G(LLDPE)のような好適なシーラント層の必要性を示している。よ
り剛性のPEフィルムによって、液体で満たされたSUPの落下試験性能を損なうことな
く、PEフィルムの薄化が可能になる。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 多層フィルムであって、
第1のポリオレフィン組成物から形成された第1の層であって、前記第1のポリオレフィン組成物が、
(a)前記第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく重量%で80~99.9重量パーセント(重量%)の、ASTM D792に従って測定して0.935~0.966g/cm の密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.3~8g/10分のメルトインデックス(I )を有する高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ならびに
(b)少なくとも60重量%のプロピレンに由来する単位および少なくとも0.1重量%のエチレンに由来する単位を含み、ASTM D792に従って測定して0.850~0.900g/cm の密度、およびASTM D-1238に従って230℃/2.16kgで測定して0.1~15g/10分のメルトインデックス(I )を有する、前記第1のポリオレフィン組成物の総重量に基づく重量%で0.1~20重量%のプロピレン-エチレンコポリマー熱可塑性エラストマー(TPE)、から本質的になる、第1の層と、
前記第1の層上のシーラント層と、を含む、多層フィルム。
(2) 前記プロピレン-エチレンコポリマーTPEが、DSC Tmピークで取得して50~130℃の融解温度を有する、前記(1)に記載の多層フィルム。
(3) 前記プロピレン-エチレンコポリマーTPEが、ASTM D790に従って測定して20~60メガパスカル(MPa)の曲げ弾性率を有する、前記(1)に記載の多層フィルム。
(4) 前記第1のポリオレフィン組成物が、90~98重量%の前記HDPE樹脂と、2~10重量%の前記プロピレン-エチレンコポリマーTPEと、を有する、前記(1)~(3)のいずれかに記載の多層フィルム。
(5) 前記第1のポリオレフィン組成物から形成された前記第1の層が、30~150マイクロメートル(μm)の厚さを有する、前記(1)~(4)のいずれかに記載の多層フィルム。
(6) 前記シーラント層が、前記シーラント層の50~100重量パーセントの、0.880~0.915g/cm の密度、およびASTM D-1238に従って190℃/2.16kgで測定して0.5~5g/10分のメルトインデックスI 、および85℃~105℃の範囲のピーク融点、および2.0~3.0の範囲の分子量分布Mw/Mnを有するポリエチレンを含む、前記(1)~(5)のいずれかに記載の多層フィルム。
(7) 積層体であって、
(i)二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸配向ポリプロピレンフィルム、または配向ポリエチレンフィルムを含む、基材フィルムと、
(ii)前記(1)~(6)のいずれかに記載の多層フィルムと、
(iii)前記基材フィルムおよび前記(1)~(6)のいずれかに記載の多層フィルムの前記第1の層と接着接触しているポリウレタンを含む接着層であって、前記ポリウレタンの弾性率が、ASTM D412に従って測定して、前記接着層が無溶剤接着剤から形成される場合、前記接着層が25MPa超の弾性率を有し、前記接着層が溶剤系接着剤から形成される場合、前記接着層が0.30MPa超の弾性率を有する、接着層と、を含む、積層体。
(8) 前記基材フィルムが、8~20μmの厚さを有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムである、前記(7)に記載の積層体。
(9) 前記基材フィルムが、15~50μmの厚さを有する二軸配向ポリプロピレンフィルムである、前記(7)に記載の積層体。
(10) 前記基材フィルムが、15~50μmの厚さを有する二軸配向ポリエチレンフィルムまたは一軸配向ポリエチレンフィルムである、前記(7)に記載の積層体。
(11) 前記接着層が、1~5μmの厚さを有する、前記(7)~(10)のいずれかに記載の積層体。
(12) 前記多層フィルムの前記第1の層の前記第1のポリオレフィン組成物が、5~15重量%の前記プロピレン-エチレンコポリマーTPEを含む、前記(7)~(11)のいずれかに記載の積層体。
(13) 前記(7)~(12)のいずれかに記載の積層体を含む、パッケージ。
(14) 前記パッケージが、自立式パウチである、前記(13)に記載のパッケージ。
(15) 前記フィルムが、ブローフィルムまたはキャストフィルムである、前記(1)~(6)のいずれかに記載の多層フィルム。
図1
図2
図3
図4