(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-26
(45)【発行日】2025-03-06
(54)【発明の名称】鋼管柱の継手構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20250227BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
E04B1/58 503H
E04B1/24 P
(21)【出願番号】P 2023117349
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2019141235の分割
【原出願日】2019-07-31
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-052483(JP,A)
【文献】特開2006-070669(JP,A)
【文献】特開2002-106065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/348
E04B 1/38-1/61
E04C 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に第1の貫通孔を有する第1の鋼管柱と、
側面に第2の貫通孔を有する第2の鋼管柱と、
第1の添え板、及び第2の添え板と、
第1の開口部を有する第1の補強板、及び第2の開口部を有する第2の補強板と、
を含み、
前記第1の貫通孔に前記第1の開口部が重なるように前記第1の補強板が前記第1の鋼管柱に接合され、
前記第2の貫通孔に前記第2の開口部が重なるように前記第2の補強板が前記第2の鋼管柱に接合され、
前記第1の鋼管柱と前記第2の鋼管柱とが、前記第1の添え板及び前記第2の添え板を用いてボルト接合され、
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱の材軸方向において、前記第1の添え板が前記第1の補強板に隣接し、前記第2の添え板が前記第2の補強板に隣接して配置さ
れ、
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱の材軸方向と交差する方向において、前記第1の補強板が前記第2の添え板を用いてボルト接合された部分に隣接し、前記第2の補強板が前記第1の添え板を用いてボルト接合された部分に隣接し、
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱の材軸方向において、前記第1の補強板の前記第1の添え板の側とは反対側の端部が、前記第2の添え板を用いてボルト接合された部分よりも外側に延びており、前記第2の補強板の前記第2の添え板とは反対側の端部が、前記第1の添え板を用いてボルト接合された部分よりも外側に延びている、
鋼管柱の継手構造。
【請求項2】
前記第1の補強板の端部が前記第1の添え板の端部と接するように配置され、前記第2の補強板の端部が前記第2の添え板の端部と接するように配置されている
請求項1に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項3】
前記第1の補強板が前記第1の添え板と離隔して配置され、前記第2の補強板が前記第2の添え板と離隔して配置されている
請求項1に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項4】
前記第1の補強板が前記第1の鋼管柱の外側の側面に溶接され、前記第2の補強板が前記第2の鋼管柱の外側の側面に溶接されている
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項5】
前記第1の補強板が前記第1の鋼管柱の内側の側面に溶接され、前記第2の補強板が前記第2の鋼管柱の外側の側面に溶接されている
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項6】
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とは、前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱の材軸方向における高さが異なっている
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項7】
前記第1の鋼管柱の一端の切欠き部と、前記第1の鋼管柱の切欠き部によって後退した端部から突出する突出部と、を有し、
前記第2の鋼管柱の一端の切欠き部と、前記第2の鋼管柱の切欠き部によって後退した端部から突出する突出部と、を有し、
前記第1の鋼管柱の切欠き部と前記第2の鋼管柱の突出部とが、及び前記第1の鋼管柱の突出部と前記第2の鋼管柱の切欠き部とが、咬み合うように設けられている
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項8】
前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱の断面形状が角形である
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【請求項9】
前記第1の添え板と前記第2の添え板とが、前記第1の鋼管柱及び前記第2の鋼管柱の異なる面に当接されている
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の鋼管柱の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、建造物に用いられる鋼管柱の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の施工現場において、鉄骨部材を接合する方法として溶接接合とボルト接合が用いられている。溶接接合は、十分な強度を確保することができる反面、高度な技能と作業時間を要し、品質及び性能も作業者の技量の影響を受ける。これに対し、ボルト接合は、工期の短縮を図ることができ、品質管理が容易であるという利点を有する。ボルト接合は、例えば、鋼管柱とH型鋼との接合、鋼管柱同士を接合する方式が開示されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-179702号公報(特許第3122209号)
【文献】特開2004-293196号公報(特許第4038449号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄骨部材をボルト接合する場合、H型鋼のような開断面形状を有する部材であれば、容易にボルト接合をすることができる。しかし、角形鋼管柱のような管状の部材を繋ぐためにボルト接合する場合、容易に施工できないという問題がある。建造物の施工を容易にするために鋼管柱の一部を加工することも考えられるが、それによって継手部の強度が低下することが懸念される。
【0005】
本発明の目的の一つは、このような課題を解決するための鋼管柱の継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、側面に第1の貫通孔を有する第1の鋼管柱と、側面に第2の貫通孔を有する第2の鋼管柱と、第1の添え板、及び第2の添え板と、第1の開口部を有する第1の補強板、及び第2の開口部を有する第2の補強板と、を含む。第1の鋼管柱に第1の貫通孔に第1の開口部が重なるように第1の補強板が接して設けられ、第2の鋼管柱に第2の貫通孔に第2の開口部が重なるように第2の補強板が接して設けられる。第1の鋼管柱と第2の鋼管柱とが上下方向に配置され、第1の添え板が、第1の補強板に隣接し、第1の鋼管柱と第2の鋼管柱との境界を含み第1の鋼管柱及び第2の鋼管柱の側面に接して設けられ、第2の添え板が、第2の補強板に隣接し、第1の鋼管柱と第2の鋼管柱との境界を含み第1の鋼管柱及び第2の鋼管柱の側面に接して設けられる。第1の鋼管柱と第2の鋼管柱とは、第1の添え板及び第2の添え板を介してボルト接合され、第1の貫通孔と第2の貫通孔とが、斜かい状に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係る鋼管の継手構造によれば、鋼管柱のボルト接合が容易となる。さらに、本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造によれば、ボルト接合された部分の強度の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の正面図を示す。
【
図3】
図2に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の正面図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図6】
図5に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示す。
【
図7】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図8】
図7に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示す。
【
図9】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図であり、(A)は展開図を示し、(B)は2つの鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部を示す。
【
図10】本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の正面図を示す。
【
図11】
図9に示す鋼管柱の継手構造におけるボルト接合部の断面構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の内容を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様を含み、以下に例示される実施形態の内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本発明の内容を限定するものではない。また、本明細書において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、b等を付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の一実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1の鋼管柱と第2の鋼管柱とがボルト接合によって接合された構造を有する。以下、その継手構造を詳細に説明する。本実施形態では鋼管柱の一種として、角形鋼管柱における場合の継手構造を例示する。
【0011】
図1(A)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造における継手部分の展開図を示し、
図1(B)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図を示す。なお、
図1(A)において、ボルト及びナット等の締結部材は省略されている。
【0012】
図1(A)及び(B)は、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の断面形状が矩形である場合を示す。以下の説明では、便宜上、第1の鋼管柱102が4つの平面を有し、各面を反時計回りに第1面11、第2面12、第3面13、及び第4面14と符号を付けて示し、第2の鋼管柱112も同様に、各平面を反時計回りに第1面21、第2面22、第3面23、及び第4面24と符号を付けて示す。また、特に断りのない限り、第1の鋼管柱102は材軸方向の下側に配置され、第2の鋼管柱112は上側に配置されるものとする。
【0013】
図1(A)に示すように、第1の鋼管柱102は、一端に第1の切欠き部106a、第2の切欠き部106bが設けられる。第1の切欠き部106aは、第1の鋼管柱102の第2面12の一端を材軸方向に所定の長さに亘って除去することで形成され、第2の切欠き部106bは、第4面14の一端を材軸方向に所定の長さに亘って除去することで形成される。第1の鋼管柱102の一端部には、第1の切欠き部106a、第2の切欠き部106bが形成されることによって後退した端部を基準としたとき、当該後退した端部から突出する第1の突出部104a、第2の突出部104bが設けられる。すなわち、第1の鋼管柱102の第1の突出部104aは、第1の鋼管柱102の第1面11に形成され、第2の突出部104bは、第1の鋼管柱102の第3面13面に形成される。
【0014】
第2の鋼管柱112は、一端に第1の切欠き部116a、第2の切欠き部116bが設けられる。第1の切欠き部116aは、第2の鋼管柱112の第1面21の一端を材軸方向に所定の長さに亘って除去することで形成され、第2の切欠き部116bは、第1面21に対向する第3面23の一端を材軸方向に所定の長さに亘って除去することで形成される。第2の鋼管柱112の一端部には、第1の切欠き部116a、第2の切欠き部116bが形成されることによって後退した端部を基準としたとき、当該後退した端部から突出する第1の突出部114a、第2の突出部114bが設けられる。すなわち、第2の突出部114aは、第2の鋼管柱112の第2面22に形成され、第1の鋼管柱の第2の突出部104bは、第4面24面に設けられる。
【0015】
第1の鋼管柱102は、第1面11の第1の突出部104aを形成する領域に第1のボルト孔108aが複数個設けられ、第2面12の第1の切欠き部106aに隣接する領域に第2のボルト孔108bが複数個設けられる。
図1(A)では示されないが、第1のボルト孔については、第3面13及び第4面14も同様である。第2の鋼管柱112は、第1面21の第1の切欠き部116aに隣接する領域に第1のボルト孔118aが複数個設けられ、第2面22の第1の突出部114aを形成する領域に第2のボルト孔118bが複数個設けられる(第3面23及び第4面24についても同様である)。第1の鋼管柱の第1のボルト孔108a、第2のボルト孔108b、並びに第2の鋼管柱112の第1のボルト孔118a、第2のボルト孔118bは、ボルトを挿通可能な口径を有し、鋼管柱を貫通する貫通孔である。
【0016】
第1の添え板130a、第2の添え板130bは、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の外側に配置され、第1の添え板に対向する添え板140a、第2の添え板に対向する添え板140bは、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の内側に配置される。第1の添え板130aは、第1の鋼管柱102の第1のボルト孔108a及び第2の鋼管柱112の第1のボルト孔118aに対応するように第1の添え板のボルト孔132aが設けられ、第2の添え板130bは、第1の鋼管柱102の第2のボルト孔108b及び第2の鋼管柱112の第2のボルト孔118bに対応するように第2の添え板のボルト孔132bが設けられる。第1の添え板に対向する添え板140aには、第1の鋼管柱102の第1のボルト孔108a及び第2の鋼管柱の第1のボルト孔118aに対応するようにボルト孔142aが設けられ、第2の添え板に対向する添え板140bには、第1の鋼管柱102の第2のボルト孔108b及び第2の鋼管柱112の第2のボルト孔118bに対応するようにボルト孔142bが設けられる。
【0017】
第1の鋼管柱102は、第1の貫通孔120a、及び第3の貫通孔120cを有する。第1の貫通孔120aは、第1面11において第1の突出部104aに隣接するように設けられ、第3の貫通孔120cは、第3面13において第2の突出部104bに隣接するように設けられる。第2の鋼管柱112は、第2の貫通孔120b、及び第4の貫通孔(図示せず)を有する。第2の貫通孔120bは、第2面22において第1の突出部114aに隣接するように設けられ、第4の貫通孔(図示せず)は、第4面24において第2の突出部114bに隣接するように設けられる。
【0018】
第1の鋼管柱102は、第1面11に第1の補強板122aが設けられ、第3面13に第3の補強板(図示せず)が設けられる。第1の補強板122aは第1の開口部124aを有し、第3の補強板(図示せず)は第3の開口部124cを有する。第1の補強板122aは、第1の開口部124aが第1の貫通孔120aと重なるように設けられ、第3の補強板(図示せず)は、第3の開口部124cが第3の貫通孔120cと重なるように設けられる。第2の鋼管柱112は、第2面22に第2の補強板122bが設けられ、第4面24に第4の補強板(図示せず)が設けられる。第2の補強板122bは第2の開口部124bを有し、第4の補強板(図示せず)は第4の開口部(図示せず)を有する。第2の補強板122bは、第2の開口部124bが第2の貫通孔120bと重なるように設けられる。また、図示しないが、第4の補強板は、第4の開口部が第4の貫通孔と重なるように設けられる。
【0019】
第1の開口部124aは、開口の形状に限定はないが、第1の貫通孔120aを塞がない大きさを有する。例えば、図示されるように、第1の開口部124aは第1の貫通孔120aと略同一の口径を有していてもよい。第2の開口部124bと第2の貫通孔120b、第3の開口部124cと第3の貫通孔120c、第4の開口部と第4の貫通孔(図示せず)についても同様である。
【0020】
第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を継ぎ合わせたとき、第1の補強板122a及び第1の添え板130aは同一面(第1面11と第1面21)に設けられるが、両者は干渉しない大きさを有する。第1の補強板122aと第1の添え板130aとは、両者の対向する端部が接するように配置されてもよいし、離隔して配置されてもよい。このような関係は、第2の補強板122b及び第2の添え板130bについても同様である。
【0021】
第1の補強板122aは第1の鋼管柱102と接合され、第2の補強板122bは第2の鋼管柱112と接合される。例えば、第1の補強板122aの周辺端部は第1の鋼管柱102に溶接により接合され、第2の補強板122bの周辺端部は第2の鋼管柱112に溶接により接合される。
【0022】
図1(B)に示すように、第1の鋼管柱102の第1の突出部104a、第2の突出部104bと第2の鋼管柱112の第1の切欠き部116a、第2の切欠き部116b、及び第1の鋼管柱102の第1の切欠き部106a、第2の切欠き部106bと第2の鋼管柱112の第1の突出部114a、第2の突出部114bとが嵌合するように設けられる。そして、外側から第1の添え板130a、第2の添え板130bが宛がわれ、内側から第1の添え板に対向する添え板140a、第2の添え板に対向する140bが宛がわれ、2つの添え板によって挟まれて第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100bが形成される。
図1(B)では示されないが、ボルト接合部は鋼管柱の各面(角形鋼管柱においては4つの面)に形成される。図示されるように、第1の貫通孔120aは第1のボルト接合部100aに隣接するように配置され、第2の貫通孔120bは第2のボルト接合部100bに隣接するように配置される。
【0023】
第1の鋼管柱102、第2の鋼管柱112、第1の補強板122a、第2の補強板122b、第1の添え板130a、第2の添え板130b、第1の添え板に対向する添え板140a及び第2の添え板に対向する添え板140bは、鉄鋼材料で形成される。例えば、これらの部材は構造用圧延鋼材で形成される。
図1(A)は、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112を、外側の側面に第1の添え板130a、第2の添え板130bが配置され、内側の側面に第1の添え板に対向する添え板140a、第2の添え板に対向する添え板140bが配置され、外内両側から挟み込む構成を示すが、継手部分の強度が十分保てる場合には、内側又は外側に当接させる添え板を省略することもできる。
【0024】
図2は、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の正面図を示す。第1の鋼管柱102の第1面11及び第2の鋼管柱112の第1面21に第1のボルト接合部100aが形成され、第2面12及び第2面22に第2のボルト接合部100bが形成され、第3面13及び第3面23に第3のボルト接合部100cが形成される。第1のボルト接合部100aにおいて、第1の添え板130a及び第1の添え板に対向する添え板140aは、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の両方に当接する大きさを有する。第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112に対し、第1の添え板130aは外側の側面から当接し、第1の添え板に対向する添え板140aは内側の側面から当接し、締結具(ボルト150及びナット152)により締結される。このような構成は、第2のボルト接合部100b及び第3のボルト接合部100cについても同様である。
【0025】
図1(A)及び(B)を参照して説明したように、上下に配置される鋼管柱の突出部と切欠き部とが嵌合するように配置されることにより、第1のボルト接合部100a及び第3のボルト接合部100cの高さと、第2のボルト接合部100bの高さとは異なるように配置される。
図2に示すように、第1のボルト接合部100a及び第3のボルト接合部100cに対し、第2のボルト接合部100bは低い位置に形成される。第2の鋼管柱112の第2面22には、第1のボルト接合部100aと第3のボルト接合部100cに挟まれ、かつ第2のボルト接合部100bに隣接するように第2の貫通孔120b及び第2の補強板122bが設けられる。これに対し、第1の鋼管柱102に設けられる第1の貫通孔120a及び第1の補強板122a、並びに第3の貫通孔120c及び第3の補強板122cは、第2の貫通孔120b及び第2の補強板122bに対し低い位置に設けられる。本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、隣接する面でボルト接合部100の高さと貫通孔120及び補強板122の位置が異なるように配置される。このように、第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bを斜かい状に配置することで、鋼管柱に働く剪断力や、曲げ応力に対しする耐性を高めることができる。
【0026】
図2に示すように、一つのボルト接合部(例えば、第2のボルト接合部100b)に対して、高さが異なる複数の貫通孔が配置されることにより(例えば、第2の貫通孔120bに対し、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cは低い位置に配置される)、作業者は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とを継ぎ合わせる作業が容易となる。すなわち、作業者は、施工現場において、複数の貫通孔から工具等を入れてボルト接合を容易に施工することができる。例えば、第2のボルト接合部100bを施工する場合、作業者は、第2の貫通孔120bのみならず、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cからも工具等を挿入して作業を行うことができる。この場合において、第2の貫通孔120bに対し、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cは異なる高さに配置されていることにより、鋼管柱の内部に様々な角度から工具等を差し入れることが可能となり、作業の自由度を高めることができる。
【0027】
図3(A)は、
図2において矢印A1、A2で挟む部位を断面視したときの断面構造を示し、
図3(B)は、
図2において矢印B1、B2で挟む部位を断面視したときの断面構造を示す。
【0028】
図3(A)に示すように、第2の鋼管柱112は、第1のボルト接合部100a及び第3のボルト接合部100cに挟まれるように、第2の貫通孔120b及び第4の貫通孔120dを有する。また、
図3(B)に示すように、第1の鋼管柱102は、第2のボルト接合部100b及び第4のボルト接合部100dに挟まれるように、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cを有する。このように、第1乃至第4のボルト接合部100a、100b、100c、100dが形成される部分に隣接して第1乃至第4の貫通孔120a、120b、120c、120dが設けられることにより、第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112の断面積は、他の部分と比べて相対的に小さくなる。それにより、鋼管柱の強度が低下することが懸念される。鋼管柱の強度の低下を抑制するために、貫通孔の数を減らすか、貫通孔の口径を小さくすることも考えられるが、そのような措置を図ると施工性が低下してしまう。
【0029】
これに対し、本実施形態においては、
図3(A)に示すように、第2の鋼管柱112には、第2の貫通孔120bに合わせて第2の補強板122bが設けられ、第4の貫通孔120dに合わせて第4の補強板122dが設けられる。そして、
図3(B)に示すように、第1の鋼管柱102には、第1の貫通孔120aに合わせて第1の補強板122aが設けられ、第3の貫通孔120cに合わせて第3の補強板122cが設けられる。このような構成により、鋼管柱に貫通孔が設けられたことによる剪断力,曲げ応力,軸応力に対する強度(剛性)の低下を補うことができる。
【0030】
なお、第1乃至第4の補強板122a、122b、122c、122dの厚さは適宜設定される。例えば、第1の鋼管柱102、第2の鋼管柱112の厚さと略同一とすることができ、又はそれ以上の厚さを有することができる。鋼管柱に貫通孔を設けたことによる強度の低下を補うためには、補強板の断面積と貫通孔が設けられた鋼管柱の断面積とを、式(1)に示す関係が満たされるようにすればよい。
[補強板の断面積]≧[貫通孔が設けられた鋼管柱の貫通孔の断面積] (1)
なお、式(1)において、補強板の断面積とは、開口部において第1の鋼管柱102の材軸方向と交差する最大直径部における断面積をいうものとし、貫通孔が設けられた鋼管柱の断面積とは、貫通孔において第1の鋼管柱102の材軸方向と交差する最大直径部における断面積をいうものとする。
【0031】
また、上記の式(1)で示す関係を別の表現で表すと、式(2)で示すこともできる。
[鋼管の一般部分(貫通孔のない部分)の断面積]≦[貫通孔の最大直径部における鋼管と補強板を合わせた断面積] (2)
いずれにしても、第1乃至第4の補強板122a、122b、122c、122dは、式(1)又は式(2)の関係を満たす厚さとすればよい。
【0032】
第1乃至第4の補強板122a、122b、122c、122dは、第1の鋼管柱102、第2の鋼管柱112のそれぞれの内側の側面に接合されていてもよいし、外側の側面及び内側の側面の両側面に設けられていてもよい。いずれにしても、本実施形態で例示されるように、第1の補強板122a及び第3の補強板122cの周辺端部が、第1の鋼管柱102に溶接により接合され、第2の補強板122b及び第4補強板122dの周辺端部が、第2の鋼管柱112に溶接により接合されることで、実質的にそれぞれの鋼管柱の肉厚を増加したことと同様の効果を得ることができる。すなわち、鋼管柱に設けられた貫通孔の周りを囲むように補強板を設けることで、貫通孔が設けられた部位の周辺領域の実質的な厚みを大きくすることができ、ボルト接合により継手を形成する部分の強度(剛性)の低下を防止することができる。
【0033】
第1の補強板122aに設けられる第1の開口部124aは、第1の貫通孔120aと略同一又はそれより大きな口径を有することにより、貫通孔を設けたことによる施工性に影響を与えないようにすることができる。このことは、他の補強板(第2の補強板122b、第3の補強板122c、第4の補強板122d)についても同様である。
【0034】
図1(A)及び(B)は、鋼管柱の各面に一つずつ貫通孔を設ける態様を例示するが、本発明の一実施形態はこのような態様のみに限定されず、鋼管柱の各面に複数の貫通孔を設けることもできる。そのような場合であっても、複数の貫通孔のそれぞれに対応して補強板を設けることで鋼管柱の強度(剛性)の低下を防ぐことができる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を継ぎ合わせる場合において、各鋼管柱に貫通孔を設けることでボルト接合の施工性を高めることができ、貫通孔に合わせて開口部を有する補強板を設けることで継手部分の強度の低下を抑制し、鋼管柱の他の部分と同等かそれ以上の強度を得ることができる。なお、本実施形態は鋼管の継手構造について示すが、本発明の一実施形態はこの態様に限定されず、円形鋼管や異形鋼管についても同等に適用することができる。
【0036】
[第2の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に対し補強板の構成が異なる態様について示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0037】
図4は、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の正面図を示す。第1の補強板122a、第2の補強板122b、第3の補強板122cの配置は、第1の実施形態と同様である。一方、
図4に示すように、第1の補強板122a、第2の補強板122b、第3の補強板122cの大きさは、第1の実施形態におけるものと異なっている。
【0038】
具体的には、第2の補強板122bの長さL2(第2の鋼管柱の材軸方向の長さ)は、端部ED2(第2の鋼管柱112の材軸方向と交差する一辺の端部)が、第2の鋼管柱112の第1のボルト孔118a、第3のボルト孔118cの端部(第1の切欠き部116a、第2の切欠き部116bの端部から最も離れた位置にあるボルト孔の端部)から長さk2だけ外側に長く突き出る大きさを有する。
図4では示されないが、第2の鋼管柱112の第4面24に設けられる第4の補強板についても同様である。なお、長さk2は、
図4に示すように、複数の第2のボルト孔118a、第3のボルト孔118cの内、第1の切欠き部116a、第2の切欠き部116bの端部から最も離れた位置にあるボルト孔の端部からの距離として定義することができる。
【0039】
第2の鋼管柱112には、第2面22に第2の貫通孔120bが形成されることの加え、第1面21及び第3面23に複数の第1のボルト孔118a、第3のボルト孔118cが形成される。そのため、第2の鋼管柱112の実質的断面積が小さくなり、継手部分の強度の低下が懸念される。しかしながら、第2の補強板122bの端部ED2が第2の鋼管柱112の第1のボルト孔118a、第3のボルト孔118cの端部を超えて配置されるようにすることで、第2の貫通孔120bが設けられる部位の強度を補うと共に、隣接面のボルト孔が設けられる部位の強度をも補うことができる。
【0040】
このことは、第1の鋼管柱102についても同様である。すなわち、第1の補強板122aは、第1の開口部124aの位置が第1の貫通孔120aと重なるように配置され、第1の鋼管柱102と接合される。第1の補強板122aの長さL1(第1の鋼管柱の材軸方向の長さ)は、端部ED1(第1の鋼管柱102の材軸方向と交差する一辺の端部)が、第1の鋼管柱102の第2のボルト孔108bの端部から長さk1だけ外側に長く突き出る大きさを有する。これにより、第1の貫通孔120aが設けられる部位の強度を補うと共に、隣接面のボルト孔が設けられる部位の強度をも補うことができる。第3の補強板122cについても同様である。なお、長さk1は、
図4に示すように、複数の第1のボルト孔108a、第3のボルト孔108cの内、第1の鋼管柱102の第1の切欠き部106a、第2の切欠き部106bの端部から最も離れた位置にあるボルト孔の端部からの距離として定義することができる。
【0041】
一方、第2の補強板122bと第2の添え板130bとは、両者の対向する端部が接するように配置されてもよいし、離隔して配置されてもよい。このような関係は、第1の補強板122a及び第1の添え板130a、第3の補強板122c及び第3の添え板130cについても同様である。
【0042】
なお、補強板が添え板から突出する長さは任意に設定することができる。また、図示されないが、補強板の端部と添え板の端部とが略一致するように設けられていても同様の効果を得ることができる。いずれにしても、上述のように、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、例えば、第1の補強板122aが長さL1、第2の補強板122bが長さL2を有することで(第3の補強板122c、第4の補強板についても同様)、継手部分にかかる曲げ応力、剪断力に対して高い耐性を持つようにすることができる。
【0043】
本実施形態の鋼管柱の継手構造は、補強板の構成が異なる他は第1の実施形態と同様である。したがって、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造は、第1の実施形態と同様の効果を奏することに加え、ボルト孔が形成されたことによる強度の低下を補うことができる。
【0044】
[第3の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に対し、切欠き部及び突出部の構成が異なる態様を示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0045】
図5(A)は、本実施形態に係る鋼管柱の継手部の展開図を示し、
図5(B)は鋼管柱の継手部の斜視図を示す。また、
図6(A)及び
図6(B)は、
図5(B)に示すC1部分及びC2部分の断面構造を示す。なお、
図5(A)において、ボルト、ナット等の締結具は省略されている。
【0046】
図5(A)に示すように、第1の鋼管柱102は、第2面12及び第3面13に第1の切欠き部106a、第2の切欠き部106bが設けられ、これらの切欠き部によって後退した端部を基準としたとき、当該後退した端部から突出する第1の突出部104a、第2の突出部104bが第1面11及び第4面14に設けられる。第2の鋼管柱112は、第1面21及び第4面24に第1の切欠き部116a、第2の切欠き部116bが設けられ、これらの切欠き部によって後退した端部を基準としたとき、当該後退した端部から突出する第1の突出部114a、第2の突出部114bが第2面22及び第3面23に設けられる。このように、第1の切欠き部106a、第2の切欠き部106bは、第1の鋼管柱102の連続する2面を切欠くように形成され、第1の切欠き部116a、第2の切欠き部116bは、第2の鋼管柱112の連続する2面を切欠くように形成される。
【0047】
第1の鋼管柱102の第1の切欠き部106a、第2の切欠き部106bと第2の鋼管柱112の第1の突出部114a、第2の突出部114b、及び第1の鋼管柱102の第1の突出部104a、第2の突出部104bと第2の鋼管柱112の第1の切欠き部116a、第2の切欠き部116bとが嵌合するように設けられる。そして、外側から第1の添え板130a、第2の添え板130bが当てられ、内側から第1の添え板に対向する添え板140a、第2の添え板に対向する140bが当てられ、2つの添え板によって挟まれて第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100bが形成される。
図5(B)では示されないが、ボルト接合部は鋼管柱の各面(4つの面)に形成される。第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bとは高さが異なるように形成される。このように、第1のボルト接合部100aと第2のボルト接合部100bを斜かい状に配置することで、鋼管柱に働く剪断力や、曲げ応力に対しする耐性を高めることができる。
【0048】
図6(A)に示すように、第2の鋼管柱112は、第2面22に第2の貫通孔120bが設けられ、第3面23に第3の貫通孔120cが設けられる。第2の鋼管柱112は、第2面22に第2の貫通孔120bの位置に合わせて第2の補強板122bが設けられ、第3面23に第3の貫通孔120cの位置に合わせて第3の補強板122cが設けられる。また、
図6(B)に示すように、第1の鋼管柱102には、第1面11に第1の貫通孔120aが設けられ、第4面14に第4の貫通孔120dが設けられる。第1の鋼管柱102には、第1面11に第1の貫通孔120aの位置に合わせて第1の補強板122aが設けられ、第4面14に第4の貫通孔120dの位置に合わせて第2の補強板122dが設けられる。
【0049】
図6(A)及び(B)に示すように、鋼管柱の隣接する2つの面に切欠き部を設け(別言すれば、隣接する2つの面に突出部を設け)た構成によっても、鋼管柱の各面に貫通孔を設けることができる。この場合においても、
図5(B)に示すように、鋼管柱の隣接する面に高さの異なる貫通孔(第1の貫通孔120a、第2の貫通孔120b)を設けることができる。
【0050】
このように、一つのボルト接合部100に対して高さが異なる複数の貫通孔120が配置されることにより、作業者は、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112とを継ぎ合わせる作業が容易となる。この場合において、例えば、第1の貫通孔120aと第2の貫通孔120bとは高さが異なっていることから、縦方向に延びる第1のボルト接合部100a、第2のボルト接合部100bをボルト締めする場合であっても上下の位置に拘わらず作業を容易に行うことができる。例えば、第1のボルト接合部100aをボルトで締結する場合、作業者は、第1の貫通孔120aのみならず、第2の貫通孔120bからも工具等を挿入して作業を行うことができる。
【0051】
本実施形態においても、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を継ぎ合わせる場合において、各鋼管柱に貫通孔を設けることでボルト接合の施工性を高めることができる。さらに、貫通孔に合わせて補強板を設けることで継手部分の強度の低下を抑制し、鋼管柱の他の部分と同等かそれ以上の強度を得ることができる。なお、本実施形態は、第2の実施形態の構成を適宜組み入れて実施することができる。
【0052】
[第4の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態及び第2の実施形態に対し、切欠き部及び突出部の構成が異なる態様を示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0053】
図7(A)は、本実施形態に係る鋼管柱の継手部の展開図を示し、
図7(B)は鋼管柱の継手部の斜視図を示す。また、
図8(A)及び
図8(B)は、
図7(B)に示すD1部分及びD2部分の断面構造を示す。なお、
図7(A)において、ボルト、ナット等の締結具は省略されている。
【0054】
図7(A)は、
図1(A)及び
図5(A)と比べて、切欠き部の構成が異なる構成を示す。
図7(A)に示す構成は、第1の鋼管柱102の3つの面(第2面12、第3面13、第4面14)を切欠くように設けられ、第2の鋼管柱112の第1面21に第1の切欠き部116aが設けられる態様を示す。第1の鋼管柱102には、第1面11に第1の突出部104aが設けられ、第2の鋼管柱112には第2面22に第2の突出部114b、第3面23に第3の突出部114c、第4面24に第4の突出部114dが設けられる。
【0055】
図7(B)に示すように、第1の鋼管柱102の第1の突出部104aと第2の鋼管柱112の第1の切欠き部116aとが咬み合うように配置される。第1の鋼管柱102及び第2の鋼管柱112において、上述のように、一方の鋼管柱の一つの面(又は一部)に切欠き部を設け、他方の鋼管柱の対応する面に突起部を設ける構成としても、第1のボルト接合部100aと、第2のボルト接合部100b、第3のボルト接合部100c及び第4のボルト接合部100dとを斜かい状に配置することができる。また、第1の貫通孔120aと、第2の貫通孔120b、第3の貫通孔120c及び第4の貫通孔120dとの高さを異ならせることができる。
【0056】
このように、本実施形態においても、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112を継ぎ合わせる場合において、各鋼管柱に貫通孔120を設けることでボルト接合の施工性を高めることができる。さらに、貫通孔120に合わせて補強板122を設けることで継手部分の強度の低下を抑制し、鋼管柱の他の部分と同等かそれ以上の強度を得ることができる。なお、本実施形態は、第2の実施形態の構成を適宜組み入れて実施することができる。
【0057】
[第5の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態で示す鋼管柱の継手構造において、さらに第3の補強板を設けた一例を示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0058】
図9(A)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造における継手部分の展開図を示し、
図9(B)は本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の斜視図を示す。なお、
図9(A)において、ボルト及びナット等の締結部材は省略されている。
【0059】
図9(A)に示すように、第1の内側補強板160aは、第1の鋼管柱102の内側に設けられる。第1の内側補強板160aは、第1の鋼管柱102の材軸方向と平行な方向に立てられ、第1面11及び第3面13の内側の側面と内接するように設けられる。第1の内側補強板160aは、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cと重なる領域に設けられる。第2の鋼管柱112においても、同様に第2の内側補強板160bが設けられる。
【0060】
図9(B)に示すように、第1の内側補強板160a、第2の内側補強板160bは、第1の鋼管柱102と第2の鋼管柱112が継ぎ合わされた後も外部に露出することはなく、鋼管柱の内部に収納されるように設けられる。
【0061】
図10は、本実施形態に係る鋼管柱の継手構造の正面図を示す。第1の鋼管柱102の内側には、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cが設けられる部位と同じ高さに第1の内側補強板160aが設けられる。第1の内側補強板160aは、端部が第1面11及び第3面13の内側の側面と当接するように設けられる。第1の内側補強板160aは、例えば、第1の鋼管柱の第1面11及び第3面13の内側の側面に溶接により固定される。このように、第1の鋼管柱102の貫通孔が設けられる位置に、第1の内側補強板160aを対向する内側の側面に架け渡すように設けることで、その部位の強度を高めることができる。すなわち、第1の鋼管柱102において、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cが設けられる部位の強度を補うことができる。
【0062】
第1の内側補強板160aは、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cと重なる位置に凹部162aが形成されていてもよい。凹部162aの形状は任意であるが、例えば、第1の貫通孔120a、第3の貫通孔120cと略同一の直径を有する半円状の形状を有していてもよい。第1の内側補強板160aに凹部162aを設けることで、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cの一部を塞がないようにすることができる。それにより、第1の貫通孔120a、第2の貫通孔120bから工具等を挿入して作業する場合においても、第1の内側補強板160aが邪魔にならず、作業性を低下させないようにすることができる。なお、第2の鋼管柱112に設けられる第2の内側補強板160bは、第1の鋼管柱102に設けられる第1の内側補強板160aと同様の構成を有する。
【0063】
図11(A)は、
図10において矢印E1、E2で挟む部位を断面視したときの断面構造を示し、
図11(B)は、
図10において矢印F1、F2で挟む部位を断面視したときの断面構造を示す。
【0064】
図11(A)に示すように、第2の鋼管柱112には、第2面22から第4面24の内側の側面を架け渡すように第2の内側補強板160bが設けられる。第2の内側補強板160bは、第2の貫通孔120b及び第4の貫通孔120dと重なる位置に設けられる。第2の内側補強板160bの端部には、貫通孔の一部を塞がないように凹部162bが設けられる。
図11(B)に示すように、第1の鋼管柱102には、第1面11から第3面13の内側の側面を架け渡すように第1の内側補強板160aが設けられる。第1の内側補強板160aには、第1の貫通孔120a及び第3の貫通孔120cに面する端部に凹部162aが設けられる。
【0065】
図11(A)及び(B)に示すように、鋼管柱において、貫通孔が設けられる対向する面に対し、両方の内側の側面に接する第1の内側補強板160a、第2の内側補強板160bを設けることで、貫通孔を設けたことによる強度(剛性)の低下を補うことができる。本実施形態に係る鋼管柱の他の構成は、第1の実施形態に係るものと同様であり、同様の作用効果を奏することができる。なお、本実施形態は、第2乃至第3の実施形態の構成を適宜組み入れて実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
100・・・ボルト接合部、100a・・・第1のボルト接合部、100b・・・第2のボルト接合部、100c・・・第3のボルト接合部、100d・・・第4のボルト接合部102・・・第1の鋼管柱、104a・・・(第1の鋼管柱の)第1の突出部、104b・・・(第1の鋼管柱の)第2の突出部、106a・・・(第1の鋼管柱の)第1の切欠き部、106b・・・(第1の鋼管柱の)第2の切欠き部、108a・・・(第1の鋼管柱の)第1のボルト孔、108b・・・(第1の鋼管柱の)第2のボルト孔、108c・・・(第1の鋼管柱の)第3のボルト孔、112・・・第2の鋼管柱、114a・・・(第2の鋼管柱の)第1の突出部、114b・・・(第2の鋼管柱の)第2の突出部、114c・・・(第2の鋼管柱の)第3の突出部、114d・・・(第2の鋼管柱の)第4の突出部、116a・・・(第2の鋼管柱の)第1の切欠き部、116b・・・(第2の鋼管柱の)第2の切欠き部、118a・・・(第2の鋼管柱の)第1のボルト孔、118b・・・(第2の鋼管柱の)第2のボルト孔、118c・・・(第2の鋼管柱の)第3のボルト孔、120・・・貫通孔、120a・・・第1の貫通孔、120b・・・第2の貫通孔、120c・・・第3の貫通孔、120d・・・第4の貫通孔、122a・・・第1の補強板、122b・・・第2の補強板、122c・・・第3の補強板、122d・・・第4の補強板、124a・・・第1の開口部、124b・・・第2の開口部、124c・・・第3の開口部、124d・・・第4の開口部、130a・・・第1の添え板、130b・・・第2の添え板、130c・・・第3の添え板、132a・・・第1の添え板のボルト孔、132b・・・第2の添え板のボルト孔、140a・・・第1の添え板に対向する添え板、140b・・・第2の添え板に対向する添え板、140c・・・第3の添え板に対向する添え板、142a・・・第1の添え板に対向する添え板のボルト孔、142b・・・第2の添え板に対向する添え板のボルト孔、150・・・ボルト、152・・・ナット、160a・・・第1の内側補強板、160b・・・第2の内側補強板、162a・・・凹部、162b・・・凹部