(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】皮膚外用剤用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20250228BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20250228BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20250228BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250228BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20250228BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20250228BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20250228BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250228BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20250228BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250228BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20250228BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/37
A61K8/67
A61K9/08
A61K31/07
A61K31/455
A61K47/14
A61K47/32
A61P17/16
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K8/81
(21)【出願番号】P 2022203735
(22)【出願日】2022-12-01
【審査請求日】2024-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】高田 紗都子
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102270(JP,A)
【文献】特開2017-088506(JP,A)
【文献】特開2019-043933(JP,A)
【文献】特開2004-075540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/49
A61K 8/37
A61K 8/67
A61K 9/08
A61K 31/07
A61K 31/455
A61K 47/14
A61K 47/32
A61P 17/16
A61Q 19/00
A61Q 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分A:ニコチン酸
アミド1~10質量%と、
成分B:レチノール
及び/又はその誘導体
0.001~1質量%と、
成分C:非イオン性界面活性剤
0.5~5質量%と、
成分D:分岐脂肪酸と分岐アルコール
とのエステル油
1~8質量%と
を含有してなり、
前記レチノール及び/又はその誘導体としてパルミチン酸レチノール、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール及びリノール酸レチノールからなる群より選ばれた少なくとも1種の成分が用いられており、
前記非イオン性界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の成分が用いられており、
前記分岐脂肪酸と分岐アルコールとのエステル油としてネオペンタン酸オクチルドデシル
、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル及びイソステアリン酸オクチルドデシルからなる群より選ばれた少なくとも1種の成分が用いられており、
前記成分Dに対する前記成分Aと前記成分Bの総和の含有量比〔(成分A+成分B)/成分D〕が0.5~2の範囲を満たす皮膚外用剤用組成物。
【請求項3】
成分E:脂肪酸と多価アルコールとのエステル油及び/又は炭化水素油
をさらに含有してなり、前記脂肪酸と多価アルコールとのエステル油としてジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、テトラミリスチン酸ペンタエリスリトール及びテトライソステアリン酸ペンタエリスリトールからなる群より選ばれた少なくとも1種の成分が用いられている請求項1又は2に記載の皮膚外用剤用組成物。
【請求項4】
成分F
:カルボキシビニルポリマー及び/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
を
さらに含有
してなる請求項1又は2に記載の皮膚外用剤用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキンケア製剤に求められる主な機能の一つに「抗老化」があり、抗老化作用を発揮する様々な薬剤が提案されている。このような薬剤の中でも、ニコチン酸アミドやパルミチン酸レチノールは、優れた抗老化作用を有する成分として注目を浴びており、両成分を併用する製剤も増えている。
【0003】
しかしながら、ニコチン酸アミドとパルミチン酸レチノールを併用して製剤中に多量に配合すると、格段に優れた抗老化作用を発揮させることができる反面、ニコチン酸アミドによる析出が生じ易く、一方、パルミチン酸レチノールによる変臭が生じ易くなるといった問題がある。そのため、ニコチン酸アミドとパルミチン酸レチノールの両成分を製剤中に多く配合することができず、望む抗老化作用を十分に発揮することができないといった課題がある。
【0004】
このような課題を解決するために、シリコーン構造を有する特定の皮膚形成ポリマーと、レチノールやニコチン酸アミドなどのしわ改善成分とを特定量で組み合わせた皮膚外用剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、このようなシリコーン構造を有する皮膚形成ポリマーを用いた皮膚外用剤組成物では、塗布時の感触に重たさがあり、かつ、肌上での延展性が悪くなることから、よりべたつきを感じ易くなるという欠点がある。
【0005】
一方、ニコチン酸アミドと、耐塩性水溶性高分子と、レチノール又はその誘導体と、多価アルコールとを特定量で組み合わせた皮膚外用剤も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。当該試みによって、ニコチン酸アミドの析出やパルミチン酸レチノールの変臭を抑えることができるものの、肌上での延展性が悪く、べたつきを感じ易くなり、良好な使用感が十分に得られ難いといった欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-067065号公報
【文献】特開2021-098655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、上記技術に鑑みてされたものであり、ニコチン酸アミドなどの析出や、パルミチン酸レチノールなどの変臭を抑えるだけでなく、塗布時や塗布後の使用感が良好、かつ、格段に優れた保湿効果を発揮する皮膚外用剤用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、下記成分A、下記成分B、下記成分C、並びに下記成分Dを含有してなる皮膚外用剤用組成物を提供する。
成分A:ニコチン酸および/又はその誘導体
成分B:レチノールおよび/又はその誘導体
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:分岐脂肪酸と分岐アルコールのエステル油
【0009】
上記成分Dが、イソステアリン酸イソステアリルであることが好ましい。
【0010】
さらに、下記成分Eを含有することが好ましい。
成分E:脂肪酸と多価アルコールのエステル油および/又は炭化水素油
【0011】
さらに、下記成分Fを含有することが好ましい。
成分F:カルボマーおよび/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚外用剤用組成物は、上記構成要件を満たすことにより、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭の双方を抑えて格段に優れた製剤の保存安定性を発揮するという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の皮膚外用剤用組成物は、塗布時の肌馴染みと延展性が良好であり、塗布後の肌に優れた保湿効果をもたらすにもかかわらず、べたつきのないサラっとした感触を付与することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の皮膚外用剤用組成物は、下記成分A、下記成分B、下記成分C並びに下記成分Dを含有する。
成分A:ニコチン酸および/又はその誘導体
成分B:レチノールおよび/又はその誘導体
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:分岐脂肪酸と分岐アルコールのエステル油
【0015】
以下、本発明の皮膚外用剤用組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0016】
[成分A]
上記成分Aは、ニコチン酸および/又はその誘導体である。すなわち、上記成分Aは、ニコチン酸およびニコチン酸誘導体の一方又は双方である。本発明では、上記成分Aを用いることにより、優れた抗老化作用を発揮させることができる。
【0017】
具体的な成分Aとしては、例えば、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸メチル、ニコチン酸エチルなどが挙げられる。これら成分Aは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記成分Aの中でも、より良好な抗老化作用を発揮させる観点から、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、ニコチン酸および/又はニコチン酸アミドを用いることがより好ましく、ニコチン酸アミドを用いることが最も好ましい。
【0019】
本発明において上記成分Aは、市販品を用いることもできる。上記成分Aの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0020】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Aの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、良好な抗老化作用を発揮させる観点から、組成物100質量%中、1質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~7質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Aの含有量は、純分に換算した量である。
【0021】
[成分B]
上記成分Bは、レチノールおよび/又はその誘導体である。すなわち、上記成分Bは、レチノールおよびレチノール酸誘導体の一方又は双方である。本発明では、上記成分Bを用いることにより、優れた抗老化作用を発揮させることができる。
【0022】
具体的な成分Bとしては、例えば、レチノール、パルミチン酸レチノール、水添レチノール、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール、リノール酸レチノールなどが挙げられる。これら成分Bは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記成分Bの中でも、より良好な抗老化作用を発揮させる観点からレチノール、パルミチン酸レチノール、水添レチノールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、レチノールおよび/又はパルミチン酸レチノールを用いることがより好ましく、パルミチン酸レチノールを用いることが最も好ましい。
【0024】
本発明において上記成分Bは、市販品を用いることもできる。上記成分Bの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0025】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Bの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、良好な抗老化作用を発揮させる観点から、組成物100質量%中、0.001質量%~1質量%であることが好ましく、0.01質量%~0.5質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Bの含有量は、純分に換算した量である。
【0026】
[成分C]
上記成分Cは、非イオン性界面活性剤である。本発明では、上記成分Cを用いることにより、組成物中に上記成分Aと上記成分Bを安定に配合させることができる。
【0027】
上記成分Cとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。これら成分Cは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記成分Cの中でも、上記成分Aと上記成分Bをより安定に配合させる観点から、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0029】
本発明において上記成分Cは、市販品を用いることもできる。上記成分Cの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0030】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Cの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、上記成分Aと上記成分Bをより安定に配合させる観点から、組成物100質量%中、0.5質量%~5質量%であることが好ましく、1質量%~3質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Cの含有量は、純分に換算した量である。
【0031】
[成分D]
上記成分Dは、分岐脂肪酸と分岐アルコールのエステル油である。本発明では、上記成分Dを用いることにより、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭を抑えて製剤の保存安定性を高めるだけでなく、塗布時の肌馴染みと延展性を良好にし、塗布後の肌にべたつきのないサラっとした感触を付与することができる。
【0032】
具体的な成分Dとしては、例えば、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシルなどが挙げられる。これら成分Dは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記成分Dの中でも、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭を抑えて製剤の保存安定性をより一層高める観点、並びに、塗布時の肌馴染みと延展性を良好にし、塗布後の肌にべたつきのないサラっとした感触を高める観点から、ネオペンタン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシルから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシルから選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましく、イソステアリン酸イソステアリルを用いることが最も好ましい。
【0034】
本発明において上記成分Dは、市販品を用いることもできる。上記成分Dの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0035】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Dの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭を抑えて製剤の保存安定性を高める観点、並びに、塗布時の肌馴染みと延展性を良好にし、塗布後の肌にべたつきのないサラっとした感触を付与する観点から、組成物100質量%中、1質量%~8質量%であることが好ましく、2質量%~6質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Dの含有量は、純分に換算した量である。
【0036】
本発明においては、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭を抑えて製剤の保存安定性をより一層高める観点、並びに、塗布時の肌馴染みと延展性を良好にし、塗布後の肌にべたつきのないサラっとした感触を高める観点から、上記成分Dに対する上記成分Aと上記成分Bの総和の含有量比「(成分A+成分B)/成分D」は、0.5~2の範囲を満たし調製することが好ましく、0.8~1.5の範囲を満たし調製することがより好ましい。
【0037】
[成分E]
本発明の皮膚外用剤用組成物には、成分Eとして、脂肪酸と多価アルコールのエステル油および/又は炭化水素油を更に含有させることが好ましい。本発明では、上記成分Eを用いることにより、保湿効果を高めるだけでなく、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭を抑えて製剤の保存安定性をより一層良好にすることができる。なお、本明細書において、上記脂肪酸と多価アルコールのエステル油を「成分E1」、上記炭化水素油を「成分E2」と称することがある。
【0038】
具体的な成分E1としては、例えば、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、テトラミリスチン酸ペンタエリスリトール、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これら成分E1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0039】
具体的な成分E2としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、セレシン、パラフィン、ポリエチレン末、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、流動イソパラフィン、流動パラフィン、ワセリンなどが挙げられる。これら成分E2は1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0040】
本発明においては、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭を抑えて製剤の保存安定性をより一層良好にする観点から、上記成分E1と上記成分E2とを併用して用いることが好ましく、より具体的には、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルとスクワランとを併用して用いることが最も好ましい。
【0041】
本発明において上記成分Eは、市販品を用いることもできる。上記成分Eの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0042】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Eの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、保湿効果を高める観点、並びに上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭を抑えて製剤の保存安定性を高める観点から、組成物100質量%中、1質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~8質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Eの含有量は、純分に換算した量である。
【0043】
本発明においては、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭を抑えて製剤の保存安定性を更により一層高める観点から、上記成分Dに対する上記成分Eの含有量比「成分E/成分D」は、0.5~2の範囲を満たし調製することが好ましく、1~1.8の範囲を満たし調製することがより好ましい。
【0044】
[成分F]
本発明の皮膚外用剤用組成物には、成分Fとして、カルボキシビニルポリマーおよび/又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを更に含有させることが好ましい。本発明では、上記成分Fを用いることにより、塗布時の肌馴染みと延展性を更に高めることができる。
【0045】
上記成分Fは、通常、塩基性物質で中和して用いられる。塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが挙げられる。また、塩基性物質の添加量は、上記成分Fを中和するのに充分な量であり、これら成分の種類や使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0046】
本発明において上記成分Fは、市販品を用いることもできる。上記成分Fの市販品は、単独原料であっても、他成分との混合原料であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されない。
【0047】
本発明の皮膚外用剤用組成物中の上記成分Fの含有量は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、塗布時の肌馴染みと延展性を更に高める観点から、組成物100質量%中、0.01質量%~1質量%であることが好ましく、0.1質量%~0.8質量%であることがより好ましい。なお、上記成分Fの含有量は、純分に換算した量である。
【0048】
[その他成分]
本発明の皮膚外用剤用組成物には、上記した成分の他に、上記成分Aおよび上記成分B以外の有効成分、上記成分C以外の界面活性剤、上記成分Dおよび上記成分E以外の油剤、上記成分F以外の増粘剤、多価アルコール、紫外線吸収剤、香料、pH調整剤、皮膜形成剤、キレート剤、低級アルコール、収れん剤、酸化防止剤、防腐剤、着色料、植物抽出エキス、植物発酵エキス、精製水などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0049】
本発明の皮膚外用剤用組成物の剤型は、所望の効果を発揮できるのであれば特に限定されないが、例えば、液状、ジェル状、乳液状、クリーム状などの様々な剤型へと調製することができる。本発明では、格段に優れた製剤の保存安定性を発揮させる観点、並びに使用感の観点から、ジェル状、乳液状、クリーム状へと調製することが好ましく、中でも、乳液状、クリーム状といった乳化剤型へと調製することがより好ましい。
【0050】
また、本発明の皮膚外用剤用組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて撹拌する方法などが挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0051】
本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤用組成物を適用する部位は、特に限定されないが、一例として、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、デコルテ、脇、背中などに用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0053】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1~5および比較例1~4の皮膚外用剤用組成物を常法に準じてクリーム剤型へと調製し、下記評価に供した。結果を表1および表2に併記する。なお、表中の配合量は、全て純分に換算した値である。
【0054】
(試験例1:製剤の保存安定性)
実施例および比較例で得られた各試料を50mL容のガラス製のマヨネーズ瓶に充填後、40℃の恒温槽にて4週間保存し、経過後の「析出」、「変臭」の有無を確認した。
【0055】
析出の有無は、透明スライドガラス2枚一組を準備し、各試料0.02gを一方のスライドガラス上に吐出後、残る一方のスライドガラスで挟み込み、両スライドガラスを擦り合わせるようにして試料を延展させ、試料中の析出物の存在を目視にて確認し、以下の基準に従って評価した。
【0056】
<析出の有無の評価基準>
○(良好):析出物が一切認められない
△(不十分):僅かな析出物が認められる
×(不良):明らかな析出物が認められる
【0057】
変臭の有無は、マヨネーズ瓶口から直接各試料のにおいを嗅ぎ、酸敗臭がするかしないかを確認し、以下の基準に従って評価した。
【0058】
<変臭の有無の評価基準>
○(良好):変臭は一切感じ取れない
△(不十分):僅かに酸敗臭が感じ取れる
×(不良):明らかに酸敗臭が感じ取れる
【0059】
(試験例2:塗布時の評価)
実施例および比較例で得られた各試料0.1gを手の甲へ塗布して使用試験を実施し、塗布時の「肌馴染み」、「延展性」、並びに塗布10分後の肌の「保湿感」、「べたつき感のなさ」について官能評価を行い、下記1点~5点の評価点に従ってスコア付けをした。各評価は、5名の専門評価員が実施し、各評価員の評価結果から平均点を算出して以下の判定基準に従って決定した。
【0060】
なお、「肌馴染み」の評価は、肌へ浸透していく感触が高いものを高得点とした。「延展性」の評価は、柔らか、且つ、滑らかに延び広がるものを高得点とした。「保湿感」の評価は、肌に潤いがある感触が高いものを高得点とした。「べたつき感のなさ」の評価は、べたつき感を感じずにサラっとしているほど高得点とした。
【0061】
<評価基準>
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0062】
<判定基準>
◎:平均4.0点以上
○:平均3.0点以上4.0点未満
△:平均2.0点以上3.0点未満
×:平均2.0点未満
【0063】
【0064】
【0065】
表1および表2に示された結果から、各実施例で得られた本発明の皮膚外用剤用組成物は、各比較例で得られたものと対比して、上記成分Aに起因する析出や、上記成分Bに起因する変臭の双方が認められず、製剤の保存安定性が良好であることが分かる。また、塗布時の肌馴染みと延展性が良好であり、塗布後の肌に優れた保湿効果を付与できるものあるにもかかわらず、べたつきのないサラっとした感触が得られていることが分かる。即ち、本発明の皮膚外用剤用組成物は、上記構成要件を満たすことにより、格段に優れた効果を存分に発揮できるものであると言える。