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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】冷凍空調装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
F25B49/02 570D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021086892
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022180016
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2024-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 康敬
(72)【発明者】
【氏名】田崎 宣明
(72)【発明者】
【氏名】南条 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小松 一宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 冬樹
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-196525(JP,A)
【文献】特開2010-210213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 ~ 49/04
F24F 1/00 ~ 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、絞り装置、および、蒸発器が配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路と、
前記凝縮器および前記蒸発器のうち一方の出口温度を検知する第一センサと、
前記凝縮器および前記蒸発器のうち前記一方の周囲温度を検知する第二センサと、
前記凝縮器および前記蒸発器のうち前記一方を流れる前記冷媒の飽和温度を検知、または前記飽和温度を算出するための圧力を検知する第三センサと、
前記第一センサ、前記第二センサ、および、前記第三センサの検知値から温度効率を算出する、あるいは、前記第二センサおよび前記第三センサの検知値、並びに、あらかじめ設定された温度効率閾値から出口温度閾値を算出する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記温度効率が前記温度効率閾値よりも高い場合、あるいは、前記第一センサの検知値と前記出口温度閾値との比較結果により、前記第一センサが異常であると判定する
冷凍空調装置。
【請求項2】
前記第一センサは、前記凝縮器の出口温度を検知し、前記第二センサは、前記凝縮器の周囲温度を検知し、前記第三センサは、凝縮温度を検知するものであり、
前記制御装置は、
前記第一センサの検知値が前記出口温度閾値よりも低い場合、前記第一センサが異常であると判定する
請求項1に記載の冷凍空調装置。
【請求項3】
前記第一センサは、前記蒸発器の出口温度を検知し、前記第二センサは、前記蒸発器の周囲温度を検知し、前記第三センサは、蒸発温度を検知するものであり、
前記制御装置は、
前記第一センサの検知値が前記出口温度閾値よりも高い場合、前記第一センサが異常であると判定する
請求項1に記載の冷凍空調装置。
【請求項4】
前記第三センサは、
前記圧縮機の吐出側に設けられた圧力センサ、または前記凝縮器を構成する伝熱管に設けられた温度センサである
請求項2に記載の冷凍空調装置。
【請求項5】
前記第三センサは、
前記圧縮機の吸入側に設けられた圧力センサ、または前記蒸発器を構成する伝熱管に設けられた温度センサである
請求項3に記載の冷凍空調装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記第一センサが異常である場合、
圧縮機周波数を増速させない
請求項1~5のいずれか一項に記載の冷凍空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度センサを備えた冷凍空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置などの冷凍空調装置に設けられた圧力センサおよび温度センサの異常検知を行う技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、蒸発器に設置した温度センサが検知する冷媒温度に基づいて冷媒の蒸発圧力を求め、この蒸発圧力と圧力センサが検知する冷媒圧力とを比較し、その演算値が所定範囲を外れるとき、圧力センサおよび温度センサのうち少なくとも一方が異常であると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-313125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、圧力センサおよび温度センサのうち少なくとも一方が異常であると判定することができるが、どちらのセンサが異常であるかは判定できない。そのため、温度センサが異常であったとしてもその特定ができないという課題があった。
【0006】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたもので、温度センサに異常が発生していることを特定することができる冷凍空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る冷凍空調装置は、圧縮機、凝縮器、絞り装置、および、蒸発器が配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路と、前記凝縮器および前記蒸発器のうち一方の出口温度を検知する第一センサと、前記凝縮器および前記蒸発器のうち前記一方の周囲温度を検知する第二センサと、前記凝縮器および前記蒸発器のうち前記一方を流れる前記冷媒の飽和温度を検知、または前記飽和温度を算出するための圧力を検知する第三センサと、前記第一センサ、前記第二センサ、および、前記第三センサの検知値から温度効率を算出する、あるいは、前記第二センサおよび前記第三センサの検知値、並びに、あらかじめ設定された温度効率閾値から出口温度閾値を算出する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記温度効率が前記温度効率閾値よりも高い場合、あるいは、前記第一センサの検知値と前記出口温度閾値との比較結果により、前記第一センサが異常であると判定するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る冷凍空調装置によれば、温度効率が温度効率閾値よりも高い場合、あるいは、第一センサの検知値と出口温度閾値との比較結果により、凝縮器または蒸発器の出口温度を検知する第一センサが異常であると判定する。このように、本開示に係る冷凍空調装置によれば、温度センサである第一センサに異常が発生していることを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る冷凍空調装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る冷凍空調装置の各センサが正常時の各センサの検知値を示す図である。
図3】実施の形態1に係る冷凍空調装置の凝縮器出口温度センサが異常時の各センサの検知値を示す図である。
図4】実施の形態1に係る冷凍空調装置のセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
図5】実施の形態1に係る冷凍空調装置の変形例によるセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る冷凍空調装置の構成を示す図である。
図7】実施の形態2に係る冷凍空調装置の各センサが正常時の各センサの検知値を示す図である。
図8】実施の形態2に係る冷凍空調装置の蒸発器出口温度センサが異常時の各センサの検知値を示す図である。
図9】実施の形態2に係る冷凍空調装置のセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
図10】実施の形態2に係る冷凍空調装置の変形例によるセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の構成を示す図である。
実施の形態1では、冷凍空調装置100として、図1に示すように、1台の室外機10に対して1台の室内機20が液管41およびガス管42(以下、冷媒配管と称する)で接続され、冷房運転を行う空気調和装置を例示している。なお、図1では冷凍空調装置100が1台の室内機20を備えた構成を示しているが、複数の室内機20を備えた構成でもよく、その場合は、室外機10に対して各室内機20が冷媒配管で並列に接続される。
【0012】
室外機10は、圧縮機11と、凝縮器12と、高圧圧力センサ16と、凝縮器出口温度センサ53と、凝縮器周囲温度センサ54とを備えている。なお、以下において、凝縮器出口温度センサ53は第一温度センサとも称し、凝縮器周囲温度センサ54は第二温度センサとも称し、高圧圧力センサ16は第三センサとも称する。
【0013】
室内機20は、絞り装置21と、蒸発器22とを備えている。
【0014】
冷凍空調装置100は、圧縮機11、凝縮器12、絞り装置21、および、蒸発器22が冷媒配管で環状に順次接続され、冷媒が循環する冷媒回路1を備えている。冷媒回路1には、共沸冷媒が封入されている。なお、冷媒回路1には、四方弁などの流路切替装置が接続されている構成でもよく、そのような構成にすることで、冷房運転に加えて暖房運転を行うことが可能となる。
【0015】
また、冷凍空調装置100は、制御装置30と、報知部36と、運転モード切替部37とを備えており、制御装置30には、報知部36および運転モード切替部37がそれぞれ接続されている。なお、報知部36および運転モード切替部37は、制御装置30の一部として制御装置30に備えられていてもよい。
【0016】
圧縮機11は、低温低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する流体機械である。圧縮機11が動作すると、冷媒回路1内を冷媒が循環する。圧縮機11は、例えば運転周波数の調整が可能なインバータ駆動式である。また、圧縮機11の動作は、制御装置30によって制御される。
【0017】
凝縮器12は、冷媒と室外空気との熱交換を行うものである。なお、凝縮器12の近傍にファン(図示せず)を設けてもよく、その場合はファンの回転数を変化させることにより風量を変化させ、室外空気への放熱量つまり熱交換量を変化させることができる。
【0018】
絞り装置21は、冷媒を断熱膨張させるものである。絞り装置21は、例えば電子式膨張弁あるいは温度式膨張弁などである。絞り装置21の開度は、蒸発器22の出口の過熱度が目標値に近づくように、制御装置30によって制御される。
【0019】
蒸発器22は、冷媒と室内空気との熱交換を行うものである。なお、蒸発器22の近傍にファン(図示せず)を設けてもよく、その場合はファンの回転数を変化させることにより風量を変化させ、室内空気からの吸熱量つまり熱交換量を変化させることができる。
【0020】
高圧圧力センサ16は、圧縮機11の吐出側に設けられており、圧縮機11の吐出側の冷媒の圧力を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。高圧圧力センサ16は、例えば冷媒の圧力をダイヤフラムで受け、油圧を介して感圧素子で検知し、圧力に応じた電気信号に変換して出力するものである。この高圧圧力センサ16が検知した圧力の検知値から、凝縮温度T(P16)が算出される。なお、高圧圧力センサ16の代わりに凝縮器12を構成する伝熱管の中間部分に設けられ、そこを流れる冷媒の温度、つまり凝縮温度T(P16)を検知する凝縮温度センサを設けてもよい。また、以下において、凝縮温度は飽和温度とも称する。
【0021】
凝縮器出口温度センサ53は、凝縮器12と絞り装置21との間に設けられており、凝縮器12の出口側の冷媒の温度T(53)(以下、凝縮器出口温度と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。凝縮器周囲温度センサ54は、凝縮器12の近傍に設けられており、凝縮器12の周囲の温度T(54)(以下、凝縮器周囲温度と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。凝縮器出口温度センサ53および凝縮器周囲温度センサ54は、例えば温度により抵抗値が変化するサーミスタである。
【0022】
制御装置30は、例えば、専用のハードウェア、または後述する記憶部31に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、プロセッサともいう)で構成される。
【0023】
制御装置30が専用のハードウェアである場合、制御装置30は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。制御装置30が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現してもよいし、各機能部を一つのハードウェアで実現してもよい。
【0024】
制御装置30がCPUの場合、制御装置30が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアはプログラムとして記述され、記憶部31に格納される。CPUは、記憶部31に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置30の各機能を実現する。
【0025】
なお、制御装置30の機能の一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0026】
制御装置30は、冷凍空調装置100に設けられた各種センサからの検知信号、および、リモコンなどの操作部(図示せず)からの操作信号などに基づいて、圧縮機11および絞り装置21などを制御し、冷凍空調装置100全体の動作を制御する。なお、制御装置30は、室外機10あるいは室内機20の内部に設けられていてもよいし、室外機10および室内機20の外部に設けられていてもよい。
【0027】
制御装置30は、センサ異常判定に関わる機能ブロックとして、記憶部31と、抽出部32と、演算部33と、比較部34と、判定部35とを備えている。ここで、センサ異常判定とは、冷凍空調装置100において、温度センサに異常が発生しているかどうかを判定することである。
【0028】
記憶部31は、各種情報を記憶するものであり、例えば、フラッシュメモリ、EPROM、および、EEPROMなどの、データの書き換え可能な不揮発性の半導体メモリを備えている。なお、記憶部31は、その他に、例えばROMなどのデータの書き換え不可能な不揮発性の半導体メモリ、あるいは、RAMなどのデータの書き換え可能な揮発性の半導体メモリなどを備えていてもよい。記憶部31は、例えば各センサのそれぞれで検知された温度データおよび圧力データを記憶する。なお、これら温度データおよび圧力データは、冷凍空調装置100の運転中に定期的に取得される。また、記憶部31は、後述する各閾値を記憶する。
【0029】
抽出部32は、記憶部31に記憶されたデータの中から、各センサの検知値などセンサ異常判定に必要となるデータを抽出するものである。ここで、センサ異常判定には、圧縮機11が運転しているときのデータが用いられる。これは、圧縮機11が運転していないときには、センサ異常が発生しているかどうかの判定を正しく行うことができないためである。
【0030】
演算部33は、抽出部32で抽出されたデータに基づき、必要な演算を行うものである。この演算部33は、例えば、高圧圧力センサ16が検知した圧力データから、凝縮温度T(P16)を算出する。
【0031】
比較部34は、演算部33での演算により得られた値とあらかじめ設定された閾値などとの比較、あるいは演算部33での演算により得られた値同士の比較を行うものである。
【0032】
判定部35は、比較部34での比較結果に基づき、例えば凝縮器出口温度センサ53に異常が発生しているかどうかの判定などを行うものである。
【0033】
報知部36は、制御装置30からの指令により、異常発生などの各種情報を報知するものである。報知部36は、表示灯あるいはモニターなどの情報を視覚的に報知する表示手段、および、スピーカーなどの情報を聴覚的に報知する音声出力手段のうち、少なくとも一方を備えている。
【0034】
運転モード切替部37は、ユーザーによる運転モードの切替操作を受け付けるものである。運転モード切替部37は、例えば上記の操作部に設けることができる。運転モード切替部37で運転モードの切替操作が行われると、運転モード切替部37から制御装置30に対して信号が出力され、制御装置30は、その信号に基づいて運転モードを切り替える。制御装置30は、運転モードとして、少なくとも通常運転モードとセンサ異常判定モードとを有している。
【0035】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の通常運転モード時の運転動作について説明する。
【0036】
圧縮機11から吐出した高温高圧のガス冷媒は、凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入したガス冷媒は、そこで室外空気と熱交換し、凝縮して高圧の液冷媒となって凝縮器12から流出する。凝縮器12から流出した液冷媒は、絞り装置21によって減圧され、低圧の二層冷媒となって蒸発器22に流入する。そして、蒸発器22に流入した二層冷媒は、そこで室内空気と熱交換し、蒸発して低温低圧のガス冷媒となって蒸発器22から流出する。蒸発器22から流出したガス冷媒は、圧縮機11に吸入され、そこで再び高温高圧のガス冷媒となって吐出される。
【0037】
次に、凝縮器出口温度センサ53の異常発生要因について説明する。
【0038】
凝縮器出口温度センサ53は、凝縮器12の出口側の冷媒の温度を正確に検知するため、凝縮器12の出口側の配管(以下、出口側配管と称する)に密接している。さらに、凝縮器出口温度センサ53は、凝縮器12の周囲温度の影響を受けないように、出口側配管とともに断熱材によって断熱されている。そのため、凝縮器出口温度センサ53の異常発生要因としては、経年劣化により断熱材が劣化して断熱性能が低下したり、断熱材が剥がれ落ちたり、あるいは凝縮器出口温度センサ53と出口側配管との間に隙間が生じたりすることで、凝縮器12の周囲温度の影響を受けやすくなることが考えられる。この異常が発生すると、凝縮器出口温度センサ53の検知値が正常値から徐々に低下するため、異常判定しにくい。
【0039】
なお、凝縮器12の入口側の空気に比べて凝縮器12の出口側の空気は、凝縮器12で熱交換した分だけ温度が高くなるため、凝縮器12の周囲温度は位置により多少変化する。このため、上記の異常が発生したときの、凝縮器出口温度センサ53の検知値への凝縮器12の周囲温度の影響の度合いは、凝縮器出口温度センサ53の位置により異なる。
【0040】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の凝縮器出口温度センサ53の異常検知方法について説明する。
【0041】
図2は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の各センサが正常時の各センサの検知値を示す図である。図3は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の凝縮器出口温度センサ53が異常時の各センサの検知値を示す図である。
【0042】
各センサの検知値が正常である場合、図2に示すように、T(54n)、T(53n)、T(P16n)の関係は、下記となる。ここで、T(54n)は、正常時の凝縮器周囲温度センサ54が検知した凝縮器周囲温度であり、T(53n)は、正常時の凝縮器出口温度センサ53が検知した凝縮器出口温度である。また、T(P16n)は、正常時の高圧圧力センサ16が検知した圧力から算出した凝縮温度である。
【0043】
T(54n)≦T(53n)≦T(P16n)
【0044】
次に、凝縮器出口温度センサ53が異常である場合、図3に示すように、T(53a)とT(53n)との関係は、下記となる。ここで、T(53a)は、異常時の凝縮器出口温度センサ53が検知した凝縮器出口温度である。
【0045】
T(53a)<T(53n)
【0046】
これは、凝縮器出口温度センサ53に上述のような異常が発生すると、凝縮器出口温度センサ53の検知値が、凝縮器周囲温度の影響を受け、凝縮器周囲温度センサ54の検知値に近づくように、正常値から徐々に低下するためである。
【0047】
ここで、凝縮器12は、温度効率ηcondという指標を用いて設計することができ、ηcondは、下記の式(1)で表すことができる。
【0048】
ηcond=(T(P16)-T(53))/(T(P16)-T(54))・・・(1)
T(P16):凝縮温度[℃]
T(53):凝縮器出口温度[℃]
T(54):凝縮器周囲温度[℃]
【0049】
なお、各センサの検知値が正常である場合、温度効率ηcondがあらかじめ設定された温度効率閾値ηc_th、例えば0.7以内になるように、凝縮器12は設計される。なぜならば、温度効率ηcondが0.7くらいまでは凝縮器12で熱交換される空気と冷媒との温度差を大きく取ることができるため単位熱交換面積当たりの熱交換効率はよい。しかし、温度効率ηcondが0.7より高くなると凝縮器12で熱交換される空気と冷媒との温度差が小さくなり単位熱交換面積当たりの熱交換効率が低下するので、所望の熱交換能力を得るためには凝縮器12を拡大する必要があり、コストが増加する。そのため、コストを抑えるためには、凝縮器12を設計する際に、温度効率ηcondを0.7以内にすることが望ましい。
【0050】
そして、凝縮器出口温度センサ53が異常である場合、図3に示すように、T(53a)はT(54n)に近づき、その結果、温度効率ηcondは温度効率閾値ηc_thより高くなる。
【0051】
以上より、実施の形態1において、凝縮器出口温度センサ53の異常検知を行うために温度効率閾値ηc_thを設定し、温度効率ηcondを算出する。そして、温度効率ηcondが温度効率閾値ηc_thよりも高い場合は異常、温度効率ηcondが温度効率閾値ηc_th以下であれば正常と判定することができる。
【0052】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100のセンサ異常判定処理時の制御の流れについて説明する。
【0053】
図4は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100のセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
制御装置30は、所定の時間間隔毎に通常運転モードからセンサ異常判定モードに切り替え、以下に説明する異常判定の処理を行う。または、制御装置30は、運転モード切替部37からユーザーによる異常検知モードへの切替操作を受け付けたら、通常運転モードからセンサ異常判定モードに切り替え、以下に説明する異常判定の処理を行う。
【0054】
(ステップS101)
制御装置30は、圧縮機11が運転中であるかどうかを判定する。制御装置30が、圧縮機11が運転中であると判定した場合(YES)、処理はステップS102に進む。一方、制御装置30が、圧縮機11が運転中ではないと判定した場合(NO)、センサ異常判定処理は終了する。このように、圧縮機11が運転中ではない場合にセンサ異常判定処理が終了するのは、圧縮機11の運転中以外にセンサ異常判定処理を実行しても、センサの異常検知を正しく行うことができないためである。
【0055】
(ステップS102)
制御装置30は、過渡状態でないかどうかを判定する。ここで、過渡状態とは、例えば圧縮機11の起動時、または、絞り装置21の開度が大きく変動して高圧側に貯留されている液冷媒量が変動する場合、などの運転動作が安定していない状態である。制御装置30が、過渡状態ではないと判定した場合(YES)、処理はステップS103に進む。一方、制御装置30が、過渡状態であると判定した場合(NO)、センサ異常判定処理は終了する。このように、過渡状態である場合にセンサ異常判定処理が終了するのは、過渡状態のときにセンサ異常判定処理を実行しても、センサの異常検知を正しく行うことができないためである。
【0056】
(ステップS103)
制御装置30は、高圧圧力センサ16、凝縮器出口温度センサ53、および、凝縮器周囲温度センサ54から検知値をそれぞれ取得する。なお、ステップS103の処理は、ステップS102の後に限定されず、ステップS101の前あるいはステップS102の前に行ってもよい。
【0057】
(ステップS104A)
制御装置30は、高圧圧力センサ16、凝縮器出口温度センサ53、および、凝縮器周囲温度センサ54の検知値に基づいて、温度効率ηcondを算出する。なお、温度効率ηcondの算出は、上記の式(1)を用いて行われる。その後、処理はステップS105Aに進む。
【0058】
(ステップS105A)
制御装置30は、温度効率ηcondがあらかじめ設定された温度効率閾値ηc_thよりも高いかどうかを判定する。制御装置30が、温度効率ηcondが温度効率閾値ηc_thよりも高いと判定した場合(YES)、処理はステップS106に進む。一方、制御装置30が、温度効率ηcondが温度効率閾値ηc_thよりも高くないと判定した場合(NO)、処理はステップS107に進む。
【0059】
(ステップS106)
制御装置30は、凝縮器出口温度センサ53が異常であると判定し、報知部36により、凝縮器出口温度センサ53が異常である旨を報知する。その後、センサ異常判定処理は終了する。
【0060】
(ステップS107)
制御装置30は、各センサが正常であると判定し、センサ異常判定処理は終了する。
【0061】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100のセンサ異常検知後の処理について説明する。
凝縮器出口温度センサ53に異常が発生して検知値が低くなった場合、冷凍空調装置100への影響があるため、できるだけ早く凝縮器出口温度センサ53を交換あるいはメンテナンスすることが望ましい。ただし、凝縮器出口温度センサ53の交換あるいはメンテナンスを行えない場合は、以下の制限を設けて運転を行う。
【0062】
凝縮器出口温度センサ53は、冷媒の漏洩検知に用いられる重要なセンサである。そのため、凝縮器出口温度センサ53の検知値が異常である場合、制御装置30は、上記の冷媒の漏洩検知の処理を行わない。
【0063】
また、センサ異常の発生時に圧縮機11を増速させると冷媒が高圧側に貯留されて高圧圧力が高くなり、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、制御装置30は、凝縮器出口温度センサ53の異常の発生を検知したら、圧縮機周波数を増速させないようにする。また、凝縮器出口温度センサ53の異常の発生時に絞り装置21を開きすぎると蒸発器22で冷媒が蒸発しないまま圧縮機11に吸入されてしまい、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、制御装置30は、凝縮器出口温度センサ53の異常の発生を検知したら、絞り装置21を過剰に開かないようにする。
【0064】
次に、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の変形例について説明する。
【0065】
実施の形態1に係る冷凍空調装置100では、センサ異常判定モードにおいて、温度効率ηcondを用いてセンサ異常判定処理を行っているが、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の変形例では、凝縮器出口温度閾値Tcd_thを用いてセンサ異常判定処理を行う。
【0066】
ここで、凝縮器出口温度閾値Tcd_thは、下記の式(2)によって算出することができる。
【0067】
Tcd_th=T(P16)-ηc_th×(T(P16)-T(54))・・・・・(2)
T(P16):凝縮温度[℃]
T(54):凝縮器周囲温度[℃]
ηc_th:温度効率閾値[-]
【0068】
なお、上記の式(2)は、式(1)においてηcondにηc_thを入力し、T(53)にTcd_thを入力することで得られる。
【0069】
以上より、実施の形態1の変形例において、凝縮器出口温度センサ53の異常検知を行うためには温度効率閾値ηc_thを設定し、凝縮器出口温度閾値Tcd_thを算出する。そして、凝縮器出口温度センサ53の検知値が凝縮器出口温度閾値Tcd_thよりも低い場合は異常、凝縮器出口温度センサ53の検知値が凝縮器出口温度閾値Tcd_th以上であれば正常と判定することができる。
【0070】
図5は、実施の形態1に係る冷凍空調装置100の変形例によるセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
【0071】
なお、図5のステップS101~S103、S106~S107についてはすでに説明したものと同じ処理のため、それらの説明を省略する。ただし、図5のステップS103では、上記のステップS103の説明において、「処理はステップS104Aに進む。」を「処理はステップS104Bに進む。」に読み替えるものとする。
【0072】
(ステップS104B)
制御装置30は、凝縮器出口温度閾値Tcd_thを算出する。なお、凝縮器出口温度閾値Tcd_thの算出は、上記の式(2)を用いて行われる。その後、処理はステップS105Bに進む。
【0073】
(ステップS105B)
制御装置30は、凝縮器出口温度センサ53の検知値である凝縮器出口温度T(53)が凝縮器出口温度閾値Tcd_thより低いかどうかを判定する。制御装置30が、凝縮器出口温度T(53)が凝縮器出口温度閾値Tcd_thよりも低いと判定した場合(YES)、処理はステップS106に進む。一方、制御装置30が、凝縮器出口温度T(53)が凝縮器出口温度閾値Tcd_thよりも低くないと判定した場合(NO)、処理はステップS107に進む。
【0074】
以上、実施の形態1に係る冷凍空調装置100は、圧縮機11、凝縮器12、絞り装置21、および、蒸発器22が配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路1と、凝縮器12および蒸発器22のうち一方の出口温度を検知する第一センサと、凝縮器12および蒸発器22のうち一方の周囲温度を検知する第二センサと、凝縮器12および蒸発器22のうち一方を流れる冷媒の飽和温度を検知、または飽和温度を算出するための圧力を検知する第三センサと、第一センサ、第二センサ、および、第三センサの検知値から温度効率を算出する、あるいは、第二センサおよび第三センサの検知値、並びに、あらかじめ設定された温度効率閾値から出口温度閾値を算出する制御装置30と、を備えている。そして、制御装置30は、温度効率が温度効率閾値よりも高い場合、あるいは、第一センサの検知値と出口温度閾値との比較結果により、第一センサが異常であると判定するものである。
【0075】
実施の形態1に係る冷凍空調装置100によれば、温度効率が温度効率閾値よりも高い場合、あるいは、第一センサの検知値と出口温度閾値との比較結果により、凝縮器12または蒸発器22の出口温度を検知する第一センサが異常であると判定する。このように、実施の形態1に係る冷凍空調装置100によれば、温度センサである第一センサに異常が発生していることを特定することができる。
【0076】
また、実施の形態1に係る冷凍空調装置100において、第一センサは、凝縮器12の出口温度を検知し、第二センサは、凝縮器12の周囲温度を検知し、第三センサは、凝縮温度を検知するものである。そして、制御装置30は、第一センサの検知値が出口温度閾値よりも低い場合、第一センサが異常であると判定するものである。
【0077】
実施の形態1に係る冷凍空調装置100によれば、凝縮器12の出口温度を検知する第一センサである凝縮器出口温度センサ53に異常が発生していることを特定することができる。
【0078】
また、実施の形態1に係る冷凍空調装置100において、制御装置30は、第一センサが異常である場合、圧縮機周波数を増速させない。
【0079】
実施の形態1に係る冷凍空調装置100によれば、冷凍空調装置100が故障するのを回避することができる。
【0080】
実施の形態2.
以下、実施の形態2について説明するが、実施の形態1と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0081】
図6は、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の構成を示す図である。
実施の形態2に係る冷凍空調装置100は、設けられているセンサが実施の形態1とは異なる。
【0082】
室外機10は、圧縮機11と、凝縮器12と、低圧圧力センサ18とを備えている。
【0083】
室内機20は、絞り装置21と、蒸発器22と、蒸発器出口温度センサ63と、蒸発器周囲温度センサ64とを備えている。なお、以下において、蒸発器出口温度センサ63は第一温度センサとも称し、蒸発器周囲温度センサ64は第二温度センサとも称し、低圧圧力センサ18は第三センサとも称する。
【0084】
低圧圧力センサ18は、圧縮機11の吸入側に設けられており、圧縮機11の吸入側の圧力を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。低圧圧力センサ18は、例えば冷媒の圧力をダイヤフラムで受け、油圧を介して感圧素子で検知し、圧力に応じた電気信号に変換して出力するものである。この低圧圧力センサ18が検知した圧力から、蒸発温度T(P18)が算出される。なお、低圧圧力センサ18の代わりに蒸発器22を構成する伝熱管の中間部分に設けられ、そこを流れる冷媒の温度、つまり蒸発温度T(P18)を検知する蒸発温度センサを設けてもよい。また、以下において、蒸発温度は飽和温度とも称する。
【0085】
蒸発器出口温度センサ63は、蒸発器22と圧縮機11との間に設けられており、蒸発器22の出口側の冷媒の温度T(63)(以下、蒸発器出口温度と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。蒸発器周囲温度センサ64は、蒸発器22の近傍に設けられており、蒸発器22の周囲の温度T(64)(以下、蒸発器周囲温度と称する)を検知し、検知信号を制御装置30に出力する。蒸発器出口温度センサ63および蒸発器周囲温度センサ64は、例えば温度により抵抗値が変化するサーミスタである。
【0086】
次に、蒸発器出口温度センサ63の異常発生要因について説明する。
【0087】
蒸発器出口温度センサ63は、蒸発器22の出口側の冷媒の温度を正確に検知するため、蒸発器22の出口側の配管(以下、出口側配管と称する)に密接している。さらに、蒸発器出口温度センサ63は、蒸発器22の周囲温度の影響を受けないように、出口側配管とともに断熱材によって断熱されている。そのため、蒸発器出口温度センサ63の異常発生要因としては、経年劣化により断熱材が劣化して断熱性能が低下したり、断熱材が剥がれ落ちたり、あるいは蒸発器出口温度センサ63と出口側配管との間に隙間が生じたりすることで、蒸発器22の周囲温度の影響を受けやすくなることが考えられる。この異常が発生すると、蒸発器出口温度センサ63の検知値が正常値から徐々に上昇するため、異常判定しにくい。
【0088】
なお、蒸発器22の入口側の空気に比べて蒸発器22の出口側の空気は、蒸発器22で熱交換した分だけ温度が低くなるため、蒸発器22の周囲温度は位置により多少変化する。このため、上記の異常が発生したときの、蒸発器出口温度センサ63の検知値への蒸発器22の周囲温度の影響度合いは、蒸発器出口温度センサ63の位置により異なる。
【0089】
次に、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の蒸発器出口温度センサ63の異常検知方法について説明する。
【0090】
図7は、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の各センサが正常時の各センサの検知値を示す図である。図8は、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の蒸発器出口温度センサ63が異常時の各センサの検知値を示す図である。
【0091】
各センサの検知値が正常である場合、図7に示すように、T(64n)、T(63n)、T(P18n)の関係は、下記となる。ここで、T(64n)は、正常時の蒸発器周囲温度センサ64が検知した蒸発器周囲温度であり、T(63n)は、正常時の蒸発器出口温度センサ63が検知した蒸発器出口温度である。また、T(P18n)は、正常時の低圧圧力センサ18が検知した圧力から算出した蒸発温度である。
【0092】
T(64n)≧T(63n)≧T(P18n)
【0093】
次に、蒸発器出口温度センサ63が異常である場合、図8に示すように、T(63a)とT(63n)との関係は、下記となる。ここで、T(63a)は、異常時の蒸発器出口温度センサ63が検知した蒸発器出口温度である。
【0094】
T(63a)>T(63n)
【0095】
これは、蒸発器出口温度センサ63に上述のような異常が発生すると、蒸発器出口温度センサ63の検知値が、蒸発器周囲温度の影響を受け、蒸発器出口温度センサ63の検知値に近づくように正常値から徐々に上昇するためである。
【0096】
ここで、蒸発器22は、温度効率ηevaという指標を用いて設計することができ、下記の式(3)で表すことができる。
【0097】
ηeva=(T(63)-T(P18))/(T(64)-T(P18))・・・(3)
T(P18):蒸発温度[℃]
T(63):蒸発器出口温度[℃]
T(64):蒸発器周囲温度[℃]
【0098】
各センサの検知値が正常である場合、温度効率ηevaがあらかじめ設定された温度効率閾値ηe_th、例えば0.5以内になるように、蒸発器22は設計される。なぜならば、蒸発器22の出口状態を過熱ガス化しすぎると熱交換効率が低下してしまい、また、蒸発器22は室内機20に搭載されるためできるだけ小さい方が望ましい。そのため、蒸発器22の小型化と高性能化とを両立するためには、温度効率ηevaを0.5以内にすることが望ましい。
【0099】
そして、蒸発器出口温度センサ63が異常である場合、図8に示すように、T(63a)はT(64n)に近づき、その結果、温度効率ηevaは温度効率閾値ηe_thより高くなる。
【0100】
以上より、実施の形態2において、蒸発器出口温度センサ63の異常検知を行うために温度効率閾値ηe_thを設定し、温度効率ηevaを算出する。そして、温度効率ηevaが温度効率閾値ηe_thよりも高い場合は異常、温度効率ηevaが温度効率閾値ηe_th以下であれば正常と判定することができる。
【0101】
次に、実施の形態2に係る冷凍空調装置100のセンサ異常判定処理時の制御の流れについて説明する。
【0102】
図9は、実施の形態2に係る冷凍空調装置100のセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
制御装置30は、所定の時間間隔毎に通常運転モードからセンサ異常判定モードに切り替え、以下に説明する異常判定の処理を行う。または、制御装置30は、運転モード切替部37からユーザーによる異常検知モードへの切替操作を受け付けたら、通常運転モードからセンサ異常判定モードに切り替え、以下に説明する異常判定の処理を行う。
【0103】
(ステップS201)
制御装置30は、圧縮機11が運転中であるかどうかを判定する。制御装置30が、圧縮機11が運転中であると判定した場合(YES)、処理はステップS202に進む。一方、制御装置30が、圧縮機11が運転中ではないと判定した場合(NO)、センサ異常判定処理は終了する。このように、圧縮機11が運転中ではない場合にセンサ異常判定処理が終了するのは、圧縮機11の運転中以外にセンサ異常判定処理を実行しても、センサの異常検知を正しく行うことができないためである。
【0104】
(ステップS202)
制御装置30は、過渡状態でないかどうかを判定する。ここで、過渡状態とは、例えば圧縮機11の起動時、または、絞り装置21の開度が大きく変動して高圧側に貯留されている液冷媒量が変動する場合、などの運転動作が安定していない状態である。制御装置30が、過渡状態ではないと判定した場合(YES)、処理はステップS203に進む。一方、制御装置30が、過渡状態であると判定した場合(NO)、センサ異常判定処理は終了する。このように、過渡状態である場合にセンサ異常判定処理が終了するのは、過渡状態のときにセンサ異常判定処理を実行しても、センサの異常検知を正しく行うことができないためである。
【0105】
(ステップS203)
制御装置30は、低圧圧力センサ18、蒸発器出口温度センサ63、および、蒸発器周囲温度センサ64から検知値をそれぞれ取得する。なお、ステップS203の処理は、ステップS202の後に限定されず、ステップS201の前あるいはステップS202の前に行ってもよい。
【0106】
(ステップS204A)
制御装置30は、低圧圧力センサ18、蒸発器出口温度センサ63、および、蒸発器周囲温度センサ64の検知値に基づいて、温度効率ηevaを算出する。なお、温度効率ηevaの算出は、上記の式(3)を用いて行われる。その後、処理はステップS205Aに進む。
【0107】
(ステップS205A)
制御装置30は、温度効率ηevaがあらかじめ設定された温度効率閾値ηe_thよりも高いかどうかを判定する。制御装置30が、温度効率ηevaが温度効率閾値ηe_thよりも高いと判定した場合(YES)、処理はステップS206に進む。一方、制御装置30が、温度効率ηevaが温度効率閾値ηe_thよりも高くないと判定した場合(NO)、処理はステップS207に進む。
【0108】
(ステップS206)
制御装置30は、蒸発器出口温度センサ63が異常であると判定し、報知部36により、蒸発器出口温度センサ63が異常である旨を報知する。その後、センサ異常判定処理は終了する。
【0109】
(ステップS207)
制御装置30は、各センサが正常であると判定し、センサ異常判定処理は終了する。
【0110】
次に、実施の形態2に係る冷凍空調装置100のセンサ異常検知後の処理について説明する。
蒸発器出口温度センサ63に異常が発生して検知値が低くなった場合、冷凍空調装置100への影響があるため、できるだけ早く蒸発器出口温度センサ63を交換あるいはメンテナンスすることが望ましい。ただし、蒸発器出口温度センサ63の交換あるいはメンテナンスを行えない場合は、以下の制限を設けて運転を行う。
【0111】
蒸発器出口温度センサ63は、絞り装置21の異常検知および蒸発器22の伝熱不良検知に用いられる重要なセンサである。そのため、蒸発器出口温度センサ63の検知値が異常である場合、制御装置30は、上記の絞り装置21の異常検知および蒸発器22の伝熱不良検知の処理を行わない。
【0112】
また、センサ異常の発生時に圧縮機11を増速させると冷媒が高圧側に貯留されて高圧圧力が高くなり、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、制御装置30は、蒸発器出口温度センサ63の異常の発生を検知したら、圧縮機周波数を増速させないようにする。また、蒸発器出口温度センサ63の異常の発生時に絞り装置21を開きすぎると蒸発器22で冷媒が蒸発しないまま圧縮機11に吸入されてしまい、冷凍空調装置100が故障する恐れがあるため、制御装置30は、蒸発器出口温度センサ63の異常の発生を検知したら、絞り装置21を過剰に開かないようにする。
【0113】
次に、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の変形例について説明する。
【0114】
実施の形態2に係る冷凍空調装置100では、センサ異常判定モードにおいて、温度効率ηevaを用いてセンサ異常判定処理を行っているが、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の変形例では、蒸発器出口温度閾値Ted_thを用いてセンサ異常判定処理を行う。
【0115】
ここで、蒸発器出口温度閾値Ted_thは、下記の式によって算出することができる。
【0116】
Ted_th=T(P18)+ηe_th×(T(64)-T(P18))・・・・・(4)
T(P18):蒸発温度[℃]
T(64):蒸発器周囲温度[℃]
ηe_th:温度効率閾値[-]
【0117】
なお、上記の式(4)は、式(3)においてηevaにηe_thを入力し、T(63)にTed_thを入力することで得られる。
【0118】
以上より、実施の形態2の変形例において、蒸発器出口温度センサ63の異常検知を行うためには温度効率閾値ηe_thを設定し、蒸発器出口温度閾値Ted_thを算出する。そして、蒸発器出口温度センサ63の検知値が蒸発器出口温度閾値Ted_thよりも高い場合は異常、蒸発器出口温度センサ63の検知値が蒸発器出口温度閾値Ted_th以下であれば正常と判定することができる。
【0119】
図10は、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の変形例によるセンサ異常判定モード時の制御の流れを示すフローチャートである。
【0120】
なお、図9のステップS201~S203、S206~S207についてはすでに説明したものと同じ処理のため、それらの説明を省略する。ただし、図10のステップS203では、上記のステップS203の説明において、「処理はステップS204Aに進む。」を「処理はステップS204Bに進む。」に読み替えるものとする。
【0121】
(ステップS204B)
制御装置30は、蒸発器出口温度閾値Ted_thを算出する。なお、蒸発器出口温度閾値Ted_thの算出は、上記の式(4)を用いて行われる。その後、処理はステップS205Bに進む。
【0122】
(ステップS205B)
制御装置30は、蒸発器出口温度センサ63の検知値である蒸発器出口温度T(63)が蒸発器出口温度閾値Ted_thよりも高いかどうかを判定する。制御装置30が、蒸発器出口温度T(63)が蒸発器出口温度閾値Ted_thよりも高いと判定した場合(YES)、処理はステップS206に進む。一方、制御装置30が、蒸発器出口温度T(63)が蒸発器出口温度閾値Ted_thよりも高くないと判定した場合(NO)、処理はステップS207に進む。
【0123】
以上のように、実施の形態2に係る冷凍空調装置100の変形例では、蒸発器出口温度閾値Ted_thを用いてセンサ異常判定処理を行う。そのため、冷凍空調装置100が、共通の温度効率閾値ηe_thを有する複数の室内機20が並列に接続されたマルチ型である場合、温度効率閾値ηe_thと蒸発温度と周囲温度とで算出される蒸発器出口温度閾値Ted_thを1度計算すれば、その蒸発器出口温度閾値Ted_thを全ての室内機20の判定に使用できるので、演算量を減らすことができる。
【0124】
以上、実施の形態2に係る冷凍空調装置100において、第一センサは、蒸発器22の出口温度を検知し、第二センサは、蒸発器22の周囲温度を検知し、第三センサは、蒸発温度を検知するものである。そして、制御装置30は、第一センサの検知値が出口温度閾値よりも低い場合、第一センサが異常であると判定するものである。
【0125】
実施の形態2に係る冷凍空調装置100によれば、蒸発器22の出口温度を検知する第一センサである蒸発器出口温度センサ63の異常を特定することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 冷媒回路、10 室外機、11 圧縮機、12 凝縮器、16 高圧圧力センサ、18 低圧圧力センサ、20 室内機、21 絞り装置、22 蒸発器、30 制御装置、31 記憶部、32 抽出部、33 演算部、34 比較部、35 判定部、36 報知部、37 運転モード切替部、41 液管、42 ガス管、53 凝縮器出口温度センサ、54 凝縮器周囲温度センサ、63 蒸発器出口温度センサ、64 蒸発器周囲温度センサ、100 冷凍空調装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10