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特許7641487キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20250228BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20250228BHJP
   A61K 31/711 20060101ALN20250228BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
A61K31/711
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023529054
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2021083158
(87)【国際公開番号】W WO2022112498
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/083716
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】525037860
【氏名又は名称】キュアバック マニュファクチャリング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CureVac Manufacturing GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】520470338
【氏名又は名称】テスラ オートメーション ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Tesla Automation GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヤズダン パナ、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ルース、ティルマン
(72)【発明者】
【氏名】ブオブ、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】グラカ、テルモ
(72)【発明者】
【氏名】トーメン、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ベルチュ、フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】コーレン、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラウエン、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ショルテス、ニコ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー、ヴェロニカ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0034688(US,A1)
【文献】特開2016-120138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNAを増幅するためのデバイス(1)であって
PCR液を導くためのチューブ(6)と、
第1の区画(7)と、
第2の区画(8)と、
第3の区画(15)と、を備え、
前記チューブ(6)が、前記第1の区画(7)を通って前記第1の区画(7)から前記第2の区画(8)へ、前記第2の区画(8)を通って前記第2の区画(8)から前記第3の区画(15)へ、前記第3の区画(15)を通って前記第3の区画(15)から前記第1の区画(7)へと巻かれており、区画から区画へと巻かれた前記チューブ(6)が、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成し、各チューブ巻回が、1回のPCRサイクルを表し、前記チューブ(6)が、PCR液入口(20)及びDNA産物出口(25)を備え、
前記第1の区画(7)、前記第2の区画(8)、及び前記第3の区画(15)が、それぞれ、区画内の温度を調節してPCR液に基づいたDNA産物を調製する手段を備え、第1の区画が、変性のための温度を提供するように構成され、前記第2の区画(8)が、アニーリングのための温度を提供するように構成され、前記第3の区画(15)が、伸長のための温度を提供するように構成され、
隔壁(14)が、区画同士の間に配置され、区画を互いに隔離しており、前記隔壁(14)が、前記チューブ(6)が1つの区画から次の区画に延びるための貫通孔を備える、デバイス(1)。
【請求項2】
前記PCR液入口(20)が、前記チューブ(6)を通してPCR液を圧送するためのポンプユニットに接続可能である、請求項1に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【請求項3】
各区画が、各区画内の温度を調節するための手段として、加熱ユニット(31
)及び任意選択で冷却ユニット(32、33)を備えるか、または
各区画が、各区画内の温度を調節するための手段として、すなわち、前記第1の区画(7)、前記第2の区画(8)、及び前記第3の区画(15)を通る別個の熱媒体流を提供して、前記第1の区画(7)、前記第2の区画(8)、及び前記第3の区画(15)内の別個の温度を調節するための手段として、熱媒体入口(12)及び熱媒体出口(13)を備える、請求項1又は2に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【請求項4】
前記チューブ(6)が、区画の各々の内部で波状に延びている、請求項1~3のいずれか1項に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【請求項5】
各区画が、熱媒体又は熱固体で充填される槽を形成している、請求項1~4のいずれか1項に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【請求項6】
前記チューブ(6)の固定点及び/又は前記チューブ(6)の波形の偏移点を提供するために区画のうちの1つに配置された少なくともスタンド(17)を更に備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【請求項7】
前記スタンド(17)が、交換可能及び/又は区画内で再配置可能である、請求項6に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【請求項8】
前記チューブ(6)が、約0.5mm~約50mmの範囲の直径を有し、及び又は
前記チューブ(6)が、約10m~約200mの範囲のチューブ入口とチューブ出口との間の長さを有し、及び又は
前記チューブ(6)が、約10mL~約500mLの範囲のPCR液を収容するように寸法設定されている、請求項1~7のいずれか1項に記載DNAを増幅するためのデバイス(1)。
【請求項9】
チューブ巻回の螺旋状スタックが、約10個~約50個の巻回を備える、請求項1~8のいずれか1項に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)を備える製造デバイス(10)は、更に、
処理チャンバ(2)及び技術チャンバ(3)と、
処理チャンバ(2)を通るガス流をガスシャワーとして制御するように構成された制御ユニットと、
備える、製造デバイス(10)。
【請求項11】
前記処理チャンバ(2)を前記技術チャンバ(3)から分離する分離要素(4)を更に備え、前記分離要素(4)が、処理チャンバ(2)に向かう開口部を有する、前記技術チャンバ(3)の方向に突出した付属部(16)を備え、DNAを増幅するためのデバイス(1)が、前記付属部(16)に挿入可能である、請求項10に記載の製造デバイス(10)。
【請求項12】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNAを増幅するための方法であって、
第1の区画(7)、第2の区画(8)、第3の区画(15)、及びチューブ(6)を準備することであって、チューブ(6)が、前記第1の区画(7)を通って前記第1の区画(7)から前記第2の区画(8)へ、前記第2の区画(8)を通って前記第2の区画(8)から前記第3の区画(15)へ、前記第3の区画(15)を通って前記第3の区画(15)から前記第1の区画(7)へと巻かれており、区画から区画へと巻かれた前記チューブ(6)が、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成しており、隔壁(14)が、区画同士の間に配置され、区画を互いに隔離しており、前記隔壁(14)が、チューブ(6)が1つの区画から次の区画に延びるための貫通孔を備える、ことと、
各区画内の別個の温度を調節するための手段を準備することと、
前記チューブ(6)を通してPCR液を導き、それによって各区画内の別個の温度を通してPCR液を導き、PCR液に基づいたDNA産物を調製することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記第1の区画(7)内の温度が、変性のためのものであり、約85℃~約105℃の範囲内、及び又は
前記第2の区画(8)内の温度が、アニーリングのためのものであり、約45℃~約72℃の範囲内であり、及び又は
前記第3の区画(15)内の温度が、伸長のためのものであり、約65℃~約75℃の範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための、請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス(1)の使用。
【請求項15】
医薬品の生産のための、請求項10又は11に記載の製造デバイス(10)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスと、医薬品の製造デバイスと、医薬品の製造モジュールと、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための方法と、ポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスの使用と、医薬品の生産のためのデバイスの使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子の形態の医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient、API)は、今日、様々な疾患の治療において大規模に使用されている。このような生体分子は、例えば、治療用抗体、ペプチド、及び核酸である。治療用核酸には、DNA分子及びRNA分子が含まれる。
【0003】
RNAは、新たなクラスの薬物を代表する。RNAベースの治療剤には、ワクチンとして使用するための抗原をコードするmRNA分子が含まれる。RNAの製造には、典型的には、RNAインビトロ転写反応においてDNA鋳型が使用される。このようなDNA鋳型は、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)によって得ることができる。したがって、PCRによるDNAの増幅という意味でのDNAの産生は、APIとしてのRNAの製造にとって重要な工程である。
【0004】
更に、DNAそれ自体がAPIとして機能してもよく、例えばコロナウイルスに対するDNAワクチンが現在臨床開発中である。DNAを大量に製造するために、すなわちDNAを増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することができる。
【0005】
規制当局によって承認された核酸の形態のAPIについて現在確立されている製造プロセスでは、典型的には、多くの別々の製造工程を実行し、それらの工程の全てがGMP規格に準拠していなければならない。このような工程は、典型的には、GMPに準拠した部屋で行われ、これらの部屋は、生産工場内に存在していることから、持ち運びができない。更に、それらの部屋は、典型的には、特定の生体分子の産生のために設定されていることから、柔軟性に欠けており、別の核酸を産生する必要がある場合には、かなり広い大きな範囲で構築し直す必要がある。要約すると、APIグレードの核酸の製造には、十分に訓練された技術者によって実行される、柔軟性に欠ける固定された、GMP規制された実験室での大規模な手作業が必要となる。その結果、現在確立されている製造プロセスは、時間がかかり、コストが集中して、多くの実験室空間及び実験室機器を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上で概説したように、APIとしての又はAPIの製造プロセス時の中間体としての核酸、具体的には、DNA及びRNAの一般的な製造プロセスに関して、そのプロセスは、かなり柔軟性に欠けており、持ち運びができず、典型的には、十分に訓練された技術者のかなりの程度の手作業を必要とするという課題がある。したがって、特にDNAを調製/増幅するための改善されたデバイス、及びそのようなデバイスを備える、より柔軟性のある対応する製造デバイスを提供する必要がある。製造デバイスは、具体的には、GMPに準拠した条件下で操作され、持ち運び可能であり、及び/又は自動化されているという利点を提供する必要がある。このような製造デバイスは、API(例えば、DNA)又は中間体(例えば、RNA産生のための鋳型として機能し得るDNAであって、RNAがAPIであるDNA)を製造するための時間を著しく短縮し、このことは、ウイルスが発生(例えば、パンデミック発生又は局所的発生)している状況において、特に重要となる。このような持ち運び可能型API/中間体製造デバイス(具体的にはDNAを調製/増幅するためのデバイスを備え、このデバイスは、「PCT反応器」と呼ばれることがある)は、世界中のパンデミックホットスポット地域に容易に輸送され、設置され、及び操作されることから、当該地域におけるワクチンの迅速な生産が可能になる。したがって、本発明の製造デバイスが、GMPに準拠した条件下で核酸API/中間体を産生するように構成されること、及び対応する「PCR反応器」がこのような製造デバイスにおいて動作可能であるように構成されることが、最も重要である。
【0007】
上記の課題は、独立請求項の主題によって解決され、それらの更なる実施形態は従属請求項において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNA産物を調製するためのデバイスを対象とする。「キャピラリーPCRによってDNA産物を調製する」は、代替的に「キャピラリーPCRによってDNAを増幅する」又は「PCRによってDNAを増幅する」と言うこともできる。デバイスは、PCR液を導くためのチューブと、第1の区画と、少なくとも第2の区画とを備える。チューブは、少なくとも第1の区画から第2の区画へ、及び第2の区画から第1の区画へと(戻るように)巻かれており、区画から区画へと巻かれたチューブは、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成している。典型的には、各チューブ巻回は、1回のPCRサイクルを表す。第1の区画及び第2の区画が、それぞれ、区画内の温度を調節してPCR液に基づいたDNA産物を調製する手段を備え、第1の区画が、変性のための温度を提供するように構成され、第2の区画が、アニーリング及び/又は伸長のための温度を提供するように構成される。
【0009】
好ましい実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNA産物を調製するためのデバイスは、マイクロ流体デバイスではなく、あるいは、マイクロ流体デバイスとして動作するように寸法設定されていない。好ましい実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNA産物を調製するためのデバイスは、分析用PCRデバイスとして動作するように寸法設定又は構成されていない。好ましい実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNA産物を調製するためのデバイスは、DNAの調製産生のための(例えば、1mgを超えるDNA産物の産生のための、任意選択で、g量のDNAの産生、例えば、5gのDNAの産生のための)デバイスとして動作するように寸法設定又は構成されていない。連続モードで運転される場合、出力は本質的に無制限であるため、例えば、g量の非常に大量のDNA、具体的には、全体的な目的がRNAを産生することである場合、後続のRNAインビトロ転写反応において鋳型DNAとしての役割を果たすDNAを提供することができる。
【0010】
一実施形態では、デバイスは、デバイス内及び/又はデバイスに含まれるチューブ内のPCR液を再循環することが可能なようには構築されておらず、むしろ、上述のように、チューブは、チューブ巻回の螺旋状スタックに巻かれており、チューブは、どの位置においてもチューブの前の区間に接続されない(したがって、PCR液は、チューブの第1の端部でチューブに入り、全てのPCRサイクル中はチューブ内に留まり、形成されたDNA産物と共に第2の端部においてチューブから出る)。一実施形態では、デバイスは、PCR液の閉ループ(例えば、チューブによって、又はチューブを介して接続された反応タンクによって、形成され得る)を含まない。一実施形態では、デバイスは、弁に接続されたPCR液の閉ループを含んでおらず、弁は、PCR液及びDNA産物の流れが、それぞれ、デバイスを出る別個のチューブに流入することを可能にする。
【0011】
DNA産物は、APIに対応するDNA(例えば、DNAワクチン)、又は酵素的RNAインビトロ転写のためのDNA鋳型(したがって、APIとしてのRNAの中間体)であり得る。RNAインビトロ転写は、RNAが無細胞系で合成されるプロセスに関する。DNA鋳型とは、インビトロで転写されるRNA配列をコードする核酸配列を含むDNA分子である。DNA鋳型は、鋳型DNAによってコードされるRNAを産生するために、RNAインビトロ転写の鋳型として使用される。DNA鋳型は、APIを表すmRNAに転写されることができ、これは、脂質ナノ粒子へと製剤化されることができ、カプセル化されたmRNAが得られ、これは、最終薬物製品に更に製剤化され得る。したがって、DNA産物は、(DNAワクチンにおけるように)医薬品有効成分であってもよく、又はDNA産物は、医薬品有効成分としてmRNAに転写され得るDNA鋳型であってもよい(そのため、DNAはAPIではなく中間体である)。本発明の文脈におけるDNA産物とは、PCRによって得られるDNA、すなわち増幅されたDNAである。
【0012】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNA産物を調製する最速の方法のうちの1つである。典型的には、PCRは、実験室での使用及び規模に応じたPCRデバイスで行うことができる。これは、DNAを数桁にわたって合成的に増幅し、特定のDNA配列の数千~数百万のコピーを生成する、分子生物学における技術である。PCRは、DNA融解と、熱安定性DNAポリメラーゼを使用したDNAの酵素的複製とのために加熱と冷却とを繰り返すサイクルを含む熱サイクルに依存している。サイクルは、変性温度、アニーリング温度、及び伸長温度を含む。第1の区画及び第2の区画における別個の温度は、変性温度、アニーリング温度、及び/又は伸長温度のうちの1つであり得る。具体的なPCR技術としては、例えば、RT-PCR、ホットスタートPCR、ロングレンジPCR、RT-qPCRなどが挙げられる。
【0013】
キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応は、チューブ、パイプ、又はキャピラリー中で行われるPCRとして理解することができる。チューブ又はキャピラリーは、非常に薄くても、あるいは細くてもよいチューブ又はキャピラリーは、約0.5~約50mm、好ましくは約0.5mm~約1.5mm、より好ましくは約0.75~約1.25mmの範囲の非常に小さい直径を有し得る。好適には、キャピラリー又はチューブの直径は、PCRが進行している際に、すなわち、PCR液がPCR中にチューブを通って流れている/進行している際に、チューブ内のPCR液の迅速かつ効率的な温度変化を可能にするように構成される。本明細書に記載されるように、チューブは、異なる温度を提供するように構成された別々の区画を通過するため、チューブひいてはチューブ内のPCR液は、これらの異なる温度に曝露される。チューブ又はキャピラリー、特にその直径(又は外側寸法)は、PCR液を用いた毛細管作用又は毛細管効果を可能にするように構成され得る。毛細管作用又は毛細管効果は、液体が、狭い空間内を、重力のような外力の助けを借りずに、あるいはそれに逆らって流れる能力である。毛細管作用又は毛細管効果は、例えば、細いチューブ内、紙などの多孔質材料内、砂などのいくつかの非多孔質材料内での液体の吸い上げにおいて見ることができる。これは、液体と周囲の固体表面との間の分子間力によって生じる。チューブ又はキャピラリーの直径が十分に小さい場合、液体内の凝集によって引き起こされる表面張力と、液体とチューブ壁又はキャピラリー壁との間の接着力との組み合わせが、液体を進ませるように作用する。
【0014】
チューブは、少なくとも第1の区画から第2の区画へ、及び第2の区画から第1の区画へと(戻るように)巻かれている。「巻かれている」とは、2点間の最短距離である線(線分)を形成しないものとして理解することができる。代わりに、巻かれたチューブは、2点間の最短距離よりも長くすることができる。巻かれたチューブは、円形、曲線、又は波状の形状で延びていてもよい。チューブを巻く理由は、特定の区画におけるチューブの長さと、所定の流量とによって、区画の内部でPCR液が特定の温度に暴露される時間が決定されるためである。これは、チューブ内のPCR液がどのくらい長く、PCRに必要な特定の温度、例えば変性温度に曝露されるかを規定するものであり、この変性温度は、例えば、第1の区画に存在し得る。チューブが第1の区画を最短経路で通過して第2の区画に達する場合、第1の区画において提供される変性温度に暴露されるチューブの長さが短すぎて、最終的にDNAが十分に変性されないことがある。しかしながら、チューブが巻かれるように第1の区画を通過する場合、第1の区画において提供される変性温度に暴露されるチューブの長さは十分に長くなり、このチューブ区間を通過するPCR液は、十分な時間この温度に暴露され、最終的にDNAが十分に変性されることになる。
【0015】
本出願によるチューブが、1つ(又は複数)の反応混合物タンク、具体的には1つの反応混合物タンク(単数又は複数)にも接続しないことを理解することが重要である。言い換えれば、本出願によるチューブは、再循環をもたらすために、チューブが、反応混合物タンクから出発して、(異なる温度の)異なるタンクを通過した後、全く同じ反応混合物タンクに戻って来るという再循環経路を可能にするものではない。更に、チューブが、再循環経路を可能にする弁にも接続されていないことを理解することが重要である。
【0016】
PCR液は、反応液として理解することができ、この反応液は、PCR増幅のためのDNA鋳型(DNA鋳型は、最初に少量で存在し、PCR増幅のためのこの最初のDNA鋳型は、デノボ合成されたDNAであることが好ましいとされ得る)、1つ以上のDNAプライマー、dNTP、DNAポリメラーゼ(例えば、プルーフリーディングDNAポリメラーゼ)、及び好適なPCR緩衝液を含む。PCR液は、一端(チューブは全体として2つの端部、すなわち、出発するPCR液のための「入口端」と、結果として得られる増幅されたDNA産物のための「出口端」とを備える)においてチューブ内に充填され、又はポンプで圧送され、これらの区画内にかつ区画を通るように巻かれたチューブによって区画を通して導かれる。PCR液は、チューブ壁によって区画内の領域から分離され、したがって、例えば、区画内に充填される熱媒体(例えば、液体又は気体)又は熱固体から分離されるため、PCR液は、どの時点においても区画及び区画内の空間とそれぞれ直接接触することはない。チューブ壁により、PCR液と、区画(ひいては区画内の温度)、例えば、区画内の熱媒体又は熱固体との間の温度交換が可能になり、したがって、この温度交換は、チューブの温度を調節する手段によって、例えば、熱媒体又は熱固体によって、PCR液を加熱又は冷却するために使用される。PCR液が区画を通して導かれる間に、PCR増幅のための鋳型が増幅され、DNA産物が生成される。その後、このDNA産物は、チューブの第2の端部、「出口端」においてチューブを出る。したがって、DNA産物を、反応混合物タンク又は再循環システム内の任意の対応する物体から取り出す必要はない。
【0017】
チューブは、(本質的に、図3に例示的に示されるように)チューブ巻回の螺旋状スタックを形成している。1回の「チューブ巻回」とは、チューブを始点の第1の区画に戻す「1周」を意味し、すなわち、チューブを、第1の区画から第2の区画へ、及び第2区画から第1区画へと(戻るように)巻く、又は、好ましくは、第1の区画を通って第1の区画から第2の区画へ、第2の区画を通って第2の区画から第3の区画へ、第3の区画を通って第3の区画から第1の区画へと(戻るように)巻くことである。チューブは、第1の区画に戻るが、第1の区画にあるチューブの最初の区間には接続されないことを理解することが重要である。代わりに、チューブは、第1の区画から複数の区画を通って第1の区画に戻るようにチューブ巻回を成した後、螺旋状に巻回され続けて、最終的に螺旋状スタックを形成する。言い換えれば、チューブは、第1の区画から異なる区画を通って第1の区画に戻り、そこで再び最初のチューブに接続され、したがって循環を形成する「二次元」循環を形成するものではなく、チューブは、第1の区画から異なる区画を通って、最初のチューブに接続せずに第1の区画に戻る「三次元」螺旋を形成するものである。「三次元」における螺旋は、具体的には、「二次元」における各巻回に対して本質的に垂直であり得る。これは、「チューブ巻回の螺旋状スタックのスタック方向が、波形チューブの波形方向と異なり、好ましくは波形チューブの波形方向に対して本質的に垂直である」ことを意味する。チューブ巻回の螺旋状スタックは、複数のPCRサイクルを可能にし、各巻回は、1回のPCRサイクルに相当する。
【0018】
チューブは、2つの別個の端部、「PCR液入口」及び「DNA産物出口」を備え、第1の端部は、典型的には、変性工程がPCR反応の最初の工程であるため、チューブが第1の区画(これは、PCR液がデバイスに入る場所である)に入る前のチューブに位置しており、第2の端部は、典型的には、伸長工程がPCR反応の最後の工程であるため、チューブが第2/第3の区画(これは、DNA産物がデバイスから出る場所である)を出た後のチューブに位置している。
【0019】
DNA産物を調製するためのデバイスは、第1の区画及び第2の区画の少なくとも2つの(テンパリング)区画を備える。第3の区画を設けることも可能であり、典型的には、これが好ましい。更に多くの区画も可能である。区画は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、閉鎖された空間、部屋、又は容器として理解することができる。区画は、少なくとも10mL、好ましくは少なくとも100mL、より好ましくは少なくとも1L、例えば約1L~約10Lの容積を有し得る。区画は、密閉され、漏れ止めすることができる。少なくとも2つの区画は、例えば、熱媒体又は熱固体で充填される、少なくとも2つの独立した又は異なる槽を形成し得る。少なくとも2つの区画は、少なくとも2つの区画の各々において、別個の、異なる、又は独立した温度ゾーンを可能にするために、互いに分離され得、好ましくは互いに断熱され得る。これらの温度ゾーンは、PCRの温度プロファイルに対応する。PCRの効率にとって、経時的な温度変化を示す「ランプレート」が迅速であることが特に重要である。本発明の文脈では、経時的な温度変化は、PCR液の流量及び区画内の熱交換に必要な時間によって決定される。
【0020】
1つの選択肢として、熱媒体によって各区画内の温度を調節することがある。熱媒体は、液体であっても、又は気体であってもよい。その場合、熱媒体は、一実施形態において、それぞれの熱媒体入口によって少なくとも2つの区画の各々に入ることができ、それぞれの熱媒体出口によって少なくとも2つの区画の各々から出ることができる。したがって、この実施形態では、各区画は、熱媒体入口及び熱媒体出口を備える。したがって、熱媒体によって少なくとも部分的に充填される少なくとも2つの区画内のそれぞれの槽を通る熱媒体の流れが存在し得る。熱媒体は、例えば、プロピレングリコール、シリコーンベースの流体又は他の合成熱媒体、並びに水又は上記液体の任意の混合物のような高熱伝導性媒体に基づく、液体冷却剤及び熱キャリアとして理解することができる。熱媒体は、ガス状の冷却剤又はガス状の熱キャリアとして理解することもできる。熱媒体は、例えば、Pekasol(登録商標)であり得る。熱媒体を使用して、少なくとも2つの区画内で別個の温度を提供し、制御し、かつ/又は調節し、PCRの一部である熱サイクルによってDNA産物を調製することができる。別々の区画における熱媒体は、PCR中に、チューブの、ひいてはチューブ内のPCR液の、急速な温度変化を可能にするように構成される。一実施形態では、区画は、その区画内の熱媒体を混合するための撹拌手段を備えていない。別の実施形態では、区画は、その区画内の熱媒体を混合するための撹拌手段を備える。
【0021】
別の選択肢として、熱固体によって各区画内の温度を調節することがある。その場合、熱固体の温度が、この実施形態では、加熱ユニット及び任意選択で冷却ユニットによって提供され、調節される。この実施形態では、液体熱媒体は使用されず、したがって、熱媒体入口及び熱媒体出口は区画に存在しない。熱固体は、熱伝導性の固体であり、したがって、熱固体によって囲まれた区画及びチューブにそれぞれ特定の温度を提供する(熱固体は、PCR中に、チューブの、ひいてはチューブ内のPCR液の、迅速な温度変化を可能にするように構成される)。熱固体は、アルミニウム、アルミニウム合金、又は熱伝導率の高い他の合金、銅、青銅、及び真鍮からなる群から選択することができ、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。熱固体は、ペレット、ボール、及び/又は粗い粉末の形態を有してもよく、好ましくは、ペレット及びボールの場合、約1~約3mmの直径を有する。アルミニウムペレットを使用することが特に好ましい。熱固体は、区画内の残留空気を除去するために、液体又はゲルに含まれていてもよい。したがって、この構成では、チューブを囲んでいる区画(又は内部区画壁(30)によって形成される区画の一部、図8参照)は、上で概説したような熱固体、及び液体又はゲルで充填され、空気がない。加熱ユニットは、好ましくは電気加熱ユニットである。好適には、加熱ユニットは、最適な加熱を可能にするために、スタンド(又はチューブ保持手段)に組み込まれている。区画内の電気加熱ユニットは、例えば、加熱カートリッジ又は加熱ワイヤ又は加熱導体であり得る。加えて、冷却ユニット、具体的には、ヒートパイプがそこに接続された熱電冷却器(すなわち、ペルチェ素子)(そのヒートパイプは、区画内に延びており、したがって区画の内側にも存在する)を使用することによって、必要な温度を提供しかつ/又は調節するために、区画(又は区画の内部区画壁(30、図8参照)によって形成されている部分)を冷却することも更に可能である。また、熱電冷却器は、冷却と反対のモードである加熱モードで運転される場合に、区画に追加の熱を提供するために使用することができる。冷却モードで運転される場合、熱電冷却器の熱を除去するためにベンチレータが存在してもよい。しかしながら、冷却から得られる熱は、デバイスの(別の)区画で追加の加熱として使用することもできるため、ベンチレータの存在は必須ではない。典型的には、いくつかの独立した電子加熱システムが各区画内に存在し、これらのシステムの各々は、それ自体の温度センサに接続され、いくつかの独立した制御回路を達成する。
【0022】
DNA産物を調製するための本発明によるデバイスは、異なる条件、要件、及び例えばDNAの量に、柔軟に適応することを可能にする。本デバイスは、大量のDNA(例えば、1回の反応当たり2mg超)の調製を可能にし得る。更に、DNA産物の調製はスケーラブルであり得る。具体的には、DNA産物の調製は連続的であってもよく、新たなPCR液が「入口」に連続的に追加される一方で、結果として得られたDNAがチューブ及びデバイスのそれぞれの「出口」を通ってデバイスから出るので、g量及び本質的に無制限の量が産生され得る。DNA産物を調製するための本デバイスは、DNA産物の非常に迅速な調製を可能にし、それによって、医薬品又は中間体の迅速な製造も可能にする。また、特定のDNA産物に対するDNA産物を調製するためのデバイスの変更及び適合も、非常に迅速であり得る。調節工程又は較正工程の必要がなくなり得る。洗浄工程の必要性はなくなる、又はより低くなりうる。例えば、ワクチン製造のための回転時間は、約1週間未満とすることができる。
【0023】
DNA産物を調製するための本発明によるデバイスは、非常に洗練された様式で構築される。デバイスは、非常に小さくなるように寸法設定することができる。キャピラリーPCRによってDNA産物を調製するための本デバイスは、持ち運び可能であり、例えばパンデミックが発生した地域への輸送が可能になる。それによって、医薬品(例えば、DNAワクチン)又は医薬品(例えば、RNAワクチン)の中間体(例えば、DNA鋳型)の局所的な分散的生産が可能になり得る。
【0024】
DNA産物を調製するための本発明によるデバイスは、柔軟かつ迅速なDNAワクチン生産又はRNAワクチンのためのDNA鋳型産生、特に柔軟かつ迅速なRNAワクチン生産のために使用され得る。本デバイスは、具体的には、例えば、感染症のエピデミック時及びパンデミック時のmRNAベースのワクチンのためのDNA鋳型の産生、並びに個別化された治療を含めて、多様な癌疾患のために使用され得る。
【0025】
一実施形態では、隔壁が、区画同士の間に配置され、区画を互いに隔離している。これは、隔壁が第1の区画と第2の区画との間に配置されていることであると理解することができる。より多くの、例えば3つの区画がある場合、隔壁は、第1の区画と第2の区画との間に配置されてもよく、別の隔壁が、第2の区画と第3の区画との間に配置されてもよく、かつ/又は更なる隔壁が、第3の区画と第1の区画との間に配置されてもよい。結果として、(隣接する)区画同士は、互いから断熱され得、したがって、(隣接する)区画において異なる温度を確立し、維持することができる。隔壁は、同じ壁構成要素によって全ての区画を隔離するように1つの壁構成要素のみによって実装されても、又は2つ以上の壁構成要素によって実装されてもよい。隔壁は、熱伝導率が低く、機械的耐性及び温度耐性が良好な材料であり得る。追加的に又は部分的に代替として、内部区画壁が存在してもよく、この内部区画壁は、波形チューブにより密接に沿うので、各区画においてチューブを取り囲むより狭い空間を形成する。また、この内部区画壁も、それぞれの区画の隔離をもたらす一方で、具体的には熱固体で充填される、チューブの周りのかなり狭い空間を形成する。内部区画壁が存在する場合、隔壁は、区画同士の間に必ずしも全体的に存在するわけではなく、部分的にのみ存在してもよく、具体的には、次に説明するように、チューブが隔壁を通って1つの区画から次の区画へと通過する領域にのみ存在してもよい。
【0026】
したがって、最も好ましい実施形態では、隔壁は、チューブが1つの区画から次の区画に延びるための貫通孔を備え、チューブは、別々の区画を通過することができるようになっている。貫通孔又はチャネルは、チューブが区画及び区画の温度ゾーンに入るかつ/又は出ることを可能にする。貫通孔は、耐漏洩性を向上させるために密閉されてもよい。また、貫通孔は、(隣接する)区画内の温度安定性を向上させるために断熱されてもよい。
【0027】
一実施形態では、熱媒体入口及び熱媒体出口は、存在する場合、チューブ内のPCR液のガイド方向に対して本質的に反対方向に区画を通る熱媒体流を提供するように、少なくとも1つの区画内、好ましくは各区画内に配置されている。これは、PCR液のガイド方向が時計回りの場合、熱媒体入口及び熱媒体出口が、熱媒体流を反時計回り方向に提供するように配置されていること、逆もまた同様であることであると理解することができる。あるいは、PCR液のガイド方向が左側から右側である場合、熱媒体入口及び熱媒体出口が、右側から左側に向かう方向に熱媒体流を提供するように配置され、逆もまた同様である。熱媒体とPCR液との対向流は、熱媒体とPCR液との間の温度交換を向上させ、それによってPCR液の温度制御を向上させる。効率的なPCR反応のためには、デバイスの区画の各々において温度が一定であること、及びPCR液を含むチューブが次の区画(典型的には、異なる温度を有する)に導かれるときに迅速な温度交換を促進することが特に重要である。
【0028】
一実施形態では、熱媒体入口は、存在する場合、それぞれの区画内の下部位置に配置され、熱媒体出口は、存在する場合、それぞれの区画内の上部位置に配置される。このような構成は、気泡がより容易に除去され得るという利点を有する。
【0029】
代替的に、熱媒体入口は、存在する場合、それぞれの区画内の上部位置に配置されてもよく、熱媒体出口は、存在する場合、それぞれの区画内の下部位置に配置されてもよい。
特に好ましい実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスは、第3の区画を更に備える。チューブは、少なくとも(第1の区画を通って)第1の区画から第2の区画へ、及び(第2の区画を通って)第2の区画から第3の区画へ(第3の区画を通るように)巻かれてもよい。チューブは更に、第3の区画から第1の区画へ、再び(第1の区画を通って)第1の区画から第2の区画へ、及び(第2の区画を通って)第2の区画から第3の区画へ(第3の区画を通るように)巻かれてもよい。また、第3の区画は、区画内の温度を調節する手段を備える。この点において、第3の区画は、第1の区画及び第2の区画を通って流れる熱媒体流とは別個の、第3の区画を通って流れる熱媒体流を提供するために、熱媒体入口及び熱媒体出口を備えてもよい。その別個の熱媒体流を使用して、第1の区画及び第2の区画内の温度とは別個の第3の区画内の別個の温度を調節してもよい。熱媒体入口及び出口の代わりに、上述したような加熱ユニットを有する実施形態を、区画内の温度を調節する手段として使用してもよい。また、第3の区画における別個の温度を使用して、PCR液に基づいたDNA産物が調製される。3つの温度ゾーンは、典型的には、変性、アニーリング、及び伸長のためのPCRの温度プロファイルに対応する。
【0030】
区画から区画へと巻かれたチューブは、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成している。上で定義したように、チューブ巻回とは、チューブが第1の区画から出発して、第1の区画に戻って来る区間であり、1回のチューブ巻回は、1回のPCRサイクルを表している。そして、このようなチューブ巻回は螺旋を形成し、最終的にチューブ巻回の螺旋状スタックを生じ、各チューブ巻回は、1回のPCRサイクルを表している。言い換えれば、これは、チューブが(側面図で見たときに)螺旋、渦巻き、又はコイルの形状を有することであると理解することができる。更に別の言い方をすれば、チューブは、複数の円の形に延びていてもよく(ただし、円同士は互いに接続されていない)、これは、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスを非常に洗練された空間効率のよいものにする。1つの円は、第1の区画から第2の区画へ、及び第2の区画から(任意選択の)第3の区画へと延びていてよい。すべての円は、1回のPCRサイクルに相当する。チューブの螺旋状の延伸方向又はスタック方向は、DNA産物を調製するためのデバイスの底部によって形成されるいわゆるx、y平面、又は床もしくは地面によって形成される平面から離れる、いわゆるz方向に延びていてよい。チューブの螺旋状の延伸は、デバイスの底部、床、又は地面に対して本質的に垂直に延びていてもよいが、デバイスの底部、床、又は地面に対して角度を成して延びていてもよい。
【0031】
一実施形態では、チューブは、少なくとも1つの区画内で、好ましくは区画の各々の内部で、波状に又は蛇行して延びており、結果的に、各区画内でチューブは特定の長さになっており、この長さは、PCR液が、好ましくは所定の制御された流量でこの区画内のチューブを通過するときの、チューブ内部のPCR液のインキュベーション時間を反映している。このインキュベーション時間は、典型的には、チューブが区画内で直線状である場合に達成される時間よりも長いので、チューブは、各区画内に波状に又は蛇行して存在することが好ましい。これは、(上面図で見たときに)チューブが、1つ又は全ての区画内で、波又は蛇の形状を有することであると理解することができる。チューブの波もしくは蛇の形状、又は波形は、DNA産物を調製するためのデバイスの底部によって形成される平面又は床もしくは地面によって形成される平面の、x方向及びy方向に延びていてよく、すなわち、それは「二次元」形態に関連すると理解され、螺旋状、すなわち「三次元」形態を含まない。チューブの波形形態は、それぞれの区画内でのPCR液の滞留時間を規定し、それによって、それぞれの区画によって提供される温度ゾーンでのPCR液の滞留時間を規定する。したがって、チューブの波形形態は、ある特定の温度を有するそれぞれの区画内でのチューブの長さを規定し、それによって、それぞれの区画によって提供される温度ゾーンでのPCR液の滞留時間を規定する。
【0032】
一実施形態では、チューブ巻回の螺旋状スタックのスタック方向は、波形チューブの波形方向とは異なり、好ましくは、波形チューブの波形方向に対して本質的に垂直である。チューブ巻回の螺旋状スタックのスタック方向と波形チューブの波形方向との間の角度は、約90°まで異なっていてもよく、例えば、約90°未満、45°~89°の範囲であってもよい。そして、チューブ巻回の螺旋状スタックのスタック方向と波形チューブの波形方向とは、互いに対して傾斜している又は斜めであってもよい。チューブ巻回の螺旋状スタックのスタック方向は、DNA産物を調製するためのデバイスの底部に対して、又は床もしくは地面によって形成される平面に対して、傾斜している又は斜めであってもよい。追加的に又は代替的に、波形チューブの波形方向は、DNA産物を調製するためのデバイスの底部に対して、又は床もしくは地面によって形成される平面に対して傾斜していてもよい。そして、チューブは、DNA産物を調製するためのデバイスの底部に対して、又は床もしくは地面によって形成される平面に対して、ピッチを有し得る。ピッチは、DNA産物を調製するためのデバイス全体にわたって、又は区画のうちの1つにわたって同じであってもよいが、ピッチは、DNA産物を調製するためのデバイス全体にわたって、又は区画のうちの1つにわたって変動してもよい。
【0033】
一実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスは、チューブの固定点及び/又はチューブの波形の偏移点を提供するために区画のうちの1つに配置された少なくとも1つのスタンド又はチューブ保持手段を更に備える。スタンドは円筒形状を有してもよい。また、スタンドは、上面図で見たときにT字形又はL字形を有してもよい。他の形状もまた可能である。スタンドは、チューブを(ひいては、チューブ巻回及びチューブ巻回の螺旋状スタックをそれぞれ)受け入れて固定するように構成された少なくとも1つの取付構造を備えてもよい。好ましくは、スタンドは、チューブを(ひいては、チューブ巻回及びチューブ巻回の螺旋状スタックをそれぞれ)スタンドに固定して保持するための複数の取付構造を備える。取付構造は、例えば、凹部として、貫通孔として、フックとして、スリットとして、又はチューブを(ひいては、チューブ巻回及びチューブ巻回の螺旋状スタックをそれぞれ)スタンドに取り付けるための他の手段として、形成されてもよい。チューブは、圧力嵌め及び/又は形状嵌め様式で取付構造に固定されてもよい。追加的又は代替的に、スタンドは、チューブを固定して保持するための少なくとも1つのクランプ手段を更に備えてもよい。好ましくは、取付構造は、チューブが、傷、切断などの損傷を受けるのを防止するために、例えば、ゴム又はシリコーンを含む軟質材料でコーティングされる。好適には、スタンドは、使用される熱媒体に対して耐薬品性を有する材料であってもよい。
【0034】
一実施形態では、チューブは、スタンドの外側寸法の周りに部分的に延びている。これは、上面図において、チューブが全体的にではなく、スタンドの外径又は外側寸法の周りに約360°未満延びていることであると理解することができる。チューブは、スタンドの外側寸法の周りに約45°~約270°の範囲で延びていてもよい。別の実施形態では、チューブは、スタンドの外側寸法の周囲全体的に延びている。これは、上面図において、チューブがスタンドの外側寸法又は外周の周りに約360°延びていることであると理解することができる。別の実施形態では、チューブは、スタンドの外側寸法の周りに2周以上延びている。これは、上面図において、チューブがスタンドの外側寸法又は外周の周りに約360°を超えて延びていることであると理解することができる。チューブは、スタンドの外側寸法の周りに約450°~約540°の範囲で延びていてもよく、これは、スタンドの周りにチューブの重複があり得ることを意味する。
【0035】
一実施形態では、スタンドは区画内で交換可能である。これは、スタンドが、区画に、具体的には区画の底板に、実現可能に固定されていることであると理解することができる。結果として、DNA産物を調製するためのデバイスを、別のチューブ、別の目的、別のPCR持続時間(例えば、別のPCRプロトコルを反映するため)、別の巻回半径、別の巻回パターンなどに適合させるために、スタンドを、例えば、別の外側寸法(半径及び/又は高さ)を有する別のスタンドと交換することができる。
【0036】
一実施形態では、スタンドは、区画内で再配置可能である。これは、スタンドが、区画内の異なる位置又は場所に、具体的には、区画の底板に対して異なる位置に、配置され得ることであると理解することができる。したがって、底板は、スタンドを柔軟に挿入することができる(ブラインド)孔を有する多孔板として形成されてもよい。結果として、DNA産物を調製するためのデバイスを、別のチューブ、別の目的、別のPCR持続時間(例えば、別のPCRプロトコルを反映するため)、別の巻回半径、別の巻回パターンなどに適合させるために、スタンドを再配置することができる。
【0037】
スタンド、具体的には交換可能及び/又は再配置可能なスタンドを使用して、区画内でのPCR液の滞留時間を規定し、それによって、区画によって提供される温度ゾーンでのPCR液の滞留時間を規定することができる。したがって、スタンドの寸法及び位置は、PCRの温度プロファイルを規定することができ、(例えば、別のDNA産物、例えば、別の長さのDNA産物を生成するために)所望のPCRプロファイルに一致するように柔軟に調節することができる。
【0038】
チューブは、DNA産物を調製するためのデバイス全体にわたって連続していてもよく、これは、チューブが、DNA産物を調製するためのデバイス全体にわたって同じであると理解することができる。また、チューブは、DNA産物を調製するためのデバイス全体にわたって不連続であってもよく、これは、チューブが、例えば、チューブの断面において異なるサイズ又は直径を有する別々の部分を含むと理解することができる。チューブは、DNA産物を調製するためのデバイスを異なるPCR又は異なる他の目的に適合させるために、交換可能であってもよい。清掃性の理由から、チューブは連続していることが好ましい。更に、チューブは、PCRの効率を阻害する可能性がある破損又は屈曲の危険なしに、例えばスタンドを介して、チューブの波形を可能にするように構成される。しかしながら、全ての例において、チューブは、任意選択の出口を有する再循環又は閉鎖チューブシステムではなく、画定された「入口」端及び画定された「出口」端を備える。
【0039】
一実施形態では、チューブは、PCR液入口を備え、このPCR液入口は、チューブを通してPCR液を圧送するためのポンプユニットに接続可能である。ポンピングユニットは、ポンプであってもよい。ポンピングユニットは、外部ポンピングユニットであってもよい。一実施形態では、ポンプユニットは、区画の外側に、好ましくは、区画を取り囲んでいる外壁部の外側に、配置されている。外壁部は、例えば、POM、PEEK、PTFEなどのプラスチック材料から作製されてもよいが、金属、合金、化合物などから作製され、熱及び適用される熱媒体に対して耐性及び適合性があってもよい。外部配置により、DNA産物を調製するためのデバイス内の空間を節約することができ、かつ/又は出力の大きいポンピングユニットの使用を可能にすることができる。好ましくは、ポンピングユニットは、一定の流量を生成するように構成されたマイクロギアポンプを備える。
【0040】
一実施形態では、ポンプユニットは、約0.05mL/分~約50mL/分、好ましくは約0.1mL/分~約10mL/分、より好ましくは約0.2mL/分~約3mL/分の範囲の流量のPCR液を提供するように構成される。このような流量は、区画内でのPCR液の滞留時間を、したがって区画によって提供される温度ゾーンでのPCR液の滞留時間を規定することができる。したがって、これらの流量は、PCRの温度プロファイルを規定し得る。好ましくは、流量は一定であり、例えば、流量の変動は、±10%未満、好ましくは±5%未満である。
【0041】
一実施形態では、チューブは、DNA産物の連続調製のためのDNA産物出口を備える。これは、DNA産物の連続的なノンストップ調製が行われることであると理解することができる。したがって、DNA産物出口は、「生産中は常に開いている」ことが可能である。DNA産物のそのような連続調製は、大量のDNA産物の連続的かつスケーラブルな産出を向上させる。DNA産物出口は、DNA産物の連続調製が終了したときに閉じることができる、例えば、シャッターなどの閉鎖機構からなる手段を備えてもよい。
【0042】
一実施形態では、チューブは、DNA産物の不連続調製のための閉鎖可能なDNA産物出口を備える。これは、DNA産物の不連続な、バッチ毎の調製であると理解することができる。したがって、DNA産物出口は、例えばシャッターのような閉鎖機構によって閉鎖可能である。
【0043】
一実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスは、区画のうちの少なくとも1つに配置された少なくともセンサを更に備える。このセンサは、温度センサ、流量センサ、漏れセンサなどであってもよく、これらはそれぞれ、区画の温度、流量、漏れなどを検出するように構成される。流量センサは、ポンピングユニットと共に閉ループ制御を形成して、DNA産物を調製するためのデバイス又はPCR反応器の外側の流量を監視及び制御してもよい。少なくとも1つの区画において、好ましくは各区画において、少なくとも2つの温度センサが提供されてもよく、例えば、冗長性を構築するために、1つは流体入口の近くに、1つは流体出口の近くに提供されてもよい。2つの漏れセンサが使用されてもよく、1つは少なくとも1つの区画内、好ましくは各区画内にあり、1つは周囲ユニット/フレーム内にあってもよい。更なるセンサが、区画の外側、例えば、ポンプユニット内、又はPCR液入口内、又はDNA産物出口内に配置されてもよい。
【0044】
また、デバイスは、近接センサ、例えば、磁気センサの第1の部分を備えてもよく、この第1の部分が、第1の態様によるデバイスの外側にある、その近接センサの相手方の又は第2の部分を見つける。これを考慮して、近接センサのこの第2の部分は、具体的には、第2の態様による製造デバイス内に位置してもよい。デバイスが製造デバイス内に適切に設置されると、近接センサのそれらの2つの部分が接続され、好ましくは設置が成功したことを通知し、かつ/又は、好ましくは、そうなったときだけデバイスを首尾よく始動し動作させることができる。したがって、それらの2つの部分を含む近接センサはまた、動作中にアクティブであってもよく、近接センサの2つの部分がそれらの間の接続を失うと、アラームがなり、かつ/又は動作が停止されることになり得る。
【0045】
一実施形態では、チューブは、約0.5mm~約50mm、約0.5mm~約40mm、好ましくは約0.5mm~約20mm、好ましくは約0.5mm~約4mm、より好ましくは約0.5mm~約1.5mm、更により好ましくは約0.75mm~約1.25mmの範囲の直径(外側寸法にほぼ相当し得る)を有する。これらの寸法は、熱媒体とPCR液との間の迅速かつ効率的な温度f交換(「ランピング」)を可能にし得る。
【0046】
チューブは、例えば、PEEK、ETFE、又はPTFEなどのプラスチック材料から作製されてもよいが、金属、合金、化合物などから作製されてもよい。好適には、チューブは、生体適合性及びプロセス適合性(例えば、DNA産物への化合物の漏出がないこと、材料の酸化/分解がないこと、剥脱のリスクを最小限にするためにPCR化合物の表面への結合が低いことなど)のある材料から作製され得る。好ましい材料は、PEEKであり得る。
【0047】
一実施形態では、チューブは、約5m~約300m、好ましくは約10m~約200m、より好ましくは約25m~約50mの範囲のチューブ入口とチューブ出口との間の長さを有する。チューブは、例えば約100m(例えば、約97m)の長さを有することができる。チューブの各区間は、別々の区画に含まれており、これらの寸法は、区画内のPCR液の滞留時間を規定し、それによって、区画によって提供される温度ゾーンでのPCR液の滞留時間を規定することができる。したがって、これらのチューブ長の区間は、PCRの温度プロファイルを規定し得る。
【0048】
一実施形態では、チューブは、約10mL~約1L、好ましくは約20mL~約250mL、より好ましくは約30mL~約150mLの範囲のPCR液を収容するように寸法設定されている。チューブは、例えば、約80mLの範囲のPCR液を収容するように寸法設定されていてもよい。
【0049】
一実施形態では、チューブ巻回の螺旋状スタックは、約10個~約50個、好ましくは約15個~約40個、より好ましくは約20個~約30個の巻回又は円又は層を備える。巻回の数は、PCRのサイクル数に相当する。
【0050】
単に一例として、チューブは、約25個のチューブ巻回の螺旋状スタック(又はサイクル)を含む、約15mの全長を有してもよい。その特定の実施形態では、1つの螺旋状スタック(又はサイクル)において、チューブは、第1の区画(100cm)、続いて第2の区画(100cm)、続いて第3の区画(400cm)を通して導かれ得る。
【0051】
一実施形態では、デバイスは、1回の反応当たり、約1mg以上、例えば、最大5g、好ましくは約1mg~約30mgの範囲、より好ましくは約15mg~約25mgの範囲のDNA産物を調製するように構成される。
【0052】
一実施形態では、デバイスは、約2μg/分~2000μg/分の範囲のDNA産物、好ましくは約5μg/分~1500μg/分の範囲のDNA産物、より好ましくは約10μg/分~1000μg/分の範囲のDNA産物を調製するように構成される。
【0053】
一実施形態では、デバイスは、PCR液1mL当たり約25μg~約200μg、好ましくはPCR液1mL当たり約50μg~約150μg、より好ましくはPCR液1mL当たり約75μg~約125μgの範囲のDNA産物を調製するように構成される。
【0054】
一実施形態では、第1の区画は、約85℃~約105℃の範囲、好ましくは約98℃の温度を有するように構成される。
一実施形態では、第2の区画は、約45℃~約72℃、好ましくは約60℃~約72℃の範囲の温度を有するように構成される。
【0055】
一実施形態では、任意選択の第3の区画は、約65℃~約75℃の範囲、好ましくは約72℃の温度を有するように構成される。
単に一例として、チューブは、約25個のチューブ巻回の螺旋状スタック(又はサイクル)を含む、約15mの全長を有してもよい。その特定の実施形態では、1つの螺旋状スタック(又はサイクル)において、チューブは、第1の区画(100cm;温度約85℃~約105℃)、続いて第2の区画(100cm;温度約45℃~約72℃)、続いて第3の区画(400cm;温度約65℃~約75℃)を通して導かれ得る。各区画での滞留時間は、PCRの流量及びチューブの直径によって調節され得る。
【0056】
当業者は、異なるDNA産物(例えば、異なるサイズ及び/又は配列)が、異なるPCR条件(例えば、DNAプライマーアニーリング温度又は伸長時間などに起因する)を必要とし得ることを理解する。チューブの長さ、別々の区画内のチューブの長さ、螺旋状スタックの数(ひいては、PCRサイクルの数)、流量、チューブの直径、及び/又は区画内の温度を調節することによって、種々の異なるDNA産物に適した、異なるPCRプログラムを実現することができる。したがって、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスは、種々のサイズ及び配列のDNA産物の調製生産を可能にするように容易に適合及び調節されることができる。
【0057】
第2の態様では、本発明は、第1の態様のキャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によるDNA産物の調製デバイスを備える、医薬品の製造デバイスを対象とする。
一実施形態では、医薬品の製造デバイスは、第1の態様で説明したようなキャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するデバイスと、少なくとも1つの更なる機能(例えば、追加のチャンバ、追加のユニット、ハウジングなど)と、を備える。好ましい実施形態では、第2の態様による医薬品の製造デバイスは、処理チャンバと、技術チャンバと、第1の態様で説明したようなキャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するデバイスと、を備える。
【0058】
製造デバイス及びその好ましい実施形態の説明
医薬品の製造デバイスは、一般に、異なる目的のための異なるチャンバを有する閉鎖されたハウジングとして理解することができる。
【0059】
処理チャンバは、医薬品を製造するのに適しており、そのために使用される。処理チャンバは、製造プロセス時の本質的に全ての湿式処理が処理チャンバ内で行われるという意味で、製造デバイスの「湿式部分」と呼ぶこともある。「湿式処理」とは、例えば、容器への及び容器からの、又はクロマトグラフィーカラムへの及びクロマトグラフィーカラムからの緩衝液及び/又は反応物及び/又は産物の提供、廃液又は廃ガスなどの回収、並びにそのような緩衝液及び/又は反応物及び/又は産物の接続(例えば、可撓性チューブの形態での接続)を意味する。このような湿式処理は、理想的には、処理チャンバ内の液体の漏れによる事故及び特に電圧による起こり得る影響を不可能にするか又は少なくとも最小限に抑えるために、あらゆる技術的媒体供給源(具体的には、電力ケーブルなどの電気供給源)から分離される必要がある。万一、処理チャンバ内で漏れによる事故が発生しても、前述した分離があるために安全性が向上しており、処理チャンバを洗浄するだけで済む。第1の態様によるデバイスは、処理チャンバ内に位置している。
【0060】
技術チャンバは、例えば、ポンプ、モータ、ミキサ、プロセッサなど、処理媒体と直接接触しない装置を収容するための技術的サポートを提供するのに適しており、そのために使用される。技術チャンバは、典型的には、技術媒体供給源を提供する(例えば、収容する)のに適しており、そのために使用され、この技術媒体供給源は、具体的には、電源であって、例えば、処理チャンバ内に位置し、処理媒体と直接接触している装置/ユニットのための電源である。上記で定義されたような湿式処理が、本質的に技術チャンバ内では行われないという意味で、技術チャンバを製造デバイスの「乾式部分」と呼ぶこともある。上述したように、これはとりわけ安全性の向上をもたらす。技術チャンバ内で必要とされる清浄度レベルは処理チャンバ内よりも低いので、技術チャンバは処理チャンバほど「清浄ではない」と言われることもある。第1の態様によるデバイスのための技術媒体供給源は、技術チャンバ内に位置している。
【0061】
チャンバ同士は、分離要素によって分離されてもよく、この分離要素は、プレート状であり、具体的には処理チャンバから分離要素を見たときにプレート状である。したがって、以下に概説されるように、ガス流を乱さないために、分離要素は、処理チャンバに向かう開口部と、技術チャンバの方向への拡張部と、を有する少なくとも1つの付属部を備えてもよく、そこに、処理媒体と接触する装置、具体的には、第1の態様によるデバイスが収容され得る。
【0062】
キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスを備える製造デバイスは、好ましくは、処理チャンバを通るガス流をガスシャワーとして制御するように構成された制御ユニットを更に備える。ガス流は、フローユニットによって提供されてもよい。フローユニットは、少なくともポンプ又はHVACシステムであってもよく、またファンシステムと呼ぶこともある。フローユニットは、製造デバイスのハウジングの外側に配置されてもよく(外部フローユニット)、又は好ましくは製造デバイスのハウジング内に配置されてもよい(内部フローユニット)。フローユニットは、好ましくは、フィルタユニット(「ファンフィルタユニット」と呼ぶこともあり、好ましくは、以下に説明されるようなHEPAフィルタを備える)を備える。フローユニットは、好ましくは可変量のガスを提供するように構成され得る。ガスは、清浄空気、添加剤を含む空気、不活性ガス、又は任意の他のガスであってもよい。制御ユニットは、例えば、弁又はプロセッサなど、ガス流についての任意の制御デバイスと理解することができる。制御ユニットは、ガス流内の異なる圧力を調節するように構成され得る。制御ユニットは、処理チャンバ内に正圧を提供するように処理チャンバを通るガス流を制御するように構成され得る。処理チャンバ内の正圧は、ハウジングの外側の環境に対する過圧として、及び/又は技術チャンバ内よりも高い圧力として理解することができる。処理チャンバ内の正圧は、開放された処理工程を微粒子汚染から保護することができる。
【0063】
制御ユニットは、処理チャンバを通るガスシャワーを提供するように処理チャンバを通るガス流を制御するように構成される。ガスシャワーは、処理チャンバ内のより高い高さから、処理チャンバ内のより低い高さに落下し得る。処理チャンバ内のガスシャワーは、開放された処理工程を微粒子汚染から保護することができる。一実施形態では、ガスシャワーは層流であり、これは、層流に本質的に類似しているか、又は本質的に一方向である、又は本質的に乱流ではないものとして理解することができる。層流のガスシャワー又はガス流は、処理チャンバの底部に向かって、下方又は水平方向に、好ましくは一定の流れで、方向付けられ得る。層流のガスシャワーは、乱流を導入することなく、かつ/又は、例えば、それぞれのハウジング又はチャンバ内の製造手順を汚染することなく、粉塵、空中浮遊生物、又は蒸発粒子などの微粒子を極めて低レベルに低減及び維持することを可能にし得る。ガスシャワーの領域に取り付けられる装置は、分離要素又は処理チャンバ壁にしっかりと取り付けられるか、又は被覆されるか、又はカプセル化され、ガスシャワーの乱流又は攪乱を低減又は排除し得る。また、装置は、ガスシャワーの乱流又は攪乱を低減又は排除するために、分離要素の付属部内に、又は処理チャンバ壁の付属部内に、「隠され」てもよい。一実施形態では、ガスシャワーの速度は、約0.2~約0.6m/秒、好ましくは約0.36~約0.54m/秒の範囲である。この速度は、微粒子を低減して極めて低いレベルに維持することと、処理チャンバ内の、例えば製造手順を乱さないこととの間で、良好なバランスもたらすことができる。
【0064】
第2の態様による医薬品の製造デバイスは、プロセスが、連続モード又は半連続モードで動作されるため、異なる条件、要件、及び例えば医薬品の量に柔軟に適応することが可能である。本製造デバイスは、大量の医薬品の調製を可能にする。更に、医薬品の製造は、一般に、スケーラブルである。
【0065】
本製造デバイスは、原材料(例えば、dNTP、DNAプライマー、DNA鋳型)から最終産物までの閉鎖された(生合成)プロセスを提供し得る。本製造デバイスは、箱内製造(manufacturing-in-a-box)として理解することができる。本発明の製造デバイスは、非常に小さくなるように寸法設定することができる。本発明の製造デバイスは、設置面積が小さく、また、設置面積の小さい製造物体を形成できる。設置面積は、例えば、通常のサイズの典型的な輸送コンテナ内に容易に輸送及び保管することができるように、約100×約100×約200cmの範囲であり得る。したがって、本製造デバイスは、持ち運び可能であり、例えばパンデミックが発生した地域への輸送が可能になる。それによって、本製造デバイスは、一般に、医薬品(例えば、DNAワクチン、DNA鋳型)の局所的な分散的生産が可能になる。
【0066】
本製造デバイスは、一般に、医薬品の非常に迅速な製造を可能にする。特定の医薬品への製造デバイスの変更及び準備、並びに特定の医薬品自体の製造は、非常に迅速になり得る。調節工程又は較正工程の必要がなくなり得る。洗浄工程の必要性はなくなる、又はより低くなりうる。例えば、ワクチン製造のため回転時間は、約1週間未満とすることができる。
【0067】
本発明の製造デバイスは、一般に、洗浄が非常に容易であり、これにより、洗浄の労力を低減することができる。これは、最初から清潔かつ衛生的な設計であるためである。本発明の製造デバイスは、アルミニウムハウジングを備えてもよく、アルミニウムは、前処理されてもよく、例えば、陽極酸化及び不動態化、例えば銀イオン含有色による抗菌表面仕上げ、電解研磨表面、製造デバイス全体にわたる適合性材料の使用、洗浄目的での製造デバイスの多くの又は全ての部分のアクセス可能性、滑らかで継ぎ目のない洗浄可能な露出表面、最適な自動定置洗浄(CIP)手順及び/又は抗菌洗浄のための調和した内径及び形状、割れ目又は中空領域の封止、凝縮及び沈殿の任意の蓄積の低減又は停止などにより、前処理をされていてもよい。具体的には、ハウジング、チャンバ(単数又は複数)、及び/又は分離要素は、アルミニウム、好ましくはCIPを可能にする表面処理されたアルミニウムで作製され得る。追加的又は代替的に、ハウジングの外側及び/又は内側の表面、具体的にはチャンバ(単数又は複数)内の表面は、抗菌表面仕上げを有してもよい。更に、ハウジング内の装置、具体的には処理チャンバ内の装置は、滑らかな表面を提供するためにカプセル化されてもよい。更に、可動部品又は技術媒体を方向付ける部品は、安全であるために、及び容易な洗浄を可能にするために、カプセル化されてもよい。追加的又は代替的に、ハウジング内の装置、具体的には処理チャンバ内の装置は、壁に、具体的には分離要素に埋め込まれていてもよく、最良の場合、それぞれの壁又は表面と面一になるように埋め込まれていてもよい。これらのオプションにより、洗浄性が改善されるとともに、処理チャンバ内の非同一平面要素による中断又は望ましくない迂回なく、ガス流が維持される。
【0068】
本製造デバイスは、GMP(Guidelines for Good Manufacturing Practice、製造管理及び品質管理の基準)に準拠した条件下で動作されることができる。少なくとも処理チャンバ、好ましくは製造デバイスは、製造管理及び品質管理の基準に関するEUガイドライン、付属書1の要件に従って動作可能である。一実施形態では、GMP要件は、EU Guidelines to Good Manufacturing Practice Medicinal Products for Human and Veterinary Use,Annex 1,Manufacture of Sterile Medicinal Products(corrected version),European Commission,Brussels,25 November 2008(revised)の要件である。別の実施形態では、GMP要件は、FDA(2004)Guidance for Industry,Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing-Current Good Manufacturing Practice,U.S.Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration,Center for Drug Evaluation and Research(CDER)Center for Biologics Evaluation and Research(CBER)Office of Regulatory Affairs(ORA)Pharmaceutical CGMPsの要件である。別の実施形態では、本製造デバイスは、CE規格、ISO規格、又はGAMP5規格に準拠して動作されてもよい。本製造デバイスは、GMP準拠の箱内製造を可能にし得る。GMPに準拠した条件とは、例えば、圧力、湿度、温度、UV吸収、全有機炭素、赤外線吸収スペクトル、流量、電力消費、エラーを引き起こす事象(ドアの開放、漏れ、ショートカット、圧力損失)などの重要なプロセスパラメータ及び/又は品質属性を自動的にロギングし報告するなど、準拠した機械制御及びデータロギングを含み得る。
【0069】
一実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスを備える製造デバイスは、処理チャンバを技術チャンバから分離する分離要素を更に備える。処理チャンバは、医薬品の製造に適しており、そのために使用され得る。技術チャンバは、例えば、ポンプ、モータ、ミキサ、プロセッサなどの装置を収容するのに適しており、そのために使用され得る。分離要素は、プレート形状である。分離要素を使用して、分離要素に装置を取り付けてもよい。取り付けられた装置は、ガス流の乱流又は攪乱を低減し、沈殿を防止し、及び/又は洗浄を容易にするために、被覆されてもよい。分離要素は、処理チャンバと技術チャンバとの間(のみ)に延びていてもよく、あるいはハウジングを少なくとも部分的に又は完全に貫通して延びていてもよい。また、分離要素は、例えば、周囲のクリーンルームのような、周囲環境の一部を分離するためにハウジングの外側に延びていてもよい。
【0070】
一実施形態では、分離要素は、処理チャンバに向かって開口部を有する付属部を備える。付属部は、技術チャンバの方向に突出してもよく、技術チャンバの方向に拡張部を有してもよく、この拡張部は、拡張された処理室部分として機能する。分離要素及び付属部は、ブラインド孔を有するプレートとして理解することができる。付属部を使用して、装置を少なくとも部分的に又は完全に収容してもよい。DNA産物を調製するためのデバイス(代替的に「PCR反応器」と呼ぶこともある)は、付属部内に挿入可能であり得る。したがって、DNA産物を調製するためのデバイス又はPCR反応器は、付属部への挿入を容易にするために、箱を含み、箱に収容され得る。例えば、PCR反応器のようなデバイスは、処理チャンバ内への侵入はないか、又はあってもごくわずかであり得るが、それでも処理チャンバ内に位置しているとみなすことができる。これにより、処理チャンバの長さを増加させることなく、処理チャンバ内の利用可能な空間を増加させることができる。更に、デバイスは、例えば、別の又は新しいPCRプロセス(例えば、異なるPCR反応器が、異なるチューブ長を有することによって、異なるPCRプログラムを反映する)のための異なる装置のプラグアンドプレイを可能にし得る。
【0071】
一実施形態では、DNA産物を調製するためのデバイスの取扱いを容易にするために、DNA産物を調製するためのデバイスを付属部の中及び/又は外で取扱うための少なくともハンドルが、DNA産物を調製するためのデバイスの前面に配置されている。
【0072】
一実施形態では、付属部は、DNA産物を調製するためのデバイスと別のデバイスとの交換を導き、容易にする交換レールシステムを備える。交換レールシステムは、付属部に、又はDNA産物を調製するためのデバイスに(具体的には、その箱に)配置された、交換レールを備え得る。DNA産物を調製するためのデバイスは、例えば、処理チャンバ側からの装置の交換を可能にする及び/又は容易にするために、例えば、トロリー、リフトなどの取扱いデバイスを更に備えることができる。
【0073】
一実施形態では、DNA産物を調製するためのデバイスが付属部に挿入されると、DNA産物を調製するためのデバイスの前面又はその箱の前面が、処理チャンバ内への付属部の開口部と本質的に面一に終端する。その結果、ガス流、具体的にはガスシャワーが、撹乱されないもしくは撹乱が小さくなり、及び/又は沈殿面が減少する。
【0074】
一実施形態では、PCR液の取入口及び/又はDNA産物の排出口は、DNA産物を調製するためのデバイス又はその箱の前面に配置されている。別の実施形態では、熱媒体の取入口及び/又は熱媒体の排出口は、DNA産物を調製するためのデバイスの前面とは反対側の、DNA産物を調製するためのデバイス背面プレートに配置されている。
【0075】
別のあまり好ましくない実施形態では、逆もまた同様であり、付属部は、技術チャンバに向かう開口部と、処理チャンバの方向への拡張部とを有してもよい。全ての場合において、付属部はカバーによって閉鎖可能であり得る。
【0076】
一実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスを備える製造デバイスは、DNA産物を調製するためのデバイスの外側の付属部内に配置された漏れセンサを更に備える。漏れセンサは、DNA産物を調製するためのデバイスの安全性を向上させることができる。第1の態様において上述したように、製造デバイスはまた、近接センサの第2の部分も備えることができ、第1の部分は、第1の態様のデバイスに位置している。デバイスが製造デバイス内に適切に設置されると、近接センサのそれらの2つの部分が接続され、好ましくは設置が成功したことを通知し、かつ/又は、好ましくは、そうなったときだけデバイスを首尾よく動作させ始動させることができる。したがって、それらの2つの部分を含む近接センサはまた、動作中にアクティブであってもよく、近接センサの2つの部分がそれらの間の接続を失うと、アラームがなり、かつ/又は動作が停止されることになり得る。
【0077】
一実施形態では、DNA産物を調製するためのデバイスのチューブを通してPCR液を圧送するためのポンプユニットは、第1の態様のデバイスの外側に配置されている。ポンピングユニットは、医薬品の製造デバイスの処理チャンバ内に配置されることが好ましい。あるいは、ポンピングユニットは、外部ポンピングユニットであってもよい。外部配置により、製造デバイス内の空間を節約することができ、かつ/又は出力の大きいポンピングユニットの使用を可能にすることができる。ポンピングユニットは、ポンプであってもよい。
【0078】
一実施形態では、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスを備える製造デバイスは、医薬品の製造デバイスのケーシングに配置され、医薬品の製造デバイスを別の製造デバイスに結合するように構成された結合ユニットを更に備える。結合ユニットは、2つ以上の製造デバイスの結合を可能にし、容易にすることができる。結果として得られる製造モジュールは、本明細書の第3の態様で説明される。
【0079】
医薬品の製造デバイスは、技術チャンバ及び処理チャンバを有する閉鎖されたハウジングとして理解することができる。一実施形態では、ハウジングは環境に対して密閉されている。同じ又は別の実施形態では、処理チャンバは、技術チャンバに対して密閉されている。本出願を通して、「密閉された」という用語は、少なくともIP64に準拠するものとして理解することができる。IPコードは、筐体によってもたらされる保護等級(IPコード)(IEC 60529:1989+A1:1999+A2:2013);ドイツ語版EN 60529:1991+A1:2000+A2:2013及び/又はISO 20653:2013-02道路車両-保護等級(IPコード)-外来物、水、及びアクセスに対する電気機器の保護に基づいている。「密閉された」という用語は、防塵及び水しぶきに対する保護として理解することができる。「防塵」とは、粉塵の進入がなく、接触から完全に保護されていることと理解することができる。試験の場合、典型的には真空が適用され、試験時間は、空気流に応じて最大8時間であり、詳細は上記で引用した規格に見出すことができる。「水のしぶきに対する保護」とは、振動する器具を10分間使用するか、又は遮蔽物のないスプレーノズルを最低5分間使用して、任意の方向から筐体に水がはねかかっても有害な影響がないことと理解することができ、詳細は上記で引用した規格に見出すことができる。密閉されたハウジング又は密閉された処理チャンバは、特に清浄であるという利点を有することができ、これは、粉塵、空中浮遊生物、又は蒸発粒子などの微粒子を低レベルで有すること、及びそれを維持することを意味する。
【0080】
一実施形態では、処理チャンバは、クリーンルームであり、及び/又は医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する上述のEUガイドライン、付属書1による少なくともグレードDの部屋になるように構成される。好ましくは、処理チャンバは、少なくともグレードCの部屋となるように構成される。より好ましくは、処理チャンバは、少なくともグレードBの部屋となるように構成される。更により好ましくは、処理チャンバは、グレードAの部屋となるように構成される。グレードA~Dの部屋は、利点をもたらし得るものであり、具体的には、清浄に設計されており、これは、粉塵、空中浮遊生物、又は蒸発粒子などの微粒子を極めて低レベルで有すること、及びそれを維持することを意味する。清浄度は、所定の分子尺度における1立方メートル当たりの粒子数によって定量化することができる。A~Dグレードの特徴は、以下の挿入される表1に見出すことができる。これにより、処理チャンバは、ガスの体積当たりの許容される粒子の数及びサイズに従って分類することができる。粒子の数及びサイズは、光散乱、光遮蔽、又は直接イメージングのいずれかに基づく粒子計数によって測定することができる。高強度光源を使用して、粒子が検出チャンバを通過する際に粒子を照射する。粒子は、光源(典型的には、レーザ光又はハロゲン光)を通過し、光散乱を用いる場合、方向変更された光が、光検出器によって検出される。直接イメージングを用いる場合、ハロゲン光で、細胞内の粒子を背面から照射する一方で、通過する粒子を、高解像度、高倍率のカメラで記録する。次いで、記録されたビデオをコンピュータソフトウェアによって分析して、粒子属性を測定する。光遮断(遮蔽)を用いる場合、光の損失が検出される。散乱光又は遮断光の振幅が測定され、粒子が計数され、標準化された計数ビンに集計される。直接イメージング粒子計数では、高解像度カメラ及び光の使用を採用して、粒子を検出する。視覚に基づく粒度測定ユニットは、二次元画像を取得し、それをコンピュータソフトウェアで分析して粒度測定値を取得する。
【0081】
【表1】
【0082】
EU guidelines for good manufacturing practice for medicinal products,annex 1,and the FED-STD-209e(1992)Federal Standard 209-e Airborned Particulate Cleanliness Classes in Cleanrooms and Clean Zones,the ISO(1999)International Standard 14644-1:Cleanrooms and associated controlled environments-Part 1:Certification of Air CleanlinessによるA~Dグレードの部屋の比較。International Organisation for Standardisation,Switzerland、並びに、ISO(2003)International Standard ISO 14698-2:2003 Cleanrooms and associated controlled environments-Biocontamination control-Part 2:Evaluation and interpretation of biocontamination dataを以下の挿入表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
一実施形態では、制御ユニットは、処理チャンバから技術チャンバ内へガス流を提供するようにガス流を制御するように構成される。これは、ガスが処理チャンバから技術チャンバへ、及び技術チャンバ内へと流れることであると理解することができる。同じ又は別の実施形態では、両チャンバは、技術チャンバ内のガス流が処理チャンバ内のガス流と平行であるが反対方向になるように配置される。好ましくは、ハウジング内で、処理チャンバに達する、処理チャンバに入る、処理チャンバを通る、処理チャンバから出る、技術チャンバに達する、技術チャンバに入る、技術チャンバを通る、技術チャンバから出る、というガスの流れが存在するが、全ての工程が必要というわけではない。
【0085】
ガスは、処理チャンバに入る前にハウジングに入ってもよい。ガスは、技術チャンバを出た後にハウジングを出てもよい。したがって、製造デバイスは、ハウジングと環境との間のガス流の通路のためにハウジングを貫通する少なくとも1つのダクトを更に備えてもよい。ダクトは、ガスの入口及び/又は出口であってもよい。好ましくは、ダクトは環境に対して密閉されている。上述したように、「密閉された」という用語は、少なくともIP64に準拠しているだけでなく、防塵であり、水しぶきから保護されていることであると理解することができる。密閉は、シリコーン密閉であってもよい。
【0086】
一実施形態では、ハウジングは、処理チャンバから技術チャンバへのガス流のための通路を備える。通路は、ガスのチャネルであると理解することができる。通路又はチャネルは、ダクトとして、又は処理チャンバ及び技術チャンバの外側で、(下流で)処理チャンバと技術チャンバとの間に配置された中間チャンバとして、提供されてもよい。通路又はチャネルはまた、密閉された導管又は密閉された貫通孔として、分離要素を横断してもよい。上述したように、「密閉された」という用語は、少なくともIP64に準拠しているだけでなく、防塵であり、水しぶきから保護されていることであると理解することができる。密閉された導管は、微粒子を低レベルに維持するという利点を有し得る。密閉された導管はまた、微粒子のレベルを更に低減するためのフィルタ、及び/又はガス流を制御するための弁ユニットを備えてもよい。弁ユニットは、弁、好ましくはスロットル弁であり得る。
【0087】
一実施形態では、制御ユニットは、処理チャンバと環境との間に約5~約100Pa、好ましくは約10~約20Pa又は約15Paの範囲の圧力差を提供するようにガス流を制御するように構成される。圧力差は、好ましくは少なくとも約15Paであり得る。これは、技術チャンバを含む環境内よりも処理チャンバ内の方が圧力が高いことであると理解することができる。少なくとも処理チャンバ内の圧力は、大気圧よりも高くすることができる。処理チャンバ内のより高い圧力により、粒子が処理チャンバに入り、処理チャンバを汚染することがほとんどできなくなる。一実施形態では、制御ユニットは、技術チャンバと環境との間に約-5~約-100Pa、好ましくは約-10~約-20Paの範囲の圧力差を提供するようにガス流を制御するように構成される。圧力差は、好ましくは少なくとも約-15Paであり得る。一実施形態では、制御ユニットは、処理チャンバと技術チャンバとの間に約10~約200Pa、好ましくは約20~約40Paの範囲の圧力差を提供するようにガス流を制御するように構成される。圧力差は、好ましくは少なくとも約30Paであり得る。
【0088】
一実施形態では、処理チャンバ内の圧力は、技術チャンバ内の圧力よりも高い。これは、処理チャンバ内の圧力及び技術チャンバ内の圧力が大気圧よりも高い場合、又は、処理チャンバ内の圧力が大気圧よりも高く、技術チャンバ内の圧力が大気圧と同じである場合、又は、処理チャンバ内の圧力が大気圧よりも高く、技術チャンバ内の圧力が大気圧よりも低い場合のいずれかの場合に満たされる。言い換えれば、一実施形態では、制御ユニットは、技術チャンバ内に環境に対する負圧をもたらすようにガス流を制御するように構成される。
【0089】
一実施形態では、医薬品の製造デバイスは、漏れた流体を回収するための流体回収トレイを更に備える。トレイは、ハウジングの底部に、及び/又は処理チャンバから技術チャンバへの通路内に配置することができる。これは、製品又はチャンバ内に配置された装置を害することなく、湿度を回収することができるので、有益である。湿度は、意図的に実装されてもよく、又は技術チャンバ内のガス膨張から生じてもよい。
【0090】
一実施形態では、医薬品の製造デバイスは、流量センサ、圧力センサ、温度センサ、湿度センサ及び漏れセンサからなる群のうちの少なくとも1つを備えるセンサユニットを更に備える。センサユニットは、ハウジング内に、例えば、分離要素に、処理チャンバ内、技術チャンバ内、それらの間の中間チャンバ内、又は技術チャンバの一部としての中間チャンバ内、分離要素を通る導管内、ハウジングの底部などに配置され得る。センサユニットは、例えば、流量、圧力、温度、湿度、漏れなどを考慮して条件を制御することを可能にすることができる。したがって、センサユニットは、流量センサ、気圧センサ、温度センサ、湿気センサ、微生物センサ、微粒子センサ、有機物センサ、及び漏れセンサからなる群のうちの少なくとも1つを備え得る。
【0091】
一実施形態では、医薬品の製造デバイスは、ハウジングの外壁に配置され、製造デバイスを別の製造デバイスに結合するように構成された結合ユニットを更に備える。その別の製造デバイスは、上述した医薬品の製造デバイスと同様であってもよく、あるいは、異なるデバイスであってもよい。結合ユニットは、少なくとも2つの製造デバイスの機械的結合を可能にすることができる。結合ユニットは、少なくとも2つの製造デバイスの流体連通及び結合を可能にすることができる。結合ユニットは、少なくとも2つの製造デバイスのデータ通信及び結合を可能にすることができる。流体連通は、具体的には、ある製造デバイスから別の製造デバイスへ医薬品を輸送すること、例えば、第1の製造デバイスで精製及び/又は濾過された後のDNA鋳型を、この第1の製造デバイスから第2の製造デバイスへ輸送することを含み、DNA鋳型は、その後、第2の製造デバイスに含まれるRNA生成ユニットにおいて使用され得る。
【0092】
また、結合ユニットは、品質管理ユニットを備えるように構成されることが好ましく、この品質管理ユニットは、連通、好ましくはデバイス同士の間の流体連通から取得及び/又は提供される試料を分析するのに適している。したがって、上で例示したように、例えば、DNA鋳型が第1のデバイスから第2のデバイスに輸送される場合、試料は、好ましくは結合ユニット内に位置する又は結合ユニットに位置する品質管理ユニットによって採取及び分析され得る。
【0093】
医薬品は、医薬品有効成分(例えば、DNAワクチン)又はその任意の前駆体もしくは任意の中間体(例えば、RNAインビトロ転写のためのDNA鋳型)として理解することができる。したがって、医薬品は、薬剤中で使用され、疾患の治療又は予防のために例えばヒト被験者に投与される医薬品有効成分、又はその中間体であり得る。
【0094】
DNAベースの医薬品の生産
具体的には、DNAワクチン(例えば、脂質ナノ粒子カプセル化DNAワクチン)など、DNAベースの医薬品を生産することが望ましい場合がある。本質的には、ターゲットの配列、例えば、ウイルスタンパク質(例えば、SARS-CoV2の場合はスパイクタンパク質)の配列が分かれば、DNAワクチンの生産を開始することができる。次いで、このプロセスでは、典型的には、i)所望の配列を有するDNAのデノボ合成;ii)本出願の第1の態様によるデバイスによるDNA増幅、任意選択で、その後に続くDNA修飾;iii)製剤中へのDNAのカプセル化;及びiv)製品の充填及び仕上げ、という工程が続き、各工程は前の工程を踏まえて構築される。当然のことながら、典型的な精製及び濾過工程もまた、適用可能な場合には、前述の工程同士の間に行われることになる。
【0095】
この実施形態では、本出願による医薬品の製造デバイスは、処理媒体供給ユニット、混合ユニット、デノボDNA合成ユニット、製剤ユニット、精製ユニット、濾過ユニット、DNA修飾ユニット、充填及び仕上げユニット、並びにそれらの組み合わせからなる群のうちの少なくとも1つを更に備える。必要となるユニットは、1つの製造デバイス内に存在する、あるいは第3の態様において本明細書で説明されるような製造モジュールをもたらすように結合される少なくとも2つの製造デバイス内に存在する、のいずれであってもよい。特に好ましい実施形態では、各ユニットは、技術チャンバ内に位置する、技術媒体供給源と、処理チャンバ内に位置する、処理媒体供給源及び/又は処理媒体と接触するように構成されたデバイスと、技術媒体供給源と、処理媒体と接触するように構成されたデバイスと、を接続するように構成された、分離要素に位置する密閉貫通孔と、を備える。ユニットは、更に、例えば、洗浄緩衝液又は副産物が回収される廃棄物出口を含んでもよい。
【0096】
好ましい実施形態では、第1の態様によるデバイスを備える医薬品の製造デバイスは、処理媒体供給ユニット、混合ユニット、精製ユニット、任意選択のDNA修飾ユニット、及び濾過ユニットを更に備え、これらのユニットは、好ましくは、i)処理媒体供給ユニット、ii)混合ユニット、iii)第1の態様によるデバイス、任意選択でその後に続くDNA修飾ユニット、iv)精製ユニット、及びv)濾過ユニットの順序で接続され、このデバイスは、DNAを増幅するように構成され、増幅されたDNAは、任意選択で修飾される。第1の態様によるデバイスのためのDNA鋳型は、本実施形態による製造デバイスに接続された別の製造デバイスにおいて、デノボ合成されたDNAとして生成することができる。増幅されたDNAは、本実施形態のデバイスに接続され、DNA製剤ユニットを備える別個の製造デバイスにおいて使用され得る。
【0097】
RNAベースの医薬品の生産
具体的には、RNAワクチン(例えば、脂質ナノ粒子カプセル化RNAワクチン)など、RNAベースの医薬品を生産することが望ましい場合がある。本質的には、ターゲットの配列、例えば、ウイルスタンパク質(例えば、SARS-CoV2の場合はスパイクタンパク質)の配列が分かれば、RNAワクチンの生産を開始することができる。次いで、このプロセスでは、典型的には、i)所望の配列を有するDNAのデノボ合成;ii)本出願の第1の態様によるデバイスによるDNA鋳型の生成、任意選択で、その後に続くDNA修飾;iii)RNA生成;iv)製剤中へのRNAのカプセル化;及びv)製品の充填及び仕上げ、という工程が続き、各工程は前の工程を踏まえて構築される。当然のことながら、典型的な精製及び濾過工程もまた、適用可能な場合には、前述の工程同士の間に行われることになる。
【0098】
この実施形態では、本出願による医薬品の製造デバイスは、処理媒体供給ユニット、混合ユニット、デノボDNA合成ユニット、DNA修飾ユニット、RNA生成ユニット、製剤ユニット、精製ユニット、濾過ユニット、充填及び仕上げユニット、並びにそれらの組み合わせからなる群のうちの少なくとも1つを更に備える。必要となるユニットは、1つの製造デバイス内に存在する、あるいは第3の態様において本明細書で説明されるような製造モジュールをもたらすように結合される少なくとも2つの製造デバイス内に存在する、のいずれであってもよい。特に好ましい実施形態では、各ユニットは、技術チャンバ内に位置する、技術媒体供給源と、処理チャンバ内に位置する、処理媒体供給源及び/又は処理媒体と接触するように構成されたデバイスと、技術媒体供給源と、処理媒体と接触するように構成されたデバイスと、を接続するように構成された、分離要素に位置する密閉貫通孔と、を備える。ユニットは、更に、例えば、洗浄緩衝液又は副産物が回収される廃棄物出口を含んでもよい。
【0099】
好ましい実施形態では、第1の態様によるデバイスを備える医薬品の製造デバイスは、処理媒体供給ユニット、混合ユニット、精製ユニット、任意選択のDNA修飾ユニット、及び濾過ユニットを更に備え、これらのユニットは、好ましくは、i)処理媒体供給ユニット、ii)混合ユニット、iii)第1の態様によるデバイス、任意選択でその後に続くDNA修飾ユニット、iv)精製ユニット、及びv)濾過ユニットの順序で接続され、このデバイスは、鋳型DNAを産生するように構成され、増幅されたDNAは、任意選択で修飾される。この鋳型DNAは、本実施形態のデバイスに接続され、RNA生成ユニットを備える別個の製造デバイスにおいて使用され得る。
【0100】
上記に開示されたユニットは、以下の第3の態様において更に詳細に説明される。
DNAベースの医薬品の生産及びRNAベースの医薬品の生産の両方に関して、本発明の第1の態様によるデバイス(第2の態様による製造デバイスに含まれる)は、当然ながら、具体的には、結果として得られるPCR条件及びサイクルが増幅対象のこの特定のDNAについて最適になるように、区画を通して巻かれて積み重ねられたチューブを有することによって増幅対象の特定のDNAの増幅に適するようになる。第2の別のDNAの増幅が必要になった場合、第1のデバイス又はPCR反応器は、製造デバイス内で、具体的には、結果として得られるPCR条件及びサイクルがこの増幅対象の第2のDNAに最適になるように、区画を通して巻かれて積み重ねられたチューブを有することによって、増幅対象の第2のDNAの増幅に適した、第1の態様による別のデバイス又はPCR反応器と容易に交換することができる。したがって、製造デバイスは、対象となる特定のDNAの増幅に適したPCR反応器を容易に装備(又は「装填」)することができ、この容易な取扱い及び適合のそれぞれを、「プラグアンドプレイ」システムと呼ぶことがある。
【0101】
第3の態様では、本発明は、医薬品の製造モジュールを対象とする。製造モジュールは、第2の態様によるデバイスを含む少なくとも2つの製造デバイスを備える。少なくとも2つの製造デバイスは互いに結合されている。この結合は、少なくとも2つの製造デバイスの機械的結合を可能にすることができる。この結合は、少なくとも2つの製造デバイスの流体連通及び結合を可能にすることができる。この結合は、少なくとも2つの製造デバイスのデータ通信及び結合を可能にすることができる。流体連通は、具体的には、あるデバイスから別のデバイスへ医薬品を輸送すること、例えば、第1のデバイスで精製及び/又は濾過された後のDNA鋳型を、この第1のデバイスから第2のデバイスへ輸送することを含み、DNA鋳型は、その後、第2のデバイスに含まれるRNA生成ユニットにおいて使用され得る。
【0102】
製造モジュールは、具体的には、DNA鋳型の産生のためのものとすることができ、処理媒体供給ユニット、混合ユニット、第1の態様によるデバイス(「DNA鋳型生成ユニット」と呼ぶこともある)、任意選択のDNA修飾ユニット、精製ユニット、及び濾過ユニットを備えてもよく、ユニット同士は、好ましくは、列挙された順序で接続され、モジュールは、鋳型DNAを産生するように構成される。増幅プロセス(又は「DNA鋳型生成プロセス」)は、第1の態様によるデバイスを使用して行われる。
【0103】
製造モジュールは、第2の態様による医薬品の製造デバイスを備え、処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを備える製造デバイス、精製ユニットを備える製造デバイス、並びに濾過ユニットを備える製造デバイスからなる群から選択される少なくとも1つの製造デバイスを更に備え得る。
【0104】
一実施形態では、製造モジュールは、(i)処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを備える第1の製造デバイスと、(ii)第2の態様による第2の製造デバイスと、(iii)精製ユニットを備える第3の製造デバイスと、(iv)濾過ユニットを備える第4の製造デバイスとを備え、これらのデバイスは、列挙された順序で接続されることが好ましい。このような製造モジュールは、好ましくはPCR液中に処理媒体供給源の形態で提供されるDNA(任意選択で、デノボ合成されたDNA)から、DNA鋳型を産生するように構成される。言い換えれば、このような製造モジュールは、少量のDNA(デノボ合成されたDNAであってもよく、先行する製造モジュールによって産生され得る)から大量の鋳型DNAを産生するように構成される。この鋳型DNAは、更に別の製造デバイスに含まれるDNA修飾ユニットによって任意選択で修飾されてもよい。
【0105】
この鋳型DNAは、具体的には、RNAインビトロ転写によってRNA、好ましくはmRNAを産生する場合に使用することができる。したがって、組み合わされた製造モジュールまた別個の製造モジュールのいずれかに、(得られたDNAをRNAに転写するための)RNA生成ユニットが含まれ得る。
【0106】
一実施形態では、製造モジュールは、処理媒体供給ユニット、混合ユニット、デノボDNA合成ユニット、第1の態様によるデバイス(「DNA鋳型生成ユニット」と呼ぶこともある)、任意選択でDNA修飾ユニット、精製ユニット、濾過ユニット、製剤ユニット、及びRNA生成ユニットを備え、これらのユニットは、好ましくは、i)処理媒体供給ユニット、ii)混合ユニット、iii)デノボDNA合成ユニット、iv)精製ユニット、v)濾過ユニット、vi)処理媒体供給ユニット、vii)混合ユニット、viii)任意選択でDNA修飾ユニットと組み合わせた、第1の態様によるデバイス、ix)精製ユニット、x)濾過ユニット、xi)処理媒体供給ユニット、xii)混合ユニット、xiii)RNA生成ユニット、xiv)精製ユニット、xv)濾過ユニット、xvi)処理媒体供給ユニット、xvii)製剤ユニット、xviii)精製ユニット、及びxix)濾過ユニット、の順序で配置されており、モジュールは、好ましくは、製剤化RNA、好ましくは製剤化mRNA、より好ましくはLNP製剤化mRNAを産生するように構成される。
【0107】
一実施形態では、医薬品の製造モジュールは、i)処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを備える製造デバイス、ii)デノボDNA合成ユニットを備える製造デバイス、iii)精製ユニットを備える製造デバイス、iv)濾過ユニットを備える製造デバイス、v)処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを備える製造デバイス、vi)、任意選択でDNA修飾ユニットと組み合わせた、第2の態様による製造デバイス、vii)精製ユニットを備える製造デバイス、viii)濾過ユニットを備える製造デバイス、ix)処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを備える製造デバイス、x)RNAインビトロ転写のためのバイオリアクタを備える製造デバイス、xi)精製ユニットを備える製造デバイス、xii)濾過ユニットを備える製造デバイス、xiii)処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを備える製造デバイス、xiv)濾過ユニット、好ましくは接線流濾過ユニットを備える製造デバイス、xv)濾過ユニット、好ましくは滅菌フィルタを備える製造デバイスを備え、これらのデバイスは、所定の順序で結合されている。このモジュールは、製剤化RNA、好ましくは製剤化mRNA、より好ましくはLNP製剤化mRNAを産生するように構成されていることが好ましい。
【0108】
本医薬品製造モジュールは、非常に柔軟で汎用性の高いプラットフォームを提供する。本医薬品製造モジュールは、種々の目的及び用途に適合させることができる。本医薬品製造モジュールは、医薬品のモジュール式製造又は生産を可能にする。本医薬品製造モジュールは、モジュール式製造に適した物体として理解されてもよく、これは、本医薬品製造モジュールが種々の目的に適合され得ることを意味する。特定の製造方法に対して1つの物体で十分であることもあるし、又はいくつか物体が、例えば、製造ライン又は製造チェーンの形態で接続され、特定の製造方法を行ってもよい。このようなモジュール設計により、取扱い、プロセス改善、及び/又はメンテナンスを、容易にすることが可能になる。本製造モジュール内で使用される技術及び操作、並びに製品接触材料の選択は、使用前に事前評価され、高品質な医薬品の製造がもたらされ得る。その結果、本製造モジュールは、医薬品の非常に堅牢で再現可能な製造を可能にする。更に、本製造モジュールは、一般に、医薬品の(完全な又は部分的な)自動製造を可能にする。
【0109】
一実施形態では、処理媒体供給ユニットは、処理チャンバ内に処理媒体供給容器を保持するように構成された取付要素を備える。典型的には、複数の取付要素が存在し、それぞれが処理媒体供給容器を保持するように構成されており、この処理媒体供給容器は、例えば滅菌チューブを介して、DNAデノボ合成ユニット、DNA鋳型生成ユニット、RNA生成ユニット、又は製剤ユニットなど、下流のユニット又はデバイスに接続されている。下流のユニット又はデバイスは、例えば、逆相HPLCカラムなどの精製ユニットであってもよい。処理媒体は、PCR反応における増幅のための合成DNA、PCR成分混合物、水、インビトロ翻訳緩衝液、UTP、GTP、ATP及びCTPを含むヌクレオチド、RNAポリメラーゼを含む酵素、洗浄緩衝液と、試薬緩衝液(例えば固定化緩衝液)と、溶出緩衝液とを含む緩衝液、HPLC緩衝液、脂質溶液を含む製剤溶液、並びにHPLC溶離液からなる群から選択することができる。
【0110】
一実施形態では、混合ユニットは、ミキサを備える。また、混合ユニットは、ポンプユニット(例えば、シリンジポンプ、無脈流ポンプ、蠕動ポンプなど)を含んでもよい。混合ユニットは、例えば、DNA鋳型生成ユニット又はRNA生成ユニットのいずれかと組み合わせて使用されてもよく、混合ユニットは、DNA鋳型生成ユニット又はRNA生成ユニットのいずれかの上流に存在しており、後続のDNA鋳型生成ユニット又はRNA生成ユニットに対してそれぞれのマスターミックスを提供する。また、混合ユニットは、多価医薬品、例えば、少なくとも2つの異なるRNA配列を含む多価RNAベースの医薬品などが生産される場合にも使用され得る。このような多価RNAベースの医薬品の場合、混合ユニットを使用して、少なくとも2つの異なるRNA(すなわち、異なる配列を有する少なくとも2つのRNA)を、これらのRNAが製剤ユニットで製剤化される前に混合することができる。あるいは、多価RNAベースの医薬品を得るために、既に製剤化された少なくとも2つの異なるRNAを混合ユニットによって混合してもよい。
【0111】
また、混合ユニットは、核酸製品、具体的には、RNAを製剤化するときにも使用されてもよく、この場合には、製剤ユニットと呼ばれることがある。したがって、脂質ナノ粒子(LNP)、又はリポソームカプセル化RNA、又はポリカチオン性ペプチドもしくはタンパク質(例えば、プロタミン又は高分子担体、例えば国際公開第2012/013326号に記載のポリエチレングリコール/ペプチドポリマーなど)と複合体化されたRNAが生成される場合の製剤化に、混合ユニットを使用することができる。製剤化の文脈において、混合ユニットは、少なくとも2つのポンプユニット(例えば、脂質を圧送するための1つのユニット、RNAを圧送するための1つのユニット)、及び任意選択で、複合体化/製剤化のための反応器(例えば、Tピースコネクタ)を含み得る。
【0112】
一実施形態では、デノボDNA合成ユニットは、長さ約200ヌクレオチドのDNAオリゴヌクレオチドを得るために、典型的には、ホスホラミダイト法を使用する、DNAのための固相合成ユニットと、保護された2’-デオキシヌクレオシドに由来する、対応するホスホラミダイト構築ブロックと、を備える。好ましくは、完全に自動化された様式において、ホスホラミダイト構築ブロック同士が、産生する配列(インシリコ設計された配列と呼ぶこともある)に従って連続的に結合され、オリゴヌクレオチド産物は、典型的には、固相から溶液に放出され、次いで、脱保護され、回収される。デノボDNA合成ユニットは、適用可能な場合、より長い配列を得るために、ホスホラミダイト法によって得られた少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを組み立てる(又は結合する)ように更に構成され得る。上記のように、精製ユニットが、典型的には、デノボDNA合成ユニットの後に続いている。また、デノボDNA合成は、酵素プロセス、例えば、国際公開第2015159023号に記載されるような末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)に基づいてもよい。更に、デノボDNA合成ユニットは、デノボ合成されたDNAを適切なDNA骨格にライゲーションするためのライゲーションユニットを備えてもよい。
【0113】
一実施形態では、DNA修飾ユニットは、増幅されたDNAを酵素的又は化学的に修飾するための好適な手段を備える。酵素的修飾は、例えば、特定の位置でDNAを切断するための(例えば、ポリ(A)を末端にもつDNAを提供するための)制限エンドヌクレアーゼによる消化反応であってもよい。化学的修飾は、例えば、5’及び/又は3’末端とタグなどとの結合、あるいは5’及び/又は3’末端の化学的修飾であってもよい。このようなDNA修飾ユニットは、連続モードで動作可能であってもよく、連続モードでは、例えば、本出願の第1の態様によるデバイスから得られた増幅されたPCR産物が、DNA修飾ユニットに供給される。DNA修飾ユニットが制限エンドヌクレアーゼによる酵素的DNA修飾のために構成されている場合、(例えば、国際公開第2016174227号に記載されているように)それぞれの制限エンドヌクレアーゼが固定化されていることが好ましい。上記で定義したDNA修飾ユニットは、いくつかの実施形態では、第1の態様のデバイスに含まれていてもよい。
【0114】
一実施形態では、RNA生成ユニットは、RNAインビトロ転写のためのバイオリアクタ、好ましくは国際公開第2020/002598号に開示されているバイオリアクタを備える。具体的には、国際公開第2020/002598号の請求項1~59によって定義されるような、又は国際公開第2020/002598号の図1図14によって例示されるようなバイオリアクタが、RNA生成ユニットとして使用され得る。バイオリアクタ内で、鋳型として使用されるDNAが磁性粒子上に固定化されていること、及びバイオリアクタが、磁性粒子上に固定化されたDNAを含む反応溶液を混合するための磁石を備えることが、バイオリアクタにとって特に好ましい。
【0115】
一実施形態では、精製ユニットは、HPLCユニット、好ましくはRP-HPLCを行うためのユニットを備える。その文脈において特に好ましいのは、国際公開第2008/077592号に開示された方法を使用するRP-HPLCであって、好ましくは多孔性非アルキル化ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)逆相を使用するRP-HPLCであり、逆相はビーズによって形成されるか、又は重合ブロック(例えば、モノリシック)として生じる。代替的に又は付加的に、精製ユニットは、アフィニティークロマトグラフィーユニット、好ましくは、オリゴdT官能化マトリックス又はビーズ又はカラムを介して、(例えば、国際公開第2014152031A1号に記載されているように)ポリアデニル化核酸、具体的にはRNAを、アフィニティー精製するためのオリゴdT精製ユニットを備えてもよい。代替的に又は付加的に、精製ユニットは、陰イオン交換クロマトグラフィーユニットを備えてもよい。代替的に又は付加的に、精製ユニットは、核酸沈殿のためのユニットと、その沈殿した核酸を(例えば、TFF、又は遠心分離、又は濾過を使用して)精製するためのユニットと、を備えてもよい。代替的に又は付加的に、精製ユニットは、dsRNA除去のためのユニット、例えば、RNase III処理を含むユニット、又はセルロースによるdsRNA精製の工程を含むユニットを備えてもよい。精製ユニットは、具体的には核酸を精製するために使用され得、好ましくは、デノボDNA合成ユニットで得られた鋳型DNA、第1の態様によるデバイスで得られたDNA、及び/又はRNA生成ユニットで得られたRNAを精製するために使用され得る。好ましい実施形態では、精製ユニット、具体的には、RNAを精製するための精製ユニットは、RP-HPLCユニット、及びオリゴdT精製ユニット、並びに任意選択でdsRNA除去のためのユニットを備える。
【0116】
一実施形態では、濾過ユニットは、接線流濾過ユニットを備える。その文脈において特に好ましいのは、国際公開第2016/193206号に記載されているよう接線流濾過であり、TFFは、核酸の透析濾過及び/又は濃縮及び/又は精製のために使用される。濾過ユニットは、精製ユニットの後に、具体的には、核酸を濾過するため、好ましくは、鋳型DNA又はRNAを濾過するために使用され得る。また、特に、RNA、具体的にはmRNA、より具体的にはLNP製剤化mRNAを含む製剤を滅菌濾過するために、濾過ユニットは、滅菌フィルタ、好ましくは0.22μmのサイズの滅菌フィルタを備えることが好ましい場合がある。
【0117】
好ましい実施形態では、充填及び仕上げユニットは、充填及び/又は投入機を備える。充填及び仕上げユニットは、製剤化医薬品、特に、製剤化医薬品有効成分(具体的には、製剤化RNA、より具体的にはLNP製剤化mRNA)を、製剤化医薬品有効成分の1回分又は複数回分の用量に相当する量で、ガラスバイアルなどの好適なバイアルに充填するように構成される。典型的には、ガラスバイアルなどのバイアルは、滅菌条件下でキャップ(例えば、アルミニウムキャップ)で閉じられる。実施形態では、充填及び仕上げユニットは、得られた薬物製品を、少なくとも-20℃、好ましくは少なくとも-60℃又は-80℃に凍結するための凍結ユニットを備える。
【0118】
第4の態様において、本発明は、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製する方法を対象とする。DNA産物を調製するための方法は、必ずしもこの順序ではないが、
-第1の区画、第2の区画、及びチューブを準備する工程であって、チューブが、少なくとも第1の区画から第2の区画へ、及び第2の区画から第1の区画へと巻かれており、区画から区画へと巻かれたチューブが、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成している、工程と、
-各区画内の別個の温度を調節するための手段を準備する工程と、
-チューブを通してPCR液を導き、それによって各区画内の別個の温度を通してPCR液を導き、PCR液に基づいたDNA産物を調製する工程と、
を含む。
【0119】
DNA産物を調製するための本発明による方法は、異なる条件、要件、及び例えばDNAの量に、柔軟に適応することを可能にする。本発明の方法は、大量のDNA(例えば、1回の反応当たり2mg超、更には最大g量)の調製を可能にする。更に、DNA産物の調製はスケーラブルであり得る。DNA産物を調製するための本発明の方法は、DNA産物の非常に迅速な調製を可能にし、それによって、医薬品の迅速な製造も可能にする。また、特定のDNA産物に対するDNA産物を調製するためのデバイスの変更及び適合も、非常に迅速であり得る。調節工程又は較正工程の必要がなくなり得る。洗浄工程の必要性はなくなる、又はより低くなりうる。例えば、ワクチン製造のための回転時間は、約1週間未満とすることができる。
【0120】
一実施形態では、第1の区画内の温度は、ポリメラーゼ連鎖反応の変性工程のために設定され、第2の区画内の温度は、ポリメラーゼ連鎖反応のアニーリング工程のために設定され、また任意選択で、ポリメラーゼ連鎖反応の伸長工程のために設定される。
【0121】
一実施形態では、第1の区画内の温度は、約85℃~約105℃の範囲、好ましくは約98℃である。一実施形態では、第2の区画内の温度は、約45℃~約72℃、好ましくは約60℃~約72℃の範囲である。
【0122】
一実施形態では、本方法は、第3の区画の準備を含む。チューブは、少なくとも第2の区画から第3の区画へと巻かれ、その後、第1の区画に戻る。第3の区画内の温度は、PCRの伸長工程のために設定されており、好ましくは、約65℃~約75℃の範囲であり、好ましくは、約72℃である。
【0123】
一実施形態では、DNA産物を調製するための方法は、GMPに準拠した条件下で行われる。
一実施形態では、各区画内の別個の温度を調節する手段は、(各区画内の別個の温度を調節するために)各区画の熱媒体入口及び熱媒体出口による、各区画を通る別個の熱媒体流の提供であり得る。
【0124】
別の実施形態では、各区画内の別個の温度を調節するための手段は、各区画内に含まれる(任意選択で、ベンチレータに接続される)、加熱ユニット(具体的には、加熱カートリッジ)、及び任意選択で冷却ユニット(具体的には、熱電冷却器)であってもよい。
【0125】
第5の態様では、本発明は、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための、第1の態様によるDNA産物を調製するためのデバイスの使用、医薬品の生産のための、第2の態様による医薬品の製造デバイスの使用、及び医薬品の生産のための、第3の態様による製造モジュールの使用を対象とする。
【0126】
医薬品は、製剤化されてもよい。医薬品は、好ましくは、生体分子又はその任意の前駆体もしくは任意の中間体の形態の医薬品有効成分であり、生体分子は、好ましくは核酸であり、より好ましくはDNAである。製造は、好ましくはGMPに準拠している。
【0127】
一実施形態では、上記の使用は自動化されている。これは、第1の態様によるキャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイス、第2の態様による医薬品の製造デバイス、又は第3の態様による製造モジュールの、使用又は動作を、完全に又は部分的に自動化することができることを意味する。これは、医薬品のより信頼性の高い、より迅速な、かつ/又はより費用効果の高い製造を可能にすることができる。
【0128】
上記の本発明の態様は、独立請求項に記載の、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスと、医薬品の製造デバイスと、医薬品の製造モジュールと、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための方法と、ポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイスの使用と、医薬品の生産のためのデバイスの使用と、にあてはまり、具体的には従属請求項に定義されるような、類似及び/又は同一の好ましい実施形態を有することに留意されたい。更に、本発明の好ましい実施形態は、従属請求項とそれぞれの独立請求項との任意の組み合わせであってもよいことを理解されたい。
【0129】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
以下に示す図は、単なる例示であり、本発明を更に説明するものである。これらの図は、本発明をそれらの図に限定するものと解釈されるべきではない。
図1】キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための本発明によるデバイスの上面図を示す。
図2】キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための本発明によるデバイスの側面図を示す。
図3】巻かれたチューブの3D側面図を示す。
図4】いくつかのスタンドの周りに巻かれたチューブの3D側面図を示す。
図5】医薬品の製造デバイスの3D図を示す。
図6a】医薬品の製造デバイスに挿入される、DNA産物を調製するためのデバイスを収容する箱の3D図を示す。
図6b】医薬品の製造デバイスに挿入される、DNA産物を調製するためのデバイスを収容する箱の3D図を示す。
図7】本発明による医薬品の製造モジュールを概略的かつ例示的に示す。
図8】本発明によるデバイスの3D側面図を示す。
図9】本発明によるデバイスの上部の3D側面図を示す。
図10】製造デバイスに挿入されるデバイスを収容する箱の3D側面図を示す。
図11】デバイスを収容する箱が製造デバイスに挿入された状態で、製造デバイスを拡大した3D図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0131】
図1は、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための本発明によるデバイス1の上面図を示す。図2は、キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための本発明によるデバイス1の側面図を示す。図8は、本発明によるデバイスの3D側面図を示す。図2では、DNA産物を調製するためのデバイス1が、本発明による医薬品の製造デバイス10内に取り付けられており、これについては、図5を参照してより詳細に説明する。DNA産物は、APIとして使用されることになるDNA、又は酵素的RNAインビトロ転写(RNAは、APIである)のためのDNA鋳型であり得る。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、数桁にわたってDNAを合成的に増幅し、特定のDNA配列の数千~数百万のコピーを生成する技術である。キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応は、キャピラリー又はチューブ6内で行われるPCRとして理解することができる。DNA産物を調製するための本デバイス1は、大量のDNA産物の柔軟かつ迅速な調製を可能にする。DNA産物を調製するためのデバイス1は、柔軟かつ迅速なワクチン生産、具体的には、DNAワクチン生産又は酵素的RNAインビトロ転写のためのDNA鋳型の生産に使用され得る。本デバイス1は、具体的には、例えば感染症のエピデミック時及びパンデミック時に、mRNAベースのワクチンのためのDNA鋳型を調製するために使用され得る。
【0132】
図1及び図8に示すように、DNA産物を調製するためのデバイス1は、チューブ6と、第1の区画7と、第2の区画8と、第3の区画15とを備える。チューブ6又はキャピラリーは、約0.5mm~約50mm、好ましくは約0.5mm~約1.5mm、より好ましくは約0.75~約1.25mmの範囲であり得る非常に小さい直径を有する。チューブ6は、第1の区画7から第2の区画8へ、及び第2の区画8から第3の区画15へと巻かれている。チューブ6は、その後、第1の区画7に戻る。PCR液は、チューブ6に充填され、それによって3つの区画を通して導かれ得る。図2及び図8に示すように、区画は、例えば熱媒体(図2参照)又は熱固体(図8参照)によって充填される独立した槽として理解することができる。ここで、槽は、断熱材によって、少なくとも部分的に、好ましくは完全に囲まれており、断熱材は、隔壁14(図1参照)であってもよく、又は内部区画壁30(図8参照)(任意選択で、隔壁14と組み合わされる)であってもよい。
【0133】
チューブ6は、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成するように巻かれており、これは、側面図で見たときに、巻回からなる螺旋、渦巻き、又はコイルとして理解することができる。図3は、巻かれたチューブ6の3D側面図を示す。いくつかの巻回の層(例えば、30個)が存在し得る。チューブ6の螺旋状の延伸方向又はスタック方向は、DNA産物を調製するためのデバイス1の底部によって形成されるx、y平面、又は床によって形成される平面に対して本質的に垂直なz方向に延びている。
【0134】
図1及び図8に戻ると、チューブ6は、第1の区画7から第2の区画8へ、及び第2の区画8から第3の区画15へと巻かれるだけでなく、更に、第3の区画15から第1の区画7へ、第1の区画7から第2の区画8へ、及び第2の区画8から第3の区画15へなどと巻かれている。各チューブ巻回は、1回のPCRサイクルを表している。
【0135】
チューブ6は、3つの区画内で波状に延びており、このことは、上面図で見たときに、チューブ6が、3つの区画の全ての内部で、波又は蛇の形状を有することで理解することができる。チューブ6の波形は、DNA産物を調製するためのデバイス1の底部によって形成される平面又は床によって形成される平面のx方向及びy方向に延びている。チューブ6の波形形態は、それぞれの区画におけるPCR液の滞留時間を規定する。チューブ6の波形方向は、チューブ6のスタック方向に対して本質的に垂直である。
【0136】
図1に示されるように、DNA産物を調製するためのデバイス1は、PCR混合物のためのPCR液入口20を更に備え、このPCR液入口20は、チューブ6を通してPCR液を圧送するための外部ポンプユニット又はポンプ(37)に接続可能である。DNA産物を調製するためのデバイス1は、PCR液体産物のためのDNA産物出口25を更に備える。代替的に、PCRデバイスは、チューブ6を通してPCR液を圧送するための内部ポンプユニット又はポンプ(37)を備えてもよい。図1に示されるように、PCR液入口20は第1の区画に位置してもよく、一方、DNA産物出口25は第3の区画に位置してもよい。
【0137】
図1及び図2に示すように、本実施形態におけるDNA産物を調製するためのデバイス1は、3つの区画の各々において熱媒体入口12及び熱媒体出口13を更に備える。上述したように、デバイス1は、各区画内の温度を調節するための他の手段を備えてもよい。熱媒体が使用される場合、熱媒体は、それぞれの熱媒体入口12によって3つの区画の各々に入ることができ、それぞれの熱媒体出口13によって3つの区画の各々から出ることができる。これは、それぞれの区画を通る熱媒体の流れをもたらし得る。熱媒体出口13は、気泡の除去を容易にするために上部に配置されることが好ましい。
【0138】
熱媒体は、液体熱担体として理解することができ、熱サイクルによってDNA産物を調製するために、3つの区画に3つの異なる温度ゾーンを提供するために使用することができる。3つの温度ゾーンは、変性、アニーリング、及び伸長のためのPCRの温度プロファイルに対応している。PCR液は、チューブ壁によって、区画内の熱媒体から分離されている。チューブ壁は、PCR液と区画の内部、例えば、熱媒体との間の温度交換を可能にし、温度交換は、例えば、熱媒体によって、PCR液を加熱又は冷却するために使用され得る。
【0139】
熱媒体入口12及び熱媒体出口13は、この実施形態では、チューブ6内のPCR液のガイド方向に対して本質的に反対方向に区画を通る熱媒体流を提供するように、各区画内に配置されている。図1に示されるように、これは、左上から右下へのPCR液のガイド方向の場合には、熱媒体入口12及び熱媒体出口13が、右下から左上への反対方向の熱媒体流を提供するように配置されることであると理解することができる(第1の区画7内の矢印を参照)。熱媒体とPCR液との対向流は、熱媒体とPCR液との間の温度交換を向上させる。
【0140】
図8に示すように、この実施形態におけるデバイス1は、隔離部28と、外壁部29と、区画7、8及び15の各々においてチューブを波状に囲む内部区画壁30とを備える。各区画は、少なくとも1つの加熱ユニット31(ここでは加熱カートリッジとして示されている)だけでなく、必要に応じて冷却のために使用することができる、ここではヒートパイプ32である冷却ユニットを備えている。この実施形態では、内部区画壁30によって囲まれた各区画内の空間(この空間がチューブ6を囲んでいる)は、任意選択で液体又はゲルと組み合わされた、熱固体(例えば、アルミニウムペレットなど)で充填され、熱固体は、各区画内に特定の温度を提供するために、少なくとも1つの加熱ユニット31によって加熱されるだけでなく、必要であれば、冷却ユニット(ヒートパイプ32を備える)によって冷却される。区画及び/又は取り囲んでいる外壁部29の間の空間、すなわちチューブ6を取り囲んでいない空間には、合成材料(例えば、合成ボール又は顆粒)を充填することができる。図9は、図8に示されるデバイス1の上面図を示し、隔離部28及び外壁部29が図示され、また加熱ユニット31の上部並びにヒートパイプ32が図示される。ヒートパイプ32には、熱電冷却器33(例えば、ペルチェ素子付き銅ブロック)及びベンチレータ34が接続され、熱を運び去る。また、本実施形態では、熱サイクルによってDNA産物を調製するために、3つの区画に3つの異なる温度ゾーンが提供される。3つの温度ゾーンは、変性、アニーリング、及び伸長のためのPCRの温度プロファイルに対応している。PCR液は、チューブ壁によって、区画内の熱固体から分離されている。
【0141】
図1及び図8に示すように、DNA産物を調製するためのデバイス1は、区画同士の間に隔壁14を更に備え、区画を互いに隔離する(図8では、内部区画壁30が既に区画同士を互いに分離しているので、隔壁14は部分的にしか存在しない)。1つの隔壁14が、第1の区画7と第2のキャンバーとの間に配置され、別の隔壁14が、第2のキャンバー区画と第3のキャンバーとの間に配置され、更なる隔壁14が、第3のキャンバー区画と第1のキャンバーとの間に配置される。結果として、隣接する区画同士は、互いから断熱され、したがって、隣接する区画同士において、別々の温度を確立し、維持することができる。隔壁14は、プレート形状要素であり得る。区画同士の間の隔壁14は、いくつかの壁によって、又は1つの(例えば、T字形又は星形の)壁のみによって実装することができる。隔壁14は、チューブ6が1つの区画から次の区画へと延びるための貫通孔を備える。
【0142】
図1及び図9に示すように、DNA産物を調製するためのデバイス1は、各区画内に配置されたセンサ21、ここでは、例えば、温度センサ21を更に備える。これらの温度センサのいくつかが、各区画内に存在することが好ましい。
【0143】
DNA産物を調製するためのデバイス1は、チューブ6を保持するためのスタンド17を更に備える。図4は、いくつかのスタンド17の周りに巻かれたチューブ6の3D側面図を示す。スタンド17は、図1及び図8にも示されている。スタンド17は、チューブ6を保持し導くために各区画内に配置される。スタンド17は、チューブ6の波形の固定点及び偏移点を提供する。したがって、スタンド17は、チューブ6(巻回)をスタンド17に取り付けるためのスリットなどを備えてもよい。チューブ6は、スタンド17の外側寸法の周りに部分的に延びている。スタンド17は、ここでは、上面図で見たときにT字形又はL字形を有するが、他の形状、例えば円筒形状も可能である。スタンド17は、交換可能及び区画内で再配置可能であってもよい。チューブ6は、ここでは、DNA産物を調製するためのデバイス1全体で同じであり、交換可能であってもよい。
【0144】
図5は、医薬品の製造デバイス10の3D図を示す。図11は、その切り抜き図を示す。医薬品の製造デバイス10は、ハウジング5と、処理チャンバ2と、技術チャンバ3と、上述のようなキャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイス1とを備える。医薬品は、医薬品有効成分又はその任意の前駆体もしくは任意の中間体(例えば、DNAワクチン、又はRNA合成のためのDNA鋳型)として理解することができる。医薬品の製造デバイス10は、GMP(Guidelines for Good Manufacturing Practice、製造管理及び品質管理の基準)に準拠した条件下で動作させることができる。
【0145】
医薬品の製造デバイス10は、異なる目的のための異なるチャンバを包含している、閉鎖され密封されたハウジング5として理解することができる。処理チャンバ2は、医薬品を製造するのに適しており、そのために使用される。処理チャンバ2は、ここではグレードAの部屋である。処理チャンバ2は、技術チャンバ3に対して密閉されている。技術チャンバ3は、例えば、ポンプ、モータ、ミキサ、プロセッサなどの装置を収容するのに適しており、そのために使用される。チャンバ同士は、分離要素4によって分離されており、分離要素4は、プレートとして理解することができる。分離要素4は、ハウジング5を通って延びており、そこに装置を取り付けるために使用することができる。
【0146】
技術チャンバ3及び処理チャンバ2は、技術チャンバ3内のガス流が処理チャンバ2内のガス流と平行であるが、反対方向になるように配置される。ガス流のガスは、ここでは清浄空気である。ガス入口ダクト9a及びガス出口ダクト9bが存在している。
【0147】
少なくとも1つの制御ユニットが、処理チャンバ2を通るガス流を制御して、重力方向(下向き)に落下するガスシャワー及び/又は処理チャンバ2内の正圧を提供する。制御ユニットは、弁又はプロセッサとすることができる。ガスシャワーは、層流とすることができる。ガス流は、フローユニットによって提供することができ、フローユニットは、ハウジング5の内部又は外部に配置することができ、制御ユニットと連通することができる。フローユニットは、ポンプ、HVACシステムなどであってもよい。正圧とは、ハウジング5の外側の環境に対する過圧である。フローユニットが可変量のガスを供給する一方で、コントロールユニットは、ガス流の異なる圧力を調節する。
【0148】
図5に示すように、分離要素4は、処理チャンバ2に向かう開口部と、技術チャンバ3の方向への拡張部(拡張された処理チャンバ)と、を有する付属部16を少なくとも備える。付属部16は、例えば、DNA産物を調製するための上述のデバイス1(「PCR反応器」と呼ぶこともある)のような装置を収容するために使用される。これにより、処理チャンバ2内の利用可能な空間を増大させることができる。DNA産物を調製するためのデバイス1は、ここでは箱26内に収容されており、箱26は、単一要素として付属部16内に挿入されている。箱26は交換可能であり得る。
【0149】
図5にも示されるように、DNA産物を調製するためのデバイス1が付属部16に挿入されると、DNA産物を調製するためのデバイス1の前面、具体的には箱26の前面が、処理チャンバ2内への付属部16の開口部と本質的に面一に終端する。その結果、ガス流、具体的には、ガスシャワーが、シームレスとなり、撹乱されないもしくは撹乱が小さくなり、及び/又は沈殿面が減少する。付属部16及びここではその前面は、カバーによって閉鎖されている。カバーは、DNA産物を調製するためのデバイス1の箱26の一部であってもよい。
【0150】
図5に示すように、医薬品の製造デバイス10は、漏れた流体を回収するための流体回収トレイ11を更に備える。流体回収トレイ11は、ハウジング5の底部に、及び/又は処理チャンバ2から技術チャンバ3への通路内に配置することができる。流体回収トレイ11は、漏れセンサ21を備えることができる。
【0151】
図11は、デバイス1が挿入される製造デバイス10の背面を示す。技術チャンバ3に面する背面には、ベンチレータ34が存在する。更に、空気入口35が、デバイス1を技術チャンバ内の技術媒体、具体的には電力に接続するための電子プラグ36と共に存在する。この実施形態は、具体的には、(例えば、図8図9、及び図10に例示されるような)区画の温度を調節するために熱固体が使用されるデバイスに関する。
【0152】
図6a及び図6b並びに図10は、医薬品の製造デバイス10に挿入されるDNA産物を調製するためのデバイス1を収容する箱26の3D図を示す。箱26はカバーによって閉鎖されている。カバーは、DNA産物を調製するためのデバイス1を付属部16の中及び/又は外で取扱うためのハンドル22を備える。箱26は、DNA産物を調製するためのデバイス1の各区画の熱媒体の入口12及び出口13(図6b参照)又は加熱カートリッジ31に加えて、熱電冷却器33とベンチレータ34とに接続されたヒートパイプ32(図10参照)を備える。PCR液の取入口23及び/又はDNA産物24の排出口は、前面に配置され、ここでは、DNA産物を調製するためのデバイス1の箱26のカバーに配置される。付属部16(図5参照)及び箱26は、例えば、DNA産物を調製するためのデバイス1を別のデバイスと交換するように、付属部16内のデバイスの交換を導き、容易にする交換レールシステム27の対応する部分を含む。図6b及び図10に示すように、センサ21、例えば、漏れセンサ21又は温度センサ21が、箱26内に配置されている。箱26は、処理チャンバ2に接続される接続部、例えば電気接続部を更に備える。図10による実施形態では、センサは、好ましくは温度センサであるが、これは、図10の実施形態(熱固体が加熱手段として使用される)が、(図10に示した実施形態では熱媒体が使用されないため)典型的には漏れセンサを含まないからである。
【0153】
DNA産物を調製するためのデバイス1のチューブ6を通してPCR液を圧送するための外部ポンプユニット又はポンプ(図7の37)は、デバイス1の外側に位置してもよく、例えば、医薬品の製造デバイス10の処理チャンバ内に位置してもよい。
【0154】
図7は、本発明による医薬品の製造モジュール100を概略的かつ例示的に示す。製造モジュール100は、ここでは4つの製造デバイス10を備える。製造デバイスは非常に柔軟性があり、複数の製造デバイスが複数の製造工程に適合して、例えば、製造チェーンを形成することができる。
【0155】
4つの製造デバイス10は、ハウジング5の外壁に配置された結合ユニット18によって互いに結合されている。結合ユニット18は、製造デバイス10の流体連通及び結合、好ましくは、機械的結合、並びにデータ通信及び結合も可能にする。4つの製造デバイス10は、本明細書では、(左から)処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを備える第1のデバイス、上述のような医薬品の製造デバイス10(キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するデバイス1)を備える第2のデバイス、精製ユニットを備える第3のデバイス、及び濾過ユニットを備える第4のデバイスであると例示的に示されており、濾過ユニットは、2つの濾過ユニット、すなわち、接線流濾過ユニット及び滅菌フィルタを備える。この例示的なモジュールは、それぞれ、DNAの産生及びDNAの増幅、並びに精製のために使用され得る。DNAの産生/増幅のために使用される例示的なモジュールは、得られたDNAをRNAに転写する更なる製造デバイス(例えば、国際公開第2020002598号に記載されるようなRNAバイオリアクタを備える製造デバイス)に接続されてもよい。
【0156】
製造モジュール100は、ハウジング5の外側で製造デバイス10のハウジング5の外壁に配置された取付要素19を備える。取付要素19は、例えば、媒体リザーバの形態の媒体供給源(図示せず)を保持するように構成される。
【0157】
定義
明確さ及び読みやすさのために、以下の定義を提供する。これらの定義に関して言及された任意の技術的特徴は、本発明の各々及び全ての実施形態について読み取ることができる。更なる定義及び説明は、これらの実施形態の文脈において具体的に提供され得る。
【0158】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、文脈が明らかに別のことを示さない限り、単数形「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、対応する複数形も含む。
本発明の文脈における「約」という用語は、当業者が、問題の特徴の技術的効果が依然として確保されると理解する精度の区間を示す。この用語は、典型的には、示された数値から±10%、好ましくは±5%の偏差を示す。
【0159】
「備える(comprising)」という用語は、限定的なものではないことを理解する必要がある。本発明の目的について、「からなる(consisting of)」という用語は、「を含む(comprising of)」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下、ある群が少なくともある特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を包含することも意味する。
【0160】
本明細書で使用される「医薬品」という用語は、医薬品有効成分又はその任意の前駆体もしくは任意の中間体に関する。したがって、「医薬品」は、具体的には、医薬品有効成分であり、この医薬品有効成分は、疾患の治療又は予防のために、薬剤中で使用され、ヒト又は動物の被験者に投与されるものであり、すなわち、特に、純度、完全性などのパラメータに関して、臨床グレードを有するものである。このような医薬品は、典型的には、合成プロセスにおいてインビトロで生産され、生産のプロセスでは前駆体及び中間体を含む。本発明では、医薬品有効成分が、生体分子、具体的には核酸であることが特に好ましい。核酸は、DNAであってもよい。DNAは、特に、ワクチンとして、又はRNAインビトロ転写のためのDNA鋳型として使用され得る。例えば、医薬品有効成分としてmRNAを産生する場合、第1の工程は、鋳型DNA(本明細書では「DNA鋳型」とも呼ぶ)の産生であってもよく、この鋳型DNAは、RNAを産生する際にインビトロ転写反応において鋳型として機能するため、mRNAの前駆体に相当する。DNA産生の中間体は、PCR反応から得られる精製前のDNAであってもよく、それは、このようなDNAが、最終医薬品有効成分に相当しないためであるが、必要とされる臨床グレードの産物を提供するためには、とりわけ精製工程が行われることを必要とする。
【0161】
「DNA」という用語は、デオキシリボ核酸の通例の略語である。これは、核酸分子、すなわち、ヌクレオチドモノマーからなるポリマーである。これらのヌクレオチドは、通常、デオキシアデノシン一リン酸、デオキシチミジン一リン酸、デオキシグアノシン一リン酸、及びデオキシシチジン一リン酸モノマー又はそれらの類似体であり、それらはそれ自体が、糖部分(デオキシリボース)、塩基部分、及びリン酸部分から構成され、特徴的な骨格構造によって重合する。骨格構造は、典型的には、第1のヌクレオチドの糖部分、すなわち、デオキシリボースと第2の隣接するモノマーのリン酸部分との間のホスホジエステル結合によって形成される。モノマーの特定の順序、すなわち、糖/リン酸骨格に連結した塩基の順序は、DNA配列と呼ばれる。DNAは、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。二本鎖形態では、第1鎖のヌクレオチドは、典型的には、例えば、A/T塩基対合及びG/C塩基対合によって、第2鎖のヌクレオチドとハイブリダイズする。
【0162】
「RNA」という用語は、リボ核酸の通例の略語である。これは、核酸分子、すなわちヌクレオチドモノマーからなるポリマーである。これらのヌクレオチドは、通常、アデノシン一リン酸(AMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、及びシチジン一リン酸(CMP)のモノマー又はそれらの類似体であり、これらはいわゆる骨格に沿って互いに結合している。骨格は、第1の糖、すなわち、リボースと、第2の隣接するモノマーのリン酸部分との間のホスホジエステル結合によって形成される。モノマーの特定の順序、すなわち、糖/リン酸骨格に連結された塩基の順序は、RNA配列と呼ばれる。RNAは、例えば、細胞内での、DNA配列の転写によって得ることができる。真核細胞では、典型的には、転写は、核又はミトコンドリア内で行われる。インビボでは、DNAの転写によって、通常、いわゆる未成熟RNAが得られ、これは、いわゆるメッセンジャーRNA(通常、mRNAと略される)にプロセシングされなければならない。例えば、真核生物における未成熟RNAのプロセシングは、スプライシング、5’キャップ形成、ポリアデニル化、核又はミトコンドリアからの輸送などの様々な異なる転写後修飾を含む。これらプロセス全体をRNAの成熟とも呼ぶ。成熟メッセンジャーRNAは、通常、特定のペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列に翻訳され得るヌクレオチド配列を提供する。典型的には、成熟mRNAは、5’キャップ、任意選択で5’UTR、コード配列、任意選択で3’UTR、及びポリ(A)配列を含む。本発明のようにRNA分子が合成由来である場合、RNA分子は、インビボで、すなわち細胞内で産生されるのでも細胞から精製されるのでもなく、インビトロ法で産生されることを意味する。好適なインビトロ法の例は、インビトロ転写である。メッセンジャーRNAに加えて、転写及び/又は翻訳の調節、免疫刺激に関与する可能性のある非コード型のRNAがいくつか存在し、これらもまた、インビトロ転写によって産生され得る。「RNA」という用語は、ウイルスRNA、レトロウイルスRNA及びレプリコンRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、アンチセンスRNA、saRNA(低分子活性化RNA)、CRISPR RNA(低分子ガイドRNA、sgRNA)、リボザイム、アプタマー、リボスイッチ、免疫賦活性RNA、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及びPiwi相互作用RNA(Piwi-interacting RNA、piRNA)などのRNA分子を更に包含する。
【0163】
「RNAインビトロ転写」という用語は、RNAが無細胞系で合成されるプロセスに関する。RNAは、線状化プラスミドDNA鋳型又はPCR増幅DNA鋳型であり得る、適切なDNA鋳型のDNA依存性RNAインビトロ転写によって得ることができる。RNAインビトロ転写を制御するためのプロモータは、任意のDNA依存性RNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。DNA依存性RNAポリメラーゼの具体的な例は、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ、SP6RNAポリメラーゼ、又はSyn5RNAポリメラーゼである。
【0164】
RNAインビトロ転写に使用される試薬には典型的には以下が含まれる:バクテリオファージにコードされたRNAポリメラーゼ(T7、T3、SP6、又はSyn5)など、それぞれのRNAポリメラーゼに対して高い結合親和性を有するプロモータ配列を有するDNA鋳型(線状化DNA又は線状PCR産物);4つの塩基(アデニン、シトシン、グアニン、及びウラシル)のリボヌクレオチド三リン酸(NTP);任意選択で、キャップアナログ(例えば、m7G(5’)ppp(5’)G(m7G)又は国際公開第2017/053297号の請求項1~5に開示された構造から誘導可能なキャップアナログ、又は国際公開第2018075827号の請求項1もしくは請求項21に定義された構造から誘導可能な任意のキャップ構造);任意選択で、本明細書に定義された、更なる修飾ヌクレオチド;DNA鋳型内のプロモータ配列に結合することができるDNA依存性RNAポリメラーゼ(例えば、T7、T3、SP6、又はSyn5 RNAポリメラーゼ);任意選択で、潜在的に混入しているリボヌクレアーゼ(RNase)を不活性化するためのRNase阻害剤;任意選択で、ピロリン酸を分解するためのピロホスファターゼ(RNA合成の阻害剤);ポリメラーゼの補因子としてMg2+イオンを供給するMgCl2;好適なpH値を維持するための緩衝液(TRIS又はHEPES)であって、抗酸化剤(例えば、DTT)、及び/又は最適濃度のスペルミジンなどのポリアミンを含有することもできる緩衝液、例えば、国際公開第2017/109161号に開示されているクエン酸塩及び/又はベタインを含む緩衝液系。
【0165】
RNAインビトロ転写に使用されるヌクレオチド混合物は、本明細書で定義される修飾ヌクレオチドを更に含有してもよい。その文脈において、好ましい修飾ヌクレオチドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、5-メチルシトシン、及び5-メトキシウリジンを含む。RNAインビトロ転写反応に使用されるヌクレオチド混合物(すなわち、混合物中の各ヌクレオチドの分画)は、好ましくは国際公開第2015188933号パンフレットに記載されるように、所与のRNA配列に対して最適化され得る。
【0166】
「RNAインビトロ転写(IVT)マスターミックス」は、上記で定義されるようなRNAインビトロ転写反応を行うために必要な成分を含み得る。したがって、IVTマスターミックスは、ヌクレオチド混合物、キャップアナログ、DNA依存性RNAポリメラーゼ、RNase阻害剤、ピロホスファターゼ、MgCl2、緩衝液、抗酸化剤、ベタイン、クエン酸塩から選択される成分の少なくとも1つを含み得る。
【0167】
本明細書で使用される場合、「鋳型DNA」(又は「DNA鋳型」)という用語は、典型的には、インビトロで転写されるRNA配列をコードする核酸配列を含むDNA分子に関する。鋳型DNAは、鋳型DNAによってコードされるRNAを産生するために、RNAインビトロ転写の鋳型として使用される。したがって、鋳型DNAは、RNAインビトロ転写に必要な全ての要素、具体的には、標的RNA配列をコードするDNA配列の5’側に、例えば、T3、T7、及びSP6 RNAポリメラーゼのようなDNA依存性RNAポリメラーゼの結合のためのプロモータ要素を含んでいる。更に、鋳型DNAは、標的RNA配列をコードするDNA配列のプライマー結合部位5’及び/又は3’を含み、例えば、PCR又はDNA配列決定によって標的RNA配列をコードするDNA配列の存在を判断してもよい。
【0168】
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」は、分子生物学の技術で、DNAの一部を数桁にわたって増幅し、特定のDNA配列のコピーを数千~数百万部生成するのに使用される。この方法は、DNA融解及びDNAの酵素的複製のために、反応の加熱と冷却とを繰り返すサイクルからなる熱サイクルに依存している。標的配列にとって相補的な配列を含むプライマー(短いDNA断片)と、Taqポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼを組み合わせることで、選択的かつ反復的な増幅が可能になる。PCRが進行するにつれて、生成されたDNAは、それ自体が複製のための鋳型として使用され、DNA鋳型が指数関数的に増幅される連鎖反応を開始する。DNAポリメラーゼは、PCR鋳型となる一本鎖DNAと、DNA合成の開始に必要なDNAオリゴヌクレオチド(DNAプライマーとも呼ばれる)とを用いて、DNAの構築ブロックであるヌクレオチドから新しいDNA鎖を酵素的に組み立てる。PCR法の大部分では、熱サイクル、すなわち、定義された一連の温度工程を通してPCR試料を交互に加熱及び冷却することが用いられる。第1の工程において、DNA二重螺旋の2つの鎖を、DNA融解と呼ばれるプロセスにおいて高温で物理的に分離する。第2の工程において、温度を低下させ、2本のDNA鎖が、DNAポリメラーゼの鋳型となり、標的DNAを選択的に増幅する。PCRの選択性は、増幅の対象となるDNA領域に相補的なプライマーを特定の熱サイクル条件下で使用することで得られる。
【0169】
「PCRマスターミックス」又は「PCR液」は、上記で定義されたPCRを行うために必要な成分を含み得る。したがって、PCRマスターミックスは、ヌクレオチド混合物、DNAポリメラーゼ、(初期)鋳型としての合成DNA、及び緩衝液から選択される成分のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0170】
「脂質ナノ粒子」又は「LNP」という用語は、医薬品の製剤、具体的には、核酸の製剤を指す。本発明の文脈において、「LNP」という用語は、特定の形態に限定されず、カチオン性脂質及び任意選択で1つ以上の更なる脂質が、例えば、水性環境中及び/又は核酸の存在下で、組み合わされるときに生成される任意の形態を含む。例えば、リポソーム、脂質複合体、リポプレックスなどは、脂質ナノ粒子(LNP)の範囲内である。LNPは、典型的には、カチオン性脂質と、中性脂質、荷電脂質、ステロイド、及びポリマー共役脂質(例えば、PEG化脂質)から選択される1つ以上の賦形剤とを含む。核酸は、LNPの脂質部分、又はLNPの一部のもしくは全体の脂質部分によって包まれた水性空間内にカプセル化され得る。一実施形態では、LNPは、本質的に、(i)少なくとも1つのカチオン性脂質;(ii)中性脂質;(iii)ステロール、例えば、コレステロール;及び(iv)PEG脂質、例えばPEG-DMG又はPEG-cDMA、からなり、カチオン性脂質約20~60%:中性脂質5~25%:ステロール25~55%;PEG脂質0.5~15%のモル比である。
【0171】
「処理媒体」という用語は、医薬品を生産するのに必要な任意の反応又は任意の処理工程に直接かつ物理的に関与する構成要素を指す。したがって、生産は処理チャンバ内で行われるため、デバイスが生産のために使用されるとき、「処理媒体」は、処理チャンバ内に存在することになる。したがって、処理媒体は、具体的には、任意の出発物質(例えば、ヌクレオチドなど)、任意の触媒物質(例えば、酵素など)、及び任意の緩衝液(例えば、反応緩衝液又は精製緩衝液など)であり得る。処理媒体は、典型的には、処理媒体供給容器内に準備される。
【0172】
「技術媒体」という用語は、医薬品を製造するために必要とされる任意の反応又は任意の処理工程に直接関与しない構成要素を指す。むしろ、技術媒体は、例えば、電力ケーブルとして、間接的に関与しており、この電力ケーブルは、処理媒体を処理するユニット又は装置に電力を供給し、技術チャンバ内に位置することになる。技術的媒体供給源は、例えば、電力ケーブルによって提供される電力又は電力供給源ということになる。
【0173】
本発明の実施形態は、別々の主題を参照して説明されることに留意されたい。具体的には、いくつかの実施形態は、方法タイプの請求項を参照して説明されるが、他の実施形態は、デバイスタイプの請求項を参照して説明される。しかしながら、当業者であれば、特に断りのない限り、1種類の主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴同士の間の任意の組み合わせもまた、本願で開示されていると考えられることを、本明細書から理解するであろう。しかしながら、全ての特徴を組み合わせて、特徴の単純な合計以上の相乗効果を提供することができる。
【0174】
群が少なくともある特定の数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を包含することも意味する。
本発明を図面及び明細書において詳細に図示及び説明してきたが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的なものであり、限定的なものではないとみなされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形例は、図面、本開示、及び従属請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。
【0175】
特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、他の要素又は工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外するものではない。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0176】
本出願の実施形態のセットは、以下に関する。
1.キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNA産物を調製するためのデバイス(1)であって、
PCR液を導くためのチューブ(6)と、
第1の区画(7)と、
少なくとも第2の区画(8)と、を備え、
チューブ(6)が、少なくとも第1の区画(7)から第2の区画(8)へと巻かれており、
第1の区画(7)及び第2の区画(8)が、それぞれ、第1の区画(7)及び第2の区画(8)を通る別個の熱媒体流を提供して、第1の区画(7)及び第2の区画(8)内の別個の温度を調節して、PCR液に基づいたDNA産物を調製する、熱媒体入口(12)及び熱媒体出口(13)を備える、デバイス(1)。
【0177】
2.隔壁(14)が、区画同士の間に配置され、区画を互いに隔離している、実施形態1に記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
3.隔壁(14)が、チューブ(6)が1つの区画から次の区画に延びるための貫通孔を備える、前述の実施形態に記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0178】
4.熱媒体入口(12)及び熱媒体出口(13)が、チューブ(6)内のPCR液のガイド方向に対して本質的に反対方向に区画を通る熱媒体流を提供するように、少なくとも1つの区画内に、好ましくは各区画内に配置されている、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0179】
5.熱媒体入口(12)が、区画の各々において下部位置に配置されており、熱媒体出口(13)が、区画の各々において上部位置に配置されている、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0180】
6.第3の区画(15)を更に備え、チューブ(6)が、少なくとも第1の区画(7)から第2の区画(8)へ、及び第2の区画(8)から第3の区画(15)へと巻かれている、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0181】
7.チューブ(6)が、第3の区画(15)から第1の区画(7)へ、第1の区画(7)から第2の区画(8)へ、及び第2の区画(8)から第3の区画(15)へと更に巻かれている、前述の実施形態に記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0182】
8.区画から区画へと巻かれたチューブ(6)が、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成している、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0183】
9.チューブ(6)が、少なくとも1つの区画内で、好ましくは区画の各々の内部で、波状に延びている、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0184】
10.チューブ巻回の螺旋状スタックのスタック方向が、波形チューブ(6)の波形方向とは異なり、好ましくは、波形チューブの波形方向に対して本質的に垂直である、実施形態8及び9に記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0185】
11.各区画が、熱媒体によって充填される槽を形成している、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
12.チューブ(6)の固定点及び/又はチューブ(6)の波形の偏移点を提供するために区画のうちの1つに配置された少なくともスタンド(17)を更に備える、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0186】
13.チューブ(6)が、スタンド(17)の外側寸法の周りに、部分的に、又は全体的に、又は2周以上延びている、前述の実施形態に記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0187】
14.スタンド(17)が、交換可能及び/又は区画内で再配置可能である、実施形態12~13のいずれか1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
15.チューブ(6)が、PCR液入口(20)を備え、このPCR液入口(20)が、チューブ(6)を通してPCR液を圧送するためのポンプユニットに接続可能である、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0188】
16.ポンプユニットが、区画の外側に、好ましくは、区画を取り囲んでいる外壁部(5)の外側に、配置されている、前述の実施形態に記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0189】
17.ポンプユニットが、約0.1~約10mL/分、好ましくは、約0.2~約3mL/分の範囲の流量のPCR液を提供するように構成される、実施形態15又は16に記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0190】
18.チューブ(6)が、DNA産物の連続調製のためのDNA産物出口(25)を備える、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
19.チューブ(6)が、DNA産物の不連続調製のための閉鎖可能なDNA産物出口(25)を備える、実施形態1~17に記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0191】
20.区画のうちの少なくとも1つに配置された少なくともセンサ(21)を更に備え、センサ(21)が、区画の温度、流量、又は漏れを検出するように構成される、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0192】
21.チューブ(6)が、約0.5~約1.5mm、好ましくは約0.75~約1.25mmの範囲の直径を有する、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0193】
22.チューブ(6)が、約10~約200m、好ましくは約25~約50mの範囲のチューブ入口とチューブ出口との間の長さを有する、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0194】
23.チューブ(6)が、約10mL~約1L、好ましくは約20mL~約250mLの範囲のPCR液を収容するように寸法設定されている、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0195】
24.チューブ巻回の螺旋状スタックが、約10個~約50個の巻回、好ましくは約15個~約40個の巻回を備える、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0196】
25.DNA産物を調製するためのデバイス(1)が、1回の反応当たり約1mg以上、好ましくは約1mg~約30mgの範囲、より好ましくは約15mg~約25mgの範囲のDNA産物を調製するように構成される、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0197】
26.DNA産物を調製するためのデバイス(1)が、PCR液1mL当たり約50μg~約150μg、好ましくは、PCR液1mL当たり約75μg~約125μgの範囲のDNA産物を調製するように構成される、前述の実施形態の1つに記載のDNA産物を調製するためのデバイス(1)。
【0198】
27.処理チャンバ(2)と、技術チャンバ(3)と、前述の実施形態のうちの1つによるキャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するためのデバイス(1)と、を備える、医薬品の製造デバイス(10)。
【0199】
28.処理チャンバ(2)を通るガス流をガスシャワーとして制御するように構成された制御ユニットを更に備える、前述の実施形態に記載の医薬品の製造デバイス(10)。
29.少なくとも処理チャンバ(2)、好ましくは、製造デバイス(10)が、医薬品の製造管理及び品質管理の基準(GMP)に関するEUガイドラインの付属書1の要件に従って動作可能である、実施形態27~28の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0200】
30.処理チャンバ(2)を技術チャンバ(3)から分離する分離要素(4)を更に備え、分離要素(4)が、処理チャンバ(2)に向かう開口部を有する、技術チャンバ(3)の方向に突出した付属部(16)を備え、DNA産物を調製するためのデバイス(1)が、付属部(16)に挿入可能である、実施形態27~29のいずれか1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0201】
31.DNA産物を調製するためのデバイス(1)が付属部(16)に挿入されると、DNA産物を調製するためのデバイス(1)の前面が、処理チャンバ(2)内への付属部(16)の開口部と本質的に面一に終端する、前述の実施形態に記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0202】
32.DNA産物を調製するためのデバイス(1)を付属部(16)の中及び/又は外で取扱うための少なくともハンドル(22)が、DNA産物を調製するためのデバイス(1)の前面に配置されている、実施形態27~31の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0203】
33.PCR液の取入口(23)及び/又はDNA産物の排出口(24)が、DNA産物を調製するためのデバイス(1)の前面に配置されている、実施形態27~32の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0204】
34.熱媒体の取入口及び/又は熱媒体の排出口が、DNA産物を調製するためのデバイス(1)の前面とは反対側の、DNA産物を調製するためのデバイス(1)の背面プレートに配置されている、実施形態27~33の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0205】
35.DNA産物を調製するためのデバイス(1)の外側の付属部(16)内に配置された漏れセンサ(21)を更に備える、実施形態27~34の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0206】
36.付属部(16)が、DNA産物を調製するためのデバイス(1)とDNA産物を調製するための別のデバイス(1)との交換を導くための交換レール(27)を備える、実施形態27~35の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0207】
37.DNA産物を調製するためのデバイス(1)のチューブ(6)を通してPCR液を圧送するためのポンプユニットが、医薬品の製造デバイス(10)のケーシングの外側に配置されている、実施形態27~36の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0208】
38.医薬品の製造デバイス(10)のケーシングに配置され、医薬品の製造デバイス(10)を別の製造デバイス(10)に結合するように構成された結合ユニット(18)を更に備える、実施形態27~37の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)。
【0209】
39.実施形態27~38の1つに記載の医薬品の製造デバイス(10)と、処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを有する製造デバイス(10)、精製ユニットを有する製造デバイス(10)、並びに濾過ユニットを有する製造デバイス(10)からなる群のうちの少なくとも1つと、を備える、医薬品の製造モジュール(100)。
【0210】
40.キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNA産物を調製するための方法であって、
-第1の区画(7)、第2の区画(8)、及びチューブ(6)を準備することであって、チューブ(6)が、少なくとも第1の区画(7)から第2の区画(8)へと巻かれている、と、
-各区画の熱媒体入口(12)及び熱媒体出口(13)によって、各区画を通る別個の熱媒体流を提供し、各区画内の別個の温度を調節することと、
-チューブ(6)を通してPCR液を導き、それによって各区画内の別個の温度を通してPCR液を導き、PCR液に基づいたDNA産物を調製すると、
を含む、方法。
【0211】
41.第1の区画(7)内の第1の温度が、約85℃~約105℃の範囲内、好ましくは約98℃である、前述の実施形態に記載の方法。
42.第2の区画(8)内の第2の温度が、約45℃~約72℃、好ましくは約60℃~約72℃の範囲である、実施形態40~41の1つに記載の方法。
【0212】
43.第3の区画(15)を準備することを更に含み、チューブ(6)が少なくとも第2の区画(8)から第3の区画(15)へと巻かれており、第3の区画(15)内の第3の温度が、約65℃~約75℃の範囲内、好ましくは約72℃である、実施形態40~42の1つに記載の方法。
【0213】
44.第1の区画(7)内の第1の温度が、ポリメラーゼ連鎖反応の変性工程のために設定され、第2の区画(8)内の第2の温度が、ポリメラーゼ連鎖反応のアニーリング工程のために設定され、また任意選択で、ポリメラーゼ連鎖反応の伸長工程のために設定される、実施形態40~43の1つに記載の方法。
【0214】
45.第3の区画(15)内の第3の温度が、ポリメラーゼ連鎖反応の伸長工程のために設定される、実施形態43に記載の方法。
46.キャピラリーポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための、実施形態1~26の1つに記載のデバイスの使用。
【0215】
47.医薬品の生産のための、実施形態27~38の1つに記載の製造デバイス(10)の使用。
本出願の好ましい実施形態のセットは、以下に関する。
【0216】
1.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNAを増幅するためのデバイス(1)であって
-PCR液を導くためのチューブ(6)と、
-第1の区画(7)と、
-第2の区画(8)と、
-第3の区画(15)と、を備え、
チューブ(6)が、第1の区画(7)を通って第1の区画(7)から第2の区画(8)へ、第2の区画(8)を通って第2の区画(8)から第3の区画(15)へ、第3の区画(15)を通って第3の区画(15)から第1の区画(7)へと巻かれており、区画から区画へと巻かれたチューブ(6)が、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成し、各チューブ巻回が、1回のPCRサイクルを表し、チューブ(6)が、PCR液入口(20)及びDNA産物出口(25)を備え、
第1の区画(7)、第2の区画(8)、及び第3の区画(15)が、それぞれ、区画内の温度を調節してPCR液に基づいたDNA産物を調製する手段を備え、第1の区画が、変性のための温度を提供するように構成され、第2の区画(8)が、アニーリングのための温度を提供するように構成され、第3の区画(15)が、伸長のための温度を提供するように構成される、デバイス(1)。
【0217】
2.PCR液入口(20)が、チューブ(6)を通してPCR液を圧送するためのポンプユニットに接続可能である、実施形態1に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0218】
3.隔壁(14)が、区画同士の間に配置され、区画を互いに隔離しており、隔壁(14)が、チューブ(6)が1つの区画から次の区画に延びるための貫通孔を備える、実施形態1又は2に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0219】
4.各区画が、各区画内の温度を調節するための手段として、加熱ユニット(31)及び任意選択で冷却ユニット(32、33)を備える、実施形態1~3のいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0220】
5.各区画が、各区画内の温度を調節するための手段として、すなわち、第1の区画(7)、第2の区画(8)、及び第3の区画(15)を通る別個の熱媒体流を提供して、第1の区画(7)、第2の区画(8)、及び第3の区画(15)内の別個の温度を調節するための手段として、熱媒体入口(12)及び熱媒体出口(13)を備える、実施形態1~3のいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0221】
6.チューブ(6)が、区画の各々の内部で波状に延びている、前述の実施形態のいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
7.各区画が、熱媒体又は熱固体で充填される槽を形成している、前述の実施形態のいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0222】
8.チューブ(6)の固定点及び/又はチューブ(6)の波形の偏移点を提供するために区画のうちの1つに配置された少なくともスタンド(17)を更に備える、前述の実施形態のいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0223】
9.スタンド(17)が、交換可能及び/又は区画内で再配置可能である、実施形態8に記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
10.チューブ(6)が、約0.5mm~約50mm、好ましくは約0.5mm~約1.5mm、より好ましくは約0.75~約1.25mmの範囲の直径を有する、前述の実施形態のいずれか1つに記載DNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0224】
11.チューブ(6)が、約10m~約200m、好ましくは約50m~約100mの範囲のチューブ入口とチューブ出口との間の長さを有する、前述の実施形態のいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0225】
12.チューブ(6)が、約10mL~約500mL、好ましくは約20mL~約100mLの範囲のPCR液を収容するように寸法設定されている、前述の実施形態のうちのいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0226】
13.チューブ巻回の螺旋状スタックが、約10個~約50個の巻回、好ましくは約15個~約40個の巻回を備える、前述の実施形態のいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)。
【0227】
14.実施形態1~13のいずれか1つに記載のDNAを増幅するためのデバイス(1)を備える製造デバイス(10)。
15.処理チャンバ(2)及び技術チャンバ(3)を更に備える、実施形態14に記載の製造デバイス(10)。
【0228】
16.処理チャンバ(2)を通るガス流をガスシャワーとして制御するように構成された制御ユニットを更に備える、実施形態15に記載の製造デバイス(10)。
17.処理チャンバ(2)を技術チャンバ(3)から分離する分離要素(4)を更に備え、分離要素(4)が、処理チャンバ(2)に向かう開口部を有する、技術チャンバ(3)の方向に突出した付属部(16)を備え、DNAを増幅するためのデバイス(1)が、付属部(16)に挿入可能である、実施形態15又は16に記載の製造デバイス(10)。
【0229】
18.DNA産物を調製するためのデバイス(1)が付属部(16)に挿入されると、DNA産物を調製するためのデバイス(1)の前面が、処理チャンバ(2)内への付属部(16)の開口部と本質的に面一に終端する、実施形態17に記載の製造デバイス(10)。
【0230】
19.実施形態14~18のいずれか1つに記載の製造デバイス(10)と、処理媒体供給ユニット及び混合ユニットを備える製造デバイス(10)、精製ユニットを備える製造デバイス(10)、並びに濾過ユニットを備える製造デバイス(10)からなる群から選択される少なくとも1つの製造デバイスと、を備える、製造モジュール(100)。
【0231】
20.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってDNAを増幅するための方法であって、
-第1の区画(7)、第2の区画(8)、第3の区画(15)、及びチューブ(6)を準備することであって、チューブ(6)が、第1の区画(7)を通って第1の区画(7)から第2の区画(8)へ、第2の区画(8)を通って第2の区画(8)から第3の区画(15)へ、第3の区画(15)を通って第3の区画(15)から第1の区画(7)へと巻かれており、区画から区画へと巻かれたチューブ(6)が、チューブ巻回の螺旋状スタックを形成している、ことと、
-各区画内の別個の温度を調節するための手段を準備することと、
-チューブ(6)を通してPCR液を導き、それによって各区画内の別個の温度を通してPCR液を導き、PCR液に基づいたDNA産物を調製すると、
を含む、方法。
【0232】
21.第1の区画(7)内の温度が、変性のためのものであり、好ましくは約85℃~約105℃の範囲内、好ましくは約98℃である、実施形態20に記載の方法。
22.第2の区画(8)内の温度が、アニーリングのためのものであり、好ましくは約45℃~約72℃、好ましくは約60℃~約72℃の範囲内である、実施形態20又は21に記載の方法。
【0233】
23.第3の区画(15)内の温度が、伸長のためのものであり、好ましくは約65℃~約75℃の範囲内、好ましくは約72℃である、実施形態20~22のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
24.ポリメラーゼ連鎖反応によってDNA産物を調製するための、実施形態1~13のいずれか1つに記載のデバイス(1)の使用。
25.医薬品の生産のための、実施形態14~18のいずれか1つに記載の製造デバイス(10)又は実施形態19に記載の製造モジュール(100)の使用。
【符号の説明】
【0235】
1 DNA産物を調製するためのデバイス
2 処理チャンバ
3 技術チャンバ
4 分離要素
5 ハウジング
6 チューブ
7 第1の区画
8 第2の区画
9 ダクト
9a ガス入口ダクト
9b ガス出口ダクト
10 製造デバイス
11 回収トレイ
12 熱媒体入口
13 熱媒体出口
14 隔壁
15 第3の区画
16 付属部
17 スタンド
18 結合ユニット
19 取付要素
20 PCR液入口
21 センサ
22 ハンドル
23 PCR液の取入口
24 DNA産物の排出口
25 DNA産物出口
26 箱
27 交換レール
28 隔離部
29 外壁部
30 内部区画壁
31 加熱ユニット
32 ヒートパイプ(冷却ユニットの一部)
33 熱電冷却器(冷却ユニットの一部)
34 ベンチレータ
35 空気入口
36 電気プラグ
37 PCR液を圧送するためのポンプユニット
100 製造モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11