(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】車両用紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20250228BHJP
H01J 63/00 20060101ALI20250228BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A61L2/10
H01J63/00
A61L9/20
(21)【出願番号】P 2022011559
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2024-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和那
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-212216(JP,A)
【文献】特開2013-034978(JP,A)
【文献】特開平11-183699(JP,A)
【文献】特開2005-050705(JP,A)
【文献】実開昭55-032246(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
H01J 63/00
A61L 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を照射可能な放電ランプと;
前記放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加可能な点灯回路と;
前記放電ランプと、前記点灯回路と、を収納する内部空間を有し、前記放電ランプと対向する孔を有する筐体と;
前記筐体の外壁、および前記筐体の内壁の少なくともいずれかに設けられ、導電性を有するシールドと;
導電性を有し、前記孔と対向し、前記放電ランプから照射された前記紫外線を透過可能な複数の開口を有する窓と;
前記孔と対向し、前記筐体の前記内部空間と、前記筐体の外部とを仕切り、前記放電ランプから照射された前記紫外線を透過可能な仕切り部と;
を具備した車両用紫外線照射装置。
【請求項2】
前記仕切り部が、前記窓の、前記放電ランプの側に設けられている請求項1記載の車両用紫外線照射装置。
【請求項3】
前記仕切り部と、前記窓と、の間には隙間が設けられている請求項1または2に記載の車両用紫外線照射装置。
【請求項4】
枠状を呈し、前記窓の周縁近傍に位置する弾性部材をさらに備えた請求項1~3のいずれか1つに記載の車両用紫外線照射装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、フッ素ゴムを含む請求項4記載の車両用紫外線照射装置。
【請求項6】
前記仕切り部は、前記窓と一体に設けられている請求項1記載の車両用紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線を照射する放電ランプを備えた紫外線照射装置がある。従来においては、この様な紫外線照射装置は、例えば、紫外線硬化型のインク、塗料、接着剤などの硬化、材料の表面改質、液晶の光配向などに用いられていた。また、紫外線には殺菌作用があるので、紫外線照射装置が部材の表面に付着した細菌の殺菌やウィルスの不活性化などに用いられる場合もある。
近年においては、健康意識の高まりを反映して、自動車の車内や鉄道車両の車内などの比較的狭い閉鎖空間において、車内の雰囲気や、車内にある物の表面などを浄化する要望が高まっている。
【0003】
ここで、放電ランプを点灯させると、紫外線照射装置から電磁波が放射される場合がある。また、紫外線照射装置が、自動車や鉄道などの車両に設けられる車両用紫外線照射装置の場合には、車室内などの狭いスペースに、車両用紫外線照射装置と、車両の運行などに用いられる電子機器とが一緒に設けられる場合が多い。そのため、車両用紫外線照射装置と電子機器との間の距離が短くなり、車両用紫外線照射装置から放射された電磁波が電子機器に入射し易くなる。電子機器に電磁波が入射すると、電磁波ノイズとなって電子機器の誤動作などが生じるおそれがある。
【0004】
また、車両用紫外線照射装置が、高温高湿の環境に設けられる場合がある。例えば、自動車に設けられる車両用紫外線照射装置の場合には、環境温度が85℃、湿度が85%という高温高湿の環境においても使用できる様にする必要がある。
そこで、電磁波の放射を抑制することができ、且つ、耐環境性の向上を図ることができる車両用紫外線照射装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電磁波の放射を抑制することができ、且つ、耐環境性の向上を図ることができる車両用紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る車両用紫外線照射装置は、紫外線を照射可能な放電ランプと;前記放電ランプに、所定の周波数の駆動電圧を印加可能な点灯回路と;前記放電ランプと、前記点灯回路と、を収納する内部空間を有し、前記放電ランプと対向する孔を有する筐体と;前記筐体の外壁、および前記筐体の内壁の少なくともいずれかに設けられ、導電性を有するシールドと;導電性を有し、前記孔と対向し、前記放電ランプから照射された前記紫外線を透過可能な複数の開口を有する窓と;前記孔と対向し、前記筐体の前記内部空間と、前記筐体の外部とを仕切り、前記放電ランプから照射された前記紫外線を透過可能な仕切り部と;を具備している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、電磁波の放射を抑制することができ、且つ、耐環境性の向上を図ることができる車両用紫外線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置を例示するための模式斜視図である。
【
図2】
図1における車両用紫外線照射装置のA-A線方向の模式断面図である。
【
図3】
図1における車両用紫外線照射装置のB-B線方向の模式断面図である。
【
図4】(a)~(d)は、窓の形態を例示するための模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置は、自動車や鉄道などの車両に設けることができる。例えば、車両用紫外線照射装置は、自動車の車室内やトランクルームなどに設けたり、鉄道車両の車室内などに設けたりすることができる。ただし、車両用紫外線照射装置の設置場所は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置1を例示するための模式斜視図である。
図2は、
図1における車両用紫外線照射装置1のA-A線方向の模式断面図である。
図3は、
図1における車両用紫外線照射装置1のB-B線方向の模式断面図である。
図1~
図3に示すように、車両用紫外線照射装置1には、例えば、筐体2、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、点灯回路6、窓7、シールド8、および仕切り部9が設けられている。
【0012】
筐体2は、箱状を呈し、内部に、例えば、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、点灯回路6、窓7、および仕切り部9を収納する空間を有する。筐体2の平面形状は、例えば、四角形とすることができる。ただし、筐体2の平面形状は、車両用紫外線照射装置1が設けられるスペースに応じて適宜変更することができる。例えば、筐体2の平面形状は、円や楕円などの曲線から構成される形状、曲線と直線から構成される形状などとしてもよい。筐体2の厚み寸法Tは、筐体2の平面寸法よりも小さくすることができる。筐体2の厚み寸法Tを小さくすれば、車両の運行などに用いられる電子機器と、車両用紫外線照射装置1とを一緒に設けるのが容易となる。
【0013】
また、筐体2は、複数の部分に分割することができる。
図1~
図3に例示をした車両用紫外線照射装置1の場合には、筐体2の厚み方向において、筐体2が2つに分割されている。筐体2の厚み方向において、筐体2が2つに分割されていれば、筐体2の内部に、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯回路6を取り付けたり、筐体2の内壁などに窓7、および仕切り部9を取り付けたりするのが容易となる。
【0014】
例えば、筐体2は、第1の部分21、および第2の部分22を有する。
第1の部分21は、例えば、基板3、放電ランプ4、ランプカバー5、および点灯回路6が取り付けられるベースとなる。
【0015】
第2の部分22は、例えば、第1の部分21の開口側を覆うカバーとなる。第2の部分22には、例えば、窓7、および仕切り部9が取り付けられる。また、第2の部分22には、紫外線を出射させるための孔22aを設けることができる。孔22aは、例えば、放電ランプ4と対向する位置に設けられる。
【0016】
第2の部分22は、第1の部分21に着脱可能に設けることができる。例えば、第2の部分22は、弾性力を用いて、第1の部分21に着脱可能に設けられる。例えば、第2の部分22は、ネジなどの締結部材を用いて、第1の部分21に着脱可能に設けることもできる。
図1~
図3に例示をした第1の部分21と第2の部分22は、開口部分同士を嵌め合わせることで発生させた弾性力により、着脱可能に接続されている。
【0017】
また、第2の部分22は、接着剤などを用いて、第1の部分21に固定することもできる。ただし、第2の部分22が、第1の部分21に着脱可能に設けられていれば、放電ランプ4の交換などのメンテナンスが容易となる。
【0018】
ここで、
図2および
図3に示すように、筐体2の内部には、基板3、放電ランプ4、および点灯回路6が設けられる。そのため、第1の部分21、および第2の部分22を、アルミニウム合金などの金属から形成すると、漏電や短絡などが発生するおそれがある。そのため、筐体2は、絶縁性を有する樹脂から形成することが好ましい。また、絶縁性を有する樹脂から筐体2を形成すれば、車両用紫外線照射装置1の軽量化や製造コストの低減を図ることもできる。なお、第2の部分22の材料は、第1の部分21の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
基板3は、板状を呈している。基板3は、例えば、スペーサ31などを介して、第1の部分21に設けられる。なお、スペーサ31に代えて、第1の部分21に凸部を設け、凸部に基板3を設けてもよい。基板3の材料には特に限定がない。基板3は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料などから形成することができる。また、基板3は、金属板の表面を絶縁材料で被覆したメタルコア基板などであってもよい。
【0020】
放電ランプ4は、基板3と第2の部分22との間に位置している。放電ランプ4は、第2の部分22の孔22aに対向する位置に設けられる。放電ランプ4は、一対の端子ホルダ41に着脱可能に設けることができる。一対の端子ホルダ41は、例えば、基板3に設けられる。なお、
図2および
図3においては、1つの放電ランプ4が設けられる場合を例示したが、複数の放電ランプ4が設けられるようにしてもよい。放電ランプ4は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0021】
放電ランプ4は、紫外線を照射可能なものであれば特に限定はない。放電ランプ4は、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、誘電体バリア放電ランプなどとすることができる。放電ランプ4は、例えば、一方向に延びる形状を有する。一方向に延びる形状を有する放電ランプ4とすれば、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。
【0022】
ランプカバー5は、基板3と第2の部分22との間に位置している。ランプカバー5は、例えば、基板3に設けることができる。ランプカバー5は、箱状を呈し、基板3側とは反対側の端部が開口している。ランプカバー5の開口5aは、第2の部分22の孔22aに対向している。ランプカバー5の内部には、放電ランプ4と一対の端子ホルダ41を設けることができる。例えば、ランプカバー5は、絶縁性を有する樹脂から形成される。ランプカバー5の材料は、例えば、筐体2の材料と同じとすることができる。なお、ランプカバー5は、放電ランプ4から照射された紫外線に曝されるので、筐体2の材料よりも紫外線に対する耐性の高い材料を用いることが好ましい。
ランプカバー5が設けられていれば、放電ランプ4から照射された紫外線が、筐体2の内壁、基板3、および点灯回路6に入射するのを抑制することができる。そのため、これらが紫外線により劣化するのを抑制することができる。
【0023】
また、ランプカバー5にリフレクタの機能を持たせることもできる。例えば、ランプカバー5を白色などの樹脂から形成したり、ランプカバー5の内壁に反射膜を形成したり、ランプカバー5の内壁を曲面としたりすることができる。ランプカバー5にリフレクタの機能を持たせれば、放電ランプ4から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0024】
点灯回路6は、例えば、基板3の、放電ランプ4が設けられる側の面に設けられている。放電ランプ4と点灯回路6が基板3の同じ側の面に設けられていれば、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。点灯回路6は、例えば、配線コードや金属板などの配線部材を介して、一対の端子ホルダ41と電気的に接続されている。そのため、放電ランプ4を一対の端子ホルダ41に装着することで、点灯回路6と放電ランプ4とを電気的に接続することができる。
【0025】
点灯回路6は、放電ランプ4に、所定の周波数の駆動電圧を印加する。放電ランプ4に駆動電圧が印加されると、例えば、放電ランプ4に設けられた一対の電極間に放電が生じて、放電ランプ4から紫外線が放射される。
【0026】
点灯回路6は、例えば、スイッチング素子、昇圧トランス、コンデンサなどの回路部品から構成されている。例えば、スイッチング素子は、車両のバッテリーからの直流電圧を所定の周波数の交流電圧、例えば、正弦波電圧などに変換する。正弦波電圧とすれば、電磁波ノイズの発生量を低減させることができる。また、正弦波電圧の周波数は、例えば、100kHz~300kHz程度とすることが好ましい。例えば、昇圧トランスは、車両のバッテリーからの電圧を放電ランプ4を点灯させるための所定の電圧に昇圧する。
【0027】
点灯回路6は、所定の周波数の駆動電圧を生成することができるものであればよい。点灯回路6は、例えば、共振型の各種インバータとすることができる。
【0028】
点灯回路6は、例えば、配線61と電気的に接続されている。例えば、
図1および
図3に示すように、配線61の一方の端部側は、筐体2の外部に引き出されている。配線61は、いわゆる3芯ケーブルとすることができる。例えば、配線61の電線61aは、点灯回路6のプラス側と車両のバッテリーのプラス側とを電気的に接続する。例えば、配線61の電線61bは、点灯回路6のマイナス側と車両のバッテリーのマイナス側とを電気的に接続する。電線61bは、コモン線とすることができる。配線61の電線61cは、シールド8と車両のグランド(例えば、車体フレーム)とを電気的に接続する。なお、シールド8と車両のグランドとを直接接触させるようにしてもよい。この場合、電線61cは、省くことができる。
【0029】
窓7は、筐体2(第2の部分22)の孔22aと対向している。例えば、窓7は、第2の部分22の内壁に設けられ、孔22aを覆っている。窓7は、放電ランプ4から照射された紫外線を透過可能な複数の開口を有する。窓7が設けられていれば、放電ランプ4から照射された紫外線を筐体2の外部に照射することができ、且つ、人の指や異物などが筐体2の内部に侵入するのを抑制することができる。
【0030】
図4(a)~(d)は、窓の形態を例示するための模式平面図である。
図4(a)に示すように、窓7aは、複数の線状部材を格子状に並べたものとすることができる。
図4(b)に示すように、窓7bは、複数の線状部材を網目状に並べたものとすることができる。
窓7aと窓7bは、例えば、エッチング加工により形成することもできるし、複数の線材を編み込んで形成することもできる。なお、エッチング加工により、窓7aおよび窓7bを形成する場合には、複数の線状部材を囲む枠部を設けることができる。
【0031】
図4(c)に示すように、窓7cは、複数の線状部材を一方向に並べたものとすることができる。窓7cは、例えば、エッチング加工により形成することができる。なお、エッチング加工により、窓7cを形成する場合には、複数の線状部材を囲む枠部を設けることができる。
図4(d)に示すように、窓7dは、複数の開口(孔)を有する板材とすることができる。窓7dは、例えば、エッチング加工やプレス加工により形成することができる。
【0032】
ここで、放電ランプ4を点灯させた際に、放電ランプ4の電極間において放電が生じると、紫外線とともに電磁波が放射される場合がある。また、放電ランプ4を点灯させた際に、点灯回路6に設けられたスイッチング素子やスイッチング素子に電気的に接続された配線などから電磁波が放射される場合がある。
【0033】
また、車両には、車両用紫外線照射装置1の他にも車両の運行などに用いられる電子機器が設けられる。この場合、車両用紫外線照射装置1と電子機器は、車室内などの狭いスペースに設けられることになるので、車両用紫外線照射装置1と電子機器との間の距離が短くなり易い。そのため、筐体2の内部に設けられた放電ランプ4や点灯回路6などにおいて発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されると、車両用紫外線照射装置1の近傍に設けられた電子機器に電磁波が入射する場合がある。電磁波が電子機器に入射すると、電磁波ノイズとなって電子機器の誤動作などが生じるおそれがある。
そこで、本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置1には、シールド8が設けられている。
【0034】
シールド8は、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを抑制する。シールド効果は、シールド8における反射損失、吸収損失、および多重反射損失が関係するが、電磁波をシールドする場合のシールド効果は、反射損失が支配的となる。
【0035】
すなわち、シールド8における反射損失を大きくすれば、筐体2の内部において発生した電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを効果的に抑制することができる。この場合、反射損失を大きくするためには、シールド8の反射係数を大きくすればよい。シールド8の反射係数を大きくするためには、シールド8のインピーダンスを低くすればよい。
【0036】
例えば、導電性を有するシールド8とすればよい。この場合、シールド8を金属などの導電率の高い材料から形成すれば、シールド8における反射損失を大きくすることができ、ひいては、電磁波が、筐体2の外部に放射されるのを効果的に抑制することができる。
【0037】
シールド8は、例えば、導電性材料を含む板材またはフィルム、導電性フィラーを含む導電性塗料、導電性を有するめっき層や蒸着層などとすることができる。導電性材料を含む板材またはフィルムは、例えば、接着剤や両面テープなどを用いて筐体2に接合することができる。導電性材料を含む板材は、例えば、インサート成形法などを用いて筐体2と一体成形することもできる。導電性塗料は、例えば、筐体2に塗布することができる。導電性を有するめっき層は、例えば、無電解めっき法などにより筐体2の表面に設けることができる。導電性を有する蒸着層は、例えば、スパッタリング法などにより筐体2の表面に設けることができる。
導電性材料は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、炭素鋼などの金属とすることができる。この場合、アルミニウムや銅などの導電率の高い金属とすることがより好ましい。
【0038】
シールド8は、例えば、筐体2の外壁および筐体2の内壁の少なくともいずれかに設けることができる。この場合、筐体2の外壁および筐体2の内壁にシールド8を設ければ、シールド効果を高めることができる。
【0039】
しかしながら、筐体2の内部には、放電ランプ4、端子ホルダ41、および点灯回路6などが設けられている。そのため、筐体2の内壁に、導電性を有するシールド8を設ければ、シールド8と、放電ランプ4などとの間の絶縁を確保する必要がある。例えば、筐体2の内壁に設けられたシールド8と、放電ランプ4などとの間の絶縁距離を確保したり、筐体2の内壁に設けられたシールド8と、放電ランプ4などとの間に絶縁シートなどの絶縁部材を挿入したりすることができる。
【0040】
しかしながら、これらの様にすれば、筐体2の厚み寸法Tが大きくなったり、車両用紫外線照射装置1の重量が増加したりすることになる。前述した様に、車両用紫外線照射装置1は、車室内などの狭いスペースに、車両の運行などに用いられる電子機器などと一緒に設けられる場合が多い。そのため、筐体2の厚み寸法Tが大きくなったり、車両用紫外線照射装置1の重量が増加したりすると、車両用紫外線照射装置1の設置が困難となる場合がある。
【0041】
そのため、
図2および
図3に示すように、シールド8は筐体2の外壁に設けることが好ましい。この様にすれば、絶縁性を有する筐体2の内壁と、放電ランプ4、端子ホルダ41、および点灯回路6などとの間の距離を短くすることができるので、筐体2の厚み寸法Tを小さくするのが容易となる。筐体2の外壁に設けられたシールド8は、例えば、配線61の電線61cを介して、車両のグランドに電気的に接続される。
【0042】
ここで、筐体2が分割されている場合、複数の筐体2の部分のそれぞれにシールドを設けることになる。例えば、
図1~
図3に示すように、筐体2が、第1の部分21および第2の部分22を有する場合には、第1の部分21の外壁にシールド8aを設け、第2の部分22の外壁にシールド8bを設けることになる。
【0043】
この場合、複数の筐体2の部分のそれぞれに設けられたシールドのいずれかが、車両のグランドに電気的に接続されていないと、シールドのシールド効果が低減することになる。ところが、配線61の電線61cを、複数のシールドの全てに電気的に接続すると、配線作業が繁雑となったり、筐体2の分解が困難となったりするおそれがある。
【0044】
そこで、筐体2が分割されている場合には、分割された筐体2の部分同士の接続部分において、分割された筐体2の部分のそれぞれに設けられたシールド同士が電気的に接続されるようにしている。
【0045】
図5は、
図2におけるC部の模式拡大図である。
図5に示すように、筐体2が、第1の部分21および第2の部分22を有する場合には、第1の部分21と第2の部分22との接続部分2aにおいて、第1の部分21の外壁に設けられたシールド8aと、第2の部分22の外壁に設けられたシールド8bとが、接触する様になっている。例えば、第1の部分21の開口側の端部にもシールド8aを設け、第2の部分22の開口側の端部にもシールド8bを設けることができる。
【0046】
この様にすれば、シールド8aとシールド8bとを電気的に接続することができる。そのため、シールド8aとシールド8bとを、車両のグランドに電気的に接続することができるので、シールド効果が低減するのを抑制することができる。また、シールド8aおよびシールド8bのいずれか一方に、配線61の電線61cを電気的に接続すればよいので、配線作業が繁雑となったり、筐体2の分解が困難となったりするのを抑制することができる。
【0047】
また、第1の部分21には、基板3、一対の端子ホルダ41、および点灯回路6などが設けられる。そのため、第1の部分21に設けられるシールド8aに配線61の電線61cを電気的に接続することが好ましい。この様にすれば、第2の部分22の着脱が容易となる。
【0048】
ここで、前述した様に、窓7には放電ランプ4から照射された紫外線を透過させる複数の開口が設けられている。そのため、窓7に設けられた複数の開口を介して、電磁波が筐体2の外部に放射されるおそれがある。この場合、窓7の外面にシールド8を設けると、紫外線が筐体2の外部に照射されなくなる。
【0049】
そこで、窓7は、導電性を有するものとしている。例えば、窓7は、導電性材料から形成されている。導電性材料は、例えば、シールド8に用いる導電性材料と同じとすることができる。この場合、導電性材料が金属であれば、放電ランプ4から照射された紫外線に対する耐性を高めることもできる。
【0050】
窓7が導電性を有していれば、前述したシールド8の場合と同様に、窓7における反射損失を大きくすることができるので、電磁波が窓7を介して筐体2の外部に放射されるのを抑制することができる。
【0051】
ここで、窓7に設けられた複数の開口の開口率を小さくすると、電磁波をシールドする効果が大きくなるが、紫外線が窓7を透過し難くなる。窓7に設けられた複数の開口の開口率を大きくすると、紫外線が窓7を透過し易くなるが、電磁波をシールドする効果が小さくなる。
【0052】
この場合、窓7に設けられた複数の開口の開口率は、10%以上、90%以下の範囲で適宜選択することができる。例えば、車両用紫外線照射装置1と、車両の運行などに用いられる電子機器との間の距離などに応じて、複数の開口の開口率を変更することができる。例えば、車両用紫外線照射装置1と電子機器との間の距離が長い場合には、複数の開口の開口率を大きくすることで紫外線の照射量を多くすることができる。例えば、車両用紫外線照射装置1と電子機器との間の距離が短かったり、電子機器の耐ノイズ性が低かったりする場合には、複数の開口の開口率を小さくすることができる。
なお、窓7に設けられた複数の開口の開口率は、「(複数の開口の総面積/窓7の面積)×100」である。
【0053】
また、前述したシールド8の場合と同様に、窓7が、車両のグランドに電気的に接続されていないと、窓7のシールド効果が低減することになる。この場合、配線61の電線61cを、シールド8と窓7に電気的に接続すると、配線作業が繁雑となったり、筐体2の分解が困難となったりするおそれがある。そこで、窓7は、筐体2に設けられたシールド8に電気的に接続されている。
【0054】
図6は、
図2におけるD部の模式拡大図である。
図6に示すように、筐体2(第2の部分22)の内壁であって、紫外線を出射させるための孔22aの周辺にもシールド8(シールド8b)を設けることができる。
【0055】
この様にすれば、シールド8(シールド8b、8a)と窓7とを電気的に接続することができる。そのため、シールド8(シールド8b、8a)を介して、窓7を、車両のグランドに電気的に接続することができる。その結果、窓7のシールド効果が低減するのを抑制することができる。
【0056】
また、ネジなどの締結部材や、導電性テープなどを用いて、窓7とシールド8(シールド8b)とを接続することもできる。この様にすれば、窓7とシールド8(シールド8b)との接続がより強固になるので、走行などによる振動で、窓7とシールド8(シールド8b)との接続が外れるのを抑制することができる。
【0057】
ここで、車両用紫外線照射装置1の場合には、高温高湿の環境に設けられる場合がある。例えば、自動車に設けられる車両用紫外線照射装置1の場合には、環境温度が85℃、湿度が85%という高温高湿の環境においても使用できる様にする必要がある。ところが、窓7には紫外線を透過させるための複数の開口が設けられているので、複数の開口を介して、筐体2の内部に水蒸気やガスが侵入するおそれがある。筐体2の内部に水蒸気やガスが侵入すると、基板3、放電ランプ4、および点灯回路6などにおいて、マイグレーション、腐食、汚れなどが発生するおそれがある。
そこで、車両用紫外線照射装置1には、筐体2の内部空間と、筐体2の外部とを仕切る仕切り部9が設けられている。
【0058】
図1~
図3、および
図6に示すように、仕切り部9は、板状を呈し、孔22aと対向している。仕切り部9は、例えば、筐体2に設けることもできるし、ランプカバー5に設けることもできる。仕切り部9は、例えば、ネジなどの締結部材、接着剤、両面テープなどを用いて、筐体2やランプカバー5に取り付けることができる。
【0059】
仕切り部9は、放電ランプ4から照射された紫外線を透過させる材料から形成されている。例えば、仕切り部9は、溶融石英ガラス、合成石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどのガラス材料、または、紫外線を透過させる樹脂などから形成することができる。紫外線を透過させる樹脂は、例えば、シリコーンや、シクロオレフィンポリマーなどの透明プラスチックなどとすることができる。
【0060】
仕切り部9の厚みには特に限定がない。仕切り部9の厚みは、例えば、剛性や紫外線の透過率などを考慮して適宜決定することができる。仕切り部9の平面寸法は、例えば、筐体2の孔22aの平面寸法よりも大きくすることができる。
【0061】
また、仕切り部9は、窓7の、放電ランプ4の側に設けることもできるし、窓7の、放電ランプ4の側とは反対側に設けることもできる。ここで、放電ランプ4および仕切り部9はガラス材料から形成されているので、衝撃などにより、放電ランプ4および仕切り部9が破損する場合がある。放電ランプ4および仕切り部9が破損した場合、仕切り部9が、窓7の、放電ランプ4の側とは反対側に設けられていると、破片が車両用紫外線照射装置1の周辺に飛び散るおそれがある。
【0062】
図1~
図3、および
図6に示すように、仕切り部9が、窓7の、放電ランプ4の側に設けられていれば、窓7により、破片が車両用紫外線照射装置1の周辺に飛び散るのを抑制することができる。
【0063】
また、
図2、
図3、および
図6に示すように、仕切り部9と窓7との間には隙間9aを設けることが好ましい。仕切り部9と窓7が接触していると、放電ランプ4の点灯と消灯に伴い、仕切り部9と窓7との間に熱応力が発生する場合がある。仕切り部9と窓7との間に熱応力が発生すると、仕切り部9および窓7に変形が生じたり、破損や摩耗が生じたりするおそれがある。仕切り部9と窓7との間に隙間9aが設けられていれば、熱応力の発生を抑制できるので、仕切り部9および窓7に変形などが生じるのを抑制することができる。
【0064】
また、
図2、
図3、および
図6に示すように、仕切り部9は、弾性部材91を介して取り付けることができる。弾性部材91は、例えば、枠状を呈し、窓7の周縁近傍に位置している。弾性部材91が設けられていれば、走行に伴う振動や衝撃を緩和したり、封止性を向上させたりすることができる。弾性部材91は、例えば、フッ素ゴムなどから形成することができる。フッ素ゴムを含む弾性部材91とすれば、放電ランプ4から照射された紫外線に対する耐性を向上させることができる。
【0065】
また、仕切り部9と窓7を別々に設ける場合を例示したが、仕切り部9と窓7が一体に設けられていてもよい。例えば、窓7に設けられた複数の開口に、紫外線を透過させる樹脂を充填することができる。例えば、インサート成形法などを用いて、仕切り部9の内部に窓7を設けることができる。この場合、窓7の一部を仕切り部9から露出させて、シールド8と電気的に接続することができる。
【0066】
以上に説明した様に、車両用紫外線照射装置1には、窓7およびシールド8が設けられているので、筐体2の外部への電磁波の放射を抑制することができる。また、車両用紫外線照射装置1には、仕切り部9が設けられているので、筐体2の内部に水蒸気やガスが侵入するのを抑制することができる。すなわち、本実施の形態に係る車両用紫外線照射装置1とすれば、電磁波の放射を抑制することができ、且つ、耐環境性の向上を図ることができる。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 車両用紫外線照射装置、2 筐体、2a 接続部分、3 基板、4 放電ランプ、5 ランプカバー、6 点灯回路、7 窓、8 シールド、8a シールド、8b シールド、21 第1の部分、22 第2の部分、22a 孔、9 仕切り部