(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂の積層シート及びそのジョイント方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20250228BHJP
E04D 5/00 20060101ALI20250228BHJP
E04D 3/35 20060101ALI20250228BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20250228BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
E04F15/16 E
E04F15/16 D
E04D5/00 D
E04D3/35 E
B29C65/48
B32B27/30 101
(21)【出願番号】P 2024103437
(22)【出願日】2024-06-26
【審査請求日】2024-08-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524243837
【氏名又は名称】平富株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134533
【氏名又は名称】伊藤 夏香
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 祥
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-084237(JP,U)
【文献】実開昭58-84238(JP,U)
【文献】特開2022-181860(JP,A)
【文献】特開2013-224546(JP,A)
【文献】特開昭54-59304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/24、21/28、21/30
E04D1/00-15/07
E04F15/00-15/22
B29C63/00-63/48
65/00-65/82
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂の下層シートと、前記下層シートと同じ幅の塩化ビニル系樹脂の上層シートとを、互いに幅方向にずらして積層して一体化してあり、前記下層シートと前記上層シートが重なり合った本体部の幅方向の一端側には前記下層シートがなく前記上層シートを有する上側縁部を設けてあり、前記本体部の幅方向の他端側には前記上層シートがなく前記下層シートを有する下側縁部を設けてあり、
前記下層シートと前記上層シートの間に、ガラスクロス又は樹脂メッシュからなる強化材を挟んで積層してあり、前記上側縁部には前記強化材がなく、前記下側縁部には前記強化材が前記下層シートの上にあることを特徴とす
る塩化ビニル系樹脂の積層シート。
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂の下層シートと、前記下層シートと同じ幅の塩化ビニル系樹脂の上層シートとを、互いに幅方向にずらして積層して一体化してあり、前記下層シートと前記上層シートが重なり合った本体部の幅方向の一端側には前記下層シートがなく前記上層シートを有する上側縁部を設けてあり、前記本体部の幅方向の他端側には前記上層シートがなく前記下層シートを有する下側縁部を設けてある塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント方法であって、一方の塩化ビニル系樹脂の積層シートの下側縁部の上に他方の塩化ビニル系樹脂の積層シートの上側縁部を重ね合わせる敷設工程と、塩化ビニル系樹脂の積層シート同士の接触面に塩化ビニル系樹脂用溶剤を供給し圧着する接合工程とを含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント方法。
【請求項3】
請求項1
記載の塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント方法であって、一方の塩化ビニル系樹脂の積層シートの下側縁部の上に他方の塩化ビニル系樹脂の積層シートの上側縁部を重ね合わせる敷設工程と、塩化ビニル系樹脂の積層シート同士の接触面に塩化ビニル系樹脂用溶剤を供給し圧着する接合工程とを含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント方法。
【請求項4】
前記接触面が、前記一方の積層シートの下側縁部の端部と前記他方の積層シートの下層シートの端部から構成される下層シート端部接触面と、前記一方の積層シートの下側縁部の上面と前記他方の積層シートの上側縁部の下面から構成される上層シート・下層シート間接触面を含むことを特徴とする請求項
2又は3記載の塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上、ルーフバルコニー、ベランダや建物内の床材に使用できる塩化ビニル系樹脂の積層シート及びそのジョイント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上、ルーフバルコニー、ベランダの床面に施工する防水シートは、主流であるウレタンゴム系塗膜による防水や、FRP系塗膜による防水もあるが、耐候性や柔軟性や価格の面から、塩化ビニル系樹脂の積層シート(一般に、塩化ビニルシート、塩化ビニル樹脂系シート防水)による防水の実績が増加している。また、建物内の床面に施工する床材シートとしての塩化ビニル系樹脂の積層シート(一般に、ビニル床汎用品、長尺塩ビシート)も、現在汎用床材として、学校や病院などの施設に広く採用されている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂の積層シートはロール状で現場に届けられ、床に広げて設置される。マンションの狭いベランダ等では1.2mあるいは1.8m幅の塩化ビニルシート1枚でつなぎ合わせなくても防水が可能になるが、シートの幅よりも広く拡げる場合は、積層シート2枚を接合して使用する。例えば積層シートの幅を超える広さがある場所に塩化ビニル系樹脂の積層シートを敷設ジョイントする場合、従来、ルーフバルコニーやベランダの防水シート用の塩化ビニル系樹脂の積層シートでは、重ね合わせたシートの小口部分に塩化ビニルシールを貼る方法や、40mm幅でシート同士を重ね合わせて熱又は溶剤にて上に重ねた方のシートの端部を下になったシートの上面に塩化ビニルシールや接着剤で溶着又は接着することにより一体化する方法があり、接着剤の供給装置を用いて重なり部に接着剤を供給しローラーで転圧することで重なり合った積層シートを接合する方法もあった(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
また、建物や車両、船舶などの床材工事に用いる床材シート用の塩化ビニル系樹脂の積層シートでは、シート同士を突き合わせて突き合わせ部分の上部から下方へV型に削り取り塩化ビニル系樹脂の溶接棒で熱溶着して溶接棒の上部をカットして表面を平滑にする方法があった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-45127号公報(第3図、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋根の上など非歩行用の場所に敷設される防水シート用の塩化ビニル系樹脂の積層シートは1.2mmあるいは1.5mm程度の厚みであり重ね合わせてもトラブルは生じにくいが、学校や幼稚園や病院の屋上など、人がその上を歩くことが前提の場所では、床に貼る防水シート用の塩化ビニル系樹脂の積層シートの厚みは2mmあり、特許文献1、2に示した重ね合わせる方法では、重ね合わせたジョイント部分の厚みで段差ができ人が躓く危険性が生じ、歩行に障害が出るという問題があった。また、段差部分に砂埃などの汚れがたまりやすく汚れ跡が付きやすく美観を損なうという問題があった。さらに、人工芝や保護パネルを上に置いても段差は解消されず残るという問題があった。
【0007】
特許文献2に示した突き合わせる方法では、床材シート用の塩化ビニル系樹脂の積層シート同士の溶着面積が少なく破断しやすいという問題があった。また、突き合わせたジョイント部分に可塑剤を含むため紫外線により経年劣化して突き合わせたシート同士の間に隙間が生じて、水洗い等したときにシートの下にまで水分が届き防水効果が低下し耐水性能が低いという問題があった。さらに、ジョイント加工跡の筋が目立ち美観を損なうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、段差やジョイント跡がなく、かつ、接合したシート同士の間に経年劣化で隙間ができることがなく、防水効果も損なわれず、ジョイント部分に汚れが詰まることもない塩化ビニル系樹脂の積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、塩化ビニル系樹脂の下層シートと、前記下層シートと同じ幅の塩化ビニル系樹脂の上層シートとを、互いに幅方向にずらして積層して一体化してあり、前記下層シートと前記上層シートが重なり合った本体部の幅方向の一端側には前記下層シートがなく前記上層シートを有する上側縁部を設けてあり、前記本体部の幅方向の他端側には前記上層シートがなく前記下層シートを有する下側縁部を設けてあることを特徴とする積層シートを提供する。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、溶着面積が広くなり、接合したときに、段差やジョイント跡がなく、かつ、接合したシート同士の間に経年劣化で隙間ができることがなく、防水効果も損なわれず、ジョイント部分に汚れが詰まることもない。
【0011】
また、防水シート用の塩化ビニル系樹脂の積層シートでは、前記下層シートと前記上層シートの間に、ガラスクロス又は樹脂メッシュからなる強化材を挟んで積層してあり、前記上側縁部には前記強化材がなく、前記下側縁部には前記強化材が前記下層シートの上にあることが好ましい。強度があり屋外での使用により適する。
【0012】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の積層シートのジョイント方法であって、一方の塩化ビニル系樹脂の積層シートの下側縁部の上に他方の塩化ビニル系樹脂の積層シートの上側縁部を重ね合わせる敷設工程と、塩化ビニル系樹脂の積層シート同士の接触面に塩化ビニル系樹脂用溶剤を供給し圧着する接合工程とを含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント方法を提供する。接合工程では、加熱なしで圧着しても加熱溶解させて圧着させてもよい。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、段差やジョイント跡がなく、かつ、接合したシート同士の間に経年劣化で隙間ができることがなく、防水効果も損なわれず、ジョイント部分に汚れが詰まることもない。水密性も高い。また、前記接触面が、前記一方の積層シートの下側縁部の端部と前記他方の積層シートの下層シートの端部から構成される下層シート端部接触面と、前記一方の積層シートの下側縁部の上面と前記他方の積層シートの上側縁部の下面から構成される上層シート・下層シート間接触面を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、段差やジョイント跡がなく、かつ、接合したシート同士の間に経年劣化で隙間ができることがなく、防水効果も損なわれず、ジョイント部分に汚れが詰まることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1の積層シートの概略図である。
【
図2】本発明の実施例1の積層シートのジョイント方法を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施例1の塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント後の側面図である。
【
図4】本発明の実施例1の塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント後の斜視図である。
【
図5】本発明の実施例2の積層シートのジョイント方法を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施例2の積層シートの構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の塩化ビニル系樹脂の積層シート及びそのジョイント方法について、添付図面を参照して実施例を用いて本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
(構成)
図1は、本発明の実施例1の積層シートの概略図である。本発明の実施例1の塩化ビニル系樹脂の積層シート1は、床材用の塩化ビニル系樹脂の積層シートである。
図1と
図3に示す点線は塩化ビニル系樹脂2層を重ね合わせていることを示す。
図1の紙面左右方向が積層シート1の幅方向で、紙面奥行方向が積層シートの長さ方向である。本発明の実施例1の積層シート1は、塩化ビニル系樹脂の下層シート2と、下層シート2と同じ幅の塩化ビニル系樹脂の上層シート3とを、互いに40mmずつ幅方向にずらして上下に重ね合わせて積層して一体化してあり、幅方向の一端側には下層シート2がなく上層シート3を有する上側縁部5を設けてあり、他端側には上層シート3がなく下層シート2を有する下側縁部4を設けてある。下側縁部4及び上側縁部5を除く部分が本体部6である。本体部6は、下層シート2と上層シート3が積層されている。すなわち、下層シート2と上層シート3が重なり合った本体部6の幅方向の一端側には上側縁部5、本体部6の幅方向の他端側には下側縁部4を設けてある構成となっている。
【0018】
下層シート2及び上層シート3は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有してなり、塩化ビニル系樹脂として総称される塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単独重合体であるポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニリデン等との共重合などであってもよく、床材用に一般的に用いられる塩化ビニル系樹脂を使用できる。可塑剤としては、一般的に塩化ビニル系樹脂製のシートに用いられる可塑剤、例えばDOP等のフタル酸系可塑剤を使用できる。さらに安定剤等の添加剤を配合してもよい。本実施例では、下層シート2及び上層シート3は、異なる種類の塩化ビニル系樹脂とするが、同じ種類であってもよい。
【0019】
(製造方法)
塩化ビニル系樹脂の積層シート1は、2種又は1種の塩化ビニル系樹脂組成物を、それぞれ加熱溶融しカレンダー法又は押出法でシート状に成形し、下層シート2と上層シート3の2枚のシートを得た後、カレンダー法で積層・一体化して成形した長尺物で、ロール状に巻いてある。ロール状に為った状態では、塩化ビニル系樹脂の積層シート1の長さ方向が周方向になり、幅方向が長手方向になる。ロールに巻いた塩化ビニル系樹脂の積層シート1はロールの右側に上側縁部5がある場合、左側に下側縁部4があり、どの長さで塩化ビニル系樹脂の積層シート1を切っても一端に上側縁部5、他端に下側縁部4がある状態になる。積層時に下層シート2と上層シート3は幅方向に40mmずらして重ね合わせる。Z型又はH型などのロール配列で複数のローラー間に下層シート2と上層シート3を重ねて通し、塩化ビニル系樹脂が溶け始める160~200度で溶着して一体化する。なお、溶着温度は一例であり、これに限定されない。2500mm幅のローラーで、全体幅が1200~2000mmの塩化ビニル系樹脂の積層シートを製造する。本実施例の製造方法は一例であって他の方法で製造してもよい。本実施例の塩化ビニル系樹脂の積層シート1の厚みは2mmである。本実施例では下層シート2と上層シート3の厚みの比は1:4である。なお、積層シートの下層シートと上層シートの厚みの比は一例であって、この限りではない。本実施例の積層シート1は、床材シートで、ガラスクロスが間に挟まれていない2種の塩化ビニル系樹脂を重ね合わせた2層のシートである。
【0020】
(ジョイント方法)
図2は、本発明の実施例1の積層シートのジョイント方法を示す説明図である。積層シート1は、軟質塩化ビニル製の長尺シートで、長さ方向及び幅方向ともに四方に広がっており、
図2は、説明のため、積層シートの重なり部分の一部のみを切り取って描いている。本実施例の積層シートを下地に固定する方法としては接着剤を用いた接着工法で、本実施例の積層シート相互間のジョイント方法は、溶着剤による溶剤溶着であり、積層シート1の幅を超える長さがある床に敷き詰めるときに、隣り合った積層シート1を次のように接合してジョイントする。本発明の実施例1の積層シートのジョイント方法は、一方の塩化ビニル系樹脂の積層シート1bの下側縁部5bの上に他方の塩化ビニル系樹脂の積層シート1aの上側縁部4aを重ね合わせる敷設工程と、塩化ビニル系樹脂の積層シート同士の接触面に塩化ビニル系樹脂用溶剤を供給し加熱圧着する接合工程とを含む。接合工程では、本実施例では加熱なしで圧着するが、加熱溶解させて圧着させてもよい。シート同士は、いわゆる相杓り(あいじゃくり)に重ね合わせてあり、上側縁部をめくりあげて、両シートが重なり合う面同士を液及び加熱によって溶着する。加熱温度は160~200度が好ましい。なお、加熱温度は一例であり、これに限定されない。
図3は、本発明の実施例1の塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント後の側面図である。塩化ビニル系樹脂の積層シート1aと塩化ビニル系樹脂の積層シート1bの接触面7は、上側縁部5bの下面及び端部と、下側縁部4aの上面及び端部を含む。詳細には、接触面7は、(1)一方の塩化ビニル系樹脂の積層シート1bの下側縁部5bの端部と、他方の塩化ビニル系樹脂の積層シート1aの本体部6aの端部(上側縁部4aの根元手前)から構成される下層シート端部接触面72と、(2)一方の塩化ビニル系樹脂の積層シート1bの下側縁部5bの上面と他方の塩化ビニル系樹脂の積層シート1aの上側縁部4aの下面から構成される上層シート・下層シート間接触面73とを含む。また、さらに本実施例では、接触面7は、(3)他方の塩化ビニル系樹脂の積層シート1aの上側縁部4aの端部と、一方の塩化ビニル系樹脂の積層シート1bの本体部6bの端部(下側縁部5bの根元手前)から構成される上層シート端部接触面71も含む。
【0021】
図4は、本発明の実施例1の塩化ビニル系樹脂の積層シートのジョイント後の斜視図である。
図4は、説明のため、積層シートの重なり部分の一部のみを切り取って描いている。接触面7は、上層シート端部接触面71と下層シート端部接触面72と上層シート・下層シート間接触面73の3面である。3面に塩化ビニル系樹脂用溶剤を塗布して3面の表面の塩化ビニル系樹脂を溶かして圧着するので、塩化ビニル系樹脂の積層シート1aと塩化ビニル系樹脂の積層シート1bは強固に一体化する。上層シート端部接触面71には直接塗布しなくても圧着時に液が間に上がってきて液がつく。上面に溢れた液は拭きとる。本実施例では、塩化ビニル系樹脂用溶剤としてテトラヒドロフランを使用するが、塩化ビニル系樹脂を溶かす作用のある溶剤であれば他の溶剤でもよい。塗布して重ね合わせた後、圧着し、20~30秒でくっつくが、上からローラー又は板状の圧着用具で圧着し、さらにその後24時間放置することが好ましい。
【0022】
(効果)
本実施例の積層シート及びこれを用いたジョイント方法によれば、段差やジョイント跡がなく、かつ、接合したシート同士の間に経年劣化で隙間ができることがなく、防水効果も損なわれず、ジョイント部分に汚れが詰まることもない。水密性が高く、耐候性も高い。重ね合わせたジョイント部分がフラットであるので、段差がなく、人が躓く危険性がない。子どもや老人や病人が歩いても歩行に障害が出ないので安全性も高い。したがって、ジョイントに適する分野が広がる。また、段差部分がないので、砂埃などの汚れがたまることを防止でき、汚れ跡が付かないので美観に優れる。さらに、人工芝や保護パネルを上に置いても段差は生じない。シート同士の溶着面積が大きいので破断しにくい。また、一体化しているため、シート同士の間に隙間が生じず、水洗い等したときも水の浸透がなく防水効果・耐水効果が高い。ジョイント加工跡がなく一体化しているため美観に優れる。液溶着を採用できるので熱風溶接機等の工具に頼らずに簡易的に短時間でジョイントを完了できる。ジョイントした部分が目立たなくなり見た目がシームレスのような見栄えとなる。本実施例の積層シートは、塩化ビニル製で、暑さ寒さに強く塩害や鳥害にも強いので、屋内にも屋外にも使用でき、また、海の近くなど耐候性を求められる場所にも使用できる。
【実施例2】
【0023】
図5は、本発明の実施例2の積層シートのジョイント方法を示す説明図である。
図6は、本発明の実施例2の積層シートの構造を示す説明図である。本発明の実施例2の塩化ビニル系樹脂の積層シート1’は、軟質塩化ビニル製の長尺シートで、ルーフバルコニーや病院の屋上等の床面に用いる防水シート用の塩化ビニル系樹脂の積層シートである。積層シート1’は、長さ方向及び幅方向ともに四方に広がっており、
図5は、説明のため、積層シートの重なり部分の一部のみを切り取って描いている。本実施例の塩化ビニル系樹脂の積層シート1’の厚みは2mmである。本実施例では下層シート2’と上層シート3’の厚みの比は1:4である。なお、積層シートの下層シートと上層シートの厚みの比は一例であって、この限りではない。本実施例の積層シート1’は、防水シートで、ガラスクロスを2種の塩化ビニル系樹脂シートの間に挟んで重ね合わせたシートである。実施例2の積層シートは、ガラスクロスが挟まれているので、使用環境が過酷な状況でシートの伸縮を防ぎ破断強度を強化することができ耐候性と強度があるため屋外で使用する防水シートとして適する。ガラスクロス層の厚みはほとんどなく、ガラスクロスの編み目の間では上下の塩化ビニル系樹脂層が接触し一体化している。
図6では、紙面左右方向を幅方向とし、
図6において、高さ方向の構造を説明するため、幅方向の長さは短縮して表現している。本発明の実施例2の塩化ビニル系樹脂の積層シート1’a、bは、上層シート3’と下層シート2’の間に強化材としてガラスクロス8を挟んで積層してあり、上側縁部4’aにはガラスクロスがなく、下側縁部5’bにはガラスクロス8が下層シート2’の上にある。ガラスクロスの代わりにポリプロピレンメッシュなどの樹脂メッシュを強化材としてもよい。他は、実施例1と同じであり、ジョイント方法も同様である。すなわち、本実施例の積層シートの外観は、
図1に示した実施例1の概略図と同様であり、ジョイント方法の概略は、
図2に示した実施例1における説明図と同様であり、ジョイント後は、
図4に示した実施例1の斜視図と同様となる。各図において間に挟んだガラスクロスは図示を省略した形となる。ガラスクロス8は、メッシュ状であるので、上側縁部4’aと下側縁部5’bの接触面積は大きいまま保持され、塩化ビニル系樹脂の積層シート1’a、bの一体化を損なうことがない。したがって、実施例1と同様な効果を発揮する。ルーフバルコニーや広いベランダ、病院の屋上など、人が歩行する可能性のある場所での使用に適する。
【0024】
下層シート2’及び上層シート3’は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有してなり、塩化ビニル樹脂あるいは塩ビとして総称される塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単独重合体であるポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニル、エチレン、(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニリデン等との共重合などであってもよく、防水シート用に一般的に用いられる塩化ビニル系樹脂を使用できる。可塑剤としては、一般的に塩化ビニル系樹脂製のシートに用いられる可塑剤、例えばDOP等のフタル酸系可塑剤を使用できる。さらに安定剤、着色材、充填剤、滑剤等の添加剤を配合してもよい。本実施例では、下層シート2’及び上層シート3’は、異なる種類の塩化ビニル系樹脂とするが、同じ種類であってもよい。
【0025】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々と変形実施が可能である。また、上記各実施の形態の構成要素を発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0026】
1a、b、1’a、b 積層シート
2a、b、2’ 下層シート
3a、b、3’ 上層シート
4a、b、4’a 上側縁部
5a、b、5’b 下側縁部
6a、b、6’a、b 本体部
7 接触面
71 上層シート端部接触面
72 下層シート端部接触面
73 上層シート・下層シート間接触面
8 ガラスクロスs
【要約】
【課題】段差やジョイント跡がなく、かつ、接合したシート同士の間に経年劣化で隙間ができることがなく、防水効果も損なわれず、ジョイント部分に汚れが詰まることもない積層シートを提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂の下層シート2と、下層シート2と同じ幅の塩化ビニル系樹脂の上層シート3とを、互いに幅方向にずらして積層して一体化してあり、下層シート2と上層シート3が重なり合った本体部6の幅方向の一端側には下層シート2がなく上層シート3を有する上側縁部5を設けてあり、本体部6の幅方向の他端側には上層シート3がなく下層シート2を有する下側縁部4を設ける。
【選択図】
図1