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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】抵抗体および湿度センサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20250228BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G01N27/04 B
G01N27/12 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021088262
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181352
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度からの国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『フロンティア有機システムイノベーション拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 綾子
(72)【発明者】
【氏名】ワン イーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-031536(JP,A)
【文献】特開2013-211108(JP,A)
【文献】特開2019-066427(JP,A)
【文献】特開2006-275997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0286434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された一対の電極と、
前記一対の電極間に形成された抵抗体と、を含み、
前記抵抗体は、セルロースナノファイバーと、前記セルロースナノファイバー間に分散されたカーボン粒子と、界面活性剤と、を含有し、
前記界面活性剤の含有量は、前記セルロースナノファイバー1質量部に対して、0.25~1質量部であり、
導電性を有し、前記導電性が水分により変化する
湿度センサー。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバー1質量部に対する前記カーボン粒子の含有量が、0.2~10質量部であることを特徴とする請求項1に記載の湿度センサー
【請求項3】
前記カーボン粒子がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1または2に記載の湿度センサー
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーの繊維径が1~10nmであり、繊維長が100nm~10μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の湿度センサー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度センサーとして好適に用いられる抵抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
湿度センサーは、環境測定から農業や物流まで様々な分野で重要視され、最近ではヘルスケアにおいて呼吸の常時モニタリング用途としても、非常に期待されている。湿度センサーには、静電容量式や抵抗変化式が知られるが、静電容量式は装置の小型化が難しく、ウェアラブルデバイスには適していない。
【0003】
抵抗変化式の湿度センサーとしては、感湿材に親水性高分子を使用し、電極間を橋渡しする構造を有するものが知られており、感湿材の湿度を電気的に測定し、湿度を計測することができる。また、感湿材に導電性粒子を分散させたものが、周囲の湿度変化に感応して抵抗変化を示すことも知られている。例えば、感湿層に繊維(セルロースなど)およびカーボンナノチューブを使用した複合材料が報告されている(非特許文献1~2)。これらの複合材料は抵抗変化型で、簡単に製造でき、柔軟性にも優れている。しかしながら、カーボンナノチューブは非常に高価である。また、複合材料中に均一に分散させることが難しい。
【0004】
また、感湿材であるポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルアルコール系重合体およびセルロース誘導体高分子、ポリアクリル酸メチルエステルケン化物、またはポリアクリル酸エチルケン化物に、導電粒子としてカーボンを添加した感湿抵抗体が報告されている(特許文献1)。このような構造は、簡単であり、大量生産ができることから、比較的安価に製造することができる。
【0005】
しかしながら、これらの感湿抵抗体は、湿度検知の履歴を繰り返すごとに樹脂中の導電性粒子の移動を伴うため、応答性、再現性またはヒステリシスなどに未だ課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-114452号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】P.Zhu et al. Applied Materials & Interfaces 2020, 12, 33229
【文献】M.Parrilla et al. Adv. Healthcare Mater. 2019, 1900342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、湿度センサー用の抵抗体として、水分によって膨潤するセルロースナノファイバーと、導電性を有するカーボン粒子との複合材料からなる抵抗体、および前記抵抗体を用いた湿度センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の事項からなる。
[1]セルロースナノファイバーと、前記セルロースナノファイバー間に分散されたカーボン粒子とを含有し、導電性を有し、前記導電性が水分により変化することを特徴とする抵抗体。
【0010】
[2]前記セルロースナノファイバーに対する前記カーボン粒子の含有量が、質量比0.2~10であることを特徴とする[1]に記載の抵抗体。
【0011】
[3]前記カーボン粒子がカーボンブラックであることを特徴とする[1]または[2]に記載の抵抗体。
【0012】
[4]前記セルロースナノファイバーおよびカーボン粒子に加えて、さらに界面活性剤を含有することを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の抵抗体。
【0013】
[5]前記セルロースナノファイバーの繊維径が1~10nmであり、繊維長が100nm~10μmであることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の抵抗体。
【0014】
[6]相対湿度を40%RHの環境下から90%RHの環境下に置いた時に、抵抗値が30秒以内に100%以上変化することを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の抵抗体。
【0015】
[7]基材上に形成された一対の電極と、前記一対の電極間に形成された[1]~[6]のいずれかに記載の抵抗体とを含むことを特徴とする湿度センサー。
【発明の効果】
【0016】
本発明の抵抗体は、セルロースナノファイバーが水分を吸収して膨潤することにより、カーボン粒子を含有する抵抗体全体の導電率が変化し、その鋭敏な感応性により、湿度の測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)および(b)は、セルロースナノファイバーのSEM画像およびその拡大像であり、図1(c)および(d)は抵抗体CB0.2(実施例3)のSEM画像およびその拡大像を表し、図1(e)および(f)は抵抗体CB1(実施例1)のSEM画像およびその拡大像である。
【0018】
図2図2(a)は、抵抗体CB1(実施例1)、抵抗体CB0.5(実施例2)、抵抗体CB0.2(実施例3)、抵抗体CB2(実施例4)の相対湿度(%RH)と抵抗変化率(R/R0)との関係を表すグラフである。 図2(b)は、抵抗体TX0.25(実施例5)および抵抗体TX0.5(実施例6)の相対湿度(%RH)と抵抗変化率(R/R0)との関係を表すグラフである。 図2(c)は、抵抗体CB0.2(実施例3)の5デバイス分の相対湿度(%RH)と、抵抗変化率(R/R0)との関係を表したグラフである。 図2(d)は、抵抗体CB0.2(実施例3)を相対湿度30%RH、次に80%RH、再び30%RHの環境下に順に置いた時の時間(秒)と抵抗変化率(R/R0)との関係を表すグラフである。 図2(e)は、相対湿度30%RHと80%RHの環境下に順に置くことを繰り返した時の抵抗体CB0.2(実施例3)の抵抗変化率(R/R0)を表すグラフである。 図2(f)は、抵抗体CB0.2(実施例3)を相対湿度40%RH、次に90%RH、再び40%RHの環境下に順に置いた時の時間(秒)と抵抗変化率(R/R0)との関係を表すグラフである。 なお、図2(a)~(f)中、縦軸R/R0は、30%RHの時の抵抗値(R0)に対する抵抗実測値(R)を表す。
【0019】
図3図3(a)は、湿度を50%RHに固定し、温度のみを25℃、35℃、45℃と変えた環境下に抵抗体CB0.2(実施例3)を置いた時の抵抗変化率(R/R0)を表すグラフである。 図3(b)は、抵抗体CB0.2(実施例3)の曲げ半径(mm)と抵抗変化率(R/R0)との関係を表すグラフである。
【0020】
図4】本発明の抵抗体を用いて、湿度センサーを作製する工程を示す図である。
図5図5は、抵抗体GNP2(実施例8)、抵抗体GNP3(実施例9)、抵抗体GNP5(実施例10)、抵抗体GNP10(実施例11)の相対湿度(%RH)と抵抗変化率(R/R0)との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の抵抗体および湿度センサーについて、詳細に説明する。
本発明の抵抗体は、水分によって膨潤するセルロースナノファイバーと、前記セルロースナノファイバー間に分散されたカーボン粒子とを含有する。前記抵抗体は、導電性を有し、水分を吸収すると導電率が変化する。すなわち、セルロースナノファイバーが水分を吸収すると、抵抗体が膨潤して、分散しているカーボン粒子間の距離が変化して導電経路が切断等され、導電性が下がり、抵抗値が上昇する。
【0022】
セルロースナノファイバーは、ナノオーダまで微細化したセルロースの繊維である。繊維径が1~10nmであり、繊維長が100nm~10μmであることが好ましい。このような極めて細い繊維を有するセルロースナノファイバーは、抵抗体中で三次元ネットワークを形成しており、セルロースを構成する多くの親水性基の水酸基がネットワーク全体に平均的に分散している。このため、セルロースナノファイバーにより形成された抵抗体は、水分を捉えやすく、その全体が空気中の水分を吸収した状態になる。また、抵抗体を例えば薄膜状に形成することにより、空気中の水分量が変動、すなわち湿度が変化した場合でも、抵抗体中の水分量が短時間で空気中の水分に対応した水分となるように変化することができる。
【0023】
セルロースナノファイバーには、例えば、レオクリスタ(登録商標;繊維径3nm、繊維長約1000nm;第一工業製薬(株)製)などの市販品が用いられる。
【0024】
カーボン粒子には、カーボンブラック、グラフェンおよび多層グラフェン(グラファイト)などの導電性微粒子が用いられる。グラフェンおよびグラファイトとしては、ナノサイズに薄片化されたグラファイト材料、いわゆるナノプレートレットを用いることが好ましい。カーボン粒子のうち、吸湿等に伴う導電性劣化の小さいカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックはセルロースナノファイバー中に分散しやすい。セルロースナノファイバーの繊維径がカーボンブラックの粒径の1/10程度であるためである。また非常に安価であり、環境にも配慮した材料でもある。カーボンブラックには、例えば、ケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)などの市販品が用いられる。
【0025】
本発明の抵抗体では、セルロースナノファイバー中にカーボン粒子が均一に分散し、セルロースナノファイバーの親水性基の結合機能により、セルロースナノファイバーとカーボン粒子とが一体化している。カーボン粒子は電気抵抗値を変化させるために機能する。つまり、セルロースナノファイバーが空気中の水分などを吸収すると、カーボン粒子がこれに鋭敏に感応して湿度検出能力を発揮する。
【0026】
前記抵抗体中のセルロースナノファイバーおよびカーボン粒子の割合は、適宜設定しうるが、カーボン粒子の含有量は、セルロースナノファイバー1質量部に対して、0.2~10質量部が好ましく、0.2~2質量部がより好ましく、0.2~0.5質量部が特に好ましい。
ただし、カーボン粒子がカーボンブラックの場合、カーボン粒子の含有量は、カーボンブラック1質量部に対して、0.2~0.5質量部が特に好ましいが、カーボン粒子がグラフェンナノプレートレットの場合、カーボンブラックより多く添加することが好ましく、2~5質量部がより好ましい。
【0027】
前記抵抗体は、セルロースナノファイバーの水分散体にカーボン粒子を加えて、攪拌混合して均一に分散させた後、溶媒を除去することにより製造される。
【0028】
前記抵抗体の溶媒としては、水又は有機溶媒、又は、水と有機溶媒との混合物が用いられる。有機溶媒には、エタノール、メチルエチルケトン、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0029】
セルロースナノファイバーの水分散体にカーボン粒子を加えて、攪拌混合して均一に分散させるに際して、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤は、イオン性界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤)および非イオン性界面活性剤のいずれを用いてもよい。特に、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルや、アクリル系エマルション(トリトンX-100;シグマアルドリッチ社製)などの非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0030】
界面活性剤の添加量は、セルロースナノファイバーの1質量部に対して、通常は0.25~1質量部、好ましくは0.3~0.5質量部である。
界面活性剤を添加することで、湿度センサーの感応性を上げることができる。セルロースナノファイバーに対する界面活性剤の質量比が0.25未満ではその効果が少なく、また印刷性能が落ちる。一方、1を超えて添加すると抵抗体の抵抗値が高くなってしまうため、弊害となる。
【0031】
前記抵抗体は、周囲の湿度変化に高速に感応する。相対湿度を30%RHの環境下から90%RHの環境下に置いた時に、抵抗値が30秒以内に100%以上変化することが好ましい。
【0032】
本発明の湿度センサーは、基材上に形成された一対の電極と、前記一対の電極間に形成された前記抵抗体とを有する。
基材には、通常、厚さが10~300μmの絶縁性のプラスチックフィルムや紙が用いられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムおよびポリエチレンナフタレート(PEN)などが用いられるが、この限りではない。なお、基材を使用しなくてもよい。
湿度センサーにおいて、前記抵抗体は、厚さが0.1~25μmで、通常、一辺が3~20mmの正方形状や長方形状に形成されるが、丸形等の異形でもよく、この限りではない。
【0033】
湿度センサーは、図4(a)~(d)に示すように、基材上に電極パターンに対応する形状の開口部が形成されたマスクをして、電極用インクを印刷または電極材料を蒸着して一対の電極を形成し、次いで、抵抗体に対応する形状の開口部が形成されたマスクをし、インク状の抵抗体を塗布して、前記一対の電極の両電極を跨るように抵抗体を形成して作製される。
【0034】
電極パターンの形成は、印刷または蒸着によって行う。印刷によって行う場合、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、およびグラビア印刷などが用いられる。蒸着によって行う場合、化学蒸着(CVD)または物理蒸着(PVD)が用いられる。
【0035】
前記のようにして得られる湿度センサーは、30%RHの時の抵抗値が1kΩ~1MΩある。
前記湿度センサーは、非接触のスイッチや近接センサー、水検知センサーなど様々な用途に好適であるが、特に軽く薄くフレキシブル性があるため、人との適合性にも優れており、マスクに組み込んだ呼吸センサーや、汗センサー、おむつなどの濡れセンサー等にも好適である。
【実施例
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0037】
[実施例1]
セルロースナノファイバー(レオクリスタ(登録商標)、繊維径3nm、繊維長約1000nm、第一工業製薬(株)製)を超純水で1wt%に希釈し、このセルロースナノファイバー(1wt%、500mg)溶液にカーボンブラック(ケッチェンブラック、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)および界面活性剤(非イオン性界面活性剤TritonTX-100、シグマアルドリッチ社購入品)を、それぞれセルロースナノファイバー:カーボンブラック:界面活性剤=1:1:0.5(質量比)となるように添加して、攪拌脱泡機((株)シンキー、ミキサーAR-100)で、5分間攪拌および2分間脱泡して、抵抗体(CB1)インクを作製した。
一方、厚さが100μmのポリエチレンナフタレート(PEN、DuPont社製)フィルム上に、Agペースト(XA-3609、藤倉化成(株)製)を用いて、スクリーンプリンター(マイクロテック(株)製)で電極パターンを形成し、130℃で30分間、空気中で加熱および冷却した。その後、抵抗体形成用マスクを用いて、電極の上に前記の抵抗体(CB1)インクをステンシルプリントして、ホットプレートの上で120℃で5分間、加熱および冷却して、湿度センサーを作製した。
湿度センサーの抵抗体部分(抵抗体(CB1))のSEM画像およびその拡大像を図1(e)および(f)に示す。カーボンブラックがセルロースナノファイバー中に均一に分散され、繊維状多孔の導電性ネットワークを形成しているのがわかる。
【0038】
[実施例2]
実施例1において、セルロースナノファイバー、カーボンブラックおよび非イオン性界面活性剤の割合を1:0.5:0.5(質量比)とした以外は、実施例1と同様にして、抵抗体(CB0.5)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0039】
[実施例3]
実施例1において、セルロースナノファイバー、カーボンブラックおよび非イオン性界面活性剤の割合を1:0.2:0.5(質量比)とした以外は、実施例1と同様にして、抵抗体(CB0.2)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
図1(c)および(d)のSEM画像より、カーボンブラックがセルロースナノファイバー中に均一に分散され、繊維状多孔のネットワークを形成しているのがわかる。
【0040】
[実施例4]
実施例1において、セルロースナノファイバー、カーボンブラックおよび非イオン性界面活性剤の割合を1:2:0.5(質量比)とした以外は、実施例1と同様にして、抵抗体(CB2)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0041】
実施例1~4の湿度センサーについて、図2(a)に相対湿度(%RH)と抵抗変化率(R/R0)との関係を表すグラフを示す。実施例3の湿度センサーが特に湿度感応性に優れていた。なお、縦軸R/R0は、30%RHの時の抵抗値(R0)に対する抵抗実測値(R)の比を表す。
【0042】
図2(c)は、実施例3の湿度センサーを5個作製し、相対湿度を30%RHから90%RHに環境を変えた場合の抵抗変化率(R/R0)の変化を表す。特性は5デバイスともほぼ同等で、ばらつきが少なく、精度よく再現できていることが分かる。
図2(d)のグラフから、実施例3の湿度センサーを相対湿度30%RH、次に80%RH、再び30%RHの環境下に順に置いた時、30%RHから80%RHの環境下に移した時の応答速度は約10秒、80%RHから30%RHの環境下に移した時の応答速度は約6秒であった。この結果から、本発明の湿度センサーの応答速度は非常に早いことが分かる。また、30%RHおよび80%RHの環境下、少なくとも13サイクルまで抵抗変化率(R/R0)は一定であった(図2(e))。
この実施例3の湿度センサーによれば、相対湿度40%RHから90%RHへの環境の変化に応じて抵抗値が100%以上変化するのに要した時間は30秒以下であった(図2(f))。このような高速な応答が可能となるので、例えば、非接触の近接センサーや、呼吸センサーなどへの適用が考えられる。
【0043】
図3(a)のグラフは、湿度を50%RHで固定し、温度のみを25℃、35℃、45℃と変えた環境下に置いた時の実施例3の湿度センサーの抵抗変化率(R/R0)を表す。抵抗変化率(R/R0)はほぼ一定であり、この湿度センサーは、温度への依存性は極めて少なく、湿度のみに依存していた。
図3(b)のグラフは、抵抗体CB0.2(実施例3)の曲げ半径(mm)と抵抗変化率(R/R0)との関係を表し、曲げても抵抗変化率に変化がないことを表している。このことから、本発明の湿度センサーはカーブのある場所でも使用でき、フレキシブル性に優れたデバイスであることが分かる。
【0044】
[実施例5]
実施例3において、セルロースナノファイバー、カーボンブラックおよび非イオン性界面活性剤の割合を1:0.2:0.25(質量比)とした以外は、実施例3と同様にして、抵抗体(TX0.25)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0045】
[実施例6]
実施例5において、セルロースナノファイバー、カーボンブラックおよび非イオン性界面活性剤の割合を1:0.2:0.5(質量比)とした以外は、実施例5と同様にして、抵抗体(TX0.5)を作製した。なお、TX0.5は、実施例3のCB0.2と同一の組成である。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0046】
実施例5及び実施例6の湿度センサーでは、実施例6のセンサーの方が湿度感応性に優れていた(図2(b))。
【0047】
[実施例7]
実施例5において、セルロースナノファイバー、カーボンブラックおよび非イオン性界面活性剤の割合を1:0.2:1(質量比)とした以外は、実施例5と同様にして、抵抗体(TX1)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0048】
[実施例8]
セルロースナノファイバー(レオクリスタ(登録商標)、繊維径3nm、繊維長約1000nm、第一工業製薬(株)製)を超純水で1wt%に希釈し、このセルロースナノファイバー(1wt%、500mg)溶液にグラフェンナノプレートレット(グラフェン・積層微小板:東京化成工業(株)製)および界面活性剤(非イオン性界面活性剤TritonTX-100、シグマアルドリッチ社購入品)を、それぞれセルロースナノファイバー:グラフェンナノプレートレット:界面活性剤=1:2:1(質量比)となるように添加して、攪拌脱泡機((株)シンキー、ミキサーAR-100)で、5分間攪拌および2分間脱泡して、抵抗体(GNP2)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0049】
[実施例9]
実施例8において、セルロースナノファイバー、グラファイトナノプレートレットおよび界面活性剤の割合が1:3:1(質量比)となるようにした以外は実施例8と同様にして、抵抗体(GNP3)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0050】
[実施例10]
実施例8において、セルロースナノファイバー、グラファイトナノプレートレットおよび界面活性剤の割合が1:5:1(質量比)となるようにした以外は実施例8と同様にして、抵抗体(GNP5)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0051】
[実施例11]
実施例8において、セルロースナノファイバー、グラファイトナノプレートレットおよび界面活性剤の割合が1:10:1(質量比)となるようにした以外は実施例8と同様にして、抵抗体(GNP10)を作製した。
実施例1と同様にして、湿度センサーを作製した。
【0052】
実施例8~11の湿度センサーのうち、相対湿度(%RH)が高くなるにつれて最も抵抗値が上昇したのは、実施例8の湿度センサーであった(図5)。
【符号の説明】
【0053】
1 抵抗体
2 電極
3,3’ マスク
4 基板
5 スクイージー
図1
図2
図3
図4
図5