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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】塗装ガン
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/04 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
B05B7/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021097127
(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公開番号】P2022188871
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 富之
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-103475(JP,U)
【文献】実開平05-026169(JP,U)
【文献】特表平09-511687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0222921(US,A1)
【文献】特開2011-147889(JP,A)
【文献】特開2016-077999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に塗料が供給される塗料流入室と、前記塗料流入室と連通する連通口を有する移動機構収容室と、を有するガン本体と、
外部に前記塗料が吐出される弁口を有して前記塗料流入室と連通する弁室を有するノズルと、
前記弁室内に配されて、前記弁口を塞ぐ閉弁位置と前記弁口を開放する開弁位置との間で変位可能なニードル弁と、
前記移動機構収容室内に配されて、前記ニードル弁を前記閉弁位置と前記開弁位置との間で移動させる移動機構と、
前記連通口を塞ぐように配置され、前記ニードル弁と前記移動機構とを連結するダイアフラム部材と、を備え、
前記ダイアフラム部材が、
前記ニードル弁と前記移動機構を連結する連結部と、
内部に前記移動機構の一端部を収容し、前記連通口の内周面に密着された状態で固定される筒状の固定筒部と、
可撓性を有する膜状をなし、前記連結部と前記固定筒部とを接続するダイアフラム部と、を備える、塗装ガン。
【請求項2】
前記ダイアフラム部材が、単一の部材によって構成されている、請求項1に記載の塗装ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、塗装ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
ニードル式の開閉弁を備える塗装ガンが知られている。このような塗装ガンは、弁室および弁口を有しており、弁室の内部にはニードルが配されている。ニードルは、弁口を塞ぐ閉弁位置と、弁口を開放する開弁位置との間で移動可能となっている。塗装ガンの内部には、ニードルの外周面に密着し、塗料が弁室よりも後方へ漏れることを防ぐパッキンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-59034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、パッキンがニードルと摺接するため、パッキンの摺動摩耗による後方への塗料漏れや、ニードルとパッキンの隙間に顔料の粒子などが侵入することによる摺動不良が生じるおそれがある。このような事態を未然に防止するため、パッキンを頻繁に交換しなければならず、手間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される塗装ガンは、内部に塗料が供給される塗料流入室と、前記塗料流入室と連通する連通口を有する移動機構収容室と、を有するガン本体と、外部に前記塗料が吐出される弁口を有して前記塗料流入室と連通する弁室を有するノズルと、前記弁室内に配されて、前記弁口を塞ぐ閉弁位置と前記弁口を開放する開弁位置との間で変位可能なニードル弁と、前記移動機構収容室内に配されて、前記ニードル弁を前記閉弁位置と前記開弁位置との間で移動させる移動機構と、前記連通口を塞ぐように配置され、前記ニードル弁と前記移動機構とを連結するダイアフラム部材と、を備え、前記ダイアフラム部材が、前記ニードル弁と前記移動機構を連結する連結部と、内部に前記移動機構の一端部を収容し、前記連通口の内周面に密着された状態で固定される筒状の固定筒部と、可撓性を有する膜状をなし、前記連結部と前記固定筒部とを接続するダイアフラム部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本明細書によって開示される塗装ガンによれば、安定して効率よく塗装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の塗装ガンを部分的に破断して示す側面図である。
図2図2は、実施形態の塗装ガンにおいてニードル弁およびトリガシャフトの周辺部分を示す部分拡大断面図である。
図3図3は、実施形態の塗装ガンにおいて、ニードル弁が閉弁位置にある状態を示す部分拡大断面図である。
図4図4は、ニードル弁、ダイアフラム部材、ガイド筒およびトリガシャフトの分解断面図である。
図5図5は、実施形態の塗装ガンにおいてトリガシャフトの後端部分を示す部分拡大断面図である。
図6図6は、実施形態の塗装ガンにおいて、ニードル弁が開弁位置にある状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
(1)本明細書によって開示される塗装ガンは、内部に塗料が供給される塗料流入室と、前記塗料流入室と連通する連通口を有する移動機構収容室と、を有するガン本体と、外部に前記塗料が吐出される弁口を有して前記塗料流入室と連通する弁室を有するノズルと、前記弁室内に配されて、前記弁口を塞ぐ閉弁位置と前記弁口を開放する開弁位置との間で変位可能なニードル弁と、前記移動機構収容室内に配されて、前記ニードル弁を前記閉弁位置と前記開弁位置との間で移動させる移動機構と、前記連通口を塞ぐように配置され、前記ニードル弁と前記移動機構とを連結するダイアフラム部材と、を備え、前記ダイアフラム部材が、前記ニードル弁と前記移動機構を連結する連結部と、内部に前記移動機構の一端部を収容し、前記連通口の内周面に密着された状態で固定される筒状の固定筒部と、可撓性を有する膜状をなし、前記連結部と前記固定筒部とを接続するダイアフラム部と、を備える。
【0009】
上記の構成によれば、移動機構収容室において塗料流入室と連通する連通口が、ダイアフラム部材によって塞がれている。また、ダイアフラム部は可撓性を有しているため、連結部の固定筒部に対するある程度の移動が許容されている。これにより、ニードル弁とトリガシャフトと連結部とは、トリガの操作によって一体的に、開弁位置と閉弁位置との間で移動する。このような構成によれば、ニードルの外周面にパッキンが設けられた従来の構成のように、パッキンの摺動摩耗による移動機構側への塗料漏れや、ニードルとパッキンの隙間に顔料の粒子などが侵入することによる摺動不良が生じることがない。これにより、安定して効率よく塗装を行うことができる。
【0010】
(2)ダイアフラム部材が、単一の部材によって構成されていても構わない。
【0011】
ダイアフラム部材が、複数の部材が組み付けられた構成を有していると、複数の部材同士の接続部分に隙間が生じ、その隙間を通って塗料が漏出するおそれがある。しかし、ダイアフラム部材が単一の部材によって構成されていると、塗料が塗料流入室から移動機構収容室へ侵入するおそれがなく、塗装ガンの耐久性を向上させることができる。
【0012】
[実施形態の詳細]
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
<実施形態>
実施形態を、図1から図6を参照しつつ説明する。本実施形態の塗装ガン1は、作業者が把持して取り扱うハンドガンタイプの静電塗装ガンであって、ガン本体10と、ガン本体10に取り付けられたノズル20とを備えている。ガン本体10およびノズル20の内部には、ニードル弁50と、トリガシャフト71およびコイルスプリング79と、ダイアフラム部材30と、ガイド筒40とが収容されている。ニードル弁50と、トリガシャフト71と、ダイアフラム部材30と、ガイド筒40とは、互いに組み付けられている。
【0014】
[ガン本体10]
ガン本体10は、絶縁性の樹脂材料からなる。ガン本体10は、図1に示すように、一端にノズル20が取り付けられた銃身11と、銃身11の他端部から斜めに延び、作業者が把持するためのグリップ12と、銃身11から延び、グリップ12の近傍に配されるトリガ13と、銃身11においてノズル20の近傍に配され、塗料ホース80に連結された継手81が接続される塗料供給部14とを備えている。以下、銃身11においてノズル20が取り付けられている側(図1の左側)を前側、グリップ12が配されている側(図1の右側)を後側として説明する。
【0015】
銃身11は、全体として細長い円柱状をなし、図2に示すように、第1収容室15と、第2収容室16(移動機構収容室の一例)と、塗料流入室17とを有している。第1収容室15の内部には、高電圧発生装置19が収容されている。高電圧発生装置19は、詳細には図示しないが、トランス、カスケード等を備える一般的な構成を有している。塗料流入室17は、銃身11の前端に開口部を有している。第2収容室16は、塗料流入室17と連通する連通口16Aを有しており、塗料流入室17の後端からトリガ13の近傍まで延びている。塗料供給部14の内部空間は、塗料流入口17Aを介して塗料流入室17に連通しており、塗料ホース80から供給された塗料が塗料流入室17の内部に供給される。
【0016】
[ノズル20]
ノズル20は、合成樹脂製であって、図3に示すように、全体として円筒状をなしている。ノズル20の前端部には、前端に近づくほど径小となる絞り部21と、絞り部21の前端から延びる細い筒状の吐出部22とが配されている。ノズル20の内部空間は、塗料流入室17と連通し、吐出部22の前端に弁口24を有する弁室23となっている。ノズル20は、後端部が塗料流入室17に収容されている。弁室23の内部には、塗料流入室17を通って塗料が供給される。
【0017】
ノズル20において、銃身11から前方に突出した前端部には、エアキャップ25が取り付けられ、エアキャップ25は、リテーナ26によって銃身11に固定されている。エアキャップ25は、全体として、ノズル20を囲む円筒状をなし、図示しないエア吹出口を有している。
【0018】
[ダイアフラム部材30]
第2収容室16の連通口16Aは、図3に示すように、ダイアフラム部材30によって塞がれており、塗料流入室17の内部に供給された塗料が第2収容室16に侵入することが規制されている。ダイアフラム部材30は、合成樹脂製であって、図3および図4に示すように、ニードル弁50とトリガシャフト71とを連結する連結部31と、連通口16Aの内部に固定される筒状の固定筒部35と、連結部31と固定筒部35とを繋ぐ膜状のダイアフラム部37とを備えている。
【0019】
連結部31は、図4に示すように、全体として前後方向に延びる丸棒状をなし、前端部が、前端面に開口するねじ孔を有する第1雌ねじ部32となっており、後端部が、後端面に開口するねじ孔を有する第2雌ねじ部33となっている。第1雌ねじ部32のねじ孔と、第2雌ねじ部33のねじ孔とは、中間壁34によって区画され、たがいに連通しないようになっている。
【0020】
固定筒部35は、図3および図4に示すように、連結部31よりも一回り大きな円筒状をなし、連通口16Aの内部に固定されている。固定筒部35の外周面は、連通口16Aの内周面に、全周に渡って密着している。固定筒部35の一部は、内周面にねじ溝を有する第3雌ねじ部36となっている。
【0021】
ダイアフラム部37は、図3および図4に示すように、円環形の膜状をなし、連結部31の外周面から鍔状に延びて固定筒部35の前端側の開口縁に接続されている。ダイアフラム部37は、連結部31の全周にわたって配置されており、ダイアフラム部37と連結部31とによって、固定筒部35の前端側の開口部が塞がれている。ダイアフラム部37は、可撓性を有しており、連結部31が固定筒部35に対して前後方向に移動することを許容している。
【0022】
ダイアフラム部材30は、形状復元性(変形に対する復元力)に優れ、耐溶剤性を有することが好ましい。ダイアフラム部材30に好適な材料としては、例えば、超高分子量ポリエチレンや、ポリテトラフルオロエチレン (PTFE)等が挙げられる。
【0023】
ダイアフラム部材30は、連結部31と固定筒部35とダイアフラム部37とが一体的に連なった単一の部材であって、継ぎ目を有しない。このような部材は、例えば射出成型等によって形成することができる。
【0024】
[ガイド筒40]
ガイド筒40は、図2および図4に示すように、細長い筒状をなし、第2収容室16の内部に収容されている。ガイド筒40の前端部は、図3および図4に示すように、他の部分よりも外径が小さく、外周面にねじ山が形成された第3雄ねじ部41となっている。図3に示すように、第3雄ねじ部41が第3雌ねじ部36にねじ付けられることにより、ガイド筒40が固定筒部35に固定されている。また、図4および図5に示すように、ガイド筒40の後端部は、外周面にねじ山が形成された第4雄ねじ部42となっている。第2収容室16の内周面には、ねじ溝を有する第4雌ねじ部18が配されており、第4雄ねじ部42が第4雌ねじ部18にねじ付けられることにより、ガイド筒40が第2収容室16の内部に固定されている。ガイド筒40を介して、固定筒部35が第2収容室16の内部に固定されている。
【0025】
[ニードル弁50]
塗料流入室17、および弁室23の内部には、図3に示すように、ニードル弁50が収容されている。ニードル弁50は、図4に示すように、ニードルシャフト51と、ニードルキャップ54と、ガイド部材57とを備えている。
【0026】
ニードルシャフト51は、例えば金属製であって、図3および図4に示すように、全体として丸棒状をなしている。ニードルシャフト51の後端部は、外周面にねじ山を有する第1雄ねじ部52となっており、前端部は、外周面にねじ山を有する第5雄ねじ部53となっている。ニードルシャフト51は、第1雄ねじ部52が第1雌ねじ部32にねじ付けられることで、連結部31に接続されている。
【0027】
ニードルキャップ54は、例えば合成樹脂製であって、図3および図4に示すように、全体として円筒状をなしている。ニードルキャップ54の前端部は、先端に近づくほど小径となる先細り状のシール部55となっている。ニードルキャップ54の内部には、図3および図4に示すように、抵抗器61と、抵抗器61に接続されたピン電極60とが収容されている。ピン電極60の先端部はニードルキャップ54の前端から外部に突出している。高電圧発生装置19によってピン電極60に高電圧が印加される。ニードルキャップ54の後端部は、後端面に開口したねじ孔を有する第5雌ねじ部56となっている。ニードルキャップ54は、図3に示すように、第5雌ねじ部56に第5雄ねじ部53がねじ付けられることで、ニードルシャフト51に接続されている。
【0028】
ガイド部材57は、図3および図4に示すように、ニードルキャップ54の後端部に取り付けられた部材であって、外周面に、複数の凸部58を備えている。この凸部58が、弁室23の内壁面に配されたガイド溝(図示せず)に摺動可能に係合されており、ニードル弁50が、ガイド溝にガイドされて前後方向に摺動可能となっている。
【0029】
ニードル弁50は、シール部55の外周面が絞り部21の内周面に当接し、弁口24が閉塞される閉弁位置(図3に示す位置)と、閉弁位置よりも後方の位置であって、シール部55の外周面と絞り部21の内周面との間に隙間があり、弁口24が開放される開弁位置(図6に示す位置)との間で移動可能とされている。
【0030】
[トリガシャフト71]
第2収容室16には、図2に示すように、トリガシャフト71と、コイルスプリング79とが収容されている。これらのトリガシャフト71とコイルスプリング79とは、トリガ13の操作に応じてニードル弁50を開弁位置と閉弁位置との間で前後方向に移動させる移動機構の一例である。
【0031】
トリガシャフト71は、図2および図4に示すように、前シャフト72と、後シャフト75とを備えている。前シャフト72は、細長い丸棒状をなしており、大部分がガイド筒40の内部に挿通されている。前シャフト72の前端部は、図3および図4に示すように、外周面にねじ山を有する第2雄ねじ部73となっている。前シャフト72は、第2雄ねじ部73を含む前端部が固定筒部35の内部に収容されている。第2雄ねじ部73が第2雌ねじ部33にねじ付けられることにより、前シャフト72が連結部31に接続されている。前シャフト72の後端部は、図4および図5に示すように、後端面に開口するねじ孔を有する第6雌ねじ部74となっている。後シャフト75は、図4および図5に示すように、前シャフト72よりも短い丸棒状のシャフト本体76と、シャフト本体76の外周面から突出する鍔状のフランジ部77とを備え、前シャフト72と同軸に配されている。後シャフト75の前端部は、外周面にねじ山を有する第6雄ねじ部78となっている。第6雄ねじ部78が第6雌ねじ部74にねじ付けられることにより、後シャフト75が前シャフト72に接続されている。図5に示すように、フランジ部77には、コイルスプリング79が後方から当接するとともに、トリガ13が前方から当接している。
【0032】
[塗装ガン1の動作]
ニードル弁50とトリガシャフト71とは、図2に示すように、連結部31を介して連結されている。ニードル弁50とトリガシャフト71と連結部31とは、トリガ13の操作によって一体的に前後方向に移動する。
【0033】
トリガ13が操作されていない状態では、トリガシャフト71は、コイルスプリング79によって前方に付勢されている。これにより、ニードル弁50も前方に付勢されて、弁口24が閉塞される閉弁位置にある(図3参照)。
【0034】
塗装ガン1の使用時には、作業者によってトリガ13がグリップ12側に引かれる。トリガ13によってフランジ部77が後方に押され、コイルスプリング79の付勢に抗してトリガシャフト71が後方へ移動される。上記したように、ダイアフラム部37は可撓性を有しており、連結部31が固定筒部35に対して前後方向に移動することを許容しているので、トリガシャフト71の後方への移動に伴って、連結部31も後方へ移動する。これに伴って、ニードル弁50も、閉弁位置よりも後方の開弁位置へ移動する(図6参照)。ニードル弁50が開弁位置に移動すると、弁口24が開放され、弁室23の内部に供給された塗料が弁口24から吐出される。
【0035】
また、トリガ13がグリップ12側に引かれる操作と連動して、高電圧発生装置19によってピン電極60に高電圧が印加される。これにより、弁口24から吐出され、ピン電極60を伝う塗料に電荷が誘起され、塗料粒子が帯電した状態でノズル20の前方に飛び出す。
【0036】
ノズル20の前方に飛び出した塗料粒子は、エアキャップ25のエア吹出孔から噴出されるパターンエアによって、塗装に適した噴霧パターンとなって噴出される。
【0037】
トリガ13の引き操作が解除されると、コイルスプリング79の弾性復元力により、ニードル弁50とトリガシャフト71と連結部31とが一体的に前進する。これにより、ニードル弁50が閉弁位置に移動し、塗料の吐出が停止される。
【0038】
[作用効果]
上記のように本実施形態によれば、塗装ガン1は、内部に塗料が供給される塗料流入室17と、塗料流入室17と連通する連通口16Aを有する第2収容室16と、を有するガン本体10と、外部に塗料が吐出される弁口24を有して塗料流入室17と連通する弁室23を有するノズル20と、弁室23内に収容されて、弁口24を塞ぐ閉弁位置と弁口24を開放する開弁位置との間で変位可能なニードル弁50と、第2収容室16に収容されてニードル弁50を閉弁位置と開弁位置との間で移動させるトリガシャフト71およびコイルスプリング79と、連通口16Aを塞ぐように配置され、ニードル弁50とトリガシャフト71とを連結するダイアフラム部材30と、を備え、ダイアフラム部材30が、ニードル弁50とトリガシャフト71とを連結する連結部31と、内部にトリガシャフト71の一端部を収容し、連通口16Aの内周面に密着された状態で固定される筒状の固定筒部35と、可撓性を有する膜状をなし、連結部31と固定筒部35とを接続するダイアフラム部37と、を備える。
【0039】
上記の構成によれば、第2収容室16において塗料流入室17と連通する連通口16Aが、ダイアフラム部材30によって塞がれている。また、ダイアフラム部37は可撓性を有しているから、連結部31の固定筒部35に対するある程度の変位が許容されている。これにより、ニードル弁50とトリガシャフト71と連結部31とは、トリガ13の操作によって一体的に、開弁位置と閉弁位置との間で移動する。このような構成によれば、ニードルの外周面にパッキンが設けられた従来の構成のように、パッキンの摺動摩耗による移動機構側への塗料漏れや、ニードルとパッキンの隙間に顔料の粒子などが侵入することによる摺動不良が生じることがない。これにより、安定して効率よく塗装を行うことができる。
【0040】
また、ダイアフラム部材30が、単一の部材によって構成されている。
【0041】
ダイアフラム部材が、複数の部材が組み付けられた構成を有していると、複数の部材同士の接続部分に隙間が生じ、その隙間を通って塗料が漏出するおそれがある。しかし、本実施形態ではダイアフラム部材30が単一の部材によって構成されているため、塗料が塗料流入室17から第2収容室16へ漏出するおそれがなく、塗装ガン1の耐久性を向上させることができる。
【0042】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、本明細書によって開示される技術をエアスプレイガンに適用した例を示したが、本明細書によって開示される技術を、エアを供給せずに塗装を行うエアレスガンにも適用することができる。
【0043】
(2)上記実施形態では、ダイアフラム部材30とは別体のガイド筒40を介して、ダイアフラム部材30の固定筒部35が第2収容室16の内部に固定されていたが、ガイド筒がダイアフラム部材と一体化されていても構わない。
【符号の説明】
【0044】
1:塗装ガン
10:ガン本体
11:銃身
12:グリップ
13:トリガ
14:塗料供給部
15:第1収容室
16:第2収容室
16A:連通口
17:塗料流入室
17A:塗料流入口
18:第4雌ねじ部
19:高電圧発生装置
20:ノズル
21:絞り部
22:吐出部
23:弁室
24:弁口
25:エアキャップ
26:リテーナ
30:ダイアフラム部材
31:連結部
32:第1雌ねじ部
33:第2雌ねじ部
34:中間壁
35:固定筒部
36:第3雌ねじ部
37:ダイアフラム部
40:ガイド筒
41:第3雄ねじ部
42:第4雄ねじ部
50:ニードル弁
51:ニードルシャフト
52:第1雄ねじ部
53:第5雄ねじ部
54:ニードルキャップ
55:シール部
56:第5雌ねじ部
57:ガイド部材
58:凸部
60:ピン電極
61:抵抗器
71:トリガシャフト
72:前シャフト
73:第2雄ねじ部
74:第6雌ねじ部
75:後シャフト
76:シャフト本体
77:フランジ部
78:第6雄ねじ部
79:コイルスプリング
80:塗料ホース
81:継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6