(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】ガイドローラ位置切替装置およびガイドローラ位置切替方法並びにフィルム巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 19/26 20060101AFI20250228BHJP
B65H 27/00 20060101ALI20250228BHJP
B65H 19/30 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
B65H19/26
B65H27/00 Z
B65H19/30
(21)【出願番号】P 2024042736
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000154130
【氏名又は名称】株式会社不二鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠山 哲則
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-127762(JP,A)
【文献】特開2010-013197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/26
B65H 27/00
B65H 19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻芯が取り替え可能とされたターレット機構と、
前記複数の巻芯のうちフィルム供給方向の上流側に位置する巻芯にフィルムを巻き取っている際に、該巻芯に前記フィルムが巻き取られて成る巻取ロールに接触するタッチローラと、
前記各巻芯に対応して設けられ、前記上流側に位置する巻芯に所定量の前記フィルムが巻き取られた前記巻取ロールを、前記ターレット機構の旋回によって下流側に移動させるに当たって、当該巻取ロールに向けて前記フィルムをガイドするガイドローラと、
前記フィルムを巻き取る巻芯を切り替える巻き替え時に、前記タッチローラと前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラとの間のフィルムスパンを切断する切断ユニットと、を備えたターレット型のフィルム巻取装置のガイドローラ位置切替装置であって、
前記各ガイドローラにおける前記ターレット機構に対する相対位置を可変とする構成とされ
ており、
前記ターレット機構の旋回によって前記上流側に移動した前記巻芯の外径寸法が大きいほど、前記ターレット機構の旋回中心回りにおける、当該巻芯の中心位置と前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの中心位置との間の角度間隔が大きく設定されることを特徴とするガイドローラ位置切替装置。
【請求項2】
複数の巻芯が取り替え可能とされたターレット機構と、
前記複数の巻芯のうちフィルム供給方向の上流側に位置する巻芯にフィルムを巻き取っている際に、該巻芯に前記フィルムが巻き取られて成る巻取ロールに接触するタッチローラと、
前記各巻芯に対応して設けられ、前記上流側に位置する巻芯に所定量の前記フィルムが巻き取られた前記巻取ロールを、前記ターレット機構の旋回によって下流側に移動させるに当たって、当該巻取ロールに向けて前記フィルムをガイドするガイドローラと、
前記フィルムを巻き取る巻芯を切り替える巻き替え時に、前記タッチローラと前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラとの間のフィルムスパンを切断する切断ユニットと、を備えたターレット型のフィルム巻取装置のガイドローラ位置切替装置であって、
前記各ガイドローラにおける前記ターレット機構に対する相対位置を可変とする構成とされており、
前記ターレット機構の旋回によって前記下流側に移動した前記巻取ロールを再び前記上流側に移動させて巻足しを行う場合に、当該上流側に移動した前記巻取ロールの外径寸法が大きいほど、前記ターレット機構の旋回中心回りにおける、当該巻取ロールの中心位置と前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの中心位置との間の角度間隔が大きく設定されることを特徴とするガイドローラ位置切替装置。
【請求項3】
複数の巻芯が取り替え可能とされたターレット機構と、
前記複数の巻芯のうちフィルム供給方向の上流側に位置する巻芯にフィルムを巻き取っている際に、該巻芯に前記フィルムが巻き取られて成る巻取ロールに接触するタッチローラと、
前記各巻芯に対応して設けられ、前記上流側に位置する巻芯に所定量の前記フィルムが巻き取られた前記巻取ロールを、前記ターレット機構の旋回によって下流側に移動させるに当たって、当該巻取ロールに向けて前記フィルムをガイドするガイドローラと、
前記フィルムを巻き取る巻芯を切り替える巻き替え時に、前記タッチローラと前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラとの間のフィルムスパンを切断する切断ユニットと、を備えたターレット型のフィルム巻取装置のガイドローラ位置切替装置であって、
前記各ガイドローラにおける前記ターレット機構に対する相対位置を可変とする構成とされており、
前記各ガイドローラの位置を可変とする第1アクチュエータと、前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの位置を規制するためのストッパ部材を移動させる第2アクチュエータとを備え、
前記第1アクチュエータは前記ターレット機構に取り付けられている一方、前記第2アクチュエータは前記ターレット機構を旋回可能に支持する装置本体に取り付けられていることを特徴とするガイドローラ位置切替装置。
【請求項4】
複数の巻芯が取り替え可能とされたターレット機構と、
前記複数の巻芯のうちフィルム供給方向の上流側に位置する巻芯にフィルムを巻き取っている際に、該巻芯に前記フィルムが巻き取られて成る巻取ロールに接触するタッチローラと、
前記各巻芯に対応して設けられ、前記上流側に位置する巻芯に所定量の前記フィルムが巻き取られた前記巻取ロールを、前記ターレット機構の旋回によって下流側に移動させるに当たって、当該巻取ロールに向けて前記フィルムをガイドするガイドローラと、
前記フィルムを巻き取る巻芯を切り替える巻き替え時に、前記タッチローラと前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラとの間のフィルムスパンを切断する切断ユニットと、を備えたターレット型のフィルム巻取装置のガイドローラ位置切替装置であって、
前記各ガイドローラにおける前記ターレット機構に対する相対位置を可変とする構成とされており、
前記ターレット機構の旋回によって前記下流側に移動した前記巻取ロールを取出装置によって取り出す際、前記ターレット機構の旋回中心回りにおける、前記巻取ロールの中心位置と当該巻取ロールに対して前記取出装置の接近方向側に位置している前記ガイドローラの中心位置との間の角度間隔が大きく設定されて、前記取出装置の移動軌跡から待避する方向に当該ガイドローラが変位されることを特徴とするガイドローラ位置切替装置。
【請求項5】
複数の巻芯が取り替え可能とされたターレット機構と、前記複数の巻芯のうちフィルム供給方向の上流側に位置する巻芯にフィルムを巻き取っている際に、該巻芯に前記フィルムが巻き取られて成る巻取ロールに接触するタッチローラと、前記各巻芯に対応して設けられ、前記上流側に位置する巻芯に所定量の前記フィルムが巻き取られた前記巻取ロールを、前記ターレット機構の旋回によって下流側に移動させるに当たって、当該巻取ロールに向けて前記フィルムをガイドするガイドローラと、前記フィルムを巻き取る巻芯を切り替える巻き替え時に、前記タッチローラと前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラとの間のフィルムスパンを切断する切断ユニットとを備えたターレット型のフィルム巻取装置において前記ガイドローラの位置を切り替えるガイドローラ位置切替方法であって、
前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの目標位置を規定すると共に、前記ターレット機構の旋回によって前記下流側に移動した前記巻取ロールを取出装置によって取り出す際、前記取出装置の移動軌跡から待避する方向への前記ガイドローラの目標位置を規定し、
前記各目標位置に前記ガイドローラを規制または移動させる制御を行うことを特徴とするガイドローラ位置切替方法。
【請求項6】
請求項1~4のうち何れか一つに記載のガイドローラ位置切替装置を搭載し、
前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの位置を調整し、
前記ターレット機構の旋回によって前記下流側に移動した前記巻取ロールを取出装置によって取り出す際、前記取出装置の移動軌跡から待避する方向へ前記ガイドローラの位置を調整する構成とされていることを特徴とするフィルム巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドローラ位置切替装置およびガイドローラ位置切替方法並びにフィルム巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前工程から供給されるフィルムを巻き取るためのフィルム巻取装置として、複数の巻芯が取り替え可能とされたターレット機構を備えたターレット型のフィルム巻取装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
図12は、従来の一般的なターレット型のフィルム巻取装置aにおけるターレット機構bおよびその周辺部を示す概略図であって、ターレット機構bの旋回中心(以下、ターレット中心Oという)の中心線に沿う方向から見た図である。
【0004】
この
図12に示すように、ターレット機構bは、周方向で180°の角度間隔を存した各位置(ターレット中心Oを挟んで対向した位置)に巻芯d1,d2が取り替え可能に装着されている。また、ターレット機構bには、各巻芯d1,d2それぞれに対応してガイドローラe1,e2が取り付けられている。これらガイドローラe1,e2は、巻芯d1,d2にフィルムcが巻き取られて成る巻取ロールfを下流側(搬出側)に移動させた際に、この巻取ロールfに向けてフィルムcをガイドするためのものである(
図12(c)に示す状態を参照)。また、フィルム巻取装置aは、巻き替え時(フィルムcを巻き取る巻芯d1,d2の切り替え時)にフィルムcを切断するための切断機構gを備えている。
【0005】
フィルム巻取装置aの動作の概略として、フィルムcの巻き取り動作の開始時には、
図12(a)に示すように、フィルムcの供給方向の上流側(
図12(a)における左側)に位置する巻芯d1へのフィルムcの巻き取りを開始する。尚、この
図12(a)に示す状態ではターレット機構bの下流側(
図12(a)における右側)にはフィルムcが巻き取られていない新たな巻芯d2が装着されている。
【0006】
そして、
図12(b)に示すように、所定量のフィルムcが巻芯d1に巻き取られたことで巻き替えを行う際には、
図12(c)に示すように、ターレット機構bをターレット中心O回りに旋回させて、上流側に位置していた巻取ロールfを下流側に移動させ、下流側に位置していた巻芯d2を上流側に移動させる。この際(フィルムcが切断される前)、下流側に移動した巻取ロールfに向けて供給されるフィルムcはガイドローラe1によってガイドされることになる。
【0007】
そして、
図12(d)に示すように、上流側に移動させた巻芯d2をタッチローラhに当接させた状態で、ガイドローラe1とタッチローラhとの間のフィルムcを切断機構gによって切断する。これにより、切断位置よりも下流側のフィルムcは巻取ロールfに巻き取られ、前工程から供給されてくるフィルムcは、上流側に移動した巻芯d2によって巻き取りが開始されることになる。その後、
図12(e)に示すように、ターレット機構bを更に旋回させて、タッチローラh、巻芯d2および巻取ロールfが水平方向に並ぶ状態にし、上流側に移動した巻芯d2によるフィルムcの巻き取りが継続されている間に、下流側に移動した巻取ロールfが取出装置(図示省略)によって取り出されることになる。取出装置としては、下側から巻取ロールfに接近し、ターレット機構bから取り外される当該巻取ロールfを下側から支持するものが挙げられる。巻取ロールfが取り出された後には、ターレット機構bの下流側に、フィルムcが巻き取られていない新たな巻芯が装着されることになる(
図12(a)に示す状態を参照)。このような動作が繰り返されることにより、フィルムcの供給を停止することなく各巻芯d1,d2へのフィルムcの巻き取りを連続して行うことが可能となっている。
【0008】
尚、ターレット機構bの旋回によって下流側に移動した巻取ロールfは、この下流側に移動した際に取出装置によって取り出されるとは限らず、ターレット機構bの旋回によって再び上流側に移動することで、更にフィルムcを巻き取る場合もある。以下では、この動作をフィルム巻足しと呼び、この巻取ロールを巻足しロールと呼ぶこととする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のフィルム巻取装置aにあっては、ガイドローラe1,e2の回動軸がターレット機構bに固定されていたため、ターレット機構bが旋回した場合には、その旋回角度と同一角度だけガイドローラe1,e2もターレット中心O回りに移動(公転移動)するものとなっていた。つまり、ターレット中心Oと巻芯d1,d2の中心位置とを結ぶ仮想直線(
図12(a)において一点鎖線で示す直線i1,i2)と、ターレット中心Oとガイドローラe1,e2の中心位置とを結ぶ仮想直線(
図12(a)において一点鎖線で示す直線j1,j2)との成す角度(
図12(a)における角度θ)は固定されていた。
【0011】
ところで、切断機構gによってフィルムcを切断する時点にあっては、巻芯d1,d2の外径寸法や、巻足しロールにおけるフィルムcの巻取量によっては、これら巻芯d1,d2や巻足しロールがタッチローラhに当接した状態におけるターレット機構bの旋回角度が異なるため、タッチローラhと、フィルムcをガイドしているガイドローラe1との間のフィルムcの長さ(以下、切断フィルムスパンという:
図12(c)におけるfsを参照)が変動し、フィルムcの切断性にバラツキが生じてしまうことになる。
【0012】
例えば、
図13は、
図12で示した巻芯d1,d2よりも大径の巻芯d3,d4を採用した場合における
図12(c)に対応する図であり、
図14は、巻足しロールf’に対するフィルム巻足しを行う場合における
図12(c)に対応する図である。このように、巻芯d3,d4の外径寸法や巻足しロールf’におけるフィルムcの巻取量によって切断フィルムスパンfsが変動し、フィルムcの切断性にバラツキが生じてしまう。
【0013】
フィルムcの切断を良好に行うためには、切断フィルムスパンfsの長さとしてはバラツキ無く短く設定しておくことが好ましい。つまり、タッチローラhとガイドローラe1との間の距離は短い方が好ましい。これを実現するためには、前記角度θを小さくすることが有効である。
【0014】
しかしながら、この角度θを小さくした場合、
図12(e)に示すように、巻取ロールfの取出時に、この巻取ロールfの下側にガイドローラe2が位置することになってしまい、取出装置がガイドローラe2に干渉してしまうことが懸念される。このため、この干渉を回避するために、取出装置による取出作業が煩雑になったり、取出作業を行う作業者に高い熟練度が要求されることになってしまうといった課題がある。
【0015】
このように、フィルムcの切断を良好に行うことと、取出装置のガイドローラe2への干渉を回避することとは背反の関係にあり、これまで、この課題を解決するための提案はなされていなかった。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ターレット型のフィルム巻取装置において、フィルムの切断を良好に行うことと、取出装置のガイドローラへの干渉を回避することとの両立を図ることが可能なガイドローラ位置切替装置およびガイドローラ位置切替方法並びにフィルム巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、複数の巻芯が取り替え可能とされたターレット機構と、前記複数の巻芯のうちフィルム供給方向の上流側に位置する巻芯にフィルムを巻き取っている際に、該巻芯に前記フィルムが巻き取られて成る巻取ロールに接触するタッチローラと、前記各巻芯に対応して設けられ、前記上流側に位置する巻芯に所定量の前記フィルムが巻き取られた前記巻取ロールを、前記ターレット機構の旋回によって下流側に移動させるに当たって、当該巻取ロールに向けて前記フィルムをガイドするガイドローラと、前記フィルムを巻き取る巻芯を切り替える巻き替え時に、前記タッチローラと前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラとの間のフィルムスパンを切断する切断ユニットと、を備えたターレット型のフィルム巻取装置のガイドローラ位置切替装置を対象とする。そして、このガイドローラ位置切替装置は、前記各ガイドローラにおける前記ターレット機構に対する相対位置を可変とする構成とされており、前記ターレット機構の旋回によって前記上流側に移動した前記巻芯の外径寸法が大きいほど、前記ターレット機構の旋回中心回りにおける、当該巻芯の中心位置と前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの中心位置との間の角度間隔が大きく設定されることを特徴とする。
【0018】
この特定事項により、巻き替え時において、タッチローラとガイドローラとの間のフィルムスパンを切断ユニットによって切断するに際し、ガイドローラ位置切替装置によってガイドローラの位置(ターレット機構に対する相対位置)が可変となっていることから、巻芯の外径寸法や巻足しロールにおけるフィルムの巻取量に応じてガイドローラの位置を調整することで、タッチローラとガイドローラ(フィルムをガイドしているガイドローラ)との間のフィルムの長さ(切断フィルムスパン)を所望の長さに調整することが可能である。このため、切断フィルムスパンにバラツキが生じることに起因するフィルムの切断性のバラツキを抑制することができる。また、巻取ロールの取出時にあっても、ガイドローラ位置切替装置によってガイドローラの位置が可変であることから、巻取ロールの近傍にガイドローラが位置することを解消することができ、取出装置がガイドローラに干渉してしまうといった懸念を無くすことができる。このように、本解決手段では、フィルムの切断を良好に行うことと、取出装置のガイドローラへの干渉を回避することとの両立を図ることが可能である。
【0020】
前記
図13で示したようにターレット機構の旋回によって上流側に移動した巻芯の外径寸法が大きいほど、該巻芯がタッチローラに当接した際におけるターレット機構の旋回位置としては、巻芯の外径寸法が小さい場合に比べて、ガイドローラがタッチローラに近付くような旋回位置となる。つまり、従来技術にあっては、巻芯の外径寸法により、タッチローラとガイドローラとの間のフィルムの長さ(切断フィルムスパン)が変動し、フィルムの切断性にバラツキが生じてしまう可能性がある。本解決手段では、この点に鑑み、上流側に移動した巻芯の外径寸法が大きいほど、ターレット機構の旋回中心回りにおける、当該巻芯の中心位置とフィルムをガイドしているガイドローラの中心位置との間の角度間隔が大きく設定されることによって、切断フィルムスパンのバラツキを抑制し、これによってフィルムの切断性のバラツキを抑制することができる。
【0021】
また、他の解決手段として、前記ターレット機構の旋回によって前記下流側に移動した前記巻取ロールを再び前記上流側に移動させて巻足しを行う場合に、当該上流側に移動した前記巻取ロールの外径寸法が大きいほど、前記ターレット機構の旋回中心回りにおける、当該巻取ロールの中心位置と前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの中心位置との間の角度間隔を大きく設定する。
【0022】
前記
図14で示したようにターレット機構の旋回によって上流側に移動した巻取ロール(巻足しロール)の外径寸法が大きいほど、該巻取ロールがタッチローラに当接した際におけるターレット機構の旋回位置としては、巻取ロールの外径寸法が小さい場合に比べて、ガイドローラがタッチローラに近付くような旋回位置となる。つまり、従来技術にあっては、巻取ロールに巻足しを行う場合においても、巻取ロールの外径寸法により、タッチローラとガイドローラとの間のフィルムの長さ(切断フィルムスパン)が変動し、フィルムの切断性にバラツキが生じてしまう可能性がある。本解決手段では、この点に鑑み、上流側に移動した巻取ロールの外径寸法が大きいほど、ターレット機構の旋回中心回りにおける、当該巻取ロールの中心位置とフィルムをガイドしているガイドローラの中心位置との間の角度間隔が大きく設定されることによって、切断フィルムスパンのバラツキを抑制し、これによってフィルムの切断性のバラツキを抑制することができる。
【0023】
また、他の解決手段として、前記各ガイドローラの位置を可変とする第1アクチュエータと、前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの位置を規制するためのストッパ部材を移動させる第2アクチュエータとを備えさせ、前記第1アクチュエータを前記ターレット機構に取り付ける一方、前記第2アクチュエータを、前記ターレット機構を旋回可能に支持する装置本体に取り付ける。
【0024】
各ガイドローラはターレット機構と一体的に回動するため、これらガイドローラの位置を可変とする第1アクチュエータについては、ターレット機構に取り付ける必要があるが、ストッパ部材を移動させる第2アクチュエータについてはそのような要求がない。このため、本解決手段では、第2アクチュエータを装置本体(ターレット機構を旋回可能に支持する装置本体)に取り付けるようにしている。一般に、アクチュエータを回転体に取り付ける場合、その回転方向を切り替えるための電磁弁等の切り替え手段における電気系にスリップリングを備えさせる必要があり構成の複雑化を招いてしまう可能性があるが、本解決手段では、ターレット機構と一体的に回動する必要のないストッパ部材を移動させるための第2アクチュエータを装置本体(回転しない部材)に取り付けることにより、構成の簡素化を図りながらも第2アクチュエータの作動によるストッパ部材の移動を良好に行うことが可能になる。
【0025】
また、他の解決手段として、前記ターレット機構の旋回によって前記下流側に移動した前記巻取ロールを取出装置によって取り出す際、前記ターレット機構の旋回中心回りにおける、前記巻取ロールの中心位置と当該巻取ロールに対して前記取出装置の接近方向側に位置している前記ガイドローラの中心位置との間の角度間隔を大きく設定して、前記取出装置の移動軌跡から待避する方向に当該ガイドローラを変位させる。
【0026】
前述した如く巻取ロールを取り出す際、この巻取ロールの近傍(例えば巻取ロールの下側)にガイドローラが位置する状況では、取出装置がガイドローラに干渉してしまうことが懸念される。本解決手段では、この点に鑑み、巻取ロールを取り出す際、取出装置の移動軌跡から待避する方向にガイドローラを変位させることで、取出装置がガイドローラに干渉してしまうことを回避することができる。
【0027】
また、前述したガイドローラ位置切替装置によって実施されるガイドローラ位置切替方法も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、複数の巻芯が取り替え可能とされたターレット機構と、前記複数の巻芯のうちフィルム供給方向の上流側に位置する巻芯にフィルムを巻き取っている際に、該巻芯に前記フィルムが巻き取られて成る巻取ロールに接触するタッチローラと、前記各巻芯に対応して設けられ、前記上流側に位置する巻芯に所定量の前記フィルムが巻き取られた前記巻取ロールを、前記ターレット機構の旋回によって下流側に移動させるに当たって、当該巻取ロールに向けて前記フィルムをガイドするガイドローラと、前記フィルムを巻き取る巻芯を切り替える巻き替え時に、前記タッチローラと前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラとの間のフィルムスパンを切断する切断ユニットとを備えたターレット型のフィルム巻取装置において前記ガイドローラの位置を切り替えるガイドローラ位置切替方法を対象とする。そして、このガイドローラ位置切替方法は、前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの目標位置を規定すると共に、前記ターレット機構の旋回によって前記下流側に移動した前記巻取ロールを取出装置によって取り出す際、前記取出装置の移動軌跡から待避する方向への前記ガイドローラの目標位置を規定し、前記各目標位置に前記ガイドローラを規制または移動させる制御を行うことを特徴とする。
【0028】
この特定事項によっても、切断フィルムスパンにバラツキが生じることに起因するフィルムの切断性のバラツキを抑制することができると共に、巻取ロールの取出時に取出装置がガイドローラに干渉してしまうといった懸念を無くすことができる。これにより、フィルムの切断を良好に行うことと、取出装置のガイドローラへの干渉を回避することとの両立を図ることが可能である。
【0029】
また、前述したガイドローラ位置切替装置が搭載されたフィルム巻取装置も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、前記ガイドローラ位置切替装置を搭載し、前記フィルムをガイドしている前記ガイドローラの位置を調整し、前記ターレット機構の旋回によって前記下流側に移動した前記巻取ロールを取出装置によって取り出す際、前記取出装置の移動軌跡から待避する方向へ前記ガイドローラの位置を調整する構成とされていることを特徴とするフィルム巻取装置である。
【0030】
この特定事項により、前述した効果である、フィルムの切断を良好に行うことと取出装置のガイドローラへの干渉を回避することとの両立を図ることが可能なフィルム巻取装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、ターレット型のフィルム巻取装置において各巻芯に対応して設けられた各ガイドローラにおけるターレット機構に対する相対位置を可変とする構成としている。これにより、切断フィルムスパンにバラツキが生じることに起因するフィルムの切断性のバラツキを抑制することができると共に、巻取ロールの取出時に取出装置がガイドローラに干渉してしまうといった懸念を無くすことができる。これにより、フィルムの切断を良好に行うことと、取出装置のガイドローラへの干渉を回避することとの両立を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態に係るフィルム巻取装置におけるターレット機構およびその周辺を示す模式図であって、フィルム巻き始め時の状態を示す図である。
【
図2】ガイドローラ位置切替装置の周辺を示す
図1におけるII矢視図である。
【
図4】タッチローラの離脱時の状態を示す図である。
【
図7】タッチローラの接触時点の状態を示す図である。
【
図9】巻取ロールの取り出し時の状態を示す図である。
【
図10】大径の巻芯を使用した場合におけるタッチローラの接触時点の状態を示す図である。
【
図11】フィルム巻足しを行う場合におけるタッチローラの接触時点の状態を示す図である。
【
図12】従来技術に係るフィルム巻取装置の動作の概略を示す図であって、(a)はフィルム巻き始め時の状態を示す図であり、(b)は巻き替え開始時の状態を示す図であり、(c)はターレット機構の旋回後の状態を示す図であり、(d)はフィルム切断時点の状態を示す図であり、(e)は巻取ロールの取り出し時の状態を示す図である。
【
図13】従来技術に係るフィルム巻取装置において大径の巻芯を使用した場合における
図12(c)に対応する図である。
【
図14】従来技術に係るフィルム巻取装置においてフィルム巻足しを行う場合における
図12(c)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、巻芯の外周面に粘着テープ等の粘着処理を施すことによって巻芯にフィルムを巻き取るテープ巻付方式のものに本発明を適用した場合について説明する。尚、静電気を利用して巻芯にフィルムを巻き取る静電気巻付方式のものに対しても本発明は適用が可能である。
【0034】
-フィルム巻取装置の概略構成-
先ず、本実施形態に係るフィルム巻取装置の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るフィルム巻取装置100におけるターレット機構1およびその周辺を示す模式図である。尚、
図1における、Y1方向側が上流側(フィルム150の供給方向における上流側)であり、Y2方向側が下流側(フィルム150の供給方向における下流側)であり、X1方向側がフィルム巻取装置100の左方向側であり、X2方向側がフィルム巻取装置100の右方向側であり、Z1方向側が上側(鉛直方向における上側)であり、Z2方向側が下側(鉛直方向における下側)である。また、
図1ではフィルム巻取装置100の左右方向における一方側(例えば左側)のターレット機構1およびその周辺の構成を示しているが、他方側(例えば右側)のターレット機構1およびその周辺も同様の構成となっている。
【0035】
フィルム巻取装置100は、上流側(Y1方向側)の前工程から供給されるフィルム150を巻き取ると共に、そのフィルム150を巻き取る巻芯81,82を切替可能に構成されている。
【0036】
尚、フィルム150は、例えば、樹脂製の帯状フィルムであり、広い幅(例えば、4400mm)を有する。フィルム150の厚みや材質などは変更可能であり、フィルム巻取装置100は厚みや材質などの異なるフィルム150を巻き取ることが可能である。
【0037】
また、フィルム巻取装置100は、フィルム150を高速(例えば、200m/min)で巻取可能に構成されている。また、フィルム巻取装置100における巻き取りの形態としては、供給されるフィルム150の下面が巻取ロール(巻芯にフィルムが巻き取られて成る巻取ロール)において内側に配置されるように巻き取られる上巻取、および、供給されるフィルム150の上面が巻取ロールにおいて内側に配置されるように巻き取られる下巻取がある。本実施形態では、上巻取が行われる場合を例に挙げて説明する。
【0038】
フィルム巻取装置100は、ターレット機構1、タッチローラユニット2、複数の搬送ローラ3,3、切断ユニット4、および、ガイドローラ位置切替装置5を含んで構成されている。
【0039】
(ターレット機構)
ターレット機構1は、略矩形状のターレット板11を有し、このターレット板11が図示しない動力源(電動モータ等)からの駆動力を受けて水平軸回り(ターレット中心O回り)に旋回可能となっている。尚、ターレット板11としては円形であってもよい。ターレット板11上には、その旋回方向における180°の角度間隔を存した各位置(ターレット中心Oを挟んで対向した位置)に巻芯81,82が取り替え可能に装着されている。これら巻芯81,82は、ターレット板11に設けられた回転軸に装着されており、この回転軸と一体的に回転することによってフィルム150を巻き取り可能となっている。また、フィルム巻取装置100の左右両側に配設された各ターレット機構1のターレット板11の中心部は円柱形状の連結シャフト12によって連結されており、この連結シャフト12の中心軸がターレット中心Oとなっている。このように、左右のターレット板11同士が連結シャフト12によって連結されていることにより、これらターレット板11同士が同期して旋回可能な構成とされている。尚、ターレット板11同士を同期して旋回可能とする構成としてはこれに限定されるものではない。
【0040】
ターレット機構1では、ターレット板11がターレット中心O回りに180°旋回することにより、一方の巻芯81が巻取位置P1に位置し且つ他方の巻芯82が交換位置P2に位置する状態と、逆に、一方の巻芯81が交換位置P2に位置し且つ他方の巻芯82が巻取位置P1に位置する状態との間で各巻芯81,82が移動(ターレット中心O回りに公転移動)可能となっている。巻取位置P1は、フィルム150の供給方向における上流側の位置であって、巻芯81(82)にフィルム150を巻き取るための位置である。また、交換位置P2は、フィルム150の供給方向における下流側の位置であって、巻芯81(82)にフィルム150が巻き取られて成る巻取ロール200(
図9を参照)を取り出すための位置またはフィルム巻足しを行うために巻取ロールを待機させる位置となっている。
【0041】
(タッチローラユニット)
タッチローラユニット2は、タッチローラ21、アーム(
図1では一点鎖線によって簡略に示している)22、図示しない動力源(例えば電動モータ等)を備えている。タッチローラ21はアーム22の先端部(
図1に示す状態にあっては下端部)に回転自在に支持されている。アーム22の基端部(
図1に示す状態にあっては上端部)は、動力源に接続されており、この動力源の動力を受けて水平軸回りに回動可能となっている。このアーム22の回動に伴い、タッチローラ21は、巻取位置P1に位置している巻芯81または巻取ロールの外周面に対して接近する方向または離間する方向に移動可能となっている。
【0042】
(搬送ローラ)
搬送ローラ3,3は、上流側から供給されるフィルム150を、タッチローラ21を介して、巻取位置P1に位置している巻芯81や巻取位置P1において巻き取り途中の巻取ロールに向けて搬送するために設けられている。
【0043】
これら搬送ローラ3,3およびタッチローラユニット2は、フィルム巻取装置100のスライド装置(図示省略)に回転自在に支持されている。スライド装置は、Y1方向およびY2方向に沿って移動可能であり、巻取位置P1に位置している巻芯81に対するフィルム150の巻取量(巻取ロールの外径)に応じてY1方向にスライド移動することにより、巻取ロールの外周面に対する搬送ローラ3,3およびタッチローラユニット2の相対位置を一定の関係に維持するようになっている。
【0044】
(切断ユニット)
切断ユニット4は、巻き替え時(フィルム150を巻き取る巻芯を、一方の巻芯81から他方の巻芯82に切り替える際)にフィルム150を切断するために設けられている。
【0045】
この切断ユニット4は、第1アーム41、第2アーム42、および、切断刃43を備えている。
図1では、各アーム41,42を一点鎖線によって簡略に示している。
【0046】
第1アーム41は、その一端部が、フィルム巻取装置100の本体部(装置本体)に回動自在に支持されている。第2アーム42は、その一端部が、第1アーム41の他端部に回動自在に支持されている。切断刃43は第2アーム42の他端部に取り付けられている。
図1に示している切断ユニット4の姿勢は、待機姿勢であり、フィルム150の切断を行わない状態(フィルム150を切断する状態については
図8を参照)および切断の準備を行っていない状態(切断の準備状態については
図6を参照)での姿勢である。フィルム150の切断を行う場合には、図中に矢印Aで示すように第1アーム41が図中の時計回り方向に回動すると共に、図中に矢印Bで示すように第2アーム42が図中の反時計回り方向に回動することにより、切断刃43が、タッチローラ21と、フィルム150をガイドしているガイドローラ64との間の切断フィルムスパンを切断することになる(
図8を参照)。この切断ユニット4としては、フィルム150の幅方向の寸法と同等の長さを有する切断刃43がフィルム150に押し当てられることにより当該フィルム150を切断するギロチン方式のものである。
【0047】
(ガイドローラ位置切替装置)
次に、ガイドローラ位置切替装置5について説明する。
図2は、ガイドローラ位置切替装置5の周辺(後述する一対のガイドローラユニット6A,6Bのうちの一方のガイドローラユニット6A、および、ストッパユニット7)を示す
図1におけるII矢視図である。
図1および
図2に示すように、ガイドローラ位置切替装置5の機能としては、ガイドローラ64におけるターレット機構1に対する相対位置を可変とすることである。
【0048】
ガイドローラ位置切替装置5は、ガイドローラ64を支持すると共に該ガイドローラ64の位置を可変とするガイドローラユニット6と、ガイドローラ64の位置を規制するためのストッパユニット7とを含んで構成されている。以下、ガイドローラユニット6およびストッパユニット7それぞれについて説明する。
【0049】
<ガイドローラユニット>
ガイドローラユニット6は、巻芯82に対応して設けられた第1ガイドローラユニット6Aと、巻芯81に対応して設けられた第2ガイドローラユニット6Bとを有している。第1ガイドローラユニット6Aは、巻芯82にフィルム150が巻き取られて成る巻取ロールを交換位置P2に移動させるに当たって、当該巻取ロールに向けてフィルム150をガイドするガイドローラ64の位置を可変とするために設けられている。また、第2ガイドローラユニット6Bは、
図5に示すように、巻芯81にフィルム150が巻き取られて成る巻取ロール200を交換位置P2に移動させるに当たって、当該巻取ロール200に向けてフィルム150をガイドするガイドローラ64の位置を可変とするために設けられている。これらガイドローラユニット6A,6Bの構成は同一であるため、ここでは第1ガイドローラユニット6Aを例に挙げて説明する。また、図面では、第2ガイドローラユニット6Bの構成部品において第1ガイドローラユニット6Aの構成部品と同一のものについては同一の符号を付している。
【0050】
第1ガイドローラユニット6Aは、エアシリンダ61(本発明でいう第1アクチュエータ)、第1アーム62、第2アーム63、および、ガイドローラ64を含んで構成されている。
【0051】
エアシリンダ61は、シリンダ本体61aと、シリンダ本体61aに対して進退するピストンロッド61bとを含んでいる。シリンダ本体61aの内部には空気室(図示省略)が設けられ、その空気室に供給された空気圧に応じてピストンロッド61bが進退するようになっている。シリンダ本体61aは、ターレット板11に固定された支持部材13によって回動自在に支持されている。
【0052】
連結シャフト12の外周面にはシャフト支持ブラケット14,14がボルト止めされている。左右一対の各ガイドローラユニット6それぞれにおけるシャフト支持ブラケット14,14同士の間には支持シャフト65が架け渡されている。
【0053】
ピストンロッド61bの先端部には第1アーム62の一端部が回動自在に接続されており、第1アーム62の他端部は支持シャフト65に接続されている。また、第2アーム63の一端部も支持シャフト65に接続されており、ピストンロッド61bの進退に伴って、第1アーム62および第2アーム63が支持シャフト65の回動に連動して回動する構成となっている。第2アーム63の他端部にはガイドローラ64が回転自在に支持されている。
【0054】
このため、ピストンロッド61bの進退に伴って、第1アーム62および第2アーム63が回動することになり、これによって、ガイドローラ64は、第2アーム63の回動中心である支持シャフト65の中心回りに位置変更が可能となっている。
【0055】
具体的には、
図1においてZ1方向側に位置している第1ガイドローラユニット6Aにあっては、ピストンロッド61bの突出量が小さくなるに従って第2アーム63が
図1における反時計回り方向に回動することになり、この場合のガイドローラ64の位置としては、タッチローラ21に近付くことになる。逆に、ピストンロッド61bの突出量が大きくなるに従って第2アーム63が
図1における時計回り方向に回動することになり、この場合のガイドローラ64の位置としては、タッチローラ21から遠ざかることになる。
【0056】
一方、
図1においてZ2方向側に位置している第2ガイドローラユニット6Bにあっては、ピストンロッド61bの突出量が小さくなるに従って第2アーム63が
図1における反時計回り方向に回動することになり、この場合のガイドローラ64の位置としては、交換位置P2に位置している巻芯82(または該巻芯82にフィルム150が巻き取られて成る巻取ロール)に近付くことになる。逆に、ピストンロッド61bの突出量が大きくなるに従って第2アーム63が
図1における時計回り方向に回動することになり、この場合のガイドローラ64の位置としては、交換位置P2に位置している巻芯82(または該巻芯82にフィルム150が巻き取られて成る巻取ロール)から遠ざかることになる。
【0057】
第2アーム63の側面にはストッパ受け部66がボルト止め等の手段によって取り付けられている。このストッパ受け部66は、後述するストッパユニット7のストッパ部材72に当接することによって(
図5に示す状態を参照)、第2アーム63の回動位置を規制し、その結果、ガイドローラ64の位置を規制するために設けられている。
【0058】
<ストッパユニット>
ストッパユニット7は、フィルム150をガイドしているガイドローラ64の位置を規制するためのユニットである。つまり、このストッパユニット7は、
図1においてZ1方向側に位置しているガイドローラユニット6におけるガイドローラ64の位置を規制するために設けられている(
図5に示す状態を参照)。ストッパユニット7は、フィルム巻取装置100の左右両側に配設されている。各ストッパユニット7の構成は同一であるため、ここでは一方のストッパユニット7(
図1に示すようにフィルム巻取装置100の左側に配設されたストッパユニット7)を例に挙げて説明する。
【0059】
ストッパユニット7は、エアシリンダ71(本発明でいう第2アクチュエータ)およびストッパ部材72を含んで構成されている。
【0060】
エアシリンダ71は、シリンダ本体71aと、シリンダ本体71aに対して進退するピストンロッド71bとを含んでいる。シリンダ本体71aの内部には空気室(図示省略)が設けられ、その空気室に供給された空気圧に応じてピストンロッド71bが進退するようになっている。シリンダ本体71aは、ターレット機構1を旋回可能に支持する装置本体110に固定された支持部材111によって回動自在に支持されている。
【0061】
ピストンロッド71bの先端部にはストッパ部材72の一端部が回動自在に接続されている。ストッパ部材72は、その長手方向の中央部が、装置本体110に固定された支持部材112によって回動自在に支持されている。これにより、ピストンロッド71bの進退に伴って、ストッパ部材72が支持部材112を回動中心として回動する構成となっている。ストッパ部材72の先端部には、前記ストッパ受け部66に当接可能なストッパ73がボルト止め等の手段によって取り付けられている。
図2に示すように、フィルム巻取装置100の左右方向におけるストッパ73の位置は、同じくフィルム巻取装置100の左右方向におけるストッパ受け部66の位置と同一位置となっている。
【0062】
具体的には、
図1に示すように、ピストンロッド71bが引き込まれた状態(突出量が小さい状態)では、ストッパ部材72が水平方向に沿って延在する姿勢(跳ね上げ姿勢)となる。この場合、ストッパ部材72のストッパ73は、ターレット機構1の旋回時におけるストッパ受け部66の移動軌跡から外れた位置となっており、ターレット機構1が旋回した場合に、該ストッパ73はストッパ受け部66に当接することはない。
【0063】
一方、
図5に示すように、ピストンロッド71bが突出した状態(突出量が大きい状態)では、ストッパ部材72が鉛直方向に沿って延在する姿勢となる。この場合、ストッパ部材72のストッパ73は、ターレット機構1の旋回時におけるストッパ受け部66の移動軌跡上に位置することになり、このストッパ73に向かってストッパ受け部66が移動してきた場合には、該ストッパ受け部66がストッパ73に当接することになる。これによってガイドローラ64の位置が規制されることになる。このように、ガイドローラ64の位置をストッパ73によって規制するようにしていることから、ターレット機構1の旋回位置に関わりなくガイドローラ64の位置を所定位置に規制することが可能になっている。
【0064】
-フィルム巻取動作-
次に、前述の如く構成されたフィルム巻取装置100によるフィルム巻取動作について説明する。
【0065】
図1(フィルム巻き始め時の状態を示す図)に示すように、フィルム150の巻き取り動作の開始時には、巻取位置P1(フィルム150の供給方向の上流側:
図1における左側)に位置する巻芯81の回転によって該巻芯81へのフィルム150の巻き取りが開始される。尚、この
図1に示す状態では交換位置P2(フィルム150の供給方向の下流側:
図1における右側)にはフィルム150が巻き取られていない新たな巻芯82が装着されている。
【0066】
この状態にあっては、ストッパユニット7のエアシリンダ71におけるピストンロッド71bの突出量が小さくなっており、ストッパ部材72が水平方向に沿って延在する姿勢(跳ね上げ姿勢)となっている。
【0067】
そして、
図3(巻き替え開始時の状態を示す図)に示すように、所定量のフィルム150が巻芯81に巻き取られたことで巻き替えを行う際には、
図4(タッチローラ21の離脱時の状態を示す図)に示すように、タッチローラユニット2のアーム22が回動することにより(矢印を参照)、タッチローラ21が巻取ロール200から後退する。この状態でターレット機構1が旋回することによる巻き替えが開始される。
【0068】
この際、
図4に示すように、ストッパユニット7のエアシリンダ71のピストンロッド71bの突出量を大きくし、ストッパ部材72を鉛直方向に沿って延在する姿勢にする。
【0069】
ここで、巻芯82の外径寸法に応じたタッチローラ21とガイドローラ64との位置関係について説明する。
図13を用いて前述したように、従来技術にあっては、ターレット機構bの旋回によって巻取位置に移動してくる巻芯d3の外径寸法が大きいほど、当該巻芯d3がタッチローラhに当接した際におけるターレット機構bの旋回位置としては、巻芯の外径寸法が小さい場合に比べて、ガイドローラe1がタッチローラhに近付くような旋回位置となる。つまり、従来技術にあっては、巻芯d3の外径寸法によって切断フィルムスパンfs(
図12(c)を参照)が変動し、フィルムcの切断性にバラツキが生じていた。
【0070】
このことを考慮し、本実施形態では、ガイドローラ64の位置をストッパ部材72(より詳しくはストッパ73)によって規制して、ターレット機構1の旋回位置に関わりなくガイドローラ64の位置を所定位置に規制するようにしている。
図7は、本実施形態において、タッチローラ21がフィルム150を介して巻芯82に接触した状態であり、
図10は、大径の巻芯83,84を使用した場合にタッチローラ21がフィルム150を介して巻芯84に接触した状態である。このように、巻芯83,84の外径寸法が大きい場合と、巻芯81,82の外径寸法が小さい場合とでは、タッチローラ21がフィルム150を介して巻芯に接触した状態におけるターレット機構1の旋回位置が異なっている。本実施形態では、このようにターレット機構1の旋回位置が異なっている場合であっても、タッチローラ21と、フィルム150をガイドしているガイドローラ64との間のフィルムスパン(切断フィルムスパン)FSを略一定(略同一)にするように、ガイドローラ64の位置をストッパ73によって規制している。つまり、巻芯の外径寸法に関わりなく、タッチローラ21とガイドローラ64との間のフィルムスパンFSを略一定にするようにしている。この場合、
図7における角度θ1よりも
図10における角度θ2の方が大きく設定されることになってフィルムスパンFSが略一定となっている。このような動作が、本発明でいう「ターレット機構の旋回によって上流側に移動した巻芯の外径寸法が大きいほど、ターレット機構の旋回中心回りにおける、当該巻芯の中心位置とフィルムをガイドしているガイドローラの中心位置との間の角度間隔が大きく設定される」ことに相当する。
【0071】
また、このようなガイドローラ64の位置をストッパ73によって規制することでフィルムスパンFSを略一定にすることは、フィルム巻足しを行う場合においても同様である。
図11は、フィルム巻足しを行う場合にタッチローラ21がフィルム150を介して巻足しロール210に接触した状態である。このように、フィルム巻足しを行う場合(
図11に示す場合)と、フィルム巻足しを行わない場合(新たな巻芯にフィルム150を巻き取る場合:
図7に示す場合)とでは、タッチローラ21がフィルム150を介して巻足しロール210または巻芯82に接触した状態におけるターレット機構1の旋回位置が異なっている。本実施形態では、このような場合においても、タッチローラ21と、フィルム150をガイドしているガイドローラ64との間のフィルムスパンFSを略一定(略同一)にするように、ガイドローラ64の位置をストッパ73によって規制している。つまり、巻足しロール210の外径寸法に関わりなく、タッチローラ21とガイドローラ64との間のフィルムスパンFSを略一定にするようにしている。この場合、
図7における角度θ1よりも
図11における角度θ3の方が大きく設定されることになってフィルムスパンFSが略一定となっている。このような動作が、本発明でいう「ターレット機構の旋回によって下流側に移動した巻取ロールを再び上流側に移動させて巻足しを行う場合に、当該上流側に移動した巻取ロールの外径寸法が大きいほど、ターレット機構の旋回中心回りにおける、当該巻取ロールの中心位置とフィルムをガイドしているガイドローラの中心位置との間の角度間隔が大きく設定される」ことに相当する。
【0072】
図4で示したようにストッパ部材72の姿勢を規定した状態で、ターレット機構1が所定量だけ旋回された時点で、
図5(ガイドローラ位置規制状態を示す図)に示すように、ストッパ受け部66がストッパ73に当接することになり、これによってガイドローラ64の位置が規制されることになる。
【0073】
このようなターレット機構1の旋回により、巻取位置P1に位置していた巻取ロール200が交換位置P2に移動し、交換位置P2に位置していた巻芯82が巻取位置P1に移動することになり、
図5に示すように、交換位置P2に移動した巻取ロール200に向けて供給されるフィルム150は第2ガイドローラユニット6Bのガイドローラ64によってガイドされることになる。尚、この
図5に示す状態にあっては、ターレット機構1の旋回によって下側に移動した第1ガイドローラユニット6Aは、エアシリンダ61のピストンロッド61bの突出量が大きくなり、第2アーム63が
図5における時計回り方向に回動する。これにより、ガイドローラ64の位置としては、交換位置P2に位置している巻取ロール200から遠ざかることになる。
【0074】
その後、
図6(フィルム切断準備状態を示す図)に示すように、図中に矢印Aで示すように切断ユニット4の第1アーム41が図中の時計回り方向に回動することにより、切断刃43によるフィルム150の切断準備状態にする。つまり、
図8に矢印Bで示すように第2アーム42を図中の反時計回り方向に回動させるのみでフィルム150が切断されるようにする。
【0075】
図7および
図8は、フィルム150を巻芯82に接触させる動作およびフィルム150を切断する動作を示している。前述したように、本実施形態に係るフィルム巻取装置100はテープ巻付方式であるため、フィルム150を巻芯82に接触させる動作とフィルム150を切断する動作とは略同時に行われる、または、フィルム150を切断する動作はフィルム150を巻芯82に接触させる動作から僅かに遅れて行われることになる。
【0076】
図7では、タッチローラユニット2のアーム22が回動することにより(矢印を参照)、タッチローラ21が巻芯82に向けて前進し、フィルム150を巻芯82に押し当てる。そして、
図8に示すように、切断ユニット4の第2アーム42を図中に矢印Bで示すように図中の反時計回り方向に回動させることにより、フィルム150を切断する。これにより、切断位置よりも下流側のフィルム150は交換位置P2に位置している巻取ロール200に巻き取られ、前工程から供給されてくるフィルム150は、巻取位置P1に位置している巻芯82によって巻き取りが開始されることになる。
【0077】
その後、
図9に示すように、ターレット機構1を更に僅かに旋回させて、タッチローラ21、巻芯82および巻取ロール200が水平方向に並ぶ状態にし、巻取位置P1に移動した巻芯82によるフィルム150の巻き取りが継続されている間に、交換位置P2に移動した巻取ロール200が取出装置(図示省略)によって取り出されることになる。
【0078】
この際、前述したように、第1ガイドローラユニット6Aのエアシリンダ61のピストンロッド61bの突出量が大きくなっており、ガイドローラ64の位置としては、交換位置P2に位置している巻取ロール200から遠ざかっている。つまり、ガイドローラ64が巻取ロール200の下側から待避している。取出装置としては、下側から巻取ロール200に接近し、ターレット機構1から取り外される当該巻取ロール200を下側から支持するものであるが、ガイドローラ64が巻取ロール200の下側から待避しているため、取出装置がガイドローラ64に干渉してしまうといった懸念を無くすことができる。
【0079】
そして、巻取ロール200が取り出された後には、ターレット機構1の交換位置P2に、フィルム150が巻き取られていない新たな巻芯が取り付けられることになる。このような動作が繰り返されることにより、フィルム150の供給を停止することなく各巻芯81,82へのフィルム150の巻き取りが連続して行われる。
【0080】
-実施形態の効果-
以上説明したように本実施形態では、巻き替え時において、タッチローラ21とガイドローラ64(フィルム150をガイドしているガイドローラ64)との間のフィルムスパンFSを切断ユニット4によって切断するに際し、ガイドローラ位置切替装置5によってガイドローラ64におけるターレット機構1に対する相対位置が可変となっていることから、タッチローラ21とガイドローラ64との間のフィルム150の長さ(切断フィルムスパン)を所望の長さに調整することが可能となっている。このため、切断フィルムスパンにバラツキが生じることに起因するフィルム150の切断性のバラツキを抑制することができる。また、巻取ロール200の取出時にあっても、ガイドローラ位置切替装置5によってガイドローラ64の位置が可変であることから、巻取ロール200の近傍にガイドローラ64が位置することを解消することができ、取出装置がガイドローラ64に干渉してしまうといった懸念を無くすことができる。このように、本実施形態では、フィルム150の切断を良好に行うことと、取出装置のガイドローラ64への干渉を回避することとの両立を図ることが可能である。
【0081】
また、本発明では、ストッパユニット7のエアシリンダ71を装置本体(ターレット機構1を旋回可能に支持する装置本体)110に取り付けるようにしている。一般に、エアシリンダ71等のアクチュエータを回転体に取り付ける場合、その回転方向を切り替えるための電磁弁等の切り替え手段における電気系にスリップリングを備えさせる必要があり構成の複雑化を招いてしまう可能性があるが、本実施形態では、ターレット機構1と一体的に回動する必要のないストッパ部材72を移動させるためのエアシリンダ71を装置本体110に取り付けることにより、構成の簡素化を図りながらもエアシリンダ71の作動によるストッパ部材72の移動を良好に行うことが可能になる。
【0082】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0083】
例えば、前記実施形態では、フィルム150の上巻取が行われる場合を例に挙げて説明したが、下巻取が行われる場合においても同様の動作によって前述した効果を奏することができる。
【0084】
また、前記実施形態に係るフィルム巻取装置100は、フィルム150の供給系として1系統のみを備えたものとしていた。本発明はこれに限らず、フィルム150の供給系として複数を備えたもの、つまり、
図1で示した構成が並列に複数配設されたフィルム巻取装置に対しても本発明は適用が可能である。
【0085】
また、前記実施形態では、フィルム巻取装置100がテープ巻付方式のものであったため、切断ユニット4をギロチン方式のものとしていた。本発明はこれに限らず、フィルム巻取装置100が静電気巻付方式のものである場合には、切断ユニット4としてはギロチン方式に限定されず、切断刃がフィルム巻取装置100の左右方向にスライド移動することによってフィルム150を切断する方式のものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、ターレット型のフィルム巻取装置に備えられるガイドローラ位置切替装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 ターレット機構
21 タッチローラ
4 切断ユニット
5 ガイドローラ位置切替装置
6 ガイドローラユニット
61 エアシリンダ(第1アクチュエータ)
64 ガイドローラ
7 ストッパユニット
71 エアシリンダ(第2アクチュエータ)
81~84 巻芯
100 フィルム巻取装置
150 フィルム
200 巻取ロール
210 巻足しロール
O ターレット中心(ターレット機構の旋回中心)
【要約】
【課題】ターレット型のフィルム巻取装置において、フィルムの切断を良好に行うことと、取出装置のガイドローラへの干渉を回避することとの両立を図ることを可能にする。
【解決手段】エアシリンダ61の作動によってガイドローラ64におけるターレット機構1に対する相対位置を可変とするガイドローラユニット6と、交換位置P2に移動した巻取ロールに向けてフィルム150をガイドするガイドローラ64の位置を規制するストッパユニット7とによりガイドローラ位置切替装置5を構成する。フィルム150をガイドするガイドローラ64の位置を規制することにより、切断フィルムスパンにバラツキが生じることに起因するフィルム150の切断性のバラツキを抑制する。また、交換位置P2に移動した巻取ロールに対するガイドローラ64の位置を調整することにより、巻取ロールの取出時に取出装置がガイドローラ64に干渉してしまうといった懸念を無くす。
【選択図】
図1