(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】飛行体を制御するためのシステム、プログラム、および方法
(51)【国際特許分類】
B64U 10/60 20230101AFI20250228BHJP
B64U 50/34 20230101ALI20250228BHJP
G05D 1/467 20240101ALI20250228BHJP
G05D 1/678 20240101ALI20250228BHJP
G05D 1/648 20240101ALI20250228BHJP
B61D 15/08 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
B64U10/60
B64U50/34
G05D1/467
G05D1/678
G05D1/648
B61D15/08
(21)【出願番号】P 2024179184
(22)【出願日】2024-10-11
【審査請求日】2024-10-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524377718
【氏名又は名称】株式会社Autonomy
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】野波 健蔵
(72)【発明者】
【氏名】舘 良太
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-029823(JP,A)
【文献】特開2020-006800(JP,A)
【文献】特開2021-037818(JP,A)
【文献】特開2020-189614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 10/60
B64U 50/34
G05D 1/467
G05D 1/678
G05D 1/648
B61D 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、前記システムは、
移動体と、
前記移動体にケーブルを介して結合されている飛行体と、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、
前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサと
を備え、
前記制御部は、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値以上であることを決定すること、または、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値未満となり、かつ、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することと
を行うように構成され
、前記第1の閾値は、経時的に変化する前記制御部の水平方向の制御余力Ux(t)の関数であり、前記第1の閾値は、α×Ux(t)と表され、前記第2の閾値は、経時的に変化する前記制御部の鉛直方向の制御余力Uz(t)の関数であり、前記第2の閾値は、β×Uz(t)と表され、0.2≦α≦0.3であり、0.2≦β≦0.3であり、
前記水平方向の制御余力Ux(t)および前記鉛直方向の制御余力Uz(t)は、
Ux(t)=Uxmax-Udx(t)-Ufx(t)
Uz(t)=Uzmax-Udz(t)-Ufz(t)
であり、ここで、Uxmaxは、前記制御部の水平方向の最大制御力であり、Uzmaxは、前記制御部の鉛直方向の最大制御力であり、
Udxは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための水平方向の制御力であり、Udzは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための鉛直方向の制御力であり、
Ufxは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための水平方向の制御力であり、Ufzは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための鉛直方向の制御力である、システム。
【請求項2】
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値未満となり、かつ、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することは、前記水平方向の制御余力Uxおよび前記鉛直方向の制御余力Uzを用いて、前記飛行体の飛行を制御することを含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記移動体は、線路に沿って前記線路上を移動することが可能な台車である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記線路は、鉄道車両が走行するための線路である、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記移動体は、動力付きの移動体または動力無しの移動体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ケーブルは、給電ケーブルであり、
前記移動体は、前記給電ケーブルを介して前記飛行体に給電するための給電装置を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
飛行体であって、前記飛行体は、ケーブルを介して移動体に結合され、前記飛行体は、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、
前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサと
を備え、
前記制御部は、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値以上であることを決定すること、または、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値未満となり、かつ、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することと
を行うように構成され
、前記第1の閾値は、経時的に変化する前記制御部の水平方向の制御余力Ux(t)の関数であり、前記第1の閾値は、α×Ux(t)と表され、前記第2の閾値は、経時的に変化する前記制御部の鉛直方向の制御余力Uz(t)の関数であり、前記第2の閾値は、β×Uz(t)と表され、0.2≦α≦0.3であり、0.2≦β≦0.3であり、
前記水平方向の制御余力Ux(t)および前記鉛直方向の制御余力Uz(t)は、
Ux(t)=Uxmax-Udx(t)-Ufx(t)
Uz(t)=Uzmax-Udz(t)-Ufz(t)
であり、ここで、Uxmaxは、前記制御部の水平方向の最大制御力であり、Uzmaxは、前記制御部の鉛直方向の最大制御力であり、
Udxは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための水平方向の制御力であり、Udzは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための鉛直方向の制御力であり、
Ufxは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための水平方向の制御力であり、Ufzは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための鉛直方向の制御力である、飛行体。
【請求項8】
飛行体を制御するためのプログラムであって、前記飛行体は、ケーブルを介して移動体に結合され、
前記飛行体は、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、
前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサと
を備え、
前記プログラムは、前記制御部によって実行されると、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値以上であることを決定すること、または、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値未満となり、かつ、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することと
を含む処理を前記制御部に行わせ
、前記第1の閾値は、経時的に変化する前記制御部の水平方向の制御余力Ux(t)の関数であり、前記第1の閾値は、α×Ux(t)と表され、前記第2の閾値は、経時的に変化する前記制御部の鉛直方向の制御余力Uz(t)の関数であり、前記第2の閾値は、β×Uz(t)と表され、0.2≦α≦0.3であり、0.2≦β≦0.3であり、
前記水平方向の制御余力Ux(t)および前記鉛直方向の制御余力Uz(t)は、
Ux(t)=Uxmax-Udx(t)-Ufx(t)
Uz(t)=Uzmax-Udz(t)-Ufz(t)
であり、ここで、Uxmaxは、前記制御部の水平方向の最大制御力であり、Uzmaxは、前記制御部の鉛直方向の最大制御力であり、
Udxは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための水平方向の制御力であり、Udzは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための鉛直方向の制御力であり、
Ufxは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための水平方向の制御力であり、Ufzは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための鉛直方向の制御力である、プログラム。
【請求項9】
飛行体を制御するための方法であって、前記飛行体は、ケーブルを介して移動体に結合され、
前記飛行体は、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、
前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサと
を備え、
前記方法は、前記制御部において実行され、
前記方法は、
前記制御部が、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記制御部が、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記制御部が、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値以上であることを決定すること、または、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値未満となり、かつ、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することと
を含
み、前記第1の閾値は、経時的に変化する前記制御部の水平方向の制御余力Ux(t)の関数であり、前記第1の閾値は、α×Ux(t)と表され、前記第2の閾値は、経時的に変化する前記制御部の鉛直方向の制御余力Uz(t)の関数であり、前記第2の閾値は、β×Uz(t)と表され、0.2≦α≦0.3であり、0.2≦β≦0.3であり、
前記水平方向の制御余力Ux(t)および前記鉛直方向の制御余力Uz(t)は、
Ux(t)=Uxmax-Udx(t)-Ufx(t)
Uz(t)=Uzmax-Udz(t)-Ufz(t)
であり、ここで、Uxmaxは、前記制御部の水平方向の最大制御力であり、Uzmaxは、前記制御部の鉛直方向の最大制御力であり、
Udxは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための水平方向の制御力であり、Udzは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための鉛直方向の制御力であり、
Ufxは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための水平方向の制御力であり、Ufzは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための鉛直方向の制御力である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体を制御するためのシステム、プログラム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無人飛行体(いわゆる、ドローン)の発展により、上空からの種々のアクションを行うことができるようになってきた。例えば、無人飛行体を用いて、上空からの撮影、安全監視、点検が行われることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛行体には、飛行禁止空域が存在し、また、人または物件との距離を確保することも求められている。従って、意図せず飛行禁止空域に侵入したり、意図せず人または物件と接近したりすることを防止するために、飛行体をケーブルで繋留し、飛行可能範囲を制限することが有効である。例えば、飛行体の繋留点を移動体上に設けることも可能であり、この場合、移動体と共に繋留点が移動するため、それに伴って、飛行体の飛行可能範囲も移動する。
【0005】
しかしながら、飛行体をケーブルで繋留する場合、飛行体がケーブルによって引っ張られると、飛行体の自由な飛行が必要以上に阻害されるおそれがある。また、飛行体がケーブルによって引っ張られると、飛行体が姿勢を崩し、予期せぬ挙動を起こし、ひいては、墜落するおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、飛行体をケーブルで繋留する場合に、飛行体の安定的な飛行を可能にするように、飛行体を制御するためのシステム等を提供する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
システムであって、前記システムは、
移動体と、
前記移動体にケーブルを介して結合されている飛行体と、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、
前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサと
を備え、
前記制御部は、
前記検出された張力Tが閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tが前記閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tが前記閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することと
を行うように構成されている、システム。
(項目2)
前記閾値は、前記制御部の制御余力の関数であり、経時的に変化する、上記項目に記載のシステム。
(項目3)
前記検出された張力Tが閾値以上であるかどうかを決定することは、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上であるかどうかを決定することと
を含み、
前記検出された張力Tが前記閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tが前記閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することは、
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値以上であることを決定すること、または、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値未満となり、かつ、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することとを含む、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目4)
前記第1の閾値は、前記制御部の水平方向の制御余力Uxの関数であり、前記第2の閾値は、前記制御部の鉛直方向の制御余力Uzの関数である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目5)
前記水平方向の制御余力Uxおよび前記鉛直方向の制御余力Uzは、経時的に変化し、
Ux(t)=Uxmax-Udx(t)-Ufx(t)
Uz(t)=Uzmax-Udz(t)-Ufz(t)
であり、ここで、Uxmaxは、前記制御部の水平方向の最大制御力であり、Uzmaxは、前記制御部の鉛直方向の最大制御力であり、
Udxは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための水平方向の制御力であり、Udzは、前記飛行体が外乱に対抗して飛行するための鉛直方向の制御力であり、
Ufxは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための水平方向の制御力であり、Ufzは、前記飛行体が目標値に追従して飛行するための鉛直方向の制御力である、
上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目6)
前記第1の閾値は、α×Ux(t)であり、前記第2の閾値は、β×Uz(t)であり、0.2≦α≦0.3であり、0.2≦β≦0.3である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目7)
前記検出された張力Tの水平方向成分Txが前記第1の閾値未満となり、かつ、前記検出された張力Tの鉛直方向成分Tzが前記第2の閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することは、前記水平方向の制御余力Uxおよび前記鉛直方向の制御余力Uzを用いて、前記飛行体の飛行を制御することを含む、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目8)
前記移動体は、線路に沿って前記線路上を移動することが可能な台車である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目9)
前記線路は、鉄道車両が走行するための線路である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目10)
前記移動体は、動力付きの移動体または動力無しの移動体である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目11)
前記ケーブルは、給電ケーブルであり、
前記移動体は、前記給電ケーブルを介して前記飛行体に給電するための給電装置を備える、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目12)
飛行体であって、前記飛行体は、ケーブルを介して移動体に結合され、前記飛行体は、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、
前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサと
を備え、
前記制御部は、
前記検出された張力Tが閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tが前記閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tが前記閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することと
を行うように構成されている、飛行体。
(項目12A)
上記項目のいずれか一項に記載の特徴を備える、項目12に記載の飛行体。
(項目13)
飛行体を制御するためのプログラムであって、前記飛行体は、ケーブルを介して移動体に結合され、
前記飛行体は、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、
前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサと
を備え、
前記プログラムは、前記制御部によって実行されると、
前記検出された張力Tが閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記検出された張力Tが前記閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tが前記閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することと
を含む処理を前記制御部に行わせる、プログラム。
(項目13A)
上記項目のいずれか一項に記載の特徴を備える、項目13に記載のプログラム。
(項目13B)
項目13または項目13Aに記載のプログラムを格納する非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
(項目13C)
項目13または項目13Aに記載のプログラムを備えるコンピュータプログラム製品。
(項目14)
飛行体を制御するための方法であって、前記飛行体は、ケーブルを介して移動体に結合され、
前記飛行体は、
前記飛行体の飛行を制御する制御部と、
前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサと
を備え、
前記方法は、前記制御部において実行され、
前記方法は、
前記制御部が、前記検出された張力Tが閾値以上であるかどうかを決定することと、
前記制御部が、前記検出された張力Tが前記閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tが前記閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することと
を含む、方法。
(項目14A)
上記項目のいずれか一項に記載の特徴を備える、項目14に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飛行体をケーブルで繋留する場合でも飛行体の安定的な飛行を可能にすることができる。これにより、飛行体は、自由な飛行を必要以上に阻害されることなく、飛行することができる。本発明は、飛行体の飛行制御の分野における改善をもたらし得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】移動体にケーブルで繋留された飛行体を用いて線路を点検する様子の一例を示す図
【
図1B】移動体にケーブルで繋留された飛行体を用いて線路を点検する様子の一例を示す図
【
図1C】移動体にケーブルで繋留された飛行体を用いて線路を点検する様子の一例を示す図
【
図3】飛行体の飛行を制御するための処理300の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1A~
図1Cは、移動体にケーブルで繋留された飛行体を用いて線路を点検する様子の一例を示す。本例では、鉄道車両走行用の線路Rに沿って線路R上を台車20(移動体)が移動し、台車20に接続されているケーブル30がドローン10(飛行体)に結合された状態で、ドローン10が、飛行しながら、上空から線路R上に異常がないかの点検を行う。
【0011】
例えば、ドローン10は、バッテリを備え、バッテリからの電力で飛行し、点検を行うことができる。あるいは、ケーブル30が給電ケーブルであり得、ドローン10は、台車20が備える給電装置から給電ケーブルを介して給電されることができ、その電力で点検を行うことができる。
【0012】
ドローン10は、台車20上のケーブル30の繋留点と、ケーブル30の長さとによって画定される飛行可能範囲内を飛行することになる。台車20が線路Rに沿って移動するにつれて、繋留点も移動する。さらに、例えば、台車20上のケーブル30の繋留点がリールに固定され、リールによってケーブル30を繰り出しまたは巻き取ることで、ケーブル30の長さが調節される。このようにして、飛行可能範囲の位置および規模が調節され得る。
【0013】
例えば、
図1Aに示されるように、ケーブル30が弛んでいるとき、ドローン10には、ケーブル30の張力が働かないか、または、ドローン10に働くケーブル30の張力は微小である。従って、ドローン10は、ケーブル30による影響をほとんど受けることなく、自由に飛行することができる。
【0014】
これに対して、例えば、
図1Bに示されるように、ケーブル30が張っているとき、ドローン10には、ケーブル30の張力Tが働き、ドローン10は、ケーブル30による影響を受け、自由な飛行を妨げられることになる。これは、ドローン10の姿勢が予期せず不安定になることをもたらし得、ドローン10が墜落する危険もある。
【0015】
本発明では、ケーブル30の張力Tを監視し、張力Tが大きくなりすぎないように、ドローン10をフィードバック制御することで、ドローン10がケーブル30による影響を受けることなく、自由に飛行することができるようにしている。
【0016】
本発明の一実施形態では、ケーブル30の張力Tは閾値と比較され、張力Tが閾値以上である場合に、張力Tが閾値未満となるように、ドローン10の飛行を制御することになる。好ましくは、閾値は、経時的に変動する値であり得る。閾値を固定値ではなく、経時的に変動する値とすることで、張力Tを飛行の状況に応じたものとすることができ、より制限のない自由な飛行を実現することができる。
【0017】
より好ましくは、閾値は、ドローン10の飛行を制御するために残されている制御力(すなわち、制御余力)に依存する値であり得、すなわち、閾値は、制御余力の関数であり得る。制御余力は、ドローン10を制御するための最大制御力からドローン10を安定的に目標値に向かって制御するために必要な制御力を除いて残る余力である。ドローン10を安定的に目標値に向かって制御するために必要な制御力は、ドローン10を目標値に向かって制御するために必要な制御力(目標追従制御力)と、ドローン10を外乱等に対抗して安定させるために必要な制御力(外乱対向制御力)とを含む。制御余力がなくなると(すなわち、最大制御力をすべて安定的に目標値に向かって制御するために費やすと)、ドローン10は制御不能に陥ってしまう。
【0018】
ケーブル30の張力Tに対して、制御余力で対抗することになるため、制御余力は、張力Tよりも十分に大きい必要がある。このことを保証するために、張力Tと比較される閾値は、制御余力の50%以下、制御余力の40%以下、制御余力の30%以下、または、好ましくは、制御余力の20%~30%であり得る。これにより、張力Tが大きくなりすぎることを防ぎ、かつ、張力Tによりドローン10が制御不能に陥ることも防ぎ得る。これは、汎用性の高いドローン制御を実現することを可能にする。
【0019】
本発明の一実施形態では、ケーブル30の張力Tは、
図1Cに示されるように、張力Tが属する鉛直面P内で(例えば、ケーブル30のドローン10上の固定点を原点とする相対座標系内で)、水平方向成分Txと鉛直方向成分Tzとに分解され、張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値と比較され、張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値と比較される。そして、張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかまたは張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上である場合に、張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値未満となり、かつ、張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値未満となるように、ドローン10の飛行を制御することになる。
【0020】
このとき、上述した制御余力も、水平方向成分と鉛直方向成分とに分解される。また、第1の閾値は、制御余力の水平方向成分の関数であり、第2の閾値は、制御余力の鉛直方向成分の関数であり得る。
【0021】
張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値未満となり、かつ、張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値未満となるように、ドローン10の飛行を制御することは、制御余力の水平方向成分および制御余力の鉛直方向成分を用いて行われる。制御余力の水平方向成分、鉛直方向成分はそれぞれ、張力Tの水平方向成分Tx、鉛直方向成分Tzよりも確実に大きいため、余力不足に陥ることなく、ドローン10の飛行をフィードバック制御することができる。
【0022】
本発明の別の施形態では、ケーブル30の張力Tは、
図1Cの左下に示されるような絶対座標系内で(すなわち、ドローン10の位置に依存しない固定座標系内で)、X方向成分TXと、Y方向成分TYと、Z方向成分TZとに分解され、張力TのX方向成分TXがX方向の閾値と比較され、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値と比較され、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値と比較される。そして、張力TのX方向成分TXがX方向の閾値以上であるか、または、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値以上であるか、または、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値以上である場合に、張力TのX方向成分TXがX方向の閾値未満となり、かつ、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値未満となり、かつ、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値未満となるように、ドローン10の飛行を制御することになる。
【0023】
このとき、上述した制御余力も、X方向成分とY方向成分とZ方向成分とに分解される。また、X方向の閾値は、制御余力のX方向成分の関数であり、Y方向の閾値は、制御余力のY方向成分の関数であり、Z方向の閾値は、制御余力のZ方向成分の関数であり得る。
【0024】
張力TのX方向成分TXがX方向の閾値未満となり、かつ、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値未満となり、かつ、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値未満となるように、ドローン10の飛行を制御することは、制御余力のX方向成分、Y方向成分、およびZ方向成分を用いて行われる。制御余力のX方向成分、Y方向成分、Z方向成分はそれぞれ、張力TのX方向成分TX、Y方向成分TY、Z方向成分TZよりも確実に大きいため、余力不足に陥ることなく、ドローン10の飛行をフィードバック制御することができる。
【0025】
上述した例では、鉄道車両が走行するための線路Rに沿って線路R上を移動体が移動することを例示したが、本発明では、移動体は任意の態様で移動可能であり、線路Rに沿って移動することに限定されない。移動体は、例えば、道路に沿って道路上を移動するようにしてもよいし、地上を自由に移動するようにしてもよいし、海上を自由に移動するようにしてもよい。
【0026】
上述した例では、移動体として台車20を例示したが、本発明では、移動体は、移動可能な任意の物体であり得、台車20に限定されない。移動体は、例えば、動力付きの移動体であってもよいし、動力無しの移動体であってもよい。例えば、移動体は、線路R等を自走することができ、あるいは、移動体は、ドローン10によって牽引されて、線路R等を移動することができる。
【0027】
上述した例では、飛行体としてドローン10を例示したが、本発明では、飛行体は、飛行可能な任意の物体であり得、マルチコプター型のドローン10に限定されない。ドローン10は、例えば、固定翼型のドローンであってもよい。
【0028】
図2は、飛行体が備える構成の一例を示す。
図2では、マルチコプター型のドローン10である飛行体が示されている。
【0029】
飛行体10は、制御部100と、張力センサ110とを備え得る。飛行体10はさらに、推進機構120も備え得る。飛行体10には、ケーブル30が接続されており、ケーブル30は、移動体20に接続されている。
【0030】
張力センサ110は、ケーブル30に係る張力Tを検出するように構成されている。張力センサ110は、検出された張力Tを制御部に出力することができる。
【0031】
推進機構120は、飛行体10に推進力をもたらす任意の機構であり得る。例えば、飛行体10がマルチコプター型のドローンである場合、推進機構120は、複数のプロペラであり得る。例えば、飛行体10が固定翼型のドローンである場合、推進機構120は、複数のプロペラであってもよいし、ジェットエンジンであってもよい。飛行体10が固定翼型のドローンである場合、飛行体10は、推進機構120に加えて、姿勢制御のための動翼(例えば、補助翼、方向舵、昇降舵等)を備えることができる。
【0032】
制御部100は、飛行体10の飛行を制御するように構成されており、制御部100は、いわゆるフライトコントローラであり得る。制御部100は、例えば、プロセッサおよびメモリによって構成され得る。プロセッサは、例えば、メモリに格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、制御部100を所望のステップを実行するシステムとして機能させることが可能である。メモリは、制御部100の処理を実行するために必要とされるプログラムやそのプログラムの実行に必要とされるデータ等を格納する。メモリは、飛行体の飛行を制御するための処理をプロセッサに行わせるためのプログラム(例えば、後述する
図3に示される処理を実現するプログラム)を格納してもよい。ここで、プログラムをどのようにしてメモリに格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリにプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納され、記憶媒体を読み取ることによってインストールされるようにしてもよいし、コンピュータプログラム製品として構成されてもよい。あるいは、プログラムは、ネットワークを経由してダウンロードされることによってメモリにインストールされるようにしてもよい。
【0033】
例えば、飛行体10が推進機構120として複数のプロペラを有するマルチコプター型のドローンである場合、制御部100は、推進機構120としての複数のプロペラを制御することで、飛行体10の飛行を制御することができる。制御部100は、複数のプロペラの回転数を制御することにより、6自由度(上-下、左-右、前-後およびロール、ピッチ、ヨー)を制御することができる。例えば、飛行体が固定翼を有する固定翼型のドローンである場合、制御部100は、例えば、推進機構および動翼を制御することで、飛行体10の飛行を制御することができる。制御部100は、推進機構の出力を制御し、かつ、動翼の角度を制御することにより、6自由度(上-下、左-右、前-後およびロール、ピッチ、ヨー)を制御することができる。
【0034】
制御部100は、最大制御力Umaxを有している。最大制御力Umaxは、飛行体10の飛行を制御するために利用可能な最大の力であり、飛行体の仕様によって決定され得る。最大制御力Umaxは、例えば、推進機構120の最大出力であるか、最大出力に依存する値であり得る。最大制御力Umaxを超過して飛行体10を制御しようとすると、飛行体10が制御不能に陥るため、制御部10は、最大制御力Umax以下の制御力で飛行体10を制御する必要がある。時刻tにおける飛行体を制御するための制御力Uc(Uc≦Umax)は、
Uc(t)=Ud(t)+Uf(t)+Ut(t)
と表され、Udは、飛行体10を外乱等に対抗して安定させるために必要な制御力(外乱対向制御力)であり、Ufは、飛行体10を目標値に向かって制御するために必要な制御力(目標追従制御力)であり、Utは、張力に対抗するための制御力である。
【0035】
張力に対抗するための制御力Ut(t)は、
Ut(t)=Uc(t)-Ud(t)-Uf(t)
と表され、Uc(t)は、最大でUmaxであることから、
Utmax(t)=Umax-Ud(t)-Uf(t)
となり、Utmaxは、張力に対抗するための最大制御力である。Utmaxは、制御部100による制御余力Uであるともいえる。
【0036】
制御部100は、張力センサによって検出された張力Tが閾値以上であるかどうかを決定し、張力Tが閾値以上であると決定することに応答して、張力Tが閾値未満となるように、飛行体10の飛行を制御する。上述したように、Utmax以下の制御力で、制御部100は、張力Tが閾値未満となるように、飛行体10の飛行を制御する。従って、張力Tは、Utmaxよりも十分に小さくある必要がある。このことを確実にするために、閾値は、Utmax(=制御余力U)の関数であり、具体的には、閾値は、α×U(αは1未満の正数)で表され得る。好ましくは、α=0.5、0.4、0.3、または0.2であり、より好ましくは、0.2≦α≦0.3であり得る。
【0037】
一実施形態において、張力Tおよび制御力Ucが、張力Tが属する鉛直面内で考慮される場合、制御部100は、張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかどうかを決定し、張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上であるかどうかを決定し、張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかまたは張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上であることの決定に応答して、張力Tの水平方向成分Txが第1の閾未満となり、かつ、張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値未満となるように、飛行体10の飛行を制御する。
【0038】
第1の閾値は、水平方向の制御余力Uxの関数であり、例えば、時刻tにおける制御余力Uxは、
Ux(t)=Uxmax-Udx(t)-Ufx(t)
と表され、第2の閾値は、鉛直方向の制御余力Uzの関数であり、例えば、時刻tにおける制御余力Uzは、
Uz(t)=Uzmax-Udz(t)-Ufz(t)
と表される。Uxmaxは、制御部100の水平方向の最大制御力であり、Uzmaxは、制御部100の鉛直方向の最大制御力であり、Udxは、水平方向の外乱対向制御力であり、Udzは、鉛直方向の外乱対向制御力であり、Ufxは、水平方向の目標追従制御力であり、Ufzは、鉛直方向の目標追従制御力である。
【0039】
第1の閾値は、例えば、α×Ux(t)であり、第2の閾値は、例えば、β×Uz(t)であり、制御部100は、張力Tの水平方向成分Tx<α×Ux(t)となり、かつ、張力Tの鉛直方向成分Tz<β×Uz(t)となるように、飛行体10の飛行を制御することになる。ここで、α、βは、0.5、0.4、0.3、または0.2であり、より好ましくは、0.2≦α≦0.3、0.2≦β≦0.3であり得る。制御部100は、Ux(t)およびUz(t)を用いて、飛行体10の飛行を制御する。
【0040】
別の実施形態において、張力Tおよび制御力Ucが、X-Y-Zの固定座標系で考慮される場合、制御部100は、張力TのX方向成分TXがX方向の閾値以上であるかどうかを決定し、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値以上であるかどうかを決定し、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値以上であるかどうかを決定し、張力TのX方向成分TXがX方向の閾値以上であるかまたは張力TのY方向成分TYがY方向の閾値以上であるかまたは張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値以上であることの決定に応答して、張力TのX方向成分TXがX方向の閾値未満となり、かつ、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値未満となり、かつ、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値未満となるように、飛行体10の飛行を制御する。
【0041】
X方向の閾値は、X方向の制御余力UXの関数であり、例えば、時刻tにおける制御余力UXは、
UX(t)=UXmax-UdX(t)-UfX(t)
と表され、Y方向の閾値は、Y方向の制御余力UYの関数であり、例えば、時刻tにおける制御余力UYは、
UY(t)=UYmax-UdY(t)-UfY(t)
と表され、Z方向の閾値は、Z方向の制御余力UZの関数であり、例えば、時刻tにおける制御余力UZは、
UZ(t)=UZmax-UdZ(t)-UfZ(t)
と表される。UXmaxは、制御部100のX方向の最大制御力であり、UYmaxは、制御部100のY方向の最大制御力であり、UZmaxは、制御部100のZ方向の最大制御力であり、UdXは、X方向の外乱対向制御力であり、UdYは、Y方向の外乱対向制御力であり、UdZは、Z方向の外乱対向制御力であり、UfXは、X方向の目標追従制御力であり、UfYは、Y方向の目標追従制御力であり、UfZは、Z方向の目標追従制御力である。
【0042】
X方向の閾値は、例えば、a×UX(t)であり、Y方向の閾値は、例えば、b×UY(t)であり、Z方向の閾値は、例えば、c×UZ(t)であり、制御部100は、張力TのX方向成分TX<a×UX(t)となり、かつ、張力TのY方向成分TY<b×UY(t)となり、かつ、張力TのZ方向成分TZ<c×UZ(t)となるように、飛行体10の飛行を制御することになる。ここで、a、b、cは、0.5、0.4、0.3、または0.2であり、より好ましくは、0.2≦a≦0.3、0.2≦b≦0.3、0.2≦c≦0.3であり得る。制御部100は、UX(t)およびUY(t)およびUZ(t)を用いて、飛行体10の飛行を制御する。
【0043】
なお、上述した例では、制御部100が飛行体10内部に備えられることを説明したが、本発明は、これに限定されない。制御部100が飛行体10の外部に備えられ、飛行体10が外部の制御部100から遠隔で制御されるシステムも本発明の範囲内である。この場合、飛行体10と制御部100とは、任意の態様で通信し得る。例えば、飛行体10と制御部100とは、有線で(例えば、ケーブル30を介して)通信してもよいし、無線で通信してもよい。
【0044】
なお、上述した例では、張力センサ110が飛行体10内部に備えられることを説明したが、本発明は、これに限定されない。張力センサ110が飛行体10の外部に(すなわち、移動体上に)備えられるシステムも本発明の範囲内である。例えば、制御部100が飛行体10内部にある場合、制御部100は、張力センサ110と遠隔で通信し得る。例えば、制御部100は、張力センサ110と有線で(例えば、ケーブル30を介して)通信してもよいし、無線で通信してもよい。
【0045】
図3は、飛行体の飛行を制御するための処理300の一例を示すフローチャートである。処理300は、制御部100によって実行される。
【0046】
ステップS301では、制御部100が、張力センサ110からの出力を受信する。制御部301は、張力センサ110からの出力を継続的に受信するようにしてもよいし、断続的に受信するようにしてもよい。出力を断続的に受信する場合、任意の時間間隔(例えば、1秒間隔、5秒間隔、10秒間隔等)で出力を受信することができる。
【0047】
ステップS302では、制御部100が、ステップS301で受信された張力Tが、閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、制御部100の制御余力の関数であり得、時刻tにおける制御余力U(t)は、
U(t)=Umax-Ud(t)-Uf(t)
と表され、閾値は、α×Uc(t)(αは1未満の正数)で表され得る。従って、制御部100は、T(t)≧α×Uc(t)であるかどうかを判定する。T(t)≧α×Uc(t)であると判定された場合(Yesの場合)、張力Tを減らすための飛行体10の制御が必要であるため、ステップS303に進む。T(t)<α×Uc(t)であると判定された場合(Noの場合)、張力Tを減らすための飛行体10の制御は不要であるため、ステップS301に戻り、引き続き、張力Tを監視することになる。
【0048】
ステップS303では、制御部100が、張力Tが閾値未満となるように、飛行体10の飛行を制御する。制御部100は、例えば、T(t)<α×Uc(t)となるように、飛行体10の飛行を制御する。制御部100は、例えば、推進機構120を制御するか、または、推進機構120および動翼を制御し得る。
【0049】
制御部100は、例えば、ステップS302でNoと判定されるまで、ステップS301~ステップS303を繰り返すことで、飛行体10のフィードバック制御を行う。
【0050】
張力Tおよび制御力Ucが、張力Tが属する鉛直面内で考慮される上述した実施形態の場合、ステップS301では、制御部100が、張力センサ110からの出力として、張力Tの水平方向成分Txおよび鉛直方向成分Tzを受信する。
【0051】
ステップS302では、制御部100が、張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値(例えば、α×Ux(t))以上であるかどうか、および、張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値(例えば、β×Uz(t))以上であるかどうかを決定する。張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値以上であるかまたは張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値以上であることが決定されると、ステップS303に進む。張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値未満であり、かつ、張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値未満であることが決定されると、ステップS301に戻り、引き続き、張力Tを監視することになる。
【0052】
ステップS303では、制御部100が、張力Tの水平方向成分Txが第1の閾値未満となり、かつ、張力Tの鉛直方向成分Tzが第2の閾値未満となるように、飛行体10の飛行を制御する。
【0053】
張力Tおよび制御力UcがX-Y-Zの固定座標系で考慮される上述した実施形態の場合、ステップS301では、制御部100が、張力センサ110からの出力として、張力TのX方向成分TX、Y方向成分TY、およびZ方向成分TZを受信する。
【0054】
ステップS302では、制御部100が、張力TのX方向成分TXがX方向の閾値(例えば、a×UX(t))以上であるかどうか、および、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値(例えば、b×UY(t))以上であるかどうか、および、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値(例えば、c×UZ(t))以上であるかどうかを決定する。張力TのX方向成分TXがX方向の閾値以上であるかまたは張力TのY方向成分TYがY方向の閾値以上であるかまたは張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値以上であることが決定されると、ステップS303に進む。張力TのX方向成分TXがX方向の閾未満であり、かつ、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値未満であり、かつ、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値未満であることが決定されると、ステップS301に戻り、引き続き、張力Tを監視することになる。
【0055】
ステップS303では、制御部100が、張力TのX方向成分TXがX方向の閾値未満となり、かつ、張力TのY方向成分TYがY方向の閾値未満となり、かつ、張力TのZ方向成分TZがZ方向の閾値未満となるように、飛行体10の飛行を制御する。
【0056】
図3を参照して上述した例では、
図3に示される各ステップの処理は、制御部100が備えるプロセッサとメモリに格納されたプログラムとによって実現することができるが、本発明はこれに限定されない。
図3に示される各ステップの処理のうちの少なくとも1つは、制御回路などのハードウェア構成によって実現されてもよい。
【0057】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、飛行体の飛行を制御するシステム等を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0059】
10 飛行体
20 移動体
30 ケーブル
100 制御部
110 張力センサ
R 線路
T 張力
【要約】
【課題】飛行体をケーブルで繋留する場合に、飛行体の安定的な飛行を可能にするように、飛行体を制御するためのシステム等を提供すること
【解決手段】本発明のシステムは、移動体と、前記移動体にケーブルを介して結合されている飛行体と、前記飛行体の飛行を制御する制御部と、前記ケーブルにかかる張力Tを検出し、検出された張力Tを前記制御部に出力する張力センサとを備え、前記制御部は、前記検出された張力Tが閾値以上であるかどうかを決定することと、前記検出された張力Tが前記閾値以上であることを決定することに応答して、前記検出された張力Tが前記閾値未満となるように、前記飛行体の飛行を制御することとを行うように構成されている。
【選択図】
図1A