(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】振動式直線搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 27/08 20060101AFI20250228BHJP
B65G 27/10 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
B65G27/08
B65G27/10
(21)【出願番号】P 2024193511
(22)【出願日】2024-11-05
【審査請求日】2024-11-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593046267
【氏名又は名称】ゼンウェル・オーダード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093115
【氏名又は名称】佐渡 昇
(72)【発明者】
【氏名】佐野 洸希
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-034950(JP,A)
【文献】特開平04-039207(JP,A)
【文献】国際公開第2007/083487(WO,A1)
【文献】特開平03-098904(JP,A)
【文献】実開昭64-026620(JP,U)
【文献】特開昭64-012155(JP,A)
【文献】米国特許第04515122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/08
B65G 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの質量体としての第1振動体(1)と第2振動体(2)とを備え、部品(W)を搬送する搬送路(3)を有する第1振動体(1)と、第2振動体(2)との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体(10)によって連結し、前記第2振動体(2)と、固定された取付け台(4)との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体(20)によって連結した振動式直線搬送装置において、
前記第2の板状弾性体(20)の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上とし
、
前記第2の板状弾性体(20)は、
上下に分割された2つの板状弾性分割体(21,22)と、
これら板状弾性分割体(21,22)の間に挟まれた状態で設けられ、相対して平行する2つの平行面を有する直方体からなる矩形部材(23)とを備え、
前記板状弾性分割体(21,22)のうち一方の板状弾性分割体は、その下部が前記矩形部材(23)の一方の平行面に接合され、上部が前記第2振動体(2)に締結され、
前記板状弾性分割体(21,22)のうち他方の板状弾性分割体は、その上部が前記矩形部材(23)の他方の平行面に接合され、下部が前記取付け台(4)に締結され、
これら板状弾性分割体(21,22)は、いずれも、物品搬送方向への屈曲部を有しない平板状であり、
上記第2の板状弾性体(20)が備える矩形部材(23)および2つの板状弾性分割体(21,22)の全体形状は正面視で上下方向に対して前記矩形部材(23) の中央部を中心とする点対称形状となっており、
前記矩形部材(23)と2つの板状弾性分割体(21,22)とは、ボルト(24b)で共締めされていることを特徴とする振動式直線搬送装置。
【請求項2】
二つの質量体としての第1振動体(1)と第2振動体(2)とを備え、部品(W)を搬送する搬送路(3)を有する第1振動体(1)と、第2振動体(2)との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体(10)によって連結し、前記第2振動体(2)と、固定された取付け台(4)との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体(20)によって連結し、
前記第2の板状弾性体(20)の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上とした振動式直線搬送装置において、
前記第2の板状弾性体(20)は、正面視で、上下に取付部(25a、25b)を有し、これら取付部(25a、25b)の間にクランク状の曲げ部(25c)を有する一対のクランク状弾性体(25)が点対称状に組み合わされた組立体(20A)で構成され、
この組立体(20A)の上部取付部(20A1)が、前記第2振動体(2)に締結され、下部取付部(20A2)が前記取付け台(4)に締結されていることを特徴とする振動式直線搬送装置。
【請求項3】
二つの質量体としての第1振動体(1)と第2振動体(2)とを備え、部品(W)を搬送する搬送路(3)を有する第1振動体(1)と、第2振動体(2)との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体(10)によって連結し、前記第2振動体(2)と、固定された取付け台(4)との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体(20)によって連結し、
前記第2の板状弾性体(20)の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上とした振動式直線搬送装置において、
前記第2の板状弾性体(20)は、正面視で、一方が
水平方向に伸び他方が
鉛直方向に伸び上下の取付部の間がL字状に曲げられた全体としてL字状の弾性体(26)で構成され、
このL字状弾性体(26)の一方の取付部が前記第2振動体(2)の締結部に締結され、他方の取付部が前記取付け台(4)の締結部に締結され、
上記締結部のうち
水平方向に伸びる取付部(26h)の締結部には、
水平方向に伸びる取付部(26h)の上下方向における撓みを部分的に許容する隙間(27)が設けられ
、
前記水平方向に伸びる取付部(26h)は、当該取付部(26h)を上下から挟む第1、第2押さえ金(2c1,2c2)で第2振動体2に締結され、前記隙間(27)は、第1、第2押さえ金(2c1,2c2)の端部にそれぞれ形成された正面視で滑らかに円弧状に湾曲する湾曲面(2d1,2d2)によって形成されていることを特徴とする振動式直線搬送装置。
【請求項4】
二つの質量体としての第1振動体(1)と第2振動体(2)とを備え、部品(W)を搬送する搬送路(3)を有する第1振動体(1)と、第2振動体(2)との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体(10)によって連結し、前記第2振動体(2)と、固定された取付け台(4)との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体(20)によって連結した振動式直線搬送装置において、
前記取付け台(4)における第2の板状弾性体(20)との結合部を、取付け台(4)の固定対象から離間させ、取付け台4の固定対象への固定部と前記結合部との間に、取付け台(4)自体の上下方向への撓みを許容する可撓部(4f)を設け、
前記第2の板状弾性体(20)および前記取付け台(4)の可撓部(4f)の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上としたことを特徴とする振動式直線搬送装置。
【請求項5】
請求項1~
4のうちいずれか一項において、
前記第2振動体(2)と取付け台(4)との間に、前記第2の板状弾性体(20)の塑性変形を防止するストッパー部材(30)が設けられていることを特徴とする振動式直線搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を利用して部品を直線的に搬送する振動式直線搬送装置に関する。特に、板状弾性部材の支持によって架台との取付および防振機構を構成した振動式直線搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板状弾性部材によって架台に対する防振機構とした従来の振動式直線搬送装置においては、架台の剛性・質量・取付条件によって搬送状況が著しく変化し、その対策は一般に困難であった。振動理論からすれば、架台が無限に近い剛性と質量を有していれば解決するが、実際の使用条件においては、それを実現することは難しい。
【0003】
以下、詳しく説明する。
【0004】
工場等で小物部品の搬送によく使われる一般的な振動式直線搬送装置には、その構成要素で分類すると以下の3種が有る。
【0005】
<第一の装置>
第一の装置は、
図1のように、振動系が架台5などの固定された部材に直接締結されている装置である。
この装置は、振動する部分が一つしかないので、搬送路3を含む質量体(第1振動体)1による慣性質量と、第1の板状弾性体(以下板バネともいう)10による弾性力によって振動工学でいうところの1自由度の振動系を構成する。
第1振動体1の質量をm、前後板バネ10の合計ばね定数をKとすれば、この系の固有の円振動数ω1は次式の通りとなる
【0006】
【0007】
ω1の固有振動数で発生する振動は摩擦などの損失によって直ぐ減衰して停止する。
一定の振動を持続するため、第1振動体1と取付け台4との間には交流電磁石などによる駆動機構を備えているが、本図及び以下の図の例では図示を省略する。
この方式の装置では、第1振動体1の振動による反作用力は取付け台4から直接架台5に伝わるので、その力に対して変位することなく強固に固定されている場合は問題なく使用できるが、架台5が弱い場合は、第1振動体1に取り付けた搬送路3は設計通りに動作せず(理由は後述)、部品Wは搬送路3上に停滞したり逆行することもある。
したがって、第1振動体1を軽くして取付け台4にかかる反作用力を極力小さくしないと実用出来ない。メーカでは、この方式の装置は、軽量、小型の用途に限定して商品化している。
【0008】
<第二の装置>
第二の装置は、
図2に示すように第1と第2の二つの振動体1,2を、その前後に配した板バネ10によって連結し、更に第2振動体2と取付け台4との間を第2の板状弾性体(以下、防振バネともいう)20で連結した装置である。
【0009】
<第三の装置>
第三の装置は、
図3に示すような装置であり、振動式直線搬送装置の中では最も多く使われている形式の装置である。
図2に示した装置と異なるのは、防振バネに相当する部分を防振ゴム20Gに置き換えていることである。
【0010】
これら第二、第三の装置は、いずれも第1・第2の振動体1,2で構成し、これを支持する防振バネ20又は防振ゴム20Gのバネ定数は振動のための板バネ10に比べて十分小さく設定しているので、振動工学でいう2自由度の振動系に近い構造といえる(防振部材のバネ定数は完全に0にはできないので準2自由度系と呼ぶこともある)。
仮に防振バネ20又は防振ゴム20Gのバネ定数を0と仮定すれば、第1振動体1と第2振動体2との間をつなぐ板バネ10の弾性力だけが作用して、振動系は空中に浮動していることになる。
この場合、第1振動体1の質量をm1、第2振動体2の質量をm2、前後板バネ10のトータルのバネ定数をKとすればこの系の固有の円振動数ω2は次式のとおりとなる。
【0011】
【0012】
このように両方の質量体1,2の質量m1,m2が関係してくる。ここでm2を無限大にしたときは
図1の例と同じことになるのがわかる。
【0013】
図2,3の形式で問題となるのは、振動系に発生するピッチング現象(例えば
図3において、搬送路3の先端が矢印X方向に首振り状に振動(ピッチング運動)する現象)である。
【0014】
図3に示すように、第1振動体1の重心位置をGC1、第2振動体2の重心位置をGC2とした時、各振動体1,2は板バネ10と直交する方向(一点鎖線の方向)に向けてお互いに逆位相の振動をする。
そしてこの振動系は前記のように防振ゴム20Gのバネ定数を0と仮定すれば、ほぼ空中に浮動していることになるので、力の作用方向のずれ(寸法L)と各振動体1,2の質量m1,m2と振幅の大きさに比例して発生するモーメント力によるピッチング運動が発生する。
この時、もし第2振動体2と一体の視点で観測したならば、搬送路3は板バネ10と直交する方向へ全長にわたって同一の振動角度(板バネ10の長手方向と直交する方向)で動作しているが、前記のピッチング運動が重たん(重畳)されてしまうので、この振動系の外(固定された重力場)からみれば搬送路3の全長にわたって異なる振動角度になってしまう。
この結果、部品Wの搬送が停滞したり、甚だしい場合は逆走状態になる。
このタイプの振動式直線搬送装置では、このピッチング現象が常に発生するので、
図3のように、第1第2振動体1,2の重心点GC1とGC2を結んだ線を板バネ10と直交させ(寸法Lを0に近づけ)、ピッチングを起こすモーメント力を打ち消すよう両振動体1,2の重心位置を調整する作業が必要となる。
【0015】
実際の装置では第2振動体2後方の錘を前後に移動して調整することが多い。しかしながら、理想的な重心位置に設定するのは簡単ではない。
この時、
図3のような防振ゴム20Gで防振する場合は、全方向へ適度なバネ定数が得られるというゴムの特性から、後述のような問題はあまり発生しないので調整し易い傾向がある。
【0016】
これに対し、
図2のように、防振のため板バネ状の弾性体(防振バネ)20を使用した場合には、ピッチングの問題が発生することに加えて次のような問題が発生する。
【0017】
【0018】
先ず、前記のように第1、第2振動体1,2の重心点GC1、GC2を結んだ線が、板バネ10と直交する場合(
図4-B)について説明する。
この場合、両振動体1,2は逆向きで同じ方向に振動する。
板バネ10と防振バネ20の水平面に対する取付け角度γ1とγ2は通常同じ角度に設計されているので、
図4-2(B部詳細)に示す力のベクトル[F]は防振バネ20の板厚の方向である[E]方向が主体となり、同板厚と直交する方向への力[G]はほとんど発生しない。
したがって、第1、第2振動体1,2の[E]方向への変位は、薄い防振バネ20(バネ定数が小さい)によって容易に逃がすことが出来、取付け台4への振動伝達は最小限で済む。
【0019】
次に、第1,第2振動体1,2の重心点GC1、GC2を結んだ線が、板バネ10と直交しない場合について説明する。
この場合、前述したように、
図4-Aに示す[L]という大きなモーメントアームが発生し、両振動体1,2の共通重心であるGC0を中心にしてX・Yの円弧状にピッチング運動を起こす。これにより第2振動体2の振動方向は
図4-1のように[F]方向(鉛直方向)が多くなる。この力をベクトル分解した[G]成分は防振バネ20の板厚と直交する方向の成分(圧縮または引張力G=Fcos(90-γ2))となる。ピッチングの状態によってはG=Fとなってしまう。
防振バネ20は、このG方向には大きな剛性を発揮し、材料の持つ縦弾性係数に応じた変形量しか許さない(通常のバネ鋼板の場合[E]方向と[G]方向のバネ定数の比は一般に良く使われる寸法=スパンC、板厚t、幅B寸法=
図4-2記載の各寸法による実測値では2万倍以上に及ぶ)。これはとりもなおさず取付け台4に対して大きな力を及ぼすことになり、実質的には
図1の固定タイプとほとんど同じことになる。
取付け台4及び架台5にこのような大きな力が作用しても、
図1の説明と同様その構造が強固で確実に固定することができれば、原理的には問題はない。
しかしながら、微小な変位(特に上下方向)をも許さない極めて剛性の高い架台5を作ることは、現実の使用環境においては実現できないことが多い。前記のように重心点をよく合わせられれば、
図4-2のようにベクトル[E]が防振バネ20の変位し易い方向になるのでピッチングの問題は殆ど表れないが、現実には正しく一致させるのは難しいことが多い。したがって、限られた剛性の架台5に取り付けて、かつベクトル[G]の成分が多かれ少なかれ発生する状況での運転は避けられない。
【0020】
このような条件下で運転をする場合、
図2の従来例ではどのような挙動をするか以下に説明する。
【0021】
先ず
図4-Aと4-1のように[G]の力は防振バネ20の板厚直角方向に伝わり、取付け台4を経て架台5に到達する。
架台5は力[G]に対応しその強度に応じた変位を起こす。
強度が十分であれば問題は起こらないが、僅かな変位でも部品Wの搬送に悪い影響を与える。
ここまで述べた変位などは静的な説明をしているが、実際は振動装置なので、より複雑で動的な問題を引き起こす。
[G]というプッシュ・プルの交番的な作用力によって架台5は単純な静的変位ではなく、その近傍の剛性や質量によって決まる様々な周波数成分を持つ振動的変位を発生する。
この変位は微小ながら防振バネ20の板厚直角方向に先程の力[G]と同様その逆の方向に伝達され、結果、第2振動体2を揺さぶることになる。これは様々な周波数・波形・位相の成分を含んでいるので、第2振動体2に伝わることで第1振動体1の振動方向に重たんされて部品Wの搬送状態を悪化させる。
このように、上記条件下での
図2の従来例では、架台5の強度の影響をまともに受け、
図2の振動系との相互作用も絡んで、その対策は複雑で対処し難いものとなる。
【0022】
すなわち、
図2に示したような、二つの質量体としての第1振動体(1)と第2振動体(2)とを備え、部品(W)を搬送する搬送路(3)を有する第1振動体(1)と、第2振動体(2)との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体(10)によって連結し、前記第2振動体(2)と、固定された取付け台(4)との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体(20)によって連結した振動式直線搬送装置においては、次の課題1,2を解決することが要請される。
【0023】
課題1.取付け台ないし架台から振動式直線搬送装置への、悪影響を及ぼす振動による
ピッチングを生じにくくすること
課題2.振動式直線搬送装置から取付け台ないし架台への振動伝達を生じにくくするこ
と
【0024】
従来、例えば特許文献1に見られるような技術が知られている。
【0025】
<特許文献1>特開2021-109721号公報
特許文献1には、
「大幅なコストアップや構造の複雑化を招来することなく、ピッチングを容易に調整可能な防振構造を有する振動搬送装置を提供する」ことを課題とし、
「振動によってリニア搬送面上の搬送対象物Wを搬送させる振動搬送装置Xであって、リニア搬送面を有する第1質量体1と、第1質量体1に対して逆位相で振動する第2質量体2と、第1質量体1と第2質量体2を接続する第1弾性体3と、基台4と第1弾性体3を接続する第2弾性体5とを備え、第2弾性体5の水平方向の弾性係数と第2弾性体5の鉛直方向の弾性係数に関して、少なくとも第2弾性体5の鉛直方向の弾性係数を独立して変更可能に構成した」
振動搬送装置が記載されている(同文献要約欄)。
【0026】
同文献0022段落には、
「 本発明によれば、基台と第2質量体又は第1弾性体を接続する第2弾性体に着目し、第2弾性体の鉛直方向の弾性係数を第2弾性体の水平方向の弾性係数に影響を与えることなく独立して変更可能な構成とすることによって、ピッチングを容易に調整可能な防振構造を有する振動搬送装置を提供することができる。」
と記載されている。
しかし、同文献には、「取付け台ないし架台から振動式直線搬送装置への、悪影響を及ぼす振動による
ピッチングを生じにくくすること」に関しては記載されていない。
また、第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数と水平方向のバネ定数との関係についての考察もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明が解決しようとする課題は上述した通りであり、
二つの質量体としての第1振動体と第2振動体とを備え、部品を搬送する搬送路を有する第1振動体と、第2振動体との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体によって連結し、前記第2振動体と、固定された取付け台との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体によって連結した振動式直線搬送装置において、
取付け台ないし架台から振動式直線搬送装置への、悪影響を及ぼす振動による
ピッチングを生じにくくすること(課題1)
振動式直線搬送装置から取付け台ないし架台への振動伝達を生じにくくするこ
と(課題2)
にある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために本発明の振動式直線搬送装置は、
二つの質量体としての第1振動体と第2振動体とを備え、部品を搬送する搬送路を有する第1振動体と、第2振動体との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体によって連結し、前記第2振動体と、固定された取付け台との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体によって連結した振動式直線搬送装置において、
前記第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上としたことを特徴とする。
【0030】
この振動式直線搬送装置によれば、前記第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍未満となっているので、次のような作用効果が得られる。
二つの質量体としての第1振動体と第2振動体とを備え、部品を搬送する搬送路を有する第1振動体と、第2振動体との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体によって連結し、前記第2振動体と、固定された取付け台との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体によって連結した振動式直線搬送装置(以下、本願基本構成装置ともいう)を用いて本願発明者が種々実験を行った結果、次のことが分かった。
【0031】
前記第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍以上であると、第2振動体の振動の鉛直方向成分(鉛直方向における変位)が第2の板状弾性体で吸収されにくくなり、取付け台ないし架台(以下単に取付け台ともいう。)に伝達されやすくなる。したがってまた逆に、取付け台からの反作用が第2の板状弾性体を介して第2振動体に伝達されやすくなる。このようにして取付け台からの悪影響が第2振動体に生じ、これら第2振動体及び取付け台の振動は複雑化するとともに、結果としてピッチングも生じやすくなる。
【0032】
これに対し、
前記第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍未満であると、第2振動体の振動の鉛直方向成分が第2の板状弾性体で吸収されやすくなり、取付け台に伝達されにくくなる。したがってまた、取付け台からの反作用も生じにくくなり、取付け台ないし架台からの悪影響が生じにくくなる。結果としてピッチングも生じにくくなる。
【0033】
本発明の振動式直線搬送装置によれば、前記第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍未満となっているので、第2振動体の振動の鉛直方向成分が第2の板状弾性体で吸収されやすくなり、取付け台に伝達されにくくなるので、取付け台ないし架台からの悪影響が生じにくくなるとともに、ピッチングも生じにくくなる。
【0034】
なお、前記第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の2倍未満であると、取付け台による第2の板状弾性体を介した第2振動体の支持強度が小さくなって、振動式直線搬送装置として成立しにくくなるが、本発明によれば、第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の2倍以上となっているので、振動式直線搬送装置の成立性が損なわれることもない。
【0035】
この振動式直線搬送装置においては、
前記第2の板状弾性体は、
上下に分割された2つの板状弾性分割体と、
これら板状弾性分割体の間に挟まれた状態で設けられ、相対して平行する2つの平行面を有する矩形部材とを備え、
前記板状弾性分割体のうち一方の板状弾性分割体は、その下部が前記矩形部材の一方の平行面に接合され、上部が前記第2振動体に締結され、
前記板状弾性分割体のうち他方の板状弾性分割体は、その上部が前記矩形部材の他方の平行面に接合され、下部が前記取付け台に締結されている構成とすることができる。
【0036】
このように構成すると、矩形部材を挟む状態で矩形部材の両側に配置された板状弾性分割体に鉛直方向の力が作用すると、その力は矩形部材を回動させるように作用し、この回動力は矩形部材の両側に配置された板状弾性分割体を板厚方向に曲げるように作用する。別言すれば、板状弾性分割体に作用する鉛直方向の力は、矩形部材によって、板状弾性分割体を板厚方向に曲げる力に変換される。
このため、第2の板状弾性体を全体としてみれば、鉛直方向におけるバネ定数を低減させることが容易になる。
結果として、この構成によれば、第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満とすることが容易になる。
【0037】
この振動式直線搬送装置においては、
前記第2の板状弾性体は、正面視で、上下に取付部を有し、これら取付部の間にクランク状の曲げ部を有する一対のクランク状弾性体が点対称状に組み合わされた組立体で構成され、
この組立体の上部取付部が、前記第2振動体に締結され、下部取付部が前記取付け台に締結されている構成とすることができる。
【0038】
このような構成によれば、クランク状弾性体に鉛直方向の力が作用すると、クランク状曲げ部が容易に変形し得るため、鉛直方向におけるバネ定数を低減させることが容易になる。
したがって、この構成によれば、第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満とすることが容易になる。
しかも、一対のクランク状弾性体が点対称状に組み合わされているので、前後方向から見てのローリング剛性を向上させることが出来る。
【0039】
この振動式直線搬送装置においては、
前記第2の板状弾性体は、正面視で、一方が横方向に伸び他方が縦方向に伸びる上下の取付部の間がL字状に曲げられた全体としてL字状の弾性体で構成され、
このL字状弾性体の一方の取付部が前記第2振動体の締結部に締結され、他方の取付部が前記取付け台の締結部に締結され、
上記締結部のうち横方向に伸びる取付部の締結部には、横方向に伸びる取付部の上下方向における撓みを部分的に許容する隙間が設けられている構成とすることができる。
【0040】
このような構成によれば、L字状弾性体に鉛直方向の力が作用すると、水平部が容易に上下方向に変位し得るため、鉛直方向におけるバネ定数を低減させることが容易になる。
したがって、この構成によれば、第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満とすることが容易になる。
また、第2の板状弾性体は、一枚のL字状弾性体で構成可能であるので、構造の単純化および部品点数の削減が可能となる。
【0041】
また、上記課題を解決するために本発明の振動式直線搬送装置は、
二つの質量体としての第1振動体と第2振動体とを備え、部品を搬送する搬送路を有する第1振動体と、第2振動体との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体によって連結し、前記第2振動体と、固定された取付け台との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体によって連結した振動式直線搬送装置において、
前記取付け台における第2の板状弾性体との結合部を、取付け台の固定対象から離間させ、取付け台の固定対象への固定部と前記結合部との間に、取付け台自体の上下方向への撓みを許容する可撓部を設け、
前記第2の板状弾性体および前記取付け台の可撓部の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上としたことを特徴とする。
【0042】
このような構成によっても、前述した、第2の板状弾性体の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍未満となっていることによる効果と同様の効果が得られる。
【0043】
この振動式直線搬送装置においては、
前記第2振動体と取付け台との間に、前記第2の板状弾性体の塑性変形を防止するストッパー部材が設けられている構成とすることができる。
【0044】
このように構成すると、鉛直方向における過荷重による第2の板状弾性体の永久変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】従来の一般的な振動式直線搬送装置の第1例を示す図。
【
図4】従来の一般的な振動式直線搬送装置の問題点の説明図。
【
図5】本発明に係る振動式直線搬送装置の一実施の形態の構造及び作用説明図。
【
図7】さらに他の実施の形態の要部および作用の説明図。
【
図9】実験に用いた振動式直線搬送装置LCの実施例を示す図。
【
図10】実験に用いた第2の板状弾性体20の一例を示す図。
【
図15】第2の板状弾性体20における矩形部材23の厚さTとの鉛直方向バネ定数との関係を示すグラフ。
【
図16】矩形部材23の厚さTとバネ定数比(鉛直/水平)との関係を示すグラフ。
【
図17】
図6に示した第2の板状弾性体20の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明に係る振動式直線搬送装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0047】
図5,
図6,
図7,
図8に示す振動式直線搬送装置は、いずれも、
二つの質量体としての第1振動体1と第2振動体2とを備え、部品Wを搬送する搬送路3を有する第1振動体1と、第2振動体2との間を、少なくとも2カ所(図示のものは前後(図において左右)2カ所であるが3カ所以上とすることも可能である)で第1の板状弾性体10によって連結し、前記第2振動体2と、架台5に固定された取付け台4との間を少なくとも2カ所(図示のものは前後(図において左右)2カ所であるが3カ所以上とすることも可能である)で第2の板状弾性体20によって連結した振動式直線搬送装置LCであって、
前記第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上としたことを特徴としている。
【0048】
このような振動式直線搬送装置LCによれば、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍未満となっているので、次のような作用効果が得られる。
【0049】
二つの質量体としての第1振動体1と第2振動体2とを備え、部品Wを搬送する搬送路3を有する第1振動体1と、第2振動体2との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体10によって連結し、第2振動体2と、固定された取付け台4との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体20によって連結した振動式直線搬送装置を用いて本願発明者が種々実験(実験例については後述する)を行った結果、次のことが分かった。
【0050】
第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍以上であると、第2振動体2の振動の鉛直方向成分(鉛直方向における変位)が第2の板状弾性体20で吸収されにくくなり、取付け台4ないし架台5(以下単に取付け台4ともいう。)に伝達されやすくなる。したがってまた逆に、取付け台4からの反作用が第2の板状弾性体20を介して第2振動体2に伝達されやすくなる。このようにして取付け台4からの悪影響が第2振動体2に生じ、これら第2振動体2及び取付け台4の振動は複雑化するとともに、結果としてピッチングも生じやすくなる。
【0051】
これに対し、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍未満であると、第2振動体2の振動の鉛直方向成分が第2の板状弾性体20で吸収されやすくなり、取付け台4に伝達されにくくなる。したがってまた、取付け台4からの反作用も生じにくくなり、取付け台4ないし架台からの悪影響が生じにくくなる。結果としてピッチングも生じにくくなる。
【0052】
このように、本発明の振動式直線搬送装置によれば、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍未満となっているので、第2振動体2の振動の鉛直方向成分が第2の板状弾性体20で吸収されやすくなり、取付け台4に伝達されにくくなるので、取付け台4ないし架台からの悪影響が生じにくくなるとともに、ピッチングも生じにくくなる。
【0053】
なお、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の2倍未満であると、取付け台4による第2の板状弾性体20を介した第2振動体2の支持強度が小さくなって、振動式直線搬送装置として成立しにくくなるが、本発明によれば、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の2倍以上となっているので、振動式直線搬送装置LCの成立性が損なわれることもない。
【0054】
以下、各実施の形態の振動式直線搬送装置LCについて説明する。
なお、従来型の防振バネでは板厚直角方向に大きな剛性(「0019」段落で述べた通り、バネ定数比は2万倍以上)があり、防振バネの実装状態での鉛直方向と水平方向のバネ定数比は約30 倍以上である。これに対し、以下に説明する実施の形態では、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満に引き下げることが出来る。
【0055】
図5に示す振動式直線搬送装置LCは、その第2の板状弾性体20が、
図5-1、
図5-5に示すように、
上下に分割された2つの板状弾性分割体21,22と、
これら板状弾性分割体21,22の間に挟まれた状態で設けられ、相対して平行する2つの平行面23a、23bを有する矩形部材23とを備え、
板状弾性分割体21,22のうち一方の板状弾性分割体21は、その下部21aが矩形部材23の一方の平行面23aに接合され、上部21bが第2振動体2に締結され、
板状弾性分割体のうち他方の板状弾性分割体22は、その上部22bが矩形部材23の他方の平行面23bに接合され、下部22aが取付け台4に締結されている。
【0056】
このような装置LCによれば、矩形部材23を挟む状態で矩形部材23の両側に配置された板状弾性分割体21,22に対し、例えば
図5-2,
図5-3に示すように、鉛直方向の力FVが作用すると、その力は矩形部材23を回動(
図5-2では反時計方向に,
図5-3では時計方向に回動)させるように作用し、この回動力FRは矩形部材23の両側に配置された板状弾性分割体21,22を板厚方向に曲げるように作用する(曲げられた部位を符号21c、22cで示す)。別言すれば、板状弾性分割体21,22に作用する鉛直方向の力FVは、矩形部材23によって、板状弾性分割体21,22を板厚方向に曲げる力(FR)に変換される。
【0057】
このため、第2の板状弾性体20を全体としてみれば、鉛直方向におけるバネ定数を低減させることが容易になる。
結果として、この構成によれば、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満とすることが容易になる。
【0058】
また、矩形部材23の厚さT(
図5-1)を変えることで鉛直方向のバネ定数を必要な値に細かく調整できる(
図16参照)。
この実施の形態では、
図5-1に示す構成の防振バネ20を前後に計2組備えているが、一方のみに上記の構成を適用しても良い。
【0059】
なお、例えば
図5-4に示すように、第2の板状弾性体20に対して水平方向の力FHが作用すると、矩形部材23による連結部は回動(図示の場合時計方向に回動)し、それに応じて板状弾性分割体21,22が板厚方向に曲がる(曲がった部位を符号21c、22cで示す)。
【0060】
図5-1、
図5-5において、24bはボルトであり、板ナット24nおよび押さえ金24cを介し矩形部材23に対して板状弾性分割体21,22を締結固定している。
2bは押さえ金2cを介して板状弾性分割体21の上部21bを第2振動体2に締結固定しているボルト、4bは押さえ金4cを介して板状弾性分割体22の下部22aを取付け台4に締結固定しているボルトである。
【0061】
図5-1、
図5-5に示す構造によると、さらに次のような効果が得られる。
・矩形部材23と板状弾性分割体21,22とをボルト24bで共締めしているシンプルな構造のため、規格の鋼材に対してわずかな加工のみで成り立ち、安価に製造が可能である。
・矩形部材23と板状弾性分割体21および/または22との間にシムを入れることで垂直方向のばね定数を容易に調整できる。(垂直方向のばね定数と矩形部材23の厚さTとは反比例の関係にあることが本願発明者の実験により判明している)
・矩形部材23と板状弾性分割体21および/または22との間にシムを入れても水平方向のばね定数にはほぼ影響がないことが本願発明者の実験により判明しているため、垂直方向のばね定数と合わせてばね定数比の設定が容易である。
【0062】
図6に示す振動式直線搬送装置LCは、その第2の板状弾性体20が、
図6-1にも示すように、正面視で、上下に取付部25a(25b)、25b(25a)を有し、これら取付部25a(25b)、25b(25a)の間にクランク状の曲げ部25cを有する一対のクランク状弾性体25が点対称状に組み合わされた組立体20Aで構成され、
この組立体20Aの上部取付部20A1が、第2振動体2に締結され、下部取付部20A2が取付け台4に締結されている。
【0063】
このような構成によれば、クランク状弾性体25に鉛直方向の力が作用すると、クランク状曲げ部25cが容易に変形し得るため、鉛直方向におけるバネ定数を低減させることが容易になる。
【0064】
したがって、この構成によれば、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満とすることが容易になる。
【0065】
図6-1に示す水平部分の長さ[J]を適宜に設計する(バネ定数は他の条件が同じなら[J]の3乗に逆比例する)ことで必要な鉛直方向のバネ定数を得ることができ、第2振動体2の鉛直方向の変位を効果的に逃がすことが出来る。
構造が単純で要素部品も少なくて済むので実施例1よりもローコストで製作できる。
図6では本発明の防振バネ20を前後に2組備えているが、一方のみに適用しても良い。
【0066】
図6に示した振動式直線搬送装置LCでは、一対のクランク状弾性体25を点対称状に組み合わせて組立体20A(第2の板状弾性体20)を構成したが、第2の板状弾性体20は、いずれか一方のクランク状弾性体25で構成することもできる。
【0067】
このような構成によっても、クランク状弾性体25に鉛直方向の力が作用すると、クランク状曲げ部25cが容易に変形するため、鉛直方向におけるバネ定数を低減させることが容易になる。
この場合、第2の板状弾性体20は、一枚のクランク状弾性体25で構成可能であるので、構造の単純化および部品点数の削減が可能となる。
【0068】
この実施の形態では、
図6-1に示す構成の防振バネ20を前後に計2組備えているが、一方のみに上記の構成を適用しても良い。一枚のクランク状弾性体25で構成する場合も同様であり、前後いずれか一方のみに適用しても良い。
【0069】
図7に要部のみを示す振動式直線搬送装置LCは、その第2の板状弾性体20が、正面視で、一方が横方向に伸び他方が縦方向に伸びる上下の取付部26h、26vの間がL字状に曲げられた全体としてL字状の弾性体26で構成され、
このL字状弾性体26の一方の取付部(図示のものは26h)が第2振動体2の締結部(2c1、2c2)に締結され、他方の取付部(図示のものは26v)が取付け台4の締結部(4b、4c)に締結され、
上記締結部のうち横方向に伸びる取付部26hの締結部には、横方向に伸びる取付部26hの上下方向における撓み(一例を
図7-1,
図7-2においてhで示す)を部分的に許容する隙間27が設けられている。
【0070】
このような構成によれば、L字状弾性体26に鉛直方向の力が作用すると、水平部26hが容易に上下方向に変位し得るため、鉛直方向におけるバネ定数を低減させることが容易になる。
【0071】
したがって、この構成によれば、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満とすることが容易になる。
また、第2の板状弾性体20は、一枚のL字状弾性体26で構成可能であるので、構造の単純化および部品点数の削減が可能となる。
【0072】
図示のものは、水平部26hが第2振動体2に締結され、垂直部26vが取付け台4に締結されているが、水平部26hを取付け台4に、垂直部26vを第2振動体2に締結しても良い。
【0073】
このL字状弾性体26は、装置の前後両方に適用しても良いし、いずれか一方にのみ適用しても良い。
【0074】
この実施の形態における水平部26hは、第1、第2押さえ金2c1,2c2とボルト2bで第2振動体2に締結されている。
隙間27は、第1、第2押さえ金2c1,2c2の端部にそれぞれ形成された正面視で滑らかに円弧状に湾曲する湾曲面2d1,2d2によって形成されている。
【0075】
このように構成すると、例えば
図7-2に示すように第2振動体2が下がる時、第1押さえ金2c1の湾曲面2d1が次第に防振バネ20の屈曲部に向かって接触位置が変わるようにして接触するので、防振バネ20の屈曲部からのスパンが連続的に短くなり、鉛直方向のバネ定数は連続的に大きくなっていく。反対に第2振動体2が上がる時も第2押さえ金2c2によって同じことが起こる。
【0076】
このように鉛直方向のバネ定数を変化させるのは、鉛直方向に大きな変位が生じた時の剛性を上げたいからである。
鉛直方向のバネ定数はできるだけ小さくした方が本発明の目的とする防振支持構造が得られ、架台5からの影響度を小さくすることができる。
【0077】
しかしながら、鉛直方向のバネ定数を小さくした場合において、仮に何らの方策も講じないとしたならば、この装置を輸送または手入れをする際に、大きな力が作用すると、防振バネ20が永久変形してしまうおそれがある。
【0078】
これに対し、この実施の形態によれば、装置を輸送または手入れをする際に大きな力が作用したとしても、上記構成によって防振バネ20の剛性が上がるため、防振バネ20が永久変形してしまうおそれが低減される。
【0079】
なお、振動式直線搬送装置としての通常の運転時は第2振動体2の上下の振幅量は非常に小さいので、外力による大変形の時のみ剛性を上げることが出来るこのような構造が適している。
【0080】
図8に示す振動式直線搬送装置LCは、取付け台4における第2の板状弾性体20との結合部(2b、2c)を、取付け台4の固定対象である架台5から離間させ、取付け台4の固定対象5への固定部4dと前記結合部(2b、2c)との間に、取付け台4自体の上下方向への撓みを許容する可撓部4fを設け、
第2の板状弾性体20および取付け台4の可撓部4f(第2の板状弾性体20と取付け台4の可撓部4fとからなる弾性体)の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上としたものである。
【0081】
このような構成によっても、前述した、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数が水平方向のバネ定数の14倍未満となっていることによる効果と同様の効果が得られる。
【0082】
以上、
図5,
図6,
図7,
図8に示したようないずれの振動式直線搬送装置LCによっても、さらに次のような作用効果(a)(b)(c)(d)(e)が得られる。
【0083】
(a)
図3に示した防振ゴム20Gによって防振した装置の場合と同様に振動の反射、伝達を遮断することができる。
これによって、架台5の剛性・強度の影響を受けにくくなって、広範囲な取付け条件下で運転できるようになり、解明の難しい相互作用に煩わされることがなくなる。
【0084】
(b)板バネによる防振であるので、防振ゴム20Gの弱点である全方向への柔らかさによる搬送路3の「定位」(位置ずれの起き難さ)不足を招くこともない。
なお、本願における「定位」の意義は次の通りである。
本発明にかかる振動式直線搬送装置は、運転時、常に振動しているので、接続部位を他の装置と結合することは出来ず、一定の空隙を維持することが必須の条件となる。このような条件の中で本装置の搬送路3に部品Wが流入する上流側と、搬送路3から他の装置に流出する下流側との各接続部位における3次元的な位置関係の状態を「定位」という。設置(搬出から設置までの運送ステージも含む)から運用の全期間を通じて位置関係の変位(ズレ)が少ないものを「定位が良い」と表現している。
【0085】
(c)上記実施の形態における防振バネ20は、取付け面がすべて水平に対し直角方向となっているので、加工が容易で高精度を維持し易く、結果、加工コストを安くできる。また、
図5に示した実施の形態においては、中間に挟む矩形部材23も直交断面(直方体)なので同じ理由で加工コストを下げることができる。
【0086】
(d)材質が金属で構成できるため、耐熱、耐寒、耐油、耐久性に優れる。
【0087】
(e)防振ゴムは引張方向に使用することが推奨されていないが、本発明は引張方向に使用しても問題なく、装置を天井に吊って使用することが可能となる。
【0088】
以上のような振動式直線搬送装置LCにおいては、例えば
図5に仮想線で示すように、第2振動体2と取付け台4との間に、第2の板状弾性体20の塑性変形を防止するストッパー部材30が設けられている構成とすることもできる。
【0089】
このように構成すると、鉛直方向における過荷重による第2の板状弾性体20の永久変形を防止することができる。
【0090】
ストッパー部材30は、取付け台4に固定し、第2振動体2の底面と僅かな間隙を保つボルト等、あるいは取付け台4と第2振動体2を連結する防振ゴム等である。
ストッパー部材30は、第2振動体2に固定し、取付け台4の上面と僅かな間隙を保つ構成としてもよい。
【0091】
以上、4つの実施の形態について説明したが、以下、それらについてまとめる。
振動式直線搬送装置には、振動系の構成と防振支持の方法によって、次の3つのタイプがある。
図1に示したような、いわゆる固定型で防振機構が無く一つの質量体のみを振動させるもの
図2に示したような、板バネ10による防振機構を有するもの
図3に示したような、板バネ10の替わりに防振ゴム20Gによる防振機構を採用したもの
【0092】
従来例として挙げた
図2の板バネ防振タイプはその得失が他の2タイプを折衷したものであり、架台5等への振動の漏洩(伝達)は固定型より少ないが、防振ゴム型より劣る。なお「定位」の良否は固定型に近く、防振ゴム型よりはるかに良い。板バネ防振タイプは他の2方式の弱点を埋める良い方式と思われるが、実際には特殊な条件、すなわちピッチング運動を起こす大元である重心位置のずれが僅少で、防振バネ20を通じた取付け台4への振動の漏洩が少ない場合のみ機能する。本方式が普及しないのはこれが一因となっている。
したがって、条件が悪いときは
図2の従来型は結局
図1の固定型と同等になり、固定型と同じ問題を抱える。
【0093】
このことに鑑み本発明は防振バネ20の鉛直方向のバネ定数を下げることで実効的かつ効果的な対策を施している。
これによって広範囲な搬送路3の設計自由度(質量、長さ、重心位置など)を確保し、かつ前述の「定位」を悪化させることなく性能を確保し、架台5等取付け部に対する剛性、質量の増強をしなくともリーズナブルな構造で実用可能とした。
これによって従来例では中・小型の機種にしか適用できなかったより大きなサイズの機種にも適用可能となった。
【0094】
また、架台5側から見た場合、振動の伝達が少ない(特に垂直方向への有害な振動)分、騒音の発生が抑制され、同種の振動装置が設置されている場合、電源OFFの状態にもかかわらず振動してしまう現象を軽減し、意図しないワーク搬送を抑制することが可能である。
【0095】
以下、実施例及び実験例について説明する。
【0096】
図9は、実験に用いた振動式直線搬送装置LCの実施例を示す図である。
この振動式直線搬送装置LCの主な諸元は以下の通りである。
搬送路3を含む第1振動体1の質量=3720g
振動付与機構6を含む第2振動体2の質量=3190g
第1の板状弾性体10の質量=215g(前後合計)
第1の板状弾性体10のバネ定数=614N(前後合計)
第1の板状弾性体10の取付角度=72°
架台5に固定した取付け台4の質量=1497g(なお、取付け台4は架台5に固定されているため、取付け台4の質量は実験結果には影響を与えない)
第2の板状弾性体20の構造=
図5にて説明した構造
振動付与機構6の構造=「電磁マグネット(コイル)に交流電圧を加え、鉄芯に吸引力を周期的に作用させることで振動を発生させる構造。」(一般的には電磁マグネットは第2振動体2、鉄芯は第1振動体1に取り付けられており、本実施例で使用している構造も同様である。)
搬送対象である部品W=M8用ワッシャ(外径φ17.6mm,内径φ8.9mm,厚さ1.6mm)
【0097】
上記のような振動式直線搬送装置LCにおいて、第2の板状弾性体20として、
図10~
図13に示す通りの第2の板状弾性体20をそれぞれ取付け、振動式直線搬送装置LCを作動させて部品Wを搬送した。なお、
図10,
図11においてhは剛性を弱めるための開口である。
その結果、
図10,
図11,
図12に示す第2の板状弾性体20(バネ定数比=鉛直/水平=3.21、同7.49,同8.95)を用いた場合には、ピッチングは生じず、部品Wを搬送することができたが、
図13に示す第2の板状弾性体20(同14.0)を用いた場合にはピッチングが発生した。
【0098】
図10~
図13に示す第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数は、
図14に示すバネ定数測定用装置50に錘W(約1175g)を載せ、第2振動体2の両端の変位を変位センサ51,51で測定することで測定し、水平方向のバネ定数は同装置を90度回転させて変位を測定することで測定した。
【0099】
図15は、上記装置にて測定した、第2の板状弾性体20における矩形部材23(スペーサ)の厚さTとの鉛直方向バネ定数との関係を示すグラフ、
図16は矩形部材23(スペーサ)の厚さTとバネ定数比(鉛直/水平)との関係を示すグラフである。
【0100】
図15における「y」は鉛直方向のバネ定数、
図16における「y」はバネ定数比である。
図15,
図16において、「R2」は決定係数であり、数値の基準はないが、決定係数「R2」が0.95以上であり、十分に強い相関があると言える。
【0101】
ここでの数値は、反比例の関係になる。数値そのものは今回の装置の寸法に限定された値であるが、反比例の関係自体は上記実施の形態の構造であれば普遍性があると言える。この関係を基に、
図5-1、
図5-5を参照して説明した通りシムを入れることで、鉛直方向のバネ定数を予測して調整することが可能となる。
【0102】
図17は、
図6に示した第2の板状弾性体20の具体例を示す図である。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
例えば、
図7における隙間は弾性部材(例えばゴム)で埋めてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1: 第1振動体
2: 第2振動体
3: 搬送路
10: 第1の板状弾性体
20: 第2の板状弾性体
【要約】
【課題】二つの質量体としての第1振動体と第2振動体とを備え、部品を搬送する搬送路を有する第1振動体と、第2振動体との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体によって連結し、第2振動体と、固定された取付け台との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体によって連結した振動式直線搬送装置において、ピッチングが生じにくくすること、および取付け台ないし架台からの悪影響が生じにくくすること。
【解決手段】二つの質量体としての第1振動体1と第2振動体2とを備え、部品Wを搬送する搬送路3を有する第1振動体1と、第2振動体2との間を、少なくとも2カ所で第1の板状弾性体10によって連結し、第2振動体2と、固定された取付け台4との間を少なくとも2カ所で第2の板状弾性体20によって連結した振動式直線搬送装置において、第2の板状弾性体20の鉛直方向のバネ定数を水平方向のバネ定数の14倍未満2倍以上とした。
【選択図】
図5