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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】植物ヘテロシスの利用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20250228BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20250228BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20250228BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20250228BHJP
   A01H 6/46 20180101ALI20250228BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20250228BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
A01H1/00 A ZNA
A01H5/00 A
A01H5/10
A01H6/46
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/29
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020556295
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2019077154
(87)【国際公開番号】W WO2019196576
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】201810325528.4
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811205889.1
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520392317
【氏名又は名称】チャイナ ナショナル ライス リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ワン コージエン
(72)【発明者】
【氏名】ワン チュン
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】長井 啓子
【審判官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第17/161264号(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0298507(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0090099(US,A1)
【文献】PLoS Biology, vol.7, issue6, e1000124
【文献】Science, vol.331, pp.876 (2011)
【文献】Cell Research, 2016, 発行日, 26, 1242-1254
【文献】NATURE, 2017, 発行日, 542, 105-109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00, A01H
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物においてヘテロシスを維持する方法であって
伝子工学技術を利用して、雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、前記雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を得るステップS1と、
遺伝子工学技術を利用して、MTL遺伝子をノックアウトし、前記雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子の種子又は植物体への発達を誘導するステップS2と、を含み、
前記植物は、水稲、トウモロコシ又はトマトであり、
前記ステップS1は、遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質の遺伝子ノックアウト又はサイレンシングし、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換することを含み、
前記植物が水稲である場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、PAIR1タンパク質、及びREC8タンパク質を含み、
前記植物がトウモロコシである場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、PAIR1タンパク質、及びREC8タンパク質であり、
前記植物がトマトである場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、SPO11タンパク質、及びREC8タンパク質である、ことを特徴とする植物ヘテロシスの維持方法。
【請求項2】
前記ステップS1は、雑種を準備し、遺伝子工学技術を利用して、雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を得ることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップS1は、遺伝子工学技術を利用して、雑種の親を遺伝子ノックアウト又は遺伝子サイレンシングし、次に、親同士のハイブリッドにより雑種を取得し、さらに、生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換された雑種配偶子を得ることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記植物が水稲である場合、前記タンパク質は、SEQ ID NO:26に示されるOSD1タンパク質、SEQ ID NO:13に示されるPAIR1タンパク質、及びSEQ ID NO:25に示されるREC8タンパク質を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記MTL遺伝子でコードされたMTLタンパク質は、SEQ ID NO:29に示されるMTLタンパク質である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
物にヘテロシスを維持させるキットであって、
植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得るベクター又は試薬と、配偶子を種子又は植物体へ発達させるベクター又は試薬と、を含み、
前記配偶子を種子又は植物体へ発達させるベクター又は試薬は、MTL遺伝子のノックアウトに用いられるベクター又は試薬を含み、
前記植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得るベクター又は試薬は、遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質を遺伝子ノックアウト又は遺伝子サイレンシングし、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換するベクター又は試薬であり、
前記植物が水稲である場合、前記ベクター又は試薬は、遺伝子工学技術を利用して、OSD1タンパク質、PAIR1タンパク質、及びREC8タンパク質の遺伝子ノックアウト又はサイレンシングしコードするために用いられるベクター又は試薬を含み、
前記植物がトウモロコシである場合、前記ベクター又は試薬は、遺伝子工学技術を利用して、OSD1タンパク質、PAIR1タンパク質、及びREC8タンパク質の遺伝子ノックアウト又はサイレンシングしコードするために用いられるベクター又は試薬を含み、
前記植物がトマトである場合、前記ベクター又は試薬は、遺伝子工学技術を利用して、OSD1タンパク質、SPO11タンパク質、及びREC8タンパク質の遺伝子ノックアウト又はサイレンシングしコードするために用いられるベクター又は試薬を含む、ことを特徴とするキット。
【請求項7】
植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得る前記ベクター又は試薬は、部位特異的突然変異誘発のベクター又は試薬である、ことを特徴とする請求項に記載のキット。
【請求項8】
前記部位特異的突然変異誘発は、CRISPR/Cas遺伝子編集技術、CRISPR/Cpf1遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術、ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子編集技術、又はZFN遺伝子編集技術を含み、
前記遺伝子工学技術は、遺伝子組換え技術による遺伝子の遺伝子サイレンシングの誘導を含む、ことを特徴とする請求項に記載のキット。
【請求項9】
前記植物が水稲である場合、前記タンパク質は、SEQ ID NO:26に示されるOSD1タンパク質、SEQ ID NO:13に示されるPAIR1タンパク質、及びSEQ ID NO:25に示されるREC8タンパク質を含む、ことを特徴とする請求項に記載のキット。
【請求項10】
前記MTL遺伝子でコードされたMTLタンパク質は、SEQ ID NO:29に示されるMTLタンパク質である、ことを特徴とする請求項に記載のキット。
【請求項11】
請求項~1のいずれか1項に記載のキットを用いて産生する植物であって、前記植物の生殖細胞の減数分裂は有糸分裂と類似したものに変換され、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を産生することができ、前記植物は水稲、トウモロコシ又はトマトである、ことを特徴とする植物。
【請求項12】
前記植物の配偶子は、植物体又は種子への発達が誘導され得る、ことを特徴とする請求項1に記載の植物。
【請求項13】
前記植物は、遺伝子工学改変植物であり、前記植物は、遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質の遺伝子ノックアウト又はサイレンシングすることにより、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換され、遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与する第4タンパク質に影響することで、配偶子の種子又は植物体への発達が誘導され、
前記植物が水稲である場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、PAIR1タンパク質、REC8タンパク質、及びMTLタンパク質を含み、
前記植物がトウモロコシである場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、PAIR1タンパク質、REC8タンパク質、及びMTLタンパク質であり、
前記植物がトマトである場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、SPO11タンパク質、REC8タンパク質、及びMTLタンパク質である、ことを特徴とする請求項1に記載の植物。
【請求項14】
植物においてヘテロシスを維持する方法であって、
遺伝子編集技術を利用して、F1世代で雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、F1世代の二倍体雌性配偶子を得るステップS1と、
遺伝子工学技術を利用して、MTL遺伝子をノックアウトし、前記雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子の種子又は植物体への発達を誘導するステップS2と、を含み、
前記植物は水稲、トウモロコシ又はトマトであり、
前記ステップS1は、遺伝子編集技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質の遺伝子ノックアウト又はサイレンシングし、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換することを含み、
前記植物が水稲である場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、PAIR1タンパク質、及びREC8タンパク質を含み、
前記植物がトウモロコシである場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、PAIR1タンパク質、及びREC8タンパク質であり、
前記植物がトマトである場合、前記タンパク質は、OSD1タンパク質、SPO11タンパク質、及びREC8タンパク質である、ことを特徴とする植物ヘテロシスの維持方法。
【請求項15】
前記ステップS1は、F1世代のハイブリッド種子を準備し、遺伝子編集技術を利用して、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、F1世代の二倍体雌性配偶子を得ることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップS1は、遺伝子編集技術を利用して、雑種の親を遺伝子ノックアウト又は遺伝子サイレンシングし、遺伝子ノックアウト又は遺伝子サイレンシングされた各遺伝子がいずれもヘテロ接合突然変異である植物体を取得し、次に、親同士のハイブリッドにより雑種を取得し、2つの親において遺伝子ノックアウト又は遺伝子サイレンシングされた複数の遺伝子がいずれもホモ接合突然変異である植物体を雑種からスクリーニングし、さらに、生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換されたF1世代の二倍体雌性配偶子を得ることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップS1は、遺伝子編集技術を利用して、REC8、OSD1、及びPAIR1遺伝子をノックアウトし、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換することを含む、ことを特徴とする請求項1又は1に記載の方法。
【請求項18】
前記雑種は、F1世代でREC8、OSD1、PAIR1、及びMTL遺伝子が同時にノックアウトされた、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術の分野に関し、具体的には、植物ヘテロシスの利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロシスは、生物界において、遺伝的基礎が異なる2つの品種間又は遺伝的基礎が近い2つの物種間でハイブリッドを行う場合、ハイブリッドの第1世代が、作柄、活力、適応性や産量などの形質に関しては親よりも優れるという現象である。ヘテロシスは、生物界で一般的な現象であり、農作物の育種及び生産に幅広く使用されている。
【0003】
農業生産へのヘテロシスの応用については、最も重要な工程の1つは、雑種を効率的に生産することである。トウモロコシなどの雌雄異株の作物では、手動(又は機械)で母本近交系の雄花を除去し、別の近交系(父本)の花粉を授粉することでハイブリッド種子を取得することができ、この場合、簡単に操作できるため、ヘテロシスが従来からトウモロコシへ利用されており、且つシステムが成熟しており、広範に利用されている。ただし、一部の親の開花期が一致しないことにより、畑でハイブリッド種子を大規模で生産できないという問題がある。
【0004】
雌雄同株の作物(たとえば水稲、小麦など)の場合は、母本の花粉を除去する手段によりハイブリッド種子を大規模で生産することができない。水稲を例とすると、現在、水稲についてこの問題を解決する手段は、花粉不稔特性のある植物体を母本として、別の品種を父本として花粉を提供してハイブリッドを行い、すなわち、雄性不稔を技術コアとするヘテロシス利用系が使用される。ここで、水稲ヘテロシスの利用には、2つの技術的経路があり、1つは、核細胞質相互作用花粉不稔を技術コアとする「三系法」ハイブリッド技術であり、もう1つは自然光の周期、温度により制御される光熱感受性細胞質雄性不稔を技術コアとする「二系法」ハイブリッド技術である。
【0005】
図1Aに示すように、「三系法」ハイブリッド技術では、核細胞質相互作用雄性不稔系を母本、維持系を父本として、不稔特性を維持した種子を大規模で繁殖し、不稔系を母本、回復系を父本として、花粉稔性を回復し且つヘテロシスを有するハイブリッド種子を大規模で生産し、このハイブリッド種子はハイブリッド稲の生産に用いられる。
【0006】
図1Bに示すように、「二系法」ハイブリッド技術では、同じ水稲株系は、一定の条件では花粉が稔性であり、この稔性を利用して不稔系種子を繁殖し、別の特定の条件では花粉が不稔であり、その不稔性を利用して父本とハイブリッドし、ハイブリッド種子を生産する。
【0007】
ハイブリッド水稲が雑種の一世代の優位性を利用しているので、以降の複数の世代には形質又は稔性の分離が発生し、このため、毎年種子を生産する必要があるため、多くの人的資源、物的資源や土地資源が無駄される。また、「三系法」は、回復・維持関係により制限されて、遺伝資源への利用率が低く、「二系法」は、自然温度・光の影響のため、不稔系を繁殖するときの産量が不安定であり、ハイブリッド種子の生産期間において、不稔系の近交・結実を低温で誘導することによりハイブリッド種子の純度が基準を満たさないというリスクがある。
【0008】
また、いくつかの関連文献においてヘテロシスの利用及び植物の生殖に関連する遺伝子が報告されており、たとえば、Turning rice meiosis into mitosis、(Cell Research(2016)26:1242-1254)には、アポミキシスの種子を用いてF1雑種の自己繁殖に優れた形質を維持させることができることが開示されており、ここで、外因的修飾によって発現させたCENH3遺伝子がハイブリッドにより導入されている。US 2014/0298507 A1には、アポミキシスの配偶子をクローン胚又は種子に変換することが開示されている。四川大学学報(自然科学版)、Vol.29 No.2 1992には、アポミキシスの植物育種への応用、及び細胞胚学の研究方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、雑種からクローン種子又は植物体を産生し、種子の生産効率を向上させる植物ヘテロシスの利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するために、本発明の一態様によれば、植物ヘテロシスの利用方法を提供する。該方法は、
遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を得るステップS1と、
遺伝子突然変異及び遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与するタンパク質に影響するステップS2と、を含み、かかるタンパク質はMTLタンパクである。
【0011】
さらに、遺伝子突然変異は、ランダム突然変異誘発と部位特異的突然変異誘発を含み、ランダム突然変異誘発は、化学的突然変異誘発、物理的突然変異誘発、及び生物学的突然変異誘発を含み、部位特異的突然変異誘発は遺伝子編集技術を含み、遺伝子編集技術は、CRISPR/Cas遺伝子編集技術、CRISPR/Cpf1遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術、ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子編集技術、及びZFN遺伝子編集技術を含み、遺伝子工学技術は、遺伝子組換え技術による遺伝子の特異的発現、異所性発現又は遺伝子サイレンシングの誘導を含む。
【0012】
さらに、ステップS1は、雑種を準備し、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を得ることを含む。
【0013】
さらに、ステップS1は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、雑種の親を編集し、次に、親同士のハイブリッドにより雑種を取得し、さらに、生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換された雑種配偶子を得ることを含む。
【0014】
さらに、ステップS1は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質を編集し、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換することを含み、タンパク質は第1タンパク質、第2タンパク質、及び第3タンパク質を含み、
第1タンパク質はDNA二本鎖切断の形成に関与するタンパク質であり、
SEQ ID NO:13に示されるPAIR1タンパク質と、PAIR1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:14に示されるPAIR2タンパク質と、PAIR2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:15に示されるPAIR3タンパク質と、PAIR3タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR3タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:16に示されるPRD1タンパク質と、PRD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:17に示されるPRD2タンパク質と、PRD2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:18に示されるSPO11-1タンパク質と、SPO11-1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-1タンパク質とは45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:19に示されるSPO11-2タンパク質と、SPO11-2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:20に示されるSDSタンパク質と、SDSタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSDSタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:21に示されるCRC1タンパク質と、CRC1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はCRC1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:22に示されるP31cometタンパク質と、P31cometタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はP31cometタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:23に示されるMTOPVIBタンパク質と、MTOPVIBタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTOPVIBタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:24に示されるDFOタンパク質と、DFOタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はDFOタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第2タンパク質は、減数分裂期の姉妹染色体間の接着の制御に関与し、
SEQ ID NO:25に示されるREC8タンパク質と、REC8タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はREC8タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第3タンパク質は、減数分裂の第2次分裂に関与し、
SEQ ID NO:26に示されるOSD1タンパク質と、OSD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はOSD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:27に示されるTAMタンパク質と、TAMタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTAMタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:28に示されるTDM1タンパク質と、TDM1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTDM1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれる。
【0015】
さらに、ステップS2は、遺伝子突然変異及び遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与するタンパク質に影響することで、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することを含む。
【0016】
さらに、ステップS2は、ほかの植物体の誘導花粉を授粉して、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することを含む。
【0017】
さらに、ステップS2は、物理的刺激、生物学的ストレス又は化学薬剤処理により、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することを含む。
【0018】
さらに、ステップS2は、葯培養又は花粉培養により、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することを含む。
【0019】
さらに、MTLタンパク質は、SEQ ID NO:29に示されるMTLタンパク質、MTLタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTLタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質である。
【0020】
さらに、植物は単子葉植物と双子葉植物を含む。
【0021】
さらに、植物は、水稲、トウモロコシ、モロコシ、アワ、大麦、小麦、ライ麦、エンバク、蕎麦、ハトムギ、サトウキビ、アスパラガス、筍、ニラ、ナガイモ、大豆、ジャガイモ、エンドウ、リョクトウ、アズキ、ソラマメ、ササゲ、インゲンマメ、レンズマメ、ツルマメ、ヒヨコマメ、キャッサバ、サツマイモ、アブラナ、綿、ビート、ナス、落花生、茶、ミント、コーヒー、ゴマ、ひまわり、トウゴマ、エゴマ、ベニバナ、トマト、トウガラシ、キュウリ、チンゲンサイ、レタス、ホウレンソウ、ニンニク、キャベツ、カラシナ、マコモ、ネギ、トウガン、ズッキーニ、ヘチマ、ハクサイ、ダイコン、タマネギ、スイカ、ブドウ、ニンジン、カリフラワー、カボチャ、タバコ、牧草、ネピアグラス、チカラシバ、スーダングラス、ラン、ユリ、チューリップ、及びウマゴヤシを含む。
【0022】
本発明の別の態様によれば、ヘテロシスを維持した植物又は種子を提供する。該植物又は種子は、上記のいずれかの方法によって製造される。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、植物にヘテロシスを維持させるためのキットを提供する。該キットは、植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得るベクター及び/又は試薬と、配偶子を種子又は植物体へ発達させるベクター及び/又は試薬と、を含む。
【0024】
さらに、植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得るベクター及び/又は試薬は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術により、雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換するベクター及び/又は試薬、好ましくは、ランダム突然変異誘発又は部位特異的突然変異誘発のベクター及び/又は試薬である。
【0025】
さらに、ランダム突然変異誘発は、化学的突然変異誘発、物理的突然変異誘発、及び生物学的突然変異誘発を含み、部位特異的突然変異誘発は、CRISPR/Cas遺伝子編集技術、CRISPR/Cpf1遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術、ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子編集技術、及びZFN遺伝子編集技術を含み、遺伝子工学技術は、遺伝子組換え技術による遺伝子の特異的発現、異所性発現又は遺伝子サイレンシングの誘導を含む。
【0026】
さらに、植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得るベクター及び/又は試薬は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質を編集し、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換するベクター及び/又は試薬であり、タンパク質は、第1タンパク質、第2タンパク質、及び第3タンパク質を含み、
第1タンパク質は、DNA二本鎖切断の形成に関与するタンパク質であり、
SEQ ID NO:13に示されるPAIR1タンパク質と、PAIR1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:14に示されるPAIR2タンパク質と、PAIR2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:15に示されるPAIR3タンパク質と、PAIR3タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR3タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:16に示されるPRD1タンパク質と、PRD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:17に示されるPRD2タンパク質と、PRD2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:18に示されるSPO11-1タンパク質と、SPO11-1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:19に示されるSPO11-2タンパク質と、SPO11-2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:20に示されるSDSタンパク質と、SDSタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSDSタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:21に示されるCRC1タンパク質と、CRC1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はCRC1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:22に示されるP31cometタンパク質と、P31cometタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はP31cometタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:23に示されるMTOPVIBタンパク質と、MTOPVIBタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTOPVIBタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:24に示されるDFOタンパク質と、DFOタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はDFOタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第2タンパク質は、減数分裂期の姉妹染色体間の接着の制御に関与し、
SEQ ID NO:25に示されるREC8タンパク質と、REC8タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はREC8タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第3タンパク質は、減数分裂の第2次分裂に関与し、
SEQ ID NO:26に示されるOSD1タンパク質と、OSD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はOSD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:27に示されるTAMタンパク質と、TAMタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTAMタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:28に示されるTDM1タンパク質と、TDM1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTDM1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれる。
【0027】
さらに、配偶子を種子又は植物体へ発達させるベクター及び/又は試薬は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与するMTLタンパク質に影響することで、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導するベクター及び/又は試薬を含み、MTLタンパク質は、
SEQ ID NO:29に示されるMTLタンパク質、MTLタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTLタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質である。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、上記キットを用いて産生する植物を提供する。該植物の生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換することによって、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を産生する。
【0029】
さらに、植物の配偶子は、植物体又は種子への発達を誘導され得る。
【0030】
さらに、植物は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学改変植物であり、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質を調整することにより、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与する第4タンパク質に影響することで、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導し、タンパク質は、第1タンパク質、第2タンパク質、及び第3タンパク質を含み、
第1タンパク質は、DNA二本鎖切断の形成に関与するタンパク質であり、
SEQ ID NO:13に示されるPAIR1タンパク質と、PAIR1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:14に示されるPAIR2タンパク質と、PAIR2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:15に示されるPAIR3タンパク質と、PAIR3タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR3タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:16に示されるPRD1タンパク質と、PRD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:17に示されるPRD2タンパク質と、PRD2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:18に示されるSPO11-1タンパク質と、SPO11-1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:19に示されるSPO11-2タンパク質と、SPO11-2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:20に示されるSDSタンパク質と、SDSタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSDSタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:21に示されるCRC1タンパク質と、CRC1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はCRC1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:22に示されるP31cometタンパク質と、P31cometタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はP31cometタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:23に示されるMTOPVIBタンパク質と、MTOPVIBタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTOPVIBタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:24に示されるDFOタンパク質と、DFOタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はDFOタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第2タンパク質は、減数分裂期の姉妹染色体間の接着の制御に関与し、
SEQ ID NO:25に示されるREC8タンパク質と、REC8タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はREC8タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質から選ばれ、
第3タンパク質は、減数分裂の第2次分裂に関与し、
SEQ ID NO:26に示されるOSD1タンパク質と、OSD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はOSD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:27に示されるTAMタンパク質と、TAMタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTAMタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:28に示されるTDM1タンパク質と、TDM1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTDM1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:28に示されるTDM1タンパク質と、TDM1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTDM1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第4タンパク質は、
SEQ ID NO:29に示されるMTLタンパク質と、MTLタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTLタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれる。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、植物ヘテロシスの維持方法を提供する。該方法は、遺伝子編集技術を利用して、F1世代で雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、F1世代の二倍体雌性配偶子を得るステップS1と、
遺伝子突然変異及び遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与するタンパク質に影響することで、二倍体雌性配偶子の種子への発達を誘導するステップS2と、を含み、かかるタンパク質はMTLタンパクである。
【0032】
さらに、ステップS1は、F1世代のハイブリッド種子を準備し、遺伝子編集技術を利用して、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、F1世代の二倍体雌性配偶子を得ることを含む。
【0033】
さらに、ステップS1は、遺伝子編集技術を利用して、雑種の親を編集し、編集された遺伝子がいずれもヘテロ接合突然変異である植物体を取得し、次に、親同士のハイブリッドにより雑種を取得し、2つの親において編集された複数の遺伝子がいずれもホモ接合突然変異である植物体を雑種からスクリーニングし、さらに、生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換されたF1世代の二倍体雌性配偶子を得ることを含む。
【0034】
さらに、ステップS1は、遺伝子編集技術を利用して、REC8、OSD1、PAIR1遺伝子をノックアウトし、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換することを含む。
【0035】
さらに、ステップS2は、二倍体雌性配偶子の半数体誘導系花粉を授粉することにより、二倍体雌性配偶子の種子への発達を誘導することを含む。
【0036】
さらに、ステップS2は、遺伝子編集技術を利用して、MTL遺伝子をノックアウトし、半数体誘導系花粉を産生することを含む。
【0037】
さらに、ステップS2は、ほかの植物体の半数体誘導系花粉を用いて、二倍体雌性配偶子の種子への発達を誘導することを含む。
【0038】
さらに、雑種は、F1世代でREC8、OSD1、PAIR1、及びMTL遺伝子を同時にノックアウトされる。
【0039】
さらに、植物は、水稲、トウモロコシ、モロコシ、小米、大麦、及び小麦を含む。
【発明の効果】
【0040】
本発明の技術案を用いると、雑種から自体の遺伝子型と完全に一致するクローン種子を取得することができ、このようにして、雑種が長期間に亘って利用可能になり、ヘテロシスを利用するときに、開花期が一致しないなどの原因により親間のハイブリッドが困難になり、種子生産の産量が低く、雑種コストが高いなどの従来の問題を解决する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本願の一部を構成する明細書の図面は本発明をさらに理解するために提供されるものであり、本発明の模式的な実施例、及びその説明は本発明を解釈することに用いられ、本発明を不妥に限定するものではない。
図1A図1Aは従来技術における三系ハイブリッド育種技術の模式的フローチャートを示す。
図1B図1Bは従来技術における二系ハイブリッド育種技術の模式的フローチャートを示す。
図2図2は本発明のF1世代の遺伝子型の維持状況の模式図を示す。
図3図3は本発明のF1世代の遺伝子型の維持状況の模式図を示す。
図4A図4Aは実施例1におけるF1世代の植物体春優84の細胞倍数性の検出結果を示す。
図4B図4Bは実施例1におけるヘテロシス固定植物体の細胞倍数性の検出結果を示す。
図5図5は実施例1における父本C84、母本16A、雑種春優84(CY84)、及び遺伝子型及び染色体倍数性が固定した植物体の全遺伝子配列決定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
なお、矛盾しない限り、本願における実施例、及び実施例の特征を互いに組み合わせることができる。以下、図面を参照しながら実施例にて本発明を詳細に説明する。
【0043】
本発明に記載の専門用語は以下のように解釈できる。
【0044】
ヘテロシス:heterosis、雑種の第1世代は、大きさ、成長率や繁殖力、及び挙動特性などがいずれも親よりも優れるという現象である。
【0045】
減数分裂:生殖細胞が分裂する際に、染色体が1回だけ複製し、細胞が連続して2回分裂することであり、染色体の数が半減する特殊な分裂方式である。
【0046】
有糸分裂:mitosis、間接分裂とも呼ばれ、E.Strasburger(1880)により植物において発見され、細胞の分裂過程に紡錘体と染色体が生じ、それによりS期で複製された娘染色体が娘細胞に平均に分配することを特徴とし、このような分裂方式は高等動植物(動物及び高等植物)によく見られる。
【0047】
染色体倍数性(数):chromosome ploidy、細胞に含まれる染色体の組数又は遺伝子の組数、たとえば、半数体染色、多倍体染色を意味する。
【0048】
二倍体雌性配偶子:配偶子とは、生物の有性生殖に生殖系統により生じる成熟性細胞を意味し、単に生殖細胞といい、配偶子は雄性配偶子(male gamete)と雌性配偶子(female gamete)に分けられ、通常、生殖細胞が分裂するときに、染色体が1回だけ複製し、細胞が連続して2回分裂し、染色体の数が半減するが、雌性配偶子の生成時に染色体の数が半減しておらず、この物種の体細胞の染色体の組数と同じになる場合、二倍体雌性配偶子と呼ばれる。
【0049】
半数体:体細胞の染色体の組数は本物種の配偶子染色体の組数に等しい個体又は細胞である。
【0050】
単為生殖:parthenogenesis、単性生殖とも呼ばれ、つまり、卵が受精を受けなくても正常な新しい個体まで発達することができる。
【0051】
本発明では、雑種とは、遺伝子型がヘテロ接合した植物体又は種子をいい、その有性生殖による子孫には遺伝的分離が発生する。
【0052】
本発明の代表的な実施形態によれば、植物ヘテロシスの利用方法を提供する。該方法は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を得るステップS1と、遺伝子突然変異及び遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与するタンパク質に影響するステップS2と、を含み、かかるタンパク質はMTLタンパクである。
【0053】
遺伝子突然変異は、ランダム突然変異誘発と部位特異的突然変異誘発を含み、ランダム突然変異誘発は、化学的突然変異誘発、物理的突然変異誘発、及び生物学的突然変異誘発を含み、部位特異的突然変異誘発は、遺伝子編集技術を含み、好ましくは、遺伝子編集技術は、CRISPR/Cas遺伝子編集技術、CRISPR/Cpf1遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術、ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子編集技術、及びZFN遺伝子編集技術を含み、遺伝子工学技術は、遺伝子組換え技術による遺伝子の特異的発現、異所性発現又は遺伝子サイレンシングの誘導を含む。
【0054】
具体的には、物理的突然変異誘発によく使用されている方法には、放射線(紫外線、X線、Y線、中性子線)、レーザーマイクロビーム、イオンビーム、マイクロ波、超音波、熱などが含まれる。化学的突然変異誘発によく使用されている方法には、浸漬法、塗布法、ドロップ法、注射法、施用法、及び燻蒸法が含まれ、化学的突然変異誘発剤には、アルキル化剤、塩基アナログ、塩化リチウム、ニトロソ化合物、アジド化物、抗生物質、ヒドロキシルアミン、アクリジン、硫酸ジエチル(DFS)、5-ブロモウラシル(5-BU)、窒素マスタード(Nm)、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)などが含まれる。生物学的突然変異誘発方法には、空間条件処理による突然変異誘発、病原性微生物による突然変異誘発、組織培養による突然変異誘発、遺伝子組換え突然変異誘発などが含まれる。
【0055】
実用例として、McCallum et al.,Plant Physiology,2000,123,439-442)に記載のTILLING(ゲノムにおける局所突然変異の標的誘導、Targeting Induced Local Lesions IN Genomes)であってもよい。標準技術を利用して部位特異的突然変異誘発を行い、この標準技術は、本分野で公知の相同組換えを用いたものであり、好ましくは、ヌクレアーゼたとえばTALEN又はCRISPRと組み合わせる。
【0056】
本発明の代表的な実施形態によれば、該方法は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を得るステップS1と、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導するステップS2と、を含む。
【0057】
本発明の技術案を用いると、雑種から自体の遺伝子型と完全に一致するクローン種子又は植物体を取得することができ、このようにして、雑種が長期間に亘って利用可能になり、ヘテロシスを利用するときに、開花期が一致しないなどの原因により親間のハイブリッドが困難になり、種子生産の産量が低く、雑種コストが高いなどの従来の問題を解决する。
【0058】
本発明の代表的な実施形態によれば、ステップS1は、雑種を準備し、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、雑種の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を得ることを含み、たとえば、具体的な操作としては、ステップS1は、ハイブリッドF1世代種子を準備し、遺伝子工学技術を利用して、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、F1世代の二倍体配偶子を得ることを含む。具体的には、ハイブリッドF1世代種子を準備し、遺伝子編集系統を導入して、減数分裂に関与する関連キー遺伝子を編集し、遺伝子編集されたF1世代植物体を得て、ここで、該遺伝子編集されたF1世代植物体の雌性配偶子は二倍体配偶子であり、好ましくは、減数分裂に関与する関連キー遺伝子は、REC8、OSD1、PAIR1という3つの遺伝子である。
【0059】
本発明の代表的な実施形態によれば、ステップS1は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、雑種の親を編集し、次に、親同士のハイブリッドにより雑種を取得し、さらに、生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換された雑種配偶子を得ることを含む。たとえば、具体的な操作としては、ステップS1は、遺伝子工学技術を利用して、雑種の親を編集し、減数分裂に関与する関連キー遺伝子がいずれもヘテロ接合突然変異の状態であるヘテロ接合突然変異体を得て、次に、親同士のハイブリッドにより雑種を取得し、減数分裂に関与する関連キー遺伝子がいずれもホモ接合突然変異である植物体を雑種からスクリーニングし、さらに、生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換されたF1世代の二倍体雌性配偶子を得る。具体的には、雑種の父本及び母本をそれぞれ準備し、遺伝子編集系統に導入して、上記の減数分裂に関与する3つの関連キー遺伝子を編集し、遺伝子編集された上記の3つの遺伝子がいずれもヘテロ接合状態である親植物体を取得し、次に、この2つの親をハイブリッドし、結実した種子にはさまざまな遺伝子型があり、これらから上記の3つの遺伝子がいずれもホモ接合突然変異である種子を選択し、このような植物体は本発明で期待されるF1世代種子であり、該F1世代種子の雌性配偶子は二倍体雌性配偶子である。
【0060】
本発明の代表的な実施形態によれば、ステップS1は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質を編集し、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換することを含み、タンパク質は、第1タンパク質、第2タンパク質、及び第3タンパク質を含み、
第1タンパク質DNAは二本鎖切断の形成に関与するタンパク質であり、
SEQ ID NO:13(MKLKMNKACDIASISVLPPRRTGGSSGASASGSVAVAVASQPRSQPLS QSQQSFSQGASASLLHSQSQFSQVSLDDNLLTLLPSPTRDQRFGLHDDSSKRMSSLPASSASCAREESQLQLAKLPSNPVHRWNPSIADTRSGQVTNEDVERKFQHLASSVHKMGMVVDSVQSDVMQLNRAMKEASLDSGSIRQKIAVLESSLQQILKGQDDLKALFGSSTKHNPDQTSVLNSLGSKLNEISSTLATLQTQMQARQLQGDQTTVLNSNASKSNEISSTLATLQTQMQADIRQLRCDVFRVFTKEMEGVVRAIRSVNSRPAAMQMMADQSYQVPVSNGWTQINQTPVAAGRSPMNRAPVAAGRSRMNQLPETKVLSAHLVYPAKVTDLKPKVEQGKVKAAPQKPFASSYYRVAPKQEEVAIRKVNIQVPAKKAPVSIIIESDDDSEGRASCVILKTETGSKEWKVTKQGTEEGLEILRRARKRRRREMQSIVLAS)に示されるPAIR1タンパク質と、PAIR1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:14(MVMAQKTKEAEITEQDSLLLTRNLLRIAIYNISYIRGLFPEK YFNDKSVPALEMKIKKLMPMDTESRRLIDWMEKGVYDALQKKYLKTLLFCICEKEEGPMIEEYAFSFSYPNTSGDEVAMNLSRTGSKKNSATFKSNAAEVTPDQMRSSACKMIRTLVSLMRTLDQMPEERTILMKLLYYDDVTPEDYEPPFFKCCADNEAINIWNKNPLKMEVGNVNSKHLVLALKVKSVLDPCDDNNVNSEDDNMSLDNESDQDNDFSDTEVRPSEAERYIVAPNDGTCKGQNGTISEDDTQDPVHEEELTAQVREWICSRDTESLEVSDVLVNFPDISMEMVEDIMERLLKDGLLSRAKKDSYSVNKIADPTTPHIKKEVIMQNVSPTEGTKNSNGDLMYMKALYHALPMDYVSVGKLHGKLDGEASQNMVRKLIEKMVQDGYVKNSANRRLGKAVIHSEVTNRKLLEIKKILEVDIAEQMAIDTNAEPGEPERKDHLSGHEMRDGSTMGCLQSVGSDLTRTRELPEPQQNVSMQSGQEASTVDKDPSRTPTSVREASVCSLESGVLGQKVRKSLAGAGGTQCSQDKRFRKASTVKEPILQYVKRQKSQVQVQVQ)に示されるPAIR2タンパク質と、PAIR2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:15(MEVELTNIQKATSSDYWSLASNQYPCGKFPKVSVGVTIPRTSSVSR GRDAASTAAFEKNLSQGTDGRSRPPKMDNASLQVSPEAANHGGSAKEVPKPVPAKVSVSQPDDNAIEQTGTFSFGTRREQDSHLDQLDRPPLVSSQGKRQVESADKNKPNSEMLRMKLWEILGGTSQNKEAVASPNPEDIETPCQPKSQIANGPSSGRQKVFTSPVPYNIKTPAQFNSQTANKPSSDPIESDSDSPQVVEVRPITRSLGRKKEPTGSTHQDKSGSAKKPLSTHRSTPKQKILDNVFAFNDKCTPKTVGKSANGESGSLRNLRSLSRRAKVEPKKAHCSDRISHKTTQDDMERKVPSKYIPSEKKGEKTNSFSSLSRTGKTAESCSRSPKRERRVNTMANVGARKMQLSENLLVKTLNDGEHKLSSPQLTSFKSKGKCSSISPQQKENDNTHIPEASDRTAARNSFNSTPSPAANPSPVLRKYSWEHDENPAINGKSGQKDASPLADRFSDMPDDFASPTFAANIKISPHRSKMLDDDLFSSKYPKGVNRSRSTSFTSDPESEPLDKMEKTNELPGSESPNSQEERQNRKQPHLSPLSPIESEGAQISIPSFRKGYKSHKWLSDVDSPDKSSIEHLGRKSHLKEGRKGKRQLTSPTHFATSGTQETMSDKEPEKVPENYLTRAFDQLVVVLGRFQTKIKSETRNKSSKILAATGEIIRQHLEGVEGQMQADVDKLVNAGKSKRKRLESTFEEQQEKLRILHEKFKEEVNQQLLGCKNSVEDFEAYHAELKGVADKQKASHKKLLQNAEKTVGAQLSDAETKIAEVQKRARKRMKGLKFVLKELIAETAE)に示されるPAIR3タンパク質と、PAIR3タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR3タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:16(MEMVLIMSFRVLLYHRLTAQTGPFKLHCLGILLNSTKDAATYIGDKQ SLYLNLVNNLRLPSDEIRGEILFVLYKLSLLNATPWDDICDNDNVDLSAIGRSLLQFSLEVLLKTQNDDVRLNCIALLLTLAKKGAFDILLLSDPSLINSAEAEDNVPLNDSLVILFAEAVKGSLLSTNIEVQTGTLELIFHFLSSDANIFVLKTLIDQNVADYVFEVLRLSGMRNHLLQSSNASQFLTKLLYVSGNNDPLVISSIKVLSILANSEERFKEKLAIAVSTLLPVLHYVSEIPFHPVQSQVLRLVCISIINCSGILSLSQEEQIACTLSAILRRHGNGELGMSSETFALVCSMLVEILKLPSADDIQKLPSFIVEASKHAISLTFSHEYDCLFLIPHSLLLLKEALIFCLEGNKDQILRKKSLEDSIIETCETYLLPWLESAIVDGNDEETLSGILQIFQIILSRASDNKSFKFAEMLASSSWFSLSFGFMGLFPTDHVKSAVYLVISSIVDKVLGISYGETIRDACIYLPPDPAELLYLLGQCSSEDFNLASCQCAILVILYVCSFYNERLAADNQILASVEQYILLNGAKFPHEIPGSLMLTLLVHLYAFVRGISFRFGIPHSPEAEKTLFHAMTHKEWDLLLIRVHLIALKWLFQNEELMEPLSFHLLNFCKFFCEDRTVMLSSSTQLVDIQLIAELVYSGETCISSLLVSLLSQMIKESAEDEVLSVVNVITEILVSFPCTSDQFVSCGIVDALGSIYLSLCSSRIKSVCSLLIFNILHSASAMTFTCDDDAWLALTMKLLDCFNSSLAYTSSEQEWKILIGILCLILNHSANKVLIEPAKAIILNNCLALLMDGIVQEACAKGPSLFQHNQETTFGELLILMLLLIFFSVRSLQAILEASIDWQEFLQYSDDTESSSVLGIPCHDLCRLMHFGPSPVKLIASQCLLELLNRISDQRSCLNAELRCSAKYLKSMIAVTEGMVFDQDSRVAENCGACLTVILGWERFGSREKAVIRESKWSRLILEEFAVALTAPGLTSKSFSNQQKIAANIALSLLQLSQVPDWLTSLFSDSLISGIVANLSARNVTAEIVTLFSELMAKNYLNQEHIAGLHNLFQVCRRQAYEGGGGSKAQPSEQKAAAARCADDVRALLFGMMLEQRACSRATVEMEQQRLLREIDSFFFQESSLREQNSVK)に示されるPRD1タンパク質と、PRD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:17(MAPPASRPPTPTPTPTANAAASSSRIESPSLRAALAMALIHYNRLP SRAAAAAAPSPQALLNWKRKAKDRKREILRLREELKLLQDGARGEEMEPPVASCRCHFFDGCGDLPPPTDGDAGEHWVDDVLRRRFVRLVRWKDKRRRLDRSLPTSSLMEYNTEDEVQQLSLSIDFLVELSDGLFAKREAGSSFTTFSHQAVDFILASLKNILSSEREKEIIEEIINGLVARLMKRMCTTPENAGSVDCSDAQFSLQHLFRKLGNEEFVGQRIILAISQKISNVSEKLLLADPFDDGFPEMHSNMFIMIQLIEFLISDSFNNWLCRDHFDRKLFEEWVRSILKARKDLEVLDGRNGLYVVYIERVIGRLAREVAPAAHQGKLDLEVLSKLLY)に示されるPRD2タンパク質と、PRD2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:18(MAGREKRRRVAALDGEERRRRQEEAATLLHRIRGLVRWV VAEVAAGRSPTVALHRYQNYCSSASAAAASPCACSYDVPVGTDVLSLLHRGSHASRLNVLLRVLLVVQQLLQQNKHCSKRDIYYMYPSIFQEQAVVDRAINDICVLFKCSRHNLNVVPVAKGLVMGWIRFLEGEKEVYCVTNVNAAFSIPVSIEAIKDVVSVADYILIVEKETVFQRLANDKFCERNRCIVITGRGYPDIPTRRFLRYLVEQLHLPVYCLVDADPYGFDILATYKFGSLQLAYDANFLRVPDIRWLGVFTSDFEDYRLPDCCLLHLSSEDRRKAEGILSRCYLHREAPQWRLELEAMLQKGVKFEIEALSACSISFLSEEYIPKKIKQGRHI)に示されるSPO11-1タンパク質と、SPO11-1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:19(MAEAGVAAASLFGADRRLCSADILPPAEVRARIEVAVLNFLAALTD PAAPAISALPLISRGAANRGLRRALLRDDVSSVYLSYASCKRSLTRANDAKAFVRVWKVMEMCYKILGEGKLVTLRELFYTLLSESPTYFTCQRHVNQTVQDVVSLLRCTRQSLGIMASSRGALIGRLVVQGPEEEHVDCSILGPSGHAITGDLNVLSKLIFSSDARYIIVVEKDAIFQRLAEDRIYSHLPCILITAKGYPDLATRFILHRLSQTYPNMPIFALVDWNPAGLAILCTYKYGSISMGLESYRYACNVKWLGLRGDDLQLIPQSAYQELKPRDLQIAKSLLSSKFLQDKHRAELTLMLETGKRAEIEALYSHGFDFLGKYVARKIVQGDYI)に示されるSPO11-2タンパク質と、SPO11-2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:20(MPPTMLASVPTRPRSHPFRRRRGAAAAAPPLLPDQIAAAAAAAAKRP AESSTSASSCFHSEVISATSTTCPTSLAAAQRPEKRPRYQDVDEEQPAASECSEIIGGARPRAAEVEVSESSCLASVLESYLACPEQLANDAETTAYSSAREDLTLSETEEEEEEEEVRSGPCICTDCSFSPLHESSSSSDDDNAVPSPTFSLFLALAEQFVPFTHPKTPTATDVALQAGEGKRFEDLDNEVSYERFRRRERRGVVARDYIEVYSSMLGSYGRAVVEQRVVMVNWIMEHSQAMKLQPETVFMGIGLMDRFLTRGYVKGSRNLQLLGIACTTLATRIEENQPYNCILQKAFKVGINTYSRSEVVAMEWLVQEVLDFQCFVTTTHHFLWFYLKAANADDRVEDLAKYLALLSLLDHKHLSFWPSTVAAAVVALACLATNNESSCHLVMETHMRTKNDDLPECLMSLEWLTNYAS)に示されるSDSタンパク質と、SDSタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSDSタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:21(MSAPMEVSFSAPPPPDAASAAAAAPSLVPAVSAAAVAATTVSCS PQPPTGSPSADDRILVSVEVLLHATSTARAEDVCAAVERMLEARSLSYVDGPVPIPNDDPFLLANVKRIQICDTDEWTENHKVLLFWQVRPVVHVFQLSEDGPGEEPGEDDTLSSFNEWALPAKEFDGLWESLLYEVGLKQRLLRYAASALLFTEKGVDPCLVSWNRIVLLHGPPGTGKTSLCKALAQKLSIRFKSRYSMCQLIEVNAHSLFSKWFSESGKLVAKLFQKIQEMVEEESNLVFVLIDEVESLAAARQAAISGSEPSDSIRVVNALLTQMDKLKSWPNVIILTTSNITTAIDIAFVDRADIKAYVGPPTLQARYEILRSCLQELLRVGILTHTQGGNSLCLLSYFSLMENQHCPEVADPHGSVHLSGLLHKAAEICEGLSGRTLRKLPFLAHASVANPSCCDASAFLHALIQTAQRELSESRG)に示されるCRC1タンパク質と、CRC1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はCRC1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:22(MERATTSGGGGGGSQPPRGVGLPLVEVQAAAASLRRSEVFYVVKE LLGFVLYMHHQIPAVLQNLENEFASLKEEMTEMALPPGEMKPSDQRKYNTRKREVRRRIKKQEKLMNGLSSVFSALQKALDEVPSIEGVLLILGGSLVRPLFVYDITISHGRFDAGSANERGASKLAQSVSRKAIRALISSGAGSLSYTGPTKLFVLVRCPCTLNLPLDFLPKRDFRYSKKVVPLQMCIKCNIAGIQIDNQQITSIVDASRCTSESTISEVIWFQCKHTIRGLPCKASLEE)に示されるP31cometタンパク質と、P31cometタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はP31cometタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:23(MASSPPPSTASPTSSSPYRKLLHSLIYWAVQRCRMSESPCRLTVSVKR SPEPAGSSPLRISVSDTGVGSKLEEFLELDALARETPVEKWDGTLLITTTGIDDKAIYRYQFNLQEDTSSSTRFTKLATMYKSRAIFSGTEVCLCLPTEADVDDLILWLVGFVRKIFVLRASNLACELFVAQTDSAGSGDVCLSQDSDDVHISITTSSIDRLVSGLKDYALSHANTSDRCEACYMNRDRLKIGTGTAKYVDKRKAKGQLVEVVIMIAPTSSDLSCWMTNCSSTQVLHFVEFIPCPISQSSLSALMSIDWQSYGFKFKGGFIDDDGNAELQWDNMAFSHVDIAIHTYHEGAVDEWKSSQPERHLLRKALKSALFGLKADHAEDFLSCHGQKVREYVPDLAESIAGLILSSNDQEFQDECIALLGLGSDQDLTEGAVRSCIGEKMNRIIEMNDTKENVEHNAPYLFECERFDEDYSLLDEDDPDEDMIFDF)に示されるMTOPVIBタンパク質と、MTOPVIBタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTOPVIBタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:24(MRHNIKFKSKGTLKIRNTAQISLWKKCSDSMIADQTYLFINRVQDRR FDEESLRILELSLVAMNVKSFLEVRSRLRDFMRSESVVIFGELTGESMVAKLSVLEFFARAFALLGDMESCLAMRYEALNLRQLKSPSCLWLGVSHSEWTKFAVQSMENGFPSIAGKASENALLSLKKDSLIEPKSEDNSDILDAAEKVRRLRDSAASLTSSHSGIFIYIVSSLKFAVCNRLLTTF)に示されるDFOタンパク質と、DFOタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はDFOタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第2タンパク質は、減数分裂期の姉妹染色体間の接着の制御に関与し、
SEQ ID NO:25(MFYSHQLLARKAPLGQIWMAATLHSKINRKRLDKLDIIKICEEILN PSVPMALRLSGILMGGVAIVYERKVKALYDDVSRFLIEINEAWRVKPVADPTVLPKGKTQAKYEAVTLPENIMDMDVEQPMLFSEADTTRFRGMRLEDLDDQYINVNLDDDDFSRAENHHQADAENITLADNFGSGLGETDVFNRFERFDITDDDATFNVTPDGHPQVPSNLVPSPPRQEDSPQQQENHHAASSPLHEEAQQGGASVKNEQEQQKMKGQQPAKSSKRKKRRKDDEVMMDNDQIMIPGNVYQTWLKDPSSLITKRHRINSKVNLIRSIKIRDLMDLPLVSLISSLEKSPLEFYYPKELMQLWKECTEVKSPKAPSSGGQQSSSPEQQQRNLPPQAFPTQPQVDNDREMGFHPVDFADDIEKLRGNTSGEYGRDYDAFHSDHSVTPGSPGLSRRSASSSGGSGRGFTQLDPEVQLPSGRSKRQHSSGKSFGNLDPVEEEFPFEQELRDFKMRRLSDVGPTPDLLEEIEPTQTPYEKKSNPIDQVTQSIHSYLKLHFDTPGASQSESLSQLAHGMTTAKAARLFYQACVLATHDFIKVNQLEPYGDILISRGPKM)に示されるREC8タンパク質と、REC8タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はREC8タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質から選ばれ、
第3タンパク質は、減数分裂の第2次分裂に関与し、
SEQ ID NO:26(MPEVRNSGGRAALADPSGGGFFIRRTTSPPGAVAVKPLARRA LPPTSNKENVPPSWAVTVRATPKRRSPLPEWYPRSPLRDITSVVKAVERKSRLGNAAVRQQIQLSEDSSRSVDPATPVQKEEGVPQSTPTPPTQKALDAAAPCPGSTQAVASTSTAYLAEGKPKASSSSPSDCSFQTPSRPNDPALADLMEKELSSSIEQIEKMVRKNLKRAPKAAQPSKVTIQKRTLLSMR)に示されるOSD1タンパク質と、OSD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はOSD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:27(MSSSSRNLSQENPIPRPNLAKTRTSLRDVGNRRAPLGDITNQKN GSRNPSPSSTLVNCSNKIGQSKKAPKPALSRNWNLGILDSGLPPKPNAKSNIIVPYEDTELLQSDDSLLCSSPALSLDASPTQSDPSISTHDSLTNHVVDYMVESTTDDGNDDDDDEIVNIDSDLMDPQLCASFACDIYEHLRVSEVNKRPALDYMERTQSSINASMRSILIDWLVEVAEEYRLSPETLYLAVNYVDRYLTGNAINKQNLQLLGVTCMMIAAKYEEVCVPQVEDFCYITDNTYLRNELLEMESSVLNYLKFELTTPTAKCFLRRFLRAAQGRKEVPSLLSECLACYLTELSLLDYAMLRYAPSLVAASAVFLAQYTLHPSRKPWNATLEHYTSYRAKHMEACVKNLLQLCNEKLSSDVVAIRKKYSQHKYKFAAKKLCPTSLPQELFL)に示されるTAMタンパク質と、TAMタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTAMタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:28(MCPCVERRAPPGVYYTPPPARTSDHVAAMPMTERRRPPYSCSSSSE RRDPFHIVHKVPSGDSPYVRAKHAQLIDKDPNRAISLFWTAINAGDRVDSALKDMAVVMKQLGRSDEGIEAIKSFRYLCSFESQDSIDNLLLELYKKSGRIEEEAVLLEHKLQTLEQGMGFGGRVSRAKRVQGKHVIMTIEQEKARILGNLGWVHLQLHNYGIAEQHYRFGFVTKIPNIDYCLVMRALGLERDKNKLCNLAICLMRMSRIPEAKSLLDDVRDSPAESECGDEPFAKSYDRAVEMLAEIESKKPEADLSEKFYAGCSFVNRMKENIAPGTANKNYSDVSSSPASVRPNSAGLYTQPRRCRLFEEETRGAARKLLFGKPQPFGSEQMKILERGEEEPMKRKKLDQNMIQYLHEFVKDTADGPKSESKKSWADIAEEEEAEEEEEERLQGELKTAEM)に示されるTDM1タンパク質と、TDM1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTDM1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれる。
【0061】
PAIR1タンパク質は減数分裂組換えの開始に関与し、DNA二本鎖ギャップの形成を触媒し、PAIR1遺伝子の欠失により組換え過程が欠失し、REC8タンパク質は、新しく複製した姉妹染色体を緊密に関連付けることに用いられ、姉妹(又は相同)染色体を正確に分離して娘細胞に分配することを確保するための重要な調節因子であり、その機能が欠失すると、姉妹染色体が第1次減数分裂の末期で分かれて、細胞の両極へ移動し、OSD1遺伝子の機能が欠失すると、配偶子の形成が第2次減数分裂過程を直接スキップする。
【0062】
上記遺伝子のノックアウトは、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換するための簡単で効果的な方法である。
【0063】
本発明では、前記のタンパク質の抑制とは、タンパク質をコードする遺伝子又はそのプロモータを突然変異誘発し、タンパク質の活性を部分的に又は全部失うことを意味し、ここで、サイレンシングRNAを植物に発現させることにより、関連タンパク質を抑制することが含まれる。
【0064】
本発明の代表的な実施形態によれば、ステップS2は、遺伝子突然変異及び遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与するタンパク質に影響することで、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することを含む。また、ステップS2は、ほかの植物体の誘導花粉を授粉して、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することを含んでもよく、たとえば、ステップS2は、二倍体雌性配偶子の半数体誘導系花粉を授粉することによって、二倍体雌性配偶子の種子への発達を誘導することを含むか、ステップS2は、物理的刺激、生物学的ストレス又は化学薬剤処理により、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することを含むか、又はステップS2は、葯培養又は花粉培養により、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することを含む。
【0065】
好ましくは、MTLタンパク質は、SEQ ID NO:29(MAASYSCRRTCEACSTRAMAGCVVGEPASAPGQRVTLLAIDGGGIRGLIPGTILAFLEARLQELDGPDARLADYFDCIAGTSTGGLITAMLAAPGDHGRPLFAASDINRFYLDNGPLIFPQKRCGMAAAMAALTRPRYNGKYLQGKIRKMLGETRVRDTLTNVVIPTFDVRLLQPTIFSTYDAKSMPLKNALLSDICISTSAAPTYLPAHCFQTTDDATGKVREFDLIDGGVAANNPTMVAMTQITKKIMVKDKEELYPVKPSDCGKFLVLSVGTGSTSDQGMYTARQCSRWGIVRWLRNKGMAPIIDIFMAASSDLVDIHAAVMFQSLHSDGDYLRIQDNTLHGDAATVDAATRDNMRALVGIGERMLAQRVSRVNVETGRYVEVPGAGSNADALRGFARQLSEERRARLGRRNACGGGGEGEPSGVACKR)に示されるMTLタンパク質、前記MTLタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又は前記MTLタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質である。ここで、該誘導系花粉は、遺伝子型及び倍数性が雑種と一致する配偶子を産生する植物体に由来してもよく、ほかの植物体に由来してもよく、好ましくは、誘導系花粉は、遺伝子型及び倍数性が雑種と一致する雌性配偶子を産生する植物体に由来し、雑種からREC8、OSD1、PAIR1及びMTL遺伝子を同時にノックアウトすることにより実現される。
【0066】
本発明の代表的な実施形態によれば、植物は、単子葉植物と双子葉植物を含み、好ましくは、植物は、水稲、トウモロコシ、モロコシ、アワ、大麦、小麦、ライ麦、エンバク、蕎麦、ハトムギ、サトウキビ、アスパラガス、筍、ニラ、ナガイモ、大豆、ジャガイモ、エンドウ、リョクトウ、アズキ、ソラマメ、ササゲ、インゲンマメ、レンズマメ、ツルマメ、ヒヨコマメ、キャッサバ、サツマイモ、アブラナ、綿、ビート、ナス、落花生、茶、ミント、コーヒー、ゴマ、ひまわり、トウゴマ、エゴマ、ベニバナ、トマト、トウガラシ、キュウリ、チンゲンサイ、レタス、ホウレンソウ、ニンニク、キャベツ、カラシナ、マコモ、ネギ、トウガン、ズッキーニ、ヘチマ、ハクサイ、ダイコン、タマネギ、スイカ、ブドウ、ニンジン、カリフラワー、カボチャ、タバコ、牧草、ネピアグラス、チカラシバ、スーダングラス、ラン、ユリ、チューリップ、及びウマゴヤシを含む。
【0067】
本願を実現する原理は以下のとおりである。
【0068】
本願では、アポミキシスを実現する原理は、減数分裂及び受精の過程を行わずに直接胚を形成し種子を産生することであり、主に以下の2つのステップに分けられる。
【0069】
第1ステップ:減数分裂とは、動植物が生殖期間において発生する特別な細胞分裂過程である。減数分裂には、父母本からの遺伝情報が組換えを行い、染色体の数が半減する配偶子を生成する。
【0070】
植物の減数分裂期間の3つの異なる重要な段階に関与する遺伝子を同時に突然変異させると(この3つの突然変異材料をMiMe、Mitosis instead of Meiosisと命名する)、植物体の減数分裂が有糸分裂と類似した過程に変換する。
【0071】
MiMe植物体から産生する雌、雄性配偶子細胞では、染色体の数及び遺伝子型が体細胞と完全に一致し、その自交子孫がいずれもヘテロ接合の遺伝子型の四倍体であり、このことから、3つの遺伝子を同時に突然変異させることによって、ハイブリッド植物が減数分裂過程を行わずに、体細胞の遺伝子型と一致するクローン配偶子を産生できることが証明されている。
【0072】
第2ステップ:花粉特異的ホスホリパーゼ遺伝子(MATRILINEAL、MTL)は主に植物の雄性配偶子に作用する、半数体誘導を制御する遺伝子であり、まずトウモロコシでクローンする。MTL遺伝子をノックアウトすることによって半数体誘導材料mtlが得られ得る。二重受精過程では、接合子中のmtl雄性配偶子のゲノムが分解され、つまり、父本精子核がアクセプタの卵核と接合子を形成せずに、卵核半数体の生成を誘導して結実する。
【0073】
したがって、MiMe及びMTLという4つの内因性遺伝子を同時に植物において改変させることによって、アポミキシスが発生したFix(Fixation of hybrids)材料を得ることができ、つまり、減数分裂及び受精の過程を行わずに母本ゲノムを保持することにより、細胞倍数性が二倍体であるとともに遺伝子型が親と完全に一致する植物体が得られる。このことから、4つの内因性遺伝子を同時に改変させることにより、アポミキシス特性をハイブリッド植物に導入して、ヘテロ接合遺伝子型を固定できることが証明されている。
【0074】
本発明の代表的な実施形態によれば、以下のステップを含む。1)配偶子の形成過程における減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換する。研究したところ、減数分裂時期に関与するREC8、OSD1、PAIR1という3つの遺伝子を同時にノックアウトした後(この材料をMiMe、Mitosis instead of Meiosisと命名する)、染色体が1回複製し、生殖細胞が従来の2回の分裂から1回の分裂に変わり、それによって、形成された配偶子中、染色体の数が半減されておらず、体細胞と一致する。即ち、減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換することで、染色体を倍増するという目的を達成させる。2)生成した雌性配偶子が、雌性配偶子の発達を誘導し得る花粉刺激を受け、即ち、雌性配偶子が、精子細胞の染色体と融合せずに、胚まで発達し、体細胞の遺伝子型と完全に一致する種子を形成する。MTL遺伝子をノックアウトすると、半数体の産生を誘導し得る花粉が得られ得る。ハイブリッド種子を遺伝子組換え背景、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、REC8、OSD1、PAIR1及びMTLという4つの遺伝子を同時にノックアウトし、該植物体が産生した雌性配偶子の染色体倍数性が体細胞と同様であり、また、MTL遺伝子が破壊されるため、産生した花粉は、雌性配偶子の種子又は植物体への発達を誘導することができ、このように得られた種子又は植物体には遺伝子分離(形質又は稔性の分離)が生じておらず、遺伝子型が母細胞(遺伝子組換えの背景材料としての雑種)と同様であり、最終的にヘテロシスを固定するという目的が実現される。
【0075】
図2及び図3は、本発明のF1世代の遺伝子型及び染色体倍数性が雑種の母細胞と一致することを明らかに示す。
【0076】
代表的な実施形態によれば、ヘテロシスを維持した植物又は種子を提供する。該植物又は種子は、上記のいずれかの方法によって製造され、該種子は、良好な固定の雑種強勢を有する。
【0077】
代表的な実施形態によれば、植物にヘテロシスを維持させるためのキットを提供する。該キットは、植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得るベクター及び/又は試薬と、配偶子を種子又は植物体へ発達させるベクター及び/又は試薬と、を含む。好ましくは、植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得るベクター及び/又は試薬、及び植物配偶子の単為生殖を誘導するベクター及び/又は試薬は、ランダム突然変異誘発又は部位特異的突然変異誘発のベクター及び/又は試薬である。その中でも、ランダム突然変異誘発は、化学的突然変異誘発、物理的突然変異誘発、及び生物学的突然変異誘発を含み、部位特異的突然変異誘発は、CRISPR/Cas遺伝子編集技術、CRISPR/Cpf1遺伝子編集技術、TALEN遺伝子編集技術、ホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子編集技術、及びZFN遺伝子編集技術を含み、遺伝子工学技術は、遺伝子組換え技術による遺伝子の特異的発現、異所性発現又は遺伝子サイレンシングの誘導を含む。
【0078】
代表的な実施形態によれば、植物の生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し得るベクター及び/又は試薬は、遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂組換えに関与するタンパク質を抑制し、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換するベクター及び/又は試薬であり、ここで、タンパク質は、第1タンパク質、第2タンパク質、及び第3タンパク質を含み、
第1タンパク質は、DNA二本鎖切断の形成に関与するタンパク質であり、
SEQ ID NO:13に示されるPAIR1タンパク質と、PAIR1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:14に示されるPAIR2タンパク質と、PAIR2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:15に示されるPAIR3タンパク質と、PAIR3タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR3タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:16に示されるPRD1タンパク質と、PRD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:17に示されるPRD2タンパク質と、PRD2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:18に示されるSPO11-1タンパク質と、SPO11-1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:19に示されるSPO11-2タンパク質と、SPO11-2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:20に示されるSDSタンパク質と、SDSタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSDSタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:21に示されるCRC1タンパク質と、CRC1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はCRC1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:22に示されるP31cometタンパク質と、P31cometタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はP31cometタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:23に示されるMTOPVIBタンパク質と、MTOPVIBタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTOPVIBタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:24に示されるDFOタンパク質と、DFOタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はDFOタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第2タンパク質は、減数分裂期の姉妹染色体間の接着の制御に関与し、
SEQ ID NO:25に示されるREC8タンパク質と、REC8タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はREC8タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質から選ばれ、
第3タンパク質は、減数分裂の第2次分裂に関与し、
SEQ ID NO:26に示されるOSD1タンパク質と、OSD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はOSD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:27に示されるTAMタンパク質と、TAMタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTAMタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:28に示されるTDM1タンパク質と、TDM1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTDM1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれる。
【0079】
さらに、配偶子を種子又は植物体へ発達させるベクター及び/又は試薬は、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子又は胚の発達プロセスに関与するMTLタンパク質に影響することで、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導するベクター及び/又は試薬を含み、MTLタンパク質は、SEQ ID NO:29に示されるMTLタンパク質、MTLタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTLタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質である。
【0080】
販売及び使用のし易さから、好ましくは、キットは、雑種においてREC8、OSD1、PAIR1及びMTL遺伝子を同時にノックアウトするためのベクター及び/又は試薬を含む。
【0081】
代表的な実施形態によれば、植物を提供する。該植物の生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換することによって、雑種の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を産生し、たとえば、該植物の生殖細胞の減数分裂が有糸分裂と類似したものに変換することによって、雑種の染色体倍数性及び遺伝子型と一致する配偶子を産生することができる。好ましくは、植物は、配偶子の植物体又は種子への発達を誘導することができる。
【0082】
代表的な実施形態によれば、植物は遺伝子突然変異又は遺伝子工学改変植物であり、植物は遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の減数分裂に関与するタンパク質を調整され、生殖細胞の減数分裂を有糸分裂と類似したものに変換し、遺伝子突然変異又は遺伝子工学技術を利用して、植物の配偶子の発達プロセスに関与するMTLタンパク質に影響することで、配偶子の種子又は植物体への発達を誘導され、ここで、タンパク質は、第1タンパク質、第2タンパク質、及び第3タンパク質を含み、
第1タンパク質は、DNA二本鎖切断の形成に関与するタンパク質であり、
SEQ ID NO:13に示されるPAIR1タンパク質と、PAIR1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:14に示されるPAIR2タンパク質と、PAIR2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:15に示されるPAIR3タンパク質と、PAIR3タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPAIR3タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:16に示されるPRD1タンパク質と、PRD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:17に示されるPRD2タンパク質と、PRD2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はPRD2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:18に示されるSPO11-1タンパク質と、SPO11-1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:19に示されるSPO11-2タンパク質と、SPO11-2タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSPO11-2タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:20に示されるSDSタンパク質と、SDSタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はSDSタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:21に示されるCRC1タンパク質と、CRC1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はCRC1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:22に示されるP31cometタンパク質と、P31cometタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はP31cometタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:23に示されるMTOPVIBタンパク質と、MTOPVIBタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTOPVIBタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:24に示されるDFOタンパク質と、DFOタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はDFOタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
第2タンパク質は、減数分裂期の姉妹染色体間の接着の制御に関与し、
SEQ ID NO:25に示されるREC8タンパク質と、REC8タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はREC8タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質から選ばれ、
第3タンパク質は、減数分裂の第2次分裂に関与し、
SEQ ID NO:26に示されるOSD1タンパク質と、OSD1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はOSD1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:27に示されるTAMタンパク質と、TAMタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTAMタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:28に示されるTDM1タンパク質と、TDM1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTDM1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質と、
SEQ ID NO:28に示されるTDM1タンパク質と、TDM1タンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はTDM1タンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質とから選ばれ、
MTLタンパク質は、SEQ ID NO:29に示されるMTLタンパク質と、MTLタンパク質とは少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するタンパク質、又はMTLタンパク質とは少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%の配列類似性を有するタンパク質である。
【0083】
以下、実施例を参照しながら本発明の有益な効果をさらに説明し、以下の実施例では、詳細に説明されていないステップ又は試薬については、いずれも本分野における常用の技術手段又は常用の試薬が使用される。
【0084】
(実施例1)
1.本実施例で使用されるF雑種は、承認された市販ハイブリッド稲の品種の春優84である。春優84は、早開花時期の晩粳不稔系春江16A(early flowering late japonica sterile line Chunjiang 16A)と日印中間型広親和性回復系C84(indica-japonica intermediate type of wide compatibility and restorer line C84)とを組み合わせて育成した日印ハイブリッド稲(japonica-non-indica-restorer intersubspecific hybrid rice)の新しい組み合わせである。該ハイブリッド稲は、産量の増大が期待でき、種子生産の産量が高く、総合的な農業形質に優れ、いもち病抵抗性が良好であり、適応性が広いなどの利点を有する。本実施例で使用される遺伝的形質転換の背景材料は、ハイブリッド稲のF種子を誘導して得たカルスを用いて、有性繁殖段階を行わず、したがって、遺伝子組換えにより得られた遺伝子組換えT世代材料は、遺伝背景に関してはハイブリッド稲F植物体と一致する。
【0085】
2.多遺伝子ノックアウトベクターの構築
主なステップは以下のとおりである(詳細については、CN201510485573.2参照)。
【0086】
1)単一の標的SK-gRNAの構築:
以下の4つの部位をCRISPR-Cas9遺伝子編集系統によりREC8、OSD1、PAIR1及びMTLをノックアウトする部位(下線で示されるPAM配列)として選択した。
【0087】
OSD1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:1):CTGCCGCCGACGAGCAACAAGG
PAIR1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:2):AAGCAACCCAGTGCACCGCTGG
REC8遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:3):CCCATGGCACTAAGGCTCTCCG
MTL遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:4): GGTCAACGTCGAGACCGGCAGG
2つの相補的DNA配列の設計:フォワード配列の前にGGCA、リバース相補的配列の前にAAACを追加した。
【0088】
SK-gRNA上に2つのAarI酵素切断部位があるので、AarIで酵素切断すると、粘着末端付きのベクターが形成され、設計されたターゲット配列のフォワード及びリバースプライマーを変性してアニーリングした後、T4リガーゼを上記で構築した中間ベクターSK-gRNAに連結し、単一の標的gRNAを得た。
【0089】
2)複数のgRNAのタンデム接続及び最終的なバイナリー発現ベクターの構築:
BglIIとBamHI、NheIとXbaI、SalIとXhoIがアイソコードマーであるという特性を利用して、gRNAの重合を行い、具体的には、SK-gRNA OSD1をKpnIとXhoIで酵素切断して、ベクターとし、SK-gRNA PAIR1をSalIとXbaIで酵素切断して、PAIR1 sgRNA断片を提供し、SK-gRNA REC8をNheIとBamHIで酵素切断して、REC8 sgRNA断片を提供し、SK-gRNA MTLをBglIIとKpnIで酵素切断して、MTL sgRNA断片を提供し、4個以下のgRNAをワンステップ法で急速に重合し、最終的に、重合したgRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTL断片をKpnIとBglIIで酵素切断し、断片を回収し、Cas9タンパク質を発現させたバイナリーベクターpC1300-Cas9(KpnIとBamHI部位の間)に連結し、最終的には、REC8、OSD1、PAIR1及びMTLという4つの遺伝子を同時にノックアウトし得る多遺伝子ノックアウトベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTLを得て、遺伝子組換えによる水稲の多突然変異体の製造に供した。
【0090】
3.遺伝子組換え植物体の取得
複数の遺伝子をノックアウトしたバイナリー発現ベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTLをエレクトロポレーション方法によりアグロバクテリウム(AgroBacteriumtumefaciens)株系EHA105に導入し、アグロバクテリウム媒介法によってこのバイナリー発現ベクターを水稲春優84のカルスに導入した。形質転換の方法としては、具体的には、ハイブリッド稲春優84の種子の胚を滅菌後、カルスを誘導する培地に接種した。1週間培養後、成長状態が良好であり、浅黄色をしており、比較的緩い胚性カルスを選択して、形質転換のアクセプタとした。pC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTLプラスミドを含有するEHA105菌株を用いて水稲カルスを感染し、暗所において25℃で3日間培養後、50mg/lハイグロマイシンを含有する選択培地から耐性カルス及び遺伝子組換え植物体をスクリーニングした。ハイグロマイシン含有選択培地で正常に成長した遺伝子組換え植物体を選択した。
【0091】
4.配列決定による4突然変異体の同定
分子生物学的手段を利用して標的遺伝子の突然変異の状況を同定した。CTAB法により単一の遺伝子組換え植物からゲノムDNAを抽出し、PCRにより標的バンドを増幅した。使用されるプライマー対:
OSD1-F(SEQ ID NO:5): atctccaggatgcctgaagtgag
OSD1-R(SEQ ID NO:6): cctagactgctactcttgctagtgat
PAIR1-F(SEQ ID NO:7): ctgtacctgtgcatctaattacag
PAIR1-R(SEQ ID NO:8): ccccatcttatgtactgagcttgccag
REC8-F(SEQ ID NO:9): gcgacgcttcactcgaagatca
REC8-R(SEQ ID NO:10): cgccatgcctcgttgatctcaa
MTL-F(SEQ ID NO:11): acagtgactagtgacaaacgatcg
MTL-R(SEQ ID NO:12): gatcgcgtcagcatgatgcgtgtac
得られたPCR産物を、配列決定会社に送り、それぞれOSD1-F、PAIR1-F、REC8-F、MTL-Fを配列決定プライマーとして配列決定を行った。得た結果を野生型の配列と比較した。配列決定結果が二峰性であり、縮退コドン戦略により分析し(http://dsdecode.scgene.com/峰図分析を行う)、突然変異情報を直接取得した。4つの遺伝子がいずれも二対立遺伝子変異である4突然変異体をこれらからスクリーニングした。
【0092】
5.第1世代からの倍数性及び遺伝子型が固定した植物体の同定
1)同定して得られた4突然変異体植物の第1世代の植物体において、フローサイトメトリーによって細胞倍数性をスクリーニングし、得られた細胞倍数性が母体の植物体と一致する植物体をスクリーニングした。
【0093】
具体的な方法は以下のとおりである。
【0094】
一定量の植物組織をガラスペトリ皿に入れて、植物溶解バッファーLB01 1~2mlを加え、ブレードで細断し(この操作に亘って氷で行われる)、ペトリ皿内の解離液を吸い取り、50μmナイロンメッシュでろ過して遠心管に入れ、1200rpm、4℃で5min遠心処理し、上清を捨てて、LB01 450μl、予冷PI(1mg/ml)25uL及びRNase A(1mg/ml)を加えて遮光下10min染色し、装置にセットして検出し、二倍体植物体をスクリーニングした。
【0095】
図4Aは、F1世代の植物体春優84の細胞倍数性の検出結果を示し、図4Bは、ヘテロシス固定植物体の細胞倍数性の検出結果を示す。
【0096】
2)全ゲノムの配列決定
2つの親春江16AとC84、春優84及び倍数性が固定した第1世代(ランダムに4株選択)植物体の葉を準備し、DNAを抽出して全ゲノムの配列決定を行った。全ゲノムの配列決定結果から(図5)、春江16AとC84の間で多数の異なるホモ接合遺伝子型があり、雑種春優84は、これらの部位での遺伝子型が春江16AとC84の両方の遺伝子型を有するヘテロ接合状態であり、検出された4株の植物体では、遺伝子型がいずれも春優84と一致し、ヘテロ接合状態であることが示されており、分子生物学的には遺伝子型が雑種の母細胞と完全に一致することが分かった。
【0097】
(実施例2)
1.本実施例では、維持系春江16Bと日印中間型広親和性回復系C84が使用される。本実施例で使用される遺伝的形質転換の背景材料は親種子から誘導したカルスである。
【0098】
2.多遺伝子ノックアウトベクターの構築
主なステップは以下のとおりである。
【0099】
1)単一の標的SK-gRNAの構築:
以下の4つの部位をCRISPR-Cas9遺伝子編集系統によりREC8、OSD1、PAIR1及びMTLをノックアウトする部位(下線で示されるPAM配列)として選択した。
【0100】
OSD1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:1):CTGCCGCCGACGAGCAACAAGG
PAIR1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:2):AAGCAACCCAGTGCACCGCTGG
REC8遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:3):CCCATGGCACTAAGGCTCTCCG
MTL遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:4): GGTCAACGTCGAGACCGGCAGG
2つの相補的DNA配列の設計:フォワード配列の前にGGCA、リバース相補的配列の前にAAACを追加した。
【0101】
SK-gRNA上に2つのAarI酵素切断部位があるので、AarIで酵素切断すると、粘着末端付きのベクターが形成され、設計されたターゲット配列のフォワード及びリバースプライマーを変性してアニーリングした後、T4リガーゼを上記で構築した中間ベクターSK-gRNAに連結し、単一の標的gRNAを得た。
【0102】
4)複数のgRNAのタンデム接続及び最終的なバイナリー発現ベクターの構築:
BglIIとBamHI、NheIとXbaI、SalIとXhoIがアイソコードマーであるという特性を利用して、gRNAの重合を行い、具体的には、SK-gRNA OSD1をKpnIとXhoIで酵素切断して、ベクターとし、SK-gRNA PAIR1をSalIとXbaIで酵素切断して、PAIR1 sgRNA断片を提供し、SK-gRNA REC8をNheIとBamHIで酵素切断して、REC8 sgRNA断片を提供し、SK-gRNA MTLをBglIIとKpnIで酵素切断して、MTL sgRNA断片を提供し、4個以下のgRNAをワンステップ法で急速に重合し、最終的に、重合したgRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTL断片をKpnIとBglIIで酵素切断し、断片を回収し、Cas9タンパク質を発現させたバイナリーベクターpC1300-Cas9(KpnIとBamHI部位の間)に連結し、最終的には、REC8、OSD1、PAIR1及びMTLという4つの遺伝子を同時にノックアウトし得る多遺伝子ノックアウトベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTLを得て、遺伝子組換えによる水稲多突然変異体の製造に供した。
【0103】
3.遺伝子組換え植物体の取得
複数の遺伝子をノックアウトしたバイナリー発現ベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTLをエレクトロポレーション方法によりアグロバクテリウム(AgroBacteriumtumefaciens)株系EHA105に導入し、アグロバクテリウム媒介法によってこのバイナリー発現ベクターを春江16BとC84のカルスに導入した。形質転換の方法としては、具体的には、種子の胚を滅菌後、カルスを誘導する培地に接種した。1週間培養後、成長状態が良好であり、浅黄色をしており、比較的緩い胚性カルスを選択して、形質転換のアクセプタとした。pC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTLプラスミドを含有するEHA105菌株を用いて水稲カルスを感染し、暗所において25℃で3日間培養後、ハイグロマイシン50mg/lを含有する選択培地から耐性カルス及び遺伝子組換え植物体をスクリーニングした。ハイグロマイシン含有選択培地で正常に成長した遺伝子組換え植物体を選択した。
【0104】
4.配列決定により4つの遺伝子がいずれもヘテロ接合突然変異である春江16B及びC84材料を同定し、次にハイブリッドを行い、4つの遺伝子がいずれも突然変異であるハイブリッド植物体を子孫からスクリーニングした。
【0105】
分子生物学的手段を利用して標的遺伝子の突然変異の状況を同定した。CTAB法により単一の遺伝子組換え植物からゲノムDNAを抽出し、PCRにより標的バンドを増幅した。使用されるプライマー対:
OSD1-F(SEQ ID NO:5): atctccaggatgcctgaagtgag
OSD1-R(SEQ ID NO:6): cctagactgctactcttgctagtgat
PAIR1-F(SEQ ID NO:7): ctgtacctgtgcatctaattacag
PAIR1-R(SEQ ID NO:8): ccccatcttatgtactgagcttgccag
REC8-F(SEQ ID NO:9): gcgacgcttcactcgaagatca
REC8-R(SEQ ID NO:10): cgccatgcctcgttgatctcaa
MTL-F(SEQ ID NO:11): acagtgactagtgacaaacgatcg
MTL-R(SEQ ID NO:12): gatcgcgtcagcatgatgcgtgtac
得られたPCR産物を、配列決定会社に送り、それぞれOSD1-F、PAIR1-F、REC8-F、MTL-Fを配列決定プライマーとして配列決定を行った。得た結果を野生型の配列と比較し、突然変異情報を直接取得した。
【0106】
ヘテロ接合突然変異の春江16B及びC84材料をスクリーニングした後、互いにハイブリッドしてF1世代から二対立遺伝子変異を有するハイブリッド植物体をスクリーニングした。
【0107】
5.ハイブリッド植物体の種子を収集し、第1世代から倍数性と遺伝子型が固定した植物体を同定した。
【0108】
1)同定により得られた3突然変異体植物の第1世代の植物体から、フローサイトメトリーによって細胞倍数性をスクリーニングし、得られた細胞倍数性が母体の植物体と一致する植物体をスクリーニングした。
【0109】
具体的な方法は以下のとおりである。
【0110】
一定量の植物組織をガラスペトリ皿に入れて、植物溶解バッファーLB01 1~2mlを加え、ブレードで細断し(この操作に亘って氷で行われる)、ペトリ皿内の解離液を吸い取り、50μmナイロンメッシュでろ過して遠心管に入れ、1200rpm、4℃で5min遠心処理し、上清を捨てて、LB01 450μl、予冷PI(1mg/ml)25uL及びRNase A(1mg/ml)を加えて遮光下10min染色し、装置にセットして検出し、二倍体植物体をスクリーニングした。
【0111】
2)全ゲノムの配列決定
2つの親春江16BとC84、春優84及び倍数性が固定した第1世代(ランダムに2株選択)植物体の葉を準備し、DNAを抽出して全ゲノムの配列決定を行った。全ゲノムの配列決定結果から、春江16BとC84の間で多数の異なるホモ接合遺伝子型があり、雑種春優84は、これらの部位での遺伝子型が春江16BとC84の両方の遺伝子型を有するヘテロ接合状態であり、検出された2株の植物体では、遺伝子型がいずれも春優84と一致し、ヘテロ接合状態であることが示されており、分子生物学的には、遺伝子型が雑種の母細胞と完全に一致することが分かった。
【0112】
(実施例3)
1.本実施例で使用されるF雑種は、承認された市販ハイブリッド稲の品種の春優84である。春優84は、不稔系春江16Aと日印中間型広親和性回復系C84とを組み合わせて育成した日印ハイブリッド稲の新しい組み合わせである。該ハイブリッド稲は、産量の増大が期待でき、種子生産の産量が高く、総合的な農業形質に優れ、いもち病抵抗性が良好であり、適応性が広いなどの利点を有する。本実施例で使用される遺伝的形質転換の背景材料は、ハイブリッド稲のF種子を誘導して得たカルスを用いて、有性繁殖段階を行わず、したがって、遺伝子組換えにより得られた遺伝子組換えT世代材料は、遺伝背景に関してはハイブリッド稲F植物体と一致する。
【0113】
2.多遺伝子ノックアウトベクターの構築
主なステップは以下のとおりである。
【0114】
1)単一の標的SK-gRNAの構築:
以下の3つの部位をCRISPR-Cas9遺伝子編集系統によりREC8、OSD1及びPAIR1をノックアウトする部位(下線で示されるPAM配列)として選択した。
【0115】
OSD1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:1):CTGCCGCCGACGAGCAACAAGG
PAIR1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:2):AAGCAACCCAGTGCACCGCTGG
REC8遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:3):CCCATGGCACTAAGGCTCTCCG
2つの相補的DNA配列の設計:フォワード配列の前にGGCA、リバース相補的配列の前にAAACを追加した。
【0116】
SK-gRNA上に2つのAarI酵素切断部位があるので、AarIで酵素切断すると、粘着末端付きのベクターが形成され、設計されたターゲット配列のフォワード及びリバースプライマーを変性してアニーリングした後、T4リガーゼを上記で構築した中間ベクターSK-gRNAに連結し、単一の標的gRNAを得た。
【0117】
2)3つのgRNAのタンデム接続及び最終的なバイナリー発現ベクターの構築:
BglIIとBamHI、NheIとXbaI、SalIとXhoIがアイソコードマーであるという特性を利用して、gRNAの重合を行い、最終的には、重合したgRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1断片をKpnIとBglIIで酵素切断し、断片を回収し、Cas9タンパク質を発現させたバイナリーベクターpC1300-Cas9(KpnIとBamHI部位の間)に連結し、最終的には、REC8、OSD1及びPAIR1という3つの遺伝子を同時にノックアウトし得る多遺伝子ノックアウトベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1を得て、遺伝子組換えによる水稲多突然変異体の製造に供した。
【0118】
3.遺伝子組換え植物体の取得
複数の遺伝子をノックアウトしたバイナリー発現ベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNAをエレクトロポレーション方法によりアグロバクテリウム(AgroBacteriumtumefaciens)株系EHA105に導入し、アグロバクテリウム媒介法によってこのバイナリー発現ベクターを水稲春優84のカルスに導入した。形質転換の方法としては、具体的には、ハイブリッド稲春優84の種子の胚を滅菌後、カルスを誘導する培地に接種した。1週間培養後、成長状態が良好であり、浅黄色をしており、比較的緩い胚性カルスを選択して、形質転換のアクセプタとした。pC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1プラスミドを含有するEHA105菌株を用いて水稲カルスを感染し、暗所において25℃で3日間培養後、ハイグロマイシン50mg/lを含有する選択培地から耐性カルス及び遺伝子組換え植物体をスクリーニングした。ハイグロマイシン含有選択培地で正常に成長した遺伝子組換え植物体を選択した。
【0119】
4.配列決定による3突然変異体の同定
分子生物学的手段を利用して標的遺伝子の突然変異の状況を同定した。CTAB法により単一の遺伝子組換え植物からゲノムDNAを抽出し、PCRにより標的バンドを増幅した。使用されるプライマー対:
OSD1-F(SEQ ID NO:5): atctccaggatgcctgaagtgag
OSD1-R(SEQ ID NO:6): cctagactgctactcttgctagtgat
PAIR1-F(SEQ ID NO:7): ctgtacctgtgcatctaattacag
PAIR1-R(SEQ ID NO:8): ccccatcttatgtactgagcttgccag
REC8-F(SEQ ID NO:9): gcgacgcttcactcgaagatca
REC8-R(SEQ ID NO:10): cgccatgcctcgttgatctcaa
得られたPCR産物を、配列決定会社に送り、それぞれOSD1-F、PAIR1-F、REC8-Fを配列決定プライマーとして配列決定を行った。得た結果を野生型の配列と比較した。配列決定結果が二峰性であり、縮退コドン戦略により分析し(http://dsdecode.scgene.com/峰図分析を行う)、突然変異情報を直接取得した。
【0120】
3つの部位がいずれも二対立遺伝子変異である突然変異体は、体細胞の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を産生し得る植物体である。
【0121】
5.3突然変異体を母本として、ほかの半数体誘導系の植物体花粉を授粉することで、雌性配偶子の種子への発達を誘導し、ヘテロシスを維持した雑種を大量で取得した。
【0122】
6.第1世代からの倍数性及び遺伝子型が固定した植物体の同定
1)同定して得られた3突然変異体植物の第1世代の植物体において、フローサイトメトリーによって細胞倍数性をスクリーニングし、得られた細胞倍数性が母体の植物体と一致する植物体をスクリーニングした。
【0123】
具体的な方法は以下のとおりである。
【0124】
一定量の植物組織をガラスペトリ皿に入れて、植物溶解バッファーLB01 1~2mlを加え、ブレードで細断し(この操作に亘って氷で行われる)、ペトリ皿内の解離液を吸い取り、50μmナイロンメッシュでろ過して遠心管に入れ、1200rpm、4℃で5min遠心処理し、上清を捨てて、LB01 450μl、予冷PI(1mg/ml)25uL及びRNase A(1mg/ml)を加えて遮光下10min染色し、装置にセットして検出し、二倍体植物体をスクリーニングした。
【0125】
2)全ゲノムの配列決定
2つの親春江16AとC84、春優84及び倍数性が固定した第1世代(ランダムに4株選択)植物体の葉を準備し、DNAを抽出して全ゲノムの配列決定を行った。全ゲノムの配列決定結果から、春江16AとC84の間で多数の異なるホモ接合遺伝子型があり、雑種春優84は、これらの部位での遺伝子型が春江16AとC84の両方の遺伝子型を有するヘテロ接合状態であり、検出された4株の植物体では、遺伝子型がいずれも春優84と一致し、ヘテロ接合状態であることが示されており、分子生物学的には遺伝子型が雑種の母細胞と完全に一致することが分かった。
【0126】
(実施例4)
1.本実施例で使用されるF雑種は、承認された市販ハイブリッド稲の品種の春優84である。春優84は、不稔系春江16Aと日印中間型広親和性回復系C84とを組み合わせて育成した日印ハイブリッド稲の新しい組み合わせである。該ハイブリッド稲は、産量の増大が期待でき、種子生産の産量が高く、総合的な農業形質に優れ、いもち病抵抗性が良好であり、適応性が広いなどの利点を有する。本実施例で使用される遺伝的形質転換の背景材料は、ハイブリッド稲のF種子を誘導して得たカルスを用いて、有性繁殖段階を行わず、したがって、遺伝子組換えにより得られた遺伝子組換えT世代材料は、遺伝背景に関してはハイブリッド稲F植物体と一致する。
【0127】
2.多遺伝子ノックアウトベクターの構築
主なステップは以下のとおりである。
【0128】
1)単一の標的SK-gRNAの構築:
以下の3つの部位をCRISPR-Cas9遺伝子編集系統によりREC8、OSD1及びPAIR1をノックアウトする部位(下線で示されるPAM配列)として選択した。
【0129】
OSD1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:1):CTGCCGCCGACGAGCAACAAGG
PAIR1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:2):AAGCAACCCAGTGCACCGCTGG
REC8遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:3):CCCATGGCACTAAGGCTCTCCG
2つの相補的DNA配列の設計:フォワード配列の前にGGCA、リバース相補的配列の前にAAACを追加した。
【0130】
SK-gRNA上に2つのAarI酵素切断部位があるので、AarIで酵素切断すると、粘着末端付きのベクターが形成され、設計されたターゲット配列のフォワード及びリバースプライマーを変性してアニーリングした後、T4リガーゼを上記で構築した中間ベクターSK-gRNAに連結し、単一の標的gRNAを得た。
【0131】
2)3つのgRNAのタンデム接続及び最終的なバイナリー発現ベクターの構築:
BglIIとBamHI、NheIとXbaI、SalIとXhoIがアイソコードマーであるという特性を利用して、gRNAの重合を行い、最終的には、重合したgRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1断片をKpnIとBglIIで酵素切断して、断片を回収し、Cas9タンパク質を発現させたバイナリーベクターpC1300-Cas9(KpnIとBamHI部位の間)に連結し、最終的には、REC8、OSD1及びPAIR1という3つの遺伝子を同時にノックアウトし得る多遺伝子ノックアウトベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1を取得し、遺伝子組換えによる水稲多突然変異体の製造に供した。
【0132】
3.遺伝子組換え植物体の取得
複数の遺伝子をノックアウトしたバイナリー発現ベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTLをエレクトロポレーション方法によりアグロバクテリウム(AgroBacteriumtumefaciens)株系EHA105に導入し、アグロバクテリウム媒介法によってこのバイナリー発現ベクターを水稲春優84のカルスに導入した。形質転換の方法としては、具体的には、ハイブリッド稲春優84の種子の胚を滅菌後、カルスを誘導する培地に接種した。1週間培養後、成長状態が良好であり、浅黄色をしており、比較的緩い胚性カルスを選択して、形質転換のアクセプタとした。pC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1プラスミドを含有するEHA105菌株を用いて水稲カルスを感染し、暗所において25℃で3日間培養後、ハイグロマイシン50mg/lを含有する選択培地から耐性カルス及び遺伝子組換え植物体をスクリーニングした。ハイグロマイシン含有選択培地で正常に成長した遺伝子組換え植物体を選択した。
【0133】
4.配列決定による3突然変異体の同定
分子生物学的手段を利用して標的遺伝子の突然変異の状況を同定した。CTAB法により単一の遺伝子組換え植物からゲノムDNAを抽出し、PCRにより標的バンドを増幅した。使用されるプライマー対:
OSD1-F(SEQ ID NO:5): atctccaggatgcctgaagtgag
OSD1-R(SEQ ID NO:6): cctagactgctactcttgctagtgat
PAIR1-F(SEQ ID NO:7): ctgtacctgtgcatctaattacag
PAIR1-R(SEQ ID NO:8): ccccatcttatgtactgagcttgccag
REC8-F(SEQ ID NO:9): gcgacgcttcactcgaagatca
REC8-R(SEQ ID NO:10): cgccatgcctcgttgatctcaa
得られたPCR産物を、配列決定会社に送り、それぞれOSD1-F、PAIR1-F、REC8-Fを配列決定プライマーとして配列決定を行った。得た結果を野生型の配列と比較した。配列決定結果が二峰性であり、縮退コドン戦略により分析し(http://dsdecode.scgene.com/峰図分析を行う)、突然変異情報を直接取得した。
【0134】
3つの部位がいずれも二対立遺伝子変異である突然変異体は、体細胞の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を産生し得る植物体である。
【0135】
5.3突然変異体が所定の段階に発達した後、無菌操作を通じて葯又は花粉をそれぞれ人工的に調製した葯培地に接種し、カルスの形成を誘導し、組織培養により植物体を取得した。
【0136】
6.組織培養した植物体からの倍数性及び遺伝子型が固定した植物体の同定
1)同定して得られた3突然変異体植物の第1世代の植物体において、フローサイトメトリーによって細胞倍数性をスクリーニングし、得られた細胞倍数性が母体の植物体と一致する植物体をスクリーニングした。
【0137】
具体的な方法は以下のとおりである。
【0138】
一定量の植物組織をガラスペトリ皿に入れて、植物溶解バッファーLB01 1~2mlを加え、ブレードで細断し(この操作に亘って氷で行われる)、ペトリ皿内の解離液を吸い取り、50μmナイロンメッシュでろ過して遠心管に入れ、1200rpm、4℃で5min遠心処理し、上清を捨てて、LB01 450μl、予冷PI(1mg/ml)25uL及びRNase A(1mg/ml)を加えて遮光下10min染色し、装置にセットして検出し、二倍体植物体をスクリーニングした。
【0139】
2)全ゲノムの配列決定
2つの親春江16AとC84、春優84及び倍数性が固定した第1世代(ランダムに4株選択)植物体の葉を準備し、DNAを抽出して全ゲノムの配列決定を行った。全ゲノムの配列決定結果から、春江16AとC84の間で多数の異なるホモ接合遺伝子型があり、雑種春優84は、これらの部位での遺伝子型が春江16AとC84の両方の遺伝子型を有するヘテロ接合状態であり、検出された4株の植物体では、遺伝子型がいずれも春優84と一致し、ヘテロ接合状態であることが示されており、分子生物学的には、遺伝子型が雑種の母細胞と完全に一致することが分かった。
【0140】
(実施例5)
1.本実施例で使用されるF雑種は、承認された市販ハイブリッド稲の品種の春優84である。春優84は、不稔系春江16Aと日印中間型広親和性回復系C84とを組み合わせて育成した日印ハイブリッド稲の新しい組み合わせである。該ハイブリッド稲は、産量の増大が期待でき、種子生産の産量が高く、総合的な農業形質に優れ、いもち病抵抗性が良好であり、適応性が広いなどの利点を有する。本実施例で使用される遺伝的形質転換の背景材料は、ハイブリッド稲のF種子を誘導して得たカルスを用いて、有性繁殖段階を行わず、したがって、遺伝子組換えにより得られた遺伝子組換えT世代材料は、遺伝背景に関してはハイブリッド稲F植物体と一致する。
【0141】
2.多遺伝子ノックアウトベクターの構築
主なステップは以下のとおりである。
【0142】
1)単一の標的SK-gRNAの構築:
以下の3つの部位をCRISPR-Cas9遺伝子編集系統によりREC8、OSD1及びPAIR1をノックアウトする部位(下線で示されるPAM配列)として選択した。
【0143】
OSD1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:1):CTGCCGCCGACGAGCAACAAGG
PAIR1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:2):AAGCAACCCAGTGCACCGCTGG
REC8遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:3):CCCATGGCACTAAGGCTCTCCG
2つの相補的DNA配列の設計:フォワード配列の前にGGCA、リバース相補的配列の前にAAACを追加した。
【0144】
SK-gRNA上に2つのAarI酵素切断部位があるので、AarIで酵素切断すると、粘着末端付きのベクターが形成され、設計されたターゲット配列のフォワード及びリバースプライマーを変性してアニーリングした後、T4リガーゼを上記で構築した中間ベクターSK-gRNAに連結し、単一の標的gRNAを得た。
【0145】
2)3つのgRNAのタンデム接続及び最終的なバイナリー発現ベクターの構築:
BglIIとBamHI、NheIとXbaI、SalIとXhoIがアイソコードマーであるという特性を利用して、gRNAの重合を行い、最終的に、重合したgRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1断片をKpnIとBglIIで酵素切断して、断片を回収し、Cas9タンパク質を発現させたバイナリーベクターpC1300-Cas9(KpnIとBamHI部位の間)に連結し、最終的には、REC8、OSD1及びPAIR1という3つの遺伝子を同時にノックアウトした多遺伝子ノックアウトベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1を取得し、遺伝子組換えによる水稲多突然変異体の製造に供した。
【0146】
3.遺伝子組換え植物体の取得
複数の遺伝子をノックアウトしたバイナリー発現ベクターpC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1-gRNA MTLをエレクトロポレーション方法によりアグロバクテリウム(AgroBacteriumtumefaciens)株系EHA105に導入し、アグロバクテリウム媒介法によってこのバイナリー発現ベクターを水稲春優84のカルスに導入した。形質転換の方法としては、具体的には、ハイブリッド稲春優84の種子の胚を滅菌後、カルスを誘導する培地に接種した。1週間培養後、成長状態が良好であり、浅黄色をしており、比較的緩い胚性カルスを選択して、形質転換のアクセプタとした。pC1300-Cas9-gRNA OSD1-gRNA REC8-gRNA PAIR1プラスミドを含有するEHA105菌株を用いて水稲カルスを感染し、暗所において25℃で3日間培養後、ハイグロマイシン50mg/lを含有する選択培地から耐性カルス及び遺伝子組換え植物体をスクリーニングした。ハイグロマイシン含有選択培地で正常に成長した遺伝子組換え植物体を選択した。
【0147】
4.配列決定による3突然変異体の同定
分子生物学的手段を利用して標的遺伝子の突然変異の状況を同定した。CTAB法により単一の遺伝子組換え植物からゲノムDNAを抽出し、PCRにより標的バンドを増幅した。使用されるプライマー対:
OSD1-F(SEQ ID NO:5): atctccaggatgcctgaagtgag
OSD1-R(SEQ ID NO:6): cctagactgctactcttgctagtgat
PAIR1-F(SEQ ID NO:7): ctgtacctgtgcatctaattacag
PAIR1-R(SEQ ID NO:8): ccccatcttatgtactgagcttgccag
REC8-F(SEQ ID NO:9): gcgacgcttcactcgaagatca
REC8-R(SEQ ID NO:10): cgccatgcctcgttgatctcaa
得られたPCR産物を、配列決定会社に送り、それぞれOSD1-F、PAIR1-F、REC8-Fを配列決定プライマーとして配列決定を行った。得た結果を野生型の配列と比較した。配列決定結果が二峰性であり、縮退コドン戦略により分析し(http://dsdecode.scgene.com/峰図分析を行う)、突然変異情報を直接取得した。
【0148】
3つの部位がいずれも二対立遺伝子変異である突然変異体は、体細胞の遺伝子型及び染色体倍数性と一致する配偶子を産生し得る植物体である。
【0149】
5.単為生殖の化学的誘発
REC8、OSD1、PAIR1という3つの遺伝子を同時にノックアウトした水稲材料を準備し、水稲の開花前に、一般的なハイブリッド技術により穂を切り取って雄穂を除去し、次に、稲の穂を処理液として5~50mg/Lマレイン酸ヒドラジド又は2~20mg/L 6-ベンジルアミノアデニンに2~3min浸漬し、袋を緊密にかけて花粉の侵入を回避した。処理してから20日間後、未熟胚又は殻粒を取り培養し、単為生殖の植物体を得た。
【0150】
6.第1世代からの倍数性及び遺伝子型が固定した植物体の同定
1)同定して得られた3突然変異体植物の第1世代の植物体において、フローサイトメトリーによって細胞倍数性をスクリーニングし、得られた細胞倍数性が母体の植物体と一致する植物体をスクリーニングした。
【0151】
具体的な方法は以下のとおりである。
【0152】
一定量の植物組織をガラスペトリ皿に入れて、植物溶解バッファーLB01 1~2mlを加え、ブレードで細断し(この操作に亘って氷で行われる)、ペトリ皿内の解離液を吸い取り、50μmナイロンメッシュでろ過して遠心管に入れ、1200rpm、4℃で5min遠心処理し、上清を捨てて、LB01 450μl、予冷PI(1mg/ml)25uL及びRNase A(1mg/ml)を加えて遮光下10min染色し、装置にセットして検出し、二倍体植物体をスクリーニングした。
【0153】
2)全ゲノムの配列決定
2つの親春江16AとC84、春優84及び倍数性が固定した第1世代(ランダムに4株選択)植物体の葉を準備し、DNAを抽出して全ゲノムの配列決定を行った。全ゲノムの配列決定結果から、春江16AとC84の間で多数の異なるホモ接合遺伝子型があり、雑種春優84は、これらの部位での遺伝子型が春江16AとC84の両方の遺伝子型を有するヘテロ接合状態であり、検出された4株の植物体では、遺伝子型がいずれも春優84と一致し、ヘテロ接合状態であることが示されており、分子生物学的には遺伝子型が雑種の母細胞と完全に一致することが分かった。
【0154】
(実施例6)
1.突然変異体の突然変異誘発及びスクリーニング
大豆品種の中黄39については、EMSにより突然変異誘発し、ハイスループットシークエンシング技術により子孫からREC8とOSD1がそれぞれヘテロ接合突然変異である植物体をスクリーニングし、ヘテロ接合植物体間のハイブリッド及び子孫のスクリーニングによって、REC8とOSD1がいずれもヘテロ接合突然変異である植物体を得て、大豆品種の斉黄34については、EMSにより突然変異誘発し、ハイスループットシークエンシング技術により子孫からSPO11-1とCENH3遺伝子がそれぞれヘテロ接合突然変異である植物体をスクリーニングし、ヘテロ接合植物体間のハイブリッド及び子孫のスクリーニングによって、SPO11-1とCENH3がいずれもヘテロ接合突然変異である植物体を得て、REC8とOSD1がヘテロ接合突然変異である植物体と、SPO11-1とCENH3がいずれもヘテロ接合突然変異である植物体とをハイブリッドし、4つの遺伝子がいずれもヘテロ接合突然変異である植物体を子孫からスクリーニングした。
【0155】
2.遺伝子組換えベクターの構築
卵細胞で特異的に発現させたEC1.2遺伝子プロモータにより野生型CENH3の発現を駆動するバイナリーベクターを構築し、該ベクターを4つの遺伝子がいずれもヘテロ接合突然変異である植物体に形質転換し、植物体の近交の子孫からREC8、OSD1、SPO11-1及びCENH3遺伝子がいずれもホモ接合突然変異であり、且つEC1.2::CENH3遺伝子組換え成分を有する単一の植物体を同定してスクリーニングし、該植物体の近交種子を収穫した。
【0156】
3.第1世代からの倍数性及び遺伝子型が固定した植物体の同定
1)第1世代の植物体において、フローサイトメトリーによって細胞倍数性をスクリーニングし、得られた細胞倍数性が母体の植物体と一致する植物体をスクリーニングした。
【0157】
具体的な方法は以下のとおりである。
【0158】
一定量の植物組織をガラスペトリ皿に入れて、植物溶解バッファーLB01 1~2mlを加え、ブレードで細断し(この操作に亘って氷で行われる)、ペトリ皿内の解離液を吸い取り、50μmナイロンメッシュでろ過して遠心管に入れ、1200rpm、4℃で5min遠心処理し、上清を捨てて、LB01 450μl、予冷PI(1mg/ml)25uL及びRNase A(1mg/ml)を加えて遮光下10min染色し、装置にセットして検出し、二倍体植物体をスクリーニングした。
【0159】
2)遺伝子型の検出
倍数性が固定した第1世代(ランダムに4株選択)及びその前の世代の植物体の葉を準備し、DNAを抽出して、前の世代のハイブリッド材料から16箇所のヘテロ接合状態の部位をランダムにスクリーニングし、検出プライマーを設計した。第1世代の植物体について遺伝子型検出を行ったところ、この4株の植物体では、16個の部位での遺伝子型が前の世代のものと完全に一致し、即ち、いずれもヘテロ接合状態であり、分子生物学的にはヘテロ接合遺伝子型には組換え及び分離が生じないことが証明されている。
【0160】
(実施例7)
1.本実施例で使用されるF雑種は、トウモロコシ雑種の佳禾158であり、LD140×LD975の組み合わせからなる。
【0161】
2.多遺伝子ノックアウトベクターの構築
主なステップは以下のとおりである。
【0162】
1)単一の標的SK-gRNAの構築:
以下の4つの部位をCRISPR-Cas9遺伝子編集系統によりトウモロコシREC8、OSD1、PAIR1及びMTLをノックアウトする部位(下線で示されるPAM配列)として選択した。
【0163】
ZmOSD1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:30):TCTGCCTGTACTGGAGTTATTGG
ZmPAIR1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:31):GGATTGCTGCGACAGCGGCTGGG
ZmREC8遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:32):GGAAGTCCCACGAGTAATTATGG
ZmMTL遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:33): GGAAGGCGAGGATGGTTCCCGGG
2)複数のgRNAのタンデム接続及び最終的なバイナリー発現ベクターの構築:
BglIIとBamHI、NheIとXbaI、SalIとXhoIがアイソコードマーであるという特性を利用して、gRNAの重合を行い、具体的には、SK-gRNA ZmOSD1をKpnIとXhoIで酵素切断し、ベクターとし、SK-gRNA ZmPAIR1をSalIとXbaIで酵素切断して、ZmPAIR1 sgRNA断片を提供し、SK-gRNA ZmREC8をNheIとBamHIで酵素切断して、ZmREC8 sgRNA断片を提供し、SK-gRNA ZmMTLをBglIIとKpnIで酵素切断して、ZmMTL sgRNA断片を提供し、4個以下のgRNAをワンステップ法で急速に重合し、最終的には、重合したgRNA ZmOSD1-gRNA ZmREC8-gRNA ZmPAIR1-gRNA ZmMTL断片をKpnIとBglIIで酵素切断して、断片を回収し、Cas9タンパク質を発現させたバイナリーベクターpC1300-Cas9(KpnIとBamHI部位の間)に連結し、最終的には、トウモロコシREC8、OSD1、PAIR1及びMTLという4つの遺伝子を同時ノックアウトし得る多遺伝子ノックアウトベクターpC1300-Cas9-gRNA ZmOSD1-gRNA ZmREC8-gRNA ZmPAIR1-gRNA ZmMTLを取得し、遺伝子組換えによるトウモロコシ多突然変異体の製造に供した。
【0164】
3.遺伝子組換え植物体の取得
前のステップで得られたトウモロコシの多遺伝子ノックアウトベクターをエレクトロポレーション方法によりアグロバクテリウム・ツメファシエンス菌株LBA4404に導入し、アグロバクテリウム媒介法によってこのバイナリー発現ベクターをトウモロコシ雑種の佳禾158のカルスに導入した。トウモロコシ授粉後、手動で袋掛けを9~12日間行い、雌穗を取って苞葉を剥がし、1層の苞葉を剥がすごとに75%のアルコールをスプレーして表面を消毒し、ブレードを用いてクリーンベンチからサイズ1.0~1.2mmの未熟胚を取り、高浸透圧液に入れて1時間以内維持し、使用に備えた。アグロバクテリウムをOD600値が0.8となるまで培養すると、遠心分離して菌体を収集し、1mol/L懸濁液を用いて再懸濁させた後、アセトシリンゴンを最終濃度が200μmol/Lとなるまで加え、該菌液で未熟胚を5min感染し、次に共培地に移し、25℃で7日間暗培養し、未熟胚を15mg/lハイグロマイシンを含有する選択培地に移し、後期の再生培地から耐性カルス及び遺伝子組換え植物体をスクリーニングした。
【0165】
4.配列決定による4突然変異体の同定
CTAB法により単一の遺伝子組換えトウモロコシからゲノムDNAを抽出し、Hi-Tomによって標的遺伝子の突然変異の状況を同定した(詳細についてはCN201710504178.3参照)。
【0166】
5.第1世代からの倍数性及び遺伝子型が固定したトウモロコシ植物体の同定
1)同定して得られた4突然変異体トウモロコシの第1世代の植物体において、フローサイトメトリーによって細胞倍数性をスクリーニングし、得られた細胞倍数性が母体の植物体と一致する植物体をスクリーニングした。
【0167】
具体的な方法は以下のとおりである。
【0168】
一定量の植物組織をガラスペトリ皿に入れて、植物溶解バッファーLB01 1~2mlを加え、ブレードで細断し(この操作に亘って氷で行われる)、ペトリ皿内の解離液を吸い取り、50μmナイロンメッシュでろ過して遠心管に入れ、1200rpm、4℃で5min遠心処理し、上清を捨てて、LB01 450μl、予冷PI(1mg/ml)25uL及びRNase A(1mg/ml)を加えて遮光下10min染色し、装置にセットして検出し、二倍体植物体をスクリーニングした。
【0169】
2)全ゲノムの配列決定
2つの親LD140とLD975、佳禾158及び倍数性が固定した第1世代トウモロコシ植物体の葉を準備し、DNAを抽出して全ゲノムの配列決定を行った。検出した結果、第1世代のトウモロコシ植物体の遺伝子型が佳禾158と一致し、いずれもヘテロ接合状態であり、分子生物学的には遺伝子型が雑種の母細胞と完全に一致することが分かった。
【0170】
(実施例8)
1.本実施例で使用されるF雑種は、トマト雑種の艾麗莎であり、その母本が低温耐性の近交系「S以2-4」、父本が高品質の耐病性近交系「S28」である。
【0171】
2.多遺伝子ノックアウトベクターの構築
主なステップは以下のとおりである。
【0172】
1)単一の標的SK-gRNAの構築:
以下の4つの部位をCRISPR-Cas9遺伝子編集系統によりトマトREC8、OSD1、SPO11及びMTLをノックアウトする部位(下線で示されるPAM配列)として選択した。
【0173】
SlOSD1遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:34):CAGAAGCAGGGAGAATGGCAGG
SlSPO11遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:35):TGAGGATCTCGCTCGAGGTAGG
SlREC8遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:36):GCACAGGAGGAACCTGCTAAGG
SlMTL遺伝子ノックアウト部位(SEQ ID NO:37): TGATTGCCGGAACGAGCACCGG
2)複数のgRNAのタンデム接続及び最終的なバイナリー発現ベクターの構築:
BglIIとBamHI、NheIとXbaI、SalIとXhoIがアイソコードマーであるという特性を利用して、gRNAの重合を行い、具体的には、SK-gRNA SlOSD1をKpnIとXhoIで酵素切断し、ベクターとし、SK-gRNA SlSPO11をSalIとXbaIで酵素切断してSlSPO11 sgRNA断片を提供し、SK-gRNA SlREC8をNheIとBamHIで酵素切断して、SlREC8 sgRNA断片を提供し、SK-gRNA SlMTLをBglIIとKpnIで酵素切断して、SlMTL sgRNA断片を提供し、4個以下のgRNAをワンステップ法で急速に重合し、最終的には、重合したgRNA SlOSD1-gRNA SlREC8-gRNA SlPAIR1-gRNA SlMTL断片をKpnIとBglIIで酵素切断し、断片を回収し、Cas9タンパク質を発現させたバイナリーベクターpC1300-Cas9(KpnIとBamHI部位の間)に連結し、最終的には、トマトREC8、OSD1、SPO11及びMTLという4つの遺伝子を同時にノックアウトし得る多遺伝子ノックアウトベクターpC1300-Cas9-gRNA SlOSD1-gRNA SlREC8-gRNA SlSPO11-gRNA SlMTLを取得し、遺伝子組換えによるトマト多突然変異体の製造に供した。
【0174】
3.遺伝子組換え植物体の取得
リーフディスク法により前のステップで得たトマト多遺伝子ノックアウトベクターをエレクトロポレーション方法によりアグロバクテリウム菌株EHA105に導入し、アグロバクテリウム媒介法によって、このバイナリー発現ベクターをトマト雑種の艾麗莎のカルスに導入した。
【0175】
トマト種子を無菌処理して1/2 MS培地に播播し、2~3日間暗培養して発芽後、10~12日間明培養後、幼苗の子葉が十分に展開しているが、本葉が成長していないときに、子葉を外植片とし、子葉の両端を切り落とし、中間部分を横方向において2等分し、切断したピースをリーフディスクとした。リーフディスクを予備培養の培地に接種して、葉の正面を上向きにして2日間予備培養した。調製したアグロバクテリウム菌液を用いて予備培養した子葉のリーフディスクを5分間かけて十分に浸漬し、滅菌濾紙を用いてリーフディスクに付いた水を適切に吸い取り、葉の裏面を上向きにし、28℃の培養温度で48~72時間暗培養した。アグロバクテリウムと共培養したリーフディスクを滅菌培地に移して、明培養した。5日間後、リーフディスクをスクリーニング培地に移し、14日間ごとに1回移した。耐性芽が約2cm成長すると、外植片から切り取り、発根培地に導入して、根系が発達した後、土壤に移植した。
【0176】
4.配列決定による4突然変異体の同定
CTAB法により単一の遺伝子組換えトマトからゲノムDNAを抽出し、Hi-Tomにより標的遺伝子の突然変異の状況を同定した(詳細については、CN201710504178.3参照)。
【0177】
5.第1世代からの倍数性及び遺伝子型が固定したトマト植物体の同定
1)同定して得られた4突然変異体トマトの第1世代の植物体において、フローサイトメトリーにより細胞倍数性をスクリーニングし、得られた細胞倍数性が母体の植物体と一致する植物体をスクリーニングした。
【0178】
具体的な方法は以下のとおりである。
【0179】
一定量の植物組織をガラスペトリ皿に入れて、植物溶解バッファーLB01 1~2mlを加え、ブレードで細断し(この操作に亘って氷で行われる)、ペトリ皿内の解離液を吸い取り、50μmナイロンメッシュでろ過して遠心管に入れ、1200rpm、4℃で5min遠心処理し、上清を捨てて、LB01 450μl、予冷PI(1mg/ml)25uL及びRNase A(1mg/ml)を加えて遮光下10min染色し、装置にセットして検出し、二倍体植物体をスクリーニングした。
【0180】
2)全ゲノムの配列決定
2つの親「S以2-4」及び「S28」、トマト雑種の艾麗莎及び倍数性が固定した第1世代のトマト植物体の葉を準備し、DNAを抽出して全ゲノムの配列決定を行った。検出したところ、第1世代のトマト植物体は、遺伝子型が艾麗莎と一致し、いずれもヘテロ接合状態であり、分子生物学的には遺伝子型が雑種の母細胞と完全に一致することが分かった。
【0181】
また、本実施例で使用されるすべてのベクター及び試薬は、本実施例のキットに含まれる。
【0182】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、当業者であれば、本発明は、さまざまな修正や変化を行うことができる。本発明の趣旨及び原則を逸脱することなく行われるすべての修正、同等置換、改良などは、本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
【配列表】
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