(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】絶縁装置
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
H04L25/02 303B
(21)【出願番号】P 2021000419
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上山 賢悟
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-188621(JP,A)
【文献】国際公開第2013/027505(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/134920(WO,A1)
【文献】特開2000-036019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0143490(US,A1)
【文献】特開平10-303991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に配置された一次側回路と、二次側回路と、前記一次側回路と前記二次側回路とを絶縁する絶縁部と、磁界生成部と、信号受信回路とを備え、
前記磁界生成部は、信号用一次側パターンと、信号用二次側パターンと、ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとを含み、前記信号用一次側パターンと前記信号用二次側パターンとが電磁誘導によって結合し、前記ノイズ検知用一次側パターンと、前記ノイズ検知用二次側パターンとが電磁融合によって結合し、
前記一次側回路は、入力信号を受ける第1の信号入力端子と、第2の信号入力端子と、第1のノードと、第2のノードと、第3のノードと、第1の分圧抵抗と、第2の分圧抵抗とを有し、
前記第1のノードは、前記第1の信号入力端子と接続し、前記第2のノードは、前記第2の信号入力端子および基準電源と接続し、
前記第1の分圧抵抗は、前記第1のノードと前記第3のノードの間に配置され、前記第2の分圧抵抗は、前記第3のノードと前記第2のノードとの間に配置され、
前記第1のノードと、前記信号用一次側パターンの第1端とが接続し、前記第3のノードと、前記ノイズ検知用一次側パターンの第1端とが接続し、前記第2のノードと、前記信号用一次側パターンの第2端および前記ノイズ検知用一次側パターンの第2端とが接続し、
前記信号用二次側パターンの第1端と、前記信号受信回路の第1の入力端子とが前記二次側回路を介して接続し、前記ノイズ検知用二次側パターンの第1端と、前記信号受信回路の第2の入力端子とが前記二次側回路を介して接続し、
前記信号受信回路は、前記第2の入力端子の電圧が閾値電圧以上のときに、前記入力信号が異常信号であると判定する、絶縁装置。
【請求項2】
前記入力信号の電圧をV0、前記第1の分圧抵抗の値をR1、前記第2の分圧抵抗の値をR2、前記ノイズ検知用一次側パターンから前記ノイズ検知用二次側パターンへの電圧伝搬係数をM2、前記ノイズ検知用二次側パターンから前記信号受信回路への信号の伝達係数をG2とし、前記信号受信回路の前記第2の入力端子の電圧をVIN2、前記信号受信回路の前記第2の入力端子のハイレベル入力閾値電圧をVihとしたときに、VIN2=V0×G2×M2×R2/(R1+R2)であり、前記入力信号が正常信号のときに、VIN2<Vihである、前記入力信号が異常信号のときに、VIN2≧Vihである、請求項1記載の絶縁装置。
【請求項3】
基板に配置された一次側回路と、二次側回路と、前記一次側回路と前記二次側回路とを絶縁する絶縁部と、磁界生成部と、信号受信回路とを備え、
前記磁界生成部は、信号用一次側パターンと、信号用二次側パターンと、ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとを含み、前記信号用一次側パターンと前記信号用二次側パターンとが電磁誘導によって結合し、前記ノイズ検知用一次側パターンと、前記ノイズ検知用二次側パターンとが電磁融合によって結合し、
前記一次側回路は、入力信号を受ける第1の信号入力端子と、第2の信号入力端子と、第1のノードと、第2のノードと、第3のノードと、第1の分流抵抗と、第2の分流抵抗とを有し、
前記第1のノードは、前記第1の信号入力端子と接続し、前記第2のノードは、前記第2の信号入力端子および基準電源と接続し、
前記第1の分流抵抗は、前記第1のノードと前記信号用一次側パターンの第1端との間に配置され、前記第2の分流抵抗は、前記第1のノードと前記ノイズ検知用一次側パターンの第1端との間に配置され、
前記第2のノードと、前記信号用一次側パターンの第2端および前記ノイズ検知用一次側パターンの第2端とが接続し、
前記信号用二次側パターンの第1端と、前記信号受信回路の第1の入力端子とが前記二次側回路を介して接続し、前記ノイズ検知用二次側パターンの第1端と、前記信号受信回路の第2の入力端子とが前記二次側回路を介して接続し、
前記信号受信回路は、前記第2の入力端子の電圧が閾値電圧以上のときに、前記入力信号が異常信号であると判定する、絶縁装置。
【請求項4】
前記入力信号の電流をI0、前記第1の分流抵抗の値をR3、前記第2の分流抵抗の値をR4、前記ノイズ検知用一次側パターンから前記ノイズ検知用二次側パターンへの電圧伝搬係数をM2、前記ノイズ検知用二次側パターンから前記信号受信回路への信号の伝達係数をG2とし、前記信号受信回路の前記第2の入力端子の電圧をVIN2、前記信号受信回路の前記第2の入力端子のハイレベル入力閾値電圧をVihとしたときに、VIN2=I0×G2×M2×R3/(R3+R4)であり、前記入力信号が正常信号のときに、VIN2<Vihであり、前記入力信号が異常信号のときに、VIN2≧Vihである、請求項3記載の絶縁装置。
【請求項5】
基板に配置された一次側回路と、二次側回路と、前記一次側回路と前記二次側回路とを絶縁する絶縁部と、磁界生成部と、信号受信回路とを備え、
前記磁界生成部は、信号用一次側パターンと、信号用二次側パターンと、ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとを含み、前記信号用一次側パターンと前記信号用二次側パターンとが電磁誘導によって結合し、前記ノイズ検知用一次側パターンと、前記ノイズ検知用二次側パターンとが電磁融合によって結合し、
前記一次側回路は、入力信号を受ける第1の信号入力端子と、第2の信号入力端子と、第1のノードと、第2のノードとを有し、
前記第1のノードは、前記第1の信号入力端子と接続し、前記第2のノードは、前記第2の信号入力端子および基準電源と接続し、
前記第1のノードと、前記信号用一次側パターンの第1端および前記ノイズ検知用一次側パターンの第1端とが接続し、前記第2のノードと、前記信号用一次側パターンの第2端および前記ノイズ検知用一次側パターンの第2端とが接続し、
前記信号用二次側パターンの第1端と、前記信号受信回路の第1の入力端子とが前記二次側回路を介して接続し、前記ノイズ検知用二次側パターンの第1端と、前記信号受信回路の第2の入力端子とが前記二次側回路を介して接続し、
前記信号受信回路は、前記第2の入力端子の電圧が閾値電圧以上のときに、前記入力信号が異常信号であると判定する、絶縁装置。
【請求項6】
前記入力信号の電圧をV0、前記ノイズ検知用一次側パターンから前記ノイズ検知用二次側パターンへの電圧伝搬係数をM2、前記ノイズ検知用二次側パターンから前記信号受信回路への信号の伝達係数をG2とし、前記信号受信回路の前記第2の入力端子の電圧をVIN2、前記信号受信回路の前記第2の入力端子のハイレベル入力閾値電圧をVihとしたときに、VIN2=V0×G2×M2であり、前記入力信号が正常信号のときに、VIN2<Vihである、前記入力信号が異常信号のときに、VIN2≧Vihである、請求項5記載の絶縁装置。
【請求項7】
基板に配置された一次側回路と、二次側回路と、前記一次側回路と前記二次側回路とを絶縁する絶縁部と、磁界生成部と、信号受信回路とを備え、
前記磁界生成部は、信号用一次側パターンと、信号用二次側パターンと、ノイズ検知用一次側パターンとを含み、前記信号用一次側パターンと前記信号用二次側パターンとが電磁誘導によって結合し、前記信号用一次側パターンと前記ノイズ検知用一次側パターンとが電磁融合によって結合し、
前記一次側回路は、入力信号を受ける第1の信号入力端子と、第2の信号入力端子と、第1のノードと、第2のノードと、第3のノードと、第1の分圧抵抗と、第2の分圧抵抗と、トランジスタとを有し、
前記第1のノードは、前記第1の信号入力端子と接続し、前記第2のノードは、前記第2の信号入力端子および基準電源と接続し、
前記第1の分圧抵抗は、前記第1のノードと前記第3のノードとの間に配置され、前記第2の分圧抵抗は、前記第3のノードと前記第2のノードとの間に配置され、前記トランジスタは、前記第1のノードと前記ノイズ検知用一次側パターンの第1端との間に配置され、前記トランジスタの制御電極が前記第3のノードに接続され、
前記第1のノードと、前記信号用一次側パターンの第1端とが接続し、前記第2のノードと、前記信号用一次側パターンの第2端および前記ノイズ検知用一次側パターンの第2端とが接続し、
前記信号用二次側パターンの第1端と、前記信号受信回路の第1の入力端子とが前記二次側回路を介して接続し、前記入力信号が異常信号のときに前記トランジスタがオンする、絶縁装置。
【請求項8】
前記トランジスタの閾値電圧をVth、前記入力信号の電圧をV0、前記第2の分圧抵抗の両端の電圧をVr2、前記第1の分圧抵抗の値をR1、前記第2の分圧抵抗の値をR2としたときに、Vr2=V0×R2/(R1+R2)であり、前記入力信号を正常信号のときに、Vr2<Vthであり、前記入力信号が異常信号のときに、Vr2≧Vthである、請求項7記載の絶縁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサなどの外部接続機器からの信号の受信、あるいは、リレーまたはダイオードなどのON/OFF制御のためのデジタル入力回路は、接続先からのノイズの侵入を防止するために、フォトカプラ、またはデジタルアイソレータを用いて絶縁する。しかしながら、近年、演算処理の高速化に伴い、制御用IC、および周辺メモリのコストが増加する傾向にあるため、機器全体のコストを維持するために、出力回路部のコスト低減が望まれている。
【0003】
円環状の金属導体を重ね合わせて磁界共鳴結合によって絶縁素子を用いずに信号を伝搬する方法が知られている。特許文献1には、この方法をプリント基板のパターンと受動回路素子のみで構成する技術(以下、パターンアイソレータと表記)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際の電子機器の使用環境において、通信線へ重畳した伝導ノイズによる通信の誤検知が課題となる。パターンアイソレータにおいても、電磁誘導による結合のため、通信線を伝導してきた重畳ノイズも通常の通信信号と同様に伝達されてしまう。その結果、デジタル入力回路は、ノイズを通信信号と誤検知してしまう。
【0006】
特許文献1については、パルス変換が必要であるため、製品サイズ、製品コスト、および通信遅延時間が増大する。
【0007】
本開示の目的は、簡易な構成によって、ノイズによる通信の誤検知を回避することができる絶縁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の絶縁装置は、基板に配置された一次側回路と、二次側回路と、一次側回路と二次側回路とを絶縁する絶縁部と、磁界生成部と、信号受信回路とを備える。磁界生成部は、信号用一次側パターンと、信号用二次側パターンと、ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとを含む。信号用一次側パターンと信号用二次側パターンとが電磁誘導によって結合する。ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとが電磁融合によって結合する。一次側回路は、入力信号を受ける第1の信号入力端子と、第2の信号入力端子と、第1のノードと、第2のノードと、第3のノードと、第1の分圧抵抗と、第2の分圧抵抗とを有する。第1のノードは、第1の信号入力端子と接続する。第2のノードは、第2の信号入力端子および基準電源と接続する。第1の分圧抵抗は、第1のノードと第3のノードの間に配置される。第2の分圧抵抗は、第3のノードと第2のノードとの間に配置される。第1のノードと、信号用一次側パターンの第1端とが接続する。第3のノードと、ノイズ検知用一次側パターンの第1端とが接続する。第2のノードと、信号用一次側パターンの第2端およびノイズ検知用一次側パターンの第2端とが接続する。信号用二次側パターンの第1端と、信号受信回路の第1の入力端子とが二次側回路を介して接続する。ノイズ検知用二次側パターンの第1端と、信号受信回路の第2の入力端子とが二次側回路を介して接続する。信号受信回路は、第2の入力端子の電圧が閾値電圧以上のときに、入力信号が異常信号であると判定する。
【0009】
本開示の絶縁装置は、基板に配置された一次側回路と、二次側回路と、一次側回路と二次側回路とを絶縁する絶縁部と、磁界生成部と、信号受信回路とを備える。磁界生成部は、信号用一次側パターンと、信号用二次側パターンと、ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとを含む。信号用一次側パターンと信号用二次側パターンとが電磁誘導によって結合する。ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとが電磁融合によって結合する。一次側回路は、入力信号を受ける第1の信号入力端子と、第2の信号入力端子と、第1のノードと、第2のノードと、第3のノードと、第1の分流抵抗と、第2の分流抵抗とを有する。第1のノードは、第1の信号入力端子と接続する。第2のノードは、第2の信号入力端子および基準電源と接続する。第1の分流抵抗は、第1のノードと信号用一次側パターンの第1端との間に配置される。第2の分流抵抗は、第1のノードとノイズ検知用一次側パターンの第1端との間に配置される。第2のノードと、信号用一次側パターンの第2端およびノイズ検知用一次側パターンの第2端とが接続する。信号用二次側パターンの第1端と、信号受信回路の第1の入力端子とが二次側回路を介して接続する。ノイズ検知用二次側パターンの第1端と、信号受信回路の第2の入力端子とが二次側回路を介して接続する。信号受信回路は、第2の入力端子の電圧が閾値電圧以上のときに、入力信号が異常信号であると判定する。
【0010】
本開示の絶縁装置は、基板に配置された一次側回路と、二次側回路と、一次側回路と二次側回路とを絶縁する絶縁部と、磁界生成部と、信号受信回路とを備える。磁界生成部は、信号用一次側パターンと、信号用二次側パターンと、ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとを含む。信号用一次側パターンと信号用二次側パターンとが電磁誘導によって結合する。ノイズ検知用一次側パターンと、ノイズ検知用二次側パターンとが電磁融合によって結合する。一次側回路は、入力信号を受ける第1の信号入力端子と、第2の信号入力端子と、第1のノードと、第2のノードとを有する。第1のノードは、第1の信号入力端子と接続する。第2のノードは、第2の信号入力端子および基準電源と接続する。第1のノードと、信号用一次側パターンの第1端およびノイズ検知用一次側パターンの第1端とが接続する。第2のノードと、信号用一次側パターンの第2端およびノイズ検知用一次側パターンの第2端とが接続する。信号用二次側パターンの第1端と、信号受信回路の第1の入力端子とが二次側回路を介して接続する。ノイズ検知用二次側パターンの第1端と、信号受信回路の第2の入力端子とが二次側回路を介して接続する。信号受信回路は、第2の入力端子の電圧が閾値電圧以上のときに、入力信号が異常信号であると判定する。
【0011】
本開示の絶縁装置は、基板に配置された一次側回路と、二次側回路と、一次側回路と二次側回路とを絶縁する絶縁部と、磁界生成部と、信号受信回路とを備える。磁界生成部は、信号用一次側パターンと、信号用二次側パターンと、ノイズ検知用一次側パターンとを含む。信号用一次側パターンと信号用二次側パターンとが電磁誘導によって結合する。信号用一次側パターンとノイズ検知用一次側パターンとが電磁融合によって結合する。一次側回路は、入力信号を受ける第1の信号入力端子と、第2の信号入力端子と、第1のノードと、第2のノードと、第3のノードと、第1の分圧抵抗と、第2の分圧抵抗と、トランジスタとを有する。第1のノードは、第1の信号入力端子と接続する。第2のノードは、第2の信号入力端子および基準電源と接続する。第1の分圧抵抗は、第1のノードと第3のノードとの間に配置される。第2の分圧抵抗は、第3のノードと第2のノードとの間に配置される。トランジスタは、第1のノードとノイズ検知用一次側パターンの第1端との間に配置され、トランジスタの制御電極が第3のノードに接続される。第1のノードと、信号用一次側パターンの第1端とが接続する。第2のノードと、信号用一次側パターンの第2端およびノイズ検知用一次側パターンの第2端とが接続する。信号用二次側パターンの第1端と、信号受信回路の第1の入力端子とが二次側回路を介して接続する。入力信号が異常信号のときにトランジスタがオンする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、簡易な構成によって、ノイズによる通信の誤検知を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】磁界生成部9の伝搬特性10を表わす図である。
【
図3】入力信号電圧11と、伝搬信号電圧12とを表わす図である。
【
図4】実施の形態1の一次側回路4および磁界生成部9の構成を表わす図である。
【
図5】磁界生成部9の具体的な配線パターン例を表わす図である。
【
図7】実施の形態2の一次側回路4および磁界生成部9の構成を表わす図である。
【
図8】実施の形態3の一次側回路4および磁界生成部9の構成を表わす図である。
【
図9】実施の形態4の一次側回路4および磁界生成部9の構成を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の絶縁装置の平面図である。
【0016】
絶縁装置は、基板1と、基板1上に配置される入力回路7および信号受信回路8を備える。
【0017】
基板1と、外部接続機器2とはケーブル3で接続されている。外部接続機器2からケーブル3を介して基板1に入力された信号は、基板1上の入力回路7を伝搬し、信号受信回路8に入力される。
【0018】
入力回路7は、一次側回路4と、絶縁部5と、二次側回路6と、磁界生成部9とを備える。
【0019】
磁界生成部9は、一次側回路4と二次側回路6とを電磁誘導により結合させる。絶縁部5によって、一次側回路4と二次側回路6とが分離される。その結果、一次側回路4と二次側回路6とは電気的に非接触となる。磁界生成部9は、フォトカプラまたはデジタルアイソレータのような絶縁素子ではなく、パターン配線で実現される。以降、これをパターンアイソレータと表現する。
【0020】
一次側回路4および二次側回路6の伝搬経路に抵抗またはコンデンサが接続されていてもよい。基板1と外部接続機器2とは、ケーブル3で接続されるのではなく、コネクタ等で直接続されていてもよい。
【0021】
図2は、磁界生成部9の伝搬特性10を表わす図である。
【0022】
図2において、横軸は周波数であり、縦軸はS12である。S12は、一次側回路4から放出されたエネルギーのうち、二次側回路6へ伝搬するエネルギーの比率である。
【0023】
伝搬特性10は、磁界生成部9に応じて変化する。
図2に示すように、磁気共鳴による伝搬方式と異なり、特定の周波数でのみS12が高くならない。周波数の変化に対してS12は、ほぼ一定である。したがって、磁界生成部9によって、外部接続機器2からの信号を、周波数に依存せずに、信号受信回路8に伝搬することが可能となる。
【0024】
図3は、入力信号電圧11と、伝搬信号電圧12とを表わす図である。
【0025】
図3には、磁界生成部9の特性が
図2に示す伝搬特性10の場合に、一次側回路4に入力信号電圧11を印加した場合に、磁界生成部9によって二次側回路6および信号受信回路8へ送られる伝搬信号電圧12が表されている。
【0026】
入力信号電圧11の立ち上がり時および立ち下がり時において、伝搬信号電圧12の絶対値は最も大きくなる。
図3においては、入力信号電圧11の立ち上がり時に、伝搬信号電圧12は正となり、入力信号電圧11の立ち下がり時に、伝搬信号電圧12は負となっているが、正負が逆になってもよい。入力信号電圧11は、接続される外部接続機器2によって異なる。
図3に示す入力信号電圧11と異なる電圧波形が入力されてもよいし、それにより発生する電圧が伝搬信号電圧12と異なってもよい。
【0027】
伝搬信号電圧12の値が正の範囲において、1番目に大きいピークの値よりも低く、かつ2番目に大きいピークの値よりも高い値を立ち上がり基準電圧13とする。伝搬信号電圧12の値が負の範囲において、1番目に大きいピークの値よりも低く、かつ2番目に大きいピークの値よりも高い値を立ち下がり基準電圧14とする。
【0028】
信号受信回路8は、伝搬信号電圧12が立ち上がり基準電圧13よりも高くなった時に入力信号電圧11が立ち上がったと判別する。信号受信回路8は、伝搬信号電圧12が立ち下がり基準電圧14よりも低くなった時に入力信号電圧11が立ち下がったと判別する。これによって、信号受信回路8が伝搬信号電圧12から入力信号電圧11の復号が可能となる。
【0029】
なお、ここまででパターンアイソレータによる絶縁性と信号の伝搬について説明を行ってきた。入力信号が通信のための意図した正常信号であっても、外来ノイズが正常信号に重畳した異常信号もしくは外来ノイズのみの異常信号であっても、パターンアイソレータの特性は同様に働く。そのため、信号受信回路8が異常信号を正常信号として認識してしまう可能性がある。その結果、システムが誤動作することが問題となる。
【0030】
図4は、実施の形態1の一次側回路4および磁界生成部9の構成を表わす図である。
【0031】
磁界生成部9は、信号用一次側円環パターン15および信号用二次側円環パターン16と、ノイズ検知用一次側円環パターン17およびノイズ検知用二次側円環パターン18とを備える。
【0032】
信号用一次側円環パターン15と信号用二次側円環パターン16とが電磁誘導によって結合する。ノイズ検知用一次側円環パターン17と、ノイズ検知用二次側円環パターン18とが電磁融合によって結合する。
【0033】
一次側回路4は、第1の信号入力端子IV1と、第2の信号入力端子IV2と、第1のノードND1と、第2のノードND2と、第3のノードND3と、第1の分圧抵抗19と、第2の分圧抵抗20とを備える。
【0034】
第1の信号入力端子IV1は、ケーブル3を介して外部接続機器2と接続する。第1の信号入力端子IV1は、入力信号を受ける。
【0035】
第1のノードND1は、第1の信号入力端子IV1と接続する。
【0036】
第2のノードND2は、第2の信号入力端子IV2および基準電源(GND)と接続する。第1の分圧抵抗19は、第1のノードND1と第3のノードND3との間に配置される。第2の分圧抵抗20は、第3のノードND3と第2のノードND2との間に配置される。
【0037】
第1のノードND1と、信号用一次側円環パターン15の第1端E1とが接続する。
【0038】
第3のノードND3と、ノイズ検知用一次側円環パターン17の第1端F1とが接続する。
【0039】
第2のノードND2と、信号用一次側円環パターン15の第2端E2およびノイズ検知用一次側円環パターン17の第2端F2とが接続する。
【0040】
信号用二次側円環パターン16の第1端J1と、信号受信回路8の第1の入力端子IP1とが二次側回路6を介して接続する。信号用二次側円環パターン16の第2端J2は、基準電源(GND)と接続する。
【0041】
ノイズ検知用二次側円環パターン18の第1端H1と、信号受信回路8の第2の入力端子IP2とが二次側回路6を介して接続する。ノイズ検知用二次側円環パターン18の第2端H2は、基準電源(GND)と接続する。
【0042】
信号受信回路8は、第2の入力端子IP2の電圧がハイレベル入力閾値電圧Vih以上のときに、第1の信号入力端子IV1に入力された入力信号が異常信号であると判定する。
【0043】
図5は、磁界生成部9の具体的な配線パターン例を表わす図である。
【0044】
信号用一次側円環パターン15は、一次側回路4との接続部分以外に切れ目はない。信号用二次側円環パターン16は、二次側回路6との接続部分以外に切れ目はない。
【0045】
信号用一次側円環パターン15の円環および信号用二次側円環パターン16の円環とが上下に重なって配置される。
【0046】
信号用一次側円環パターン15は、図示しない一次側円環パターン層で配線され、信号用二次側円環パターン16は、図示しない二次側円環パターン層で配線される。一次側円環パターン層と二次側円環パターン層は基板1の別の層である。
【0047】
外部接続機器2から入力信号が入力されたときに、
図5に示すように、信号用一次側円環パターン15に電流が流れ、磁界121が発生する。発生した磁界121は、信号用二次側円環パターン16の内側を通る。これによって、二次側回路6に伝搬信号電圧12が伝搬する。
【0048】
ノイズ検知用一次側円環パターン17およびノイズ検知用二次側円環パターン18の構成および動作は、信号用一次側円環パターン15の円環および信号用二次側円環パターン16の構成および動作と同様である。
【0049】
ノイズ検知用一次側円環パターン17は、一次側回路4に設けられた第2の分圧抵抗20の両端と接続されている点が信号用一次側円環パターン15とは異なるが、同様に一次側回路4との接続部以外に切れ目はない。ノイズ検知用二次側円環パターン18は、信号用二次側円環パターン16と同様に、二次側回路6との接続部分以外に切れ目はない。
【0050】
本実施の形態では、信号用二次側円環パターン16の起電圧とノイズ検知用二次側円環パターン18の起電圧に差分を発生させることによって、正常信号の受信と異常信号の検知とを実現する。検知する異常信号は、正常信号の電圧振幅の最大値よりも振幅が大きいノイズ信号、および正常信号よりも立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短い急峻な高周波信号を対象とする。
【0051】
信号用一次側円環パターン15の両端の電圧をVsd1、信号用二次側円環パターン16の両端の電圧をVsd2、ノイズ検知用一次側円環パターン17の両端の電圧をVnd1、ノイズ検知用二次側円環パターン18の両端の電圧をVnd2、信号受信回路8の第1の入力端子IP1の電圧をVIN1、信号受信回路8の第2の入力端子IP2の電圧をVIN2とする。
【0052】
第1の分圧抵抗19の抵抗値をR1、第2の分圧抵抗20の抵抗値をR2とする。信号用一次側円環パターン15から信号用二次側円環パターン16への電圧伝搬係数をM1、信号用二次側円環パターン16から信号受信回路8への信号の伝達係数をG1、ノイズ検知用一次側円環パターン17からノイズ検知用二次側円環パターン18への電圧伝搬係数をM2、ノイズ検知用二次側円環パターン18から信号受信回路8への信号の伝達係数をG2とする。信号受信回路8の第1の入力端子IP1および第2の入力端子IP2のハイレベル入力閾値電圧をVihとする。信号受信回路8の第1の入力端子IP1の電圧がハイレベル入力閾値電圧Vih以上のときに、信号受信回路8は、第1の入力端子IP1の入力信号としてハイレベルの電圧を生成する。信号受信回路8の第1の入力端子IP1の電圧がハイレベル入力閾値電圧Vih未満のときに、信号受信回路8は、第1の入力端子IP1の入力信号としてロウレベルの電圧を生成する。信号受信回路8の第2の入力端子IP2の電圧がハイレベル入力閾値電圧Vih以上のときに、信号受信回路8は、第2の入力端子IP2の入力信号としてハイレベルの電圧を生成する。信号受信回路8の第2の入力端子IP2の電圧がハイレベル入力閾値電圧Vih未満のときに、信号受信回路8は、第2の入力端子IP2の入力信号としてロウレベルの電圧を生成する。入力信号の電圧をV0とする。以下の式が成立する。
【0053】
Vsd1=V0・・・(A1)
Vsd2=M1×Vsd1=V0×M1・・・(A2)
VIN1=G1×Vsd2=V0×G1×M1・・・(A3)
Vnd1=V0×R2/(R1+R2)・・・(A4)
Vnd2=M2×Vnd1=V0×M2×R2/(R1+R2)・・・(A5)
VIN2=G2×Vnd2=V0×G2×M2×R2/(R1+R2)・・・(A6)
入力信号が正常信号のときに、以下が成り立つ。
【0054】
VIN2<Vih・・・(A7)
入力信号が異常信号のときに、以下が成り立つ。
【0055】
VIN2≧Vih・・・(A8)
より具体的には、以下が成り立つとする。入力信号が正常信号のときに、V0の最大振幅をVsmaxとする。入力信号が異常信号のときに、V0の振幅をVnとする。以下の式が成り立つ。
【0056】
Vn>>Vsmax・・・(A9)
V0=Vsmaxのときに、以下の式が成り立つとする。
【0057】
VIN2=Vsmax×G2×M2×R2/(R1+R2)<Vih・・・(A10)
V0=Vnのときに、以下の式が成り立つとする。
【0058】
VIN2=Vn×G2×M2×R2/(R1+R2)≧Vih・・・(A11)
式(A10)および式(A11)が成り立つように、第1の分圧抵抗19の抵抗値R1および第2の分圧抵抗20の抵抗値R2を調整する。実際の製品設計での抵抗値R1、R2の選定においては、製品ごとのVsmax、使用環境で想定されるVnおよび周波数に合わせて、評価を行いながら選定する必要がある。実施の形態1では最も簡素な構成として抵抗分圧用に抵抗を2つの構成としているが、3つ以上で実現してもよい。
【0059】
あるいは、式(A10)および式(A11)が成り立つように、第1の分圧抵抗19の抵抗値R1、第2の分圧抵抗20の抵抗値R2、ノイズ検知用一次側円環パターン17からノイズ検知用二次側円環パターン18への電圧伝搬係数M2、ノイズ検知用二次側円環パターン18から信号受信回路8への信号の伝達係数G2を調整することとしてもよい。M2、G2の調整のために、ノイズ検知用一次側円環パターン17およびノイズ検知用二次側円環パターン18のそれぞれの円環の形状、円環の面積、巻き数、および/または円環パターン間隔を調整することとしてもよい。
【0060】
信号受信回路8の第2の入力端子IP2に入力される信号がロウレベルのときに、信号受信回路8は、入力信号が正常信号であると判別する。
【0061】
信号受信回路8の第2の入力端子IP2に入力される信号がハイレベルのときに、信号受信回路8は、入力信号が異常信号であると判別する。この場合に、信号受信回路8の第1の入力端子IP1に入力される信号を破棄する。信号受信回路8におけるノイズ検知の判断の精度向上のために検出回数を複数回としてもよい。
【0062】
以上のように、本実施の形態によれば、正常信号が入力された場合に、異常信号であると誤って検出するのを防止できる。正常信号よりも大きいノイズが重畳した異常信号が入力された場合に、正常信号であると誤って検出するのを防止できる。
【0063】
実施の形態1の変形例.
図6は、信号受信回路8の一例を表わす図である。
【0064】
信号受信回路8は、ANDゲート21と、信号受信用IC18とを備える。
【0065】
ANDゲート21は、VIN1とVIN2とを受ける。ANDゲート21は、VIN1がVih以上、かつVIN2がVih未満のときに限り、ハイレベルを出力する。
【0066】
信号受信用IC18は、ANDゲート21の出力を受ける。
【0067】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2の一次側回路4および磁界生成部9の構成を表わす図である。
【0068】
磁界生成部9は、信号用一次側円環パターン15および信号用二次側円環パターン16と、ノイズ検知用一次側円環パターン17およびノイズ検知用二次側円環パターン18とを備える。
【0069】
信号用一次側円環パターン15と信号用二次側円環パターン16とが電磁誘導によって結合する。ノイズ検知用一次側円環パターン17と、ノイズ検知用二次側円環パターン18とが電磁融合によって結合する。
【0070】
一次側回路4は、第1の信号入力端子IV1と、第2の信号入力端子IV2と、第1のノードND1と、第2のノードND2と、第3のノードND3と、第1の分流抵抗22と、第2の分流抵抗23とを備える。
【0071】
第1の信号入力端子IV1は、ケーブル3を介して外部接続機器2と接続する。第1の信号入力端子IV1は、入力信号を受ける。
【0072】
第1のノードND1は、第1の信号入力端子IV1と接続する。第2のノードND2は、第2の信号入力端子IV2および基準電源(GND)と接続する。第1の分流抵抗22は、第1のノードND1と信号用一次側円環パターン15の第1端E1との間に配置される。第2の分流抵抗23は、第1のノードND1とノイズ検知用一次側円環パターン17の第1端F1との間に配置される。
【0073】
第2のノードND2と、信号用一次側円環パターン15の第2端E2およびノイズ検知用一次側円環パターン17の第2端F2とが接続する。
【0074】
信号用二次側円環パターン16の第1端J1と、信号受信回路8の第1の入力端子IP1とが二次側回路6を介して接続する。信号用二次側円環パターン16の第2端J2は、基準電源(GND)と接続する。
【0075】
ノイズ検知用二次側円環パターン18の第1端H1と、信号受信回路8の第2の入力端子IP2とが二次側回路6を介して接続する。ノイズ検知用二次側円環パターン18の第2端H2は、基準電源(GND)と接続する。
【0076】
信号受信回路8は、第2の入力端子IP2の電圧がハイレベル入力閾値電圧Vih以上のときに、第1の信号入力端子IV1に入力された入力信号が異常信号であると判定する。
【0077】
第1の分流抵抗22および第2の分流抵抗23の抵抗値をそれぞれR3、R4とする。実施の形態1では、抵抗分圧によって、ノイズ検知用一次側円環パターン17の両端の電圧Vnd1の調整を行う点に対して、実施の形態2では、抵抗分流によってノイズ検知用一次側円環パターンの17に流れる電流量を調整する。入力信号の電流(すなわち、入力信号によって、一次側回路4に流れる電流)をI0とする。以下の式が成り立つ。
【0078】
Vsd1=I0×R4/(R3+R4)・・・(B1)
Vsd2=M1×Vsd1=I0×M1×R4/(R3+R4)・・・(B2)
VIN1=G1×Vsd2=I0×G1×M1×R4/(R3+R4)・・・(B3)
Vnd1=I0×R3/(R3+R4)・・・(B4)
Vnd2=M2×Vnd1=I0×M2×R3/(R3+R4)・・・(B5)
VIN2=G2×Vnd2=I0×G2×M2×R3/(R3+R4)・・・(B6)
入力信号が正常信号のときに、以下が成り立つ。
【0079】
VIN2<Vih・・・(B7)
入力信号が異常信号のときに、以下が成り立つ。
【0080】
VIN2≧Vih・・・(B8)
より具体的には、以下が成り立つとする。入力信号が正常信号のときに、I0の最大振幅をIsmax、入力信号が異常信号のときに、I0の振幅(総電流量)をInとする。以下の式が成り立つこととする。
【0081】
In>>Ismax・・・(B9)
I0=Ismaxのときに、以下の式が成り立つとする。
【0082】
VIN2=Ismax×G2×M2×R3/(R3+R4)<Vih・・・(B10)
I0=Inのときに、以下の式が成り立つとする。
【0083】
VIN2=In×G2×M2×R3/(R3+R4)≧Vih・・・(B11)
式(B10)および式(B11)が成り立つように、第1の分流抵抗22の抵抗値R3および第2の分流抵抗23の抵抗値R4を調整する。実際の製品設計での抵抗値R3、R4の選定においては、製品ごとのIsmax、使用環境で想定されるノイズの大きさInおよび周波数に合わせて、評価を行いながら選定する必要がある。実施の形態2では最も簡素な構成として分流抵抗用に抵抗を2つの構成としているが、3つ以上で実現してもよい。
【0084】
あるいは、式(B10)および式(B11)が成り立つように、第1の分流抵抗22の抵抗値R3および第2の分流抵抗23の抵抗値R4、ノイズ検知用一次側円環パターン17からノイズ検知用二次側円環パターン18への電圧伝搬係数M2、ノイズ検知用二次側円環パターン18から信号受信回路8への信号の伝達係数G2を調整することとしてもよい。M2、G2の調整のために、ノイズ検知用一次側円環パターン17およびノイズ検知用二次側円環パターン18のそれぞれの円環の形状、円環の面積、巻き数、および/または円環パターン間隔を調整することとしてもよい。
【0085】
信号受信回路8の第2の入力端子IP2に入力される信号がロウレベルのときに、信号受信回路8は、入力信号が正常信号であると判別する。
【0086】
信号受信回路8の第2の入力端子IP2に入力される信号がハイレベルのときに、信号受信回路8は、入力信号が異常信号であると判別する。この場合に、信号受信回路8の第1の入力端子IP1に入力される信号を破棄する。信号受信回路8におけるノイズ検知の判断の精度向上のために検出回数を複数回としてもよい。
【0087】
以上のように、本実施の形態によれば、正常信号が入力された場合に、異常信号であると誤って検出するのを防止できる。正常信号よりも大きいノイズが重畳した異常信号が入力された場合に、正常信号であると誤って検出するのを防止できる。
【0088】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3の一次側回路4および磁界生成部9の構成を表わす図である。
【0089】
磁界生成部9は、信号用一次側円環パターン15および信号用二次側円環パターン16と、ノイズ検知用一次側円環パターン17およびノイズ検知用二次側円環パターン18とを備える。
【0090】
信号用一次側円環パターン15と信号用二次側円環パターン16とが電磁誘導によって結合する。ノイズ検知用一次側円環パターン17と、ノイズ検知用二次側円環パターン18とが電磁融合によって結合する。
【0091】
一次側回路4は、第1の信号入力端子IV1と、第2の信号入力端子IV2と、第1のノードND1と、第2のノードND2とを備える。
【0092】
第1の信号入力端子IV1は、ケーブル3を介して外部接続機器2と接続する。第1の信号入力端子IV1は、入力信号を受ける。
【0093】
第1のノードND1は、第1の信号入力端子IV1と接続する。
【0094】
第2のノードND2は、第2の信号入力端子IV2および基準電源(GND)と接続する。第1のノードND1と、信号用一次側円環パターン15の第1端E1およびノイズ検知用一次側円環パターン17の第1端F1とが接続する。
【0095】
信号用二次側円環パターン16の第1端J1と、信号受信回路8の第1の入力端子IP1とが二次側回路6を介して接続する。信号用二次側円環パターン16の第2端J2は、基準電源(GND)と接続する。
【0096】
ノイズ検知用二次側円環パターン18の第1端H1と、信号受信回路8の第2の入力端子IP2とが二次側回路6を介して接続する。ノイズ検知用二次側円環パターン18の第2端H2は、基準電源(GND)と接続する。
【0097】
信号受信回路8は、第2の入力端子IP2の電圧がハイレベル入力閾値電圧Vih以上のときに、第1の信号入力端子IV1に入力された入力信号が異常信号であると判定する。
【0098】
入力信号の電圧をV0とする。以下の式が成立する。
【0099】
Vsd1=V0・・・(C1)
Vsd2=M1×Vsd1=V0×M1・・・(C2)
VIN1=G1×Vsd2=V0×G1×M1・・・(C3)
Vnd1=V0・・・(C4)
Vnd2=M2×Vnd1=V0×M2・・・(C5)
VIN2=G2×Vnd2=V0×G2×M2・・・(C6)
入力信号が正常信号のときに、以下が成り立つ。
【0100】
VIN2<Vih・・・(C7)
入力信号が異常信号のときに、以下が成り立つ。
【0101】
VIN2≧Vih・・・(C8)
より具体的には、以下が成り立つとする。入力信号が正常信号のときに、V0の最大振幅をVsmaxとする。入力信号が異常信号のときに、V0の振幅をVnとする。以下の式が成り立つ。
【0102】
Vn>>Vsmax・・・(C9)
V0=Vsmaxのときに、以下の式が成り立つとする。
【0103】
VIN2=Vsmax×G2×M2<Vih・・・(C10)
V0=Vnのときに、以下の式が成り立つとする。
【0104】
VIN2=Vn×G2×M2≧Vih・・・(C11)
式(C10)および式(C11)が成り立つように、ノイズ検知用一次側円環パターン17からノイズ検知用二次側円環パターン18への電圧伝搬係数M2、ノイズ検知用二次側円環パターン18から信号受信回路8への信号の伝達係数G2を調整する。M2、G2の調整のために、ノイズ検知用一次側円環パターン17およびノイズ検知用二次側円環パターン18のそれぞれの円環の形状、円環の面積、巻き数、および/または円環パターン間隔を調整することとしてもよい。
【0105】
信号受信回路8の第2の入力端子IP2に入力される信号がロウレベルのときに、信号受信回路8は、入力信号が正常信号であると判別する。
【0106】
信号受信回路8の第2の入力端子IP2に入力される信号がハイレベルのときに、信号受信回路8は、入力信号が異常信号であると判別する。この場合に、信号受信回路8の第1の入力端子IP1に入力される信号を破棄する。信号受信回路8におけるノイズ検知の判断の精度向上のために検出回数を複数回としてもよい。
【0107】
以上のように、本実施の形態によれば、正常信号が入力された場合に、異常信号であると誤って検出するのを防止できる。正常信号よりも大きいノイズが重畳した異常信号が入力された場合に、正常信号であると誤って検出するのを防止できる。
【0108】
実施の形態4.
図9は、実施の形態4の一次側回路4および磁界生成部9の構成を表わす図である。
【0109】
磁界生成部9は、信号用一次側円環パターン15および信号用二次側円環パターン16と、ノイズ検知用一次側円環パターン17とを備える。
【0110】
信号用一次側円環パターン15と信号用二次側円環パターン16とが電磁誘導によって結合する。信号用一次側円環パターン15とノイズ検知用一次側円環パターン17とが電磁融合によって結合する。信号用一次側円環パターン15の巻線の向きとノイズ検知用一次側円環パターン17の巻き線の向きとが逆向きである。これによって、ノイズ検知用一次側円環パターン17によって発生した磁界が、信号用一次側円環パターン15によって発生した磁界を打ち消すことができる。
【0111】
一次側回路4は、第1の信号入力端子IV1と、第2の信号入力端子IV2と、第1のノードND1と、第2のノードND2と、第3のノードND3と、第1の分圧抵抗19と、第2の分圧抵抗20と、トランジスタ24とを備える。
【0112】
第1の信号入力端子IV1は、ケーブル3を介して外部接続機器2と接続する。第1の信号入力端子IV1は、入力信号を受ける。
【0113】
第1のノードND1は、第1の信号入力端子IV1と接続する。
【0114】
第2のノードND2は、第2の信号入力端子IV2および基準電源(GND)と接続する。第1の分圧抵抗19は、第1のノードND1と第3のノードND3との間に配置される。第2の分圧抵抗20は、第3のノードND3と第2のノードND2との間に配置される。トランジスタ24は、第1のノードND1と、ノイズ検知用一次側円環パターン17の第1端F1との間に配置される。トランジスタ24の制御電極が、第3のノードND3と接続する。
【0115】
第1のノードND1と、信号用一次側円環パターン15の第1端E1とが接続する。
【0116】
第2のノードND2と、信号用一次側円環パターン15の第2端E2およびノイズ検知用一次側円環パターン17の第2端F2とが接続する。
【0117】
信号用二次側円環パターン16の第1端J1と、信号受信回路8の第1の入力端子IP1とが二次側回路6を介して接続する。信号用二次側円環パターン16の第2端J2は、基準電源(GND)と接続する。
【0118】
入力信号の電圧をV0とする。第2の分圧抵抗20の両端電圧をVr2とする。Vthをトランジスタ24の閾値電圧とする。以下の式が成り立つ。
【0119】
Vr2=V0×R2/(R1+R2)・・・(D1)
入力信号が正常信号のときに、以下が成り立つ。
【0120】
Vr2<Vth・・・(D2)
入力信号が異常信号のときに、以下が成り立つ。
【0121】
Vr2≧Vth・・・(D3)
より具体的には、以下が成り立つとする。入力信号が正常信号のときに、V0の最大振幅をVsmaxとする。入力信号が異常信号のときに、V0の振幅をVnとする。以下の式が成り立つ。
【0122】
V0=Vsmaxのときに、以下の式が成り立つとする。
【0123】
Vr2=Vsmax×R2/(R1+R2)<Vth・・・(D4)
V0=Vnのときに、以下の式が成り立つとする。
【0124】
Vr2=Vn×R2/(R1+R2)≧Vth・・(D5)
入力信号が異常信号のときに、トランジスタ24がオンする。トランジスタ24がONすることによって、ノイズ検知用一次側円環パターン17に磁界が発生し、信号用一次側円環パターン15に発生する磁界を打ち消す。これによって、信号用一次側円環パターン15から信号用二次側円環パターン16へ異常信号が伝搬することを妨げることができる。
【0125】
式(D4)および式(D5)が成り立つように、第1の分圧抵抗19の抵抗値R1、第2の分圧抵抗20の抵抗値R2を調整する。実際の製品設計での抵抗値R1、R2の選定においては、製品ごとのVsmax、使用環境で想定されるVnおよび周波数に合わせて、評価を行いながら選定する必要がある。実施の形態4では最も簡素な構成としてトランジスタ24のベース電圧生成のための抵抗分圧用に2個の抵抗を用いているが、3個以上の抵抗を用いてもよい。また、トランジスタ24の動作調整のために、トランジスタ24のベース端子およびコレクタ端子への直列抵抗またはパスコンを接続してもよい。
【0126】
実施の形態1~3と異なり、本実施の形態では、信号受信回路8は第2の入力端子IP2を有さない。
【0127】
信号受信回路8は、第1の入力端子IP1に入力される正常信号を受信する。ノイズ検知用一次側円環パターン17を設けることによって、第1の入力端子IP1には、異常信号が入力されない。
【0128】
以上のように本実施の形態によれば、信号受信回路8にノイズ検知の機能をもたすことなく、磁界生成部9の構造を工夫することによって、信号用二次側円環パターン16に伝搬する異常信号を打ち消すことができる。これによって、信号受信回路8が異常信号を正常信号と誤認識させないようにすることができる。
【0129】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0130】
1 基板、2 外部接続機器、3 ケーブル、4 一次側回路、5 絶縁部、6 二次側回路、7 入力回路、8 信号受信回路、9 磁界生成部、15 信号用一次側円環パターン、16 信号用二次側円環パターン、17 ノイズ検知用一次側円環パターン、18 ノイズ検知用二次側円環パターン、19 第1の分圧抵抗、20 第2の分圧抵抗、21 ANDゲート、22 第1の分流抵抗、23 第2の分流抵抗、24 トランジスタ、E1,F1,H1,J1 第1端、E2,F2,H2,J2 第2端、18 信号受信用IC、IP1 第1の入力端子、IP2 第2の入力端子、IV1 第1の信号入力端子、IV2 第2の信号入力端子、ND1 第1のノード、ND2 第2のノード、ND3 第3のノード。