(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】染毛剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20250228BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20250228BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20250228BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20250228BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20250228BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20250228BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20250228BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/89
A61K8/92
A61K8/31
A61K8/36
A61K8/37
A61Q5/10
(21)【出願番号】P 2021003349
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】天谷 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 颯介
(72)【発明者】
【氏名】上甲 恭平
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-94329(JP,A)
【文献】特開2019-182830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312318(US,A1)
【文献】国際公開第2021/261019(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される化合物又はその塩と、(B)油性成分とを含有する染毛剤。
【化1】
【請求項2】
(B)油性成分が、高級アルコール、シリコーン、油脂、炭化水素、高級脂肪酸、ロウ及びエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤等のヘアカラー製品には酸化染料が多く用いられている。酸化染料には、酸性染料、塩基性染料、HC染料等の他の染料と比べて、毛髪に対する染色力や染色堅牢性に優れるという利点がある。
【0003】
酸化染料を用いた染毛剤としては、アンモニア等のアルカリ剤と酸化染料を含む1剤と、過酸化水素等の酸化剤を含む2剤で構成される2剤式の染毛剤が主流である。2剤式の染毛剤は、染毛時に1剤と2剤を混合して毛髪に塗布し、酸化染料を酸化重合させることにより毛髪を染色する。
【0004】
このような従来の酸化染料を用いた染毛剤には、アンモニア等のアルカリ剤による皮膚刺激や臭気の問題、過酸化水素等の酸化剤による毛髪のダメージや皮膚刺激の問題がある。
【0005】
これに対して、特許文献1~3では、酸化染料を予め酸化重合させた酸化重合体を含む染毛剤が提案されている。これらの染毛剤によれば、染毛時にアンモニアや過酸化水素を用いる必要がない、あるいはこれらの量を減らすことができるため、皮膚刺激や臭気、毛髪のダメージ等の問題の改善が期待される。さらに、特許文献1では、酸化重合体を含む染毛剤を用いることにより頭皮や皮膚への染着が極めて少ないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-145032号公報
【文献】特開平6-172146号公報
【文献】特開平6-199641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者による検討の結果、従来の酸化重合体を含む染毛剤は、染色力を高めるために酸化重合体の配合量を増やした場合、頭皮汚染(皮膚への染着)が見られることが明らかになった。
【0008】
そこで本発明では、染色力と染色堅牢性に優れ、且つ、頭皮汚染の少ない染毛剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面にかかる染毛剤は、(A)下記式(1)で表される化合物又はその塩と、(B)油性成分とを含有する。かかる染毛剤によれば、染色力と染色堅牢性に優れ、且つ、頭皮汚染が少ない。さらに、この染毛剤によれば、染毛時にアンモニア等のアルカリ剤や過酸化水素等の酸化剤を用いる必要がない、あるいはこれらの量を減らすことができる。
【化1】
【0010】
上記(B)油性成分は、染色力がより向上し且つ頭皮汚染もより少なくなる点から、高級アルコール、シリコーン、油脂、炭化水素、高級脂肪酸、ロウ及びエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、染色力と染色堅牢性に優れ、且つ、頭皮汚染が少ない染毛剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態の染毛剤は、(A)下記式(1)で表される化合物又はその塩と、(B)油性成分とを含有する。
【化2】
【0014】
本実施形態の染毛剤は、1剤式の染毛剤であっても、多剤式の染毛剤であってもよい。従来の酸化染料を用いた染毛剤では、染毛時に酸化染料と酸化剤とを反応させながら染色するため、使用前にこれらを別々に保管可能な多剤式とする必要があった。一方、本実施形態の染毛剤においては、(A)式(1)で表される化合物又はその塩がそのまま染料として機能し得るため、必ずしも多剤式とする必要はなく、1剤式の染毛剤とすることができる。
【0015】
本実施形態の多剤式の染毛剤は、各剤に所望の性質を付与することができるので、様々なタイプの染毛剤とすることが可能となる。多剤式の染毛剤は、第1剤と第2剤とからなる2剤式であっても、第1剤と第2剤に加えて第3剤等を備える、3剤以上の多剤式であってもよいが、利便性の観点から、2剤式又は3剤式であることが好ましい。
【0016】
本実施形態の染毛剤の剤型としては、例えば、ジェルタイプ、液体タイプ、泡タイプ、スプレータイプ、クリームタイプ、オイルタイプ、粉末状タイプ等が挙げられる。これらの剤型と求められる機能に合わせて、上述の1剤式又は多剤式の染毛剤を選択することができる。
【0017】
本実施形態の染毛剤は、例えば、人毛、羊毛、ヤクなどの獣毛等の染毛用途に用いることができる。
【0018】
本実施形態の染毛剤は、(A)式(1)で表される化合物又はその塩と、(B)油性成分とを含有するものであればよいが、取扱い性の向上等を目的として、従来公知の成分を加えてもよい。以下、各成分について詳細に説明する。
【0019】
<(A)式(1)で表される化合物又はその塩>
上述の式(1)で表される化合物(以下「化合物P1-C1」と記載することもある。)は、4,5-ジアミノ-1-(2-ヒドロキシエチル)ピラゾール(化合物P1)と2,4-ジアミノフェノキシエタノール(化合物C1)とを酸化共重合することによって得られる。
【0020】
ここで、「酸化共重合」とは、2種以上の化合物が酸化処理により共重合することをいう。
【0021】
式(1)で表される化合物の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。(A)式(1)で表される化合物又はその塩は、式(1)で表される化合物又はその塩単独であってもよく、式(1)で表される化合物及びその塩が混在していてもよい。
【0022】
上述の化合物P1及び化合物C1は、いずれも酸化染料、すなわち酸化処理によって得られる酸化重合体が発色する化合物である。これらのうち、化合物P1は、単独で酸化され得る「プレカーサー」であり、化合物C1は、単独では酸化されず、プレカーサーと組み合わせて用いることにより酸化される「カップラー」である。また、これらの化合物は、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の塩又は水和物として用いてもよい。
【0023】
酸化処理の方法は、特に限定されないが、例えば、化合物P1及び化合物C1を含む水溶液に過酸化水素水等の酸化剤を添加する方法や、化合物P1及び化合物C1を含む水溶液に空気を送り込み(エアレーション)、空気酸化する方法、酸化剤(例えばその水溶液)中に化合物P1及び化合物C1(例えばその水溶液)を添加する方法、化合物P1及び化合物C1(例えばその水溶液)の噴霧状物と酸化剤(例えばその水溶液)の噴霧状物とを接触させる方法等を適用することができる。水溶液中で酸化処理をする場合、酸化処理の温度は10~60℃であることが好ましく、反応時間は1時間~5日間であることが好ましく、塩化鉄(II)等の触媒を使用してもよい。水溶液のpHは、5~10であることが好ましい。酸化処理時の化合物P1及び化合物C1のモル比は適宜選択され得るが、1:0.5~1:2であることが好ましい。得られた酸化重合体は、熱水洗浄、再結晶等によって精製してもよい。
【0024】
本発明の染毛剤は、本発明による効果を損なわない範囲で、酸化処理によって生じるその他の副生物等を含んでいてもよい。
【0025】
本実施形態の染毛剤における(A)式(1)で表される化合物又はその塩の含有量は、染毛剤全量を基準として、例えば0.001~30質量%とすることができる。その中で、染色力をより向上し頭皮汚染をより少なくさせる観点から、0.01~20質量%であると好ましく、0.1~10質量%であるとより好ましく、1~10質量%がさらにより好ましい。
【0026】
<(B)油性成分>
(B)油性成分は、化粧料に使用できる疎水性又は難水溶性の化合物であれば特に制限されない。染毛剤が(B)油性成分を含むと、染毛剤が髪の毛に留まり頭皮に垂れづらくなるため、染色力が向上し且つ頭皮汚染が少なくなる。(B)油性成分の中で、染色力がより向上し且つ頭皮汚染もより少なくなる点から、高級アルコール、シリコーン、油脂、炭化水素、高級脂肪酸、ロウ又はエステルが好ましく、高級アルコール、シリコーン、炭化水素、エステル又は油脂がより好ましく、高級アルコールがより好ましい。
【0027】
高級アルコールとしては、例えば、炭素数が10~26の直鎖状または分岐状の高級アルコールが挙げられる。高級アルコールは、染色力がより向上し且つ頭皮汚染もより少なくなる点から、炭素数が14~22の直鎖状または分岐状の高級アルコールであると好ましく、炭素数が14~22の直鎖状高級アルコールであるとより好ましい。
【0028】
高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール及び水添ラノリンアルコール等の直鎖状高級アルコール;2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等の分岐状高級アルコールなどが挙げられる。
【0029】
シリコーンの具体例としては、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ベタイン変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0030】
シリコーンの動粘度は、染色力がより向上し且つ頭皮汚染もより少なくなる点から、5mm2/s~350,000mm2/s(25℃時点)であると好ましく、1,000mm2/s~100,000mm2/s(25℃時点)であるとより好ましい。なお、動粘度は、JISK 7117-1:1999の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準じて測定されるものをいう。
【0031】
動粘度が上記範囲であるシリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0032】
油脂の具体例としては、ホホバ種子油、アーモンド油、コメヌカ油、シア脂、ヒマワリ種子油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、ツバキ油、アボカド油、ナタネ油、パーム油、メドウフォーム油、ミンク油等が挙げられる。これらの中で、染色力がより向上し且つ頭皮汚染もより少なくなる点から、ホホバ種子油、アーモンド油、コメヌカ油、シア脂、ヒマワリ種子油、オリーブ油又はマカダミアナッツ油が好ましい。
【0033】
炭化水素の具体例としては、ミネラルオイル、軽質イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィン、ワセリン、ポリブテン、ポリエチレン末等が挙げられる。これらの中で、染色力がより向上し且つ頭皮汚染もより少なくなる点から、ミネラルオイル、軽質流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィン又はワセリンが好ましい。
【0034】
高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等が挙げられる。
【0035】
ロウの具体例としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ヒマワリ種子ロウ、カルナウバロウ、ラノリンロウ等が挙げられる。
【0036】
エステルの具体例としては、酢酸ラノリン、乳酸セチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、カプリル酸セチル、カプリン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルへキシル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸オレイル、リシノール酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、ダイマー酸ジイソプロピル、パルミチン酸デキストリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、10~30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル等が挙げられる。これらの中で、染色力がより向上し且つ頭皮汚染もより少なくなる点から、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ダイマー酸ジイソプロピル又はパルミチン酸デキストリンが好ましい。
【0037】
(B)油性成分の配合量は特に限定されないが、染毛剤の乳化安定性、塗布のしやすさ、毛髪とのなじみやすさ、染色力の観点から、染毛剤全量を基準として、0.1~99.6質量%含まれることが好ましく、0.5~90質量%含まれることがより好ましく、1~70質量%含まれることが更に好ましい。
【0038】
<任意成分>
本実施形態の染毛剤には、上述の(A)式(1)で表される化合物又はその塩及び(B)油性成分の他に任意成分を配合することができる。任意成分としては、(C)アルカリ剤、(D)界面活性剤、(E)酸化剤、(F)キレート剤、(G)水溶性高分子、(H)防腐剤、(I)その他の染料、(J)水溶性溶媒等が挙げられる。これらの成分は、染毛剤の剤型と求められる機能に合わせて適宜選択することができる。また、多剤式の染毛剤においては、任意成分は、適宜第1剤、第2剤又は第3剤等のいずれに添加されていてもよい。
【0039】
((C)成分)
(C)成分は、1種又は2種以上のアルカリ剤である。
アルカリ剤の種類は限定されないが、アンモニア、アルカノールアミン、有機アミン、塩基性アミノ酸及びそれらの塩や無機アルカリ塩を挙げることができる。
【0040】
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等を挙げることができる。
【0041】
有機アミンとしては、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジン等を挙げることができる。
塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン等を挙げることができる。
【0042】
無機アルカリ塩としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸水素塩又はリン酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸グアニジン、炭酸水素グアニジン等の炭酸塩又は炭酸水素塩を挙げることができる。
【0043】
これらの中でも、染料の染色力向上の観点からは、無機アルカリ塩が好ましく、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウムがより好ましい。また、多剤式の染毛剤における(C)成分として、無機アルカリ塩を含有させる場合には、第2剤に含有させることが好ましい。第2剤を、例えば、酸化染料の酸化重合体、無機アルカリ塩及び上記油性成分からなるものとしてもよい。
【0044】
(C)成分の配合量は特に限定されないが、染毛剤に(C)成分を配合する場合は、染毛剤全量を基準として、0.1~20.0質量%含まれることが好ましく、0.3~10.0質量%含まれることがより好ましい。
【0045】
((D)成分)
(D)成分は、1種又は2種以上の界面活性剤である。
界面活性剤の種類は限定されず、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性イオン性の各種界面活性剤を用いることができる。
【0046】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、モノステアリン酸ポリエリレングリコールなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンショ糖脂肪酸エステル、デシルグルコシドなどのアルキルグリコシド等が挙げられる。
【0047】
カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム(セトリモニウムクロリド)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(ジステアルジモニウムクロリド)、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアリルトリモニウムブロミド)、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、パンテニルヒドロキシプロピルステアルジモニウムクロリド、クオタニウム-91等が例示される。
【0048】
アニオン性界面活性剤としては、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、セトステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテルリン酸、POEセチルエーテルリン酸等のアルキルリン酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、POEラウリルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン(ココイルグルタミン酸TEA)、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノエチル、リン酸ジセチル等のリン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステル等が例示される。
両性イオン性界面活性剤としては、以下の(1)~(5)が例示される。
【0049】
(1)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウラミドプロピルベタイン)、リシノレイン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩又はトリエタノールアミン塩。
【0050】
(2)デシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、セチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オレイルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ベヘニルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩又はトリエタノールアミン塩。
【0051】
(3)ココアンホ酢酸Na(N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン)、ココアンホプロピオン酸Na(N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン)、ラウロアンホ酢酸Na(N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミン)、オリーブアンホ酢酸Na、カカオ脂アンホ酢酸Na、ゴマアンホ酢酸Na、スイートアーモンドアンホ酢酸Na、ステアロアンホ酢酸塩、パームアンホ酢酸Na、ピーナッツアンホ酢酸Na、ヒマワリ種子アンホ酢酸Na、綿実アンホ酢酸Na等のN-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルアミノカルボン酸塩。
【0052】
(4)ココアンホジ酢酸Na、ココアンホジプロピオン酸Na、及びラウロアンホジ酢酸Na等のN-アシルアミノエチル-N-カルボキシメトキシエチルアミノカルボン酸塩。
【0053】
(5)ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルサルコシン。
【0054】
染毛剤中における(B)成分と(D)成分との配合量の質量比は、乳化安定性、毛髪への塗布のしやすさ、染色力向上といった観点から、(B):(D)=1:1~5:1であることが好ましく、2:1~4:1であることがより好ましく、3:1~4:1であることが更に好ましい。
【0055】
(D)成分の配合量は特に限定されないが、染毛剤に(D)成分を配合する場合は、染毛剤の乳化安定性、塗布のしやすさ等の観点から、染毛剤全量を基準として、0.1~30質量%含まれることが好ましく、1.0~25質量%含まれることがより好ましい。
【0056】
((E)成分)
(E)成分は、1種又は2種以上の酸化剤である。
酸化剤としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、硝酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物などを挙げることができる。
【0057】
((F)成分)
(F)成分は、1種又は2種以上のキレート剤である。
キレート剤としては、グルコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(1,3PDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸(ASDA)、アミノトリメチレンホスホン酸(NTMP)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、トリポリリン酸、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、グリクロン酸、コハク酸、リンゴ酸、フィチン酸、サリチル酸、安息香酸、酢酸、フェルラ酸、マレイン酸等の化合物、その化合物の塩、その化合物の誘導体、及びその誘導体の塩が例示される。
【0058】
(F)成分の配合量は、染毛剤に(F)成分を配合する場合は、乳化安定性や染色力などの観点から、染毛剤全量に対して、0.001~2.0質量%であることが好ましい。
【0059】
((G)成分)
(G)成分は、1種又は2種以上の水溶性高分子である。
水溶性高分子としては、具体的には、有機天然高分子、有機半合成高分子、有機合成高分子等、無機高分子等が挙げられる。
【0060】
有機天然高分子としては、セルロース、アラビアガム、グアーガム、ローカストビンガム、カラギーナン、クインスシード、デンプン、グリチルリチン酸、トラガカントガム、キャロブガム、ペクチン、ガラクタン、カラヤガム、アルゲコロイド等の植物系の有機天然高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン、ヒアルロン酸等の微生物系の有機天然高分子、アルブミン、グリコーゲン、コラーゲン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ムコイチン硫酸、ヒアルロン酸等の動物系の有機天然高分子などが挙げられる。
【0061】
有機半合成高分子としては、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系の有機半合成高分子、カチオン化セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸Na、カルボキシメチルセルロースNa、セルロース末等のセルロース系の有機半合成高分子、アルギン酸Na、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系の有機半合成高分子、カチオン化グアーガム(例えばグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)などが挙げられる。
【0062】
有機合成高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系の有機合成高分子、ポリエチレングリコール等のポリエチレン系の有機合成高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル(VA)共重合体等の共重合系の有機合成高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチルアクリレート等のアクリル系の有機合成高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマーなどが挙げられる。
【0063】
無機高分子としては、ベントナイト、ラボナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0064】
((H)成分)
(H)成分は、1種又は2種以上の防腐剤である。
防腐剤としては、例えば、アミノ酸、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、エチルヘキシルグリセリン、サリチル酸、ピロクトンオラミン、パラオキシ安息香酸メチルエステル等が挙げられる。
【0065】
((I)成分)
(I)成分は、1種又は2種以上のその他の染料である。
その他の染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料、HC染料、分散染料、ニトロ染料、化合物P1-C1以外の酸化染料の酸化重合体等が挙げられる。酸性染料としては、青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、赤色106号、黄色203号、酸性橙3等が挙げられる。塩基性染料としては、塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76、塩基性赤51、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性橙31等が挙げられる。HC染料としては、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC青2、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC橙1等が挙げられる。分散染料としては、分散紫1、分散青11、分散黒9等が挙げられる。ニトロ染料としては、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、4-ニトロ-m-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-3-ニトロフェノール、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、3-メチルアミノ-4-ニトロフェノキシエタノール、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール等が挙げられる。
【0066】
染毛剤中の(I)成分を種々変更することや、1種または2種以上を組み合わせること等によって、染毛剤の染毛色を種々調整することができる。
【0067】
((J)水溶性溶媒)
(J)成分は、1種又は2種以上の水溶性溶媒である。
水溶性溶媒の具体例としては、水;エタノール、イソプロパノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、イソペンチルジオール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、フェネチルアルコール、2-ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール等のアルコール溶媒;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等のN-アルキルピロリドン溶媒;(炭酸プロピレン等の炭酸アルキレン溶媒;γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン等のラクトン溶媒;等が挙げられる。これらの中で、水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、イソペンチルジオール、ジプロピレングリコール又はグリセリンが好ましい。
【0068】
(その他の成分)
本実施形態の染毛剤には、上述の成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を配合することができる。
このようなその他の成分としては、ペプチド、アミノ酸系成分、pH緩衝成分、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸、尿素等の保湿剤、8-オキシキノリン等の安定化剤、システイン、チオグリコール酸、亜硫酸塩、アスコルビン酸等の酸化防止剤、植物抽出物、生薬抽出物、殺菌剤、ビタミン、色素、香料、顔料、紫外線吸収剤、シリカ等の体質粉体等を挙げることができる。
【0069】
染毛剤の粘度は、酸化染料の酸化重合体の分散安定性、及び染毛剤の取り扱い性向上の観点から、10000~160000mPa・sであると好ましく、10000~80000mPa・sであるとより好ましい。なお、染毛剤の粘度は、油性成分を適宜変更すること等によって、調整することができる。また、染毛剤の粘度は、40000mPa・s未満である場合は、BL型粘度計(東機産業製)、4号ローター、12rpm、20℃で測定することができ、40000mPa・s以上である場合はBH型粘度計(東機産業製)、7号ローター、10rpm、20℃で測定することができる。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明を実施例により更に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中、配合量の単位は「質量部」であり、「残量」とは、各剤における全量を100質量部としたときの他の成分の配合量を除いた残りの量を示す。また、「1,3-BG」は、1,3-ブチレングリコールを示し、「LPG」は、液化石油ガスを示し、「VA」は酢酸ビニルを示し、「POE」は、ポリオキシエチレンを示し、「DME」はジメチルエーテルを示し、「AMP」は2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを示す。
【0071】
<動粘度の測定>
(B)油性成分等の動粘度は、JIS K 7117-1:1999の4.1(ブルックフィールド形回転粘度計)に準じて測定を行った。
【0072】
<染料の分析>
合成例において合成した染料については、下記条件にて液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS測定)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC測定)を行なった。
・LC/MS測定条件
使用装置:LC1260(アジレント・テクノロジー製)
カラム :TSKgel ODS-100Sカラム(東ソー製)
条件A :カラム温度35℃、メタノール/水(30/70)溶離液、流速0.6ml/min、検出器UV=580nm、430nmおよび250nm
条件B :カラム温度40℃、アセトニトリル/水(35/65)溶離液、流速0.6ml/min、検出器UV=430nmおよび280nm
・HPLC測定条件
使用装置:UltiMate3000:Thermo Fisher SCIENTIFIC製)
カラム:TSKgel ODS-100Sカラム(東ソー製)
条件C:カラム温度35℃、メタノール/水(30/70)溶離液、流速0.6ml/min、検出器UV=580nm、430nmおよび250nm
条件D:カラム温度40℃、アセトニトリル/水(35/65)溶離液、流速1.00ml/min、検出器UV=430nmおよび280nm
【0073】
合成した染料の構造は、LC/MS測定による分子量の実測値と、単量体の分子量に基づいて計算した重合体の分子量の計算値とを対比することにより判定することができる。
【0074】
<染料の合成>
・合成例1(化合物P1-C1の合成)
1000mLの蒸留水に、プレカーサーとして4,5-ジアミノ-1-(2-ヒドロキシエチル)ピラゾール硫酸塩3.2g、カップラーとして2,4-ジアミノフェノキシエタノール二塩酸塩3.2g(プレカーサーとカップラーのモル比は1:1)を添加し、触媒として塩化鉄(II)を0.32g加えた後、水酸化ナトリウムでpH8に調整し、常温でエアレーションしながら72時間攪拌して酸化させた。その後、反応液を乾燥させて、5.6g(収率83%)の析出物を得た。
析出物について、HPLC測定(条件C)を行ったところ、リテンションタイム=8.6分の位置に全体の93%を占めるピークが検出された。
ピークの部分について、LC/MS測定(条件A)を行ったところ、実測値が[M+H]+=307であり、化合物P1-C1の分子量(計算値:306)に対応するものであることを確認した。
HPLCでこのピークの溶液を分取し、溶媒を除去して純度100%の化合物P1-C1を得た。
【0075】
・合成例2(化合物P2-P2の合成)
2.0Lの蒸留水に、プレカーサーであるp-フェニレンジアミン5.4gを添加し、常温でエアレーションしながら1週間攪拌して空気酸化させた。その後、析出物をろ別し、ろ物を80~90℃の熱水で洗浄して、3.44g(収率64%)の精製物を得た。
回収した精製物について、HPLC測定(条件D)を行ったところ、リテンションタイム=6.8分の位置に、全体の100%を占めるピークが検出された。このピークの部分について、LC/MS測定(条件B)を行ったところ、実測値が[M+H]+=319であった。これは、p-フェニレンジアミンの自己重合体(三量体)の分子量(計算値:318)に対応するものであり、ピークの化合物が自己重合体(三量体)であることが確認された。なお、HPLC測定では、原料であるプレカーサーは検出されなかった。
【0076】
・合成例3(化合物P3-C2の合成)
100mLの蒸留水に、プレカーサーとしてp-アミノフェノール0.20g、カップラーとして2,6-ジアミノピリジン0.2g(プレカーサーとカップラーのモル比は1:1)を添加し、常温でエアレーションしながら4日間攪拌して酸化させた。その後、析出物をろ別し、0.36g(収率90%)の析出物を回収した。
回収した析出物について、HPLC測定(条件D)を行ったところ、リテンションタイム=3.2分の位置に全体の9%を占める第1のピークが、リテンションタイム=4.5分の位置に全体の86%を占める第2のピークが検出された。
第1のピークの部分について、LC/MS測定(条件B)を行ったところ、実測値が[M+H]+=320であった。これは、p-アミノフェノールと2,6-ジアミノピリジンの2:1共重合体(三量体)の分子量(計算値:319)に対応するものであり、ピークの化合物が共重合体(三量体)であることが確認された。
第2のピークの部分について、LC/MS測定(条件B)を行ったところ、実測値が[M+H]+=322であった。これは、p-アミノフェノールと2,6-ジアミノピリジンの2:1共重合体(三量体、第1のピークの化合物の異性体)の分子量(計算値:321)に対応するものであり、ピークの化合物が共重合体(三量体)であることが確認された。
なお、HPLC測定では、原料であるプレカーサーとカップラー、又はプレカーサーの自己重合体は検出されなかった。
HPLCで第2のピークの溶液を分取し、溶媒を除去して純度100%の化合物P3-C2を得た。
【0077】
・合成例4(化合物P4-C1の合成)
50mLの蒸留水に、プレカーサーとして2,5-ジアミノトルエン硫酸塩0.69g、カップラーとして2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩0.50g(プレカーサーとカップラーのモル比は1:1.5)を添加し、酸化剤として35%過酸化水素水溶液1.61gを加えた後、水酸化ナトリウムでpH8に調整し、常温でエアレーションしながら4時間攪拌して酸化させた。その後、硫酸マグネシウムを添加し18時間放置にて塩析後、析出物をろ過し、0.06g(収率5.0%)の析出物を回収した。
回収した析出物について、HPLC測定(条件D)を行ったところ、リテンションタイム=3.8分の位置に全体の78%を占めるピークが検出された。
このピークの部分について、LC/MS測定(条件B)を行ったところ、実測値が[M+H]+=287であった。これは、2,5-ジアミノトルエン硫酸塩と2,4-ジアミノフェノキシエタノール塩酸塩の1:1共重合体(二量体)の分子量(計算値:286)に対応するものであり、ピークの化合物が共重合体(二量体)であることが確認された。なお、HPLC測定では、原料であるプレカーサーとカップラー、又はプレカーサーの自己重合体は検出されなかった。
HPLCでこのピークの溶液を分取し、溶媒を除去して純度100%の化合物P4-C1を得た。
【0078】
・合成例5(化合物P1-C3の合成)
200mLの蒸留水に、プレカーサーとして4,5-ジアミノ-1-(2-ヒドロキシエチル)ピラゾール硫酸塩1.5g、カップラーとしてm-アミノフェノール0.68g(プレカーサーとカップラーのモル比は1:1)を添加し、触媒として塩化鉄(II)を0.12g加えた後、水酸化ナトリウムでpH8に調整し、常温でエアレーションしながら72時間攪拌して酸化させた。その後、反応液を乾燥させて、2.05g(収率89%)の析出物を回収した。
回収した析出物について、HPLC測定(条件C)を行ったところ、リテンションタイム=8.2分の位置に全体の48%を占めるピークが検出された。
このピークは、原料である4,5-ジアミノ-1-(2-ヒドロキシエチル)ピラゾール硫酸塩やm-アミノフェノールが検出されないUV=430nmにおいてピークが確認されたことから、4,5-ジアミノ-1-(2-ヒドロキシエチル)ピラゾール硫酸塩とm-アミノフェノールの重合物(二量体)であると推測される。
HPLCでこのピークの溶液を分取し、溶媒を除去して純度100%の化合物P1-C3を得た。
【0079】
<処方例>
以下の処方例では、動粘度74~77mm2/s(25℃時点)のミネラルオイル、融点88℃のマイクロクリスタリンワックス、融点56℃のワセリン、動粘度10000mm2/s(25℃時点)のジメチルポリシロキサンを用いた。
【0080】
・処方例1-1~1-3(ヘアカラートリートメントクリームタイプ1剤式)
表1に記載のヘアカラートリートメントクリームタイプ1剤式の染毛剤を調合した。染毛の際には、調合した剤を人毛白髪毛束1gに1.5g塗布し、15分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
【0081】
【0082】
・処方例2-1及び2-2(ヘアカラートリートメントオイルタイプ1剤式)
表2に記載のヘアカラートリートメントオイルタイプ1剤式の染毛剤を調合した。染毛の際には、調合した剤を人毛白髪毛束1gに1.5g塗布し、15分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
【0083】
【0084】
・処方例3-1及び3-2(ヘアカラートリートメントスプレータイプ1剤式)
表3に記載のヘアカラートリートメントスプレータイプ1剤式の染毛剤を調合した。染毛の際には、調合した剤を人毛白髪毛束1gに1.0g塗布し、15分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
【0085】
【0086】
・処方例4-1及び4-2(ヘアカラートリートメント泡タイプ)
表4に記載のヘアカラートリートメント泡タイプの染毛剤を調合した。染毛の際には、調合した剤を人毛白髪毛束1gに1.5g塗布し、30分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
【0087】
【0088】
・処方例5-1及び5-2(ヘアカラートリートメントジェルタイプ1剤式)
表5に記載のヘアカラートリートメントジェルタイプ1剤式の染毛剤を調合した。染毛の際には、調合した剤を人毛白髪毛束1gに1.5g塗布し、30分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
【0089】
【0090】
・処方例6(ヘアカラー剤クリームタイプ2剤式)
表6に記載の処方で、第1剤、第2剤から構成されるヘアカラー剤クリームタイプ2剤式の染毛剤を調合した。染毛の際には、第1剤と第2剤を1:1の比率で配合し、人毛白髪毛束1gに1.5g塗布し、30分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
【0091】
【0092】
・処方例7-1及び7-2(ヘアカラートリートメントクリーム分散剤タイプ)
表7に記載の処方で、第1剤及び第2剤から構成されるヘアカラートリートメントクリーム分散剤タイプの染毛剤を調合した。染毛の際には、第1剤と第2剤を4:1の比率で配合し、人毛白髪毛束1gに1.5g塗布し、15分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
【0093】
【0094】
・処方例8-1及び8-2(ヘアカラートリートメントオイル分散剤タイプ)
表8に記載の処方で、第1剤及び第2剤から構成されるヘアカラートリートメントオイル分散剤タイプの染毛剤を調合した。染毛の際には、第1剤と第2剤を4:1の比率で配合し、人毛白髪毛束1gに1.5g塗布し、15分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
【0095】
【0096】
・処方例9-1及び9-2(ヘアカラー剤クリームタイプ3剤式)
表9に記載の処方で、第1剤、第2剤及び第3剤から構成されるヘアカラー剤クリームタイプ3剤式の染毛剤を調合した。染毛の際には、第1剤と第2剤と第3剤を4:1:5の比率で配合し、人毛白髪毛束1gに1.5g塗布し、30分30~35℃で放置後水洗し風乾した。
なお、処方例9-1については、シア脂の融点を超える80℃で加熱して溶解させた上で、調合した。
【0097】
【0098】
(実施例1~17、比較例1~26)
表1~9に示す処方例を適用し、染毛剤について以下の評価を行った。また、染料についても以下の評価を行った。その結果を表11~16に示す。
【0099】
<評価>
・評価方法1(染色濃度)
各染毛剤を調合し、毛束の染色を行った。染色後の毛束の染色濃度について、下記の評価基準で専門パネラー20名に評価させた。濃く染まるほど、染色力に優れていることを示す。
◎:非常に濃く染まる
○:濃く染まる
△:薄く染まる
×:非常に薄く染まる
【0100】
・評価方法2(染色堅牢性)
評価方法1で染色した毛束を用いて、表10に記載のシャンプー(毛束1g当たり2g)を用いて水洗浄した。シャンプー洗浄を3回繰り返し、洗浄前後の毛束の染色濃度について、下記の評価基準で専門パネラー20名に評価させた。
◎:色落ちしない
○:色落ちが少ない
△:色落ちが大きい
×:色落ちが非常に大きい
【0101】
・評価方法3(頭皮汚染)
各染毛剤を調合し、ヒト頭髪の染色を行い、表10に記載のシャンプー(毛束1g当たり2g)を用いて水洗浄した。シャンプー洗浄を繰り返した時の頭皮汚染状態について、下記の評価基準で専門パネラー20名に評価させた。
◎:染色後1回洗浄で頭皮汚染がほぼない
○:染色後1回洗浄で頭皮汚染が見られるが2回シャンプー洗浄で頭皮汚染がほぼない
△:染色後2回洗浄で頭皮汚染が見られるが3~5回シャンプー洗浄で頭皮汚染がほぼない
×:染色後6回以上のシャンプー洗浄後、頭皮汚染が見られる
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】