(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】走行経路管理システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250228BHJP
A01D 45/22 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A01B69/00 303P
A01D45/22 A
(21)【出願番号】P 2021030137
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】増本 忠久
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】長尾 充朗
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0334859(US,A1)
【文献】特開2017-211734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 45/22
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝圃場において作業走行を行う作業車のための走行経路管理システムであって、
前記畝圃場は、盛り上げられた土により構成された複数の畝部と、互いに隣接する2つの前記畝部の間に設けられた溝状部と、を有しており、
前記畝部及び前記溝状部のうち少なくとも何れか一方に関する情報である畝情報を取得する取得部を備え、
前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する部分の前記畝情報を取得するように構成されており、
前記畝部の延びる方向である畝方向を、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記畝方向に基づいて前記作業車の目標走行経路を生成する経路生成部と、
前記作業車に備えられた衛星測位モジュールにより出力された測位データに基づいて前記作業車の位置座標を経時的に算出する自車位置算出部と、
前記自車位置算出部から受け取った前記作業車の前記位置座標と、前記経路生成部から受け取った前記目標走行経路を示す情報と、に基づいて前記作業車に前記目標走行経路に沿った自動走行を行わせる走行制御部と、を備える走行経路管理システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記畝情報を経時的に取得し、
前記推定部は、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて、前記畝方向の推定結果を経時的に更新し、
前記経路生成部は、前記推定部により更新された前記推定結果に基づいて、前記目標走行経路を経時的に更新する請求項1に記載の走行経路管理システム。
【請求項3】
前記経路生成部は、前記推定部により更新された前記推定結果を受け取る度に、前記目標走行経路を更新する請求項2に記載の走行経路管理システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する領域を撮像する撮像装置であり、
前記畝情報は、前記撮像装置により取得される撮像画像であり、
前記推定部は、前記撮像画像に含まれる色情報に基づいて、前記畝方向を推定する請求項1
から3の何れか一項に記載の走行経路管理システム。
【請求項5】
前記推定部は、前記色情報に基づいて、前記撮像画像内の解析対象領域を、前記畝部に対応する第1領域と、前記溝状部に対応する第2領域と、に区分けする請求項
4に記載の走行経路管理システム。
【請求項6】
前記推定部は、前記撮像画像において前記第2領域が延びる方向を算出することにより、前記畝方向を推定し、
前記経路生成部は、前記第2領域に対応する前記溝状部の延びる方向に沿って前記作業車が作業走行を行うように、且つ、前記第2領域に対応する前記溝状部に前記作業車の走行装置が接地した状態で前記作業車が作業走行を行うように、前記目標走行経路を生成する請求項
5に記載の走行経路管理システム。
【請求項7】
畝圃場において作業走行を行う作業車のための走行経路管理システムであって、
前記畝圃場は、盛り上げられた土により構成された複数の畝部と、互いに隣接する2つの前記畝部の間に設けられた溝状部と、を有しており、
前記畝部及び前記溝状部のうち少なくとも何れか一方に関する情報である畝情報を取得する取得部を備え、
前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する部分の前記畝情報を取得するように構成されており、
前記畝部の延びる方向である畝方向を、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記畝方向に基づいて前記作業車の目標走行経路を生成する経路生成部と、を備え、
前記推定部は、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて、複数の前記畝部が延びる各方向、あるいは、複数の前記溝状部が延びる各方向、あるいは、一つまたは複数の前記畝部及び一つまたは複数の前記溝状部が延びる各方向を算出すると共に、算出された各方向の平均を算出することにより、前記畝方向を推定す
る走行経路管理システム。
【請求項8】
畝圃場において作業走行を行う作業車のための走行経路管理システムであって、
前記畝圃場は、盛り上げられた土により構成された複数の畝部と、互いに隣接する2つの前記畝部の間に設けられた溝状部と、を有しており、
前記畝部及び前記溝状部のうち少なくとも何れか一方に関する情報である畝情報を取得する取得部を備え、
前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する部分の前記畝情報を取得するように構成されており、
前記畝部の延びる方向である畝方向を、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記畝方向に基づいて前記作業車の目標走行経路を生成する経路生成部と、を備え、
前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する領域を撮像する撮像装置であり、
前記畝情報は、前記撮像装置により取得される撮像画像であり、
前記推定部は、前記撮像画像に含まれる色情報に基づいて、前記畝方向を推定し、
前記推定部は、前記色情報に基づいて、前記撮像画像内の解析対象領域を、前記畝部に対応する第1領域と、前記溝状部に対応する第2領域と、に区分けし、
前記推定部は、前記撮像画像において前記第2領域が延びる方向を算出することにより、前記畝方向を推定し、
前記経路生成部は、前記第2領域に対応する前記溝状部の延びる方向に沿って前記作業車が作業走行を行うように、且つ、前記第2領域に対応する前記溝状部に前記作業車の走行装置が接地した状態で前記作業車が作業走行を行うように、前記目標走行経路を生成し、
前記推定部は、前記解析対象領域に複数の前記第2領域が存在する場合、前記複数の第2領域のうち最大の面積を有する前記第2領域である目標領域を決定すると共に、前記撮像画像において前記目標領域が延びる方向を算出することにより、前記畝方向を推定し、
前記経路生成部は、前記目標領域に対応する前記溝状部の延びる方向に沿って前記作業車が作業走行を行うよう
に前記目標走行経路を生成す
る走行経路管理システム。
【請求項9】
前記経路生成部は、前記目標領域に対応する前記溝状部に前記走行装置が接地した状態で前記作業車が作業走行を行うように、前記目標走行経路を生成する請求項8に記載の走行経路管理システム。
【請求項10】
前記取得部は、前記畝情報を経時的に取得し、
前記推定部は、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて、前記畝方向の推定結果を経時的に更新し、
前記経路生成部は、前記推定部により更新された前記推定結果に基づいて、前記目標走行経路を経時的に更新し、
前記推定部は、前記目標領域を決定した後、前記解析対象領域のうち前記目標領域の占める割合が増大するように前記解析対象領域を狭める請求項
9に記載の走行経路管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝圃場において作業走行を行う作業車のための走行経路管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場において作業走行を行う作業車として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業車(特許文献1では「コンバイン」)は、GPS衛星から受信した信号に基づいて圃場を自動走行するように構成されていると共に、グレンタンク内の穀粒量を検出する穀粒量検出手段を備えている。そして、この作業車は、穀粒量検出手段による検出値が設定値以上になると、グレンタンクから穀粒を排出するために、刈取作業を中断してトラックの近傍へ自動的に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、畝圃場における作業走行を好適に行うための構成については記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、畝圃場における好適な目標走行経路を生成可能な走行経路管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、畝圃場において作業走行を行う作業車のための走行経路管理システムであって、前記畝圃場は、盛り上げられた土により構成された複数の畝部と、互いに隣接する2つの前記畝部の間に設けられた溝状部と、を有しており、前記畝部及び前記溝状部のうち少なくとも何れか一方に関する情報である畝情報を取得する取得部を備え、前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する部分の前記畝情報を取得するように構成されており、前記畝部の延びる方向である畝方向を、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて推定する推定部と、前記推定部により推定された前記畝方向に基づいて前記作業車の目標走行経路を生成する経路生成部と、前記作業車に備えられた衛星測位モジュールにより出力された測位データに基づいて前記作業車の位置座標を経時的に算出する自車位置算出部と、前記自車位置算出部から受け取った前記作業車の前記位置座標と、前記経路生成部から受け取った前記目標走行経路を示す情報と、に基づいて前記作業車に前記目標走行経路に沿った自動走行を行わせる走行制御部と、を備えることにある。
【0007】
本発明であれば、推定部は、畝圃場のうち作業車の進行方向前方に位置する部分の畝情報に基づいて、畝方向を推定する。そして、推定された畝方向に基づいて、目標走行経路が生成される。これにより、畝圃場における好適な目標走行経路を生成可能な走行経路管理システムを実現できる。
【0008】
さらに、本発明において、前記取得部は、前記畝情報を経時的に取得し、前記推定部は、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて、前記畝方向の推定結果を経時的に更新し、前記経路生成部は、前記推定部により更新された前記推定結果に基づいて、前記目標走行経路を経時的に更新すると好適である。特に、前記経路生成部が、前記推定部により更新された前記推定結果を受け取る度に、前記目標走行経路を更新すると好適である。
【0009】
畝部が平面視で真っ直ぐ延びており、且つ、作業車が畝方向に沿って走行している場合、畝部のうち作業車の進行方向前方に位置する部分の延びる方向は、作業車の走行中、常に一定である。しかしながら、実際には、畝部は、平面視で曲がっていたり、蛇行していたりする場合がある。そのため、畝部のうち作業車の進行方向前方に位置する部分の延びる方向は、作業車の走行中、必ずしも一定ではない。
【0010】
ここで、上記の構成によれば、畝方向の推定結果が経時的に更新されると共に、更新された推定結果に基づいて、目標走行経路が経時的に更新される。そのため、畝部が平面視で曲がっていたり蛇行していたりする場合であっても、作業車の進行方向前方における畝方向の変化に応じて、畝方向の推定結果が更新され、目標走行経路が適切に変化する構成を実現できる。
【0011】
さらに、本発明において、取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する領域を撮像する撮像装置であり、前記畝情報は、前記撮像装置により取得される撮像画像であり、前記推定部は、前記撮像画像に含まれる色情報に基づいて、前記畝方向を推定すると好適である。
【0012】
この構成によれば、撮像画像に含まれる色情報に基づくことなく畝方向が推定される構成に比べて、推定部により畝方向が精度良く推定されやすい。これにより、生成される目標走行経路が適切なものになりやすい。
【0013】
さらに、本発明において、前記推定部は、前記色情報に基づいて、前記撮像画像内の解析対象領域を、前記畝部に対応する第1領域と、前記溝状部に対応する第2領域と、に区分けすると好適である。
【0014】
この構成によれば、第1領域の延びる方向が、畝方向を示すこととなる。また、溝状部の延びる方向は基本的に畝部の延びる方向に一致することから、第2領域の延びる方向も、畝方向を示すこととなる。そのため、この構成によれば、第1領域の延びる方向、及び、第2領域の延びる方向のうち、少なくとも何れか一方を算出すれば、推定部が畝方向を精度良く推定しやすい。これにより、生成される目標走行経路が適切なものになりやすい。
【0015】
本発明の特徴は、畝圃場において作業走行を行う作業車のための走行経路管理システムであって、前記畝圃場は、盛り上げられた土により構成された複数の畝部と、互いに隣接する2つの前記畝部の間に設けられた溝状部と、を有しており、前記畝部及び前記溝状部のうち少なくとも何れか一方に関する情報である畝情報を取得する取得部を備え、前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する部分の前記畝情報を取得するように構成されており、前記畝部の延びる方向である畝方向を、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて推定する推定部と、前記推定部により推定された前記畝方向に基づいて前記作業車の目標走行経路を生成する経路生成部と、を備え、前記推定部は、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて、複数の前記畝部が延びる各方向、あるいは、複数の前記溝状部が延びる各方向、あるいは、一つまたは複数の前記畝部及び一つまたは複数の前記溝状部が延びる各方向を算出すると共に、算出された各方向の平均を算出することにより、前記畝方向を推定することにある。
【0016】
推定部が、一つの畝部の延びる方向のみを算出し、その方向を畝方向として決定することによって畝方向を推定する構成においては、畝圃場のうち、その畝部だけが歪んでいるような場合に、畝方向の推定の精度が悪くなってしまう事態が想定される。
【0017】
また、推定部が、一つの溝状部の延びる方向のみを算出し、その方向を畝方向として決定することによって畝方向を推定する構成においても、同様に、畝方向の推定の精度が悪くなってしまう事態が想定される。
【0018】
ここで、上記の構成によれば、推定部は、複数の畝部が延びる各方向、あるいは、複数の溝状部が延びる各方向、あるいは、一つまたは複数の畝部及び一つまたは複数の溝状部が延びる各方向を算出する。そして、推定部は、算出された各方向の平均を算出することにより、畝方向を推定する。
【0019】
これにより、上述のように畝方向の推定の精度が悪くなってしまう事態を回避できる。
従って、上記の構成によれば、推定部による畝方向の推定の精度が悪くなりにくい走行経路管理システムを実現できる。
【0020】
さらに、本発明において、前記推定部は、前記撮像画像において前記第2領域が延びる方向を算出することにより、前記畝方向を推定し、前記経路生成部は、前記第2領域に対応する前記溝状部の延びる方向に沿って前記作業車が作業走行を行うように、且つ、前記第2領域に対応する前記溝状部に前記作業車の走行装置が接地した状態で前記作業車が作業走行を行うように、前記目標走行経路を生成すると好適である。
【0021】
この構成によれば、作業車が目標走行経路に沿って作業走行すれば、作業車は畝方向に沿って作業走行することとなり、且つ、作業車の走行装置が溝状部に接地した状態となる。これにより、作業車は、安定的な姿勢で作業走行を行うことができる。
【0022】
本発明の特徴は、畝圃場において作業走行を行う作業車のための走行経路管理システムであって、前記畝圃場は、盛り上げられた土により構成された複数の畝部と、互いに隣接する2つの前記畝部の間に設けられた溝状部と、を有しており、前記畝部及び前記溝状部のうち少なくとも何れか一方に関する情報である畝情報を取得する取得部を備え、前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する部分の前記畝情報を取得するように構成されており、前記畝部の延びる方向である畝方向を、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて推定する推定部と、前記推定部により推定された前記畝方向に基づいて前記作業車の目標走行経路を生成する経路生成部と、を備え、前記取得部は、前記畝圃場のうち前記作業車の進行方向前方に位置する領域を撮像する撮像装置であり、前記畝情報は、前記撮像装置により取得される撮像画像であり、前記推定部は、前記撮像画像に含まれる色情報に基づいて、前記畝方向を推定し、前記推定部は、前記色情報に基づいて、前記撮像画像内の解析対象領域を、前記畝部に対応する第1領域と、前記溝状部に対応する第2領域と、に区分けし、前記推定部は、前記撮像画像において前記第2領域が延びる方向を算出することにより、前記畝方向を推定し、前記経路生成部は、前記第2領域に対応する前記溝状部の延びる方向に沿って前記作業車が作業走行を行うように、且つ、前記第2領域に対応する前記溝状部に前記作業車の走行装置が接地した状態で前記作業車が作業走行を行うように、前記目標走行経路を生成し、前記推定部は、前記解析対象領域に複数の前記第2領域が存在する場合、前記複数の第2領域のうち最大の面積を有する前記第2領域である目標領域を決定すると共に、前記撮像画像において前記目標領域が延びる方向を算出することにより、前記畝方向を推定し、前記経路生成部は、前記目標領域に対応する前記溝状部の延びる方向に沿って前記作業車が作業走行を行うように前記目標走行経路を生成することにある。特に、前記経路生成部は、前記目標領域に対応する前記溝状部に前記走行装置が接地した状態で前記作業車が作業走行を行うように、前記目標走行経路を生成すると好適である。
【0023】
この構成によれば、作業車が目標走行経路に沿って作業走行すれば、作業車の走行装置は、解析対象領域に存在する複数の第2領域のうち最大の面積を有する第2領域に対応する溝状部に接地した状態となる。これにより、走行装置が、比較的狭い面積を有する第2領域に対応する溝状部に接地する場合に比べて、走行装置の接地面が溝状部からはみ出して畝部に接してしまう事態が起こりにくい。これにより、作業車の姿勢が安定的になりやすい。
【0024】
さらに、本発明において、前記取得部は、前記畝情報を経時的に取得し、前記推定部は、前記取得部により取得された前記畝情報に基づいて、前記畝方向の推定結果を経時的に更新し、前記経路生成部は、前記推定部により更新された前記推定結果に基づいて、前記目標走行経路を経時的に更新し、前記推定部は、前記目標領域を決定した後、前記解析対象領域のうち前記目標領域の占める割合が増大するように前記解析対象領域を狭めると好適である。
【0025】
推定部が目標領域を決定した後、解析対象領域が変化しない構成においては、解析対象領域に存在する複数の第2領域の面積の大小関係が、作業車の進行に伴って変化する事態が想定される。その場合、目標領域として決定される第2領域が、作業車の進行に伴って変化することとなる。
【0026】
例えば、解析対象領域に、左右二つの第2領域が存在しており、且つ、ある時点で左側の第2領域よりも右側の第2領域の方が大きな面積を有している場合、その時点では、右側の第2領域が目標領域として決定される。その後、もし、右側の第2領域よりも左側の第2領域の方が大きな面積を有している状態となれば、左側の第2領域が目標領域として決定される。即ち、この場合、目標領域として決定される第2領域が、右側の第2領域から左側の第2領域へ変化することとなる。
【0027】
これにより、走行装置が接地する溝状部が、作業車の進行に伴って変化することとなる。そして、走行装置が接地する溝状部が変化する際、走行装置は、畝部を踏むこととなる。これにより、作業車に振動が生じる事態が想定される。
【0028】
ここで、上記の構成によれば、推定部は、目標領域を決定した後、解析対象領域のうち目標領域の占める割合が増大するように解析対象領域を狭める。これにより、狭まった後の解析対象領域に、目標領域として決定された第2領域以外の第2領域が含まれにくくなる。これにより、目標領域として決定される第2領域が作業車の進行に伴って変化する事態が起こりにくい走行経路管理システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】溝状部と左右のクローラとの位置関係を示す平面図である。
【
図4】溝状部と左右のクローラとの位置関係を示す背面図である。
【
図5】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【
図6】撮像装置により取得される撮像画像の一例を示す図である。
【
図10】溝状部と左右のクローラとの位置関係を示す背面図である。
【
図11】目標走行経路の更新によって目標走行経路が変化する場合の例を示す図である。
【
図12】第1別実施形態における畝方向の推定を説明する図である。
【
図13】その他の実施形態(1)において解析対象領域が狭まる場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1及び
図3に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、
図3、
図4、
図10に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、
図1、
図4、
図10に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0031】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン1(本発明に係る「作業車」に相当)は、収穫部H、左右のクローラ11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0032】
左右のクローラ11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、左右のクローラ11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、左右のクローラ11によって自走可能である。
【0033】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、左右のクローラ11の上側に備えられている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。尚、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0034】
運転部12は、運転座席12a及びキャビン12bを有している。運転座席12aは、キャビン12bの内側に設けられている。運転座席12aには、オペレータが着座可能である。
【0035】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0036】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、刈取装置15及びリール17を含んでいる。
【0037】
刈取装置15は、圃場の穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の穀稈を掻き込む。刈取装置15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0038】
この構成により、収穫部Hは、圃場の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈取装置15によって圃場の穀稈を刈り取りながら左右のクローラ11によって走行する刈取走行が可能である。
【0039】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0040】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0041】
図2に示すように、コンバイン1は、畝圃場FIにおいて刈取走行(本発明に係る「作業走行」に相当)を行う。
【0042】
また、
図1、
図3、
図4に示すように、コンバイン1は、左側のクローラ11である左クローラ11Lと、右側のクローラ11である右クローラ11R(本発明に係る「走行装置」に相当)と、を備えている。
【0043】
〔畝圃場について〕
図2から
図4に示すように、本実施形態において、畝圃場FIは、複数の畝部31と、複数の溝状部32と、を有している。畝部31は、盛り上げられた土により構成されている。溝状部32は、互いに隣接する2つの畝部31の間に設けられた、溝状の部分である。
【0044】
即ち、畝圃場FIは、盛り上げられた土により構成された複数の畝部31と、互いに隣接する2つの畝部31の間に設けられた溝状部32と、を有している。
【0045】
図4に示すように、本実施形態における畝部31には、大豆33が植えられている。尚、本発明はこれに限定されず、畝部31には、大豆33以外の種類の作物が植えられていても良い。
【0046】
尚、
図2及び
図3に示すように、本実施形態における収穫部Hの収穫幅は、3つの畝部31と、それらの畝部31の間に位置する2つの溝状部32と、の幅の合計に対応している。
【0047】
ここで、コンバイン1は、
図5に示す経路生成部24により生成された目標走行経路LI(
図3参照)に沿って自動走行可能に構成されている。そして、目標走行経路LIは、走行経路管理システムA(
図5参照)によって管理される。即ち、走行経路管理システムAは、畝圃場FIにおいて刈取走行を行うコンバイン1のためのものである。
【0048】
以下では、走行経路管理システムAについて詳述する。
【0049】
〔走行経路管理システムの構成〕
図4に示すように、コンバイン1は、制御部20を備えている。尚、制御部20は、走行経路管理システムAに含まれている。制御部20は、自車位置算出部21及び走行制御部22を有している。
【0050】
図1に示すように、衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号を受信する。そして、
図5に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを自車位置算出部21へ送る。
【0051】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0052】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、走行制御部22へ送られる。
【0053】
また、
図5に示すように、コンバイン1は、撮像装置40(本発明に係る「取得部」に相当)を備えている。尚、撮像装置40は、走行経路管理システムAに含まれている。
【0054】
また、制御部20は、推定部23及び経路生成部24を有している。尚、推定部23及び経路生成部24は、何れも、走行経路管理システムAに含まれている。
【0055】
本実施形態において、撮像装置40は、カメラ(例えばCCDカメラやCMOSカメラ)である。
図1に示すように、撮像装置40は、キャビン12bの左前部における上部に取り付けられている。これにより、撮像装置40は、コンバイン1における機体前部において、機体左右方向中央位置に配置されている。
【0056】
撮像装置40は、コンバイン1の機体前方へ向けられている。これにより、
図2に示すように、撮像装置40は、畝圃場FIのうちコンバイン1の進行方向前方に位置する領域FAを撮像する。これにより、撮像装置40は、畝部31及び溝状部32の撮像画像を取得する。
【0057】
この構成により、撮像装置40は、畝情報を取得可能である。尚、畝情報とは、畝部31及び溝状部32のうち少なくとも何れか一方に関する情報である。本実施形態において、畝情報は、撮像装置40により取得される撮像画像である。
【0058】
このように、走行経路管理システムAは、畝部31及び溝状部32のうち少なくとも何れか一方に関する情報である畝情報を取得する撮像装置40を備えている。また、撮像装置40は、畝圃場FIのうちコンバイン1の進行方向前方に位置する部分の畝情報を取得するように構成されている。
【0059】
尚、撮像装置40は、畝部31及び溝状部32のうち、畝部31のみの撮像画像を取得するように構成されていても良いし、溝状部32のみの撮像画像を取得するように構成されていても良い。
【0060】
図5に示すように、撮像装置40により取得された撮像画像は、推定部23へ送られる。
【0061】
推定部23は、撮像装置40から受け取った撮像画像に基づいて、畝方向を推定する。
尚、畝方向とは、畝部31の延びる方向である。ただし、溝状部32の延びる方向は基本的に畝部31の延びる方向に一致することから、溝状部32の延びる方向が「畝方向」として取り扱われても良い。
【0062】
即ち、走行経路管理システムAは、畝部31の延びる方向である畝方向を、撮像装置40により取得された撮像画像に基づいて推定する推定部23を備えている。
【0063】
図5に示すように、推定部23による推定結果は、経路生成部24へ送られる。
【0064】
経路生成部24は、推定部23による推定結果に基づいて、コンバイン1の目標走行経路LI(
図3参照)を生成する。即ち、走行経路管理システムAは、推定部23により推定された畝方向に基づいてコンバイン1の目標走行経路LIを生成する経路生成部24を備えている。
【0065】
図5に示すように、経路生成部24により生成された目標走行経路LIを示す情報は、走行制御部22へ送られる。
【0066】
走行制御部22は、左右のクローラ11を制御可能に構成されている。そして、走行制御部22は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、経路生成部24から受け取った目標走行経路LIを示す情報と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部22は、
図3に示すように、目標走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、左右のクローラ11を制御する。
【0067】
本実施形態において、走行制御部22は、衛星測位モジュール80が平面視において目標走行経路LI上に位置した状態でコンバイン1が走行するように、左右のクローラ11を制御する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。走行制御部22は、コンバイン1のうち衛星測位モジュール80以外の所定部位が平面視において目標走行経路LI上に位置した状態でコンバイン1が走行するように、左右のクローラ11を制御するように構成されていても良い。
【0068】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる自車位置算出部21等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0069】
〔畝方向の推定について〕
以下では、推定部23による畝方向の推定について詳述する。
【0070】
図6には、コンバイン1が
図3に示す状態で刈取走行を行っているときに撮像装置40により取得された撮像画像の一例が示されている。
図6に示すように、撮像装置40により取得される撮像画像には、畝圃場FIのうちコンバイン1の進行方向前方に位置する領域FA(
図2参照)における溝状部32及び大豆33が写っている。尚、ここでは図示されていないが、大豆33の下には畝部31が位置しているのであって、撮像装置40により取得される撮像画像に畝部31が写っていても良い。
【0071】
尚、
図6に示すように、撮像装置40により取得される撮像画像には、刈取装置15及びリール17も写っている。
【0072】
推定部23は、
図6に示すように、撮像画像内の解析対象領域50を決定する。尚、解析対象領域50を決定するための方法は、特に限定されないが、機械学習されたニューラルネットワークを用いて解析対象領域50の位置及び大きさが決定されても良いし、予め設定された位置及び大きさで解析対象領域50が決定されても良い。
【0073】
また、本実施形態において、解析対象領域50は矩形である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、解析対象領域50はいかなる形状であっても良い。
【0074】
図7は、
図6に示した解析対象領域50の拡大図である。
図6及び
図7に示すように、解析対象領域50には、畝圃場FIのうちコンバイン1の進行方向前方に位置する領域FA(
図2参照)における溝状部32及び大豆33が写っている。尚、ここでは図示されていないが、大豆33の下には畝部31が位置しているのであって、解析対象領域50に畝部31が写っていても良い。
【0075】
図8に示すように、推定部23は、撮像画像に含まれる色情報に基づいて、解析対象領域50を、第1領域51と第2領域52とに区分けする。
【0076】
詳述すると、
図7及び
図8に示すように、解析対象領域50のうち、大豆33が写っている部分が、色情報に基づいて、第1領域51として区分けされる。尚、大豆33の下には畝部31が位置しているので、第1領域51は、畝部31に対応することとなる。
【0077】
また、解析対象領域50のうち、第1領域51以外の部分が、第2領域52として区分けされる。第2領域52は溝状部32に対応する。
【0078】
即ち、推定部23は、色情報に基づいて、撮像画像内の解析対象領域50を、畝部31に対応する第1領域51と、溝状部32に対応する第2領域52と、に区分けする。
【0079】
ここで、推定部23は、解析対象領域50に複数の第2領域52が存在する場合、複数の第2領域52のうち最大の面積を有する第2領域52である目標領域53を決定するように構成されている。
【0080】
図8に示す例では、解析対象領域50に4つの第2領域52が存在する。そのため、推定部23は、各第2領域52の面積を比較して、
図9に示すように、目標領域53を決定する。この例では、4つの第2領域52のうち、一番右に位置する第2領域52が、最大の面積を有している。そのため、一番右に位置する第2領域52が、目標領域53として決定される。
【0081】
尚、
図9に示す例では、目標領域53として決定された第2領域52以外の第2領域52が削除されている。また、第1領域51も削除されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、目標領域53として決定された第2領域52以外の第2領域52、及び、第1領域51は、削除されずに残されていても良い。
【0082】
図9に示すように、推定部23は、解析対象領域50の左右方向における、目標領域53の中心点54を算出する。このとき、推定部23は、解析対象領域50の上下方向における複数の位置について、中心点54を算出する。
【0083】
そして、推定部23は、算出された複数の中心点54を、例えば最小二乗法を用いて、近似直線55により近似する。これにより、推定部23は、近似直線55を算出する。
【0084】
近似直線55は、解析対象領域50における目標領域53の位置、及び、解析対象領域50において目標領域53が延びる方向を示す直線である。即ち、近似直線55を算出することは、撮像画像において目標領域53が延びる方向を算出することに相当する。
【0085】
図5に示すように、推定部23は、自車位置算出部21から、コンバイン1の位置座標を取得するように構成されている。また、推定部23は、コンバイン1に備わる慣性計測装置(図示せず)による検知結果と、コンバイン1の位置座標と、に基づいて、コンバイン1の姿勢方位を算出可能に構成されている。
【0086】
そして、推定部23は、コンバイン1の位置座標及び姿勢方位に基づいて、解析対象領域50における近似直線55の位置及び方向を、畝圃場FIにおける平面視での位置及び方向に変換する。これにより、
図3及び
図9に示すように、推定部23は、近似直線55を推定線56に変換する。言い換えれば、推定部23は、コンバイン1の位置座標及び姿勢方位と、近似直線55と、に基づいて、推定線56を算出する。
【0087】
図3に示すように、推定線56の延びる方向は、溝状部32の延びる方向に一致する。
即ち、推定線56の延びる方向は、畝方向に相当する。また、推定線56は、溝状部32の幅方向での中央に位置する。また、
図3において、推定線56が位置している溝状部32は、
図9に示す目標領域53に対応している。
【0088】
ここで、近似直線55を算出すること、及び、推定線56を算出することは、目標領域53に対応する溝状部32の延びる方向を推定することに相当する。従って、近似直線55を算出すること、及び、推定線56を算出することは、畝方向を推定することに相当する。また、近似直線55の延びる方向、及び、推定線56の延びる方向は、推定部23により推定された畝方向に相当する。また、近似直線55の延びる方向、及び、推定線56の延びる方向は、本発明に係る「推定結果」に相当する。
【0089】
即ち、推定部23は、撮像画像に含まれる色情報に基づいて、畝方向を推定する。また、推定部23は、撮像画像において第2領域52が延びる方向を算出することにより、畝方向を推定する。また、推定部23は、解析対象領域50に複数の第2領域52が存在する場合、複数の第2領域52のうち最大の面積を有する第2領域52である目標領域53を決定すると共に、撮像画像において目標領域53が延びる方向を算出することにより、畝方向を推定する。
【0090】
図5に示すように、推定部23は、推定線56を示す情報を、経路生成部24へ送る。
経路生成部24は、推定線56を示す情報に基づいて、目標走行経路LIを生成する。より具体的には、経路生成部24は、
図3に示すように、推定線56と目標走行経路LIとが互いに平行になるように、且つ、目標走行経路LIが推定線56から機体左側へ所定距離D1だけ離れた位置に位置するように、目標走行経路LIを生成する。
【0091】
尚、所定距離D1は、機体左右方向における右クローラ11Rの中心位置と衛星測位モジュール80の中心位置との間の距離に相当する。
【0092】
この構成により、目標走行経路LIは、畝方向に沿って延びることとなる。より具体的には、目標走行経路LIは、目標領域53に対応する溝状部32の延びる方向に沿って延びることとなる。
【0093】
図5に示すように、経路生成部24により生成された目標走行経路LIを示す情報は、走行制御部22へ送られる。そして、上述の通り、走行制御部22は、目標走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、左右のクローラ11を制御する。
このとき、走行制御部22は、衛星測位モジュール80が平面視において目標走行経路LI上に位置した状態でコンバイン1が走行するように、左右のクローラ11を制御する。
【0094】
この構成により、コンバイン1は、
図3に示すように、目標領域53に対応する溝状部32の延びる方向に沿って刈取走行を行うこととなる。また、コンバイン1は、
図3及び
図4に示すように、目標領域53に対応する溝状部32に右クローラ11Rが接地した状態で刈取走行を行うこととなる。
【0095】
このように、経路生成部24は、第2領域52に対応する溝状部32の延びる方向に沿ってコンバイン1が刈取走行を行うように、且つ、第2領域52に対応する溝状部32にコンバイン1の右クローラ11Rが接地した状態でコンバイン1が刈取走行を行うように、目標走行経路LIを生成する。また、経路生成部24は、目標領域53に対応する溝状部32の延びる方向に沿ってコンバイン1が刈取走行を行うように、且つ、目標領域53に対応する溝状部32に右クローラ11Rが接地した状態でコンバイン1が刈取走行を行うように、目標走行経路LIを生成する。
【0096】
これにより、
図4及び
図10に示すように、溝状部32に右クローラ11Rが接地した状態となるため、機体の姿勢が安定的となる。その結果、刈取装置15の有する刈刃15aの位置が、大豆33に対して適切な位置に安定的に維持されることとなる。
【0097】
尚、
図4に示す例では、右クローラ11Rだけでなく、左クローラ11Lも溝状部32に接地している。しかしながら、
図10に示す例では、左クローラ11Lは、畝部31に乗り上げている。
【0098】
本実施形態におけるコンバイン1は、左右のクローラ11のそれぞれに対する機体本体の高さ位置を変更して機体本体をローリングさせることが可能な昇降装置(図示せず)を備えている。このような昇降装置は従来から知られているため、昇降装置の機構についての詳細な説明は省略する。
【0099】
図10に示す例のように、左クローラ11Lが畝部31に乗り上げていても、昇降装置によって機体本体をローリングさせ、機体本体の姿勢を水平に保つことにより、刈刃15aの姿勢を水平に保つことができる。そのため、左クローラ11Lが畝部31に乗り上げている場合であっても、刈刃15aの位置を、大豆33に対して適切な位置に安定的に維持することができる。
【0100】
〔目標走行経路の更新について〕
以下では、コンバイン1が目標走行経路LIに沿った自動走行を行っているときの、目標走行経路LIの更新について説明する。
【0101】
本実施形態における撮像装置40は、所定時間毎に撮像画像を取得する。即ち、撮像装置40は、畝情報を経時的に取得する。
【0102】
また、撮像装置40は、撮像画像を取得する度に、その撮像画像を推定部23へ送る。
そして、推定部23は、撮像装置40から撮像画像を受け取る度に、畝方向の推定結果を更新する。即ち、推定部23は、撮像装置40により取得された撮像画像に基づいて、畝方向の推定結果を経時的に更新する。
【0103】
また、本実施形態における推定部23は、畝方向の推定結果を更新する度に、更新後の推定結果を経路生成部24へ送る。そして、経路生成部24は、推定部23から畝方向の推定結果を受け取る度に、目標走行経路LIを更新する。即ち、経路生成部24は、推定部23により更新された推定結果に基づいて、目標走行経路LIを経時的に更新する。
【0104】
図11には、目標走行経路LIの更新によって目標走行経路LIが変化する場合の例が示されている。この例において、コンバイン1は、刈取走行を行っており、まず第1位置P1を通過するものとする。また、コンバイン1が第1位置P1に到達した時点で、撮像装置40によって撮像画像が取得されるものとする。また、コンバイン1が第1位置P1に到達した時点では、目標走行経路LIは生成されていないものとする。
【0105】
撮像装置40によって撮像画像が取得されることに応じて、
図11の紙面下部に示すように、推定部23は、目標領域53を決定すると共に、近似直線55を算出する。そして、推定部23は、推定線56を算出する。尚、コンバイン1が第1位置P1に到達したときに算出される推定線56を、第1推定線56aとする。
【0106】
この場合、経路生成部24は、第1推定線56aに基づいて、目標走行経路LIを生成する。このとき生成された目標走行経路LIを、第1経路LI1とする。第1経路LI1が生成された後、コンバイン1は、第1経路LI1に沿って自動的に刈取走行を行う。
【0107】
その後、コンバイン1は、第2位置P2に到達する。コンバイン1が第2位置P2に到達した時点で、撮像装置40によって撮像画像が取得されるものとする。
【0108】
撮像装置40によって撮像画像が取得されることに応じて、
図11の紙面上下方向中央部に示すように、推定部23は、目標領域53を決定すると共に、近似直線55を新たに算出することにより、近似直線55を更新する。そして、推定部23は、更新後の近似直線55に基づいて、推定線56を新たに算出することにより、推定線56を更新する。これにより、推定部23による畝方向の推定結果が更新されることとなる。尚、コンバイン1が第2位置P2に到達したときに算出される推定線56を、第2推定線56bとする。
【0109】
この場合、経路生成部24は、第2推定線56bに基づいて、目標走行経路LIを新たに生成することにより、目標走行経路LIを更新する。このとき生成された目標走行経路LIを、第2経路LI2とする。このとき、目標走行経路LIは、第1経路LI1から第2経路LI2へ変化することとなる。第2経路LI2が生成された後、コンバイン1は、第2経路LI2に沿って自動的に刈取走行を行う。
【0110】
その後、コンバイン1は、第3位置P3に到達する。コンバイン1が第3位置P3に到達した時点で、撮像装置40によって撮像画像が取得されるものとする。
【0111】
撮像装置40によって撮像画像が取得されることに応じて、
図11の紙面上部に示すように、推定部23は、目標領域53を決定すると共に、近似直線55を新たに算出することにより、近似直線55を更新する。そして、推定部23は、更新後の近似直線55に基づいて、推定線56を新たに算出することにより、推定線56を更新する。これにより、推定部23による畝方向の推定結果が更新されることとなる。尚、コンバイン1が第3位置P3に到達したときに算出される推定線56を、第3推定線56cとする。
【0112】
この場合、経路生成部24は、第3推定線56cに基づいて、目標走行経路LIを新たに生成することにより、目標走行経路LIを更新する。しかしながら、
図11に示すように、このとき、目標走行経路LIは、第2経路LI2のまま変化しない。これは、第3推定線56cの延びる方向が第2推定線56bの延びる方向に一致しており、且つ、第3推定線56cが第2推定線56bの延長線57上に位置しているためである。
【0113】
そのため、第3位置P3を通過したコンバイン1は、第2経路LI2に沿って自動的に刈取走行を行う。
【0114】
以上で説明した構成であれば、推定部23は、畝圃場FIのうちコンバイン1の進行方向前方に位置する部分の畝情報に基づいて、畝方向を推定する。そして、推定された畝方向に基づいて、目標走行経路LIが生成される。これにより、畝圃場FIにおける好適な目標走行経路LIを生成可能な走行経路管理システムAを実現できる。
【0115】
〔第1別実施形態〕
上記実施形態においては、推定部23は、目標領域53を決定する。そして、推定部23は、撮像画像において目標領域53が延びる方向を算出することにより、畝方向を推定する。
【0116】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下では、本発明に係る第1別実施形態について、上記実施形態とは異なる点を中心に説明する。以下で説明している部分以外の構成は、上記実施形態と同様である。また、上記実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0117】
第1別実施形態においては、目標領域53は決定されない。第1別実施形態における推定部23は、撮像装置40により取得された撮像画像に基づいて、複数の畝部31が延びる各方向、あるいは、複数の溝状部32が延びる各方向、あるいは、一つまたは複数の畝部31及び一つまたは複数の溝状部32が延びる各方向を算出すると共に、算出された各方向の平均を算出することにより、畝方向を推定する。
【0118】
例えば、
図12に示す例では、推定部23は、解析対象領域50に存在する3つの第1領域51、及び、2つの第2領域52のそれぞれについて、近似直線55を算出する。
【0119】
そして、推定部23は、算出された5つの近似直線55に基づいて、5つの推定線56を算出する。これにより、推定部23は、解析対象領域50に存在する3つの第1領域51、及び、2つの第2領域52のそれぞれに対応する5つの推定線56を算出する。
【0120】
尚、第1領域51に対応する推定線56の延びる方向は、その第1領域51に対応する畝部31が延びる方向に相当する。また、第2領域52に対応する推定線56の延びる方向は、その第2領域52に対応する溝状部32が延びる方向に相当する。
【0121】
言い換えれば、第1領域51に対応する推定線56を算出することは、その第1領域51に対応する畝部31が延びる方向を算出することに相当する。また、第2領域52に対応する推定線56を算出することは、その第2領域52に対応する溝状部32が延びる方向を算出することに相当する。
【0122】
図12に示す例では、算出された5つの推定線56の延びる方向は、それぞれ異なっている。そして、この例において、推定部23は、算出された5つの推定線56の延びる方向の平均を算出することにより、平均畝方向59を算出する。尚、平均畝方向59は、本発明に係る「畝方向」に相当する。言い換えれば、平均畝方向59を算出することは、畝方向を推定することに相当する。
【0123】
このように、
図12に示す例では、推定部23は、撮像装置40により取得された撮像画像に基づいて、3つの畝部31及び2つの溝状部32が延びる各方向を算出すると共に、算出された各方向の平均を算出することにより、畝方向を推定する。
【0124】
ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、推定部23は、3つの畝部31が延びる各方向のみを算出すると共に、算出された各方向の平均を算出することにより、畝方向を推定しても良い。また、例えば、推定部23は、2つの溝状部32が延びる各方向のみを算出すると共に、算出された各方向の平均を算出することにより、畝方向を推定しても良い。
【0125】
〔その他の実施形態〕
(1)推定部23は、目標領域53を決定した後、解析対象領域50のうち目標領域53の占める割合が増大するように解析対象領域50を狭めるように構成されていても良い。この場合、例えば、
図6から
図9に示した例のように目標領域53が決定された後、
図13に示すように、推定部23が解析対象領域50を狭めても良い。
図13に示す例では、解析対象領域50の左側部分が削られることにより、解析対象領域50が狭まっている。その結果、解析対象領域50のうち目標領域53の占める割合が増大している。
【0126】
(2)コンバイン1が自動走行を行う前にコンバイン1の走行方向の基準となる基準方位が設定されると共に、基準方位に基づいて目標走行経路LIが生成されるように構成されていてもよい。この場合、推定部23により推定された畝方向に基づいて、基準方位、あるいは、目標走行経路LIが更新(修正)されるように構成されていても良い。
【0127】
(3)経路生成部24は、目標領域53に対応する溝状部32に左クローラ11Lが接地した状態でコンバイン1が刈取走行を行うように、目標走行経路LIを生成するように構成されていても良い。この場合、左クローラ11Lは、本発明に係る「走行装置」に相当する。
【0128】
(4)左右のクローラ11に代えて、複数のホイールが備えられていても良い。この場合、ホイールは、本発明に係る「走行装置」に相当する。
【0129】
(5)コンバイン1は、自動走行ができないように構成されていても良い。この場合、経路生成部24により生成された目標走行経路LIは、手動走行のためのガイダンスとして利用されても良い。
【0130】
(6)自車位置算出部21、走行制御部22、推定部23、経路生成部24のうち、一部または全てがコンバイン1の外部に備えられていても良いのであって、例えば、コンバイン1の外部に設けられた管理サーバに備えられていても良い。
【0131】
(7)上記実施形態において、畝情報は、撮像装置40により取得される撮像画像である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、畝情報は、例えばLiDAR(レーザーレーダー)により取得される物体の位置及び高さを示す点群データであっても良い。この場合、LiDARは、本発明に係る「取得部」に相当する。
【0132】
(8)コンバイン1が畝圃場FIにおいて刈取走行を行う際、撮像装置40が、撮像画像を一度だけ取得するように構成されていても良い。即ち、撮像装置40は、撮像画像(畝情報)を経時的に取得するように構成されていなくても良い。同様に、推定部23は、畝方向の推定結果を経時的に更新するように構成されていなくても良い。同様に、経路生成部24は、目標走行経路LIを経時的に更新するように構成されていなくても良い。
【0133】
(9)推定部23は、機械学習されたニューラルネットワークを用いた画像処理により、解析対象領域50を、第1領域51と第2領域52とに区分けするように構成されていても良い。
【0134】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、コンバインだけでなく、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機、タマネギピッカー、タマネギ掘り取り機、自走式の管理機等、畝圃場において作業走行を行う種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1 コンバイン(作業車)
11R 右クローラ(走行装置)
23 推定部
24 経路生成部
31 畝部
32 溝状部
40 撮像装置(取得部)
50 解析対象領域
51 第1領域
52 第2領域
53 目標領域
A 走行経路管理システム
FI 畝圃場
LI 目標走行経路