(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/127 20060101AFI20250228BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20250228BHJP
A01D 57/00 20060101ALI20250228BHJP
A01D 69/00 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A01D41/127
A01D41/12 B
A01D41/12 D
A01D57/00 A
A01D69/00 301
A01D69/00 302G
(21)【出願番号】P 2021079838
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】増本 忠久
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186728(JP,A)
【文献】特開2020-178617(JP,A)
【文献】特開2019-126318(JP,A)
【文献】特開2013-027340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0084966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/127
A01D 41/12
A01D 57/00
A01D 69/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈刃を有し、圃場の作物を刈り取る刈取装置と、
前記刈取装置によって刈り取られた前記作物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって供給された前記作物に対して脱穀処理を施す脱穀装置と、
前記刈取装置に土が取り込まれたことを検知する検知装置と、を備え
、
前記検知装置は、前記刈取装置のうち前記刈刃よりも後側の領域を検知対象領域とするコンバイン。
【請求項2】
前記検知装置は、撮影装置と、前記撮影装置が生成した画像に基づいて土が取り込まれたか否かを判断する判断部と、を備える請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記判断部は、前記撮影装置が生成した画像の入力を受けて土が取り込まれたか否かを示す情報を出力する、機械学習された学習済みモデルを含む請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記学習済みモデルは、前記刈取装置に土が取り込まれた状態を撮影した画像を入力データとし、当該画像における土に対応する領域を指定する情報を教師データとする機械学習により生成される請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記刈取装置は、刈取フレーム
と、前記刈刃の後において前記刈取フレームの左右に亘って設けられると共に回転駆動されて前記作物を横送り搬送するオーガと、を備え、
前記刈刃は前記刈取フレームの左右に亘って設けられ、
前記検知装置は、前記刈刃と前記オーガとの間を検知対象領域とする請求項1から
4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記刈取装置に土が取り込まれたことを前記検知装置が検知したことに応じて機体の動作パラメータを変更する機体制御部を備える請求項1から
5のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記機体制御部は、前記刈取装置に土が取り込まれたことを前記検知装置が検知したことに応じて前記動作パラメータとしての走行速度を減少させる請求項
6に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記機体制御部は、前記刈取装置に土が取り込まれたことを前記検知装置が検知したことに応じて前記動作パラメータとしての走行速度をゼロに変更する請求項
6又は
7に記載のコンバイン。
【請求項9】
前記検知装置は、撮影装置と、前記撮影装置が生成した画像に基づいて土が取り込まれたか否かを判断する判断部と、を備え、
前記判断部は、前記刈取装置に取り込まれた土の量である取込量を学習済みモデルにより推定する推定部と、前記取込量と閾値との大小関係を判定する判定部と、を備え、前記取込量が前記閾値よりも大きいことを前記判定部の判定結果が示すときに前記刈取装置に土が取り込まれたと判断する請求項1から
8のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項10】
前記学習済みモデルは、前記刈取装置に土が取り込まれた状態を撮影した画像を入力データとし、当該画像における前記取込量を示す情報を教師データとする機械学習により生成される請求項
9に記載のコンバイン。
【請求項11】
人為操作の入力を受け付ける操作具を備え、
前記判断部は、前記操作具から受け付けた人為操作に基づいて前記閾値を変更する変更部を備える請求項
9又は
10に記載のコンバイン。
【請求項12】
報知装置と、前記刈取装置に土が取り込まれたことを前記検知装置が検知したことに応じて前記報知装置を作動させる報知制御部と、を備える請求項1から
11のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項13】
報知装置と、前記報知装置の作動を制御する報知制御部と、を備え、
前記検知装置は、前記刈取装置に取り込まれた土の量である取込量を推定する推定部を備え、
前記報知制御部は、前記取込量を前記報知装置を介して報知する請求項1から
12のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、刈取装置と、フィーダと、脱穀装置と、を備えるコンバインが開示されている。刈取装置によって刈り取られた作物は、フィーダによって脱穀装置へ搬送され、脱穀処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
刈取装置による作物の刈取りは、刈取装置を地面に近づけた状態で行なわれる。そうすると、地面の起伏等により刈取装置が上下動した際に、刈取装置に圃場の土が取り込まれてしまう可能性がある。刈取装置に土が取り込まれると、作物が土で汚れて商品価値が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、土による作物の汚れを抑制可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明のコンバインは、刈刃を有し、圃場の作物を刈り取る刈取装置と、前記刈取装置によって刈り取られた前記作物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって供給された前記作物に対して脱穀処理を施す脱穀装置と、前記刈取装置に土が取り込まれたことを検知する検知装置と、を備え、前記検知装置は、前記刈取装置のうち前記刈刃よりも後側の領域を検知対象領域とすることを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、検知装置により刈取装置に土が取り込まれたことが検知される。これにより、何らかの対処を実行して、土による作物の汚れを抑制することが可能となる。例えば、刈取作業を中止し、刈取装置に取り込まれた土を除去することができる。例えば、刈取装置の高さを調整して刈取装置への更なる土の取込を抑制することができる。
また、刈取装置に土が取り込まれると、土は作物と共に搬送装置によって搬送される。本構成によれば、刈取装置が土の検知対象領域となるので、刈取装置に土が取り込まれたことを適切に検知することができる。
【0008】
本発明において、前記検知装置は、撮影装置と、前記撮影装置が生成した画像に基づいて土が取り込まれたか否かを判断する判断部と、を備えると好適である。
【0009】
本構成によれば、撮影装置が生成した画像に基づいて土が取り込まれたか否かが判断されるので、刈取装置への土の取込を適切に検知することができる。また、検知装置を比較的安価に構築することができる。また、検知装置と土とを非接触にできるので、検知装置の耐久性を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記判断部は、前記撮影装置が生成した画像の入力を受けて土が取り込まれたか否かを示す情報を出力する、機械学習された学習済みモデルを含むと好適である。
【0011】
本構成によれば、刈取装置への土の取込を更に適切に検知することができる。
【0012】
本発明において、前記学習済みモデルは、前記刈取装置に土が取り込まれた状態を撮影した画像を入力データとし、当該画像における土に対応する領域を指定する情報を教師データとする機械学習により生成されると好適である。
【0013】
本構成によれば、刈取装置への土の取込を更に適切に検知することができる。
【0014】
【0015】
【0016】
本発明において、前記刈取装置は、刈取フレームと、前記刈刃の後において前記刈取フレームの左右に亘って設けられると共に回転駆動されて前記作物を横送り搬送するオーガと、を備え、前記刈刃は前記刈取フレームの左右に亘って設けられ、前記検知装置は、前記刈刃と前記オーガとの間を検知対象領域とすると好適である。
【0017】
本構成によれば、刈刃とオーガとの間が検知対象領域となるので、刈取装置に土が取り込まれたことを早期に検知することができる。従って、土による作物の汚れの抑制のための対処を早期に実行することができる。
【0018】
本発明において、前記刈取装置に土が取り込まれたことを前記検知装置が検知したことに応じて機体の動作パラメータを変更する機体制御部を備えると好適である。
【0019】
本構成によれば、機体の動作パラメータが変更されるので、機体の動作状態を変更して土による作物の汚れを抑制することができる。
【0020】
本発明において、前記機体制御部は、前記刈取装置に土が取り込まれたことを前記検知装置が検知したことに応じて前記動作パラメータとしての走行速度を減少させると好適である。
【0021】
本構成によれば、土の取り込みを検知すると走行速度が減少するので、刈取装置への土の取り込みを抑制することができる。
【0022】
本発明において、前記機体制御部は、前記刈取装置に土が取り込まれたことを前記検知装置が検知したことに応じて前記動作パラメータとしての走行速度をゼロに変更すると好適である。
【0023】
本構成によれば、土の取り込みを検知すると走行速度がゼロになるので、刈取装置への土の取り込みを抑制することができる。また、コンバインの停車後に、刈取装置へ取り込まれた土を除去することも可能である。
【0024】
本発明において、前記検知装置は、撮影装置と、前記撮影装置が生成した画像に基づいて土が取り込まれたか否かを判断する判断部と、を備え、前記判断部は、前記刈取装置に取り込まれた土の量である取込量を学習済みモデルにより推定する推定部と、前記取込量と閾値との大小関係を判定する判定部と、を備え、前記取込量が前記閾値よりも大きいことを前記判定部の判定結果が示すときに前記刈取装置に土が取り込まれたと判断すると好適である。
【0025】
本構成によれば、刈取装置へ土が取り込まれたことの判断が適切に行なわれる。
【0026】
本発明において、前記学習済みモデルは、前記刈取装置に土が取り込まれた状態を撮影した画像を入力データとし、当該画像における前記取込量を示す情報を教師データとする機械学習により生成されると好適である。
【0027】
本構成によれば、刈取装置へ土が取り込まれたことの判断が更に適切に行なわれる。
【0028】
本発明において、人為操作の入力を受け付ける操作具を備え、前記判断部は、前記操作具から受け付けた人為操作に基づいて前記閾値を変更する変更部を備えると好適である。
【0029】
本構成によれば、刈取装置へ土が取り込まれたことの判断の閾値を人為的に変更可能であるから、オペレータの好みや作物の要求品質に応じて検知装置を調整することが可能となる。例えば、閾値を比較的小さくすれば、少ない取込量で検知装置が検知するので、土による作物の汚れを少なくすることができる。例えば、閾値を比較的大きくすれば、少ない取込量では検知装置が検知しないので、作業の中断を抑制して作業効率を高めることができる。
【0030】
本発明において、報知装置と、前記刈取装置に土が取り込まれたことを前記検知装置が検知したことに応じて前記報知装置を作動させる報知制御部と、を備えると好適である。
【0031】
本構成によれば、刈取装置へ土が取り込まれると報知装置が作動するので、報知を受けたオペレータが対処を実行することができ、土による作物の汚れを抑制することができる。
【0032】
本発明において、報知装置と、前記報知装置の作動を制御する報知制御部と、を備え、前記検知装置は、前記刈取装置に取り込まれた土の量である取込量を推定する推定部を備え、前記報知制御部は、前記取込量を前記報知装置を介して報知すると好適である。
【0033】
本構成によれば、取込量が報知されるので、報知を受けたオペレータが取込量に応じた対処を実行することができ、土による作物の汚れを更に適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図3】制御に関する構成を示す制御ブロック図である。
【
図4】入力データ及び教師データを用いた機械学習による学習済みモデルの生成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、図に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」、矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0036】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン(全稈投入型コンバイン)の機体1は、刈取装置H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送装置16、穀粒排出装置18、エンジンEを備えている。
【0037】
走行装置11は、コンバインにおける下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジンEからの動力によって駆動する。そして、コンバインは、走行装置11によって自走可能である。エンジンEからの動力は、油圧式無段変速装置(HST、図示省略)によって変速され、走行装置11に伝達される。
【0038】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上に備えられている。運転部12には、コンバインを操縦するオペレータが搭乗可能である。
【0039】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上に設けられている。刈取装置Hは、コンバインにおける前部に備えられている。そして、搬送装置16は、刈取装置Hの後ろに設けられている。また、刈取装置Hは、刈刃15及びリール17を含んでいる。コンバインは、刈取装置H及び搬送装置16を昇降させる刈取シリンダ16Aを備えている。刈取シリンダ16Aが伸ると、刈取装置H及び搬送装置16は上昇する。刈取シリンダ16Aが縮むと、刈取装置H及び搬送装置16は下降する。
【0040】
刈刃15は、圃場の作物(植立穀稈)を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈刃15により刈り取られた作物(刈取穀稈)は、搬送装置16へ送られる。
【0041】
即ち、刈取装置Hは、回転駆動しながら植立穀稈を掻き込むリール17を備えている。
【0042】
この構成により、刈取装置Hは、圃場の作物を収穫する。そして、コンバインは、刈刃15によって圃場の作物を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0043】
刈取装置Hにより収穫された作物は、搬送装置16によって機体後方へ搬送される。これにより、作物は脱穀装置13へ搬送される。
【0044】
脱穀装置13において、作物は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0045】
ここで、刈取装置Hは、圃場において収穫作業を行うコンバインに設けられる。以下では、刈取装置Hの構成について詳述する。
【0046】
〔刈取装置の構成〕
図1、
図2に示すように、刈取装置Hは、刈取フレーム20を備えている。刈取フレーム20は、刈刃15により刈り取られた作物を受け入れるように構成されている。
【0047】
刈取フレーム20は、左右の側壁21と、後壁22と、底板23と、を有している。後壁22は、刈取フレーム20の後端部に位置すると共に、左右の側壁21に亘る状態で設けられている。
【0048】
即ち、刈取フレーム20は、左右の側壁21と、刈取フレーム20の後端部に位置すると共に左右の側壁21に亘る後壁22と、を有している。
【0049】
底板23は、刈取フレーム20の下部に位置している。また、底板23は、左右の側壁21に亘る状態で設けられている。
【0050】
また、左右の側壁21の上部に、伸縮可能なリールシリンダ17Aが支持されている。
リールシリンダ17Aが伸びると、リール17は、刈取フレーム20に対して上昇する。
【0051】
また、リールシリンダ17Aが縮むと、リール17は、刈取フレーム20に対して下降する。
【0052】
この構成により、
図1に示すように、リール17は、刈取フレーム20に対して昇降可能である。即ち、刈取装置Hは、リール17を昇降させるリールシリンダ17Aを備えている。
【0053】
また、
図2に示すように、刈刃15は、底板23に支持されている。また、刈刃15は、左右方向に延びている。
【0054】
刈刃15は、固定刃30及び可動刃31を有している。固定刃30は、前方に突出する状態で設けられている。固定刃30は、底板23に支持されている。また、可動刃31は、可動刃駆動機構(図示せず)から伝達される駆動力により、機体左右方向に往復運動する。これにより、可動刃31は、固定刃30に対して機体左右方向に往復運動する。そして、刈刃15は、固定刃30及び可動刃31によって、植立穀稈を切断する。
【0055】
ここで、
図2における線Pは、刈取フレーム20の機体左右方向での中央位置を示している。搬送装置16は、線Pよりも左側に位置している。即ち、搬送装置16は、刈取フレーム20の機体左右方向での中央位置に対して左側に偏倚した位置に配置されている。
そして、搬送装置16の前端部は、後壁22に連通接続されている。
【0056】
また、刈取装置Hは、オーガ40を備えている。オーガ40は、オーガ軸芯40b回りに回転駆動される。オーガ軸芯40bは、機体左右方向に沿って延びている。
【0057】
図2に示すように、オーガ40は、第1スクリュー体41、第2スクリュー体42、掻込爪43を有している。第1スクリュー体41及び第2スクリュー体42は、螺旋状に形成されている。また、掻込爪43は、棒状であり、オーガ40の径方向外側へ向かって突出している。
【0058】
掻込爪43は、搬送装置16の前端部に対向する位置に設けられている。また、第1スクリュー体41は、掻込爪43よりも右側に設けられている。また、第2スクリュー体42は、掻込爪43よりも左側に設けられている。
【0059】
オーガ40の回転に伴い、第1スクリュー体41は、刈取フレーム20に受け入れられた作物を左方へ搬送する。これと同時に、第2スクリュー体42は、刈取フレーム20に受け入れられた作物を右方へ搬送する。そして、掻込爪43は、作物を機体後方へ掻き込む。
【0060】
図2に示すように、刈取装置Hは、前方へ突出する左右のデバイダ50を備えている。
左のデバイダ50は、左の側壁21の前端部に支持されている。また、右のデバイダ50は、右の側壁21の前端部に支持されている。
【0061】
以上述べたとおり、刈取装置Hは、刈取フレーム20と、刈取フレーム20の左右に亘って設けられる刈刃15と、刈刃15の後において刈取フレーム20の左右に亘って設けられると共に回転駆動されて作物を横送り搬送するオーガ40と、を備える。
【0062】
図2に示すように、刈取装置Hは、土よけカバー51を備えている。土よけカバー51は、機体左右方向に延びるL字状の板部材であって、曲げ部分が上に位置する姿勢にて底板23の前端部の上面に配置される。土よけカバー51は、刈刃15のすぐ後に配置される。土よけカバー51は、圃場の土が刈取装置Hに取り込まれるのを抑制する。
【0063】
図3に示すように、コンバインは、撮影装置61、表示入力装置62(操作具の一例)、報知装置63、及び制御装置80を備える。
【0064】
撮影装置61は、運転部12の左側面における前部に配置されている。撮影装置61は、刈取装置Hを斜め上から撮影して画像(静止画又は動画)を生成し、制御装置80へ出力する。
【0065】
表示入力装置62は、人為操作の入力を受け付けると共に情報を表示可能に構成されている。表示入力装置62は、運転部12に設けられてもよいし、オペレータが持つ携帯情報端末であってもよい。表示入力装置62が受け付ける人為操作は、画面へのタッチ入力でもよいし、表示入力装置62が備えるキーやスイッチへの操作であってもよいし、音声での入力であってもよい。
【0066】
報知装置63は、オペレータへの報知を行なう装置である。報知装置63は、例えば、ブザー、スピーカ、ランプ、表示装置、通信装置などである。表示入力装置62が、報知装置63の機能を備えてもよい。
【0067】
制御装置80は、所謂ECUであって、後述する機能部に対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。すなわち、制御装置80は、プログラムを記憶した一次的ではない(non-transitory)記録媒体を備える。
【0068】
制御装置80は、機能部として、判断部81、機体制御部82、及び報知制御部83を備える。判断部81は、推定部81a、判定部81b、及び変更部81cを備える。これら機能部の詳細については後述する。
【0069】
〔検知装置〕
コンバインは、刈取装置Hに土が取り込まれたことを検知する検知装置Xを備える。本実施形態では、検知装置Xは、撮影装置61と、撮影装置61が生成した画像に基づいて土が取り込まれたか否かを判断する判断部81と、により構成される。
【0070】
検知装置Xは、刈取装置Hにおける少なくとも一部を検知対象領域とする。本実施形態では、検知装置Xは、刈刃15とオーガ40との間の領域Y(
図2)を、検知対象領域とする。詳しくは、撮影装置61が、刈取装置Hの全体を撮影する。撮影装置61の撮影領域に、領域Yが含まれる。すなわち、撮影装置61の生成する画像に、領域Yが写る。本実施形態では、領域Yは矩形の領域であり、刈取フレーム20の左右に亘って延びている。
【0071】
判断部81による判断は、本実施形態では、次のようにして行なわれる。
【0072】
推定部81aが、撮影装置61が生成した画像に基づいて、刈取装置Hに取り込まれた土の量である取込量を学習済みモデルにより推定する。判定部81bが、推定部81aが推定した取込量と閾値との大小関係を判定する。閾値は、予め設定される。そして判断部81は、取込量が閾値よりも大きいことを判定部81bの判定結果が示すときに、刈取装置Hに土が取り込まれたと判断する。
【0073】
学習済みモデルの生成について、
図4を用いて説明する。刈取装置Hに土が取り込まれた状態を撮影した複数の画像IMを入力データとし、それぞれの画像IMにおける取込量を示す情報IFを用意し、教師データとする。入力データが、刈取装置Hに土が取り込まれていない状態を撮影した画像を含んでもよい。そして、コンピュータの機能部である機械学習部90が、入力データ及び教師データを用いて、機械学習により学習済みモデルZを生成する。学習済みモデルZは、撮影装置61が生成した画像の入力を受けて、刈取装置Hに取り込まれた土の量である取込量を推定し出力するように構成される。このようにして生成された学習済みモデルZが、判断部81の推定部81aに含まれる。なお、機械学習部90は、コンバインの制御装置80に設けられてもよいし、コンバインの外部に設けられてもよい。予め生成された学習済みモデルZが、コンバインの製造時に制御装置80に備えられてもよい。
【0074】
変更部81cは、表示入力装置62から受け付けた人為操作に基づいて、判定部81bが判定に用いる閾値を変更する。例えば、変更部81cは、表示入力装置62に閾値の変更を受け付ける画面を表示させて、表示入力装置62への人為操作の入力を待機する。
【0075】
機体制御部82は、刈取装置Hに土が取り込まれたことを検知装置Xが検知したことに応じて、機体1の動作パラメータを変更する。動作パラメータの変更としては、下掲の項目が例示される。
【0076】
走行速度の減少:機体制御部82は、動作パラメータとしての走行速度を減少させる。
具体的には、機体制御部82は、油圧式無段変速装置を制御して、走行装置11の走行速度を減少させる。動作パラメータの変更量(走行速度の減少量)は、例えば、所定量、所定速度までの減少、土の取込量に応じた減少(取込量が大きいほど走行速度を大きく減少)などが可能である。
【0077】
停止:機体制御部82は、動作パラメータとしての走行速度をゼロに変更する。具体的には、機体制御部82は、油圧式無段変速装置を制御して、走行装置11の走行速度を徐々に減少させ、最終的に走行速度をゼロに変更し、機体1を停止させる。
【0078】
刈取装置Hの上昇:機体制御部82は、動作パラメータとしての刈取装置Hの高さを増加させる。具体的には、機体制御部82は、刈取シリンダ16Aを制御して伸長させ、刈取装置Hを上昇させる。
【0079】
刈取装置Hの停止:機体制御部82は、動作パラメータとしての刈取装置Hの動作状態を「停止」に変更する。具体的には、機体制御部82は、エンジンEから刈取装置Hへの動力伝達を入切する刈取クラッチ(図示省略)を制御して、刈取装置Hを停止させる。
【0080】
以上述べた動作パラメータの変更は、1つの項目のみ行なわれてもよいし、複数の項目が同時又は順次行なわれてもよい。
【0081】
報知制御部83は、刈取装置Hに土が取り込まれたことを検知装置が検知したことに応じて報知装置63を作動させる。すなわち、報知制御部83は、判断部81が刈取装置Hに土が取り込まれたと判断したことに応じて、報知装置63を作動させる。例えば、報知制御部83は、報知装置63としてのブザー及びランプを作動させる。報知制御部83は、報知装置63としての表示入力装置62に、土が取り込まれたことを知らせる画面を表示させる。
【0082】
報知制御部83が、推定部81aが推定した取込量を報知装置63を介して報知するように構成されてもよい。例えば、報知制御部83は、報知装置63としての表示入力装置62に、取込量を示す画面(例えば、棒グラフや数値など)を表示させる。
【0083】
〔変形例〕
(1)判断部81が、刈取装置Hに取り込まれた土の量である取込量を推定することなく土が取り込まれたか否かを判断するよう構成されてもよい。すなわち、判断部81が推定部81aを備えない形態も可能である。
【0084】
本例において、判断部81が、撮影装置61が生成した画像の入力を受けて土が取り込まれたか否かを示す情報を出力する、機械学習された学習済みモデルを含んでもよい。学習済みモデルは、刈取装置Hに土が取り込まれた状態を撮影した画像を入力データとし、当該画像における土に対応する領域を指定する情報を教師データとする機械学習により生成される。入力データが、刈取装置Hに土が取り込まれていない状態を撮影した画像を含んでもよい。
【0085】
なお、判断部81が、本例の学習済みモデルと、先に述べた実施形態の学習済みモデルと、の両方を備えてもよい。
【0086】
(2)検知装置Xの検知対象領域は、上述の例の領域Yに限られない。検知装置Xの検知対象領域が、刈取装置Hの全体であってもよい。検知装置Xの検知対象領域が、搬送装置16における少なくとも一部であってもよい。この場合、撮影装置61は、搬送装置16における作物が搬送される領域が撮影可能なように配置される。撮影装置61は、例えば、搬送装置16の入口、内部、又は出口に設けられる。
【0087】
(3)撮影装置61が、他の場所に設けられてもよい。例えば、撮影装置61が、穀粒排出装置18の先端に設けられてもよい。撮影装置61が、運転部12における上部の前端部に設けられてもよい。コンバインが、複数の撮影装置61を備えてもよい。
【0088】
(4)撮影装置61が、他の用途の撮影装置と兼用されてもよい。例えば、撮影装置61が、コンバインの機体1の周囲を撮影する装置(サラウンドビューカメラ)として用いられてもよい。穀粒排出装置18の先端に設けられた撮影装置61が、穀粒排出装置18からの穀粒の排出状態を撮影する装置として用いられてもよい。
【0089】
(5)底板23の上面が、着色されてもよい。例えば、底板23の上面が、土との区別が容易になるように、白や灰色、黄色、その他の色に着色されてもよい。
【0090】
(6)検知装置Xが、撮影装置61を備えない構成も可能である。例えば、検知装置Xが、Lidarセンサや重量センサ、圧力センサ等により、刈取装置Hに土が取り込まれたことを検知するように構成されてもよい。
【0091】
(7)検知装置Xが、機械学習された学習済みモデルによらず、刈取装置Hに土が取り込まれたことを検知するよう構成されてもよい。例えば、検知装置Xの判断部81が、撮影装置61が生成した画像を解析して、刈取装置Hに土が取り込まれたことを検知するよう構成されてもよい。例えば、判断部81が、撮影装置61が生成した画像の検知対象領域に土の色(茶色)の領域が存在することに応じて、刈取装置Hに土が取り込まれたと判断するよう構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、刈取装置、搬送装置、及び脱穀装置を備えるコンバインに適用可能である。
なお、本発明は、自動走行するコンバインにも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 :機体
13 :脱穀装置
15 :刈刃
16 :搬送装置
20 :刈取フレーム
40 :オーガ
61 :撮影装置
62 :表示入力装置(操作具)
63 :報知装置
81 :判断部
81a :推定部
81b :判定部
81c :変更部
82 :機体制御部
83 :報知制御部
H :刈取装置
X :検知装置
Z :学習済みモデル