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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】水田作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/02 20060101AFI20250228BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20250228BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A01B69/02 B
A01B69/00 303Q
A01C11/02 330M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021109021
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006431
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大久保 樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 祐樹
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-4853(JP,A)
【文献】特開2020-121(JP,A)
【文献】特開2020-146043(JP,A)
【文献】特開2015-201155(JP,A)
【文献】国際公開第98/030640(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/02
A01B 69/00
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標走行経路に沿った自動作業走行および手動作業走行のうちの少なくとも前記自動作業走行行う水田作業機であって、
所定の作業を行う作業装置と、
機体の位置を算出する位置算出部と、
前記手動作業走行を行う前記目標走行経路、および、前記自動作業走行を行う前記目標走行経路を交互に設定する経路算出部と、
前記機体の走行を制御する走行制御部と、
前記機体の左右両側にそれぞれ設けられ、前記機体の走行に伴って圃場面に走行目標を形成するマーカと、
前記マーカの姿勢を下降使用姿勢または上昇非使用姿勢に自動制御するマーカ制御部とを備え、
前記走行制御部は、前記自動作業走行圃場の一端側から他端側に向かう前記自動作業走行を行う前記目標走行経路の順に旋回走行を挟んで行わ
前記マーカ制御部は、前記目標走行経路の前記自動作業走行中に、前記旋回走行の後に走行される前記目標走行経路側である次工程側の前記マーカを前記下降使用姿勢にして、前記手動作業走行を行う際の前記走行目標を形成する水田作業機。
【請求項2】
前記マーカ制御部は、前記機体の位置と前記マーカの姿勢とを紐づけてマーカ昇降履歴として記憶部に継続的に格納し、
前記機体が停止された後に作業走行が再開される際には、前記マーカ昇降履歴に基づいて、前記マーカの姿勢を自動制御する請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記目標走行経路が、前記旋回走行を挟んで前記圃場の内部領域を往復走行する複数の内部往復経路と前記圃場の外周領域を前記圃場の外縁に沿って周回走行する1または複数の周回経路とを含み、
前記走行制御部は、作業走行、前記外周領域と隣り合う前記内部往復経路から開始さ
前記マーカ制御部は、最初の前記内部往復経路での前記自動作業走行においては、左右両側の前記マーカを前記下降使用姿勢にする請求項1または2に記載の水田作業機。
【請求項4】
前記マーカの昇降の人為操作を受け付けるマーカ操作具を備え、
前記マーカ操作具が操作されると、走行中の前記目標走行経路において、前記マーカ制御部は前記自動制御を中断し、前記マーカ操作具に対する操作に応じて前記マーカを昇降させ、
次の前記目標走行経路においては、前記マーカ制御部は前記自動制御を実行する請求項1からのいずれか一項に記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する位置の目安となる走行目標を圃場に形成するマーカを備える水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機等の水田作業機は、旋回走行を挟んで往復走行を繰り返し、往復走行の際に苗植付作業等の作業を行う。往復走行は互いに平行な経路を走行する。
【0003】
特許文献1に示されるように、水田作業機はマーカを備え、マーカは、それぞれの往復走行の際に、次工程で走行する位置の目安となる目印(走行目標)を圃場に形成する。手動走行において、水田作業機は、マーカが形成した目印を用いて、前工程の走行経路と平行な走行経路で往復走行を行う。
【0004】
自動走行を行う水田作業機では、あらかじめ往復走行を行う目標走行経路が設定される。また、水田作業機は圃場における自車の位置を管理し、目標走行経路を走行するように自動制御が行われる。そのため、走行する位置の目安となる目印は不要であるので、通常、自動走行を行う水田作業機はマーカを用いない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-189733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自動走行を行う水田作業機であっても、圃場の一部においては手動で走行する場合がある。そして、手動走行の際の走行目標がないため、想定される走行経路を手動走行することが困難である。
【0007】
本発明は、容易かつ精度良く、手動走行を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る水田作業機は、目標走行経路に沿った自動作業走行および手動作業走行のうちの少なくとも前記自動作業走行を行う水田作業機であって、所定の作業を行う作業装置と、機体の位置を算出する位置算出部と、前記手動作業走行を行う前記目標走行経路、および、前記自動作業走行を行う前記目標走行経路を交互に設定する経路算出部と、前記機体の走行を制御する走行制御部と、前記機体の左右両側にそれぞれ設けられ、前記機体の走行に伴って圃場面に走行目標を形成するマーカと、前記マーカの姿勢を下降使用姿勢または上昇非使用姿勢に自動制御するマーカ制御部とを備え、前記走行制御部は、前記自動作業走行圃場の一端側から他端側に向かう前記自動作業走行を行う前記目標走行経路の順に旋回走行を挟んで行わ、前記マーカ制御部は、前記目標走行経路の前記自動作業走行中に、前記旋回走行の後に走行される前記目標走行経路側である次工程側の前記マーカを前記下降使用姿勢にして、前記手動作業走行を行う際の前記走行目標を形成する。
【0009】
このような構成により、手動作業走行を行う際に、隣り合う目標走行経路において自動作業走行が行われていれば、手動作業走行を行う目標走行経路に走行目標が形成されているため、走行目標を目印として、目標走行経路の開始位置に移動し、目標走行経路に沿って手動作業走行を実施することができる。その結果、容易かつ精度良く、目標走行経路に沿って手動作業走行を行うことができる。
また、圃場の作業走行は複数の水田作業機により行われることがある。例えば、自動作業走行を行う水田作業機と、手動作業走行を行う水田作業機とにより協調作業が行われる。手動作業走行を行う水田作業機は、自動作業走行を行う水田作業機に協調して、自動作業走行を行う水田作業機が自動作業走行を行った目標走行経路以外の目標走行経路(手動作業走行用の目標走行経路)を手動作業走行する。
そして、自動作業走行を行う水田作業機による自動作業走行の際にマーカの自動制御が実施されることにより、手動作業走行用の目標走行経路に走行目標が形成される。その結果、手動作業走行を行う水田作業機は、容易かつ精度良く、手動作業走行用の目標走行経路に沿って手動作業走行を行うことができる。
【0010】
また、前記機体の位置と前記作業装置の動作状態の変化とに基づいて、前記作業走行が行われた既作業位置を継続的に前記目標走行経路と紐づけて記憶する記憶部を備え、前記マーカ制御部は、前記目標走行経路と紐づけられた前記既作業位置に基づいて、隣り合う前記目標走行経路が未作業であるか否かを判定しても良い。
【0011】
このような構成により、隣り合う目標走行経路が未作業であるか否かを容易に判定することができる。
【0012】
また、前記マーカ制御部は、前記機体の位置と前記マーカの姿勢とを紐づけてマーカ昇降履歴として前記記憶部に継続的に格納し、前記機体が停止された後に作業走行が再開される際には、前記マーカ昇降履歴に基づいて、前記マーカの姿勢を自動制御することが好ましい。
【0013】
このような構成により、作業走行中に機体が停止したとしても、作業走行が再開された際にはマーカの自動制御も再開されるため、適切に走行目標を形成することができ、容易かつ精度良く、目標走行経路に沿って手動作業走行を行うことができる。
【0014】
また、前記マーカ制御部は、左右両側の前記マーカを前記下降使用姿勢にすることが好ましい。
【0015】
このような構成により、走行目標を形成する機会を逃さずに、以降に手動作業走行を行う目標走行経路に走行目標を形成することができる。
【0016】
また、前記目標走行経路が、前記旋回走行を挟んで前記圃場の内部領域を往復走行する複数の内部往復経路と前記圃場の外周領域を前記圃場の外縁に沿って周回走行する1または複数の周回経路とを含み、前記走行制御部は、作業走行、前記外周領域と隣り合う前記内部往復経路から開始さ、前記マーカ制御部は、最初の前記内部往復経路での前記自動作業走行においては、左右両側の前記マーカを前記下降使用姿勢にしても良い。
【0017】
内部領域のいずれかの端の内部往復経路から作業走行が行われることが多い。そのため、最初に作業走行が行われる目標走行経路(内部往復経路)の一方側に隣り合う目標走行経路は周回経路であり、他方側に隣り合う目標走行経路は内部往復経路であり、いずれの経路も当然に未作業である。また、周回経路も内部往復経路も手動作業走行が行われる可能性がある。そのため、作業走行の開始時には、左右両方のマーカを下降使用姿勢にすることにより、効率的にマーカの自動制御を行うことができる。
【0018】
また、前記マーカの昇降の人為操作を受け付けるマーカ操作具を備え、前記マーカ操作具が操作されると、走行中の前記目標走行経路において、前記マーカ制御部は前記自動制御を中断し、前記マーカ操作具に対する操作に応じて前記マーカを昇降させ、次の前記目標走行経路においては、前記マーカ制御部は前記自動制御を実行しても良い。
【0019】
作業走行において、マーカを人為的に操作したい場合がある。マーカ操作具が設けられることにより、マーカの自動制御が行われている場合でも、自動制御に優先してマーカを人為的に操作することができる。
【0020】
さらに、マーカを人為的に操作した後、次の目標走行経路に移行した際には、マーカの自動制御が再開されるため、適切な走行目標の形成が継続される。
【0021】
【0022】
【0023】
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】自動走行可能な田植機の左側面図である。
図2】田植機の作業走行を説明する概略図である。
図3】最初の内部往復経路の走行におけるマーカの自動制御を説明する図である。
図4】内部往復経路の走行におけるマーカの自動制御を説明する図である。
図5】内側周回経路の走行におけるマーカの自動制御を説明する図である。
図6】自動走行を制御する制御ユニットの機能ブロックを例示する図である。
図7】マーカの自動制御処理の処理フローを例示する図である。
図8】協調作業におけるマーカの自動制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の水田作業機として、圃場を作業走行する田植機を例に説明する。
【0026】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味し、「左」は図1における紙面の手前の方向、「右」は図1における紙面の奥向きの方向を意味するものとする。
【0027】
〔全体構造〕
図1に示すように、田植機は、乗用型で四輪駆動形式の機体1を備える。機体1は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構13、リンク機構13を揺動駆動する油圧式の昇降リンク13a、リンク機構13の後端部領域にローリング可能に連結される苗植付装置3、および、機体1の後端部領域から苗植付装置3にわたって架設されている施肥装置4等を備える。
【0028】
機体1は、走行のための機構として車輪12、エンジン2、および主変速装置である油圧式の無段変速装置9を備える。無段変速装置9は、例えばHST(Hydro-Static Transmission:静油圧式無段変速装置)であり、モータ斜板およびポンプ斜板の角度を調節することにより、エンジン2から出力される動力(回転数)を変速する。車輪12は、操舵可能な左右の前輪12Aと、操舵不能な左右の後輪12Bとを有する。エンジン2から出力される動力は、走行用伝達機構を介して無段変速装置9に伝えられ、無段変速装置9から前輪12A、後輪12B、作業装置等にも伝達される。エンジン2および無段変速装置9は、機体1の前部に搭載される。
【0029】
苗植付装置3は、一例として8条植え形式に構成される。苗植付装置3は、苗載せ台21、8条分の植付機構22等を備える。なお、この苗植付装置3は、図示されていない各条クラッチの制御により、2条植え、4条植え、6条植え等の形式に変更可能である。
【0030】
苗載せ台21は、8条分のマット状苗を載置する台座である。苗載せ台21は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復移動し、苗載せ台21が左右のストローク端に達するごとに、苗載せ台21上の各マット状苗を苗載せ台21の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。8個の植付機構22は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置される。そして、各植付機構22は、植付クラッチ(図示せず)が伝動状態に移行されることによりエンジン2から動力が伝達され、苗載せ台21に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗(植付苗)を切り取って、整地後の泥土部に植え付ける。これにより、苗植付装置3の作動状態では、苗載せ台21に載置されたマット状苗から苗を取り出して水田の泥土部に植え付けることができる。
【0031】
施肥装置4(供給装置)は、粒状または粉状の肥料(薬剤やその他の農用資材)を貯留するホッパ25(貯留部)と、ホッパ25から肥料を繰り出す繰出機構26と、繰出機構26によって繰出された肥料を搬送すると共に肥料を圃場に排出する施肥ホース28とを有する。ホッパ25に貯留された肥料が、繰出機構26によって所定量ずつ繰り出されて施肥ホース28へ送られて、ブロワ27の搬送風によって施肥ホース28内を搬送され、作溝器29から圃場へ排出される。このように、施肥装置4は圃場に肥料を供給する。
【0032】
作溝器29は、整地フロート15に配備される。そして、各作溝器29は、各整地フロート15と共に昇降し、各整地フロート15が接地する作業走行時に、水田の泥土部に施肥溝を形成して肥料を施肥溝内に案内する。
【0033】
また、機体1はマーカ19を備える。マーカ19は機体1の両横側にそれぞれ設けられる。左右のマーカ19は、それぞれ、機体1から横外向きに突出(下降使用姿勢)することができる態様で機体1に支持される。マーカ19は、手動走行の際に走行の目印を圃場に付与することができる。
【0034】
図1に示すように、機体1は、その後部側領域に運転部14を備える。運転部14は、前輪操舵用のステアリングホイール10、無段変速装置9の変速操作を行うことで車速を調節する主変速レバー7A、副変速装置の変速操作を可能にする副変速レバー7B、苗植付装置3の昇降操作と作動状態の切り換え等を可能にする作業操作レバー11、各種の情報を表示(報知)してオペレータに報知(出力)すると共に、各種の情報の入力を受け付けるタッチパネルを有し、着脱可能な情報端末5、および、オペレータ(運転者・作業者)用の運転座席16等を備える。副変速レバー7Bは、走行車速を、作業中の作業速と移動中の移動速とに切り替える操作に用いられる。例えば、圃場間の移動は移動速で行われ、植付作業等は作業速で行われる。さらに、運転部14の前方に、予備苗を収容する予備苗収納装置17Aが予備苗支持フレーム17に支持される。
【0035】
さらに、機体1は測位ユニット8を備える。測位ユニット8は、機体1の位置および方位を算出するための測位データを出力する。測位ユニット8には、全地球航法衛星システム(GNSS)の衛星からの電波を受信する衛星測位モジュール8Aと、機体1の三軸の傾きや加速度を検出する慣性計測モジュール8Bが含まれている。測位ユニット8は、予備苗支持フレーム17の上部に支持される。
【0036】
〔自動走行〕
自動走行により、田植機が圃場に苗植付作業を行う作業走行について図1を参照しながら、図2図4を用いて説明する。
【0037】
本実施形態における田植機は、手動走行および自動走行を選択的に行うことができる。手動走行(手動作業走行)と自動走行(自動作業走行)とは、運転部14に配置される自動・手動切替スイッチ(図示せず)を切り替えることにより選択される。手動走行は、運転者が手動で、ステアリングホイール10、主変速レバー7A、副変速レバー7B、作業操作レバー11等を操作して作業走行を行うものである。自動走行は、あらかじめ設定された目標走行経路に沿って、田植機が自動制御で走行および作業を行うものである。
【0038】
田植機が苗植付作業を行う際には、まず、圃場の外周(外縁)に沿って、運転者が手動操作で、作業を行わずに田植機を走行させる。この外周走行によって、圃場の外周形状(圃場マップ)が生成され、圃場が外周領域OAと内部領域IAに区分けされる。
【0039】
圃場マップが生成されると、田植機が作業走行を行う目標走行経路が設定される。内部領域IAでは、目標走行経路として、圃場の一つの辺に略平行な複数の経路である内部往復経路IPLが生成される。内部往復経路IPLは、内部領域IAの全体をくまなく作業走行する走行経路である。自動作業走行は内部往復経路IPLに沿って行われる。内部往復経路IPLを繋ぐ旋回走行は、あらかじめ定められた手法により自動走行で行われる。
【0040】
外周領域OAでは、圃場の外周(外縁)に沿って外周領域OA内を周回する1または複数の周回経路が、目標走行経路として生成される。例えば、周回経路は、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとの2つの走行経路が生成される。内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとを作業走行することにより、外周領域OAの全体の作業走行が行われる。内側周回経路IRLおよび外側周回経路ORLは自動作業走行が行われるが、手動作業走行が行われても良い。
【0041】
[マーカの昇降動作]
次に、マーカ19の昇降動作について、図2を参照しながら、図3図5を用いて説明する。
【0042】
マーカ19は、機体1に沿う位置に収納される上昇非使用姿勢(図1の状態)と、機体1から突出して圃場面に接触する下降使用姿勢とに姿勢変更が可能である。下降使用姿勢のマーカ19の機体1から離れる方向(機体1の幅方向)の長さは、機体1が目標走行経路(内部往復経路IPL)を走行中に、マーカ19の圃場面に接触する位置が、走行中の内部往復経路IPLと隣り合う内部往復経路IPL上となる長さである。そのため、下降使用姿勢のマーカ19は、走行に伴い、走行中の内部往復経路IPLと隣り合う内部往復経路IPL(目標走行経路)上に、走行する位置の目安となる走行目標を形成する。なお、マーカ19は、図示しないアクチュエータにより昇降される。
【0043】
本実施形態のマーカ19の自動制御において、機体1が目標走行経路を走行中に、走行中の目標走行経路と隣り合う目標走行経路が、作業走行が行われておらず、以後の工程で作業走行が行われる未作業の目標走行経路である場合、未作業である目標走行経路の側のマーカ19が自動的に下降使用姿勢に姿勢変更される。
【0044】
例えば、走行中の目標走行経路の右隣りの目標走行経路が未作業である場合、右側のマーカ19が自動的に下降使用姿勢に姿勢変更される。また、走行中の目標走行経路の右および左隣りの目標走行経路の両方が未作業である場合、左右両側のマーカ19が自動的に下降使用姿勢に姿勢変更される。
【0045】
自動作業走行を行う場合であっても、圃場の状態や作業の状況によっては、手動作業走行に切り替えたい場合がある。また、自動作業走行中に、何らかの原因により自動運転が終了する場合がある。残りの作業領域が少ない場合等においては、自動運転を再開させるより、残りの作業領域を手動作業走行する方が効率的である場合がある。
【0046】
このように、自動作業走行から手動作業走行に切り替えた場合であっても、自動作業走行中に未作業の目標走行経路に走行目標が形成されているため、その目標走行経路の手動作業走行が容易となり、走行精度も維持される。以下、具体的なマーカ19の動作(マーカ19の自動制御)を例示する。
【0047】
図3に示すように、圃場の外周形状(圃場マップ)が生成された後、最初に内部領域IAの最も外側に位置する、外周領域OAと隣り合う内部往復経路IPLAから作業走行が開始される。この際、内部往復経路IPLAと隣り合う、内部往復経路IPLBおよび内側周回経路IRLは当然に未作業である。そのため、内部往復経路IPLAにおける自動作業走行において、左右のマーカ19の両方が自動的に下降使用姿勢に姿勢変更され、内部往復経路IPLBおよび内側周回経路IRLに走行目標が形成される。
【0048】
内部往復経路IPLAの自動作業走行が終了すると、旋回走行を挟んで他の内部往復経路IPLに対する往復走行(作業走行)が繰り返される。ここで、内部往復経路IPLBの往復走行の開始時、または内部往復経路IPLBの往復走行中に、手動作業走行を行うことが必要になっても、内部往復経路IPLAの往復走行中に内部往復経路IPLBに走行目標が形成されているため、容易かつ精度良く内部往復経路IPLBに対する作業走行を行うことができる。つまり、往復走行中に手動作業走行を行うことが必要になっても、それ以前の往復走行において走行目標が形成されていれば、この走行目標を目印として手動作業走行を行うことができる。その結果、容易かつ精度良く内部往復経路IPLに対する手動作業走行を行うことができる。
【0049】
また、全ての内部往復経路IPLの往復走行が終了すると、次に、内側周回経路IRLの作業走行が行われる。内側周回経路IRLの作業走行を手動作業走行で行う必要が生じても、内側周回経路IRLにも走行目標が形成されているので、容易かつ精度良く内側周回経路IRLに対する手動作業走行を行うことができる。
【0050】
また、図4に示すように、一部の内部往復経路IPLの作業走行が終了し、残りの内部往復経路IPLが未作業である場合には、機体1が内部往復経路IPLAを作業走行中に、左側に隣り合う内部往復経路IPLBおよび右側に隣り合う内部往復経路IPLCが未作業であるか否かが確認される。図4に示す例では、右側に隣り合う内部往復経路IPLCは既作業であり、左側に隣り合う内部往復経路IPLBは未作業である。そのため、右側のマーカ19は上昇非使用姿勢にされ、左側のマーカ19は下降使用姿勢にされる。
【0051】
このようにマーカ19が制御されることにより、未作業の内部往復経路IPLBに走行目標が形成される。その結果、内部往復経路IPLBに対して手動作業走行を行うことが必要になっても、内部往復経路IPLBには走行目標が形成されているため、容易かつ精度良く内側周回経路IRLBに対する手動作業走行を行うことができる。
【0052】
また、図5に示すように、内部往復経路IPLの作業走行が終了すると、次に、内側周回経路IRLの自動作業走行が行われる。この際、内側周回経路IRLに隣り合う内部往復経路IPLは既作業であり、内側周回経路IRLに隣り合う外側周回経路ORLは未作業である。そのため、内部往復経路IPL側のマーカ19は上昇非使用姿勢にされ、外側周回経路ORL側のマーカ19は下降使用姿勢にされる。図の例では、内側周回経路IRLを作業走行中の機体1の右側に内部往復経路IPLが位置し、内側周回経路IRLを作業走行中の機体1の左側に外側周回経路ORLが位置する。そのため、右側のマーカ19は上昇非使用姿勢にされ、左側のマーカ19は下降使用姿勢にされる。
【0053】
このようにマーカ19が制御されることにより、未作業の外側周回経路ORLに走行目標が形成される。その結果、外側周回経路ORLに対して手動作業走行を行うことが必要になっても、外側周回経路ORLには走行目標が形成されているため、容易かつ精度良く外側周回経路ORLに対する手動作業走行を行うことができる。
【0054】
[制御構成]
次に、水田作業機の自動走行を制御する制御ユニット6について、図1図2を参照しながら、図6を用いて説明する。
【0055】
制御ユニット6は、位置算出部41と、経路算出部42と、作業制御部44と、記憶部46と、走行制御部30と、マーカ制御部50とを備える。また、制御ユニット6は、測位ユニット8、エンジン2、車輪12、作業装置W、およびマーカ19と、互いにデータ通信が可能な態様で接続される。制御ユニット6は、これらから各種の情報を受け取り、これらに対する制御信号を送信できる。作業装置Wは、苗植付装置3や施肥装置4等が含まれ、各種の作業を行う。
【0056】
制御ユニット6は、CPU等のプロセッサにより制御されるECU等の制御装置である。制御ユニット6は、機体1または情報端末5、あるいは機外の管理コンピュータ等に設けられる。
【0057】
位置算出部41は、測位ユニット8が出力する測位データに基づいて、圃場における機体1の位置および方位を算出する。
【0058】
経路算出部42は、圃場の外周に沿って行われる手動走行(外周走行)の際に継続的に算出された機体1の位置に基づいて、圃場の外周形状(圃場マップ)を生成し、圃場を外周領域OAと内部領域IAに区分する。さらに、経路算出部42は目標走行経路を生成する。目標走行経路は、内部領域IA内を作業走行する複数の内部往復経路IPLと、外周領域OAを作業走行する周回経路を含む。周回経路は、内側周回経路IRLと外側周回経路ORLとを含む。
【0059】
作業制御部44は作業装置Wを制御する。手動走行の際には、作業制御部44は、作業操作レバー11等の操作具に対して行われる操作に応じて作業装置Wを制御する。自動走行の際には、作業制御部44は、設定された目標走行経路と機体1の位置とに応じて、自動的に作業装置Wを制御する。
【0060】
記憶部46は、圃場の外周形状(圃場マップ)や目標走行経路(内部往復経路IPL,内側周回経路IRL,外側周回経路ORL)、各目標走行経路における未作業/既作業の状況を示す情報等の各種の情報を格納する。
【0061】
走行制御部30は、エンジン2および車輪12を制御することにより機体1の走行を制御する。走行制御部30は、CPU等のプロセッサにより制御される。また、目標走行経路に沿った作業走行が行われると、走行制御部30は、作業装置Wの動作状態の変化とその際の機体1の位置とを取得し、これらに基づいて、作業走行を行った目標走行経路と作業済(既作業)である情報とを紐づけて記憶部46に格納する。つまり、走行制御部30は、作業が行われた既作業位置と目標走行経路とを紐づけて記憶部46に格納する。動作状態の変化は、例えば、植付機構22の昇降状態の変化や、植付クラッチの入切であり、植付機構22が下降している状態や植付クラッチが入の状態を作業が行われている状態と判断する。
【0062】
手動走行の際には、走行制御部30は、主変速レバー7A、副変速レバー7B、ステアリングホイール10等の操作具に対して行われる操作に応じて機体1の走行を制御する。
【0063】
自動走行の際には、走行制御部30は、設定された目標走行経路と機体1の位置とに応じて、自動的に機体1の走行を制御する。走行制御部30は、自動走行の際に、目標走行経路に対する機体1のずれ量である位置ずれ量および目標走行経路に対する機体1の走行方位のずれ量である方位ずれ量を検出する。走行制御部30は、位置ずれ量および方位ずれ量に基づいて、機体1が目標走行経路に沿って自動走行するように制御する。
【0064】
マーカ制御部50は、走行中の目標走行経路に対して隣り合う目標走行経路の状況に応じて、マーカ19を下降使用姿勢または上昇非使用姿勢に自動制御する。マーカ制御部50は作業状況判定部52を備え、CPU等のプロセッサにより制御される。
【0065】
[マーカの自動制御構成]
次に、マーカ19を下降使用姿勢または上昇非使用姿勢に自動制御する構成について、図2図5を参照しながら、図6図7を用いて説明する。
【0066】
まず、目標走行経路の自動作業走行が開始される際に(図7のステップ#1)、マーカ制御部50の作業状況判定部52は、走行を行う目標走行経路と隣り合う目標走行経路が未作業であるか否かを判定する(図7のステップ#2)。この際、作業状況判定部52は、記憶部46から、作業走行を行った目標走行経路と作業済(既作業)である情報とが紐づけられた情報を確認し、隣り合う目標走行経路が既作業であるか未作業であるかを判定する。このような判定は、それぞれの目標走行経路の自動作業走行が開始される度に行われる。また、自動作業走行に限らず、目標走行経路の手動作業走行の開始時においても、隣り合う目標走行経路が未作業であるか否かを判定し、マーカ19の自動制御が実施されても良い。さらに、田植機は、マーカ19の自動制御を有効にするか無効にするかを切り替える切替操作具を備えても良い。
【0067】
走行を行う目標走行経路と隣り合う目標走行経路が未作業であると(図7のステップ#2 Yes)、マーカ制御部50は、未作業である目標走行経路の方向側のマーカ19を下降使用姿勢にする(図7のステップ#3)。つまり、機体1が走行する方向に対して左右両側に隣り合う目標走行経路が未作業である場合(例えば、図3の状態)、マーカ制御部50は、左右両側のマーカ19を下降使用姿勢にする。また、機体1が走行する方向に対して左側に隣り合う目標走行経路が未作業であり、右側に隣り合う目標走行経路が既作業である場合(例えば、図4の状態)、マーカ制御部50は、左側のマーカ19を下降使用姿勢にする。
【0068】
当然に、マーカ制御部50は、既作業である目標走行経路の方向側のマーカ19を上昇非使用姿勢にし、左右両側に隣り合う目標走行経路が既作業である場合、マーカ制御部50は、左右両側のマーカ19を上昇非使用姿勢にする(図7のステップ#4)。
【0069】
このように、マーカ制御部50が、未作業である目標走行経路の方向側のマーカ19を下降使用姿勢にし、既作業である目標走行経路の方向側のマーカ19を上昇非使用姿勢にした状態で、走行制御部30は目標走行経路における自動作業走行を開始する(図7のステップ#5)。そして、目標走行経路の自動作業走行において、マーカ19は未作業の目標走行経路に走行目標を形成する。
【0070】
このように、未作業の目標走行経路に走行目標を形成することにより、その目標走行経路において手動作業走行を行うことになったとしても、走行目標を目印として手動作業走行を行うことができ、容易かつ精度良く、目標走行経路に沿った手動作業走行を行うことができる。
【0071】
[別実施形態]
(1)圃場における作業走行は、複数台の田植機により行われる場合がある。例えば、自動走行を行う田植機TOと手動走行を行う田植機TMとが強調して作業走行を行う場合がある。図8に示すように、自動走行を行う田植機TOは田植機TO用(自動作業走行用)の目標走行経路を自動作業走行し、手動走行を行う田植機TMは田植機TM用(手動作業走行用)の目標走行経路を手動作業走行する。以下、内部往復経路IPLでの往復走行を例に説明する。
【0072】
内部往復経路IPLにおいて、田植機TOは旋回走行を挟んで複数の内部往復経路IPLOを自動作業走行し、田植機TMは旋回走行を挟んで複数の内部往復経路IPLMを手動作業走行する。内部往復経路IPLOと内部往復経路IPLMとは交互に設定され、内部往復経路IPLOと内部往復経路IPLMとは互いに隣り合う。
【0073】
作業走行は、圃場の1辺側から他端側に向かって行われ、図では、左の内部往復経路IPLから順に作業走行が行われる。田植機TOが先行して自動作業走行を行い、それに追随して田植機TMが手動作業走行を行う。そうすると、田植機TOが内部往復経路IPLOを自動作業走行した場合、左右いずれかに隣り合う内部往復経路IPLMが未作業の内部往復経路IPLM(目標走行経路)となる。
【0074】
例えば、田植機TOが内部往復経路IPLoを自動作業走行すると、隣り合う内部往復経路IPLMのうちの右側に隣り合う内部往復経路IPLmが未作業である。
【0075】
このような状況において、マーカ制御部50は、走行中の内部往復経路IPLoに隣り合い、手動走行を行う田植機TMが手動作業走行を行い、かつ、未作業の内部往復経路IPLm側(右側)のマーカ19を下降使用姿勢にする。
【0076】
つまり、マーカ制御部50は、走行中の内部往復経路IPL(目標走行経路)に隣り合う内部往復経路IPL(目標走行経路)のうち、手動作業走行用の内部往復経路IPLm(目標走行経路)であり、かつ、未作業の内部往復経路IPLm(目標走行経路)の有無を判定し、未作業の内部往復経路IPLの方向側のマーカ19を下降使用姿勢にする。
【0077】
これにより、田植機TMが手動作業走行する内部往復経路IPLm(IPLM)には走行目標が形成され、走行目標が手動作業走行を行う際の目印となり、容易かつ精度良く手動作業走行を行うことができる。
【0078】
なお、このような制御を行うために、経路算出部42は、生成した目標走行経路を、手動走行を行う田植機TM用(手動作業走行用)の目標走行経路と、自動走行を行う田植機TO用(自動作業走行用)の目標走行経路とに区別して記憶部46に格納する。また、マーカ制御部50は、経路判定部54をさらに備える。経路判定部54は、走行中の目標走行経路と隣り合う目標走行経路が、手動走行を行う田植機TM用(手動作業走行用)の目標走行経路であるか否かを判定する。作業状況判定部52が行う、隣り合う目標走行経路が未作業であるか否かの判定結果と合わせて、マーカ制御部50は、走行中の目標走行経路と隣り合う目標走行経路が、手動走行を行う田植機TMが手動作業走行を行い、かつ、未作業の目標走行経路であるか否かを判定する。
【0079】
また、内部往復経路IPLOと内部往復経路IPLMとは交互に設定される構成に限定されず、2つの内部往復経路IPLO毎に1つの内部往復経路IPLMが設定されても良く、内部往復経路IPLOと内部往復経路IPLMとは任意の配置で設定されても良い。
【0080】
(2)上述のように、複数の田植機により協調作業を行う場合に限らず、1または複数の田植機により作業走行が行われる際に、一部の目標走行経路において手動作業走行を行うことが予定されている場合にも、走行中の目標走行経路と隣り合う目標走行経路が、未作業であることに加えて手動作業走行される目標走行経路である場合に、その方向のマーカ19が自動的に下降使用姿勢にされても良い。
【0081】
例えば、外側周回経路ORLが手動作業走行を行うことが予定されているとすると、外側周回経路ORLに隣り合う内側周回経路IRLを自動作業走行する際に、マーカ制御部50は、外側周回経路ORLの方向側のマーカ19を下降使用姿勢にする。
【0082】
これにより、任意の構成で、手動作業走行と自動作業走行とで作業走行を行う場合でも、手動作業走行を行う目標走行経路に走行目標を形成することができ、容易かつ精度良く手動作業走行を行うことができる。
【0083】
(3)上記各実施形態において、周回経路は内側周回経路IRLおよび外側周回経路ORLの2周の周回経路である構成に限らず、周回経路は1周または3周以上であっても良い。
【0084】
(4)目標走行経路を作業走行中に作業または作業走行が停止される場合がある。また、目標走行経路を作業走行中に自動運転が停止される場合もある。このような場合でも、作業走行が再開された際には、マーカ19の自動制御が継続されることが好ましい。
【0085】
そのため、上記各実施形態において、マーカ制御部50は、自動作業走行を行った機体1の位置と、マーカ19が下降使用姿勢であるか上昇非使用姿勢であるかの状態(姿勢)とを継続的に取得する。そして、マーカ制御部50は、機体1の位置とマーカ19の状態(姿勢)とを紐づけてマーカ昇降履歴として記憶部46に格納する。格納されるマーカ昇降履歴は順次記憶部46に残しても良いが、最新のマーカ昇降履歴のみが残されるように更新されても良い。
【0086】
作業、作業走行、または自動運転が停止(以下、単に「機体1が停止」と称す)された後、作業走行が再開される際は、マーカ制御部50は、記憶部46を確認し、格納された最新のマーカ昇降履歴に基づいて、マーカ19の姿勢(昇降)を自動制御する。
また、機体1が停止された後に機体1が移動し、その後停止した位置に戻って作業走行が再開される場合は、マーカ制御部50は、機体1の位置が最新のマーカ昇降履歴に対応する位置の近傍であることを確認し、この位置の近傍であることが確認された場合は、このマーカ昇降履歴に対応してマーカ19の姿勢(昇降)を自動制御する。
【0087】
以上のような構成により、機体1が停止された際にも、適切にマーカ19の自動制御が継続され、その後の手動作業走行を容易かつ適切に行うことができる。
【0088】
(5)上記各実施形態において、田植機は、マーカ19の昇降の人為操作を受け付けるマーカ操作具を備えても良い。マーカ19は、マーカ操作具の人為操作に応じて、下降使用姿勢または上昇非使用姿勢に姿勢変更(昇降)する。
【0089】
マーカ19は、自動作業走行中にマーカ19の自動制御が行われていたとしても、マーカ操作具の人為操作に応じて姿勢変更する。
【0090】
ただし、マーカ操作具が操作された目標走行経路から次の目標走行経路に移行した際には、再度マーカ19の自動制御が再開される。
【0091】
マーカ19は、作業走行や圃場の状況に応じて、昇降が必要な場合がある。例えば、障害物を回避するために、マーカ19を上昇非使用姿勢に上昇させたい場合がある。マーカ操作具を備えることにより、作業走行や圃場の状況に応じてマーカ19を適切に昇降させることができる。
【0092】
さらに、目標走行経路を移行した際にはマーカ19の自動制御が再開されることにより、適切に走行目標が形成され、その後の手動作業走行を容易かつ適切に行うことができる。
【0093】
(6)上記各実施形態において、田植機は、障害物検知装置を備えても良い。上述のように、下降使用姿勢のマーカ19の経路上に障害物があると、マーカ19を上昇させて障害物を回避する必要がある。
【0094】
マーカ制御部50は、下降使用姿勢のマーカ19の経路上に障害物があることを障害物検知装置が検知すると、自動的にマーカ19を上昇非使用姿勢に姿勢変更(上昇)させる。
【0095】
(7)上記各実施形態において、制御ユニット6は上記のような機能ブロックから構成されるものに限定されず、任意の機能ブロックから構成されても良い。例えば、制御ユニット6の各機能ブロックはさらに細分化されても良く、逆に、各機能ブロックの一部または全部がまとめられても良い。また、制御ユニット6の機能は、上記機能ブロックに限らず、任意の機能ブロックが実行する方法により実現されても良い。また、制御ユニット6の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されても良い。ソフトウエアに係るプログラムは、記憶部46等の任意の記憶装置に記憶され、制御ユニット6が備えるCPU等のプロセッサ、あるいは別に設けられたプロセッサにより実行される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、田植機に限らず、作業地において、目標走行経路に沿って種々の作業走行を行う作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 機体
41 位置算出部
42 経路算出部
46 記憶部
50 マーカ制御部
IPL 内部往復経路(目標走行経路)
IPLm 内部往復経路(目標走行経路)
IPLo 内部往復経路(目標走行経路)
IRL 内側周回経路(周回経路 目標走行経路)
ORL 外側周回経路(周回経路 目標走行経路)
W 作業装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8