(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】描画装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2021137848
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110004543
【氏名又は名称】弁理士法人松阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩士
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-036453(JP,A)
【文献】特開2014-197136(JP,A)
【文献】特開2008-046457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対する描画を行う描画装置であって、
基板を水平状態で保持する基板保持部と、
前記基板保持部を基板移動経路に沿って水平移動させる基板移動機構と、
前記基板保持部の上方に配置されて前記基板に対して光を照射してパターンを描画する描画ヘッド、および、前記描画ヘッドを内部に収容するヘッドカバーを備えるヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを前記基板移動経路と平面視において交差するヘッド移動経路に沿って第1ヘッド位置と第2ヘッド位置との間で水平移動させる描画ヘッド移動機構と、
前記ヘッド移動経路に沿って配置され、前記ヘッドユニットが前記第1ヘッド位置および前記第2ヘッド位置のいずれに位置する場合も、前記ヘッドカバーの内部に温度調節されたガスを供給可能なガス送出部と、
を備え、
前記ガス送出部は、
前記第1ヘッド位置から前記第2ヘッド位置まで前記ヘッド移動経路に沿って延びるとともに前記ガスが流れるガス流路と、
前記ガス流路の前記ヘッドユニットと対向する部位に設けられて前記ヘッドカバーのガス流入口に向けて前記ガスを送出するガス送出口と、
前記ガス送出口の位置を、前記第1ヘッド位置に位置する前記ヘッドユニットと対向する第1送出位置と、前記第2ヘッド位置に位置する前記ヘッドユニットと対向する第2送出位置との間で切り替える送出位置切替部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記ガス流路に前記第1送出位置から前記第2送出位置に至る開口部が設けられており、
前記送出位置切替部は、前記開口部のうち、前記第1ヘッド位置に位置する前記ヘッドユニットと対向する第1領域と、前記第2ヘッド位置に位置する前記ヘッドユニットと対向する第2領域と、をそれぞれ開閉する開閉部を備え、
前記開閉部により前記開口部の前記第1領域が開放されるとともに前記第2領域が閉鎖されることにより、前記ガス送出口の位置が前記第1送出位置とされ、
前記開閉部により前記開口部の前記第1領域が閉鎖されるとともに前記第2領域が開放されることにより、前記ガス送出口の位置が前記第2送出位置とされることを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記ガス送出口は、前記ガス流路の前記ヘッドユニットに対向する部位において前記ヘッド移動経路に沿って移動可能に設けられ、前記送出位置切替部により、前記ヘッドユニットの前記第1ヘッド位置と前記第2ヘッド位置との間の移動に同期して前記第1送出位置と前記第2送出位置との間で移動されることを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記ガス送出口は、前記ガス流路の前記ヘッドユニットと対向する部位に分布する複数の送出孔を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記ガス送出口は、前記描画ヘッドの投影光学系に対向するとともに、前記投影光学系の幅方向中心と対向する位置を避けて当該位置の幅方向両側に配置されることを特徴とする描画装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記描画ヘッドの温度を測定する温度センサと、
前記ガス送出部に供給される前記ガスの温度を、前記温度センサからの出力に基づいて調節する温度調節部と、
をさらに備えることを特徴とする描画装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記ヘッドユニットは、前記ヘッドカバー内において前記描画ヘッドに隣接するとともに前記描画ヘッドと共に前記ヘッド移動経路に沿って配列され、前記基板に対して光を照射してパターンを描画する他の描画ヘッドをさらに備え、
前記ガス送出口は、
前記描画ヘッドに対向する送出領域と、
前記送出領域から離間して前記他の描画ヘッドに対向する他の送出領域と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記ヘッドユニットは、前記ヘッドカバー内において前記描画ヘッドに隣接するとともに前記描画ヘッドと共に前記ヘッド移動経路に沿って配列され、前記基板の上側の主面に対して光を照射してパターンを描画する他の描画ヘッドをさらに備え、
前記ヘッドカバー内の前記ガス流入口に対向する領域において、前記描画ヘッドと前記他の描画ヘッドとの間を区切る隔壁が設けられることを特徴とする描画装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記基板保持部に隣接して配置されて基板を水平状態で保持する他の基板保持部と、
前記基板移動経路と交差する方向において前記基板移動機構と並んで配置され、前記他の基板保持部を前記基板移動経路に平行な他の基板移動経路に沿って水平移動する他の基板移動機構と、
をさらに備え、
前記第1ヘッド位置は、前記基板保持部の上方において前記基板保持部上の基板に対して光を照射する第1描画位置であり、
前記第2ヘッド位置は、前記他の基板保持部の上方において前記他の基板保持部上の基板に対して光を照射する第2描画位置であることを特徴とする描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対する描画を行う描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板、プリント基板、または、有機EL表示装置もしくは液晶表示装置用のガラス基板等(以下、「基板」という。)に形成された感光材料に光を照射することにより、パターンの描画が行われている。
【0003】
当該描画を行う描画装置では、基板に向けて光を出射する描画ヘッドにおいて、投影光学系等の温度が変動すると、倍率、フォーカス位置および描画位置等が変動する可能性がある。そこで、特許文献1の描画装置では、描画部の複数の描画ヘッドを覆う筐体内に、温調機から延びる温調用のエアダクトを配設し、当該エアダクトの吹き出し口から温調用のエアを筐体内を供給することにより、複数の描画ヘッドの温度維持を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、描画装置のスループットを向上するために、1台の描画装置内に2つのステージと1つの描画部とを設け、一方のステージ上の基板に対する描画中に、他方のステージ上の基板の交換やアライメント等を行うことが提案されている。
【0006】
このような描画装置において、特許文献1のような描画ヘッドの温調を行おうとすると、描画部を一方のステージの上方から他方のステージの上方へと移動させる際に、温調用のエアダクトが形状変化しつつ描画部に追随することになる。しかしながら、エアダクトが変形すると、上記吹き出し口から描画部の筐体内に送出されるエアの流れが乱れ、当該エアの流量ロスや流量分布の不均一が生じるため、描画ヘッドの温度調節が適切に行われないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ヘッド移動経路に沿って移動する描画ヘッドの温度を好適に調節することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板に対する描画を行う描画装置であって、基板を水平状態で保持する基板保持部と、前記基板保持部を基板移動経路に沿って水平移動させる基板移動機構と、前記基板保持部の上方に配置されて前記基板に対して光を照射してパターンを描画する描画ヘッド、および、前記描画ヘッドを内部に収容するヘッドカバーを備えるヘッドユニットと、前記ヘッドユニットを前記基板移動経路と平面視において交差するヘッド移動経路に沿って第1ヘッド位置と第2ヘッド位置との間で水平移動させる描画ヘッド移動機構と、前記ヘッド移動経路に沿って配置され、前記ヘッドユニットが前記第1ヘッド位置および前記第2ヘッド位置のいずれに位置する場合も、前記ヘッドカバーの内部に温度調節されたガスを供給可能なガス送出部と、を備え、前記ガス送出部は、前記第1ヘッド位置から前記第2ヘッド位置まで前記ヘッド移動経路に沿って延びるとともに前記ガスが流れるガス流路と、前記ガス流路の前記ヘッドユニットと対向する部位に設けられて前記ヘッドカバーのガス流入口に向けて前記ガスを送出するガス送出口と、前記ガス送出口の位置を、前記第1ヘッド位置に位置する前記ヘッドユニットと対向する第1送出位置と、前記第2ヘッド位置に位置する前記ヘッドユニットと対向する第2送出位置との間で切り替える送出位置切替部と、を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記ガス流路に前記第1送出位置から前記第2送出位置に至る開口部が設けられており、前記送出位置切替部は、前記開口部のうち、前記第1ヘッド位置に位置する前記ヘッドユニットと対向する第1領域と、前記第2ヘッド位置に位置する前記ヘッドユニットと対向する第2領域と、をそれぞれ開閉する開閉部を備え、前記開閉部により前記開口部の前記第1領域が開放されるとともに前記第2領域が閉鎖されることにより、前記ガス送出口の位置が前記第1送出位置とされ、前記開閉部により前記開口部の前記第1領域が閉鎖されるとともに前記第2領域が開放されることにより、前記ガス送出口の位置が前記第2送出位置とされる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記ガス送出口は、前記ガス流路の前記ヘッドユニットに対向する部位において前記ヘッド移動経路に沿って移動可能に設けられ、前記送出位置切替部により、前記ヘッドユニットの前記第1ヘッド位置と前記第2ヘッド位置との間の移動に同期して前記第1送出位置と前記第2送出位置との間で移動される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記ガス送出口は、前記ガス流路の前記ヘッドユニットと対向する部位に分布する複数の送出孔を備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記ガス送出口は、前記描画ヘッドの投影光学系に対向するとともに、前記投影光学系の幅方向中心と対向する位置を避けて当該位置の幅方向両側に配置される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記描画ヘッドの温度を測定する温度センサと、前記ガス送出部に供給される前記ガスの温度を、前記温度センサからの出力に基づいて調節する温度調節部と、をさらに備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記ヘッドユニットは、前記ヘッドカバー内において前記描画ヘッドに隣接するとともに前記描画ヘッドと共に前記ヘッド移動経路に沿って配列され、前記基板に対して光を照射してパターンを描画する他の描画ヘッドをさらに備え、前記ガス送出口は、前記描画ヘッドに対向する送出領域と、前記送出領域から離間して前記他の描画ヘッドに対向する他の送出領域と、を備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記ヘッドユニットは、前記ヘッドカバー内において前記描画ヘッドに隣接するとともに前記描画ヘッドと共に前記ヘッド移動経路に沿って配列され、前記基板の上側の主面に対して光を照射してパターンを描画する他の描画ヘッドをさらに備え、前記ヘッドカバー内の前記ガス流入口に対向する領域において、前記描画ヘッドと前記他の描画ヘッドとの間を区切る隔壁が設けられる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記基板保持部に隣接して配置されて基板を水平状態で保持する他の基板保持部と、前記基板移動経路と交差する方向において前記基板移動機構と並んで配置され、前記他の基板保持部を前記基板移動経路に平行な他の基板移動経路に沿って水平移動する他の基板移動機構と、をさらに備え、前記第1ヘッド位置は、前記基板保持部の上方において前記基板保持部上の基板に対して光を照射する第1描画位置であり、前記第2ヘッド位置は、前記他の基板保持部の上方において前記他の基板保持部上の基板に対して光を照射する第2描画位置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ヘッド移動経路に沿って移動する描画ヘッドの温度を好適に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一の実施の形態に係る描画装置を示す斜視図である。
【
図6】ガス送出部およびガス送出部に関連する構成を模式的に示す図である。
【
図7】ヘッドユニットおよびガス送出部の側面図である。
【
図9】ガス流路およびヘッドユニットの断面図である。
【
図12】ガス流路の他の好ましい一例を示す背面図である。
【
図13】ガス流路の他の好ましい一例を示す背面図である。
【
図14】ガス流路およびヘッドユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1を示す斜視図である。描画装置1は、空間変調された略ビーム状の光を基板9上の感光材料に照射し、当該光の照射領域を基板9上にて走査することによりパターンの描画を行うツインステージタイプの直接描画装置である。
図1では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している。
図1に示す例では、X方向およびY方向は互いに垂直な水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。他の図においても同様である。
【0020】
基板9は、例えば、平面視において略矩形状の板状部材である。基板9は、例えば、プリント基板である。基板9の(+Z)側の主面(以下、「上面91」とも呼ぶ。)では、感光材料により形成されたレジスト膜が銅層上に設けられる。描画装置1では、基板9の当該レジスト膜に回路パターンが描画(すなわち、形成)される。なお、基板9の種類および形状等は様々に変更されてよい。
【0021】
描画装置1は、第1搬送機構2aと、第2搬送機構2bと、撮像部3と、描画部4と、ガス送出部5と、フレーム7と、制御部10とを備える。制御部10は、第1搬送機構2a、第2搬送機構2b、撮像部3、描画部4およびガス送出部5を制御する。
【0022】
図2は、制御部10が備えるコンピュータ100の構成を示す図である。コンピュータ100は、プロセッサ101と、メモリ102と、入出力部103と、バス104とを備える通常のコンピュータである。バス104は、プロセッサ101、メモリ102および入出力部103を接続する信号回路である。メモリ102は、プログラムおよび各種情報を記憶する。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されるプログラム等に従って、メモリ102等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値計算や画像処理)を実行する。入出力部103は、操作者からの入力を受け付けるキーボード105およびマウス106、並びに、プロセッサ101からの出力等を表示するディスプレイ107を備える。なお、制御部10は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)や回路基板等であってもよく、これらと1つ以上のコンピュータとの組み合わせであってもよい。
【0023】
図3は、コンピュータ100により実現される制御部10の機能を示すブロック図である。
図3では、制御部10以外の構成も併せて示す。制御部10は、記憶部111と、撮像制御部112と、検出部113と、描画制御部114と、送風制御部115と、温度制御部116とを備える。記憶部111は、主にメモリ102により実現され、基板9に描画される予定のパターンのデータ(すなわち、描画用データ)等の各種情報を予め記憶する。
【0024】
撮像制御部112、検出部113、描画制御部114、送風制御部115および温度制御部116は、主にプロセッサ101により実現される。撮像制御部112は、撮像部3、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bを制御することにより、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2b上の基板9の上面91を撮像部3に撮像させて画像を取得させる。当該画像は、記憶部111へと送られて格納される。検出部113は、当該画像を用いて第1搬送機構2a上における基板9の位置、および、第2搬送機構2b上における基板9の位置を検出する。描画制御部114は、検出部113により検出された基板9の位置、および、記憶部111に予め記憶されている描画用データ等に基づいて、描画部4、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bを制御することにより、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2b上の基板9に対する描画を描画部4に行わせる。送風制御部115は、ガス送出部5によるガスの送出を制御する。温度制御部116は、後述する温度調節部57を制御することにより、ガス送出部5から送出されるガスの温度を制御する。
【0025】
図1に示すフレーム7は、描画装置1の各構成が取り付けられる本体ベース部である。フレーム7は、略直方体状の基台71と、基台71を跨ぐ門形の第1ガントリー部72および第2ガントリー部73と、を備える。第2ガントリー部73は、第1ガントリー部72の(+Y)側に近接して配置される。以下の説明では、第1ガントリー部72および第2ガントリー部73をまとめて「ガントリー部74」とも呼ぶ。ガントリー部74は基台71に対して相対的に固定されている。基台71上には第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bが取り付けられる。第1ガントリー部72は撮像部3を支持する。第2ガントリー部73は描画部4を支持する。フレーム7は、図示省略の台座上に載置される。
【0026】
第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bはそれぞれ、撮像部3および描画部4の下方(すなわち、(-Z)側)にて基板9を保持および移動する機構である。第2搬送機構2bは、第1搬送機構2aの(+X)側に隣接して配置される。第1搬送機構2aと第2搬送機構2bとは略同様の構造を有する。
【0027】
第1搬送機構2aは、第1ステージ21aと、第1移動機構22aとを備える。第1ステージ21aは、略水平状態の基板9を下側から保持する略平板状の基板保持部である。第1ステージ21aは、例えば、基板9の下面を吸着して保持するバキュームチャックである。第1ステージ21aは、バキュームチャック以外の構造を有していてもよい。第1ステージ21a上に載置された基板9の上面91は、Z方向(すなわち、上下方向)に対して略垂直であり、X方向およびY方向に略平行である。
【0028】
第1移動機構22aは、Y方向に平行な基板移動経路に沿って、基板9を第1ステージ21aと共に略水平移動させる(すなわち、基板9の上面91に略平行な方向に移動させる)基板移動機構である。以下の説明では、第1移動機構22aによる基板9の上記基板移動経路を「第1基板移動経路」とも呼ぶ。第1移動機構22aは、撮像部3および描画部4の下方にて、ガイドレール221a上に支持された第1ステージ21aをガイドレール221aに沿ってY方向に直線移動する。これにより、第1ステージ21aに保持された基板9がY方向に移動する。以下の説明では、Y方向を「基板移動方向」とも呼ぶ。第1移動機構22aの駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。第1移動機構22aの構造は、様々に変更されてよい。
【0029】
第2搬送機構2bは、第2ステージ21bと、第2移動機構22bとを備える。第2ステージ21bは、基板保持部である第1ステージ21aの側方(すなわち、(+X)側)に隣接して配置され、略水平状態の基板9を下側から保持する略平板状の他の基板保持部である。第2ステージ21bの上面は、第1ステージ21aの上面と上下方向(すなわち、Z方向)において略同じ高さに位置する。第2ステージ21bは、例えば、基板9の下面を吸着して保持するバキュームチャックである。第2ステージ21bは、バキュームチャック以外の構造を有していてもよい。第2ステージ21b上に載置された基板9の上面91は、Z方向に対して略垂直であり、X方向およびY方向に略平行である。第2ステージ21bに保持された基板9の上面91は、第1ステージ21aに保持された基板9の上面91と上下方向の略同じ高さ(すなわち、Z方向の略同じ位置)に位置する。
【0030】
第2移動機構22bは、基板移動方向(すなわち、Y方向)と交差する方向において第1移動機構22aと並んで配置される他の基板移動機構である。
図1に示す例では、第1移動機構22aと第2移動機構22bとはX方向に並んで配置され、第2移動機構22bは、第1移動機構22aの(+X)側の側方に隣接する。第1移動機構22aと第2移動機構22bとは、上下方向の略同じ高さに位置する。第2移動機構22bは、第1基板移動経路に略平行な他の基板移動経路(以下、「第2基板移動経路」とも呼ぶ。)に沿って、基板9を第2ステージ21bと共に略水平移動させる。
【0031】
第2移動機構22bは、撮像部3および描画部4の下方にて、ガイドレール221b上に支持された第2ステージ21bをガイドレール221bに沿ってY方向(すなわち、基板移動方向)に直線移動する。これにより、第2ステージ21bに保持された基板9がY方向に移動する。第2移動機構22bによる第2ステージ21bの移動方向は、第1移動機構22aによる第1ステージ21aの移動方向と略平行である。第2移動機構22bの駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。第2移動機構22bの構造は、様々に変更されてよい。
【0032】
第1基板移動経路および第2基板移動経路は、フレーム7の基台71に対して固定される経路である。第1基板移動経路は、例えば、上述の第1移動機構22aのガイドレール221aを基準として定められる。第2基板移動経路は、例えば、上述の第2移動機構22bのガイドレール221bを基準として定められる。なお、第1基板移動経路および第2基板移動経路は、他の構成を基準として定められてもよい。
【0033】
第1移動機構22aおよび第2移動機構22bは、第2ガントリー部73よりも(+Y)側から(-Y)方向へと延び、第2ガントリー部73に支持された描画部4の下方、および、第1ガントリー部72に支持された撮像部3の下方を通過して、第1ガントリー部72から(-Y)側に突出する。第1ガントリー部72は、第1移動機構22aおよび第2移動機構22bのY方向における中央部と、Y方向において略同じ位置に位置する。
【0034】
描画装置1では、第1ステージ21aが第1ガントリー部72よりも(-Y)側に位置している状態で、第1ステージ21aに対する基板9の搬出入が行われる。また、第2ステージ21bが第1ガントリー部72よりも(-Y)側に位置している状態で、第2ステージ21bに対する基板9の搬出入が行われる。
【0035】
上述のように、第1ガントリー部72および第2ガントリー部73は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bを跨いで設けられる。第1ガントリー部72は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのX方向の両側にてZ方向に延びる2本の支柱部と、2本の支柱部の上端部を接続する梁部とを備える。当該梁部は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bの上方にてX方向に延びる。第1ガントリー部72の2本の支柱部は、(-Z)側の端部において基台71と接続される。第2ガントリー部73は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bのX方向の両側にてZ方向に延びる2本の支柱部と、2本の支柱部の上端部を接続する梁部とを備える。当該梁部は、第1搬送機構2aおよび第2搬送機構2bの上方にてX方向に延びる。第2ガントリー部73の2本の支柱部は、(-Z)側の端部において基台71と接続される。
【0036】
撮像部3は、複数(
図1に示す例では、2つ)の撮像ヘッド31と、撮像ヘッド移動機構32とを備える。複数の撮像ヘッド31は、X方向に配列されて、第1ガントリー部72の梁部に移動可能に取り付けられる。撮像ヘッド移動機構32は、梁部に取り付けられ、複数の撮像ヘッド31を梁部に沿ってX方向に移動する。撮像ヘッド移動機構32の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。
図1に示す例では、2つの撮像ヘッド31のX方向における間隔は変更可能である。なお、撮像部3では、撮像ヘッド31の数は、1であってもよく、3以上であってもよい。
【0037】
各撮像ヘッド31は、図示省略の撮像センサおよび光学系を備えるカメラである。各撮像ヘッド31は、例えば、2次元の画像を取得するエリアカメラである。撮像センサは、例えば、マトリクス状に配列された複数のCCD(Charge Coupled Device)等の素子を備える。各撮像ヘッド31では、図示省略の光源から基板9の上面91へと導かれた照明光の反射光が、光学系を介して撮像センサへと導かれる。撮像センサは、基板9の上面91からの反射光を受光し、略矩形状の撮像領域の画像を取得する。上記光源としては、LED(Light Emitting Diode)等の様々な光源が利用可能である。なお、各撮像ヘッド31は、ラインカメラ等、他の種類のカメラであってもよい。
【0038】
描画装置1では、撮像ヘッド移動機構32により、複数の撮像ヘッド31が第1搬送機構2aの上方の第1撮像位置と、第2搬送機構2bの上方の第2撮像位置との間で移動される。
図1では、複数の撮像ヘッド31は、第1撮像位置に位置している。複数の撮像ヘッド31は、第1撮像位置において第1ステージ21a上の基板9の上面91を撮像する。また、複数の撮像ヘッド31は、第2撮像位置において第2ステージ21b上の基板9の上面91を撮像する。
【0039】
描画部4は、ヘッドユニット43と、描画ヘッド移動機構42とを備える。ヘッドユニット43は、第2ガントリー部73の梁部に移動可能に取り付けられる。描画ヘッド移動機構42は、当該梁部に取り付けられ、ヘッドユニット43を当該梁部に沿ってX方向に移動する。描画ヘッド移動機構42の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。
【0040】
図4は、ヘッドユニット43を(-Y)側から見た正面図である。
図5は、ヘッドユニット43を(-X)側から見た側面図である。
図5では、後述するヘッドカバー44を断面にて示し、ヘッドカバー44の内部の構成を実線にて描いている。
【0041】
ヘッドユニット43は、描画ヘッド41と、ヘッドカバー44とを備える。
図4に示す例では、ヘッドユニット43は、6つの描画ヘッド41を備える。6つの描画ヘッド41は、Y方向およびZ方向の略同じ位置に配置され、X方向に略平行に隣接して配列される。ヘッドカバー44は、6つの描画ヘッド41を内部に収容する。ヘッドカバー44は、6つの描画ヘッド41の周囲を囲む薄板部材により構成された筐体である。各描画ヘッド41およびヘッドカバー44は、第1ステージ21aおよび第2ステージ21b(
図1参照)よりも上側に配置される。なお、ヘッドカバー44の内部に収容される描画ヘッド41の数は、1つであってもよく、2つ以上の範囲で様々に変更されてもよい。
【0042】
複数の描画ヘッド41はそれぞれ、基板9に対して光を照射してパターンを描画する。複数の描画ヘッド41は、略同じ構造を有する。各描画ヘッド41は、照明光学系411、空間光変調素子412、投影光学系413およびフォーカス用センサ415を備える。照明光学系411は、図示省略の光源からの光を空間光変調素子412へと導く。なお、
図4では、照明光学系411の一部の構成のみを図示している。光源としては、LD(Laser Diode)等の様々な光源が利用可能である。空間光変調素子412は、照明光学系411からの光を変調して投影光学系413へと導く。空間光変調素子412としては、DMD(Digital Micro Mirror Device)やGLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)等の様々な素子が利用可能である。投影光学系413は、空間光変調素子412にて変調された光を基板9の上面91へと導く。フォーカス用センサ415は、投影光学系413の下端部に設けられた対物レンズ414と上下方向の略同じ位置に配置され、描画ヘッド41のフォーカス調整に利用される。
【0043】
図4および
図5に示す例では、各描画ヘッド41の照明光学系411、空間光変調素子412、および、投影光学系413の大部分は、ヘッドカバー44の内部に収容されており、対物レンズ414の下部、および、フォーカス用センサ415は、ヘッドカバー44の下端から下方に突出する。なお、ヘッドユニット43では、描画ヘッド41の構成全体がヘッドカバー44の内部に収容されていてもよい。
【0044】
ヘッドカバー44の(-Y)側の面には、X方向に延びる略矩形の1つの開口441が設けられる。開口441は、後述するように、ガス送出部5から送出されたガスが流入する流入口であり、以下の説明では、「ガス流入口441」とも呼ぶ。
【0045】
図4および
図5に示す例では、ガス流入口441は、ヘッドカバー44の(-Y)側の面に設けられたX方向に延びる溝部442内において、Y方向に略垂直な面に設けられる。溝部442は、ヘッドカバー44の(-Y)側の面の一部を(+Y)方向に窪ませたものであり、X方向に略平行に延びる略直方体状の空間である。また、ガス流入口441は、X方向に並ぶ6つの描画ヘッド41とY方向において対向する。ガス流入口441のX方向の長さは、6つの描画ヘッド41が設けられる領域のX方向の長さよりも長い。
図4および
図5に示す例では、ガス流入口441は、6つの描画ヘッド41の投影光学系413とY方向に対向する。
【0046】
図1に示す描画装置1では、ヘッドユニット43(すなわち、複数の描画ヘッド41およびヘッドカバー44)が、第1搬送機構2aの上方の第1描画位置と、第2搬送機構2bの上方の第2描画位置との間で、描画ヘッド移動機構42により所定の移動経路に沿って移動される。
図1では、ヘッドユニット43は、第2描画位置に位置している。ヘッドユニット43の当該移動経路(以下、「ヘッド移動経路」とも呼ぶ。)は、上述の第1基板移動経路および第2基板移動経路から上方に離間する位置にてX方向に略平行に延びており、第1基板移動経路および第2基板移動経路と平面視において略垂直に交差する。また、当該ヘッド移動経路に沿って、上述の複数の描画ヘッド41(
図4参照)が配列される。ヘッド移動経路は、フレーム7の第2ガントリー部73に固定される経路であり、例えば、第2ガントリー部73に設けられたガイドレールを基準として定められる。なお、ヘッド移動経路は、他の構成を基準として定められてもよい。
【0047】
ヘッドユニット43が第1描画位置に位置する状態では、複数の描画ヘッド41(
図4参照)が、第1ステージ21a上の基板9の上面91にパターンを描画する。また、ヘッドユニット43が第2描画位置に位置する状態では、複数の描画ヘッド41が、第2ステージ21b上の基板9の上面91にパターンを描画する。以下の説明では、第1描画位置および第2描画位置をそれぞれ、「第1ヘッド位置」および「第2ヘッド位置」とも呼ぶ。
【0048】
第1描画位置においてパターンが描画される際には、描画部4の複数の描画ヘッド41から、下方の第1ステージ21a上の基板9に向けて、変調(すなわち、空間変調)された光が照射される。そして、当該光の照射と並行して、基板9が第1移動機構22aによりY方向(すなわち、基板移動方向)に水平移動される。これにより、複数の描画ヘッド41からの光の照射領域が基板9上にてY方向に走査され、基板9に対するパターン(例えば、回路パターン)の描画が行われる。第1移動機構22aは、各描画ヘッド41からの光の照射領域を基板9上にてY方向に移動する走査機構である。
【0049】
図1に示す例では、基板9に対する描画は、いわゆるシングルパス(ワンパス)方式で行われる。具体的には、第1移動機構22aにより、第1ステージ21aが複数の描画ヘッド41に対してY方向に相対移動され、複数の描画ヘッド41からの光の照射領域が、基板9の上面91上にてY方向に1回のみ走査される。これにより、基板9に対する描画が完了する。なお、描画装置1では、第1ステージ21aのY方向への移動と、ヘッドユニット43のX方向へのステップ移動とが繰り返されるマルチパス方式により、基板9に対する描画が行われてもよい。第2描画位置におけるパターンの描画は、第1ステージ21aおよび第1移動機構22aが第2ステージ21bおよび第2移動機構22bに変更される点を除き、上述の第1描画位置におけるパターンの描画と同様である。
【0050】
ガス送出部5は、ガス流路51と、流路支持部52とを備える。ガス流路51は、ヘッドユニット43の(-Y)側において、ヘッドユニット43に近接して配置される。ガス流路51は、第1描画位置から第2描画位置までヘッド移動経路に沿ってX方向に略平行に延びる略直方体状の部材である。詳細には、ガス流路51は、第1描画位置とY方向にて対向する位置から、第2描画位置とY方向に対向する位置まで、ヘッド移動経路に沿ってX方向に略平行に延びる。ガス流路51のX方向の長さは、ヘッドユニット43のX方向の長さよりも長い。ガス流路51の内部には、ガス流路51の長手方向(すなわち、X方向)の略全長に亘って空間が設けられており、当該空間は、ガスが流れる流路となっている。
【0051】
流路支持部52は、ガス流路51のX方向の両端部から上方に延びる管状部材である。
図1では図示を省略するが、流路支持部52は、フレーム7に固定されており、ガス流路51を上方から吊り下げて支持する。ガス流路51は、流路支持部52を介してフレーム7に間接的に固定されており移動しない。流路支持部52は、また、ガス流路51と後述するガス供給源59(
図6参照)とを接続し、ガス供給源59からのガスをガス流路51に供給する供給流路でもある。なお、流路支持部52によるガス流路51の支持方法は様々に変更されてよく、例えば、流路支持部52はガス流路51を下方から支持してもよい。
【0052】
図6は、ガス送出部5およびガス送出部5に関連する構成を模式的に示す図である。描画装置1では、ガス送出部5の流路支持部52が、配管58を介してガス供給源59に接続される。ガス供給源59は、通常、描画装置1の外部に設けられる。ガス供給源59からガス送出部5に供給されるガスは、例えば、圧縮エアである。当該ガスとして、圧縮エア以外の様々なガスが利用されてもよい。配管58の途中には、ガス供給源59からガス送出部5に供給されるガスの温度を、ガス供給源59とガス送出部5との間において調節する温度調節部57が設けられる。温度調節部57としては、例えば、ペルチェ式やヒートポンプ式の公知の温度調節装置が利用可能である。
【0053】
ガス供給源59からガス送出部5に供給された温度調節済みのガス(いわゆる、温調ガス)は、ガス流路51の(+Y)側に設けられたガス送出口56から、ヘッドユニット43のヘッドカバー44に設けられたガス流入口441に向けて(+Y)方向へと送出される。ガス送出口56から送出された温度調節されたガスは、ガス流入口441を介してヘッドカバー44の内部に供給される。
【0054】
ヘッドカバー44の内部には、描画ヘッド41の温度を測定する温度センサ55が設けられている。
図6に示す例では、温度センサ55は、描画ヘッド41の投影光学系413の(+Y)側に配置される。
図6では、描画ヘッド41の投影光学系413以外の構成の図示を省略している。温度センサ55は、描画ヘッド41のうち、温度変化が描画品質に比較的大きい影響を与える投影光学系413の温度を測定する。
【0055】
温度センサ55により測定された描画ヘッド41の温度(以下、「測定温度」とも呼ぶ。)は、制御部10(
図3参照)へと送られる。制御部10の温度制御部116は、温度センサ55から出力された描画ヘッド41の測定温度に基づいて温度調節部57を制御することにより、ガス送出部5に供給されるガスの温度を温度調節部57に調節させる。これにより、ガス送出部5からヘッドカバー44の内部に供給されるガスの温度が調節され、描画ヘッド41の温度(
図6に示す例では、投影光学系413の温度)が所定の目標温度と略同じ温度に維持される。
【0056】
温度センサ55は、例えば、6つの描画ヘッド41のうち、代表的な1つの描画ヘッド41の温度を測定してもよく、2つ以上の描画ヘッド41の温度を測定してもよい。2つ以上の描画ヘッド41の温度が測定される場合、例えば、温度センサ55により測定された当該2つ以上の描画ヘッド41の温度の算術平均が、上記測定温度として制御部10へと送られる。温度センサ55としては、例えば、赤外線式の非接触温度センサが利用される。なお、温度センサ55として、接触式または非接触式の様々な温度センサが利用されてよい。また、温度センサ55は、描画ヘッド41の温度を精度良く測定することができるのであれば、ヘッドカバー44の外部に配置されてもよい。
【0057】
図7は、ヘッドユニット43およびガス送出部5を(-X)側から見た側面図である。
図7では、
図5と同様に、ヘッドカバー44を断面にて示し、ヘッドカバー44の内部の構成を実線にて描いている。
図7に示す例では、ガス流路51は、ヘッドカバー44の溝部442内に配置され、溝部442の(+Y)側の面に近接する。ガス流路51は、ヘッドカバー44との間に僅かな間隙をあけて、ヘッドカバー44の(-Y)側に離間している。ガス流路51は、Z方向において、ヘッドカバー44のガス流入口441とY方向に対向する位置に配置される。
【0058】
図8は、ガス流路51の(+Y)側の面(すなわち、ヘッドユニット43のヘッドカバー44と対向する部位)を(+Y)側から見た背面図である。
図8では、第2描画位置に位置するヘッドユニット43のヘッドカバー44およびガス流入口441を破線にて併せて描いている。
図9は、ガス流路51およびヘッドユニット43を、Z方向のガス流入口441が設けられている位置にて切断した断面図である。
図9では、ヘッドユニット43については、(-Y)側の一部のみを描く。
【0059】
ガス流路51の(+Y)側の面には、X方向の略全長に亘る開口部53が設けられる。開口部53は、ガス流路51の(+Y)側の面を貫通し、ガス流路51の内部空間と連通する。
図8に示す例では、開口部53は、複数の小さい略円形の送出孔531(すなわち、貫通孔)の集合である。
図8に示す例では、複数の送出孔531は、X方向およびZ方向にマトリクス状に分散配置される。複数の送出孔531は、例えば、X方向およびZ方向において略均等に分布する。本実施の形態では、ガス流路51の(+Y)側の側壁は、複数の送出孔531が設けられたパンチングプレート(例えば、パンチングメタル)により形成される。
【0060】
なお、
図8に示す例では、開口部53は、各辺がX方向またはZ方向に略平行な略矩形状の領域であって、当該領域内に含まれる複数の送出孔531のうち(+X)側、(-X)側、(+Z)側および(-Z)側のそれぞれの外縁部に位置する送出孔531に外接する領域である。
図8では、開口部53を二点鎖線にて囲む。
【0061】
図8に示すように、ヘッドユニット43が第2描画位置に位置する状態では、開口部53の(+X)側の略半分がヘッドユニット43と対向する。また、ヘッドユニット43が第1描画位置に位置する状態では、開口部53の(-X)側の略半分がヘッドユニット43と対向する。以下の説明では、開口部53のうち、第1描画位置に位置するヘッドユニット43のヘッドカバー44と対向する領域(すなわち、開口部53の(-X)側の略半分の領域)を「第1領域532」とも呼ぶ。また、開口部53のうち、第2描画位置に位置するヘッドユニット43のヘッドカバー44と対向する領域(すなわち、開口部53の(+X)側の略半分の領域)を「第2領域533」とも呼ぶ。
図8では、第1領域532および第2領域533をそれぞれ二点鎖線にて囲む。
【0062】
図8に示す例では、第1領域532は、各辺がX方向またはZ方向に略平行な略矩形状の領域であって、当該領域内に含まれる複数の送出孔531のうち(+X)側、(-X)側、(+Z)側および(-Z)側のそれぞれの外縁部に位置する送出孔531に外接する領域である。第2領域533についても同様である。また、後述する送出領域534,535についても同様である。
【0063】
ガス送出部5では、送出位置切替部54の開閉部541により、開口部53の第1領域532と第2領域533とがそれぞれ独立して開閉される。
図8および
図9に示す例では、開閉部541は、ガス流路51の内部空間において、X方向に並んで配置される2枚の板状部材542,543を備える。板状部材542,543は、Y方向に略垂直な略矩形状の平板部材であり、ガス流路51の(+Y)側の側壁の内面に近接して配置される。板状部材542は、開口部53の第1領域532全体とY方向において重なる。板状部材543は、開口部53の第2領域533全体とY方向において重なる。
【0064】
開閉部541は、板状部材542をY方向に移動する部材移動機構544と、板状部材543をY方向に移動する部材移動機構545と、をさらに備える。部材移動機構544,545の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。
【0065】
部材移動機構544により、板状部材542が(+Y)方向へと移動され、ガス流路51の(+Y)側の側壁に当接されると、開口部53の第1領域532が閉鎖される。一方、部材移動機構544により、板状部材542が(-Y)方向へと移動され、ガス流路51の(+Y)側の側壁から離間すると、開口部53の第1領域532が開放される。また、部材移動機構545により、板状部材543が(+Y)方向へと移動され、ガス流路51の(+Y)側の側壁に当接されると、開口部53の第2領域533が閉鎖される。一方、部材移動機構545により、板状部材543が(-Y)方向へと移動され、ガス流路51の(+Y)側の側壁から離間すると、開口部53の第2領域533が開放される。
【0066】
ガス送出部5では、ヘッドユニット43が第2描画位置に位置する場合、
図9に示すように、制御部10の送風制御部115(
図3参照)によって送出位置切替部54が制御されることにより、開口部53の第2領域533が開放され、第1領域532が閉鎖される。具体的には、部材移動機構544,545が送風制御部115により制御されることにより、板状部材542がガス流路51の(+Y)側の側壁に当接して、第1領域532に配置された複数の送出孔531を全て覆うとともに、板状部材543がガス流路51の(+Y)側の側壁から(-Y)方向へと離間する。これにより、開口部53の第2領域533からヘッドユニット43に向けてガスが送出され、第1領域532からはガスが送出されない。すなわち、開口部53の第2領域533が、ヘッドユニット43に向けてガスを送出するガス送出口56となる。以下の説明では、このときのガス送出口56の位置を「第2送出位置」とも呼ぶ。
【0067】
一方、ヘッドユニット43が第1描画位置に位置する場合、制御部10の送風制御部115によって送出位置切替部54が制御されることにより、開口部53の第1領域532が開放され、第2領域533が閉鎖される。具体的には、部材移動機構544,545が送風制御部115により制御されることにより、板状部材542がガス流路51の(+Y)側の側壁から(-Y)方向へと離間するとともに、板状部材543がガス流路51の(+Y)側の側壁に当接して、第2領域533に配置された複数の送出孔531を全て覆う。これにより、開口部53の第1領域532からヘッドユニット43に向けてガスが送出され、第2領域533からはガスが送出されない。すなわち、開口部53の第1領域532が、ヘッドユニット43に向けてガスを送出するガス送出口56となる。以下の説明では、このときのガス送出口56の位置を「第1送出位置」とも呼ぶ。第1送出位置は、Y方向およびZ方向において第2送出位置と略同じ位置に位置し、第2送出位置よりも(-X)側に位置する。
【0068】
ガス送出部5では、ガス送出口56の位置が、第1描画位置に位置するヘッドユニット43とY方向に対向する第1送出位置と、第2描画位置に位置するヘッドユニット43とY方向に対向する第2送出位置との間で、送出位置切替部54により切り替えられる。これにより、ヘッドユニット43が第1描画位置および第2描画位置のいずれに位置する場合も、ガス送出口56からヘッドカバー44の内部に温度調節されたガスを供給することができる。なお、ガス流路51の(+Y)側の側壁では、開口部53は、第1送出位置から第2送出位置に至る領域のX方向の略全長に亘って設けられる。
【0069】
図10は、
図8と同じく、ガス流路51の(+Y)側の面を(+Y)側から見た背面図である。
図10では、ガス流路51の(+Y)側に位置する複数の描画ヘッド41の投影光学系413の一部を細実線にて併せて描く。
図10では、ヘッドユニット43が第1描画位置に位置し、開口部53の第1領域532がガス送出口56である状態(すなわち、ガス送出口56が第1送出位置に位置する状態)を示す。
【0070】
図10に示す例では、第1領域532に配置される複数の送出孔531は、X方向に並ぶ7つのグループに区分けされる。各グループに含まれる複数の送出孔531は、X方向およびZ方向にマトリクス状に略均等に配置される。
図10では、各グループに含まれる複数の送出孔531が配置される領域(以下、「送出領域」とも呼ぶ。)を二点鎖線にて囲む。第1領域532は、略同じ大きさの6つの送出領域534と、送出領域534よりもX方向の幅が小さい1つの送出領域535と、を含む。送出領域535は、6つの送出領域534よりも(-X)側に配置される。各送出領域534および送出領域535は、略矩形状の領域である。なお、送出領域534,535にそれぞれ含まれる送出孔531の数は、様々に変更されてよい。
【0071】
6つの送出領域534は、X方向において互いに離間している。換言すれば、X方向にて隣接する2つの送出領域534において、一方の送出領域534の一の送出孔531と他方の送出領域534の一の送出孔531との間のX方向における最短距離が、各送出領域534においてX方向に隣接する2つの送出孔531間のX方向における距離よりも大きい。また、送出領域535も、6つの送出領域534のうち最も(-X)側の送出領域534からX方向において離間している。
【0072】
6つの送出領域534は、6つの描画ヘッド41の投影光学系413と、ヘッドカバー44のガス流入口441(
図7参照)を介して、Y方向にそれぞれ対向する。詳細には、各送出領域534のX方向の中央部が、対向する描画ヘッド41のX方向の中央部と、X方向の略同じ位置に位置する。これにより、ガス流路51のガス送出口56からヘッドカバー44の内部に供給されるガスが、いずれかの描画ヘッド41に偏って供給されることを抑制し、6つの描画ヘッド41の温度調節を効率良くかつ略均等に行うことができる。
【0073】
なお、
図10に示す例では、送出領域535はいずれの描画ヘッド41とも対向していない。送出領域535は、例えば、ヘッドユニット43がX方向にステップ移動する上述のマルチパス方式の描画が行われる際に、6つの描画ヘッド41のうち最も(-X)側の描画ヘッド41の(-X)方向への移動範囲をカバーする。具体的には、最も(-X)側の描画ヘッド41が、第1描画位置において最も(-X)側に位置している状態では、最も(-X)側の送出領域534および送出領域535から当該描画ヘッド41に対してガスが供給される。
【0074】
第2領域533では、複数の送出孔531の配置、送出領域534,535の配置、および、ヘッドユニット43が第2描画位置に位置する状態における送出領域534,535と複数の描画ヘッド41との位置関係について、上述の第1領域532と略同様である。例えば、ヘッドユニット43が第2描画位置に位置する状態では、第2領域533の6つの送出領域534は、6つの描画ヘッド41の投影光学系413と、ヘッドカバー44のガス流入口441を介して、Y方向にそれぞれ対向する。
【0075】
図11は、ヘッドユニット43を(-Y)側から見た正面図である。ガス流入口441は、上述のように、6つの描画ヘッド41とY方向に対向する。ヘッドカバー44内のガス流入口441に対向する領域では、X方向に隣接する各2つの描画ヘッド41の間に隔壁443が設けられる。
図11に示す例では、6つの投影光学系413のそれぞれの間、および、6つの投影光学系413の(+X)側および(-X)側にそれぞれ、7つの隔壁443が配置される。7つの隔壁443の形状および大きさは略同じである。隔壁443は、X方向に略垂直な平板状の部材である。隔壁443は、好ましくは、投影光学系413よりも(+Y)側から、投影光学系413よりも(-Y)側まで延びる。隔壁443のZ方向の長さは、ガス流入口441のZ方向の長さよりも長く、平面視においてガス流入口441をZ方向の全長に亘って縦断する。このように、ヘッドカバー44内のガス流入口441に対向する領域において、隣接する2つの描画ヘッド41の間を区切る隔壁443が設けられることにより、ガス送出部5からのガスがいずれかの描画ヘッド41に偏って供給されることを抑制し、6つの描画ヘッド41の温度調節を効率良くかつ略均等に行うことができる。
【0076】
次に、
図1に示す描画装置1における基板9へのパターン描画の流れについて説明する。描画装置1においてパターンの描画が行われる際には、まず、第1ステージ21a上に基板9が搬入され、第1撮像位置に位置する撮像ヘッド31等を利用して、当該基板9のアライメント処理等が行われる。続いて、第1描画位置に位置するヘッドユニット43により、第1ステージ21a上の基板9に対してパターンの描画が行われる。このとき、ガス送出部5では、送出位置切替部54(
図9参照)によりガス送出口56の位置が第1送出位置とされており、第1描画位置に位置するヘッドユニット43のヘッドカバー44の内部に、ガス送出部5から温度調節されたガスが供給される。これにより、複数の描画ヘッド41(
図4参照)の温度が所定の目標温度と略同じ温度に維持される。また、第1ステージ21a上の基板9に対する描画と並行して、第2ステージ21b上に基板9が搬入され、第2撮像位置へと移動された撮像ヘッド31等を利用して、当該基板9のアライメント処理等が行われる。
【0077】
第1ステージ21a上の基板9に対するパターンの描画が終了すると、ヘッドユニット43が第1描画位置から第2描画位置へと移動され、第2ステージ21b上の基板9に対するパターンの描画が開始される。このとき、ガス送出部5では、送出位置切替部54によりガス送出口56の位置が第1送出位置から第2送出位置に切り替えられ、第2描画位置に位置するヘッドユニット43のヘッドカバー44の内部に、ガス送出部5から温度調節されたガスが供給される。これにより、複数の描画ヘッド41の温度が所定の目標温度と略同じ温度に維持される。なお、上述のように、ガス送出部5はフレーム7に固定されているため、ヘッドユニット43が移動される際もガス送出部5は移動されない。
【0078】
描画装置1では、第2ステージ21b上の基板9に対する描画と並行して、第1ステージ21a上の描画済みの基板9が描画装置1から搬出され、新たな基板9が第1ステージ21a上に搬入されてアライメント処理等が行われる。このように、描画装置1では、第1ステージ21aおよび第2ステージ21b上の基板9に対する描画が交互に行われることにより、スループットが向上される。また、ヘッドユニット43が第1描画位置および第2描画位置のいずれに位置する場合においても、ガス送出部5から温度調節されたガスが供給され、描画ヘッド41の温度調節が行われる。
【0079】
なお、ガス送出部5は、ツインステージタイプの描画装置1以外の描画装置に適用されてもよい。例えば、基板9を保持するステージを1つだけ備える描画装置において、マルチパス方式の描画が行われる場合、副走査方向にステップ移動されるヘッドユニット43に対して、ガス送出部5から温度調節されたガスが供給されてもよい。この場合、副走査方向の一の位置である第1ヘッド位置にヘッドユニット43が位置している状態では、ガス送出部5におけるガス送出口56の位置が第1送出位置とされ、副走査方向における他の位置である第2ヘッド位置にヘッドユニット43が位置している状態では、ガス送出口56の位置が第2送出位置とされる。これにより、ヘッドユニット43が第1ヘッド位置および第2ヘッド位置のいずれに位置する場合であっても、ヘッドカバー44の内部に温度調節されたガスが供給可能となる。
【0080】
以上に説明したように、基板9に対する描画を行う描画装置1は、基板保持部(例えば、第1ステージ21a)と、基板移動機構(例えば、第1移動機構22a)と、ヘッドユニット43と、描画ヘッド移動機構42と、ガス送出部5とを備える。基板保持部は、基板9を水平状態で保持する。基板移動機構は、基板保持部を基板移動経路に沿って水平移動させる。ヘッドユニット43は、描画ヘッド41およびヘッドカバー44を備える。描画ヘッド41は、基板保持部の上方に配置されて基板9に対して光を照射してパターンを描画する。ヘッドカバー44は、描画ヘッド41を内部に収容する。描画ヘッド移動機構42は、ヘッドユニット43を基板移動経路と平面視において交差するヘッド移動経路に沿って第1ヘッド位置と第2ヘッド位置との間(上記例では、第1描画位置と第2描画位置との間)で水平移動させる。ガス送出部5は、ヘッド移動経路に沿って配置される。ガス送出部5は、ヘッドユニット43が第1ヘッド位置および記第2ヘッド位置のいずれに位置する場合も、ヘッドカバー44の内部に温度調節されたガスを供給可能である。
【0081】
ガス送出部5は、ガスが流れるガス流路51と、ガス送出口56と、送出位置切替部54とを備える。ガス流路51は、第1ヘッド位置から第2ヘッド位置までヘッド移動経路に沿って延びる。ガス送出口56は、ガス流路51のヘッドユニット43と対向する部位に設けられて、ヘッドカバー44のガス流入口441に向けてガスを送出する。送出位置切替部54は、ガス送出口56の位置を、第1ヘッド位置に位置するヘッドユニット43と対向する第1送出位置と、第2ヘッド位置に位置するヘッドユニット43と対向する第2送出位置との間で切り替える。
【0082】
このように、描画装置1では、第1ヘッド位置から第2ヘッド位置に亘って設けられるガス流路51において、ガス送出口56の位置を第1送出位置と第2送出位置との間で切り替えることにより、ヘッドユニット43の移動に伴ってガス流路51を移動させることなく、第1ヘッド位置および第2ヘッド位置のいずれに位置するヘッドユニット43に対しても、温度調節されたガスを供給することができる。したがって、ヘッドユニット43の移動に追随してガス流路51も移動する場合に比べて、ガス流路51にガスを供給する配管等の形状変化に起因する悪影響(例えば、ガス送出口56から送出されるガスの流量低下や流量分布の不均一等)を防止することができる。その結果、ヘッド移動経路に沿って移動する描画ヘッド41の温度を好適に調節することができる。
【0083】
上述のように、ガス流路51には、第1送出位置から第2送出位置に至る開口部53が設けられていることが好ましい。また、送出位置切替部54は、開口部53のうち、第1ヘッド位置に位置するヘッドユニット43と対向する第1領域532と、第2ヘッド位置に位置するヘッドユニット43と対向する第2領域533と、をそれぞれ開閉する開閉部541を備えることが好ましい。描画装置1では、開閉部541により開口部53の第1領域532が開放されるとともに第2領域533が閉鎖されることにより、ガス送出口56の位置が第1送出位置とされる。また、開閉部541により開口部53の第1領域532が閉鎖されるとともに第2領域533が開放されることにより、ガス送出口56の位置が第2送出位置とされる。当該構造により、ガス送出部5におけるガス送出口56の位置を、第1送出位置と第2送出位置との間で容易に切り替えることができる。
【0084】
上述のように、ガス送出口56は、ガス流路51のヘッドユニット43と対向する部位に分布する複数の送出孔531を備えることが好ましい。これにより、ガス送出口56から送出されるガスの流量の均一性を向上することができる。
【0085】
描画装置1は、好ましくは、描画ヘッド41の温度を測定する温度センサ55と、ガス送出部5に供給されるガスの温度を温度センサ55からの出力に基づいて調節する温度調節部57と、をさらに備える。これにより、ガス送出部5からヘッドカバー44内に供給されるガスの温度を精度良く調節することができる。その結果、描画ヘッド41の温度を目標温度と略同じ温度に好適に維持することができる。
【0086】
上述のように、ヘッドユニット43は、基板9に対して光を照射してパターンを描画する他の描画ヘッド41をさらに備えることが好ましい。当該他の描画ヘッド41は、ヘッドカバー44内において上述の描画ヘッド41と隣接するとともに、当該描画ヘッド41と共にヘッド移動経路に沿って(上記例では、X方向に沿って)配列される。このように、ヘッドユニット43が複数の描画ヘッド41を備えることにより、描画装置1のスループットを向上することができる。
【0087】
ガス送出部5では、ガス送出口56は、上述の描画ヘッド41に対向する送出領域534と、当該送出領域534から離間して上述の他の描画ヘッド41に対向する他の送出領域534と、を備えることが好ましい。これにより、ガス送出部5からヘッドカバー44内に供給されるガスが、複数の描画ヘッド41においていずれかの描画ヘッド41に偏って供給されることを抑制することができる。その結果、複数の描画ヘッド41の温度調節を効率良くかつ略均等に行うことができる。
【0088】
また、ヘッドユニット43では、ヘッドカバー44内のガス流入口441に対向する領域において、上述の描画ヘッド41と上述の他の描画ヘッド41との間を区切る隔壁443が設けられることが好ましい。これにより、ガス送出部5からヘッドカバー44内に供給されるガスが、複数の描画ヘッド41においていずれかの描画ヘッド41に偏って供給されることを抑制することができる。その結果、複数の描画ヘッド41の温度調節を効率良くかつ略均等に行うことができる。
【0089】
上述のように、描画装置1は、他の基板保持部(上記例では、第2ステージ21b)と、他の基板移動機構(上記例では、第2移動機構22b)と、をさらに備えることが好ましい。当該他の基板保持部は、上述の基板保持部(上記例では、第1ステージ21a)に隣接して配置されて、基板9を水平状態で保持する。当該他の基板移動機構は、基板移動経路(上記例では、第1基板移動経路)と交差する方向において、上述の基板移動機構(上記例では、第1移動機構22a)と並んで配置される。当該他の基板移動機構は、上記他の基板保持部を基板移動経路に平行な他の基板移動経路(上記例では、第2基板移動経路)に沿って水平移動する。上述の第1ヘッド位置は、基板保持部(第1ステージ21a)の上方において当該基板保持部上の基板9に対して光を照射する第1描画位置である。また、第2ヘッド位置は、他の基板保持部(第2ステージ21b)の上方において当該他の基板保持部上の基板9に対して光を照射する第2描画位置である。
【0090】
描画装置1では、上述のように、ヘッド移動経路に沿って移動する描画ヘッド41の温度を好適に調節することができる。したがって、描画装置1の構造は、第1ステージ21a上の第1描画位置と第2ステージ21b上の第2描画位置との間で比較的大きい距離を移動するヘッドユニット43を備えるツインステージタイプの描画装置1に特に適している。
【0091】
描画装置1では、ガス送出部5におけるガス送出口56の形状は様々に変更されてよい。
図12は、他の好ましいガス流路51aを示す背面図であり、上述の
図10に対応する。ガス流路51aでは、複数の送出孔531は、複数の描画ヘッド41の投影光学系413とY方向に対向する位置に分散配置されるが、各投影光学系413のX方向の中心(すなわち、幅方向中心)とY方向に対向する位置には配置されない。換言すれば、ガス送出部5aでは、ガス流路51aのガス送出口56aが、描画ヘッド41の投影光学系413に対向するとともに、投影光学系413の幅方向中心と対向する位置を避けて当該位置の幅方向両側(すなわち、(+X)側および(-X)側)に配置される。これにより、ガス送出口56aからヘッドカバー44内に向けて送出されたガスの流れが、投影光学系413の幅方向の中央部に衝突して乱れることを抑制し、投影光学系413の(+X)側および(-X)側を通過して投影光学系413の(+Y)側まで好適に回り込む。その結果、投影光学系413全体の温度調節を好適に行うことができる。
【0092】
描画装置1では、ガス送出部5における送出位置切替部54の構造は様々に変更されてよい。
図13は、他の好ましいガス流路51bを示す背面図であり、上述の
図8に対応する。
図14は、ガス流路51bを示す断面図であり、上述の
図9に対応する。
図13および
図14に示す例では、ガス流路51bの(+Y)側の側壁に、X方向に延びる略矩形状の開口548が設けられる。開口548は、ヘッドユニット43のガス流入口441とY方向に対向する。開口548は、第1描画位置に位置するヘッドユニット43とY方向に対向する位置から、第2描画位置に位置するヘッドユニット43とY方向に対向する位置まで延びる。
図14では、第1描画位置に位置する状態のヘッドユニット43を描いている。
【0093】
ガス流路51bの内部空間には、上述の第1領域532(
図8参照)に対応する複数の送出孔531が設けられた略平板状の可動部材546が、Y方向に略垂直に配置される。可動部材546は、ガス流路51bの(+Y)側の側壁の内面に当接する。可動部材546は、複数の送出孔531が設けられる領域549よりも(+X)側および(-X)側に延びており、開口548の全体を(-Y)側から覆う。可動部材546の領域549よりも(+X)側および(-X)側の領域には、送出孔531は設けられておらず、ガスは当該領域を通過しない。
【0094】
可動部材546は、送出位置切替部54bの部材移動機構547によりX方向に移動される。部材移動機構547の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。
図13および
図14に示すように、可動部材546のうち、複数の送出孔531が設けられる領域549が、第1描画位置に位置するヘッドユニット43とY方向に対向する位置に配置されることにより、ガス送出口56bが第1送出位置に位置する。また、可動部材546が(+X)方向に移動され、複数の送出孔531が設けられる領域549が、第2描画位置に位置するヘッドユニット43とY方向に対向する位置に配置されることにより、ガス送出口56bが第2送出位置に位置する。
【0095】
このように、ガス流路51bでは、ガス送出口56bが、ガス流路51bのヘッドユニット43に対向する部位(すなわち、(+Y)側の側壁)においてヘッド移動経路に沿って移動可能に設けられる。ガス送出口56bは、ヘッドユニット43の第1ヘッド位置と第2ヘッド位置との間の移動に同期して、第1送出位置と第2送出位置との間で送出位置切替部54bにより移動される。このように、ガス流路51bを移動させることなく、1つのガス送出口56bをX方向に移動させることによっても、上記と略同様に、ガス送出部5bにおけるガス送出口56bの位置を、第1送出位置と第2送出位置との間で容易に切り替えることができる。
【0096】
上述の描画装置1では、様々な変更が可能である。
【0097】
例えば、ガス送出部5における複数の送出孔531の配置は、
図8および
図12に示すものには限定されず、様々に変更されてよい。例えば、複数の送出孔531は、複数の描画ヘッド41に対応する複数の送出領域534に区分けして配置される必要はなく、複数の描画ヘッド41と対向する領域に略均一に分散配置されてもよい。ガス送出部5a,5bにおいても同様である。
【0098】
また、ガス送出部5に設けられる送出孔531のY方向から見た形状は、必ずしも円形には限定されず、他の形状(例えば、楕円形や矩形等)であってもよい。また、ガス送出部5では、ガス送出口56は、必ずしも複数の送出孔531の集合である必要はなく、例えば、それぞれがX方向またはZ方向に延びる複数のスリット状であってもよく、1つの大きい矩形開口であってもよい。ガス送出部5a,5bにおいても同様である。
【0099】
ガス送出口56,56bの位置を切り替えるための構造は、上述の送出位置切替部54,54bの構造には限定されず、様々に変更されてよい。
【0100】
ヘッドユニット43では、上述の隔壁443は省略されてもよい。
【0101】
ヘッドユニット43では、温度センサ55により測定される描画ヘッド41の温度は、必ずしも投影光学系413の温度には限定されず、投影光学系413以外の構成の温度であってもよい。また、温度センサ55は省略されてもよい。この場合、ガス供給源59からガス流路51に供給されるガスの温度は、例えば、上述の目標温度よりも低い所定の温度に維持される。
【0102】
上述の基板9は、必ずしもプリント基板には限定されない。描画装置1では、例えば、半導体基板、液晶表示装置や有機EL表示装置等のフラットパネル表示装置用のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板、太陽電池パネル用の基板等の位置検出が行われてもよい。
【0103】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0104】
1 描画装置
5,5a,5b ガス送出部
9 基板
21a 第1ステージ
21b 第2ステージ
22a 第1移動機構
22b 第2移動機構
41 描画ヘッド
42 描画ヘッド移動機構
43 ヘッドユニット
44 ヘッドカバー
51,51a,51b ガス流路
53 開口部
54,54b 送出位置切替部
55 温度センサ
56,56a,56b ガス送出口
57 温度調節部
91 (基板の)上面
413 投影光学系
441 ガス流入口
443 隔壁
531 送出孔
534,535 送出領域
541 開閉部