(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】液相ペプチド合成のための方法およびその保護戦略
(51)【国際特許分類】
C07F 9/53 20060101AFI20250228BHJP
C07K 1/02 20060101ALI20250228BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
C07F9/53
C07K1/02
C07K1/06 ZNA
(21)【出願番号】P 2021517549
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(86)【国際出願番号】 US2019033296
(87)【国際公開番号】W WO2019231760
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-05-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507238207
【氏名又は名称】セデルマ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】サイフェルト,コール
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】齊藤 真由美
【審判官】冨永 保
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
REGISTRY (STN)
CAplus (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、化学式5および化学式6からなる群から選択される化学式を有する化合物であって;
化学式1が、
【化1】
であり;
化学式2が、
【化2】
であり;
化学式3が、
【化3】
であり;
化学式4が、
【化4】
であり;
化学式5が、
【化5】
であり;
化学式6が、
【化6】
であることを特徴とする化合物。
[式中、
Zは、-H、メチル基(-Me)およびメトキシ基(-OMe)からなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され
;
Rは、-H、メチル、-CH
2SH、-CH
2CH
2COOH、-CH
2COOH、ベンジル、4-(1H-イミダゾリル)メチル、-CH(CH
3)(CH
2CH
3)、-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NH
2、イソブチル、-CH
2CH
2SCH
3、-CH
2CONH
2、-CH
2CH
2CONH
2、-CH
2CH
2CH
2N=C(NH
2)
2、-CH
2OH、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル、4-ヒドロキシベンジルおよび3-(1H-インドリル)メチルからなる群から選択され、又は、Rは、RとO=Cに結合する炭素原子及び該炭素原子に結合するNHと一緒になって、ピロリジン環を形成し;
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、4-((9-アミノ-9H-キサンテン-3-イル)オキシ)ブタノイル(「キサンテニル」)、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および3-(4-(クロロ(2-クロロフェニル)(フェニル)メチル)フェニル)プロパノイル(「2-クロロトリチル」)からなる群から選択される]
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物が、化学式1、化学式4および化学式5からなる群から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項3】
液相ペプチド合成を実施する方法であって、
第1の化合物を第1のアミノ酸に結合させて、第1の保護アミノ酸を提供するステップであり、前記第1の化合物が請求項1に記載の化合物である、ステップと、
前記第1の保護アミノ酸、または前記第1のアミノ酸を別の分子と連結することによって形成されたペプチド上で、カップリング反応を実施するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記第1の化合物が、前記第1のアミノ酸のC末端に結合していることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記第1の化合物が、前記第1のアミノ酸の側鎖に結合していることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であって、前記第1の化合物が、前記第1のアミノ酸のN末端に結合していることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、第2の保護アミノ酸を前記第1の保護アミノ酸とカップリングさせるステップを含み、第2の保護アミノ酸が第2の化合物および第2のアミノ酸を含み、前記第2のアミノ酸が側鎖を含み、前記第2の化合物が前記第2のアミノ酸の側鎖に結合しており、前記第2の化合物が、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、化学式5および化学式6からなる群から選択される化学式を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記第1の化合物を結合させるステップが、前記第1の化合物を、前記第1のアミノ酸の前記C末端、前記第1のアミノ酸の前記N末端、または前記第1のアミノ酸の前記側鎖に結合させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
化合物を形成する方法であって、前記方法が、以下の化合物:
【化7】
をL-OHとカップリングさせて、前記化合物を形成することを含み、前記化合物が、化学式1:
【化8】
によって定義され、式中、
Rは、-H、メチル、-CH
2SH、-CH
2CH
2COOH、-CH
2COOH、ベンジル、4-(1H-イミダゾリル)メチル、-CH(CH
3)(CH
2CH
3)、-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NH
2、イソブチル、-CH
2CH
2SCH
3、-CH
2CONH
2、-CH
2CH
2CONH
2、-CH
2CH
2CH
2N=C(NH
2)
2、-CH
2OH、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル、4-ヒドロキシベンジルおよび3-(1H-インドリル)メチルからなる群から選択され、又は、Rは、RとO=Cに結合する炭素原子及び該炭素原子に結合するNHと一緒になって、ピロリジン環を形成し;
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、キサンテニル、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および2-クロロトリチルからなる群から選択される、方法。
【請求項10】
化合物を形成する方法であって、前記方法が、以下の化合物:
【化9】
をL-OHとカップリングさせて、前記化合物を形成することを含み、前記化合物が、化学式2:
【化10】
によって定義され、式中、
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、キサンテニル、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および2-クロロトリチルからなる群から選択される、方法。
【請求項11】
化合物を形成する方法であって、前記方法が、以下の化合物:
【化11】
をL-OHとカップリングさせて、前記化合物を形成することを含み、前記化合物が、化学式3:
【化12】
によって定義され、式中、
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、キサンテニル、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および2-クロロトリチルからなる群から選択される、方法。
【請求項12】
化合物を形成する方法であって、前記方法が、以下の化合物:
【化13】
をL-OHとカップリングさせて、前記化合物を形成することを含み、前記化合物が、化学式4:
【化14】
によって定義され、式中、
Rは、-H、メチル、-CH
2SH、-CH
2CH
2COOH、-CH
2COOH、ベンジル、4-(1H-イミダゾリル)メチル、-CH(CH
3)(CH
2CH
3)、-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NH
2、イソブチル、-CH
2CH
2SCH
3、-CH
2CONH
2、-CH
2CH
2CONH
2、-CH
2CH
2CH
2N=C(NH
2)
2、-CH
2OH、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル、4-ヒドロキシベンジルおよび3-(1H-インドリル)メチルからなる群から選択され、又は、Rは、RとO=Cに結合する炭素原子及び該炭素原子に結合するNHと一緒になって、ピロリジン環を形成し;
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、キサンテニル、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および2-クロロトリチルからなる群から選択される、方法。
【請求項13】
化合物を形成する方法であって、前記方法が、以下の化合物:
【化15】
をL-OHとカップリングさせて、前記化合物を形成することを含み、前記化合物が、化学式5:
【化16】
によって定義され、式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Rは、-H、メチル、-CH
2SH、-CH
2CH
2COOH、-CH
2COOH、ベンジル、4-(1H-イミダゾリル)メチル、-CH(CH
3)(CH
2CH
3)、-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NH
2、イソブチル、-CH
2CH
2SCH
3、-CH
2CONH
2、-CH
2CH
2CONH
2、-CH
2CH
2CH
2N=C(NH
2)
2、-CH
2OH、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル、4-ヒドロキシベンジルおよび3-(1H-インドリル)メチルからなる群から選択され、又は、Rは、RとO=Cに結合する炭素原子及び該炭素原子に結合するNHと一緒になって、ピロリジン環を形成し;
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、キサンテニル、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および2-クロロトリチルからなる群から選択される、方法。
【請求項14】
化合物を形成する方法であって、前記方法が、以下の化合物:
【化17】
をL-OHとカップリングさせて、前記化合物を形成することを含み、前記化合物が、化学式6:
【化18】
によって定義され、式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、キサンテニル、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および2-クロロトリチルからなる群から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、i)2016年12月21日に出願された、WO出願第PCT/US2016/068112号およびWO公開第WO2017112809A1号、「System and method for solution phase GAP peptide synthesis」;ii)2019年4月29日に出願され、 日にWO 号として公開された、WO出願第PCT/US19/29569号、「Method for Solution-Phase Peptide Synthesis」;ならびに、iii)2018年5月31日に出願された、米国仮出願第62/678,564号、「Protection Strategy for GAP Peptide Synthesis」を相互参照し、これらの出願および公報は、例として参照することにより本明細書に組み込まれる。
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載
【0002】
なし。
配列リスト、表、またはコンピューターリストコンパクトディスク付録の参照
【0003】
なし。
【背景技術】
【0004】
最近の研究努力によって、カラムクロマトグラフィーおよび再結晶を回避することに特に焦点を合わせた精製化学の領域において、大幅な進歩を遂げてきた。この研究は、伝統的な精製方法を回避する有機合成のための化学としての基支援精製(GAP)化学/技術と定義されてきた。伝統的な精製方法とは、例えば、十分に官能化された基を、出発材料にまたは新たに生成された生成物に意図的に導入することによるクロマトグラフィーおよび/または再結晶等である。これらのGAP基は、多くの場合、標的分子の合成中に望ましくない副反応を防止するための保護基としても使用され得る。そのような研究には、有機合成化学の全分野を網羅する可能性がある。
【0005】
保護基は、複数の官能基が存在するほぼすべての複雑な合成において見られる。GAP化学に関して、理想的な例は、半永久的保護基が、GAPに要求される必要な溶解度特性を導入したものであろう。しかしながら、ほとんどの伝統的な保護基は非極性であり、したがって、ほとんどの基質に要求されるGAP溶解度を生み出さない。妥当な溶解度制御を生み出す保護基が開発されれば、GAP化学は、その保護基の使用を必要とするすべての合成に潜在的に拡張され得る。いくつかのアプローチが利用されてきた。公開された特許出願WO2014093723A2は、GAPを装備したキラル補助剤によるイミンの保護、次いで、不斉ホウ素付加反応においてこれらのキラルなN-ホスホニルイミンを求電子試薬として使用することを教示している。精製は、GAPプロセスを介して行われた。この研究は、新規のアミノ酸誘導体を合成するために潜在的に使用され得る、キラルなα-ボロン酸アミンへの簡易なアクセスを提供するという点で価値がある。新規のアミノ酸誘導体については新規のペプチド標的に潜在的に組み込まれ得る。
【0006】
有効な保護基は、多種多様な条件に対して頑強である必要があり、高収率で添加および除去されなくてはならない。保護基は、ペプチド合成において、固相または液相アプローチのいずれかで、広範に使用される。伝統的なペプチド合成保護戦略で、最も一般的に使用される戦略の1つは、Fmoc/tBuである。米国特許第8,383,770B2号は、固相ペプチド合成(SPPS)におけるフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)およびtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)N末端保護基の使用を教示している。この技術は、周知であり、業界で広く適用されている。Fmoc基は、成長中のペプチドに添加されるアミノ酸のN末端を保護し、tert-ブチル(tBu)ベースの基は、同じアミノ酸の側鎖を保護する。Fmoc基は、適正な脱保護塩基により除去することができ、一方、tBu基は、合成の終わりにおける酸ベースの全体的な脱保護まで留まっている。BocおよびFmoc基は、ペプチド化学のすべての領域で数十年にわたって使用されてきており、好ましいFmoc基は、ほぼ完全にSPPSに制限されている。
【0007】
SPPSは、1960年代にMerrifieldによって開発され、研究および製造のために複数の科学的専門分野によって使用される標準プロトコールとなった(
図1Aを参照)。ポリマー支持体または樹脂の利点は、各カップリング/脱保護ステップ後に成長中のペプチドの簡易な精製を可能にするその能力にあり、これにより、カラムクロマトグラフィーの使用を回避する。SPPSの主な不利点は、スケールアップの難しさにある:多くのポリマー支持体は高価であり、扱う材料の質量の大部分を占める。SPPSにおけるカップリング反応も、該反応は固液界面で起こることから非効率である。加えて、各脱保護およびカップリング反応後、樹脂を溶媒で洗浄して、前の反応から生成されたあらゆる不純物を除去しなくてはならず、これは、大規模スケールでは非常に問題となり得る重大な溶媒廃棄物を生み出す。
【0008】
しかしながら、液相ペプチド合成(SolPPS)の経済的に実現可能なFmoc保護スキームの例は稀であり、文献にもほとんど例がない。米国特許第5,516,891A号は、FmocベースのSolPPSのわずかな例の1つを提供している。ここでも、Fmocペプチド合成は、ほぼ完全にSPPSに制限されている。これは、ポリマー支持体なしでは除去することが難しいN-フルオレニルメチルピペリジン(NFMP)が、脱保護中の副生成物として形成されるためである。Fmoc脱保護のための標準プロトコールは、Fmocペプチドを、過剰のピペリジンを加えたジメチルホルムアミド(DMF)またはジクロロメタン(DCM)の溶液中で撹拌し、そのプロセスでFmoc基を脱保護し、NFMPを形成することである。‘891号特許は、ピペリジンの代わりに4-アミノメチルピペリジン(4AMP)で脱保護することによる、この不純物の除去を教示している。これは、NFMPの代わりに、余分なアミノ基の存在により水中に抽出され得るNFMP-CH2NH2を形成する。この方法の問題は、4AMPの高い使用コストにある。この方法に法外なコストがかかり、業界によって受け入れられてこなかった理由はこれである。
【0009】
FmocベースのSolPPSの別の例は、公開された特許出願WO2017112809A1において見ることができる。この公報は、標的ペプチドの溶解度を制御して、各連続するカップリング反応後の選択的沈殿を可能にするための、C末端GAP保護基、ベンジルジフェニルホスフィンオキシド(HOBnDpp)の使用を教示している(
図1Bを参照)。溶解度は、成長中のペプチドが酢酸エチルまたはDCM等の有機溶媒中に留まるように制御され、不純物を除去するために水性洗浄が実施される;次の有機溶媒の濃縮とそれに続くアルカン溶媒中における混合により、ペプチド生成物を選択的に沈殿させる。この技術は、‘891号特許よりもはるかに経済的に実現可能な方式でFmoc/tBu化学を液相に適合させたが、方法に固有の潜在的な制限がある。第一に、GAP基は酸に不安定ではなく、一般的に使用されるトリフルオロ酢酸ベース(TFAベース)または他の酸性カクテルにより便利なワンステップの全体的な脱保護を防止する;ペプチドのC末端からHOBnDppを除去するために、水素化または加水分解が必要とされる。加えて、ペプチドが成長および配列変化し続けることから、HOBnDppは、長くなるにつれて、または配列が異なる溶解度特性をペプチドに与えるにつれて、鎖に対する溶解度制御を次第に維持できなくなる。HOBnDppは、合成中に加水分解または偶発的な切断をする傾向もある。例えば、ペプチド配列における第2のアミノ酸のFmoc脱保護中、ジケトピペラジン(DKP)形成は、C末端からのHOBnDppの損失を容易にする。この切断されたHOBnDppは、反応溶液中に留まり、活性化されたアミノ酸とカップリング反応中に反応して、除去することが難しいまたは不可能である不純物を生み出し得る。その上、保護ペプチドが合成された後のC末端の脱保護のための現在の切断技術(加水分解または水素化のいずれか)により、最終ペプチド生成物のC末端はカルボン酸である。多くの治療用ペプチドはC末端が修飾されて、このカルボン酸の代わりに、アミド、環状ペプチド、チオエステル等とされる必要があり、GAPペプチド合成方法の適用をさらに限定している。加えて、C末端からHOBnDppを除去するためのこれらの切断反応は、全体的な脱保護とは完全に別個の反応である;該反応は、特異的な条件および後処理を必要とし、これは、時間とお金の両方がかかる不都合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
SPPSにおけるスケールアップに関するこれらおよび他の課題、ならびに現存するGAPペプチド合成保護戦略における制限のため、スケールアップに適しているSolPPS方法だけではなく、(i)種々の切断条件、(ii)より長いまたはより難しい(溶解度の観点から)配列、(iii)およびC末端修飾に、より適したSolPPS方法が、業界で必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一の態様において、本明細書に開示される本発明は、液相ペプチド合成のための保護基を含み、保護基が、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、化学式5、化学式6、化学式7および化学式8からなる群から選択される化学式を有する。
化学式1は、
【化1】
であり;
化学式2は、
【化2】
であり;
化学式3は、
【化3】
であり;
化学式4は、
【化4】
であり;
化学式5は、
【化5】
であり;
化学式6は、
【化6】
であり;
化学式7は、
【化7】
であり;
化学式8は、
【化8】
である。
Zは、-H、メチル基(-Me)およびメトキシ基(-OMe)からなる群から選択される。Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択される。Xは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択される。Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択される。Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、4-((9-アミノ-9H-キサンテン-3-イル)オキシ)ブタノイル(「キサンテニル」)、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および3-(4-(クロロ(2-クロロフェニル)(フェニル)メチル)フェニル)プロパノイル(「2-クロロトリチル」)からなる群から選択される。
【0012】
第2の態様において、開示される本発明は、液相ペプチド合成を実施する方法を含み、この方法はいくつかのステップを含む。最初のステップは、第1の保護基を、第1のアミノ酸に結合させて、第1の保護アミノ酸を提供することを含む。次のステップは、第1の保護アミノ酸、または第1のアミノ酸を別の分子と連結することによって形成されたペプチド上で、カップリング反応を実施することを含む。第1の保護基は、請求項1の保護基である。
【0013】
第3の態様において、開示される本発明は、液相ペプチド合成のための保護基を形成する方法を含む。この方法は、ベンジルジフェニルホスフィンオキシド(HOBnDpp)、アニリンジフェニルホスフィンオキシド(NH2PhDpp)またはその誘導体を、(i)直接、リンカー分子と、(ii)アミノ酸を介してリンカー分子とまたは(iii)アミノ酸誘導体を介してリンカー分子とカップリングさせるステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の、前述および他の目的、特徴および利点は、添付図面において例証される下記の実施形態の記述から明らかになるであろうし、この中で、参照文字は種々の図の全体を通して同じ部分を指す。図面は必ずしも一定の縮尺とは限らず、代わりに本開示の原理を説明することに強調が置かれる。図は非限定的な例として使用され、本開示の範囲を限定することなく、好ましい実施形態を表現することのみを意図している。
【
図1A】先行技術の固相ペプチド合成(SPPS)方法を示す図である。
【
図1B】GAPペプチド合成(GAP-PS)方法のステップ、具体的にはC末端保護のためのHOBnDppの使用を示す図である。
【
図2】
図1Bの保護基を、アミノ酸残基の側鎖、この非限定的な実施形態において具体的にはセリンに結合させるための方法とそれに続くGAP-PSを示す図である。
【
図3】例として、新規のGAP分子を合成し、それをペプチドに結合させるための概略を示す図である。ここで、HOBnDppを、保護されたRink アミド-OHと反応させ、得られた新たな化学物質Rink アミド-GAP(RAG)はアミノ酸のC末端に結合している。
【
図4】新規のGAP分子の、アミノ酸の側鎖への結合を示す図である。この非限定的な例において、GAP分子RAGは、アスパラギン酸の側鎖を保護するために使用され、RAG保護アスパラギンの合成をもたらす。具体的には、RAG分子上の遊離アミンとアスパラギンのカルボニル炭素との間にアミド結合を形成するために、カップリング反応が実施される。
【
図5】新規のGAP分子の合成の非限定的な例を示す図である。この非限定的な例において、HOBnDppは、保護HMPA-OHと直接接続されて、HMPA-GAP(HG)を形成し、かつ中間物(一実施形態においてフェニルアラニン)を経由して、GAP分子、HMPA-フェニルアラニン-GAP(HPG)を形成する。具体的には、HOBnDppは、保護HMPA-OHのカルボン酸部分とカップリングされ得るか、またはHOBnDppは、最初にアミノ酸とカップリングされ、続いてHMPAとカップリングされて、GAP分子HPGを生成させることができる。
【
図6】
図5からのHPGの、汎用アミノ酸のC末端への、および、本開示の好ましい実施形態における、アスパラギン酸の側鎖への結合を示す図である。具体的には、この反応は、複数の異なるカップリング試薬の使用を経由して遂行され得るカップリング反応であり、ここで、HPGの遊離アルコールは、活性化されたカルボン酸のカルボニル基とカップリングする。
【
図7】新規のGAP分子、アニリンジフェニルホスフィンオキシド(「NH
2PhDpp」)の合成の非限定的な例を示す図である。
【
図8】新規のGAP分子の合成の非限定的な例を示す図である。ここで、NH
2PhDppを、保護Rink アミド-OHと反応させて、標的物質を得る。具体的には、NH
2PhDppを、多数のカップリング試薬を介して、保護Rink アミド-OHのカルボン酸部分とカップリングさせることができる。
【
図9】新規のGAP分子の合成の非限定的な例を示す図である。ここで、NH
2PhDppを、直接または中間物を経由してのいずれかで、保護HMPA-OHと反応させて、標的分子を形成する。複数の異なるカップリング試薬を使用して、これらの反応を容易にすることができる。
【
図10】非限定的な例として、HPG GAP分子の、Fmoc保護ロイシンのC末端への結合で得られた化合物を示す図である。
【
図11】非限定的な例として、HPGによるグルタミン酸の側鎖保護により生じる化合物を示す図である。ここで、グルタミン酸のC末端は、可能なC末端保護戦略の非限定的な例として、アリル基で保護される。
【
図12】非限定的な例として、本明細書に開示される新規のSolPPS方法により生じるテトラ-ペプチド、Fmoc-Glu(HPG)-Glu(HPG)-Tyr(tBu)-Leu-HPGを示す図である。
【
図13】RAGの、アミノ酸の側鎖、この非限定的な例において具体的にはアスパラギン酸への結合により生じる化合物を示す図である。ここで、アスパラギン酸のC末端は、C末端保護戦略の非限定的な例として、アリル基で保護される。
【
図14】非限定的な例として、本明細書に開示されるSolPPS方法により生じる保護ペプチドを示す図である。
【
図15】非限定的な例として、新規のGAP分子で完全に保護されたペプチドビバリルジンを示す図である。
【
図16】Fmoc脱保護の後にすべての側鎖およびC末端保護基を除去するワンステップの全体的な脱保護を経由して達成された、完全に脱保護されたビバリルジンを示す図である。
【
図17】アミンを新規のGAP分子で保護するための一般的な方法論を示す図である。この特定の非限定的な実施形態において、HPGが使用される。
【
図18】非限定的な例として、本明細書に開示される新規のGAP分子の合成のための試薬としての役割を果たすことができる無数の分子を示す図である。
【
図19】本明細書に開示される新規のGAP分子を合成するための無数の代表的なカップリング反応を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記の発明の概要において、ならびに以下の発明を実施するための形態および特許請求の範囲において、ならびに添付図面において、本発明の特定の特徴を参照する。本明細書における本発明の開示は、そのような特定の特徴のすべての可能な組合せを含むことを理解されたい。例えば、特定の特徴が、本発明の特定の態様もしくは実施形態、または特定の請求項との関連で開示される場合、その特徴は、可能な限り、本発明の他の特定の態様および実施形態と組み合わせておよび/またはそれらとの関連で、ならびに本発明において一般に、使用することもできる。
【0016】
本明細書に開示され、特許請求される組成物および/または方法のすべては、本開示に照らして、必要以上の実験をすることなく、製造および実行することができる。本発明の組成物および方法を、好ましい実施形態の観点から記述してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱しなければ、組成物および/または方法に対し、本明細書において記述されている方法のステップまたは一連のステップにおいて、変形形態が適用され得ることが、当業者には明らかであろう。当業者に明らかであるすべてのそのような同様の代替形態および修正形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念内であると考える。
【0017】
用語「を含む(comprises)」およびその文法上の同等物は、本明細書において、他の成分、原料、ステップ等が場合により存在することを意味するように使用される。例えば、成分A、BおよびC「を含む(comprising)」(または「を含む(which comprises)」)物品は、成分A、BおよびCからなる(すなわち、それらのみを含有する)こともできるし、成分A、BおよびCのみでなく1つまたは複数の他の成分も含有することもできる。
【0018】
本明細書において、2つ以上の定義されたステップを含む方法を参照する場合、定義されたステップは、任意の順序でまたは同時に行うことができ(文脈がその可能性を除外する場合を除く)、その方法は、定義されたステップのいずれかの前に、定義されたステップの2つの間に、またはすべての定義されたステップの後に行われる、1つまたは複数の他のステップを含むことができる(文脈がその可能性を除外する場合を除く)。
【0019】
後に数字が続く用語「少なくとも」は、本明細書において、その数字から始まる範囲(定義されている変数に応じて、上限を有するまたは上限を有さない範囲であってよい)の開始を表示するために使用される。例えば、「少なくとも1」は、1または1超を意味する。後に数字が続く用語「最大で」は、本明細書において、その数字で終わる範囲(定義されている変数に応じて、その下限として1もしくは0を有する範囲、または下限を有さない範囲であってよい)の終了を表示するために使用される。例えば、「最大で4」は4または4未満を意味し、「最大で40%」は40%または40%未満を意味する。本明細書において、範囲が「(最初の数字)から(後の数字)」または「(最初の数字)~(後の数字)」として示される場合、これは、その下限が最初の数字であり、かつその上限が後の数字である範囲を意味する。例えば、25から100mmは、その下限が25mmであり、かつその上限が100mmである範囲を意味する。
【0020】
用語「第1の」は、1つの要素を別の要素から区別するために使用され、ある要素が要素の任意の所与の配列において1番目のまたは最初の要素であることを表示するようになっていない。例えば、「第1のアミノ酸」は、該アミノ酸がアミノ酸の配列において1番目であることまたは反応される1番初めのアミノ酸であることを意味するものではない。代わりに、「第1のアミノ酸」は、該アミノ酸が、「第2のアミノ酸」等の別のアミノ酸と別個かつ区別可能であることのみを指し示す。
【0021】
用語「カップリング反応」は、一般に「カップリング試薬」によって容易にされる2個の構成分子間の結合の形成を指すために使用される。ペプチド化学において、これらのカップリング反応は、使用されるカップリング試薬に完全に依存し得る多くの異なる反応条件下で、多くの異なる機構を介して起こることができる。例えば、カップリング試薬は、構成分子のカルボン酸を「活性化する」ことができ、そのため、カルボニル炭素は、求核攻撃する傾向が高くなり得る。カップリング反応は、2個の構成分子間の結合の形成中に、水分子の損失をもたらし得る(Chandrudu 2013、Mollica 2013、Shelton 2013、Amblard 2006、Bachem 2016を参照)。
【0022】
ペプチド合成のための多くの種類の保護スキームにおいて、ペプチド鎖を成長させるために、同様の反応の繰り返しが起こる。一般に、鎖に添加された各アミノ酸のNまたはC末端のいずれかが最初に保護され、アミノ酸の他方の末端は、カップリング反応に自由に関与する。初期遊離末端を介する鎖への添加の後、脱保護反応が実行され、保護されたNまたはC末端を解放して、それに続くカップリング反応に関与させて、隣のアミノ酸とのペプチド結合を生成させる。例えば、Fmoc/tBuベースのペプチド合成において、Fmoc基は、アミノ酸のN末端を保護し、アミノ酸の側鎖は、ブチル、トリチル(トリフェニルメチル)、Boc(ブチルオキシカルボニル)、Pbf(2,2,4,6,7-ペンタメチル-2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)、Pmc(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル)およびAcm(アセトアミドメチル)を含むがこれらに限定されないtBuベースの保護基で保護される(側鎖はカップリングおよび脱保護条件に対して自然に不活性であるため、一部のアミノ酸は側鎖保護を必要としない)。ペプチド配列における1番目のアミノ酸のC末端は、SPPSにおいて樹脂またはポリマーと、およびSolPPSにおいて保護基と接続され、かつそれらによって保護される。Fmoc/tBuペプチド合成スキームは、アミノ酸のN末端のFmoc基が塩基に不安定であり、適正な脱保護塩基で処理すると、C末端接続や側鎖保護に干渉することなくN末端からFmoc基を除去するように設計されている。脱保護反応が実施されると、1番目のアミノ酸のN末端は遊離し、一方、C末端および側鎖は保護されているか、そうでなければ不活性である。次いで、2番目のアミノ酸はN末端がFmocで保護され、側鎖が保護されるか、自然に不活性であるが、遊離C末端においてカップリング試薬によって活性化され、そのような活性化により、活性化されたカルボニルにおける1番目のアミノ酸の遊離N末端による求核攻撃を容易にして、1番目のおよび隣のアミノ酸間にペプチド結合を形成する。このプロセスを、適正なペプチド配列が実現されるまで繰り返す。最終アミノ酸のFmoc脱保護後、ペプチドは、C末端においておよび側鎖において依然として保護されている。次いで、TFAベースのカクテル等の強酸カクテルを用いる全体的な脱保護を実施して、すべての側鎖保護基を除去する;一部の事例では、C末端樹脂または保護基も切断することができる。
【0023】
本開示は、液相ペプチド合成のための方法を提供することによって、当技術分野における欠点に対処する。その方法は、標的ペプチドの溶解度制御および全体的な合成プロセスを維持しながら、種々の全体的な脱保護戦略、より長いまたはより難しい(溶解度の点で)ペプチド配列の合成、および標的ペプチドにおけるC末端修飾を可能にする。成長中のペプチドのC末端および側鎖において新規の保護戦略を利用することにより、経済的に実現可能かつペプチドの商業生産に有用なSolPPS戦略が提示される。
【0024】
したがって、本開示の非限定的な目的は、SolPPSの新規の方法を可能にすることである。一態様において、HOBnDpp、伝統的にC末端GAP保護基は、ペプチド鎖のC末端の代わりにまたはそれに加えて、セリン、トレオニン、チロシンまたはシステインを含むがこれらに限定されないアミノ酸残基の側鎖を直接保護するために使用される。所望のペプチドの他のアミノ酸残基は、Fmoc/tBu、Boc/ベンジル、Cbz(ベンジルオキシカルボニル)/tBu、Cbz/ベンジル等を含むがこれらに限定されない若干数の異なる保護戦略を使用して保護され得る。この強化された保護戦略は、ペプチド鎖の溶解度制御を維持しながら、より長いおよび/またはより難しい配列の合成を可能にする。この戦略は、溶解度、脱保護または合成後のC末端修飾目的のための、異なるC末端保護基の使用も可能にする。別の態様において、以下で論じる新規のGAP分子は、ある特定のアミノ酸のC末端および/または側鎖を保護して、CからN方向での溶液中におけるペプチド合成を可能にするために使用される。
【0025】
別の態様において、新規のSolPPS方法は、特別に設計されたC末端保護戦略を経由して遂行される。ここで、新規のGAP分子保護基は、より広範な切断条件、より長いペプチドの合成、意図しないまたは偶発的な脱保護の最小化、および切断時のC末端修飾を可能にしながら、元のGAPペプチド合成(GAP-PS)の利益を維持する。使用されるGAP分子に応じて、C末端脱保護は、以下のいずれかの条件の下で遂行することができる。トリフルオロ酢酸(TFA)、フッ化水素酸(HF)、トルエンスルホン酸(TsOH)、メタンスルホン酸(MsOH)またはその他による処理を含むがこれらに限定されない酸性条件、水性もしくはアルコール性系のいずれかまたは相間移動触媒を加えた二相系中の金属水酸化物を含むがこれらに限定されない塩基性加水分解条件、そしてPd0もしくはPt0もしくはRu等の遷移金属触媒上の分子水素、移動水素化、またはホウ化水素、水素化アルミニウム、シラン、ギ酸アンモニウム等の他の水素源を含むがこれらに限定されない還元条件である。また、特異的なGAP分子に応じて、C末端GAP分子の切断中にC末端アミド形成または他の合成後の修飾を遂行し、余分な合成後のプロセシングステップを回避しながら所望のペプチド生成物を生成することもできる。これらの新規のGAP分子は、酸触媒脱保護反応、ならびに水素化ベースおよび加水分解の反応に対して安定なままであることができ、GAP保護基のペプチド合成後の回収の増大を可能にする。加えて、C末端保護合成中の損失も、これらの新規のGAP分子によって最小化される。
【0026】
別の態様において、上述した新規のGAP分子のいずれかは、ペプチドのC末端の代わりにまたはそれに加えて、アスパラギン酸、システイン、セリン、トレオニン、リジン、グルタミン酸、アスパラギンおよびグルタミンを含むがこれらに限定されない種々のアミノ酸の側鎖を保護するために使用される。この戦略は、標的ペプチドの溶解度を同時に制御しながら、反応性側鎖の保護を可能にする。
【0027】
別の態様において、これらの新規のGAP分子およびそれらの誘導体を合成する方法が提示される。非限定的な例として、HOBnDppは、直接または中間物を経由してのいずれかで、リンカー分子のカルボン酸部分に結合し、その例は、
図18において見ることができ、次いで、得られた新規のGAP保護基は、ペプチドのC末端に結合する。別の非限定的な例として、アニリンジフェニルホスフィンオキシド(すなわち、NH
2PhDpp)は、異なるリンカーと同様の方式でカップリングされて、同様の方式で使用され得る新規のGAP保護基を実現する。
【0028】
別の態様において、上記で論じたこれらの異なる戦略のいずれかが、異なる組合せで利用されて、所与のペプチドのための最良の可能な合成戦略を可能にする。非限定的な例として、適切に使用される場合、これらの戦略は、より長いペプチドの合成を完全に溶液中で可能にし、C末端脱保護およびC末端アミド形成は、側鎖脱保護とともにワンステップ反応で遂行される。
【0029】
したがって、本開示の非限定的な目的は、SolPPSのための方法を提供することである。この方法を設計する際、該方法が、大規模生産を妨害する困難な蒸留および精製戦略を回避する等、GAP-PSのような他の液相方法の利点を維持しようと努めるべきことが明らかであった。強化された保護戦略は、当技術分野における難点にも対処しながら、生成されたアミノ酸および脱保護プロトコール不純物からの生成物の分離を可能にするために、標的ペプチドの溶解度制御を維持するように設計される必要があるであろう。
【0030】
本開示の非限定的な例示的な実施形態において、新規のSolPPS方法は、HOBnDppの、所与の配列における1番目のアミノ酸のC末端への直接の結合から始まることができる(
図1Bを参照)。1番目のアミノ酸のC末端をHOBnDppで保護することの代替としてまたはそれに加えて、HOBnDppの、セリン、トレオニン、チロシンおよび/またはシステイン等であるがこれらに限定されないアミノ酸残基の側鎖への結合を、成長中のペプチドへのその後の組み込みとともに実行して、溶解度をより良好に制御し、かつある特定のアミノ酸の側鎖を保護することもできる(
図2を参照)。HOBnDppによる側鎖保護を遂行するために、HOBnDppを最初に、ハロゲン化剤(例えば、PBr
3、POBr
3、(COCl)
2、SOCl
2等)と、塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、重炭酸ナトリウム等)の存在下で反応させて、使用されるハロゲン化試薬に応じて、IBnDpp、ClBnDppまたはBrBnDppのいずれかを提供する。反応は、反応に使用されるハロゲン化剤および塩基に応じて、様々な条件で起こることができる。例として、反応は、1から100バールの圧力、-78℃から100℃の温度で、および単相または二相反応媒体中で行うことができる。次いで、このハロゲン化した化合物を、N末端に一次保護基(Pg)およびC末端に二次保護基(Pg’)を持つアミノ酸と反応させて、アミノ酸の側鎖を有効に保護することができる。次いで、GAP分子が、ペプチド配列に統合される1つまたは複数のアミノ酸の側鎖のGAP保護の代わりにまたはそれに加えてペプチドのC末端を保護するならば、ペプチド合成はCからN方向に実行され得る;代替として、HOBnDppまたは他のGAP分子が、アミノ酸側鎖のみを保護するならば、ペプチド合成は実行されるか、またはNからCの方向で実行される。N末端および側鎖保護のための無数の保護戦略が可能であり得る。潜在的なN末端またはC末端保護基は、Cbz、Fmoc、Boc、メチル、Bn(ベンジル)、または本明細書において論じられているGAP分子のいずれかを含むことができるがこれらに限定されず、側鎖保護基は、tBu、Acm、トリチル、Boc、Pbf、Pmc、Fm(フルオレニルメチル)、および本明細書において論じられているGAP分子のいずれかを含むことができるがこれらに限定されない。
【0031】
別の非限定的な例示的な実施形態において、新規のSolPPS方法は、
図3に見られる通り、C末端保護に使用される新規のGAP分子(ここでは、RAG)から始まることができ、ペプチドからのRAGの切断時に、ペプチドの酸に不安定なC末端保護およびC末端アミド形成の両方を可能にする。RAGによるC末端保護が遂行されると、ペプチド合成は、Fmoc/tBu戦略等であるがこれに限定されない無数のN末端および側鎖保護戦略を利用して、CからN方向に実行され得る。
RAGを合成するために、HOBnDppは、保護Rink アミド-OHと、以下のような、しかし、これらに限定されない多数のカップリング試薬を介してカップリングされて、GAP分子RAGを提供することができる。TFFH(「N-((ジメチルアミノ)フルオロメチレン)-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェート」)、TBTU(「1-((ジメチルアミノ)(ジメチルイミノ)メチル)-1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール3-オキシドテトラフルオロボレート」)、HBTU(「1-((ジメチルアミノ)(ジメチルイミノ)メチル)-1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール3-オキシドヘキサフルオロホスフェート」)、EDCI(「3-(((エチルイミノ)メチレン)アミノ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン」)またはCOMU(「(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート」)等である。カップリング反応は、使用される具体的なカップリング試薬に応じて、様々な条件で起こることができる。例として、反応は、大気圧、室温で、TBTUとともに軽く撹拌しながら、行うことができる。保護RAG分子が合成されると、脱保護反応(例えば、Fmoc脱保護反応)が起こり、Rink アミド上のアミンを解放して、アミノ酸のC末端において見られ得るもの等のカルボン酸に対するカップリング反応に関与させることができる。RAGは、アミノ酸残基(アスパラギン酸およびグルタミン酸を含むがこれらに限定されない)の側鎖に代替としてまたは追加的に結合して(
図4を参照)、それらのアミノ酸の成長中の配列への添加時に、強化された保護または溶解度制御を可能にすることができる。アミノ酸の側鎖からのRAGの切断時に、それらの側鎖のアミド形態(ここでは、それぞれアスパラギンおよびグルタミン)が生成され得る(
図4を参照)。
【0032】
別の非限定的な例示的な実施形態において、新規のSolPPS方法は、C末端保護に使用される新規のGAP分子(ここでは、(Rink アミド)-フェニルアラニン-GAP、すなわちRPG)から始まることができる。RPGは、
図5と同様に合成することができる。具体的には、HOBnDppをFmoc保護フェニルアラニンとカップリングさせて、Fmoc-フェニルアラニン-GAP(すなわち、Fmoc-F-GAP)を形成してよく、Fmoc脱保護後、GAP保護フェニルアラニンの現遊離N末端を保護Rink アミド-OHのカルボン酸部分(保護Rink アミド-OHの分子構造は、
図3に見られ得る)とカップリングさせてよい。得られた構造は、Rink アミド分子のN末端で脱保護することができ、次いで、遊離N末端は、カップリング反応に関与して、所与のペプチド配列における1番目のアミノ酸とのペプチド結合を形成することができる。次いで、ペプチド合成は、CからN方向に進むことができ、RPGは、成長中のペプチドのC末端保護を提供する。C末端保護基としてのRPGは、側鎖保護を提供する開示のGAP分子のいずれかと、またはN末端および側鎖保護に利用可能な任意の他の保護戦略と、組み合わせて使用することができる。RPGを、C末端保護に加えてまたはそれの代わりに、RAGが使用されるのと同じように、アミノ酸の側鎖を保護するために使用することもできる。
【0033】
別の非限定的な例において、新規のSolPPS方法は、HGまたはHPG等の異なる新規のGAP分子を、C末端保護に利用することができる。これらのGAP分子の合成は、
図5において見ることができ、これらの分子は、ペプチドのC末端に結合して、切断時にC末端アミドを形成することなく、酸に不安定なC末端保護を可能にすることができる(
図6を参照)。アミノ酸のC末端を保護することの代わりにまたはそれに加えて、HGおよび/またはHPGは、アスパラギン酸、システイン、セリン、トレオニン、チロシンおよびグルタミン酸を含むがこれらに限定されないアミノ酸残基の側鎖に結合して、溶解度制御を支援することもできる(
図6を参照)。次いで、ペプチド合成は、Fmoc/tBu戦略等の、しかし、これに限定されない無数の保護戦略を利用して、CからN方向に進むことができる。
【0034】
別の非限定的な例示的な実施形態において、新規のSolPPS方法は、
図7に見られる通り、アニリンジフェニルホスフィンオキシド(すなわちNH
2PhDpp)の合成から始まることができる。具体的には、NH
2PhDppの合成は、4-ブロモニトロベンゼンから始まり、エーテル系溶媒中のN-ブチルリチウム(nBuLi)を用いて超低温(-100から-30℃)および室圧で活性化され、有機リチウム試薬を形成することができる。次いで、この試薬を、クロロジフェニルホスフィンをゆっくりと添加してインサイチュで反応させることができ、これが、過酸化水素によるホスフィン酸化ならびにH
2および10%Pd/Cによるニトロ基還元後、NH
2PhDppを生じさせることになる。次いで、この分子は、非限定的な例において、Rink アミド-OHに結合することができ(
図8、18を参照)、得られたGAP分子は、
図3と同様にペプチドのC末端に、および/または
図4と同様にアスパラギン酸またはグルタミン酸の側鎖に結合することができる。アスパラギン酸またはグルタミン酸については、それぞれ保護アスパラギンまたはグルタミンを生成させる。別の非限定的な例において、別の新規のGAP分子は、
図9に見られる通り、直接またはアミンベースの中間物を経由してのいずれかで、NH
2PhDppの、リンカーのカルボン酸部分(ここでは、HMPA)との反応を介して合成することができる。次いで、得られたGAP分子は、
図6に見られる通り、ペプチドのC末端ならびに/またはアスパラギン酸、システイン、セリン、トレオニンおよびグルタミン酸の側鎖に結合することができる。次いで、ペプチド合成は、Fmoc/tBu戦略等の、しかし、これに限定されない無数の保護戦略を利用して、CからN方向に進むことができる。
【0035】
上記の非限定的な例のすべてについて、HOBnDpp、NH2PhDpp、または任意の他のGAP分子は、ジクロロメタン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランおよび炭酸プロピレンを含むがこれらに限定されない若干数の異なる溶媒中で、アミノ酸残基のC末端にまたは側鎖に結合することができる。本明細書において記述されているカップリング反応のいずれについても、GAP分子合成であるか、GAP分子の合成されるペプチドの最初のアミノ酸への結合であるかにかかわらず、TFFH、TBTU、HBTU、COMUまたはEDCIを含むがこれらに限定されない無数の異なるカップリング試薬を使用することができる。
【0036】
次いで、非限定的な例示的な実施形態として、および上記で論じた例のいずれかまたはそれらの任意の組合せを用いて、SolPPSを、Fmoc/tBu化学等によって、CからN方向に遂行することができる。1番目のおよびそれに続くアミノ酸のためのFmoc基の脱保護は、ジエチルアミン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、ピペリジン、tert-ブチルアミンおよび他のアルキルアミンを含む無数の脱保護試薬を用いて行うことができ、追加のカップリング反応を実施して、ペプチド鎖を成長させることができる。各カップリング反応後、異なるクエンチング剤を使用して、過剰な活性化アミノ酸を無効化し、得られた分子に所望の溶解度特性を与えることができる。非限定的な例において、デシルアミンを使用して、活性化されたアミノ酸をクエンチし、得られた分子のアルカン溶媒への溶解度を増大させることができる。続いて、反応溶媒に応じて、液液抽出技術または選択的沈殿を実施して、反応混合物を精製することができる。本明細書に開示される新規のGAP分子は、溶解度制御を可能にし、かつ、新規のSolPPS方法を可能にする。ここで、選択的沈殿または抽出がアミノ酸およびフルベン不純物(すなわちNFMP)を有効に除去する。所望のペプチド配列の最後のアミノ酸がカップリングされた後、非限定的な例において、適切なTFAカクテルによる全体的な脱保護を実施して、C末端および適切な側鎖から酸に不安定なGAP分子を除去することができる;そのような脱保護は、tBuベースの側鎖保護基等の、他の酸に不安定な側鎖保護基を除去することもできる。この新規のSolPPS方法は、ワンステップの全体的な脱保護を可能にして、天然ペプチド配列を生成し、C末端保護基を除去するための水素化または加水分解のような追加の反応を回避する。加えて、RAG等のGAP分子が使用される場合、TFA切断中にC末端アミドが形成され得、そのような修飾に通常は必要とされるであろう合成後反応を首尾よく回避する。加えて、本明細書に開示されるこれらの新規のGAP分子は、ペプチド合成中に安定なままであり、DKP形成による偶発的な加水分解も除去もない。
【0037】
1つの非限定的な実施形態において、これらの新規のGAP分子を使用して、任意の所与のペプチドのN末端およびリジンを含むがこれに限定されないある特定のアミノ酸残基のアミンベースの側鎖を保護することができる。非限定的な例において、HPGおよびジイミダゾールカルボニルを、DCM等の適切な反応溶媒に溶解し、室温および室圧で1時間以上にわたって軽く撹拌する。次いで、アミンを反応混合物に室温および室圧で添加して、HPG保護カルバメート生成物を生成する(
図17を参照)。
【0038】
別の非限定的な実施形態において、新規のSolPPS方法は、新規のGAP分子保護基の合成から始まることができる。ここで、HOBnDpp、NH
2PhDppまたはその誘導体は、任意の所与のリンカー分子のカルボン酸部分と直接反応することができる。その例は、
図18においておよび以下の表において見ることができる。
【表1】
【0039】
そのような反応の例は、
図3、8、9において見ることができる。次いで、これらの得られたGAP分子を、任意の所与のアミノ酸に結合して、C末端保護(
図3のように)、側鎖保護(
図4のように)またはN末端保護(
図17において見られるものと同様の反応)を容易にすることができる。別の非限定的な例において、新規のGAP分子は、HOBnDppまたはその誘導体を任意の所与のアミノ酸と反応させることによって、合成することができ、続いて、
図5および9において見ることができるように、カルボン酸部分における任意の所与のリンカー分子と反応する。得られたGAP分子は、C末端保護(
図3のように)、側鎖保護(
図4のように)またはN末端保護(
図17と同様に)に使用することができる。
【0040】
薬理学的に興味深い、生物学的に活性なペプチドビバリルジンの合成戦略は、本明細書に開示されるSolPPSの新規の方法の非限定的な好ましい実施形態として示される。
図6は、新規のGAP分子HPGを、不特定のアミノ酸のC末端に結合するための概略を描写するものであり、この概略に準拠して、Fmoc-ロイシン-OHのC末端保護は
図10に示す化合物を形成する。この特定の実施形態において、HPGは、C末端アミド形成を容易にすることなく、合成後の酸に不安定なC末端脱保護を可能にするためのC末端保護基として選択される。この最初のステップに続いて、標準的なFmoc/tBu化学を実行してFmoc-Tyr(tBu)-OHをカップリングさせ、Fmoc保護ジペプチドを形成する。続いて、アミノ酸側鎖保護について
図6に示す概略に準拠して、成長中のペプチドに組み込む前にHPGによりFmoc-Glu-Oアリルの側鎖を保護し、
図11に示す化合物をもたらす。Fmoc-Glu(HPG)-OアリルのC末端のアリル脱保護は、Pd(PPh
3)
4およびトリイソプロピルまたはフェニルシランによる処理(Isidro-Llobet 2009を参照)によって実施され、得られた分子の活性化およびペプチドとのカップリングが続いて実施される。このプロセスをもう一度繰り返して、次のHPG保護グルタミン酸残基を結合させて、
図12に示すFmoc保護テトラ-ペプチドを生成する。標準的なFmoc/tBuペプチド合成を実施して、プロリンおよびイソロイシンを添加し、上記で論じた手順を実施して、次の2個のグルタミン酸残基を添加し、続いて、フェニルアラニンを添加する。アスパラギン酸残基をHPGで保護し、グルタミン酸と同じように
図6に示す概略に準拠して添加し、その後にグリシン残基を添加する。
【0041】
別の好ましい実施形態において、新規のGAP分子RAGをFmoc-Asp-Oアリルと反応させて、
図13に示す化合物Fmoc-Asp(RAG)-Oアリルを生成する。その化合物のアリル脱保護を実施し、続いて、それを活性化し、ペプチド鎖とカップリングさせて、
図14に示すFmoc保護ペプチドを生成する。続いて、標準的なFmoc/tBuペプチド合成を行って、4個のグリシン、プロリン、アルギニン、別のプロリン、およびD-フェニルアラニンを添加し、
図15に示されるように、完全に保護されたビバリルジンペプチドを生成する。
【0042】
この特定の実施形態において、完全に保護されたビバリルジンのFmoc脱保護後、TFAカクテル(すなわち90%TFA、5%H
2O、5%トリイソプロピルシラン(TIPS))によるワンステップの全体的な脱保護を実施して、側鎖保護基(新規のGAP分子を含む)およびHPGC末端保護基のすべてを切断することができる(
図16を参照)。この全体的な脱保護中に、RAG保護アスパラギン酸も、脱保護されたアスパラギンに変換される。TFAカクテルによる全体的な脱保護により生じる分子は、天然のビバリルジンである。
【0043】
Fmoc脱保護およびカップリングのための一般的な手順:炭酸プロピレン(PC)中で実行される新規のSolPPS方法について:炭酸プロピレン(200mM)に予め溶解した、Fmoc-(AA)n-OBnDpp、Fmoc-(AA)n-HPG、Fmoc-(AA)n-RAG、または任意のGAP保護基によりC末端が保護された任意のアミノ酸に、脱保護塩基およびオクタンチオールを添加し、続いて、アルカン二重層とともに室温で15分間にわたって撹拌する。次いで、反応混合物を、新鮮なアルカン溶媒で2回(×2)、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液で3回洗浄し、次いで乾燥させる。別個の炭酸プロピレン溶液中、3.0当量(eq.)のTBTUまたはTFFH、3.0eqのFmoc-AA-OHおよび3.0eq.のジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加し、反応物を7分間にわたって撹拌する。次いで、この溶液を、H-(AA)n-(GAP分子)を含有する予め乾燥させたPC溶液に添加し、10~60分間にわたって撹拌しながらカップリングさせる。次いで、長鎖(線形に連結した10から18個の炭素を有する、すなわち、C10~C18)脂肪族チオール、長鎖(C10~C18)脂肪族アルコール、長鎖(C10~C18)脂肪族アミン、長鎖(C10~C18)脂肪族セレノール、脂肪族ポリアミンまたは脂肪族ポリアルコール等の過剰のクエンチング剤を添加する。次いで、反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液で3回洗浄し、次いで乾燥させて、PC溶液中の伸長されたペプチドを生じさせる。このプロセスを必要に応じて繰り返して、所望の配列および長さを持つペプチドを生成する。ジクロロメタンまたは酢酸エチル中で実行される新規のSolPPS方法について:DCMまたは酢酸エチル(100mM)に予め溶解した、Fmoc-(AA)n-OBnDpp、Fmoc-(AA)n-HPG、Fmoc-(AA)n-RAG、または任意のGAP保護基によりC末端が保護された任意のアミノ酸に、脱保護塩基を添加し、続いて、室温で10分間にわたって撹拌する。次いで、反応混合物を、飽和塩化アンモニウム水溶液で3回、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で3回洗浄し、次いで乾燥させる。別個のDCMまたは酢酸エチル溶液中、2.0eqのTBTUまたはTFFH、2.0eqのFmoc-AA-OHおよび5.0eq.のDIPEAを添加し、反応物を7分間にわたって撹拌する。次いで、この溶液を、H-(AA)n-(GAP分子)を含有する予め乾燥させたDCMまたは酢酸エチル溶液に添加し、10~60分間にわたって撹拌しながらカップリングさせる。次いで、長鎖(C10~C18)脂肪族チオール、長鎖(C10~C18)脂肪族アルコール、長鎖(C10~C18)脂肪族アミン、長鎖(C10~C18)脂肪族セレノール、脂肪族ポリアミンまたは脂肪族ポリアルコール等の過剰のクエンチング剤を添加する。次いで、反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液で3回洗浄し、次いで乾燥させて、DCMまたは酢酸エチル溶液中の伸長されたペプチドを生じさせる。このプロセスを必要に応じて繰り返して、所望の配列および長さを持つペプチドを生成する。
【0044】
EDCIカップリングのための一般的な手順:アミノ酸またはペプチドの脱保護されたN末端を含有する反応混合物を、氷浴中で冷却する。続いて、そのような遊離N末端とカップリングされる2eqのアミノ酸を、反応混合物に添加し、続いて、2eqのEDCIを添加する。得られた混合物を氷浴から取り出し、1時間にわたって撹拌し、次いで、長鎖(C10~C18)脂肪族チオール、長鎖(C10~C18)脂肪族アルコール、長鎖(C10~C18)脂肪族アミン、長鎖(C10~C18)脂肪族セレノール、脂肪族ポリアミンまたは脂肪族ポリアルコール等の過剰のクエンチング剤を添加する。次いで、反応混合物を、飽和塩化アンモニウム水溶液で3回、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で3回洗浄し、次いで乾燥させる。
【0045】
機能性は、全体または一部において、現在公知のまたは公知になる方式で、複数の成分間で分配されてもよい。故に、本明細書において記述されている機能、特徴および優先事項を実現する際に、無数の組合せが可能である。その上、本開示の範囲は、現在および今後当業者によって理解されるように、記述されている特徴を行うための従来公知の方式、ならびに本明細書に記載されている方法、組成物または化合物に行い得る変形および修正を網羅する。
【0046】
さらに、本開示において図表、概略またはフローチャートとして提示および記述されている方法の実施形態(図等)は、技術のより完全な理解を提供するために、例として提供される。開示される方法は、本明細書で提示される動作および論理フローに限定されない。代替的な実施形態が企図されており、そこでは種々の動作の順序が変更されたり、より大きい動作の一部であるとして記述されているサブ動作が独立して実施される。種々の実施形態を本開示の目的のために記述してきたが、そのような実施形態は、本開示の教示をそれらの実施形態に限定するとみなされるべきではない。本開示において記述されているシステムおよび方法の範囲内に留まる結果を取得するために、種々の変更および修正を、上述した要素および動作に行い得る。
追加の実施形態
【0047】
特許請求される発明の追加の実施形態は、以下を含む:
【0048】
1.液相ペプチド合成のための保護基であって、保護基が、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、化学式5、化学式6、化学式7および化学式8からなる群から選択される化学式を有し;
化学式1が、
【化9】
であり;
化学式2が、
【化10】
であり;
化学式3が、
【化11】
であり;
化学式4が、
【化12】
であり;
化学式5が、
【化13】
であり;
化学式6が、
【化14】
であり;
化学式7が、
【化15】
であり;
化学式8が、
【化16】
である。
[式中、
Zは、-H、メチル基(-Me)およびメトキシ基(-OMe)からなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Xは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、4-((9-アミノ-9H-キサンテン-3-イル)オキシ)ブタノイル(「キサンテニル」)、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および3-(4-(クロロ(2-クロロフェニル)(フェニル)メチル)フェニル)プロパノイル(「2-クロロトリチル」)からなる群から選択される]
【0049】
2.項目1の保護基であって、保護基が、化学式1、化学式4、化学式5および化学式7からなる群から選択され;Rが、アミノ酸の側鎖である。
【0050】
3.項目1の保護基であって、Rが、-H、メチル、-CH2SH、-CH2CH2COOH、-CH2COOH、ベンジル、4-(1H-イミダゾリル)メチル、-CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2NH2、イソブチル、-CH2CH2SCH3、-CH2CONH2、-CH2CH2CONH2、プロピル基[プロピル基の1位は、R基と同じ位置に結合しており、プロピル基の3位は、窒素に結合している]、-CH2CH2CH2N=C(NH2)2、-CH2OH、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル、4-ヒドロキシベンジルおよび3-(1H-インドリル)メチルからなる群から選択される。
【0051】
4.液相ペプチド合成を実施する方法であって、
第1の保護基を、第1のアミノ酸に結合させて、第1の保護アミノ酸を提供するステップであり、第1の保護基が、項目1の保護基である、ステップと;
第1の保護アミノ酸、または第1のアミノ酸を別の分子と連結することによって形成されたペプチド上で、カップリング反応を実施するステップと
を含む。
【0052】
5.項目4の方法であって、第1の保護基が、第1のアミノ酸のC末端に結合している。
【0053】
6.項目4の方法であって、第1の保護基が、第1のアミノ酸の側鎖に結合している。
【0054】
7.項目4の方法であって、第1の保護基が、第1のアミノ酸のN末端に結合している。
【0055】
8.項目4の方法であって、第2の保護アミノ酸を第1の保護アミノ酸とカップリングさせるステップを含み、第2の保護アミノ酸が第2の保護基および第2のアミノ酸を含み、第2のアミノ酸が側鎖を含み、第2の保護基が第2のアミノ酸の側鎖に結合しており、第2の保護基が、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、化学式5、化学式6、化学式7および化学式8からなる群から選択される化学式を有する。
【0056】
9.項目8の方法であって、第1の保護基を結合させるステップが、第1の保護基を、第1のアミノ酸のC末端、第1のアミノ酸のN末端、または第1のアミノ酸の側鎖に結合させることを含む。
【0057】
10.液相ペプチド合成のための保護基を形成する方法であって、
ベンジルジフェニルホスフィンオキシド(HOBnDpp)、アニリンジフェニルホスフィンオキシド(NH2PhDpp)またはその誘導体を、(i)直接、リンカー分子と、(ii)アミノ酸を介してリンカー分子とまたは(iii)アミノ酸誘導体を介してリンカー分子とカップリングさせるステップ
を含む。
【0058】
11.項目10の方法であって、カップリングステップが、
【化17】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式1:
【化18】
によって定義される。
[式中、
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0059】
12.項目10の方法であって、カップリングステップが、
【化19】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式2:
【化20】
によって定義される。
[式中、
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0060】
13.項目10の方法であって、カップリングステップが、
【化21】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式3:
【化22】
によって定義される。
[式中、
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0061】
14.項目10の方法であって、カップリングステップが、
【化23】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、ここで、保護基が、化学式4:
【化24】
によって定義される。
[式中、
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0062】
15.項目10の方法であって、カップリングステップが、
【化25】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式5:
【化26】
によって定義される。
[式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0063】
16.項目10の方法であって、カップリングステップが、
【化27】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式6:
【化28】
によって定義される。
[式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0064】
17.項目10の方法であって、カップリングステップが、
【化29】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式7:
【化30】
によって定義される。
[式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Xは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0065】
18.項目10の方法であって、カップリングステップが、
【化31】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式8:
【化32】
によって定義される。
[式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Xは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0066】
19.液相ペプチド合成のための保護基であって、保護基が、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、化学式5、化学式6、化学式7および化学式8からなる群から選択される化学式を有し;
化学式1が、
【化33】
であり;
化学式2が、
【化34】
であり;
化学式3が、
【化35】
であり;
化学式4が、
【化36】
であり;
化学式5が、
【化37】
であり;
化学式6が、
【化38】
であり;
化学式7が、
【化39】
であり;
化学式8が、
【化40】
である。
[式中、
Zは、-H、メチル基(-Me)およびメトキシ基(-OMe)からなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Xは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシアセチル(「HMPA」)、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシブタノイル(「HMPB」)、4-(ヒドロキシメチル)ベンゾイル(「HMB」)、4-(メルカプトメチル)ベンゾイル(「MMB」)、4-(メルカプトメチル)フェノキシアセチル(「MMPA」)、4-(アミノメチル)フェノキシアセチル(「AMPA」)、4-(3,3-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル)フェノキシアセチル(「DMPPA」)、2-(4-(アミノ(2,4-ジメトキシフェニル)メチル)フェノキシ)アセチル(「Rink アミド」)、4-((9-アミノ-9H-キサンテン-3-イル)オキシ)ブタノイル(「キサンテニル」)、5-(5-アミノ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾ[a,d][7]アヌレン-3-イル)ペンタノイル(「TCA」)および3-(4-(クロロ(2-クロロフェニル)(フェニル)メチル)フェニル)プロパノイル(「2-クロロトリチル」)からなる群から選択される]
【0067】
20.項目19の保護基であって、保護基が、化学式1、化学式4、化学式5および化学式7からなる群から選択され;Rが、アミノ酸の側鎖である。
【0068】
21.項目19および20のいずれかの保護基であって、Rが、-H、メチル、-CH2SH、-CH2CH2COOH、-CH2COOH、ベンジル、4-(1H-イミダゾリル)メチル、-CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2NH2、イソブチル、-CH2CH2SCH3、-CH2CONH2、-CH2CH2CONH2、プロピル基[プロピル基の1位は、R基と同じ位置に結合しており、プロピル基の3位は、窒素に結合している]、-CH2CH2CH2N=C(NH2)2、-CH2OH、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル、4-ヒドロキシベンジルおよび3-(1H-インドリル)メチルからなる群から選択される。
【0069】
22.液相ペプチド合成を実施する方法であって、
第1の保護基を、第1のアミノ酸に結合させて、第1の保護アミノ酸を提供するステップであり、第1の保護基が、請求項1の保護基である、ステップと;
第1の保護アミノ酸、または第1のアミノ酸を別の分子と連結することによって形成されたペプチド上で、カップリング反応を実施するステップと
を含む。
【0070】
23.項目22の方法であって、第1の保護基が、第1のアミノ酸のC末端に結合している。
【0071】
24.項目22および23のいずれかの方法であって、第1の保護基が、第1のアミノ酸の側鎖に結合している。
【0072】
25.項目22、23および24のいずれか一項の方法であって、第1の保護基が、第1のアミノ酸のN末端に結合している。
【0073】
26.項目22、23、24および25のいずれか一項の方法であって、第2の保護アミノ酸を第1の保護アミノ酸とカップリングさせるステップを含み;
第2の保護アミノ酸が第2の保護基および第2のアミノ酸を含み、第2のアミノ酸が側鎖を含み、第2の保護基が第2のアミノ酸の側鎖に結合しており、第2の保護基が、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4、化学式5、化学式6、化学式7および化学式8からなる群から選択される化学式を有する。
【0074】
27.項目22、23、24、25および26のいずれか一項の方法であって、第1の保護基を結合させるステップが、第1の保護基を、第1のアミノ酸のC末端、第1のアミノ酸のN末端、または第1のアミノ酸の側鎖に結合させることを含む。
【0075】
28.液相ペプチド合成のための保護基を形成する方法であって、
ベンジルジフェニルホスフィンオキシド(HOBnDpp)、アニリンジフェニルホスフィンオキシド(NH2PhDpp)またはその誘導体を、(i)直接リンカー分子と、(ii)アミノ酸を介してリンカー分子とまたは(iii)アミノ酸誘導体を介してリンカー分子とカップリングさせるステップ
を含む。
【0076】
29.項目28の方法であって、カップリングステップが、
【化41】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式1:
【化42】
によって定義される。
[式中、
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0077】
30.項目28および29のいずれかの方法であって、カップリングステップが、
【化43】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式2:
【化44】
によって定義される。
[式中、
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0078】
31.項目28、29および30のいずれか一項の方法であって、カップリングステップが、
【化45】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式3:
【化46】
によって定義される。
[式中、
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0079】
32.項目28、29、30および31のいずれか一項の方法であって、カップリングステップが、
【化47】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式4:
【化48】
によって定義される。
[式中、
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0080】
33.項目28、29、30、31および32のいずれか一項の方法であって、カップリングステップが、
【化49】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式5:
【化50】
によって定義される。
[式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0081】
34.項目28、29、30、31、32および33のいずれか一項の方法であって、カップリングステップが、
【化51】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式6:
【化52】
によって定義される。
[式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0082】
35.項目28、29、30、31、32、33および34のいずれか一項の方法であって、カップリングステップが、
【化53】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式7:
【化54】
によって定義される。
[式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Xは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Rは、保護アミノ酸の既知の側鎖および非保護アミノ酸の既知の側鎖からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
【0083】
36.項目28、29、30、31、32、33、34および35のいずれか一項の方法であって、カップリングステップが、
【化55】
をL-OHとカップリングさせて、保護基を形成することを含み、保護基が、化学式8:
【化56】
によって定義される。
[式中、
Zは、-H、-Meおよび-OMeからなる群から選択され;
Yは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Xは、-O-、-S-および-NH-からなる群から選択され;
Lは、HMPA、HMPB、HMB、MMB、MMPA、AMPA、DMPPA、Rink アミド、キサンテニル、TCAおよび2-クロロトリチルからなる群から選択される]
関連参考文献
【0084】
以下の参考文献は、例として参照することにより、本明細書に組み込まれる。
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