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特許7641907少なくとも一つのシリンダを有する内燃エンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】少なくとも一つのシリンダを有する内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/36 20060101AFI20250228BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
F02F1/36 A
F01P3/02 G
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021556441
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020057721
(87)【国際公開番号】W WO2020188071
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】A50244/2019
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597083976
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL LIST GMBH
【住所又は居所原語表記】HANS-LIST-PLATZ 1,A-8020 GRAZ,AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ツルク,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】クランプファー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】グルントナー,ロベルト
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0132639(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03379063(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0129776(US,A1)
【文献】特開2019-027378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00- 1/42
7/00
F01P 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップダウン冷却システムを備える少なくとも一つのシリンダ(16)を有する内燃エンジン用のシリンダヘッド(1)であって、中間デッキ(4)に隣接するとともに燃焼チャンバから離れた第1副冷却チャンバ(2)と、ファイアデッキ(5)に隣接するとともに前記燃焼チャンバに近い第2副冷却チャンバ(3)と、を有し、前記中間デッキ(4)が、前記第1副冷却チャンバ(2)と前記第2副冷却チャンバ(3)との間に配置され、少なくとも一つの第1移送開口部(11)が、噴射又は点火装置のための中央レセプタクル(10)の領域において前記第1副冷却チャンバ(2)と前記第2副冷却チャンバ(3)との間に配置されているものにおいて、
前記第1副冷却チャンバ(2)と前記第2副冷却チャンバ(3)との間の少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)が、二つの隣接するガス交換バルブ(7a,7b,7c,7d)間の少なくとも一つのバルブブリッジ(8a,8b,8c,8d)の領域に配置され、前記シリンダヘッド(1)が少なくとも二つのバルブブリッジ(8a,8b,8c,8d)を備え、少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)とシリンダ軸心(16a)との間の距離(a)は、少なくとも一つの隣接ガス交換バルブ(7a,7b,7c,7d)のバルブ軸心(9a,9b,9c,9d)と前記シリンダ軸心(16a)との間の距離(A)よりも小さいことを特徴とするシリンダヘッド。
【請求項2】
前記第1移送開口部(11)が管状である、請求項1に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項3】
前記中央レセプタクル(10)が、前記シリンダのシリンダ軸心(16a)に対して同心に構成される、請求項1又は2に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項4】
冷却液が、二つの隣接するガス交換バルブ(7a,7b,7c,7d)間の領域において、前記第1副冷却チャンバ(2)から、前記第1移送開口部(11)と前記少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)とを介して前記第2副冷却チャンバ(3)に流入するように、前記第1副冷却チャンバ(2)が前記第2副冷却チャンバ(3)の上方に配置されている請求項1~3の何れか一項に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項5】
前記第1移送開口部(11)には、前記第2副冷却チャンバ(3)の方向において特定の連続するテーパが形成されている請求項1~4の何れか一項に記載のシリンダヘッド。
【請求項6】
前記第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)は、前記バルブブリッジ(8a,8b,8c,8d)の冷却液の流れ方向において傾斜し、その傾斜は、シリンダ軸心から0度を超えて45度以下である請求項1~5の何れか一項に記載のシリンダヘッド。
【請求項7】
前記傾斜は、シリンダ軸心から15度から30度である、請求項6に記載のシリンダヘッド。
【請求項8】
少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)が、前記ファイアデッキ(5)のホットスポット(15)の上方に配置されている請求項1~7の何れか一項に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項9】
前記第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)は、前記ホットスポット(15)に向けられている請求項8に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項10】
少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)が前記シリンダ軸心(16a)に対して平行に配置されている請求項1~9の何れか一項に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項11】
少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)と前記シリンダ軸心(16a)との間の距離(a)は、前記シリンダ(16)の直径(D)の15%~40%である請求項1~10の何れか一項に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項12】
少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)と前記シリンダ軸心(16a)との間の距離(a)は、前記シリンダ(16)の直径(D)の20%~25%である請求項11に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項13】
少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)と前記シリンダ軸心(16a)との間の距離(a)は、前記シリンダ(16)の直径(D)の20%である請求項11に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項14】
少なくとも二つのバルブブリッジ(8a,8b)を備えるものにおいて、少なくとも一つの第2移送開口部(12a)が、第1バルブブリッジ(8a)の領域に配置され、少なくとももう一つの第2移送開口部(12b)が第2バルブブリッジ(8b)の領域に配置されている請求項1~13の何れか一項に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項15】
少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c)がそれぞれ、前記第1バルブブリッジ(8a)の領域、前記第2バルブブリッジ(8b)の領域、そして第3バルブブリッジ(8c)の領域に配置されている請求項14に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項16】
さらなる一つの第2移送開口部(12d)が第4バルブブリッジ(8d)の領域に配置されている請求項15に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項17】
少なくとも二つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)は、前記シリンダ軸心(16a)から等距離にある請求項14~16の何れか一項に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項18】
少なくとも三つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)の中心(13a,13b,13c,13d)は、前記シリンダ軸心(16a)のまわりの円形線(14)上に位置し、この円形線の直径(d)は、前記シリンダ(16)の直径(D)の30%~80%である請求項17に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項19】
前記円形線の直径(d)は、前記シリンダ(16)の直径(D)の35%~50%である請求項18に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項20】
前記円形線の直径(d)は、前記シリンダ(16)の直径(D)の40%である請求項18に記載のシリンダヘッド(1)。
【請求項21】
請求項1~20の何れか一項に記載のシリンダヘッド(1)を冷却する方法であって、
冷却液が前記シリンダヘッド(1)の前記第1副冷却チャンバ(2)に流入し、前記冷却液の少なくとも一部が、噴射または点火装置用の前記中央レセプタクル(10)の領域において、前記第1副冷却チャンバ(2)から、少なくとも一つの第1移送開口部(11)を介して前記第2副冷却チャンバ(3)に流入し、そして、前記冷却液が前記第2副冷却チャンバ(3)を通って流れた後に前記シリンダヘッド(1)から出る方法において、
前記冷却液の少なくとも一部が、二つの隣接するガス交換バルブ(7a,7b,7c,7d)間の少なくとも一つのバルブブリッジ(8a,8b,8c,8d)の領域において、少なくとも一つの第2移送開口部(12a,12b,12c,12d)を介して前記第1副冷却チャンバ(2)から前記第2副冷却チャンバ(12a,12b,12c,12d)に流入することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップダウン冷却システムを備える少なくとも一つのシリンダを有する内燃エンジン用のシリンダヘッドに関し、これは、中間デッキに隣接するとともに燃焼チャンバから離間した第1副冷却チャンバと、ファイアデッキに隣接するとともに前記燃焼チャンバの近くに配置された第2副冷却チャンバとを有し、ここで、前記中間デッキは前記第1副冷却チャンバと前記第2副冷却チャンバとの間に配置され、少なくとも一つの好ましくは環状の第1移行開口部が噴射又は点火装置用の中央レセプタクルの領域において前記第1副冷却チャンバと前記第2副冷却チャンバとの間に配置され、好ましくは前記中央レセプタクルが前記シリンダのシリンダ軸心に対して同心に形成されている。更に、本発明は、前記シリンダヘッドを冷却する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
互いに上下に配置された二つの冷却チャンバを備えるシリンダヘッドにおいて、トップダウン冷却は、冷却液が上方冷却チャンバから移行開口部を通して下方冷却チャンバに流れ込み、冷却液入口が前記上方冷却チャンバの領域に、そして冷却液出口が前記下方冷却チャンバの領域に配置されている冷却コンセプトである。
【0003】
前記トップダウン冷却コンセプトに基づいて作動するシリンダヘッドが、例えば特許文献1~3(米国特許第10047660号明細書,国際公開第2012/004340号又は国際公開第2018/037368号)から知られている。
【0004】
特許文献4,5(米国特許第6 681 727号明細書および米国特許第6 899 063号明細書)には、中間デッキによって互いに分離された上方冷却チャンバと下方冷却チャンバとを有するシリンダヘッドを記載している。各ケースにおける燃料噴射装置のための中央レセプタクルの領域において、前記二つの冷却チャンバを流れにおいて互いに接続するため移行開口部が前記中間デッキに配置されている。更に、前記下方冷却チャンバにおける気泡の蓄積を防止するために、各シリンダにつき一つのガス抜き開口部が前記中間デッキに設けられている。各ガス抜き開口部はバルブブリッジの径方向外側のシリンダ軸心を通る横平面の領域に位置し、ガス交換バルブの軸心よりもシリンダ軸心から更に離間している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第10047660号明細書
【文献】国際公開第2012/004340号
【文献】国際公開第2018/037368号
【文献】米国特許第6 681 727号明細書
【文献】米国特許第6 899 063号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、シリンダヘッドの熱的に高いストレスを受けるパーツにおける冷却を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当初に記載したタイプのシリンダヘッドに基づき、この課題は、本発明に依れば、少なくとも一つの第2移行開口部が、二つの隣接するガス交換バルブ間の少なくとも一つのバルブブリッジの領域において前記第1副冷却チャンバと前記第2副冷却チャンバとの間に配置されていることによって解決される。
【0008】
冷却液が、二つの隣接するガス交換バルブ間の領域において前記第1副冷却チャンバから、前記第1移行開口部と少なくとも一つの第2移行開口部とを介して、前記第2副冷却チャンバに流入するように、前記第1副冷却チャンバを前記第2副冷却チャンバの上方に配置すると有利である。これによって、トップダウン冷却が実現される。冷却液は、前記上方(第1)副冷却チャンバから下方(第2)副冷却チャンバに流入する。
【0009】
更に、前記第1移行開口部に、前記第2副冷却チャンバの方向において特定の連続テーパを形成すると更に有利である。特に、このテーパは、前記中央部材内へと延出するように、すなわち、中央部材から材料が除去されるように、構成される。原則的に、前記テーパは、不均一に形成することも可能であり、この場合、それは、傾斜角度の異なる複数の隣接する部分要素から成る。特に、前記テーパは、前記シリンダヘッドの円錐状加工によって作り出される。
【0010】
前記少なくとも一つの第2移行開口部は、有利には、前記シリンダ軸心に対して平行に、或いは、冷却液の流れ方向に対して傾斜して(具体的には、シリンダ軸心から0度から45度の範囲)構成され配置される。
【0011】
但し、前記第2移行開口部が前記バルブブリッジにおける冷却液の流れ方向において、シリンダ軸心から約0度から約45度、特に約15度および約30度、傾斜するように構成することが特に好ましい。移行開口部のこの傾斜によって、特に効率的な冷却液の流れが可能となり、その結果、バルブブリッジとシリンダヘッド全体が特に効率的に冷却される。前記第2移行開口部の距離は、好ましくはシリンダボアの直径の約15%ないし約40%である。更に、前記少なくとも一つの第2移行開口部は、バルブブリッジに対してその中央に又は中央から外れて配置することができる。もしも各バルブブリッジに対して一つ以上の第2移行開口部が設けられるならば、これらが、前記バルブブリッジの長手方向に対してオフセットを有するように構成することが有利でありうる。
【0012】
少なくとも一つの第2移行開口部は、有利には、前記ファイアデッキの局所的高温スポットの上方に、好ましくはそれに向けて配置される。これによって効率的な熱拡散が確保される。局所的高温スポットは、局所的な温度ピークを有するファイアデッキの熱応力を受ける領域、例えば二つの出口バルブ間、又は、ガス交換バルブの出口バルブと入口バルブの間、のファイアデッキのバルブブリッジ、として定義される。
【0013】
前記別々の第2移行開口部によって、標的化された流入が可能となり、それによって、所望の領域における改善された冷却が可能となる。更に、前記第2移行開口部は、エンジンが作動していない時のガス抜きのためにも使用することができる。
【0014】
前記第2移行開口部は、鋳造方法、或いは、材料除去製造工程によって製造することができる。製造の簡易性のためには、第2移行開口部を前記シリンダ軸心に対して実質的に平行に配置することが有利である。
【0015】
本発明のコンテクストにおいて、上述したトップダウン冷却システムとは、互いに上下に配置された二つの冷却チャンバを備えるシリンダヘッドの場合、冷却液が上方の冷却チャンバから移行開口部を通って下方の冷却チャンバに流入し、冷却液入口が上方冷却チャンバの領域に配置され、冷却液出口が下方の冷却チャンバの領域に配置される冷却システムを意味するものと理解される。
【0016】
このように前記第2副冷却チャンバは、前記ファイアデッキと前記中間デッキとの両方に隣接する。これにより前記中間デッキは、前記第1副冷却チャンバと第2副冷却チャンバとを分離し、ここで、これらは、前記第1移行開口部と前記少なくとも一つの第2移行開口部とによって流れ接続される。前記第1移行開口部は、特に、その形状が環状であって、好ましくは前記中央レセプタクルまわりで同心状に配置される。言い換えると、前記第1移行開口部は、前記中央レセプタクルの径方向まわりの領域全体において前記第1副冷却チャンバと前記第2副冷却チャンバの間の流れの移行を可能にする。
【0017】
好ましくは、少なくとも一つの第2移行開口部と前記シリンダ軸心との間の距離は、前記シリンダの直径の15%~40%、好ましくは20%~25%、特に好ましくは約20%である。この距離によって、一方では、特に効率的な冷却が可能となり、他方では、シリンダヘッドの比較的単純な製造が可能となる。本発明のコンテクストにおいて、シリンダの直径は、特に、シリンダボア径を意味する。前記移行開口部は、冷却水の移行のために形成され配置される。特に好適には、スリーブまわりでの冷却水の遷移の距離は、前記シリンダボア径の約10%-20%である。
【0018】
本発明の別実施例において、少なくとも一つの第2移行開口部が第1バルブブリッジの領域に配置され、少なくとも一つの別の第2移行開口部が第2バルブブリッジの領域に配置される。本発明の一実施例において、少なくとも一つの第2移行開口部が第1バルブブリッジの領域、第2バルブブリッジの領域、そして、第3バルブブリッジの領域、好ましくは、更に第4バルブブリッジの領域、に配置される。これによって、均一な冷却液の流れが可能となり、従って、高い熱負荷を受ける領域の均一で効率的な冷却が可能となる。
【0019】
本発明の一実施例バリアントでは、少なくとも二つの第2移行開口部が前記シリンダ軸心から等距離に配置される。特に、少なくとも三つの第2移行開口部の中心が、前記シリンダ軸心のまわりの中央線上に配置され、この中央線の直径は、シリンダの直径の30%~80%、好ましくは35%~50%、特に好ましくは約40%である。本発明の範囲内のシミュレーションによれば、このように構成することで特に効果的な流れと冷却を達成することができることが示された。
【0020】
本発明の一実施例バリアントにおいて、少なくとも一つの第2移行開口部と前記シリンダ軸心との間の距離は、隣接するガス交換バルブのバルブ軸心と前記シリンダ軸心との間の距離よりも小さい。
【0021】
前記第2流れ移送の断面の合計に対する前記第1流れ移送の断面の合計の比率は、基本的に、前記別々の移送の数、および/または、シリンダヘッドへの望ましくない熱入力の数に依存する。
【0022】
前記シリンダヘッドは、シリンダヘッドの前記第1副冷却チャンバに流れ込む冷却液、噴射又は点火装置のための中央レセプタクルの領域における前記第1副冷却チャンバから少なくとも一つの第1移行開口部を介して第2副冷却チャンバに流入する冷却液の少なくとも一部、そして、第2副冷却チャンバからの流出後にシリンダヘッドから出る冷却液、によって、冷却される。本発明に依れば、前記冷却液の少なくとも別の部分が、二つの隣接するガス交換バルブ間の少なくとも一つのバルブブリッジの領域において、前記第1副冷却チャンバから少なくとも一つの第2移行開口部を介して前記第2副冷却チャンバに流入する。
【0023】
前記第2移行開口部は、鋳造された第1移行開口部と比較して、第1副冷却チャンバと第2副冷却チャンバとの間から受ける許容誤差の影響が少ない。
【0024】
前記第2移行開口部の正確な位置は、各ケースにおけるそれぞれの冷却要件に適合させることができる。それを行う際、望まれる領域において非常に高い乱流を発生させて放熱を改善することが可能である。
【0025】
以下、非限定的な図面を参照して本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明によるシリンダヘッドの、図3の線I-Iに沿った断面を示した図である。
図2図1からの詳細IIを示した図である。
図3】シリンダヘッドの、図1の線III-IIIに沿った断面を示した図である。
図4】別実施例によるシリンダヘッドの詳細を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1-3は、単数または複数のシリンダ16用に構成されたシリンダヘッド1を図示している。図1-3は、それぞれ、一つのシリンダ16を備えるシリンダヘッド1を図示している。
【0028】
トップダウン冷却システムを備えて構成された前記シリンダヘッド1は、上方の、即ち燃焼チャンバから離間した第1副冷却チャンバ2と、下方の、即ち燃焼チャンバに近い第2副冷却チャンバ3と、を有し、ここで、前記第1副冷却チャンバ2は、中間デッキ4によって、前記第2副冷却チャンバ3から分離されている。前記第2副冷却チャンバ3は、燃焼チャンバの屋根部を形成するファイアデッキ5に隣接している。前記ファイアデッキ5に隣接する前記燃焼チャンバは、参照符号17によって示されている。
【0029】
前記燃焼チャンバ17内へと開口するガス交換バルブ7a,7b,7c,7dのための複数のバルブ開口部6a,6b,6c,6dが、各シリンダ16に対して、前記ファイアデッキ5に配置されている。前記ガス交換バルブ7a,7b,7c,7dは、空気又は空気と燃料の混合物を、前記燃焼チャンバに供給する入口バルブと、燃焼チャンバ17からの排気ガスを排出するための出口バルブと、を形成する。バルブブリッジ8a,8b,8c,8dが、隣接するガス交換バルブ7a,7b,7c,7dのバルブ開口部6a,6b;6b,6c;6c,6d;6d,6a間に配置されている。
【0030】
前記シリンダ軸心16aの領域において、前記シリンダヘッド1は、中央の部材、例えばスパークプラグや噴射装置のための、例えばインサートスリーブによって形成される中央レセプタクル10を有している。この中央レセプタクル10は、例えばシリンダ軸心16aに対して同心状に形成される。前記中央レセプタクル10の領域において、少なくとも一つの第1移行開口部11が、前記第1副冷却チャンバ2と前記第2副冷却チャンバ3との間に配置され、これは、この実施例では、前記中間デッキ4と前記レセプタクル10との間の環状空隙によって形成されている。
【0031】
前記第1移行開口部11に加えて、少なくとも一つ、好ましくは、それぞれの、バルブブリッジ8a,8b,8c,8dの領域において、前記シリンダ16のシリンダ軸心16aから一定の距離をおいて、第2移行開口部12a,12b,12c,12d、が配置されている。前記第2移行開口部12a,12b,12c,12dは、前記シリンダ軸心16aに対して平行に形成されている。これら第2移行開口部12a,12b,12c,12dの中心13a,13b,13c,13dは、シリンダ軸心16aまわりの円形線14上に配置され、この円形線の直径dは、シリンダ16の直径Dの30%-80%、例えば50%である。少なくとも一つの第2移行開口部12a,12b,12c,12dの中心13a,13b,13c,13dとシリンダ軸心16aとの間の距離は、この実施例においては、隣接のガス交換バルブ7a,7b,7c,7dのバルブ軸心9a,9b,9c,9dとシリンダ軸心16aとの間の距離よりも小さい。言い換えると、前記第2移行開口部12a,12b,12c,12dの中心13a,13b,13c,13dは、この実施例では、最も近いガス交換バルブ7a,7b,7c,7dのバルブ軸心9a,9b,9c,9dよりもシリンダ軸心16aに近く配置されている。
【0032】
図2から明確にわかるように、少なくとも一つの第2移行開口部12a,12b,12c,12dは、前記ファイアデッキ5の最も近いバルブブリッジ8a,8b,8c,8dのホットスポット15に向けられている。従って、別々の第2移行開口部12a,12b,12c,12dによって、標的化された流れと、所望の領域における冷却の改善とが可能となる。
【0033】
図1及び2において矢印Sによって示されているように、冷却液は、前記第1副冷却チャンバ2から前記第1移行開口部11と前記第2移行開口部12a,12b,12c,12dを介して前記第2副冷却チャンバ3に流入し、そして、前記ファイアデッキ5の前記バルブブリッジ8a,8b,8c,8dに沿って径方向外側に流れ、熱的な高ストレスを受ける領域のホットスポット15から熱を吸収し放熱する。
【0034】
それぞれ個別に特定のケース用に構成可能な前記第2移行開口部12a,12b,12c,12dの配置により、所望の領域において非常に高い乱流を発生させることができ、これによって冷却を改善することができる。
【0035】
さらなる利点は、第2移行開口部12a,12b,12c,12dを通る流れSは、第1移行開口部11を通る流れSよりも製造公差に対する感度が低いことである。
【0036】
図4は、本発明による別のシリンダヘッド1の詳細を図示しており、ここでは、前記移送開口部11には、前記第2副冷却チャンバ3の方向にテーパが形成され、これにより、冷却液が前記部材の方向に流れることを可能にしている。断面図において、前記テーパ移送開口部11は、したがって、円錐環状ギャップを表している。
図1
図2
図3
図4