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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】光学システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20250228BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021564934
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 IB2020053989
(87)【国際公開番号】W WO2020225650
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】62/842,931
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ティモシー エル.
(72)【発明者】
【氏名】リンクエスト,ティモシー ジェイ.
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090289(WO,A1)
【文献】国際公開第97/034182(WO,A1)
【文献】特開2009-157210(JP,A)
【文献】特開2008-046562(JP,A)
【文献】特表2002-539498(JP,A)
【文献】実開昭61-176525(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
G02B 5/30
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像及び第2の画像を観察者に表示するための光学システムであって、
異なる第1のディスプレイ及び第2のディスプレイと、
光学積層体であって、
前記第1のディスプレイからの第1の光線を受光し、かつ前記受光した第1の光線を前記観察者による観察のために反射し、
前記第2のディスプレイからの、前記第1の光線とは異なる、第2の光線を受光し、かつ前記受光した第2の光線を前記観察者による観察のために透過するように構成されており、前記光学積層体が、
前記第1のディスプレイに面した反射偏光子と、
前記反射偏光子上に配置され、前記第2のディスプレイに面した、吸収偏光子と、
を備え、前記反射偏光子及び前記吸収偏光子の各々が、直交する通過軸及び遮断軸を備え、これにより、400nm~700nmの範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、
前記反射偏光子が、前記反射偏光子の前記遮断軸に沿って偏光された前記垂直入射光の少なくとも70%を反射し、かつ前記反射偏光子の前記通過軸に沿って偏光された前記垂直入射光の少なくとも70%を透過し、
前記吸収偏光子が、前記吸収偏光子の前記遮断軸に沿って偏光された前記垂直入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収し、かつ前記吸収偏光子の前記通過軸に沿って偏光された前記垂直入射光の少なくとも70%を透過する、光学積層体と、を備え、
前記反射偏光子の前記遮断軸と、前記吸収偏光子の前記遮断軸とが、互いに5度~40度の角度をなす、光学システム。
【請求項2】
前記第2のディスプレイが、現実世界のシーン内の現実世界の物体である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
仮想画像を観察者に表示するためのシースルー光学システムであって、
第1の偏光状態を有する第1の画像を放出するように構成された第1のディスプレイと、
2つの相互に直交する方向に沿って湾曲した光学積層体であって、前記放出された第1の画像を受光し、前記受光した第1の画像を前記観察者による観察のために反射するように構成されており、前記観察者が、前記第1の画像の拡大された仮想画像を観察し、前記観察者が、前記光学積層体を通して現実世界のシーン内の偏光された現実世界の物体を受光し、見ることができ、これにより、所定の波長範囲内の少なくとも1つの波長を有し、実質的な垂直入射方向に沿って伝搬する、光に対して、前記光学積層体が、
前記第1の偏光状態に沿って偏光された前記光の少なくとも70%を反射し、
直交する第2の偏光状態を有する前記光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収する、光学積層体と、を備え、
前記光学積層体が、前記偏光された現実世界の物体から前記光学積層体に入射する光を中心に、少なくとも180度連続的に回転させられる際に、前記偏光された現実世界の物体が前記観察者によって観察可能なまま留まる、シースルー光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、画像を表示するための光学システム及びシースルー光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学システムが、画像を観察者に提供するために、ヘッドマウント式ディスプレイ(head-mounted display;HMD)に含まれることがある。この光学システムは、ディスプレイパネルと、そのディスプレイパネルと観察者の目との間の様々な光学構成要素とを含み得る。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載される様々な態様及び実施形態は、折り返された光経路を有する光学システムに関する。
【0004】
本明細書のいくつかの態様は、第1の画像及び第2の画像を観察者に表示するための光学システムに関する。光学システムは、異なる第1のディスプレイ及び第2のディスプレイと、光学積層体とを含む。光学積層体は、第1のディスプレイからの第1の光線を受光し、受光した第1の光線を観察者による観察のために反射するように構成されている。光学積層体は、第2のディスプレイからの、第1の光線とは異なる、第2の光線を受光し、かつ受光した第2の光線を観察者による観察のために透過するように更に構成されている。光学積層体は、第1のディスプレイに面した反射偏光子と、反射偏光子上に配置され、第2のディスプレイに面した、吸収偏光子と、を含む。反射偏光子及び吸収偏光子の各々は、直交する通過軸及び遮断軸を含む。約400nm~約700nmの範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、反射偏光子は、反射偏光子の遮断軸に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を反射し、かつ反射偏光子の通過軸に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を透過する。吸収偏光子は、吸収偏光子の遮断軸に沿って偏光された入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収し、かつ吸収偏光子の通過軸に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を透過する。反射偏光子の遮断軸と、吸収偏光子の遮断軸とが、互いに約5度~約40度の角度をなす。
【0005】
本開示のいくつかの他の態様は、仮想画像を観察者に表示するためのシースルー光学システムに関する。システムは、第1の偏光状態を有する第1の画像を放出するように構成された第1のディスプレイと、2つの相互に直交する方向に沿って湾曲した光学積層体と、を含む。光学積層体は、放出された第1の画像を受光し、受光した第1の画像を観察者による観察のために反射するように構成されている。観察者は、第1の画像の拡大された仮想画像を観察し、光学積層体を通して現実世界のシーン内の偏光された現実世界の物体を受光し、見ることができる。所定の波長範囲内の少なくとも1つの波長を有し、実質的な垂直入射方向に沿って伝搬する光に対して、光学積層体は、第1の偏光状態に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態を有する入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収する。光学積層体が、偏光された現実世界の物体から光学積層体に入射する光を中心に、少なくとも180度連続的に回転させられる際に、偏光された現実世界の物体は、観察者によって観察可能なまま留まる。
【0006】
本出願の上記及び他の態様は、以下の「発明を実施するための形態」から明らかになるであろう。しかしながら、上記概要は、いかなる場合も請求の主題の限定として解釈されるべきではなく、そのような主題は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の様々な態様は、添付の図面を参照してより詳細に論じられる。
図1】本開示の特定の態様に係る光学システムの概略図である。
図2】特定の実施形態に係る反射偏光子及び吸収偏光子の様々な軸を通過する光の角度方向の概略図である。
図3】反射偏光子を有する光学システムにおける透過率を示すグラフである。
図4】吸収偏光子を有する光学システムにおける透過率を示すグラフである。
図5】反射偏光子及び吸収偏光子の組み合わせを有する光学システムにおける透過率を示すグラフである。
【0008】
これらの図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図面で使用されている同様の番号は同様の構成要素を示す。しかし、特定の図中のある構成要素を示す数字の使用は、同じ数字を付した別の図中の構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の光学システムをヘッドマウント式ディスプレイ内で使用して、薄型の小型システムにおいて広い視野をもたらし得る。いくつかの実施形態では、光学システムは、1つ以上の光学レンズと、反射偏光子及び吸収偏光子とを含み、それら反射偏光子及び吸収偏光子のそれぞれが、その1つ以上のレンズ上又はレンズ内部に配置されることにより、画像源と観察者との間に、折り返し光路をもたらし得る。
【0010】
直線偏光ディスプレイを有するヘッドマウント式ディスプレイ(HMD)のための画像コンバイナとしての反射偏光子は、高い表示効率及びワールドビューの効果的な透過をもたらす。しかし、周囲光の約50%はコンバイナから反射され、これにより、グレアを生み出す。例えば、HMDユーザを見ている人に対しては、周囲光がコンバイナから反射されることになり、コンバイナを通してユーザの目が見にくい場合がある。グレアを緩和するために、吸収偏光子が反射偏光子コンバイナ内に統合され、「二重偏光子コンバイナ」を形成し得る。吸収偏光子は、コンバイナ内の反射偏光子によって反射されるであろう光と同じ偏光状態の光を吸収し、それゆえ、グレアを緩和する。
【0011】
場合によっては、「二重偏光子コンバイナ」は、偏光源、例えば、TV、コンピュータモニタ、ATM、キオスク、及び同様のもののようなアクティブマトリックス液晶ディスプレイ、並びにデジタル計算機、時計、腕時計、計器パネル、及び同様のものにおいて用いられるセグメント液晶ディスプレイからの透過を遮断し得る。多くの場合、これらの偏光ディスプレイは0、45、又は90度の偏光方向を有する。「二重偏光子コンバイナ」が偏光源からの透過を遮断するという問題を緩和するために、吸収偏光子を上述の3つの好ましい方向のうちの1つ以外の角度に回転させることができる。例えば、吸収偏光子を15度又は35度に回転させることができる。この場合には、3つの好ましい方向のうちの1つを有する偏光源からの光は「二重偏光子コンバイナ」によって透過されることになる。
【0012】
HMDユーザが自分の頭を回転させるいくつかの場合には、吸収偏光子の軸が偏光源の軸とそろったときに、偏光源の画像は二重偏光子コンバイナによって依然として遮断され得る。
【0013】
本開示の光学システムは、ヘッドマウント式ディスプレイ用の画像コンバイナとしての反射偏光子を含む。反射偏光子からの周囲反射を最小限に抑えることによってグレアを低減するために、吸収偏光子が同じコンバイナシステム内に展開される。吸収偏光子が、液晶ディスプレイのような直線偏光源がコンバイナを通して透過するのを遮断することを防止するために、グレアを依然として最小限に抑えつつ偏光源の透過を可能にする弱吸収偏光子が提供される。
【0014】
図1及び図2に概略的に示されるように、第1の画像及び第2の画像を観察者(10)に表示するための光学システム(200)は、異なる第1のディスプレイ(20)及び第2のディスプレイ(30)を含む。いくつかの実施形態では、第1のディスプレイ(20)は電子ディスプレイであり得る。いくつかの他の実施形態では、第2のディスプレイ(30)は電子ディスプレイ(30a)であり得、電子ディスプレイ(30a)は偏光を放出し得る。いくつかの態様では、電子ディスプレイ(20、30a)は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display;LCD)、及び有機発光ダイオード(organic light emitting diode;OLED)ディスプレイのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、電子ディスプレイは、図示のように実質的に平坦若しくは平面状であっても、湾曲していてもよく、又は、互いに対して鈍角に配置された複数の平坦若しくは平面状のパネルを含んでもよい。電子ディスプレイ(30a)は、広告板、又は同様のものであってもよい。いくつかの他の態様では、第2のディスプレイ(30)は現実世界のシーン内の現実世界の物体(30b)である。
【0015】
光学システム(200)は、光学積層体(40)を含む。いくつかの実施形態では、光学積層体(40)は湾曲している。光学積層体(40)は、第1のディスプレイ(20)からの第1の光線(50)を受光し、受光した第1の光線(50)を観察者による観察のために反射するように構成されている。光学積層体は、第2のディスプレイ(30)からの、第1の光線(50)とは異なる、第2の光線(60a、60b)を受光し、受光した第2の光線(60a、60b)を観察者による観察のために透過するように更に構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、光学積層体は、第1のディスプレイ(20)に面した反射偏光子(41)、及び反射偏光子(41)上に配置され、第2のディスプレイ(30)に面した吸収偏光子(42)を含む。吸収偏光子は、光学的に透明な接着剤、又は同様のものなどの、接着層(43)を介して反射偏光子に取り付けられ得る。反射偏光子(41)は、広帯域反射偏光子、又は、ノッチ反射偏光子であってもよい。いくつかの実施形態では、反射偏光子(41)は、高コントラスト反射偏光子であってもよい。いくつかの実施形態では、反射偏光子(41)は、ワイヤグリッド反射偏光子、及び多層ポリマー反射偏光子のうちの1つ以上を含み得る。他の実施形態では、反射偏光子(41)は、多層光学フィルム偏光子であってもよい。
【0017】
反射偏光子(41)は、直交する通過軸(A1)及び遮断軸(B1)を有する。吸収偏光子(42)は、直交する通過軸(A2)及び遮断軸(B2)を有する。いくつかの実施形態では、約400nm~約700nmの範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、反射偏光子(41)は、反射偏光子(41)の遮断軸(B1)に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を反射し、かつ反射偏光子(41)の通過軸(A1)に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を透過する。吸収偏光子(42)は、吸収偏光子(42)の遮断軸(B2)に沿って偏光された入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収し、かつ吸収偏光子(42)の通過軸(A2)に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を透過する。いくつかの実施形態では、吸収偏光子は、吸収偏光子の遮断軸(B2)に沿って偏光された入射光の少なくとも60%かつ最大で85%を吸収する。いくつかの他の実施形態では、吸収偏光子は、吸収偏光子の遮断軸(B2)に沿って偏光された入射光の少なくとも60%かつ最大で80%を吸収する。いくつかの他の実施形態では、吸収偏光子は、吸収偏光子の遮断軸(B2)に沿って偏光された入射光の少なくとも70%かつ最大で85%を吸収する。いくつかの他の実施形態では、吸収偏光子は、吸収偏光子の遮断軸(B2)に沿って偏光された入射光の少なくとも70%かつ最大で80%を吸収する。
【0018】
例えば、図3にグラフを用いて表されるように、約400nm~約700nmの範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、高コントラスト2パケット反射偏光子などの、多層光学フィルムを有する光学システムにおける透過率は、通過軸においては約85%~90%であり、遮断軸においてはほとんど又は全く透過しない。
【0019】
別の例では、図4にグラフを用いて表されるように、約400nm~約700nmの範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、弱吸収偏光子を有する光学システムにおける透過率は、通過軸においては約75%~約85%であり、遮断軸においては約10%~35%である。
【0020】
いくつかの態様では、反射偏光子(41)の遮断軸(B1)と、吸収偏光子(42)の遮断軸(B2)とが、互いに角度(バイアス)(θ)をなす。角度(θ)は、約5度~約40度であり得る。いくつかの実施形態では、反射偏光子(41)の遮断軸(B1)と、吸収偏光子(42)の遮断軸(B2)との間の角度(θ)は、約10度~約30度、又は15度~25度であり得る。
【0021】
例えば、図5は、反射偏光子及び弱吸収偏光子の組み合わせを有する光学システムにおける透過率を示し、反射偏光子の遮断軸(B1)と、吸収偏光子の遮断軸(B2)との間の角度(θ)は、約22.5度である。約400nm~約700nmの範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、吸収偏光子は、吸収偏光子の遮断軸に沿って偏光された入射光の約5%を透過する。遮断軸におけるこのような透過は、観察者が、例えば、偏光を放出する第2のディスプレイ(30a)を見ることを可能にするために十分であり得る。
【0022】
本開示の別の実施形態は、仮想画像(21)を観察者(10)に表示するためのシースルー光学システム(200)に関する。システムは、第1の偏光状態(x)を有する第1の画像(50)を放出するように構成された第1のディスプレイ(20)と、2つの相互に直交する方向(x、y)に沿って湾曲した光学積層体(40)と、を含む。観察者(10)の接眼レンズは、光学積層体(40)と共に、第1のディスプレイ(20)によって放出された画像(50)の拡大された仮想画像(21)を形成する。
【0023】
光学積層体(40)は、放出された第1の画像(50)を受光し、受光した第1の画像(50)を観察者(10)による観察のために反射するように構成されている。観察者は、第1の画像(20)の拡大された仮想画像(21)を観察し、光学積層体(40)を通して現実世界のシーン内の偏光された現実世界の物体(30a)を受光し、見ることができる。いくつかの態様では、所定の波長範囲内の少なくとも1つの波長を有し、実質的な垂直入射方向(71)に沿って伝搬する、光(70)に対して、光学積層体(40)は、第1の偏光状態に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を反射し、かつ直交する第2の偏光状態(y)を有する入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収する。光学積層体(40)が、偏光された現実世界の物体(30a)から光学積層体(40)に入射する光(60a)を中心に、少なくとも180度連続的に回転させられる際に、偏光された現実世界の物体(30a)が観察者によって観察可能なまま留まる。
【0024】
いくつかの態様では、シースルー光学システム(200)の光学積層体(40)は、第1のディスプレイに面した反射偏光子(41)、及び反射偏光子(41)上に配置され、偏光された現実世界の物体(30a)に面した、吸収偏光子(42)を含む。反射偏光子(41)及び吸収偏光子(42)の各々は、直交する通過軸(A1、A2)及び遮断軸(B1、B2)を有する。反射偏光子(41)の遮断軸(B1)は第1の偏光状態に沿って配向され得る。
【0025】
所定の波長範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、反射偏光子(41)は、反射偏光子の遮断軸(B1)に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を反射し、かつ反射偏光子(41)の通過軸(A1)に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を透過する。吸収偏光子(42)は、吸収偏光子の遮断軸(B2)に沿って偏光された入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収し、かつ吸収偏光子の通過軸(A2)に沿って偏光された入射光の少なくとも70%を透過する。反射偏光子(41)の遮断軸(B1)と、吸収偏光子(42)の遮断軸(B2)とが、互いに角度(θ)をなす。角度(θ)は、約5度~約40度であり得る。いくつかの実施形態では、反射偏光子(41)の遮断軸(B1)と、吸収偏光子(42)の遮断軸(B2)との間の角度(θ)は、約10度~約30度、又は15度~25度であり得る。
【0026】
いくつかの態様では、所定の波長範囲は、約400nm~約700nmである。いくつかの態様では、所定の波長範囲は、青色波長範囲、緑色波長範囲、又は赤色波長範囲であり得る。少なくとも1つの波長は、少なくとも1つの青色波長、少なくとも1つの緑色波長、及び少なくとも1つの赤色波長を含み得る。
【0027】
図中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。具体的な実施形態を本明細書において例示し記述したが、様々な代替的及び/又は同等の実施態様により、図示及び記載した具体的な実施形態を、本開示の範囲を逸脱することなく置き換え可能であることが、当業者には理解されるであろう。本出願は、本明細書において説明した具体的な実施形態のあらゆる適合例又は変形例を包含することを意図する。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるものとする。以下に例示的実施形態を示す。
[項目1]
第1の画像及び第2の画像を観察者に表示するための光学システムであって、
異なる第1のディスプレイ及び第2のディスプレイと、
光学積層体であって、
前記第1のディスプレイからの第1の光線を受光し、かつ前記受光した第1の光線を前記観察者による観察のために反射し、
前記第2のディスプレイからの、前記第1の光線とは異なる、第2の光線を受光し、かつ前記受光した第2の光線を前記観察者による観察のために透過するように構成されており、前記光学積層体が、
前記第1のディスプレイに面した反射偏光子と、
前記反射偏光子上に配置され、前記第2のディスプレイに面した、吸収偏光子と、
を備え、前記反射偏光子及び前記吸収偏光子の各々が、直交する通過軸及び遮断軸を備え、これにより、約400nm~約700nmの範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、
前記反射偏光子が、前記反射偏光子の前記遮断軸に沿って偏光された前記入射光の少なくとも70%を反射し、かつ前記反射偏光子の前記通過軸に沿って偏光された前記入射光の少なくとも70%を透過し、
前記吸収偏光子が、前記吸収偏光子の前記遮断軸に沿って偏光された前記入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収し、かつ前記吸収偏光子の前記通過軸に沿って偏光された前記入射光の少なくとも70%を透過する、光学積層体と、を備え、
前記反射偏光子の前記遮断軸と、前記吸収偏光子の前記遮断軸とが、互いに約5度~約40度の角度をなす、光学システム。
[項目2]
前記第2のディスプレイが、現実世界のシーン内の現実世界の物体である、項目1に記載の光学システム。
[項目3]
前記反射偏光子が、ワイヤグリッド反射偏光子及び多層ポリマー反射偏光子のうちの1つ以上を含む、項目1に記載の光学システム。
[項目4]
前記反射偏光子の前記遮断軸と、前記吸収偏光子の前記遮断軸との間の前記角度が、約10度~約30度である、項目1に記載の光学システム。
[項目5]
前記吸収偏光子が、前記吸収偏光子の前記遮断軸に沿って偏光された前記入射光の約5%を透過する、項目1に記載の光学システム。
[項目6]
仮想画像を観察者に表示するためのシースルー光学システムであって、
第1の偏光状態を有する第1の画像を放出するように構成された第1のディスプレイと、
2つの相互に直交する方向に沿って湾曲した光学積層体であって、前記放出された第1の画像を受光し、前記受光した第1の画像を前記観察者による観察のために反射するように構成されており、前記観察者が、前記第1の画像の拡大された仮想画像を観察し、前記観察者が、前記光学積層体を通して現実世界のシーン内の偏光された現実世界の物体を受光し、見ることができ、これにより、所定の波長範囲内の少なくとも1つの波長を有し、実質的な垂直入射方向に沿って伝搬する、光に対して、前記光学積層体が、
前記第1の偏光状態に沿って偏光された前記入射光の少なくとも70%を反射し、
直交する第2の偏光状態を有する前記入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収する、光学積層体と、を備え、
前記光学積層体が、前記偏光された現実世界の物体から前記光学積層体に入射する光を中心に、少なくとも180度連続的に回転させられる際に、前記偏光された現実世界の物体が前記観察者によって観察可能なまま留まる、シースルー光学システム。
[項目7]
前記所定の波長範囲が、約400nm~約700nmである、項目6に記載のシースルー光学システム。
[項目8]
前記所定の波長範囲が、青色波長範囲である、項目6に記載のシースルー光学システム。
[項目9]
前記少なくとも1つの波長が、少なくとも1つの青色波長、少なくとも1つの緑色波長、及び少なくとも1つの赤色波長を含む、項目6に記載のシースルー光学システム。
[項目10]
項目6に記載のシースルー光学システムであって、前記光学積層体が、
前記第1のディスプレイに面した反射偏光子と、
前記反射偏光子上に配置され、前記偏光された現実世界の物体に面した、吸収偏光子とを備え、
前記反射偏光子及び前記吸収偏光子の各々が、直交する通過軸及び遮断軸を備え、これにより、前記所定の波長範囲内の波長を有する実質的な垂直入射光に対して、
前記反射偏光子が、前記反射偏光子の前記遮断軸に沿って偏光された前記入射光の少なくとも70%を反射し、かつ前記反射偏光子の前記通過軸に沿って偏光された前記入射光の少なくとも70%を透過し、
前記吸収偏光子が、前記吸収偏光子の前記遮断軸に沿って偏光された前記入射光の少なくとも50%かつ最大で85%を吸収し、かつ前記吸収偏光子の前記通過軸に沿って偏光された前記入射光の少なくとも70%を透過し、
前記反射偏光子の前記遮断軸と、前記吸収偏光子の前記遮断軸とが、互いに約5度~約40度の角度をなし、
前記反射偏光子の前記遮断軸が、前記第1の偏光状態に沿って配向されている、シースルー光学システム。
図1
図2
図3
図4
図5