(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】炭素環ヌクレオシド類似体
(51)【国際特許分類】
C07D 251/16 20060101AFI20250228BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250228BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20250228BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250228BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20250228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250228BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20250228BHJP
C07F 9/24 20060101ALI20250228BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
C07D251/16 B
A61P35/02
A61P35/00
A61P9/10
A61P13/12
A61P7/00
A61P43/00 105
A61K31/53
C07F9/24 G CSP
A61K31/675
(21)【出願番号】P 2021571533
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2020065621
(87)【国際公開番号】W WO2020245351
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-19
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521523383
【氏名又は名称】ルートヴィヒ-マクシミリアン-ウニヴェルズィテート ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】カレル トーマス
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-016435(JP,B1)
【文献】特公昭52-027077(JP,B1)
【文献】米国特許第04177348(US,A)
【文献】米国特許第04232154(US,A)
【文献】The Oncologist,2013年,18,619-624
【文献】Angew. Chem. Int. Ed.,2019年,58,12984-12987
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
C07F
A61K 31/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
ここで、R
1は、H、修飾もしくは非修飾リン酸基、または、ヒドロキシル保護基であり、
R
2は、H、修飾もしくは非修飾リン酸基、または、ヒドロキシル保護基であり、
R
3は、Hであり、
R
4およびR
5はそれぞれ、Hであり、またはアミノ保護基を形成する、
またはその塩であって、
前記ヒドロキシル保護基が、アシル基、トリチル基、シリル基、および、アルキル-もしくは置換アルキル基から選択され、
前記アミノ保護基が、アシル基、ベンジル基、カルボベンジルオキシ基、トシル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、または、t-ブチルオキシカルボニル基から選択される、
化合物。
【請求項2】
請求項1の化合物であって、各リン酸基は独立に、
以下:
(i)非修飾リン酸基であって、ここで、前記リン酸基が一リン酸、二リン酸または三リン酸基である、非修飾リン酸基、および
(ii)修飾リン酸基であって、ここで、前記修飾リン酸基は、ホスホネート、ホスホルアミデート(phosphoramidate)またはホスホロチオエート基から選択される、修飾リン酸基
から選択される、
化合物。
【請求項3】
R
1がHである、請求項1または2の化合物。
【請求項4】
R
2がHである、請求項1から3のいずれか一項の化合物。
【請求項5】
R
3がHである、請求項1から4のいずれか一項の化合物。
【請求項6】
R
4およびR
5がHである、請求項1から5のいずれか一項の化合物。
【請求項7】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5がそれぞれHである、
請求項1から6のいずれか一項の化合物。
【請求項8】
医薬において使用するための、請求項1から7のいずれか一項の化合物またはその薬学的に許容できる塩
を含む、薬学的組成物。
【請求項9】
過剰増殖性障害の治療のための、請求項1から7のいずれか一項の化合物またはその薬学的に許容できる塩
を含む、薬学的組成物。
【請求項10】
がんの治療のための、請求項1から7のいずれか一項の化合物またはその薬学的に許容できる塩
を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
急性骨髄性白血病(AML)、または骨髄異形成症候群(MDS)の治療のための、請求項1から7のいずれか一項の化合物またはその薬学的に許容できる塩
を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
アテローム性動脈硬化症または腎不全の治療のための、請求項1から7のいずれか一項の化合物またはその薬学的に許容できる塩
を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
核酸のメチル化を阻害するための、請求項1から7のいずれか一項の化合物のインビトロでの使用。
【請求項14】
DNAのメチル化を阻害するための、請求項13の使用。
【請求項15】
エピジェネティック分析のための、請求項13または14の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-アザ-2’-デオキシシチジンおよび5-アザ-シチジンの新規の加水分解的に安定な炭素環ヌクレオシド類似体ならびに低メチル化(hypomethylating)剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン、AzadC)および5-アザ-シチジン(ビダーザ、AzaC)は、エピジェネティック情報を操作することによって代謝拮抗剤として作用するヌクレオシド類似体である[1-5]。DNAにおけるエピジェネティック情報は、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)およびメチル化補助因子としてのSアデノシルメチオニン(SAM)の助けによる、2’-デオキシシチジン(dC)から5メチル-2’-デオキシシチジン(mdC)の形成に関与する[6-7、4]。プロモーター領域におけるdCからmdCへのメチル化は、典型的に、遺伝子の転写サイレンシングと関連する[8-9]。AzadCは、細胞内で、対応する活性の三リン酸に転換され、その後に細胞分裂中にゲノム内に取り込まれるプロドラッグである。AzaCもプロドラッグであり、2’脱酸素化され、その後に、DNA内への取り込みのために、対応する5’-三リン酸に転換される。AzaCはまた、事前に2’-脱酸素化をせずに5’-三リン酸に転換されて、RNA内に取り込まれる。Aza(d)Cの作用機構は、
図1aに示されるように、その求電子C6位の、DNMT活性部位チオール求核剤との反応を含む[10-11]。これにより、SAM補助因子によってメチル化された共有結合中間体が産生される(極めて接近して維持(hold in close proximity))。トリアジンヘテロ環の5位におけるN原子に起因して、最終的なβ除去反応(通常、DNMT酵素からm(d)Cを放出する)は、もはや不可能である。結果として、共有結合のDNA-DNMTまたはRNA-DNMT架橋が形成される。
【0003】
Aza(d)Cの投与の結果として、mdCレベルの大きな減少、すなわち低メチル化効果が観察され、それにより、がん細胞においてサイレンシングされた腫瘍抑制遺伝子の再活性化が生じ[1]、がん細胞を正常な増殖性の細胞に再分化させ、または、細胞死をもたらす。Aza(d)Cは現在のところ、骨髄異形成症候群(MDS)[2]および急性骨髄性白血病(AML)[4]の治療のための薬物として使用されている。臨床的に、それは数サイクルで投与され、各サイクルは1週間の治療および3週間の休止を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Aza(d)Cと関連する問題は、
図1bに示される経路の後に、水溶液中で加水分解することである。この加水分解は、特に長い治療期間にわたり、Aza(d)Cの活性を損なわせる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこの問題を、脱メチル化する(したがって、S-求核剤と反応する)ことができ、一方で、加水分解(O-求核剤との反応)はブロックする、Aza(d)Cの類似体を提供することによって解決した。驚くべきことに、本発明者らは、デオキシリボースの酸素をCH
2基で置換することが、ヘテロ環の反応性に対する大きな遠隔効果(remote effect)を有することを見いだした。これらの類似体、特に、Aza(d)Cの炭素環バージョンは、
図1cに示されるように、DNAメチルトランスフェラーゼによるメチル化を阻害するが、加水分解的に安定である。
【0006】
さらに、本発明は、以下の図面および実施例によって、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン、AzadC)を、その作用機構とともに示す。a)活性部位チオールは、AzadCのC6位と反応する。b)AzadCのC6位と水分子の反応(O-反応性)を伴う(goes in hand with)加水分解性の分解経路。これにより、最終的な塩基欠失および脱塩基部位の形成が生じる。c)炭素環バージョンのcAzadC 1を四角で示す。
【
図2】観察されたC6’-エンド立体構造(a)およびC2’-エンド立体構造(2T1)(b)における分子を示す、炭素環5-アザ-2’-デオキシシチジン(cAzadC 1)の結晶構造。
【
図3】HPLCに基づく安定性測定は、(a)異なるpH値において5-アザ-2’-デオキシシチジン(AzadC)溶液の激しい加水分解性の分解を示し、一方で、(b)炭素環化合物cAzadC 1は、全ての3つのpH値において安定であった。(a)において挿入された表は、AzadCに関するt1=10分およびt2=20分の間のクロマトグラムを示す。AzadCシグナルを赤で示す。
【
図4】UHPLC-MS2によって得られた、炭素環5-アザ-2’-デオキシシチジンによって処置された(cAzadC 1)マウス胚性幹細胞(mESC)のDNA修飾の定量化データを示す。それぞれの条件に関して、3つの生物学的レプリケートを技術的トリプリケートで測定した。それぞれの技術的レプリケートについて、0.5μgのDNAを消化した。棒グラフは平均を表わし、エラーバーは標準偏差を表わす。LLOQは定量化の下限を示す。
【
図5】デシタビン1の中性溶液(左)対炭素環式(carbacyclic)化合物cAzaC20(右)のHPLC研究。化合物の100mM溶液を純水中で維持し、t=0時間、1.5時間、3時間、4.5時間、6時間、24時間、6日において試験した。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の態様は、式Iの化合物:
ここで、R
1は、H、遊離もしくは保護された修飾もしくは非修飾リン酸基、または、ヒドロキシル保護基であり、
R
2は、H、遊離もしくは保護された修飾もしくは非修飾リン酸基、または、ヒドロキシル保護基であり、
R
3は、H、F、CH
3、CH
2F、CHF
2、CF
3、OHまたはOR
6であり、ここでR
6は、ヒドロキシル保護基であり、および
R
4およびR
5は、Hであり、またはアミノ保護基を形成する、
またはその塩に関する。
【0009】
式Iの化合物において、R1は、H、遊離もしくは保護された修飾もしくは非修飾リン酸基、例えば一リン酸、二リン酸または三リン酸基、または、ヒドロキシル保護基から選択されてよい。
【0010】
用語「リン酸基」は、非修飾リン酸基、例えば、非修飾一リン酸、非修飾二リン酸もしくは非修飾三リン酸基、または、修飾リン酸基、例えば、修飾一リン酸、修飾二リン酸もしくは修飾三リン酸基を含み、ここで、1つまたは複数の酸素原子は、炭素、硫黄および/または窒素原子によって置換される。修飾リン酸基の例は、ホスホネート、ホスホルアミデート(phosphoramidate)またはホスホロチオエート基である。用語「リン酸基」はまた、遊離のリン酸基および保護されたリン酸基、例えば、モノエステルおよびジエステルを含むリン酸エステル、ならびに、モノアミデート、ジアミデートおよびアミデートエステルを含むアミデートも含む。保護されたリン酸およびホスホネート基の詳細な概説は、[28]および[29]に見られ、その内容は参照によって本明細書中に援用される。したがって、医薬用途において、R1は、細胞内での切断の際にリン酸、二リン酸または三リン酸基を遊離させる保護されたリン酸、二リン酸または三リン酸基であってよい(プロドラッグ構想)。
【0011】
ヒドロキシル保護基は、当技術分野、特にヌクレオシド化学の分野で知られており、限定されないが、アセチルもしくはベンゾイルのようなアシル基、ベンジル基、トリチル、メトキシトリチルもしくはジメトキシトリチルのようなトリチル基、トリメチルシリル、t-ブチル-ジメチルシリルもしくはトリ-i-プロピルシリル(propysilyl)のようなシリル基、または、メチル、エトキシエチルもしくはβ-メトキシエトキシメチルのようなアルキル-もしくは置換アルキル基を含む。
【0012】
R2は、上述のように、H、非修飾もしくは修飾の遊離もしくは保護されたリン酸基、例えば、一リン酸、二リン酸もしくは三リン酸基、または、上述のヒドロキシル保護基から選択されてよい。したがって、医薬用途において、R2は、細胞内での切断の際にリン酸、二リン酸または三リン酸基を遊離させる保護されたリン酸、二リン酸または三リン酸基であってよい(プロドラッグ構想)。
【0013】
特定の実施態様では、R3はHであってよい。そのような場合、式I内の5員炭素環は、環の1’位における酸素原子がCH2基によって置換されているデオキシリボースと考えることができる。さらなる実施態様では、R3はOHまたはOR6であってよく、ここでR6は上述のヒドロキシル保護基である。これらの実施態様では、式Iにおける5員炭素環は、環の1’位における酸素原子がCH2基によって置換されているリボースと考えられ得る。R3はまた、CH3、CH2F、CHF2、CF3またはFであってもよい。これらの実施態様では、式Iにおける5員炭素環は、環の1’位における酸素原子がCH2基によって置換されているリボース類似体と考えられ得る。
【0014】
R4およびR5はそれぞれHであってよく、したがって一級アミノ基NH2を提供し、またはアミノ保護基を形成してよく、例えばここで、H原子の一方または両方は、保護基によって置換される。アミノ保護基は、当技術分野、特にヌクレオシド化学の分野において知られており、限定されないが、アセチルもしくはベンゾイルのようなアシル基、ベンジル基、カルボベンジルオキシ基、トシル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基またはt-ブチルオキシカルボニル基を含む。
【0015】
特定の実施態様では、R1はHである。
【0016】
特定の実施態様では、R2は、H、または、非修飾もしくは修飾リン酸基、例えば一リン酸、二リン酸または三リン酸基であり、遊離または保護された一リン酸、二リン酸または三リン酸基を含む。
【0017】
特定の実施態様では、R3はHまたはOHである。
【0018】
ある特定の実施態様では、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれHであり、または、R1、R2、R4、およびR5はそれぞれHであってR3はOHまたはOR6である。特に特定の実施態様では、R1、R2、R3、R4およびR5はHである。この化合物はAzadC(デシタビン)の炭素環類似体であり、それは、(上記に示したように)メチルトランスフェラーゼ、特にDNAメチルトランスフェラーゼに対する阻害活性を維持しながら、驚くことに高い加水分解的安定性を有する。さらに特に特定の実施態様では、R1、R2、R4およびR5はHであってR3はOHである。この化合物は、AzaC(ビダーザ)の炭素環類似体である。
【0019】
さらに特定の実施態様では、本発明はまた、AzadCおよびAzaCのプロドラッグに関し、特に、R1および/またはR2がHとは異なる化合物に関する。
【0020】
本発明はまた、式Iの化合物の塩、特に薬学的に許容できる塩も包含する。本発明の化合物は、アミノ基および/またはリン酸基またはそれと同様の基の存在によって酸性塩および/または塩基性塩を形成することが可能である。酸付加塩は、無機酸および有機酸と形成され得て、限定されないが、酢酸塩、安息香酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩(tosylate)およびトリフルオロ酢酸塩を含む。塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基と形成され得て、限定されないが、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩または一級、二級および三級アミンに由来する塩を含む。
【0021】
本発明の化合物は、エピジェネティック修飾5-メチル-2’-デオキシシチジン(mdC)のレベルを減少させることによって代謝拮抗剤として作用する。それは、増殖性細胞のゲノムおよび/またはRNA内に取り込まれ得て、DNA-および/またはRNA-メチルトランスフェラーゼを阻害し、DNA中のmdCおよびRNA中のmCの減少をもたらす。DNA中のmdC(プロモーター内の転写サイレンサーである)の損失は、腫瘍抑制遺伝子を含む遺伝子の再活性化をもたらし、それにより、抗-過剰増殖性作用が誘発される。
【0022】
したがって、さらなる発明のさらなる一態様は、医薬、例えば獣医薬またはヒト医薬における使用のための、上述の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩に関する。
【0023】
特定の実施態様では、本発明の化合物は、悪性または非悪性の過剰増殖性障害を含む過剰増殖性障害の治療のために用いられる。用語「過剰増殖性障害」は、生物内の細胞、組織および/または臓器の機能障害性の増殖増大に起因する障害、それと関連する障害、および/またはそれを伴う障害に関する。
【0024】
したがって、本発明はまた、過剰増殖性障害を治療する方法であって、それを必要とする対象、特にヒト対象に、治療的に効果的な用量の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を投与するステップを含む方法に関する。
【0025】
特定の実施態様では、本発明の化合物は、がんの治療のために用いられる。特定の実施態様では、本発明の化合物は、白血病、例えば急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群(MDS)の治療のために用いられ、それには、以前に治療された、または治療されていない、一次または二次MDS、例えば、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、芽球増加を伴う不応性貧血、移行期(transformation)における芽球増加を伴う不応性貧血および慢性骨髄単球性白血病、ならびに、中等1、中等2および高リスクのMDSが含まれる。
【0026】
さらなる実施態様では、本発明の化合物は、デシタビンに関して報告された結果に基づき[26]、腎不全の治療のために用いられ得る。特定の実施態様では、本発明の化合物は、デシタビンがアテローム性動脈硬化症の病変形成を防ぎ、マクロファージによる炎症性サイトカインの産生を減少させる[27]という観察に基づき、アテローム性動脈硬化症の治療に用いられ得る。
【0027】
式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩は、活性剤および薬理学的に許容できる担体を含んでいる薬学的組成物として、それを必要とする対象に投与され得る。組成物は、任意の適切な方法で、例えば経口、非経口、吸入および/または皮膚適用によって投与され得る。担体は、任意の適切な製剤担体であってよい。式Iの化合物は、治療される対象および障害に基づき熟練した専門家によって決定され得る治療的に効果的な用量で投与される。
【0028】
医薬用途において、組成物は、固体剤形、例えば錠剤、カプセルなど、または、液体剤形、例えば溶液、エマルション、懸濁液などの形態であってよい。
【0029】
式Iの化合物は、1回または数回の治療サイクルで投与されてよく、各治療サイクルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7または10日を含んでよい。
【0030】
式Iの化合物は、単剤療法として、または、さらなる薬物、特に上述の過剰増殖性障害の治療に適切な薬物と組み合わせて投与されてよい。特定の実施態様では、式Iの化合物は、式Iとは異なる抗-がん剤と共に併用療法として投与され得る。
【0031】
さらに、式Iの化合物はまた、非医療用途、例えば一般に、基礎研究、診断および/または薬物スクリーニングの分野においても有用である。したがって、特定の実施態様では、本発明は、DNAおよびRNAを含む核酸のメチル化を阻害するための、特にDNAのメチル化を阻害するための、より特にゲノムDNAのメチル化を阻害するための、式Iの化合物のインビトロでの使用に関する。したがって、その化合物は、細胞、例えば真核生物細胞、例えば、哺乳類およびヒト細胞を含む動物細胞における、ゲノム分析、特にエピジェネティック分析に有用である。
【0032】
式Iの化合物の調製に関する一般スキームを以下のスキームに示す。合成は、DNA損傷類似体を合成するために以前に用いられた[12-15]、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)によって保護されたアミノシクロペンタン誘導体2によって開始する。化合物2を、最初にベンジル保護して3にして、Boc脱保護して4にして、それから、カルビマゾール(carbimidazole)5(イソメチル尿素(isomethylurea)6から2ステップで、水酸化カリウムによる遊離塩基7の生成およびカルボニルジイミダゾールと7の反応の後に調製される)と反応させた。これにより、カルバモイル尿素-シクロペンタンヌクレオシド類似体8が提供される。続いて、トリアジン塩基9への環化をオルトギ酸トリエチルによって行なった。メタノール中でのNH3との9の反応およびジクロロメタン中でのBCl3によるベンジル基の脱保護によって、最終化合物cAzadC 1が遊離ヌクレオシドとして提供された。
【0033】
【0034】
高温メタノールによる化合物cAzadC 1の再結晶によって無色針状物が得られ、それにより、
図2に示される結晶構造を解明することができた。cAzadC 1が結晶において2つの異なるシクロペンタン立体構造で存在することが観察されたことは興味深い。これらの立体構造の1つは、DNAにおける2’-デオキシヌクレオシドに典型的であり、cAzadC 1ヌクレオシドが、正しいDNA型の立体構造をとることができること、および、リン酸化されてゲノム内へ組み込まれる潜在性を有することを示す。
【0035】
式Iの化合物の調製に関する別の一般スキームを以下に示し、アザシチジン(ビダーザ)cAzaCの炭素環式(carbacyclic)バージョン(20)の合成を示す:
【0036】
【0037】
式Iの化合物のプロドラッグの調製に関する一般スキームを以下に示し、cAzaC(20)の5’ホスホロアミデート(phoshoroamidate)プロドラッグ24の合成を示す:
【0038】
【実施例】
【0039】
実施例1-cAzadC(1)に関する合成手順
Tert.-ブチル-N-[(1R,3S,4R)-3-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]-カルバメート(2)
【0040】
化合物2を、以前に記載されたように[1]、tert-ブチル-N-((1S,2R,4R,5R)-4-((tert-ブチル-ジメチルシリルオキシ)メチル)-6-オキサ-ビシクロ-[3.1.0]-ヘキサ-2-イル)-カルバメートから合成した。
【0041】
Tert.-ブチル-N-[(1R,3S,4R)-3-ベンジルオキシ-4-(ベンジルオキシメチル)-シクロペンチル]-カルバメート(3)
【0042】
Bocによって保護された2(3.107g、13.43mmol、1.0eq.)を、乾燥DMF(75mL)中に溶解させた。溶液を0℃まで冷却し、NaH(鉱油中、60%分散、1.182g、29.55mmol、2.2eq.)を3ポーションで添加した。0℃で15分後、ベンジルブロミド(4.00mL、33.58mmol、2.5eq.)を滴下した。反応混合物を0℃で1.5時間攪拌し、室温でさらに2時間攪拌した。CH2Cl2(30mL)を用いて反応混合物を希釈し、反応を飽和NaHCO3(30mL)でクエンチングさせた。混合物をCH2Cl2(500mL)で抽出した。有機相を飽和NaHCO3(1×400mL、2×100mL)で3回洗浄し、Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を真空中で除去した。粗生成物を、段階的勾配iHex/EtOAc(9:1→7:1→4:1)によってシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製し、生成物3を無色固体(3.39g、8.24mmol、61%)として得た。
【0043】
Rf=0.67(iHex/EtOAc=2:1)
Mp=74-76°C
HRMS[ESI+]:[C25H33NO4Na]+、[M+Na+]+ 計算値:434.2292、実測値:434.2299
1H-NMR(599 MHz,CDCl3):δ/ppm=7.39-7.26(m,10H,Ar-H),4.76(s,1H,NH),4.53-4.37(m,4H,C7-HおよびC8-H),4.18-4.08(m,1H,C1-H),3.96-3.87(m,1H,C3-H),3.53-3.41(m,2H,C5-H),2.36-2.25(m,2H,C6-Ha,C4-H),2.11-2.05(m,1H,C2-Ha),1.77-1.68(m,1H,C2-Hb),1.43(s,9H,C2’-H),1.29-1.20(m,1H,C6-Hb)。
13C-NMR(151 MHz,CDCl3):δ/ppm=155.5(C1’),138.60,138.23,128.36,128.28,127.59,127.56,127.42(C-Ar),81.0(C3),79.2(C2’),73.3(C8),71.9(C5),71.3(C7),50.4(C1),44.9(C4),39.6(C2),35.0(C6),28.6(C2’)。
FTIR(ATR):ν/cm-1=3339(w),2973(w),2929(w),2858(w),1692(m),1496(m),1453(m),1390(w),1364(m),1274(m),1247(m),1166(s),1091(s),1067(s),1027(m),1012(m)。
【0044】
(1R,3S,4R)-1-アミノ-3-ベンジルオキシ-4-(ベンジルオキシメチル)シクロペンタン(4)
【0045】
乾燥CH2Cl2(28mL)中の、Bocによって保護されたアミン3(3.351g、8.14mmol、1.0eq.)およびトリフルオロ酢酸(12mL、30%(v/v))の溶液を、室温で1時間攪拌した。溶媒を真空中で除去した後、残渣を飽和Na2CO3(100mL)中に再懸濁させて、10分間攪拌した。混合物をEtOAc(3×150mL)で抽出して、合わせた有機相をNa2SO4上で乾燥させた。溶媒を真空中で除去し、遊離アミン4を粘性の褐色油状物として取得し、それを、O2に対する不安定さのため、さらなる精製をせずに用いた。
【0046】
精製された4の分析データ:
HRMS[ESI+]:[C23H29N4O4Na]+、[M+Na+]+ 計算値:312.1958、実測値:312.1955
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=7.38-7.20(m,10H,C-Ar),4.57-4.36(m,4H,C7,C8),3.95-3.85(m,1H,C1),3.62-3.50(m,1H,C3),3.50-3.39(m,2H,C5),2.41-2.28(m,1H,C4),2.28-2.13(m,1H,C6-Ha),2.13-1.96(m,3H,NH2,C2-Ha),1.65-1.50(m,1H,C2-Hb),1.19-1,.08(m,1H,C6-Ha)、
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=138.8,138.4,128.5,128.5,127.79,127.75,127.7,127.6(C-Ar),81.82(C3),73.23(C7),72.58(C5),71.10(C8),51.40(C1),45.63(C4),42.07(C2),38.08(C6)。
【0047】
2-メチル-1-(1-イミダゾイルカルボニル)-イソ尿素(5)
【0048】
-15℃のEt2O:H2O(39:1)中、O-メチルイソ尿素塩酸塩6(5.00g、45.65mmol、1.0eq.)の溶液に、KOH粉末(51.22g、912.96mmol、20.0eq.)を一定の攪拌下で少しずつ(portion wise)添加した。30分後、混合物を濾過し、残渣を氷冷Et2O(3×50mL)で洗浄した。合わせた有機相を真空中で20mLに濃縮した。-20℃に冷却して沈殿を生じさせた。N2流の下での真空濾過によって、Oメチルイソ尿素7を無色ワックスとして取得した(1.759g、23.74mmol、52%)。乾燥THF(35mL)中、7(1.24g、16.74mmol、1.0eq.)およびカルボニルジイミダゾール(2.90g、17.91mmol、1.07eq.)の溶液を、室温で3時間攪拌した。1時間後、無色沈殿物が観察された。反応混合物を真空中で3mLに濃縮し、濾過した。残渣を氷冷THF(2×3mL)で洗浄し、合わせた有機相を凍結乾燥して、無色固体5を得た(1.946g、11.57mmol、69%)。
【0049】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=8.60(br s,1H,N-H),8.35(s,1H,Ar-H),7.58(s,1H,Ar-H),7.04(s,1H,Ar-H),6.04(br s,1H,N-H),3.96(s,3H,C2-H)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=165.7(C1),157.3(C3),137.5(Ar),130.0(Ar),117.2(Ar),55.3(C2)。
【0050】
1-[(1’R,3’S,4’R)-3’-ベンジルオキシ-4’-(ベンジルオキシメチル)-シクロペンチル]-メチルイソビウレット(8)
【0051】
粗生成物4を乾燥アセトニトリル(75mL)中に溶解させて、カルボニルイミダゾール5(1.506g、8.96mmol、1.1eq.)を添加した。混合物を2時間還流させた。溶媒を真空中で除去した。粗生成物を、iHex/EtoAc(2:1→1:1)の段階的勾配によってシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して、メチルイソビウレット8を黄色油状物として得た(2.613g、6.35mmol、78%)。
【0052】
Rf=0.51(DCM/MeOH=19:1)
HRMS[ESI+]:[C23H29N4O4Na]+、[M+Na+]+ 計算値:434.2050、実測値:434.2049
1H-NMR(599MHz,CDCl3):δ/ppm=7.35-7.16(m,10H,Ar-H),5.42(d,3J1’,N1=7.8Hz,1H,N1-H),4.50-4.34(m,4H,C7’-Ha,b,C8’-Ha,b),4.33-4.16(m,1H,C1’-H),3.93-3.81(m,1H,C3’-H),3.62(s,3H,C6-H),3.43-3.31(m,2H,C5’-H),2.34-2.18(m,2H,C6’-Ha,C4’-H),2.06(ddd,2J2’a,2’b=13,0Hz,3J2’a,1’/3’=6,9Hz,3J2’a,1’/3’=4,6Hz,1H,C2’-Ha),1.73(ddd,2J2’a,2b’ = 13.0Hz,3J2’b,1’/3’=7.0Hz,3J2’b,1’/4’=7.0Hz,1H,C2’-Hb),1.28-1.11(m,1H,C6’-Hb)。
13C-NMR(151MHz,CDCl3):δ/ppm=163.8(C2),162.3(C4),138.9(CAr),138.5(CAr),128.51(CAr),128.41(CAr),127.76(CAr),127.74(CAr),127.70(CAr),127.56(CAr),81.1(C3’),73.3(C7’),71.9(C5’),71.2(C8’),53.8(C6),49.5(C1’),45.0(C4’),39.5(C2’),35.0(C6’)。
【0053】
4-エトキシ-1-[(1’R,3’S,4’R)-3’-ベンジルオキシ-4’-(ベンジルオキシメチル)-シクロペンチル]-1H-[1、3、5]-トリアジン-2-オン(9a)および
4-メトキシ-1-[(1’R,3’S,4’R)-3’-ベンジルオキシ-4’-(ベンジルオキシメチル)-シクロペンチル]-1H-[1,3,5]-トリアジン-2-オン(9b)
【0054】
トリフルオロ酢酸(75μL)を、オルトギ酸トリエチル(60mL)中、8の溶液(2.613g、6.35mmol、1.0eq)に添加した。混合物を3時間還流させた。溶媒を真空中で除去した。MeOHを用いて残渣を1回、共蒸発させて(co-evaporated)、粗生成物を、iHex/EtOAc(2:1→1:1→1:2)の段階的勾配によってシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して、9a(1.774g、4.07mmol、64%、無色固体)および9b(268.0mg、0,64mmol、10%、無色油状物)を得た。
【0055】
9a:
Rf=0.71(iHex/EtOAc,1:3)
HRMS[ESI+]:[C25H30N3O4H]+、[M+H+]+ 計算値:436.2232、実測値:436.2231。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=8.23(s,1H,C6-H),7.38-7.24(m,10H,Ar-H),5.07-4.89(m,1H,C1’-H),4.56-4.39(m,6H,C7’-Ha,b,C8’-Ha,b,C7-Ha,b),4.07-3.08(m,1H,C3’-H),3.61-3.46(m,2H,C5’-Ha,b),2.52-2.36(m,2H,C6’-Ha,C4’-H),2.28(ddd,1H,2J2’a,2’b=13,3Hz,3J=7,6Hz,3J=2,7Hz,C2’-Ha),2.11(ddd,1H,2J2’a,2’b=13.3Hz,3J=10.0Hz,3J=6.3Hz,C2’-Hb),1.84-1.68(m,1H,C6’-Hb),1.40(t,3H,3J8,7=7,1Hz,C8-H)、
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=169.3(C4),158.4(C6),155.0(C2),138.2(CAr),138.1(CAr),128.6(CAr),128.6(CAr),127.93(CAr),127.85(CAr),127.82(CAr),80.4(C3’),73.4(C7’/8’),71.26(C7’/8’),71.25(C5’),65.1(C7),56.8(C1’),44.9(C4’),36.9(C2’),32.6(C6’),14.2(C8)。
【0056】
9b:
Rf=0.63(iHex/EtOAc,1:3)
HRMS[ESI+]:[C24H28N3O4]+、[M+H+]+ 計算値:422.2074、実測値:422.2075。
1H-NMR(599MHz,CDCl3):δ/ppm==8.23(s,1H,C6-H),7.38-7.25(m,10H,Ar-H),5.04-4.93(m,1H,C1’-H),4.57-4.43(m,6H,C7’-Ha,b,C8’-Ha,b),4.09-3.98(m,4H,C3’-H,C7-H),3.60 -3.50(m,2H,C5’-Ha,b),2.50-2.39(m,2H,C6’-Ha,C4’-H),2.28(ddd,1H,2J2’a,2’b=13,1 Hz,3J=7,4Hz,3J=2,7Hz,C2’-Ha),2.11(ddd,1H,2J2’a,2’b=13.1Hz,3J=10.1Hz,3J=6.3Hz,C2’-Hb),1.80-1.68(m,1H,C6’-Hb)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=169.9(C4),158.5(C6),155.0(C2),138.3(CAr),138,0 (CAr),128.63(CAr),128.57(CAr),127.93(CAr),127.84(CAr),127.82(CAr),80.4(C3’),73.5(C7’/8’),71.3(C7’/8’),56.9(C1’),56.0(C7),44.9(C4’),36.9(C2’),32.6(C6’)。
【0057】
4-アミノ-1-[(1’R,3’S,4’R)-3’-ベンジルオキシ-4’-(ベンジルオキシメチル)-シクロペンチル]-1H-[1,3,5]トリアジン-2-オン(10)
【0058】
エトキシトリアジン9a(1.630g、3.74mmol、1.0eq.)を、メタノール溶解性NH3(MeOH中、7N、60mL)中に溶解させて、室温で3時間攪拌した。混合物をH2O(340mL)で希釈して無色沈殿物を取得し、それをEtOAc(3×200mL)で抽出した。有機相を合わせて乾燥させて、溶媒を真空中で除去することによって、ベンジルによって保護されたcAzadC 10(1.478g、3.63mmol、97%)を無色泡状物として取得した。10の合成は、メトキシトリアジン9bでスタートして同じ手順に従っても成功した。
【0059】
Rf=0.50(CH2Cl2/MeOH,9:1)
HRMS[ESI+]:[C23H27N4O3]+、[M+H+]+ 計算値:407.2078、実測値:407.2081。
1H-NMR(599MHz,CDCl3):δ/ppm=8.01(s,1H,C6-H),7.35-7.23(m,10H,Ar-H),5.78(s,2H,NH),4.92-4.76(m,4H,C7’-HおよびC8’-H),4.59-4.46(m,1H,C1’-H),4.07-3.95(m,1H,C3’-H),3.55-3.45(m,2H,C5’-H),2.44-2.28(m,2H,C6’-Ha,C4’-H),2.24-2.16(m,1H,C2’-Ha),2.14-2.05(m,1H,C2’-Hb),1.78-1.67(m,1H,C6’-Hb)。
13C-NMR(151MHz,CDCl3):δ/ppm=165.7(C4),157.1(C6),154.2(C2),138.3,138.3,128.6,128.5,127.84,127.78(C-Ar),80.4(C3’),73.4(C8’),71.4(C5’),71.2(C8’),56.7(C1’),44.9(C4’),36.8(C2’),32.5(C6’)。
【0060】
4-アミノ-1-[(1’R,3’S,4’R)-3’-ヒドロキシ-4’-(ヒドロキシメチル)-シクロペンチル]-1H-[1,3,5]トリアジン-2-オン(cAzadC,1)
【0061】
CH2Cl2(100mL)中、ベンジルによって保護された10の溶液(1.478g、3.63mmol、1.0eq)を-78℃に冷却して、BCl3(DCM中、1M、12.7mL、12.7mmol、3.5eq.)を滴下した。混合物を-78℃で1時間攪拌して、室温でさらに2時間攪拌した。反応を、一定の攪拌下でMeOH(85mL)を添加することによってクエンチングさせた。溶媒を真空中で除去した。粗生成物を、段階的勾配CH2Cl2/MeOH(9:1→7:3)によってシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して、cAzadCを得た(1、0.740g、3.27mmol、90%)。高温MeOHによる再結晶化により、57% cAzadC(1,465.3mg、2.06mmol)を無色の針状単結晶として取得した。
【0062】
Rf=0.1(CH2Cl2/MeOH,9:1)
Mp.:198-200°C
HRMS[ESI+]:[C9H15N4O3]+、[M+H+]+計算値:227,1138、実測値:227,1139。
1H-NMR(400MHz,D2O):δ/ppm=8.29(s,1H,C6-H),4.90-4.62(m,1H,C1’-H,D2Oシグナルと重複),4.29-4.16(m,1H,C3’-H),3.73(dd,2J5’a,5’b=11.2Hz,3J5’a,4’=5.7Hz,1H,C5’a-H),3.62(dd,2J5’a,5’b=11.2Hz,3J5’b,4’=6.8Hz,1H,C5’b-H),2.41-2.29(m,1H,C6’a-H),2.28-2.18(m,1H,C2’a-H),2.17-2.02(m,2H,C2’b-H,C4’b-H),1.77-1.55(m,1H,C6’b-H)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=165.5(C4),158.5(C6),156.4(C2),72.2(C3’),62.8(C5’),56.2(C1’),48.11(C4’),38.0(C2’),32.0(C6’)。
FTIR(ATR):ν/cm-1=3194(m),1653(m),1540(s),1437(s),1278(s),1036(s)。
【0063】
実施例2-cAzadCのX線結晶構造解析
cAzadC単結晶を、X線結晶構造解析によって解析した。表1は、結晶における2つの異なるシクロペンタン立体構造における、cAzadC 1の解明された構造を示す。一方の立体構造異性体はC6’-エンド(P=88.2°、max=47.8°)立体構造をとり(
図2a)、2つめは、C2’-エンド-C3’-エキソ(South、P=150.8°、max=45.4°)立体構造異性体として存在する(
図2b)。後者の立体構造は、DNA中の2’-デオキシヌクレオシドに関する典型である。
【0064】
さらなる図を、プログラムMercury 3.5.1.(Cambridge Crystallographic Data Center)を用いて作成した。そのデータは、CCDC 1910952の下で寄託されている。
【0065】
【0066】
実施例3-加水分解的安定性に関する試験
我々は次に、製剤AzadCに対する直接比較において、cAzadC 1の加水分解的安定性について研究した。
【0067】
両方のヌクレオシドを、水性KH2PO4バッファー(100mM、pH=7.4、5.5および8.5)中に100mM濃度で溶解させた。溶液をHPLCによって直ちに分析し(t=0h)、その後のHPLC分析を1.5時間ごとに、または示された時点で行なった。固定相として、EC 250/4 NUCLEOSIL 120-3 C18(Macherey-Nagel)クロマトグラフィーカラムを用いた。移動相は、流速0.5mL/分の水(バッファーA)およびアセトニトリル(バッファーB)からなり、以下のとおりであった:0→25分、0→5%バッファーB;25分→28分、5%→80%;28分→38分、80%;38分→43分 80%→0%;43分→45分、0%。
【0068】
AzadCに関する1回の処置サイクルは4週にわたり行われるので、我々は、半サイクル(14日)に関する時点での安定性を測定することにした。溶液を室温で維持した後にNMRスペクトルを測定した。
【0069】
腫瘍細胞はしばしば酸性の微小環境を提供するので[16]、弱酸性pHでの安定性が特に参考になる。
図3に示されるデータから明らかなように、製剤AzadCは、この14日以内で非常に分解された。重要なことに、pH=5.5およびpH=8.5では、無傷のAzadCは、もはやほとんど検出すらされなかった。生理学的pH(7.4)では、AzadCは14日後もまだ存在したが、分解レベルは著しかった。
【0070】
これらの結果と対照的に、cAzadC 1については、驚くべきことに、pH=5.5を含む全ての試験されたpH値において分解は観察されなかった。この結果から、単純にOをCH2に交換することによって、水との反応が止まるようにトリアジン環の特性が変化すると考えられる強い遠隔解除効果(remote disarming effect)が生じるという驚くべき知見が導かれた。
【0071】
実施例4-生物学的機能に関する試験
cAzadC処理に関するmESCの細胞培養
フィーダー非依存性wt J1(129S4/SvJae株)[24]細胞を、以前に説明されたとおりに[25]、血清およびLIFの存在下で培養した。2i/L培地中、ゼラチン化プレート上にルーチン的に維持した。プライミング実験のために、2i培養物を、適切な場合は、上記のとおりFBSおよびLIFで補充されているが阻害剤を含まないDMEM中で継代培養した。薬物処理のために、2iを培地から除去することによって、細胞をプライミング状態へ移行させた。6ウェルプレート(VWR)内で、FBSおよびLIFで補充されたDMEM中で細胞を2日インキュベートした。分裂後、2×105細胞を6ウェルプレート培養皿へ移し、1μM(0.01%DMSO中)または5μMのcAzadC(0.05%DMSO中)のいずれかで補充し、72時間処理した。培地を除去して細胞をDPBSで洗浄した後に、以前に文献において記載されたように[18]、RLT+バッファーを用いて直接溶解させた。
【0072】
gDNA単離、完全酵素消化およびUHPLC-MS
2
以前に記載されたように[18]、gDNAを単離した。gDNAを完全酵素消化に直接供して、以前の文献において記載されたように[19]、UHPLC-MS2を用いて分析した。純粋cAzadCを連続的に希釈することによって外部検量線を作成し[20pmol、10pmol、5pmol、2.5pmol、1.25pmol、0.625pmol、0.3125pmol]、各測定の前に技術的トリプリケートで測定した。線形回帰をOriginPro 2016Gによって行なった。
【0073】
結果
我々は、実施例3に示される解除効果が生物学的機能に影響するかどうか試験した。この目的のために我々は、ナイーブからプライミング状態にかけてmdCレベルが増加するので[17]、血清/Lif中でプライミングされたマウス胚性幹細胞(mESC)をモデル系として用いた。我々は、48時間プライミングされたmESCに、2つの異なる濃度(1μMおよび5μM)でcAzadC 1を添加し、cAzadC 1の存在下でプライミング状態の下でさらに72時間、細胞をさらに増殖させた。72時間後、細胞を回収してDNAを単離し、我々が記載したプロトコル[18]を用いてDNAをヌクレオシドレベルまで消化した。
【0074】
mdCのレベルを最終的に、同位体希釈UHPLC-MS2を用いて正確に定量化した。この目的を達成するために、同位体的に標識されたヌクレオシド標準を正確な定量化のために添加した(spiked-in)[19、18]。mdCに加えて、5-ヒドロキシメチル-2’-デオキシシチジン(hmdC)(TET酵素の作用によってmdCから形成される[20-21])のレベルを定量化した。mESCにおいて、hmdCの絶対レベルは、mdCレベルよりも10倍以上低い[20、22]。その結果、mdCが相当減少した後でさえ、hmdCレベルを一定に維持するのに十分なmdCが存在するはずである。したがって、hmdCレベルが影響を受けたかどうか、および、どれくらい多く影響を受けたかという疑問は、エピジェネティックの再プログラム化がどのように編成されるのかについて情報を与え得る。
【0075】
mdCおよびhmdCの定量化と並行して、我々はまた、cAzadC 1自体がどの程度、mESCのゲノム内に取り込まれるのか定量化した。処理された細胞のゲノム中のAzadCの検出は、NaBH4によるDNAの処理後にのみ可能である。NaBH4の適用は、C(5)=C(6)二重結合を還元し、その定量化が可能になるように化合物を安定化させる[23、19]。喜ばしいことに、我々は、cAzadC 1の安定化によって、この前処理をせずにその定量化が可能になることを見いだした。また、用いた酵素消化プロトコルによって、多量のcAzadC 1の存在下でさえゲノムDNA(gDNA)を消化することが可能であることも見いだした。合わせると、外部検量線を用いたUHPLC-MS2によるcAzadC 1の定量化が、標準的およびエピジェネティック基準の定量化と並行して可能であった。
【0076】
1μMのcAzadC 1濃度において、5×10
-4 cAzadC/dNのcAzadC 1レベルが検出された(
図4a)。これは要するに、300万近いcAzadCヌクレオチドがゲノム内に組み込まれたということになる。より高い濃度(5μMのcAzadC 1)では、レベルは3倍増加して1.7×10
-3 cAzadC/dNになり、その結果、ゲノムあたり800万を超えるcAzadCが組み込まれた。1μMで適用した場合に1.2×10
-3 AzadC/dNに達するAzadCの組み込みと比較して[19]、cAzadC 1のレベルはこのレベルの約3分の1である。データは、AzadCの炭素環バージョン(cAzadC 1)が取り込まれること、および、ゲノムにおいて5μM濃度で最終的に匹敵するレベルに到達することを明らかに示す。
【0077】
重要なことに、培地中、1MのcAzadCでmESCを72時間曝露した後に、mdC値の30%近い減少が検出された(
図4b)。培地中5Mの濃度では、mdCレベルは、元の値の約50%にさらに低下した。50%への低減は、AzadCに関しても観察される。しかしながらここで、50%減少は、より早く(24時間)、より低いAzadC濃度(1μM)で既に到達している[19]。
【0078】
データは、炭素環バージョンcAzadC 1が同量でmdCレベルに影響を及ぼすためには、単純により多くの時間が必要であることを示す。この効果は、cAzadC 1の三リン酸への変換が潜在的により遅いことに起因すると我々は考えている。しかしながら、cAzadC 1のより遅い反応速度は、病院で適用される長い処置時間を考慮すれば、必ずしも不利益ではない。
【0079】
hmdCレベルが、1μMの実験において既に約50%まで減少したという発見も非常に興味深い。5μMでは、0.5μgのゲノムDNAを用いて、バックグラウンドレベルよりも高いhmdCを検出することすらできなかった。結果は、hmdCレベルはmdCレベルよりもさらに速く低下したことを示すが、hmdCはゲノムにおいて10倍以上量が少ない。この結果は興味深い。このことは、hmdCは細胞分裂中のmdC維持プロセスにおいて主に産生されるのかもしれないという潜在性を示している。我々はここで、化合物cAzadC 1は、dCのmdCへのメチル化およびmdCのhmdCへの酸化の間の相互作用に関するさらなる洞察を得ることを可能にする完璧なツール分子であると考えている。新規の化合物cAzadC 1を手に入れたことで我々は、DNA損傷効果を損なわずに、ゲノムの脱メチル化を、対応する細胞の効果と見事に関連付けることができる。最後に、cAzadC 1は、価値のあるツール化合物であり得るだけでなく、まさに次世代のエピジェネティック製剤であり得る。
【0080】
要約
CH2単位による環内O原子の置換が、製剤を安定化させ、それにより、水とのその求核反応が止まることを示す。新規のヌクレオシドcAzadC 1は、細胞内のリン酸化酵素によって受け取られ、対応するcAzadC-三リン酸がゲノム内に効率的に組み込まれる。cAzadC 1は、数百万ヌクレオチドを有するゲノムに組み込まれ、mdCレベルをコントロールレベルに対して70%まで低減させる。
【0081】
実施例5-cAzaC(20)に関する合成手順
Tert-ブチル-(1R,4S,5R,6S)-5,6-ジヒドロキシ-3-オキソ-2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート 12
Bocによって保護されたVinceラクタム11[30](11.66g、55.7mmol、1.0eq.)を、214mL THF、92mL tert-ブタノールおよび31mL H
2O中に溶解させ、22.59g N-メチルモルホリノ-N-オキシド(167.2mmol、3.0eq.)および1.03g K
2OsO
4二水和物(2.79mmol、5mol%)を添加して、混合物を室温で16時間攪拌させた。その後に、200mLの水および35.1gのNa
2SO
3(278.5mmol、5.0eq.)を添加して、混合物をさらに1時間、室温で攪拌した。それから、反応混合物をEtOAc(3×300mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液(300mL)で洗浄して、Na
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を真空中で蒸発させた後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2:MeOH 40:1→CH
2Cl
2:MeOH 30:1)によって精製して、2.91gのエキソ-ビスヒドロキシル化された生成物12(12.0mmol、22%)を黄色い泡状物として得た。
【0082】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=4.35-4.32(m,1H,1-H),4.23(d,J=6.0Hz,1H,5-H),4.08(d,J=6.1Hz,1H,6-H),3.89-3.80(br s,-OH),3.78-3.68(br s,-OH)2.82-2.76(m,1H,4-H),2.09(dt,J=10.9,1.5Hz,1H,7-H),1.97(m,1H,7-H),1.51(s,9H,3’-H)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=173.30(3-C),149.20(1’-C),83.82(2’-C),70.57(6-C),68.14(5-C),62.29(1-C),53.74(4-C),31.99(7-C),28.16(3’-C)。
IR(ATR):ν(cm-1)=3415(w),2979(w),1777(m),1714(m),1457(w),1394(w),1368(m),1350(m),1326(m),1297(m),1256(m),1144(s),1081(s),1043(w),1031(w),1016(m),947(s),902(w),838(w),776(m),733(s),702(m)。
Rf(CH2Cl2:MeOH 20:1):0.24。
【0083】
Tert-ブチル-((1R,2S,3R,4R)-2,3-ジヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチル)-シクロペンチル)-カルバメート 13
【0084】
40mL乾燥MeOH中、ビスヒドロキシル化ラクタム12(2.90g、11.9mmol、1.0eq.)の溶液を0℃に冷却し、NaBH4(2.25g、59.61mmol、5.0eq.)を5ポーションで15分にわたって添加した。混合物を、0℃で45分間さらに攪拌して、室温に温めて、室温でさらに1時間攪拌した。その後に、100mLの酢酸(MeOH中10%v/v)およびシリカゲルを添加して、混合物を真空中で乾燥状態まで濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製(乾燥充填、CH2Cl2:MeOH 5:1→CH2Cl2:MeOH 4:1)および乾燥トルエン(2×150mL)を用いた共蒸発(coevaporation)によって、生成物313を、その酢酸塩(2.96g、9.6mmol、81%)として、茶色がかった油状物として得た。
【0085】
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ/ppm=6.70(d,J=7.9Hz,1H,NH),3.65-3.49(m,2H,1-H,3-H),3.52(dd,J=6.3,5.2Hz,1H,2-H),3.37(dd,J=10.5,5.8Hz,1H,5-H),3.30(dd,J=10.5,6.2Hz,1H,5-H),1.98(dt,J=13.1,8.4Hz,1H,6-H),1.86-1.77(m,4H,4-H,OAc),1.37(s,9H,3´-H),1.04-0.90(m,1H,6-H)。
13C-NMR(101MHz,DMSO-d6):δ/ppm=173.28(OAc-C1),155.23(C-1’),77.37(2’-C),75.93(2-C),72.07(1-C),63.02(5-C),55.07(3-C),44.94(4-C),30.61(6-C),28.30(3’-C),22.49(OAc-C2)。
Rf(CH2Cl2:MeOH 8:1):0.43。
【0086】
Tert-ブチル-((1R,2S,3R,4R)-2,3-ビス(ベンジルオキシ)-4-((ベンジルオキシ)メチル)-シクロペンチル)-カルバメート 14
【0087】
67mL乾燥DMF中、シクロペンタン13(2.93g、9.5mmol、1.0eq.)の溶液を、0℃に冷却して、NaH(1.57g、39.3mmol、4.1eq.、鉱油中60%)を3ポーションで添加した。混合物を15分間0℃で攪拌した後、5.31mLのBnBr(44.6mmol、4.7eq、)をゆっくり添加して、反応混合物を0℃で2.5時間および室温で3時間攪拌した。それから、220mgのTBAI(0.6mmol、6mol%)および追加で3.18mLのBnBr(26.8mmol、2.8eq.)を添加して、混合物を80℃まで3.5時間温めた。その後に、混合物を室温に冷却して、300mL飽和NaHCO3水溶液中に注ぎ、CH2Cl2(3×300mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaHCO3水溶液(300mL)、飽和NaCl水溶液(300mL)で洗浄して、無水Na2SO4上で乾燥させて、50℃にて真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(iHex:EtOAc 10:1→iHex:EtOAc 8:1→iHex:EtOAc 7:1→iHex:EtOAc 6:1→iHex:EtOAc 4:1)によって精製して、トリベンジルによって保護された生成物14(2.47g、4.8mmol、51%)を無色固体ワックスとして得た。
【0088】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=7.45-7.09(m,15H,3xOCH2Ph),4.95(s,1H,NH),4.76-4.25(m,6H,3xOCH2Ph),4.15-3.90(m,1H,1-H),3.82(dd,J=6.7,4.4Hz,1H.3-H),3.79-3.63(m,1H,2-H),3.57-3.34(m,2H,5-H),2.51-2.24(m,2H,4-H,6-H),1.50-1.34(m,9H,3’-H),1.31-1.19(m,1H,6-H)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=155.09(1’-C),138.48(Ar-C),138.43(Ar-C),138.13(Ar-C),128.44(Ar-C),128.30(Ar-C),128.24(Ar-C),128.03(Ar-C),127.88(Ar-C),127.82(Ar-C),127.70(Ar-C),127.54(Ar-C),127.51(Ar-C),81.27(2-C),79.29(3-C),79.13(2’-C),73.30(OCH2-Ph),71.52(OCH2-Ph),71.02(OCH2-Ph),70.41(5-C),52.85(1-C),41.49(1-C),30.34(6-C),28.46(3’-C)。
HRMS(ESI+):計算値は、C32H40NO5
+[M+H]+ 518.2901;実測値:518.2911。
IR(ATR):ν(cm-1)=3331(br w)、3029(w)、2974(w)、2867(w)、1705(s)、1495(m)、1453(m)、1390(w)、1364(s)、1245(m)、1165(s)、1092(s)、1071(s)、1027(m)、732(s)、695(s)。
Rf(iHex:EtOAc 4:1):0.69。
【0089】
(1R,2S,3R,4R)-2,3-ビス(ベンジルオキシ)-4-((ベンジルオキシ)メチル)-シクロペンタン-1-アミン 15
【0090】
Ar雰囲気下で、1.02gのBocによって保護されたシクロペンタン14(1.97mmol、1.0eq.)を7.0mLの乾燥CH2Cl2中に溶解させ、3.0mLのTFAを添加して、混合物を室温で1時間攪拌した。その赤い溶液(The red solution)を乾燥状態まで濃縮して、20.0mL飽和NaHCO3水溶液を添加して、混合物を室温で10分間攪拌した。それから、60mL EtOAcを添加して、相を分離して、水相をEtOAc(2×60mL)でさらに抽出した。合わせた有機相をNa2SO4上で乾燥させて、真空中で乾燥状態まで濃縮して、脱保護アミン15を黄色油状物(882mg、1.97mmol、quant.)として得て、それを、酸化に対する不安定さのため、さらなる精製をせずに次のステップに用いた。
【0091】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=7.39-7.26(m,15H,3xOCH2Ph),4.63-4.33(m,6H,3xOCH2Ph),3.81(dd,J=5.0,3.1Hz,1H,3-H),3.49(dt,J=9.1,7.8Hz,1H,1-H),3.41(dd,J=9.2,5.1Hz,1H,5-H),3.34-3.26(m,2H,2-H,5-H),2.47-2.34(m,1H,4-H),2.24-2.13(m,1H,6-H),1.06-0.94(m,1H,6-H)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=138.66(Ar-C),138.52(Ar-C),138.48(Ar-C),128.72(Ar-C),128.52(Ar-C),128.47(Ar-C),128.38(Ar-C),128.31(Ar-C),128.00(Ar-C),127.74(Ar-C),127.67(Ar-C),127.13(Ar-C),86.10(2-C),78.11(3-C),73.21(OCH2-Ph),72.27(5-C),71.86(OCH2-Ph),70.89(OCH2-Ph),54.32(1-C),41.49(4-C),32.19(6-C)。
HRMS(ESI+):計算値は、C27H32NO3
+[M+H]+ 418.2377;実測値:418.2378。
【0092】
1-[(1’R,2’S,3’R,4’R)-2’,3’-ビス(ベンジルオキシ)-4’-((ベンジルオキシ)メチル)-シクロペンチル]-メチルイソビウレット 16
【0093】
Ar雰囲気下で、882mgシクロペンチルアミン15(1.87mmol、1.97mmol、1.0eq.)を18.20mLの乾燥MeCN中に溶解させ、431mgの2-メチル-1-(1-イミダゾイルカルボニル)-イソ尿素[1](2.56mmol、1.3eq.)を添加した。混合物を92℃で2時間還流して、その後に、室温に冷却して乾燥状態まで蒸発させた。残渣をシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して(iHex:EtOAc 3:1→iHex:EtOAc 5:2→iHex:EtOAc 2:1→iHex:EtOAc 1:1)、メチルイソビウレット16を無色油状物として得た(886mg、1.17mmol、87%)。
【0094】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=7.43-7.22(m,15H,3xOCH2Ph),5.60(s,1H,1-H),4.80-4.61(m,2H,OCH2Ph),4.55-4.41(m,3H,OCH2Ph),4.32(d,J=11.8Hz,1H,OCH2Ph),4.24(td,J=7.6,3.4Hz,1H,1’-H),3.87(dd,J=6.9,4.5Hz,1H,3’-H),3.82(dd,J=4.5,3.1Hz,1H,2’-H),3.61(s,2H,3-H,5-H),3.57-3.45(m,2H,5’-H),2.54-2.39(m,2H,4’-H,6’-H),2.17(s,3H,6-H),1.39-1.31(m,1H,6’-H)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=207.11(4-C),162.27(2-C),138.74(Ar-C),138.71(Ar-C),138.45(Ar-C),128.51(Ar-C),128.34(Ar-C),128.28(Ar-C),127.86(Ar-C),127.70(Ar-C),127.59(Ar-C),127.56(Ar-C),81.65(2’-C),79.79(3´-C),73.35(OCH2-Ph),71.64(OCH2-Ph),71.20(OCH2-Ph),70.60(5’-C),52.56(1’-C),41.68(4’-C),31.07(6-C),30.57(6’-C)。
HRMS(ESI+):計算値は、C30H36N3O5
+[M+H]+ 518.2650;実測値:518.2652。
IR(ATR):ν(cm-1)=3384(br w)、3028(w)、2857(w)、1694(w)、1635(s)、1495(s)、1453(m)、1364(m)、1300(w)、1197(w)、1096(s)、1027(m)799(w)、736(m)、697(s)。
Rf(iHex:EtOAc 2:1):0.37。
【0095】
4-メトキシ-1-[(1’R,2’S,3’R,4’R)-2’,3’-ビス(ベンジルオキシ)-4’-((ベンジルオキシ)メチル)-シクロペンチル]-1H-[1,3,5]-トリアジン-2-オン(17)および
4-エトキシ-1-[(1’R,2’S,3’R,4’R)-2’,3’-ビス(ベンジルオキシ)-4’-((ベンジルオキシ)メチル)-シクロペンチル]-1H-[1,3,5]-トリアジン-2-オン(18)
【0096】
メチルイソビウレット16(837mg、1.62mmol、1.0eq.)を15.30mLのオルトギ酸トリエチル中に溶解させ、20μLのTFAを添加した。混合物を90℃に3時間加熱して、その後に、室温まで冷却して真空中で50℃にて濃縮した。乾燥MeOHを用いて残渣を共蒸発させて、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して(iHex:EtOAc 3:1→iHex:EtOAc 5:2→iHex:EtOAc 2:1→iHex:EtOAc 1:1→iHex:EtOAc 1:2)、373mgのエトキシトリアジン18(0.69mmol、43%)を無色ワックスとして、および、389mgのメトキシトリアジン17(0.73mmol、46%)を無色固体として得た。
【0097】
メトキシトリアジン17:
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=7.96(s,1H,6-H),7.38-7.17(m,15H,3xOCH2Ph),4.70-4.40(m,6H,1’-H,2.5xOCH2Ph),4.36-4.24(m,2H,2’-H,0.5xOCH2Ph),3.98(s,3H,7-H),3.93(dd,J=4.9,3.1Hz,1H,3’-H),3.54-3.40(m,2H,5’-H),2.51(ddt,J=9.8,4.4,2.3Hz,1H,4’-H),2.35(dt,J=13.3,9.4Hz,1H,6’-H),1.82(ddd,J=13.4,9.0,6.7Hz,1H,6’-H)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=169.87(4-C),159.59(6-C),154.67(2-C),138.16(Ar-C),138.14(Ar-C),137.63(Ar-C),128.63(Ar-C),128.60(Ar-C),128.51(Ar-C),128.24(Ar-C),128.20(Ar-C),128.17(Ar-C),127.90(Ar-C),127.86(Ar-C),78.78(2’-C),77.27(3’-C),73.40(OCH2-Ph),72.17(OCH2-Ph),71.41(OCH2-Ph),71.20(5’-C),63.34(1’-C),55.95(7-C),41.14(4´-C),26.75(6’-C)。
HRMS(ESI+):計算値は、C31H34N3O5
+[M+H]+528.2493;実測値:528.2498。
IR(ATR):ν(cm-1)=3029(w)、2867(w)、1698(s)、1613(s)、1515(m)、1464(m)、1453(m)、1398(m)、1337(m)、1265(w)、1211(w)、1096(m)、1070(m)、1027(m)、913(w)、802(m)、733(s)、696(s)。
Rf(iHex:EtOAc 2:1):0.27。
【0098】
エトキシトリアジン18:
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=7.97(s,1H,6-H),7.39-7.15(m,15H,3xOCH2Ph),4.66-4.21(m,10H,1’-H,2’-H,7-H,3xOCH2Ph),3.96-3.87(m,1H,3’-H),,3.54-3.36(m,2H,5’-H),2.56-2.41(m,1H,4’-H),2.33(ddd,J=14.5,9.5,4.7Hz,1H,6’-H),1.88-1.74(m,1H,6’-H),1.25(q,J=6.9Hz,3H,8-H)。
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=169.31(4-C),159.53(6-C),154.74(2-C),138.18(Ar-C),138.16(Ar-C),137.64(Ar-C),128.79(Ar-C),128.64(Ar-C),128.61(Ar-C),128.51(Ar-C),128.25(Ar-C),128.20(Ar-C),128.19(Ar-C),127.90(Ar-C),127.87(Ar-C),79.11(2’-C),77.36(3’-C),73.46(OCH2-Ph),72.28(OCH2-Ph),71.55(OCH2-Ph),71.20(5’-C),65.06(7-C),63.33(1’-C),41.15(4’-C),26.81(6’-C),14.24(8-C)。
HRMS(ESI+):計算値は、C32H36N3O5
+[M+H]+ 542.2650;実測値:542.2656。
IR(ATR):ν(cm-1)=3064(w)、3030(w)、2924(w)、2962(w)、1694(s)、1615(s)、1514(m)、1495(m)、1452(s)、1361(m)、1326(m)、1270(m)、1206(w)、1096(s)、1070(s)、1027(m)、803(w)、7348s)、697(s)。
Rf(iHex:EtOAc 2:1):0.30。
【0099】
4-アミノ-1-[(1’R,2’S,3’R,4’R)-2’,3’-ビス(ベンジルオキシ)-4’-((ベンジルオキシ)メチル)-シクロペンチル]-1H-[1,3,5]-トリアジン-2-オン 19
【0100】
エトキシトリアジン18(358mg、0.66mmol)およびメトキシトリアジン17(363mg、0.69mmol)の混合物をMeOH中26.8mLの7N NH3中に溶解させ、室温で3時間攪拌した。その後に、125mLのH2Oを反応混合物に添加して、それをEtOAc(3×200mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4上で乾燥させて、真空中で乾燥状態まで蒸発させて、593mgのアミノ化生成物19(1.16mmol、86%)を無色泡状物として得て、それを、さらに精製せずに次のステップに用いた。
【0101】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ/ppm=7.80(s,1H,6-H),7.26(m,15H,3xOCH2Ph),5.70(s,1H,NH),4.63-4.42(m,6H,1’-H,2.5xOCH2Ph),4.39-4.28(m,2H,2’-H,0.5xOCH2Ph),3.91(dd,J=5.0,3.5Hz,1H,3’-H),3.53-3.42(m,2H,5’-H),2.59-2.35(m,1H,4’-H),2.26(dt,J=13.3,9.3Hz,1H,6’-H),1.86(ddd,J=13.3,9.2,7.1Hz,1H,6’-H)
13C-NMR(101MHz,CDCl3):δ/ppm=165.84(4-C),158.30(6-C),154.11(2-C),138.27(Ar-C),138.24(Ar-C),137.83(Ar-C),128.57(Ar-C),128.56(Ar-C),128.47(Ar-C),128.21(Ar-C),128.12(Ar-C),128.05(Ar-C),127.84(Ar-C),127.82(Ar-C),127.78(Ar-C),78.99(2’-C),77.39(3’-C),73.30(OCH2-Ph),72.18(OCH2-Ph),71.39(OCH2-Ph),71.3(5’-C)7,63.53(1’-C),41.21(4’-C),26.79(6’-C)。
HRMS(ESI+):計算値は、C30H33N4O4
+[M+H]+ 513.2496;実測値:513.2496。
IR(ATR):ν(cm-1)=3331(br w)、3182(br w)、3060(w)、3028(w)、2925(w)、2857(w)、1633(s)、1506(m)、14958m)、1470(m)、14528s)、1361(w)、1262(w)、1092(s)、1070(s)、1027(m)、912(w)、799(m)、734(s)、696(s)。
Rf(CH2Cl2:MeOH 15:1):0.42。
【0102】
4-アミノ-1-[(1’R,2’S,3’R,4’R)-2’,3’-ビスヒドロキシ-4’-(ヒドロキシメチル)-シクロペンチル]-1H-[1,3,5]-トリアジン-2-オン 20
【0103】
ベンジルによって保護された5-アザ-carbaC 19(576mg、1.12mmol、1.0eq.)の溶液を、Ar雰囲気下で30.8mLの乾燥CH2Cl2中に溶解させ、-78℃に冷却した。それから、5.88mLのBCl3(CH2Cl2中、1M、5.88mmol、5.25eq.)を滴下して、混合物を-78℃で1時間および室温で2時間攪拌した。その後に、40mLの乾燥MeOHを添加し、混合物をさらに20分間、室温で攪拌して、真空中で乾燥状態まで濃縮した。残渣を、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにより精製して(乾燥充填、CH2Cl2:MeOH 8:1→CH2Cl2:MeOH 5:1→CH2Cl2:MeOH 4:1→CH2Cl2:MeOH 7:3)、228mgの脱保護化合物20(0.94mmol、84%)を無色固体として得た。
【0104】
細胞生物学的適用のために、34.5mgの化合物を逆相HPLCによってさらに精製して(H2O中0%~3%MeCN、45分、流速5mL/分)、25.3mgのHPLC精製20を得た(73%)。
【0105】
1H-NMR(400MHz,D2O):δ/ppm=8.32(s,1H,6-H),4.57-4.33(m,2H,1’-H,2’-H),4.04(dd,J=5.3,4.4Hz,1H,3’-H),3.76-3.57(m,2H,5’-H),2.29(dt,J=13.0,8.2Hz,1H,6’-H),2.23-2.15(m,1H,4’-H),1.76-1.59(m,1H,6’-H)。
13C-NMR(101MHz,D2O):δ/ppm=165.45(4-C),159.03(6-C),156.15(2-C),73.12(2’-C),71.77(3’-C),63.55(1’-C),62.90(5’-C),44.42(4’-C),27.17(6’-C)。
HRMS(ESI+):計算値は、C9H15N4O4
+[M+H]+ 243.1088;実測値:243.1086。
HRMS(ESI-):計算値は、C9H13N4O4
-[M-H]- 241.0942;実測値:241.0941。
Rf(CH2Cl2:MeOH 7:3):0.29。
【0106】
HPLC安定性試験において、炭素環式(carbacyclic)化合物cAzaC 20は、アザシチジン(デシタビン)よりもさらに安定であることが示された(
図5)。
【0107】
実施例6
cAzaCプロドラッグ24に関する合成手順
細胞内への送達の改善のために、我々は、cAzaC 20の5’-ホスホロアミデート(phosphoroamidate)プロドラッグ24も調製した。
【0108】
4-アミノ-1-((3aS,4R,6R,6aR)-6-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-4H-シクロペンタ-[d][1,3]ジオキソール-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2(1H)-オン 21
【0109】
加熱乾燥したフラスコ内に、5-アザ-carbaC 20(64mg、264μmol、1.0eq.)を6.60mLの乾燥アセトン中に懸濁した。p-トルエンスルホン酸(5mg、触媒量)および2,2-ジメトキシプロパン(49μL、396μmol、1.5eq.)を添加し、混合物を室温で18時間攪拌した。生じた溶液に、150μLのNEt3(1.08mmol)を添加して、混合物を室温でさらに10分攪拌した。その後に、混合物を乾燥状態まで濃縮して、得られた残渣をシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して(CH2Cl2:MeOH 10:1、1% NEt3を含む)、81mgのイソプロピリデン-アセタールによって保護された化合物21(182μmol、69%、1.6eq.NEt3を付加)を無色固体として得た。
【0110】
1H-NMR(400MHz,D3COD):δ/ppm=8.29(s,1H,6-H),4.94(dd,J=7.0,4.9Hz,1H,2’-H),4.62-4.39(m,2H,1’-H,3’-H),3.73-3.51(m,2H,5’-H),3.21(q,J=7.3Hz,10H,N(CH2CH3)3),2.32-2.07(m,3H,4’-H,6’-H),1.50(s,3H,1’’-H),1.32(t,J=7.3Hz,15H,N(CH2CH3)3),1.29(s,3H,1’’-H)。
13C-NMR(101MHz,D3COD):δ/ppm=167.87(4-C),159.88(6-C),156.66(2-C),114.31(2’’-C),83.95(2’-C),82.98(3’-C),66.26(1’-C),64.17(5’-C),47.88(N(CH2CH3)3),47.81(4’-C),33.72(6’-C),27.97(1’’-C),25.53(1’’-C),9.23(N(CH2CH3)3)。
HRMS(ESI+):計算値は、C12H19N4O4
+ 283.1401[M+H]+;実測値:283.1397.
IR(ATR):ν(cm-1)=3346(br w(、2983(w)、2658(w)、1634(s)、1472(s)、1210(m)、1160(m)、1065(m)、868(w)、800(m)、682(w)。
Rf(CH2Cl2:MeOH 6:1):0.36。
【0111】
イソプロピル((((3aR,4R,6R,6aS)-6-(4-アミノ-2-オキソ-1,3,5-トリアジン-1(2H)-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-4H-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニナト 22
【0112】
保護された5-アザ-carbaC 21(69mg、155μmol、1.0eq.、1.6eq.として、NEt3付加)を、2.40mLの乾燥THF中に懸濁して、-78℃に冷却した。それから、855μLのtBuMgCl溶液(THF中、1.0M、855μmol、5.5eq.)を添加し、混合物を0℃まで直接温めて、この温度で30分間攪拌した。その後に、混合物を再度-78℃に冷却して、phosphoroxyaryl chloridate[31]23(THF中、1.0M、538μmol、3.5eq.)の溶液を538μL滴下した。反応混合物を室温までゆっくり温めて、17時間攪拌した。生じた鮮明な黄色の溶液をH2O(20mL)の添加によってクエンチングして、水相をEtOAcで抽出した(3×25mL)。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液(25mL)で洗浄して、無水Na2SO4上で乾燥して、真空中で乾燥状態まで濃縮した。残渣をシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製して(CH2Cl2:MeOH 60:1→CH2Cl2:MeOH 50:1→CH2Cl2:MeOH 40:1)、83mgの生成物12(78μmol、51%、5.0eq.NEt3を付加)を、Pにおける(on P)両方のジアステレオ異性体の混合物として、無色固体として得た。
【0113】
1H-NMR(800MHz,CDCl3):δ/ppm=8.05(2xs,1H),7.32-7.27(m,2H,OPh),7.23-7.17(m,2H,OPh),7.15-7.07(m,1H,OPh),5.04-4.87(m,2H,2’-H,4’’’-H),4.59-4.54(m,1H,3’-H),4.31-4.13(m,3H,1’-H,5’-H),4.02-3.93(m,1H,2’’’-H),3.78(m,1H,NH),3.09(q,J=7.4Hz,30H,N(CH2CH3)3),2.53-2.17(m,3H,4’-H,6’-H),1.49-1.47(m,3H,1’’-H),1.39(t,J=7.3Hz,45H,N(CH2CH3)3),1.37-1.34(m,3H,3’’-H),1.26-1.24(m,3H,1’’-H),1.21-.18(m,6H,5’’’-H)。
13C-NMR(201MHz,CDCl3):δ/ppm=173.10(1’’’-C),165.39(4-C),158.57(6-C),153.13(O-CAr),150.83(2-C),129.73(CHAr),124.99(CHAr),120.45(CHAr),113.57(2’’-C),82.42(2’-C),81.17(3’-C),69.28(4’’’-C),67.50(1’-C),65.93(5’-C),50.50(2’’’-C),45.91(N(CH2CH3)3),44.93(4’-C),32.34(6’-C),29.79(5’’’-C),27.73(1’’-C),25.36(1’’-C),21.72(5’’’-C),21.13(3’’’-C),8.75(N(CH2CH3)3)。
31P-NMR(162MHz,CDCl3):δ/ppm=2.46,2.36。
HRMS(ESI+):計算値は、C24H35N5O8P+ 552.2218[M+H]+;実測値:552.2211。
HRMS(ESI-):計算値は、C24H33N5O8P- 550.2072[M-H]-;実測値:550.2074。
IR(ATR):ν(cm-1)=3379(m)、2980(s)、2946(m)、2606(s)、2498(s)、1640(s)、1476(s)、1398(m)、1383(m)、1212(s)、1158(m)、1107(w)、1070(m)、1037(s)、929(m)、802(w)、730(m)。
Rf(CH2Cl2:MeOH 20:1):0.25。
【0114】
イソプロピル((((1R,2R,3S,4R)-4-(4-アミノ-2-オキソ-1,3,5-トリアジン-1(2H)-イル)-2,3-ジヒドロキシ-シクロペンチル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニナト 24
【0115】
イソプロピリデンアセタールによって保護された化合物22(38mg、69μmol、1.0eq.)に、1.0mLの80%TFA(ddH2O中)を添加して、混合物を30℃で20分間攪拌した。それから、混合物を5.0mLのddH2O中に注いで凍結乾燥した。生じた残渣を、500μLのMeCN、500μLのDMSOおよび4.0mLのddH2O(0.1%TFA含有)の混合物中に溶解させて、混濁した溶液を濾過して、逆相HPLC(ddH2O cont.0.1%TFA中5%MeCN~ddH2O cont.0.1%TFA中60%MeCN、45分、流速5mL/分)によって精製して、10.4mgの標的化合物24(20μmol、29%)を無色固体として得た。
【0116】
1H-NMR(400MHz,D3CCN):δ/ppm=8.11(s,1H),7.50(s,1H,NH2),7.41-7.29(m,2H,OPh),7.25-7.15(m,3H,OPh),6.61(s,1H,NH2),4.98-4.88(m,1H,4’’-H),4.39-4.23(m,3H,1’-H,2’-H,NH),4.20-4.07(m,2H,5’-H),3.97(dt,J=5.2,3.8Hz,1H,3’-H),3.93-3.82(m,1H,2’’-H),2.33-2.09(m,2H,4’-H,6’-H),1.83-1.67(m,1H,6’-H),1.30-1.26(m,3H,3’’-H),1.19(dt,J=6.2,3.4Hz,6H,5’’-H)。
13C-NMR(101MHz,D3CCN):δ/ppm=174.00(1’’-C),165.92(4-C),159.92(6-C),153.84(2-C),151.97(O-CAr),130.62(CHAr),125.75(CHAr),121.36(CHAr),121.31(CHAr),74.12(2’-C),72.50(3’-C),69.64(4’’-C),68.53(5’-C),64.96(1’-C),51.44(2’’-C),44.44(4’-C),28.08(6’-C),21.89(5’’-C),21.81(5’’-C),20.80(3’’-C)。
31P-NMR(162MHz,D3CCN):δ/ppm=3.08,2.92。
HRMS(ESI+):計算値は、C21H31N5O8P+ 512.1905[M+H]+;実測値:512.1901。
HRMS(ESI-):計算値は、C21H29N5O8P- 510.1759[M-H]-;実測値:510.1757。
【0117】