(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 8/50 20250101AFI20250228BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250228BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250228BHJP
H10D 62/10 20250101ALI20250228BHJP
H10D 8/01 20250101ALI20250228BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250228BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
H10D8/50 D
H10D8/50 F
H10D84/80 203A
H10D30/66 101T
H10D30/66 101C
H10D30/66 101H
H10D62/10 101D
H10D62/10 101V
H10D30/66 201D
H10D8/01 B
H10D30/01 301A
H10D30/66 101F
H01L21/265 Q
H01L21/265 F
(21)【出願番号】P 2022042380
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021046930
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】片岡 恵太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 行彦
(72)【発明者】
【氏名】羽山 優介
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-092991(JP,A)
【文献】特開2011-100762(JP,A)
【文献】特開2017-011031(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204112(WO,A1)
【文献】特開2018-107168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0182885(US,A1)
【文献】特開2007-242765(JP,A)
【文献】特開2005-285955(JP,A)
【文献】特開2017-054934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 8/50
H10D 84/80
H10D 30/66
H10D 62/10
H10D 8/01
H10D 30/01
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
第1主電極と、
第2主電極と、
下面に前記第1主電極が被膜されており、上面に前記第2主電極が被膜されている、半導体層と、を備えており、
前記半導体層は、
前記上面に露出する位置に配置されているとともに、前記第2主電極に電気的に接続されているp型半導体領域と、
前記p型半導体領域に接するとともに、前記p型半導体領域によって前記第2主電極から隔てられているn型半導体領域と、を有しており、
前記n型半導体領域は、前記p型半導体領域に接する位置に設けられているトラップ領域を有しており、
前記トラップ領域には、正孔トラップが形成されており、
前記トラップ領域の正孔トラップのエネルギー準位をEtとし、
前記トラップ領域の価電子帯のエネルギー準位をEvとし、
前記トラップ領域のバンドギャップをEgとすると、
Et-Ev<Eg/2の関係が成立しており、
前記半導体層の前記上面から前記p型半導体領域を貫通して前記n型半導体領域に達するトレンチ内に設けられているトレンチゲート部をさらに備えており、
前記トラップ領域は、前記トレンチゲート部の側面から離れた位置に配置されており、
前記p型半導体領域は、前記トレンチゲート部の前記側面から離れた位置で前記トレンチゲート部の底面よりも下方に突出する電界緩和領域を有しており、
前記トラップ領域は、前記電界緩和領域の底面に接するように配置されている、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層の深さ方向における前記正孔トラップの密度分布は、前記トラップ領域に対応する範囲においてピークを有している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体層が炭化珪素である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トラップ領域は、アルミニウムを含む、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記n型半導体領域のn型不純物の濃度分布は、前記トラップ領域に対応する範囲で他の範囲よりも高い分布を有している、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体装置であって、
第1主電極と、
第2主電極と、
下面に前記第1主電極が被膜されており、上面に前記第2主電極が被膜されている、半導体層と、を備えており、
前記半導体層は、
前記上面に露出する位置に配置されているとともに、前記第2主電極に電気的に接続されているp型半導体領域と、
前記p型半導体領域に接するとともに、前記p型半導体領域によって前記第2主電極から隔てられているn型半導体領域と、を有しており、
前記n型半導体領域は、前記p型半導体領域に接する位置に設けられているトラップ領域を有しており、
前記トラップ領域には、正孔トラップが形成されており、
前記トラップ領域の正孔トラップのエネルギー準位をEtとし、
前記トラップ領域の価電子帯のエネルギー準位をEvとし、
前記トラップ領域のバンドギャップをEgとすると、
Et-Ev<Eg/2の関係が成立しており、
前記半導体層の前記上面から前記p型半導体領域を貫通して前記n型半導体領域に達するトレンチ内に設けられているトレンチゲート部をさらに備えており、
前記p型半導体領域は、前記トレンチゲート部の側面から離れた位置で前記トレンチゲート部の底面よりも下方に突出する電界緩和領域を有しており、
前記トラップ領域は、前記電界緩和領域の底面に接するように配置されている
、半導体装置。
【請求項7】
前記トラップ領域は、前記半導体層の面内方向において、少なくとも前記電界緩和領域の前記底面から前記トレンチゲート部の下方の位置まで延びており、前記トレンチゲート部の底面から離れて配置されている、請求項
6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記n型半導体領域のn型不純物の濃度分布は、前記トラップ領域に対応する範囲で他の範囲よりも高い分布を有している、請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体装置であって、
第1主電極と、
第2主電極と、
下面に前記第1主電極が被膜されており、上面に前記第2主電極が被膜されている、半導体層と、を備えており、
前記半導体層は、
前記上面に露出する位置に配置されているとともに、前記第2主電極に電気的に接続されているp型半導体領域と、
前記p型半導体領域に接するとともに、前記p型半導体領域によって前記第2主電極から隔てられているn型半導体領域と、を有しており、
前記n型半導体領域は、前記p型半導体領域に接する位置に設けられているトラップ領域を有しており、
前記トラップ領域には、正孔トラップが形成されており、
前記半導体層が炭化珪素であり、
前記トラップ領域は、アルミニウムを含んでおり、
前記半導体層の前記上面から前記p型半導体領域を貫通して前記n型半導体領域に達するトレンチ内に設けられているトレンチゲート部をさらに備えており、
前記p型半導体領域は、前記トレンチゲート部の側面から離れた位置で前記トレンチゲート部の底面よりも下方に突出する電界緩和領域を有しており、
前記トラップ領域は、前記電界緩和領域の底面に接するように配置されている、半導体装置。
【請求項10】
半導体装置であって、
第1主電極と、
第2主電極と、
下面に前記第1主電極が被膜されており、上面に前記第2主電極が被膜されている、半導体層と、を備えており、
前記半導体層は、
前記上面に露出する位置に配置されているとともに、前記第2主電極に電気的に接続されているp型半導体領域と、
前記p型半導体領域に接するとともに、前記p型半導体領域によって前記第2主電極から隔てられているn型半導体領域と、を有しており、
前記n型半導体領域は、前記p型半導体領域に接する位置に設けられているトラップ領域を有しており、
前記トラップ領域には、正孔トラップが形成されており、
前記半導体層の前記上面から前記p型半導体領域を貫通して前記n型半導体領域に達するトレンチ内に設けられているトレンチゲート部をさらに備えており、
前記p型半導体領域は、前記トレンチゲート部の側面から離れた位置で前記トレンチゲート部の底面よりも下方に突出する電界緩和領域を有しており、
前記トラップ領域は、前記電界緩和領域の底面に接するように配置されている、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオード(MOSFETに内蔵されるダイオードも含む)に順バイアスが印加されると、n型カソード領域から高抵抗領域に電子が注入され、p型アノード領域から高抵抗領域に正孔が注入される。ダイオードに印加される電圧が順バイアスから逆バイアスに変化すると、順バイアスのときに高抵抗領域に注入された電子と正孔はそれぞれ、順バイアスのときとは逆向きに移動する。このような電子と正孔の逆向きの流れはリカバリ電流と呼ばれ、リカバリ損失の主な原因である。
【0003】
また、ダイオードが炭化珪素を用いて形成されている場合、高抵抗領域に注入された正孔がn型カソード領域に達し、n型カソード領域において電子と正孔が再結合すると、その再結合エネルギーによってn型カソード領域と高抵抗領域の界面に存在する欠陥が成長することが知られている。
【0004】
このようなリカバリ損失の増大、又は、積層欠陥の成長を抑制するためには、ダイオードが順バイアスのときの高抵抗領域の正孔濃度を低く抑えることが重要である。特許文献1は、高抵抗領域にC空孔に由来するZ1/2センターを形成し、高抵抗領域のキャリアライフタイムを低下させることにより、高抵抗領域に注入された正孔がn型カソード領域に達するのを抑える技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、高抵抗領域に注入された電子と正孔の再結合を促すことにより、高抵抗領域の正孔濃度を低く抑えることができる。しかしながら、特許文献1の技術では、ダイオードが順バイアスのときに、p型アノード領域からの正孔の注入そのものを抑えることができない。本明細書は、ダイオードが順バイアスのときの正孔の注入そのものを抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する半導体装置の一実施形態は、第1主電極と、第2主電極と、半導体層と、を備えることができる。前記半導体層は、下面に前記第1主電極が被膜されており、上面に前記第2主電極が被膜されている。前記半導体層は、p型半導体領域と、n型半導体領域と、を有することができる。前記p型半導体領域は、前記上面に露出する位置に配置されているとともに、前記第2主電極に電気的に接続されている。前記n型半導体領域は、前記p型半導体領域に接するとともに、前記p型半導体領域によって前記第2主電極から隔てられている。前記n型半導体領域はさらに、前記p半導体領域に接する位置に設けられているトラップ領域を有している。前記トラップ領域には、正孔トラップが形成されている。
【0008】
上記半導体装置では、前記p型半導体領域に接する位置に、正孔トラップが形成された前記トラップ領域が設けられている。このため、上記半導体装置が順バイアスのときに、前記トラップ領域が正孔に対するエネルギー障壁を形成するので、前記p型半導体領域から前記n型半導体領域への正孔の注入そのものを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ダイオードの実施形態の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図2】半導体層の深さ方向におけるアルミニウム及びn型不純物の濃度分布を示す図である。
【
図3】順バイアスのときのトラップ領域の作用効果を説明する図であり、(A)は正孔トラップに捕獲された正孔密度を示す図であり、(B)はトラップ領域のポテンシャルを示す図である。
【
図4】半導体層の深さ方向におけるアルミニウム及びn型不純物の濃度分布を示す図である。
【
図5】MOSFETの実施形態の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図6】MOSFETの他の実施形態の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図7】
図6に示すMOSFETの製造工程中の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図8】
図6に示すMOSFETの製造工程中の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図9】
図6に示すMOSFETの製造工程中の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図10】
図6に示すMOSFETの製造工程中の要部断面図を模式的に示す図である。
【
図11】MOSFETの他の実施形態の要部断面図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ダイオードの実施形態)
図1に示されるように、ダイオード1は、半導体層10と、半導体層10の下面を被覆しているカソード電極22と、半導体層10の上面を被覆しているアノード電極24と、を備えている。カソード電極22及びアノード電極24の材料には、例えば、Al、Ni、Ti、Mo又はCoが用いられてもよい。なお、カソード電極22が第1主電極の一例であり、アノード電極24が第2主電極の一例である。
【0011】
半導体層10は、炭化珪素(SiC)で構成されており、n+型のカソード領域12と、n-型の高抵抗領域14と、p型のアノード領域16と、を有している。
【0012】
カソード領域12は、半導体層10の下面に露出する位置に配置されており、カソード電極22にオーミック接触している。カソード領域12は、例えば面方位が(0001)の炭化珪素基板であり、後述するように、高抵抗領域14をエピタキシャル成長させるための下地基板でもある。
【0013】
高抵抗領域14は、カソード領域12とアノード領域16の間に配置されており、カソード領域12とアノード領域16の双方に接している。高抵抗領域14は、カソード領域12によってカソード電極22から隔てられており、アノード領域16によってアノード電極24から隔てられている。高抵抗領域14は、エピタキシャル成長技術を利用して、カソード領域12の表面から結晶成長して形成された炭化珪素で構成されており、そのn型不純物の濃度はカソード領域12よりも低い。なお、高抵抗領域14は、n型半導体領域の一例である。
【0014】
高抵抗領域14は、非トラップ領域14aと、トラップ領域14bと、を有している。非トラップ領域14aは、トラップ領域14bよりもカソード領域12側に配置されており、カソード領域12に接している。トラップ領域14bは、非トラップ領域14aよりもアノード領域16側に配置されており、アノード領域16に接している。
【0015】
非トラップ領域14aは、正孔トラップが実質的に形成されていない領域である。一方、トラップ領域14bは、正孔トラップが形成されている領域である。ここで、正孔トラップとは、欠陥又は不純物等によってバンドギャップ内の深いエネルギー準位に形成されるトラップであり、特に正孔を捕獲することが可能なトラップである。正孔トラップのエネルギー準位、密度及び深さ等の情報は、DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)法によって得ることができる。正孔トラップを形成する方法は特に限定されるものではない。例えば、本実施形態のダイオード1では、イオン注入技術を利用して、高抵抗領域14のうちのトラップ領域14bに対応する範囲にアルミニウムを導入することにより、正孔トラップを形成している。
【0016】
アノード領域16は、半導体層10の上面に露出する位置に配置されており、アノード電極24にオーミック接触している。アノード領域16を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、本実施形態のダイオード1では、結晶成長して形成された高抵抗領域14の上層部に、イオン注入技術を利用して、高抵抗領域14のn型不純物よりも高濃度のp型不純物を多段で飛程距離を変えて導入することによってアノード領域16が形成されてもよい。p型不純物としては、例えばアルミニウムが用いられる。なお、アノード領域16は、p型半導体領域の一例である。
【0017】
図2に、半導体層10の深さ方向におけるアルミニウムの濃度分布を示す。符号「16」の範囲がアノード領域16であり、符号「14b」の範囲がトラップ領域14bの範囲であり、符号「14a」が非トラップ領域14aの範囲である。破線は、半導体層10に含まれるn型不純物の濃度を示す。
【0018】
アノード領域16には、n型不純物よりも多くのアルミニウムが含まれている。このため、アノード領域16はp型である。なお、
図2では、アノード領域16に含まれるアルミニウムの濃度が深さ方向に一定であるように示されているが、上記したように、アルミニウムは多段のイオン注入によって導入されていることから、実際には複数のピークが深さ方向に離れて存在している。
【0019】
トラップ領域14bには、n型不純物よりも少ないアルミニウムが含まれている。このため、トラップ領域14bはn型である。
図2に示されるように、アルミニウムの濃度分布は、トラップ領域14bに対応する範囲に段差を有している。ここで、濃度分布の段差とは、深さ方向における濃度の減少が上下の範囲に比して抑えられた範囲であり、より具体的には、深さ方向における濃度の減少が生じない部分を含む範囲をいう。上記したように、トラップ領域14bは、アルミニウムをイオン注入することによって形成されていることから、深さ方向におけるアルミニウムの濃度のピークがトラップ領域14bに位置している。このため、トラップ領域14bには、アルミニウムの濃度が増加する部分が含まれている。
【0020】
アルミニウムが導入された領域には、正孔トラップが形成されることが知られている。正孔トラップの密度は、アルミニウムの濃度に概ね比例する。このため、半導体層10の深さ方向における正孔トラップの密度分布は、
図2に示すアルミニウムの濃度分布と同様の分布を示す。したがって、トラップ領域14bとは、n型の領域であって、深さ方向における正孔トラップの密度分布のピークを含む領域である、ということができる。また、トラップ領域14bは、n型の領域であって、正孔トラップの密度が10
14cm
-3以上の領域、より好ましくは正孔トラップの密度が10
16cm
-3以上の領域である、ということもできる。
【0021】
次に、ダイオード1の動作を説明する。カソード電極22よりもアノード電極24が高電位となるようにカソード電極22とアノード電極24の間に順バイアスが印加されると、カソード領域12から高抵抗領域14に電子が注入され、アノード領域16から高抵抗領域14に正孔が注入され、カソード電極22とアノード電極24の間が導通する。次に、カソード電極22よりもアノード電極24が低電位となるようにカソード電極22とアノード電極24の間に逆バイアスが印加されると、順バイアスのときに高抵抗領域14に注入された電子と正孔はそれぞれ、順バイアスのときとは逆向きに移動する。このような電子と正孔の逆向きの流れはリカバリ電流と呼ばれる。
【0022】
ここで、
図3を参照し、順バイアスのときのトラップ領域14bの作用について説明する。ここで、図中の「p」の領域がアノード領域16に対応し、「正孔トラップ」の領域がトラップ領域14bに対応し、「n
-」の領域が非トラップ領域14aに対応する。順バイアスが印加されているとき、トラップ領域14bの正孔トラップに正孔が捕獲され、トラップ領域14bの捕獲正孔密度が増加する(
図3の(A)参照)。正孔トラップに正孔が捕獲されると、正孔トラップの電位が上昇し、トラップ領域14bには正孔に対するポテンシャル障壁が形成される(
図3(B)参照)。これにより、アノード領域16から高抵抗領域14への正孔の注入が抑えられる。アノード領域16から高抵抗領域14への正孔の注入そのものが抑えられているので、順バイアスのときの高抵抗領域14の正孔濃度を低く抑えることができる。この結果、逆バイアスが印加されたときのリカバリ電流が抑えられ、リカバリ損失が低下する。
【0023】
また、本実施形態のダイオード1では、トラップ領域14bの正孔トラップのエネルギー準位をEtとし、トラップ領域14bの価電子帯のエネルギー準位をEvとし、トラップ領域14bのバンドギャップをEgとすると、Et-Ev<Eg/2の関係、即ち、Et-Evがミッドバンドギャップよりも小さいという関係が成立する。アルミニウムをイオン注入して形成される正孔トラップのエネルギー準位Etは、このような関係を有することができる。このような関係が成立するエネルギー準位の正孔トラップは、ゼロバイアスのときに正孔を捕獲することがない。このため、ダイオード1では、帯電した正孔トラップによる耐圧低下といった問題が生じない。
【0024】
また、本実施形態のダイオード1では、高抵抗領域14が非トラップ領域14aを有している。非トラップ領域14aが設けられていることにより、高抵抗領域14の全体に正孔トラップが形成される場合に比して順方向電圧の増大を抑えることができる。このため、本実施形態のダイオード1は、順方向電圧の増大を抑えながら、リカバリ損失を抑えることができる。
【0025】
なお、
図4に示すように、トラップ領域14bのn型不純物の濃度を非トラップ領域14aのn型不純物の濃度よりも高くすることにより、トラップ領域14bに含まれるアルミニウムの濃度も高くすることができる。この例では、トラップ領域14bのアルミニウムの濃度が、非トラップ領域14aのn型不純物の濃度よりも高い。このように、トラップ領域14bのアルミニウムの濃度が高いと、正孔トラップの密度も高くなり、順バイアスのときの正孔の注入を効果的に抑えることができる。トラップ領域14bのn型不純物の濃度を選択的に高くするためには、例えば、高抵抗領域14をエピタキシャル成長するときにトラップ領域14bに対応する範囲のn型不純物の濃度が高くなるように形成してもよく、エピタキシャル成長した後にトラップ領域14bに対応する範囲にn型不純物をイオン注入してもよい。
【0026】
(MOSFETの実施形態)
以下、
図5を参照して、ダイオードを内蔵したMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)2を説明する。MOSFET2は、例えば、交流モータに交流電力を供給するインバータ装置に用いられ、内蔵ダイオードがフリーホイールダイオードとして動作する。
【0027】
図5に示されるように、MOSFET2は、半導体層110と、半導体層110の下面を被覆しているドレイン電極122と、半導体層110の上面を被覆しているソース電極124と、半導体層110の上層部に設けられているトレンチゲート部130と、を備えている。ドレイン電極122及びソース電極124の材料には、例えば、Al、Ni、Ti、Mo又はCoが用いられてもよい。なお、ドレイン電極122が第1主電極の一例であり、ソース電極124が第2主電極の一例である。
【0028】
半導体層110は、炭化珪素(SiC)で構成されており、n+型のドレイン領域112と、n-型の高抵抗領域114と、p型のボディ領域116と、n+型のソース領域118と、を有している。
【0029】
ドレイン領域112は、半導体層110の下面に露出する位置に配置されており、ドレイン電極122にオーミック接触している。ドレイン領域112は、面方位が(0001)面の炭化珪素基板であり、高抵抗領域114をエピタキシャル成長させるための下地基板でもある。
【0030】
高抵抗領域114は、ドレイン領域112とボディ領域116の間に配置されており、ドレイン領域112とボディ領域116の双方に接している。高抵抗領域114は、ドレイン領域112によってドレイン電極122から隔てられており、ボディ領域116によってソース電極124から隔てられている。高抵抗領域114は、エピタキシャル成長技術を利用して、ドレイン領域112の表面から結晶成長して形成された炭化珪素で構成されており、そのn型不純物の濃度はドレイン領域112よりも低い。なお、高抵抗領域114は、n型半導体領域の一例である。
【0031】
高抵抗領域114は、非トラップ領域114aと、トラップ領域114bと、を有している。非トラップ領域114aの大部分は、トラップ領域114bよりもドレイン領域112側に配置されており、ドレイン領域112に接している。トラップ領域114bは、非トラップ領域114aとボディ領域116の間に配置されており、ボディ領域116に接している。非トラップ領域114aは、正孔トラップが形成されていない領域である。一方、トラップ領域114bは、正孔トラップが形成されている領域である。なお、トラップ領域114bのアルミニウムの濃度分布及び正孔トラップの密度分布については、上記したダイオード1のトラップ領域14bと同様である。
【0032】
ボディ領域116は、半導体層110の上面に露出する位置に配置されており、ソース電極124にオーミック接触している。ボディ領域116は、メインボディ領域116aと、電界緩和領域116bと、を有している。メインボディ領域116aは、半導体層110の上面に露出する位置に配置されているとともに、トレンチゲート部130の側面に接している。電界緩和領域116bは、メインボディ領域116aの底面に接するとともに、トレンチゲート部130の側面から離れて配置されている。さらに、電界緩和領域116bは、メインボディ領域116aの底面からトレンチゲート部130の底面よりも下方に突出するように形成されている。このような電界緩和領域116bが形成されていると、MOSFET2がオフしたときに、トレンチゲート部130の底面の電界を緩和することができる。
【0033】
ボディ領域116を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、本実施形態のMOSFET2では、エピタキシャル成長して形成された高抵抗領域114の上層部に、イオン注入技術を利用して、高抵抗領域114のn型不純物よりも高濃度のp型不純物を多段で飛程距離を変えて導入することによってボディ領域116が形成されてもよい。p型不純物としては、例えばアルミニウムが用いられる。なお、ボディ領域116は、p型半導体領域の一例である。
【0034】
ソース領域118は、半導体層110の上面に露出する位置に配置されており、ボディ領域116上に設けられており、ボディ領域116によって高抵抗領域114から隔てられている。ソース領域118を形成する方法は、特に限定されるものではない。本実施形態のMOSFET2では、イオン注入技術を利用して、半導体層110の上層部にn型不純物を導入することにより、ソース領域118が形成されている。
【0035】
トレンチゲート部130は、高抵抗領域114の非トラップ領域114aとソース領域118を隔てる部分のメインボディ領域116aに対向している。トレンチゲート部130は、半導体層110の上面からソース領域118及びメインボディ領域116aを貫通して高抵抗領域114の非トラップ領域114aに達するトレンチ内に設けられているトレンチゲート電極132及びゲート絶縁膜134を含む。トレンチゲート電極132は、CVD技術を利用して、ゲート絶縁膜134で被膜されたトレンチ内に充填して形成される。ゲート絶縁膜134は、CVD技術を利用して、トレンチの内壁を被膜して形成されている。
【0036】
MOSFET2では、ドレイン領域112をアノード領域とし、ボディ領域116をカソード領域とするダイオードが内蔵している。この内蔵ダイオードがフリーホイールダイオードとして動作する。内蔵ダイオードが動作するときの作用効果は、上記したダイオード1と同様である。即ち、トラップ領域114bが設けられていることにより、順バイアスされているときのボディ領域116から高抵抗領域114への正孔の注入そのものが抑えられ、高抵抗領域14の正孔濃度を低く抑えることができる。この結果、逆バイアスが印加されたときのリカバリ電流が抑えられ、リカバリ損失が低下する。なお、MOSFET2では、ボディ領域116のうちの電界緩和領域116bの底面に接するようにトラップ領域114bが選択的に形成されている。ボディ領域116からの正孔注入は、主に電界緩和領域116bからである。このため、電界緩和領域116bに対して選択的にトラップ領域114bが設けられいても、ボディ領域116から高抵抗領域114への正孔の注入を効果的に抑えることができる。
【0037】
また、MOSFET2では、トラップ領域114bがトレンチゲート部130の側面から離れて配置されている。このため、トラップ領域114bは、MOSFET2がオンするときにトレンチゲート部130の側面に形成されるチャネルから離れて配置されている。この結果、MOSFET2のチャネル抵抗の増大が抑えられている。このように、MOSFET2は、チャネル抵抗の増大を抑えながら、リカバリ電流の増大も抑えることができる。
【0038】
(MOSFETの他の実施形態)
図6に、ダイオードを内蔵したMOSFET3を説明する。
図5に示すMOSFET2と共通する構成要素には共通の符号を付している。
【0039】
MOSFET3では、トラップ領域114bが、非トラップ領域114aを分断するように半導体層110の面内方向に沿って延びていることを特徴とする。具体的には、トラップ領域114bは、半導体層110の面内方向において、少なくとも電界緩和領域116bの底面からトレンチゲート部130の下方の位置まで延びている。また、トラップ領域114bは、トレンチゲート部130の底面よりも深い位置に配置されており、トレンチゲート部130の底面から離れている。
【0040】
また、MOSFET3では、トラップ領域114bのn型不純物の濃度が非トラップ領域114aのn型不純物の濃度よりも高く、トラップ領域114bのキャリア濃度が非トラップ領域14aのキャリア濃度よりも高いことを特徴とする。このような非トラップ領域114aとトラップ領域114bの間のn型不純物の濃度関係については、上記した
図4に例示される非トラップ領域14aとトラップ領域14bの間のn型不純物の濃度関係と同様とすることができる。n型不純物の濃度が高いトラップ領域114bは、電流分散領域として機能することができる。
【0041】
トラップ領域114bが半導体層110の面内方向に沿って広く延びているので、ボディ領域116からの正孔の注入を効果的に抑えることができる。また、トラップ領域114bが半導体層110の面内方向に沿って広く延びているので、MOSFET3がオンしたときに、ソース領域118からチャネルを介して高抵抗領域114に注入された電子は、トラップ領域114bによって面方向に広がって流れることができる。このため、MOSFET3では、電流経路が広く確保されるので、低いオン抵抗が得られる。
【0042】
なお、トラップ領域114bが面内方向に広く延びていたとしても、トラップ領域114bが電界緩和領域116bよりも浅に位置に形成される(即ち、電界緩和領域116bが非トラップ領域114aに露出する)とともにトレンチゲート部130の側面及び底面に接する例では、オン抵抗は低くなるものの、正孔注入が増加し得る。また、トラップ領域114bが面内方向に広く延びていたとしても、トラップ領域114bが電界緩和領域116bよりも深い位置に形成される例では、正孔注入が抑えられるものの、オン抵抗が増加し得る。このため、トラップ領域114bを面内方向に広く延ばす例では、正孔注入の抑制と低オン抵抗を両立するために、
図6に示す位置関係でトラップ領域114bが形成されるのが望ましい。
【0043】
(MOSFETの製造方法)
図7~
図10を参照し、
図6に示すMOSFET3を製造する方法について説明する。
【0044】
まず、
図7に示されるように、結晶成長技術を利用して、n型SiC基板であるドレイン領域112の上面からn型SiCの高抵抗領域114を結晶成長させる。
【0045】
次に、
図8に示されるように、イオン注入技術を利用して、高抵抗領域114の所定深さにアルミニウムイオンと窒素イオンを導入し、非トラップ領域114aを分断するように延びるトラップ領域114bを形成する。
【0046】
次に、
図9に示されるように、イオン注入技術を利用して、トラップ領域114bよりも上側の非トラップ領域114aの一部にアルミニウムイオンを導入し、トラップ領域114bに接する電界緩和領域116bを形成する。
【0047】
次に、
図10に示されるように、非トラップ領域114a及び電界緩和領域116bの上面からp型SiCのメインボディ領域116aを結晶成長させ、ボディ領域116を完成させる。
【0048】
次に、イオン注入技術を利用して、ソース領域118を形成する。次に、既知の製造技術を利用してトレンチゲート部130を形成する。その後、半導体層の下面にドレイン電極122を形成し、半導体層の上面にソース電極124形成することにより、
図6に示すMOSFET3が完成する。
【0049】
(MOSFETの他の実施形態)
図11に、ダイオードを内蔵したMOSFET4を説明する。
図6に示すMOSFET3と共通する構成要素には共通の符号を付している。
【0050】
MOSFET4では、電界緩和領域116bの下方に下側電界緩和領域116cがさらに設けられていることを特徴とする。ここで、電界緩和領域116bと下側電界緩和領域116cを区別するために、以下では電界緩和領域116bを上側電界緩和領域116bという。
【0051】
上側電界緩和領域116bは、メインボディ領域116aの底面に接するとともに、トレンチゲート部130の側面から離れて配置されている。上側電界緩和領域116bはまた、トレンチゲート部130の長手方向(y軸方向)に対して平行に延びている。
【0052】
下側電界緩和領域116cは、上側電界緩和領域116bの下面に接しており、トレンチゲート部130の底面よりも深く、トラップ領域114bよりも浅い位置に設けられている。下側電界緩和領域116cは、トレンチゲート130部の長手方向(y軸方向)に対して直交する方向(x軸方向)に対して平行に延びており、トレンチゲート部130の長手方向(y軸方向)に間隔を開けて配置されている。隣り合う下側電界緩和領域116cの間には、トラップ領域114bが配置されている。なお、下側電界緩和領域116cは、トレンチゲート部130の長手方向(y軸方向)に対して直交する場合に限らず、トレンチゲート部130の長手方向(y軸方向)に対して傾斜して延びていてもよい。このように、上側電界緩和領域116bと下側電界緩和領域116cは、半導体層110の異なる深さに配置されているとともに異なる向きに延びている。
【0053】
このような上側電界緩和領域116bと下側電界緩和領域116cが設けられていると、MOSFET4がオフしたときに、トレンチゲート部130の底面の電界をさらに緩和することができる。さらに、上側電界緩和領域116bと下側電界緩和領域116cはいずれも、トラップ領域114bよりも浅い位置に配置されているので、これら電界緩和領域116b,116cを含むボディ領域116からの正孔注入が抑制される。
【0054】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0055】
本明細書が開示する半導体装置の一実施形態は、第1主電極と、第2主電極と、半導体層と、を備えることができる。前記半導体層は、下面に前記第1主電極が被膜されており、上面に前記第2主電極が被膜されている。前記半導体層は、p型半導体領域と、n型半導体領域と、を有することができる。前記p型半導体領域は、前記上面に露出する位置に配置されているとともに、前記第2主電極に電気的に接続されている。前記n型半導体領域は、前記p型半導体領域に接するとともに、前記p型半導体領域によって前記第2主電極から隔てられている。前記n型半導体領域はさらに、前記p半導体領域に接する位置に設けられているトラップ領域を有している。前記トラップ領域には、正孔トラップが形成されている。この実施形態の半導体装置は、ダイオードであってもよく、MOSFETに内蔵されるダイオードであってもよい。
【0056】
上記実施形態の半導体装置では、前記半導体層の深さ方向における前記正孔トラップの密度分布が、前記トラップ領域に対応する範囲においてピークを有していてもよい。この実施形態の半導体装置では、例えばイオン注入技術等を利用して前記トラップ領域に対応する範囲に正孔トラップが意図的に形成されたことが示されている。
【0057】
上記実施形態の半導体装置では、前記トラップ領域の正孔トラップのエネルギー準位をEtとし、前記トラップ領域の価電子帯のエネルギー準位をEvとし、前記トラップ領域のバンドギャップをEgとすると、Et-Ev<Eg/2の関係が成立してもよい。この実施形態の半導体装置では、耐圧低下が抑制される。
【0058】
上記実施形態では、前記半導体層が炭化珪素であってもよい。この実施形態の半導体装置では、順バイアスが印加されたときの前記n型半導体領域の正孔濃度が抑えられるので、炭化珪素に固有の問題である積層欠陥の成長も抑えられる。
【0059】
上記実施形態の半導体装置では、前記トラップ領域がアルミニウムを含んでいてもよい。炭化珪素においては、アルミニウムを導入することで正孔トラップが形成されることが知られている。このため、アルミニウムを含む前記トラップ領域には、正孔トラップが形成されていることが示されている。
【0060】
上記実施形態の半導体装置では、前記n型半導体領域のn型不純物の濃度分布は、前記トラップ領域に対応する範囲で他の範囲よりも高い分布を有していてもよい。前記トラップ領域のn型不純物の濃度を高くすることで、前記トラップ領域は、n型を維持しながらアルミニウムの濃度を高くすることができる。このため、前記トラップ領域は、正孔トラップの密度も高くすることができる。
【0061】
上記実施形態の半導体装置の一例はさらに、前記半導体層の前記上面から前記p型半導体領域を貫通して前記n型半導体領域に達するトレンチ内に設けられているトレンチゲート部を備えていてもよい。前記トラップ領域は、前記トレンチゲート部の側面から離れた位置に配置されていてもよい。この実施形態の半導体装置では、チャネル抵抗の増加を抑えながら、リカバリ電流の増大も抑えることができる。
【0062】
上記実施形態の半導体装置の一例では、前記p型半導体領域が、前記トレンチゲート部の前記側面から離れた位置で前記トレンチゲート部の底面よりも下方に突出する電界緩和領域を有していてもよい。前記トラップ領域は、前記電界緩和領域の底面に接するように配置されていてもよい。この実施形態の半導体装置では、チャネル抵抗の増加を抑えながら、リカバリ電流の増大も抑えることができる。
【0063】
上記実施形態の半導体装置の他の一例はさらに、前記半導体層の前記上面から前記p型半導体領域を貫通して前記n型半導体領域に達するトレンチ内に設けられているトレンチゲート部をさらに備えていてもよい。前記p型半導体領域は、前記トレンチゲート部の前記側面から離れた位置で前記トレンチゲート部の底面よりも下方に突出する電界緩和領域を有していてもよい。前記トラップ領域は、前記電界緩和領域の底面に接するように配置されていてもよい。この実施形態の半導体装置では、少なくとも前記p型半導体領域のうちの前記電界緩和領域からの正孔注入を抑えることができる。
【0064】
上記実施形態の半導体装置の他の一例では、前記トラップ領域は、前記半導体層の面内方向において、少なくとも前記電界緩和領域の前記底面から前記トレンチゲート部の下方の位置まで延びており、前記トレンチゲート部の底面から離れた位置に配置されていてもよい。この実施形態の半導体装置では、前記p型半導体領域からの正孔注入を抑えることができる。
【0065】
上記実施形態の半導体装置の他の一例では、前記n型半導体領域のn型不純物の濃度分布は、前記トラップ領域に対応する範囲で他の範囲よりも高い分布を有していてもよい。この実施形態の半導体装置では、前記トラップ領域が電流分散領域として機能することができる。このため、この実施形態の半導体装置は、低オン抵抗な特性を有することができる。
【0066】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0067】
1 :ダイオード
10 :半導体層
12 :カソード領域
14 :高抵抗領域
14a :非トラップ領域
14b :トラップ領域
16 :アノード領域
22 :カソード電極
24 :アノード電極
110 :半導体層
112 :ドレイン領域
114 :高抵抗領域
114a :非トラップ領域
114b :トラップ領域
116 :ボディ領域
116a :メインボディ領域
116b :電界緩和領域
118 :ソース領域
122 :ドレイン電極
124 :ソース電極
130 :トレンチゲート部
132 :トレンチゲート電極
134 :ゲート絶縁膜