(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】広域浸水推定装置、広域浸水推定方法、及び広域浸水推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20250228BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20250228BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2022099312
(22)【出願日】2022-06-21
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 康平
(72)【発明者】
【氏名】木村 亜紀
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-309632(JP,A)
【文献】国際公開第2021/255822(WO,A1)
【文献】特開2019-087251(JP,A)
【文献】国際公開第2021/084699(WO,A1)
【文献】特許第6908947(JP,B1)
【文献】特開2022-041049(JP,A)
【文献】特開2021-140644(JP,A)
【文献】特開2020-119336(JP,A)
【文献】特開2020-067679(JP,A)
【文献】特開2018-132504(JP,A)
【文献】特開2017-201243(JP,A)
【文献】特開2004-197554(JP,A)
【文献】特開2003-168179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0149929(US,A1)
【文献】武田 英祐 他,堤防破堤リスクや内水氾濫を考慮したリアルタイム浸水把握・浸水予測システムの構築,河川技術論文集,2021年06月,第27巻,75~80頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00
G06Q 50/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に存在する1つ以上の機器から構成される機器群の各機器に対応する異常を示す信号に基づいて前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害を推定する局所浸水推定部と、
推定された前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害と、
前記機器群の各機器が存在する地点以外の地点の標高を示す情報とを用いて、リモートセンシングによって取得されたデータに対応する浸水情
報を補正する高精度化部と
を備える広域浸水推定装置。
【請求項2】
前記機器群の各機器は家電機器であり、
前記機器群の各機器はネットワークに接続されている請求項1に記載の広域浸水推定装置。
【請求項3】
前記機器群は2つ以上の機器から構成され、
前記高精度化部は、前記機器群に含まれている複数の機器の各々が存在する地点における推定された浸水被害に基づいて、前記複数の機器の各々が存在する地点以外の地点における浸水被害を推定する請求項1又は2に記載の広域浸水推定装置。
【請求項4】
前記局所浸水推定部は、前記機器群に含まれている対象機器の通信が途絶している場合に、前記対象機器に対応する異常が生じているものと推定する請求項1又は2に記載の広域浸水推定装置。
【請求項5】
前記局所浸水推定部は、前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害として、前記機器群の各機器が存在する地点における浸水の深さを推定する請求項1又は2に記載の広域浸水推定装置。
【請求項6】
前記浸水情報は、人工衛星に搭載されているセンサが取得したデータに対応する情報である請求項1又は2に記載の広域浸水推定装置。
【請求項7】
コンピュータが、地上に存在する1つ以上の機器から構成される機器群の各機器に対応する異常を示す信号に基づいて前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害を推定し、
前記コンピュータが、推定された前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害と、
前記機器群の各機器が存在する地点以外の地点の標高を示す情報とを用いて、リモートセンシングによって取得されたデータに対応する浸水情
報を補正する広域浸水推定方法。
【請求項8】
地上に存在する1つ以上の機器から構成される機器群の各機器に対応する異常を示す信号に基づいて前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害を推定する局所浸水推定処理と、
推定された前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害と、
前記機器群の各機器が存在する地点以外の地点の標高を示す情報とを用いて、リモートセンシングによって取得されたデータに対応する浸水情
報を補正する高精度化処理と
をコンピュータである広域浸水推定装置に実行させる広域浸水推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広域浸水推定装置、広域浸水推定方法、及び広域浸水推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の機器から情報を収集し、収集した情報に基づいて自然災害の程度を推定する手法がある。
特許文献1は、高さが互いに異なる位置に複数の機器の各々が設置されているとき、各機器のログデータと、各機器が設置されている位置の高さを示す情報とを収集し、各機器の異常の有無から浸水の程度を推定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/255822号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する技術によれば、浸水の程度を把握することができる地点が各機器が配置されている地点に限定されるという課題がある。
【0005】
本開示は、浸水の程度を把握することができる地点が各機器が配置されている地点に限定されないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る広域浸水推定装置は、
地上に存在する1つ以上の機器から構成される機器群の各機器に対応する異常を示す信号に基づいて前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害を推定する局所浸水推定部と、
推定された前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害と、リモートセンシングによって取得されたデータに対応する浸水情報と、前記機器群の各機器が存在する地点以外の地点の標高を示す情報とに基づいて、前記機器群の各機器が存在する地点以外の地点における浸水被害を推定する高精度化部と
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、局所浸水推定部が、地上に存在する機器群の各機器に対応する異常を示す信号を用いて浸水被害を推定する。また、高精度化部が、推定された機器群の各機器が存在する地点における浸水被害と、リモートセンシングによって取得されたデータに対応する浸水情報とを用いて、機器群の各機器が存在する地点と、機器群の各機器が存在しない地点とを含む領域における浸水被害を推定する。従って、本開示によれば、浸水の程度を把握することができる地点が各機器が配置されている地点に限定されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る広域浸水推定システム90の構成例を示す図。
【
図2】実施の形態1に係る広域浸水推定装置100の構成例を示す図。
【
図3】実施の形態1に係る高精度化部102の処理を説明する図であり、(a)は従来手法を説明する図、(b)及び(c)の各々は高精度化部102の処理結果を説明する図。
【
図4】実施の形態1に係る広域浸水推定システム90の構成例を示す図。
【
図5】実施の形態1に係る広域浸水推定装置100のハードウェア構成例を示す図。
【
図6】実施の形態1に係る広域浸水推定装置100の動作を示すフローチャート。
【
図7】実施の形態1の変形例に係る広域浸水推定装置100のハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態の説明及び図面において、同じ要素及び対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略又は簡略化する。図中の矢印はデータの流れ又は処理の流れを主に示している。また、「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。
【0010】
実施の形態1.
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る広域浸水推定システム90の構成例を示している。広域浸水推定システム90は、
図1に示すように、広域浸水推定装置100と、対象領域200内に存在する機器群と、人工衛星300とを備える。
【0012】
対象領域200内には機器群が存在する。対象領域200は、浸水被害を推定する対象となる領域である。対象領域200内には1つ以上の地点が存在する。各地点には1つ以上の機器が存在する。
図1において、地点201と、地点202とが対象領域200内に存在する。ここで、地点という用語は面積がある領域を示すこともある。
機器群は、典型的には2つ以上の機器から構成される。機器群は1つの機器から構成されてもよい。以下、「各機器」は特に断りがない限り機器群の各機器を意味する。各機器は、通信モジュールを有するIoT(Internet of Things)機器であり、ネットワークに接続されていてもよい。ネットワークは、典型的には広域通信ネットワークである。各機器は、地上に存在し、また、各機器に対応する異常が発生した場合に異常信号DIN3を送信する。各機器に対応する異常は、具体例として、各機器の異常、各機器と連携している機器の異常、又は各機器の周囲の異常である。各機器は、各機器に搭載されているセンサが取得したデータに基づいて各機器に対応する異常が発生したか否かを判定してもよい。各機器に搭載されているセンサは、具体例として、カメラ、サーモカメラ、又は環境センサである。なお、地上という用語は、地上に存在する構造物に接する領域等、地表に接していない領域を指すこともある。各機器は、建物81の内部に存在してもよく、建物81の外部に存在してもよい。各機器は、直接的に又は間接的に広域浸水推定装置100と通信する。各機器は、具体例として一般的な家電機器である。各機器は、具体例として、テレビ53と、洗濯機54と、室内ユニット55と、室外ユニット56と、スマートメータ57とのいずれかである。各機器は、自動車又は自動販売機であってもよい。
【0013】
人工衛星300は、リモートセンシングによって地表を観測する観測装置を搭載しており、観測装置の観測結果を示すデータを直接的に又は間接的に広域浸水推定装置100に送信する。人工衛星300が搭載している観測装置は、地表における水害の程度を観測することができる装置であればどのような装置であってもよい。
なお、広域浸水推定システム90は、人工衛星300の代わりに、又は人工衛星300に加えて、ドローン等の小型飛行機を備えてもよい。ここで、小型飛行機は観測装置を搭載している。
【0014】
図2は、本実施の形態に係る広域浸水推定装置100の構成例を示している。広域浸水推定装置100は、本図に示すように、局所浸水推定部101と、高精度化部102とを備える。広域浸水推定装置100は、クラウドシステムによって実現されてもよく、オンプレミスによって実現されてもよい。
【0015】
局所浸水推定部101は、各機器に対応する異常信号DIN3に基づいて各機器が存在する地点における浸水被害を推定し、推定した浸水被害を示す局所浸水情報D101を生成する。この際、局所浸水推定部101は、各機器が存在する位置の地表からの高さを示す情報を用いてもよい。局所浸水推定部101は、具体例として、各機器が存在する地点における浸水被害として、各機器が存在する地点における浸水の深さを推定する。浸水の深さは、具体例として、ある時点における浸水の深さ、又はある時間帯における浸水の深さの平均である。本例において、局所浸水推定部101は、ある機器に対応する異常信号DIN3を受け取った場合に、当該ある機器が存在する地点における浸水の深さは当該ある機器が存在する位置の高さ以上であると推定してもよい。
また、局所浸水推定部101は、機器群に含まれている対象機器の通信が途絶している場合に、対象機器に対応する異常が生じているものと推定してもよい。この際、局所浸水推定部101は、対象機器に対応する異常信号DIN3を故障判定時間以上連続して受け取らなかった場合に、対象機器の通信が途絶しているとみなしてもよい。局所浸水推定部101は、対象機器から異常信号DIN3を受け取らなかった原因を推定する際に、対象機器に対応する異常信号DIN3の時系列データを用いてもよく、他の機器に対応する異常信号DIN3を用いてもよく、停電中の地域を示す情報を用いてもよい。
局所浸水推定部101は、対象地点内に存在する複数の機器の各々に対応する異常信号DIN3を用いて対象地点における浸水被害を推定してもよい。
【0016】
異常信号DIN3は、各機器に対応する異常を示す信号である。異常信号DIN3は、各機器に異常が生じていることを示す信号であってもよく、各機器に生じている異常の内容を具体的に示す信号であってもよく、各機器の周囲に異常が生じていることを示す信号であってもよい。また、異常信号DIN3は、各機器に搭載されているセンサの観測結果を示すデータを含んでもよい。なお、広域浸水推定装置100は、各機器から異常信号DIN3を直接受信してもよく、各機器のログデータを収集するサーバ等から異常信号DIN3を受信してもよい。
【0017】
高精度化部102は、局所浸水情報D101と、標高情報DIN2とを用いて広域浸水情報DIN1を高精度化することにより広域浸水情報DOUTを生成する。この際、高精度化部102は、局所浸水情報D101と標高情報DIN2とに基づいて、機器群の各機器が存在する地点以外の地点における浸水被害を推定する。高精度化部102は、機器群に含まれている複数の機器の各々が存在する地点における局所浸水推定部101によって推定された浸水被害に基づいて、複数の機器の各々が存在する地点以外の地点における浸水被害を推定してもよい。広域浸水情報DIN1を高精度化することは、局所浸水情報D101に基づいて広域浸水情報DIN1を補正することである。高精度化部102は、浸水情報高精度化部とも呼ばれる。
高精度化部102は、機械学習等のAI(Artificial Intelligence)技術を用いて広域浸水情報DOUTを生成してもよい。この際、具体例として、高精度化部102は、局所浸水情報D101と広域浸水情報DIN1と標高情報DIN2と、広域浸水情報DOUTとの関係を学習した推論モデルを用いる。当該推論モデルにおいて、入力は局所浸水情報D101と広域浸水情報DIN1と標高情報DIN2とであり、出力は広域浸水情報DOUTである。
【0018】
広域浸水情報DIN1は、広域における浸水被害を示す情報であり、リモートセンシングによって取得されたデータに対応する浸水情報である。リモートセンシングによって取得されたデータに対応する浸水情報は、リモートセンシングによって取得されたデータそのものであってもよく、リモートセンシングによって取得されたデータを加工した情報であってもよい。広域浸水情報DIN1は、具体例として、人工衛星300に搭載されているセンサが取得したデータに対応する情報、又は、小型飛行機に搭載されているセンサが取得したデータに対応する情報である。
【0019】
標高情報DIN2は、浸水被害の推定対象である領域内の各地点の標高を示す情報である。標高情報DIN2は、機器群の各機器が存在する地点以外の地点の標高を示す情報を含む。
【0020】
広域浸水情報DOUTは、広域における浸水被害を示す情報である。広域浸水情報DOUTは高精度広域浸水情報とも呼ばれる。
【0021】
図3は、高精度化部102の処理を説明する図である。ここで、リモートセンシングに基づく浸水域は、広域浸水情報DIN1が示す浸水域である。
図3の(a)は従来手法により浸水深を推定した結果を示している。従来手法では、SAR(Synthetic Aperture Radar)画像から得られた浸水域を示す情報と、DEM(Digital Elevation Model)が示す標高情報とを用いて水平な浸水面を推定し、推定した浸水面と、各地点における標高との差分を各地点における浸水の深さとしていた。しかしながら、浸水面が水平であるとは限らないため、従来手法では各地点における浸水の深さを比較的高い精度で推定することができなかった。
図3の(b)は、高精度化部102の処理結果の具体例を示している。ここで、位置P1及び位置P2の各々に機器が存在し、局所浸水推定部101は、位置P1における浸水の深さがa[m]であり、位置P2における浸水の深さがb[m]であると推定したものとする。このとき、高精度化部102は、具体例として、局所浸水推定部101による位置P1及び位置P2の各々における浸水の深さの推定結果に基づいて内挿を実行することにより位置P1及び位置P2の間に存在する各地点における水面を推定し、推定した各地点における水面と、各地点における標高とに基づいて各地点における浸水の深さを推定する。また、高精度化部102は、具体例として、局所浸水推定部101による位置P1及び位置P2の各々における浸水の深さの推定結果に基づいて外挿を実行することにより位置P1及び位置P2の外側に存在する各地点における水面を推定し、推定した各地点における水面と、各地点における標高とに基づいて各地点における浸水の深さをする。また、高精度化部102は、局所浸水推定部101の推定結果に基づいて浸水の深さを推定することができない各地点については、具体例として、局所浸水推定部101の推定結果に基づいて推定した水面と整合するよう各地点における水面を推定し、推定した各地点における水面と、各地点における標高とに基づいて各地点における浸水の深さを推定する。高精度化部102は、推定した浸水の深さに基づいて広域浸水情報DIN1が示す浸水の深さを補正することにより広域浸水情報DOUTを生成する。なお、高精度化部102は、局所浸水推定部101の推定結果と、標高情報DIN2とに基づいて広域浸水情報DIN1が示す浸水域を適宜修正してもよい。
図3の(b)において、浸水域の水面に傾斜があるために浸水域が修正されている。また、高精度化部102は、局所浸水推定部101によって浸水の深さが推定された3つ以上の地点に囲まれている各地点における浸水の深さを推定してもよい。
図3の(c)は、高精度化部102の処理結果の具体例を示している。ここで、位置P1及び位置P2の各々に機器が存在し、局所浸水推定部101は、時刻t1と時刻t2と時刻t3との各々において位置P1及び位置P2の各々における浸水の深さを推定したものとする。高精度化部102は、時刻t1と時刻t2と時刻t3との各々における局所浸水推定部101の推定結果を用いて
図3の(b)において説明した処理を実行することにより、時刻t1と時刻t2と時刻t3との各々における各地点における浸水の深さを推定する。
【0022】
図4は、広域浸水推定システム90のネットワーク構成例を示している。本例において、広域浸水推定システム90は、家電ネットワークシステム91と、防災ネットワークシステム92とを備える。
【0023】
家電ネットワークシステム91は、ネットワークに接続されている1つ以上の家電機器から成るシステムである。
異常検知部は、ネットワークに接続されている家電機器の異常を検知した場合に、当該家電機器に対応する異常信号と、当該家電機器の位置を示す位置情報とを、ルータ及びネットワークを介してサーバに送信する。サーバはクラウドサーバであってもよい。なお、家電ネットワークシステム91がクラウドシステムである場合において、エッジ側が異常検知を行ってもよく、クラウド側が異常検知を行ってもよい。エッジ側が異常検知を行う場合において、各家電機器を監視する装置が異常検知部を備えていてもよく、各家電機器が異常検知部を備えていてもよく、各家電機器に接続しているIoTアダプタが異常検知部を備えていてもよい。クラウド側が異常検知を行う場合において、クラウドサーバが異常検知部を備えていてもよい。クラウドサーバが異常検知部を備える場合において、具体例として、各家電機器は生成した信号と取得したデータとをクラウドサーバに送信する。
サーバは、ネットワークを介して広域浸水推定装置100に異常信号及び位置情報を送信する。なお、サーバは、位置情報を広域浸水推定装置100に送信しなくてもよく、また、位置情報の代わりに家電機器が存在する地点を示す情報を広域浸水推定装置100に送信してもよい。
【0024】
防災ネットワークシステム92は、リモートセンシングによって取得されたデータに基づいて災害に関する情報を生成するシステムである。災害に関する情報は、具体例として、災害の予兆と、災害の状況との少なくともいずれかを示す情報である。防災ネットワークシステム92は、具体例として、広域浸水推定装置100と、人工衛星300とを備える。
【0025】
図5は、本実施の形態に係る広域浸水推定装置100のハードウェア構成例を示している。広域浸水推定装置100はコンピュータから成る。広域浸水推定装置100は複数のコンピュータから成ってもよい。
【0026】
広域浸水推定装置100は、本図に示すように、プロセッサ11と、メモリ12と、補助記憶装置13と、入出力IF(Interface)14と、通信装置15等のハードウェアを備えるコンピュータである。これらのハードウェアは、信号線19を介して適宜接続されている。
【0027】
プロセッサ11は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)であり、かつ、コンピュータが備えるハードウェアを制御する。プロセッサ11は、具体例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はGPU(Graphics Processing Unit)である。
広域浸水推定装置100は、プロセッサ11を代替する複数のプロセッサを備えてもよい。複数のプロセッサはプロセッサ11の役割を分担する。
【0028】
メモリ12は、典型的には揮発性の記憶装置であり、具体例としてRAM(Random Access Memory)である。メモリ12は、主記憶装置又はメインメモリとも呼ばれる。メモリ12に記憶されたデータは、必要に応じて補助記憶装置13に保存される。
【0029】
補助記憶装置13は、典型的には不揮発性の記憶装置であり、具体例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、又はフラッシュメモリである。補助記憶装置13に記憶されたデータは、必要に応じてメモリ12にロードされる。
メモリ12及び補助記憶装置13は一体的に構成されていてもよい。
【0030】
入出力IF14は、入力装置及び出力装置が接続されるポートである。入出力IF14は、具体例として、USB(Universal Serial Bus)端子である。入力装置は、具体例として、キーボード及びマウスである。出力装置は、具体例として、ディスプレイである。
【0031】
通信装置15は、レシーバ及びトランスミッタである。通信装置15は、具体例として、通信チップ又はNIC(Network Interface Card)である。
【0032】
広域浸水推定装置100の各部は、他の装置等と通信する際に、入出力IF14及び通信装置15を適宜用いてもよい。
【0033】
補助記憶装置13は広域浸水推定プログラムを記憶している。広域浸水推定プログラムは、広域浸水推定装置100が備える各部の機能をコンピュータに実現させるプログラムである。広域浸水推定プログラムは、メモリ12にロードされて、プロセッサ11によって実行される。広域浸水推定装置100が備える各部の機能は、ソフトウェアにより実現される。
【0034】
広域浸水推定プログラムを実行する際に用いられるデータと、広域浸水推定プログラムを実行することによって得られるデータ等は、記憶装置に適宜記憶される。広域浸水推定装置100の各部は記憶装置を適宜利用する。記憶装置は、具体例として、メモリ12と、補助記憶装置13と、プロセッサ11内のレジスタと、プロセッサ11内のキャッシュメモリとの少なくとも1つから成る。なお、データという用語と情報という用語と信号という用語とは同等の意味を有することもある。記憶装置は、コンピュータと独立したものであってもよい。
メモリ12及び補助記憶装置13の機能は、他の記憶装置によって実現されてもよい。
【0035】
広域浸水推定プログラムは、コンピュータが読み取り可能な不揮発性の記録媒体に記録されていてもよい。不揮発性の記録媒体は、具体例として、光ディスク又はフラッシュメモリである。広域浸水推定プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0036】
***動作の説明***
広域浸水推定装置100の動作手順は広域浸水推定方法に相当する。また、広域浸水推定装置100の動作を実現するプログラムは広域浸水推定プログラムに相当する。
【0037】
図6は、広域浸水推定装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
図6を用いて広域浸水推定装置100の動作を説明する。
【0038】
(ステップS101)
局所浸水推定部101は、各機器に対応する異常が生じている場合に、各機器が存在する地点における浸水被害を推定する。
【0039】
(ステップS102)
まず、高精度化部102は、局所浸水推定部101によって推定された各機器が存在する地点における浸水被害を示す情報と、広域浸水情報DIN1と、標高情報DIN2とを用いて、各機器が存在しない地点における浸水被害を推定する。
次に、高精度化部102は、局所浸水推定部101及び高精度化部102の各々が推定した浸水被害を広域浸水情報DIN1に反映することによって広域浸水情報DOUTを生成する。なお、広域浸水情報DOUTは広域浸水情報DIN1を高精度化した情報に当たる。
【0040】
***実施の形態1の効果の説明***
以上のように、本実施の形態によれば、リモートセンシングによって取得されたデータに基づく浸水情報と、地上に存在する機器に異常が生じていることを示す信号とを用いて浸水被害を推定するため、比較的精度が高い広域の浸水情報を取得することができる。
また、機器から取得したデータを総合して用いる場合、情報の空間的な分解能は機器の分布に依存する。そのため、専用機器を用いてデータを取得する場合、郊外等の専用機器が多く存在しない領域では情報の空間精度が著しく低下するという課題が従来技術にはある。一方、本実施の形態によれば、一般的な家電機器を用いてデータを取得することもできる。そのため、本実施の形態によれば、郊外等であっても情報の空間精度が比較的高くなる。
【0041】
また、衛星を用いてリモートセンシングにより浸水域を推定する場合、衛星からデータを1日に数回程度しか取得することができないために浸水域は1日に数回程度しか更新されない。そのため、浸水域及び浸水の深さが変化したとしても変化した浸水域及び浸水の深さをすぐには推定することができないという課題が従来手法にはあった。
一方、本実施の形態によれば、各機器に対応する異常信号を用いて浸水域及び浸水の深さを推定する。ここで、各機器に対応する異常信号は比較的高い頻度で取得される。そのため、本実施の形態によれば、浸水域及び浸水の深さが変化した場合において変化した浸水域及び浸水の深さを比較的早く推定することができる。
【0042】
***他の構成***
<変形例1>
局所浸水推定部101は、異常信号DIN3の代わりに、又は異常信号DIN3に加えて、センサの観測結果を示す信号を用いてもよい。ここで、センサは典型的には地上に設置されている。センサは、具体例として、水面の位置を観測するセンサ、水深を観測するセンサ、又は水圧を観測するセンサである。局所浸水推定部101は、センサが設置されている位置の高さを示す情報を用いてもよい。
【0043】
<変形例2>
図7は、本変形例に係る広域浸水推定装置100のハードウェア構成例を示している。
広域浸水推定装置100は、プロセッサ11、プロセッサ11とメモリ12、プロセッサ11と補助記憶装置13、あるいはプロセッサ11とメモリ12と補助記憶装置13とに代えて、処理回路18を備える。
処理回路18は、広域浸水推定装置100が備える各部の少なくとも一部を実現するハードウェアである。
処理回路18は、専用のハードウェアであってもよく、また、メモリ12に格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
【0044】
処理回路18が専用のハードウェアである場合、処理回路18は、具体例として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はこれらの組み合わせである。
広域浸水推定装置100は、処理回路18を代替する複数の処理回路を備えてもよい。複数の処理回路は、処理回路18の役割を分担する。
【0045】
広域浸水推定装置100において、一部の機能が専用のハードウェアによって実現されて、残りの機能がソフトウェア又はファームウェアによって実現されてもよい。
【0046】
処理回路18は、具体例として、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせにより実現される。
プロセッサ11とメモリ12と補助記憶装置13と処理回路18とを、総称して「プロセッシングサーキットリー」という。つまり、広域浸水推定装置100の各機能構成要素の機能は、プロセッシングサーキットリーにより実現される。
【0047】
***他の実施の形態***
実施の形態1について説明したが、本実施の形態のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、本実施の形態を部分的に実施しても構わない。その他、本実施の形態は、必要に応じて種々の変更がなされても構わず、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施されても構わない。
なお、前述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示と、その適用物と、用途の範囲とを制限することを意図するものではない。フローチャート等を用いて説明した手順は適宜変更されてもよい。
【0048】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0049】
(付記1)
地上に存在する1つ以上の機器から構成される機器群の各機器に対応する異常を示す信号に基づいて前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害を推定する局所浸水推定部と、
推定された前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害と、リモートセンシングによって取得されたデータに対応する浸水情報と、前記機器群の各機器が存在する地点以外の地点の標高を示す情報とに基づいて、前記機器群の各機器が存在する地点以外の地点における浸水被害を推定する高精度化部と
を備える広域浸水推定装置。
【0050】
(付記2)
前記機器群の各機器は家電機器であり、
前記機器群の各機器はネットワークに接続されている付記1に記載の広域浸水推定装置。
【0051】
(付記3)
前記機器群は2つ以上の機器から構成され、
前記高精度化部は、前記機器群に含まれている複数の機器の各々が存在する地点における推定された浸水被害に基づいて、前記複数の機器の各々が存在する地点以外の地点における浸水被害を推定する付記1又は2に記載の広域浸水推定装置。
【0052】
(付記4)
前記局所浸水推定部は、前記機器群に含まれている対象機器の通信が途絶している場合に、前記対象機器に対応する異常が生じているものと推定する付記1から3のいずれか1つに記載の広域浸水推定装置。
【0053】
(付記5)
前記局所浸水推定部は、前記機器群の各機器が存在する地点における浸水被害として、前記機器群の各機器が存在する地点における浸水の深さを推定する付記1から4のいずれか1つに記載の広域浸水推定装置。
【0054】
(付記6)
前記浸水情報は、人工衛星に搭載されているセンサが取得したデータに対応する情報である付記1から5のいずれか1つに記載の広域浸水推定装置。
【符号の説明】
【0055】
11 プロセッサ、12 メモリ、13 補助記憶装置、14 入出力IF、15 通信装置、18 処理回路、19 信号線、53 テレビ、54 洗濯機、55 室内ユニット、56 室外ユニット、57 スマートメータ、81 建物、90 広域浸水推定システム、91 家電ネットワークシステム、92 防災ネットワークシステム、100 広域浸水推定装置、101 局所浸水推定部、102 高精度化部、200 対象領域、201,202 地点、300 人工衛星、DIN1 広域浸水情報、DIN2 標高情報、DIN3 異常信号、D101 局所浸水情報、DOUT 広域浸水情報。