(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】焙煎方法
(51)【国際特許分類】
A23N 12/08 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
A23N12/08 A
(21)【出願番号】P 2022563948
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021061004
(87)【国際公開番号】W WO2021219650
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2024-04-04
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】デュビエフ, フラヴィアン, フローラン
(72)【発明者】
【氏名】ビグラー, ニコラス
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0208798(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0266229(US,A1)
【文献】特開2018-113958(JP,A)
【文献】特表2016-536989(JP,A)
【文献】特開2004-105185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0074400(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎装置(X)を使用してコーヒー豆を焙煎する方法であって、前記焙煎装置(X)が、
コーヒー豆を収容するためのチャンバ(1)と、
前記チャンバに熱風を供給するように構成されている、加熱デバイス(2)と、
前記加熱デバイスによって供給された空気の温度を測定するための、少なくとも1つの温度プローブ(5)と、
前記加熱デバイス(2)を制御するように構成されており、焙煎レシピを再現するように構成されている、制御システム(80)であって、前記焙煎レシピが、連続する別個の時点t
iにおいてそれぞれ適用され
る温度を表すものであり、前記加熱デバイス(2)の前記制御が、前記少なくとも1つの温度プローブ(5)によって測定された温度T
regに基づいて、フィードバックループ調節を実施する、制御システム(80)と、を備え、
前記焙煎装置(X)を使用して、コーヒー豆焙煎レシピR
setを再現することによる、コーヒー豆の新たな焙煎動作を実施する前に、前記フィードバックループ調節が調整され、前記焙煎レシピR
setが、1つの特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された少なくとも1セットの点(T
set@ti;t
i)を提供するものであり、
前記調整の動作が、
前記新たな焙煎動作の条件Ciのうちの、少なくとも1つを提供するステップと、
前記新たな焙煎動作の提供された各条件Ciと、前記マスタ焙煎装置(M)を使用した前記焙煎レシピR
setの前記定義の際に元々適用されていた、対応する基準条件Ci
refとを比較するステップと、
前記新たな焙煎動作の前記提供された条件Ciと、前記対応する基準条件Ci
Refとの間に、差異が認められる場合には、
前記認められた差異に基づいて、焙煎条件の性質及びCi
Refとの前記差異に固有の、対応する予め定められた補正K
Ciにアクセスするステップと、
前記焙煎装置(X)によって再現される前記焙煎レシピの前記温度T
set@tiのうちの少なくとも1つに、前記対応する予め定められた補正K
Ciを直接的又は間接的に適用するステップと、を含む、コーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの温度プローブ(5)が、前記チャンバ(1)の外部に配置されている、請求項1に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項3】
前記特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された前記コーヒー豆焙煎レシピR
setが、同じタイプの豆C
nの、1つの予め定められた量M
nの焙煎に適合されており、かつ連続する別個の時点t
iにおいてそれぞれ適用される温度T
Mn@tiを提供する、焙煎レシピR
Mnである、請求項1又は2に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項4】
前記焙煎条件Ciのうちの前記少なくとも1つが、以下の特徴:
周囲温度、周囲湿度、圧力、標高などの外部周囲条件、
使用される焙煎装置のタイプ、
前記加熱デバイスが電気的にエネルギー供給される場合には、電力源のタイプ、周波数、又は電圧、
前記加熱デバイスが少なくとも1つのガスバーナによってエネルギー供給される場合には、使用されるガスのタイプ、前記使用されるガスの圧力、及び/又は、前記使用されるガスの流量などの、前記ガスの供給のパラメータ、
使用されるコーヒー豆の量m、前記コーヒー豆の水分レベル、コーヒー豆のタイプの特性の変動などの、焙煎される前記コーヒー豆の特性、
焙煎のレベルなどの、所望のアロマプロファイルの特性、のうちの、少なくとも1つに関連する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項5】
補正のタイプに応じて、前記フィードバックループ調節が、設置時に、定期的に、及び/又は各焙煎動作の前に調整される、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項6】
前記焙煎装置(X)を使用したコーヒー豆の前記新たな焙煎動作中に、前記新たな焙煎動作の前記条件Ciのうちの少なくとも1つ、好ましくは外部周囲条件が監視され、
監視される少なくとも1つの前記条件Ciが、コーヒー豆の前記新たな焙煎動作中に変化する場合には、前記調整の動作の前記ステップが再び実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項7】
前記新たな焙煎動作の1つの条件Ciに固有の、前記予め定められた補正K
ciが、係数a
ciによって定義され、
前記係数が、前記特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された、再現される前記焙煎レシピによって提供される、前記温度T
setに直接適用され、前記補正が、前記フィードバックループ調節において、T
setをa
ciT
setによって置き換えることを含むものであり、
又は
前記補正が、前記少なくとも1つの温度プローブ(5)によって測定された前記温度T
regに適用され、前記補正が、前記フィードバックループ調節において、T
regをT
reg/a
ciによって置き換えることを含むものであり、
式中、a
ciが、特に前記条件Ci及び前記認められた差異について予め定められている、予め定められた係数である、又はデフォルトで1に等しい、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項8】
前記調整の動作が、
いくつかの特定の焙煎条件Ciを提供するステップと、
前記特定の焙煎条件Ciの一つ一つを、前記特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された前記焙煎レシピの前記定義の際に使用された、前記対応する基準条件と比較するステップと、
前記特定の焙煎条件Ciのうちの2つ以上について、前記特定の焙煎条件と前記対応する基準条件との間に、差異が認められる場合には、
前記認められた差異のそれぞれに基づいて、焙煎条件Ciに固有の、前記対応する予め定められた補正Kciにアクセスするステップと、
前記対応する予め定められた補正Kciの選択に基づいて、前記フィードバックループ調節に補正Kを適用するステップであって、前記補正Kが、係数Aによって定義され、A=Π
ia
Ciである、適用するステップと、を含む、請求項7に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項9】
前記コーヒー豆が、前記チャンバの内部に導入される、少なくとも2種の異なるコーヒー豆(コーヒーA、コーヒーB、...、コーヒーN)のブレンドであり、
前記制御システムが、前記ブレンド中に含まれている各タイプのコーヒー豆のコーヒーnについて、少なくとも、前記コーヒー豆の前記コーヒーのタイプnと、前記チャンバ内に導入される、前記タイプのコーヒーNの量m
nとを取得するように構成されており、
前記ブレンドの、少なくとも1つのタイプの前記コーヒーnの部分について、前記コーヒーnの特性に関連する特定の焙煎条件C
coffee iと、前記コーヒーnの前記特性に関連する、対応する基準焙煎条件C
coffee i Refとの間に、少なくとも1つの差異が認められる場合には、
前記ブレンドについて前記焙煎条件C
coffee iに固有の、補正Kc
coffee iのグローバル係数a
C coffee i blendが計算され、前記グローバル係数が、以下のように計算され:
【数1】
式中、nが、前記ブレンド中に存在する全ての前記タイプのコーヒー豆C
A~C
Nに対応し、f
nが、コーヒー豆の前記ブレンド中での、タイプC
nのコーヒー豆の重量分率を表す、請求項8に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項10】
前記フィードバックループ調節に適用される、1つの焙煎条件Ciに固有の前記予め定められた補正K
ciが、追加的係数(b
ci)によって定義され、
前記補正が、前記再現される焙煎レシピによって提供される前記温度T
setに適用され、前記補正が、前記フィードバックループ調節において、T
setをa
ciT
set+b
ciによって置き換えることを含むものであり、
又は
前記補正が、前記少なくとも1つの温度プローブ(5)によって測定された前記温度T
regに適用され、前記補正が、前記フィードバックループ調節において、T
regを(T
reg-b
ci)/a
ciによって置き換えることを含むものであり、
式中、b
ciが、特に前記条件Ci及び前記認められた差異について予め定められている、予め定められたオフセットである、又はデフォルトで0に等しい、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記調整の動作において、
いくつかの特定の焙煎条件Ciを提供するステップと、
前記特定の焙煎条件Ciの一つ一つを、前記特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された前記焙煎レシピの前記定義の際に使用された、前記対応する基準条件Ci
refと比較するステップと、
前記特定の焙煎条件Ciのうちの2つ以上について、前記特定の焙煎条件と前記対応する基準条件との間に、差異が認められる場合には、
前記認められた差異のそれぞれに基づいて、焙煎条件Ciに固有の、前記対応する予め定められた補正Kciにアクセスするステップと、
前記対応する予め定められた補正Kciの選択に基づいて、前記フィードバックループ調節に補正Kを適用するステップであって、前記補正Kが、一対の係数(A、B)によって定義され、
A=Π
ia
Ci
B=Σ
ib
ciである、適用するステップと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
補正K
ciを定義する、前記係数a
ci及び任意選択的に係数b
ciにおいて、前記係数のうちの少なくとも一方が、焙煎レシピの前記再現中に、時間と共に変化し、任意選択的に、前記係数の両方が、異なる時間間隔にわたって一定である、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
補正Kciを定義する、前記係数a
ci及び任意選択的に係数b
ciにおいて、前記係数のうちの少なくとも一方が、焙煎レシピの前記再現中に、温度と共に変化する、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記新たな焙煎動作の1つの条件Ciに固有の、前記予め定められた補正K
ciが、係数D
ci、A
ci、及びB
ciによって定義され、
前記係数が、前記特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された、再現される前記焙煎レシピによって提供される、前記温度T
setに直接適用され、前記補正が、前記フィードバックループ調節において、T
setをD
ciT
set
2+A
ciT
set+B
ciによって置き換えることを含むものであり、
式中、D
ciが、特に前記条件Ci及び前記認められた差異について予め定められている、予め定められた係数である、又はデフォルトで0に等しい、
式中、A
ciが、特に前記条件Ci及び前記認められた差異について予め定められている、予め定められた係数である、又はデフォルトで1に等しい、
式中、B
ciが、特に前記条件Ci及び前記認められた差異について予め定められている、予め定められた係数である、又はデフォルトで0に等しい、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーヒー豆を焙煎する方法。
【請求項15】
前記焙煎装置において、前記少なくとも1つの温度プローブ(5)が、前記チャンバ(1)の外部に配置されており、1つの焙煎条件及び1つの認められた差異に固有の、予め定められた補正のそれぞれが、
a0 前記マスタ焙煎装置Mに、他の基準条件を修正することなく、前記特定の条件の差異を適用するステップと、
a 前記マスタ焙煎装置Mの前記チャンバの内部に、少なくとも1つの一時的温度プローブ(3)を導入するステップと、
b 予め設定された曲線R
setを再現するように前記加熱デバイスを制御するステップであって、前記予め設定された曲線が、予め設定された対応する連続する時点t
1、t
2、...、t
finalにそれぞれ適用される前記温度T
set@t1、T
set@t2、...T
set@tfinalを表す、1セットの点(T
set@ti;t
i)を提供するものであり、前記制御が、前記温度プローブ(5)によって測定された前記温度T
regに基づく、制御するステップと、
c 前記予め設定された曲線R
setの前記再現中に、前記一時的温度プローブ(3)において、時間の関数として前記チャンバの内部の温度Tcalを測定することにより、少なくとも1セットの点(T
cal@ti;t
i)の決定を可能にするステップと、
d 少なくとも1つの時点t
iにおいて測定された前記温度T
cal@tiと、前記マスタ焙煎装置(M)を使用して得られた、予め定められた基準曲線R
refの同じ時点t
iにおける温度T
ref@tiとを比較するステップであって、前記基準曲線R
refが、前記予め設定された曲線R
setを再現するように前記マスタ
焙煎装置の前記加熱デバイスを制御している間に、前記基準条件において前記特定のマスタ
焙煎装置(M)の前記チャンバ内で測定された、前記温度T
refを表している、比較するステップと、
前記比較に基づいて、前記焙煎条件及び前記差異に固有の前記補正を決定するステップと、によって、予め定められている、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱デバイス(
2)が、空気流ドライバ(121)を含み、前記制御システム(
80)が、前記空気流ドライバ(121)を制御するように動作可能であり、連続する別個の時点t
1、t
2、...においてそれぞれ適用される空気流F
@t1、F
@t2、...の設定点(F
@ti;t
i)を提供する、焙煎レシピ(R
Flow-set)を適用するように構成されており、
前記調整の動作が、
前記新たな焙煎動作の前記提供された条件Ciと前記対応する基準条件C
iRefとの間に、差異が認められる場合には、
前記認められた差異に基づいて、焙煎条件の性質及びC
iRefとの前記差異に固有の、対応する予め定められた補正K
Flow Ciにアクセスするステップと、
前記焙煎装置(X)によって再現される前記焙煎レシピの前記空気流F
set@tiのうちの少なくとも1つに、前記対応する予め定められた補正K
Flow Ciを直接的又は間接的に適用するステップと、を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
焙煎装置であって、
コーヒー豆を収容するためのチャンバ(1)と、
前記チャンバに熱風を供給するように構成されている、加熱デバイス(2)と、
前記加熱デバイスによって供給された空気の温度を測定するための、少なくとも1つの温度プローブ(5)と、
前記加熱デバイス(2)を制御するように構成されており、焙煎レシピを再現するように構成されている、制御システム(80)であって、前記焙煎レシピが、連続する別個の時点t
iにおいてそれぞれ適用され
る温度を表す、少なくとも1セットの点(T
@ti;t
i)を提供するものであり、前記加熱デバイス(2)の前記制御が、前記少なくとも1つの温度プローブ(5)によって測定された前記温度T
regに基づいて、フィードバックループ調節を実施する、制御システム(80)と、を備え、
前記制御システムが、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実施するように動作可能である、焙煎装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの温度プローブ(5)が、前記チャンバ(1)の外部に配置されている、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆焙煎装置、及びそのような装置を較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー豆の焙煎とは、焙煎チャンバ内にコーヒー豆を導入して、その豆に加熱を適用することにある。
【0003】
一般に、焙煎装置は、コーヒー豆を収容するためのチャンバと、チャンバに供給される空気を加熱するための加熱デバイスと、加熱デバイスによって供給される温度を調節するための温度プローブと、温度プローブ及び加熱デバイスと動作可能に通信するコントローラとを備える。コントローラは、加熱デバイスを作動及び停止させるように動作する。コントローラは、特定の時点及び温度に対応する複数のデータ点を含む、予め定義された焙煎プロファイルを記憶している。コントローラは、定期的に、焙煎制御信号値を読み取り、その焙煎制御信号値を焙煎プロファイルと相関させて、その焙煎プロファイルに従ってコーヒー豆の温度を維持するべく加熱デバイスの動作を制御するように動作する。
【0004】
実際に、コントローラは、少なくとも1つの温度プローブによって測定された温度に基づいて、フィードバックループ調節を実施する。米国特許出願公開第2006/266229号又は刊行物XP055725065で説明されているような、フィードバックループ調節を実施することができる。
【0005】
この予め定義された焙煎プロファイルは、通常、特定のタイプのコーヒー豆について、コーヒー専門家によって定義されている。焙煎プロファイルは、このタイプのコーヒー豆の最適な焙煎を提供するように定義されている。この焙煎プロファイルを再現することは、豆を無駄にしないことと、そのコーヒー豆からコーヒーが調製される場合に最適な味を有する、焙煎コーヒー豆が得られることと、を保証するものである。通常、この予め定義された焙煎プロファイルは、特定の条件で使用される特定の焙煎装置を使用して、コーヒー専門家によって定義される。
【0006】
更には、或るタイプの豆が継続的に販売される場合、予め定義された焙煎プロファイルに基づいて、いずれの焙煎装置も、このタイプの豆を一貫して焙煎することが可能であり、同じ最終焙煎豆が再び得られることが期待されている。したがって、このタイプのコーヒー豆の新たなバッチが注文され、焙煎される場合には、同じ焙煎プロファイルを適用する焙煎装置は、同じ最終焙煎豆を一貫して再現しなければならない。
【0007】
異なる焙煎装置内での、特定のコーヒー豆の予め定義された焙煎プロファイルの一貫した再現は、いくつかの2つの理由で困難となり得る。
【0008】
焙煎プロファイル又は焙煎レシピは、最初に、コーヒー専門家によって、特定のタイプの豆について、特定の条件で使用される特定の焙煎装置を使用して定義される。
【0009】
この焙煎プロファイルが、同じタイプの豆について他の焙煎装置において再現される場合、いくつかの動作条件が異なる場合がある:
焙煎装置が若干異なる場合がある。例えば、焙煎装置が同じ基準で販売されている場合であっても、その同じ基準の下で、異なる生産バッチが生産され、各バッチが、他のバッチとは異なる方式で組み立てられている異なる内部構成要素を含む場合がある。これらの差異は、豆が焙煎される方式に直接影響を及ぼし得る。
豆のタイプが若干異なる場合がある。例えば、豆は、様々な条件で保管されている可能性があり、それらの含水量が変化している場合もあれば、又は、豆の前処理が変わっている場合もある。
焙煎動作の間に使用される豆の量が、異なる場合がある。
周囲温度、周囲圧力、周囲湿度、標高のような、焙煎プロファイルを最初に定義する際に使用された周囲条件が、再現する際に使用される周囲条件とは異なる場合がある。
【0010】
これらの差異は全て、焙煎プロファイルの一貫した再現に、多かれ少なかれ影響を及ぼす。この差異は、天候に応じて、日によって変化する可能性があり、焙煎される豆の量、豆の新たな供給に応じて、焙煎ごとに変化する可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、異なる焙煎装置において、及び異なる条件内で、同じタイプの豆に対して同じ焙煎プロファイルを一貫して焙煎する、この問題の解決策を提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様では、焙煎装置(X)を使用してコーヒー豆を焙煎する方法であって、この焙煎装置が、
コーヒー豆を収容するためのチャンバと、
チャンバに熱風流を供給するように構成されている、加熱デバイスと、
加熱デバイスによって供給された空気の温度を測定するための、少なくとも1つの温度プローブと、
加熱デバイスを制御するように構成されており、焙煎レシピを再現するように構成されている、制御システムであって、この焙煎レシピが、連続する別個の時点tiにおいてそれぞれ適用される温度を表すものであり、加熱デバイスの制御が、少なくとも1つの温度プローブによって測定された温度Tregに基づいて、フィードバックループ調節を実施する、制御システムと、を備え、
焙煎装置(X)を使用して、コーヒー豆焙煎レシピRsetを再現することによる、コーヒー豆の新たな焙煎動作を実施する前に、フィードバックループ調節が調整され、この焙煎レシピRsetが、1つの特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された少なくとも1セットの点(Tset@ti;ti)を提供するものであり、
上述の調整の動作が、
新たな焙煎動作の条件Ciのうちの、少なくとも1つを提供するステップと、
新たな焙煎動作の提供された各条件Ciと、上述の特定のマスタ焙煎装置(M)を使用した焙煎レシピRsetの定義の際に元々適用されていた、対応する基準条件Cirefとを比較するステップと、
その新たな焙煎動作のその提供された条件Ciと、対応する基準条件CiRefとの間に、差異が認められる場合には、
その認められた差異に基づいて、その焙煎条件の性質及びCi-refとの差異に固有の、対応する予め定められた補正KCiにアクセスするステップと、
焙煎装置(X)によって再現される焙煎レシピの温度Tset@tiのうちの少なくとも1つに、その対応する予め定められた補正KCiを直接的又は間接的に適用するステップと、を含む、コーヒー豆を焙煎する方法が提供される。
【0013】
この方法は、1つの特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義されたコーヒー豆焙煎レシピの再現に一貫性を持たせるための、コーヒー豆焙煎装置(X)におけるコーヒー豆の焙煎に関する。一般に、特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義されたコーヒー豆焙煎レシピRsetは、同じタイプの豆Cnの、1つの予め定められた量Mnの焙煎に適合されており、かつ連続する別個の時点tiにおいてそれぞれ適用される温度TMn@tiを提供する、焙煎レシピRMnである。
【0014】
通常、焙煎レシピは、特定のタイプのコーヒー豆(又は、種々の豆の特定のブレンド)について、1つの特定の焙煎装置を、特定の条件において操作するコーヒー専門家によって定義される(例えば、焙煎レシピは、通常、特定の周囲温度及び周囲湿度において、特定の量の豆、ある水分レベルを呈する豆を使用して定義される)。専門家が焙煎レシピを定義した、この焙煎装置が、マスタ焙煎装置として定義される。
【0015】
この方法は、特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義されたコーヒー豆焙煎レシピの一貫した再現を、通常は特定のマスタ焙煎装置(M)の製造コピーである他の装置(X)を使用して可能にすることを目的とする。
【0016】
この方法は、コーヒー豆を収容するためのチャンバと、加熱デバイスと、加熱デバイスによって供給される温度を調節するための少なくとも1つの温度プローブと、制御システムとを少なくとも備える、コーヒー豆焙煎装置に対して適用される。
【0017】
この方法は、上述のような任意のタイプの焙煎装置に適用することができる。
【0018】
チャンバは、焙煎プロセス中にコーヒー豆を収容するように設計されている。チャンバ内で、コーヒー豆は加熱され、かつ好ましくは、豆を通して加熱を均質化するために混合される。
【0019】
混合は、熱風の流動床を使用して得ることができ、又は、攪拌ブレードを使用して、若しくは回転ドラムの回転によって、機械的に得ることもできる。
【0020】
好ましくは、焙煎装置は、熱風流動床チャンバである。そのようなチャンバ内では、加熱された空気が、豆を持ち上げるのに十分な力で、コーヒー豆の下のスクリーン又は多孔板を通して、押し出される。熱は、この流動床内で豆がタンブリングして流通するにつれて、豆に伝達される。
【0021】
あるいは、焙煎装置は、加熱された環境においてコーヒー豆がタンブリングされる、ドラムチャンバとすることもできる。ドラムチャンバは、水平軸に沿って回転するドラムからなることができ、又はドラムチャンバは、加熱された環境においてコーヒー豆をタンブリングさせるための、撹拌ブレードを備え得る。
【0022】
チャンバは通常、焙煎動作中に生成された煙及びチャフを排出することが可能な、出口を含む。
【0023】
加熱デバイスは、チャンバ内に収容されているコーヒー豆を加熱するために、チャンバに供給される空気を加熱する。
【0024】
好ましくは、加熱デバイスは、熱風流を生成するように構成されており、この熱風流は、コーヒー豆を加熱するために、チャンバ内に収容されているコーヒー豆へと方向付けられる。通常、加熱デバイスは少なくとも、空気ドライバと、その空気ドライバによって生成された空気流を加熱するためのヒータとを含む。
【0025】
加熱デバイスは、天然ガス、液化石油ガス(liquefied petroleum gas;LPG)、又は更には木材によって供給される、バーナ(燃焼を意味するもの)を含み得る。あるいは、加熱デバイスは、電気抵抗器、セラミックヒータ、ハロゲン源、赤外線源、及び/又はマイクロ波源を含み得る。
【0026】
好ましくは、加熱デバイスは、電気的にエネルギー供給され、これにより、焙煎中に生成される空気汚染物質は、コーヒー豆自体の加熱からのみ生成される汚染物質であって、加熱源が天然ガス、プロパン、液化石油ガス(LPG)、又は更には木材を使用するガスバーナである場合に発生するような、ガスの燃焼から生成される汚染物質ではない。
【0027】
この装置は、加熱デバイスによって供給される温度を調節するための、少なくとも1つの温度プローブを備える。このプローブによって測定された温度が、フィードバックループ制御における制御システムの入力データとして使用される。好ましくは、この温度プローブは、チャンバの外部に配置されており、これは、その温度プローブが、焙煎動作中にコーヒー豆に接触しないことを意味する。好ましくは、この第1のプローブは、チャンバに供給される熱風の温度を測定するために、装置内に配置されており、それは通常は加熱デバイスとチャンバとの間にある。
【0028】
チャンバに供給される熱風の測定の精度を向上させるために、この装置は、少なくとも2つの温度プローブを備え得る。これらのプローブは、加熱デバイスからチャンバへと熱風流を駆動するように構成されている導管内に、好ましくは、その導管の局所的な横方向狭窄部内に配置することができ、各プローブは、その局所的な横方向狭窄部内の異なる半径方向位置に配置されている。
【0029】
任意選択的に、この装置は、チャンバの下流に別のプローブを備え得る。しかしながら、チャンバの下流のこのプローブのこの位置は、煙を放出した焙煎動作と接触することにより汚れが生じて、温度の正確な測定に影響を及ぼすことになるため、さほど好ましいものではない。
【0030】
さほど好ましくはないが、温度プローブをチャンバの内部に配置することもできる。
【0031】
この装置の制御システムは、焙煎レシピを再現するべく加熱デバイスを制御するように動作可能であり、この焙煎レシピは、連続する別個の時点tiにおいてそれぞれ適用される温度を表す、少なくとも1セットの点(T@ti;ti)を提供する。加熱デバイスのこの制御は、フィードバックループ制御における、少なくとも1つの温度プローブによって測定された温度Tregに基づくフィードバックループ調節の実施に基づくものである。フィードバックループ調節とは、通常、測定された温度Tregと適用されるべき温度Tとを比較することと、次いで、その比較に基づいて、予め定義された規則に従って加熱デバイスを制御することにある。そのようなフィードバックループ調節は、先行技術により周知である。
【0032】
2つ以上のプローブを装置が含む場合には、それら全てのプローブの測定値の平均値を、フィードバックループ調節における温度Tregとして、制御システムによって使用することができる。
【0033】
1つの特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義されたコーヒー豆焙煎レシピを再現することによる、コーヒー豆の焙煎前に、フィードバックループ調節が調整される。
【0034】
この調整の動作は、新たな焙煎動作の現在の条件Ciのうちの少なくとも1つを提供する、第1のステップを含む。これらの条件は、焙煎動作が行われることになる特定の状態に関連する。焙煎装置に応じて、これらの条件は、
周囲温度(Ctemp)、周囲湿度(Chumid)、圧力(Cpress)、標高(Calt)などの、外部周囲条件、
使用される焙煎装置のタイプ、特に、その内部構成要素と、これらの構成要素の組み立てとによって定義されるもの。このタイプは、製造シリーズ参照情報(Cserie)によって識別することができる。
加熱デバイスが電気的にエネルギー供給される場合には、電力源のタイプ、周波数、又は電圧、(Cpower)、
加熱デバイスが、少なくとも1つのガスバーナによってエネルギー供給される場合には、使用されるガスのタイプ、その使用されるガスの圧力、及び/又は、その使用されるガスの流量などの、ガスの供給のパラメータ(Cgas)、
使用されるコーヒー豆の量m(Cm)、コーヒー豆の水分レベル(Cmoist)、例えば季節性によって変化し得る密度などの、コーヒー豆のタイプの特性の変動などの、焙煎されるコーヒー豆の特性(Cbeans properties)、
焙煎のレベルなどの、所望のアロマプロファイルの特性などの、少なくとも1つの条件に関連し得る。この条件は、特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義されたコーヒー豆焙煎レシピを再現することによる、特定のタイプのコーヒー豆の焙煎によって提供される通常のアロマプロファイルを、操作者が変更することを所望する場合に提供される。操作者は、より軽いアロマプロファイル又はより強いアロマプロファイルを有する焙煎豆を得ることを望む場合があり、焙煎豆のこの特性を変更する能力を備えている。
【0035】
これらの条件のうちの少なくとも1つは、これらの条件の全て又は一部を提案する焙煎装置のユーザインタフェースを通しして、操作者によって提供することができる。
【0036】
あるいは、これらの条件のうちの一部は、制御システムに自動的に提供することもできる:
焙煎装置のタイプを、制御システムのメモリ内に記憶することができ、
電力源のタイプを、制御システムのメモリ内に記憶することができ、
大気条件を、焙煎装置の一部又は外部の、センサから読み取ることができる。
【0037】
焙煎されるコーヒー豆の特性に関しては、これらの条件は、特定のマスタ焙煎装置を使用した、その豆の焙煎レシピの定義の際に使用された条件との、差異に関連し得る。通常、特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義されたコーヒー豆焙煎レシピは、同じタイプの豆Coffeenの、1つの予め定められた量Mnの焙煎に適合されており、かつ連続する別個の時点tiにおいてそれぞれ適用される温度TMn@tiを提供する、焙煎レシピRMnである。
【0038】
したがって、操作者が、焙煎レシピRMnの定義において使用された量と比較して、その豆の量を修正する場合には、動作を調整することができる。
【0039】
チャンバ内に導入される各タイプのコーヒー豆の量mは、
操作者から得ることができる。その場合、この装置は、ユーザがチャンバの内部に導入している豆の量をユーザ自身が入力することを可能にする、ユーザインタフェースを備え得る。この量は、この装置の制御システムと通信するように構成されているモバイルデバイスのインタフェースを通して、入力することもできる。
又は、
この装置の制御システムに接続されている測定デバイスから得ることもできる。その場合、豆の量mの測定値を、この装置の制御システムに自動的に提供することができる。
【0040】
更には、焙煎される豆は、焙煎される前に様々な前処理に供される。最も単純な前処理は、生豆をもたらすものであり、追加的な前処理は、豆をある程度予備焙煎することであり、すなわち、生のコーヒー豆を加熱して、1ハゼの終了前に、その加熱プロセスを停止することによって得られた豆である。これらのある程度予備焙煎された豆は、それらの水分レベルに直接影響を及ぼす種々のレベルで予備焙煎することができる。生豆が、重量で約10~12%の水分レベルを呈し得る一方で、ある程度予備焙煎された豆は、重量で約3~5%の水分レベルを呈し得る。これらの値は、前処理の直後の、すなわち、工場から操作者へ出荷するために豆が容器内にパッケージングされる際の、水分レベルを反映している。これらの値は、容器の気密性、保管の周囲条件(温暖、寒冷、又は高温の気候)などの、保管条件に応じて、豆の保存可能期間に沿って変化し得る。更には、1つのタイプの豆Coffeenについて、工場の出口における通常の水分レベルが、様々な理由(季節性、新たな供給元、新たな前処理)により、一時的に変更される場合もある。
【0041】
これは、豆の水分レベルが変更されて、焙煎装置Xによる、そのコーヒー豆の焙煎レシピRMnを再現することによるコーヒー豆Coffeenの焙煎が、豆の水分レベルが基準条件よりも高いため、又は低いために、通常の期待される焙煎と一致しない場合があることを意味する。
【0042】
焙煎動作を開始する前の、豆の水分レベルは、焙煎装置X内部に豆が導入される前に、水分レベルセンサを装備するデバイスによって感知することができる。
【0043】
あるいは、水分レベルは、工場の出口における元々の豆の水分レベル、並びに、保管期間、保管容器のタイプ、及び/又は保管場所のような更なる保管条件から、予測することができる。
【0044】
一実施形態では、豆の元々の水分レベルと、そのレベルの時間的進展とについての情報は、豆の容器自体から直接的又は間接的に提供することができる。
【0045】
最も直接的な方式では、容器は、経時的な水分レベルの進展についての情報を提示することができ、例えば、経過期間ごとの水分レベルについての指標を提供することができる。このレベルを、手動で、又はコード読み取りによって間接的に、制御システムに提供することができ、コードは、その情報を提供する。
【0046】
あるいは、レベルは、手動で入力することが可能な、又は、例えばコードリーダによって自動的に読み取ることが可能な、その豆の参照情報から推定することもできる。読み取りの日付に関連付けられる、この参照情報は、豆のタイプ、容器のタイプ、及び保管時間を、焙煎の日付における水分レベルとリンクさせる、ルックアップテーブル又は規則を参照することによって、間接的に水分レベルを提供することができる。
【0047】
更には、上述のように、工場は、農家からの供給の変更に起因して、季節性に起因して、乾燥、洗浄、又は無洗浄処理のような、前処理の変更に起因して、水分レベル以外の他の特性が異なるコーヒー豆Cnを生産する場合がある。生産された豆は、元々の豆に近いものではあるが、マスタ焙煎装置を使用して定義された焙煎レシピを適用することは、期待されている通常の最終焙煎豆と比較して、一貫性を欠く可能性がある。
【0048】
別の条件は、操作者によって所望されるアロマプロファイルの特性に関連し得る。前述のように、焙煎レシピは、焙煎豆のアロマプロファイルを、豆自体の風味に従って、又は、1つの特定の会社の製品のアロマを反映させて、若しくは感覚的な目標として定義する、コーヒー専門家によって定義される。焙煎装置の操作者は、アロマプロファイルを適合させることを所望する場合がある。一般に、この特性は、豆に適用される温度レシピに起因する、豆の焙煎レベルを指す。
【0049】
次いで、調整の動作の更なるステップにおいて、その提供された焙煎条件Cのそれぞれが、特定のマスタ焙煎装置(M)を使用した焙煎レシピの定義の際に適用された、対応する基準条件C-i-refと比較される。
【0050】
次いで、提供された新たな焙煎動作の1つの条件Ciと、特定のマスタ焙煎装置(M)で使用された対応する基準条件CiRefとの間に、差異が認められる場合には、その認められた差異に基づいて、制御システムは、上述の焙煎条件の性質及びCiRefとの差異と、上述の認められた差異とに固有の、対応する予め定められた補正KCiにアクセスするように構成されている。
【0051】
したがって、上述の補正は、
異なる条件の性質と、
特定のマスタ焙煎装置で使用された対応する基準条件CiRefとの差異のレベルとに従って、変化する。
【0052】
各補正は、特定の条件及び特定の差異について適合されている。
【0053】
補正Kciは、この装置の制御システムにとってアクセス可能な、データベース又はメモリ内に記憶させることができる。
【0054】
いくつかの焙煎条件Ciについて差異が認められる場合には、制御システムは、特定のマスタ焙煎装置で使用された対応する基準条件CiRefとは異なる、各焙煎条件Ciに固有の、予め定められた各補正KCiにアクセスするように構成されている。
【0055】
これらの補正Kciは通常、特定のマスタ焙煎装置(M)上で、基準条件との特定の差異を適用している間に焙煎動作を実施することによって、実験によって予め定められている。
【0056】
最後に、上述の焙煎条件に固有の、対応する予め定められた補正Kciが、フィードバックループ調節に適用される。
【0057】
好ましくは、この補正KCiは、焙煎装置(X)によって再現される焙煎レシピの温度Tset@tiのうちの少なくとも1つに、直接適用される。
【0058】
あるいは、いわゆる「間接」方式では、この補正は、焙煎装置(X)の温度プローブ(5)によって測定された温度Tregに適用することもできる。
【0059】
したがって、この方法は、マスタ焙煎装置を使用した焙煎プロファイルの確立の際に使用された条件との、特定の差異を考慮に入れた、フィードバックループ調節における、再現される目標温度の補正を可能にする。
【0060】
補正のタイプに応じて、フィードバックループ調節は、
設置時に、例えば、使用される焙煎装置のタイプ、電力の供給源、及び/又は操作者によって所望されるアロマプロファイルに対応する、補正について、
定期的に、例えば、(季節に応じた、焙煎装置のアップグレードに応じた)外部周囲条件に対応する、補正について、
及び/又は
各焙煎動作の前に、例えば、豆の量、豆の水分レベルに対応する補正について、調整することができる。
【0061】
焙煎方法の特定の実施形態では、特定の条件Ciについては、コーヒー豆の新たな焙煎動作の前及び動作中に、フィードバックループ調節を調整することができる。
【0062】
その実施形態によれば、焙煎装置(X)を使用したコーヒー豆の新たな焙煎動作中に、新たな焙煎動作の条件Ciのうちの少なくとも1つ、好ましくは温度及び/又は圧力などの外部周囲条件が監視され、
監視される少なくとも1つの条件Ciが、コーヒー豆の新たな焙煎動作中に変化する場合には、調整の動作のステップが再び実施される。
【0063】
特に、以下のステップが実施される:
新たな焙煎動作の新たに変化した監視対象条件Ciと、上述のマスタ焙煎装置(M)を使用した焙煎レシピRsetの定義の際に元々適用されていた、対応する基準条件Ci-refとを比較するステップと、
その提供された新たな焙煎動作の条件Ciと、対応する基準条件CiRefとの間に、差異が認められる場合には、
その認められた差異に基づいて、その焙煎条件の性質及びCiRefとの差異に固有の、対応する予め定められた補正KCiにアクセスするステップと、
焙煎装置(X)によって再現される焙煎レシピの温度Tset@tiのうちの少なくとも1つに、その対応する予め定められた補正KCiを直接的又は間接的に適用するステップ。
【0064】
この特定の実施形態は、周囲温度の変化によって影響を受ける焙煎装置について、例えば、その装置が広大な部屋又は小舎内に配置されており、ドアが外部に開かれると急激に温度が変化し得る場合に、適用することができる。同様に、焙煎装置が、室内空調による圧力下に置かれた室内に配置されている場合には、ガスバーナのガスに対する酸素の供給が、長時間のドアの開放によって直接影響を受ける可能性がある。
【0065】
条件のタイプ、マスタ装置Mと焙煎装置Xとの差異に応じて、補正は、増倍係数、増倍係数とオフセットとの組み合わせ、多項式に基づく補正、対数型の式に基づく補正、又はオフセットのみとすることができる。通常、補正は、適用される新たな温度とTset@tiとの関係を確立する、周知の数学的回帰法を介して決定することができる。
【0066】
好ましい実施形態によれば、フィードバックループ調節に適用される、1つの焙煎条件Ciに固有の予め定められた補正Kciは、係数aciによって定義され、
その補正は、再現される焙煎レシピによって提供される温度Tsetに適用され、この補正は、フィードバックループ調節において、TsetをaciTsetによって置き換えることを含むものであり、
又は
その補正は、少なくとも1つの温度プローブによって測定された温度Tregに適用され、この補正は、フィードバックループ調節において、Tregを
Treg/aci
によって置き換えることを含むものであり、式中、aciは、特に上述の条件C及び認められた差異について予め定められている、予め定められた係数である、又はデフォルトで1に等しい。
【0067】
このデフォルトの値は、制御システムが、例えば、補正が新たなタイプの豆に関するものであるため、基準条件との差異が予定されている条件の範囲外であるため、操作者が少なくとも1つの条件に関する調整の動作を停止することを決定しているため(焙煎装置のユーザインタフェースには、操作者にとってアクセス可能であり、かつ補正のリストを操作者がデフォルトか否かに構成することを可能にする、設定ページを設けることができる)、又は、条件のうちの少なくとも1つを提供することができない(破損したセンサ、利用不可能な条件、パッケージ上の読み取り不能なコード(コードの損傷、又はコードリーダが動作しない))ために、対応する予め定められた補正にアクセスすることができない場合に、使用することができる。
【0068】
一態様では、基準条件と異なるか否かを、制御システムが各条件をチェックするように構成されている場合には、基準条件との差異が存在しない場合のたびに、デフォルトの値を適用することができる。
【0069】
その好ましい実施形態では、調整の動作は、
いくつかの特定の焙煎条件Ciを提供するステップと、
特定の焙煎条件Ciの一つ一つを、上述の特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された焙煎レシピの定義の際に使用された、対応する基準条件と比較するステップと、
特定の焙煎条件Ciのうちの2つ以上について、それら特定の焙煎条件と、対応する基準条件との間に、差異が認められる場合には、
認められた差異のそれぞれに基づいて、焙煎条件Ciに固有の、対応する予め定められた補正Kciにアクセスするステップと、
その対応する予め定められた補正Kciの選択に基づいて、フィードバックループ調節に補正Kを適用するステップであって、この補正Kが、係数Aによって定義され、A=ΠiaCiである、適用するステップと、を含み得る。
【0070】
その好ましい実施形態では、コーヒー豆は、チャンバの内部に導入される、少なくとも2種の異なるコーヒー豆(コーヒーA、コーヒーB、...、コーヒーN)のブレンドとすることができ、
制御システムは、そのブレンド中に含まれている各タイプのコーヒー豆のコーヒーnについて、少なくとも、そのコーヒー豆のコーヒーのタイプnと、チャンバ内に導入される、そのタイプのコーヒーnの量m
nとを取得するように構成することができ、
そのブレンドの、少なくとも1つのタイプの上述のコーヒーnの部分について、上述のコーヒーnの特性に関連する特定の焙煎条件C
coffee iと、上述のコーヒーnの上述の特性に関連する、対応する基準焙煎条件C
coffee i Refとの間に、少なくとも1つの差異が認められる場合には、
そのブレンドについて焙煎条件Ccoffee iに固有の、補正Kc coffee iのグローバル係数a
C coffee i blendを計算することができ、このグローバル係数は、以下のように計算され:
【数1】
式中、nは、ブレンド中に存在する全てのタイプのコーヒー豆C
A~C
Nに対応し、f
nは、そのコーヒー豆のブレンド中での、タイプC
nのコーヒー豆の重量分率を表す。
【0071】
この状況は、種々のコーヒーの特定のブレンドに対するレシピを焙煎することが可能な場合に対応している。ブレンドは、コーヒーのタイプと、ブレンド中に存在する、そのコーヒーの量とによって定義される。それらのブレンドの焙煎レシピは、マスタ焙煎装置を使用して定義される。これらのブレンドが、それ自体では販売されておらず、操作者によって、焙煎動作の直前に、そのブレンドの予め定義されているレシピに従って、各タイプの豆の量を手動で測定することによって調製される場合には、そのブレンドの、少なくとも一部の豆の部分の特性は、マスタ焙煎装置を使用した焙煎レシピの定義の際の、それらの特性とは異なり得る。例えば、1種以上の豆が、それらの特定の保存可能期間又は保管条件のために、異なる水分レベルを呈する可能性がある。その場合、補正の際には、水分レベルに固有の補正を適用しなければならない。それらの豆が、豆の特定の割合を表しているという事実により、そのブレンドについて、水分レベルに固有のグローバル補正が計算され、次いで、この水分レベルに固有のグローバル補正は、水分レベルのみが異なる条件である場合には単独で、又は、他の異なる条件が発生している場合には他の補正と共に、フィードバックループ調節に適用される。
【0072】
上記の好ましい実施形態の特定の態様では、フィードバックループ調節に適用される、1つの焙煎条件Ciに固有の予め定められた補正Kciを、追加的係数bciによって定義することができ、
その補正は、再現される焙煎レシピによって提供される温度Tsetに適用することができ、この補正は、フィードバックループ調節において、TsetをaciTset+bciによって置き換えることを含むものであり、
又は
その補正は、少なくとも1つの温度プローブによって測定された温度Tregに適用することができ、この補正は、フィードバックループ調節において、Tregを(Treg-bci)/aciによって置き換えることを含むものであり、
式中、bciは、特に上述の条件Ci及び認められた差異について予め定められている、予め定められたオフセットであり、又はデフォルトで0に等しい。
【0073】
前述の特定の態様では、調整の動作は、
いくつかの特定の焙煎条件Ciを提供するステップと、
特定の焙煎条件Ciの一つ一つを、上述の特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された焙煎レシピの定義の際に使用された、対応する基準条件と比較するステップと、
特定の焙煎条件Ciのうちの2つ以上について、それら特定の焙煎条件と、対応する基準条件との間に、差異が認められる場合には、
認められた差異のそれぞれに基づいて、焙煎の条件Ci及び認められた差異に固有の、対応する予め定められた補正Kciにアクセスするステップと、
その対応する予め定められた補正Kciに基づいて、フィードバックループ調節に補正Kを適用するステップであって、この補正Kが、一対の値(A、B)によって定義され、
A=ΠiaCi
B=Σibciである、適用するステップと、を含み得る。
【0074】
好ましい実施形態では、補正Kciを定義する、係数aci及び任意選択的に係数bciにおいて、それらの係数のうちの少なくとも一方は、焙煎レシピの再現中に、時間と共に変化し得る。
【0075】
特に、これらの値は、異なる時間間隔にわたって一定とすることができる。
【0076】
同様に、この好ましい実施形態では、補正Kciを定義する、係数aci及び任意選択的に係数bciにおいて、それらの係数のうちの少なくとも一方は、焙煎レシピの再現中に、温度と共に変化し得る。
【0077】
上述のように、二次の多項式関数などの、他のタイプの補正を実施することができ、その場合、新たな焙煎動作の1つの条件Ciに固有の、予め定められた補正Kciは、係数Dci、Aci、及びBciによって定義され、
これらの係数は、特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された、再現される焙煎レシピによって提供される、温度Tsetに直接適用され、この補正は、フィードバックループ調節において、TsetをDciTset
2+AciTset+Bciによって置き換えることを含むものであり、
式中、Dciは、特に上述の条件Ci及び認められた差異について予め定められている、予め定められた係数である、又はデフォルトで0に等しい、
式中、Aciは、特に上述の条件Ci及び認められた差異について予め定められている、予め定められた係数である、又はデフォルトで1に等しい、
式中、Bciは、特に上述の条件Ci及び認められた差異について予め定められている、予め定められた係数である、又はデフォルトで0に等しい。
【0078】
好ましくは、焙煎装置において、少なくとも1つの温度プローブは、チャンバの外部に配置されており、1つの焙煎条件及び1つの認められた差異に固有の、予め定められた補正のそれぞれは、
a0 マスタ焙煎装置Mに、他の基準条件を修正することなく、その特定の条件の差異を適用するステップと、
a マスタ焙煎装置Mのチャンバの内部に、少なくとも1つの一時的温度プローブを導入するステップと、
b 予め設定された曲線Rsetを再現するように加熱デバイスを制御するステップであって、この予め設定された曲線が、予め設定された対応する連続する時点t1、t2、...、tfinalにそれぞれ適用される温度Tset@t1、Tset@t2、...Tset@tfinalを表す、1セットの点(Tset@ti;ti)を提供するものであり、この制御は、温度プローブによって測定された温度Tregに基づく、制御するステップと、
c 予め設定された曲線Rsetの再現中に、一時的温度プローブ(3)における、チャンバの内部での時間の関数としての温度Tcalを測定することにより、少なくとも1セットの点(Tcal@ti;ti)の決定を可能にするステップと、
d 少なくとも1つの時点tiにおいて測定された温度Tcal@tiと、マスタ焙煎装置(M)を使用して得られた、予め定められた基準曲線Rrefの上述の同じ時点tiにおける温度Tref@tiとを比較するステップであって、この基準曲線Rrefが、上述の予め設定された曲線Rsetを再現するようにマスタ装置の加熱デバイスを制御している間に、基準条件において特定のマスタ装置(M)のチャンバ内で測定された、温度Trefを表している、比較するステップと、
この比較に基づいて、上述の焙煎条件及び上述の差異に固有の補正を決定するステップと、によって、予め定められている。
【0079】
特定の一実施形態では、加熱デバイスは、空気流ドライバを含み得るものであり、制御システムは、この空気流ドライバを制御するように動作可能とすることができ、連続する別個の時点t1、t2、...においてそれぞれ適用される空気流F@t1、F@t2、...の設定点(F@ti;ti)を提供する、焙煎レシピ(RFlow-set)を適用するように構成することができ、
調整の動作は、
新たな焙煎動作の提供された条件Ciと、対応する基準条件CiRefとの間に、差異が認められる場合には、
その認められた差異に基づいて、その焙煎条件の性質及びCiRefとの差異に固有の、対応する予め定められた補正KFlow Ciにアクセスするステップと、
焙煎装置(X)によって再現される焙煎レシピの空気流Fset@tiのうちの少なくとも1つに、対応する予め定められた補正KFlow Ci tを直接的又は間接的に適用するステップと、を含み得る。
【0080】
この実施形態では、時間に沿った温度に基づく焙煎レシピについて上述された一般的原理は、時間に沿った流れに基づく焙煎レシピに、同様の方式で適用される。
【0081】
この原理は、時間に沿った温度に基づく焙煎レシピに、及び/又は時間に沿った流れに基づくレシピに対して、適用することができる。
【0082】
第2の態様では、焙煎装置であって、
コーヒー豆を収容するためのチャンバと、
チャンバに熱風を供給するように構成されている、加熱デバイスと、
加熱デバイスによって供給された空気の温度を測定するための、少なくとも1つの温度プローブであって、好ましくは、チャンバの外部に配置されている、少なくとも1つの温度プローブと、
加熱デバイスを制御するように構成されており、焙煎レシピを再現するように構成されている、制御システムであって、この焙煎レシピが、連続する別個の時点tiにおいてそれぞれ適用される温度を表す、少なくとも1セットの点(T@ti;ti)を提供するものであり、加熱デバイスの制御が、少なくとも1つの温度プローブによって測定された温度Tregに基づいて、フィードバックループ調節を実施する、制御システムと、を備え、
制御システムが、上述のような方法を実施するように動作可能である、焙煎装置が提供される。
【0083】
本明細書では、曲線、プロファイル、又はレシピという用語は、同等に使用することが可能であり、連続する別個の時点tiにおいて適用される温度T@tiを表す、少なくとも1セットの別個の点(T@ti;ti)を、定義することができる。
【0084】
本発明の上記の諸態様は、任意の好適な組み合わせで組み合わせることができる。更には、本明細書における様々な特徴を、上記の諸態様のうちの1つ以上と組み合わせることにより、具体的に図示及び説明されたもの以外の組み合わせを提供することができる。本発明の更なる目的及び有利な特徴は、「特許請求の範囲」、「発明を実施するための形態」、及び添付図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0085】
次に、本発明の特定の実施形態が、以下の図面を参照して、例として更に説明される。
【
図1】本発明の方法を実施することが可能な焙煎装置の概略図である。
【
図2A】
図1による装置の制御システムのブロック図を示す。
【
図4A】焙煎装置のタイプに対応する補正Kcを予め定める方式を示す。
【
図4B】焙煎装置のタイプに対応する補正Kcを予め定める方式を示す。
【
図4C】焙煎装置のタイプに対応する補正Kcを予め定める方式を示す。
【
図4D】焙煎装置のタイプに対応する補正Kcを予め定める方式を示す。
【
図5】周囲温度に対応する補正Kcを予め定める方式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
焙煎装置
図1は、焙煎装置10の例示的な側面図部分を示す。機能的には、焙煎装置10は、チャンバ1内に保持されたコーヒー豆を、このチャンバの内部に導入された熱風流によって焙煎するように動作可能である。第1のレベルにおいて、この装置は、ハウジング4、焙煎ユニット、及び制御システム80を備える。次に、これらの構成要素を順次説明する。
【0087】
焙煎装置の焙煎ユニット
焙煎ユニットは、コーヒー豆を受け入れて焙煎するように動作可能である。
【0088】
焙煎ユニットは、典型的には、焙煎装置10の第2のレベルにおいて、チャンバ1及び加熱デバイス2を含み、これらを順次説明する。
【0089】
チャンバ1は、操作者によって導入されたコーヒー豆を受け入れて保持するように構成されている。好ましい実施形態では、チャンバ1は、ハウジング4から取り外し可能である。チャンバは、
コーヒー豆を導入するため又は取り出すために、あるいは
一旦チャンバを取り外して、チャンバを洗浄及びメンテナンスするために、あるいは
チャンバ後方の垂直ハウジング部分43を洗浄するために、
焙煎装置の脇に置くことができる。
【0090】
チャンバの底部開口部11は、空気が通過することを可能にするように構成されており、具体的には、その上に豆を置くことが可能であり、かつそれを通って空気が上向きに流れることが可能な、多孔板を含み得る。チャンバ1は、ユーザがハウジングからチャンバを取り外して、そのチャンバをハウジングの外部で保持することを可能にするために、ハンドルを含む。
【0091】
チャフコレクタ15が、煙導管14を通してチャンバ出口12と流れ連通しており、豆から次第に分離して、その低い密度のために煙と共にチャフコレクタへと吹き飛ばされる、チャフを受け入れる。
【0092】
加熱デバイス2は、空気流ドライバ21及びヒータ22を含む。
【0093】
空気流ドライバ21は、チャンバの底部11の方向に空気の流れ(点線矢印)を発生させるように動作可能である。発生した流れは、豆を加熱するように、かつ豆を撹拌して持ち上げるように構成されている。その結果、豆は均質に加熱される。具体的には、空気流ドライバは、モータによってエネルギー供給されるファンとすることができる。ハウジング内部に空気を供給するために、ハウジングの基底部の内部に空気入口42を設けることができ、空気流ドライバは、この空気を、点線矢印によって示されるように、通路23を通して空気出口孔41へと、チャンバ1の方向に上向きに吹き出す。
【0094】
ヒータ22は、空気流ドライバ21によって発生した空気の流れを加熱するように動作可能である。図示の特定の実施形態では、ヒータは、ファン21とチャンバの底部開口部11との間に配置されている電気抵抗であり、その結果、空気の流れは、豆を加熱し、かつ持ち上げるためにチャンバ1に入る前に加熱される。電気抵抗器、セラミックヒータ、ハロゲン源、赤外線源、及び/又はマイクロ波源などの、他のタイプのヒータを使用することもできる。
【0095】
ヒータ22及び/又は空気流ドライバ21は、焙煎プロファイルを豆に適用するように動作可能であり、この焙煎プロファイルは、時間に対する温度の曲線として定義される。
【0096】
チャンバがハウジングに取り付けられる際、チャンバの底部は、接続部において熱風流の流れが漏出することを回避するために、空気出口孔41に緊密に接続される。
【0097】
チャンバの頂部開口部12は、煙及び微粒子の排出デバイス(図示せず)に接続される。
【0098】
本発明は、熱風の流動床を実装するロースターを使用して説明されているが、本発明は、この特定のタイプの焙煎装置に限定されるものではない。ドラム式焙煎機及び他の種類の焙煎機を使用することもできる。
【0099】
この焙煎装置は、加熱デバイス2によって供給された空気の温度を調節するための、少なくとも1つの温度プローブ5を備える。図示の態様では、この温度プローブは、チャンバ1の外部の、加熱デバイス2によって供給された熱風をチャンバ11の底部に誘導する、チャンバの上流に存在する導管23内部に配置されている。
【0100】
さほど好ましくはない代替的態様では、加熱デバイス2によって供給された空気の温度を調節するための少なくとも1つの温度プローブ51、52を、チャンバの下流に配置することができる。これらのプローブは、焙煎動作中の煙によって汚れが生じる恐れがある。
【0101】
さほど好ましくはない別の代替的態様では、この装置は、加熱デバイス2によって供給された空気の温度を調節するための、いくつかの温度プローブ5、51、52を備えることが可能である。それらの測定された温度の平均又は加重平均が、加熱デバイス2を調節するために使用される。
【0102】
焙煎装置10は通常、情報の表示及び入力を可能にするユーザインタフェース6を備える。
【0103】
焙煎装置は、例えばコーヒー豆のパッケージ上に存在している、コーヒー豆のタイプに関連付けられているコードを読み取るための、コードリーダ7を備え得る。好ましくは、このコードリーダは、そのコードリーダの正面に操作者がコードを容易に配置することが可能となるように、装置に配置されている。コードリーダは、好ましくは、装置の前面に、例えば装置のユーザインタフェース6の近くに配置されている。したがって、コードによって提供される情報を、脇に配置されているユーザインタフェース6のディスプレイを通して、間近に表示することができる。
【0104】
焙煎装置の制御システム
図1、
図2A、及び
図2Bを参照して、次に制御システム80が考察され、制御システム80は、コーヒー豆を焙煎するために装置の構成要素を制御するように動作可能である。制御システム80は、典型的には、焙煎装置の第2のレベルにおいて、ユーザインタフェース6、処理ユニット8、温度プローブ5、電源9、メモリユニット63、任意選択的にデータベース62、センサ19、リモート接続用の通信インタフェース61、コードリーダ7、又は、これらのデバイスの任意の組み合わせを含む。
【0105】
ユーザインタフェース6は、ユーザインタフェース信号によってユーザが処理ユニット8とインタフェースすることを可能にする、ハードウェアを含む。より具体的には、ユーザインタフェースは、ユーザからコマンドを受信し、ユーザインタフェース信号が、そのコマンドを処理ユニット8に入力として転送する。それらのコマンドは、例えば、焙煎プロセスを実行する命令、及び/又は焙煎装置10の動作パラメータを調整する命令、及び/又は焙煎装置10の電源をオン若しくはオフする命令とすることができる。処理ユニット8はまた、例えば、焙煎プロセスが開始されたこと、若しくはプロセスに関連付けられているパラメータが選択されたことを示すために、又は、プロセスの間のパラメータの進展を示すために、若しくはアラームを作成するために、焙煎プロセスの一部として、ユーザインタフェース6にフィードバックを出力することもできる。
【0106】
更には、ユーザインタフェースを使用して、焙煎装置の較正モードを開始することもできる。
【0107】
ユーザインタフェースのハードウェアは、任意の好適なデバイスを含み得、例えば、そのハードウェアは、ジョイスティックボタン、ノブ、又は押しボタンなどのボタン;ジョイスティック;LED;グラフィックLDC又はキャラクタLDC;タッチ感知ボタン及び/又はスクリーンエッジボタンを有するグラフィカルスクリーンのうちの、1つ以上を含む。ユーザインタフェース6は、1つのユニット、又は複数の別個ユニットとして形成することができる。
【0108】
ユーザインタフェースの一部はまた、以下で説明されるように、この装置に通信インタフェース61が設けられている場合、モバイルアプリ上に存在することも可能である。その場合、入力及び出力の少なくとも一部を、通信インタフェース61を通してモバイルデバイスに送信することができる。
【0109】
センサ19及び温度プローブ5は、焙煎プロセス及び/又は焙煎装置の状態を調節するために、処理ユニット8に入力信号を提供するように動作可能である。入力信号は、アナログ信号又はデジタル信号とすることができる。センサ19は、典型的には、少なくとも1つの温度センサ5と、任意選択的に、チャンバ1に関連付けられているレベルセンサ、空気流量センサ、チャンバ及び/又はチャフコレクタに関連付けられている位置センサのうちの1つ以上とを含む。
【0110】
コードリーダ7を設けることができ、このコードリーダは、例えばコーヒー豆パッケージ上のコードを読み取り、チャンバ1内に導入されるコーヒー豆のタイプCnの識別情報である入力を自動的に提供するように動作可能とすることができる。
【0111】
処理ユニット8は一般に、メモリと、集積回路として、典型的にはマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラとして構成されている、入出力システム構成要素とを含む。処理ユニット8は、例えば、ASIC;PAL、CPLD、FPGAなどのプログラマブル論理デバイス;PSoC;システムオンチップ(SoC);コントローラなどのアナログ集積回路などの、他の好適な集積回路を含み得る。そのようなデバイスについては、適切な場合、前述のプログラムコードは、プログラムされた論理と見なすことができ、又は、プログラムされた論理を追加的に含むと見なすことができる。処理ユニット8はまた、前述の集積回路のうちの1つ以上も含み得る。後者の例は、モジュール方式で互いに通信するように構成されている、いくつかの集積回路、例えば、焙煎装置10を制御するマスタ集積回路と通信する、ユーザインタフェース6を制御するスレーブ集積回路である。
【0112】
電源9は、これらの制御される構成要素及び処理ユニット8に、電気エネルギーを供給するように動作可能である。電源9は、バッテリ、又は、主電源供給を受電して調整するユニットなどの、様々な手段を含み得る。電源9は、焙煎装置10の電源をオン又はオフするために、ユーザインタフェース6の一部に動作可能にリンクさせることができる。
【0113】
処理ユニット8は一般に、プログラムコードとしての命令、及び任意選択的にデータを記憶するための、メモリユニット63を含む。この目的のために、メモリユニットは、典型的には、不揮発性メモリ、例えば、命令としてのプログラムコード及び動作パラメータの記憶のための、EPROM、EEPROM、若しくはFlashと、一時的なデータの記憶のための揮発性メモリ(RAM)とを含む。メモリユニットは、別個のメモリ、及び/又は(例えば、半導体のダイ上の)集積メモリを含み得る。プログラマブル論理デバイスについては、命令は、プログラムされた論理として記憶させることができる。
【0114】
メモリユニット63上に記憶されている命令は、コーヒー豆焙煎プログラムを含むものとして理想化することができる。
【0115】
制御システム80は、温度プローブ5の信号を使用して、加熱デバイス2を制御することによって、すなわち、
図1の特定の例示的実施形態では、空気流ドライバ21及び/又はヒータ22を制御することによって、このコーヒー豆焙煎プログラムを適用するように動作可能である。
【0116】
コーヒー豆焙煎プログラムは、コード上に符号化されている抽出情報、及び/又は、メモリユニット63上にデータとして記憶することが可能な、若しくは通信インタフェース61を通したリモートソースからの、他の情報、及び/又は、ユーザインタフェース6を介して提供される入力、及び/又は、センサ19の信号を使用して、上述の構成要素の制御を遂行することができる。
【0117】
特に、制御システム80は、連続する別個の時点t1、t2、...、tfinalにおいてそれぞれ適用される温度Tset@t1、Tset@t2、...Tset@tfinalを提供する、焙煎レシピRsetを適用するように構成されている。
【0118】
その目的で、処理ユニット8は、
外部温度プローブ5の入力Treg@tiを受信し、
その入力を焙煎レシピRsetに従って処理し、
焙煎レシピRsetである出力を提供するように、動作可能である。より具体的には、この出力は、少なくともヒータ22及び空気流ドライバ21の動作を含む。
【0119】
温度プローブ5によって測定された温度は、例えば
図2Bに示されるように、焙煎レシピを豆に適用するために、フィードバックループにおいてヒータ22の電力及び/又は空気ドライバ21の電力を適合させるために使用される。
【0120】
図示の閉フィードバックループでは、外部温度プローブ5において測定された温度Treg@tiが、再現される焙煎曲線の温度Tset@tiと比較される。その差異に応じて、加熱デバイス2は、差異を補償するように操作される。
【0121】
焙煎機において適用される制御のタイプに応じて、ヒータ22に、1つの予め定められた電力でエネルギー供給することができるが、これはヒータの温度が一定であることを意味するものであり、その場合、空気ドライバ21の電力は、ヒータを通過する空気流の、その移動の間の接触時間を変化させるために、プローブ5において調節された温度に基づいて制御することができる。
【0122】
あるいは、空気ドライバ21に、1つの予め定められた電力でエネルギー供給することができるが、これは空気の流量が一定であることを意味するものであり、その場合、ヒータ22の電力は、空気がヒータを通過する間に、より多い空気又はより少ない空気を加熱するために、プローブ5において調節された温度に基づいて制御することができる。
【0123】
最後の代替案では、ヒータ22及び空気ドライバ21の双方を、プローブ5による温度の調節に基づいて制御することができる。
【0124】
更には、制御システムは、連続する別個の時点t1、t2、...においてそれぞれ適用される空気流F@t1、F@t2、...の設定点(F@ti;ti)を提供する、焙煎レシピRflowを適用するべく、空気ドライバのモータを制御するように構成することができる。
【0125】
焙煎装置のタイプ、及び、その焙煎装置が備える空気ドライバに応じて、空気流は、調整可能な速度を有するファンを空気ドライバが含む場合、ファンの速度を通して制御することができる。あるいは、ファンの速度を固定することも可能であり、空気の流れは、ダイアフラムを使用して、又は、導管内の空気のサイズを制御するための任意の手段を使用して、制御することができる。
【0126】
制御システム80は、焙煎装置10が、サーバシステム、モバイルデバイス、及び/又は物理的に隔てられている測定装置3などの、別のデバイス及び/又はシステムとデータ通信するための、通信インタフェース61を含み得る。通信インタフェース61を使用して、焙煎プロセス情報、豆のタイプ、豆の量などの、コーヒー豆焙煎プロセスに関連する情報を、提供及び/又は受信することができる。通信インタフェース61は、いくつかのデバイスとの同時データ通信のための、又は種々の媒体を介した通信のための、第1の通信インタフェース及び第2の通信インタフェースを含み得る。
【0127】
通信インタフェース61は、有線媒体又は無線媒体、若しくはそれらの組み合わせ、例えば、RS-232、USB、I2C、IEEE802.3によって定義されているイーサネット(登録商標)などの有線接続、無線LAN(例えば、IEEE802.11)若しくは近距離通信(near field communication;NFC)などの無線接続、又は、GPRS若しくはGSM(登録商標)などのセルラシステム用に構成することができる。通信インタフェース61は、通信インタフェース信号によって、処理ユニット8とインタフェースする。一般に、通信インタフェースは、マスタ処理ユニット8とインタフェースするように通信ハードウェア(例えば、アンテナ)を制御するための、別個の処理ユニット(その例が上記に提示されている)を含む。しかしながら、さほど複雑ではない構成、例えば、処理ユニット8と直接シリアル通信するための単純な有線接続を使用することもできる。
【0128】
処理ユニット8は、予め定義された種々の焙煎レシピ(RMA、RMB、...)へのアクセスを可能にし、これらのレシピは、特定のタイプのコーヒー豆又はコーヒーブレンド(CA、CB、...)の焙煎に適合されており、好ましくは、それらの豆又はブレンドの特定の量(MA、MB、...)の焙煎に適合されている。
【0129】
これらのレシピは、処理ユニット8のメモリ63内に記憶させることができる。あるいは、これらのデータは、リモートサーバ内に記憶させることができ、処理ユニット8には、通信インタフェース61を通して直接的に、又はリモートサーバと処理ユニットとの接続を確立するモバイルデバイスを通して間接的に、このリモートサーバへのアクセスを提供することができる。
【0130】
制御システム80は、コーヒー豆についての情報、特に、以降で説明されるような特定のコーヒー豆を焙煎するための動作条件についての情報を記憶する、データベース62を含み得る。データベース62は、焙煎装置の制御システムのメモリ63内に、ローカルで記憶させることができ、又は、通信インタフェース63を通してアクセス可能なサーバ内に、リモートで記憶させることもできる。
【0131】
代替的一実施形態では、コード読み取り動作の間に、制御システムに焙煎レシピRMnを(及び、実施形態に応じて、それらに関連付けられている特定の量Mnを)提供することができ、これらの情報は、コード内に符号化されており、制御システムによって復号される。
【0132】
特定のタイプCnのコーヒー豆若しくはコーヒーブレンドの焙煎、及びそれらの豆の特定の重量の焙煎に適合されている、予め定義された焙煎レシピ(RMA、RMB、...)は、これらの特定の豆をマスタ焙煎装置(M)として定義された特定の焙煎装置内部で焙煎する、最初の動作の間に定義される。通常、この動作は、コーヒー専門家によって実施され、そのコーヒー専門家は、自身の焙煎経験に基づいて、特定の豆を最適に焙煎するための温度及び時間のパラメータを定義することが可能であり、その結果、予め定義された対応する連続時点t1、t2、...にそれぞれ適用される温度Tset@t1、Tset@t2、...を表す、1セットの点(Tset@ti;ti)を提供する、焙煎レシピを定義することが可能となる。
【0133】
通常、豆のタイプCnは、豆を焙煎するプロセスに直接影響を及ぼす、その豆の少なくとも1つの特徴に関連している。
【0134】
コーヒー豆のタイプは、以下のような特定の特徴に関連し得る:
豆の原産地及び/又は豆の植物品種(アラビカ、ロブスタ、...)、あるいは、種々の豆の特定の既存の混合又はブレンド;この既存の混合又はブレンドは、種々の特定の豆の選択によって、及び/又は、これらの種々の特定の豆の比率によって定義することができる。
豆の予備焙煎のレベル。焙煎されるコーヒー豆は、生豆とすることができ、又は、ある程度予備焙煎された豆、すなわち、生のコーヒー豆を加熱して、1ハゼの終了前に、その加熱プロセスを停止することによって得られた豆とすることもできる。これらのある程度予備焙煎された豆は、焙煎装置において操作される後続の最終焙煎に対して直接影響を及ぼす、種々のレベルで予備焙煎され得る。
豆の水分、
豆のサイズ。
【0135】
豆のタイプは、原産地、植物品種、ブレンド、予備焙煎のレベルなどのような、豆の性質に明確に言及し得るものであり、かつ/又は、識別番号、SKU番号、若しくは商標のような、参照情報とすることもできる。
【0136】
一旦これらの焙煎レシピが、マスタ焙煎装置を使用して予め定義されると、それらの焙煎レシピは、マスタ焙煎装置と同様の焙煎装置を使用して、自動的に再現することができる。
【0137】
論理的には、同じ豆から開始して、マスタ焙煎装置と同様の焙煎装置において同じ焙煎レシピを適用すれば、同じ焙煎コーヒー豆が得られるはずである。それにも関わらず、焙煎の再現は、体系的に一貫していなかったことが観察されている。温度プローブ5は、正しい温度を測定するように完全に較正されていたが、同じ豆の焙煎における非一貫性が、同様の焙煎装置間で観察された。
【0138】
いくつかの理由が特定された:
1つは、異なる外部周囲条件における焙煎である。同じ焙煎機が、周囲条件が極めて異なり得る異なる国で、又は、周囲条件が季節によって極めて異なる一部の国で使用される可能性がある。外部温度は、10℃未満~40℃までの間で変化する可能性があり、湿度は、30~90%の間で変化する可能性がある。この温度は、チャンバの外壁の温度に直接影響を及ぼすものであり、焙煎デバイスと周囲空気との熱交換により、25℃で動作している焙煎装置と比較して、より多くの熱又はより少ない熱が必要となる。したがって、焙煎プロファイルの定義の際にマスタ焙煎装置Mが使用された周囲温度に応じて、チャンバの内部でコーヒー豆が同じ焙煎プロファイルに供されて、同じ最終焙煎豆が一貫して得られることを保証するために、加熱の調整が必要とされる。
別の理由は、焙煎装置自体に関連する。実際に、通常は、製造中に僅かな差異が装置間において生じる。これらの差異は、それらの装置の、異なる主要構成要素(ファン、ヒータ、温度センサ)の使用、更には、供給元の変更、又は、例えば様々な場所で極めて僅かな空気漏れを生じさせる、各装置の組み立てにおける僅かな差異に関連し得るものであり、あるいは、主要要素(特に、温度プローブ)同士の相対位置における僅かな差異に起因し得る。
その結果、チャンバの内部に導入された空気の流れは、温度プローブ5によって測定された際には適正な温度を呈するものであったが、この熱風の流れは、豆の焙煎に直接影響を及ぼす異なる方式で、チャンバの内部に受け入れられた。
【0139】
焙煎チャンバのサイズ、又はバッチサイズもまた、差異を生じさせる可能性がある。
別の理由は、電源によってエネルギー供給される焙煎装置にリンクしている。焙煎装置が動作する国に応じて、焙煎装置は、ローカルの電源に接続されるが、その電源は、世界各国で異なるものであり、マスタ焙煎装置に適用された電源とは異なる可能性がある。この電源の周波数は、装置のいくつかの構成要素に、それらの構成要素が焙煎チャンバに熱を送達する方式において、影響を及ぼし得るものであり、特に、空気ドライバとして使用されるファンは、焙煎プロファイルの再現中に、期待されるよりも多い空気又は少ない空気を送達する可能性がある。
【0140】
したがって、焙煎装置を使用する国に関連する条件を、考慮に入れることができる。
別の理由は、少なくとも1つのガスバーナによってエネルギー供給される焙煎装置にリンクしている。ガスが供給される方式(ガス容器又はガス供給ライン)に応じて、焙煎装置には、異なる圧力及び/又は流量で供給される、異なるタイプのガスが供給される可能性がある。更には、圧力及び流量は、特にガス容器からガスが供給される場合には、時間に沿って変化し得る。
別の理由は、焙煎動作の間にチャンバ内に存在しているコーヒー豆の量に関連する。マスタ焙煎装置を使用した焙煎プロファイルの定義の動作の際に使用された量との差異は、同じ焙煎プロファイルが使用される場合には、焙煎動作の間に各豆によって吸収される熱に影響を及ぼす。更には、より多く又はより少なくチャンバ1を充填するという事実は、豆及び熱風の移動に影響を及ぼし、焙煎にも影響を及ぼす。
別の理由は、焙煎動作のためにチャンバ内に導入された時点での、コーヒー豆の水分に関連する。上述のように、専門家は、マスタ焙煎装置を使用して焙煎プロファイルを定義し、各焙煎プロファイルは、特定のタイプCnの豆について決定されており、それらの豆について、焙煎プロファイルの定義の時点における水分レベルを考慮に入れることができる。この水分特性は、生豆についてであれ、ある程度予備焙煎されている豆についてであれ、特に重要であり得る。豆がある程度予備焙煎されてから経過した時間と、その豆の保管条件とに応じて、豆は周囲湿度を吸収する場合もあれば、又は湿度を失う場合もあり、それらの水分レベルが異なっている可能性がある。豆の水のパーセンテージは、重量で2~3%変化し得る。その影響は、予備焙煎の後、重量で3~5%の水分レベルを通常は呈する予備焙煎された豆に対して、かつそれらの焙煎プロファイルがマスタ焙煎装置を使用して確立されている場合に、多大であり得る。
【0141】
水分レベルの差異は、焙煎の間の豆の加熱に直接影響を及ぼすものであり、特定の水分レベルの豆でマスタ焙煎装置を使用して定義された焙煎プロファイルを、異なる水分レベルを呈する豆に適用することは、期待されている一貫した最終焙煎豆をもたらすことにはならない。
【0142】
これらの問題を解決するために、特定のマスタ焙煎装置を使用して定義された焙煎レシピを、上述の装置が一貫して再現することできるように、焙煎装置の温度調節ループの補正を可能にする方法が開発されている。
【0143】
図3は、
図1による装置の制御システム80による、この方法の実施を示す。
【0144】
制御システムは、コーヒー豆を、これらのコーヒー豆に固有の、異なる時点tiにおいて適用される温度Tset@tiによって定義されているコーヒー豆焙煎レシピを再現することによって、焙煎するように構成されている。この焙煎レシピは、「基準条件」と呼ばれる特定の条件において使用された、1つの特定のマスタ焙煎装置Mを使用して定義されたものであり、再現するための焙煎装置の制御システムによってアクセス可能である。
【0145】
焙煎動作を開始する前に、制御システムは、
焙煎装置Xの製造シリーズ、
装置の周りの温度である、周囲温度、
装置の周りの湿度である、周囲湿度、
チャンバの内部に導入される豆の量、
装置が接続されている電源のタイプ
チャンバの内部に導入される豆の水分レベルなどの、現在の焙煎条件Ciのうちの少なくとも1つを取得するように構成されている。
【0146】
これらの条件のうちの一部、特に、焙煎ごとに変化しない条件は、制御システム80に一旦提供して、メモリ63内に記憶させることができる。これらの条件は、焙煎装置の製造ステップにおいて、又は、焙煎の場所(店舗又はレストラン)での焙煎装置の設置ステップにおいて提供することができる。このタイプの条件は、例えば、焙煎装置Xの製造シリーズ、電源のタイプ、又は、標高のような他の安定条件である。
【0147】
これらの条件は、必要に応じて、例えば、焙煎装置のメンテナンス、及び内部構成要素の変更の後に、あるいは、別の場所に装置を移動させた後に変更することができる。それらの新たな条件は、手動で変更することができ、又は、例えば制御システムのアップグレード中に、リモート接続を通して、削除可能にアップグレードすることができる。
【0148】
周囲温度及び周囲湿度のような季節と共に変化する条件などの、他の条件は、制御システム80に定期的に提供して、メモリ63内に記憶させることができる。これらの条件は、焙煎動作の日付に関連し得る。
【0149】
周囲温度、周囲湿度、チャンバ内に導入される豆の量及び水分レベルなどの、他の条件は、焙煎動作ごとに、制御システム80に提供することができる。
【0150】
これらの条件は、焙煎装置に応じて、ユーザインタフェース6を通して手動で、又は自動的に提供することができる。この装置は、周囲温度及び周囲湿度を測定し、それらの条件を制御システムに入力するための、センサを備え得る。これらのセンサは、装置から遠隔に配置することができ、リモート接続を通して、それらの条件を提供することができる。焙煎装置は、例えば、気象台に接続することができる。
【0151】
豆の量は、上述のように、接続されている計量器を通して提供することができる。
【0152】
豆の水分レベルは、センサが焙煎装置の一部である場合、又は焙煎装置の制御システムに接続されている場合には、センサを通して直接提供することができ、あるいは、コーヒー豆の水分レベルを測定するように構成されている別個のデバイスから読み取られるレベルを、操作者が読み取って入力する場合には、間接的に提供することができる。水分レベルはまた、豆の前処理から経過した時間に基づいて、経験的に予測することもできる。例えば、吸湿量は、研究室で行われた実験的手段に基づく、典型的な週ごとの変化から推定することができる。例えば豆の容器から読み取られた、豆の前処理の日付を入力することによって、制御システムは、その豆の現在の水分レベルを推定するように構成することができる。あるいは、操作者に対してアクセス可能に作製されている、豆のパッケージング上のトラッカを、この情報を提供するように構成することもできる。特に、豆の生産地(工場)を考慮に入れることができる。
【0153】
次いで、制御システムは、上述の提供された焙煎条件Ciのそれぞれを、上述のマスタ焙煎装置(M)を使用した焙煎レシピの定義の際に適用された、対応する基準条件CiRefと比較するように構成されている。
【0154】
これらの基準条件CiRefは、制御システムのメモリ内に記憶させることができ、又は、リモート接続を通してアクセス可能なサーバ内に記憶させることもでき、あるいは、パッケージのコードの一部とすることもできる。種々の条件を、種々の場所に記憶させることができる。
【0155】
次いで、焙煎条件のうちの1つと、対応する基準条件との間に、差異が認められる場合には、その認められた差異に基づいて、制御システムは、その焙煎条件及び認められた差異に固有の、対応する予め定められた補正KCiにアクセスするように構成されている。
【0156】
補正Kciは、特定の条件(例えば、周囲温度)について、及び、現在の条件と基準条件CiRefとの特定の差異若しくは特定の範囲の差異Δ(例えば、+5℃の温度の差異)について、予め定められている。
【0157】
予め定められた補正Kcは、条件のタイプ及び基準条件との差異の関数としてKcを提供する、ルックアップテーブルの形態で記憶させることができる。
【0158】
例えば、周囲温度に固有の予め定められた補正に関するルックアップテーブルを、20℃で実施される基準周囲温度の観点から、以下のように例示することができる:
補正a
Temperatureは、温度範囲に固有の固定値とすることができる:
【表1】
又は、補正a
Temperatureは、焙煎レシピの再現中に時間と共に変化するように定義することも可能であり、特に、係数は、以下に記載されるように、異なる時間間隔にわたって異なり得る:
【表2】
又は、補正a
Temperatureは、焙煎レシピの再現中に温度と共に変化するように定義することも可能であり、特に、係数は、以下に記載されるように、異なる温度間隔にわたって異なり得る:
【表3】
【0159】
次いで、制御システムは、そのアクセス可能な対応する予め定められた補正KCiを、フィードバックループ調節に適用するように構成されている。
【0160】
制御システムが、焙煎条件と、対応する基準条件との間に、いくつかの差異が認められるため、いくつかの予め定められた補正KCiにアクセスする場合には、それらのいくつかの補正が、フィードバックループ調節に適用される。
【0161】
それらの補正を、温度プローブ5によって測定された温度Tregに、又は、再現される焙煎レシピによって提供される温度Tset@tiに適用することができる。制御システムに提供される補正は、以下で詳述されるように、Tregに適用されるか又はTset@tiに適用されるかに応じて、適合させることができる。
【0162】
特定の条件及び差異に関する補正Kciは、コーヒー専門家によって、種々の条件に応じた焙煎プロファイルの適合における自身の知識に基づいて、予め定めることができる。例えば、
寒冷な周囲環境における焙煎は、チャンバの壁を通した熱損失のために、より多くの熱をチャンバに加えることによって補償することができる。1を上回る係数actemparatureを有する補正を適用することによる、フィードバックループの補正を適用することができる。この値は、チャンバのサイズ、及び壁の材料に依存し得る。
期待されるよりも高い水分レベルを呈するコーヒー豆を焙煎することは、より多くの熱をチャンバに加えることによって補償することができる。焙煎プロファイルの再現中に時間と共に変化する係数:acbeans moisure(t)を適用することによる、フィードバックループの補正。例えば、acbeans moisure(t)は、焙煎プロファイルの第1の期間中は1を上回り、次いで、焙煎プロファイルの残りの時間中は1に等しい。
【0163】
あるいは、特定の条件及び差異に関する各補正Kciは、この特定の条件が、基準条件CiRefとは、この特定の差異で異なっている状態で、マスタ焙煎装置を操作して、コーヒー豆の焙煎に対する影響を確立し、この影響を補償するために制御調節ループに適用される、対応する補正を推論することによって、予め定めることができる。
【0164】
条件間に差異が認められない場合には、制御システムは、1つの特定のマスタ焙煎装置(M)を使用して定義された、焙煎レシピRsetを再現する。
【0165】
図4A~
図4Dは、焙煎装置の新たな製造シリーズの一部である焙煎装置Xの使用に対応する補正Kcを、予め定める方法を示す。これらの装置は、マスタ装置と同様であるが、新たなタイプの内部構成要素が使用されている。
【0166】
これらの装置は、チャンバ1の外部に配置されている1つの温度プローブ5を備え、このことは、これらのタイプの装置が、チャンバの内部に温度プローブ5が配置されて豆と接触する装置と比較して、チャンバに熱風が供給される方式の変化に対して、又は周囲条件(温度、湿度)に対して、特に敏感であることを意味する。
【0167】
新たに製造された装置については、そのシリーズに固有の補正Kciは、チャンバの内部の温度Tcalの測定値が提供されるように、チャンバ1内に一時的温度プローブ3を導入することによって、予め定めることができる。
【0168】
装置Xに対する補正を予め定めるプロセスの前に、予備段階において、
図4Aに示されるように、マスタ焙煎装置Mを使用して、予め定められた較正曲線R
refが確立される。
【0169】
この段階の間、焙煎装置Mの加熱デバイス2は、予め設定された曲線Rsetを再現するように制御され、この予め設定された曲線は、予め定義された対応する連続する時点t1、t2、...、tfinalにそれぞれ適用される温度Tset@t1、Tset@t2、...Tset@tfinalを表す、1セットの点(Tset@ti;ti)を提供する。この制御は、第1の温度プローブ5によって調節された温度Tregに基づく。
【0170】
予め設定された曲線R
setの再現中、チャンバ内の温度T
refが、一時的温度プローブ3において、時間の関数として測定される。この測定により、予め定められる較正曲線R
refに対応する、曲線T
refによって
図4Cに示されている、少なくとも1セットの点(T
ref@ti;t
i)の決定が可能となる。
【0171】
同じ方式で、
図4Bに示される装置Xに対する補正を予め定めるプロセスの間、焙煎装置Xのシステムの加熱デバイス2が、予め設定された同じ曲線R
setを再現するように制御され、この制御は、第1の温度プローブ5によって調節された温度T
regに基づく。
【0172】
予め設定された曲線R
setの再現中、チャンバ1内の温度T
calが、一時的温度プローブ3において、時間の関数として測定される。この測定により、曲線T
calによって
図5Cに示されている、少なくとも1セットの点(T
cal@ti;t
i)の決定が可能となる。
【0173】
焙煎装置Xの補正を予め定めるプロセスにおいて、温度T
cal@tiが、少なくとも1つの同じ時点tiにおいてマスタ焙煎装置Mを使用して得られた温度T
ref@tiと比較される。
図4Cは、
予め設定された曲線R
setと、
曲線R
refを確立する、予め設定された曲線R
setの再現中のマスタ焙煎装置のチャンバ内の温度T
ref@tiと、
同じ予め設定された曲線Rsetの再現中の焙煎装置Xのチャンバ内の温度T
cal@tiとに対応する、曲線又は1セットの点を示す。
【0174】
図4Cは、同じ予め設定された曲線R
setの再現が、どのように装置ごとに異なるかを明らかにしている。この差異は、製造プロセスにおける差異によって説明することができる。
【0175】
焙煎装置Xの補正を、TcalとTrefとの比較に基づいて、予め定めることができる。
【0176】
TcalとTrefとの関係に応じて、種々のタイプの補正を適用することができる。この関係の複雑性は、別のタイプのヒータ、別の形状のチャンバ、例えばより敏感な制御を提供する、ヒータを制御するための別の制御規則又は制御アルゴリズム(例えば、空気流ドライバとヒータとに対する2段階制御が存在する場合には、より複雑である)の使用などの、焙煎装置とマスタ焙煎装置との構成の差異に依存し得る。
【0177】
この関係は通常、回帰分析を通して決定され、線形回帰、重回帰、非線形回帰、多項式回帰などの周知の分析モデルを使用する、回帰分析ソフトウェアによって実施される。
【0178】
一旦TcalとTrefとの関係が定義されると、フィードバックループ調節によって適用される規則又はアルゴリズムに、予め定められた補正を適用することができる。この規則の複雑性に応じて、この規則の種々のステップにおいて補正を適用することができる。最も単純な実施形態では、好ましくは、温度プローブ5によって測定された温度Tregに、又は、再現される焙煎レシピによって提供される温度T@tiに、補正が適用される。
【0179】
図5A及び
図5Bに示されている、焙煎機M及び焙煎機Xの場合、双方の焙煎機が、極めて類似した構成要素を備え、温度プローブ3によって測定された温度のみに基づいてヒータ22を操作する、単純なフィードバックループ制御を使用する場合は、補正の係数は、時点t
finalにおける以下の比率Kによって定義することができる:
T
cal@tfinal/T
ch@tfinal
【0180】
図4Dに示されるように、この比率は、フィードバックループ調節においてT
regと比較される前に、再現される焙煎レシピによって提供される温度T
@tiの単純な増倍係数として使用することができる。
【0181】
本発明の別の実施形態では、上記の比率の逆数、すなわち1/Kを、第1の温度プローブ5によって測定された温度Tregの増倍係数として、この温度がフィードバックループ調節においてT@tiと比較される前に使用することができる。
【0182】
この補正により、装置Xの制御システムは、マスタ装置において得られた温度Trefに更に近い温度で、チャンバの内部に熱風を供給することが可能となる。
【0183】
図5は、同じ焙煎装置Xでの周囲温度の差異に対応する1つの補正Kcを、予め定める方式を示す。
図4A~
図4Cで実施されたプロセスが
図4Bでのものを除いて再現されるが、それは10℃の周囲温度を使用して操作されるマスタ焙煎装置Mである一方で、
図4Aでは、25℃の周囲温度において基準曲線が確立された。
図4Bに示される動作中、全ての他の条件は、
図4Aの動作で実施された基準条件と同一である。T
calとT
refとの比較に基づいて、基準周囲温度との-15℃の差異に固有の補正Kが、予め定められる。この補正は、メモリ又はデータベース内に記憶され、焙煎装置Xの制御システムにとってアクセス可能である。
【0184】
この装置が、10℃の周囲温度内で豆を焙煎するように操作される場合、このアクセス可能な予め定められた補正が、フィードバックループ調節に適用される。
【0185】
更には、その製造シリーズに対するアクセス可能な予め定められた補正も、フィードバックループ調節に適用される。
【0186】
本発明は、上記で例示された実施形態を参照して説明されているが、特許請求される本発明は、決してこれらの例示された実施形態によって限定されるものではない点が理解されるであろう。
【0187】
「特許請求の範囲」で定義されるような本発明の範囲を逸脱することなく、変形及び修正を実施することができる。更には、特定の特徴に対して既知の等価物が存在する場合、そのような等価物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。
【0188】
本明細書で使用するとき、用語「備える」、「備えている」、及び同様の用語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、それらは、「~を含むが、それらに限定されない」ことを意味するものとする。
【符号の説明】
【0189】
10 焙煎装置
1 焙煎チャンバ
11 底部開口部
12 頂部開口部
2 加熱デバイス
21 空気流ドライバ
22 ヒータ
23 通路
3 一時的温度プローブ
4 ハウジング
41 空気出口孔
42 空気入口
43 垂直ハウジング部分
5、51、52 温度プローブ
6 ユーザインタフェース
7 コードリーダ
8 処理ユニット
80 制御システム
9 電源
19 センサ
61 通信インタフェース
62 データベース
63 メモリユニット