(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】硫酸塩欠乏カルシウム含有多孔質鉱物材料
(51)【国際特許分類】
C04B 28/00 20060101AFI20250228BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20250228BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20250228BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
C04B28/00
C04B22/14 A
C04B22/14 B
C04B24/38 Z
C04B38/00 301Z
C04B38/00 303Z
(21)【出願番号】P 2023501684
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021067937
(87)【国際公開番号】W WO2022012928
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】102020118403.4
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595014653
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツール フエルデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】カイザー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】トーム フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ゼイフェルト セヴェリン
(72)【発明者】
【氏名】ディットリッヒ セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ショバー ゲオルク
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-516379(JP,A)
【文献】国際公開第2020/037349(WO,A1)
【文献】特開2011-042551(JP,A)
【文献】特開2014-062014(JP,A)
【文献】C.P.Udawatte et al,Solidification of xonotlite fibers with chitosan by hydrothermal hot pressing,Materials Letters,2000年,45巻,298-301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C04B 38/00-38/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
総重量に対して、硫酸塩の含有量が1.5重量%以下であり、かつバイオポリマーの含有量が0.001重量%~5.00重量%の範囲である、カルシウム含有多孔質鉱物材料であって、前記バイオポリマーは、
カルシウム及びマグネシウムイオンから選択される二価イオンを介してヒドロゲルを形成し、かつ架橋を形成するバイオポリマーである、カルシウム含有多孔質鉱物材料。
【請求項2】
検出可能な含有量の可塑剤を含まない、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記バイオポリマーは、多糖類、ペクチン及びその誘導体、ポリ-L-グルロン酸及びその誘導体、ポリ-D-マンヌロン酸及びその誘導体、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、トラガカント、アラビアガム、キサンタンガム、カラヤガム、ゲランガム、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
50kg/m
3~1000kg/m
3の乾燥嵩密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
・オートクレーブ気泡コンクリートと、
・発泡コンクリート/発泡セメントと、
・アルカリ活性化建築材料(ジオポリマー)と、
・多孔質耐火材料(耐火セラミックス、耐火コンクリート)、すなわち高温処理(>600℃)又は炉のライニング又は熱凝集体に使用される材料と、
・発泡コンクリート(水硬性)又は気泡コンクリート(オートクレーブ)に基づく建設産業用の多孔質鉱物断熱材と、
・発泡コンクリート(水硬性)又は気泡コンクリート(オートクレーブ)に基づくパイプ、コンテナ、ボイラー、炉、加熱キャビネットの工業断熱用の多孔質鉱物断熱材と、
・発泡セラミックと、
・石灰発泡体と、
・空気又はCO
2富化雰囲気中又は液体CO
2中で炭酸化されて硬化した多孔質気硬性石灰と、
・鉱物ベースの多孔質吸音材と、
・軽量コンクリート用の多孔質造粒体と、から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のカルシウム含有多孔質鉱物材料の製造プロセスであって、
a)酸化カルシウム源、及び1種以上のバイオポリマーを含む乾燥化合物から、水性懸濁液を製造する工程a)と、
b)工程a)の懸濁液から未焼成体を製造する工程b)と、
c)工程b)からの未焼成体を硬化させる工程c)と、
d)カルシウム含有多孔質鉱物材料を得る工程d)と、を含む、プロセス。
【請求項7】
前記バイオポリマーは、多糖類、ペクチン及びその誘導体、ポリ-L-グルロン酸及びその誘導体、ポリ-D-マンヌロン酸及びその誘導体、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、トラガカント、アラビアガム、キサンタンガム、カラヤガム、ゲランガム、並びにそれらの混合物から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記懸濁液における前記乾燥化合物中のバイオポリマーの重量割合は、前記乾燥化合物の総重量に対して、0.001重量%~5.0重量%の範囲である、請求項6又は7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記懸濁液の前記乾燥化合物は、前記乾燥化合物の総重量に対して、0重量%~10重量%の重量割合で硫酸塩含有材料を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記硫酸塩含有材料は、石膏、硬石膏、バサナイト、ポルトランドセメント及びそれらの混合物から選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記懸濁液の前記乾燥化合物は、可塑剤を含まない、請求項6~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
低硫酸塩カルシウム含有多孔質鉱物材料を製造するためのバイオポリマーの使用であって、前記バイオポリマーは、
カルシウム及びマグネシウムイオンから選択される二価イオンを介してヒドロゲルを形成し、かつ架橋を形成するバイオポリマーである、バイオポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総重量に対して、硫酸塩(sulfate)の含有量が1.5重量%以下であり、かつバイオポリマーの含有量が0.001重量%~5.0重量%の範囲であるカルシウム含有多孔質鉱物材料(calcium-containing porous mineral material)に関し、バイオポリマーを安定剤として使用して前記材料を製造するプロセスに関し、及び低硫酸塩カルシウム含有多孔質鉱物材料の製造におけるバイオポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
建設分野の軽量多孔質材料は、幅広い使用に加え、低密度であるため、資源の保全にも役立つ効率的な製品である。しかしながら、質量の減少にもかかわらず、重要な材料パラメータ(例えば、圧縮強度、曲げ強度など)を獲得し、それに応じて製造において使用されるプロセスが高度に技術的になり、標準化されることは重要である。オートクレーブ気泡コンクリート(autoclaved aerated concrete)、発泡コンクリート(foamed concrete)、発泡セメント(foamed cement)、石灰発泡体(lime foam)などのカルシウム含有多孔質建築材料の製造においては、最終製品の品質にとって重要であり、かつそれに応じて制御可能でなければならないのは、例えば、発泡又は多孔化処理後の物品及び成形化合物、所謂未焼成体(green body)の安定化である。一般的に、製造対象の建築材料の多孔性が高いほど、未焼成体が不安定になる。材料に関連する理由から、基本的な配合物が限られた範囲でしか適合できないため、それに応じて、安定化又は特定の特性の最適化のために添加剤が加えられる。
【0003】
しかしながら、ここでは、添加剤のマイナス影響も考慮する必要があり、これらはこれまで主に生態学的側面に関連している。このようなマイナス影響は、特に、製造過程において発生したCO2排出又はこれらの材料のリサイクル可能性においても特に顕著である。ここでは、オートクレーブ気泡コンクリートを例とすることができる。これらの配合物には、安定剤として、セメント及び/又は、硬石膏(anhydrite)/石膏(gypsum)/バサナイト(bassanite)などの硫酸カルシウムの供給源が加えられる。これらの材料は、カルシウム及びケイ酸塩の供給源としても機能することができるが、これらの材料の安定化機能は、これらの材料が主に、オートクレーブ気泡コンクリートの主成分であるトバモライト(tobermorite)の形成には必要とされない機能性添加剤として加えられることを意味する。ここでは、硬石膏/石膏/バサナイト及びセメント(約5%含有量の硫酸塩が反応調節剤として機能する)などの物質の硫酸塩含有成分が容易に浸出され、かつ土壌又は地下水に浸入する可能性があるため、このような物質により建築材料の耐用年数の終わりにその埋め立てクラスが高くなることを考慮しなければならない。セメントの使用による影響は、製造中にも関係があり、特にCO2換算量に反映される。言及された側面は、既知であり、既にいくつかの研究の要素となっているが、これまで、これらの側面は、製品経済にとって「重要ではない」ことであった。関連する社会の変化は、この見方が大きく変化したこと、並びに科学者及び製造業者が新しい解決法を提示するよう奨励されていることだけである。
【0004】
未焼成体を安定化するための既存の最も一般的に使用されている解決法は、現在、以下のアプローチに基づいている。
1、未焼成体又は最終製品の「凝結挙動」に影響を与える添加剤について
Daake、Henning-Felix from (2016):Moglichkeiten zur Optimierung der Wirkungsweise bauchemischer Zusatzmittel durch Mechanismen der kontrollierten Wirkstofffreisetzung、学位論文、工科大学、カッセル大学出版局、ベルリン:[Options for optimizing the mode of action of construction chemical additives through mechanisms of controlled active substance release]。
a、酸化カルシウム
Tungulin、Dmitry;Behrenberg,Birgit;Lutter,Jurgen;Wallmeier,Werner(2018):Quicklime with defined reaction time window for aerated autoclaved concrete production、ce/papers 2(4)、pp.223-229。
b、セメント、硬石膏(anhydrite)、石膏(gypsum)(半水和物(hemihydrate))
Baltakys、K.;Siauciunas,R.(2010):Influence of gypsum additive on the gyrolite formation process、Cement and Concrete Research 40(3),pp.376-383、
Malecki,Marek;Kurdowski,Wieslaw;Walczak,Pawel(2018):Influence of gypsum and limestone,used as mineral additives,on autoclaved aerated concrete properties、ce/papers 2(4),pp.231-234。
c、アッシュ
Walczak,Pawel;Szymanski,Pawel;Rozycka,Agnieszka(2015):Autoclaved Aerated Concrete based on Fly Ash in Density 350 kg/m3 as an Environmentally Friendly Material for Energy-Efficient Constructions、Procedia Engineering 122,pp.39-46、
Winkels,Bernd;Nebel,Holger;Raupach,Michael(2018):Carbonation of autoclaved aerated concrete containing fly ash、ce/papers 2(4),pp. 47-51。
d、アルモシリケート(Alumosilicate)
Matsushita,Fumiaki;Imasawa,Kouichi;Shibata,Sumio;Horiguchi,Masatoshi(2018年):Aluminum silicate recycling raw materials for production of autoclaved aerated concrete、ce/papers 2(4),pp. 215-221、
Grabowska,Ewelina(2018):Zeolites as a raw material to the AAC production、ce/papers 2(4),pp.201-206。
e、ポゾラン(Pozzolan)
Luke,K.(2004):Phase studies of pozzolanic stabilized calcium silicate hydrates at 180℃、Cement and Concrete Research 34(9),pp.1725-1732。
2、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維、合成ポリマー繊維など、補強材として機能し、かつ支持構造を強化する添加剤について
Stadie,R.,(2008):Festigkeits- und Verformungsverhalten von kurzfaserverstarktem Porenbeton、学位論文、ベルリン:ベルリン工科大学:[Strength behavior and deformation behavior of autoclaved aerated concrete reinforced with short fibers]、
Laukaitis, A.; Keriene, J.; Mikulskis, D.; Sinica, M.; Sezemanas, G. (2009): Influence of fibrous additives on properties of aerated autoclaved concrete forming mixtures and strength characteristics of products、Construction and Building Materials 23(9),pp.3034-3042、
Laukaitis,Antanas;Keriene,Jadvyga;Kligys,Modestas;Mikulskis,Donatas;Lekunaite,Lina(2012):Influence of mechanically treated carbon fibre additives on structure formation and properties of autoclaved aerated concrete、Construction and Building Materials 26(1),pp. 362-371、
Laukaitis,A.;Keriene,J.;Mikulskis,D.;Sinica,M.;Sezemanas,G.(2009a):Influence of fibrous additives on properties of aerated autoclaved concrete forming mixtures and strength characteristics of products、Construction and Building Materials 23(9),pp. 3034-3042、
Karlstetter,C.,(2013):Verbesserung der Leistungsfahigkeit von Porenbeton durch den Einsatz von Fasern、学位論文、Munich: University of the German Federal Armed Forces Munich:[Improving the performance of autoclaved aerated concrete through the use of fibers]。
3、水分バランス/粘度に影響を与え、まだ固化していない成形体がバラバラになるのを防止する添加剤、例えば、ポリビニルアルコールなどについて
Akthar,F.K.;Evans,J.R.G.(2010):High porosity(>90%) cementitious foams、Cement and Concrete Research 40(2),pp.352-358。
4、異なる粒度分布の活用について
Isu,Norifumi;Teramura,Satoshi;Ishida,Hideki;Mitsuda,Takeshi:Influence of quartz particle size on the chemical and mechanical properties of autoclaved aerated concrete (II) fracture toughness, strength and micropore、
Park,Seung Bum;Yoon,Eui Sik;Lee,Burtrand I.(1999):Effects of processing and materials variations on mechanical properties of lightweight cement composites、Cement and Concrete Research 29(2),pp.193-200。
5、水/固体比の調整について
Wu,Lixian;Peng,Xiaoqin;Yang,Junfeng;Bai,Guang(1996):Influence of some technology parameters on the structures of autoclaved lime-sand concrete、Cement and Concrete Research 26(7),pp.1109-1120。
【0005】
現在、本発明は、上記カルシウム含有多孔質鉱物材料の製造において、多孔化体を安定化させるとともに、バイオミメティクスの使用によりセメント、石膏(gypsum)/硬石膏(anhydrite)/バサナイト(bassanite)などの添加剤又は非晶質シリカ、ポゾランなどの他の添加剤を部分的又は完全に置き換えることができる新規なプロセスを記載している。これにより、このような建築材料にとって、これまでにない経済的かつ生態学的利点をもたらす。例えば、セメントを使用しないことにより、CO2換算量を大幅に減少させることができる。また、硫酸塩含有量の低減は、建築材料が下位の埋め立てクラスに該当することを意味する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、総重量に対して、硫酸塩の含有量が1.5重量%以下であり、かつバイオポリマーの含有量が0.001重量%~5.00重量%の範囲であるカルシウム含有多孔質鉱物材料に関する。
【0007】
また、本発明は、本明細書に記載のカルシウム含有多孔質鉱物材料の製造プロセスに関し、このプロセスは、
a)酸化カルシウム源、必要に応じて1種以上の更なる鉱物原料源及び1種以上のバイオポリマーを含む、水性懸濁液を製造する工程a)と、
b)工程a)の懸濁液から未焼成体を製造する工程b)と、
c)工程b)からの未焼成体を硬化させる工程c)と、
d)カルシウム含有多孔質鉱物材料を得る工程d)と、を含む。
【0008】
最後に、本発明は、低硫酸塩カルシウム含有多孔質鉱物材料の製造におけるバイオポリマーの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】アルギン酸カルシウムに関連する「卵箱(egg-box)」モデルの例の概略図を示す(出典:Fu,Shao、Thacker,Ankur、Sperger,Diana M.、Boni,Riccardo L.、Buckner,Ira S.、Velankar,Sachinら(2011):Relevance of rheological properties of sodium alginate in solution to calcium alginate gel properties、AAPS PharmSciTech 12(2),pp.453-460)。
【
図2】アルギン酸アンモニウム(左)又はアルギン酸ナトリウム(右)を加えたオートクレーブ気泡コンクリートの内面の状態を走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope)(SEM)画像で示す。
【
図3】アルギン酸、アルギン酸アンモニウム及びアルギン酸ナトリウムのFTIRスペクトルと、アルギン酸(試料1)、アルギン酸アンモニウム(試料2)及びアルギン酸ナトリウム(試料3)を使用して実施例のセクションで製造された3つのオートクレーブ気泡コンクリートブロックの抽出物のFTIRスペクトルとを示す。図の下部には、それぞれの参照スペクトル(アルギン酸Na、アルギン酸Ca)が重ねられ、関連するピークが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
本発明の目的のために、鉱物材料は、天然鉱物から構成される無機非金属材料であるか又はふるいにかけられた若しくは粉砕された鉱物から構成される材料の成形された混合物であり、必要に応じて特別な硬化処理を用いて結合剤を使用することにより所望の強度が得られる。本発明の目的のために、鉱物材料という用語から除外されるものは、木材、金属材料、ガラス、プラスチック及びこれらの材料で製造される複合材料である。
【0011】
上記定義によれば、カルシウム含有多孔質鉱物材料は、少なくとも検出可能な含有量のカルシウムを有し、意図的な細孔形成も検出可能である鉱物材料である。
【0012】
バイオポリマーは、生物の細胞内で合成されるポリマー(天然ポリマー)である。本発明の目的のため、バイオポリマーという用語はまた、生物の細胞内の有機化合物を(例えば、細菌における発酵によって)修飾して取得されたバイオポリマー(バイオジェニックポリマー)及びバイオポリマーの誘導体も包含する。本発明の目的のために、生分解性石油系ポリマー(Biodegradable petroleum-based polymer)は、バイオポリマーという用語に含まれない。
【0013】
低硫酸塩材料は、材料の総重量に対して、1.5重量%以下の含有量の硫酸塩を有する。
【0014】
硫酸塩を含まない材料には、測定可能な硫酸塩含有量がない。
【0015】
本発明は、総重量に対して、硫酸塩の含有量が1.5重量%以下であり、かつバイオポリマーの含有量が0.001重量%~5.00重量%の範囲であるカルシウム含有多孔質鉱物材料に関する。
【0016】
カルシウム含有多孔質鉱物材料は、好ましくは、
・オートクレーブ気泡コンクリートと、
・発泡コンクリート/発泡セメントと、
・アルカリ活性化建築材料(ジオポリマー)と、
・多孔質耐火材料(耐火セラミックス、耐火コンクリート)、すなわち高温処理(>600℃)又は炉のライニング又は熱凝集体(thermal aggregates)に使用される材料と、
・発泡コンクリート(水硬性(hydraulic))又は気泡コンクリート(オートクレーブ)に基づく建設産業用の多孔質鉱物断熱材と、
・発泡コンクリート(水硬性)又は気泡コンクリート(オートクレーブ)に基づくパイプ、コンテナ、ボイラー、炉、加熱キャビネットの工業断熱用多孔質鉱物断熱材と、
・発泡セラミックと、
・石灰発泡体(Lime foam)と、
・空気又はCO2富化雰囲気中又は液体CO2中で炭酸化されて硬化した多孔質気硬性石灰(Porous air-hardening lime)と、
・鉱物ベースの多孔質吸音材と、
・軽量コンクリート用の多孔質造粒体(Porous granulates)と、から選択される。
【0017】
カルシウム含有多孔質鉱物建築材料は、上記化合物であることが好ましい。
【0018】
具体的には、オートクレーブ気泡コンクリート、発泡コンクリート、発泡セメント、及び石灰発泡体が好ましく、オートクレーブ気泡コンクリートが特に好ましい。
【0019】
上記材料における硫酸塩の含有量は、材料の総重量に対して、1.5重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、特に好ましくは0.7重量%以下である。
【0020】
特に好ましい実施形態では、上記材料は、測定可能な重量割合の硫酸塩を含まない。
【0021】
したがって、本発明に係る材料は、硫酸塩が少ないか又は硫酸塩を含まない。
【0022】
硫酸塩の含有量は、材料又は材料の試料に対する蛍光X線分析(X-ray fluorescence analysis)によって検出/決定できる。
【0023】
また、上記材料におけるバイオポリマーの含有量は、材料の総重量に対して、好ましくは、0.001重量%~5.00重量%、より好ましくは0.01重量%~2.50重量%、特に好ましくは0.05重量%~1.00重量%、最も好ましくは0.1重量%~0.50重量%の範囲にある。
【0024】
バイオポリマーの成分は、上記材料から抽出された後、方法のセクションで説明されているように、FTIR、ラマン分光法(Raman spectroscopy)、ガスクロマトグラフィー(gas chromatography)などの通常の検出方法によって検出かつ決定することができる。
【0025】
バイオポリマーは、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンなどの二価イオン、好ましくはカルシウムイオンを介してヒドロゲルを形成し、かつ架橋を形成するバイオポリマーであることが好ましい。
【0026】
バイオポリマーは、広いpH範囲にわたって、好ましくはアルカリ範囲において耐熱性及び/又は安定であることが好ましい。
【0027】
上記材料は、1種以上のバイオポリマーを含んでもよい。上記材料は、1種のバイオポリマーを含むことが好ましい。
【0028】
好ましいバイオポリマーは、多糖類、例えば、アルギン酸(alginic acid)及びその誘導体、ペクチン(pectin(s))及びその誘導体、ポリ-L-グルロン酸(poly-L-guluronic acid)及びその誘導体、ポリ-D-マンヌロン酸(poly-D-mannuronic acid)及びその誘導体、寒天(agar-agar)、カラギーナン(carrageenan)、ファーセレラン(furcellaran)、トラガカント(tragacanth)、アラビアガム(gum arabic)、キサンタンガム(xanthan gum)、カラヤガム(karaya gum)、ゲランガム(gellan gum)、並びにそれらの混合物であり、好ましくは、アルギン酸及びその誘導体、ペクチン及びその誘導体、並びにそれらの混合物であり、より好ましくは、アルギン酸及びその誘導体、並びにそれらの混合物である。
【0029】
この文脈において、誘導体は、例えば、塩、エステル、アミド又はグリコールである。
【0030】
好ましいアルギン酸誘導体は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、及びアルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸の塩である。
【0031】
好ましいペクチン誘導体は、50%を超えるエステル化度を有する高エステルペクチン、5~50%のエステル化度を有する低エステルペクチン、ペクチン酸、及びアミドペクチンである。
【0032】
特に好ましいバイオポリマーは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、及びアルギン酸アンモニウムであり、アルギン酸及びアルギン酸アンモニウムは、特に好ましい。
【0033】
上記材料は、検出可能な含有量の可塑剤、例えばナフタレンスルホン酸塩又はリグニンスルホン酸塩などの界面活性物質(surface-active substance)、或いはメラミン樹脂、ポリカルボン酸塩又はポリカルボン酸エーテルなどの分散物質(dispersing substance)を含まないことが好ましい。
【0034】
上記材料は、既知の全ての乾燥嵩密度クラス(dry bulk density class)で製造できる。
【0035】
したがって、上記材料は、50~1000kg/m3の乾燥嵩密度を有することが好ましい。
【0036】
しかしながら、本発明に係る材料を製造するための以下に記載のプロセスは、乾燥嵩密度の低い材料を製造する場合に最も有利であることが分かる。
【0037】
したがって、特別な実施形態では、上記材料は、50~400kg/m3の乾燥嵩密度を有することが好ましい。
【0038】
特に、発泡コンクリート又は発泡セメントなどの材料の場合、本発明は、120kg/m3又は100kg/m3までのより低い乾燥嵩密度を達成することが可能である。
【0039】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載のカルシウム含有多孔質鉱物材料の製造プロセスに関し、このプロセスは、
a)酸化カルシウム源、必要に応じて1種以上の更なる鉱物原料源及び1種以上のバイオポリマーを含む、水性懸濁液を製造する工程a)と、
b)工程a)の懸濁液から未焼成体を製造する工程b)と、
c)工程b)からの未焼成体を硬化させる工程c)と、
d)カルシウム含有多孔質鉱物材料を得る工程d)と、を含む。
【0040】
ここで、本発明に係るプロセスは、例えばオートクレーブ気泡コンクリートの製造において、未焼成体をオートクレーブによって硬化させる処理を含む。この場合、上記プロセスは、
a)酸化カルシウム源、ケイ酸塩源及び1種以上のバイオポリマーを含む水性懸濁液を製造する工程a)と、
b)工程a)の懸濁液から未焼成体を製造する工程b)と、
c)工程b)からの未焼成体を、飽和蒸気中で100℃~200℃の範囲内の温度でオートクレーブする工程c)と、
d)カルシウム含有多孔質鉱物材料を得る工程d)と、を含む。
【0041】
本発明に係るプロセスの更なる実施形態では、未焼成体を、空気中に室温で硬化させることができ、或いは乾燥キャビネット又は加熱オーブン内で高温で硬化させることができる。この場合、上記プロセスは、
a)酸化カルシウム源、必要に応じて更なる鉱物原料源及び1種以上のバイオポリマーを含む、水性懸濁液を製造する工程a)と、
b)工程a)の懸濁液から未焼成体を製造する工程b)と、
c)工程b)からの未焼成体を、空気中に室温で硬化させ、或いは乾燥キャビネット又は加熱オーブン内で高温で硬化させる工程c)と、
d)カルシウム含有多孔質鉱物材料を得る工程d)と、を含む。
【0042】
本発明に係るプロセスの更なる実施形態では、例示的な発泡コンクリートの製造において、この目的のために使用される必要に応じて調製されたフォームの形態のタンパク質、界面活性剤、(必要に応じて懸濁液のpHを調整する)アルミニウム粉末及び更なる物質は、例えば、多孔化にかけられる懸濁液に加えられる。このように、製造された鉱物発泡体を適切な金型に流し込むことができる。得られた未焼成体は、通常、空気中で硬化する。この実施形態に適したプロセスは、例えばDE19632666C1又はDE10314879A1に記載されている。
【0043】
懸濁液は、工程a)に従って、乾燥化合物を水と混合することにより製造されることが好ましい。
【0044】
乾燥化合物は、酸化カルシウム源、必要に応じて1種以上の更なる鉱物原料源、1種以上のバイオポリマー及び必要に応じて更なる添加剤の混合物を含む。
【0045】
酸化カルシウム源は、好ましくは、生石灰(quicklime)又は消石灰(slaked lime)などの石灰又はそれらの混合物から選択される。
【0046】
好ましくは、石灰源は、石膏/硬石膏/バサナイトなどのセメント源又は硫酸カルシウム源を含まない。
【0047】
製造される材料に応じて、乾燥化合物は、1種以上の更なる鉱物原料源を含んでもよい。
【0048】
例として、オートクレーブ気泡コンクリートの製造において、好ましくは石英砂(quartz sand)、フライアッシュ(fly ash)及び非晶質ケイ酸塩(amorphous silicate)又はそれらの混合物から選択されるケイ酸塩源は、通常、更なる鉱物原料源として乾燥化合物に加えられる。
【0049】
バイオポリマーは、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンなどの二価イオン、好ましくはカルシウムイオンを介してヒドロゲルを形成し、かつ架橋を形成するバイオポリマーであることが好ましい。
【0050】
バイオポリマーは、広いpH範囲にわたって、好ましくはアルカリ範囲において耐熱性及び/又は安定であることが好ましい。
【0051】
好ましいバイオポリマーは、多糖類、例えば、アルギン酸及びその誘導体、ペクチン及びその誘導体、ポリ-L-グルロン酸及びその誘導体、ポリ-D-マンヌロン酸及びその誘導体、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、トラガカント、アラビアガム、キサンタンガム、カラヤガム、ゲランガム、並びにそれらの混合物であり、好ましくは、アルギン酸及びその誘導体、ペクチン及びその誘導体、並びにそれらの混合物であり、より好ましくは、アルギン酸及びその誘導体、並びにそれらの混合物である。
【0052】
この文脈において、誘導体は、例えば、塩、エステル、アミド又はグリコールである。
【0053】
好ましいアルギン酸誘導体は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、及びアルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸の塩である。
【0054】
好ましいペクチン誘導体は、50%を超えるエステル化度を有する高エステルペクチン、5~50%のエステル化度を有する低エステルペクチン、ペクチン酸、及びアミドペクチンである。
【0055】
特に好ましいバイオポリマーは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、及びアルギン酸アンモニウムであり、アルギン酸及びアルギン酸アンモニウムは、特に好ましい。
【0056】
乾燥化合物中の酸化カルシウム源の割合は、各々の材料に対して通常の範囲内にあることが好ましい。
【0057】
オートクレーブ気泡コンクリートの場合、乾燥化合物中の酸化カルシウム源の割合は、乾燥化合物の総重量に対して、通常20重量%~50重量%、好ましくは25重量%~48重量%、より好ましくは28重量%~45重量%である。
【0058】
乾燥化合物中の可能な更なる原料源の割合は、各々の材料に対して通常の範囲内にあることが好ましい。
【0059】
オートクレーブ気泡コンクリートの場合、乾燥化合物中のケイ酸塩源の割合は、乾燥化合物の総重量に対して、通常35重量%~60重量%、好ましくは40重量%~58重量%、より好ましくは45重量%~55重量%である。
【0060】
乾燥化合物中のバイオポリマーの割合は、乾燥化合物の総重量に対して、通常0.001重量%~5.0重量%、好ましくは0.1重量%~2.5重量%、より好ましくは0.2重量%~1.0重量%である。
【0061】
更なる添加剤も乾燥化合物に加えられてよい。
【0062】
従来技術における通常のプロセスに係る材料の製造においては、酸化カルシウム、セメント、石膏/硬石膏/バサナイトなどの結合剤は、通常乾燥化合物又は懸濁液に加えられることにより未焼成体をある程度に安定化させる。
【0063】
本発明に係るプロセスによる材料の製造においては、バイオポリマーの添加は、セメント、特にポルトランドセメント(portland cement)を結合剤として完全に又は部分的に省くことができることを意味する。いくつかの実施形態では、一般的に結合剤の使用を完全に省くことができる。いくつかの他の実施形態では、一般的に結合剤の割合を大幅に低減することができる。
【0064】
本発明に係るプロセスにおける適切な結合剤の例としては、セメント、CAセメント、水硬性石灰(hydraulic lime)、生石灰(quicklime)、粘土、ローム、樹脂、ワックス、及びアルカリ活性化結合剤系が挙げられる。
【0065】
結合剤は、低い硫酸塩含有量を有するか又は測定可能な硫酸塩含有量を有していないことが好ましい。
【0066】
乾燥化合物中の可能な結合剤の割合は、それぞれの材料に対して通常の範囲内にあることが好ましい。いくつかの実施形態では、結合剤を通常よりも低い割合で使用することができる。いくつかの他の実施形態では、結合剤を完全に省くことができる。
【0067】
オートクレーブ気泡コンクリートの場合、乾燥化合物中のセメントベースの結合剤の割合は、乾燥化合物の総重量に対して、通常0重量%~20重量%、好ましくは1重量%~17重量%、より好ましくは3重量%~15重量%である。
【0068】
乾燥化合物又は懸濁液は、細孔形成剤を含んでもよい。これらの細孔形成剤は、懸濁液に加えられることが好ましい。細孔形成剤の例としては、反応性金属粉末、過酸化水素などが挙げられる。
【0069】
一部の材料の製造においては、細孔形成剤の代わりに、他の多孔化処理が適用される。
【0070】
細孔形成剤又は他の多孔化処理による多孔化は、材料の密度の調整に役立つ。
【0071】
乾燥化合物中の可能な細孔形成剤の割合は、それぞれの材料に対して通常の範囲内にあることが好ましい。
【0072】
乾燥化合物は、石膏、ポルトランドセメント、硬石膏若しくはバサナイト又はそれらの混合物などの硫酸塩含有材料を可能な限り低い割合で含むことが特に好ましい。
【0073】
乾燥化合物は、乾燥化合物の総重量に対して、好ましくは0重量%~10重量%、より好ましくは0重量%~8重量%、特に好ましくは0重量%~5重量%の重量割合で硫酸塩含有材料を含むことが好ましい。
【0074】
非常に特に好ましい実施形態では、乾燥化合物は、石膏、ポルトランドセメント、無水石膏、半水石膏又はそれらの混合物などの硫酸塩含有材料を含まない。
【0075】
乾燥化合物は、例えばナフタレンスルホン酸塩又はリグニンスルホン酸塩などの界面活性物質、或いはメラミン樹脂、ポリカルボン酸塩又はポリカルボン酸エーテルなどの分散物質から選択される可塑剤を含まないことが好ましい。
【0076】
懸濁液は、水を加えることによって乾燥化合物から製造される。
【0077】
工程b)では、未焼成体が上述したように懸濁液から形成される。
【0078】
この工程は、通常、好ましくは離型剤でコーティング又は湿潤された金型に懸濁液を移すことによって行われる。
【0079】
懸濁液は、通常、細孔形成剤と酸化カルシウム源との化学反応による気泡の形成により金型内で発泡し、膨潤する。
【0080】
いくつかの実施形態では、例えば、発泡コンクリート又は発泡セメントの製造においては、まず懸濁液を発泡させ、次に鉱物発泡体を金型に移す。
【0081】
いくつかの実施形態では、発泡後の懸濁液は、通常、ブロックに切断できる程度に部分的に凝結し、結果として未焼成体が得られる。
【0082】
ここで、部分凝結時間は、それぞれの材料の通常範囲内であることが好ましい。
【0083】
上記成分に関して未焼成体を研究することができる。酸化カルシウム源、任意の更なる原料源、バイオポリマー、及び更なる任意の添加剤の割合について、未焼成体中の水の割合を差し引くことによって乾燥化合物中の上記割合に再計算することができる。
【0084】
好ましくは、未焼成体には、未焼成体中の硫酸塩及び/又は可塑剤の割合を増加させる添加剤を加えない。
【0085】
工程c)では、工程b)からの未焼成体を硬化させる。
【0086】
未焼成体を硬化させるための適切な処理は、
-水熱硬化(Hydrothermal hardening)、オートクレーブ/蒸気硬化(オートクレーブ気泡コンクリート、オートクレーブ鉱物断熱材)と、
-室温の空気中での水硬性凝結(Hydraulic setting)又は「硬化(hardening)」(発泡コンクリート、鉱物断熱材、セメント及び/又は石灰ベース)と、
-高温(60~200℃)のオーブン内での水硬性凝結又は「硬化」(発泡コンクリート、鉱物断熱材、セメント及び/又は石灰ベース)と、
-「硬化」及びマイクロ波励起による「硬化」(アルカリ活性化結合剤系(ジオポリマー)の物理的及び化学的凝結)と、
-600℃以上などの非常に高い温度のキルンでの熱凝結又は「硬化」、焼結(sintering)(焼成(firing))(耐火セラミックス、多孔質耐火コンクリート、無孔耐火コンクリート、セラミック断熱材、セラミック発泡体)であって、「未焼成体」がその後の焼結中にクラックを生成しないように、焼結(焼成)処理の前に「未焼成体(green body)」を適度な温度(約120℃)で乾燥させるものと、
-CO2が存在する空気中での炭酸化による凝結又は「硬化」(多孔化された気硬性石灰モルタル、石灰発泡体)と、
-CO2雰囲気での炭酸化による凝結又は「硬化」(多孔化された気硬性石灰モルタル、石灰発泡体)と、
-圧力容器内の液体CO2中の炭酸化による凝結又は「硬化」(多孔化された気硬性石灰モルタル、石灰発泡体)と、である。
【0087】
一実施形態では、未焼成体は、オートクレーブによって硬化する。この実施形態は、本発明に係るオートクレーブ気泡コンクリートの製造において好ましく使用される。
【0088】
この実施形態では、工程b)からの未焼成体は、その後、次の工程で100~250℃の高温の飽和蒸気雰囲気中でオートクレーブされる。
【0089】
オートクレーブ条件は、本発明に係るプロセスのこの実施形態に特有ではなく、使用される材料及び材料に対して達成されるべき所望の特性プロファイルに従って、従来技術で知られている条件から選択されることができる。
【0090】
工程c)は、通常、オートクレーブで行われる。
【0091】
蒸気は、通常、蒸気発生器を介して供給される。
【0092】
オートクレーブは、通常、2~15時間、好ましくは3~12時間にわたって行われる。
【0093】
このプロセス中に、未焼成体が硬化し、結果として、カルシウム含有多孔質鉱物材料、好ましくはオートクレーブ気泡コンクリートが形成される。
【0094】
これは、工程c)の最後に得られる。
【0095】
このようにして得られたカルシウム含有多孔質鉱物材料、好ましくはオートクレーブ気泡コンクリートは、好ましくは、本明細書に記載の全ての特徴及び特性を有する。
【0096】
本発明に係るプロセスでは、懸濁液に加えられるバイオポリマーは、以下の様々な役割を担う。
【0097】
第1に、バイオポリマーは、未焼成体の安定化を保証する。この安定化により、高度な多孔化が可能になるため、材料の乾燥嵩密度が低下する。未焼成体の安定化は、特に発泡コンクリート、発泡セメント、アルカリ活性化建築材料、多孔質耐火材料、発泡コンクリートに基づく建設産業用の多孔質鉱物断熱材、発泡コンクリートに基づく工業断熱用の多孔質鉱物断熱材、発泡セラミック、発泡石灰、多孔質気硬性石灰、多孔質鉱物ベースの吸音材、又は上述したような軽量コンクリート用の多孔質造粒体などの材料で観察できる。
【0098】
バイオポリマーのもう1つの重要な役割は、強度を高める機能である。これにより、一部の材料中で結合剤、特にセメント、特にポルトランドセメントの割合を低減することができ、その結果、そのような材料の硫酸塩の含有量が減少し、最終材料のCO2換算量も大幅に減少する。バイオポリマーのこの特性は、特にオートクレーブ気泡コンクリート、オートクレーブ気泡コンクリートに基づく建設産業用の多孔質鉱物断熱材、オートクレーブ気泡コンクリートに基づく工業断熱用の多孔質鉱物断熱材、又は上述したような多孔質鉱物ベースの吸音材などの材料で観察できる。
【0099】
また、バイオポリマーは、混合物の保水能力にプラスの影響を与えることにより、製造プロセス中に水分バランスを調整することができる。
【0100】
バイオポリマーは、流動性とせん断特性の調整にも役立つ。
【0101】
全体として、バイオポリマーは、硫酸カルシウムの機能を部分的又は完全に模倣するため、硫酸カルシウムを置き換えることができる。
【0102】
これらのタスクは、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンなどの二価イオンと架橋を形成するために使用されるバイオポリマーの特性に関連付けられていると考えられている。
【0103】
ここで、これらのイオンがポリマー鎖によって錯体を形成する一方、卵箱を連想させる構造が形成され、その結果、ヒドロゲルの形成/追加の安定化がもたらされる。
【0104】
この構造は、アルギン酸カルシウムを例として、
図1に示される(出典:Fu,Shao、Thacker,Ankur、Sperger,Diana M.、Boni,Riccardo L.、Buckner,Ira S.、Velankar,Sachinら(2011):Relevance of rheological properties of sodium alginate in solution to calcium alginate gel properties、AAPS PharmSciTech 12(2),pp.453-460)。
【0105】
これにより、混合処理中にベース化合物の粘度とせん断特性が変化する。本システムは、カルシウムイオンがヒドロゲルシステムに保持されているという事実によっても影響される。
【0106】
また、ヒドロゲルが水分バランスの調整器としても機能し、その後のオートクレーブ処理に有益な効果をもたらすことができる。
【0107】
図2は、アルギン酸ナトリウム(左)とアルギン酸アンモニウム(右)を加えたオートクレーブ気泡コンクリートの表面構造を示す。いずれも均一なプレートレット形成(platelet formation)を示しており、アルギン酸アンモニウムを加える場合、効果がより顕著になるようである。
【0108】
したがって、バイオポリマーは、石膏/硬石膏/バサナイト又は結合剤(特にポルトランドセメント)を模倣し、その役割を担うことができる。
【0109】
ここで、本発明に係る材料中のバイオポリマーの重量割合が低くても上記効果を達成することができ、その結果、完成した材料中で検出できるバイオポリマーのわずかな割合は1.00重量%以下である。この低い重量割合は、材料に対して面倒な承認処理が不要であることを意味する。しかしながら、バイオポリマーを大量に加えることもでき、これは、一般的に、原料のコストと必要な追加の承認処理に関する経済的な考慮事項によってのみ制限される。
【0110】
バイオポリマーを安定剤として使用することにより、硫酸塩含有材料と可塑剤の割合を大幅又は完全に低減することさえ可能である。
【0111】
これにより、このような材料にとって、経済的かつ生態学的利点をもたらす。例えば、セメントを使用しないことにより、CO2換算量を大幅に減少させることができる。更に、硫酸塩含有量の低減は、材料がより低い埋め立てクラスに該当し、より有利にリサイクルできることを意味する。
【0112】
更なる態様では、本発明は、低硫酸塩カルシウム含有多孔質鉱物材料の製造におけるバイオポリマーの使用に関する。
【0113】
バイオポリマー及び低硫酸塩カルシウム含有多孔質鉱物材料は、好ましくは、本明細書に記載の全ての特徴及び特性を有する。
【0114】
安定剤としてのバイオポリマーの特性は、好ましくは、本明細書に記載の効果に依存する。
【実施例】
【0115】
1、測定方法
a)密度
乾燥嵩密度は、重量が一定になるまでオーブン内で105±5℃の温度で立方体を乾燥させた後、DIN EN 772-13に従って決定した。
【0116】
b)材料中のバイオポリマーの検出
溶媒を使用した抽出とそれに続く抽出物の分析によって材料中のバイオポリマーを検出した。
【0117】
最終製品の試料(10g)を粉砕し、アルコール溶液(メタノール、エタノールなど)に加えた。溶媒の量は、重要ではなく、この場合のように不均衡に選択できる(1部の固体、10部の溶媒)。振動台、撹拌機、振動機などを使用して処理を加速することもできる。この場合、液体混合物を2週間後に出した。混合物中にまだ存在する懸濁物を遠心分離によって除去した。その後に溶媒を蒸発により除去した。溶媒の除去は、混合物をペトリ皿に移し、穏やかに温めることによって行われた。底部に残った固体を、その後、IR分光法(FTIR)によって同定した。ただし、他の分析方法(ラマン、GC/MSなど)も可能である。
【0118】
c)材料中の成分の重量割合を決定するための蛍光X線分析(XRF)
XRF分析のために、まず材料の試料のペレットを製造した。
【0119】
タングステンカーバイド粉砕ツールを備えた遊星ボールミルを使用して試料を粉砕した。試料の粉砕は、5つの粉砕ボールを備えた粉砕ジャーに4~6mlの試料を入れ、300rpmで3分間粉砕することによって行われた。粉砕された試料を、メッシュサイズ50μmの分析ふるいに通過させた。ふるい上の残留物を、300rpmで3分間再度粉砕した。この処理を、試料全体の粒度が50μm未満になるまで繰り返した。複数回の粉砕操作があるため、試料全体を試料瓶に入れ、1分間振動することにより試料全体を均質化する必要があった。他のタイプのミル、粉砕媒体及び粉砕パラメータの使用も考えられる。
【0120】
ペレットを製造するために、試料瓶に3つの小さな鋼球を加えて1分間振動することにより、事前に粉砕した5gの試料を試料瓶内で1.25gの結合剤、通常、ワックスと混合した。均質化された試料-結合剤混合物を50μmのふるいを介して準備されたプレス工具に導入し、25tの圧力で1分間プレスした。1分後、圧力を徐々に解放した。空気の急激な漏れがタブレットでのクラックの形成をもたらす可能性があるため、それを注意した。完成したペレットに対して、
表面の均一性と、
表面の均質性(目的は、結合剤と試料との間に目に見える分離がないこと)と、
の基準に従って検査及び評価を行った。
【0121】
XRF分析のために、ヘリウムの流れを備えたX線分光計を使用した。完成したペレットを、すぐに使用できるX線分光計に導入し、測定位置まで移動させた。未知の組成の試料を測定する場合、線の可能な重複を特定するために、定性分析を最初に実行する必要がある。同じ条件で参照試料を測定する必要がある。
【0122】
測定データを公開し、適切なソフトウェアで評価した。
【0123】
2、懸濁液の調製
懸濁液を、水の乾燥化合物に対する比率が0.7である、表1の乾燥化合物と水で調製した。
【0124】
【0125】
使用されたバイオポリマーは、いずれの場合も上記割合のアルギン酸(試料1)、アルギン酸アンモニウム(試料2)及びアルギン酸ナトリウム(試料3)である。このようにして、異なるバイオポリマーを含む3つの異なる懸濁液を調製した。
【0126】
3、オートクレーブ気泡コンクリートの製造
3つの懸濁液を金型に注入した。膨張処理の後に、部分的に凝結した未焼成体を次の条件下のオートクレーブ内でオートクレーブした。
・所要時間:6時間、
・圧力:12~13barの絶対圧(飽和蒸気)、
・温度:約180~195℃。
【0127】
このようにして得られた鉱物材料(オートクレーブ気泡コンクリート)は、以下の表2に示すような化学組成を有する。オートクレーブ気泡コンクリート中の様々な成分の重量割合を蛍光X線分析によって決定した。
【0128】
【0129】
試料1~3のオートクレーブ気泡コンクリートの材料の試料に対して、上述した測定方法b)によるFTIRによってアルギン酸又はアルギン酸塩の含有量を更に調査した。
図3のFTIRスペクトルでは、アルギン酸又はその塩に割り当てることができるピークが同定可能である。したがって、最終製品でバイオポリマーの添加を検出することができる。