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特許7642091L-セリン又はその薬学的に許容される塩の液体製剤及びそれを調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】L-セリン又はその薬学的に許容される塩の液体製剤及びそれを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20250228BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20250228BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250228BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/26
A61P9/08
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/00
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2023557215
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 KR2022003789
(87)【国際公開番号】W WO2022197140
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0035796
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521063638
【氏名又は名称】アストロジェン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ナム, ヒー-スク
(72)【発明者】
【氏名】カク, ソヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, スン-ハ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ス-キョン
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ヒョン チョル
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-036654(JP,A)
【文献】特開平04-001130(JP,A)
【文献】特開昭55-009023(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2020-0119169(KR,A)
【文献】国際公開第2019/237038(WO,A1)
【文献】"L-セリン",[online], [検索日 2024.10.25],2017年,<URL: https://web.archive.org/web/20170712190157/https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB5673304.htm>
【文献】小児TPN用総合アミノ酸製剤「プレアミン-P注射液」,2020年06月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-33/44
A61P 25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩;並びに
増粘剤、及び緩衝剤
を含む液体製剤であって、
前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボマー、寒天、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、キサンタンガム、ゼラチン、カラギーナン、グアーガム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種であり、
前記液体製剤は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL~約300mg/mLの濃度で有し、
前記液体製剤は、約4.0~約7.0のpHを有する、液体製剤。
【請求項2】
L-セリン又はその薬学的に許容される塩が約70mg/mL~約300mg/mLの濃度で存在する、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項3】
前記増粘剤がカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種である、請求項1又は2に記載の液体製剤。
【請求項4】
前記増粘剤を約0.5mg/mL~約100mg/mLの濃度で有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項5】
前記緩衝剤がホウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項6】
前記緩衝剤が炭酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項7】
前記緩衝剤がクエン酸の薬学的に許容される塩、又はその水和物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項8】
溶媒をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項9】
シロップ剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項10】
甘味料をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項11】
前記甘味料がアセスルファムカリウム、アスパルテーム、デキストレート、ブドウ糖、果糖、高果糖、ガラクトース、麦芽糖、マンニトール、マルチトール、キシリトール、ステビア、ステビオール配糖体、酵素変性ステビア、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、スクラロース、ショ糖、白糖、シロップ、単シロップ、蜂蜜、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種である、請求項10に記載の液体製剤。
【請求項12】
希釈剤、可溶化剤、香味料、保存料、甘味料、酸性化剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項13】
前記保存料が安息香酸、安息香酸ナトリウム、p-オキシ安息香酸メチル、p-オキシ安息香酸エチル、p-オキシ安息香酸プロピル、p-オキシ安息香酸ブチル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、クロロブタノール、クレゾール、クロロクレゾール、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種である、請求項12に記載の液体製剤。
【請求項14】
約50mg/mL~約300mg/mLの量のL-セリン又はその薬学的に許容される塩;
カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、ヒドロキシエチルセルロース、及びカルボマーからなる群から選択される少なくとも1種の増粘剤;
緩衝剤;並びに
溶媒
を含む液体製剤であって、
前記液体製剤は、約4.0~約7.0のpHを有する、液体製剤
【請求項15】
希釈剤、酸性化剤、保存料、甘味料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種をさらに含む、請求項14に記載の液体製剤。
【請求項16】
約50mg/mL~約300mg/mLの量のL-セリン又はその薬学的に許容される塩;
カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、又はそれらの混合物から選択される増粘剤;
クエン酸の塩である緩衝剤;並びに
水、精製水、注射用水、リンゲル液、生理食塩水、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種である溶媒
を含む液体製剤であって、
前記液体製剤は、約4.0~約7.0のpHを有する、液体製剤
【請求項17】
経口投与用である、請求項1~16のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項18】
溶液剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項19】
中枢神経系疾患を予防又は処置するための、請求項1~18のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項20】
前記中枢神経系疾患が自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、知的障害、学習障害、言語障害、注意欠陥多動性障害、感情障害、運動障害、低酸素性虚血性脳損傷、外傷性脳損傷、神経炎症性疾患、脳血管疾患、注意障害、及び記憶障害からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項19に記載の液体製剤。
【請求項21】
自閉症スペクトラム障害を予防又は処置するための、請求項19に記載の液体製剤。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の液体製剤を調製するための方法であって、
(1)前記増粘剤を溶媒に溶解させて、第1の溶液を調製するステップ;
(2)第1の溶液に薬学的に許容される第1の添加剤を加え、混合物を加熱して、約50℃以上で約4.0~約7.0のpHを有する第2の溶液を調製するステップ;並びに
(3)第2の溶液を冷却し、続いて、冷却された第2の溶液に、L-セリン又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される第2の添加剤を溶解させて、第3の溶液を調製するステップ
を含む、方法。
【請求項23】
薬学的に許容される第1の添加剤が酸性化剤、緩衝剤、可溶化剤、及び保存料からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
薬学的に許容される第2の添加剤が希釈剤、甘味料、香味料、及び着色料からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項22又は23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩の液体製剤、及び該液体製剤を調製するための方法に関する。
【0002】
[背景技術]
アミノ酸は、生体系を構成するタンパク質の基礎単位であり、身体により合成されない必須アミノ酸、及び身体により合成される非必須アミノ酸という2種類に分類される傾向にある。
【0003】
これまでに発見された合計20種の異なるアミノ酸は、水への溶解性に基づく以下の2つの群、すなわち、セリン、スレオニン、チロシン、及びシステインなどの親水性アミノ酸、並びにグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンなどの疎水性アミノ酸に分類されうる。
【0004】
特に、身体により合成される非必須アミノ酸の1種としてのセリンのL体(以下L-セリンと呼ぶ)は分子量約105.1g/モルを有する。親水性アミノ酸としてのL-セリンは20℃で約250mg/mlという水中溶解限度を示すが、溶液中での高用量のL-セリンは経時的に変色及び沈殿を引き起こす。
【0005】
L-セリンは身体により合成される非必須アミノ酸であるが、L-セリンの欠乏が、セリン生合成代謝系における先天性遺伝子欠損や、低酸素性虚血性脳損傷、及び外傷性脳損傷などの複数の原因により生じうる。特に、脳内でのL-セリン生合成障害は、活性酸素種(ROS)が引き起こす傷害を防止するグルタチオンの産生を減少させることで、致死的な障害を引き起こすことがある。
【0006】
したがって、L-セリンの生合成の減少又は中断が理由で血中セリン濃度が低い患者には、処置のために他のアミノ酸の代わりにL-セリンを直接与えることが非常に重要である。
【0007】
しかし、L-セリンのみを与えることが可能な1つの製剤、及びL-セリンの欠乏を正常レベルにするために十分な高用量又は高濃度のL-セリンを含む製剤を開発することは困難である。
【0008】
その理由で、既にL-セリンを受け取ったはずである患者に、低濃度のL-セリンを含む大量のアミノ酸複合体溶液を投与する方法が提案されている。
【0009】
さらに、粉末型又は固体型の原料を直接摂取する方法も示唆されているが、この場合、服薬遵守率が急減し、それにより治療効果が減少する。
【0010】
したがって、L-セリンを高濃度で含み、経口投与に利用可能な、液体製剤を開発することが依然として求められている。
【0011】
[先行技術文献]
[特許文献1]韓国特許第10-2091620号
[特許文献2]韓国特許第10-1672347号
[非特許文献1]「アミノ酸分析におけるサンプル前処理の影響」韓国臨床病理学会誌、2001;21(1):34-39(Moon-Hee Kim and Hae-Ran Moon)
【0012】
[発明の開示]
[技術的課題]
本発明の目的は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含む液体製剤を提供することにある。
【0013】
本発明に係る液体製剤は、L-セリンの速やかな投与及び長期間の摂取を可能にすることができ、L-セリンを高濃度で含むことができ、したがって、処置に必要な医薬の総用量を減少させることで服薬利便性を改善することが可能になり、経口投与が液剤として利用可能になり、患者の服薬遵守率が高くなり、これにより治療効果が大きくなる。
【0014】
本発明に係る液体製剤は、固体材料の沈殿又は沈降を長期間示さずにL-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含むことで優れた貯蔵安定性及び長期貯蔵性を有することができ、また、L-セリンの溶解性を改善することで変色及び再結晶を防止することができ、これにより安全性が改善される。
【0015】
本発明に係る液体製剤は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を完全に溶解した状態に長期間維持することができ、塩酸群及び硫酸群などの強酸を含まずにわずかに酸性~中性の範囲のpHを示すことができ、総用量を著しく減少させることができ、また、中枢神経系疾患を含む疾患を有する患者が長期間安全に使用できるほど非常に安定及び安全でありえ、これにより服薬利便性及び服薬遵守率が著しく高くなる。
【0016】
本発明に係る液体製剤は、経口投与される際のバイオアベイラビリティの改善を示し、長期の貯蔵及び/又は使用中に製剤の品質を維持する能力の改善を示すほど非常に安定であり、これにより長期間にわたって優れた治療効果を確保し、また、物理的外観に基づく薬剤経済性の改善や、薬物有用性の改善、製剤化の容易さ、及び高度の製剤安定化をもたらす。
【0017】
本発明の別の目的は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含む液体製剤を調製するための方法を提供することにある。
【0018】
[課題の解決策]
1)本発明は、有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、及び増粘剤を含む液体製剤であって、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL以上の濃度で有する、液体製剤に関する。
【0019】
2)本発明に係る1)の実施形態では、液体製剤はL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL~約500mg/mLの濃度で有しうる。
【0020】
3)本発明に係る1)又は2)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤はL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約70mg/mL~約300mg/mLの濃度で有しうる。
【0021】
4)本発明に係る1)~3)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤に含まれる増粘剤は寒天、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、微結晶カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポビドン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、キサンタンガム、ゼラチン、又はそれらの混合物でありうる。
【0022】
5)本発明に係る1)~4)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤に含まれる増粘剤はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボマー、又はそれらの混合物でありうる。
【0023】
6)本発明に係る1)~5)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は増粘剤を約0.5mg/mL~約100mg/mLの濃度で有しうる。
【0024】
7)本発明に係る1)~6)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は約4.0~約7.0のpHを有する。
【0025】
8)本発明に係る1)~7)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は緩衝剤をさらに含みうる。
【0026】
9)本発明に係る1)~8)の少なくとも1つの実施形態では、緩衝剤はホウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、及びそれらの水和物(該ホウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、若しくは乳酸塩の水和物)、又はそれらの混合物でありうる。
【0027】
10)本発明に係る1)~9)の少なくとも1つの実施形態では、緩衝剤は炭酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、及びそれらの水和物からなる群から選択される少なくとも1種でありうる。
【0028】
11)本発明に係る1)~10)の少なくとも1つの実施形態では、緩衝剤はクエン酸の薬学的に許容される塩、又はその水和物でありうる。
【0029】
12)本発明に係る1)~11)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は溶媒をさらに含みうる。
【0030】
13)本発明に係る1)~12)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤はシロップ剤の形態でありうる。
【0031】
14)本発明に係る1)~13)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は甘味料をさらに含みうる。
【0032】
15)本発明に係る1)~14)の少なくとも1つの実施形態では、甘味料はアセスルファムカリウム、アスパルテーム、デキストレート、ブドウ糖、果糖、高果糖、ガラクトース、麦芽糖、マンニトール、マルチトール、キシリトール、ステビア、ステビオール配糖体、酵素変性ステビア、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、スクラロース、ショ糖、精製白糖などの白糖、シロップ、単シロップ、蜂蜜、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種でありうる。
【0033】
16)本発明に係る1)~15)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は希釈剤、可溶化剤、香味料、保存料、甘味料、酸性化剤、緩衝剤、又はそれらの混合物をさらに含みうる。
【0034】
17)本発明に係る1)~16)の少なくとも1つの実施形態では、保存料は安息香酸、安息香酸ナトリウム、p-オキシ安息香酸メチル、p-オキシ安息香酸エチル、p-オキシ安息香酸プロピル、p-オキシ安息香酸ブチル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、クロロブタノール、クレゾール、クロロクレゾール、又はそれらの混合物でありうる。
【0035】
18)本発明は、約50mg/mL~約500mg/mLの量のL-セリン又はその薬学的に許容される塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、ヒドロキシエチルセルロース、及びカルボマーからなる群から選択される少なくとも1種の増粘剤、緩衝剤、並びに溶媒を含む液体製剤に関する。
【0036】
19)本発明に係る1)~18)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は約4.0~約7.0のpHを有しうる。
【0037】
20)本発明に係る1)~19)の少なくとも1つの実施形態では、緩衝剤はホウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、該ホウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、若しくは乳酸塩の水和物、又はそれらの混合物でありうる。
【0038】
21)本発明に係る1)~20)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は希釈剤、酸性化剤、保存料、甘味料、又はそれらの混合物をさらに含みうる。
【0039】
22)本発明は、約50mg/mL~約500mg/mLの量のL-セリン又はその薬学的に許容される塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、又はそれらの混合物から選択される増粘剤、クエン酸の塩である緩衝剤、並びに水、精製水、注射用水、リンゲル液、生理食塩水、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種である溶媒を含む液体製剤に関する。
【0040】
23)本発明に係る1)~22)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は約4.5~約7.0のpHを有しうる。
【0041】
24)本発明に係る1)~23)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は経口投与用でありえ、特別には内用液剤でありうる。
【0042】
25)本発明に係る1)~24)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は溶液剤でありうる。
【0043】
26)本発明に係る1)~25)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は中枢神経系疾患を予防又は処置するための製剤でありうる。
【0044】
27)本発明に係る1)~26)の少なくとも1つの実施形態では、中枢神経系疾患は自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、知的障害、学習障害、言語障害、注意欠陥多動性障害、感情障害、運動障害、低酸素性虚血性脳損傷、外傷性脳損傷、神経炎症性疾患、脳血管疾患、注意障害、及び記憶障害からなる群から選択される少なくとも1種でありうる。
【0045】
28)本発明に係る1)~27)の少なくとも1つの実施形態では、液体製剤は自閉症スペクトラム障害を予防又は処置するためのものでありうる。
【0046】
29)本発明は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を含む上記液体製剤を調製するための方法に関する。
【0047】
30)本発明は、上記1)~29)の少なくとも1つに係る本発明の上記液体製剤を調製するための方法であって、
(1)増粘剤を溶媒に溶解させて、第1の溶液を調製するステップ;
(2)第1の溶液に薬学的に許容される第1の添加剤を加え、混合物を加熱して、約50℃以上で約4.0~約7.0のpHを有する第2の溶液を調製するステップ;並びに
(3)第2の溶液を冷却し、続いて、冷却された第2の溶液に、L-セリン又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される第2の添加剤を溶解させて、第3の溶液を調製するステップ
を含む、方法に関する。
【0048】
31)上記1)~30)の少なくとも1つの液体製剤は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL以上の濃度で有する。
【0049】
32)本発明に係る1)~31)の少なくとも1つの実施形態では、第1の添加剤は酸性化剤、緩衝剤、可溶化剤、保存料、又はそれらの混合物を含みうる。
【0050】
33)本発明に係る1)~32)の少なくとも1つの実施形態では、第2の添加剤は希釈剤、甘味料、香味料、着色料、又はそれらの混合物を含みうる。
【0051】
34)本発明は、上記1)~33)に係る液体製剤を使用して中枢神経系疾患を処置するための方法を提供し、中枢神経系疾患は自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、知的障害、学習障害、言語障害、注意欠陥多動性障害、感情障害、運動障害、低酸素性虚血性脳損傷、外傷性脳損傷、神経炎症性疾患、脳血管疾患、注意障害、及び記憶障害からなる群から選択される少なくとも1種でありうる。
【0052】
35)本発明は、中枢神経系疾患を処置するための、上記1)~33)に係る液体製剤の使用を提供し、中枢神経系疾患は自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、知的障害、学習障害、言語障害、注意欠陥多動性障害、感情障害、運動障害、低酸素性虚血性脳損傷、外傷性脳損傷、神経炎症性疾患、脳血管疾患、注意障害、及び記憶障害からなる群から選択される少なくとも1種でありうる。
【0053】
36)本発明は、中枢神経系疾患を処置するための医薬を調製するための、上記1)~33)に係る液体製剤の使用を提供し、中枢神経系疾患は自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、知的障害、学習障害、言語障害、注意欠陥多動性障害、感情障害、運動障害、低酸素性虚血性脳損傷、外傷性脳損傷、神経炎症性疾患、脳血管疾患、注意障害、及び記憶障害からなる群から選択される少なくとも1種でありうる。
【0054】
[発明の有利な効果]
本発明に係る液体製剤は、L-セリンの速やかな投与及び長期間の摂取を可能にすることができ、L-セリンを高濃度で含むことができ、したがって、処置に必要な医薬の総用量を減少させることで服薬利便性を改善することが可能になり、経口投与が液体製剤として利用可能になり、患者の服薬遵守率が高くなり、これにより治療効果が大きくなる。
【0055】
本発明に係る液体製剤は、固体材料の沈殿又は沈降を長期間示さずにL-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含むことで優れた貯蔵安定性及び長期貯蔵性を示すことができ、また、L-セリンの溶解性を改善することで変色及び再結晶を防止することができ、これにより安全性が改善される。
【0056】
本発明に係る液体製剤は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を完全に溶解した状態に長期間維持することができ、塩酸基及び硫酸基などの強酸を含まずにわずかに酸性~中性の範囲のpHを示すことができ、総用量を著しく減少させることができ、また、中枢神経系疾患を含む疾患を有する患者が長期間安全に使用できるほど非常に安定及び安全であることができ、これにより服薬利便性及び服薬遵守率が著しく高くなる。
【0057】
本発明に係る液体製剤は、経口投与される際のバイオアベイラビリティの改善を示し、長期の貯蔵及び/又は使用中に製剤の品質を維持する能力の改善を有するほど非常に安定であり、これにより長期間にわたって優れた治療効果を確保し、また、物理的外観に基づく薬剤経済性の改善や、薬物有用性の改善、製剤化の容易さ、及び高度の製剤安定化をもたらす。
【0058】
本発明に係る液体製剤は、大量生産に利用可能であって、経済的に実行可能でありうる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の実施例及び比較例の液体製剤の外観安定性試験の結果を示す図である。
図2】本発明の実施例製剤、及び対照製剤の投与によるビーグル犬の血漿中の濃度曲線を示す図である。
【0060】
[発明を実施するための最良の形態]
本明細書において使用される「経口製剤」という用語は、摂取可能な薬物を意味し、経口投与用液剤及び経口投与用固形剤の両方を含む。
【0061】
本明細書において使用される「経口液剤」という用語は、摂取可能な経口投与用製剤のなかでも液体製剤を意味する。
【0062】
本明細書において使用される「経口固形剤」という用語は、摂取可能な経口投与用内用製剤のなかでも固形製剤を意味する。
【0063】
本明細書において使用される「第1の」、「第2の」などという用語は、複数の成分又は複数のステップ同士を識別するためにのみ使用されるものであり、優先順位を示すものではない。
【0064】
本発明は、有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含む液体製剤、及びそれを調製するための方法に関する。
【0065】
本発明の1つの実施形態は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を含む液体製剤に関する。
【0066】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、及び増粘剤を含む。
【0067】
本発明の複数の実施形態では、本発明は、有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、及び増粘剤を含む液体製剤であって、液体製剤はL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL以上の濃度で有しうる、液体製剤に関する。
【0068】
L-セリン又はその薬学的に許容される塩は、高い水への溶解性を有する材料であるが、L-セリンが約50mg/mL以上という高濃度で溶解している液体製剤は、薬剤安定性における限界、例えば貯蔵中に引き起こされる変色及び沈殿を有し、したがって、L-セリンを約50mg/mL以上の量で含む液体製剤の開発には成功していない。
【0069】
本発明に係る液体製剤は、有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含むことができ、したがって、経口投与に好適であり、服薬利便性に著しく優れている。具体的には、既にL-セリンを受け取ったはずである患者に、低濃度のL-セリンを含む大量のアミノ酸複合体溶液を投与する方法が提案されている。しかし、アミノ酸複合体溶液は低濃度のL-セリン並びに他の種類の複数のアミノ酸を含む。このアミノ酸複合体溶液は、低タンパク血症、低栄養状態、並びに術前及び術後においてアミノ酸を供給する役割を果たす非経口栄養溶液として使用され、L-セリンを約5mg/mLという低濃度で様々な他のアミノ酸と共に含む。L-セリンを典型的なアミノ酸複合体溶液を通じて10g以上という高用量で投与する場合、該溶液の量は2Lを超えることがあり、当該量を患者に投与するには長い時間がかかる。これにより、処置コストが増加し、また、患者における薬物投与の利便性が過度に妨げられ、患者が必要としていない他のアミノ酸も一緒に投与される。さらに、該溶液が長期間にわたって複数回投与される場合、患者に投与される量を正確に計算することは容易ではなく、経口投与が適用不可能になり、したがって患者の服薬遵守率は著しく低くなる。
【0070】
本発明に係る液体製剤は、L-セリンの速やかな投与及び長期間の摂取を可能にすることができ、L-セリンを高濃度で含むことができ、したがって、処置に必要な医薬の総用量を減少させることで服薬利便性を改善することが可能になり、経口投与が液体製剤として利用可能になり、これにより治療効果が大きくなると共に患者の服薬遵守率が高くなる。
【0071】
さらに、液体製剤は、水を溶媒として使用しながら上記安定性を長期間維持することが可能であり、したがって著しく安全である。
【0072】
本発明に係る液体製剤は、固体材料の沈殿又は沈降を長期間示さずにL-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含むことで優れた貯蔵安定性及び長期貯蔵性を示すことができ、また、L-セリン又はその塩の溶解性を改善することでL-セリン又はその塩の変色及び再結晶を防止することができ、これにより安全性が改善される。
【0073】
本発明に係る液体製剤は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を完全に溶解した状態に長期間維持することができ、塩酸群及び硫酸群などの強酸を含まずにわずかに酸性~中性の範囲のpHを示すことができ、総用量を著しく減少させることができ、また、中枢神経系疾患を含む疾患を有する患者が長期間安全に使用できるほど非常に安全でありうる。
【0074】
本発明に係る液体製剤は、バイオアベイラビリティの改善を示し、長期の貯蔵及び/又は使用中に製剤の品質を維持する能力の改善を示すほど非常に安定及び安全であり、これにより長期間にわたって優れた治療効果を確保し、長期間にわたって安定な液体状態を維持し、これにより服薬遵守率を著しく改善し、また、物理的外観に基づく薬剤経済性の改善や、薬物有用性の改善、製剤化の容易さ、及び高度の製剤安定化をもたらす。
【0075】
本発明に係る複数の実施形態では、L-セリンは下記式1で表される化合物であり、該化合物が液体製剤中で使用可能である限り、その供給源は特に限定されない。
【0076】
【化1】
【0077】
本発明の複数の実施形態では、L-セリンの薬学的に許容される塩は、製薬業界において一般的に使用されているL-セリンの塩であり、当該の塩が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。
【0078】
本発明に係る複数の実施形態では、薬学的に許容される塩はL-セリンの無機塩、無機酸塩、有機酸塩、スルホン酸塩などでありうる。これらの例示的な薬学的に許容される塩を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。例えば、無機塩は、カルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩などを含む金属塩であってもよく、無機酸塩は、塩酸塩、硝酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、過塩素酸塩、酒石酸塩、硫酸塩などを含んでいてもよく、有機酸塩は、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ガラクツロン酸塩、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、グルクロン酸塩、アスパラギン酸塩、アスコルビン酸塩、炭酸塩、バニリン酸塩、ヨウ化水素酸などを含んでいてもよく、スルホン酸塩はメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩などを含んでいてもよい。
【0079】
1つの実施形態では、L-セリンの薬学的に許容される塩は、L-セリンの金属塩であってもよく、特別にはカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、又はマグネシウム塩のうち少なくとも1種であってもよく、L-セリンの薬学的に許容される塩はマグネシウム塩であってもよい。
【0080】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含みうるし、特別にはL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL以上の量で含みうる。
【0081】
1つの実施形態では、液体製剤は有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL~約500mg/mLの濃度で含みうる。
【0082】
1つの実施形態では、液体製剤は有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約70mg/mL~約300mg/mLの濃度で含みうる。
【0083】
1つの実施形態では、液体製剤は有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約100mg/mL~約200mg/mLの濃度で含みうる。
【0084】
例えば、液体製剤は有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL、約60mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、約200mg/mL、約210mg/mL、約220mg/mL、約230mg/mL、約240mg/mL、約250mg/mL、約260mg/mL、約270mg/mL、約280mg/mL、約290mg/mL、約300mg/mL、約310mg/mL、約320mg/mL、約330mg/mL、約340mg/mL、約350mg/mL、約360mg/mL、約370mg/mL、約380mg/mL、約390mg/mL、約400mg/mL、約410mg/mL、約420mg/mL、約430mg/mL、約440mg/mL、約450mg/mL、約460mg/mL、約470mg/mL、約480mg/mL、約490mg/mL、約500mg/mLなどの濃度で含みうる。
【0085】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、薬学的に許容される添加剤である増粘剤を含みうる。この場合、本発明に係る液体製剤は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含みながら、優れた安定性を示しうる。
【0086】
本発明の複数の実施形態では、増粘剤は、液体様の流動に抵抗する材料であり、寒天、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、微結晶カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポビドン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、キサンタンガム、ゼラチンなどでありうる。これらの例示的な増粘剤を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
本発明の複数の実施形態では、カルボマーはカルボマー971P、カルボマー910、カルボマー934、カルボマー934p、カルボマー940、カルボマー941、カルボマー1342、カルボマー共重合体、カルボマーホモポリマー、カルボマーインターポリマーなどでありうるが、それらに限定されない。
【0088】
例えば、増粘剤はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボマー、又はそれらの混合物でありうる。
【0089】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は増粘剤を約0.5mg/mL~約150mg/mL、特別には約0.5mg/mL~約100mg/mL、より特別には約1mg/mL~約100mg/mLの濃度で有しうる。
【0090】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は溶媒をさらに含みうる。溶媒は、有効成分であるL-セリン又はその薬学的に許容される塩の分子又はイオンの均一分散混合物(溶液)を形成するように溶解可能な材料であり、該溶媒が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。
【0091】
本発明の複数の実施形態では、溶媒は水、精製水、注射用水、リンゲル液、エタノール、エーテル、アルコール、白ワイン、果実酒、グリセリン、ピーナッツ油、生理食塩水などであってもよく、これらの例示的な溶媒を単独で使用してもよいし、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0092】
本発明の複数の実施形態では、溶媒は水性溶媒であってもよく、例えば、溶媒は水、リンゲル液、精製水、注射用水、生理食塩水、又はそれらの混合物であってもよい。
【0093】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤はわずかに酸性~中性の範囲のpHを有しうるし、特別には、液体製剤はpH約4.0~約7.0を有しうる。本発明に係る液体製剤は、上記pH範囲で長期間にわたって安定なままであってもよく、非常に安定であってもよく、著しく優れた服薬利便性及び服薬遵守率をもたらしてもよい。例えば、本発明の液体製剤は、pH約4.5~約7.0を有しうるし、特別にはpH約4.5~約6.0を有しうるし、より特別にはpH約5.0~約6.0を有しうるし、例えば、液体製剤はpH約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0などを有しうる。
【0094】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は緩衝剤をさらに含みうる。この場合、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を含む本発明に係る液体製剤は、投与に適したpHを示しながら長期間にわたって安定なままであってもよく、非常に安定であってもよく、著しく優れた投与利便性及び服薬遵守率をもたらしてもよい。
【0095】
緩衝剤は、水素イオン指数の著しい変化を防止するために溶液に加えられる材料であり、一般的には、弱酸と、それに関連する塩又は酸の塩の混合物であってもよく、該材料が緩衝剤として使用可能でありうる限り特に限定されない。例えば、緩衝剤はホウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、乳酸塩などであってもよく、上記の各塩の水和物形態、又はその混合物であってもよい。緩衝液には、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、及びそれらの水和物のうち1種が含まれてもよく、それらのうち2種以上の混合物が含まれてもよい。
【0096】
例えば、緩衝剤は炭酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、及びそれらの水和物でありうる。これらの例示的な緩衝剤を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0097】
本発明の複数の実施形態によれば、液体製剤はリン酸又はリン酸塩を含まなくてもよい。リン酸又はリン酸塩は下痢を引き起こすことがあり、したがって、疾患若しくはスタミナ低下を示す患者、又は弱者及び高齢者、例えば子ども若しくはシニアは、大用量を長期間にわたって摂取する際に下痢などの副作用を経験することがある。したがって、本発明の1つの実施形態に係る液体製剤は、必要であればリン酸又はリン酸塩を含まなくてもよい。
【0098】
本発明の複数の実施形態では、緩衝剤は、pHを維持するために好適な濃度を示す量で含まれうるし、特別には約0.5mg/mL~約50mg/mLの濃度で含まれうるが、緩衝剤の種類によっては濃度を適宜調整してもよい。
【0099】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は甘味料をさらに含みうるし、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を含む本発明に係る液体製剤は、甘味料を含みながら長期間にわたって液体状態で安定なままであってもよく、したがって非常に安全であり、また、薬物を経口摂取することが困難な患者、例えば子ども及び高齢者であっても薬物を容易に摂取できるほど著しく優れた投与利便性及び服薬遵守率を示す。
【0100】
甘味料は、甘味を与えるための材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、甘味料はアセスルファムカリウム、アスパルテーム、デキストレート、ブドウ糖、果糖、高果糖、ガラクトース、麦芽糖、マンニトール、マルチトール、キシリトール、ステビア、ステビオール配糖体、酵素変性ステビア、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、スクラロース、ショ糖、精製白糖などの白糖、シロップ、単シロップ、蜂蜜などでありうる。これらの例示的な甘味料を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0101】
本発明の1つの実施形態に係る液体製剤の味感を甘味料の添加により改善し、それにより子どもの服薬利便性を著しく増加させることができる。さらに、これらの甘味剤を加えることで優れた安定性、安全性、及び治療効果をもたらしうる。
【0102】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、増粘剤、緩衝剤、及び/又は甘味料以外にさらなる添加剤をさらに含みうるし、さらなる添加剤は希釈剤、酸性化剤、保存料、又はそれらの混合物でありうる。
【0103】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、増粘剤、緩衝剤、及び/又は甘味料以外にさらなる添加剤をさらに含みうるし、さらなる添加剤は希釈剤、可溶化剤、安定剤、香味料、着色料、保存料、発泡剤、フレッシュニング剤、防腐剤、風味相乗剤、又はそれらの混合物でありうる。
【0104】
希釈剤は、液体製剤の容量を増加させるための溶媒以外の材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、希釈剤は糖、糖アルコール、グリコール、又はそれらの混合物であってもよく、特別にはヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトール溶液、マンニトール、乳糖などでありうる。これらの例示的な希釈剤を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0105】
可溶化剤は、すべての成分の溶解性を増加させるための液体材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、可溶化剤はショ糖モノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ラノリンエーテル、ラノリンエステルなどであってもよく、例えばポリソルベートであってもよい。これらの例示的な可溶化剤を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0106】
安定剤は、風味の劣化を防止し、酸化を遅延させるために加えられる材料、又は揮発性風味の蒸発及び劣化を防止するための材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。本発明の液体製剤は安定剤の添加なしでも長期間にわたって十分な安定性を示しうるが、風味又は味感を維持するために安定剤を加えてもよい。
【0107】
安定剤は、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミンなどを含むアルカリ化剤でありうる。これらの例示的な安定剤を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0108】
香味料は、特定の風味を付加するための材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、香味料はアーモンド油、アネトール、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、エチルバニリン、ラクチトール、マルトール、メントール、サリチル酸メチル、グルタミン酸一ナトリウム、ペパーミント、ペパーミント油、ペパーミントアルコール、ローズ油、高濃度のローズウォーター、チモール、バニリンなどでありうる。これらの例示的な香味料を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0109】
着色料は、色を付与するための材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、着色料はカラメル、酸化鉄(赤、黄、混合)などでありうる。さらに、例えば食品医薬品局告示第2000-66号による薬物、医薬部外品、及び化粧品用のタール色素を使用してもよい。これらの例示的な着色料を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0110】
保存料は腐敗、変色、腐食などからすべての成分を保護するために使用される材料、又は微生物若しくは化学物質による腐敗を遅延させるか若しくは防止するために使用される材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、保存料は安息香酸、安息香酸ナトリウム、p-オキシ安息香酸メチル、p-オキシ安息香酸エチル、p-オキシ安息香酸プロピル、p-オキシ安息香酸ブチル、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、クロロブタノール、クレゾール、クロロクレゾールなどでありうる。これらの例示的な保存料を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0111】
発泡剤は、製剤中の空気の量を増加させるための材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、発泡剤は炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどでありうる。これらの例示的な発泡剤を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0112】
爽快剤は、爽快感を与えるための材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、爽快剤はd-カンフル、dl-カンフル、l-メントール、dl-メントール、ペパーミント油、ユーカリ油などでありうる。これらの例示的な爽快剤を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0113】
風味相乗剤は、当初の風味を変化させることなく当初の味感及び風味を最大化又は調整するための材料であり、該材料が液体製剤中で使用可能である限り特に限定されない。例えば、風味相乗剤は白糖、クエン酸、グルタミン酸一ナトリウム、ペパーミント油などでありうる。これらの例示的な風味相乗剤を単独で使用してもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0114】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL以上の量の有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、増粘剤、緩衝剤、及び溶媒を含みうる。
【0115】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL以上の量の有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、増粘剤、緩衝剤、及び甘味料を含みうる。
【0116】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL以上の量の有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、増粘剤、緩衝剤、甘味料、及び溶媒を含みうる。
【0117】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL以上の量の有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、増粘剤、緩衝剤、甘味料、及び溶媒以外に、希釈剤、香味料、保存料、甘味料、及び酸性化剤のうち少なくとも1種をさらに含みうる。
【0118】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL以上の量の有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、増粘剤、緩衝剤、甘味料、及び溶媒以外に、希釈剤、香味料、保存料、甘味料、酸性化剤、及び可溶化剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含みうる。
【0119】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL~約500mg/mLの量の有効成分としてのL-セリン又はその薬学的に許容される塩、増粘剤、緩衝剤、甘味料、及び溶媒以外に、希釈剤、香味料、保存料、甘味料、酸性化剤、可溶化剤(solubilizing agent)、可溶化剤(solubilizer)、及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含みうる。
【0120】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL~約500mg/mLの量のL-セリン又はその薬学的に許容される塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、ヒドロキシエチルセルロース、及びカルボマーからなる群から選択される少なくとも1種の増粘剤、緩衝剤、並びに溶媒を含みうる。液体製剤はpH約4.0~約7.0を有しうる。この場合、緩衝剤及び溶媒の種類は既に記載の種類と同じである。さらに、液体製剤は、必要であれば希釈剤、酸性化剤、保存料、甘味料、及びそれらの混合物のうち少なくとも1種をさらに含みうる。
【0121】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL~約500mg/mLの量のL-セリン又はその薬学的に許容される塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン、又はそれらの混合物から選択される増粘剤、クエン酸の塩である緩衝剤、並びに水、精製水、注射用水、リンゲル液、生理食塩水、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種である溶媒を含みうる。液体製剤はpH約4.0~約7.0を有しうる。
【0122】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は、約50mg/mL~約300mg/mLの量のL-セリン又はその薬学的に許容される塩、カルボキシメチルセルロースナトリウムである増粘剤、クエン酸の塩である緩衝剤、並びに水、精製水、注射用水、リンゲル液、生理食塩水、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種である溶媒を含みうるし、液体製剤はpH約4.0~約7.0を有しうる。
【0123】
1つの実施形態では、液体製剤は、増粘剤、緩衝剤、甘味料、希釈剤、香味料、保存料、甘味料、酸性化剤、及び可溶化剤などの添加剤を、それぞれ独立的に約0.001mg/mL以上、又は約0.01mg/mL~約150mg/mLの濃度で含みうる。例えば、液体製剤は添加剤をそれぞれ独立的に約0.001mg/mL、約0.01mg/mL、約0.1mg/mL、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約20mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約60mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mLなどの濃度で含みうる。
【0124】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は経口用又は非経口用の製剤でありうる。液体製剤は特別には経口用又は経口投与用製剤、より特別には経口溶液剤、例えば経口液剤でありうる。
【0125】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤はシロップ剤、エリキシル剤、酒精剤、薬用水、又はリモナーデ剤であってもよく、特別にはシロップ剤又はリモナーデ剤であってもよく、より特別にはシロップ剤であってもよい。
【0126】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は溶液状態であってもよく、特別には透明溶液であってもよい。
【0127】
本発明に係る液体製剤は非常に安定であり、加速試験条件(温度:40±2℃、相対湿度:75±5%)における3ヶ月間の安定性試験は著しく優れた外観安定性及び含有量安定性を示した(実験例1及び図1;並びに実験例2)。
【0128】
本発明に係る液体製剤は、経口投与される際に高い血中濃度を示し、これにより良好な治療効果をもたらし、ビーグル犬に投与される際に、液体製剤は、同濃度の粉末型L-セリンが水に加えられた対照製剤に比べて優れたPKプロファイルを示した(実験例3及び図2)。
【0129】
L-セリン又はその薬学的に許容される塩を含む本発明の上記液体製剤は、中枢神経系疾患を予防又は処置するために使用可能である。
【0130】
本発明の複数の実施形態では、中枢神経系疾患は自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、知的障害、学習障害、言語障害、注意欠陥多動性障害、感情障害、運動障害、低酸素性虚血性脳損傷、外傷性脳損傷、神経炎症性疾患、脳血管疾患、注意障害、及び記憶障害からなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、特別には自閉症スペクトラム障害、アルツハイマー病、及び/又はパーキンソン病であってもよく、より特別には自閉症スペクトラム障害であってもよい。
【0131】
本発明の複数の実施形態では、液体製剤は自閉症スペクトラム障害を予防又は処置するために使用されうる。
【0132】
本発明の別の実施形態は、上記液体製剤を調製するための方法に関する。
【0133】
本発明は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含む液体製剤を調製するための方法に関し、液体製剤はL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL以上の濃度で有する。
【0134】
本発明の複数の実施形態では、L-セリン又はその薬学的に許容される塩の液体製剤を調製するための方法は、有効成分、添加剤、又はそれらの組合せを溶媒に溶解させるステップを含みうる。
本発明に係る液体製剤を調製するための方法は、
(1)増粘剤を溶媒に溶解させて、第1の溶液を調製するステップ;
(2)第1の溶液に薬学的に許容される第1の添加剤を加え、混合物を加熱して、温度50℃以上でpH約4.0~約7.0を有する第2の溶液を調製するステップ;並びに
(3)第2の溶液を冷却し、続いて、冷却された第2の溶液に、L-セリン又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される第2の添加剤を溶解させて、第3の溶液を調製するステップ
を含みうる。
【0135】
液体製剤はL-セリン又はその薬学的に許容される塩を約50mg/mL以上の濃度で有する。
【0136】
本発明の調製方法は、L-セリン又はその薬学的に許容される塩を高濃度で含む非常に安定な液体製剤を単純な方法を通じて大量生産することを可能にするものであり、したがって経済的であり、商業的に優れている。
【0137】
上記調製方法において、有効成分、添加剤などがそれぞれ必要に応じて2種以上である場合、液体製剤に含まれる成分の特性に応じて添加順序を調整することができる。
【0138】
本発明の複数の実施形態では、薬学的に許容される第1の添加剤は酸性化剤、緩衝剤、保存料、及び可溶化剤からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物でありうる。
【0139】
本発明の複数の実施形態では、薬学的に許容される第2の添加剤は希釈剤、甘味料、香味料、着色料、又はそれらの混合物でありうる。
【0140】
本発明の複数の実施形態では、本調製方法において、第1及び第2の添加剤以外に、必要に応じて、さらなる薬学的に許容される第3の添加剤をさらに加えてもよい。具体的には、液体製剤を調製するための方法は、第3の溶液に薬学的に許容される第3の添加剤を加えるステップをさらに含みうる。
【0141】
本発明の複数の実施形態では、薬学的に許容される第3の添加剤は第1の添加剤及び/又は第2の添加剤と同じでも異なっていてもよく、特別には、第3の添加剤は第1の添加剤及び/又は第2の添加剤と異なっていてもよい。例えば、第3の添加剤は増粘剤、緩衝剤、甘味料、希釈剤、酸性化剤、保存料、可溶化剤、安定剤、香味料、着色料、発泡剤、フレッシュニング剤、防腐剤、風味相乗剤、又はそれらの混合物でありうる。
【0142】
本発明の複数の実施形態では、ステップ(1)における加熱温度は約50℃~約80℃でありうる。
【0143】
本発明の複数の実施形態では、ステップ(2)における冷却温度は約50℃未満、又は約4℃~約50℃でありうる。
【0144】
本調製方法において、有効成分、添加剤などを溶媒に溶解させる温度を、各成分の特性に応じて調整することができる。
【0145】
本発明の調製方法において、液体製剤中の有効成分及びその濃度、添加剤の種類及びその濃度、並びに液体製剤のpHを含む、様々な物理特性は、該物理特性が互いに矛盾しない限り、本発明に係る液体製剤に記載の物理特性と実質的に同じでありうる。
【0146】
本明細書に記載の液体製剤、及び該液体製剤を調製するための方法の記述に関して、該記述が互いに矛盾しない限り、いずれか一方に示される記述は他方にも同様に適用されうる。
【0147】
[発明のための形態]
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく本発明をさらに例示するように意図されている。
【0148】
[実施例]
以下、本発明の理解を促進するために、本発明の好ましい実施例を示す。しかし、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためにのみ示されるものであり、本発明の内容は実施例によって限定されない。
【0149】
実施例において使用される成分に関して、L-セリン(Tianjin Tianyao、中国)、D-ソルビトール溶液(PAIK KWANG INDUSTRIAL CO.,LTD、韓国)、カルボマー971P(Lubrizol、米国)、ヒドロキシエチルセルロース(Ashland、米国)、ポビドンK-30(BASF、ドイツ)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Patel chem、インド)、Tween 20(SAMCHUN PURE CHEMICAL、韓国)、アップルミント味SJ-G(22005221)(SAMJUNG FLAVOR、韓国)、p-オキシ安息香酸メチル(SAN Fu chemical、台湾)、p-オキシ安息香酸プロピル(SAN Fu chemical、台湾)、精製白糖(Nexpharm Korea、韓国)、クエン酸水和物(SAMCHUN PURE CHEMICAL、韓国)、クエン酸カリウム水和物(SAMCHUN PURE CHEMICAL、韓国)、クエン酸ナトリウム水和物(SAMCHUN PURE CHEMICAL、韓国)、スクラロース(WHAWON PHARM、韓国)、アスパルテーム(DAESHIN PHARM、韓国)、酵素変性ステビア(Wako pure chemical、日本)、及びアセスルファムカリウム(WHAWON PHARM、韓国)などの製品を購入し、使用した。
【0150】
実施例1:液体製剤1(実施例1-1~1-6)の調製
下記表1に列挙される成分及び含有量に従って、L-セリンを濃度100mg/mLで含む液体製剤を調製した。表1に列挙される含有量は、液剤1mL当たりに含まれる量(mg)を示す。
【0151】
最初に増粘剤を精製水中で膨潤させ、次に溶解させた。保存料、酸性化剤、緩衝剤、及び可溶化剤を加熱温度50℃以上で完全に溶解させてpHを4.0~7.0にした。その後、溶液を50℃未満に冷却し、次にL-セリン、希釈剤、甘味料などを加え、溶解させた。すべてを溶解させた後、着色料又は香味料を加え、容量を精製水で調整して、L-セリンを含む経口投与用シロップ剤を調製した。
【0152】
【表1】
【0153】
実施例2:液体製剤2(実施例2-1~2-6)の調製
下記表2に列挙される成分及び含有量に従って、L-セリンを様々な濃度で含む液体製剤(実施例2-1~2-6)を、実施例1に記載の調製方法と実質的に同様にして調製した。
【0154】
表2に列挙される含有量は、液体製剤1mL当たりに含まれる量(mg)を示す。
【0155】
【表2】
【0156】
実施例3:液体製剤3(実施例3-1~3-6)の調製
下記表3に列挙される成分及び含有量に従って、L-セリンを濃度100mg/mLで含む液体製剤(実施例3-1~3-6)を、実施例1に記載の調製方法と実質的に同様にして調製した。表3に列挙される含有量は、液体製剤1mL当たりに含まれる量(mg)を示す。
【0157】
【表3】
【0158】
実施例4:液体製剤4(実施例4-1~4-6)の調製
下記表4に列挙される成分及び含有量に従って、L-セリンを含む液体製剤(実施例4-1~4-6)を、実施例1に記載の方法と実質的に同様にして調製した。表4に列挙される含有量は、液体製剤1mL当たりに含まれる量(mg)を示す。
【0159】
【表4】
【0160】
比較例1~3
下記表5に列挙される成分及び含有量に従って、L-セリンを含む液体製剤(比較例1~3)を、実施例1に記載の方法と実質的に同様にして調製した。表5に列挙される含有量は、液体製剤1mL当たりに含まれる量(mg)を示す。
【0161】
【表5】
【0162】
実験例1:外観安定性試験
実施例及び比較例を通じて調製された液体製剤を、加速試験条件(温度:40±2℃、相対湿度:75±5%)における3ヶ月間の安定性について試験した。
【0163】
上記実施例1に関する安定性試験結果を下記表6に示す。
【0164】
さらに、本発明の実施例1-6、2-1、2-6、及び3-4、並びに比較例1~3に関する安定性試験結果を下記表7及び図1に示す。
【0165】
【表6】
【0166】
【表7】
【0167】
表6、表7、及び図1に見られるように、本発明の実施例に従って調製された液体製剤は透明な状態にとどまった。このことは、外観がいずれも加速試験条件において安定であることが判明したことを示す。
【0168】
他方で、主成分のみが溶解した比較例1の製剤に関して、固体粒子の形態での沈殿が示され;増粘剤を有さない比較例2の製剤が黄色に変色し、固体粒子の形態での沈殿が示され;pH 2.2を示す比較例3の製剤が褐色及び濃褐色に変色し、固体粒子の形態での沈殿が示され、これにより安定性が低下したということが判明した。
【0169】
実験例2:含有量安定性試験
実施例及び比較例を通じて調製された製剤を、長期保管試験条件(温度:25±2℃、相対湿度:60±5%)において3ヶ月間貯蔵した後、以下の分析方法を使用して含有量(%)について評価した。結果を表8に示す。
【0170】
[L-セリン含有量試験方法]
実施例及び比較例において調製された製剤では、等量100mgのL-セリンを容量100mLのフラスコに入れ、精製水を加えて100mLとし、この混合物を試料溶液として使用した。
【0171】
これとは別に、L-セリン標準物質(Sigma、米国)100mgを容量100mLのフラスコに入れ、次に精製水を加えて100mLとし、この混合物を標準溶液として使用した。標準溶液及び試料溶液10uLを以下の条件で液体クロマトグラフィー法に従って試験することで、L-セリンの量を計算した。
【0172】
<HPLC操作条件>
カラム:SIELC Primesep 100(4.6×150mm、5um)
検出器:紫外吸光光度計(基準波長:200nm)
流量:1.0mL/分
カラム温度:定温約30℃
移動相:リン酸を精製水1Lに加え、pHを2.2に調整する。
保持時間:60分
【0173】
【表8】
【0174】
表8に示すように、L-セリンを50mg/mL~300mg/mLの量で含む実施例の液体製剤(実施例1-6、2-1、2-6、及び3-4)は3ヶ月後であっても標準的な含有量範囲にとどまり、優れた含有量安定性を示した。
【0175】
他方で、比較例1、2、及び3の液体製剤は3ヶ月後に含有量の有意な減少(標準未満)を示し、これにより外観及び含有量の安定性が低下した。特に、有効成分のみを含んで添加剤を含まない比較例1、及び強酸性pHを有する比較例3が、含有量の非常に重大な減少を示すことが判明した。
【0176】
実験例3:動物PK試験
実施例1-6において調製された液体製剤(シロップ剤)、及び投与直前にL-セリン散剤を精製水に溶解させることで調製された対照製剤を用意した。この場合、対照製剤中のL-セリンの濃度は実施例1-6の液体製剤中のそれと同じとした。
【0177】
実施例1-6の液体製剤(実験群に投与)及び対照製剤(対照群に投与)をそれぞれ合計12匹のビーグル犬に2群(各群中に6匹)における2段階の交差投与の形態で経口投与した後、Kyungpook National University College of Pharmacyが血中L-セリン濃度プロファイルを測定し、薬物動態を評価した。
【0178】
L-セリンが体内に存在する内在性薬物であることから、投与前の一定期間にわたって血液を採取し、投与後に血液を採取した。体重約10kgのビーグル犬において投与前の一定期間にわたって摂食を中止させ、血液を0時間、0.25時間、0.5時間、0.75時間、1.0時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、9時間、12時間、及び24時間の時点で採取した後、各実験剤を40mL/4g/頭の用量で経口投与し、次に血液を同じ時点で採取した。
【0179】
ビーグル犬のPK試験結果を下記表9及び図2に示した。
【0180】
「アミノ酸分析におけるサンプル前処理の影響」、韓国臨床病理学会誌 2001、21(1):34-39(Moon-Hee Kim、Hae-Ran Moon)において報告された分析方法を一部改変して、タンパク質沈殿法を通じて血漿試料を前処理した後、LC-MS/MSを使用して試料中のL-セリンの分析を行った。
【0181】
【表9】
【0182】
表9及び図2に見られるように、本発明の実施例1-6は、投与直前にL-セリン散剤を溶解させることで投与される対照製剤よりも高い血中濃度(Cmax)及び広い血中濃度曲線下面積(AUC)を示した。このことは、実施例1-6が相対的に高いバイオアベイラビリティを持つことを示す。実施例1-6は、経口投与による偏差を表すCV(変動係数)が、対照製剤に比べて小さいことが示された。これにより、試験製剤が固体間の偏差を減少させることによる一定の効果を示すであろうことが確認される。
図1
図2