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特許7642107アマロウシアキサンチンAエステルおよびそれらの使用
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  • 特許-アマロウシアキサンチンAエステルおよびそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】アマロウシアキサンチンAエステルおよびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 403/24 20060101AFI20250228BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250228BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20250228BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20250228BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250228BHJP
   C12P 7/18 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
C07C403/24 CSP
A61P1/12
A61P9/00
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P31/04
A61P25/00
A61P7/00
A61P39/02
A61P21/00
A61P19/08
A61P3/06
A61P17/06
A61P27/02
A61P17/00
A61P5/14
A61K31/215
A61P43/00 121
A61K8/35
A61K8/37
A61Q19/00
C12P7/18
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023579284
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022070001
(87)【国際公開番号】W WO2023285703
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】21382644.9
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521393926
【氏名又は名称】ジーエーティー、セラピューティクス、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】GAT THERAPEUTICS, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノエミ、ガルシア-デルガド、バンチス
(72)【発明者】
【氏名】エウヘニア、ルイス、カノヴァス
(72)【発明者】
【氏名】ジャウマ、メルカデ、ロカ
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry,2008年12月24日,Vol.56, No.24,p12069-12072,doi:10.1021/jf802717b
【文献】British Journal of Nutrition,2009年01月28日,Vol.102, No.2,p242-248,doi:10.1017/S0007114508199007
【文献】Archives of Biochemistry and Biophysics,2020年04月18日,Vol.686, Articles No.108364,p1-35,doi:10.1016/j.abb.2020.108364
【文献】Biochemical and biophysical research communications,2020年05月29日,Vol.528, No.2,p305-310,doi:10.1016/j.bbrc.2020.05.050
【文献】さつま赤貝のみそ汁,[online],2005年12月06日,[令和6年6月17日検索],https://cookpad.com/recipe/229673
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される)
の化合物またはその立体異性体。
【請求項2】
式(Ia):
【化2】
(Rは、請求項1に定義される通り)
の請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rがメチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物を製造するための方法であって、
a)式(II)または(IIa):
【化3】
の化合物を、過ルテニウム酸テトラ-n-プロピルアンモニウム(TPAP)および2-ヨードキシ安息香酸(IBX)からなる群から選択される酸化剤と、場合によりまた共酸化剤であるN-メチルモルホリンN-オキシド(NMO)の存在下で反応させて、式(III)または(IIIa):
【化4】
の化合物を得ること、
b)式(III)または(IIIa)の化合物を、N-メチルモルホリンおよびトリエチルアミンからなる群から選択される塩基の存在下でSiOと反応させて、Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物を得ること、および
c)Rが直鎖または分岐鎖C-Cアルキルである式(I)または(Ia)の化合物の場合には、
c1)Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物をエステラーゼで処理することにより、式(IV)または(IVa):
【化5】
の化合物に変換すること、および
c2)式(IV)または(IVa)の化合物を、カップリング剤の存在下、および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下で、式(V):
R-COOH
(V)
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルである)
のカルボン酸でエステル化して、式(I)または(Ia):
【化6】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される)
の化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項5】
前記エステラーゼがリパーゼである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カップリング剤がカルボジイミドである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記カルボジイミドが、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびエチル-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)またはその塩からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)の酸化剤がTPAPであり、
工程a)が共酸化剤の存在下で行われ、前記共酸化剤がNMOであり;および/または
工程b)の塩基がN-メチルモルホリンである、
請求項4に記載の方法。
【請求項9】
工程a)および/またはb)は水の存在下で行われ、その後、請求項1に記載の化合物と式(VI):
【化7】
(式中、Rは請求項1に定義される)
の化合物の混合物が得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
工程a)および/またはb)は水の存在下で行われ、その後、請求項2に記載の化合物と式(VIa):
【化8】
(式中、Rは請求項2に定義される)
の化合物の混合物が得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
アマロウシアキサンチンA、ならびに/またはアマロウシアキサンチンAおよびパラセントロンを含む組成物の製造のための、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項12】
請求項1または2に記載の化合物をエステラーゼで処理することを含む、アマロウシアキサンチンAの製造方法。
【請求項13】
前記エステラーゼがリパーゼである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物および式(VI):
【化9】
(式中、Rは請求項1に定義される)
の化合物を含む、組成物。
【請求項15】
請求項2に記載の化合物および式(VIa):
【化10】
(式中、Rは請求項2に定義される)
の化合物を含む、組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物または請求項14もしくは15に記載の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項17】
医薬に使用するための、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項18】
癌、心血管疾患、腸管細菌叢の不均衡、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維症、細菌感染、神経疾患、高尿酸血症関連疾患、老化関連障害、脂質関連疾患、グルココルチコイド誘導性筋萎縮、骨関連疾患、眼疾患、血管新生関連疾患、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、および甲状腺関連障害からなる群から選択される疾患の治療および/または予防における使用のための、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項19】
前記癌が胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、血液癌、乳癌、神経膠腫、膀胱癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、肺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、肉腫、神経系癌、または皮膚癌であり;
前記心血管性疾患が高血圧症、門脈圧亢進症、肺動脈性高血圧症、高血糖症、2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝症候群または冠動脈アテローム性動脈硬化症であり;
前記炎症性疾患がアナフィラキシーショック、敗血症またはサイトカインストームであり;
前記自己免疫疾患が狼瘡、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患、喘息、原発性胆汁性胆管炎、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症または潰瘍性大腸炎であり;
前記線維症が肝線維症、腎線維症、肺線維症、心筋線維症、間質性線維症、IGG4関連線維症、硬皮症または後腹膜線維症であり;
前記神経疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、鬱病または脳虚血であり;
前記高尿酸血症関連疾患が関節リウマチ、通風または腎結石であり;
前記脂質関連疾患が肥満症、コレステロール血症、トリグリセリド血症、非アルコール性脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝疾患であり;
前記骨関連疾患が骨量減少であり;
前記眼疾患が緑内障、糖尿病性網膜症または加齢黄斑変性であり;および/または
前記血管新生関連疾患が出血性毛細血管拡張症である、
請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物または請求項14もしくは15に記載の組成物を含む、食品、機能性化粧品、機能性食品、または化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アマロウシアキサンチンAエステル、それらの製造方法、それらを含む組成物ならびにそれらの医学的および美容的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アマロウシアキサンチンA(ACX)は、マロウシウム・プリシフェルム(Amaroucium pliciferum)から初めて単離された天然キサントフィルである(J Nat Prod, 1985, 48, 606-613)。ACXは、マウスにおける経口投与後のフコキサチンの主要代謝産物の1つであり、仮定される代謝はフコキサチン(FCX)のフコキサチノールへの脱アセチル化とその後の肝臓におけるACXへの転位である(Drug Metab Dispos, 2004, 32, 205-211)。
【0003】
フコキサンチン(FCX)がとりわけ抗酸化剤、抗肥満剤、抗糖尿病剤、抗癌剤などの幅広い用途は文献でよく知られている(Int J Mol Sci, 2013, 14, 13763-13781, Biochim Biophys Acta Mol Cell Biol Lipids, 2020, 1865, 158618)。一方、ACXは最近になって、齧歯類モデルで肝酸化ストレス、炎症、および線維化を有意に抑制することが報告され(Biochem Biophys Res Commun, 2020, 528, 305-310)、これによりこの化合物は極めて有望な候補となった。
【0004】
FCXは褐藻類、珪藻類および渦鞭毛藻類に広く分布し、天然抽出物から市販されている。残念ながら、ACXまたはその誘導体は自然界に少量しか存在しないため、直接的な供給源はない。これまでACXは、天然抽出物から面倒な精製工程の後に得られるか、または非常に長い化学合成によって得られてきたが、総収率が低く、キラル中心を完全に制御できないリスクがあった(Org Lett, 2013, 15, 5310-5313)。
【0005】
よって、キラル中心が異性化することなく、良好な収率で合成でき、FCX投与時に見られるような中間代謝物を生じることなく、投与後に直接ACXに変換するACXプロドラッグが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、予期しないことに、ACXエステル、特に、酢酸エステルが体内でACXおよびそのシス異性体に自発的に変換することを見出した。このエステルは、市販のフコキサンチンからワンポットの一段階合成で容易に得ることができ、全面的に変換され、キラル中心の異性化のリスクもない。また、この酢酸エステルは、純粋なACX、さらなるACXエステル誘導体または他のフコキサンチン代謝物を得るためのACXの前駆体として使用することができる。
【0007】
よって、第1の態様では、本発明は、式(I):
【化1】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される)
の化合物またはその立体異性体に関する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、第1の態様に定義される化合物を製造するための方法であって、
a)式(II)または(IIa):
【化2】
の化合物を酸化剤、好ましくは、過ルテニウム酸テトラ-n-プロピルアンモニウム(TPAP)および2-ヨードキシ安息香酸(IBX)からなる群から選択される酸化剤と、場合によりまた共酸化剤、好ましくは、N-メチルモルホリンN-オキシド(NMO)の存在下で反応させて、式(III)または(IIIa):
【化3】
の化合物を得ること、
b)式(III)または(IIIa)の化合物を塩基、好ましくは、N-メチルモルホリンおよびトリエチルアミンからなる群から選択される塩基の存在下でSiOと反応させて、Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物を得ること、および
c)Rが直鎖または分岐鎖C-Cアルキルである式(I)または(Ia)の化合物の場合には、
c1)Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物をエステラーゼ、好ましくは、リパーゼで処理することにより、式(IV)または(IVa):
【化4】
の化合物に変換すること、および
c2)式(IV)または(IVa)の化合物を、カップリング剤、好ましくは、カルボジイミド、より好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびエチル-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)またはその塩からなる群から選択されるカルボジイミドの存在下、および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下で、式(V):
R-COOH
(V)
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルである)
のカルボン酸でエステル化して、式(I)または(Ia):
【化5】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される)
の化合物を得ること
を含む方法に関する。
【0009】
第3の態様は、アマロウシアキサンチンA、および/またはアマロウシアキサンチンAとパラセントロンを含む組成物を製造するための第1の態様の化合物の使用に関する。
【0010】
第4の態様は、第1の態様の化合物をエステラーゼ、好ましくは、リパーゼで処理することを含む、アマロウシアキサンチンAの製造方法に関する。
【0011】
第5の態様は、第1の態様の化合物および式(VI)、好ましくは、式(VIa):
【化6】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択され、好ましくは、メチルである)
の化合物、好ましくは、式(VIa)の化合物、好ましくは、Rがメチルである式(VIa)の化合物を含む組成物に関する。
【0012】
第6の態様は、第1の態様の化合物または第5の態様の組成物を含む医薬組成物に関する。
【0013】
第7の態様は、医薬に使用するための第1の態様の化合物、第5の態様の組成物または第6の態様の医薬組成物に関する。
【0014】
第8の態様は、癌、心血管疾患、腸管細菌叢の不均衡、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維症、細菌感染、神経疾患、高尿酸血症関連疾患、老化関連障害、脂質関連疾患、グルココルチコイド誘導性筋萎縮、骨関連疾患、眼疾患、血管新生関連疾患、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、および甲状腺関連障害からなる群から選択される疾患の治療および/または予防において使用するための第1の態様の化合物、第5の態様の組成物または第6の態様の医薬組成物に関する。
【0015】
第9の態様は、第1の態様の化合物または第5の態様の組成物を含む、食品、機能性化粧品、機能性食品、または化粧品組成物に関する。
【0016】
第10の態様は、皮膚老化を予防および/もしくは軽減するための、ならびに/または加齢の美容上の悪影響を改善するための美容方法であって、それを必要とする対象に第1の態様の化合物、または第5の態様の組成物、第9の態様の食品、機能性化粧品、機能性食品もしくは化粧品組成物を投与することを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、アマロウシアキサンチンA酢酸エステルの経口送達後のアマロウシアキサンチンAの血漿濃度を示す。
【発明の具体的説明】
【0018】
式(I)の化合物
本発明の第1の態様は、式(I):
【化7】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される)
の化合物またはその立体異性体に関する。
【0019】
用語「アルキル」は、炭素原子と水素原子からなり、不飽和を含まず、1~4個の炭素原子を有し、一重結合により分子の残りの部分と結合している直鎖または分岐鎖炭化水素鎖ラジカル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソ-ブチル、およびsec-ブチルを指す。好ましくは、アルキルはメチルである。
【0020】
「立体異性体」という用語は、同じ原子が同じ結合列で結合したものから構成されるが、互換性のない異なる三次元構造を持つ化合物を指す。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、式(Ia):
【化8】
(式中、Rは従前に定義された通り)
の化合物である。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、Rがメチルである式(I)の化合物である。
【0023】
より好ましい実施形態では、本発明の化合物は、Rがメチルである式(Ia)の化合物、すなわち、アマロウシアキサンチンA酢酸エステルである。
【0024】
式(I)の化合物の製造方法
本発明の第2の態様は、第1の態様に定義される化合物を製造するための方法であって、
a)式(II)または(IIa):
【化9】
の化合物を酸化剤、好ましくは、過ルテニウム酸テトラ-n-プロピルアンモニウム(TPAP)および2-ヨードキシ安息香酸(IBX)からなる群から選択される酸化剤と、場合によりまた共酸化剤、好ましくは、N-メチルモルホリンN-オキシド(NMO)の存在下で反応させて、式(III)または(IIIa):
【化10】
の化合物を得ること、
b)式(III)または(IIIa)の化合物を塩基、好ましくは、N-メチルモルホリンおよびトリエチルアミンからなる群から選択される塩基の存在下でSiOと反応させて、Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物を得ること、および
c)Rが直鎖または分岐鎖C-Cアルキルである式(I)または(Ia)の化合物の場合には、
c1)Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物をエステラーゼ、好ましくは、リパーゼで処理することにより、式(IV)または(IVa):
【化11】
の化合物に変換すること、および
c2)式(IV)または(IVa)の化合物を、カップリング剤、好ましくは、カルボジイミド、より好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびエチル-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)またはその塩からなる群から選択されるカルボジイミドの存在下、および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下で、式(V):
R-COOH
(V)
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルである)
のカルボン酸でエステル化して、式(I)または(Ia):
【化12】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される)
の化合物を得ること
を含む方法に関する。
【0025】
工程a)が式(II)の化合物を用いて行われる場合、式(III)の化合物がこの工程で得られ、Rがメチルである式(I)の化合物が工程b)で得られ、式(IV)の化合物が工程c1)で得られ、式RがC-Cアルキルである(I)の化合物が工程c2)で得られる。
【0026】
工程a)が式(IIa)の化合物を用いて行われる場合、式(IIIa)の化合物がこの工程で得られ、Rがメチルである式(Ia)の化合物が工程b)で得られ、式(IVa)の化合物が工程c1)で得られ、RがC-Cアルキルである式(Ia)の化合物が工程c2)で得られる。
【0027】
工程a)の酸化剤は、式(III)または(IIIa)の化合物を提供することができるいずれの好適な酸化剤であってもよい。酸化剤の例は、過ルテニウム酸テトラ-n-プロピルアンモニウム(TPAP)および2-ヨードキシ安息香酸(IBX)、好ましくは、TPAPである。
【0028】
工程a)では、共酸化剤も使用され得る。例としての好適な共酸化剤はN-メチルモルホリンN-オキシド(NMO)である。
【0029】
好ましくは、工程a)は、酸化剤としてTPAPおよび共酸化剤としてNMOを用いて行われる。
【0030】
工程a)の反応は、好ましくは、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物などの有機溶媒、好ましくは、ジクロロメタン中で行われる。
【0031】
工程a)の反応は、好ましくは、15℃~35℃の範囲の温度で行われる。
【0032】
工程a)で使用される酸化剤の量は、好ましくは、式(II)または(IIa)の化合物1mol当たり0.01~0.5mol、より好ましくは、0.05~0.2molである。
【0033】
存在する場合、工程a)で使用する共酸化剤の量は、好ましくは、式(II)または(IIa)の化合物1mol当たり1.5~5mol、より好ましくは、1.5~2.5molである。
【0034】
工程a)は、好ましくは、水を除去して行われる。例えば、工程a)では、4Åのモレキュラーシーブスが使用可能である。
【0035】
別の実施形態では、工程a)は、水を除去せずに行われる。
【0036】
好ましくは、工程a)は、0.5~5時間行われる。
【0037】
工程a)により式(III)または(IIIa)の化合物が得られる。工程a)が式(II)の化合物を用いて行われる場合、式(III)の化合物がこの工程で得られる。工程a)が式(IIa)の化合物を用いて行われる場合、式(IIIa)の化合物がこの工程で得られる。
【0038】
この方法の次の工程は、式(III)または(IIIa)の化合物を塩基、好ましくは、N-メチルモルホリンおよびトリエチルアミンからなる群から選択される塩基の存在下、SiOで処理して、Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物を得る工程b)である。
【0039】
式(III)または(IIIa)の化合物は、工程a)で得られる。
【0040】
工程b)で使用されるSiOの量は、好ましくは、式(II)または(IIa)の化合物1mol当たり10~50molである。
【0041】
工程b)は、塩基の存在下で行われる。好適な塩基の例は、N-メチルモルホリン、トリメチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンおよびそれらの混合物、好ましくは、N-メチルモルホリンである。
【0042】
工程b)で使用される塩基の量は、好ましくは、式(II)または(IIa)の化合物1mol当たり0.1~5molである。
【0043】
特定の実施形態では、工程a)は、共酸化剤としてのNMOの存在下で行われ、副生成物としてN-メチルモルホリンが得られ、これがその後工程b)で塩基として使用される。
【0044】
したがって、特定の実施形態では、工程a)およびb)はワンポットで行われる。
【0045】
工程b)の反応は、好ましくは、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランまたはそれらの混合物などの有機溶媒、好ましくは、ジクロロメタン中で行われる。
【0046】
工程b)の反応は、好ましくは、15℃~35℃の範囲の温度で行われる。
【0047】
好ましくは、工程b)は、0.5~24時間で行われる。
【0048】
工程b)により、Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物が得られる。工程b)が式(III)の化合物を用いて行われる場合、Rがメチルである式(I)の化合物がこの工程で得られる。工程b)が式(IIIa)の化合物を用いて行われる場合、式(Ia)の化合物がこの工程で得られる。
【0049】
本発明の方法の目的化合物が、Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物である場合、工程c)は実施されない。
【0050】
本発明の目的化合物が、Rが直鎖または分岐鎖C-Cアルキルである式(I)または(Ia)の化合物である場合、工程c)が実施される。工程c)は、工程c1)およびc2)を含む。
【0051】
工程c1)は、Rがメチルである式(I)または(Ia)の化合物をエステラーゼ(estearase)、好ましくは、リパーゼで処理することにより、式(IV)または(IVa):
【化13】
の化合物に変換することである。
【0052】
式(IV)または(IVa)の化合物は、工程b)で得られる。
【0053】
式(I)または(Ia)の化合物からそれぞれ化合物(IV)または(IVa)を得ることができるエステラーゼが使用可能である。エステラーゼの例は、リパーゼおよびコレステロールエステラーゼ、好ましくは、リパーゼである。
【0054】
工程c1)は好ましくは、タウロコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムまたはそれらの水和物などの乳化剤の存在下で行われる。
【0055】
好ましくは、工程c1)は、水性溶媒中、好ましくは、pH6.5~7.5で行われ、より好ましくは、工程c1)は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で行われる。
【0056】
工程c1)の反応は、好ましくは、30℃~45℃の範囲の温度で行われる。
【0057】
好ましくは、工程c1)は、2~24時間行われる。
【0058】
工程c1)により、式(IV)または(IVa)の化合物が得られる。工程c1)が式(I)の化合物を用いて行われる場合、式(IV)の化合物がこの工程で得られる。工程c1)が式(Ia)の化合物を用いて行われる場合、式(IVa)の化合物がこの工程で得られる。
【0059】
本発明の方法の次の工程は、式(IV)または(IVa)の化合物を、カップリング剤、好ましくは、カルボジイミド、より好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびエチル-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)またはその塩からなる群から選択されるカルボジイミドの存在下、および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下で、式(V):
R-COOH
(V)
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルである)
のカルボン酸でエステル化して式(I)または(Ia):
【化14】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される)
の化合物を得るという工程c2)である。
【0060】
式(IV)または(IVa)の化合物は、工程c1)で得られる。
【0061】
工程c2)で使用されるカップリング剤は、アルコールでカルボン酸をエステル化するための、当技術分野で公知のいずれの好適なカップリング剤であってもよい。好適なカップリング剤の例は、カルボジイミド、好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびエチル-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)またはその塩である。工程c2)のエステル化反応は、DMAPの存在下で行われる。
【0062】
好ましくは、カルボン酸(V)1mol当たり1~2molのカップリング剤が工程c2)で使用される。
【0063】
好ましくは、式(V)カルボン酸の1mol当たり0.01~0.5molのDMAPが工程c2)で使用される。
【0064】
好ましくは、式(V)のカルボン酸1mol当たり1~2molの式(IV)または(IVa)の化合物が工程c2)で使用される。
【0065】
好ましくは、工程c2)は、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミドまたはそれらの混合物などの有機溶媒中で行われる。
【0066】
工程c2)の反応は、好ましくは、0℃~30℃の範囲の温度で行われる。
【0067】
好ましくは、工程c2)は、1~15時間行われる。
【0068】
工程c2)により、Rが直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される式(I)または(Ia)の化合物が得られる。工程c2)が式(IV)の化合物を用いて行われる場合、Rが直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される式(I)の化合物がこの工程で得られる。工程c2)が式(IVa)の化合物を用いて行われる場合、Rが直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される式(Ia)の化合物がこの工程で得られる。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明の方法において、
工程a)の酸化剤はTPAPであり、
工程a)は共酸化剤の存在下で行われ、
工程a)の共酸化剤はNMOであり;および/または
工程b)の塩基はN-メチルモルホリンである。
【0070】
別の好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)および/またはb)は、水の存在下、特に、式(II)または(IIa)の化合物1mol当たり0.05molを超える水を用いて行われる。これにより、式(I)または(Ia)の化合物と式(VI)または(VIa):
【化15】
(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C-Cアルキルからなる群から選択される、好ましくは、メチルである)の化合物、好ましくは、式(VIa)の化合物、好ましくは、Rがメチルである式(VIa)の化合物の混合物が得られる。
【0071】
あるいは、式(VI)または(VIa)の化合物は、式(I)または(Ia)の化合物を水の存在下、60~90℃で加熱を用いて得ることができる。一実施形態では、工程a)は、水の存在下で行われる。別の実施形態では、工程a)は、水の存在なく行われる。工程a)で水の存在を避けるためには、4Åモレキュラーシーブスなどの水除去剤を使用することができる。別の実施形態では、工程b)は、水の存在下で行われる。別の実施形態では、工程b)は、水の存在なく行われる。工程a)で水の存在を避けるためには、4Åモレキュラーシーブスなどの水除去剤を使用することができる。別の実施形態では、ステップa)およびb)の両方が水の存在下で行われる。別の実施形態では、ステップa)およびb)の両方が水の存在なく行われる。ステップa)およびb)で水の存在を避けるためには、4Åモレキュラーシーブスなどの水除去剤を使用することができる。
【0072】
「水の存在」という用語は、0.1容量%~100容量%、好ましくは100容量%の水の量を指す。この水の量は、水除去剤によって除去される水を考慮することなく、反応媒体中に存在する溶媒に関して決定される。
【0073】
第3の態様は、アマロウシアキサンチンA、および/またはアマロウシアキサンチンAとパラセントロンを含む組成物の製造のための第1の態様の化合物に使用に関する。
【0074】
第1の態様の式(I)または(Ia)の化合物、好ましくは、式(Ia)の、好ましくは、Rがメチルである化合物は、アマロウシアキサンチンAの製造のために使用可能である。アマロウシアキサンチンAは、上記のように、例えば本発明の方法の工程a)、b)およびc1)を行うことにより得ることができる。
【0075】
第1の態様の式(I)または(Ia)の化合物、好ましくは式(Ia)の、好ましくはRがメチルである化合物は、上記のように式(VI)または(VIa)の化合物、好ましくは式(VIa)の、好ましくはRがメチルである化合物(すなわち、パラセントロン酢酸エステル)の製造のために使用することができる。式(VI)または(VIa)の化合物、好ましくは式(VIa)の、好ましくはRがメチルである化合物は、例えば、上記のように本発明の方法の工程a)および/またはb)を水の存在下で行うことによって得ることができる。この方法により、式(I)または(Ia)の化合物と式(VI)または(VIa)の化合物の混合物、好ましくは、式(Ia)の化合物と式(VIa)の、好ましくはRがメチルである化合物の混合物が得られる。
【0076】
第1の態様の式(I)または(Ia)の化合物、好ましくは式(Ia)の、好ましくはRがメチルである化合物は、アマロウシアキサンチンAおよびパラセントロンの製造のために使用可能である。アマロウシアキサンチンAおよびパラセントロンは、例えば、上記のように、本発明の方法の工程a)、b)およびc1)を行うことによって得ることができ、前記工程a)および/またはb)は水の存在下で行われる。
【0077】
第4の態様は、第1の態様の式(I)または(Ia)の化合物、好ましくは式(Ia)の、好ましくはRがメチルである化合物をエステラーゼ、好ましくは、リパーゼで処理することを含むアマロウシアキサンチンAの製造方法に関する。具体的な条件は、本発明の方法の工程a)、b)およびc1)に関して上記されている。
【0078】
さらなる態様は、上記の式(VI)または(VIa)の化合物、好ましくは式(VIa)の、好ましくはRがメチルである化合物をエステラーゼ、好ましくは、リパーゼで処理することを含むパラセントロンの製造方法に関する。具体的な条件は、本発明の方法の工程c1)に関して上記されている。
【0079】
組成物
第5の態様は、第1の態様の式(I)または(Ia)の化合物、好ましくは式(Ia)の、好ましくはRがメチルである化合物と、上記のような式(VI)または(VIa)の化合物、好ましくは式(VIa)の、好ましくはRがメチルである化合物を含む組成物に関する。
【0080】
特定の実施形態では、第5の態様の組成物中の式(I)または(Ia)の化合物の量は、組成物の総重量に対して10~99.9重量%、好ましくは、40~99重量%である。
【0081】
特定の実施形態では、第5の態様の組成物中の式(VI)または(VIa)の化合物の量は、組成物の総重量に対して1~60重量%である。
【0082】
第6の態様は、第1の態様の式(I)もしくは(Ia)の化合物、好ましくは式(Ia)の、好ましくはRがメチルである化合物、または第5の態様の組成物を含む医薬組成物に関する。
【0083】
「医薬組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも本発明により提供される組合せを薬学上許容される担体とともに含む組成物に関する。
【0084】
本明細書において互換的に使用される「薬学上許容されるビヒクル」、「薬学上許容される担体」、「薬学上許容される希釈剤」または「薬学上許容される賦形剤」は、任意の従来型の非毒性固体、半固体または液体増量剤、希釈剤、封入剤または製剤補助剤を指す。薬学上許容される担体は、薬学上許容される担体は、使用される用量および濃度において、レシピエントに対して本質的に非毒性であり、製剤の他の成分に適合する。薬学上許容される担体の数および性質は、所望の投与形態に依存する。薬学上許容される担体は公知であり、当技術分野で周知の方法によって調製することができる。それらは、合理的なベネフィット/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、主題の化学物質をある器官または身体の一部から別の器官または身体の一部に運搬または輸送することに関与する。各担体は、製剤の他の成分に適合し、患者に有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学上許容される担体として機能し得る材料の例としては、(a)糖類(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース)、(b)デンプン類(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン)、(c)セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース)、(d)粉末トラガカント、(e)麦芽、(f)ゼラチン、(g)タルク、(h)賦形剤(例えば、坐剤ワックス)、(j)グリコール類(例えば、プロピレングリコール)、(k)ポリオール類(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール)、(1)エステル類(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル)、(m)寒天、(n)緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム)、(o)アルギン酸、(p)パイロジェンフリー水、(q)等張食塩水、(r)リンゲル液、(s)エチルアルコール、(t)リン酸緩衝液、ならびに(u)医薬製剤に使用されるその他の非毒性の適合物質が挙げられる。湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香料および香味剤、保存剤および抗酸化剤もまた、組成物中に存在し得る。薬学上許容される抗酸化剤の例としては、(a)水溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウム)、(b)油溶性抗酸化剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピルまたはα-トコフェロール)、および(c)金属キレート剤(例えば、クエン酸、四酢酸エチレンジアミン(EDTA)、ソルビトール、酒石酸またはリン酸)が挙げられる。
【0085】
より好ましくは、医薬製剤は、局所投与または経口投与に好適なビヒクルまたは担体を含む。
【0086】
投与の特定の様式に基づき、医薬製剤は、錠剤、丸剤、カプセル剤、サシェ剤、顆粒剤、散剤、懸濁液、エマルション、無水または含水局所用製剤および溶液に製剤化することができる。
【0087】
製薬上許容される担体またはビヒクルは当業者に周知であり、一般に容易に入手可能である。薬学上許容される担体またはビヒクルは、活性製剤およびその各成分に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用または毒性を有さないものであることが好ましい。
【0088】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、治療剤を経口的、非経口的または静脈的に対象の循環系に輸送するための送達システムとして適合される。
【0089】
静脈内投与以外の場合には、組成物は、少量の湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤を含むことができる。組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、ポリマー、または徐放性製剤であり得る。組成物は、当技術分野で知られているような従来の結合剤および担体を用いて製剤化することができる。製剤は、医薬級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカライドナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体、医薬の製造において十分に確立された機能性を有する不活性担体を含むことができる。様々な送達系が知られており、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセルなどへの封入を含め、本発明の治療薬を投与するために使用することができる。
【0090】
必要に応じて、本発明の組合せまたは医薬組成物は、注射部位の痛みを改善するために、可溶化剤および局所麻酔薬も含む組成物中に配合される。一般に、成分は別々に、または単位剤形中に一緒に混合されて、例えば、凍結乾燥粉末または水非含有濃縮物として、活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封容器に供給される。組成物が輸液により投与される場合には、医薬品級滅菌水または生理食塩水を含む輸液ボトルを用いて分配することができる。組成物が注射により投与される場合には、投与前に成分を混合できるように、滅菌注射用水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0091】
経口投与に適した製剤としては、水または生理食塩などの希釈剤に溶解した液体溶液;それぞれが所定量の本発明の組合せを含有するカプセル剤、サシェ剤、錠剤、トローチ剤;散剤;適切な液体中の懸濁剤;およびエマルションが挙げられる。経口投与用の液体剤形は、水などの当該技術において一般に使用される不活性希釈剤を含む、薬学上許容されるエマルション、溶液、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含み得る。これらの組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、ならびに甘味剤、香料および香味剤などのアジュバントも含み得る。
【0092】
経口投与用の固形剤形としては、従来のカプセル剤、徐放性カプセル剤、従来の錠剤、徐放性錠剤、チュアブル錠、舌下錠、発泡錠、丸剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤およびゲルが挙げられる。これらの固体剤形では、活性化合物は、スクロース、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性賦形剤と混合することができる。このような剤形はまた、通常の実施と同様に、不活性希釈剤以外の付加的物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含むことができる。カプセル剤、錠剤、発泡性錠剤および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。錠剤および丸剤は、腸溶コーティングで調製することができる。
【0093】
非経口製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数用量の密封容器で提供することができ、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射用水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。
【0094】
本発明の医薬組成物は、局所、経皮または皮下経路で投与することができる。局所または経皮投与具体例としては、限定されるものではないが、イオン泳動、ソノフォレーシス、エレクトロポレーション、機械的圧力、浸透圧勾配、密封包帯法、マイクロインジェクション、圧力による無針注射、微小電気パッチおよびそれらの任意の組合せが挙げられる。いずれにせよ、賦形剤は選択された医薬剤形に応じて選択される。
【0095】
注射用製剤、例えば、水性または油性懸濁液、無菌注射剤は、好適な分散剤、湿潤剤および/または懸濁剤を用いて、公知の技術に従って製剤化することができる。使用可能な認知されているビヒクルおよび溶媒の中でも、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。滅菌油も溶媒または懸濁媒として従来から使用されている。
【0096】
本発明の特定の好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は局所経路により投与される。局所投与のために、本発明の医薬組成物は、例えば、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤およびそれらの2つ以上の組合せなどの好適な賦形剤を使用する従来の方法に従って製剤化され得る、クリーム、ゲル、ローション、液体、ポマード、スプレー溶液、分散液、固形バー、エマルション、マイクロエマルションおよび類似物として製剤化され得る。
【0097】
さらに、本発明の医薬組成物は、経皮パッチまたはイオン泳動装置の形態で投与することができる。好適な経皮パッチは当業者に周知である。
【0098】
例えば、リポソームへのカプセル封入、マイクロバブル、エマルション、微粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子、ナノカプセルおよび類似のものを含むいくつかの薬物送達系が知られ、本発明の組合せを投与するために使用可能である。必要な用量は、単一単位としてまたは徐放性形態で投与することができる。本発明の特定の好ましい実施形態では、医薬組成物はリポソームに封入される。
【0099】
徐放性形態ならびにそれらの製造のための適当な材料および方法は、現況技術において周知である。本発明の一実施形態では、本発明による組合せの経口投与可能な形態は徐放性形態において、少なくとも1つのコーティングまたはマトリックスをさらに含む。コーティングまたは徐放性マトリックスとしては、限定されるものではないが、天然ポリマー、半合成もしくは合成水不溶性、変性ワックス、油脂、脂肪アルコール、脂肪酸、天然、半合成もしくは合成可塑剤、またはそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。腸溶コーティングは、当業者に公知の従来の方法を用いて施すことができる。
【0100】
別の態様は、第1の態様の化合物または第5の態様の組成物を含む食品、機能性化粧品、機能性食品、または化粧品組成物に関する。
【0101】
本明細書で使用する場合、「食品」という用語は、その特徴、用途、成分、製法および保存状態により、通常または理想的には、以下の目的:a)ヒトもしくは動物の通常の栄養として、または嗜好食品として、あるいはb)ヒトもしくは動物の食物(飼料)の特別な場合の栄養製品として、のいくつかのために使用することができる、あらゆる性質の、固体または液体、天然または加工された任意の物質または製品である。「食品」という用語には、別々にまたは便宜には互いに混合して動物の食餌として適している、あらゆる起源の天然素材および最終製品が含まれる。
【0102】
すぐに食べられる食品とは、例えば食用に適した水溶液によって希釈する必要のないものである。原則的に、すぐに食べられる食品に存在する成分はバランスが取れており、当業者が考えるように、すぐに食べられるようにするために食品に付加的成分を加える必要はない。濃縮食品とは、1以上の成分が調理済み食品よりも高濃度で存在するものであり、したがって、使用するためには、例えば消費に適した水溶液によって希釈する必要がある。本発明により提供される食品の非限定的な具体例としては、乳製品および誘導体、例えば、発酵乳、ヨーグルト、ケフィア、カード、チーズ、バター、アイスクリーム、乳ベースのデザートなど、ならびに非乳製品、例えば、焼き製品、ケーキおよびペストリー、シリアル、チョコレート、ジャム、ジュース、その他の果実誘導体、油およびマーガリン、惣菜などが挙げられる
【0103】
本明細書で使用する場合、「機能性化粧品」という用語は、1以上の機能性化粧品(機能的化粧品、皮膚医薬品または活性化粧品)、すなわち、使用者の皮膚、毛髪および/または爪に作用する有効成分を、より高く、より有効な濃度で含有する、化粧品-医薬品の特徴を有する局所用ハイブリッド製品(したがって、それらは化粧非品と薬物の間の中間的水準に位置する)を含む、身体または動物の身体における使用に適した製品を指す。機能性化粧品の具体例としては、精油、セラミド、酵素、ミネラル、ペプチド、ビタミンなどが挙げられる。
【0104】
本明細書で使用する場合、「機能性食品」という用語は、健康上の利益をもたらすか、または疾病の予防もしくは軽減に関連付けられている治療作用を有する1以上の天然産物を含む、ヒトまたは動物に使用するのに適した製品を指し、通常食品中に存在する(または存在しない)濃縮天然生理活性産物の非食品マトリックス(例えば、カプセル、粉末など)中に提供され、それらの食品中に存在する量よりも高い用量で摂取された場合に、通常の食品が有し得る効果よりも大きい健康上有利な効果を発揮する栄養補助食品を含む。したがって、「機能性食品」という用語には、単離または精製された食品、ならびに一般に経口的に通常使用される剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、サシェ剤、飲用フィアルなどで提供される添加物または食品サプリメントが含まれ、このような製品は、生理学的利益または疾患、一般には慢性疾患からの保護を提供する。場合により、本発明により提供される機能性食品は、キサントフィルに加えて、1以上の機能性食品(疾患の予防または軽減に関連する製品または物質)、例えば、フラボノイド、オメガ-3脂肪酸など、ならびに/または1以上のプレバイオティクス(プロバイオティクスの活性および/もしくは増殖を刺激する難消化性食品成分)、例えば、オリゴフラクトース、ペクチン、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ヒト乳汁オリゴ糖、食物繊維などを含有し得る。
【0105】
本明細書で使用する場合、本発明の「栄養組成物」という用語は、より良い健康およびウェルネスを提供するように、身体の1以上の機能に有益な影響を及ぼす食品に関する。したがって、このような栄養組成物は、疾患または疾患の原因因子の予防および/または治療を意図し得る。したがって、本発明の「栄養組成物」という用語は、機能性食品または特定の栄養目的のための食品、または医療用食品の同義語として使用することができる。栄養組成物は、従来の食品と同様であり、通常の食事の一部として消費される。
【0106】
「化粧品組成物」または「パーソナルケア組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒトもしくは動物の個人的衛生に使用するために、あるいはヒトもしくは動物の身体の構造もしくは機能に影響を与えることなく、自然な美しさを高め、または身体の外観を変化させるために適した、そのような効果を提供する1以上の製品を含む組成物を指す。場合により、本発明により提供される化粧品組成物は、本発明の組合せに加えて、1以上の化粧品または化粧製品、すなわち、ヒトまたは動物の身体の外部部分(例えば、表皮、毛髪系、爪、唇など)、または歯および頬粘膜と接触させることを意図した物質または混合物を、それらを洗浄する、それらに香りを付ける、それらの外観を変化させる、それらを保護する、それらを良好な状態に保つ、または体臭を矯正する排他的または主目的のために含有することができる。化粧品上許容されるビヒクルの具体例としては、INCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients)リストに含まれる製品が挙げられる。化粧品またはパーソナルケア組成物には、バーム、パッド、ポマード、クリームなど、オイル、界面活性剤、保湿剤、植物抽出物、ビタミン、抗酸化剤、サンスクリーン剤、香料、防腐剤などの製品が含まれる。保湿剤、植物抽出物、ビタミン、抗酸化剤およびサンスクリーン剤の具体例。
【0107】
本明細書で上記されるような成分は、好ましくは、クリーム、ゲル、ローション、オイル、軟膏、パウダー、スティック、ケーキ、または局所適用され得る他の形態に処方され得る化粧品組成物中に提供される。得られる化粧品組成物は、液体、固体、半固体、分散液、懸濁液、溶液またはエマルションの形態であってもよく、水性ベースまたは無水のいずれであってもよい。また、本発明の化粧品組成物は、ファンデーションメイクアップ、マスカラ、リップカラー、チーク、アイシャドウなどのカラー化粧品組成物の形態であってもよい。特定の他の誘導体は性質上親油性であり、エマルションの油相に見出される可能性が高い。本発明の組合せは、好ましくはエマルションの水相に見出されるか、またはリポソーム内の水相に封入される。
【0108】
本明細書で使用する場合、「化粧品有効量」という用語は、所望の効果を提供するのに十分な化合物(すなわち、本発明の組合せ)の量に関し、それは一般に、とりわけ、化合物自体の特徴および達成されるべき化粧品効果によって決定される。また、化粧品として有効な量を得るための用量は、例えば、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトの年齢、体重、性別または耐性などの様々な要因に依存する。
【0109】
本発明の特定の実施態様では、本発明の化粧品組成物は局所経路により投与される。本発明の組成物の局所投与のための適切な製剤は、本発明の医薬組成物に関して詳述されており、本発明の化粧品組成物にも同様に当てはまる。
【0110】
場合により、本発明の化粧品組成物は、布地、不織布または医療装置に組み込まれる。前記布地、不織布または医療装置の具体例としては、限定されるものではないが、包帯、ガーゼ、Tシャツ、パンティホース、靴下、下着、ガードル、手袋、おむつ、生理用ナプキン、ドレッシング、ベッドカバー、タオルケット、粘着パッチ、非粘着パッチ、閉塞パッチ、微小電気パッチおよびフェイスマスクが挙げられる。
【0111】
医学的使用
癌(Satomi Y, Anticancer Res. 2017;37(4):1557-62; Meresse S et al., Int J Mol Sci. 2020 Dec 4;21(23); Peng J et al., Mar Drugs. 2011 Oct 10;9(10):1806-28)、心血管疾患、高血圧、門脈圧亢進症、肺動脈性肺高血圧症、高血糖、糖尿病(2型)、インスリン抵抗性、肝保護および脂質管理関連疾患(Peng J et al., Mar Drugs. 2011 Oct 10;9(10):1806-28)、代謝症候群および糖尿病予防(Maeda H. J Oleo Sci. 2015 Jan 20;64(2):125-32)、冠動脈アテローム性動脈硬化症、関節リウマチおよび抗血管新生として(Meresse S et al., Int J Mol Sci. 2020 Dec 4;21(23))、腸管細菌叢の不均衡、緑内障、糖尿病性網膜症、血管新生関連疾患、出血性毛細血管拡張症および乾癬(Xiao H et al., Mar Drugs. 2020 Dec 11;18(12))、抗炎症として、アナフィラキシーショック、敗血症、サイトカインストーム(Su et al., Front Pharmacol., 2019, DOI: 10.3389/fphar.2019.00906)、狼瘡、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、原発性胆汁性胆管炎、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎(Li X et al., Aging (Albany NY). 2021; 13:2655-2667; Yang YP et al., Nat Prod Res. 2020 Jun; 34(12):1791-1795; Zheng J et al., Mar Drugs. 2019;17(10):552; Yang X et al., J Environ Pathol Toxicol Oncol. 2019;38(3):229-238; Takatani N et al., Biochem Biophys Res Commun. 2020 Jul 23; 528(2) 305-310; Su et al., Front Pharmacol., 2019, DOI: 10.3389/fphar.2019.00906)、線維症(Xiao H et al., Mar Drugs. 2020 Dec 11;18(12); Ma SY et al. Eur J Pharmacol. 2017 Sep 15;811:199-207)、抗菌剤として(Karpinski TM, Adamczak A. Fucoxanthin-An Antibacterial Carotenoid. Antioxidants (Basel). 2019 Jul 24;8(8))、神経保護剤として(Hu L et al. Biomed Pharmacother. 2018 Oct;106:1484-9)、痛風および腎結石(Wang et al., Journal of King Saud University - Science. 2020 Apr; 32(3) 1896-1901)、老化関連障害(Guvatova Z et al., Mech Ageing Dev. 2020 Jul;189:111260; Chen, S.-J. et al., Mar. Drugs 2021, 19, 114)、グルココルチコイド誘発性筋萎縮(Zhiyin L et al. Biomed Pharmacother. 2021 Apr 14;139:111590)、骨の健康(Walsh PJ et al. Mar Drugs. 2019 Feb 28;17(3))、加齢黄斑変性(Chen S-J et al. Mar Drugs. 2021 Feb 18;19(2))、湿疹、アトピー性皮膚炎および掻痒(Natsume C et al. Int J Mol Sci. 2020 Mar 22;21(6))、および甲状腺関連疾患(Yang H et al., Biol Trace Elem Res. 2021 May;199(5):1877-1884)などの様々な病態を治療および/または予防するためのACXの有用性は、先行技術において記載されている。
【0112】
さらに、式(I)または(Ia)のACXエステルは、ACXのプロドラッグであり、体内でACXおよびそのシス異性体に自然変換される。したがって、本発明のエステルは、ACXについて報告されているものと同じ疾患の治療および予防に適している。
【0113】
よって、別の態様において、本発明は、医療に使用するための第1の態様の式(I)もしくは(Ia)の化合物、第5の態様の組成物または第6の態様の医薬組成物に関する。
【0114】
別の態様において、本発明は、癌、心血管疾患、腸管細菌叢の不均衡、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維症、細菌感染、神経疾患、高尿酸血症関連疾患、老化関連障害、脂質関連疾患、グルココルチコイド誘導性筋萎縮、骨関連疾患、眼疾患、血管新生関連疾患、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、および甲状腺関連障害からなる群から選択される疾患の治療および/または予防において使用するための、第1の態様の式(I)もしくは(Ia)の化合物、第5の態様の組成物または第6の態様の医薬組成物に関する。
【0115】
別の態様において、本発明は、癌、心血管疾患、腸管細菌叢の不均衡、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維症、細菌感染、神経疾患、高尿酸血症関連疾患、老化関連障害、脂質関連疾患、グルココルチコイド誘導性筋萎縮、骨関連疾患、眼疾患、血管新生関連疾患、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、および甲状腺関連障害からなる群から選択される疾患の治療および/または予防のための薬剤の製造における、第1の態様の式(I)もしくは(Ia)の化合物、第5の態様の組成物または第6の態様の医薬組成物の使用に関する。
【0116】
さらなる態様において、本発明は、癌、心血管疾患、腸管細菌叢の不均衡、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維症、細菌感染、神経疾患、高尿酸血症関連疾患、老化関連障害、脂質関連疾患、グルココルチコイド誘導性筋萎縮、骨関連疾患、眼疾患、血管新生関連疾患、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、および甲状腺関連障害からなる群から選択される治療および/または予防の方法であって、それを必要とする対象に第1の態様の式(I)もしくは(Ia)の化合物、第5の態様の組成物または第6の態様の医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0117】
「予防」、「予防すること」または「予防する」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明による組合せまたは前記組合せを含む医薬の、疾患を有する可能性があると診断されていないが、前記疾患を発症することが通常予想されるかまたは前記疾患のリスクが高い対象への投与に関する。予防は、前記疾患の出現を回避することを意図する。予防は、完全なものであり得る(例えば、疾患が全くないこと)。予防はまた、例えば、対象における疾患の発生が、本発明の組成物の投与がなければ発生したであろうものよりも少なくなるような、部分的なものであってもよい。予防はまた、病態に対する感受性の低下も指す。
【0118】
「治療」という用語は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載されるような病態の終結、予防、改善または感受性の低減を目的とするいずれのタイプの療法も指す。好ましい実施形態では、治療という用語は、本明細書で定義されるような障害または病態の予防的処置(すなわち、病態に対する感受性を低減するための治療)に関する。したがって、「治療」、「治療すること」、およびこれらの等価な用語は、所望の薬理学的または生理学的効果を得ることを指し、ヒトを含む哺乳動物における病理学的状態または障害の任意の治療を対象とする。その効果は、障害もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという点では予防的であり得、ならびに/または障害および/もしくは障害に起因する副作用の部分的もしくは完全な治癒という点では治療的であり得る。すなわち、「治療」には、(1)対象において障害が発生または再発するのを予防すること、(2)その発症を阻止するなど、障害を抑制すること、(3)宿主が障害またはその症状にもはや苦しまないように、障害または少なくともそれに関連する症状を停止または終結させること、例えば、失われた、欠損した、もしくは欠陥のある機能を回復もしくは修復することによって、または非効率的なプロセスを刺激することによって、障害もしくはその症状を退行させること、あるいは(4)障害またはそれに関連する症状を緩和、軽減、または改善することを含み、ここで、改善は、広義において、少なくともパラメーターの大きさの低減を指して使用される。
【0119】
「癌」という用語は、本明細書で使用する場合、制御されない細胞分裂(または生存もしくはアポトーシス耐性の増加)および前記細胞の他の隣接組織へ侵入(浸潤)し、リンパ管および血管を介してそれらの細胞が通常局在しない他の身体領域へ拡散(転移)し、血流中に循環し、その後、身体の他所の正常組織へ侵入する能力を特徴とする疾患を指す。腫瘍は、浸潤および転移によって拡散するかどうかによって、良性または悪性に分類され、良性腫瘍は浸潤または転移によって拡散することができない腫瘍、すなわち、それらは局所的に増殖するにすぎず、悪性腫瘍は浸潤および転移によって拡散することができる腫瘍である。本明細書で使用する場合、癌という用語には、限定されるものではないが、以下のタイプの癌:乳癌;胆道癌;膀胱癌;膠芽腫、特に、多形性膠芽腫、および髄芽細胞腫を含む脳癌;子宮頸癌;頭頸部癌;絨毛癌;結腸癌、結腸直腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;急性リンパ球性および骨髄性白血病を含む血液癌新生物;T細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫;有毛細胞白血病;慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫;AIDS関連白血病および成人T細胞白血病/リンパ腫;ボーエン病およびパジェット病を含む上皮内新生物;肝臓癌、肝細胞腫;肺癌、胸腔中皮腫;ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;耳下腺癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞および間葉細胞から発生するものを含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;腎臓癌、上腎癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、メルケル細胞癌、カポジ肉腫、基底細胞癌、および扁平上皮細胞癌を含む皮膚癌;子宮頚癌、子宮内膜癌;精上皮腫、非精上皮腫(奇形腫、絨毛癌)、間質腫瘍、生殖細胞腫瘍を含む精巣癌;甲状腺腺癌および髄様癌を含む甲状腺癌;ならびに腺癌およびウィルムス腫瘍を含む腎臓癌が含まれる。他の癌も当業者には周知であろう。特定の実施形態では、癌は、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、血液癌、乳癌、神経膠腫、膀胱癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、肺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、肉腫、神経系癌または皮膚癌である。
【0120】
特定の実施形態では、心血管性疾患は、高血圧症、門脈圧亢進症、肺動脈性高血圧症、高血糖症、2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝症候群または冠動脈アテローム性動脈硬化症である。
【0121】
特定の実施形態では、炎症性疾患は、アナフィラキシーショック、敗血症またはサイトカインストームである。
【0122】
特定の実施形態では、自己免疫疾患は、狼瘡、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患、喘息、原発性胆汁性胆管炎、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症および潰瘍性大腸炎である。
【0123】
「線維症」は、本明細書で使用する場合、臓器または組織において、修復過程または反応過程における過剰な線維性結合組織の形成に関する。線維症は良性の状態であってもよいが、本発明は好ましくは病理学的状態の線維症に関する。特定の実施形態において、線維症は、肝線維症、腎線維症、肺線維症、心筋線維症、間質性線維症、IGG4関連線維症、硬皮症または後腹膜線維症である。
【0124】
特定の実施形態では、神経疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、鬱病または脳虚血である。
【0125】
特定の実施形態では、高尿酸血症関連疾患は、関節リウマチ、通風または腎結石である。
【0126】
特定の実施形態では、脂質関連疾患は、肥満、コレステロール、トリグリセリド血症、非アルコール性脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝疾患である。
【0127】
特定の実施形態では、骨関連疾患は骨量減少である。
【0128】
特定の実施形態では、眼疾患は、緑内障、糖尿病性網膜症または加齢黄斑変性である。
【0129】
特定の実施形態では、血管新生関連疾患は、出血性毛細血管拡張症である。
【0130】
美容方法
皮膚老化を予防および/もしくは軽減する際、ならびに/または加齢の美容上の悪影響を改善するためのACXの化合物の有用性は、先行技術に記載されている(Peng J et al. Mar Drugs. 2011 Oct 10;9(10):1806-28; Kang SY et al. J Cosmet Sci. 2020;71(2):53-64.)。先に説明したように、式(I)または(Ia)のACXエステルは、体内でACXおよびそのシス異性体に自発的に変換される。したがって、本発明のエステルは、ACXについて報告されているのと同じ美容方法での使用に適している。
【0131】
よって、別の態様において、本発明は、皮膚老化を予防および/もしくは軽減するため、ならびに/または加齢の美容上の悪影響を改善するための美容方法であって、それを必要とする対象に、第1の態様の式(I)または(Ia)、好ましくは式(Ia)の、好ましくはRがメチルである化合物、第5の態様の組成物、または第9の態様の食品、機能性化粧品、機能性食品または化粧品組成物を投与することを含む。
【0132】
本明細書で使用する場合、「美容方法」という用語は、対象の皮膚の外観を向上させるために使用される方法に関する。本発明の美容方法に使用される化粧品組成物には、スキンケアクリーム、ローション、パウダー、リップスティック、アイ・フェイシャルメイクアップ、タオルケット、ジェル、デオドラント、ハンドサニタイザー、ベビー用品、バスオイル、バブルバス、バスソルト、バター、および他の多くのタイプの製品が含まれる。
【0133】
皮膚の加齢は、その生物学的および機能のほぼすべての側面に影響を及ぼす多因子プロセスであり、内因的要因(例えば、時間、遺伝的要因、ホルモン)と外因的要因(例えば、紫外線暴露、汚染、タバコの煙)の両方によって引き起こされる。皮膚の加齢は、老化によっても生じる。
【0134】
細胞老化は、DNA損傷、テロメア短縮および機能障害、または発癌性ストレスを含む、様々な損傷刺激の結果として起こる増殖停止である。老化細胞は、発生、組織の加齢と再生、炎症、創傷治癒および腫瘍抑制に多面的影響を及ぼす。老化細胞は、増殖不能、アポトーシス抵抗性、ならびに炎症および組織の劣化を促進する因子の分泌を特徴とする。
【0135】
ヒトの皮膚では、加齢とともに老化したケラチノサイトおよび線維芽細胞が蓄積しているように見える。さらに、老化細胞は、分解酵素、増殖因子および炎症性サイトカインなど、広範囲に多面的影響を及ぼす遺伝子を発現している。
【0136】
「加齢の美容上の悪影響」は、本明細書で使用する場合、内在的または年代的加齢の特徴に関し、例示的な非限定的な可視徴候として、皮膚の薄さおよび乾燥、小皺、弾力性の低下、色素沈着異常、白髪および脱毛が含まれる。
【0137】
「皮膚老化」は、本明細書で使用する場合、老いていく状態を意味し、特に、細胞の部分的な損傷または完全な破壊、酸素代謝の有毒な副産物、フリーラジカル病理機構、または光損傷および全般的加齢によって引き起こされる、コラーゲンおよび/またはエラスチンのイミド結合からアミド結合への変換によって生じる、ヒト皮膚の表皮細胞の損傷を意味する。
【0138】
本発明の美容方法は、基礎にある皮膚の血管分布の増加させること、細胞の複製と落屑の速度の上昇によるより若々しい外観を生み出すこと、コラーゲンの合成と均質性を高めること、皮膚の萎縮と表皮と真皮の薄化を遅らせることなど、光損傷または他の再生効果を逆転させるなどの1以上の影響を含む老化を軽減または阻害することによって、ヒトにおける表皮細胞を減少させ、それによって皮膚の老化を減少させることを意図する。
【0139】
本発明の組合せは、美容上有効な量で投与することができる。
【0140】
「美容上有効な量」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明の化合物または組成物の、所望の効果を提供するために十分な量に関し、一般に、とりわけ、化合物自体の特徴および達成される美容効果によって決定される。美容上有効な量を得るための用量は、例えば、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトの年齢、体重、性別または忍容性などの様々な要因にも依存する。
【0141】
本発明の美容方法の特定の好ましい実施形態では、本発明の化粧品組成物は、局所経路によって投与される。本発明の組合せの局所投与のために十分な製剤は、本発明の化粧品組成物に関して詳説されており、本発明の美容方法にも同様に当てはまる。
【0142】
場合により、本発明の化粧品組成物は、布地、不織布または医療装置に組み込まれる。前記布地、不織布または医療装置の具体例としては、限定されるものではないが、包帯、ガーゼ、Tシャツ、パンティホース、靴下、下着、ガードル、手袋、おむつ、生理用ナプキン、ドレッシング、ベッドカバー、タオルケット、粘着パッチ、非粘着パッチ、閉塞パッチ、微小電気パッチおよびフェイスマスクが挙げられる。
【0143】
本発明は以下の通りである。
[1]上記式(I)(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C -C アルキルからなる群から選択される)の化合物またはその立体異性体。
[2]上記式(Ia)(Rは、上記[1]に定義される通り)の上記[1]に記載の化合物。
[3]Rがメチルである、上記[1]または[2]に記載の化合物。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物を製造するための方法であって、
a)上記式(II)または(IIa)の化合物を酸化剤、好ましくは、過ルテニウム酸テトラ-n-プロピルアンモニウム(TPAP)および2-ヨードキシ安息香酸(IBX)からなる群から選択される酸化剤と、場合によりまた共酸化剤、好ましくは、N-メチルモルホリンN-オキシド(NMO)の存在下で反応させて、上記式(III)または(IIIa)の化合物を得ること、
b)上記式(III)または(IIIa)の化合物を塩基、好ましくは、N-メチルモルホリンおよびトリエチルアミンからなる群から選択される塩基の存在下でSiO と反応させて、Rがメチルである上記式(I)または(Ia)の化合物を得ること、および
c)Rが直鎖または分岐鎖C -C アルキルである上記式(I)または(Ia)の化合物の場合には、
c1)Rがメチルである上記式(I)または(Ia)の化合物をエステラーゼ、好ましくは、リパーゼで処理することにより、上記式(IV)または(IVa)の化合物に変換すること、および
c2)上記式(IV)または(IVa)の化合物を、カップリング剤、好ましくは、カルボジイミド、より好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)およびエチル-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDC)またはその塩からなる群から選択されるカルボジイミドの存在下、および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下で、上記式(V)(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C -C アルキルである)のカルボン酸でエステル化して、上記式(I)または(Ia)(式中、Rは、直鎖または分岐鎖C -C アルキルからなる群から選択される)の化合物を得ること
を含む、方法。
[5]工程a)の酸化剤がTPAPであり、
工程a)が共酸化剤の存在下で行われ、
工程a)の共酸化剤がNMOであり;および/または
工程b)の塩基がN-メチルモルホリンである、
上記[4]に記載の方法。
[6]工程a)および/またはb)は水の存在下で行われ、その後、上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物と上記式(VI)、好ましくは、式(VIa)(式中、Rは上記[1]~[3]のいずれかに定義される)の化合物の混合物が得られる、上記[4]または[5]に記載の方法。
[7]アマロウシアキサンチンA、ならびに/またはアマロウシアキサンチンAおよびパラセントロンを含む組成物の製造のための、上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物の使用。
[8]上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物をエステラーゼ、好ましくは、リパーゼで処理することを含む、アマロウシアキサンチンAの製造方法。
[9]上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物および上記[6]に記載の上記式(VI)、好ましくは、上記式(VIa)の化合物を含む、組成物。
[10]上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物または上記[9]に記載の組成物を含む、医薬組成物。
[11]医薬に使用するための、上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物、上記[9]に記載の組成物または上記[10]に記載の医薬組成物。
[12]癌、心血管疾患、腸管細菌叢の不均衡、炎症性疾患、自己免疫疾患、線維症、細菌感染、神経疾患、高尿酸血症関連疾患、老化関連障害、脂質関連疾患、グルココルチコイド誘導性筋萎縮、骨関連疾患、眼疾患、血管新生関連疾患、乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎、および甲状腺関連障害からなる群から選択される疾患の治療および/または予防における使用のための、上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物、上記[9]に記載の組成物または上記[10]に記載の医薬組成物。
[13]前記癌が胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、血液癌、乳癌、神経膠腫、膀胱癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、鼻咽頭癌、肺癌、腎臓癌、転移癌、黒色腫、肉腫、神経系癌、または皮膚癌であり;
前記心血管性疾患が高血圧症、門脈圧亢進症、肺動脈性高血圧症、高血糖症、2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝症候群または冠動脈アテローム性動脈硬化症であり;
前記炎症性疾患がアナフィラキシーショック、敗血症またはサイトカインストームであり;
前記自己免疫疾患が狼瘡、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患、喘息、原発性胆汁性胆管炎、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症および潰瘍性大腸炎であり;
前記線維症が肝線維症、腎線維症、肺線維症、心筋線維症、間質性線維症、IGG4関連線維症、硬皮症または後腹膜線維症であり;
前記神経疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、鬱病または脳虚血であり;
前記高尿酸血症関連疾患が関節リウマチ、通風または腎結石であり;
前記脂質関連疾患が肥満症、コレステロール血症、トリグリセリド血症、非アルコール性脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝疾患であり;
前記骨関連疾患が骨量減少であり;
前記眼疾患が緑内障、糖尿病性網膜症または加齢黄斑変性であり;および/または
前記血管新生関連疾患が出血性毛細血管拡張症である、
上記[12]に記載の使用のための化合物、組成物または医薬組成物。
[14]上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物または上記[9]に記載の組成物を含む、食品、機能性化粧品、機能性食品、または化粧品組成物。
[15]皮膚老化を予防および/もしくは軽減するための、ならびに/または加齢の美容上の悪影響を改善するための美容方法であって、それを必要とする対象に上記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物、上記[9]に記載の組成物または上記[14]に記載の食品、機能性化粧品、機能性食品もしくは化粧品組成物を投与することを含む、方法。
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を表す。これらの実施例は、本明細書に定義される本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例
【0144】
分析方法
核磁気共鳴(NMR)
NMRスペクトルは、Varian 400MHzまたは500MHz機で取得した。H化学シフトは、重水素化溶媒に対して表される。
【0145】
例1 アマロウシアキサンチンA酢酸エステルの合成
フコキサチン(1当量)、NMO一水和物(2当量)および新たに乾燥させた4Åモレキュラーシーブスをジクロロメタン(DCM)で溶解させる。TPAP(0.12当量)を室温で加える。反応が完全変換(>97%)に達した際に、反応物にSiO(30当量)を加える。反応物を完全に変換するまで室温で撹拌する。反応物を濾過してSiOを除去する。濾液を水性5%Naで洗浄する。有機層をブラインで2回洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。高真空を用いて残渣を乾燥させ、所望の化合物を赤色固体として得る。
【0146】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.10 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 6.83 - 6.50 (m, 5H), 6.45 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.35 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 6.27 (d, J = 11.7 Hz, 1H), 6.13 (d, J = 11.5 Hz, 1H), 6.05 (s, 1H), 5.84 (s, 2H), 5.44 - 5.33 (m, 1H), 3.05 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 2.92 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 2.47 (d, J = 18.1 Hz, 1H), 2.38 - 2.24 (m, 2H), 2.04 (s, 3H), 1.99 (m, 7H), 1.95 (s, 3H), 1.90 (d, J = 1.0 Hz, 3H), 1.81 (s, 3H), 1.51 (t, J = 12.2 Hz, 1H), 1.40 (m, 8H), 1.14 - 1.02 (m, 9H)。
【0147】
例2 パラセントロン酢酸エステルの合成
アマロウシアキサンチンA酢酸エステルを水と混合し、70℃に加熱する。反応が進行しなくなれば、冷却し、ジクロロメタンで抽出する。有機層を乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。得られた残渣をSiOカラムクロマトグラフィーにより精製し、所望の化合物を褐色固体として得る。
【0148】
パラセントロン酢酸エステル: 1H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.14 (dd, J = 10.7, 1.2 Hz, 1H), 6.77 - 6.53 (m, 5H), 6.42 - 6.30 (m, 2H), 6.26 (d, J = 11.5 Hz, 1H), 6.12 (dd, J = 11.4, 1.0 Hz, 1H), 6.06 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 5.38 (m, 1H), 2.36 (s, 3H), 2.31 - 2.25 (m, 1H), 2.03 (s, 3H), 2.02 - 1.96 (m, 6H), 1.93 (d, J = 0.9 Hz, 3H), 1.81 (t, J = 3.6 Hz, 3H), 1.50 (m, 1H), 1.44 - 1.39 (m, 1H), 1.36 (d, J = 15.3 Hz, 6H), 1.09 - 1.03 (m, 3H)。
【0149】
例3 種々の酸化剤を用いたアマロウシアキサンチンA酢酸エステルの合成
TPAPおよびNMOをIBX、デス・マーチン・ペルヨージナンおよびスワーン酸化に置き換えたこと以外は、実施例1と同じ手順を行った。結果を下表にまとめる。
【表1】
【0150】
例4 アマロウシアキサンチンAの合成
アマロウシアキサンチンA酢酸エステル(1当量)およびタウロコール酸ナトリウム (30当量)をMeOHに溶解させる。溶媒を蒸発乾固させる。残渣をリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7)に溶解させ、リパーゼ(1340U/mg化合物)を加える。反応物を最大変換(約80%)まで37℃で振盪する。反応物をMeOHでクエンチし、EtOおよびブラインで抽出する。有機層に色が見えなくなるまで水層をEtOで抽出する。合わせた有機層を乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させる。残渣をSiOカラムクロマトグラフィーにより精製し、アマロウシアキサンチンAを赤色固体として得、未反応のアマロウシアキサンチンA酢酸エステルを回収する。
【0151】
1H-NMR (500 MHz, アセトン) δ 7.53 (dd, J = 10.8, 1.1 Hz, 1H), 6.93 - 6.81 (m, 2H), 6.80 - 6.67 (m, 3H), 6.52 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.36 (dd, J = 17.7, 13.4 Hz, 2H), 6.16 (dd, J = 11.4, 1.0 Hz, 1H), 6.02 (s, 1H), 5.91 (s, 1H), 5.74 - 5.69 (m, 1H), 4.28 - 4.17 (m, 1H), 3.61 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 3.48 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 3.21 (q, J = 15.5 Hz, 2H), 2.80 (d, J = 1.6 Hz, 3H), 2.78 - 2.75 (m, 1H), 2.62 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 2.21 - 2.11 (m, 2H), アセトン下のピーク, 2.02 (s, 2H), 1.99 (s, 2H), 1.94 (t, J = 3.3 Hz, 2H), 1.91 (m, 1H), 1.89 - 1.83 (m, 5H), 1.40 - 1.24 (m, 7H), 1.07 - 0.98 (m, 6H)。
【0152】
例5 経口吸収後のアマロウシアキサンチンA酢酸エステルのアマロウシアキサンチンへの変換
Hsd:ICR(CD-1)系統(雌、6~7週齢 ENVIGOから)の免疫応答性マウスを20~22℃の一定温度および相対湿度(45~65%)、明/暗日周期(12時間)の無菌条件下で飼育した。滅菌した水および食品を自由に摂らせた。
【0153】
アマロウシアキサンチンA酢酸エステル(ACX-Ac)を好適なビヒクルに1mg/mLで溶解させ、濾過除菌した。動物を秤量した後、10mL/kgで適当な分配容量を決定するためのアッセイを行った。製剤は10mg/kgで1回、胃内に投与した。表1に示すように、種々の時点で血液を採取した。血液は5μLの0.5M EDTAを含有するレシピエントにおいて、顔面静脈からまたは心臓内穿刺(エンドポイント)により抽出した。
【0154】
血液サンプルを独自の分析法に従ってHPLC-MS/MSにより分析し、各サンプル中のACX濃度を決定した。PKPlus(登録商標)ソフトウェアバージョン2.0(Simulations Plus、ランカスター、CA 93534、USA)により、個々の血漿濃度対サンプリング時間を用いた非コンパートメント薬物動態解析を行った。
【0155】
【表2】
【0156】
ACX-Acは、経口投与した場合、血漿サンプルには検出されなかった。続いて、ACXの吸収を解析した(図1)。推定最高観測血漿濃度(Cmax)は9.35μMと決定され、濃度-時間曲線下面積(AUCt)は80.59μM・hと計算された。
図1