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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-27
(45)【発行日】2025-03-07
(54)【発明の名称】物体透視装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/02 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
G01N22/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024556989
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2022042085
(87)【国際公開番号】W WO2024100884
(87)【国際公開日】2024-05-16
【審査請求日】2024-11-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】石岡 和明
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/162868(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112213721(CN,A)
【文献】特許第6921339(JP,B1)
【文献】特開2008-128657(JP,A)
【文献】特開2008-111743(JP,A)
【文献】特開平11-174160(JP,A)
【文献】特開2017-021026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-22/04
G01S 13/00-13/95
G01V 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数から第2周波数まで周波数掃引時間をかけて周波数を変化させる周波数掃引を繰返し行った送信電波を対象物体に送信する送信部と、
前記送信電波が前記対象物体で反射した受信電波をアレーアンテナ素子を用いて受信する受信部と、
1回の周波数掃引毎に、前記アレーアンテナ素子の受信信号から三次元画像を生成する三次元画像生成部と、
複数の前記三次元画像に基づいて前記対象物体を検知する物体検知部と、
を備え、
前記第1周波数と、前記第2周波数と、前記周波数掃引時間と、前記対象物体の検知に使用する前記アレーアンテナ素子の数とのうち少なくとも1つを、時分割で変更し、
前記受信部は、
複数の前記アレーアンテナ素子を有し、前記アレーアンテナ素子毎の複数のアナログ信号に対して、パラレルシリアル変換を行って、1つのアナログデジタル変換器でデジタル信号に変換し、
前記パラレルシリアル変換の変換パターンを変更することで、前記対象物体の検知に使用する前記アレーアンテナ素子の数を制限する
ことを特徴とする物体透視装置。
【請求項2】
第1周波数から第2周波数まで周波数掃引時間をかけて周波数を変化させる周波数掃引を繰返し行った送信電波を対象物体に送信する送信部と、
前記送信電波が前記対象物体で反射した受信電波をアレーアンテナ素子を用いて受信する受信部と、
1回の周波数掃引毎に、前記アレーアンテナ素子の受信信号から三次元画像を生成する三次元画像生成部と、
複数の前記三次元画像に基づいて前記対象物体を検知する物体検知部と、
を備え、
前記第1周波数と、前記第2周波数と、前記周波数掃引時間と、前記対象物体の検知に使用する前記アレーアンテナ素子の数とのうち少なくとも1つを、時分割で変更し、
前記受信部は、
複数の前記アレーアンテナ素子を有し、前記アレーアンテナ素子毎の複数のアナログ信号に対して、パラレルシリアル変換を行って、1つのアナログデジタル変換器でデジタル信号に変換し、
前記パラレルシリアル変換の変換パターンを、前記周波数掃引と同期したタイミングで時分割で変更することで、前記対象物体の検知に使用する前記アレーアンテナ素子の数を前記周波数掃引毎に変更する
ことを特徴とする物体透視装置。
【請求項3】
前記物体検知部は、ニューラルネットワークにより前記対象物体を検知する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の物体透視装置。
【請求項4】
前記第1周波数と前記第2周波数との間の差が大きいほど、前記対象物体の検知に使用する前記アレーアンテナ素子の数を少なくする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の物体透視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波を用いて物体を透視する物体透視装置および物体透視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品検査における異物検出や、空港でのセキュリティゲートなどにおいて、物体を透視して異物や危険物を検出する装置が用いられている。従来の物体透視装置は、X線を用いたものが一般的である。X線を用いた物体透視装置は、X線被曝の問題があり、その利用は限定的である。被曝の問題がない方法として、核磁気共鳴を利用した物体透視装置が、医療用として実用化している。しかしながら、核磁気共鳴を利用した物体透視装置は、強力な磁場が必要であり、装置が大きく、鉄などの磁性体があると大きな力がかかる。このため、核磁気共鳴を利用した物体透視装置では、装置を設置するために広い場所が必要となり、また、装置が設置された場所への人や物の出入りを管理しなければならないなど、装置を設置する場所への制限が大きいため、その利用は限定的である。
【0003】
これに対して、電波を利用した物体透視装置であれば、被曝の問題がなく、また、装置を設置する場所への制限も少ない。電波を用いる場合、分解能の限界は、用いる電波の波長で制限される。このため、従来は、電波を用いた物体透視画像は、解像度が低く、物体の識別が困難であったが、近年のデバイス技術の進歩によって、100GHz以上の電波を利用することが可能となりつつあり、解像度の向上が期待される。例えば、特許文献1には、マイクロ波を用いてタイヤ内部の欠陥を検査する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-77192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、検知対象が移動する場合には、検知精度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、検知対象が移動する場合であっても、検知精度の低下を抑制することが可能な物体透視装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる物体透視装置は、第1周波数から第2周波数まで周波数掃引時間をかけて周波数を変化させる周波数掃引を繰返し行った送信電波を対象物体に送信する送信部と、送信電波が対象物体で反射した受信電波をアレーアンテナ素子を用いて受信する受信部と、1回の周波数掃引毎に、アレーアンテナ素子の受信信号から三次元画像を生成する三次元画像生成部と、複数の三次元画像に基づいて対象物体を検知する物体検知部と、を備え、第1周波数と、第2周波数と、周波数掃引時間と、対象物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数とのうち少なくとも1つを、時分割で変更し、受信部は、複数のアレーアンテナ素子を有し、アレーアンテナ素子毎の複数のアナログ信号に対して、パラレルシリアル変換を行って、1つのアナログデジタル変換器でデジタル信号に変換し、パラレルシリアル変換の変換パターンを変更することで、対象物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる物体透視装置は、検知対象が移動する場合であっても、検知精度の低下を抑制することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる物体透視装置の構成を示す図
図2】送信電波の波形の第1の例を示す図
図3】送信電波の波形の第2の例を示す図
図4図1に示す送信機の構成を示す図
図5図1に示す受信機の構成を示す図
図6図1に示すアナログパラレルシリアル変換部の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる物体透視装置および物体透視方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる物体透視装置100の構成を示す図である。物体透視装置100は、電波を用いて物体を透視する機能を有する。物体透視装置100は、例えば、空港で凶器などの危険物を検知したり、生産現場で生産物に混入した異物を検知したりするために使用される。
【0012】
物体透視装置100は、送信機1と、送信アンテナ2と、受信アンテナ3と、受信機4と、アナログパラレルシリアル変換部5と、アナログデジタル変換器7と、三次元画像生成部8と、物体検知部9と、発振器10と、を有する。送信機1と送信アンテナ2と、をまとめて送信部101と称する。受信アンテナ3と、受信機4と、アナログパラレルシリアル変換部5と、アナログデジタル変換器7と、をまとめて受信部102と称する。
【0013】
送信機1は、対象物体Tに向けて送信する送信電波W1を生成し、送信アンテナ2を用いて、生成した送信電波W1を送信する。ここで、送信電波W1の波形について説明する。送信機1は、第1周波数から第2周波数まで周波数を変化させる周波数掃引を繰返し行った波形の送信電波W1を生成する。ここで、第1周波数から第2周波数まで周波数を変化させるのにかかる時間長を周波数掃引時間と称する。送信機1は、時分割で周波数掃引のパラメータである第1周波数、第2周波数および周波数掃引時間のうち少なくとも1つを変更することができる。
【0014】
図2は、送信電波W1の波形の第1の例を示す図である。図2に示す第1の例では、第1周波数は270GHzであり、第2周波数は290GHzである。第1周波数および第2周波数の値は固定であるのに対して、周波数掃引時間は、1回の周波数掃引毎に変更されている。1回目の周波数掃引では、周波数掃引時間は10μsecであり、2回目の周波数掃引では、周波数掃引時間は20μsecであり、3回目の周波数掃引では、周波数掃引時間は40μsecであり、4回目の周波数掃引では、周波数掃引時間は80μsecである。また、5回目の周波数掃引では、周波数掃引時間は10μsecであり、6回目の周波数掃引では、周波数掃引時間は20μsecであり、7回目の周波数掃引では、周波数掃引時間は40μsecであり、8回目の周波数掃引では、周波数掃引時間は80μsecである。
【0015】
図3は、送信電波W1の波形の第2の例を示す図である。図3に示す第2の例では、周波数掃引時間は、10μsecで一定の値であるのに対して、第1周波数および第2周波数は、1回の周波数掃引毎に変更されている。1回目の周波数掃引では、第1の周波数は278GHzであり、第2の周波数は282GHzである。2回目の周波数掃引では、第1の周波数は276GHzであり、第2の周波数は284GHzである。3回目の周波数掃引では、第1の周波数は274GHzであり、第2の周波数は286GHzである。4回目の周波数掃引では、第1の周波数は272GHzであり、第2の周波数は288GHzである。5回目の周波数掃引では、第1の周波数は270GHzであり、第2の周波数は290GHzである。また、6回目の周波数掃引では、第1の周波数は278GHzであり、第2の周波数は282GHzである。7回目の周波数掃引では、第1の周波数は276GHzであり、第2の周波数は284GHzである。8回目の周波数掃引では、第1の周波数は274GHzであり、第2の周波数は286GHzである。9回目の周波数掃引では、第1の周波数は272GHzであり、第2の周波数は288GHzである。10回目の周波数掃引では、第1の周波数は270GHzであり、第2の周波数は290GHzである。
【0016】
図4は、図1に示す送信機1の構成を示す図である。送信機1には、発振器10から定包絡線の信号が入力される。送信機1は、N逓倍器11と、送信アンプ12とを有する。送信機1は、発振器10から入力された定包絡線の信号をN逓倍器11によりN逓倍する。このため、発振器10では、送信電波W1の周波数のN分の1倍の周波数の信号を発生させる。N逓倍器11の出力は、送信アンプ12により増幅されて、送信アンテナ2より送信電波W1が発射される。
【0017】
図1の説明に戻る。受信アンテナ3は、送信部101が送信した送信電波W1が、対象物体Tで反射した電波である受信電波W2を受信する。受信アンテナ3は、2次元アレーに配置されたアレーアンテナ素子である。
【0018】
受信機4は、受信アンテナ3毎に設けられ、対応する受信アンテナ3が受信した電波のアナログ信号を処理する機能を有する。受信機4は、処理後のアナログ信号をアナログパラレルシリアル変換部5に出力する。
【0019】
図5は、図1に示す受信機4の構成を示す図である。受信機4には、発振器10から定包絡線の信号が入力され、受信アンテナ3から受信した電波のアナログ信号が入力される。受信機4は、受信アンプ41と、N逓倍器42と、周波数ミキサ44と、LPF(Low Pass Filter)45と、図中では「S&H」と表記されているサンプルアンドホールド46とを有する。
【0020】
受信アンテナ3から入力されたアナログ信号は、受信アンプ41で増幅された後、周波数ミキサ44に入力される。また、発振器10から入力された定包絡線の信号は、N逓倍器42によりN逓倍され、N逓倍後の信号もまた周波数ミキサ44に入力される。周波数ミキサ44は、受信アンプ41およびN逓倍器42のそれぞれから入力される信号をミキシングしダウンコンバートしてLPF45に出力する。
【0021】
LPF45は、遮断する帯域幅が可変なフィルタであり、設定された周波数以上の信号を遮断して不要な高周波を除去して、サンプルアンドホールド46に出力する。サンプルアンドホールド46は、アナログ信号をサンプルアンドホールドする。サンプルアンドホールド処理は、全ての受信機4において一斉に行われる。サンプルアンドホールド46の出力は、アナログパラレルシリアル変換部5に接続されている。
【0022】
図1の説明に戻る。複数の受信機4のそれぞれにおいてサンプルアンドホールドされたアナログ信号は、アナログパラレルシリアル変換部5において、シリアルアナログ信号に変換される。シリアルアナログ信号は、アナログデジタル変換器7に出力される。
【0023】
図6は、図1に示すアナログパラレルシリアル変換部5の構成を示す図である。アナログパラレルシリアル変換部5は、複数のアナログスイッチ51から構成されている。アナログパラレルシリアル変換部5は、アナログスイッチ51をONにすることで、受信部102が三次元画像生成部8に出力する信号、言い換えると、三次元画像の生成および物体の検知に使用する信号を選択することができる。このため、ONとなっているアナログスイッチ51に接続された受信アンテナ3のアレーアンテナ素子を、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子と呼ぶこともできる。なお、複数のアナログスイッチ51のうち同時にONとなるのは1つのみであり、アナログパラレルシリアル変換部5は、ONにするアナログスイッチ51を順次切り替えることによって、パラレルシリアル変換を行うことができる。また、アナログパラレルシリアル変換部5は、アナログスイッチ51の切替パターン、つまり、パラレルシリアル変換の変換パターンを変更することで、使用するアレーアンテナ素子を変更することができる。アナログパラレルシリアル変換部5は、送信電波W1の周波数掃引と同期したタイミングで時分割でパラレルシリアル変換の変換パターンを変更することによって、周波数掃引毎に、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を変更することができる。なお、アナログパラレルシリアル変換部5は、必ずしも全てのアナログスイッチ51をONにする必要はない。パラレルシリアル変換の変換パターンを変更して、ONにするアナログスイッチ51の数を制限することで、アナログパラレルシリアル変換部5は、使用するアレーアンテナ素子の数を制限することができる。例えば、アナログパラレルシリアル変換部5は、周波数掃引幅が大きいほど、使用するアレーアンテナ素子の数を少なくすることができる。
【0024】
アナログデジタル変換器7は、アナログパラレルシリアル変換部5が出力するシリアルアナログ信号をデジタル信号に変換して、変換後のデジタル信号を三次元画像生成部8に出力する。このように、アナログパラレルシリアル変換部5を有することで、複数のアレーアンテナ素子が受信する複数のアナログ信号がパラレルシリアル変換によってシリアルアナログ信号に変換されるため、受信部102は、アナログデジタル変換器7を1つ有していればよい。また、アナログパラレルシリアル変換部5が、使用するアレーアンテナ素子の数を制限することで、アナログデジタル変換器7の帯域幅を削減することができる。物体透視装置100が、例えばウォークスルーセキュリティゲートのように、移動する対象物体Tを透視する場合、受信部102は高速に大量のデータを処理する必要があるため、アナログデジタル変換器7は非常に高速なものが必要となり、高価となる。受信部102がアナログパラレルシリアル変換部5を有することで、アナログデジタル変換器7の個数を削減し、アナログデジタル変換器7の帯域幅を削減することができるため、物体透視装置100全体のコストを低減することが可能になる。
【0025】
三次元画像生成部8は、1回の周波数掃引毎に、受信部102が出力するデジタル信号から三次元画像を生成する。三次元画像生成部8は、生成した三次元画像を物体検知部9に出力する。
【0026】
物体検知部9は、三次元画像生成部8から出力される複数の三次元画像に基づいて、物体を検知する。物体検知部9が検知する物体は、例えば、異物、凶器などの予め設定した種類の物体である。物体検知部9は、ニューラルネットワーク等で構成され、予め検知すべき物体に対して学習済の学習済モデルを用いて、設定された物体を検知することができる。物体検知部9は、ニューラルネットワークを用いて物体を検知する場合、複数の三次元画像を学習済モデルに入力し、学習済モデルは、対象物体Tに、予め設定した種類の検知対象の物体、例えば、異物、凶器などが含まれるか否かを示す検知結果を出力する。設定された物体が検知された場合、検知結果は、例えば、検知した物体の種類を含んでいてもよい。
【0027】
以上説明したように、実施の形態1にかかる物体透視装置100は、第1周波数から第2周波数まで周波数掃引時間をかけて周波数を変化させる周波数掃引を繰返し行った送信電波W1を対象物体Tに送信する送信部101と、送信電波W1が対象物体Tで反射した受信電波W2をアレーアンテナ素子を用いて受信する受信部102と、1回の周波数掃引毎に、アレーアンテナ素子の受信信号から三次元画像を生成する三次元画像生成部8と、複数の三次元画像に基づいて物体を検知する物体検知部9と、を備え、第1周波数と、第2周波数と、周波数掃引時間と、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数とのうち少なくとも1つを、時分割で変更する。
【0028】
第1周波数、第2周波数、および、周波数掃引時間のうち少なくとも1つを変更することで、周波数掃引速度を変更することができる。第1周波数または第2周波数を変更することで、周波数掃引幅を変更することができる。第1周波数および第2周波数が同じ場合、周波数掃引時間が短いほど周波数掃引速度は速くなる。また、周波数掃引時間が同じ場合、周波数掃引幅が大きいほど周波数掃引速度は速くなる。周波数掃引速度を上げると、対象物体Tが移動する場合であっても、取得できる三次元画像の画質の低下を抑制することができる。しかしながら、周波数掃引幅を大きくして周波数掃引速度を上げた場合、受信機4の出力が広帯域となる。この場合、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を削減することで、アナログデジタル変換器7の帯域幅を削減することができるが、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を削減すると、角度分解能が低下する。また、周波数掃引時間を短くすることで周波数掃引速度を上げた場合、距離分解能が低下する。このため、第1周波数と、第2周波数と、周波数掃引時間と、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数とのうち少なくとも1つを、時分割で変更することによって、距離分解能と角度分解能とが異なる複数の三次元画像を得ることができ、これらを合わせて物体検知することで、対象物体Tが移動する場合であっても、検知精度の低下を抑制することができる。
【0029】
実施の形態1では、送信電波W1の波形の例として図2に示す波形と、図3に示す波形とを示している。このため、図2に示す波形の送信電波W1を用いる場合には、送信部101が周波数掃引時間を時分割で変更し、受信部102が、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を時分割で変更することになる。また、図3に示す波形の送信電波W1を用いる場合には、送信部101が第1周波数および第2周波数を時分割で変更し、受信部102が、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を時分割で変更することになる。しかしながら、これらは一例であり、物体透視装置100は、第1周波数、第2周波数、周波数掃引時間、および、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子のうち、少なくとも1つのパラメータを時分割で変更すればよい。また、実施の形態1では、1回の周波数掃引毎に、毎回、上記のパラメータを変更しているが、周波数掃引毎に毎回変更しなくても、周波数掃引を単位としてパラメータを変更すればよく、複数回の周波数掃引毎に、パラメータを変更してもよい。
【0030】
また、物体透視装置100において、受信部102は、複数のアレーアンテナ素子を有し、アレーアンテナ素子毎の複数のアナログ信号に対して、パラレルシリアル変換を行って、1つのアナログデジタル変換器7でデジタル信号に変換する。これにより、アナログデジタル変換器7の数を削減することができ、物体透視装置100のコストを低減することが可能になる。
【0031】
また、物体透視装置100は、パラレルシリアル変換の変換パターンを変更することで、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を制限することができる。これにより、物体検知の角度分解能を変更することが可能になる。
【0032】
また、物体透視装置100は、パラレルシリアル変換の変換パターンを、周波数掃引と同期したタイミングで時分割で変更することで、使用するアレーアンテナ素子の数を変更することができる。これにより、物体検知の角度分解能を、三次元画像毎に変更することが可能になる。
【0033】
また、物体検知部9は、ニューラルネットワークにより物体を検知することができる。
【0034】
また、物体透視装置100は、第1周波数と第2周波数との間の差が大きいほど、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を少なくすることができる。これにより、周波数掃引幅が大きく、受信機4の出力が広帯域となる場合であっても、物体の検知に使用するアレーアンテナ素子の数を少なくすることで、アナログデジタル変換器7の帯域幅を削減することができる。
【0035】
なお、物体透視装置100の各部は、処理回路を用いて実現することができる。処理回路は、専用のハードウェアにより実現されてもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いた制御回路であってもよい。
【0036】
上記の処理回路が、専用のハードウェアにより実現される場合、処理回路は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものである。
【0037】
上記の処理回路が、CPUを用いた制御回路で実現される場合、この制御回路は例えばプロセッサとメモリとを備える。プロセッサは、CPUであり、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)などとも呼ばれる。メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disk)などである。
【0038】
上記の処理回路が制御回路により実現される場合、プロセッサがメモリに記憶された、各構成要素の処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより実現される。また、メモリは、プロセッサが実行する各処理における一時メモリとしても使用される。
【0039】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 送信機、2 送信アンテナ、3 受信アンテナ、4 受信機、5 アナログパラレルシリアル変換部、7 アナログデジタル変換器、8 三次元画像生成部、9 物体検知部、10 発振器、11,42 N逓倍器、12 送信アンプ、41 受信アンプ、44 周波数ミキサ、45 LPF、46 サンプルアンドホールド、51 アナログスイッチ、100 物体透視装置、101 送信部、102 受信部、T 対象物体、W1 送信電波、W2 受信電波。
図1
図2
図3
図4
図5
図6