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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】神経機能調節用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20250303BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20250303BHJP
   A61K 31/25 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L33/10
A61K31/25
A61K31/7048
A61K31/352
A61K36/899
A61P9/10
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/20
A61P25/24
A61P25/28
A61P43/00 105
A61P43/00 111
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022501978
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006166
(87)【国際公開番号】W WO2021167012
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020025496
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000111133
【氏名又は名称】ニッポー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】礒田 博子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一憲
(72)【発明者】
【氏名】新井 義信
(72)【発明者】
【氏名】内田 晴久
(72)【発明者】
【氏名】岩田 健吾
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/040989(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/014159(WO,A1)
【文献】特表2015-528448(JP,A)
【文献】特表2005-518381(JP,A)
【文献】特表2016-531909(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108904488(CN,A)
【文献】国際公開第2018/199109(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110507645(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1766233(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第109198628(CN,A)
【文献】国際公開第2018/207791(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/207790(WO,A1)
【文献】特開2018-039797(JP,A)
【文献】前田 剛希他,サトウキビ梢頭部の抗酸化能および抗酸化成分の同定,沖縄県農業研究センター研究報告,2010年,第4号,p.52-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンを含む、食品素材又は医薬品素材の製造方法:
サトウキビ梢頭部(葉、及び樹皮から選択されるいずれかを含んでもよい。)から、水系溶媒を用い、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンを含む画分を得る工程。
【請求項2】
水系溶媒が、25~40%エタノールであり、画分を得る工程が、サトウキビ梢頭部(葉、及び樹皮から選択されるいずれかを含んでもよい。)から、水系溶媒を用い、100bar以上の加圧下で抽出を行うことを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
食品素材又は医薬品素材が、神経機能調節用である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
食品素材又は医薬品素材が、アミロイドβからの神経細胞の保護、脳内神経伝達物質の分泌の増加、神経細胞におけるATPの産生促進、神経幹細胞の増殖による神経新生促進、神経幹細胞の休眠状態から活性化状態への移行の誘導、神経幹細胞からのニューロンへの分化の誘導、及びアストロサイトの発達促進からなる群より選択されるいずれかのためのものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
食品素材又は医薬品素材が、老人性認知症、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、外傷後認知症、脳腫瘍により生じる認知症、慢性硬膜下血腫により生じる認知症、正常圧脳水腫により生じる認知症、髄膜炎後認知症、及びパーキンソン型認知症を含む、認知症の処置;軽度認知障害(MCI)、及び老化による認知機能の低下を含む、非認知症性の認知障害の処置;学習障害の改善、記憶障害の改善;学習能力の向上、記憶能力の向上;記憶低下の処置;脳梗塞、及び末梢神経傷害の処置;注意欠陥多動性障害(ADHD)、うつ病、及び双極性障害を含む、精神疾患の処置;やる気・モチベーションの向上;及び概日リズムの乱れ;睡眠の質の改善、ノンレム睡眠の促進、又は睡眠リズムの改善のいずれかである睡眠改善;不眠症を含む睡眠障害の処置;及び加齢又はアルツハイマー病における記憶低下、又はうつ病の処置の改善からなる群から選択されるいずれかのためのものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
イソオリエンチン、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、及び3-o-フェルロイルキナ酸を含む、神経機能調節用の、食品組成物又は 医薬組成物。
【請求項7】
イソオリエンチン、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、及び3-o-フェルロイルキナ酸が、サトウキビ梢頭部(葉、及び樹皮から選択されるいずれかを含んでもよい。)抽出物として含まれる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
アミロイドβからの神経細胞の保護、脳内神経伝達物質の分泌の増加、神経細胞におけるATPの産生促進、神経幹細胞の増殖による神経新生促進神経幹細胞の休眠状態から活性化状態への移行の誘導、神経幹細胞からのニューロンへの分化の誘導、及びアストロサイトの発達促進からなる群より選択されるいずれかのための、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
老人性認知症、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、外傷後認知症、脳腫瘍により生じる認知症、慢性硬膜下血腫により生じる認知症、正常圧脳水腫により生じる認知症、髄膜炎後認知症、及びパーキンソン型認知症を含む、認知症の処置;軽度認知障害(MCI)、及び老化による認知機能の低下を含む、非認知症性の認知障害の処置;学習障害の改善、記憶障害の改善;学習能力の向上、記憶能力の向上;記憶低下の処置;脳梗塞、及び末梢神経傷害の処置;注意欠陥多動性障害(ADHD)、うつ病、及び双極性障害を含む、精神疾患の処置;やる気・モチベーションの向上概日リズムの乱れの改善;睡眠の質の改善、ノンレム睡眠の促進、又は睡眠リズムの改善のいずれかである睡眠改善;不眠症を含む睡眠障害の処置;及び加齢又はアルツハイマー病における記憶低下、又はうつ病の処置からなる群から選択されるいずれかのための、請求項6又は7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、及び3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチン(ルテオリン-6-C-グルコシド)からなる群より選択されるいずれかを含む、食品又は医薬品として有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノール類は自然界に広く存在する天然化合物であり、様々な生理活性機能を有することが知られている。中でもコーヒー豆やジャガイモ等に含まれるクロロゲン酸は、これまでに抗酸化作用、血糖値上昇抑制作用、抗肥満作用等の生理活性を示すことが報告されている。また近年、クロロゲン酸による神経機能への効果が研究されており、自律神経機能向上、大脳疲労回復、認知機能向上効果が報告されている(特許文献1~4)。
【0003】
サトウキビにはクロロゲン酸等のポリフェノール類が含まれることが知られている。サトウキビは、ショ糖含量の多い茎を製糖原料として用い、梢頭部(第5葉肥厚帯より上部の穂先部分を指す。)は収穫の際に取り除かれ、多くは牛の飼料として用いられているにすぎないが、穂抽出物中にサトウキビポリフェノールが高濃度に存在することを見出したことに基づき、サトウキビ穂からサトウキビポリフェノール含有物を製造するための方法が提案されている(特許文献5)。また、サトウキビ梢頭部の抗酸化成分が、クロロゲン酸(5-o-カフェオイルキナ酸)及びネオクロロゲン酸(3-o-カフェオイルキナ酸)であると同定された(非特許文献1)。またサトウキビ梢頭部を黒糖原料に加えることで、ポリフェノールが豊富な黒糖を製造することが提案されている(非特許文献2)。また、イソオリエンチンは、雑穀やルイボス茶(Aspalathus linearisの葉の抽出物)に含まれることが知られているが、最近、経口投与によりマウスのスコポラミン誘発性認知障害を改善したことが報告されている(非特許文献3)。
【0004】
一方、認知症は、患者数が世界規模で見て増加傾向にあり、日本においても高齢化の進展により認知症及びその予備軍の患者数は年々増加している。認知症をはじめとする生活習慣病の治療又は改善策では、化学合成医薬剤による対処療法が用いられることが一般的となっている。しかしながらこれらの医薬剤を用いた内科的治療は患者にとって負担となる服用量の大きさや不快感、さらにはそれに伴う副作用の調節が課題となっており、副作用が少なく、また日常的な生活の中での摂取に適した安全性の高い天然物由来の機能性食品や予防医薬剤の開発が期待されている。この点、本発明者らは、2以上のカフェ酸とエステル結合した構造を有するカフェオイルキナ酸(ジ-o-カフェオイルキナ酸など)を少なくとも有するアルツハイマー型認知症の予防又は治療のための剤を提案してきた(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-137803号公報
【文献】特開2002-145765号公報
【文献】特開2006-160721号公報
【文献】特開2018-039797号公報
【文献】特開2002-161046号公報(特許第3793779号)
【文献】国際公開WO2007/091613
【非特許文献】
【0006】
【文献】沖縄県農業研究センター研究報告4:52-57, 2010
【文献】沖縄県農業研究センター研究報告12:14-20, 2018
【文献】Arch. Pharm. Res. 42:722-31, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、食資源の機能解析と有効利用に関して研究してきた。本発明は、天然物に由来し、神経機能調節に役立つ、新規な素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を提供する。
[1] 以下の工程を含む、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、食品素材又は医薬品素材の製造方法:
サトウキビ梢頭部から、水系溶媒を用い、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンからなる群より選択される少なくとも一種を含む画分を得る工程。
[2] 少なくともイソオリエンチンを含む、食品素材又は医薬品素材の製造方法である、1に記載の製造方法。
[3] 水系溶媒が、10~90%エタノール、好ましくは25~40%エタノールである、1又は2に記載の製造方法。
[4] 食品素材又は医薬品素材が、神経機能調節用である、1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
[5] 食品素材又は医薬品素材が、アミロイドβからの神経細胞の保護、脳内神経伝達物質の分泌の増加、神経細胞におけるATPの産生促進、神経幹細胞の増殖による神経新生促進、神経幹細胞の休眠状態から活性化状態への移行の誘導、神経幹細胞からのニューロンへの分化の誘導、及びアストロサイトの発達促進からなる群より選択されるいずれかのためのものである、1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
[6] 食品素材又は医薬品素材が、老人性認知症、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、外傷後認知症、脳腫瘍により生じる認知症、慢性硬膜下血腫により生じる認知症、正常圧脳水腫により生じる認知症、髄膜炎後認知症、及びパーキンソン型認知症を含む、認知症の処置;軽度認知障害(MCI)、及び老化による認知機能の低下を含む、非認知症性の認知障害の処置;学習障害の改善、記憶障害の改善;記憶低下の処置;脳梗塞、及び末梢神経傷害の処置;学習能力の向上、記憶能力の向上;注意欠陥多動性障害(ADHD)、うつ病、及び双極性障害を含む、精神疾患の処置;やる気・モチベーションの向上、及び概日リズムの乱れの改善からなる群から選択されるいずれかのためのものである、1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
[7] ルテオリン及びその配糖体のいずれかを含む、神経機能調節用の、食品組成物又は医薬組成物。
[8] さらに下式で表されるクロロゲン酸類のいずれかを含む、7に記載の組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、H、カフェオイル基、又はフェルロイル基である。)
[9] イソオリエンチン、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、及び3-o-フェルロイルキナ酸を含む、8に記載の組成物。
[10] ルテオリン及びその配糖体のいずれか、並びにクロロゲン酸類のいずれかが、サトウキビ梢頭部抽出物として含まれる、7~9のいずれか1項に記載の組成物。
[11]アミロイドβからの神経細胞の保護、脳内神経伝達物質の分泌の増加、神経細胞におけるATPの産生促進、神経幹細胞の増殖による神経新生促進、神経幹細胞の休眠状態から活性化状態への移行の誘導、神経幹細胞からのニューロンへの分化の誘導、及びアストロサイトの発達促進からなる群より選択されるいずれかのための、7~10のいずれか1項に記載の組成物。
[12]老人性認知症、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、外傷後認知症、脳腫瘍により生じる認知症、慢性硬膜下血腫により生じる認知症、正常圧脳水腫により生じる認知症、髄膜炎後認知症、及びパーキンソン型認知症を含む、認知症の処置;軽度認知障害(MCI)、及び老化による認知機能の低下を含む、非認知症性の認知障害の処置;学習障害の改善、記憶障害の改善;学習能力の向上、記憶能力の向上;記憶低下の処置;脳梗塞、及び末梢神経傷害の処置;注意欠陥多動性障害(ADHD)、うつ病、及び双極性障害を含む、精神疾患の処置;やる気・モチベーションの向上、及び概日リズムの乱れの改善からなる群から選択されるいずれかのための、7~10のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、天然物から、神経機能調節作用のある成分を含む、食品又は医薬品素材が製造できる。
【0012】
本発明により得られる、食品素材、医薬品素材、それらを用いた食品組成物又は医薬組成物により、神経機能を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】サトウキビ梢頭部抽出物の成分分析。HPLCによる成分分析の結果、4本のメインピークが確認され、またそれぞれのピークは、(1) 3-o-カフェオイルキナ酸と、(2) 5-o-カフェオイルキナ酸と、(3) 3-o-フェルロイルキナ酸と、(4) イソオリエンチン (ルテオリン-6-C-グルコシド)と、に由来していた。
図2】サトウキビ梢頭部抽出物のアミロイドβにより誘導される神経細胞死に及ぼす影響。サトウキビ梢頭部抽出物による神経保護作用を評価する為に、ヒト神経モデル細胞SH-SY5Y、及び神経毒素であるアミロイドβ (Aβ)を用いた実験を行った。アミロイドβ処理群は対照群と比較し、細胞生存率が約40%減少したのに対して、アミロイドβ+サトウキビ梢頭部抽出物同時処理群は、アミロイドβ単独処理群と比較し細胞生存率の濃度依存的な有意な増加が確認された。
図3】サトウキビ梢頭部抽出物に含まれる4種類の化合物の細胞レベルでの評価。SH-SY5Y細胞を用いた細胞生存率測定試験、及びATP産生試験を行った。各化合物の濃度は、梢頭部抽出物 50μg/mLに含まれている濃度とした(3-CQA: 0.50 μM、5-CQA: 0.70 μM、3-FQA: 0.85 μM、イソオリエンチン: 0.477 μM)。Aβ単独処理に対し、各化合物とAβの同時処理では細胞生存率の増加傾向がみられた(上)。また、各化合物の処理によって細胞内ATP産生の増加傾向が確認された(下)。3-CQA: 3-o -Caffeoylquinic acid、5-CQA: 5-o -Caffeoylquinic acid、3-FQA: 3-o -Feruloylquinic acid、ISO: Isoorientin (以下の図において同じ。)
図4】梢頭部抽出液による神経保護作用のメカニズム解析。アミロイドβの処理により、SH-SY5Y細胞におけるMAP2K4、MAPK14、MAPK8、PI3KCA、AKT1、PARP1の有意な遺伝子発現減少が認められ、またサトウキビ梢頭部抽出物処理により、上記遺伝子の有意な発現増加が認められた。さらにアポトーシス(細胞死)に関連している遺伝子であるCASP3(Caspase-3)においては、アミロイドβ処理によってSH-SY5Y細胞における遺伝子発現の有意な増加が認められ、サトウキビ梢頭部抽出物処理により発現減少することが認められた。
図5】モリス水迷路試験による空間学習記憶能力の評価。サトウキビ梢頭部抽出物投与群において、実験開始5日目よりSAMP8水投与群と比較しプラットフォームまでの到達時間の有意な短縮が認められた(上)。またプローブテストの結果、サトウキビ梢頭部抽出物投与群において、水投与群と比較し、プラットフォーム設置場所を横切った回数の有意な増加が認められ(中)、またプラットフォーム設置エリアでの滞在時間は増加傾向を示した(下)。
図6】マイクロアレイによる網羅的な遺伝子解析の結果、発現変化が認められた、脳機能に関連する遺伝子群。
図7】マイクロアレイによる網羅的な遺伝子解析の結果、想定されるパスウェイ。
図8】脳内神経伝達物質濃度のELISA法による解析。SAMP8 + サトウキビ梢頭部抽出物投与群では、SAMP8 + 水投与群と比較し、大脳皮質中のドーパミン及びノルアドレナリン量が有意に増加していた。また、アセチルコリン及びセロトニン量に関しては増加傾向を示した。
図9】サトウキビ梢頭部からの成分抽出効率。サトウキビ梢頭部の乾燥物1 gから、抽出溶媒としてそれぞれ20%、40%、60%、80%の異なる濃度のエタノールを用いた成分抽出を行った。定量分析の結果、抽出物100重量部あたり各ポリフェノール成分の含有量は、40%エタノールを溶媒として用い抽出された試料中において最も高かった。
図10】サトウキビ梢頭部抽出物による神経細胞に対する生理活性の比較。上述の方法で得られた各試料を、70%エタノールに再溶解し、ヒト神経モデルSH-SY5Y細胞を用いた細胞生存率測定試験に使用した。アミロイドβ(Aβ)+サトウキビ梢頭部抽出物処理群は、Aβ単独処理群と比較し細胞生存率の濃度依存的な有意な増加が確認された。また、細胞生存率は、Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物(溶媒40%エタノール)処理群において最も高かった。
図11】サトウキビ梢頭部抽出物に含まれる4種類の化合物の神経細胞の生存率に及ぼす影響。n3-CQA、5-CQA、3-FQA及びISOを70%エタノールに溶解させたものを、SH-SY5Y細胞を用いた細胞生存率測定試験に使用した。3-CQA、5-CQA及びISOは、濃度依存的にSH-SY5Y細胞の生存率が有意な増加を示した。
図12】サトウキビ梢頭部抽出物に含まれる4種類の化合物の神経細胞のATP産生に及ぼす影響。上述の4種の化合物を使用し、SH-SY5Y細胞を用いたATP産生試験を行った。3-CQA、5-CQA及びISOにより、SH-SY5Y細胞におけるATP産生割合が有意な増加を示した。
図13】サトウキビ梢頭部抽出物等の解糖系酵素の遺伝子発現に及ぼす影響。サトウキビ梢頭部抽出物或いはサトウキビ梢頭部抽出物に含まれる4種の化合物が、解糖系の化学反応を触媒する酵素(PGK1、PGAM1、PKM、PC)の遺伝子発現に及ぼす影響を評価する為、SH-SY5Y細胞における遺伝子発現解析を実施した。内部標準としてACTBを使用した。サトウキビ梢頭部抽出物或いは各化合物標準品の24時間の処理により、PGK1、PGAM1、PKM、PCの発現は対照群と比較し有意に上昇した。
図14】解糖系酵素の遺伝子発現解析の結果から示唆される神経細胞内のATP産生を促進のメカニズム。
図15】ヒト胎児由来の神経幹細胞(hNSC)の写真。hNSCは、神経幹細胞増殖用の培地中で、フラスコ底面に接着することなく浮遊し、球状の細胞塊 (ニューロスフェア)を形成しながら増殖する。
図16】ニューロスフェアにおける、NES (幹細胞のマーカー)の遺伝子発現解析。サトウキビ梢頭部抽出物を使用し、ヒト胎児由来の神経幹細胞における、ニューロン(神経細胞)のマーカーであるTUBB3と、アストロサイト又はtransit amplifying(TA)細胞 (幹細胞と分化細胞の中間に位置する有限増殖細胞)のマーカーであるGFAPと、オリゴデンドロサイトのマーカーであるPDGFRAと、神経幹細胞のマーカーであるNESと、の発現解析を実施した。内部標準としてGAPDHを使用した。サトウキビ梢頭部試料による24時間の処理により、TUBB3及びGFAPの処理濃度依存的な遺伝子発現の増加が認められた。また、PDGFRA及びNESの処理濃度依存的な遺伝子発現減少が認められた。
図17】免疫染色法を用いた、BrdU及びHuC/D (神経前駆細胞のマーカー)陽性細胞の定量解析、及び神経幹細胞の活性化制御因子であるASCL1及びHES1の遺伝子発現解析。A. 蛍光解析のイメージ図、B. 神経前駆細胞の割合、C. 新生した細胞の割合、D. 新生した神経前駆細胞の割合E. ASCL1及びHES1の遺伝子発現量。
図18】サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCの分化に及ぼす影響。サトウキビ梢頭部抽出液処理により、アストロサイト (GFAP陽性細胞)の割合は変化しなかったが、ニューロン (Tuj1陽性細胞)の割合は処理濃度依存的な増加を示した。また、サトウキビ梢頭部抽出物処理下における、アストロサイト (GFAP陽性細胞)の突起全長の伸長が観察された。
図19】免疫染色法によるマウス脳内の新生ニューロンの定量結果。サトウキビ梢頭部抽出物投与群において、SAMP8 + 水投与群と比較し神経ニューロン数 (BrdU及びDCX両陽性細胞)の増加 (約1.6倍)が認められた。
図20】サトウキビ梢頭部抽出物および化合物による神経細胞におけるNTRK2発現量の比較。サトウキビ梢頭部抽出物および化合物混合物処理群において、対照群および化合物単体処理群と比較し、SH-SY5Y細胞におけるNTRK2の発現は有意に上昇した。またサトウキビ梢頭部抽出物処理群および化合物混合物処理群は陽性対照として用いたイチョウ葉エキス処理群と比較しても、NTRK2発現の大きな上昇を示した。
図21】異なる濃度の有機溶媒を用いることによる成分抽出効率の検討。30~50%エタノールを抽出溶媒として用い、化学分析により成分抽出効率を検討した。HPLCを用いた定量分析の結果、抽出物100重量部あたりのポリフェノール成分の含有量は、30%エタノールを用いて抽出された試料中において最も高かった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下の工程を含む、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンからなる群より選択される少なくとも一種を、機能性成分として含む、食品素材又は医薬品素材の製造方法に関する。
サトウキビ梢頭部から、水系溶媒を用い、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンからなる群より選択される少なくとも一種を含む画分を得る工程。
本発明はまた、ルテオリン及びその配糖体のいずれか、並びに以下で説明するクロロゲン酸類のいずれかを、有効成分として含む、食品組成物又は医薬組成物に関する。
【0015】
[機能性成分、有効成分]
本発明に関連する、食品素材又は医薬品素材、あるいは食品組成物又は医薬組成物(以下、本発明に関連する、食品素材、医薬品素材、食品組成物、及び医薬組成物をまとめて、「本発明の組成物等」ということがある。)は、機能性成分又は有効成分として、クロロゲン酸類を含む。
【0016】
<クロロゲン酸類>
本発明に関し、クロロゲン酸類とは、下式で表される化合物をいう。
【0017】
【化2】
【0018】
式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、H、カフェオイル基、又はフェルロイル基である。
【0019】
クロロゲン酸類の例には、3-o-カフェオイルキナ酸、4-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、4-o-フェルロイルキナ酸、5-o-フェルロイルキナ酸、3,4-ジ-o-カフェオイルキナ酸、3,5-ジ-o-カフェオイルキナ酸、及び4,5-ジ-o-カフェオイルキナ酸が含まれる。
【0020】
好ましい態様の一つにおいては、本発明の本発明の組成物等は、クロロゲン酸類として、3-o-カフェオイルキナ酸(R1=カフェオイル基、R2=R3=H)、5-o-カフェオイルキナ酸(R3=カフェオイル基、R1=R2=H)、及び3-o-フェルロイルキナ酸(R1=フェイル基、R2=R3=H)からなる群より選択されるいずれかを含む。
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
本発明の組成物等には、クロロゲン酸類として、上記の3つの化合物からなる群より選択される少なくとも1つが含まれることが好ましく、該群より選択される少なくとも2つが含まれることがより好ましく、3つすべてが含まれることがさらに好ましい。
【0025】
<ルテオリン又はその配糖体>
本発明の組成物等は、機能性成分又は有効成分として、ルテオリン又はその配糖体を含む。ルテオリンの配糖体とは、ルテオリン(3’,4’,5,7-テトラヒドロキシフラボン)に糖がグリコシド結合した化合物をいう。糖の例として、グルコース、ガラクトース、フルクトース、グルクロン酸、ラムノース、キシロース、アラビノース、アピオース、ルチノース、ゲンチオビオース、プリメベロース、ジキトキソースが挙げられる。ルテオリンの配糖体の例には、ルテオリン4’-o-グルコシド、ルテオリン4'-o-グルクロニド、ルテオリン5-グルクロニド、ルテオリン5-グルコシド、ルテオリン5-ルチノシド、ルテオリン5-o-グルクロニド、ルテオリン6-グルコシド(イソオリエンチン)、ルテオリン6-c-β-d-グルコピラノシド8-c-α-l-アラビノピラノシド、ルテオリン6-c-アラビノシド、ルテオリン7-(2-o-アピオシルグルコシド)、ルテオリン7-(2-o-グルクロノシル)グルクロニド、ルテオリン7-(2-スルホグルコシド)、ルテオリン7-o-グルコシド、ルテオリン7-o-ガラクトシド、ルテオリン7-o-グルクロニド、ルテオリン7,4’-ジ-o-グルクロニド、ルテオリン7-[6-o-(2-メチルブチリル)-β-グルコシド]、ルテオリン7-o-[2-o-(4-o-アセチル-α-ラムノピラノシル)-β-グルクロノピラノシド]、ルテオリン8-グルコシド(オリエンチン)が含まれる。
【0026】
好ましい態様の一つにおいては、本発明の組成物等は、ルテオリン又はその配糖体として、下式で表される化合物を含む。
【0027】
【化6】
【0028】
式中、R4、及びR5は、それぞれ独立に、H、又は糖残基である。
【0029】
特に好ましい態様の一つにおいては、本発明の組成物等には、ルテオリン又はその配糖体として、イソオリエンチン(R4=H、R5=グルコース残基)、及びオリエンチン(R4=グルコース残基、R5=H)からなる群より選択されるいずれかが含まれる。
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【0032】
本発明の組成物等には、ルテオリン類として、上記の2つの化合物からなる群より選択される少なくとも1つが含まれ、イソオリエンチンが含まれることがより好ましい。
【0033】
<サトウキビ梢頭部に含まれる4種類の化合物>
特に好ましい態様の一つにおいては、本発明の組成物等には、クロロゲン酸類として、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、及び3-o-フェルロイルキナ酸が含まれ、かつルテオリンの配糖体である、イソオリエンチンが含まれる。このような4種の成分をすべて含む組成物等は、サトウキビ梢頭部抽出物自体、又はそれを有効成分とする組成物であってもよい。本願は、サトウキビ梢頭部に、これらの4種類の化合物が含まれることを初めて報告するものである。
【0034】
本発明者らの検討によると、適切な条件で抽出を行った場合、サトウキビ梢頭部の乾燥物(葉、及び樹皮を含む。)1gから、目的の4種類の化合物を含む抽出物を、乾燥重量で100mg~170mg、より特定すると130mg~140mg、得ることができる。
【0035】
本発明により提供されるサトウキビ梢頭部抽出物に含まれる3-o-カフェオイルキナ酸の量は、抽出物100g(乾燥重量)あたり、他の成分の含量にかかわらず、0.20mg以上であり得る。抽出条件を至適にすることにより、他の成分の含量にかかわらず、0.30mg以上、0.35mg以上、又は0.40mg以上とすることができる。
【0036】
本発明により提供されるサトウキビ梢頭部抽出物に含まれる5-o-カフェオイルキナ酸の量は、抽出物100g(乾燥重量)あたり、他の成分の含量にかかわらず、1.0mg以上であり得る。抽出条件を至適にすることにより、他の成分の含量にかかわらず、1.5mg以上、2.0mg以上、又は2.5mg以上とすることができる。
【0037】
本発明により提供されるサトウキビ梢頭部抽出物に含まれる3-o-フェルロイルキナ酸の量は、抽出物100g(乾燥重量)あたり、他の成分の含量にかかわらず、0.10mg以上であり得る。抽出条件を至適にすることにより、他の成分の含量にかかわらず、0.13mg以上、0.16mg以上、又は0.20mg以上とすることができる。
【0038】
本発明により提供されるサトウキビ梢頭部抽出物に含まれるイソオリエンチンの量は、抽出物100g(乾燥重量)あたり、他の成分の含量にかかわらず、0.80mg以上であり得る。抽出条件を至適にすることにより、他の成分の含量にかかわらず、1.0mg以上、1.2mg以上、又は1.4mg以上とすることができる。
【0039】
好ましい態様の一つにおいては、サトウキビ梢頭部抽出物100g(乾燥重量)に含まれる3-o-カフェオイルキナ酸は、0.40mg以上0.60mg以下であり、5-o-カフェオイルキナ酸は、2.5mg以上3.5mg以下であり、3-o-フェルロイルキナ酸は、0.20mg以上0.30mg以下であり、イソオリエンチンは、1.4mg以上1.8mg以下である。
【0040】
好ましい態様の一つにおいては、サトウキビ梢頭部には、2.1~2.6mg/g(乾燥重量)のイソオリエンチンが含まれ得る。なお、イソオリエンチンはルイボス茶にも含まれることが知られている。乾燥グリーンルイボス茶葉10gからの熱水500mlによる抽出物には、26mgのイソオリエンチンが含まれることが報告されている(Food Chemistry 128:338-347, 2011)。
【0041】
<相乗的効果>
特に好ましい態様の一つにおいては、本発明の組成物等は、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンの4種類の化合物を有効成分含むか、又はサトウキビ梢頭部抽出物を有効成分として含む。本発明者らの検討によると、3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸の単体での処理は、実験した濃度においてはNTRK2発現の変化を示さない一方で、これらとイソオリエンチンの混合物、及びこれら4種類の化合物をすべて含むサトウキビ梢頭部抽出物は、相乗的に神経細胞におけるNTRK2発現を上昇しうる。TrkB (Neurotrophic tyrosine kinase receptor type 2, NTRK2)は中枢及び末梢神経システムの発達と成熟に関わり、BDNF (脳由来栄養因子)等の生体内因子により活性化されることで、神経細胞の成長や生存、シナプスの発達、海馬における神経新生に関わるシグナル経路を活性化することが報告されている。
【0042】
本発明の組成物等が4種類の化合物を含む場合、それらの割合は目的の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、3-o-カフェオイルキナ酸:5-o-カフェオイルキナ酸:3-o-フェルロイルキナ酸:イソオリエンチンは、モル比で、1 : 0.10~10 : 0.15~15 : 0.080~8.0とすることができ、1 : 0.30~3.0 : 0.40~4.0 : 0.20~2.0とすることができ、1: 0.60~1.5 : 0.80~2.0 : 0.40~1.0とすることができる。
【0043】
[サトウキビ梢頭部抽出物、その製造方法等]
本発明に関し、サトウキビ梢頭部とは、サトウキビ(学名:Saccharum officinarum L.)の第5葉肥厚帯より上部の穂先部分をいう。
【0044】
本発明の組成物等の製造のために用いるサトウキビ梢頭部は、サトウキビの梢頭部の全体であってもよく、葉と樹皮を含んだ部分であってもよく、葉や樹皮を除いた部分であってもよい。サトウキビ梢頭部は、生の状態でもよく、乾燥させてもよい。乾燥は、冷風乾燥、天日乾燥により行うことができる。サトウキビ梢頭部は、抽出効率を高めるために、切断、細断、粉砕してもよい。
【0045】
サトウキビ梢頭部からの抽出のための手段は、特に限定されず、液体の抽出溶媒を用いて抽出を行ってもよく、超臨界流体又は亜臨界流体を用いて超臨界抽出又は亜臨界抽出を行ってもよい。
【0046】
抽出溶媒として、ルテオリン又はその配糖体の抽出上有効な溶媒であって、かつクロロゲン酸類抽出上有効な溶媒であることが好ましい。このような溶媒の例は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、アセトン、酢酸エチル、及びメチルエチルケトン、並びにこれらのいずれかの混合物である。好ましい例は、水系溶媒であり、例として、水、又は水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンからなる群から選択されるいずれかとの混合物が挙げられる。
【0047】
好ましい態様の一つにおいては、水とエタノールとの混合溶媒が用いられる。エタノールの濃度は、5%以上とすることができ、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。また、エタノールの濃度は、95%以下とすることができ、90%以下とすることが好ましく、85%以下とすることがより好ましい。70%以下とすることもできる。エタノールの濃度は、60%以下とすることができ、50%以下とすることが好ましく、40%以下とすることがより好ましく、35%以下とすることがさらに好ましい。なお、本発明に関し、エタノールを含む抽出溶媒のエタノール濃度を示すときは、特に記載した場合を除き、容積に基づく値(v/v)であり、また特に示した場合を除き、エタノールは水と混合されている。
【0048】
抽出操作は室温で行ってもよいが、好ましくは還流冷却下で加熱すると、成分が効率よく速やかに抽出されうる。抽出温度は60℃以上とすることができ、70℃以上とすることが好ましく、80℃~100℃であることがより好ましい。加温下で行うと抽出物が効率よく、かつ純度よく得られる。
【0049】
また、抽出は加圧下で行ってもよく、5MPa(50bar)以上で行うことができ、7.5MPa(75bar)以上が好ましく、10MPa(100bar)以上としてもよい。この場合も、目的の成分を効率よく速やかに抽出するために、加温してもよい。温度は25℃以上とすることができ、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。
【0050】
原料と抽出溶媒との比、抽出時間、抽出操作の繰り返し回数は、抽出効率を勘案し、適宜とすることができる。
【0051】
超臨界抽出又は亜臨界抽出を行う場合、流体として、例えば、水、二酸化炭素、エチレン、プロピレン、エタン、プロパン、一酸化二窒素、クロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、キセノン、アンモニア、並びにメタノール及びエタノールなどの低級アルコールを使用することができる。安全性の面からは、水、エタノール、これらの混合物、又は二酸化炭素を用いることが好ましい。
【0052】
抽出の後、必要に応じ、不溶性の残渣を除去し、常法により濃縮し、噴霧乾燥、凍結乾燥等の手段により乾燥することができる。
【0053】
本発明で抽出物というときは、特に記載した場合を除き、原料から溶媒により抽出された抽出液、抽出液の濃縮物、乾燥物及び粗精製物を含む。
【0054】
[用途]
本発明の組成物等は、神経機能調節のために用いることができる。神経機能調節は、アミロイドβからの神経細胞の保護、抗酸化(環境ストレス刺激の抑制)、抗炎症(炎症状態の改善)、脳内神経伝達物質の分泌の増加、神経細胞におけるATPの産生促進、神経幹細胞の増殖による神経新生促進、認知症の処置、非認知症性の認知障害の改善、学習障害の改善、記憶障害の改善、 学習能力の向上、記憶能力の向上、精神疾患の処置、やる気・モチベーションの向上、及び概日リズムの乱れの改善を含む。
【0055】
本発明者らの検討によると、サトウキビ梢頭部抽出物は、ヒト神経芽腫に由来する細胞株であるSH-SY5Yにおいて、アミロイドβ処理による細胞生存率の低下を減少させることができた。
【0056】
したがって、本発明の組成物等は、アミロイドβからの神経保護作用が期待でき、アミロイドβにより増悪される疾患又は状態の処置のために有用である。アミロイドβ (Aβ)は、40~42アミノ酸からなるペプチドであり、神経細胞に対して毒性を持ち、細胞死を引き起こす。アルツハイマー病ではAβが凝集して不溶性の線維形成がなされてアミロイドとなり脳に沈着する。アミロイドβにより増悪される疾患又は状態には、アルツハイマー病が含まれる。
【0057】
また本発明者らの検討によると、アミロイドβの処理により、SH-SY5Y細胞におけるMAP2K4(Mitogen activated protein kinase 4)、MAPK14(Mitogen-activated protein kinase 14)、MAPK8(Mitogen-Activated Protein Kinase 8)、PI3KCA(Phosphatidylinositol-4,5-Bisphosphate 3-Kinase Catalytic Subunit Alpha)、AKT1(AKT Serine / Threonine Kinase 1)、PARP1(Poly(ADP-Ribose) Polymerase 1)の有意な遺伝子発現減少が認められるが、サトウキビ梢頭部抽出物処理により、これらの遺伝子の有意な発現増加が認められた。さらにアポトーシス(細胞死)に関連している遺伝子であるCASP3(Caspase-3)においては、アミロイドβ処理によってSH-SY5Y細胞における遺伝子発現の有意な増加が認められ、サトウキビ梢頭部抽出物処理により発現減少することが認められた。
【0058】
上記の遺伝子群は細胞に対するストレス刺激に応答し、細胞増殖、成長、分化、形質転換及びアポトーシスなどの多種多様な細胞プロセスを調節している。アミロイドβ誘導性のこれら遺伝子群の発現変動を改善したことから、本実験で用いた抽出物は神経細胞において、酸化ストレスをはじめとした環境ストレス刺激の抑制(抗酸化等)や、それに伴う炎症状態(神経炎症等)の改善(抗炎症)に有用であり得る。
【0059】
また本発明者らの検討によると、老化モデルマウス(SAMP8)を用いたモリス水迷路試験の結果、サトウキビ梢頭部抽出物投与群において、実験開始5日目よりSAMP8水投与群と比較しプラットフォームまでの到達時間の有意な短縮が認められた。またプローブテストの結果、サトウキビ梢頭部抽出物投与群において、水投与群と比較し、プラットフォーム設置場所を横切った回数の有意な増加が認められ、またプラットフォーム設置エリアでの滞在時間は増加傾向を示した。
【0060】
このような老化モデルマウスを用いた行動試験の結果から、本発明の組成物等は認知機能低下に対する改善作用を有し、例えば、認知症(老人性認知症、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、外傷後認知症、脳腫瘍により生じる認知症、慢性硬膜下血腫により生じる認知症、正常圧脳水腫により生じる認知症、髄膜炎後認知症、及びパーキンソン型認知症などの種々の疾患により生じる認知症等を含む。)の処置のために有用であり得る。また、本発明の組成物等は、軽度認知障害(MCI)、及び老化による認知機能の低下等、非認知症性の認知障害の処置のために有用であり得る。さらに本発明の組成物等は、学習又は記憶障害(脳発達障害に伴う学習及び記憶障害)の改善、学習能力の向上、及び記憶能力の向上のために有用であり得る。
【0061】
また本発明者らの検討によると、SAMP8のサトウキビ梢頭部抽出物投与群では、SAMP8水投与群と比較し、大脳皮質中のドーパミン及びノルアドレナリン量が有意に増加していた。また、アセチルコリン及びセロトニン量に関しては増加傾向を示した。
【0062】
したがって、サトウキビ梢頭部抽出物を含む本発明の組成物は、脳内の伝達物質の分泌量の増加により改善される疾患又は状態の処置のために有用であり得る。さらに、ドーパミン及びノルアドレナリン分泌量低下に対する改善効果が確認されたことから、注意欠陥多動性障害(Attention deficit hyperactivity disorder; ADHD)、うつ病、双極性障害(躁うつ病、等)を含む、精神疾患の処置のために有用であり得る。また、ドーパミン分泌量低下に対する改善効果が確認されたことから、やる気・モチベーションの向上にも有用であり得る。
【0063】
また本発明者らの検討によると、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析では、SAMP8のサトウキビ梢頭部抽出物投与群では、SAMP8水投与群と比較し、多数の遺伝子発現の変動が見られた。特に時計遺伝子(Per3)の発現上昇が確認されたことから、本発明の組成物等は、概日リズム(体内時計)の乱れの改善に有用であり得る。
【0064】
特に本発明者らの検討によると、SAMP8のサトウキビ梢頭部抽出物投与群では、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、アセチルコリン、セロトニンのいずれについても、正常マウス群を上回ることはなかったことから、本発明の組成物は、脳内伝達物質の分泌を必要以上に亢進することなく、安全に用いうるものであると期待できる。
【0065】
またノルアドレナリンは覚醒-睡眠に関する働きをすることが知られていることから、本発明の組成物は、睡眠改善(例えば睡眠の質の改善、ノンレム睡眠の促進、睡眠リズムの改善)、又は睡眠障害(例えば不眠症)の処置のためのものとしても、期待できる。
【0066】
また本発明者らの検討によると、サトウキビ梢頭部抽出物、並びに3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンは、SH-SY5Yにおいて、生存率を増加させた。またサトウキビ梢頭部抽出物、並びに3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、及びイソオリエンチンは、ATPの産生を促進することができた。またこのメカニズムは、解糖系に関与する酵素である、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK1)、ホスホグリセリン酸ムターゼ(PGAM1)、ピルビン酸キナーゼ(PKM)、及びピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)の遺伝子発現の上昇を介して細胞内の解糖系を活性化することによるものと示唆された。
【0067】
したがって、本発明の組成物等は、神経細胞においてATPの産生を促進するために用いることができ、また神経細胞でのATPの産生促進により改善される疾患又は状態の処置のために有用であり得る。さらにPGK1、PGAM1、PKM、及びPCからなる群より選択されるいずれかの遺伝子発現上昇により改善される疾患又は状態の処置のために有用であり得る。
【0068】
また本発明者らの検討によると、ヒト胎児由来の神経幹細胞hNSCに対しサトウキビ梢頭部抽出物で処理することにより、神経幹細胞におけるニューロンのマーカーであるTUBB3(Tubulin beta III/Tuj1)及びアストロサイト又はtransit amplifying(TA)細胞 (幹細胞と分化細胞の中間に位置する有限増殖細胞)のマーカーであるGFAP(Glial fibrillary acidic protein)の遺伝子発現の処理濃度依存的な増加が認められた。すなわち、サトウキビ梢頭部抽出物による、神経幹細胞の休眠状態から活性化状態への移行の誘導、神経幹細胞からのニューロン及びアストロサイト分化誘導効果が示唆された。また、チミジンアナログ5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(5-bromo-2'-deoxyuridine; BrdU)及び神経前駆細胞のマーカーであるHuC+HuD(HuC/D)を用いた細胞増殖判定試験の結果、サトウキビ梢頭部抽出物処理によりBrdU陽性細胞の割合は処理濃度依存的に増加した。すなわち、サトウキビ梢頭部抽出物による、神経幹細胞の増殖促進効果が示唆された。またHuC/D/BrdU両陽性細胞の割合は処理濃度依存的な増加を示した。この結果から、サトウキビ梢頭部抽出物による神経幹細胞のからの新生ニューロン生成の促進効果が示唆された。なお、HuCは、ELAV (embryonic lethal, abnormal vision, Drosophila)-like 3 (Hu antigen C; HuC)、HuDは、ELAV-like 4 (Hu antigen D; HuD)を指す。
【0069】
この新生ニューロンの生成を促進は、ASCL1及びHES1遺伝子発現を調節することに拠ると考えられる。ASCL1及びHES1は、細胞の発生・分化における運命決定を制御する塩基性helix-loop-helix (bHLH) 因子である。神経細胞の分化において、幹細胞性が維持されている状態 (≒休眠状態)においてはHES1の発現量は高く、またASCL1の発現量は低く保たれている。神経幹細胞が活性化状態となると、HES1の発現量が低下し、またASCL1の発現量が増加することで、神経幹細胞は神経細胞へ分化する。本発明者らの検討によると、サトウキビ梢頭部抽出物による処理により、hNSCでのASCL1の発現は増加を示し、またHES1の発現は処理濃度依存的に減少する。
【0070】
また本発明者らの検討によると、スフェアを形成したhNSCをサトウキビ梢頭部抽出物で処理し、免疫染色法を用いてTuj1 (Tublin beta III)及びGFAP陽性細胞を検出したところ、アストロサイト (GFAP陽性細胞)の割合は変化しなかったが、ニューロン (Tuj1陽性細胞)の割合は処理濃度依存的な増加を示した。また、サトウキビ梢頭部抽出物処理下における、アストロサイト (GFAP陽性細胞)の突起全長の伸長が観察された。したがって、サトウキビ梢頭部抽出物は、神経幹細胞からのニューロン分化を誘導し(ニューロンへの分化の誘導は、ニューロン新生、ニューロン生成促進と言い換えることもできる。)、アストロサイトの発達を促進することができる。また、脳梗塞や末梢神経傷害において、サトウキビ梢頭部抽出物の処置により産生される新生ニューロンから新たに神経回路が形成され、失われた神経可塑性を回復することで、症状が改善され得る。
【0071】
さらにサトウキビ梢頭部抽出物を投与したマウス脳内の海馬歯状回部位において、対象群と比較し、新生細胞のマーカーであるBrdU及び幼若ニューロンのマーカーであるDCXが両陽性である細胞数の増加 (約1.6倍)が確認された。この結果から、サトウキビ梢頭部抽出物の経口投与により、動物の脳内におけるニューロン新生促進効果が明らかであるといえる。
【0072】
以上のことから、本発明の組成物等は、神経幹細胞の増殖による神経新生促進のために有用であり得る。また、神経幹細胞の増殖による神経新生促進により改善される疾患又は状態の処置のために有用であり得る。
【0073】
ある成分が脳に作用するためには、脳腫瘍の治療薬は脳を保護する血液脳関門を通過する必要がある。血液脳関門を通過しやすい条件としては、(1)分子量が小さいこと、(2)タンパク結合率が低いこと、(3)脂溶性が高いこと等がある。例えば、悪性神経膠腫に適用がある医薬品・テモダールは、分子量は194ときわめて小さいために血液脳関門を通過して患部に届きやすいという特長がある。本発明に係る4成分3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンの分子量は、順に354、354、368、及び448である。モノカフェオイルキナ酸に関しては、経口摂取後、血液脳関門を通過し、脳組織に到達することが報告されている。(Fitoterapia 99:139-152、2014)
【0074】
また、本発明者らの検討によると、サトウキビ梢頭部抽出物及び3-o-カフェオイルキナ酸、5-o-カフェオイルキナ酸、3-o-フェルロイルキナ酸、及びイソオリエンチンの混合物は、SH-SY5Y細胞において、イソオリエンチン等の単体処理、及び陽性対照としての認知機能向上効果が報告されているイチョウ葉エキス処理と比較して、NTRK2の発現を相乗的に上昇させることが分かっている。したがって、本発明の組成物等は、効果的にTrkBシグナルを向上し、神経新生を促進し、加齢に伴う神経細胞の減少を抑制することで、症状を改善することが期待できる。より特定すると、本発明の組成物等は、BDNF-TrkBシグナル低下、及び神経新生の低下による神経細胞の減少の関与が報告されている疾患、具体的には加齢及びアルツハイマー病における記憶低下やうつ病の処置に用い得る。
【0075】
本発明で疾患又は状態について「処置」というときは、発症リスクの低減、発症の遅延、予防、治療、進行の停止、遅延を含む。処置には、医師が行う、病気の治療を目的とした行為と、医師以外の者、例えば栄養士(管理栄養士、スポーツ栄養士を含む。)、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、スポーツ指導員、美容部員、エステティシャン、医薬品製造者、医薬品販売者、食品製造者、食品販売者等が行う、非治療的行為とが含まれる。また処置には、獣医師が行う、非ヒト動物の病気の治療を目的とした行為と、獣医師以外の者、例えば獣医看護士、愛玩動物飼養管理士、厩務員、飼育員、動物医薬品製造者、動物医薬品販売者、ペット用食品製造者、ペット用食品販売者等が行う、非治療行為が含まれる。さらに処置には、特定の食品の投与又は摂取の推奨、食事指導、保健指導、栄養指導(傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、及び健康の保持増進のための栄養の指導を含む。)、給食管理、給食に関する栄養改善上必要な指導を含む。
【0076】
本発明における処置の対象は、ヒト(個体)を含み、好ましくは、上述したいずれかの処置を施すことが望ましいか、又は上述したいずれかの処置を施す必要のあるヒトである。本発明における処置の対象は、ヒト以外の動物であってもよく、この例としては、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、リス等のペット(愛玩動物、コンパニオンアニマルということもある。)、牛、豚等の家畜、マウス、ラット等の実験動物、動物園等で飼育されている動物が挙げられる。対象となる非ヒト動物の成長段階には特に限定がなく、本発明の処置の対象は、例えば、幼犬、成犬、高齢犬、幼猫、成猫、高齢猫であり得る。
【0077】
[組成物、その他]
本発明で組成物には、サトウキビ梢頭部抽出物それ自体であってもよく、及び有効成分(例えば、サトウキビ梢頭部抽出物)とそれ以外の成分とを含んでいてもよい。
【0078】
本発明の組成物は、食品組成物、又は医薬組成物とすることができる。
【0079】
本発明に関し、食品とは、特に記載した場合を除き、固形物のみならず、液状のもの、例えばスープ、飲料及びドリンク剤を含む。また、特に記載した場合を除き、ヒトを対象としたもののみならず、非ヒト動物を対象としたもの、例えば飼料及びペットフードを含む。さらに、食品は、特に記載した場合を除き、一般食品、健康食品、サプリメント、保健機能食品(特定保健用食品(通称:トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品)を含み、また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食、減カロリー食、ダイエット食を含む。
【0080】
本発明の組成物が、経口医薬品、健康食品、サプリメントの形態である場合、その剤形の例としては、軟カプセル剤、硬カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、細粒剤、ゼリー剤、チューブ入り剤、ドリンク剤を挙げることができる。
【0081】
本発明の組成物における、有効成分であるサトウキビ梢頭部抽出物の含量は、一日あたりの摂取・投与量を勘案して設計することができる。例えば、成人の一日量として、サトウキビ梢頭部抽出物を、固形物として0.2~2,000mg含有させることができ、好ましくは0.5~1,000mgであり、より好ましくは1~500mg、さらに好ましくは2~200mgとすることができる。一日量は、複数回、例えば2~4回に分割して、摂取・投与することできる。
【0082】
本発明の組成物には、目的の効果を発揮しうる限り、サトウキビ梢頭部抽出物以外の他の成分を配合することができる。他の成分は、食品として許容される種々の添加剤、又は医薬として許容される種々の添加剤であり得る。この例には、賦形剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、香料、調味料、甘味料、着色料、増粘安定剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料等、酵素、光沢剤、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、結合剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、凝固剤等である。
【0083】
他の成分は、サトウキビ梢頭部抽出物以外の機能性成分であってもよい。他の機能性成分の例としては、アミノ酸類(例えば、分岐鎖アミノ酸類、オルニチン)、不飽和脂肪酸類(例えば、EPA、DHA)、ビタミン類、微量金属類、ポリフェノール類、卵黄抽出物、はちみつ加工品、黒糖、オリゴ糖、食物繊維、グルコサミン、コンドロイチン類、CoQ10、フコイダン、フコキサンチン、アスタキサンチン、プラセンタ、酵母エキス、黒酢濃縮物、植物抽出物(ニンニク抽出物、イチョウ葉抽出物、茶抽出物、ビルベリー抽出物、ブルーベリー抽出物、各種人参抽出物、マカ抽出物、豆種皮抽出物、セントジョーンズワート抽出物、松樹皮抽出物、アサイー抽出物、ノニ抽出物)等が挙げられる。
【0084】
本発明の組成物は、食事と共に、又は食前、食後に、摂取・投与することができる。
【0085】
本発明の組成物には、上述の疾患又は状態の処置のために用いることができる旨を表示することができ、また上述の対象に対して摂取を薦める旨を表示することができる。表示は、直接的に又は間接的にすることができ、直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール等の場所又は手段による、広告・宣伝活動を含む。
【実施例
【0086】
[サトウキビ梢頭部抽出物の成分分析]
<サトウキビ梢頭部抽出物試料の調製>
サトウキビ梢頭部(葉と樹皮を含む。)の乾燥物1 g から、80 %エタノールを抽出溶媒とする自動抽出装置を用いた成分抽出(抽出回数:4 回)を行った。抽出後の溶液はロータリーエバポレーターを用いて濃縮され、その後、凍結乾燥することで試料を得た。得られた試料は100 %メタノールへ再溶解(濃度:100 mg/mL)された後、0.22μmフィルター滅菌を経たものが、高速液体クロマトグラフィー (HPLC)を用いた化学分析に使用された。
【0087】
<高速液体クロマトグラフィー (HPLC)を用いた成分分析>
HPLCを用いた分析の条件は、使用したカラムがZORBAX(250 x 4.6mm)、カラム温度が40℃、流速が1.0 mL/min、注入量が10 μL、UV波長が328 nm、移動相として一方がA :10% ギ酸; もう一方がB:アセトニトリル:MeOH = 1 : 1、グラジエントが0 - 100%; 40 min、であった。
【0088】
<分析結果>
HPLCにより得られたクロマトグラムを図1に示す。成分分析の結果、4本のメインピークが確認され、またそれぞれのピークは、(1) 3-o-カフェオイルキナ酸と、(2) 5-o-カフェオイルキナ酸と、(3) 3-o-フェルロイルキナ酸と、(4) イソオリエンチン (ルテオリン-6-C-グルコシド)と、に由来していた。各成分の抽出物中の含有量は、組成物100重量部あたり0.352±0.014重量部の3-o-カフェオイルキナ酸と、0.491±0.006重量部の5-o-カフェオイルキナ酸と、0.624±0.051重量部の3-o-フェルロイルキナ酸と、0.427±0.001重量部のイソオリエンチンと、からなっていた (表1)。
【0089】
(1) 3-o-カフェオイルキナ酸
【化9】
【0090】
(2) 5-o-カフェオイルキナ酸
【化10】
【0091】
(3) 3-o-フェルロイルキナ酸
【化11】
【0092】
(4)イソオリエンチン (ルテオリン-6-C-グルコシド)
【化12】
【0093】
【表1】
【0094】
[1. サトウキビ梢頭部抽出物がアミロイドβにより誘導される神経細胞死に及ぼす影響の細胞レベルでの評価]
1-1. サトウキビ梢頭部抽出物試料の調製
サトウキビ梢頭部粉末からポリフェノール成分を抽出する方法として、溶媒抽出法が用いられた。具体的には、サトウキビ梢頭部を乾燥物1 gあたり10 mLの70 %エタノールで14 日間漬け置きし(抽出7 日目に転倒攪拌)、成分を溶媒中に溶出させた。その後、抽出溶媒を0.22μmフィルター滅菌をしたものを濃縮・乾固することで試料を得た。また試料は、70%エタノールに溶解させ、後述する細胞試験に使用した。
【0095】
1-2. 実験方法
<ヒト神経モデルSH-SY5Y細胞の培養>
ヒト神経モデル細胞として、SH-SY5Y (American Type Culture Collection, Manassas, USA)が用いられた。SH-SY5Yはヒト神経芽腫に由来する細胞株であり、神経機能を評価する為のモデル細胞として幅広く用いられている。SH-SY5Y細胞は100mm滅菌シャーレ(BD Falcon, USA)に播種され、1:1 (v/v) mixture of Dulbecco’s Modified eagle medium and Ham’s F-12 medium (Lonza, Japan)中に15%の heat inactivated fetal bovine serum (Bio West, USA)と、1% のpenicillin (5000 μg/ml)-streptomycin (5000 IU/ml) solution (Lonza)と、1% のMEM Non-Essential Amino Acids Solution (100x) (Cosmo Bio, japan)と、を含有する組成の培地中で、37℃、5%CO2存在下で培養された。細胞は60~80%コンフルエントに達するまで培養され、継代数が3~8である細胞が各試験に使用された。
【0096】
<サトウキビ梢頭部抽出物による神経保護作用の評価>
サトウキビ梢頭部抽出物による神経保護作用を評価する為に、神経毒素であるアミロイドβ (Aβ)を用いた実験が行われた。具体的には細胞への処理群として(i)対照群 (ii)Aβ 単独処理群 (iii)Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物処理群を設定し、細胞を培地とともに96ウェルプレートに2.0 ×104 cells/wellとなるよう播種し、37℃、 5% CO2存在下で24時間培養した後、最終濃度5μMとなる量のアミロイドβタンパク質(Aβ1-42)又はサトウキビ梢頭部抽出物を各ウェルに添加した。サトウキビ梢頭部抽出物はその濃度が10 μg/mL、25 μg/mL又は50 μg/mLとなるよう添加した。37℃、5% CO2存在下で72時間のインキュベーションを行った後、MTT法を用いて吸光度を測定することにより、細胞生存率を評価した。具体的には、培地をウェルから除去し、PBSに溶解した 5 mg/mlのMTT溶液を加え(100 μl/well)、37℃、5% CO2存在下で6時間インキュベートした後、10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加し(100 μl/well)、37℃、5% CO2存在下で24時間インキュベートしてホルマザン結晶を溶解させた。 吸光度はマイクロプレートリーダーを用いて測定し(吸光度:570 nm)、また得られた値について、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0097】
1-3. 実験結果
アミロイドβ処理群は対照群と比較し、細胞生存率が約40%減少したのに対して、アミロイドβ+サトウキビ梢頭部抽出物同時処理群は、アミロイドβ単独処理群と比較し細胞生存率の濃度依存的な有意な増加が確認された(図2)。この結果から、アミロイドβ処理による神経細胞死はサトウキビ梢頭部抽出物が同時に処理されることにより有意に抑制されることが見出され、サトウキビ梢頭部抽出物による神経保護効果が示唆された。
【0098】
[2. サトウキビ梢頭部に含まれる4種類の化合物の細胞レベルでの評価]
2-1. 化合物の調製
本実験では、長良サイエンス株式会社から購入した3-O -Caffeoylquinic acid (以下3-CQA、Nagara Science, Gifu, japan)、5-O -Caffeoylquinic acid (以下5-CQA、Nagara Science, Gifu, japan)、3-O -Feruloylquinic acid (以下3-FQA、Nagara Science, Gifu, japan)、及びIsoorientin(以下ISO、Sigma-Aldrich, USA)を、それぞれの化合物標準品として用いた。また、本実験において各化合物標準品の濃度は、50 μg/mLのサトウキビ梢頭部抽出物中に含まれる含有量を、HPLCによる分析の定量結果から算出されたものが使用された。具体的には3-CQAは濃度0.50 μM、5-CQAは濃度0.70 μM、3-FQAは濃度 0.85 μM、ISOは濃度 0.477 μMでそれぞれ実験に使用された。各化合物の標準品は、細胞試験には70%エタノールに溶解させたものを用いた。
【0099】
2-2. 実験方法
ヒト神経モデル細胞として、SH-SY5Y (American Type Culture Collection, Manassas, USA)が用いられた。細胞への処理群として、(i)対照群、 (ii)Aβ単独処理群、 (iii)Aβ+3-CQA (0.50 μM)、 (iv)Aβ+5-CQA (0.70 μM)、 (v)Aβ+3-FQA (0.85 μM)、(vi) Aβ+ISO(0.477 μM)、 (vii)Aβ+化合物混合物 (3-CQA+5-CQA+3-FQA+ISO)、 (viii)Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物(50 μg/mL)処理群を設定し、前記1-2.の方法と同様に試験を行い、細胞生存率を評価した。また、得られた値について、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0100】
上記の各処理群について、神経細胞内のATP産生量を測定した。実験方法は後掲6-2.の<化合物標準品が神経細胞のATP産生に及ぼす影響評価>にしたがった。
【0101】
2-3. 実験結果
3-CQA、5-CQA、3-FQA、ISOの各化合物とAβの同時処理では、Aβ単独処理に対し、細胞生存率の増加傾向がみられた。化合物混合物とAβ同時処理ではβ単独処理に対し、有意な細胞生存率の有意な増加が認められた。(図3上) この結果から、3-CQA、5-CQA、3-FQA及びISOは、サトウキビ梢頭部抽出物によるアミロイドβ誘導性の神経細胞死の抑制効果に関与する成分であることが示唆された。
【0102】
また、各化合物の処理によって細胞内ATP産生の増加傾向が確認された。4種のポリフェノール混合物の処理では、対照に対し、細胞内ATP産生の有意な増加が確認された(図3下)。
【0103】
<梢頭部抽出液による神経保護作用のメカニズム解析>
梢頭部抽出液による神経保護作用のメカニズム解析として、リアルタイムRT-PCRを用いた遺伝子発現の解析を行った。SH-SY5Yへの処理群として(i)対照群、 (ii)Aβ 単独処理群、 (iii)Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物処理群を設定し、細胞を培地とともに6ウェルプレートに播種し、37℃、5% CO2存在下で24時間培養した後、最終濃度5μMとなる量のアミロイドβタンパク質又はサトウキビ梢頭部抽出物を添加した。尚、サトウキビ梢頭部抽出物はその濃度50 μg/mLとなるよう添加した。37℃、5% CO2存在下で24時間のインキュベーションを行った後、各処理群における細胞からISOGEN Kit (NipponGene, Japan) を用いてmRNAの抽出を行った。
【0104】
抽出されたmRNAを用いて、Superscript III reverse transcriptase kit (Invitrogen, USA) 及び 2720 Thermal cycler (Applied Biosystems , USA )を使用した、reverse transcription polymerase chain reactions(RT-PCR)が実施された。転写産物の定量化の為に、7500 Fast Real Time PCR systemを用いたTaqMan real time RT PCR amplification reactionsが実施され、プライマーとしてアミロイドβ処理による神経細胞死の作用メカニズムに関わるシグナル経路に関わる遺伝子である、MAP2K4(Hs00387426_m1)、MAPK14(Hs01051152_m1)、MAPK8(Hs01548506_m1)、PI3KCA (Hs00907957_m1)、AKT1(Hs00178280_m1)、PARP1(Hs00242302_m1)、及びCASP3(Hs00234387_m1)(以上すべてApplied Biosystems, USA)が反応に使用された。また、内部標準としてGAPDH(Hs02786624_m1)を使用した。また、得られた値について、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0105】
<実験結果>
アミロイドβの処理により、SH-SY5Y細胞におけるMAP2K4、MAPK14、MAPK8、PI3KCA、AKT1、PARP1の有意な遺伝子発現減少が認められ、またサトウキビ梢頭部抽出物処理により、上記遺伝子の有意な発現増加が認められた(図4)。さらにアポトーシス(細胞死)に関連している遺伝子であるCASP3においては、アミロイドβ処理によってSH-SY5Y細胞における遺伝子発現の有意な増加が認められ、サトウキビ梢頭部抽出物処理により発現減少することが認められた(図4)。
【0106】
[3. サトウキビ梢頭部抽出物が空間学習記憶能力に及ぼす影響の解析]
3-1. サトウキビ梢頭部抽出物試料の調製
前記1-1.の方法と同様にサトウキビ梢頭部粉末からポリフェノール成分の抽出を行い、試料とした。また試料は、Mill-Qに溶解させたものを、後述する動物試験に使用した。
【0107】
3-2. 実験方法
老化促進モデルとしてSAMP8 (日本エルエスシー株式会社から購入)が用いられた。SAMP8は早期の老化関連病態の発症を特徴とする自然発生系統のモデル動物であり、様々な食物に含まれる抗酸化成分等の影響についての研究が行われている。また正常老化を示すSAMR1がSAMP8の対照として用いられた。本実験では、記憶障害等の老化様症状を示し始める16週齢の雄マウスが用いられ、マウスは以下の3群に設定された:(a) SAMR1+水投与群、 (b) SAMP8+水投与群 (c)、 SAMP8+サトウキビ梢頭部抽出物投与群。
【0108】
サトウキビ梢頭部抽出物の投与量は1日につき20 mg/kgと設定され、また投与方法として経口投与が用いられた。各群に30日間の試料及び水の経口投与を行った後,行動試験を実施することで、各群における空間学習記憶能力の評価が行われた。なお、各群のマウスはそれぞれ10匹ずつ本実験に用いられた。また、飼育期間中は水及び飼料は自由摂取とし、マウスの体重測定は毎日行われた。
【0109】
行動試験終了後、マウスから脳を分離採取し、マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現の解析及び脳内神経伝達物質 (ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、アセチルコリン、セロトニン)濃度のELISA法による解析を行った。
【0110】
<モリス水迷路試験による空間学習記憶能力の評価>
サトウキビ梢頭部抽出物の30日間継続投与後に、動物の空間学習記憶能力を評価する行動試験であるモリス水迷路試験を実施した。モリス水迷路試験は動物の学習記憶能力を評価する実験方法であり、試験では水を張ったプールの水面下に透明な逃避台(プラットフォーム)が設置され、プールに投下されたマウスは水からの逃避行動を動機としてプラットフォームを探索する。実験装置は円形の水のプール(直径120cm及び高さ45cm)からなり、水の温度及び深さはそれぞれ23±2℃及び30cmに設定され、北、南、東、そして西の仮想の4つの象限に分けられた。任意の四分円の中間点に、透明で不可視な逃避台(直径10 cm)が水面下1 cmの所に設置された。マウスはプラットフォームを探索する際、プールの壁面に設置された4つの視覚的目印を手掛かりとして利用し、試行を繰り返すうちに短時間でプラットフォームに到達できるようになる。マウスを60秒間自由に探索させ、プラットフォームへの到達時間を測定することによりマウスの空間学習記憶能力を評価した。本試験においては、到達時間の短縮が学習記憶改善効果の指標となる。試験は8日間の間実施され、試験最終日にはプラットフォームを取り除いた状態で試験を行い、プラットフォームが設置されていた領域にマウスが留まっていた時間、及びプラットフォームが設置されていた位置を横切った回数を測定した (プローブテスト)。プローブテストを行うことで、空間記憶をどの程度保持・想起できるかを評価した。SAMP8 + 水投与群と、SAMP8 + サトウキビ梢頭部抽出物投与群及びSAMR1 + 水投与群との有意差検定は、7日間のプラットフォームが設置された状態の試験結果についてはTwo-way ANOVA法(*P<0.05)により、最終日のプローブテストの試験結果についてはOne-way ANOVA法(*P<0.05)により行われた。
【0111】
<実験結果>
モリス水迷路試験の結果、サトウキビ梢頭部抽出物投与群において、実験開始5日目よりSAMP8水投与群と比較しプラットフォームまでの到達時間の有意な短縮が認められた(図5上)。またプローブテストの結果、サトウキビ梢頭部抽出物投与群において、水投与群と比較し、プラットフォーム設置場所を横切った回数の有意な増加が認められ(図5中)、またプラットフォーム設置エリアでの滞在時間は増加傾向を示した(図5下)。以上の結果から、サトウキビ梢頭部抽出物による空間学習記憶改善効果が示唆された。
【0112】
<マイクロアレイによる網羅的な遺伝子解析>
サトウキビ梢頭部抽出物又は水の30日間継続投与と行動試験の実施の後に、脳組織を摘出し、大脳皮質を分取した。分取した大脳皮質からISOGEN Kit (NipponGene, Japan) を用いてmRNAの抽出を行った。その後、Gene Atlas 3'IVT Express Kit(Affymetrix Inc., Santa Clara, CA, USA)を用いて100 ngのmRNAから二本鎖cDNAを合成し、さらにGene Chip 3'IVT Express Kit(Affymetrix Inc., Santa Clara, CA, USA)を用いてビオチン標識増幅RNA(aRNA)を合成した。その後、Gene Atlas 3 'IVT Express Kitを用いて精製されたaRNAの断片化を行い、Gene Chip MG-430 PM microarray(Affymetrix Inc., Santa Clara, CA, USA)を用いて45℃で16時間のハイブリダイゼーションを行った。その後、チップはGene Atlas Fluidics Station 400(Affymetrix Inc., Santa Clara, CA, USA)で洗浄及び染色され、Gene Atlas Imaging Station (Affymetrix Inc., Santa Clara, CA, USA)によりイメージ画像がスキャンされた。SAMP8 + 水投与群と比較して、SAMP8 + サトウキビ梢頭部抽出物投与群における遺伝子発現の変化は、得られた結果を元にfold-change(倍率変化、対照となるコントロールのシグナル値で測定対象のシグナル値を割った相対比)として算出された。また、パスウェイの解析にはDAVID(URL: https://david.ncifcrf.gov )を用いた。
【0113】
<実験結果>
マイクロアレイ解析の結果、SAMP8 + 水投与群と比較して、SAMP8 + サトウキビ梢頭部抽出物投与群における多数の遺伝子発現の変動が確認された (表2)。変動していた遺伝子の内、上方制御 (fold-changeが1.15以上)されていた遺伝子数は合計で912 (うち1.5以上であるものが6)、下方制御 (fold changeが0.85以下)されていた遺伝子数は合計で466 (うち0.5以下であるものが5)であった。下方制御されていた遺伝子の数と比較して、上方制御されていた遺伝子数の方が多かったことから、上方制御されていた遺伝子群に着目し、DAVIDを用いた解析が行われた。解析の結果、発現上昇していた遺伝子は様々な生物機能に関連する群としてカテゴライズされ、その中でも脳機能に関連が深いものとして、神経伝達物質としてアセチルコリンを放出するコリン作動性シナプス、体温調整や睡眠などに重要な役割を果たすセロトニン作動性シナプス、認知・随意運動の制御や報酬に伴う行動の動機づけなどに役割を果たすドーパミン作動性シナプス、神経細胞におけるカルシウムシグナル伝達、神経伝達における長期増強、概日リズム、アルツハイマー病、等に関わる遺伝子群が上昇していたことが確認された(図6)。またパスウェイ解析の結果、シナプス間のカルシウムシグナル伝達の向上に応答したCamk2d、Adcy9、Cacna1a、Homer1といった遺伝子の発現上昇とそれによる神経可塑性の向上及び神経保護作用、Camk2dの発現上昇を介した時計遺伝子Per3の発現上昇とそれによる概日リズムの改善、Cox8bの発現上昇とそれによるミトコンドリア機能の向上、等が大脳皮質における活性化された遺伝子伝達経路として考えられた(図7)。
【0114】
【表2】
【0115】
<脳内神経伝達物質濃度のELISA法による解析>
サトウキビ梢頭部抽出物又は水の30日間継続投与と行動試験の実施の後に、脳組織を摘出し、大脳皮質を分取した。脳組織をプロテアーゼ阻害剤を含むRIPA buffer (Santa Cruz Biotechnology, USA)へ溶解し、遠心分離(4℃, 1,200 g, 20 min)の後、上清を採取することで総蛋白を得、神経伝達物質ELISAキット (ImmuSmol SAS, France)を用いてドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、アセチルコリン及びセロトニン濃度を測定した。測定値は、BCA法で算出した脳組織のタンパク質量(g)当たりの濃度として表示した。また、得られた値について、One-way ANOVA法による有意差検定(**P<0.01)を行った。
【0116】
<実験結果>
SAMP8 + サトウキビ梢頭部抽出物投与群では、SAMP8 + 水投与群と比較し、大脳皮質中のドーパミン及びノルアドレナリン量が有意に増加していた (図8)。また、アセチルコリン及びセロトニン量に関しては増加傾向を示した (図8)。即ち、本結果から、サトウキビ梢頭部抽出物は、脳内の神経伝達物質の分泌量を増加に関与し、学習記憶を改善させることが考えられた。
【0117】
[4. 異なる濃度の有機溶媒を用いることによるサトウキビ梢頭部からの成分抽出効率の検討]
<サトウキビ梢頭部抽出試料の調整>
サトウキビ梢頭部の乾燥物1 gから、抽出溶媒としてそれぞれ20%、40%、60%、80%の異なる濃度のエタノールを用いた成分抽出を行った。なお、エタノール濃度は容積(v/v)に基づく。抽出には自動抽出装置E-916(日本ビュッヒ)使用し、抽出条件として、温度=45℃、圧力=100 bar、抽出時間=10 分間、抽出回数=3回、を設定した。抽出後の溶液はロータリーエバポレーターを用いて濃縮され、その後凍結乾燥することで粉末状の試料を得た (色は、20%エタノールを溶媒として用いたものは茶色、その他は緑色。エタノール濃度が濃くなるにつれて得られる試料の緑色は若干深くなっていた)。抽出された各試料の総量(収量)は、下表に示した(原料1 gからおよそ130 mg~140mg)。得られた試料は100 %メタノールへ再溶解(濃度:100 mg/mL)し、0.22μmフィルター滅菌を経た後、高速液体クロマトグラフィー (HPLC)を用いた成分の定量分析に使用した。
【0118】
<高速液体クロマトグラフィー (HPLC)を用いた定量分析>
分析装置は、Prominence (島津製作所)を用いて実施した。分析の条件として、カラムがZORBAX(250 x 4.6mm)、カラム温度が40℃、流速が1.0 mL/min、注入量が10 μL、UV波長が328 nm、移動相として一方がA :10% ギ酸; もう一方がB:アセトニトリル:MeOH = 1 : 1、グラジエントが0 - 100%; 40 min、と設定した。
【0119】
<分析結果>
HPLCにより得られた定量結果を図9に示す。定量分析の結果、抽出物100重量部あたり各ポリフェノール成分の含有量は、40%エタノールを溶媒として用い抽出された試料中において最も高かった。
【0120】
【表3】
【0121】
なお、3-CQA、5-CQA及び3-FQAに関しては、溶媒として80%エタノールを用い、温度45℃、圧力=100 barの抽出条件では、2回の操作で、サトウキビ梢頭部の乾燥物に含有される量の80%以上を抽出できることが分かっている。
【0122】
【表4】
【0123】
[5. 異なる濃度の有機溶媒を用いて抽出したサトウキビ梢頭部抽出物による神経細胞に対する生理活性の比較検討]
5-1. サトウキビ梢頭部抽出物試料の調製
サトウキビ梢頭部試料は、上述<サトウキビ梢頭部抽出試料の調整>の方法で得られた各試料を、70%エタノールに再溶解 (濃度:100 mg/mL)し、0.22μmフィルター滅菌を経たものを試料として後述する細胞試験に使用した。
【0124】
5-2. 実験方法
<ヒト神経モデルSH-SY5Y細胞の培養>
1-2. に同様。
【0125】
<サトウキビ梢頭部抽出物による神経保護作用の評価>
細胞への処理群として、(i)対照群、(ii)Aβ (5 μM)単独処理群、(iii)Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物(溶媒20%エタノール)処理群、(iv)Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物(溶媒40%エタノール)処理群、(v)Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物(溶媒60%エタノール)処理群、(vi)Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物(溶媒80%エタノール)処理群を設定した。前記1-2. の方法と同様に試験を行い、細胞生存率を測定した。また、得られた値について、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0126】
5-3. 実験結果
Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物処理群は、アミロイドβ単独処理群と比較し細胞生存率の濃度依存的な有意な増加が確認された(図10)。また、細胞生存率は、(iv)Aβ+サトウキビ梢頭部抽出物(溶媒40%エタノール)処理群において最も高かった (78.6±2.41%、図10)。この結果と、前述 [異なる濃度の有機溶媒を用いることによるサトウキビ梢頭部からの成分抽出効率の検討]の結果から、抽出物中のポリフェノール成分含量と、抽出物の神経細胞に対する生理活性の間に相関性が見出された。
【0127】
[6. サトウキビ梢頭部に含まれる4種類の化合物が神経細胞モデルSH-SY5Yにおける細胞生存率及びATP産生に及ぼす影響評価]
6-1. 化合物の調製
本実験では、3-o -Caffeoylquinic acid (以下3-CQA、長良サイエンス, japan)、5-o -Caffeoylquinic acid (以下5-CQA、長良サイエンス, Japan)、3-o -Feruloylquinic acid (以下3-FQA、長良サイエンス, Japan)、Isoorientin(以下ISO、Sigma-Aldrich, USA)を、それぞれの化合物標準品として用いた。各化合物の標準品試料としては70%エタノールに溶解させたものを後述する試験に使用した。
【0128】
6-2. 実験方法
<ヒト神経モデルSH-SY5Y細胞の培養>
1-2. に同様。
【0129】
<化合物標準品が神経細胞の生存率に及ぼす影響評価>
細胞への処理群として、(i)対照群、(ii)3-CQA処理群、(iii)5-CQA処理群、(iv)3-FQA処理群、(v)ISO処理群を設定した。また、各処理群における化合物の処理濃度としてそれぞれ1 μM、5 μM、10 μM、20 μMを設定した。前記1-2. の方法と同様に試験を行い、細胞生存率を測定した。得られた値については、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0130】
<化合物標準品が神経細胞のATP産生に及ぼす影響評価>
神経細胞内のATP産生量を測定する為に、Cell ATP Assay reagent (Toyo Ink, Japan)を用いた。ATPは細胞のエネルギー代謝における重要な指標である。SH-SY5Y細胞を96ウェルプレートへ細胞数が2.0×105 cells/mLとなるよう播種し、37℃、5%CO2存在下で24時間のインキュベーションを行った後、細胞への試料の処理を行った。細胞への処理群として(i)対照群(ii)3-CQA処理群(iii)5-CQA処理群 (iv)3-FQA処理群(v)ISO処理群を設定し、処理濃度が10 μMとなるよう各ウェルへ試料を添加した。試料の処理から37℃、5%CO2存在下での12、24、48時間のインキュベートの後、室温で30分間インキュベートした。その後、100 μl/wellの常温のATP reagent (Toyo Ink)を添加し、1分間暗所でインキュベートした後、各ウェルから150 μLの上清を96ウェル ホワイトボトムプレート (BD Falcon)へ移し、25℃で10分間インキュベートし発光を安定させた。その後、プレートリーダー (Powerscan HT, USA)を用いて発光強度を測定することで、ATP産生割合を測定した。得られた値については、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
6-3. 実験結果
細胞生存率測定試験の結果、3-CQA、5-CQA及びISO化合物標準品については、試料の処理により濃度依存的にSH-SY5Y細胞の生存率が有意な増加を示した(図11)。またATP産生試験の結果、3-CQA、5-CQA及びISO化合物標準品試料の処理により、SH-SY5Y細胞におけるATP産生割合が有意な増加を示した(図12)。これらの結果から、サトウキビ梢頭部抽出物中に含まれる化合物の内、3-CQA、5-CQA及びISOがSH-SY5Y細胞におけるエネルギー代謝を活性化し、ATP産生の促進に寄与することが示唆された。
【0131】
[7. サトウキビ梢頭部抽出物或いは抽出物中に含まれる4種類の化合物がSH-SY5Yにおける解糖系酵素の遺伝子発現に及ぼす影響評価]
7-1. サトウキビ梢頭部抽出試料及び化合物試料の調製
各試料の調整方法については、前述の方法と同様。
【0132】
7-2. 実験方法
<ヒト神経モデルSH-SY5Y細胞の培養>
1-2. に同様。
【0133】
<サトウキビ梢頭部抽出物或いは化合物標準品によるATP産生促進のメカニズム解明を目的としたSH-SY5Y細胞における解糖系の酵素遺伝子発現の評価>
神経細胞内のATP産生のメカニズム解明として、サトウキビ梢頭部抽出物或いは化合物標準品が、細胞におけるエネルギー代謝系である、解糖系の化学反応を触媒する酵素の遺伝子発現に及ぼす影響を評価する為、リアルタイムRT-PCRを用いた遺伝子発現解析を実施した。SH-SY5Yへの処理群として(i)対照群、(ii)サトウキビ梢頭部抽出物(50 μg/mL)処理群、(iii)3-CQA処理群、iv)5-CQA処理群(v)ISO処理群を設定し、またサトウキビ梢頭部抽出物試料の処理濃度は 50 μg/mL、各化合物試料の処理濃度は10 μMと設定した。細胞を試料とともに60 mm cell culture dish(BD Falcon)内で37℃、5%CO2存在下で24時間のインキュベーションを行った後、各処理群における細胞からISOGEN kit (NipponGene, Japan)を用いてmRNAの抽出を行った。
【0134】
抽出されたmRNAを用いて、Superscript IV reverse transcriptase kit (Invitrogen, USA) 及び 2720 Thermal cycler (Applied Biosystems , USA )を使用した、reverse transcription polymerase chain reactions(RT-PCR)を実施した。転写産物の定量化の為に、7500 Fast Real Time PCR systemを用いたTaqMan real time RT PCR amplification reactionsを実施した。プライマーとして、解糖系の代謝を触媒する酵素であるPGK1(Hs00943178_g1)、PGAM1(Hs01652468_g1)、PKM(Hs00761782_s1)、PC(Hs01085875_g1)を反応に使用し、また内部標準としてACTB(Hs01060665_g1)を使用した。プライマーは全てApplied Biosystems(USA)より購入した。得られた値については、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0135】
<実験結果>
サトウキビ梢頭部抽出物或いは各化合物標準品の24時間の処理により、SH-SY5Y細胞におけるPGK1、PGAM1、PKM、PCの発現は対照群と比較し有意に上昇した(図13)。この結果から、サトウキビ梢頭部抽出物或いは各化合物標準品は、上記の遺伝子発現の上昇を介して細胞内のエネルギー代謝系である解糖系を活性化し、結果として神経細胞内のATP産生を促進することが示唆された (図14)。
【0136】
[8. サトウキビ梢頭部抽出物によるヒト神経幹細胞 (hNSC)に対する自己複製及び分化誘導能の評価]
8-1. サトウキビ梢頭部試料の調整
前記1-1. の方法により得られた試料を、70%エタノールに溶解させ、後述する試験に使用した。
【0137】
8-2. 実験方法、及び結果
<ヒト神経幹細胞 (hNSC)の培養>
神経幹細胞に対する試料の影響評価を目的として、ヒト胎児由来の神経幹細胞 (Gibco(登録商標) life technologies, USA)が用いられた (以降、hNSC; human Neural Stem Cell)。hNSCはT75フラスコ (BD Falcon, USA)に播種され、KnockOutTM D-MEM/F-12中に、2%のStemPro(登録商標) Neural Supplementと、20 ng/mLのbFGFと、20 ng/mLのEGFと、2 mMのGlutaMAXTM -I Supplementと、6 units/mLのHeparinと、200 μMのAscorbic acidと、を組成とする神経幹細胞増殖用の培地 (以上、全てGibco(登録商標)life technologies)中で、37℃、5%CO2存在下で培養された。上記の培地中において、hNSCはフラスコ底面に接着することなく浮遊した状態で培養され、球状の細胞塊 (ニューロスフェア)を形成しながら増殖する (図15)。培地交換は3~4日毎に行われ、培養は形成されたスフェアの直径<=1 mmとなるまで (播種から9~11日間)行われた。
【0138】
<サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCのおける分化マーカーの遺伝子発現に及ぼす影響評価>
サトウキビ梢頭部抽出物による神経幹細胞に対する自己複製分化誘導能の評価として、リアルタイムRT-PCRを用いた、神経幹細胞における分化マーカーの遺伝子発現解析を行った。hNSCへの処理群として(i)対照群、(ii)10 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群、(iii)25 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群、(iv)50 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群を設定した。hNSCを培地とともに6ウェルプレートで培養し、スフェア (直径<=1 mm)の形成を確認した後、サトウキビ梢頭部抽出物処理群においては培地中の濃度が上記設定濃度となるように希釈した試料を添加し、また対照群においては等量の培地を添加した。37℃、5%CO2存在下で24時間のインキュベーションを行った後、各処理群における細胞からISOGEN kit (NipponGene, Japan)を用いてmRNAの抽出を行った。
【0139】
抽出されたmRNAを用いて、Superscript IV reverse transcriptase kit (Invitrogen, USA) 及び 2720 Thermal cycler (Applied Biosystems , USA )を使用した、reverse transcription polymerase chain reactions(RT-PCR)を実施した。転写産物の定量化の為に、7500 Fast Real Time PCR systemを用いたTaqMan real time RT PCR amplification reactionsを実施した。プライマーとして、ニューロン(神経細胞)のマーカーであるTUBB3(Hs00801390_s1)と、アストロサイト又はtransit amplifying(TA)細胞 (幹細胞と分化細胞の中間に位置する有限増殖細胞)のマーカーであるGFAP(Hs00909233_m1)と、オリゴデンドロサイトのマーカーであるPDGFRA(Hs00998018_m1)と、神経幹細胞のマーカーであるNES (Hs04187831_g1)と、を反応に使用し、また内部標準としてGAPDH(Hs02786624_g1)を使用した。プライマーは全てApplied Biosystems(USA)より購入した。得られた値については、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0140】
<実験結果>
サトウキビ梢頭部抽出物試料の24時間の処理により、hNSCにおけるTUBB3及びGFAPの発現は処理濃度依存的に増加した (図16)。また、PDGFRA及びNESの発現は処理濃度依存的に減少した(図16)。この結果から、サトウキビ梢頭部抽出物による、神経幹細胞の休眠状態から活性化状態への移行の誘導、及びニューロン又はアストロサイトへの分化誘導効果が示唆された。
【0141】
<サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCから新生ニューロンの生成に及ぼす影響評価>
サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCから新生ニューロン生成に及ぼす影響を評価するため、チミジンアナログであるBrdU(5-bromo-2'-deoxyuridine)、及び神経前駆細胞のマーカーであるHuC/Dを用いたアッセイを実施した。BrdUはDNAの構成要素であるチミジンのアナログであり、BrdUの存在下で細胞が分裂を開始すると複製されるDNA鎖にBrdUが取り込まれる。取り込まれたBrdUを抗体を用いて検出し、BrdU陽性の細胞の割合をカウントすることで、細胞の増殖割合を評価した。またHuC/Dは分化の早期からニューロンの細胞体特異的に発現するタンパク質であり、BrdUと併せて陽性細胞の定量を行うことで、新生ニューロンの割合の解析を実施した。hNSCへの処理群として(i)対照群、(ii)10 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群、(iii)25 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群、(iv)50 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群を設定した。hNSCを培地とともに6ウェルプレートで培養し、スフェア (直径<=1 mm)の形成を確認した後、サトウキビ梢頭部抽出物処理群においては培地中の濃度が上記設定濃度となるように希釈した試料を添加し、また対照群においては等量の培地を添加した。37℃、5%CO2存在下で24時間のインキュベーションを行った後、10 μMのBrdU(Tokyo Chemical Industry, Japan)を各群に添加し、37℃、5%CO2存在下で24時間のインキュベーションを行うことでBrdUを新たに増殖した細胞に取り込ませた。インキュベーションの後、Accutase (商標登録)Reagent(Gibco, USA)を用いてスフェアを解離し、Geltrex (商標登録) Reagent でコーティング済みのNunk Lab-Tek chamber slide 4 well (Thermo Fisher Scientific, USA)へ解離されたhNSCを5.0×104 cells/mLの濃度で播種し、37℃、5%CO2存在下で12時間のインキュベートを行いhNSCをスライド底面へ接着させた。
【0142】
スライドから培地を取り除いた後、免疫染色法を用いてBrdU及びHuC/D陽性細胞を検出した。細胞を1×PBSで1回軽く洗浄した後、氷冷4% PFAを加え30分間室温で固定操作を行った。固定後PFAを除き細胞を1×PBSで二回洗浄した後、二重鎖DNAの一部を短鎖DNAに変性しBrdUを露出させ抗体と結合させる為に、2N HClを加え30分間、室温でインキュベートした。その後HClを除き、0.1 M Na2B4O7(pH=8.5)を加え15分間、室温でインキュベートすることで酸を中和した。Na2B4O7を除き細胞を1×PBSで二回洗浄した後、0.2% Triton X-100(Sigma-Aldrich, USA)溶液を加え5分間、室温でインキュベートすることで、膜透過処理を行った。Triton X-100を除き細胞を1×PBSで三回洗浄した後、5% Normal goat serum(Funakoshi, Japan)溶液を加え1時間、室温でインキュベートすることで非特異的抗体の結合を防止した。Normal serumを除いた後、1% Normal goat serum 溶液に一次抗体としてrabbit monoclonal anti-HuC+HuD (HuC/D, 1:500, Abcam, Cambridge, UK)及びmouse monoclonal anti-BrdU (1:200, Invitrogen, Carlsbad, CA)を懸濁させた溶液を添加し、4℃でオーバーナイト(16時間)のインキュベートを行った。インキュベート後、一次抗体溶液を除き細胞を1×PBSで三回洗浄した後、1% Normal goat serum 溶液に二次抗体(Alexa Fluor 488及びAlexa Fluor 594標識済み, 1:500, abcam, UK)を懸濁させた溶液を添加し、1時間、室温でインキュベートを行った。二次抗体溶液を除き細胞を1×PBSで三回洗浄した後、ProLong(商標登録)Diamind(Thermo Fisher Scientific, USA)及びカバーグラスを用いて細胞を封入した。封入後のスライドグラスは4℃で保存され、顕微鏡を用いた解析に用いられた。
【0143】
染色後の細胞は、共焦点顕微鏡TCS SP8(Leica, Germany)を用いて画像解析を行なった(倍率=40×, zoom=0.8, scale bar=100 μm)。各ウェル毎にランダムで8~10区画選択して画像を取得し、取得された画像についてImage J を用いた解析を行った。解析により得られた値については、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0144】
<実験結果>
上記の実験に於いて、サトウキビ梢頭部抽出液処理により、HuC/D陽性細胞の割合は変化しなかったが、BrdU陽性細胞の割合は処理濃度依存的な増加を示した(図17)。またHuC/D/BrdU両陽性細胞の割合は処理濃度依存的な増加を示した (図17)。この結果から、サトウキビ梢頭部抽出液による神経幹細胞の増殖促進効果が示唆され、また神経幹細胞のからの新生ニューロン生成の促進効果が示唆された。
【0145】
<サトウキビ梢頭部抽出物による新生ニューロン生成誘導効果のメカニズム解析>
サトウキビ梢頭部抽出物による新生ニューロン生成誘導効果のメカニズムを解析するため、リアルタイムRT-PCRを用いた、神経幹細胞の活性化を調節する因子であるASCL1及びHES1の遺伝子発現解析を実施した。ASCL1及びHES1は、細胞の発生・分化における運命決定を制御する塩基性helix-loop-helix (bHLH) 因子である。神経細胞の分化において、幹細胞性が維持されている状態 (≒休眠状態)においては、HES1の発現量は高く、またASCL1の発現量は低く保たれている。神経幹細胞が活性化状態となると、HES1の発現量が低下し、またASCL1の発現量が増加することで、神経幹細胞は神経細胞へ分化する。前掲<サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCから新生ニューロンの生成に及ぼす影響評価>に記載の方法と同様の実験を実施した後、解離されたhNSCを5.0×104 cells/mLの濃度で6ウェルプレーへ播種し、37℃、5%CO2存在下で12時間のインキュベートを行いhNSCをスライド底面へ接着させた。その後、ISOGEN kit (NipponGene, Japan)を用いてmRNAの抽出を行い、前掲<サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCのおける分化マーカーの遺伝子発現に及ぼす影響評価>に記載の方法と同様に遺伝子発現の解析を実施した。プライマーとして、ASCL1 (Hs00269932_m1)、及びHES1 (Hs00172878_m1)を反応に使用し、また内部標準としてGAPDH(Hs02786624_g1)を使用した。プライマーは全てApplied Biosystems(USA)より購入した。得られた値については、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0146】
<実験結果>
上記の実験に於いて、ASCL1の発現はサンプル処理群において増加を示し、またHES1の発現は処理濃度依存的な減少を示した(図17)。この結果から、サトウキビ梢頭部抽出物は、ASCL1及びHES1遺伝子発現を調節することで神経幹細胞を活性化し、新生ニューロンの生成を誘導することが示唆された。
【0147】
<サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCの分化に及ぼす影響評価>
hNSCをスライドの底面に接着させた状態で分化を誘導し、その後免疫染色法を用いニューロン及びアストロサイトを標識することで、サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCの分化に及ぼす影響を評価した。hNSCへの処理群として(i)対照群、(ii)10 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群、(iii)25 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群、(iv)50 μg/mL サトウキビ梢頭部抽出物処理群を設定した。hNSCを培地とともに6ウェルプレートで培養し、スフェア (直径<=1 mm)の形成を確認した後、サトウキビ梢頭部抽出物処理群においては培地中の濃度が上記設定濃度となるように希釈した試料を添加し、また対照群においては等量の培地を添加した。37℃、5%CO2存在下で24時間のインキュベーションを行った後、Accutase (商標登録)Reagent(Gibco, USA)を用いてスフェアを解離し、Geltrex (商標登録) Reagent でコーティング済みのNunk Lab-Tek chamber slide 4 well (Thermo Fisher Scientific, USA)へ解離されたhNSCを5.0×104 cells/mLの濃度で播種した。hNSCの分化は、KnockOutTM D-MEM/F-12中に、2%のStemPro(登録商標)Neural Supplementと、2 mMのGlutaMAXTM-I Supplementと、6 units/mLのHeparinと、200 μMのAscorbic acidと、を組成とする神経幹細胞分化用の培地 (以上、全てGibco(登録商標) life technologies)中で、37℃、5%CO2存在下で7日間培養することで誘導された。また、分化誘導中においても培地中には上記設定濃度となるよう試料が添加された。
【0148】
7日間の培養の後、スライドから培地を取り除いた後、免疫染色法を用いてTuj1 (Tublin beta III)及びGFAP陽性細胞を検出した。免疫染色は、前掲<サトウキビ梢頭部抽出物がhNSCから新生ニューロンの生成に及ぼす影響評価>に記載の方法と同様に実施された(変性処理は行われなった)。一次抗体としてrabbit polyclonal anti-GFAP (1:1000, Novus Biologicals, Centennial, CO)及びmouse monoclonal anti-beta III tubulin (Tuj1, 1:1000, Abcam, UK)が用いられた。染色後、共焦点顕微鏡TCS SP8(Leica, Germany)を用い、各ウェル毎にランダムで8~10区画選択して画像を取得し(倍率=40×, zoom=0.9, scale bar=100 μm)、取得された画像についてImage J を用いた解析を行った。解析により得られた値については、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0149】
<実験結果>
上記の実験に於いて、サトウキビ梢頭部抽出液処理により、アストロサイト (GFAP陽性細胞)の割合は変化しなかったが、ニューロン (Tuj1陽性細胞)の割合は処理濃度依存的な増加を示した(図19)。また、サトウキビ梢頭部抽出物処理下における、アストロサイト (GFAP陽性細胞)の突起全長の伸長が観察された(図18)。この結果から、サトウキビ梢頭部抽出物の処理により、神経幹細胞からのニューロン分化が誘導され、また分化後のアストロサイトの発達が促進されることが示唆された。
【0150】
<マウス脳内における新生ニューロンの定量>
行動試験終了後(3-2. 実験方法参照)、免疫組織化学的分析のためにマウスから脳を抽出し、4%パラホルムアルデヒドで4°C、14日間固定した後、30%スクロース/ PBS(w / v)で4°Cで48時間の平衡化が行われた。脳組織切片(30μm)は、SM2010Rスライディングミクロトーム(Leica)を使用し分取された。切片は、使用するまで凍結防止剤溶液(エチレングリコール、グリセロール、0.1 Mリン酸緩衝液、pH 7.4)で-20°Cで保存された。スライド上の組織切片をPBSで洗浄し、二重鎖DNAの一部を短鎖DNAに変性しBrdUを露出させ抗体と結合させる為に、2N HClを用いた42℃、20分間の変性処理が行われた。その後、0.03%Triton X-100(PBS-T)を含むPBSで15分間透過処理し、切片をPBS-T中の10% Normal donkey serumで室温、1時間インキュベートすることで非特異的抗体の結合を防止した。一次抗体として、Rat monoclonal anti-BrdU(1:200、Abcam)及びRabbit polyclonal anti-Doublecortin(DCX、1:200、Cell signaling technology)を使用し、ブロッキングバッファーで希釈後、オーバーナイトでのインキュベートを行った。その後、切片を洗浄し、蛍光色素標識特異的二次抗体と共に室温、2時間のインキュベートを行った。スライドは、FluorSave(Merck Millipore)を用い封入を行った。
【0151】
染色後の組織切片は、Nikon Ti-Eclipse microscope(Nikon)による画像取得に用いられた。また定量の為の共焦点画像は、Zeiss LSM 710レーザー走査型共焦点顕微鏡(Leica)により取得された。神経新生が起こる部位である海馬歯状回の解析はImage Jを用い実施された。
【0152】
<実験結果>
上記の実験の結果、サトウキビ梢頭部抽出液を投与したマウス脳内の海馬歯状回部位において、対象群と比較し、新生細胞のマーカーであるBrdU及び幼若ニューロンのマーカーであるDCXが両陽性である細胞数の増加 (約1.6倍)が確認された (図19)。この結果から、サトウキビ梢頭部抽出液の投与による、マウス脳内におけるニューロン新生促進効果が示唆された。
【0153】
<サトウキビ梢頭部抽出物或いは化合物標準品によるSH-SY5Y細胞におけるTrkB遺伝子(遺伝子名としてNTRK2)発現の評価>
マイクロアレイ解析の結果から、サトウキビ梢頭部抽出物がマウス脳内のTrkB (Neurotrophic tyrosine kinase receptor type 2, NTRK2)を活性化する効果が示唆された。TrkBは中枢及び末梢神経システムの発達と成熟に関わり、BDNF (脳由来栄養因子)等の生体内因子により活性化されることで、神経細胞の成長や生存、シナプスの発達、海馬における神経新生に関わるシグナル経路を活性化することが報告されている。サトウキビ梢頭部抽出物或いは化合物標準品が、神経細胞におけるTrkB遺伝子発現に及ぼす影響を評価する為、リアルタイムRT-PCRを用いた遺伝子発現解析を実施した。ヒト神経モデル細胞としてSH-SY5Yを用い、処理群として(i)対照群、(ii)3-CQA (0.50 μM)、(iii)5-CQA (0.70 μM)、(iv)3-FQA (0.85 μM)、(v)ISO (0.477 μM)、(vi) 化合物混合物 (3-CQA + 5-CQA + 3-FQA + ISO)、(vii)サトウキビ梢頭部抽出物 (50 μg/mL)を設定した。また、本実験では陽性対照 (ポジティブコントロール)としてイチョウ葉エキスが用いられた。イチョウ葉エキス(株式会社富士フイルムヘルスケアラボラトリー)は粉末を70% エタノールに溶解し、0.22 μm滅菌し、ストック溶液(100 mg/mL)の作製が行われた後、処理群 (viii) イチョウ葉エキス (50 μg/mL)として実験条件に加えられた。細胞を試料とともに60 mm cell culture dish(BD Falcon)内で37℃、5%CO2存在下で24時間のインキュベーションを行った後、各処理群における細胞からISOGEN kit (NipponGene, Japan)を用いてmRNAの抽出を行った。
抽出されたmRNAを用いて、Superscript IV reverse transcriptase kit (Invitrogen, USA) 及び 2720 Thermal cycler (Applied Biosystems , USA )を使用した、reverse transcription polymerase chain reactions(RT-PCR)を実施した。転写産物の定量化の為に、7500 Fast Real Time PCR systemを用いたTaqMan real time RT PCR amplification reactionsを実施した。プライマーとして、NTRK2 (Hs00178811_ma)を反応に使用し、また内部標準としてGAPDH(Hs02786624_g1)を使用した。プライマーは全てApplied Biosystems(USA)より購入した。得られた値については、One-way ANOVA法による有意差検定(*P<0.05, **P<0.01)を行った。
【0154】
<実験結果>
サトウキビ梢頭部抽出物の24時間の処理により、SH-SY5Y細胞におけるNTRK2の発現は対照群と比較し有意に上昇した(図20)。また各化合物標準品を用いた試験において、単体処理おいてはISO処理のみ対照群と比較し優位な増加を示し、さらに化合物混合処理群においては、各化合物の単体処理群と比較して大きなNTRK2発現の増加を示した(図20)。また陽性対照としてのイチョウ葉エキス処理群は対照群と比較しNTRK2発現の優位な上昇を示したが、サトウキビ梢頭部抽出物処理群及び化合物混合物処理群はイチョウ葉エキス処理群と比較して、NTRK2発現の大きな上昇を示した (図20)。
【0155】
3-CQA (0.50 μM)、5-CQA (0.70 μM)、及び3-FQA (0.85 μM)の単体での処理下においては、NTRK2発現の変化を示さず、またISO (0.477 μM)単体処理と比較し、化合物混合物処理下にいては大きなNTRK2発現の上昇 (約220%の上昇)が確認された。本結果において、NTRK2発現量は、対照群の相対値である為、このことから、これらの化合物は混合され処理された場合において、相乗的に神経細胞におけるNTRK2発現を上昇することが示唆された。
【0156】
本実験において、サトウキビ梢頭部抽出物処理群及び化合物混合物処理群はイチョウ葉エキス処理群と比較し、NTRK2発現の大きな上昇を示した。TrkB活性化を介したシグナル伝達は、シナプス可塑性や神経新生の促進において重要な働きを担っている (Numakawa et al)ことから、サトウキビ梢頭部抽出物は、認知機能向上効果が報告されている先行の植物エキスであるイチョウ葉エキスと比較し、効果的にTrkBシグナルを向上し、神経新生を促進し、加齢に伴う神経細胞の減少を抑制することで、症状を改善することが期待できる。具体的な疾患としては、BDNF-TrkBシグナル低下、及び神経新生の低下による神経細胞の減少の関与が報告されている加齢及びアルツハイマー病における記憶低下やうつ病(Tapia-Arancibiaet al., 2008; Erickson et al.,2012)においての改善効果が期待できる。
【0157】
<参考文献>
Numakawa T, Odaka H, Adachi N.“Actions of Brain-Derived Neurotrophin Factor in the Neurogenesis and Neuronal Function, and Its Involvement in the Pathophysiology of Brain Diseases.”Int J Mol Sci. 2018.
Tapia-Arancibia L, Aliaga E, Silhol M, Arancibia S. “New insights into brain BDNF function in normal aging and Alzheimer disease.” Brain Res Rev. 2008.
Erickson KI, Miller DL, Roecklein KA. “The aging hippocampus: interactions between exercise, depression, and BDNF.” Neuroscientist. 2012.
【0158】
[9. 30~50%エタノールを抽出溶媒として用いた、化学分析による成分抽出効率の検討]
前掲の試験において、抽出物100重量部あたり各ポリフェノール成分の含有量は、40%エタノールを溶媒として用い抽出された試料中において最も高かった。この結果から、さらに細かい濃度設定を用いた抽出条件検討を行うため、サトウキビ梢頭部の乾燥物1 gから、抽出溶媒としてそれぞれ30%、35%、40%、45%, 及び50%の異なる濃度のエタノールを用いた成分抽出を行った。なお、エタノール濃度は容積(v/v)に基づく。抽出には自動抽出装置E-916(日本ビュッヒ)使用し、抽出条件として、温度=45℃、圧力=100 bar、抽出時間=10 分間、抽出回数=3回、を設定した。抽出後の溶液はロータリーエバポレーターを用いて濃縮され、その後凍結乾燥することで粉末状の試料を得た (試料の色は、エタノール濃度が濃くなるにつれての緑色が深くなっていた)。得られた試料は100 %メタノールへ再溶解(濃度:50 mg/mL)し、0.22μmフィルター滅菌を経た後、高速液体クロマトグラフィー (HPLC)を用いた成分の定量分析に使用した。
【0159】
<高速液体クロマトグラフィー (HPLC)を用いた定量分析>
分析装置は、Prominence (島津製作所)を用いて実施した。分析の条件として、カラムがZORBAX(250 x 4.6mm)、カラム温度が40℃、流速が1.0 mL/min、注入量が10 μL、UV波長が328 nm、移動相として一方がA :10% ギ酸; もう一方がB:アセトニトリル:MeOH = 1 : 1、グラジエントが0 - 100%; 40 min、と設定した。
【0160】
<分析結果>
HPLCにより得られた定量結果を図18に示す。定量分析の結果、抽出物100重量部あたり各ポリフェノール成分の含有量は、30%エタノールを溶媒として用い抽出された試料中において最も高かった。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明組成物利用することで、認知機能の向上や改善を目的とした新たな食品及び医薬品シーズの展開や、サプリメント等の形体をとった商品としての展開を通じ、関連市場の拡大及び新たな市場開拓が期待される。また医療・健康分野においては、高齢人口の増加予測からその医療費のさらなる高騰が大きな懸念事項となっており、本発明組成物は食品副産物を由来とすることから、医療・健康市場における大きなイノベーションとなることが期待される。
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