(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】即時脱型コンクリートブロック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20250303BHJP
C04B 14/22 20060101ALI20250303BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20250303BHJP
C04B 18/16 20230101ALI20250303BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20250303BHJP
B28B 1/087 20060101ALI20250303BHJP
B28B 11/24 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
C04B28/02 ZAB
C04B14/22
C04B18/14 A
C04B18/16
C04B40/02
B28B1/087
B28B11/24
C04B28/02
(21)【出願番号】P 2024095106
(22)【出願日】2024-06-12
【審査請求日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2023118604
(32)【優先日】2023-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発/CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000132806
【氏名又は名称】株式会社タイガーチヨダ
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 浩
(72)【発明者】
【氏名】向 俊成
(72)【発明者】
【氏名】北原 剛正
(72)【発明者】
【氏名】伏見 浩司
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-236309(JP,A)
【文献】特開2006-104020(JP,A)
【文献】特開2023-096668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/02
C04B 14/22
C04B 18/14
C04B 18/16
C04B 40/02
B28B 1/087
B28B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスカレットを骨材として含む即時脱型方式用のコンクリート組成物を加圧振動して成形した後、炭酸化養生することにより製造される即時脱型コンクリートブロックであって、
前記コンクリート組成物には、質量比において、前記コンクリート組成物中の結合材の
60%を超え90%以下の高炉スラグ微粉末が含まれる、
即時脱型コンクリートブロック。
【請求項2】
前記ガラスカレットは、質量比において、前記コンクリート組成物中の前記骨材の8%を超える、
請求項1に記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項3】
前記骨材の粗骨材の少なくとも一部、または、全部は、前記ガラスカレットである、
請求項1に記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項4】
前記骨材の細骨材の少なくとも一部、または、全部は、前記ガラスカレットである、
請求項1に記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項5】
前記コンクリート組成物には、炭酸ガスと化学的に結合し得る混和材、または、炭酸ガスを固化した混和材が含まれる、
請求項1に記載の即時脱型コンクリートブロック。
【請求項6】
即時脱型コンクリートブロックの製造方法であって、
ガラスカレットを骨材として含む即時脱型方式用のコンクリート組成物を加圧振動してブロック体を成形する成形工程と、
前記ブロック体を炭酸化養生する養生工程と、を含み、
前記コンクリート組成物には、質量比において、前記コンクリート組成物中の結合材の
60%を超え90%以下の高炉スラグ微粉末が含まれる、
即時脱型コンクリートブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即時脱型コンクリートブロック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラス廃材から得られるガラスカレットを骨材として含むコンクリートを用いて即時脱型コンクリートブロックを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、再生可能エネルギーとして太陽光発電設備の導入が進められている。その一方で、太陽光パネルのガラスの廃棄量も年々増加していることから、その再利用が課題となっている。このため、コンクリートブロックを製造するにあたっては、特許文献1に記載されるようにガラス廃材を単に再利用するだけではなく、ガラス廃材の再利用量を増大させる必要がある。また、SDGs(Sustainable Development Goals)の観点からは、ガラス廃材を再利用することに加えて、コンクリートブロックの製造過程においても二酸化炭素の排出量を削減することが求められる。
【0005】
本発明は、ガラス廃材の再利用量の増大と二酸化炭素の排出量の削減とを実現可能なコンクリートブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ガラスカレットを骨材として含む即時脱型方式用のコンクリート組成物を加圧振動して成形した後、炭酸化養生することにより製造される即時脱型コンクリートブロックであって、コンクリート組成物には、質量比において、コンクリート組成物中の結合材の60%を超え90%以下の高炉スラグ微粉末が含まれる。
【0007】
また、本発明は、即時脱型コンクリートブロックの製造方法であって、ガラスカレットを骨材として含む即時脱型方式用のコンクリート組成物を加圧振動してブロック体を成形する成形工程と、ブロック体を炭酸化養生する養生工程と、を含み、コンクリート組成物には、質量比において、コンクリート組成物中の結合材の60%を超え90%以下の高炉スラグ微粉末が含まれる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートブロックの製造過程において、二酸化炭素の排出量を削減することができるとともに、ガラス廃材の再利用量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る即時脱型コンクリートブロックの製造工程を示したフローチャートである。
【
図2】曲げ強度試験の結果を対比して示したグラフである。
【
図3】曲げ強度試験の結果をプロットして示したグラフである。
【
図4】曲げ強度試験の結果を対比して示したグラフである。
【
図5】中性化深さの測定試験で撮像されたコンクリートブロックの破断面を示す画像である。
【
図6】促進膨張率試験の結果を対比して示したグラフである。
【
図7】曲げ強度試験の結果を対比して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る即時脱型コンクリートブロック及びその製造方法について説明する。
【0011】
本発明の実施形態に係る即時脱型コンクリートブロックは、ガラスカレットを骨材として含むコンクリート組成物を加圧振動して成形した後、炭酸化養生することにより製造される固化成形体であり、例えば、道路や歩道の舗装に用いられるインターロッキングブロックや河川や海岸において浸食を防ぐために用いられる護岸ブロックとして利用される。なお、コンクリートブロックの用途は、これらに限定されるものではない。
【0012】
本発明の実施形態に係る即時脱型コンクリートブロックを製造するために用いられる即時脱型方式用のコンクリート組成物には、水(W)と、骨材としてガラスカレット(RGC:再生ガラスカレット)が含まれる他、質量比において、コンクリート組成物中の結合材(セメント材)の30%を超え90%以下の高炉スラグ微粉末(BFS)が含まれる。また、即時脱型方式用のコンクリート組成物には、混和剤(AD)として即時脱型用AE剤が含まれている。
【0013】
ガラスカレット(RGC)は、廃棄されたガラス瓶などを微粉砕してカレット化または粉体化したものであり、近年では、再生可能エネルギーとして大量に導入された太陽光発電設備の経年劣化により廃棄された太陽光パネルのガラスを粉砕して生成されたものが増加している。ガラスカレットを骨材として利用することは、従来、骨材として用いられていた砂利等の天然資源の利用量を低減させることにつながるため、環境配慮の観点からも望まれている。
【0014】
一方で、ガラスカレットは、従来から用いられている一般的な骨材よりも密度が小さいことから、即時脱型コンクリートブロックの全骨材重量に対するガラスカレットの割合(置換率)を高めると、曲げ強度等の強度が低下するため、例えば、ガラス再資源協議会による「即時脱型コンクリート製品製造用再生ガラス骨材のガイドライン」では、ガラスカレットの置換率(質量比)を骨材量の8%以下とすることが規定されている。
【0015】
また、シリカ質であるガラスカレットは、普通ポルトランドセメント等の結合材の水和反応によって生成されたアルカリ成分と反応してアルカリシリカゲルとなるアルカリシリカ反応(ASR)を生じ、これに起因するひび割れが将来的に発生するおそれがある。
【0016】
このため、本実施形態では、炭酸化養生を行うことで、水和反応によって生成されたアルカリ成分を炭酸化により減少させるとともに、普通ポルトランドセメントよりもアルカリ成分の含有率が低い高炉スラグ微粉末をコンクリート組成物に含ませることで、アルカリ成分自体を低減させることによって、アルカリシリカ反応が生じることを抑制している。
【0017】
骨材には、ガラスカレットが含まれる他、砂利等の天然骨材、砕石等の人工骨材、及び、再生骨材が、JIS A 1102:2014等で定義される細骨材(S)及び粗骨材(G)として含まれる。なお、後述のように、骨材は、全量がガラスカレットであってもよいし、骨材のうち粗骨材(G)の全量がガラスカレットであってもよいし、骨材のうち細骨材(S)の全量がガラスカレットであってもよい。
【0018】
高炉スラグ微粉末(BFS)は、JIS A 6206:2013「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に規定される微粉末であり、その種類は、比表面積(cm2/g)によって4種類に分類されるが、本実施形態においては、何れの高炉スラグ微粉末が用いられてもよい。
【0019】
高炉スラグ微粉末は、ポルトランドセメントと比較し、その製造過程で生じる二酸化炭素の排出量、いわゆるCO2排出原単位(CO2排出係数)が約30分の1と小さいことから、コンクリート組成物中の結合材に含まれる高炉スラグ微粉末の割合を増やすことによって、即時脱型コンクリートブロックの製造に関わる二酸化炭素の排出量を削減することが可能である。
【0020】
即時脱型方式用のコンクリート組成物の主な結合材は、普通ポルトランドセメント(OPC)等のポルトランドセメントであり、高炉スラグ微粉末は、混和材として結合材に混合される。なお、即時脱型方式用のコンクリート組成物の結合材は、高炉スラグ微粉末(BFS)と普通ポルトランドセメント(OPC)等のセメント材とが予め混合された混合セメントである高炉セメント(ECM)であってもよい。また、ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント(OPC)に限定されず、他の種類のポルトランドセメント、例えば、早強ポルトランドセメントや中庸熱ポルトランドセメントが用いられてもよい。
【0021】
高炉セメント(ECM)には、全結合材に対する高炉スラグ微粉末の質量割合が、5%超30%以下のA種、30%超60%以下のB種、60%超70%以下のC種が存在するが、本実施形態では、上述のようにアルカリ成分を低減する観点とコンクリートブロックの製造に関わる二酸化炭素排出量の削減の観点から、B種またはC種、好ましくはC種を用いている。なお、後述のように、高炉スラグ微粉末の質量割合は、90%程度まで高めてもよい。
【0022】
また、即時脱型方式用のコンクリート組成物には、炭酸ガスと化学的に結合し得るダイカルカルシウムシリケートγ相(γ:γC2S)や炭酸ガスを固化した再生炭酸カルシウム(Et)が混和材として含まれていてもよい。このように炭酸ガスと化学的に結合し得る混和材や炭酸ガスを固化した混和材をコンクリート組成物に含ませることにより、即時脱型コンクリートブロックの製造に関わる二酸化炭素の排出量をさらに削減することが可能となる。
【0023】
なお、炭酸ガスと化学的に結合し得る混和材としては、ダイカルカルシウムシリケートγ相に代えて、高炉徐冷スラグ、製鋼スラグ、銅スラグ、フライアッシュ、下水汚泥焼却灰、バイオマス燃焼灰、シリカヒューム、ライスハスクアッシュ、消石灰、生石灰、天然ポゾラン等が用いられてもよく、また、炭酸ガスを固化した混和材としては、再生炭酸カルシウムに代えて、再生炭酸水素カルシウム、再生炭酸マグネシウム、再生炭酸水素マグネシウム、再生炭酸ナトリウム、再生炭酸水素ナトリウム、再生炭酸カリウム、再生炭酸水素ナトリウム、貝殻等が用いられてもよい。
【0024】
次に、
図1を参照し、即時脱型コンクリートブロックの製造工程について説明する。
【0025】
まず、ステップS11において、ガラスカレットが含まれる骨材、セメント等の結合材、及び、水といったコンクリート組成物に含まれる原材料の重量の計量が行われる(計量工程)。なお、原材料の配合比率等については後述する。
【0026】
計量された原材料は、続くステップS12において、混練用ミキサ内に投入され、3~5分程度、混練される(混練工程)。このように混練されて生成されたコンクリート組成物は、スランプ値が2.5mm未満の超固練りコンクリート、いわゆるゼロスランプコンクリートであって、即時脱型方式用のコンクリート組成物である。
【0027】
ステップS12において生成されたコンクリート組成物は、続くステップS13において、振動成形機に備え付けられた型枠内へと投入される。
【0028】
振動成形機は、テーブル振動機やプレス振動機であり、ステップS13では、型枠に充填された即時脱型方式用のコンクリート組成物を、これらの振動成形機を用いて所定の振動数(例えば、6000rpm)で所定時間(例えば、5秒間)加振し、所定の形状に成形する(成形工程)。
【0029】
成形が完了すると、型枠からブロック成形体(ブロック体)が取り外され、取り外されたブロック成形体は、続くステップS14において、比較のため以下の3つのパターンで養生される。
【0030】
第1パターンでは、屋内において14日間、炭酸化養生されることなく気中養生され、第2パターンでは、屋内において2日間の気中養生を経た後、炭酸化養生装置内でさらに7日間、炭酸化養生され(炭酸化養生工程)、第3パターンでは、屋内において7日間の気中養生を経た後、炭酸化養生装置内でさらに7日間、炭酸化養生される(炭酸化養生工程)。炭酸化養生は、例えば、温度50℃、湿度50%、二酸化炭素濃度80%という条件下で行われる。なお、炭酸化養生の条件は、これに限定されるものではない。
【0031】
所定の条件下での養生が終了すると、ブロック成形体は、所定の強度を有する固化成形体となる。
【0032】
以上のような工程を経て、ガラスカレットを骨材として含む即時脱型方式用のコンクリート組成物から即時脱型コンクリートブロックが製造される。
【0033】
続いて、下記の表1及び表2に示される組成のコンクリートブロックに対して行われた曲げ強度試験の結果について、表3,
図2及び
図3を参照して説明する。
【0034】
以下の各表中に記載されるWは水、Bは結合材、W/Bは水結合材比、s/aは細骨材率、OPCは普通ポルトランドセメント、BBは高炉セメントB種相当、ECMは高炉セメントC種、BFSは高炉スラグ微粉末、Sは細骨材、Gは粗骨材、RGCはガラスカレット、ADは混和剤(即時脱型用AE剤)を意味し、それぞれの密度(g/cm3)は以下の通りである。
【0035】
OPC:3.16、ECM:2.96、BFS:2.91、S:2.63、G:2.63、RGC:2.44、AD:1.03
【0036】
【0037】
【0038】
比較例1は、結合材を普通ポルトランドセメントのみとし、全骨材量(細骨材+粗骨材)の7%(質量比)をガラスカレットに置換した配合であり、比較例2は、普通ポルトランドセメントの代わりに高炉セメントC種を結合材とした上で、骨材をガラスカレットに置換しない配合(RGC置換率:0%)であり、実施例1~5は、普通ポルトランドセメントの代わりに高炉セメントC種を結合材とした上で、骨材をガラスカレットに置換した配合(RGC置換率:7~100%)であり、実施例11は、実施例2における結合材を、高炉セメントC種の代わりに高炉セメントC種相当の結合材(普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末を質量比で68%含有する結合材)とした配合である。なお、ガラスカレットは、実施例1~3では、粗骨材の一部として用いられており、実施例4では、粗骨材の全量がガラスカレットに置換されている。また、実施例5では、骨材の全量、すなわち、細骨材及び粗骨材の全量がガラスカレットに置換されている。
【0039】
表1及び表2に示される各実施例及び各比較例の配合で製造された即時脱型コンクリートブロックの試験片に対して行われた曲げ強度試験の結果を表3,
図2及び
図3に示す。試験片のサイズは、10cm×20cm×5cmであり、曲げ強度試験は、JIS A 5363:2016の「製品の曲げ耐力試験」に準じて行われた。なお、
図2は、比較例1と実施例1との曲げ強度を比較したグラフであり、
図3は、第2パターンで養生された比較例2及び実施例1~4と、第3パターンで養生された実施例5の曲げ強度をプロットしたグラフである。
【0040】
【0041】
図2に示されるように、ガラスカレットの置換率が同じである比較例1と実施例1とを比較すると、養生パターンが第1パターン(気中養生14日)では、強度発現に優れる普通ポルトランドセメントのみが結合材である比較例1の方が曲げ強度が高く、養生パターンが第2パターン(気中養生2日、炭酸化養生7日)では、アルカリ成分が比較的少ない高炉セメントC種が結合材である実施例1の方が曲げ強度が高い結果となった。炭酸化養生を行った場合、比較例1では、養生開始時のアルカリ濃度が高いことにより炭酸化の進行が遅くなった一方で、実施例1では、養生開始時のアルカリ濃度が比較的低いことで炭酸化がコンクリートブロックの中心部まで早く進行し、安定した鉱物である炭酸カルシウムが内部に多く生成され緻密化されたものと推定される。
【0042】
このように骨材にガラスカレットが含まれることで曲げ強度が低下するおそれがある場合であっても、結合材に高炉スラグ微粉末を含ませることと、養生工程において炭酸化養生を行うこととを組み合わせることによって、結合材が普通ポルトランドセメントのみである場合と比較し、曲げ強度を向上させることが可能である。
【0043】
ここで、上述のような工程を経て製造された即時脱型コンクリートブロックを、インターロッキングブロックとして用いる場合、例えば、JIS A 5371:2016に規格されるように道路用では5N/mm2、歩道用では3N/mm2の曲げ強度を有することが要求される。
【0044】
表3及び
図3に示されるように、ガラスカレットの置換率を7%(実施例1)から100%(実施例5)へと増加させた場合、骨材強度が大きい天然粗骨材の量が減ることで、その曲げ強度は、置換率の上昇に伴って低下しているものの、何れの配合においても、規格値(5N/mm
2)を上回る結果となった。
【0045】
このように骨材の全量をガラスカレットに置換した場合(実施例5)であっても規格値(5N/mm2)を上回る結果が得られたことから、ガラスカレットの置換率(質量比)は、上述の「即時脱型コンクリート製品製造用再生ガラス骨材のガイドライン」で規定された8%を超える大きさとすることが可能であって、例えば、100%まで引き上げることが可能である。
【0046】
なお、置換率31%までは七号砕石等の粗骨材に代えて粒径が2~5mmのガラスカレットが用いられ、置換率31%を超える部分については砕砂等の細骨材に代えて粒径が1.2mm未満の細粒ガラスカレットが用いられている。
【0047】
図3のグラフにおいて、置換率30%付近でその傾向が変わるのは、置換率30%付近から置換されるガラスカレットの粒径が小さくなったことによると考えられ、細粒ガラスカレットが曲げ強度に及ぼす影響は、粒径が2~5mmのガラスカレットよりも小さいといえる。
【0048】
また、表3に示されるように、実施例2と実施例11の曲げ強度は、ほぼ同等であることから、結合材として高炉セメントC種を用いた場合と、高炉セメントC種の代わりに普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末とを混合して生成された高炉セメントC種相当の結合材を用いた場合とで強度性能に大差はないことが示された。
【0049】
次に、高炉スラグ微粉末の配合量が曲げ強度に及ぼす影響について、下記の表4及び表5に示される各実施例及び比較例の配合で製造された即時脱型コンクリートブロックの試験片に対して行われた曲げ強度試験の結果を比較して示す
図4のグラフを参照して説明する。なお、試験片のサイズは、10cm×20cm×5cmであり、曲げ強度試験は、JIS A 5363:2016の「製品の曲げ耐力試験」に準じて行われた。
【0050】
【0051】
【0052】
比較例3は、結合材を普通ポルトランドセメントのみとし、全骨材量(細骨材+粗骨材)の20%(質量比)をガラスカレットに置換した配合であり、実施例12~15は、比較例3と同様にガラスカレット置換率を20%とした配合であって、実施例12は、結合材が、普通ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末を質量比で40%予め混合することにより高炉セメントB種相当とされた配合であり、実施例13は、結合材を高炉セメントC種とすることにより、高炉スラグ微粉末を質量比で68%含有させた配合であり、実施例14は、高炉スラグ微粉末を混和材として結合材に混合することにより、高炉スラグ微粉末を質量比で80%含有させた配合であり、実施例15は、高炉スラグ微粉末を混和材として結合材に混合することにより、高炉スラグ微粉末を質量比で90%含有させた配合である。
【0053】
図4に示されるように、結合材に含有される高炉スラグ微粉末を40%(実施例12)から90%(実施例15)へと増加させた場合、その曲げ強度は、高炉スラグ微粉末の質量割合の上昇に伴って低下しているものの、何れの配合においても、規格値(5N/mm
2)を上回る結果となった。なお、比較例3の曲げ強度は、第1パターンで養生された後に計測されたものであり、実施例12~15の曲げ強度は、第3パターンで養生された後に計測されたものである。
【0054】
このように高炉スラグ微粉末の質量割合を、高炉セメントC種またはC種相当よりも高い比率とした場合(実施例14や実施例15)であっても規格値(5N/mm2)を上回る結果が得られたことから、高炉スラグ微粉末の質量割合は、例えば、90%まで引き上げることが可能である。但し、十分な曲げ強度を確保し、耐久性を向上させるには、高炉スラグ微粉末の質量割合は、80%程度までとすることが好ましい。
【0055】
また、
図4に示される結果によれば、結合材を高炉セメントB種相当とした場合(実施例12)も、結合材を高炉セメントC種とした場合と同様に、結合材を普通ポルトランドセメントのみとした場合と比較し、曲げ強度を向上させることが可能である。
【0056】
続いて、炭酸化養生によるコンクリートブロック内のアルカリ成分の低減効果について、上記の表4及び表5に示される組成のコンクリートブロックに対して行われた中性化深さの測定試験の結果を示す
図5及び表6を参照して説明する。
【0057】
図5は、JIS A 1152:2018で定められたコンクリートの中性化深さの測定方法において、コンクリートブロックの破断面にフェノールフタレイン溶液(1%)を噴霧した際の写真であり、赤紫色に呈色した範囲がアルカリ性であることを示している。なお、
図5に示される写真のカラー写真を参考資料として物件提出書で提出する。
【0058】
【0059】
図5(参考資料)及び表6に示されるように、高炉スラグ微粉末の質量割合が高いほど、炭酸化養生後の炭酸化深さが深くなっていることから、高炉スラグ微粉末をコンクリート組成物に含ませることによって、炭酸化養生による炭酸化が早期にコンクリートブロック内部まで進行し、二酸化炭素がコンクリートブロック内に効率的に固化されていることがわかる。
【0060】
また、
図5(参考資料)に示されるように、フェノールフタレイン溶液が赤紫色に呈色した範囲の面積が炭酸化養生によって減少していることから、コンクリートブロック内のアルカリ成分が減少し、結果として、シリカ質であるガラスカレットがアルカリ成分と反応してアルカリシリカゲルとなるアルカリシリカ反応(ASR)が生じることを抑制することが可能となる。
【0061】
続いて、上述のアルカリシリカ反応の抑制効果を確認するために行われた促進膨張率試験の結果を示す
図6を参照し、ガラスカレット置換率が膨張率に及ぼす影響について説明する。なお、促進膨張率試験は、表7に示される組成のコンクリートブロックを第3パターンで養生した後に行われた。
【0062】
【0063】
図6に示される膨張率は、促進膨張率試験の1つである飽和NaCl溶液浸漬法(デンマーク法)によって測定されたものであり、所定の大きさに切り出された供試体を、所定の温度(50℃)に保たれた飽和NaCl溶液に所定の養生期間(13週間)浸漬することによって測定される。この方法における膨張率の判定基準は、0.1%未満であれば「膨張性なし」、0.4%以上であれば「膨張性あり」、0.1~0.4%であれば「不明確」となっている。
【0064】
図6に示されるように、ガラスカレットが含まれていない比較例2では、膨張率がほぼ0%であるのに対して、ガラスカレット置換率が高くなるほど膨張率は大きくなっているものの、ガラスカレット置換率が100%である実施例5においても「膨張性なし」と判定される膨張率となっている。
【0065】
このようにガラスカレット置換率を比較的高くした場合(実施例5)であっても、促進膨張率試験において、「膨張性なし」と判定されることから、上述の炭酸化養生によるアルカリ成分の低減効果や普通ポルトランドセメントよりもアルカリ成分の含有率が低い高炉スラグ微粉末をコンクリート組成物に含ませることによる効果によって、アルカリシリカ反応(ASR)による劣化のリスクが十分に低く抑えられているといえる。
【0066】
次に、下記の表8及び表9に示される組成のコンクリートブロックに対して行われた曲げ強度試験の結果及び二酸化炭素の排出量削減効果について、表10を参照して説明する。
【0067】
表8及び表9中に新たに記載されるγは炭酸化混和材(γC2S)、Etは再生炭酸カルシウム(混和材)を意味し、それぞれの密度(g/cm3)は以下の通りであり、その他の記載は表1及び表2と同様である。
【0068】
γ:3.06、Et:2.46
【0069】
【0070】
【0071】
実施例21は、実施例1~5と同様に結合材を高炉セメントC種とした上で、全骨材量(細骨材+粗骨材)の20%(質量比)をガラスカレットに置換した配合であり、実施例22は、実施例21の高炉セメントC種の内割り30%を炭酸ガスと化学的に結合する混和材である炭酸化混和材(γC2S)に置き換えた配合であり、実施例23は、実施例21の高炉セメントC種の内割り30%を予め炭酸ガスを固定化させた混和材である再生炭酸カルシウムに置き換えた配合である。なお、比較例1は、表1及び表2の比較例1と同じ配合であり、ガラスカレットは、何れの配合においても粗骨材として用いられている。
【0072】
表8及び表9に示される各実施例及び比較例の配合で製造された即時脱型コンクリートブロックの試験片に対して行われた曲げ強度試験の結果とともに、二酸化炭素の排出量の削減量の算出結果を表10に示す。試験片のサイズは、10cm×20cm×5cmであり、曲げ強度試験は、JIS A 5363:2016の「製品の曲げ耐力試験」に準じて行われた。
【0073】
また、二酸化炭素の排出量の算定において用いたCO2排出原単位(CO2排出係数)は、2012年土木学会コンクリートライブラリー134に示された数値(例えば、ポルトランドセメント:766.6(kg-CO2/t),砕砂:3.7(kg-CO2/t),砕石:2.9(kg-CO2/t),高炉スラグ微粉末:26.5(kg-CO2/t))であり、ガラスカレットは廃棄物であることからCO2排出原単位を0とし、混和剤については微量であることから二酸化炭素の排出量を0とした。なお、炭酸化混和材(γ)のCO2排出原単位は、下記文献1に記載された数値(125(kg-CO2/t))を用い、再生炭酸カルシウム(Et)のCO2排出原単位は、下記文献2に記載された数値(-390(kg-CO2/t))を用いた。
【0074】
文献1)取違剛ら:「CO2排出量ゼロ以下の環境配慮型コンクリートCO2 SUICOM」,セメントコンクリ―ト,Vol.786,pp.26-31,2012
文献2)八木利之ら:エコタンカルCO2を原料とした環境にやさしい軽質炭酸カルシウム,土木施工,Vol.62,No.11,pp.87-90,2021.11
【0075】
表10中のCO2削減量とは、比較例1の普通ポルトランドセメントを用いて製造された基準となるコンクリートブロックを製造する過程で排出されたCO2排出量(比較例1のC1)から各配合の実質CO2排出量(C1-C2)を減じたものであり、実質CO2排出量とは、各配合のコンクリートブロックを製造する過程で排出されたCO2排出量(C1)から炭酸化養生によってコンクリートブロック中に固定されたCO2固定量(C2)を減じたものである。なお、CO2固定量(C2)は、実施例21~24の試験片を全炭素量(TC)分析することにより測定され、具体的には、炭酸化養生の後、コンクリートブロックの破断面から採取された試料を、アセトンによる水和停止処理を行ってから粉砕し、全有機炭素計によって測定される。
【0076】
【0077】
表10に示されるように、炭酸ガスと化学的に結合する混和材を含む実施例22の曲げ強度も、炭酸ガスを固定化させた混和材を含む実施例23の曲げ強度も、これらの混和材を含まない実施例21の曲げ強度と同等であり、何れの配合においても、上述の規格値(5N/mm2)を上回る結果となった。
【0078】
また、表10に示されるように、炭酸ガスと化学的に結合する混和材を含む実施例22のCO2削減率(基準となる比較例1のCO2排出量に対するCO2削減量の比率)は、96.6%となり、炭酸ガスを固定化させた混和材を含む実施例23のCO2削減率は、105.5%と、カーボンネガティブとなり、これらの混和材を含まない実施例21においてもCO2削減率は、86.3%となった。
【0079】
このように、炭酸ガスと化学的に結合する混和材や炭酸ガスを固定化させた混和材を含む配合とすることによって、曲げ強度を低下させることなく、大幅に二酸化炭素の排出量を削減することが可能であり、また、結合材を高炉セメントC種とした配合とするだけでも、結合材を普通ポルトランドセメントとした場合と比較し、大幅に二酸化炭素の排出量を削減することが可能である。なお、結合材を高炉セメントB種またはB種相当とした場合も、結合材を高炉セメントC種とした場合ほどの効果は得られないとしても、結合材を普通ポルトランドセメントとした場合と比較し、二酸化炭素の排出量を削減することができると推定される。
【0080】
次に、上述の炭酸ガスと化学的に結合する混和材や炭酸ガスを固定化させた混和材が曲げ強度に及ぼす影響について、下記の表11に示される実施例及び比較例の配合で製造された即時脱型コンクリートブロックの試験片に対して行われた曲げ強度試験の結果を示す
図7を参照して説明する。なお、試験片のサイズは、10cm×20cm×5cmであり、曲げ強度試験は、JIS A 5363:2016の「製品の曲げ耐力試験」に準じて行われた。
【0081】
【0082】
比較例2は、上述のように、結合材が高炉セメントC種であり、骨材をガラスカレットに置換しない配合であり、比較例4は、比較例2の高炉セメントC種の内割り30%を炭酸化混和材(γC2S)に置き換え、高炉セメントC種の内割り30%を再生炭酸カルシウムに置き換えた配合であり、実施例24は、比較例4の全骨材量(細骨材+粗骨材)の20%(質量比)をガラスカレットに置換した配合である。
【0083】
図7に示されるように、曲げ強度は、結合材に炭酸ガスと化学的に結合する混和材及び炭酸ガスを固定化させた混和材が含有されることによって低下し、さらに、骨材の一部をガラスカレットに置換することによって低下しているものの、実施例24の曲げ強度は、規格値(5N/mm
2)を上回る結果となった。なお、
図7に示される曲げ強度は、第3パターンで養生された後に計測されたものである。
【0084】
このように結合材に炭酸ガスと化学的に結合する混和材及び炭酸ガスを固定化させた混和材を含有させるとともに骨材の一部をガラスカレットに置換した場合(実施例24)であっても規格値(5N/mm2)を上回る結果が得られたことから、ガラス廃材の利用量を増大させつつ、二酸化炭素の排出量を大幅に削減することが可能である。なお、実施例24では炭酸ガスと化学的に結合する混和材と炭酸ガスを固定化させた混和材とが一緒に配合されているが、例えば、実施例22や実施例23のように、これらは別々に配合されていてもよい。
【0085】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0086】
上述の即時脱型コンクリートブロックは、ガラスカレットを骨材として含む即時脱型方式用のコンクリート組成物を加圧振動して成形した後、炭酸化養生することにより製造され、コンクリート組成物には、質量比において、コンクリート組成物中の結合材の30%を超え90%以下の高炉スラグ微粉末が含まれる。
【0087】
骨材に含まれるガラスカレットの量を多くするほど、将来的なひび割れの原因となるアルカリシリカ反応を生じる可能性が高くなるが、コンクリート組成物に高炉スラグ微粉末を含ませることによりアルカリ成分自体を低減させることと、養生工程において炭酸化養生を行うことにより水和反応によって生成されたアルカリ成分を炭酸化により減少させることとを組み合わせることによって、結合材がポルトランドセメントのみである場合と比較し、アルカリシリカ反応が生じることを抑制することが可能となる。
【0088】
これにより、骨材に含まれるガラスカレットの量を増やすことが可能となり、結果として、太陽光パネル等のガラス廃材の利用量を増大させるとともに、骨材として用いられていた砂利等の天然資源の利用量を低減させることができる。また、アルカリシリカ反応に起因するひび割れの発生が将来的に抑制されることから、曲げ強度が規格値(5N/mm2)を上回る範囲において、ガラスカレットの置換率を、「即時脱型コンクリート製品製造用再生ガラス骨材のガイドライン」で規定された8%を超える大きさとすることも可能である。
【0089】
また、ポルトランドセメントよりもCO2排出原単位が小さい高炉スラグ微粉末をコンクリート組成物に含ませることと、コンクリートブロック内に二酸化炭素を固化することになる炭酸化養生を行うこととを組み合わせることによって、結合材がポルトランドセメントのみである場合と比較し、コンクリートブロックの製造過程において排出される二酸化炭素の量を大幅に削減することができる。
【0090】
また、骨材に含まれるガラスカレットの量を多くするほど、コンクリートブロックの強度が低下するおそれがあるが、コンクリート組成物に高炉スラグ微粉末を含ませることと、養生工程において炭酸化養生を行うこととを組み合わせ、コンクリートブロックの中心部まで炭酸化を進行させてコンクリートブロック内部に多くの炭酸カルシウムを生成することによって、結合材がポルトランドセメントのみである場合と比較し、コンクリートブロックの強度及び耐久性を向上させることが可能である。
【0091】
このように実施形態によれば、高炉スラグ微粉末をコンクリート組成物に含ませることと、養生工程において炭酸化養生を行うこととを組み合わせることによって、結合材がポルトランドセメントのみである場合と比較し、骨材に含まれるガラスカレットの量を増やすことができるという効果と、コンクリートブロックの製造過程において排出される二酸化炭素の量を削減することができるという効果と、コンクリートブロックの強度及び耐久性を向上させることができるという効果と、を同時に達成することができる。
【0092】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0093】
上記実施形態では、ガラスカレットは、骨材のうち、主に粗骨材として利用されている。これに代えて、粉体化されたガラスカレットを主に細骨材として利用するようにしてもよい。また、粗骨材の一部及び細骨材の一部としてガラスカレット利用するようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、結合材を高炉セメントC種とした場合について主に説明したが、結合材は、高炉セメントC種相当の結合材(普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末を質量比で60%を超え70%以下で含有する結合材)であってもよい。また、結合材は、高炉セメントB種またはB種相当の結合材(普通ポルトランドセメントと高炉スラグ微粉末を質量比で30%を超え60%以下で含有する結合材)であってもよい。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。