(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】注出具および包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 75/58 20060101AFI20250303BHJP
B65D 41/04 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
B65D75/58
B65D41/04
(21)【出願番号】P 2020158542
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2019194217
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】710006932
【氏名又は名称】株式会社パックプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友彰
(72)【発明者】
【氏名】新畑 有麻
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-062692(JP,A)
【文献】特表2006-506292(JP,A)
【文献】特開2019-031299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/58
B65D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器に設けられるスパウトと、該スパウトを閉栓するキャップとからなり、
前記スパウトは、前記包装容器に設けられるスパウト本体と、該スパウト本体の上方に設けられる筒状体とを備え、前記スパウトの内部を軸方向に貫通する流通路が設けられ、
前記キャップは、平板状または環状の頂壁部と、該頂壁部の外周縁から下方に延びる周壁部とを備える注出具であって、
前記筒状体は、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記キャップの周壁部に被覆される口部と、前記キャップの周壁部よりも下方に突出する胴体部とを備え、該胴体部が前記スパウト本体に形成された嵌合孔に軸方向に嵌合され、
前記筒状体は、前記キャップにより被覆される口部の領域において、薄肉状に形成された上側の薄肉口部と、厚肉状に形成された下側の厚肉口部とを備え、
前記キャップは、前記頂壁部の下面から下方に延びる栓体部を備え、
前記栓体部は、前記頂壁部から下方に延びる栓体周壁部と、該栓体周壁部に設けられた栓体底壁部とを備え、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記スパウトの前記筒状体の前記流通路に挿入されたあと、前記キャップにより被覆されている前記スパウトの口部の領域内に位置して、前記栓体底壁部が前記筒状体の前記厚肉口部
の上部に当接することにより、
前記筒状体の前記薄肉口部の前記流通路が前記栓体底壁部により閉塞されるとともに、前記筒状体の前記厚肉口部の前記流通路が前記栓体底壁部と前記厚肉口部に囲まれることを特徴とする注出具。
【請求項2】
包装容器に設けられるスパウトと、該スパウトを閉栓するキャップとからなり、
前記スパウトは、前記包装容器に設けられるスパウト本体と、該スパウト本体の上方に設けられる筒状体とを備え、前記スパウトの内部を軸方向に貫通する流通路が設けられ、
前記キャップは、平板状または環状の頂壁部と、該頂壁部の外周縁から下方に延びる周壁部とを備える注出具であって、
前記筒状体は、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記キャップの周壁部に被覆される口部と、前記キャップの周壁部よりも下方に突出する胴体部とを備え、該胴体部が前記スパウト本体に形成された嵌合孔に軸方向に嵌合され、
前記筒状体は、前記胴体部が前記スパウト本体の前記嵌合孔の下端部まで軸方向に延びるとともに、前記流通路が前記筒状体の内部を軸方向に貫通し、
前記筒状体は、前記胴体部の下端部において前記スパウト本体の前記嵌合孔の下端部に引掛けるための爪部が設けられていることを特徴とする注出具。
【請求項3】
包装容器に設けられるスパウトと、該スパウトを閉栓するキャップとからなり、
前記スパウトは、前記包装容器に設けられるスパウト本体と、該スパウト本体の上方に設けられる筒状体とを備え、前記スパウトの内部を軸方向に貫通する流通路が設けられ、
前記キャップは、平板状または環状の頂壁部と、該頂壁部の外周縁から下方に延びる周壁部とを備える注出具であって、
前記筒状体は、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記キャップの周壁部に被覆される口部と、前記キャップの周壁部よりも下方に突出する胴体部とを備え、該胴体部が前記スパウト本体に形成された嵌合孔に軸方向に嵌合され、
前記スパウト本体および前記筒状体は、前記嵌合孔の内面および前記胴体部の外面において、互いに噛み合うローレットが周方向に沿って形成されていることを特徴とする注出具。
【請求項4】
包装容器に設けられるスパウトと、該スパウトを閉栓するキャップとからなり、
前記スパウトは、前記包装容器に設けられるスパウト本体と、該スパウト本体の上方に設けられる筒状体とを備え、前記スパウトの内部を軸方向に貫通する流通路が設けられ、
前記キャップは、平板状または環状の頂壁部と、該頂壁部の外周縁から下方に延びる周壁部とを備える注出具であって、
前記筒状体は、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記キャップの周壁部に被覆される口部と、前記キャップの周壁部よりも下方に突出する胴体部とを備え、該胴体部が前記スパウト本体に形成された嵌合孔に軸方向に嵌合され、
前記筒状体は、下方に開口する環状の嵌合凹部が設けられ、
前記スパウト本体は、上方に突出する環状の嵌合凸部が設けられ、
前記筒状体が前記スパウト本体の前記嵌合孔に嵌合された際、前記筒状体の前記嵌合凹部と前記スパウト本体の前記嵌合凸部が互いに嵌合するものとなされ、
前記嵌合凹部および前記嵌合凸部は、互いに噛み合うローレットが周方向に沿って形成されていることを特徴とする注出具。
【請求項5】
包装容器に設けられるスパウトと、該スパウトを閉栓するキャップとからなり、
前記スパウトは、前記包装容器に設けられるスパウト本体と、該スパウト本体の上方に設けられる筒状体とを備え、前記スパウトの内部を軸方向に貫通する流通路が設けられ、
前記キャップは、平板状または環状の頂壁部と、該頂壁部の外周縁から下方に延びる周壁部とを備える注出具であって、
前記筒状体は、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記キャップの周壁部に被覆される口部と、前記キャップの周壁部よりも下方に突出する胴体部とを備え、該胴体部が前記スパウト本体に形成された嵌合孔に軸方向に嵌合され、
前記筒状体は、前記スパウト本体と異なる材質であって、該筒状体についてのみ、ポリエステル樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、ポリグリコール酸樹脂(PGA)、ポリアセタール系樹脂(POM)、またはポリ塩化ビニル樹脂(PVC)からなる酸素バリア性が高い材質であることを特徴とする注出具。
【請求項6】
包装容器に設けられるスパウトと、該スパウトを閉栓するキャップとからなり、
前記スパウトは、前記包装容器に設けられるスパウト本体と、該スパウト本体の上方に設けられる筒状体とを備え、前記スパウトの内部を軸方向に貫通する流通路が設けられ、
前記キャップは、平板状または環状の頂壁部と、該頂壁部の外周縁から下方に延びる周壁部とを備える注出具であって、
前記筒状体は、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記キャップの周壁部に被覆される口部と、前記キャップの周壁部よりも下方に突出する胴体部とを備え、該胴体部が前記スパウト本体に形成された嵌合孔に軸方向に嵌合され、
前記筒状体は、前記スパウト本体と異なる材質であって、該筒状体についてのみ、ポリ塩化ビニリデン、アルミ箔又はガラス蒸着でコーティングされることにより酸素バリア性が高められていることを特徴とする注出具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の注出具が設けられていることを特徴とする包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、食品、化学品、医薬品、洗剤、化粧料などの内容物を収容する包装容器に設けられる注出具並びに該注出具が設けられた包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、飲料、食品、化学品、医薬品、洗剤、化粧料などの内容物を収容する包装容器において、内容物を注出するためにスパウトとキャップからなる注出具が設けられるものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャップによりスパウトが閉栓される際、スパウトの筒状体がキャップの周壁部と栓体部の間に挿入されるとともに、キャップの栓体部がスパウトの筒状体の流通路に挿入されるものが開示されている。
【0004】
このようなスパウトとキャップからなる注出具は、上述のように飲料、食品、化学品、医薬品、洗剤、化粧料などの内容物を収容する関係上、酸素を透過させないように酸素バリア性を向上させ、内容物の酸化を防止することが求められている。
【0005】
そして、注出具の酸素バリア性を高める手段として、スパウトの内面に酸素を透過させない薄膜のバリア部材を設けることが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-197030号公報
【文献】特開2007-238106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、酸素を透過させない薄膜のバリア部材は、例えばエチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリア樹脂の層を備えたものなどが知られているが、それらの素材は高価である上、スパウトの内面に設けるにはインサート成形という特殊な手段を用いなければならず、製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
この点、スパウトの厚みを大きくするなどしてスパウトの形状を変更したり、スパウトの材質を酸素バリア性の高いものにすれば、酸素の透過を防止または軽減して、酸素バリア性を高めることができるが、内容物が異なる包装容器ごとにスパウト全体の形状や材質を変更することは製造コストが高くなるという問題があった。
【0009】
このことを具体的に説明すると、スパウトの構成中、包装容器にシールされるシール部は包装容器に被覆されるため、酸素バリア性が概ね高い状態となっている場合が多い。
【0010】
ところが、スパウトの構成中、キャップにより被覆される口部は、内容物を注出する関係上、薄肉状に形成されているため、必要な酸素バリア性を維持していない場合がある。
【0011】
つまり、スパウトの構成中、特にキャップにより被覆される口部が必要な酸素バリア性を維持していない場合があるが、その口部の酸素バリア性を高めるためだけに、スパウト全体の形状や材質を変更して製造コストが高くなるという問題があった。
【0012】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、スパウトの酸素バリア性を簡単に高めることができ、ひいては製造コストを抑えることが可能な注出具並びに包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、包装容器に設けられるスパウトと、該スパウトを閉栓するキャップとからなり、前記スパウトは、前記包装容器に設けられるスパウト本体と、該スパウト本体の上方に設けられる筒状体とを備え、前記スパウトの内部を軸方向に貫通する流通路が設けられ、前記キャップは、平板状または環状の頂壁部と、該頂壁部の外周縁から下方に延びる周壁部とを備える注出具であって、前記筒状体は、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記キャップの周壁部に被覆される口部と、前記キャップの周壁部よりも下方に突出する胴体部とを備え、該胴体部が前記スパウト本体に形成された嵌合孔に軸方向に嵌合されることを特徴とする。
【0014】
これによれば、口部と胴体部からなる筒状体がスパウト本体と別体に構成されるため、スパウトの筒状体についてのみ、酸素バリア性が高い形状や厚みにすれば、スパウトの口部の酸素バリア性を簡単に高めることができる。また、筒状体の胴体部とスパウト本体の二重構造によって、スパウトのシール部やフランジ部の酸素バリア性も高めることができる。よって、内容物が異なる包装容器に応じてスパウトの酸素バリア性を簡単に高めることができ、ひいては製造コストを抑えることができる。
【0015】
また、前記筒状体は、前記キャップにより被覆される口部の領域において、薄肉状に形成された上側の薄肉口部と、厚肉状に形成された下側の厚肉口部とを備えてもよい。これによれば、スパウトの口部の外観の意匠性を高めることができる。
【0016】
また、前記キャップは、前記頂壁部の下面から下方に延びる栓体部を備え、前記栓体部は、前記キャップにより前記スパウトが閉栓された際、前記スパウトの前記筒状体の前記流通路に挿入されたあと、前記キャップにより被覆されている前記スパウトの口部の領域内に位置して、前記筒状体の前記厚肉口部に当接することにより、前記筒状体の前記薄肉口部の流通路を閉塞してもよい。これによれば、簡易な構成にして、スパウトの口部の酸素バリア性を確実に高めることができる。
【0017】
また、前記筒状体は、前記胴体部が前記スパウト本体の前記嵌合孔の下端部まで軸方向に延びるとともに、前記流通路が前記筒状体の内部を軸方向に貫通してもよい。これによれば、胴体部がスパウト本体の嵌合孔の下端部まで軸方向に延びているため、筒状体をスパウト本体の嵌合孔に安定良く嵌合することができる。また、胴体部とスパウト本体全体の二重構造となるため、スパウトのシール部やフランジ部の全体の酸素バリア性を高めることができる。また、流通路が筒状体の内部のみに設けられるため、包装容器の内容物を安定良く注出することができる。
【0018】
前記筒状体は、前記胴体部の下端部において前記スパウト本体の前記嵌合孔の下端部に引掛けるための爪部が設けられてもよい。これによれば、筒状体の胴体部がスパウト本体の嵌合孔に嵌合した際、筒状体の爪部がスパウト本体の嵌合孔の下端部に引っ掛けられるため、筒状体がスパウト本体から抜けることを防止することができる。
【0019】
また、前記筒状体は、前記胴体部の外面に一ないし複数の環状の突起が設けられていてもよい。これによれば、筒状体の胴体部がスパウト本体の嵌合孔に嵌合した際、筒状体とスパウト本体の間の嵌合強度を向上させることができ、ひいては筒状体とスパウト本体の間の気密性の向上、筒状体の抜け防止、筒状体の回転防止を奏することが可能となる。
【0020】
前記スパウト本体および前記筒状体は、嵌合孔の内面および胴体部の外面において、互いに噛み合うローレットが周方向に沿って形成されてもよい。これによれば、筒状体の胴体部がスパウト本体の嵌合孔に嵌合した際、ローレットにより筒状体がスパウト本体に対して回転することを防止することができる。
【0021】
また、前記筒状体は、下方に開口する環状の嵌合凹部が設けられ、前記スパウト本体は、上方に突出する環状の嵌合凸部が設けられ、前記筒状体が前記スパウト本体の前記嵌合孔に嵌合された際、前記筒状体の前記嵌合凹部と前記スパウト本体の前記嵌合凸部が互いに嵌合してもよい。これによれば、筒状体の胴体部をスパウト本体の嵌合孔により強固に嵌合することができる。
【0022】
また、前記嵌合凹部および/または嵌合凸部は、複数のローレットが形成されてもよい。これによれば、筒状体がスパウト本体に対して不用意に周方向に回転することを防止できる。
【0023】
前記嵌合凹部および前記嵌合凸部は、互いに噛み合うローレットが周方向に沿って形成されてもよい。これによれば、筒状体の嵌合凹部とスパウト本体の嵌合凸部が互いに嵌合した際、ローレットにより筒状体がスパウト本体に対して回転することを防止することができる。
【0024】
また、前記筒状体は、前記スパウト本体と異なる材質であって、酸素バリア性を有する材質からなるものであってもよい。これによれば、筒状体の酸素バリア性を簡単かつ確実に高めることができる。
【0025】
また、本発明に係る包装容器は、上記の注出具が設けられていることを特徴とする。これによれば、酸素バリア性の高い注出具によって包装容器の内容物の酸化を防止または軽減することができるため、信頼性の高い包装容器を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、口部と胴体部からなる筒状体がスパウト本体と別体に構成されるため、スパウトの筒状体ついてのみ、一部または全部の厚みが大きい形状としたり、酸素バリア性を有する材質にすれば、スパウトの口部の酸素バリア性を簡単に高めることができる。
【0027】
また、筒状体の胴体部とスパウト本体の二重構造によって、スパウトのシール部やフランジ部の酸素バリア性も高めることができる。
【0028】
よって、内容物が異なる包装容器に応じてスパウトの酸素バリア性を高めることができ、ひいては製造コストを抑えることができる。
【0029】
しかも、包装容器に内容物を充填する際、筒状体がスパウト本体に嵌合される前段階ではスパウト本体の嵌合孔が大きく開口した状態であるため、包装容器の内容物をスパウト本体の嵌合孔を通じて速やかに充填することができる。一方、包装容器から内容物を注出する際、筒状体がスパウト本体に嵌合された状態であるため、包装容器の内容物をスパウトの流通路から適量で注出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る注出具において、キャップとスパウトを分解した状態を示す正面図である。
【
図2】
図1の注出具において、キャップとスパウトを分解した状態を示す正面断面図である。
【
図3】
図1の注出具において、キャップによりスパウトを閉栓した状態を示す(a)正面図と、(b)側面図である。
【
図4】
図1の注出具において、キャップによりスパウトを閉栓した状態を示す(a)正面断面図と、(b)側面断面図である。
【
図5】
図4の(a)A-A線断面矢視図、(b)B-B線断面矢視図、(c)C-C線断面矢視図、(d)D-D線断面矢視図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る注出具において、キャップとスパウトを分解した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6の注出具において、キャップによりスパウトを閉栓した状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る注出具の第1の実施形態について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において、「上側」とは、注出具の軸方向(
図1の上下方向)に対してキャップ2が設けられる側をいい、「下側」とは、注出具の軸方向(
図1の上下方向)に対して包装容器Pが設けられる側をいう。
【0032】
本注出具は、
図1~
図3に示すように、包装容器Pに設けられるポリエチレン製のスパウト1と、該スパウト1を閉栓するポリエチレン製のキャップ2とからなる。この包装容器Pは、例えば、スタンディングパウチやガゼット袋など、合成樹脂製の可撓性のシート部材からなるものが挙げられる。
【0033】
前記スパウト1は、
図1および
図2に示すように、包装容器Pに設けられるスパウト本体11と、スパウト本体11の上方に設けられた筒状体12とを備える。
【0034】
前記スパウト本体11は、
図4に示すように、包装容器Pのシート部材に溶着されるシール部S(外側部分)と、該シール部Sの上方に連接するフランジ部F(外側部分)とから構成され、嵌合孔116が上側から下側にかけて軸方向に貫通している。この嵌合孔116は、軸方向に同一の内径に形成されており、後述の筒状体12の胴体部123が嵌合される。なお、嵌合孔116は、必ずしも軸方向に同一の内径に形成されなくてもよい。
【0035】
前記スパウト本体11は、
図5(d)に示すように、シール部Sの外側部分において、包装容器Pの左右方向(
図5(d)の左右方向)の厚みが包装容器Pの前後方向(
図5(d)の上下方向)の厚みより大きな厚肉状の横断面視舟型形状に形成された被覆部111を備える。
【0036】
また、前記スパウト本体11は、シール部Sの外側部分において、被覆部111の前側(
図5(d)の上側)の外面が包装容器Pの前側のシート部材に被覆されるとともに、被覆部111の後側(
図5(d)の下側)の外面が包装容器Pの後側のシート部材に被覆されるため、スパウト本体11が本来有している厚みと相俟って、酸素バリア性を高めることができる。
【0037】
また、前記スパウト本体11は、
図4および
図5(c)に示すように、フランジ部Fの外側部分において、軸方向に延びる中間軸112と、該中間軸112の上側に設けられた環状の上側フランジ113と、該中間軸112の下側に設けられた環状の下側フランジ114とを備える。この筒状体12のフランジ部Fは、筒状体12の口部Kに対して台座としての機能を有するとともに、内容物の充填時において上側フランジ113と下側フランジ114の間に吊下部材により挟着されることにより包装容器Pを吊り下げる機能を有する。
【0038】
また、前記スパウト本体11は、上側フランジ113の嵌合孔116の内周縁において、軸方向の上方に突出する環状の嵌合凸部115が形成され、
図2に示すように、該嵌合凸部115の内面にローレットが周方向に沿って形成されている。
【0039】
前記筒状体12は、
図4に示すように、キャップ2(後述の周壁部22)に被覆される口部Kと、該口部Kの下方に連設するフランジ部F(内側部分)と、該フランジ部Fの下方に連設するシール部S(内側部分)とから構成される。
【0040】
また、前記筒状体12は、筒状体12の内部に流通路13が設けられている。この流通路13は、筒状体12の内部を上側から下側にかけて軸方向に貫通しており、包装容器Pの内容物の充填および注出に際して内容物が通過する。本実施形態では、流通路13は、上側から下側にかけて軸方向に同一の内径に形成されている。
【0041】
また、前記筒状体12は、キャップ2(後述の周壁部22)により被覆される口部Kにおいて、薄肉状に形成された上側の薄肉口部121と、厚肉状に形成された下側の厚肉口部122とを備える。
【0042】
前記薄肉口部121は、筒状体12の口部Kにおける上側部分(本実施形態では口部Kの高さの1/2程度の高さ)において、上端部から前記厚肉口部122との境界部分にかけて軸方向に概ね同一の厚み(0.5mm~2mm)の薄肉状に形成されている。このように筒状体12の口部Kの上側部分が薄肉状に形成されるため、スパウト1の外観の意匠性を向上させることができる。
【0043】
また、キャップ2の栓体底壁部232がスパウト1の厚肉口部122に到達する位置にあるため、スパウト1の口部Kの上側部分の内径を小さくする必要がなく、内容物の充填や注出の機能性を向上させることができる。なお、薄肉口部121は薄肉状に形成されているが、後述のようにキャップ2の栓体部23によって薄肉口部121の流通路13が閉塞されるため、筒状体12の口部Kの上側部分の酸素バリア性を高めることができる。
【0044】
前記厚肉口部122は、筒状体12の口部Kにおける中間部分において、上側から下側にかけて次第に厚みが増すように外面がテーパ状に形成されている。また、前記厚肉口部122は、筒状体12の口部Kにおける下側部分において、軸方向に同一の厚み(4mm~10mm)の厚肉状に形成されている。このように厚肉口部122は、薄肉口部121より厚みが大きい厚肉状に形成されるため、筒状体12の口部Kの中間部分および下側部分の酸素バリア性を向上させることができる。
【0045】
また、前記厚肉口部122は、周方向に沿って下方に開口する環状の嵌合凹部122aが設けられており、スパウト本体11の嵌合凸部115と嵌合するようになっている。このため、筒状体12の胴体部123をスパウト本体11の嵌合孔116に強固に嵌合することができる。
【0046】
また、前記嵌合凹部122aは、前記嵌合凸部115に形成されたローレットと互いに噛み合うローレットが周方向に沿って形成されている。このため、スパウト本体11の嵌合凸部115と筒状体12の嵌合凹部122aが互いに嵌合した際、嵌合凹部122aと嵌合凸部115のローレットが互いに噛み合うことにより、筒状体12がスパウト本体11に対して回転することを防止することができる。
【0047】
また、前記筒状体12は、フランジ部Fの内側部分およびシール部Sの内側部分において、軸方向に延びる胴体部123を備える。
【0048】
前記胴体部123は、
図4に示すように、前記スパウト本体11の嵌合孔116に軸方向に嵌合され、かつ前記キャップ2により前記スパウト1が閉栓された際、前記キャップ2の周壁部22よりも下方に突出するものとなされている。特に本実施形態では、前記胴体部123は、前記スパウト本体11の嵌合孔116の下端部まで軸方向に延びているため、筒状体12の胴体部123をスパウト本体11の嵌合孔116に安定良く嵌合することができる。
【0049】
前記胴体部123は、スパウト本体11の嵌合孔116の内径と同一程度の外径に形成されている。このため、筒状体12の胴体部123は、スパウト本体11の嵌合孔116に嵌合された際、外面が該嵌合孔116の内面に密着状態に当接する。特に本実施形態では、
図2に示すように、前記筒状体12の胴体部123の上側および下側の外周面にそれぞれ環状の突起123a、123bが設けられているため、筒状体12とスパウト本体11の間の嵌合強度を向上させることができ、ひいては筒状体12とスパウト本体11の間の気密性の向上、筒状体12の抜け防止、筒状体12の回転防止を奏することが可能となる。
【0050】
前記キャップ2は、
図2に示すように、平面視円形の環状の頂壁部21と、該頂壁部21の外周縁から下方に延びる円筒状の周壁部22と、頂壁部21の下面の中央部から下方に延びる栓体部23とを備える。
【0051】
前記周壁部22は、筒状体12の口部Kと同一程度の長さに形成されており、
図4に示すように、キャップ2によりスパウト1を閉栓した際、周壁部22の内面が筒状体12の薄肉口部121と隙間を空ける一方(
図5(a)参照)、周壁部22の下部の内面が筒状体12の厚肉口部122の外面に当接し(
図5(b)参照)、周壁部22の下端部がスパウト本体11のフランジ部Fの上側フランジ113に当接する。
【0052】
前記栓体部23は、前記頂壁部21から下方に延びる筒状の栓体周壁部22と、該栓体周壁部231の内側に所定距離を隔てて設けられた栓体底壁部232とを備える。この栓体部23は、栓体周壁部231がキャップ2の周壁部22の長さよりも短く形成されるとともに、栓体底壁部232が筒状体12の厚肉口部122の流通路13の直径と同一またはやや径大の外径であって、かつ軸方向に対して該厚肉口部122の厚みと同一かそれより大きな厚みの厚肉状に形成されている。
【0053】
このため、キャップ2によりスパウト1を閉栓した際、
図4に示すように、スパウト1の筒状体12が前記キャップ2の栓体周壁部231と栓体底壁部232の間に螺合状態で当接するとともに、キャップ2の栓体底壁部232がスパウト1の筒状体12の流通路13に挿入される。このとき、栓体底壁部232は、スパウト1の口部Kの領域内に位置して、筒状体12の厚肉口部122に密着状態に当接することにより、筒状体12の薄肉口部121の流通路13を閉塞する。
【0054】
而して、スパウト1の流通路13は、
図4に示すように、キャップ2により閉栓された際、スパウト1の口部Kの領域では筒状体12の厚肉状の厚肉口部122と栓体部23の厚肉状の栓体底壁部232に囲まれ、またスパウト1のフランジ部Fに領域では厚肉状のフランジ部Fに囲まれ、さらにスパウト1のシール部Sの領域では厚肉状のシール部Sに囲まれるとともに、そのシール部Sの外面が包装容器Pのシート部材に被覆された状態となるため、スパウト1全体の酸素バリア性を高めることができる。
【0055】
また、キャップ2の栓体部23は、スパウト1の筒状体12の流通路13に挿入された際、キャップ2の周壁部22により被覆されているスパウト1の口部Kの領域内に位置する構造であるため、キャップ2をスパウト1から取り外したあと、机やカウンターなどに置いても、キャップ2の栓体部23が机やカウンターなどに接触せず、該栓体部23に付着した内容物が机やカウンターなどに不用意に付着することを防止することができる。
【0056】
さらにまた、スパウト1の構成中、薄肉状に形成されるのはスパウト1の口部Kのみであって、スパウト1のシール部Sやフランジ部Fなど、その他の部分は厚肉状に形成され得るため、スパウト1全体の酸素バリア性を高めることができる上、スパウト1全体の強度を高めることもできる。
【0057】
次に本注出具の組立方法および使用方法について説明する。
【0058】
まず、スパウト本体11のみが包装容器Pに設けられている状態において、所定の内容物を包装容器Pの内部にスパウト本体11の嵌合孔116を通じて充填する。このとき、スパウト本体11の嵌合孔116は筒状体12の流通路13よりも大きく開口しているため、所定の内容物をスパウト本体11の嵌合孔116を通じて包装容器Pの内部に速やかに充填することができる。
【0059】
そして、所定の内容物を包装容器Pの内部に充填することを完了したあと、キャップ2を筒状体12の口部Kに螺合して閉栓するとともに、筒状体12の胴体部123をスパウト本体11の嵌合孔116に嵌め殺し状態で嵌合する。このとき、スパウト1の口部Kは、上述のように栓体部23と厚肉口部122によって酸素バリア性が高い状態となっており、またスパウト1のフランジ部Fは、筒状体12の胴体部123とスパウト本体11の中間軸112の二重構造によって酸素バリア性が高い状態となっており、またスパウト1のシール部Sは、筒状体12の胴体部123とスパウト本体11の被覆部111の二重構造並びに包装容器Pのシート部材によって酸素バリア性が高い状態となっているため、スパウト1全体の酸素バリア性を高めることができる。
【0060】
そして、包装容器Pの内容物の注出に際しては、キャップ2を筒状体12から取り外して開栓して、注出具ごと包装容器Pを下方に傾けるなどすれば、内容物をスパウト1の筒状体12の流通路13を通じて注出することができる。このとき、筒状体12の流通路13はスパウト本体11の嵌合孔116よりも内径が小さいため、包装容器Pの内容物を所定量で注出することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、栓体部23の栓体底壁部232を厚肉状に形成することによりスパウト1の口部Kの酸素バリア性を高めるものとしたが、栓体部23の栓体底壁部232の上面や下面に酸素バリア部材を展設することによりスパウト1の口部Kの酸素バリア性を高めてもよい。
【0062】
また、筒状体12の薄肉口部121の構造は、上述のものに限定されるものではなく、例えば、上端部から厚肉口部122にかけて次第に厚みが増すように外面および内面がテーパ状に形成されてもよい。
【0063】
また、筒状体12の胴体部123は、スパウト本体11の下端部まで延びるものとしたが、スパウト本体11の中間部まで延びるものであってもよい。この場合、スパウト本体11の嵌合孔116の下側部分が筒状体12の流通路13に連通する流通路13として機能する。ただ、筒状体12の胴体部123は、スパウト本体11に対する組立安定性や酸素バリア性の観点から、少なくともスパウト本体11のフランジ部Fより下方に延びた状態となるのが好ましい。
【0064】
また、栓体部23の栓体底壁部232が筒状体12の厚肉口部122に当接するものとしたが、栓体底壁部232とともに、あるいは栓体底壁部232に代えて、栓体部23の栓体周壁部231が筒状体12の厚肉口部122に当接してもよい。要は、栓体部23の全体が筒状体12の口部Kの領域内に位置して、筒状体12の薄肉口部121の流通路13が閉塞される構造であればよい。
【0065】
また、スパウト1の口部K(厚肉口部122)、フランジ部F(中間軸112)、シール部Sの厚みは、酸素バリア性を維持するものであれば限定されるものではないが、酸素の透過をより確実に軽減または防止するために全体として4mm以上であるのが好ましい。
【0066】
また、栓体部23により筒状体12の薄肉口部121の流通路13を閉塞し、また筒状体12の厚肉口部122を厚肉状に形成することによって、筒状体12の口部Kの酸素バリア性を高めるものとしたが、筒状体12の口部Kの全体を厚肉状に形成したり、あるいは筒状体12の口部Kの形状を工夫することによって酸素バリア性を高めてもよい。あるいは筒状体12の材質を酸素バリア性の高い材質で構成することにより酸素バリア性を高めるものとしてもよい。
【0067】
この場合、スパウト1の筒状体12における酸素バリア性が高い材質として、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体樹脂、ポリブテン樹脂、イオン架橋オレフィン共重合体樹脂(アイオノマー)など)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)など)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、ポリグリコール酸樹脂(PGA)、ポリアセタール系樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、酢酸セルロース系樹脂(CA)、ゴム(ブタジエンゴム、塩酸ゴムなど)の各単体または混合したものが挙げられる。
【0068】
また、上記各樹脂に酸素吸収添加剤を添加する方法や、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)やアルミ箔、ガラス蒸着などでコーティングする方法によってスパウト1の酸素バリア性を高めることも挙げられる。
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る注出具の第2の実施形態について、
図6および
図7を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0069】
本実施形態では、筒状体12は、
図6に示すように、厚肉口部122において環状の段部122bが周方向に沿って設けられ、該段部122bの外面にローレットが周方向に沿って形成されている。一方、スパウト本体11は、嵌合凸部115の内面にローレットが周方向に沿って形成されている。これら段部122bと嵌合凸部115のローレットは、互いに噛み合うように複数の多角形状に形成されている。
【0070】
これによれば、筒状体12の胴体部123がスパウト本体11の嵌合孔116に嵌合した際、筒状体12の段部122bとスパウト本体11の嵌合凸部115が当接して、段部122bと嵌合凸部115のローレットが互いに噛み合うことにより、筒状体12がスパウト本体11に対して回転することを防止することができる。
【0071】
また、前記筒状体12は、
図7に示すように、胴体部123の下端部においてスパウト本体11の嵌合孔116の下端部の凹部111aに引掛けるための爪部123cが設けられている。
【0072】
これによれば、筒状体11の胴体部123がスパウト本体11の嵌合孔116に嵌合した際、筒状体12の爪部123cがスパウト本体11の嵌合孔116の下端部の凹部111aに引っ掛けられるため、筒状体12がスパウト本体11から抜けることを防止することができる。
【0073】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…スパウト
11…スパウト本体
111…被覆部
112…中間軸
113…上側フランジ
114…下側フランジ
115…嵌合凸部
116…嵌合孔
12…筒状体
121…薄肉口部
122…厚肉口部
123…胴体部
13…流通路
2…キャップ
21…頂壁部
22…周壁部
23…栓体部
231…栓体周壁部
232…栓体底壁部
K…口部
F…フランジ部
S…シール部
P…包装容器