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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】折り装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 45/04 20060101AFI20250303BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
B65H45/04
B65H5/02 K
B65H5/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022083128
(22)【出願日】2022-05-20
(65)【公開番号】P2023170988
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2024-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000206093
【氏名又は名称】大森機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】新屋 俊和
(72)【発明者】
【氏名】浮ケ谷 重晃
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-130972(JP,A)
【文献】特開2009-154981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 45/04
B65H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の物品を第1速度で一の搬送方向に搬送する第1コンベアと、
前記第1コンベアと直列的且つ、所定の落差を設けて該第1コンベアの下方に配置され、該第1コンベアの下流側端部から放出されて落下する前記物品を受け入れ可能な第2コンベアとを有し、
前記第2コンベアは、前記物品を受け入れる少なくとも一部の期間において前記第1速度より低速の第2速度で走行するものであり、
前記物品を前記第1コンベアから前記第2コンベアに落下させ、該第1コンベアにおける搬送時の上面が内側となるように折り返す、
ことを特徴とする折り装置。
【請求項2】
前記第2コンベアの上流側端部を、前記第1コンベアの下流側端部よりも上流側に位置させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り装置。
【請求項3】
前記第1コンベアの下流側端部の直下よりも前記搬送方向における前方において、該第1コンベアにおける搬送時の下面が前記第2コンベアに着地するように、前記第1速度、前記第2速度および前記落差がそれぞれ設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の折り装置。
【請求項4】
前記第2コンベアの搬送面における前記物品の保持力は、前記第1コンベアの搬送面における該物品の保持力より大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り装置。
【請求項5】
前記物品は、一部が前記第1コンベアの下方に潜り込むように湾曲しつつ落下する、
ことを特徴とする請求項1に記載の折り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材を二つ折りする折り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトコンベアで搬送中のハップ剤(湿布)を検知して、所定時間後に垂下状態のハップ剤に折込板を進出させて下流側のベルトコンベアに移載し、ベルトコンベアと押圧用ドライブローラーによってハップ剤を二つ折りにするシート折り装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、集積品の折り曲げ搬送装置として、山型の搬送面を押送される集積品を、移し替えロボットが吊り上げフック部にて支持して吊り上げることで、集積品をその支持した部位から2つ折り状態にし、所定位置に移し替える装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6884388号公報
【文献】特開2021-195151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシート折り装置は、折込板を進退させる機構(リニアガイド、モータ、エアシリンダーなど)や、押圧用ドライブローラーの駆動機構が必要であり、制御や装置の構成が複雑となる。この結果、メンテナンスの工数もかかり、例えばトラブルなどの場合の復旧にも時間がかかる上、装置も大型化する。また、折込板で押し込んだり、押圧用ドライブローラーで押圧する必要があり、傷が発生しやすい製品の二つ折りには適さない。さらに、例えば、複数枚のハップ剤を平積みした積層品を纏めて二つ折りするような場合には、垂下状態にした際に、中間層のハップ剤の位置がずれたり、落下してしまう恐れがある。
【0006】
また、特許文献2の装置は集積品を二つ折りするものであるが、2台の移し替えロボットや山型の搬送面が必要となるなど、この場合も制御や装置の構成が複雑となる。また、例えば、同じ二つ折りであっても、折りの厳密さ(正確さ)よりも処理速度を優先する要望もある。例えば連続的に供給される製品を高速処理する場合には、ロボットを採用する装置では十分な処理能力が得られない問題もある。また、集積品を二つ折りにする向き(搬送方向に対する折り目の方向)を異ならせたい場合にはこの方式は使用できないことがある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、製品に対する傷等の発生を最小限に抑えることができ、製品の枚数によらず折り返すことが可能であり、また高速処理も可能な折り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シート状の物品を第1速度で一の搬送方向に搬送する第1コンベアと、前記第1コンベアと直列的且つ、所定の落差を設けて該第1コンベアの下方に配置され、該第1コンベアの下流側端部から放出されて落下する前記物品を受け入れ可能な第2コンベアとを有し、前記第2コンベアは、前記物品を受け入れる少なくとも一部の期間において前記第1速度より低速の第2速度で走行するものであり、前記物品を前記第1コンベアから前記第2コンベアに落下させ、該第1コンベアにおける搬送時の上面が内側となるように折り返す、ことを特徴とする折り装置に係るものである。
【0009】
本発明によれば上記課題を鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、製品に対する傷等の発生を最小限に抑えることができ、製品の枚数によらず折り返すことが可能であり、また高速処理も可能な折り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る折り装置を示す概略図であり、(A)全体構成を示す正面図、(B)全体構成を示す平面図、(C)一部を抜き出して示す拡大正面図である。
図2】折り装置で二つ折りする物品を示す(A)平面図、(B)側面図である。
図3】本発明に係る折り装置による折り動作を時系列で示す概略正面図である。
図4】本発明に係る折り装置による折り動作を時系列で示す概略正面図である。
図5】本発明に係る折り装置による折り動作を時系列で示す概略正面図である。
図6】本発明に係る折り装置による折り動作を時系列で示す概略正面図である。
図7】本発明に係る折り装置による折り動作を時系列で示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る折り装置10の一例について詳細に説明する。図1は、本実施形態の折り装置10の概略を示す正面図であり、図1(A)が全体の正面図、同図(B)が全体平面(上面)図、同図(C)が同図(A)の破線部分の拡大正面図である。図2は、折り装置10によって二つ折りされる物品XA1の外観を示す図であり、図2(A)が折り返す前の上面(平面図)であり、同図(B)が図1に対応する正面図である。なお、本図及び以降の各図において、一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、本図及び以降の各図において、部材の大きさ、形状、厚み、位置などを適宜誇張して表現する。また、本実施形態では折り装置10における各種方向の定義として、物品XA1の搬送される第一方向を搬送方向Tとし、搬送方向Tに直交する第二方向を搬送幅方向Wとし、搬送方向T及び搬送幅方向Wに対して直交する第三方向を搬送高さ方向Hとする。
【0012】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る折り装置10は、第1コンベア11と、第2コンベア12と、制御ユニット(不図示)などを有する。
第1コンベア11は例えば、ベルトコンベアであり、スプロケット111、112と、これらにかけ回される環状の第1ベルト113を有する。一方のスプロケット111は、例えば駆動用スプロケットであり、サーボモーター(不図示)の駆動によって回転し、これにより第1ベルト113は所定方向に循環するように走行する。第1ベルト113は例えば、第1の保持力で物品XA1を保持可能なベルトであり、第1コンベア11の第1搬送面11Aを構成する。第1ベルト113は例えば、ポリウレタン製であり平滑な性状を有する。他方のスプロケット112は、例えば従動用スプロケットであり、第1ベルト113の走行によって、スプロケット111に連動して回転する。第1コンベア11は、その上流工程から供給されるシート状の物品XA1を、第1速度V1(周速)で搬送方向Tに搬送する。
【0013】
第2コンベア12も、第1コンベア11と同様のベルトコンベアであり、例えば、スプロケット121、122と、これらにかけ回される環状の第2ベルト123を有する。一方のスプロケット121は、例えば駆動用スプロケットでありサーボモーター(不図示)の駆動によって回転し、これにより第2ベルト123は所定方向に循環するように走行する。他方のスプロケットは例えば従動用スプロケットであり、第2ベルト123の走行によって、スプロケット121に連動して回転する。
【0014】
第2ベルト123は例えば、第2の保持力で物品XA1を保持可能なベルトであり、第2コンベア12の第2搬送面12Aを構成する。ここで、第2の保持力は、第1の保持力より大きいものが選択される。第2ベルト123は例えば、ポリエステル帆布性であり、布目状の性状を有する。なお、本実施形態における「ベルトの保持力」とは、ベルトと物品XA1(この例ではハップ剤)とを横滑りさせたときの当該物品XA1の滑りの程度であり、横滑りしやすいほど保持力が「小さい(弱い)」ことを意味する。つまり、本実施形態では、第1ベルト113と第2ベルト123の例えば、材質や性状を異ならせるなどして、或る物品XA1を第1ベルト113上で横滑りさせた場合の横滑りの程度(第1の保持力)よりも、同じ物品XA1を第2ベルト123上で横滑させた場合の横滑りの程度(第2の保持力)の方が大きくなる(強くなる、横滑りしにくくなる)ように、第1ベルト113および第2ベルト123をそれぞれ選択する。
【0015】
第2コンベア12は、第1コンベア11と直列的に、すなわち第1コンベア11と同じ搬送方向Tに物品XA1を搬送するように配置される。また、図1(C)に示すように、第2コンベア12は、第1コンベア11から所定の落差hを設けて第1コンベア11の下方に配置される。第1コンベア11によって搬送される物品XA1は、その下流側端部112Eから放出されて落下し、第2コンベア12はその落下する物品XA1を受け入れ可能となっている。
【0016】
第2コンベア12は、物品XA1を受け入れる少なくとも一部の期間において第1速度V1より低速の第2速度V2(周速)で走行する。この例では、第2コンベア12は、折り装置10の動作中は常時、一定の第2速度V2でベルトが走行し、物品XA1を第2速度V2で搬送する。
【0017】
これら折り装置10の各部は、制御手段(制御ユニット)によって統括的に制御される。制御手段は、CPU、RAM、及びROMなどから構成され、各種制御を実行する。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行される基本OSやプログラムを記憶する。
【0018】
図2を参照して、本実施形態の物品XA1について説明する。物品XA1は、例えば、軟体の薄物であり且つ、或る程度の重量感のあるシート状物品XA1´を複数枚平積みした集積品である。より詳細に、シート状物品XA1´は例えばハップ剤であり、平積みの枚数は例えば2~数枚である。本実施形態の物品XA1は、シート状物品XA1´を平積みした集積品として搬送された場合であっても、軟体・薄物という形態とその自重とによって、特に支持部材を必要とせずとも一体的に纏まり、全体としてシート状を呈している。本実施形態の図面においては、図示の便宜上、3枚のシート状物品XA1´を平積みした場合について例示するが、平積みの枚数はこれに限らない。また、物品XA1は集積品に限らず、一枚のシート状物品であってもよい。
【0019】
また、物品XA1(シート状物品XA1´)は、平面視(図2(A))において長辺LSと短辺SSを有する矩形状であり、第1コンベア11においてはその長辺LSを搬送方向Tに、短辺SSを搬送幅方向Wに向けるように配置した状態で搬送される。そして折り装置10は、物品XA1の長辺LSが短くなるように、これを二つ折りする。
【0020】
ここで、本実施形態の折り装置10は、二つ折りの厳密さよりも処理能力(高速処理すること)が優先されるものである。つまり、例えば、折り装置10(第1コンベア11)に供給される時点で物品XA1は、長辺LSが搬送方向Tにおいて厳密に揃っていない場合も許容される。また平積みされるシート状物品XA1´が互いに僅かに位置ずれが生じている場合も許容される。そして、折り装置10に要求される二つ折りの仕様としては、長辺LSを厳密に2分の1に折り曲げたり、折り癖を付与する必要はなく、例えば長辺LSの長さが概ね2分の1になるように折り返すものであればよい。
【0021】
再び図1(C)を参照して、本実施形態における「落差h」とは、第1コンベア11の第1搬送面11Aと、第2コンベア12の第2搬送面12Aの搬送高さ方向Hにおける高低差をいう。また、第1コンベア11と第2コンベア12は、搬送方向Tにおいて一部重畳するように配置される。具体的には、第2コンベア12の上流側端部121E(上流側のスプロケット121の上流側の端部)は、第1コンベアの下流側端部112E(下流側のスプロケット112の下流側の端部)よりも上流側に配置される。つまり、第1コンベアの下流側端部112Eの鉛直方向直下は、第2コンベア12の第2ベルト123の平坦面が位置するように(スプロケット121が位置しないように)両コンベア11、12の位置が設定される。
【0022】
詳細は後述するが、第2速度V2は、例えば、第1速度V1の2分の1以下の速度である。また例えば、第1速度V1は、20m/s~30m/s程度であり、第2速度V2は10m/s~15m/sである。落差hは、折り返される物品XA1の搬送高さ方向Hにおける最大高さh´より高く、折り返される物品XA1が第1コンベア11(の下面)に干渉しない高さに設定される。既に述べたように本実施形態では、折り癖(折り目線)が形成されるような折りたたみではなく、同図(C)に示すように概ね物品XA1の長辺LSの中央付近で湾曲するように折り返されるものである。つまり、「折り返される物品XA1の最大高さh´」は、具体的には、小さい曲率の湾曲面となる折り返し部TRNの高さである。
【0023】
このような構成により、本実施形態の折り装置10は、物品XA1を第1コンベア11から第2コンベア12に落下させることで、第1コンベア11における搬送時の上面Sf1が内側となるように、すなわち上面Sf1を表とした場合に中表となるように二つに折り返す(折り曲げる)。
【0024】
以下、折り装置10における物品XA1の折り返し(二つ折り)の処理について詳細に説明する。図3から図5は、折り装置10における物品XA1の折り返し(二つ折り)の処理を時系列で示す概要正面図である。
【0025】
まず図3(A)では、第1コンベア11によって、その上流工程から供給される長さMのシート状の物品(集積品)XA1が、第1速度V1で搬送方向Tに搬送されている。なお、物品XA1の長さMは、原則、シート状物品XA1´の長辺LSの長さであるが、本実施形態では、特に平積みされた集積品の場合はシート状物品XA1´同士の位置ずれも許容し、同図(A)に示すように物品XA1としての長手方向の長さ(下流側端部から上流側端部までの長さ)を物品XA1の長さMとする。また、本実施形態では集積品を構成するシート状物品XA1´同士の位置ずれを許容するが、当然ながらシート状物品XA1´同士の位置ずれがない状態で搬送される場合があってもよい。物品XA1は、第1コンベア11の第1搬送面11Aに載置される(第1搬送面11Aによる支持がある)のみで他の部材による支持(保持)はない。なお、第1ベルト113は、同じ物品XA1に対する保持力が第2ベルト123よりも小さいグリップベルトを採用している。保持力が第2ベルト123より小さい場合、第1速度V1で走行した場合であっても、物品XA1を位置ずれすることなく、所定位置で保持することができる。
【0026】
そして図3(B)に示すように、第1コンベア11において搬送が進むと、その下流側端部112Eから物品XA1が放出される。詳細には、第1コンベア11の下流側端部112Eの手前で第1搬送面11Aによる支持が解放される(載置状態でなくなる)と、物品XA1はその搬送方向Tの先端TPから前方に放出される。第1搬送面11Aによる支持が解放される(載置状態でなくなる)位置は、スプロケット112の中心112Cの鉛直上方で第1搬送面11A(第1ベルト113)が水平移動する終了点(以下「水平移動終了点E」という。)である。なお、本実施形態における物品XA1は既に述べているように集積品であり、以下に説明する折り返しの動作中に各シート状物品XA1´の位置(真の先端となるシート状物品XA1´)が変化する場合もあるが、「物品XA1の先端TP」とは、一纏まりの物品XA1としての(各状態における)先端をいう。後端EPについても同様である。
【0027】
そして同図(C)に示すように、物品XA1の先端TPは自重により落下する。この時の物品XA1の先端TPの運動は、第1搬送面11Aの水平移動終了点Eから初速度V1で水平投射された物体の放物運動と概ね同様であり、水平移動終了点Eの鉛直直下、更には第1コンベア11の下流側端部112Eの鉛直直下よりも搬送方向Tにおける前方に落下する。
【0028】
図4(A)に示すように、第1コンベア11の下方にはこれと直列的に第2コンベア12が配置されている。第2コンベア12は、第2搬送面12A(第2ベルト123)が第2速度V2(第1速度V1より低速)で走行する。また、第2コンベア12の上流側端部121Eは、第1コンベア11の下方(第1コンベア11の下流側端部112Eより上流側)に潜り込んで物品XA1を受け入れ可能となっており、物品XA1の先端TPは、第2コンベア12(第2第2ベルト123)の平坦面(スプロケット121にかけ回されて曲率が生じている部分を除いた平坦面)となる落下地点Fに着地する。第2ベルト123は、保持力が第1ベルト113より大きい(強い)グリップベルトが採用されており、物品XA1は、第2ベルト123に対して適度に滑りつつその上に保持可能となっている。
【0029】
このような条件下において、落下地点Fにおける物品XA1の先端TPは、図4(A)中の破線丸印の拡大図evとして示すように、第1コンベア11における搬送時の下面Sf2が第2コンベア12の第2搬送面12Aに当接する。なお、拡大図evでは集積品である物品XA1を単一の実線で示している。これにより、先端TPは、第2速度V2に減速されて搬送方向Tに移動する。
【0030】
またこの状態(物品XA1の先端TPが第2コンベア12(の第2搬送面12A)に到達した状態)では、物品XA1の後端EPが第1コンベア11(の第1搬送面11A)上に残存している。換言すると、物品XA1の長さMに応じて、物品XA1の先端TPが第2コンベア12(の第2搬送面12A)に到達した際には物品XA1の後端EPが第1コンベア11(の第1搬送面11A)上に残存するように、落差hが設定される。つまり落差hは、物品XA1の長さMも考慮して設定され、一例として、物品XA1の長さMの例えば、1/2以下であり、1/4~1/3程度が好ましい。
【0031】
そして、図4(B)に示すように、物品XA1は、先端TP及びその付近の下面Sf2を第2搬送面12Aに当接または対向させた状態で、先端TP及びその近傍が第2速度V2で搬送方向Tに移動する。詳細には、最下層のシート状物品XA1´の下面Sf2が第2搬送面12Aに当接し、2層目、3層目…のシート状物品XA1´の下面Sf2は第2搬送面12Aに当接または対向する。なお、物品XA1が集積品の場合で、例えば、2層目(3層目も同様)のシート状物品XA1´の先端が物品XA1としての先端TPであっても同様である。つまり、図4(A)の破線丸印に示すように、2層目のシート状物品XA1´の先端(物品XA1の先端TP)は、その下面Sf2が第2搬送面12Aに当接する。最下層のシート状物品XA1´の先端は、2層目のシート状物品XA1´の先端(物品XA1の先端TP)に上から押さえられるようにして、その下面Sf2が第2搬送面12Aに当接する。結果として、図4(B)に示すように、物品XA1は、その先端TP近傍が略L字状に撓んだ状態で、搬送方向Tに移動する。
【0032】
その後、図4(C)に示すように物品XA1は、第2搬送面12Aに載置されている部分(以下「前方部分FR」という。)が第2速度V2で移動しつつ、第1搬送面11Aに載置されている部分(以下、「後方部分BK」という。)が第1速度V1で移動する。第2速度V2は第1速度V1より低速であるので、前方部分FRは後方部分BKに対して減速し、第2搬送面12A上で第1ベルト113よりも大きい保持力で保持されながら搬送される。一方、後方部分BKは第1コンベア11から第1速度V1で押し出され、前方部分FRの長さが増加する。このとき前方部分FRの移動は低速であるので、ある程度まで搬送方向Tの後方(上流側)、すなわち白抜き矢印で示すように第1コンベア11の下方に潜り込むように前方部分FRの長さが増加する。物品XA1は、前方部分FRが第1コンベア11の下方に潜り込むことで、第1搬送面11Aから押し出され且つ第2搬送面12Aには到達していない部分(第1搬送面11Aおよび第2搬送面12のいずれにも接触していない部分(以下、「中間部分CN」という。))は、図4(D)に示すように、前方部分FRの上に乗るように正面視において略S字状に撓み、2つに折れるための内部応力が発生する。
【0033】
その結果、図5(A)に示すように、概ね、前方部分FRの長さが物品XA1の全長(長さM)の2分の1程度になるタイミングで、第1コンベア11による物品XA1の搬送が終了し、物品XA1の後端EPが第1搬送面11Aから放出される。図5(B)に示すように、後端EPは概ね、先端TPと同様に放射運動をするように移動し、第2搬送面12Aに落下する。
【0034】
これにより図5(C)に示すように、物品XA1は2つに折り返される。本実施形態では、物品XA1に折り癖は付与しないので、折り返し部TRNが湾曲した状態で、折り返し(二つ折り)が完成する。そして、その状態で同図(D)に示すように、第2コンベア12によって下流に搬送される。
【0035】
高速で連続的に供給、搬送される物品XA1を二つ折りにする場合、二つ折りの正確性(厳密な二つ折り)よりも処理速度が優先される場合がある。例えば、集積品などの場合で第1コンベア11に供給される時点で集積品を構成する物品(この例ではシート状物品XA1´)同士の位置ずれが許容され、物品XA1の長さMが概ね2分の1になる程度に二つ折りにされていればよいという要求もある(物品XA1が1枚のシート状物品である場合も同様の要求がある)。
【0036】
そのような場合、例えばロボットなどを用いて二つ折りするような装置では、物品XA1の搬送速度にロボットの処理能力が追い付かず、所望の処理能力が実現できない。
【0037】
また、例えば別途の部材(例えば折り板やローラーなど)で物品XA1を支持しながら折り曲げるような装置の場合、特に物品XA1が集積品になり厚みが増すと、物品XA1に傷などが生じる恐れがあり、また二つ折り動作自体が困難になる問題がある。
【0038】
本実施形態の折り装置10は、第1コンベア11と第2コンベア12の設定により、物品XA1の放出、落下、着地の状態を所望の状態に制御する。つまり物品XA1は、放出、落下、着地によって二つ折りされるものである。したがって、第1コンベア11と第2コンベア12以外の他の装置(例えばロボットなど)の処理能力は影響せず、高速処理が可能となる。また、第1コンベア11と第2コンベア12以外の他の部材(例えば折り板やローラーなど)を物品XA1に接触させることなく、二つ折りが可能となる。つまり、他の部品の接触によって物品XA1に傷などが生じる事態を回避できる。更に物品XA1が集積品(シート状物品XA1´の平積み品)であっても、二つ折りが可能となる。
【0039】
第1コンベア11と第2コンベア12の設定は、両者によって物品XA1が支持され、物品XA1の全体(主に中間部分CN)が、正面視において略S字状に撓みが発生する(2つに折れるための内部応力が発生する)ように選択・調整される。「第1コンベア11と第2コンベア12の設定」とは、第1コンベア11の第1速度V1、第1ベルト113の保持力、第2コンベア12の第2速度V2、第2ベルト123の保持力、両コンベア11、12の落差h、両コンベア11、12の搬送方向Tにおける位置(第1コンベア11の下流側と第2コンベア12の重なり量)である。
【0040】
具体的には一例として、物品XA1は長さMが200mmのシート状物品(例えば、ハップ剤)XA1´を6枚平積みしたものであり、第1コンベア11において、概ね200mm置きに搬送される。第1速度V1は27m/s、第2速度V2は13m/s、落差hは50mm~60mm、第1ベルト113の保持力は、第2ベルト123の保持力より小さいものが選択されている。
【0041】
しかし上述の数値に限らず、第1コンベア11と第2コンベア12の設定は、物品XA1の形態(柔軟性や、重さ、厚み、形状(長さM)に応じて、両者に支持された物品XA1の全体(主に中間部分CN)が、正面視において略S字状に撓む(2つに折れるための内部応力が発生する)ことで、上述した(図3図5に示す)物品XA1の二つ折りが可能となるように、適宜選択・調整される。
【0042】
例えば、図4(A)に示すように、物品XA1の先端TPを含むその近傍は、第1コンベア11の下流側端部112Eの直下よりも搬送方向Tにおける前方において、第1コンベア11における搬送時の下面Sf2が第2コンベア12に着地するように、第1コンベア11と第2コンベア12の設定がそれぞれ選択される。
【0043】
また、図4(C),同図(D),図5(A)に示すように、第2コンベア12において、前方部分FRの長さは、折り返しの開始(先端TPの着地)から折り返しが完了するまで増加するが、その増加が第1コンベア11の下方に潜り込む方向に(上流側に)進行するように、第1コンベア11と第2コンベア12の設定がそれぞれ選択される。
【0044】
また、図4(C),同図(D),図5(A)に示すように、折り返しが完了するまでは、前方部分FRが第2搬送面12Aの平坦面(スプロケットへの巻回による曲率が生じない部分)に載置されるよう、第1コンベア11と第2コンベア12の設定がそれぞれ選択される。
【0045】
図6を参照して、第1コンベア11と第2コンベア12の各種設定について更に説明する。第1コンベア11と第2コンベア12とに載置される物品XA1が正面視において略S字状になることを前提に、第1コンベア11と第2コンベア12の各種設定は以下のように表せる。
【0046】
ここでは、物品XA1の長さM,第1コンベア11の第1速度V1、第2速度V2とし、第1コンベア11から放出された物品XA1の先端TPの落下地点Fが、第2搬送面12Aの平坦面となるように第1コンベア11、第2コンベア12の搬送方向Tにおける位置と落差hを設けている。また、物品XA1の先端TPの運動が放物運動であると見立てて説明する。
【0047】
図6(A)は物品XA1が第1コンベア11によって搬送中の状態である。同図(A)に示すように、第1コンベア11によって搬送される長さMの物品XA1(の先端TP)は、第1搬送面11による支持が終了する水平移動終了点Eから初速度V1で水平投射される。
【0048】
図6(B)は、物品XA1の先端TPが第2コンベア12の第2搬送面12Aに落下したタイミングの状態である。同図(B)に示すように、水平移動終了点Eの鉛直直下、更には第1コンベアの下流側端部112Eの鉛直直下よりも搬送方向Tにおける前方の落下地点Fに着地する。
【0049】
物品XA1の先端TPが水平移動終了点Eに到達するタイミング(時間t0)から、水平投射された先端TPが放物運動して落下地点Fへ到達するまでの時間(落下時間t1)は、重力加速度g(=9.8m/s)とした場合、以下の式(a)で示される。
t1=(2h/g)(1/2) (a)
【0050】
同図(C)は、時間t1から時間Δtが経過したタイミング(時間t2)の状態である。物品XA1の先端TPは、落下地点Fに着地した時間t1から第2速度V2で搬送方向Tに移動し、Δt秒後に時間t2の位置に到達する。またこのタイミングでは物品XA1の後端EPが第1コンベア11から放出されて(第1搬送面11Aから離間して)いる。
【0051】
ここで、既に述べたように、折り装置10では、物品XA1が同図(C)に示すように正面視において略S字状に撓ませることで2つに折れるための内部応力を発生させる。つまり、このタイミングで部物品XA1の長さMの中央(M/2)が、第1コンベア11の下流側端部112Eの鉛直直下よりも搬送方向Tにおける上流側(図示の右側)に位置する(第1コンベア11の下方に潜り込む)ように設定する。
【0052】
すなわち、物品XA1の先端TPが水平移動終了点Eから落下地点Fまで水平方向に移動する距離(落下距離)をL、Δt間の先端TPの移動距離をΔLとした場合、以下の式(b)を満たせば、物品XA1の中央が第1コンベア11の下方に位置することになる。
ΔL+L≦M/2 (b)
【0053】
これを、ΔL=V2×Δt、L=V1×t1、および式(a)を用いてΔtについて解くと、以下の式(c)が得られる。
Δt≦(M/2×V2)-(V1/V2)(2h/g)(1/2) (c)
【0054】
また、物品XA1の長さMは、以下の式(d)で示される。
M=(t1+Δt)×V1 (d)
【0055】
これを式(a)を用いてΔtについて解くと、以下の式(e)が得られる。
Δt=(M/V1)-(2h/g)(1/2) (e)
【0056】
式(c)と式(e)より得られる以下の式(f)を変形すると、以下の式(g)が得られる。
(M/V1)-(2h/g)(1/2)
(M/2×V2)-(V1/V2)(2h/g)(1/2) (f)
(2h/g)(1/2)
M(((1/2)-(V2/V1))/(V1-V2)) (g)
【0057】
ここで、第1速度V1と第2速度V2の相対速度差をΔVとすると、V1=V2+ΔV、V2/V1=1-(ΔV/V1)である。これを式(g)に代入すると、物品XA1の長さM、第1速度V1、第2速度V2、落差hの間には以下の式(h)で示す関係が成り立つ。
(2h/g)(1/2)
M((1/V1)-(1/2ΔV)) (h)
【0058】
すなわち、本実施形態の折り装置10では、物品XA1の長さM、第1速度V1、第2速度V2、落差hが式(h)を満たすように設定することで、第1コンベア11と第2コンベア12以外の他の部材(例えば折り板やローラーなど)を物品XA1に接触させることなく、物品XA1を放出、落下、着地の動作によって二つ折りすることができるといえる。
【0059】
また、式(g)より、第2速度V2は第1速度V1の1/2未満であることが必要であるといえる。さらに、式(g)より、物品XA1の長さMが長いほど、落差hは大きくする必要があり、第1速度V1と第2速度V2の相対速度差ΔVが大きいほど落差hは小さくてよいといえる。
【0060】
なお、集積品の場合は、2層目、3層目などのシート状物品XA1´の先端が物品XA1の先端TPとなる場合もあるが、物品XA1の折り返しの動作としては上記と同様である。
【0061】
<変形例>
図7を参照して、本実施形態の変形例について説明する。上記の実施形態では、物品XA1は、第2コンベア12の第2搬送面12Aに載置されるのみで他の部材による支持(保持)はないが、例えば支持部材30(位置規制部材、保持部材)などによって支持されながら搬送されるものであってもよい。折り返し部TRNは概ね物品XA1の長さMの2分の1程度の位置になるように折り装置10が設定されているが、物品XA1は、第1コンベア11からの落下により折り返されるため、状況によって、折り返し部TRNが予定より大きく第2コンベア12の上流側にずれ込むと所望の二つ折りができない(折り返されずに開いてしまう)可能性もある。そこで、所定の間隔で折り返し部TRN付近に対応する位置に支持部材30を設けることにより、折り返し部TRNの位置を安定させることができる。支持部材30は、物品XA1が略S字状に湾曲する際に折り返し部TRNの位置を支持(位置ずれを規制)し、適切な折り量(二つ折り)に調整するとともに、折り返し後も、応力の生じている折り返し部TRNを支持可能であるので、第2コンベア12の搬送中に物品XA1の折り返しが開いてしまうことも防ぐことができる。
【0062】
また、図示は省略するが、第1コンベア11においても、物品XA1の上流側への位置ずれを規制する支持部材(ストッパー)を設けてもよい。
【0063】
同様に図示は省略するが、第1コンベア11および第2コンベア12の少なくとも一方は、ベルトコンベアに代えて、フィンガーコンベアであってもよく、その場合は、フィンガーによって物品XA1が支持・押送される。
【0064】
更に他の変形例として、第2コンベア12の速度は可変であってもよい。折り装置10の第2コンベア12は、物品XA1を受け入れる少なくとも一部の期間において第1速度V1より低速の第2速度V2で走行する。つまり、上記の実施形態において、物品XA1が二つ折りされた後は、次の物品XA1を受け入れるまでの期間、第2コンベア12は、第2速度V2より高速で走行するようにしてもよい。これにより、処理能力を更に高めることができる。
【0065】
また、例えば、第1コンベア11と第2コンベア12を等速で走行させ、物品XA1の先端TPが第2コンベア12の第2搬送面12Aに落下する際に、第2コンベア12を第2速度V2に減速し、上記実施形態のように折り返してもよい。またその場合、物品XA1が二つ折りされた後は、次の物品XA1を受け入れるまでの期間、第2コンベア12は、第2速度V2より高速で走行するようにしてもよい。
【0066】
また、例えば、第1コンベア11と第2コンベア12を等速で走行させ、物品XA1の長さM/2程度が第2搬送面12Aに載置されるタイミングで第2コンベア12を第2速度V2に減速(または逆走)させてもよい。これにより折り返し部TRNが第1コンベア11の下方に潜り込む量を増やし、後退するような動作で折り返すことができる。
【0067】
このような第2コンベア12の可変(増減速)は、特に物品XA1の長さが長いものの場合に効果的である。
また、他の変形例として、折り装置10の上流側に、物品XA1(集積品)に対して、例えば、側方からエアーを吹き付ける、または振動を与える、またはその両方を実施するなどして集積品を整列させる揃え装置を設けてもよい。
【0068】
また上記の実施形態では物品XA1(シート状物品XA1´)がハップ剤である場合を例に説明したが、これに限らず、軟体薄物シート(またはその集積品)であればよい。また、物品XA1は単一のシート状の物品であってもよく、シート状の物品は、食品であってもよい。
【0069】
以上、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨および技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 折り装置
11 第1コンベア
12 第2コンベア
11A 第1搬送面
12A 第2搬送面
30 支持部材
111、112 スプロケット
112C 中心
112E 下流側端部
121、122 スプロケット
121E 上流側端部
113 第1ベルト
123 第2ベルト
FR 前方部分
BK 後方部分
CN 中間部分
E 水平移動終了点
TP 先端
EP 後端
F 落下地点
SS 短辺
Sf1 上面
Sf2 下面
TRN 折り返し部
XA1 物品
h 落差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7