IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 備前発条株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-アームレスト 図1
  • 特許-アームレスト 図2
  • 特許-アームレスト 図3
  • 特許-アームレスト 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】アームレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20250303BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024573083
(86)(22)【出願日】2024-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2024043489
【審査請求日】2024-12-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591283501
【氏名又は名称】備前発条株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慶倫
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳三
(72)【発明者】
【氏名】清水 現
(72)【発明者】
【氏名】前田 英史
(72)【発明者】
【氏名】堤 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】山根 教代
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105312(JP,A)
【文献】実開昭61-011360(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0039411(KR,A)
【文献】米国特許第4073538(US,A)
【文献】独国特許出願公開第19701388(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/75
A47C 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームに固定される固定部材と、
肘置き部を有する回動部材と、
固定部材に対して回動部材を上下回動可能な状態で支持するための支軸と、
回動部材の上下回動を規制するための規制ピンと、
固定部材に対して回動部材を付勢する付勢部材と
を備え、肘置き部を複数の設定位置間で切り替えることができるようにしたアームレストであって、
固定部材及び回動部材が、左右一対の側壁と、それを連結する連結壁を有する断面U字状を為し、
固定部材には、支軸を取り付けるための支軸取付孔と、回動ストッパーとが設けられ、
回動部材には、支軸を挿通するための長孔状の支軸挿通孔と、回動部材が下限位置となったときに回動ストッパーに当接するストッパー当接面とが設けられ、
固定部材と回動部材のうちいずれか一方の部材に、規制ピンが固定されて、
他方の部材に、回動部材が回動する際の規制ピンを移動させるための規制ピン通路と、規制ピン通路における所定位置から回動半径方向内向き又は外向きに形成され、奥部の幅が規制ピンの外径よりも狭くなるように形成された規制ピン係止溝とが、それぞれ左右一対に設けられ、
付勢部材によって、規制ピン係止溝に規制ピンが係止される向きに、回動部材が付勢され、
規制ピンが設定位置の規制ピン係止溝に重なる位置に回動部材を回動させると、規制ピンが規制ピン係止溝に入り込んで楔状に係止されることで、回動部材がロックされるようにした
ことを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
回動部材に従動して回動できる状態で支軸に取り付けられた従動部材をさらに備え、
従動部材には、規制ピンを挿通するための長孔状の規制ピン挿通孔が設けられ、
付勢部材の一端が、従動部材に取り付けられて、他端が、回動部材に取り付けられた
請求項1記載のアームレスト。
【請求項3】
付勢部材が、引張りばね又は押しばねとされた請求項1記載のアームレスト。
【請求項4】
回動部材における肘置き部が、回動部材の本体部とは別部材で構成された請求項1記載のアームレスト。
【請求項5】
規制ピン係止溝における一対の内壁面のうち一方の内壁面が、設定負荷でスリップする角度で傾斜された請求項1記載のアームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肘置き部を複数の設定位置間で切り替えることができるようにしたアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
フレームにクッション材および表皮が覆い被せられてなるアームレストは、運転時の疲労低減や快適性の向上を目的として取り付けられている。しかし、自動車の座席に着席した人の腕の位置は、その人の体格によって変わる。また、座席のシートバックをリクライニングしたときに、アームレストがシートバックとともに後方に傾いてしまうと、着席者が腕を伸ばすことができず、着席者がリラックスしにくい体勢となってしまう。また、アームレストを使用しないときには、肘置き部が邪魔になることがある。このため、自動車等では、腕(肘)を支える肘置き部の角度を変化させることができるようにしたアームレストが採用されることも多い。
【0003】
例えば、特許文献1の図1には、シートフレームに対してアーム4(「肘置き部」に相当)を上方に回動させた収納位置と下方に回動させた使用位置とに亘って回動可能に取り付けたアームレストが開示されている。このアームレストでは、アーム4にストッパ当面19,21を形成するとともに、シートフレームに所定の角度で固定される取付金具3にストッパ受面20,22形成し、取付金具3を180°入れ換えた際に、ストッパ当面19,21を違う位置で受けることによって、アーム4の使用位置を変更できるようになっている。
【0004】
また、特許文献2の図2には、シートフレームに固定される固定側部材2と、アーム部材31(「肘置き部」に相当)を有する回動側部材3と、ロックばね41及びカム機構42,43で構成されたロックばね機構4とを備えた高さ調節式のアームレストが開示されている。このアームレストでは、使用時最下方位置(同文献の図2(a))と使用時最上方位置(同文献の図2(b))との間で、アーム部材31の角度(高さ)を無段階で調節できるとともに、アーム部材31を、シートバックに沿う格納位置(同文献の図2(c))に移動させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-148023号公報
【文献】特許第6685527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、引用文献1のアームレストは、アーム4(肘置き部)の角度を販売店等で設定することを想定したものとなっている。同文献のアームレストにおいて、仮に、工場出荷後にアーム4(肘置き部)の角度を変えようとすると、取付金具3をシートフレームから取り外してその向きを変える必要がある。このため、運転者が一時的に交替する際や、シートバックをリクライニングする際に、アーム4(肘置き部)の角度を変えることができない。
【0007】
これに対し、引用文献2のアームレストは、アーム部材31(肘置き部)を操作することで、アーム部材31(肘置き部)の角度を調節できるものとなっている。このため、運転者が一時的に交替する際や、シートバックをリクライニングする際でも、アーム部材31(肘置き部)の角度を容易に変化させることができる。しかし、同文献のアームレストには、ロックばね機構4が複雑で部品点数が多いため、軽量化しにくいという課題がある。
【0008】
また、肘置き部を操作することで肘置き部の角度を調節可能とした従来のアームレストには、悪路走行時において、肘置き部が上下にガタつきやすいという課題や、急ブレーキ時において、格納された肘置き部が格納位置から前方に飛び出すおそれがあるという課題もある。さらに、左右方向の剛性・強度を高めにくいという課題や、幅広タイプや長尺タイプのアームレストでは採用しにくいという課題もある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、簡素な構造でありながらも、肘置き部を適切な設定位置に容易に設定できるアームレストを提供するものである。また、肘置き部を設定位置にしたときに、肘置き部の上下両方向の回動を確実に規制することができ、肘置き部のガタツキや飛び出しを防ぐことも本発明の目的である。さらに、左右方向の剛性・強度を高めやすく、幅広タイプや長尺タイプのものでも好適に採用できるアームレストを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
シートフレームに固定される固定部材と、
肘置き部を有する回動部材と、
固定部材に対して回動部材を上下回動可能な状態で支持するための支軸と、
回動部材の上下回動を規制するための規制ピンと、
固定部材に対して回動部材を付勢する付勢部材と
を備え、肘置き部を複数の設定位置間で切り替えることができるようにしたアームレストであって、
固定部材及び回動部材が、左右一対の側壁と、それを連結する連結壁を有する断面U字状を為し、
固定部材には、支軸を取り付けるための支軸取付孔と、回動ストッパーとが設けられ、
回動部材には、支軸を挿通するための長孔状の支軸挿通孔と、回動部材が下限位置となったときに回動ストッパーに当接するストッパー当接面とが設けられ、
固定部材と回動部材のうちいずれか一方の部材に、規制ピンが固定されて、
他方の部材に、回動部材が回動する際の規制ピンを移動させるための規制ピン通路と、規制ピン通路における所定位置から回動半径方向内向き又は外向きに形成され、奥部の幅が規制ピンの外径よりも狭くなるように形成された規制ピン係止溝とが、それぞれ左右一対に設けられ、
付勢部材によって、規制ピン係止溝に規制ピンが係止される向きに、回動部材が付勢され、
規制ピンが設定位置の規制ピン係止溝に重なる位置に回動部材を回動させると、規制ピンが規制ピン係止溝に入り込んで楔状に係止されることで、回動部材がロックされるようにした
ことを特徴とするアームレスト
を提供することによって解決される。
【0011】
ここで、「設定位置」とは、「使用位置」(アームレストを使用する位置)だけでなく、「格納位置」(肘置き部を上向きにしてシートバック側面に沿わせる位置)を含む概念である。このうち、「使用位置」は、肘置き部が肘置きとして使用される位置であり、後述する「運転位置」や「安息位置」を含む概念である。「運転位置」は、運転時の肘置き部が設定される位置であり、「安息位置」は、安息時(シートバックをリクライニングしたとき)の肘置き部が設定される位置である。
【0012】
本発明のアームレストでは、使用時においては、肘置き部を操作することで最適な使用位置でロックすることができる。例えば、運転時においては、肘置き部を、略水平となる運転位置に移動して、シートバックを後方に倒した安息時においては、肘置き部を運転位置よりも低い位置(安息位置)でロックすることができる。また、アームレストを使用しないときには、肘置き部を上方に操作して格納位置でロックし、肘置き部が邪魔にならないようにすることができる。このように、本発明のアームレストでは、肘置き部を操作することによって、その肘置き部を所望の設定位置でロックすることができる。
【0013】
具体的には、回動部材(肘置き部)を移動させ、規制ピンが所望の位置の規制ピン係止溝に重なると、付勢部材の付勢力によって回動部材が移動し、規制ピンが規制ピン係止溝に入り込んでロックされる。このロックの解除(ロック解除操作)は、肘置き部を逆側(規制ピンが規制ピン係止溝から外れる側)に押すことで行うことから、付勢部材の付勢力をある程度強くすることができる。このため、充分な強度のロックが可能である。回動部材をロックする力は、規制ピン係止溝の内壁面の角度、支軸から規制ピンまでの距離、又は、付勢部材の付勢力等によって、設定することができる。規制ピン係止溝は、奥部になるにつれて幅が狭くなるように形成(奥部では、規制ピンの外径よりも幅狭に形成)されているため、規制ピンと規制ピン係止溝との係止が、楔状に為され、可動部材(肘置き部)を、ガタツキのない状態で確実に位置決め(ロック)することができる。また、急ブレーキ時等において、肘置き部が格納位置から前方に飛び出さないようにすることもできる。
【0014】
また、本発明のアームレストでは、固定部材や回動部材が、左右一対の側壁を有する断面U字状を為し、規制ピン通路及び規制ピン係止溝も、それらの側壁に左右一対で設けられることから、左右方向の剛性・強度を高めることが可能である。このため、肘受け部の左右幅を大きくすることや、肘受け部を長くすることも可能である。
【0015】
本発明のアームレストにおいては、回動部材に従動して回動できる状態で支軸に取り付けられた従動部材をさらに設け、その従動部材には、規制ピンを挿通するための長孔状の規制ピン挿通孔を設け、付勢部材の一端を、従動部材に取り付けて、他端を、回動部材に取り付けることが好ましい。
【0016】
というのも、上述したように、回動部材をロックする力(ロック力)は、付勢部材の付勢力に影響されるところ、上記の従動部材を設けることなく、付勢部材の一端を固定部材に直接取り付けると、回動半径方向に対する付勢部材の付勢力の向きが、回動部材(肘置き部)の位置によって変わることになる。このため、ある設定位置では付勢力が強くなり、別の設定位置では弱くなる。このことから、付勢力が設定位置によって変わるようになるからである。この点、その付勢部材の一端を、回動部材に従動しながらも回動半径方向には移動しない従動部材に取り付けることによって、規制ピン係止溝に規制ピンが係止される向きに回動部材を付勢しながらも、回転半径方向に対する付勢部材の付勢力の向きが変わらないようにし、どの設定位置でも、ロック力を略等しくすることができる。
【0017】
本発明のアームレストにおいて、付勢部材は、引張りばねと、押しばねのいずれとすることもできる。また、付勢部材は、コイルばねだけでなく、板ばね等を用いることもできる。
【0018】
本発明のアームレストにおいては、回動部材における肘置き部を、回動部材の本体部(支軸に支持される部分)とは別部材で構成することも可能である。これにより、肘置き部の形態にバリエーションを持たせやすくなる。例えば、肘置き部を、金属線材を折り曲げて形成することも可能である。
【0019】
本発明のアームレストにおいては、規制ピン係止溝における一対の内壁面のうち一方の内壁面(上方回動を支える側の内壁面)を、設定負荷でスリップする角度(例えば、20~40°)で傾斜させることも好ましい。
【0020】
というのも、ロック解除操作は、規制ピン係止溝から規制ピンが外れる向き(ロック解除方向)に肘置き部を移動させることで行う。この点、係止ピン係止溝における、上方回動を支える側の内壁面を傾斜させることで、ロック状態にある肘置き部を上方回動させる際には、それを上方回動させただけで、肘置き部(回動部材)が、上記の傾斜に従ってロック解除方向にも移動するようになる。このため、肘置き部の位置調節を容易に行うことが可能になるからである。ただし、規制ピン係止溝における、下方回動を支える側の内壁面は、傾斜させていないため、肘置き部を下方回動させる際には、肘置き部をロック解除方向に移動させる必要がある。これにより、ロック状態にある肘置き部が、意図せず下方回動することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によって、簡素な構造でありながらも、肘置き部を適切な設定位置に容易に設定できるアームレストを提供することが可能になる。また、肘置き部を設定位置にしたときに、肘置き部の上下両方向の回動を確実に規制することができ、肘置き部のガタツキや飛び出しを防ぐことも可能になる。さらに、左右方向の剛性・強度を高めやすく、幅広タイプや長尺タイプのものでも好適に採用できるアームレストを提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態のアームレストの分解斜視図である。
図2】第一実施形態のアームレストを各方向から見た状態を示した図である。
図3】第一実施形態のアームレストの動作を説明する図である。
図4】他の実施形態のアームレストを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のアームレストの実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施形態から第四実施形態までの計4つの実施形態を例に挙げて説明する。しかし、これらの実施形態は、あくまで好適な実施形態に過ぎず、本発明のアームレストの技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明のアームレストには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0024】
1.第一実施形態のアームレスト
まず、第一実施形態のアームレストについて説明する。図1は、第一実施形態のアームレストの分解斜視図である。図2は、第一実施形態のアームレストを各方向から見た状態を示した図である。図2(a)は、アームレストを側方から見た状態を、図2(b)は、アームレストを上方から見た状態を、図2(c)は、図2(b)におけるB-B断面を、図2(d)は、図2(a)におけるA-A断面を、それぞれ示している。図3は、第一実施形態のアームレストの動作を説明する図である。
【0025】
第一実施形態のアームレストは、図1に示す固定部材10、回動部材20、支軸30、規制ピン40、付勢部材50及び従動部材60を、図2に示すように組み付けて構成される。実際のアームレストでは、フレーム(肘置き部21を有する回動部材20)が表皮で覆われ、アームレストフレームの外面と表皮の内面との隙間には、クッション材(ウレタンフォーム等)が充填されるところ、図1~3等では、表皮やクッション材の図示を省略している。
【0026】
固定部材10は、シートバックのシートフレーム(図示省略)に固定される。このため、シートバックをリクライニング等すると、固定部材10も、シートバックともに動くようになっている。回動部材20は、アームレストの使用者が肘を置くための肘置き部21を有している。支軸30は、固定部材10に対して回動部材20を上下回動可能な状態で支持するものとなっている。規制ピン40は、固定部材10に対する回動部材20の上下回動を規制するためのものである。第一実施形態のアームレストでは、規制ピン40を、回動部材20に固定している。付勢部材50は、固定部材10に対して回動部材20を付勢するためのものである。従動部材60は、回動部材20に従動して回動できる状態で支軸30に取り付けられる。
【0027】
第一実施形態のアームレストでは、図3(a)に示すように、固定部材10に対して、肘置き部21(回動部材20)が、回動中心線Lを中心として上下回動可能となっているところ、肘置き部21(回動部材20)を、複数の設定位置間でロックすることが可能となっている。具体的には、肘置き部21を、安息位置Pと、第一の運転位置Pと、第二の運転位置Pと、格納位置Pとで切り替えることができる。安息位置Pは、シートバックを後方に倒した安息時において選択される。第一の運転位置P及び第二の運転位置Pは、シートバックを起こした運転時において選択される。第一の運転位置P及び第二の運転位置Pのいずれを選択するかは、アームレストの使用者の体格や、シートバックの起立角度等に応じて変わる。安息位置Pにあるときの肘置き部21の先端から、第一の運転位置Pにあるときの肘置き部21の先端までの高さh1は、通常、5~10cm程度とされ、安息位置Pにあるときの肘置き部21の先端から、第二の運転位置Pにあるときの肘置き部21の先端までの高さh2は、通常、10~20cm程度とされる。格納位置Pは、肘置き部21を使用しない格納時に選択される。格納位置Pにしたときには、肘置き部21が上向きとなってしてシートバック側面に沿った状態となる。
【0028】
固定部材10、回動部材20及び従動部材60は、図1に示すように、いずれも、左右一対の側壁と、それを連結する連結壁を有する断面U字状を為している。第一実施形態のアームレストにおいては、図2(b)及び図2(d)に示すように、固定部材10の側壁の内側に回動部材20を配し、回動部材20の側壁の内側に従動部材60を配しているが、これに限定されない。例えば、回動部材20の側壁の内側に固定部材10を配する構造を採用することも可能である。
【0029】
固定部材10のそれぞれの側壁には、図1に示すように、規制ピン通路α及び規制ピン係止溝α,α,α,αと、支軸取付孔βとが左右一対で設けられている。規制ピン通路αは、固定部材10に対して回動部材20が上下回動する際の規制ピン40を移動させるための部分となっている。第一実施形態のアームレストでは、固定部材10の側壁における円弧状の端面の外側が、規制ピン通路αとして機能するようにしている。規制ピン係止溝α,α,α,αは、規制ピン40を係止するための凹部となっており、規制ピン通路αにおける所定位置から回動中心方向内向きに形成されている。
【0030】
図3(a)に示すように、規制ピン係止溝αには、肘置き部21が安息位置Pにあるときの規制ピン40が係止され、規制ピン係止溝αには、肘置き部21が第一の運転位置Pにあるときの規制ピン40が係止され、規制ピン係止溝αには、肘置き部21が第二の運転位置Pにあるときの規制ピン40が係止され、規制ピン係止溝αには、肘置き部21が格納位置Pにあるときの規制ピン40が係止される。規制ピン係止溝α,α,α,αは、奥部の幅が規制ピン40の外径よりも狭くなるように形成されている。このため、規制ピン40が規制ピン係止溝α,α,α,αに楔状に係止され、肘置き部21(回動部材20)がその位置でガタツキのない状態でしっかりとロックされるようになっている。
【0031】
ところで、第一実施形態のアームレストでは、図3(b)に示すように、規制ピン係止溝α,α,α,αにおける一対の内壁面S,Sのうち、一方の内壁面S(回動部材20が下方回動する際に規制ピン40が押し当る内壁面)の傾斜角度θを約5°と小さめに設定している。このため、規制ピン40が規制ピン係止溝α,α,α,αに係止されたロック状態においては、肘置き部21をロック解除方向(回動半径方向外側)に押して、規制ピン40の係止を外さなければ、肘置き部21を下方回動できないようになっている。これに対し、他方の内壁面S(回動部材20が上方回動する際に規制ピン40が押し当る内壁面)の傾斜角度θを約15°と大きくしている。このため、規制ピン40が規制ピン係止溝α,α,α,αに係止されたロック状態であっても、肘置き部21に設定負荷以上の上向きの力を加えると、規制ピン40が内壁面S上をスリップして、規制ピン40の係止が外れ、肘置き部21が上方回動するようになっている。これにより、肘置き部21に対する下向きの荷重をしっかりと受けながらも、肘置き部21の上方への位置の切り替えを容易に行うことが可能となっている。
【0032】
支軸取付孔βは、支軸30を取り付けるための部分となっている。支軸取付孔βの内径は、支軸30の外径と略同一となっている。加えて、固定部材10の連結壁の上面には、回動ストッパーβが設けられている。この回動ストッパーβは、回動部材20のストッパー当接面γが当接することで、肘置き部21がそれ以上下方回動しないようにするための部分となっている。これにより、肘置き部21の上側に子供が載る等、肘置き部21に大きな負荷が掛かった場合であっても、下方回動しないようにする(所定の下限位置から下方に落ち込まないようにする)ことで、安全性を高めている。
【0033】
回動部材20のそれぞれの側壁には、図1に示すように、支軸挿通孔γと、ストッパー当接面γとが左右一対で設けられている。支軸挿通孔γは、支軸30を挿通するための部分となっている。この支軸挿通孔γは、前後方向(肘置き部21の長手方向)に延びる長孔状に形成されている。このため、回動部材20は、支軸30に対し、その回動方向への移動(上下回動)だけでなく、回動半径長手方向への移動も許容された状態となっている。ストッパー当接面γは、上述した回動ストッパーβに当接する部分となっている。回動部材20は、肘置き部21と、本体部22(支軸30に支持される部分)とで構成されるところ、第一実施形態のアームレストでは、肘置き部21と、本体部22とを、同一の部材で一体的に形成している。
【0034】
従動部材60のそれぞれの側壁には、図1に示すように、支軸挿通孔δと、規制ピン挿通孔δとを設けている。支軸挿通孔δは、支軸30を挿通する部分であるところ、回動部材20の支軸挿通孔γとは異なり、長孔状とはなっていない。支軸挿通孔δの内径は、支軸30の外径と略同一となっている。その代わりに、規制ピン40を挿通するための規制ピン挿通孔δが長孔状となっている。このため、従動部材60は、回動部材10に従動して上下回動可能でありながらも、支軸30に対して回動半径方向には移動しない(回動部材20を回動半径方向に移動させても、従動部材60が回動半径方向に移動しない)ようになっている。従動部材60の連結壁には、上向きの片部が起立して設けられており、当該辺部には、付勢部材取付孔δが設けられている。この従動部材60を設けた意味については、後で詳しく説明する。
【0035】
付勢部材50は、規制ピン係止溝α,α,α,αに規制ピン40が係止する向き(ロック方向)に、回動部材20を、固定部材10に対して付勢する。これにより、肘置き部21(回動部材20)を上下回動して、規制ピン40が規制ピン係止溝α,α,α,αのいずれかに重なると、この付勢部材50の付勢力によって回動部材20が回動半径方向に移動し、規制ピン40が規制ピン係止溝α,α,α,αに入り込んでロックされる。この付勢部材50の付勢力と、上述した楔状が相まって、肘置き部21を所望の位置でガタツキのない状態で確実に位置決め(ロック)することができる。また、急ブレーキ時等において、肘置き部21が前方に飛び出さないようにすることもできる。このロックの解除(ロック解除操作)は、肘置き部21を逆側(規制ピン40が規制ピン係止溝α,α,α,αから外れる側。第一実施形態のアームレストにおいては、回動半径方向内側。)に押すことで行う。
【0036】
付勢部材50としては、板ばね等を用いてもよいが、第一実施形態のアームレストでは、コイルばねを用いている。このコイルばねを自然長よりも引き伸ばした状態(引張りばねの状態)で使用している。付勢部材50(コイルばね)の一端は、固定部材10側に取り付けられ、他端は、回動部材20側に取り付けられる。付勢部材50(コイルばね)の一端は、固定部材10に対して直接的に取り付けてもよい。しかし、この場合には、回動半径方向に対する付勢部材50の付勢力の向きが、肘置き部21(回動部材20)の位置によって変わり、肘置き部21が、設定位置P~Pのいずれにあるかによって、ロック力にバラツキが生じ得る。
【0037】
この点、第一実施形態のアームレストでは、図2(c)に示すように、付勢部材50(コイルばね)の一端を、上記の従動部材60における付勢部材取付孔δに取り付け、付勢部材50(コイルばね)の他端を、規制ピン40に取り付けている。これにより、規制ピン係止溝α~αに規制ピンが係止される向き(回動半径方向内側)に、回動部材20を付勢しながらも、回転半径方向に対する付勢部材50の付勢力の向きが変わらないようにし、どの設定位置でも、ロック力を略等しくすることが可能となっている。
【0038】
以上で述べた第一実施形態のアームレストは、部品点数が少なく、簡素な構造でありながらも、肘置き部21を適切な設定位置P,P,P,Pに容易に設定できるだけでなく、設定位置P,P,P,Pでロックした肘置き部21の回動を確実に規制することができ、肘置き部21のガタツキや飛び出しを防ぐことが可能なものとなってる。また、左右方向の剛性・強度を高めやすく、肘置き部21が幅広タイプや長尺タイプのものであっても好適に採用することが可能なものとなっている。
【0039】
2.第二実施形態のアームレスト
続いて、第二実施形態のアームレストについて説明する。第二実施形態のアームレストについては、主に、第一実施形態のアームレストと異なる構成に絞って説明する。第二実施形態のアームレストで特に言及しない構成については、第一実施形態のアームレストで述べたものと略同様の構成を採用することができる。
【0040】
図4(a)は、第二実施形態のアームレストにおける支軸30付近を拡大した図である。図1~3に示した第一実施形態のアームレストでは、規制ピン40が、回動部材20に固定され、規制ピン通路αと規制ピン係止溝α~αとが、固定部材10に設けられていた。これに対し、図4(a)に示す第二実施形態のアームレストでは、規制ピン40が、固定部材10に固定され、規制ピン通路αと規制ピン係止溝α~αとが、回動部材20に設けられている。規制ピン通路αは、回動部材20における、支軸挿通孔γよりも前側(肘置き部21の先端側)に、回動中心線Lを中心とした円弧状の長孔を設けることによって形成されている。
【0041】
また、図1~3に示した第一実施形態のアームレストでは、コイルばね(付勢部材50)の一端を、規制ピン40に取り付けていたところ、図4(a)に示す第二実施形態のアームレストでは、回動部材20に固定した付勢部材取付軸23に取り付けている。また、第二実施形態のアームレストにおいて、従動部材60には、規制ピン挿通孔δ図1)の代わりに、付勢部材取付軸挿通孔δを長孔状に設けている。
【0042】
このように、規制ピン40を固定する部材と、規制ピン通路α及び規制ピン係止溝α~αを設ける部材とを、第一実施形態のアームレストとは逆にしても、第一実施形態のアームレストと同様の動作を行わせることが可能である。
【0043】
3.第三実施形態のアームレスト
続いて、第三実施形態のアームレストについて説明する。第三実施形態のアームレストについては、主に、第一実施形態のアームレストと異なる構成に絞って説明する。第三実施形態のアームレストで特に言及しない構成については、第一実施形態のアームレストや、第二実施形態のアームレストで述べたものと略同様の構成を採用することができる。
【0044】
図4(b)は、第三実施形態のアームレストにおける支軸30付近を拡大した図である。図1~3に示した第一実施形態のアームレストでは、固定部材10の側壁における円弧状の端面(後端面)が、規制ピン通路αとして機能するようになっており、規制ピン係止溝α~αが、規制ピン通路αの所定箇所から回動半径方向内側に凹んで形成されていた。これに対し、図4(b)に示す第三実施形態のアームレストでは、規制ピン通路αが、回動部材20のそれぞれの側壁に回動中心線Lを中心とした円弧状の長孔を設けることによって形成されている規制ピン係止溝α~αは、規制ピン通路αの所定箇所から回動半径方向外側に凹んで形成されている。
【0045】
また、第一実施形態のアームレスト(図1~3)では、付勢部材50として、コイルばねを引張りばねとして用いており、回動部材20は、固定部材10に対して回動半径方向内側(前側)に付勢された状態となっていた。これに対し、第三実施形態のアームレスト(図4(b))では、付勢部材50として、板ばねを押しばねとして用いており、回動部材20は、固定部材10に対して回動半径方向外側(後側)に付勢された状態となっている。
【0046】
このように、第三実施形態のアームレストでは、規制ピン係止溝α~αの向きや、付勢部材50による回動部材20の付勢方向が、第一実施形態のアームレストとは逆になっている。このため、第三実施形態のアームレストでは、ロック状態にあるときの肘置き部21を、回動半径方向内側(前側)に押すと、規制ピン係止溝α~αから規制ピン40が外れて、ロックが解除され、肘置き部21が上下回動可能な状態となる。
【0047】
4.第四実施形態のアームレスト
最後に、第四実施形態のアームレストについて説明する。第四実施形態のアームレストについては、主に、第二実施形態のアームレスト(図4(a))と異なる構成に絞って説明する。第四実施形態のアームレストで特に言及しない構成については、第一実施形態のアームレストや、第二実施形態のアームレストや、第三実施形態のアームレストで述べたものと略同様の構成を採用することができる。
【0048】
図4(c)は、第四実施形態のアームレストを示した図である。第二実施形態のアームレスト(図4(a))においては、回動部材20の肘置き部21と本体部22とが、同一の部材によって一体的に形成されていた。これに対し、第四実施形態のアームレストにおいては、図4(c)に示すように、回動部材20の肘置き部21と本体部22とが、別部材によって形成されている。具体的には、本体部22は、鋼板に折り曲げ加工を施した部材となっているのに対し、肘置き部21は、鋼線をU字状に折り曲げた部材となっている。肘置き部21は、本体部22に溶接等することによって事後的に一体化されている。
【0049】
これにより、本体部22については共通の部材を用いながらも、肘置き部21の形態にバリエーションを持たせやすくなる。アームレストは、それが搭載される車種等によって、肘置き部21の長さ等の使用が切り替わるところ、肘置き部21のみを切り替えることで対応することが可能になる。
【0050】
また、第二実施形態のアームレスト(図4(a))においては、従動部材60を設けており、この従動部材60に、付勢部材50(コイルばね)の一端を取り付けていた。これに対し、第四実施形態のアームレストにおいては、図4(c)に示すように、従動部材60を設けておらず、付勢部材50(コイルばね)の一端を、固定部材10に固定された規制ピン40に取り付けるとともに、付勢部材50(コイルばね)の他端を、回動部材20に直接的に取り付けている。
【0051】
このため、第四実施形態のアームレストでは、肘置き部21が設定位置P~P図3を参照。)のいずれにあるかによって、回転半径方向に対する付勢部材50の付勢力の向きが変わり、ロック力も変わる。しかし、従動部材60が不要となり、部品点数が少なくなる点で、製造コストの削減や軽量化の上でメリットがある。
【0052】
5.用途
本発明のアームレストは、シートバックを備えた各種座席に採用することができる。特に、シートバックのリクライニング機能を備えた座席に好適に採用することができる。本発明のアームレストは、構造がシンプルで軽量化が容易であることから、自動車や航空機等の移動体の座席に、特に好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 固定部材
20 回動部材
21 肘置き部
22 本体部
23 付勢部材取付軸
30 支軸
40 規制ピン
50 付勢部材
60 従動部材
安息位置(使用位置)(設定位置)
第一の運転位置(使用位置)(設定位置)
第二の運転位置(使用位置)(設定位置)
格納位置(設定位置)
α 規制ピン通路
α 規制ピン係止溝(安息位置)
α 規制ピン係止溝(第一の運転位置)
α 規制ピン係止溝(第二の運転位置)
α 規制ピン係止溝(格納位置)
β 支軸取付孔
β 回動ストッパー
γ 支軸挿通孔(回動部材)
γ ストッパー当接面
δ 支軸挿通孔(従動部材)
δ 規制ピン挿通孔
δ 付勢部材取付孔
δ 付勢部材取付軸挿通孔
【要約】
【課題】
簡素な構造でありながらも、肘置き部を適切な設定位置に容易に設定できるアームレストを提供する。
【解決手段】
固定部材10と、回動部材20と、支軸30と、規制ピン40と、付勢部材50とを備え、肘置き部21を複数の設定位置P~P間で切り替えることができるようにしたアームレストにおいて、固定部材10及び回動部材20を、左右一対の側壁と、それを連結する連結壁を有する断面U字状を為すものとし、固定部材10には、支軸30を取り付けるための支軸取付孔βと、回動ストッパーβとを設け、回動部材20には、支軸30を挿通するための長孔状の支軸挿通孔γと、ストッパー当接面γとを設けるとともに、固定部材10と回動部材20のうちいずれか一方の部材に、規制ピン40を固定して、他方の部材に、規制ピン通路αと、奥部の幅が規制ピン40の外径よりも狭くなる規制ピン係止溝α~αとを、それぞれ左右一対に設けた。規制ピン40が規制ピン係止溝α~αに重なる位置に回動部材20を回動させると、規制ピン40が規制ピン係止溝α~αに入り込んで楔状に係止されることで、回動部材10がロックされる。
図1
図2
図3
図4