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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】唇用固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20250303BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20250303BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/85
A61Q1/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021011974
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115395
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】110004484
【氏名又は名称】弁理士法人岩橋国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】林田 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】中野 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】岡本 寛史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 桐子
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015666(JP,A)
【文献】特開2013-209296(JP,A)
【文献】特開2014-129265(JP,A)
【文献】特開2017-155034(JP,A)
【文献】特開2002-128629(JP,A)
【文献】特開2022-000414(JP,A)
【文献】特開2020-005056(JP,A)
【文献】特開2019-011280(JP,A)
【文献】特開2012-012376(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013174(WO,A1)
【文献】特開2010-260834(JP,A)
【文献】特開2008-019200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0324136(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0200544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)密着油としての、(a1)(イソステアリン酸ポリグリセル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、又は(a1)(イソステアリン酸ポリグリセル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー及び(a2)ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル 15~50質量%、
(B)しみ出し油としての、オレフィンオリゴマー、スクワラン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、重質流動パラフィン、水添ポリデセンから選択される1種または2種以上の常温で液状の不揮発性炭化水素油 20~70質量%、
(C)ワックス 5~15質量%
を含む唇用固形化粧料であり、
(a1)(イソステアリン酸ポリグリセル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーが(A)成分中50質量%以上であり、
(A):(B)の割合が1:0.5~1:4であり、
上記成分(A)~(C)の合計が全油相成分中80~100質量%を占める唇用固形化粧料。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧料において、(B)成分の粘度が常温で100mPa・s以下であることを特徴とする唇用固形化粧料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の唇用化粧料において、フェニル変性シリコーンの配合量が5質量%以下であることを特徴とする唇用固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は唇用固形化粧料、特に2次付着レス効果と化粧持ちに優れ、仕上がりが程よいツヤ感である唇用固形化粧料の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の唇用化粧料は、口紅を唇に塗布した後、該口紅がカップなど唇に接触する部位に転写してしまう二次付着性が問題となっていた。これに対し、二次付着を起こしにくい、いわゆる二次付着レス効果をもつ唇用化粧料が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1~4には、唇に密着する水添ポリイソブテンと、該水添ポリイソブテンと常温で相溶性の低い有機シリコーン油などを用い、製品中では均一系であるが、使用時のシェアにより水添ポリイソブテンと有機シリコーン油を分離させる唇用固形化粧料が開示されている。
【0004】
二次付着レス効果を有する唇用化粧料では、使用時に水添ポリイソブテンが唇に密着し、有機シリコーン油層が水添ポリイソブテン層上に被膜を形成する。この有機シリコーン油は無色透明であるため、たとえカップなどに転写されたとしても目立たず、二次付着レス効果が発揮されるのである。
【0005】
ところが、上記のように水添ポリイソブテンやポリイソブチレンなどの高粘性油剤を多量に配合すると、使用時の伸びが重くなったり、仕上がりがべたついたりするなどの欠点があった。そこで特許文献5においては、特定量のフェニル性シリコーンと共に、高温時でも当該フェニル変性シリコーンと相溶性を示さない高粘度非揮発性エステル油と、デキストリン脂肪酸エステルと、さらに揮発性炭化水素を組み合わせることで、べたつきがなく、二次付着レス効果に優れる油中油型口唇化粧料が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献5の組み合わせでは固形の口唇化粧料は出来ておらず、高温時でも相溶しない油分を配合することが必須とされているため、固形口紅を製造したとしても、不均一で脆いものとなってしまう。フェニル変性シリコーンを用いると仕上がり時にツヤが出すぎてしまうこともあり、課題を残していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許4757950号
【文献】特許5280490号
【文献】特開2012-82188号公報
【文献】特許6184454号
【文献】特許6050679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、優れた二次付着レス効果を有し、化粧持ちに優れ、適度なツヤ感に仕上がる唇用固形化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが前述の問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、唇側に密着する油分(密着油分)としてダイマー酸エステルを含む共重合体、又は、ダイマー酸エステルを含む共重合体及びダイマー酸のエステルを、唇に塗布した際に表層に染み出る油分(しみ出し油分)として常温で液状の炭化水素油を配合することで二次付着レス効果を有し、仕上がりが程よいツヤ感となる固形状の口唇化粧料が出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
前記目的を達成するために本発明にかかる唇用固形化粧料は、以下の6点を包含する。
(1)必須の成分として、
(A)密着油としての、(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体、又は(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体及び(a2)ダイマー酸エステルを15~50質量%、
(B)常温で液状の不揮発性炭化水素油 20~70質量%
(C)ワックス 5~15質量%、
を含む。
また、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計量が全油相成分中の80~100質量%を占めることが好ましい。
さらに、(D)色材を含むことが好適である。
また、(B)成分は90℃で(A)成分と相溶し、25℃で(A)成分と分離するものである。
(2)上記化粧料において、(B)成分の粘度が常温で100mPa・s以下である。
(3)上記化粧料において、オレフィンオリゴマー、スクワラン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、重質流動パラフィン、水添ポリデセンから選択される(B)常温で液状の炭化水素油を1種または2種以上含み、
(A):(B)の割合が1:0.5~1:4である。
(4)上記化粧料において、(A)のダイマー酸エステルを含む共重合体が(イソステアリン酸ポリグリセル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーである。
(5)上記化粧料において(A)のダイマー酸エステルがダイマージリノール酸ダイマージリノレイルである。
(6)上記化粧料において、フェニル変性シリコーンの配合量が5質量%以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる唇用固形化粧料は、(A)(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体、又は、(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体及び(a2)ダイマー酸エステル、(B)常温で液状の炭化水素油、(C)ワックスを特定量配合することにより、二次付着レス効果を有し、程よいツヤ感に仕上がり、化粧持ちも良好である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかる唇用固形化粧料は、(A)(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体、又は、(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体及び(a2)ダイマー酸エステル、(B)常温で液状の炭化水素油、(C)ワックス、から構成されている。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0013】
(A)(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体/(a2)ダイマー酸エステル
(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体は、高粘度非揮発性エステル油であり、二次付着レスの効果を高めるために(B)常温で液体の炭化水素油と90℃で相溶し、25℃で分離するものを選択する。具体的には、ダイマージリノール酸エステル共重合体が挙げられる。
(a2)ダイマー酸エステルは、植物系油脂を原料とするC18不飽和脂肪酸の二量化によって生成されたC36ジカルボン酸の二塩基酸を主成分とし、一塩基酸、三塩基酸を含有する液状脂肪酸のエステルである。
【0014】
(a1)ダイマー酸エステルを含む共重合体は、市販品としては、ハイルーセントISDA(高級アルコール社製)、がある。
また、(a2)ダイマー酸エステルは、市販品としては、例えば、LUSPLAN DD-DA(日本精化社製)、が挙げられる。
【0015】
(A)成分の配合量は、化粧料全体に対して15~50質量%が好適である。
唇への密着性及び、化粧効果の持続性の観点から好ましくは20~40質量%であり、さらに好ましくは25~35質量%である。
【0016】
(B)常温で液状の炭化水素油
(B)常温で液状の炭化水素油は、粘度が100mPa・s以下であり、不揮発性である必要がある。化粧品に一般的に用いられているものであれば、直鎖上でも分岐鎖状でもよく、特に限定されず使用できる。なお、本発明において粘度は、25℃において、spindle NО.M1、1000rpmにてB型粘度計TVB-10(ヤマト科学株式会社製)で測定したものである。
また、25℃で(A)ダイマー酸エステルを含む共重合体、又は、ダイマー酸エステルを含む共重合体及びダイマー酸エステル、と混合した時に分離するものである。
【0017】
分離の条件
本発明において「分離」の有無は、以下の条件で測定された。
(測定条件)
(A)と(B)を(A):(B)=1:1(質量比)で用いて、90℃に加温し、攪拌混合し、次いで静置し、混合物が25℃になった時に、境界が均一に2層に分離しているものを「分離する」とし、境界がなく透明な状態を「分離しない」とする。また、目視できる境界がなく不透明な状態を「白濁」とする。
【0018】
本発明において「相溶」の有無は以下の条件と規定した。
90℃で境界を目視で確認できず透明な状態、すなわち「分離していない状態」を相溶と規定した。
【0019】
常温で液状の炭化水素油とは、例えばオレフィンオレゴマー、スクワラン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、水添ポリデセン等が挙げられる。
【0020】
また、常温で液体の炭化水素油は、市販品としては、例えば、ノムコートHP100(日清オイリオ社製)、スクワラン(クラレ社製)、が挙げられる。
【0021】
(B)成分の配合量は、化粧料全体に対して20~70質量%である。
好ましくは30~55質量%であり、さらに好ましくは35~50質量%である。
(B)成分の配合量が20質量%未満では、塗布時に分離しにくくなり、二次付着レス効果が現れにくい。また、70質量%を超えると、他成分の配合量が減ってしまい、二次付着レス効果が現れにくい。
【0022】
(B)の粘度は100mPa・s以下が好適である。
粘度が100mPa・sを超えると塗布時に分離しにくくなり、化粧持ちが悪くなる。さらに好ましくは50mPa・sである。また、(B)は不揮発性油分であることが好ましい。揮発性油分だと染み出し油として機能をせず、二次付着レス効果や化粧持ちが低下する。
【0023】
(A)成分と(B)成分の配合比としては、1:0.5~1:4が好適である。好ましくは1:0.8~1:3.5、さらに好ましくは1:1~1:2である。この範囲内であると、(A)成分と(B)成分は90℃では溶解し、25℃では分離する。
【0024】
(C)ワックス
本発明の唇用固形化粧料に配合される(C)ワックスとしては、通常化粧料に配合されるものであれば、特に限定されない。
本発明に用いられるワックスは、高温では(A)成分、(B)成分と相溶性があり、常温においては分離するものが好ましい。
【0025】
本発明に用いられるワックスとしては、例えば、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ビースワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィン、モクロウ、ミツロウ、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0026】
(C)成分の配合量は、化粧料全量に対して5~15質量%が好ましい。
さらに好ましくは7~12質量%である。(C)成分の配合量が5質量%以下だと固化しづらい場合があり、15質量%を超えると、伸びづらく、ツヤがなくなることがある。
【0027】
本発明の唇用固形化粧料には、上記必須成分である(A)~(C)成分の他、通常唇用固形化粧料に用いられる成分を任意成分として含むことができる。
本発明の唇用固形化粧料には(D)色材を配合することも好適である。色材としては、通常唇用固形化粧料に用いられるものを配合することができる。
【0028】
(D)色材としては、通常、化粧料に用いられる色材であれば良く、粉末上でもレーキ状(油を練りこんだ状態)でも良い。無機顔料であっても、有機顔料であっても、パール剤であってもよい。
この時、色材は唇に密着する(A)成分に溶解もしくは分散し、染み出し油分としての(B)成分には溶解・分散しないことが望ましい。色材が(B)成分にも分散すると二次付着レス効果が低下するからである。
【0029】
色材として、顔料、パール剤、ラメ剤、これらをレーキ化したものなど、化粧料に通常
配合されるものを使用することができる。
色材としては、例えば、無機白色系顔料(二酸化チタン、酸化亜鉛)、無機赤色系顔料
(酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄)、無機褐色系顔料(γ-酸化鉄)、無機黄色系顔料
(黄酸化鉄、黄土)、無機黒色系顔料(黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン)、無機紫
色系顔料(マンゴバイオレット、コバルトバイオレット)、無機緑色系顔料(酸化クロム
、水酸化クロム、チタン酸コバルト)、無機青色系顔料(群青、紺青)、パール顔料(酸
化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色
酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔)、金属粉末顔料(アルミニウムパ
ウダ一、カッパーパウダー)、有機顔料(赤色202号、赤色205号、赤色220号、
赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色40
号、青色404号)、ジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキの有機顔料(赤色3
号、赤色104号、赤色227号、赤色401号、橙色205号、黄色4号、黄色20
号、緑色3号、青色1号)、天然色素(クロロフィル、カルチノイド系(β-カロチン)
、カルサミン、コチニール、カルコン、クルクミン、ベタニン、フラボノール、フラボン
、アントシアニジン、アントラキノン、ナフトキノン)、機能性顔料(窒化ホウ素、フォ
トクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体(ハイ
ブリッドファインパウダー))等が挙げられる。
【0030】
(D)成分の配合量は、化粧料全体に対して0.1~15質量%が好ましい。
さらに好ましくは4~10質量%である。(D)成分の配合量が0.1質量%未満では、二次付着レス効果を感じにくい場合がある。また、15質量%を超えると、相対的に(A)~(C)成分の配合量が少なくなってしまうため、二次付着レスの効果を低下させてしまう場合がある。
【0031】
本発明の唇用固形化粧料はいわゆる「つなぎ油分」がなくても作製が可能である。つなぎ油分とは、密着油分と染み出し油分を高温で相溶化させるためのものである。本発明ではつなぎ油分を含んでも良い。
つなぎ油分としては、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサノイン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。好適な配合量は0~20質量%である。
【0032】
本発明の唇用固形化粧料には、上記成分の他、通常の唇用固形化粧料に用いられる上記以外の油剤、粉体、高分子化合物、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、美容成分等、を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。本発明において、フェニル変性シリコーンを配合する場合は化粧料全体の5質量%未満であることが好ましい。フェニル変性シリコーンの配合量が5質量%を超えると、油分全体の相溶性が悪くなり、安定性が悪くなるからである。
【0033】
本発明において加える粉体は化粧料に対して30質量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは20質量%以下である。加える粉体が30質量%を超えると(A)~(C)成分の配合量が相対的に少なくなってしまうため、二次付着レスの効果を低下させてしまう場合がある。
粉末としては、球状粉末、板状粉末等が挙げられる。
球状粉末としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラス
トマー、ポリスチレン、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエチレン、スチレンとアクリ
ル酸の共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、ポリ四フッ化エチレン、シリコーン樹脂等の球
状樹脂粉末が挙げられる。
板状粉末としては、例えば、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、酸化アルミニ
ウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸
カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸ア
ルミニウムマグネシウム、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタ
イト、窒化ホウ素等の無機粉体類、N-アシルリジン等の有機粉体類、微粒子酸化チタン
被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン等
の複合粉体類等が挙げられる。
顔料、パール剤、ラメ剤などの粉末として、親水化処理した粉末を用いてもよい。親水
化処理した粉末としては、当分野で知られる親水化処理を施したものを用いることができ
る。親水化処理は有機処理、無機処理共に可能である。親水化処理剤としては、特に限定
されるものではないが、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子、金属アルコキシド、水
ガラス等が挙げられる。
【0034】
本発明の唇用固形化粧料は、その製造工程のすべてにおいて分離せず、均一一相の状態であるように成分構成されたものであることが好ましい。
本発明の唇用固形化粧料は、口紅、リップグロス、下地用のリップベース、口紅オーバーコート、リップクリームなどに応用することができる。特にスティック固形状の口紅が好ましい。
【実施例
【0035】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
【0036】
まず、発明者らはダイマー酸エステルを含む共重合体(ハイルーセントISDA)と各種油分との相溶性を確認した。結果を表1に示す。
【0037】
(混合状態の測定条件)
(A)と(B)を(A):(B)=1:1(質量比)で用いて、90℃に加温し、攪拌混合し、状態を確認した。次いで静置し、混合物が25℃になった時にも状態を確認した。境界が均一に2層に分離しているものを「分離」とし、境界がなく透明な状態を「相溶」とする。また、目視できる境界がなく不透明な状態を「白濁」とする。
【0038】
【表1】
*1 エルデュウPS-203(味の素株式会社)
*2 プランドゥールPB(日本精化)
*3 ODO(日清オイリオグループ株式会社)
*4 コスモール168M(日清オイリオグループ株式会社)
【0039】
表1より、ダイマー酸エステルを含む共重合体(ハイルーセントISDA)と混合した際に、90℃で相溶し、25℃で分離する油分として常温で液体の炭化水素油が挙げられることが分かる。
【0040】
次に、各種のダイマー酸エステルを含む共重合体及び/又はダイマー酸エステルと各種の炭化水素油との相溶性についても確認した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
*5 ハイルーセントISDA(高級アルコール工業株式会社)
*6 LUSPLAN DD-DA7(日本精化)
*7 エルデュウPS-306(味の素株式会社)
【0042】
表2の結果から、ダイマー酸エステルを含む共重合体、もしくは、ダイマー酸エステルを含む共重合体とダイマー酸エステルを1:1で混合したもののみが90℃では炭化水素と溶解し、25℃で分離することがわかる。したがって、ダイマー酸エステルを含む共重合体、もしくは、ダイマー酸エステルを含む共重合体とダイマー酸エステルを混合したものと常温で液体の炭化水素油の組み合わせが好ましいと言える。
【0043】
本発明者らは表に記載の配合組成よりなる試料(固形口紅)を常法により製造した。そして、各試料を下記評価基準に基づき評価した。
【0044】
(成形性の評価方法)
口紅を成型するための型から外す際に下記基準で判断した。
A:欠け、型への付着なし
C:欠けもしくは型への付着あり
【0045】
(二次付着レスの評価方法)
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。試料を唇に塗布した際の二次付着レス効果について下記採点基準に基づいて5段階評価をした。そのスコア平均値により下記評価基準で判定した。
(スコア)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
(評価基準)
S:スコア平均値4.0点以上
A:スコア平均値3.5点以上4.0点未満
B:スコア平均値2.5点以上3.5点未満
C:スコア平均値2.5点未満
【0046】
(ツヤ感の評価方法)
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。試料を唇に塗布した際のツヤ感について下記採点基準に基づいて3段階評価をした。そのスコア平均値により下記評価基準で判定した。
(スコア)
3点:参考処方と比較して、ツヤが抑えられている。
2点:参考処方と比較して、ややツヤが抑えられている。
1点:参考処方と同程度のツヤを感じる。
(評価基準)
A:スコア平均値2.0点以上
B:スコア平均値1.5点以上2.0点未満
C:スコア平均値1.5点未満
〔参考処方〕
【0047】
(化粧持ちの評価方法)
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。試料を唇に塗布した際の2時間後の化粧持ちについて下記採点基準に基づいて5段階評価をした。そのスコア平均値により下記評価基準で判定した。
(スコア)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
(評価基準)
S:スコア平均値4.0点以上
A:スコア平均値3.5点以上4.0点未満
B:スコア平均値2.5点以上3.5点未満
C:スコア平均値2.5点未満
【0048】
発明者らは混合できる炭化水素油の粘度について検討した。
結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
上記の表3の結果から(B)成分としての炭化水素は不揮発性のものを使用する必要があることがわかる。揮発性の炭化水素油だと好ましい使用性が得られない。また、不揮発性の炭化水素油の粘度としては、100mPa・s以下だと化粧料が二次付着レス効果に優れ、適度なツヤと優れた化粧持ち効果が得られることが示唆される。好ましくは50mPa・s以下である。
【0051】
発明者らは(A)成分と(B)成分の配合量並びに混合割合について検討した。
結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
表4の試験例1‐1~1‐10の結果から、(A)ダイマー酸エステルを含む共重体の配合量は15~50質量%が好ましいことが分かる。また、(B)常温で液状の炭化水素の配合量は好ましくは20~70質量%である。また、同試験例より(A)成分と(B)成分の配合比が1:0.5~1:4であると二次付着レス効果が発揮され使用性の良い唇用固形化粧料が得られることが示唆される。
【0054】
発明者らは、ダイマー酸エステルを含む共重合体以外に密着油分となるものはないか検討をした。結果を表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
表5の試験例2-1~2-6と2-7~2-10を比較することにより、密着油分としてダイマー酸エステルを含む共重合体であるイソステアリン酸ポリグリセル-2/ダイマージリノール酸)コポリマーを配合することが必須であることがわかる。
また、試験例2-1~2-4と、試験例2-7、2-8を比較することにより、ダイマー酸エステルもダイマー酸エステルを含む共重合体と併用することで、密着油分として機能することがわかる。その場合、密着油中50質量%以上をダイマー酸エステルを含む共重合体が占める必要がある。
【0057】
処方例1:口紅
成分 配合量(質量%)
(イソステアリン酸ポリグリセル-2/ダイマージリノール酸)
コポリマー*5 30
スクワラン 45
ポリエチレンワックス 10
色材 10
パール剤 5
【0058】
処方例2:口紅
成分 配合量(質量%)
(イソステアリン酸ポリグリセル-2/ダイマージリノール酸)
コポリマー *5 15
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル *6 15
水添ポリイソブテン 45
ポリエチレンワックス 10
色材 10
パール剤 5