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特許7642304履帯式走行装置の転輪、履帯式走行装置および作業機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】履帯式走行装置の転輪、履帯式走行装置および作業機械
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/14 20060101AFI20250303BHJP
   B62D 55/06 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
B62D55/14 A
B62D55/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019084399
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020179782
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】北井 則行
(72)【発明者】
【氏名】前田 和生
【合議体】
【審判長】草野 顕子
【審判官】横溝 顕範
【審判官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-173089(JP,U)
【文献】実開平4-67584(JP,U)
【文献】実開昭49-124736(JP,U)
【文献】特表2003-525169号公報(JP,A)
【文献】特開2004-276696号公報(JP,A)
【文献】中国実用新案第203020436号明細書(CN,U)
【文献】特開昭50-88735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D55/00-55/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に冷却媒体を溜めるための凹部を有するシャフトと、
前記シャフトの前記外周面に対して回転可能なローラと、
前記シャフトの前記外周面に対して前記ローラを回転可能に支持する、前記シャフトの径方向の力を受ける第1滑り軸受と、
前記ローラに支持される回転側部材と、前記回転側部材と摺動する固定側部材とを有するフローティングシールと、を備え、
前記凹部は、前記シャフトの前記径方向において、前記フローティングシールにおける前記回転側部材と前記固定側部材との摺動部と前記第1滑り軸受との双方に直接対向しており、
前記凹部は、前記シャフトの軸線に対して線対称に配置されており、
前記軸線に対して直交する方向に前記シャフトを切断した断面において前記凹部の壁部が直線状に延びる部分を有することにより前記凹部は前記シャフトの径方向外側に向かって広がる形状を有し
前記シャフトは、前記シャフトの軸方向に延びる流路と、前記流路から前記シャフトの前記径方向の外側へ向かって前記凹部まで延びる分岐流路とを有し、前記分岐流路は前記第1滑り軸受と、前記凹部を挟んで前記径方向に対向する位置に設けられている、履帯式走行装置の転輪。
【請求項2】
前記シャフトは、前記径方向の外側に張り出した中鍔を有し、
前記中鍔に対して前記ローラを回転可能に支持する、前記シャフトの軸方向の力を受ける第2滑り軸受をさらに備え、
前記凹部は、前記シャフトの前記径方向において前記第2滑り軸受と対向している、請求項1に記載の履帯式走行装置の転輪。
【請求項3】
前記シャフトの前記外周面と前記ローラの内周面との間に配置されたブシュをさらに備え、
前記回転側部材は前記ブシュを介在して前記ローラに支持されている、請求項1または請求項2に記載の履帯式走行装置の転輪。
【請求項4】
外周面に冷却媒体を溜めるための凹部を有するシャフトと、
前記シャフトの前記外周面に対して回転可能なローラと、
前記シャフトの前記外周面に対して前記ローラを回転可能に支持する、前記シャフトの径方向の力を受ける第1滑り軸受と、
前記ローラに支持される回転側部材と、前記回転側部材と摺動する固定側部材とを有するフローティングシールと、を備え、
前記凹部は、前記シャフトの前記径方向において、前記フローティングシールにおける前記回転側部材と前記固定側部材とのいずれかと前記第1滑り軸受との双方に直接対向しており、
前記凹部は、前記シャフトの軸線に対して線対称に配置されており、
前記軸線に対して直交する方向に前記シャフトを切断した断面において前記凹部の壁部が直線状に延びる部分を有することにより前記凹部は前記シャフトの径方向外側に向かって広がる形状を有し
前記シャフトは、前記シャフトの軸方向に延びる流路と、前記流路から前記シャフトの前記径方向の外側へ向かって前記凹部まで延びる分岐流路とを有し、前記分岐流路は前記第1滑り軸受と、前記凹部を挟んで前記径方向に対向する位置に設けられている、履帯式走行装置の転輪。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の転輪と、
前記転輪により回転可能に支持された環状の履帯装置と、を備えた、履帯式走行装置。
【請求項6】
請求項5に記載の履帯式走行装置と、
前記履帯式走行装置に支持された作業機械本体と、を備えた、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、履帯式走行装置の転輪、履帯式走行装置および作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業機械の下転輪に組み込まれるフローティングシールは、固定側に配置されたシールリングに対して、回転側に配置されたシールリングを摺動させることにより、潤滑油の給油経路終端を封止している。
【0003】
近年のブルドーザなどの作業機械においては、より高速走行による作業効率の向上が要望されている。転輪の高速回転化に伴い、フローティングシールまわりでの発熱量が増えている。
【0004】
これに対して、シャフトに対するスライドを規制する機構を軸受に備えることで、転輪における摩擦熱の発生を抑制する技術が、たとえば特開2004-82819号公報(特許文献1参照)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-82819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されたスライドを規制する機構では、構造が複雑となる。
本開示は、簡単な構造で、冷却性能を向上することによって発熱を抑制できる履帯式走行装置の転輪、履帯式走行装置および作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の履帯式走行装置の転輪は、シャフトと、ローラと、第1滑り軸受と、フローティングシールとを備えている。シャフトは、外周面に冷却媒体を溜めるための凹部を有する。ローラは、シャフトの外周面に対して回転可能である。第1滑り軸受は、シャフトの外周面に対してローラを回転可能に支持し、シャフトの径方向の力を受ける。フローティングシールは、ローラに支持される回転側部材と、回転側部材と摺動する固定側部材とを有する。凹部は、シャフトの径方向において、フローティングシールにおける回転側部材と固定側部材との摺動部と第1滑り軸受との双方に対向している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、簡単な構造で、冷却性能を向上することによって発熱を抑制できる履帯式走行装置の転輪、履帯式走行装置および作業機械を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1における作業機械の例としてブルドーザの構成を示す概略側面図である。
図2図1の作業機械に含まれる下転輪の構成を示す部分破断斜視図である。
図3図2に示す下転輪の構成を示す第1断面図である。
図4図2に示す下転輪の構成を示す第2断面図である。
図5図4のV-V線に沿うシャフトの断面図である。
図6図2に示す下転輪の組み立て方法を示す断面図である。
図7】本開示の実施の形態2における作業機械に含まれる下転輪の構成を示す第1断面図である。
図8】本開示の実施の形態2における作業機械に含まれる下転輪の構成を示す第2断面図である。
図9図7に示す下転輪の組み立て方法における第1工程を示す断面図である。
図10図7に示す下転輪の組み立て方法における第2工程を示す断面図である。
図11】本開示の実施の形態3における作業機械に含まれる下転輪の構成を示す第1断面図である。
図12】本開示の実施の形態3における作業機械に含まれる下転輪の構成を示す第2断面図である。
図13図1の作業機械に含まれる遊動輪の構成を示す部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、各実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0011】
(実施の形態1)
<作業機械の構成>
まず、本開示の実施の形態1における作業機械の例としてブルドーザの構成について図1を用いて説明する。なお本開示はブルドーザに限定されず、油圧ショベルなどの履帯式走行装置を有する作業機械であれば適用可能である。
【0012】
図1は本開示の実施の形態1における作業機械の例としてブルドーザの構成を示す概略側面図である。図1に示されるように、本実施の形態の作業機械100としてのブルドーザは、履帯式走行装置1と、車体2と、作業機3とを主に有している。車体2と作業機3とにより作業機械本体が構成されている。
【0013】
車体2は、キャブ(運転室)4と、エンジン室5とを有している。キャブ4は車体2の後上部に配置され、エンジン室5はキャブ4の前方に配置されている。
【0014】
作業機3は、ブレード6と、フレーム7と、アングルシリンダ8と、昇降シリンダ9とを有している。ブレード6は、車体2の前方に配置されている。ブレード6は、左右両側でフレーム7により支持されている。フレーム7の一端はブレード6の背面に回転自在の支持部により取り付けられている。フレーム7の他端は車体2の側面に回転自在に支持されている。
【0015】
ブレード6は、アングルシリンダ8および昇降シリンダ9によって駆動される。アングルシリンダ8の一端はブレード6の背面に回転自在に支持されている。アングルシリンダ8の他端は車体2の側面に回転自在に支持されている。
【0016】
アングルシリンダ8の油圧による伸縮によって、ブレード6はフレーム7による支持部を中心に回動する。これによりブレード6の上端6aが前後方向(図1の左右方向)に移動し、ブレード6が前後方向にアングリング操作される。
【0017】
昇降シリンダ9の一端はフレーム7の上面に回転自在に支持されている。昇降シリンダ9の中間部は車体2の側面に回転自在に支持されている。昇降シリンダ9の油圧による伸縮によって、ブレード6はフレーム7の他端を中心にして上下方向に移動する。
【0018】
履帯式走行装置1は、左右1対の履帯装置1Aを有している。左右1対の履帯装置1Aは、ブルドーザ100の車幅方向に離れて配置されている。左右1対の履帯装置1Aは、車体2を挟むように配置されている。
【0019】
左右1対の履帯装置1Aの各々は、履帯10と、下転輪20と、上転輪20aと、駆動輪(スプロケット)41と、遊動輪(アイドラ)42と、トラックフレーム43とを主に有している。
【0020】
駆動輪41およびトラックフレーム43の各々は、車体2の側部に取り付けられている。トラックフレーム43には、遊動輪42、複数の下転輪20および複数の上転輪20aの各々が取り付けられている。
【0021】
駆動輪41はトラックフレーム43の後方に回転駆動可能に配置されている。遊動輪42はトラックフレーム43のたとえば前端部に回転可能に配置されている。複数の下転輪20はトラックフレーム43の下側に回転可能に配置されている。複数の上転輪20aはトラックフレーム43の上面側に回転可能に配置されている。
【0022】
履帯10は、環状(無端状)に構成されており、駆動輪41および遊動輪42に巻きかけられている。また履帯10は駆動輪41と遊動輪42との間に配置された複数の下転輪20および複数の上転輪20aにより回転可能に支持されている。
【0023】
履帯10は駆動輪41に噛み合わされており、この駆動輪41の回転駆動により回転可能に構成されている。この履帯10の回転時において、遊動輪42、複数の下転輪20および複数の上転輪20aの各々は履帯10に当接して従動回転可能である。
【0024】
車体2と作業機3とから構成される作業機械本体は、履帯式走行装置1により走行可能に支持されている。
【0025】
<下転輪20の構成>
次に、本実施の形態の作業機械100に用いられる下転輪20の構成について図2図5を用いて説明する。
【0026】
図2は、図1の作業機械に含まれる下転輪の構成を示す部分破断斜視図である。図3および図4のそれぞれは、図2に示す下転輪の構成を示す第1断面図および第2断面図である。図5は、図4のV-V線に沿うシャフトの断面図である。
【0027】
なお図3における断面と図4における断面とは、シャフト21の軸線Cを通る断面であって、互いに90度異なる角度で切断した断面である。また図5における断面は軸線Cに対して直交する方向に切断した断面である。
【0028】
図2に示されるように、本実施の形態における下転輪20は、シャフト21と、ローラ22a、22bと、滑り軸受部材23a、23bと、フローティングシール26a、26bと、支持体27a、27bとを有している。
【0029】
シャフト21に、2つのローラ22a、22bが外挿されている。シャフト21とローラ22aとの間に滑り軸受部材23aが配置されている。シャフト21の一方端側には支持体27aが固定されている。フローティングシール26aの回転側部材26aRがローラ22aに支持されている。フローティングシール26aの固定側部材26aFが支持体27aを介在してシャフト21に支持されている。
【0030】
シャフト21とローラ22bとの間に滑り軸受部材23bが配置されている。シャフト21の他方端側には支持体27bが固定されている。フローティングシール26bの回転側部材26bRがローラ22bに支持されている。フローティングシール26bの固定側部材26bFが支持体27bを介在してシャフト21に支持されている。
【0031】
図3に示されるように、シャフト21は、シャフト本体21aと、中鍔21bとを有している。シャフト本体21aは軸線C(仮想線)を有しており、軸線Cはシャフト本体21aの軸中心を通っている。
【0032】
中鍔21bは、シャフト本体21aの外周面21aaに対してシャフト本体21aの径方向外側に張り出している。中鍔21bは環形状を有し、周方向全周にてシャフト本体21aの外周面21aaから張り出している。中鍔21bは、シャフト本体21aと一体に構成されている。中鍔21bは、シャフト本体21aの軸方向(軸線Cの延びる方向)においてシャフト本体21aの中心部付近に配置されている。
【0033】
中鍔21bは、シャフト本体21aの軸方向において互いに対向する端面21ba、21bbを有している。中鍔21bの2つの端面21ba、21bbの各々は、シャフト本体21aの外周面21aaに対してたとえば直交している。中鍔21bの2つの端面21ba、21bbは、たとえば互いに平行である。
【0034】
ローラ22aおよびローラ22bの各々は、円筒形状を有している。ローラ22aおよびローラ22bの各々は、一方端側から他方端側へ貫通した貫通孔を有している。ローラ22aおよびローラ22bの各々の貫通孔に、シャフト21が挿入されている。ローラ22aおよびローラ22bの各々は、シャフト21に外挿されている。
【0035】
ローラ22aの一方端とローラ22bの一方端とは、突き合わされることにより互いに当接している。ローラ22aの一方端とローラ22bの一方端とは、溶接部22cにより互いに固定されている。溶接部22cは、周方向全周に設けられている。
【0036】
ローラ22aとローラ22bとが互いに突き合わされた部分は、中鍔21bに対してシャフト21の径方向外側に位置している。また溶接部22cも、中鍔21bに対してシャフト21の径方向外側に位置している。
【0037】
ローラ22aは、ローラ22aの一方端からローラ22aの他方端側へ窪んだ位置に端面22abを有している。ローラ22bは、ローラ22bの一方端からローラ22bの他方端側へ窪んだ位置に端面22bbを有している。
【0038】
滑り軸受部材23aは鍔付き円筒形状を有している。この滑り軸受部材23aは、ローラ22aの内周面22aaに圧入されている。これにより滑り軸受部材23aは、ローラ22aとともに回転可能である。滑り軸受部材23aは、ローラ22aの内周面22aaとシャフト21の外周面21aaとの間に位置している。また滑り軸受部材23aは、中鍔21bの端面21baとローラ22aの端面22abとの間にも位置している。
【0039】
滑り軸受部材23aは、一方端から他方端へ貫通した貫通孔を有している。滑り軸受部材23aの貫通孔に、シャフト21が挿入されている。滑り軸受部材23aは、シャフト21に外挿されている。
【0040】
滑り軸受部材23aは、ラジアル滑り軸受23aa(第1滑り軸受)と、スラスト滑り軸受23ab(第2滑り軸受)とを有している。ラジアル滑り軸受23aaはシャフト21の径方向の力を受ける。ラジアル滑り軸受23aaは円筒形状を有している。スラスト滑り軸受23abは、ラジアル滑り軸受23aaの一方端から径方向の外側に張り出した環形状を有している。スラスト滑り軸受23abはシャフト21の軸方向の力を受ける。スラスト滑り軸受23abは、ラジアル滑り軸受23aaに対してたとえば直交している。スラスト滑り軸受23abは、ラジアル滑り軸受23aaに対して鍔部を構成している。ラジアル滑り軸受23aaとスラスト滑り軸受23abとは一体に構成されている。
【0041】
ラジアル滑り軸受23aaは、ローラ22aの内周面22aaとシャフト21の外周面21aaとの間に配置されている。ラジアル滑り軸受23aaは、シャフト21の外周面21aaに対して、ローラ22aを回転可能に支持している。ラジアル滑り軸受23aaは、径方向の荷重を支えている。
【0042】
スラスト滑り軸受23abは、中鍔21bの端面21baとローラ22aの端面22abとの間に配置されている。スラスト滑り軸受23abは、中鍔21bの端面21baに対して、ローラ22aを回転可能に支持している。スラスト滑り軸受23abは、軸方向の荷重を支えている。
【0043】
滑り軸受部材23bは鍔付き円筒形状を有している。この滑り軸受部材23bは、ローラ22bの内周面22baに圧入されている。これにより滑り軸受部材23bは、ローラ22aとともに回転可能である。滑り軸受部材23bは、ローラ22bの内周面22baとシャフト21の外周面21aaとの間に位置している。また滑り軸受部材23bは、中鍔21bの端面21bbとローラ22bの端面22bbとの間にも位置している。
【0044】
滑り軸受部材23bは、一方端から他方端へ貫通した貫通孔を有している。滑り軸受部材23bの貫通孔に、シャフト21が挿入されている。滑り軸受部材23bは、シャフト21に外挿されている。
【0045】
滑り軸受部材23bは、ラジアル滑り軸受23ba(第1滑り軸受)と、スラスト滑り軸受23bb(第2滑り軸受)とを有している。ラジアル滑り軸受23baはシャフト21の径方向の力を受ける。ラジアル滑り軸受23baは円筒形状を有している。スラスト滑り軸受23bbは、ラジアル滑り軸受23baの一方端から径方向の外側に張り出した環形状を有している。スラスト滑り軸受23bbはシャフト21の軸方向の力を受ける。スラスト滑り軸受23bbは、ラジアル滑り軸受23baに対してたとえば直交している。スラスト滑り軸受23bbは、ラジアル滑り軸受23baに対して鍔部を構成している。ラジアル滑り軸受23baとスラスト滑り軸受23bbとは一体に構成されている。
【0046】
ラジアル滑り軸受23baは、ローラ22bの内周面22baとシャフト21の外周面21aaとの間に配置されている。ラジアル滑り軸受23baは、シャフト21の外周面21aaに対して、ローラ22bを回転可能に支持している。ラジアル滑り軸受23baは、径方向の荷重を支えている。
【0047】
スラスト滑り軸受23bbは、中鍔21bの端面21bbとローラ22bの端面22bbとの間に配置されている。スラスト滑り軸受23bbは、中鍔21bの端面21bbに対して、ローラ22bを回転可能に支持している。スラスト滑り軸受23bbは、軸方向の荷重を支えている。
【0048】
支持体27a、27bの各々は、シャフト本体21aの外周面21aaに固定されている。支持体27a、27bの間に2つのローラ22a、22bが挟まれている。
【0049】
フローティングシール26aは、回転側部材26aRと、固定側部材26aFとを有している。回転側部材26aRは、ローラ22aに支持されている。これにより回転側部材26aRは、ローラ22aとともに回転する。回転側部材26aRは、固定側部材26aFに対して相対的に回転可能である。
【0050】
回転側部材26aRは、弾性リング26aaと、メタルシールリング26abとを有している。メタルシールリング26abは、弾性リング26aaを介在してローラ22aの内周面22aaに支持されている。
【0051】
固定側部材26aFは、弾性リング26acと、メタルシールリング26adとを有している。メタルシールリング26adは、弾性リング26acを介在して支持体27aに支持されている。
【0052】
弾性リング26aa、26acの各々は、たとえばOリングであり、樹脂などから構成されている。メタルシールリング26ab、26adの各々は金属材料から構成されている。
【0053】
弾性リング26aaおよび弾性リング26acの各々の弾性力によって、メタルシールリング26abとメタルシールリング26adとが互いに当接してシール状態に保持されている。回転側部材26aRが固定側部材26aFに対して相対的に回転したとき、メタルシールリング26abとメタルシールリング26adとがシール状態を保ったまま互い摺動する。これにより潤滑油の漏れを防止することができる。
【0054】
フローティングシール26bは、回転側部材26bRと、固定側部材26bFとを有している。回転側部材26bRは、ローラ22bに支持されている。これにより回転側部材26bRは、ローラ22bとともに回転する。回転側部材26bRは、固定側部材26bFに対して相対的に回転可能である。
【0055】
回転側部材26bRは、弾性リング26baと、メタルシールリング26bbとを有している。メタルシールリング26bbは、弾性リング26baを介在してローラ22bの内周面22baに支持されている。
【0056】
固定側部材26bFは、弾性リング26bcと、メタルシールリング26bdとを有している。メタルシールリング26bdは、弾性リング26bcを介在して支持体27bに支持されている。
【0057】
弾性リング26ba、26bcの各々は、たとえばOリングであり、樹脂などから構成されている。メタルシールリング26bb、26bdの各々は金属材料から構成されている。
【0058】
弾性リング26baおよび弾性リング26bcの各々の弾性力によって、メタルシールリング26bbとメタルシールリング26bdとが互いに当接してシール状態に保持されている。回転側部材26bRが固定側部材26bFに対して相対的に回転したとき、メタルシールリング26bbとメタルシールリング26bdとがシール状態を保ったまま互い摺動する。これにより潤滑油の漏れを防止することができる。
【0059】
図4に示されるように、シャフト本体21aは、流路21cと、分岐流路21da、21dbと、凹部21ea、21ebとを有している。流路21c、分岐流路21da、21dbおよび凹部21ea、21ebの各々の内部には、潤滑油が満たされている。
【0060】
潤滑油は冷却媒体としても機能する。冷却媒体は、油以外であってもよく、たとえばグリスでもよい。冷却媒体は、フローティングシール26a、26b、ラジアル滑り軸受23aa、23baおよびスラスト滑り軸受23ab、23bbを冷却できるものであればよい。
【0061】
凹部21ea、21ebの各々は、冷却媒体を溜めるための部分である。凹部21ea、21ebの各々は、シャフト21の外周面、特にシャフト本体21aの外周面21aaに配置されている。凹部21ea、21ebの各々は、シャフト本体21aの外周面21aaから、径方向の内周側に窪んだ部分である。
【0062】
凹部21eaは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26aにおける回転側部材26aRと固定側部材26aFとの摺動部とラジアル滑り軸受23aaとの双方に対向している。凹部21eaは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26aにおける回転側部材26aRと固定側部材26aFとのいずれかとラジアル滑り軸受23aaとの双方に対向している。凹部21eaは、シャフト21の径方向において、スラスト滑り軸受23abと対向している。
【0063】
凹部21eaは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26aの回転側部材26aRおよび固定側部材26aFの双方に対向している。また凹部21eaは、シャフト21の径方向において、ラジアル滑り軸受23aaとフローティングシール26aとに挟まれる領域とも対向している。
【0064】
凹部21eaは、軸方向に沿って、ラジアル滑り軸受23aaと径方向に対向する位置からフローティングシール26aの固定側部材26aFと径方向に対向する位置まで延びている。凹部21eaは、軸方向に沿って、スラスト滑り軸受23abと径方向に対向する位置からフローティングシール26aの固定側部材26aFと径方向に対向する位置まで延びていることが好ましい。
【0065】
凹部21ebは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26bにおける回転側部材26bRと固定側部材26bFとの摺動部とラジアル滑り軸受23baとの双方に対向している。凹部21ebは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26bにおける回転側部材26bRと固定側部材26bFとのいずれかとラジアル滑り軸受23baとの双方に対向している。凹部21ebは、シャフト21の径方向において、スラスト滑り軸受23bbと対向している。
【0066】
凹部21ebは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26bの回転側部材26bRおよび固定側部材26bFの双方に対向している。また凹部21ebは、シャフト21の径方向において、ラジアル滑り軸受23baとフローティングシール26bとに挟まれる領域とも対向している。
【0067】
凹部21ebは、軸方向に沿って、ラジアル滑り軸受23baと径方向に対向する位置からフローティングシール26bの固定側部材26bFと径方向に対向する位置まで延びている。凹部21ebは、軸方向に沿って、スラスト滑り軸受23bbと径方向に対向する位置からフローティングシール26bの固定側部材26bFと径方向に対向する位置まで延びていることが好ましい。
【0068】
凹部21eaは、軸線Cに対して線対称に配置されている。また凹部21ebは、軸線Cに対して線対称に配置されている。また凹部21eaと凹部21ebとは、中鍔21bの軸方向の中心を通る中心線Dに対して線対称に配置されている。
【0069】
流路21cは、シャフト21の軸線に沿って、シャフト本体21a内をたとえば直線状に延びている。流路21cの一端は、中鍔21bよりもシャフト21の一方端側に位置しており、径方向において凹部21eaと対向する領域に位置している。流路21cの他端は、径方向においてシャフト21の他方端部に達している。
【0070】
分岐流路21da、21dbの各々は、流路21cからシャフト21の径方向外側へ向かってたとえば直線状に延びている。分岐流路21daは、流路21cと凹部21eaとを接続している。分岐流路21dbは、流路21cと凹部21ebとを接続している。分岐流路21daは中鍔21bよりもシャフト21の一方端側に配置されている。分岐流路21daは中鍔21bよりもシャフト21の他方端側に配置されている。
【0071】
図5に示されるように、複数の凹部21eaがシャフト本体21aの外周面21aaに配置されている。複数の凹部21eaは、互いに分離されたたとえば2つの凹部21eaである。ただし複数の凹部21eaは、互いに分離された3つ以上の凹部21eaであってもよい。
【0072】
複数の凹部21eaは、軸線Cに直交する断面において軸線Cが通る点に対して点対称に配置されていてもよい。また複数の凹部21eaは、軸線Cを通る直線Eに対して線対称に配置されていてもよい。
【0073】
<下転輪20の組み立て>
次に、本実施の形態における下転輪20の組み立てについて図6を用いて説明する。
【0074】
図6は、図2に示す下転輪の組み立て方法を示す断面図である。図6に示されるように、まずローラ22aの内周面22aaに滑り軸受部材23aが圧入により固定される。これにより滑り軸受部材23aのラジアル滑り軸受23aaがローラ22aの内周面22aaに接する。また滑り軸受部材23aのスラスト滑り軸受23abがローラ22aの端面22abに接する。
【0075】
またローラ22bの内周面22baに滑り軸受部材23bが圧入により固定される。これにより滑り軸受部材23bのラジアル滑り軸受23baがローラ22bの内周面22baに接する。また滑り軸受部材23bのスラスト滑り軸受23bbがローラ22bの端面22bbに接する。
【0076】
この後、シャフト21がローラ22aの内周に挿入され、かつローラ22bの内周に挿入される。具体的にはシャフト21が、滑り軸受部材23aおよび滑り軸受部材23bの各々の内周に挿入される。
【0077】
図3に示されるように、ローラ22aの一方端とローラ22bの一方端とが溶接される。これによりローラ22aとローラ22bとが溶接部22cにより接合される。この状態でシャフト本体21aの外周面21aaとローラ22aの内周面22aaとの間に滑り軸受部材23aのラジアル滑り軸受23aaが位置する。また中鍔21bの端面21baとローラ22aの端面22abとの間に滑り軸受部材23aのスラスト滑り軸受23abが位置する。
【0078】
またシャフト本体21aの外周面21aaとローラ22bの内周面22baとの間に滑り軸受部材23bのラジアル滑り軸受23baが位置する。また中鍔21bの端面21bbとローラ22bの端面22bbとの間に滑り軸受部材23bのスラスト滑り軸受23bbが位置する。
【0079】
図4に示されるように、この状態で凹部21eaは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26aにおける回転側部材26aRと固定側部材26aFとの摺動部とラジアル滑り軸受23aaとの双方に対向している。凹部21eaは、シャフト21の径方向において、スラスト滑り軸受23abと対向している。
【0080】
凹部21ebは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26bにおける回転側部材26bRと固定側部材26bFとの摺動部とラジアル滑り軸受23baとの双方に対向している。凹部21ebは、シャフト21の径方向において、スラスト滑り軸受23bbと対向している。
【0081】
この後、ローラ22aの内周面に、フローティングシール26aの回転側部材26aRが取り付けられる。またローラ22bの内周面に、フローティングシール26bの回転側部材26bRが取り付けられる。
【0082】
この後、フローティングシール26aの固定側部材26aFが取り付けられた支持体27aがシャフト21に固定される。フローティングシール26bの固定側部材26bFが取り付けられた支持体27bがシャフト21に固定される。
【0083】
以上により本実施の形態における下転輪20が組み立てられる。
<作用効果>
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0084】
本実施の形態における下転輪20によれば図4に示されるように、冷却媒体を溜めるための凹部21eaがシャフト21の径方向において、フローティングシール26aにおける回転側部材26aRと固定側部材26aFとの摺動部とラジアル滑り軸受23aaとの双方に対向している。このため凹部21ea内の冷却媒体によりラジアル滑り軸受23aaとフローティングシール26aとの双方を冷却することができる。これにより凹部21eaを設けるという簡単な構造で、冷却性能を向上することができ、発熱を抑制することができる。
【0085】
また冷却媒体を溜めるための凹部21ebがシャフト21の径方向において、フローティングシール26bにおける回転側部材26bRと固定側部材26bFとの摺動部とラジアル滑り軸受23baとの双方に対向している。このため凹部21eb内の冷却媒体によりラジアル滑り軸受23baとフローティングシール26bとの双方を冷却することができる。これにより凹部21ebを設けるという簡単な構造で、冷却性能を向上することができ、発熱を抑制することができる。
【0086】
また本実施の形態における下転輪20によれば図4に示されるように、凹部21eaは、シャフト21の径方向においてスラスト滑り軸受23abと対向している。このため凹部21ea内の冷却媒体によりスラスト滑り軸受23abを冷却することもできる。これにより凹部21eaを設けるという簡単な構造で、冷却性能をさらに向上することができ、発熱をさらに抑制することができる。
【0087】
また本実施の形態における下転輪20によれば図4に示されるように、凹部21ebは、シャフト21の径方向においてスラスト滑り軸受23bbと対向している。このため凹部21eb内の冷却媒体によりスラスト滑り軸受23bbを冷却することもできる。これにより凹部21ebを設けるという簡単な構造で、冷却性能をさらに向上することができ、発熱をさらに抑制することができる。
【0088】
また本実施の形態における下転輪20によれば図4に示されるように、凹部21eaは、シャフト21の軸線Cに対して線対称に配置されている。これによりラジアル滑り軸受23aaおよびフローティングシール26aの各々の周方向に均等に冷却媒体を供給することが容易となる。
【0089】
また凹部21ebは、シャフト21の軸線Cに対して線対称に配置されている。これによりラジアル滑り軸受23baおよびフローティングシール26bの各々の周方向に均等に冷却媒体を供給することが容易となる。
【0090】
(実施の形態2)
<下転輪20の構成>
次に、本開示の実施の形態2における下転輪20の構成について図7および図8を用いて以下に説明する。
【0091】
図7および図8は、本開示の実施の形態2における作業機械に含まれる下転輪の構成を示す第1断面図および第2断面図である。図7に示されるように、本実施の形態における下転輪20は、図2図5に示す実施の形態1における下転輪20の構成と比較して、ブシュ24および固定部材25が追加された点において異なっている。
【0092】
ブシュ24は、円筒部と、鍔部とを有する鍔付き円筒形状を有している。ブシュ24の鍔部はブシュ24の円筒部から径方向外側へ張り出している。ブシュ24は、シャフト21の外周面(シャフト本体21aの外周面21aa)とローラ22aの内周面22aaとの間に配置されている。具体的にはブシュ24の円筒部は、滑り軸受部材23aの外周面とローラ22aの内周面22aaとの間に配置されている。
【0093】
ブシュ24は、ローラ22aの内周面22aaに圧入されている。ブシュ24の円筒部はローラ22aの内周面に接している。ブシュ24の鍔部はローラ22aの端面に接している。ブシュ24は、複数の固定部材25によりローラ22aに固定されている。複数の固定部材25の各々は、たとえばボルトである。ボルト25は、ブシュ24の鍔部を貫通してローラ22aの雌ねじ部にねじ込まれている。これによりブシュ24は、ローラ22aとともに回転するように構成されている。
【0094】
滑り軸受部材23aは、ブシュ24の内周面24aに圧入されている。これにより滑り軸受部材23aは、ローラ22aおよびブシュ24とともに回転するように構成されている。滑り軸受部材23aのラジアル滑り軸受23aaはブシュ24の内周面24aに接している。ラジアル滑り軸受23aaは、シャフト本体21aの外周面21aaとブシュ24の内周面24aとの間に位置している。
【0095】
また滑り軸受部材23aのスラスト滑り軸受23abは、ブシュ24の端面24bに接している。スラスト滑り軸受23abは、ブシュ24の端面24bと中鍔21bの端面21baとの間に位置している。
【0096】
フローティングシール26aの回転側部材26aRは、ブシュ24を介在してローラ22aに支持されている。これにより回転側部材26aRは、ブシュ24およびローラ22aとともに回転する。回転側部材26aRは、固定側部材26aFに対して相対的に回転可能に構成されている。回転側部材26aRのメタルシールリング26abは、弾性リング26aaを介在してブシュ24の内周面24aに支持されている。
【0097】
図8に示されるように、凹部21eaは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26aの回転側部材26aRおよび固定側部材26aFの双方に対向している。また凹部21eaは、シャフト21の径方向において、ラジアル滑り軸受23aaとフローティングシール26aとに挟まれる領域とも対向している。
【0098】
凹部21eaは、軸方向に沿って、スラスト滑り軸受23abと径方向に対向する位置からフローティングシール26aの固定側部材26aFと径方向に対向する位置まで延びている。凹部21eaの軸方向に沿う寸法は、ブシュ24の軸方向に沿う寸法よりも小さくてもよく、また大きくてもよい。
【0099】
なお上記以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0100】
<下転輪20の組み立て>
次に、本実施の形態における下転輪20の組み立てについて図9および図10を用いて説明する。
【0101】
図9および図10は、図7に示す下転輪の組み立て方法を工程順に示す断面図である。図9に示されるように、まずローラ22aの一方端とローラ22bの一方端とが溶接される。これによりローラ22aとローラ22bとが溶接部22cにより接合される。この後、ローラ22bの内周に滑り軸受部材23bが圧入により固定される。この後、シャフト21が、ローラ22a、22bに挿入される。
【0102】
図10に示されるように、ブシュ24の内周面24aに滑り軸受部材23aが圧入される。滑り軸受部材23aを圧入されたブシュ24が、ローラ22aの内周面22aaに圧入される。これによりブシュ24がシャフト21の外周面21aaとローラ22aの内周面22aaとの間に配置される。この後、ブシュ24が、たとえばボルトなどの固定部材25によりローラ22aに固定される。
【0103】
この状態でシャフト本体21aの外周面21aaとローラ22aの内周面22aaとの間に滑り軸受部材23aのラジアル滑り軸受23aaとブシュ24とが位置する。また中鍔21bの端面21baとブシュ24の端面24bとの間に滑り軸受部材23aのスラスト滑り軸受23abが位置する。
【0104】
またシャフト本体21aの外周面21aaとローラ22bの内周面22baとの間に滑り軸受部材23bのラジアル滑り軸受23baが位置する。また中鍔21bの端面21bbとローラ22bの端面22bbとの間に滑り軸受部材23bのスラスト滑り軸受23bbが位置する。
【0105】
図8に示されるように、この状態で凹部21eaは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26aにおける回転側部材26aRと固定側部材26aFとの摺動部とラジアル滑り軸受23aaとの双方に対向している。凹部21eaは、シャフト21の径方向において、スラスト滑り軸受23abと対向している。
【0106】
凹部21ebは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26bにおける回転側部材26bRと固定側部材26bFとの摺動部とラジアル滑り軸受23baとの双方に対向している。凹部21ebは、シャフト21の径方向において、スラスト滑り軸受23bbと対向している。
【0107】
図7に示されるように、ローラ22aの内周面に、フローティングシール26aの回転側部材26aRが取り付けられる。またローラ22bの内周面に、フローティングシール26aの回転側部材26aRが取り付けられる。
【0108】
この後、フローティングシール26aの固定側部材26aFが取り付けられた支持体27aがシャフト21に固定される。フローティングシール26bの固定側部材26bFが取り付けられた支持体27bがシャフト21に固定される。
【0109】
以上により本実施の形態における下転輪20が組み立てられる。
<作用効果>
本実施の形態によれば図8に示されるように、冷却媒体を溜めるための凹部21eaがシャフト21の径方向において、フローティングシール26aにおける回転側部材26aRと固定側部材26aFとの摺動部とラジアル滑り軸受23aaとの双方に対向している。また冷却媒体を溜めるための凹部21ebがシャフト21の径方向において、フローティングシール26bにおける回転側部材26bRと固定側部材26bFとの摺動部とラジアル滑り軸受23baとの双方に対向している。このため実施の形態1と同様、簡単な構造で、冷却性能を向上することができ、発熱を抑制することができる。
【0110】
また本実施の形態によれば、シャフト21の外周面21aaとローラ22aの内周面22aaとの間にブシュ24が配置されている。フローティングシール26aの回転側部材26aRはブシュ24を介在してローラ22aに支持されている。このようにブシュ24が設けられているため、下転輪20の組立が実施の形態1よりも容易となる。そのことを以下に説明する。
【0111】
図6に示すようにブシュが設けられない場合、ローラ22a、22bがシャフト21に外挿された後に、ローラ22a、22b同士の溶接が行なわれる。この場合、溶接時の熱によりローラ22a、22bに熱歪みが生じるおそれがある。熱歪みが生じた場合、ローラ22a、22bがシャフト21に対して相対的に回転できないおそれが生じる。
【0112】
これに対してブシュ24が設けられる場合には、図10に示されるように、ブシュ24がローラ22a内に圧入されることにより、シャフト21がローラ22a、22b内から抜け落ちることが防止される。このため図9および図10に示されるように、ローラ22a、22b同士の溶接後に、ローラ22a、22b内にシャフト21を挿入することができる。よってローラ22a、22b同士を溶接した後であって、ローラ22a、22bをシャフト21へ取り付ける前に、ローラ22a、22bに熱歪みが生じているか否かの検品が可能となる。この検品により、熱歪みの大きいローラ22a、22bを組み立て前に排除することができる。これにより組み立てが容易となり、ローラ22a、22bはシャフト21に対して相対的に回転可能である。
【0113】
(実施の形態3)
<下転輪20の構成>
次に、本開示の実施の形態3における下転輪20の構成について図11および図12を用いて以下に説明する。
【0114】
図11および図12は、本開示の実施の形態3における作業機械に含まれる下転輪の構成を示す第1断面図および第2断面図である。図11に示されるように、本実施の形態における下転輪20は、図7および図8に示す実施の形態2における下転輪20の構成と比較して、固定部材25bとしてスナップリングが用いられている点において異なっている。
【0115】
固定部材25bとしてのスナップリング25bは、実施の形態2の固定部材25に代えて用いられている。このため本実施の形態においては、実施の形態2におけるボルトのような固定部材25は用いられていない。
【0116】
スナップリング25bは、たとえば環状の一部に切欠きを有するばね輪である。スナップリング25bは、ローラ22aの内周面22aaに設けられた環状の溝に嵌め込まれている。スナップリング25bがローラ22aに取り付けられた状態において、スナップリング25bの内径はブシュ24の外径よりも小さい。またスナップリング25bの外径は、ブシュ24の外径よりも大きい。このためスナップリング25bにより、ブシュ24がローラ22aに対して軸方向に抜けることが防止され、ブシュ24がローラ22aに固定されている。
【0117】
図12に示されるように、凹部21eaは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26aの回転側部材26aRおよび固定側部材26aFの双方に対向している。また凹部21eaは、シャフト21の径方向において、ラジアル滑り軸受23aaとフローティングシール26aとに挟まれる領域とも対向している。
【0118】
凹部21eaは、軸方向に沿って、スラスト滑り軸受23abと径方向に対向する位置からフローティングシール26aの固定側部材26aFと径方向に対向する位置まで延びている。凹部21eaの軸方向に沿う寸法は、ブシュ24の軸方向に沿う寸法よりも大きい。
【0119】
なお上記以外の本実施の形態の構成は、実施の形態2の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0120】
本実施の形態における下転輪20の組み立ては、ボルトなどの固定部材に代えて、スナップリング25bによって、ブシュ24がローラ22aに固定される。なお、これ以外の本実施の形態における下転輪20の組み立ては、実施の形態2における組み立てとほぼ同じであるため、その説明を繰り返さない。
【0121】
本実施の形態によれば、実施の形態1および2と同じ効果を得ることができる。
(その他)
本開示の構成は、下転輪20だけでなく、遊動輪42、上転輪20aなどに適用することもできる。以下に、本開示の構成を遊動輪42に適用した場合の構成について図13を用いて説明する。
【0122】
図13は、図1の作業機械100に含まれる遊動輪42の構成を示す部分破断斜視図である。図13に示されるように、本実施の形態における遊動輪42は、シャフト21と、ローラ42aと、滑り軸受部材23a、23bと、ブシュ24と、固定部材25と、フローティングシール26a、26bと、支持体27a、27bとを有している。
【0123】
本実施の形態における遊動輪42は、主にローラ42aの構成において実施の形態2における下転輪20の構成と異なっている。ローラ42aは、シャフト21が挿入される貫通孔を有している。この貫通孔は、大径部と小径部とが軸方向に接続された構成を有している。
【0124】
小径部においては、ローラ42aの内周面とシャフト本体21aの外周面との間に、滑り軸受部材23bのラジアル滑り軸受23baが配置されている。
【0125】
大径部においては、ローラ42aの内周面とシャフト本体21aの外周面との間に、滑り軸受部材23bのラジアル滑り軸受23baとブシュ24とが配置されている。小径部と大径部との段差を構成するローラ42aの端面と中鍔21bの端面との間には、滑り軸受部材23bのスラスト滑り軸受23bbが配置されている。中鍔21bの端面とブシュ24の端面との間には、滑り軸受部材23aのスラスト滑り軸受23abが配置されている。
【0126】
凹部21eaは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26aにおける回転側部材26aRと固定側部材26aFとの摺動部とラジアル滑り軸受23aaとの双方に対向している。凹部21eaは、シャフト21の径方向において、スラスト滑り軸受23abと対向している。
【0127】
凹部21ebは、シャフト21の径方向において、フローティングシール26bにおける回転側部材26bRと固定側部材26bFとの摺動部とラジアル滑り軸受23baとの双方に対向している。凹部21ebは、シャフト21の径方向において、スラスト滑り軸受23bbと対向している。
【0128】
なお上記以外の遊動輪42の構成は、実施の形態2の下転輪20の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0129】
このように本開示の構成を遊動輪42、上転輪20aなどの他の転輪に適用した場合でも、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0130】
上記においては遊動輪42に実施の形態2の構成を適用した場合の構成について説明したが、遊動輪42に実施の形態1または3の構成が適用されてもよい。また上転輪20aに実施の形態1~3のいずれかの構成が適用されてもよい。
【0131】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
1 履帯式走行装置、1A 履帯装置、2 車体、3 作業機、4 キャブ、5 エンジン室、6 ブレード、6a 上端、7 フレーム、8 アングルシリンダ、9 昇降シリンダ、10 履帯、20 下転輪、20a 上転輪、21 シャフト、21a シャフト本体、21aa 外周面、21b 中鍔、21ba,21bb,22ab,22bb,24b 端面、21c 流路21da,21db 分岐流路、21ea,21eb 凹部、22a,22b,42a ローラ、22aa,22ba,24a 内周面、22c 溶接部、23a,23b 滑り軸受部材、23aa,23ba ラジアル滑り軸受、23ab,23bb スラスト滑り軸受、24 ブシュ、25,25b 固定部材、25b スナップリング、26a,26b フローティングシール、26aF,26bF 固定側部材、26aR,26bR 回転側部材、26aa 弾性リング、26ab,26ad メタルシールリング、27a,27b 支持体、41 駆動輪、42 遊動輪、43 トラックフレーム、100 ブルドーザ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13