(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】呈味改善用組成物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20250303BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20250303BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20250303BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20250303BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20250303BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
C11B9/00 B
A23L27/10 C
A23L27/00 Z
A23L27/20 D
A61K8/9789
A61Q13/00 101
(21)【出願番号】P 2020087507
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】萩森 夏芽
(72)【発明者】
【氏名】渡部 真
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】平本 忠浩
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅史
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-253292(JP,A)
【文献】特開2002-143285(JP,A)
【文献】特開2000-169876(JP,A)
【文献】UMEMOTO, K. et al.,セスキテルペンアルコール系ミズハッカ(Mentha aquatica)自殖株の精油成分,Nippon Nogeikagaku Kaishi,(1994), Vol. 68, No. 11,pp. 1567-1570
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A23L27/00-27/60
C11B 9/00- 9/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
Mintel GNPD
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シソ科メンタ属植物由来オイルを減圧蒸留して得られた蒸留残渣を
薄膜蒸留することにより得られる揮発性画分
からなる組成物であって、
該組成物がカリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールを含み、組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上であ
り、前記シソ科メンタ属植物がペパーミント、スペアミント又はハッカである、組成物。
【請求項2】
カリオフィレン-BE:ゲルマクレンD:ピリジフロロールの質量比が、1:1~2.5:1~5である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
メントール含有組成物の呈味改善用の組成物であって、
メントール含有組成物中におけるメントール100質量部に対し、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの総質量が0.01質量部以上含まれるように添加される、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
カルボン含有組成物の呈味改善用の組成物であって、
カルボン含有組成物中におけるカルボン100質量部に対し、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの総質量が0.01質量部以上含まれるように添加される、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物を含む、香料組成物。
【請求項6】
請求項
5に記載の香料組成物を含む、飲食品、医薬品、香粧品又はオーラルケア製品。
【請求項7】
(a)シソ科メンタ属植物由来オイルを減圧蒸留して、シソ科メンタ属植物由来オイル全量の3~25質量%の蒸留残渣を得る工程、及び
(b)前記(a)工程で得られた蒸留残渣を薄膜蒸留し、蒸留残渣全量の5~50質量%の第一の揮発性画分を得る工程を含む、
カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールを含有する第一の揮発性画分を含む組成物の製造方法であって、
さらに、(c)前記(b)工程で得られた第一の揮発性画分を薄膜蒸留し、第一の揮発性画分全量の50~95質量%の第二の揮発性画分を得る工程を含んでもよく、
前記組成物は、組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上である、前記製造方法。
【請求項8】
シソ科メンタ属植物由来オイルを、圧力0.00001~0.05バール、温度40~250℃の条件下で減圧蒸留して、シソ科メンタ属植物由来オイル全量の3~25質量%の蒸留残渣を得て、前記蒸留残渣を薄膜蒸留して得られる、前記蒸留残渣全量の5~50質量%の揮発性画分を含む組成物であって、
該組成物がカリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールを含み、組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上である、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールを含むシソ科メンタ属植物オイル由来の特定の抽出成分を含む組成物、及びその呈味改善剤としての用途、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼感が求められるオーラルケア製品、飲食品、香粧品などの製品において、シソ科メンタ属植物に属するペパーミント、ハッカ及びスペアミントなど由来のミント系精油や、ミント系フレーバーは、好適な香りを与える目的や、嗜好性を高める目的から広く利用されている。しかしながら、オーラルケア製品、飲食品や飲食品中におけるミント系精油やミント系フレーバーの含有量が高くなると、清涼感よりも苦みが強く押し出されたり、ミント系精油が製品に均一に混合されず濁りを与えうる傾向にあるため、ミント系精油の抽出工程を工夫したり、ミント系フレーバーに他の香料成分やアルコールなどを組み合わせて、その清涼感のみを増強させたり、ミント系精油を均一に溶解する技術の開発が進められている。
例えば、特許文献1(米国特許第5298238号明細書)においては、ミント系精油を含むオーラルケア製品の呈味と濁りとを改善する技術が開示されている。引用文献1においては、ミント系精油を製造する際に、減圧蒸留等を行うことによって、モノテルペン及びセスキテルペンのようなテルペンから主に構成されるオイルの「ヘッド」及び「テール」を除去することで、苦味及び濁りが低減された組成物が得られることが記載されている。
また、特許文献2(特開2003-253292号公報)においては、清涼感を増強し、持続性を賦与し、かつミントの風味とマッチするミントフレーバーの持続性賦与剤が開示されており、この持続性賦与剤は、精油を減圧精密蒸留して得られた残渣をアルコール抽出したものであることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第5298238号明細書
【文献】特開2003-253292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミント系精油やフレーバーに、さらに好ましいナチュラルで深みのある清涼感(ナチュラルなミント感)や嗜好性を向上させうる呈味改善剤として、新しい素材が望まれている。したがって、本発明は、シソ科メンタ属植物由来オイル(精油)やミント系フレーバー等のための呈味改善剤として有用な、新規の組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねるなかで、本発明者らは、ペパーミントオイルを蒸留抽出した後の、これまで廃棄され続けてきた残渣に注目した。そして、この残渣について新たな利用法はないか鋭意実験を重ねていると、残渣をさらに蒸留して得られた揮発性画分が特有の組成を有し、かつ、これをペパーミントオイルに添加すると、予想外にもオイル(精油)等の呈味をより深みのある好適な清涼感と爽快感とを付与又は増強する効果に優れることを見出して、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔8〕に関するものである。
〔1〕シソ科メンタ属植物由来組成物であって、組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上である、シソ科メンタ属由来組成物。
〔2〕シソ科メンタ属植物由来オイルを減圧蒸留して得られた蒸留残渣を蒸留することにより得られる揮発性画分である、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールを含む組成物であって、組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上である、組成物。
〔3〕前記シソ科メンタ属植物がペパーミント、スペアミント、ハッカである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕メントール含有組成物の呈味改善用の組成物であって、
メントール含有組成物中におけるメントール100質量部に対し、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの総質量が0.01質量部以上含まれるように添加される、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔5〕カルボン含有組成物の呈味改善用の組成物であって、
カルボン含有組成物中におけるカルボン100質量部に対し、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの総質量が0.01質量部以上含まれるように添加される、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の組成物を含む、香料組成物。
〔7〕前記〔6〕に記載の香料組成物を含む、飲食品、医薬品、香粧品又はオーラルケア製品。
〔8〕(a)シソ科メンタ属植物由来オイルを減圧蒸留して、シソ科メンタ属植物由来オイル全量の3~25質量%の蒸留残渣を得る工程、及び
(b)前記(a)工程で得られた蒸留残渣を薄膜蒸留し、蒸留残渣全量の5~50質量%の第一の揮発性画分を得る工程を含む、
カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールを含有する第一の揮発性画分を含む組成物の製造方法であって、
さらに、(c)前記(b)工程で得られた第一の揮発性画分を薄膜蒸留し、第一の揮発性画分全量の50~95質量%の第二の揮発性画分を得る工程を含んでもよく、
前記組成物は、組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上である、前記製造方法。
〔9〕シソ科メンタ属植物由来オイルを、圧力0.00001~0.05バール、温度40~250℃の条件下で減圧蒸留して、シソ科メンタ属植物由来オイル全量の3~25質量%の蒸留残渣を得て、前記蒸留残渣を薄膜蒸留して得られる、前記蒸留残渣全量の5~50質量%の揮発性画分を含む組成物であって、
組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上である、前記組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の新規の組成物を、シソ科メンタ属植物由来オイル(精油)やミント系フレーバー等、及びこれを含む香料組成物、各種飲食品、医薬品、香粧品又はオーラルケア製品等に添加すると、ナチュラルなミント感を付与又は増強することができ、同時に嗜好性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の組成物の製造方法の一態様(実施例1及び2)を示すフロー図である。
【
図2】シソ科メンタ属植物由来オイル(精油)中における、本発明の組成物の揮発性画分を概念的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<組成物>
本発明は、シソ科メンタ属植物由来組成物であって、組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上である組成物に関する。ここで、本発明における「シソ科メンタ属植物由来組成物」とは、シソ科メンタ属植物由来成分を95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは100%含む組成物を意味する。
本発明の一態様は、シソ科メンタ属植物由来オイルを減圧蒸留、例えば減圧精密蒸留して得られた蒸留残渣を蒸留、特に薄膜蒸留することにより得られる揮発性画分を含む組成物である。組成物全量に対する、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量は、15質量%~50質量%であり、好ましくは当該総質量が15質量%~40質量%であり、より好ましくは20質量%~40質量%である。本発明における「蒸留残渣」とは、当該組成物を得るための実質的な原料ともいえるものであり、シソ科メンタ属植物由来オイルを蒸留して、揮発性成分としてシソ科メンタ属植物由来オイルの75質量%以上、例えば90質量%以上を回収した後に残る、高沸点成分を有する残留物を言う。ここで、本発明の組成物は、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロール以外にも、分析しえない多様な香気成分を含むものであるが、全てを特定することは困難であるため、製造手法によって特定される。
【0010】
図1及び
図2に基づいて具体的に本発明に係る組成物の一態様を説明すると、本発明の組成物は、シソ科メンタ属植物由来オイル(精油)を圧力0.00001~0.05バール、好ましくは0.002~0.04バールで、より好ましくは0.004~0.03バールで、40~250℃、好ましくは60~180℃、より好ましくは80~140℃の条件で精密蒸留して、シソ科メンタ属植物由来オイル全量の75~97質量%、好ましくは92~96質量%を揮発部Aとして回収して、シソ科メンタ属植物由来オイル全量の3~25質量%、好ましくは4~8質量%を不揮発部Aからなる蒸留残渣を得て、この蒸留残渣を薄膜蒸留して得られる、蒸留残渣全量の5~50質量%、好ましくは10~30質量%の揮発部Bからなる揮発性画分(第一の揮発性画分)を含むものであるか、又は当該揮発性画分からなるものである。揮発部Aを得る際の精密蒸留の条件は、圧力0.002~0.04バール、60~180℃で行われることが好ましく、圧力0.004~0.03バール、80~140℃で行われることがより好ましく、このような条件による精密蒸留によって、本発明の組成物における上記3成分(カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロール)を、蒸留残渣中に濃縮させることができる。また、揮発性画分(第一の揮発性画分)を得る際の蒸留の条件は、90~180℃で圧力0.00001~0.01バールで行われることが好ましく、140~160℃で圧力0.002~0.008バールで行われることがより好ましい。
さらに、本発明に係る組成物は、揮発部Bを薄膜蒸留して得られる、揮発部B全量の50~95質量%、好ましくは60~95質量%、より好ましくは60~90質量%の揮発部Cからなる第二の揮発性画分からなるものであることがより好ましい。第二の揮発性画分を得る際の蒸留の条件は、90~180℃で圧力0.00001~0.01バールで行われることが好ましく、140~160℃で圧力0.002~0.008バールで行われることがより好ましい。第二の揮発性画分は、第一の揮発性画分と比較して、より雑味に寄与するヤニ等の成分が除かれる。
【0011】
本発明に係るカリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量は、一般的な香気成分分析で測定することができ、例えばGC-MS分析やGC-FID分析を組み合わせて、本実施例に記載される方法で測定された値とすることができる。
シソ科メンタ属植物由来オイル(すなわち精油)や当該シソ科メンタ属植物由来オイル精油を減圧蒸留して得られる揮発部Aの方においては、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの総質量は、揮発部A全量の15質量%未満であり、本発明の組成物とは構成する成分の組成が異なる。また、本発明の組成物に含まれる、蒸留残渣を蒸留することで得られる揮発性画分(揮発部B)は、蒸留過程において同時に得られる不揮発部Bや不揮発部Cとも全く組成が異なるものであり、特に、ヤニなどの雑味成分をほとんど含まない。なお、本発明の組成物は、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロール以外にも、分析しえない多様な香気成分を含むものであるが、全てを特定することは困難であるため、製造手法によって特定される。
【0012】
本発明の組成物には、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールが含まれていれば、その組成比は特に制限はないが、本発明の組成物において、カリオフィレン-BE:ゲルマクレンD:ピリジフロロールの質量比が、1:1~2.5:1~5であることが好ましい。
本発明における「シソ科メンタ属植物」の種は、特に限定されないが、好ましくは、ペパーミント(Mentha x piperita)、ハッカ(Mentha arvensis)、スペアミントのネイティブ種(Mentha spicata)、スペアミントのスコッチ種(Mentha gracilis)が挙げられる。
【0013】
ここで、本発明における「シソ科メンタ属植物由来オイル」とは、シソ科メンタ属植物(葉、茎、花、根等植物体のいずれの部位であってもよい)を蒸留などの公知の方法で抽出して得られる精油であって、主要香気成分としてl-メントール又はl-カルボンを含有するものを意味する。具体的には例えば、ペパーミントオイル、ハッカオイル及びスペアミントオイルなどが挙げられる。ここで、本明細書において「主要香気成分」とは、シソ科メンタ属植物が含有する揮発性成分の内、香気を有するものの中で、通常含有量が最も多い成分であり、各シソ科メンタ属植物の香気の特徴を端的に表すとともに、香気の強度に影響が大きい成分である。例を挙げれば、ペパーミント、ハッカの主要香気成分はl-メントール、スペアミントの主要香気成分はl-カルボンである。シソ科メンタ属植物由来オイルは、市販の精油を利用してもよいし、例えばシソ科メンタ属植物を超臨界二酸化炭素抽出、蒸留、水蒸気蒸留、溶媒抽出など、公知の方法のいずれか1つ以上で処理することで得たものであってもよい。シソ科メンタ属植物由来オイルは、その抽出工程において、低温、例えば温度70℃以下で、かつ、好ましくはpH6~9、より好ましくはpH6~8の条件下で得られるものであることが好ましい。また、抽出工程においては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、食用油脂、MCTなどの溶媒を使用しうる。好ましい溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、食用油脂、MCTである。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の組成物は、メントール含有組成物(後述する香料組成物や、飲食品、医薬品、香粧品及びオーラルケア製品などを含む)中に含まれるメントール100質量部に対し、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの総質量が0.01質量部~50質量部、より好ましくは0.05質量部~10質量部、さらに好ましくは0.1質量部~1質量部含まれるような量で、メントール含有組成物に添加されることが好ましい。メントール含有組成物において、上記含有量にて本発明の組成物が含まれることで、メントール含有組成物によりナチュラルで深みのある清涼感を提供し、かつメントール含有組成物の嗜好性を高めることができる。
また、本発明の組成物は、カルボン含有組成物(後述する香料組成物や、飲食品、医薬品、香粧品及びオーラルケア製品などを含む)中に含まれるカルボン100質量部に対し、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの総質量が0.01質量部~50質量部、より好ましくは0.05質量部~10質量部、さらに好ましくは0.1質量部~1質量部含まれるような量で、カルボン含有組成物に添加されることが好ましい。カルボン含有組成物において、上記含有量にて本発明の組成物が含まれることで、カルボン含有組成物によりナチュラルで深みのある清涼感を提供し、かつカルボン含有組成物の嗜好性を高めることができる。
【0015】
本発明における「メントール含有組成物」とは、ミントフレーバーの主成分として知られるl-メントールを含む組成物であれば特に限定されず、例えばペパーミント精油及びハッカ精油でありうる。また、「メントール含有組成物」は、メントール以外に任意の香料成分や精油等の成分を含むものであってもよく、後述する香料組成物や製品を包括する概念である。
本発明における「カルボン含有組成物」とは、ミントフレーバーの主成分として知られるl-カルボンを含む組成物であれば特に限定されず、例えばスペアミント精油でありうる。また、「カルボン含有組成物」は、カルボン以外に任意の香料成分や精油等の成分を含むものであってもよく、後述する香料組成物や製品を包括する概念である。
【0016】
また、本発明の組成物は、液状態様であっても、粉末状(固形状態様)であってもよく、その形態は特に限定されない。例えば、前記組成物は、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロール等を溶解するのに適当な溶剤、例えば、水、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、中鎖脂肪酸グリセリンエステル、又は食用植物油(例えば米サラダ油)などの食用油脂に溶解させた液状態様であってもよい。
【0017】
<組成物の製造方法>
本発明に係る一態様の組成物の製造方法を、
図1を参照しながら説明する。
まず、工程(a)として、シソ科メンタ属植物由来オイル、例えばペパーミントオイル、ハッカオイル及びスペアミントオイルなどの精油を準備し、例えば、40~250℃、好ましくは60~180℃で、より好ましくは80~140℃で、圧力0.00001~0.05バール、好ましくは0.002~0.04バール、より好ましくは0.004~0.03バールの条件で、蒸留、好ましくは精密蒸留して、蒸留残渣を得る。この時、シソ科メンタ属植物由来オイルの75~97質量%、好ましくは92~96質量%を揮発性画分(揮発部A)として回収することが望ましい。同時に得られた不揮発部Aからなる蒸留残渣の方を本発明の組成物の実質的な原料とする。
【0018】
次に、工程(b)として、得られた蒸留残渣(不揮発部A)を薄膜蒸留し、第一の揮発性画分(揮発部B)を得る。本工程においては、例えば熱媒温度90~180℃、圧力0.00001~0.01バール、好ましくは140~160℃で圧力0.002~0.008バールの条件で、薄膜蒸留をすることで第一の揮発性画分(揮発部B)を得ることが好ましい。この時、不揮発部Aの5~50質量%、好ましくは10~30質量%を第一の揮発性画分(揮発部B)として回収し、50~95質量%、好ましくは70~90質量%を不揮発部Bとすることが好ましい。第一の揮発性画分(揮発部B)は、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの含有量の総質量が15質量%以上である、本発明に係る組成物となりうる。
【0019】
次に、任意の工程(c)として、得られた第一の揮発性画分(揮発部B)をさらに薄膜蒸留し、第二の揮発性画分(揮発部C)を得る。本工程においては、例えば、熱媒温度90~180℃、圧力0.00001~0.01バール、好ましくは140~160℃で圧力0.002~0.008バールの条件で薄膜蒸留をすることが好ましい。この時、第一の揮発性画分Bの50~95質量%、好ましくは60~95質量%、より好ましくは60~90質量%を第二の揮発性画分(揮発部C)として回収し、5~50質量%、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~40質量%を不揮発部Cとすることが好ましい。第二の揮発性画分(揮発部C)は、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールの総質量が15質量%以上である、本発明に係る組成物となりうる。ここで、工程(c)で得られた第二の揮発性画分は、第一の揮発性画分に比べて、メントール含有組成物やカルボン含有組成物の呈味改善剤として、更なるボリューム感や味の広がりをもたらし、かつ、リッチで明るいすっきりとしたミント感を与えることができる。
ここで、本発明の製造方法において、段階を追って蒸留を繰り返すことで、精油においてこれまで不要とされてきた、いわゆるボトム部に残されていた揮発性画分を丁寧に抽出することができ、得られた第一の揮発性画分及び/又は第二の揮発性画分を、例えば揮発部Aを得るために使用した精油に適量加えることによって、従来には存在しなかった絶妙なミント感をもたらす組成を構築することができる。
また、本発明の製造方法において、工程(a)においては、精密蒸留法で蒸留し、工程(b)及び(c)においては、薄膜蒸留法で蒸留することが好ましい。
また、第一の揮発性画分及び/又は第二の揮発性画分に、カリオフィレン-BE、ゲルマクレンD、及びビリジフロロールを増強して本発明の組成物としてもよい。
また、第一の揮発性画分及び/又は第二の揮発性画分をさらに、樹脂処理、膜処理等の公知の手法で濃縮してもよいし、又はクロロフィル等の不揮発性成分をさらに除去してもよいし、抽出物又はこの濃縮物をフリーズドライ等の方法で乾燥させて粉末化してもよい。
本発明における上記工程(a)のように、ミントオイル等のシソ科メンタ属植物由来オイルをさらに蒸留する工程自体が、従来当業者の間では行われないものである。まして、それにより得られる蒸留残差に着目し、本発明を完成すること自体が、当業者にとっては想到困難なものである。そして、本発明によると、従来廃棄されてきた蒸留残渣を有用に活用することができる。
【0020】
また、本発明に係る組成物は、例えば、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、食用油脂、MCT等の溶剤を含んでいてもよい。
【0021】
このようにして得られた本発明の組成物は、後述するように、適宜、液状の香料組成物、固形の香料組成物等に含有させて、その使用目的により任意の剤形にて飲食品、香粧品又はオーラルケア製品に添加することが可能である。なお、添加する食品等を含む組成物がどのような態様(例えば液状、又は固形)であっても、本発明においては、質量%又は質量部で量が規定される。
【0022】
<香料組成物>
本発明はまた、上記本発明に係るシソ科メンタ属植物由来オイルの蒸留残渣から得られる揮発性画分を含む組成物や、当該揮発性画分を含む組成物及びメントールを含む組成物、並びに、当該揮発性画分を含む組成物及びカルボンを含む組成物を含む香料組成物を提供する。香料組成物中のシソ科メンタ属植物由来オイルから得られる揮発性画分の濃度は、対象とする香料組成物の性質や必要とされる効果に応じて適宜決定することができる。また、本発明に係る組成物に、l-メントール及び/又はl-カルボンを添加し、香気を強化してもよい。
【0023】
本発明の香料組成物は、各種配合剤及び/又は添加剤を含んでもよい。混合できる配合剤及び添加剤としては、特に限定されないが、例えば、抗酸化剤、公知の防腐剤や抗菌剤、pH調整剤などが挙げられる。前述の配合剤及び添加剤は、いずれの組み合わせで2種以上併用してもよい。
【0024】
より具体的には、抗酸化剤としては、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸、グルタチオン、セレン、リコペン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC等の他、ピロロピロール誘導体や各種植物からの抽出物から得られるフリーラジカル消去剤(free radical scavengers)、スーパーオキサイドディスミューテース(superoxide dismutase)やグルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化特性を有する酵素等が挙げられる。
【0025】
また、防腐剤や抗菌剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ツヤプリシン、ウド抽出物、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ウーロン茶抽出物、シラコタンパク抽出物、酵素分解ハトムギ抽出物、茶カテキン類、リンゴポリフェノール、ペクチン分解物、キトサン、リゾチーム、ε-ポリリジン等が挙げられる。
【0026】
また、pH調整剤としては、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、ピロリン酸二水素二ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
<製品>
本発明はまた、前述の香料組成物を含む飲食品、医薬品、香粧品、オーラルケア製品を提供する。飲食品、医薬品、香粧品、オーラルケア製品中の香料組成物の濃度は、対象とする製品の性質や必要とされる効果に応じて当業者が適宜決定することができる。
【0028】
本発明が対象とする飲食品、医薬品、香粧品、オーラルケア製品は特に限定されず、本発明が対象とするシソ科メンタ属植物由来の瑞々しく、フレッシュで、清涼感に富む香気の付与による利益を得られるものであれば、液体、固体、半固体及び流動性のものを含む幅広いもの対象とすることができる。
限定を意図するものではないが、飲食品としては、果物ジュース、果汁飲料、無果汁飲料、野菜系飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク、コーヒー飲料、お茶、紅茶、ウーロン茶、ミネラル飲料、ヨーグルト類飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、栄養ドリンク、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スープ、麺つゆ等の液体製品、キャンディ、チューイングガム、タブレット、グミ、ゼリー、チョコレート、クッキー・ケーキ等の焼き菓子、綿菓子、パン、アイスクリーム、氷菓、ハム、ソーセージ、スナック、粉末ソース等のシーズニング、バター・マーガリン等の油脂類、可食シート食品等の固体製品、カレー、シチュー、ハヤシライス、ソース、タレ、ドレッシング、生クリーム、クリーム、ジャム、流動食等の半固体・流動性製品が挙げられる。医薬品、香粧品としては、香料組成物と併用されるものであれば特に限定されない。また、オーラルケア製品としては、歯磨き粉、練歯磨き、液体歯磨き、洗口液、マウススプレー等が挙げられる。
【0029】
本発明が対象とする飲食品、医薬品、香粧品、オーラルケア製品は、飲食品、医薬品、香粧品、オーラルケア製品に常用される各種配合剤・添加剤を含んでもよい。例えば、上述の抗酸化剤、公知の防腐剤や抗菌剤、pH調整剤以外に、甘味料、酸味料、増量剤、色素、乳化剤、機能性物質、既存の風味改善剤、乳成分、アミノ酸やペプチドなどの含窒素化合物、各種フレーバー素材、界面活性剤、研磨剤、粘結剤、湿潤剤、その他溶剤等が挙げられる。これらの配合剤・添加剤は、いずれの組み合わせで2種以上併用してもよい。
【0030】
より具体的には、甘味料としては、例えば、砂糖、果糖、乳糖、ブドウ糖、パラチノース、麦芽糖、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元パラチノース、キシリトール、ラクチトール水飴、オリゴ糖、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、ステビアエキス、ステビオサイド、ネオテーム、アリテーム、ソーマチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ペリラルチン、甘草等が挙げられる。
酸味料としては、酢酸、乳酸、クエン酸等が挙げられる。
増量剤としては、糖類、多糖類、加工澱粉、カゼイン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、レシチン等が挙げられる。
色素としては、天然色素、有機合成色素などが挙げられ、具体的には、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、プラム色素、ノリ色素、デュベリー色素、ブドウ果汁色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、マルベリー色素、モレロチェリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素、パプリカ粉末、麦芽エキス、ルチン、フラボノイド、アカキャベツ色素、アカダイコン色素、アズキ色素、ウコン色素、オリーブ茶、カウベリー色素、クロレラ末、サフラン色素、シソ色素、ストロベリー色素、チコリ色素、ペカンナッツ色素、ベニコウジ色素、ベニバナ色素、ムラサキイモ色素、ラック色素、スピルリナ色素、タマネギ色素、タマリンド色素、トウガラシ色素、クチナシ色素、カラメル色素、シコン色素、シタン色素、オキアミ色素、オレンジ色素、ニンジンカロテン、青色1号、黄色4号、緑色3号等が挙げられる。
【0031】
乳化剤としては、例えば、脂肪酸モノグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸トリグリセライド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、澱粉、加工澱粉、デキストリン、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
【0032】
機能性物質とは栄養機能や生体調節機能を有する物質を意味し、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、DHA及び/又はEPA含有魚油、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、レシチン、ジアシルグリセロールなどの動植物油脂類やその誘導体、ローズマリー、セージ、シソ油、キチン、キトサン、ローヤルゼリー、プロポリスなどの動植物抽出物、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、コエンザイムQ10、αリポ酸などのビタミン類、補酵素及びその誘導体、γ-オリザノール、カテキン、アントシアニン、イソフラボン、ルチン、クロロゲン酸、テアフラビンなどのポリフェノール類、難消化デキストリンなどの食物繊維類、パラチノース、キシリトール、オリゴ糖などの糖質、クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)などの塩類、カゼインホスホペプチド、ラクトフェリン、乳性ペプチドなどの乳タンパク由来物質、乳酸菌類、ヘム鉄、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl-トコフェノール、α-ビサボロール、ジヒドロコレステロール、クロロヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びその塩類、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェート等のキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、メトキシエチレン、エピジヒドロコレステリン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、オウバクエキス等が挙げられる。
【0033】
乳成分としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリームの他、カゼインやホエイなどの乳タンパク、さらにヤギやヒツジなどの乳に由来するもの、あるいはそれらの分解物などが挙げられる。
【0034】
公知の風味改善素材としては、例えば、スクラロース、サイクロデキストリン、テアニン、ヘスペリジン配糖体、サトウキビ抽出物等が挙げられる。
【0035】
各種フレーバー素材としては、例えば、天然香料、天然精油等や各種合成香料を用いることができる。これらの香料は、飲食品、医薬品、香粧品、オーラルケア製品に使用できるものであれば特に限定されないが、例えば、エステル類、アルデヒド類、(チオ)エーテル類、アルコール類、ケトン類、ラクトン類、カルボン酸、脂肪族炭化水素、含窒素複素環化合物、含硫黄複素環化合物、アミン類、チオール類、フェノール類、精油などが挙げられる。
具体的な化合物としては、アセトアルデヒド、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アネトール、アニスアルデヒド、アミルアルコール、α-アミルシンナムアルデヒド、アリルシクロヘキサンプロピオネート、アントラニル酸メチル、アンブレットリド、イオノン、イソアミルアルコール、イソオイゲノール、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、イソチオシアネート類、イソチオシアン酸アリル、イソバレルアルデヒド、イソブタノール、イソブチルアルデヒド、イソプロパノール、イソペンチルアミン、インドール及びその誘導体、γ-ウンデカラクトン、エチルアセテート、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン及び2-エチル-3,6-ジメチルピラジンの混合物、エチルチオアセテート、エチルバニリン、2-エチルピラジン、エチルブチレート、2-エチル-3-メチルピラジン、2-エチル-5-メチルピラジン、5-エチル-2-メチルピラジン、エチルメチルフェニルグリシデート、エチルラクテート、オイゲノール、オクタナール、オクタン酸エチル、カプサイシン、カルビールアセテート、カルボン、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ケイ皮酸、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、ケトン類、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェネチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸l-メンチル、酢酸リナリル、サリチル酸エチル、サリチル酸メチル、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8-シネオール、ジメチルサルファイド、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピリジン、ジンゲロール、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、スピラントール、チモール、デカナール、デカノール、デカン酸エチル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、テルピネオール、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ノナラクトン、バニリルブチルエーテル、バニリン、パラメチルアセトフェノン、バレルアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、ピネン、ピペリジン、ピペリン、ピペロナールピラジン、ピロリジン、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、2-(3-フェニルプロピル)ピリジン、フェネチルアミン、フェノキシエチルイソブチレート、フェンコン、ブタノール、ブチルアミン、ブチルアルデヒド、フルフラール及びその誘導体、プレゴン、プロパノール、プロピオンアルデヒド、プロピオン酸、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸、ヘキサン酸アリル、ヘキサン酸エチル、ヘキサナール、ヘキセノール、ヘプタン酸エチル、ペリルアルデヒド、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、2-ペンタノール、1-ペンテン-3-オール、d-ボルネオール、マルトール、メチルアンスラニレート、N-メチルアントラニル酸メチル、メチルエピジャスモネート、5-メチルキノキサリン、6-メチルキノリン、5-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタピラジン、メチル β-ナフチルケトン、2-メチルピラジン、2-メチルブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチルブチルアルデヒド、3-メチル-2-ブテナール、3-メチル-2-ブテノール、メンチルアセテート、l-メントール等のメントール各異性体、メントン、酪酸、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル、炭素数4~12のガンマ及びデルタラクトン、リナリルアセテート、リナロール、リモネンなどが挙げられる。
具体的な精油としては、アニス油、アニススター油、ベルガモット油、メボウキ油、月桂樹葉ウエストインデアン油、ガルバナム油、リンゴ油、アプリコット油、カッシア油、クスノキ剤油、ブチュ葉油、カルダモン種子油、カッシア樹皮油、クモミル花ローマン油、シナモン樹皮油、肉桂葉油、チョウジ蕾み油、コニャックグリーン油、コエンドロ油、クベバ油、ヒメウイキョウ油、ウイキョウ甘油、ニンニク油、ショウガ油、ペチグレイン油、レモン油、ライムオイル、オレンジ油、柑橘油、杉剤油、シトロネラ油、パッチュリ油、ユーカリ油、ベイ油、グレープフルーツ油、マンダリン油、白檀油、杜松実油、ローズ油、イラン油、タンジェリン油、ゼラニウム油、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、コリアンダー油、ライム油、柚子油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、シソ油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、セロリ油、ベイ油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ジャスミン油、パチュリ油、パラクレス油、オリスコンクリート、ローズアブソリュート、オレンジフラワーアブソリュート、バニラアブソリュート、パチュリアブソリュート、あるいは、これらの加工処理物(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)などが挙げられる。
【0036】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
1.香気成分分析
主要ピークの帰属をGC-MS分析で実施し、各フラクションをGC-FID分析に供し、各香気成分の濃度を算出した。
2.官能評価
10名の専門パネラーにより、評価用サンプルの期待する効果(ボリューム感、甘み、ナチュラル感)、排除したい効果(ヤニ臭)について官能評価した。パネラーは、評価用サンプルを口に含む形式で実施し、期待する効果については表1に示した評価基準に従い、コントロールのスコアを5点に調整した。また、排除したい効果については表2に示した評価基準に従い、コントロールのスコアを1点に調整した。評価用サンプルをボリューム感、甘み、ナチュラル感の3項目については1~9点で、ヤニ臭については1~5点で評価し、平均値の小数第1位を四捨五入し、平均値±標準偏差で評価点を表記した。標準偏差は小数第2位を四捨五入した。
【0038】
【0039】
【0040】
[実施例1と比較例1~3]
ペパーミントオイル(ADM社製)500kgを温度80~140℃、圧力0.01~0.02バールの条件で減圧精密蒸留に供して、揮発部Aと、28.9kgの不揮発部Aを得た。
不揮発部Aを薄膜蒸留に供して、揮発部Bと、23.1kgの不揮発部Bを得た。薄膜蒸留条件は、熱媒温度150℃、圧力0.0040バールであった。
揮発部Bの画分を実施例1-1の組成物とし、揮発部A、不揮発部A及び不揮発部Bをそれぞれ、比較例1、2及び3の組成物とした。別ロットのペパーミントオイルから、同手法により、揮発部Bを作製し、実施例1-2、実施例1-3とした(3回同じ手法で別々に実施した)。
【0041】
[実施例2]
上記で得られた揮発部Bをさらに薄膜蒸留に供して、4.6kgの揮発部Cを得た。薄膜蒸留条件は、熱媒温度150℃、圧力0.0040バールであった。
揮発部Cを実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3の組成物とした(3回同じ手法で別々に実施した)。
実施例1-1~1-3、実施例2-1~2-3及び比較例1、2に含まれるカリオフィレン-BE(Cと表記)、ゲルマクレンD(Gと表記)、及びビリジフロロール(Vと表記)の総質量(C+G+V)、及びC、G、Vの各含有量について、質量%を表3に示す。
【0042】
【0043】
(試験例1) 官能評価 ペパーミントオイルをベースとした香料を賦香した歯磨き粉
メントール含量が42質量%であるペパーミントオイル(ADM社製)20質量%と、MCT(日清オイリオ社製)80質量%とからなるコントロール組成物を準備した。このコントロール組成物99.9質量%に対して、各実施例及び各比較例の組成物を、それぞれ0.1質量%加えた香料サンプルを作製した。そして、歯磨き基剤(組成:表4)に対して、香料サンプル10gを添加することで、1質量%の濃度の香料サンプルを含むよう調整してなる評価サンプルで官能評価を行なった。表5に評価結果を示す。
【0044】
【0045】
【0046】
(試験例2) 官能評価 l-メントールをベースとした香料を賦香した歯磨き粉
l-メントール(高砂香料工業社製)20質量%と、MCT(日清オイリオ社製)80質量%とからなるコントロール組成物を準備した。このコントロール組成物99.9質量%に対して、実施例2-1の組成物0.1質量%を加えた香料サンプルを作製した。そして、歯磨き基剤(組成:表4)に対して、香料サンプルを10g添加することで、1質量%の濃度の香料サンプルを含むように調整してなる評価サンプルで官能評価を行なった。表6に評価結果を示す。
【0047】
【0048】
(試験例3) 官能評価 l-カルボンをベースとした香料を賦香した歯磨き粉
l-カルボン(WANXIANG INTERNATIONAL FLAVORS & FRAGRANCES社製)20質量%と、MCT(日清オイリオ社製)80質量%とからなるコントロール組成物を準備した。このコントロール組成物99.9質量%に対して、実施例2-1の組成物0.1質量%を加えた香料サンプルを作製した。そして、歯磨き基剤(組成:表4)に対して、香料サンプルを10g添加することで、1質量%の濃度の香料サンプルを含むように調整してなる評価サンプルで官能評価を行なった。表7に評価結果を示す。
【0049】