(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20250303BHJP
C08G 63/695 20060101ALI20250303BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20250303BHJP
C08G 18/46 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/087
C08G63/695
C08G18/66 014
C08G18/46
(21)【出願番号】P 2020200388
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆穂
(72)【発明者】
【氏名】北村 伸
(72)【発明者】
【氏名】菅原 庸好
(72)【発明者】
【氏名】大山 一成
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠
(72)【発明者】
【氏名】中島 良
(72)【発明者】
【氏名】佐野 仁思
(72)【発明者】
【氏名】村田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】石上 恒
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-242448(JP,A)
【文献】特開2020-086033(JP,A)
【文献】特開平08-087127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
C08G 63/695
C08G 18/66
C08G 18/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記結着樹脂が、変性ポリエステルを含有し、
前記変性ポリエステルは、
(i)ウレタン結合及び/又はウレア結合を有し、
(ii)下記式(1)で表される構造を有
し、
前記式(1)中のポリエステル部位が、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との縮重合体であり、
前記変性ポリエステル中の、下記式(2)で表される構造の含有量が、0.5質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とするトナー。
【化1】
(式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、
Aは、ポリエステル部位を表し、
Bは、ポリエステル部位、または、
-R
1
OH、-R
1
COOH、
【化2】
および-R
1NH
2からなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R
1は、単結合または炭素数1以上4以下のアルキレン基を表し、
平均繰り返し数nは10以上80以下である。)
【化3】
(式(2)中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、nは、シロキサンユニットの繰り返し数の平均値であり、10以上80以下である。)
【請求項2】
前記結着樹脂が、前記変性ポリエステルを50.0質量%以上含有する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記Rが、いずれもメチル基である、請求項1
または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記変性ポリエステル中の、前記式(2)で表される構造の含有量が、2.0質量%以上4.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記式(1)中のポリエステル部位が、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、テレフタル酸及び無水トリメリット酸の縮重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンター等の画像形成装置の発達に伴い、従来以上の高速化、高画質化、高信頼性に対応できるトナーが求められている。更に、トナーが使用される環境は多様化しており、様々な環境下で使用された場合でも、安定した画像を提供できるトナーが求められている。そのため、トナーには、幅広い定着領域を有することに加えて、様々な環境下で使用された場合であっても、長期に渡って高い帯電維持性を有することが求められている。
これらの要求に対して、ポリエステル樹脂をウレタン変性した樹脂を用いたトナーが提案されている(特許文献1)。このような構成を取ることで、ウレタン結合の高い分子間凝集エネルギー由来の耐久性と、ポリエステル由来の幅広い定着領域を有するトナーが得られる。
また、小粒径化が容易であり、均一性が高い球形を呈しており、さらに低温定着性に優れるポリエステル樹脂を用いてトナーを造粒するのが容易である溶解懸濁法が提案されている。
この溶解懸濁法でさらなる低温定着性を目指した場合、コア・シェル構造を有したトナー粒子において、コア部に低分子量ポリエステル樹脂を用い、その周りをウレア結合によって伸長したポリエステル樹脂で覆う構成が提案されている(特許文献2)。このような構成を取ることで、コア部に低温定着に有利な低分子量ポリエステルを用いてもトナーの耐久性を維持出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-296832号公報
【文献】特開2012-063607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、前述のように、トナーが使用される環境は多様化しており、この多様化する環境に対する適応性について着目すると、環境因子の中で電子写真技術への影響が大きいものとして湿度が挙げられる。湿度はトナーの帯電量及び帯電量分布に影響を与えることで現像工程での品質に大きく影響を与える。
特許文献1および2のトナーは、ウレタン結合やウレア結合を有するポリエステル樹脂を用いていることで、幅広い定着領域や長期に渡って良好な耐久性を有する。一方、ウレタン結合部やウレア結合部は湿度の影響を受けやすく、帯電性が低下する。その結果、高温高湿環境下で長期に渡って使用された場合においては、現像性が悪化し、画質濃度が低下する場合があった。
以上のように、幅広い定着領域を有することに加えて、様々な環境下で使用された場合であっても、長期に渡って高い帯電維持性を有するトナーを得ることは技術的課題が多く、改良の余地を有する。
本発明は、上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、高温高湿環境下で使用された場合であっても、長期に渡って幅広い定着領域と高い帯電維持性を有するトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、本発明の構成を用いることにより、高温高湿環境下で使用された場合であっても、長期に渡って幅広い定着領域と高い帯電維持性を有するトナーを提供することが可能となった。本発明は以下のとおりである。
本発明のトナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
前記結着樹脂が、変性ポリエステルを含有し、
前記変性ポリエステルは、
(i)ウレタン結合及び/又はウレア結合を有し、
(ii)下記式(1)で表される構造を有し、
前記式(1)中のポリエステル部位が、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との縮重合体であり、
前記変性ポリエステル中の、後述の式(2)で表される構造の含有量が、0.5質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とするトナーである。
【0006】
【化1】
(式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、
Aは、ポリエステル部位を表し、
Bは、ポリエステル部位、または、-R
1OH、-R
1COOH、
【0007】
【化2】
、および-R
1NH
2からなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R
1は、単結合または炭素数1以上4以下のアルキレン基を表し、
平均繰り返し数nは10以上80以下である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明により、高温高湿環境下で使用された場合であっても、長期に渡って幅広い定着領域と高い帯電維持性を有するトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、数値範囲を示す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0010】
本発明者らは、高温高湿環境下において、長期に渡る幅広い定着領域と帯電維持性の更なる向上を目的として、鋭意検討をした結果、ウレタン結合及び/又はウレア結合を有し、下記式(1)で表される構造を有する変性ポリエステルを含有するトナー粒子を有するトナー用いることで、従来にない優れた定着領域と高い帯電維持性を有するトナーが得られることを見出した。
【0011】
【化3】
(式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、
Aは、ポリエステル部位を表し、
Bは、ポリエステル部位、または、-R
1OH、-R
1COOH、
【0012】
【化4】
、および-R
1NH
2からなる群から選択されるいずれかの官能基を表し、R
1は、単結合または炭素数1以上4以下のアルキレン基を表し、
平均繰り返し数nは10以上80以下の整数である。)
【0013】
本発明の効果が得られた理由は以下のように考えている。ここで、式(1)で表される構造のうち、A及びBを除く構造を、シリコーン構造ともいう。
【0014】
本発明の変性ポリエステルは、ウレタン結合及び/又はウレア結合を有する。ウレタン結合部やウレア結合部は水素結合により弾性が高く、耐久性や耐高温オフセット性に優れるものの、通常、ウレタン結合部やウレア結合部は湿度の影響を受けやすく、高温高湿環境下では帯電性が低下しやすい。
【0015】
一方で、本発明の変性ポリエステルはウレタン結合及び/又はウレア結合に加えて、シリコーン構造を同一分子内に有する。シリコーン構造は疎水性および帯電性が高い。また、ウレタン結合部及び/又はウレア結合部は極性が高いことに対して、シリコーン構造部は極性が低い。その結果、分子間ではシリコーン構造を有する部位同士と、ウレタン結合部及び/又はウレア結合部を有する部位同士が凝集する。一方、これらの極性の大きく異なる部位が同一分子内に存在することで、それぞれの部位がマクロに相分離することはなく、極性の近い部位同士が強く凝集したミクロ相分離構造を取る。この効果は極性が大きく離れた部位同士が同一分子内に存在するため得られる効果であり、極性が近い部位の組み合わせでは同様の効果は得られない。
【0016】
近い組成を有する部位同士が強く凝集することで、それぞれの部位が有する効果がより強く発現することに加えて、ミクロ相分離していることで、効果の発現部位も非常に多くなる。その結果、ウレタン結合及び/又はウレア結合を有する樹脂の耐久性や耐高温オフセット性の効果と、シリコーン構造を有する樹脂の疎水性および帯電性の効果が、それぞれ単独で用いた場合よりも強く発現する。
【0017】
上述の理由により、高温高湿環境下で使用された場合であっても、長期に渡って幅広い定着領域と高い帯電維持性を有するトナーを得るに至った。
【0018】
一方、ウレタン結合及び/又はウレア結合を有する樹脂と、シリコーン構造を有する樹脂を別々に加えた場合は本発明の効果は得られない(後述の比較例参照)。その理由としては、ウレタン結合及び/又はウレア結合を有する樹脂とシリコーン構造を有する樹脂は極性が大きく異なるために、トナー中でマクロに分離して存在してしまうためであると考えられる。
【0019】
本発明のトナーに使用される結着樹脂について説明する。
【0020】
本発明のトナーに使用される結着樹脂は、本発明の変性ポリエステルを含有することが必要である。本発明において、「本発明の変性ポリエステルを含有する」とは、例えば、本発明の変性ポリエステルとその他の樹脂を2種以上含有した結着樹脂が含まれる。その他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニル系共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、これら2種以上の樹脂ユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂等が挙げられる。
【0021】
本発明において、結着樹脂中の本発明の変性ポリエステルの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、その上限値は100質量%以下である。本発明の変性ポリエステルを50.0質量%以上含有することで、本発明の変性ポリエステルが結着樹脂の主成分となり、高温高湿環境下で使用された場合であっても、長期に渡ってより幅広い定着領域とより高い帯電維持性を有するトナーを得ることができる。
【0022】
本発明の変性ポリエステルは、ウレタン結合及び/又はウレア結合を有する。
【0023】
ウレタン結合を有する変性ポリエステルは、ポリエステル樹脂と、イソシアネート成分を含有する化合物とをウレタン反応させて得られる。ウレタン反応させる方法としては、ポリエステル樹脂の末端のアルコールとイソシアネート成分とを反応させて調製することができる。ウレア結合を有する変性ポリエステルは、イソシアネート基を有するポリエステル樹脂とアミン類とをウレア反応させて得られる。また、ポリエステル樹脂の末端にアミノ類を修飾した後、さらにイソシアネート成分を反応させて調製することもできる。
【0024】
上記アミン類としては、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。ジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ジアミン;4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンが挙げられる。3価以上のアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。アミノ基をブロックしたものとしては、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0025】
イソシアネート成分を含有する化合物としては以下のものが挙げられる。炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6以上20以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネート及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)、並びにこれらの2種以上の混合物。
【0026】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
【0027】
脂環式ジイソシアネートとしては、以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
【0028】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。m-及び/またはp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
【0029】
これらのうちで好ましくは、炭素数6以上15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましくはHDI及びIPDI、XDIである。上述のジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
【0030】
本発明の変性ポリエステルは、カルボン酸ユニット、アルコールユニット、シリコーン構造に由来するユニット及びイソシアネートユニットを有し、該ユニットの総質量を基準として、イソシアネートユニットの含有量Aが1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましい。イソシアネートユニットの含有量が前述の範囲にあることで、ウレタン結合部及び/又はウレア結合部の結着樹脂中への拡散性が良好となりやすい。そのため、ウレタン結合及び/又はウレア結合部とシリコーン構造部がよりミクロ相分離した状態が得られやすい。その結果、ウレタン結合及び/又はウレア結合部に由来する耐久性や耐高温オフセット性の効果と、シリコーン構造部に由来する疎水性および帯電性の効果が、より強く発現する。
【0031】
なお、カルボン酸ユニット、アルコールユニット、シリコーン構造に由来するユニット及びイソシアネートユニットとは、それぞれカルボン酸成分、アルコール成分、及びイソシアネート成分のモノマーおよびシリコーン構造を有する原料に由来するユニットを示す。
【0032】
本発明の変性ポリエステル中の式(1)で表される構造におけるA、Bに係わるポリエステル部位を構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0033】
ポリエステル部位を構成する2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸のようなベンゼンジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;炭素数の平均値が1以上50以下のアルケニルコハク酸類又はアルキルコハク酸類、又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸類又はその無水物若しくはその低級アルキルエステル。
【0034】
一方、ポリエステル部位を構成する2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(I-1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:及び式(I-2)で示されるジオール類。
【0035】
【化5】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
【0036】
【化6】
(式中、R’はエチレン又はプロピレン基であり、x’、y’はそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x’+y’の平均値は0以上10以下である。)
【0037】
本発明で使用される、ポリエステル部位の構成成分は、上述の2価のカルボン酸化合物及び2価のアルコール化合物以外に、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
【0038】
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
【0039】
本発明で使用される、ポリエステル部位の構成成分は、上述した化合物以外に、1価のカルボン酸化合物及び1価のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。具体的には、1価のカルボン酸化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などが挙げられ、また、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、テトラコンタン酸、ペンタコンタン酸などが挙げられる。
【0040】
また、1価のアルコール化合物としては、ベヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、テトラコンタノールなどが挙げられる。
【0041】
本発明の変性ポリエステル中の式(1)で表される構造のうち、A及びBを除く構造(すなわち、シリコーン構造)を構成する成分について詳述する。なお、以下の成分は種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
【0042】
シリコーン構造は、下記式(2)で表される構造を有する。
【0043】
【0044】
式(2)中、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、又はフェニル基を表し、nは10以上80以下である。nは、シロキサンユニットの繰り返し数の平均値であり、20以上65以下であることが好ましい。
【0045】
nの値が上記範囲にあることにより、結着樹脂中への拡散性が良好となりやすい。そのため、ウレタン結合及び/又はウレア結合部とシリコーン構造部がよりミクロ相分離した状態が得られやすい。その結果、ウレタン結合及び/又はウレア結合部に由来する耐久性や耐高温オフセット性の効果と、シリコーン構造部に由来する疎水性および帯電性の効果が、より強く発現する。
【0046】
該式(2)中、Rは、いずれもメチル基であることが好ましい。Rが全てメチル基であることにより、結着樹脂中への拡散性が良好となりやすい。そのため、ウレタン結合及び/又はウレア結合部とシリコーン構造部がよりミクロ相分離した状態が得られやすい。その結果、ウレタン結合及び/又はウレア結合部に由来する耐久性や耐高温オフセット性の効果と、シリコーン構造部に由来する疎水性および帯電性の効果が、より強く発現する。
【0047】
本発明の変性ポリエステル中の式(1)で表される構造中に式(2)で表される構造を形成させる成分としては、式(2)の末端に上記ポリエステルと化学的に反応する官能基を有するシリコーンオイルを用いるとよい。ポリエステルと反応する官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基などが挙げられる。
【0048】
シリコーンオイルの末端の官能基は、ポリエステルとの反応性を制御する上で、官能基はヒドロキシ基又はカルボキシ基を用いることが好ましい。
【0049】
シリコーンオイルの末端の官能基の数は、1、2又は3以上のものを用いることができる。ポリエステルの主骨格にシリコーン構造を導入することで、結晶性ポリエステルとの相溶性を制御し、画像保存性をより良好にするためには、シリコーンオイルの両末端に官能基を有するシリコーンオイルを用いることが好ましい。具体的には、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイル(KF-6000、KF-6001、KF-6002、以上、信越化学工業(株)製)が例示できる。
【0050】
本発明の変性ポリエステルの製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0051】
例えば、前述の2価のカルボン酸化合物及び2価のアルコール化合物、並びに末端に官能基を有するシリコーンオイルを、エステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、さらにウレタン化反応することで本発明の変性ポリエステルを製造するとよい。
【0052】
重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。
【0053】
ポリエステルの重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどの重合触媒を用いることができる。
【0054】
式(1)で表される構造を有する変性ポリエステルの軟化点(以下単に、Tmともいう)は、85℃以上150℃以下であることが好ましく、100℃以上150℃以下であることがより好ましい。
【0055】
本発明の変性ポリエステルの軟化点が上記範囲であることにより、定着画像の画像保存性がより向上すると共に、低温定着性も良好となる。
【0056】
また、本発明の変性ポリエステルの上記示差走査熱量計で測定される、2回目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg)は、50℃以上65℃以下であることが好ましく、53℃以上60℃以下であることがより好ましい。
【0057】
軟化点(Tm)は、以下のようにして測定される。
【0058】
軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。
【0059】
本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
【0060】
本開示においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。
【0061】
なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
【0062】
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
【0063】
測定試料は、約1.3gのサンプルを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて10MPaで、60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf/cm2(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0064】
また、本発明の変性ポリエステル中の、シリコーン構造の含有量Bは、0.5質量%以上5.0質量%以下含有することが好ましく、2.0質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましい。シリコーン構造の含有量(変性量)が上記の範囲にあることで、高温高湿環境下で使用された場合であっても、長期に渡ってより幅広い定着領域とより高い帯電維持性を有するトナーを得ることができる。
【0065】
また、前述のイソシアネートユニットの含有量Aと、シリコーン構造の含有量Bの比B/Aは、0.3以上5.0以下が好ましく、0.5以上2.0以下がより好ましい。B/Aが上記の範囲にあると、ウレタン結合及び/又はウレア結合部とシリコーン構造部がよりミクロ相分離した状態が得られやすい。その結果、ウレタン結合及び/又はウレア結合部に由来する耐久性や耐高温オフセット性の効果と、シリコーン構造部に由来する疎水性および帯電性の効果が、より強く発現する。
【0066】
本発明のトナーは、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、非磁性二成分トナーのいずれのトナーとしても使用できる。
【0067】
磁性一成分トナーとして用いる場合、着色剤としては、磁性酸化鉄粒子が好ましく用いられる。磁性一成分トナーに含まれる磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0068】
磁性酸化鉄粒子の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、30質量部以上150質量部以下が好ましい。
【0069】
非磁性一成分トナー、及び非磁性二成分トナーとして用いる場合の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0070】
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックが用いられ、また、マグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0071】
イエロー色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12、13、14、15、17、23、62、65、73、74、81、83、93、94、95、97、98、109、110、111、117、120、127、128、129、137、138、139、147、151、154、155、167、168、173、174、176、180、181、183、191、C.I.バットイエロー1,3,20が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、44、77、79、81、82、93、98、103、104、112、162等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0072】
シアン色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66等、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントブルー25、36、60、70、93、95等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0073】
マゼンタ色に好適な着色剤としては、顔料又は染料を用いることができる。顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,48:2、48:3、48:4、49,50,51,52,53,54,55,57,57;1、58,60,63,64,68,81,81:1、83,87,88,89,90,112,114,122,123,144、146,150,163,166、169、177、184,185,202,206,207,209,220、221、238、254等、C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35が挙げられる。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,52、58、63、81,82,83,84,100,109,111、121、122等、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27等、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40等、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料等が挙げられる。これらのものを単独又は2以上のものを併用して用いる。
【0074】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0075】
トナーに離型性を与えるために、離型剤(ワックス)を用いてもよい。本発明に用いられるワックスの一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化型ワックス;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系共重合モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0076】
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックスである。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒で重合した低分子量の炭化水素;石炭又は天然ガスから合成されるフィッシャートロプシュワックス;高分子量のオレフィンポリマーを熱分解して得られるオレフィンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスがよい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましいものである。
【0077】
ワックスを添加するタイミングは、トナー製造時に添加してもよいし、結着樹脂の製造時に添加してもよい。また、これらワックスは、一種類を単独で使用してもよいし二種類以上を併用して使用してもよい。ワックスは、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。
【0078】
本発明のトナーは、荷電制御剤として、既知の荷電制御剤を用いることができる。既知の荷電制御剤としては、アゾ系鉄化合物、アゾ系クロム化合物、アゾ系マンガン化合物、アゾ系コバルト化合物、アゾ系ジルコニウム化合物、カルボン酸誘導体のクロム化合物、カルボン酸誘導体の亜鉛化合物、カルボン酸誘導体のアルミ化合物、カルボン酸誘導体のジルコニウム化合物が挙げられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。また、荷電制御樹脂も用いることもできる。必要に応じて一種類又は二種類以上の荷電制御剤を併用してもかまわない。荷電制御剤は結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下添加することが好ましい。
【0079】
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のために、シリカ微粉体をトナー粒子に外添することが好ましい。シリカ微粉体は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上500m2/g以下であることが好ましく、50m2/g以上400m2/g以下であることがさらに好ましい。また、トナー粒子100質量部に対して、シリカ微粉体を0.01質量部以上8.00質量部以下用いることが好ましく、0.10質量部以上5.00質量部以下用いることがより好ましい。
【0080】
シリカ微粉体のBET比表面積は、例えば比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)、GEMINI2360/2375(マイクロメティリック社製)、トライスター3000(マイクロメティリック社製)を用いてシリカ微粉体の表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0081】
シリカ微粉体は、必要に応じ、疎水化、摩擦帯電性コントロールの目的で未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物又は、その他の有機ケイ素化合物のような処理剤で、あるいは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。
【0082】
さらに本発明のトナーには、必要に応じて他の外添剤を添加してもよい。このような外添剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粉体が挙げられる。帯電補助剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。
【0083】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。キャリアとしては、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアや樹脂コートキャリアを使用することができる。また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
【0084】
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなる。被覆材に用いられる樹脂としては、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン-アクリル系樹脂;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルブチラール;アミノアクリレート樹脂が挙げられる。その他には、アイオモノマー樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は複数を併用して用いることができる。
【0085】
この中でも特にシリコーン樹脂とアクリル系樹脂の双方を被覆材に用いることが好ましい。キャリア表層にシリコーン樹脂とアクリル系樹脂の双方が存在することで、本発明の変性ポリエステル中のウレタン結合及び/又はウレア結合部とアクリル系樹脂の親和性が上がり、シリコーン構造とシリコーン樹脂の親和性が上がる。その結果、本発明の変性ポリエステルとの電荷の授受スピードが向上する。その結果、高温高湿環境下で使用された場合であっても、長期に渡ってより高い帯電維持性を有する二成分現像剤を得ることができる。
【0086】
アクリル系樹脂としては、特に制限はなく、全てのアクリル系樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)は20~100℃が好ましく、25~80℃のものがより好ましい。前記アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)がこの範囲内であると、アクリル樹脂は適度な弾性を有しており、現像剤を摩擦帯電させるための攪拌における、トナーとキャリアとの摩擦あるいはキャリア同士の摩擦で、結着樹脂への強い衝撃を伴う接触の際、該衝撃を吸収することができ、被覆層を破損することなく維持することが可能となる。
【0087】
シリコーン樹脂としては、従来から知られているいずれのシリコーン樹脂であってもよく、オルガノシロキサン結合のみからなるストレートシリコーン樹脂及びアルキッド、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどで変性したシリコーン樹脂等が挙げられる。例えば、市販品としてストレートシリコーン樹脂は、信越化学社製のKR271、KR255、KR152、東レダウコーニング社製のSR2400、SR2405等があり、変性シリコーン樹脂は、信越化学社製のKR206(アルキッド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レダウコーニング社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキッド変性)などがある。
【0088】
本発明におけるトナー粒子を製造する方法としては、平均円形度を0.930以上0.990以下に調整することができる製造方法であれば、特に限定されず、公知の方法によって製造することができる。例えば、粉砕法、乳化凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法などが挙げられる。
【0089】
粉砕法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。変性ポリエステル、着色剤及び必要に応じてその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミルのような混合機により充分混合する。混合物を二軸混練押出機、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練する。その際、ワックス、磁性酸化鉄粒子及び含金属化合物を添加することもできる。溶融混練物を冷却固化した後、粉砕及び分級を行い、トナー粒子を得る。この際、微粉砕時の排気温度を調整することで、トナー粒子の平均円形度を制御することができる。さらに必要に応じて、トナー粒子と外添剤をヘンシェルミキサーのような混合機により混合し、トナーを得ることができる。
【0090】
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
【0091】
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
【0092】
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
【0093】
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、イノマイザ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、メカノミル(岡田精工社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、トナー粒子の表面処理を行い、トナー粒子の平均円形度を制御することもできる。
【0094】
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
【0095】
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
【0096】
溶解懸濁法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。
【0097】
溶解懸濁法は、少なくとも結着樹脂、着色剤を、有機溶媒に溶解及び/又は分散したトナー材料を、水系媒体中に懸濁させて油滴を形成した後、前記有機溶媒を除去して乾燥することで得られるトナー粒子の製造方法である。また本発明のトナーの製造方法は、少なくとも結着樹脂、着色剤を含有したコア粒子の調製工程とともに、表面層を形成する工程を含んでいても良い。前記表面層を形成する工程は、前記コア粒子の調製工程と同時であっても良いし、前記コア粒子の調製工程後に付け加えて行っても良い。
【0098】
また、本発明の表面層を形成する工程は、何ら制限を受けるものではない。例えばコア粒子の調製後に表面層を調製する工程を設ける場合には、水系媒体中に、コア粒子および表面層を形成する物質を樹脂微粒子状に分散させ、その後前記コア表面に表面層を形成する微粒子を凝集、吸着させる方法がある。前記樹脂微粒子がトナー組成物の液状物を懸濁させる際の分散剤としても機能する系であることを狙いとしており、このような系で調製することで、トナー表面への凝集工程などを必要とせず、より簡便な手法で本発明のトナーを調製することができる。これはコアシェル構造を持ったトナーを一段階で調製することのできる簡便な手法であって、かつ高画質の観点から球形で小粒径かつ粒度分布シャープであるトナーを簡便に得ることの出来る手法である。そこで、本発明においては、トナーのコアを溶解懸濁法によって調製し、前記手法の分散剤として、樹脂微粒子を分散剤として用いることにより表層を形成する手法を用いることができる。
【0099】
また、トナーに表層を形成させる別の手法として、トナーの内部と水系媒体中にそれぞれ反応性のモノマーを混入し、トナーと水系媒体の界面で反応を起こすことでトナー表面に表層を形成するいわゆる界面重合という方法も可能である。
【0100】
前記結着樹脂等を溶解及び/または分散させる有機媒体として使用出来る溶剤としては、酢酸エチル、キシレン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン等のケトン系溶剤が挙げられる。
【0101】
本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することも出来る。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、1-ブタノン等)等が挙げられる。
【0102】
トナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、通常50質量部以上2000質量部以下、好ましくは100質量部以上1000質量部以下である。50質量部以上にすることでトナー組成物の分散状態が良好になり、所定の粒径のトナーが得られる。
【0103】
本発明に用いる水系媒体中に、前記油層として用いる有機溶剤を適量混ぜておくことも好ましい製造方法である。これは造粒中の液滴安定性を高め、また、水系媒体中に油層をより懸濁させやすくする効果がある。
【0104】
分散剤としては、公知の界面活性剤、水溶性ポリマー等を用いることも出来る。
【0105】
主だった界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられ、トナー粒子形成の際の極性に併せる形で任意に選択可能なものである。
【0106】
アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムべタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0107】
一方、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6乃至C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0108】
また、分散剤として、高分子分散剤を用いてもよい。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α-シアノアクリル酸、α-シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、或いは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β-ヒドロキシエチル、メタクリル酸β-ヒドロキシエチル、アクリル酸β-ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β-ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ-ヒドロキシプロピル、アクリル酸3-クロロ2-ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等、ビニルアルコール、又はビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等、又はビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド或いはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等の酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の窒素原子、又はその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類等が使用出来る。
【0109】
分散剤を使用した場合には、前記分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることも出来るが、溶解洗浄除去する方がトナーの帯電面から好ましい。
【0110】
本発明においては、より好ましい分散状態を維持する上で固体の分散安定剤を使用しても構わない。本発明において、分散安定剤を使用するのは次の理由による。即ち、トナーの主成分である結着樹脂が溶解及び/又は分散した有機媒体は高粘度であり、高剪断力で有機媒体を微細に分散して形成された油滴同士が再凝集しやすい。一方、分散安定剤を用いると油滴の周囲を分散安定剤が囲み、油滴同士が再凝集するのを防ぎ、安定化させることができる。
【0111】
固体の分散安定剤としては、無機分散安定剤、及び有機分散安定剤が使用できる。無機分散安定剤の場合は、分散後に粒子表面上に付着した状態でトナー粒子が造粒されるので溶媒と親和性がない塩酸等の酸類によって除去が出来るものが好ましい。例えば、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、炭化水素ナトリウム、炭化水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ヒドロキシアパタイト、三リン酸カルシウム等が使用出来る。
【0112】
分散方法は特に制約されず、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波等の汎用装置が使用可能であるが、分散粒径を2μm以上20μm以下程度にする為には高速せん断式が好ましい。
【0113】
回転羽根を有する撹拌装置としては、特に制約はなく、乳化機、分散機として汎用のものであれば使用可能である。
【0114】
例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)等の連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)等のバッチ式、若しくは連続両用乳化機等が挙げられる。
【0115】
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定されないが、通常1000rpm以上30000rpm以下、好ましくは3000rpm以上20000rpm以下である。
【0116】
分散時間としてはバッチ方式の場合は、通常0.1分以上5分以下である。分散時の温度としては、通常、10℃以上150℃以下(加圧下)、好ましくは10℃以上100℃以下である。
【0117】
この様にして得られた乳化分散体から有機溶媒を除去する為には、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することが出来る。或いはまた、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧し、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。
【0118】
その場合、乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0119】
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることが出来る。用いた分散剤は得られた分散液から可能な限り取り除くことが好ましいが、分級操作と同時に行うのがより好ましい。
【0120】
本発明に用いられる樹脂微粒子の調製は特に限定されるものではなく、乳化重合法や樹脂を溶媒に溶解したり、溶融させたりして液状化し、これを水系媒体中で懸濁させることにより造粒したりして調製することができる。この時、公知の界面活性剤や分散剤等を用いることもできるし、微粒子を構成する樹脂に自己乳化性を持たせることもできる。
【0121】
前記樹脂微粒子は水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。
【0122】
樹脂を溶媒に溶解させて微粒子を調製する場合用いることのできる溶媒としては特に制限を設けないが、酢酸エチル、キシレン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。前記樹脂微粒子の粒径は、トナー粒子がカプセル構造を形成するために、数平均粒子径が5nm以上500nm以下であることが好ましい。また、前記樹脂微粒子は、ガラス転移温度は30℃以上100℃以下が好ましく、重量平均分子量は5000以上200000以下が好ましく用いられる。
【0123】
本発明においては、トナーと水系媒体の界面で反応を起こすことでトナー表面に表層を形成する前記界面重合という方法のうち、前記樹脂微粒子の存在下でイソシアネート基含有プレポリマーをアミン類により伸長反応及び架橋反応させることも可能である。この方法を用いることにより、ウレタン又は/及びウレア基を有する変性されたポリエステル樹脂をトナー表層に効果的に形成することができる。その結果、高温高湿環境下で使用された場合であっても、長期に渡ってより幅広い定着領域とより高い帯電維持性を有するトナーを得ることができる。
【0124】
ウレタン又は/及びウレア基を有するポリエステル樹脂を導入する目的で、末端にイソシアネート基を有するポリエステル樹脂およびこれと反応可能なアミン類を添加する場合は、以下の操作が行える。水系媒体中にトナー組成物を分散する前に油相中でアミン類を混合しても良いし、水系媒体中にアミン類を加えても良い。
【0125】
前記反応に要する時間は、ポリエステルプレポリマーの有するイソシアネート基構造と、加えたアミン類との反応性により選択されるが、通常1分以上40時間以下、好ましくは1時間以上24時間以下である。反応温度は、通常、0℃以上150℃以下、好ましくは20℃以上98℃以下である。この反応は、この樹脂微粒子とその他の樹脂微粒子を付着または/および凝集した後、融着する工程に含まれても良い。
【0126】
具体的な製法としてイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類との反応などが挙げられる。他にもイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとしては、ポリオールとポリカルボン酸の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネートと反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0127】
ポリオールとしては、ジオールおよび3価以上のポリオールが挙げられ、ジオール単独、またはジオールと少量の3価以上のポリオールの混合物が好ましい。ジオールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2以上12以下のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2以上12以下のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオールとしては、3~8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0128】
ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸および3価以上のポリカルボン酸が挙げられ、ジカルボン酸単独、およびジカルボン酸と少量のポリカルボン酸の混合物が好ましい。ジカルボン酸としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4以上20以下のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8以上20以下の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸としては、炭素数9以上20以下の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオールと反応させてもよい。
【0129】
ポリオールとポリカルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1乃至1/1、好ましくは1.5/1乃至1/1、さらに好ましくは1.3/1乃至1.02/1である。
【0130】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0131】
ポリイソシアネートの比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1乃至1/1、好ましくは4/1乃至1.2/1、さらに好ましくは2.5/1乃至1.5/1である。[NCO]/[OH]が5以下であると、低温定着性が良好になる。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー中のポリイソシアネート構成成分の含有量は、通常0.5質量%以上40質量%以下、好ましくは1質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上20質量%以下である。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー中のポリイソシアネート構成成分の含有量がこの範囲にあることで、耐久性と低温定着性が良好になる。
【0132】
イソシアネート基を有するプレポリマー中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは平均1.5個以上3個以下、さらに好ましくは平均1.8個以上2.5個以下である。
【0133】
アミン類としては、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、およびアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。ジアミンとしては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’-ジアミノ-3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。アミノ基をブロックしたものとしては、前記アミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類のうち好ましいものは、ジアミンおよびジアミンと少量の3価以上のポリアミンの混合物である。
【0134】
さらに、必要により伸長停止剤を用いてポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0135】
アミン類の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2乃至2/1、好ましくは1.5/1乃至1/1.5、さらに好ましくは1.2/1乃至1/1.2である。
【0136】
次に本発明に関わるトナー粒子の粒度分布の測定方法に関して記載する。
【0137】
<トナーの粒度分布の測定>
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0138】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0139】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0140】
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス(株)製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
【0141】
具体的な測定方法は、以下のとおりである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」((株)ヴェルヴォクリーア製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
【0142】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス(株)製)を使用した。前記手順に従い調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3,000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0143】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0144】
なお、本願実施例では、シスメックス(株)による校正作業が行われた、シスメックス(株)が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けたときと同じ測定及び解析条件で測定を行った。
【0145】
<結着樹脂及びトナーのガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
【0146】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0147】
具体的には、樹脂又はトナー約3mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて、以下の条件で測定する。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:30℃
測定終了温度:180℃
【0148】
測定範囲30乃至180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30乃至100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
【0149】
<変性ポリエステル中の式(1)で表される構造の同定方法>
式(1)で表される構造の確認には以下の方法を用いる。
【0150】
式(1)のRで表される炭化水素基及びシリコーン構造は、13C-NMR及び固体29Si-NMRにより確認する。
【0151】
(13C-NMRの測定条件)
装置:JEOL RESONANCE製 JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用の試料の重クロロホルム可溶分
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
【0152】
当該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH3)又はフェニル基(Si-C6H5)などに起因するシグナルの有無により、式(1)のRで表される炭化水素基を確認する。
【0153】
固体29Si-NMRの測定条件は、具体的には下記の通りである。
装置:JNM-ECX5002 (JEOL RESONANCE)
温度:室温
測定法:DD/MAS法 29Si 45°
試料管:ジルコニア3.2mmφ
試料:試験管に粉末状態で充填
試料回転数:10kHz
relaxation delay :180s
Scan:2000
【0154】
<式(2)で表される構造の含有量の測定方法>
式(2)で表される構造の含有量は上述した装置を用いて、1H-NMRにより確認する。
【0155】
(1H-NMRの測定条件)
試料:重クロロホルム可溶分
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:64回
【0156】
<イソシアネートユニットの含有量の測定>
イソシアネートユニットの含有量は、上述した装置を用いて、1H-NMRにより確認する。
試料:重クロロホルム可溶分
測定周波数:400MHz
パルス条件:3.125μs
周波数範囲:7500Hz
積算回数:64回
温度:室温
【0157】
<変性ポリエステル中のウレタン結合・ウレア結合の確認方法>
ウレタン結合の有無は、ATR法によるFT-IRスペクトルで確認する。ATR法によるFT-IRスペクトルは、Universal ATR Sampling Accessory(ユニバーサルATR測定アクセサリー)を装着したFrontier(フーリエ変換赤外分光分析装置,PerkinElmer社製)を用いて行う。ATR結晶としては、GeのATR結晶(屈折率=4.0)を用いて行う。その他の条件は以下の通りである。
Range
Start:4000cm-1
End:600cm-1(GeのATR結晶)
Scan number:8
Resolution:4.00cm-1
Advanced:CO2/H2O補正あり
【0158】
1570~1510cm-1にピークトップを有していればウレタン結合を有すると判断する。(赤外吸光図説総覧,三共出版株式会社)
【0159】
ウレア結合に関しても、ウレア結合に特徴的な範囲にピークトップを有することでウレア結合の有無を確認する。
【実施例】
【0160】
以上、本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下、実施例に基づいて具体的に本願発明について説明する。本発明は何らこれに限定されるものではないが、実施例8~12は参考例である。なお、特に断りのない限り部及び%は、質量基準である。
【0161】
<結着樹脂1の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 30.0部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 32.9部
・テレフタル酸: 27.6部
・無水トリメリット酸: 3.5部
上記ポリエステル部位を構成するモノマーに、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイル(KF-6000、信越化学工業(株)製)3.0部を加え、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
【0162】
そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で8時間縮重合反応を行った。
【0163】
その後80℃まで冷却し、イソシアネート成分として3.0部のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を入れ、常圧下にて80℃でウレタン化反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整し、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して、ウレタン結合と、式(1)で表される構造を有する変性ポリエステル1を得た。該変性ポリエステル1の軟化点(Tm)は130℃、ガラス転移温度(Tg)は55℃であった。該変性ポリエステル1を結着樹脂1とした。結着樹脂1の物性は表1に示した。
【0164】
なお、結着樹脂1中の、式(2)で表される構造の含有量は、3.0質量%であり、式(1)中のRが、いずれもメチル基であり、nは26であった。
【0165】
<結着樹脂2の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 30.3部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 33.2部
・テレフタル酸: 27.9部
・無水トリメリット酸: 3.6部
上記ポリエステル部位を構成するモノマーに、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイル(KF-6002、信越化学工業(株)製)2.0部を加え、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
【0166】
そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら、210℃で8時間縮合反応した。次いで10乃至15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に80℃まで冷却した。酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート2.5部と2時間反応を行い、イソシアネート含有プレポリマーAを得た。次いで、イソシアネート含有プレポリマーAに、イソホロンジアミン0.5部を加え、50℃で2時間反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して、ウレア結合と、式(1)で表される構造を有する変性ポリエステル2を得た。該変性ポリエステル2の軟化点(Tm)は135℃、ガラス転移温度(Tg)は56℃であった。該変性ポリエステル2を結着樹脂2とした。
【0167】
なお、結着樹脂2中の、式(2)で表される構造の含有量は、2.0質量%であり、式(1)中のRが、いずれもメチル基であり、nは63であった。結着樹脂2の物性は表1に示した。
【0168】
<結着樹脂3~9の製造例>
両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイルを、シリコーンオイル(KF-6001、信越化学工業(株)製)に変更し、表1に示すようにシリコーンオイルの添加量、ポリエステル部位を構成するモノマーの添加量、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の添加量を変更し、反応時間を調整して軟化点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)を制御した以外は結着樹脂1の製造例に従い、ウレタン結合と、式(1)で表される構造を有する変性ポリエステル3~9を得た。該変性ポリエステル3~9を結着樹脂3~9とした。なお、式(1)中のRが、いずれもメチル基であり、nは38であった。得られた結着樹脂3~9の物性は表1に示した。
【0169】
<結着樹脂10の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 31.8部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 34.8部
・テレフタル酸: 29.3部
・無水トリメリット酸: 3.8部
上記ポリエステル部位を構成するモノマーに、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイル(KF-6001、信越化学工業(株)製)0.3部を加え、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
【0170】
そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で縮重合反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整し、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して式(1)で表される構造を有するポリエステル10を得た。得られた該ポリエステル10の軟化点(Tm)は120℃、ガラス転移温度(Tg)は53℃であった。該ポリエステル10を結着樹脂10とした。結着樹脂10の物性は表1に示した。
【0171】
なお、結着樹脂10中の、式(2)で表される構造の含有量は、0.3質量%であり、式(1)中のRが、いずれもメチル基であり、nは38であった。
【0172】
<結着樹脂11の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 30.0部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 32.9部
・テレフタル酸: 27.6部
・無水トリメリット酸: 3.5部
上記ポリエステル部位を構成するモノマーを、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
【0173】
そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で8時間縮重合反応を行った。
【0174】
その後80℃まで冷却し、イソシアネート成分として6.0部のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を入れ、常圧下にて80℃でウレタン化反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整し、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕してウレタン結合を有するポリエステル11を。該ポリエステル11の軟化点(Tm)は140℃、ガラス転移温度(Tg)は57℃であった。該ポリエステル11を結着樹脂11とした。結着樹脂11の物性は表1に示した。
【0175】
<結着樹脂12の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 31.9部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 34.9部
・テレフタル酸: 29.4部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。さらに、チタンテトラブトキシド500ppmを反応槽に投入した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
【0176】
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸: 3.8部
その後、上記材料とともにtert-ブチルカテコール(重合禁止剤)0.003モル部とを反応槽に投入し、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が148℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め(第2反応工程)、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕してポリエステル12を得た。得られたポリエステル12の軟化点(Tm)は148℃、ガラス転移温度(Tg)は59℃であった。該ポリエステル12を結着樹脂12とした。結着樹脂12の物性は表1に示した。
【0177】
【0178】
<樹脂微粒子分散液1の製造>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、
・水 650部
・メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30、三洋化成工業製) 10部
・スチレン 85部
・メタクリル酸 80部
・アクリル酸ブチル 100部
・過硫酸アンモニウム 1部
を仕込み、350回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-アクリル酸ブチル-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液樹脂微粒子分散液1を得た。樹脂微粒子分散液1をLA-920で測定した体積平均粒径は、105nmであった。樹脂微粒子分散液1の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは65℃であり、重量平均分子量は150000であった。
【0179】
<プレポリマー1の製造>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2モル付加物): 30.0部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2モル付加物): 32.9部
・テレフタル酸: 27.6部
・無水トリメリット酸: 3.5部
上記ポリエステルユニットを構成するモノマーに、両末端にヒドロキシ基を有するシリコーンオイル(KF-6001、信越化学工業(株)製)3.0部を加え、チタンテトラブトキシド500ppmと共に5リットルオートクレーブに混合した。
そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら、210℃で8時間縮合反応した。次いで10乃至15mmHgの減圧下で脱水しながら5時間反応を継続した後に80℃まで冷却した。酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート3.0部と2時間反応を行い、プレポリマー1を得た。得られたプレポリマー1の重量平均分子量は5,300であった。
【0180】
<ケチミン化合物1の合成>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、
・イソホロンジアミン 150部
・1-ブタノン 75部
を仕込み、50℃で5時間反応を行い、ケチミン化合物1を得た。ケチミン化合物1のアミン価は390であった。
【0181】
<マスターバッチ1の合成>
・水 1200部
・ピグメントブルー15:3 500部
・結着樹脂1 1200部
を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕、マスターバッチ1を得た。
【0182】
(トナー粒子1の製造例)
<油相1の調製>
撹拌棒および温度計をセットした容器に、
・結着樹脂1 380部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 6部
・1-ブタノン 900部
を仕込み、撹拌下80℃に昇温して、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。次いで容器に
・マスターバッチ1 500部
・1-ブタノン 500部
を仕込み、1時間混合し原料溶解液1を得た。
【0183】
原料溶解液1 1300部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WAXの分散を行った。
【0184】
次いで、結着樹脂1の65%1-ブタノン溶液1300部を加え、上記条件のビーズミルで1パスし、油相1を得た。油相1の固形分濃度(130℃、30分)は53%であった。
【0185】
<水相1の調製>
・水 990部
・樹脂微粒子分散液1 83部
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム48.5%水溶液 37部
(エレミノールMON-7):三洋化成工業製)
・カルボキシメチルセルロース1質量%水溶液 135部
・1-ブタノン 90部
を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを水相1とする。
【0186】
<乳化⇒脱溶剤⇒加熱処理工程>
・油相1 1200部
・プレポリマー1 120部
・ケチミン化合物1 3部
を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmで1分間混合した後、容器に水相1 2000部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し乳化スラリー1を得た。
【0187】
撹拌機および温度計をセットした容器に、乳化スラリー1を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、分散スラリー1を得た。
【0188】
続いて、冷却管を設置したフラスコに内容物を移し、57℃に加熱し50rpmで4時間撹拌をしてトナー粒子水分散液1を得た。
【0189】
<洗浄工程⇒乾燥工程>
トナー粒子水分散液1がpH1.5となるまで塩酸を加え、30分間撹拌した後に濾過し、濾別とイオン交換水への再分散の操作をスラリーの電導度が100μSとなるまで繰り返した。このようにしてスラリー中に残存した界面活性剤の除去、トリエチルアミンの中和除去を行い、トナー粒子1のろ過ケーキを得た。上記ろ過ケーキを減圧乾燥機にて常温で3日間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩って、風力分級を実施し、重量平均粒径(D4)6.0μm、平均円形度0.952の負摩擦帯電性のトナー粒子を得た。
【0190】
(トナー1の調製)
次に、上記トナー粒子1の100部に対し、オイル処理シリカ微粒子(BET比表面積95m2/g、シリコーンオイル15質量%処理)2.0部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)FM-10Bにて混合し、トナー1を得た。
【0191】
(磁性コア粒子1の製造例)
・Fe2O3 62.7部
・MnCO3 29.5部
・Mg(OH)2 6.8部
・SrCO3 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。
【0192】
その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。
【0193】
このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りであった。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
【0194】
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
該仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。さらに、得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0195】
該フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム1.0部、及び、バインダーとしてのポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子の粒度を調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0196】
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0197】
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)が37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0198】
(樹脂溶液1の製造例)
・シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8%
・メチルメタクリレートモノマー 0.2%
・メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
・トルエン 31.3%
・メチルエチルケトン 31.3%
・アゾビスイソブチロニトリル 2.0%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れた。セパラブルフラスコ内に、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加し、5時間還流して重合させた。
【0199】
得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させた。
【0200】
得られた沈殿物を濾別後、真空乾燥して樹脂を得た。
【0201】
30部の該樹脂を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部の混合溶媒に溶解して、樹脂溶液1(固形分濃度30質量%)を得た。
【0202】
(被覆樹脂溶液1の調製)
・樹脂溶液1(固形分濃度30質量%) 100.0部
・シリコーン樹脂(信越化学社製:KR242A(固形分濃度50質量%)
240.0部
・γ-アミノプロピルエトキシシラン(固形分濃度50質量%) 7.0部
・カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 5.0部
(一次粒子の個数平均粒径:25nm、窒素吸着比表面積:94m2/g、DBP吸油量:75ml/100g)
・トルエン 600.0部
上記材料を、ペイントシェーカーに投入し、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液1を得た。
【0203】
(磁性キャリア1の製造例)
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、被覆樹脂溶液1及び磁性コア粒子1を投入した(被覆樹脂溶液1の投入量は、磁性コア粒子100部に対して、樹脂成分として2.5部)。
【0204】
投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後に冷却した。
【0205】
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0206】
(被覆樹脂溶液2の調製)
・樹脂溶液1(固形分濃度30質量%) 500.0部
・カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 5.0部
(一次粒子の個数平均粒径:25nm、窒素吸着比表面積:94m2/g、DBP吸油量:75ml/100g)
・トルエン 600.0部
上記材料を、ペイントシェーカーに投入し、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液2を得た。
【0207】
(磁性キャリア2の製造例)
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、被覆樹脂溶液2及び磁性コア粒子1を投入した(被覆樹脂溶液2の投入量は、磁性コア粒子100部に対して、樹脂成分として2.5部)。
【0208】
投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後に冷却した。
【0209】
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.2μmの磁性キャリア2を得た。
【0210】
<二成分現像剤1の製造例>
トナー1と磁性キャリア1を、磁性キャリア90部に対して、トナー1が10部になるように、V型混合機(V-10型:株式会社徳寿製作所)を用いて、0.5s-1、回転時間5minの条件で混合して二成分現像剤1を調製した。
【0211】
得られた二成分現像剤1を用いて以下の評価を行った。
【0212】
〔実施例1〕
キヤノン製フルカラー複写機imagePRESS C800又はその改造機を用い、以下の評価を実施した。
【0213】
該画像形成装置は、像坦持体として静電潜像を形成させる感光体を有し、感光体の静電潜像を二成分現像剤によりトナー像として現像する現像工程を有する。
【0214】
さらに、現像されたトナー像を中間転写体に転写し、その後に中間転写体のトナー像を紙に転写する転写工程を有し、紙上のトナー像を熱により定着する定着工程を有する。
【0215】
この画像形成装置のシアンステーションの現像器に、二成分現像剤1を投入し、下記評価を行った。
【0216】
[耐ホットオフセット性の評価]
キヤノン製フルカラー複写機imagePRESS C800の定着器を外部へ取り出し、複写機外でも動作し、定着温度、プロセススピードを任意に設定可能となるように改造した外部定着器を用いた。この外部定着器を用いて、高温高湿環境下(30℃/80%Rh)で通紙を行った。
【0217】
耐ホットオフセット性は、50g/m2紙を用いて、A4横置きで先端から5cmの全域が画像濃度0.5のハーフトーン、それ以外がベタ白という未定着画像を通紙することにより評価した。上記方法により作成した未定着画像を、定着装置の加熱体を210~240℃の温度範囲で5℃おきに温調し、プロセススピード50mm/sec、ニップ幅を13mmに設定し、A4縦置きで100枚通紙後、上記のA4横置きの画像を通紙して定着させた。この際の白地部に現れるオフセットのレベルを目視確認した。
A:オフセットが全く発生しない。
B:定着温度240℃で、A4縦置きで通紙した部分以外の端部にうっすらとオフセットが発生した。
C:定着温度235℃で、A4縦置きで通紙した部分以外の端部にうっすらとオフセットが発生した。
D:定着温度230℃で、A4縦置きで通紙した部分以外の端部にうっすらとオフセットが発生した。
E:定着温度225℃で、A4縦置きで通紙した部分以外の端部にうっすらとオフセットが発生した。
F:定着温度220℃以下で、オフセットが発生した。
【0218】
[帯電維持性の評価]
高温高湿環境下(30℃/80%Rh)において、初期の画像を出力した。出力画像は単色モードのシアンの4A横で10cm幅の縦帯画像で、紙上のシアンの反射濃度が1.35になるように調整した。評価紙は、コピー用紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。その後、高温高湿環境下(30℃/80%Rh)で、印字比率5%のテストチャートを10万枚まで連続出力した後、現像器を取り出して150時間放置した。その後、本体を立ち上げてから現像器を本体内に戻し、同じ現像条件で再度同じ画像の画像出力を行った。得られた出力画像の反射濃度を、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用いて9か所の平均値を測定し、初期画像と耐久および放置後の反射濃度を比較して以下の基準により評価した。
【0219】
(評価基準:初期画像と耐久および放置後の反射濃度差)
A:Δ0.05未満
B:Δ0.05以上Δ0.08未満
C:Δ0.08以上Δ0.11未満
D:Δ0.11以上Δ0.14未満
E:Δ0.14以上Δ0.17未満
F:Δ0.17以上
【0220】
〔実施例2〕
(トナー2の製造例)
・結着樹脂2 70部
・結着樹脂12 30部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 6部
・ピグメントブルー15:3 5部
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、二軸混練押し出し機によって、160℃で溶融混練した。
【0221】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。
【0222】
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.5μm、平均円形度0.952の負摩擦帯電性のトナー粒子を得た。
【0223】
該トナー粒子100部に対して、疎水化処理したシリカ微粒子(BET法で測定した窒素吸着による比表面積が140m2/g)2.0部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー2を得た。
【0224】
(二成分現像剤2の製造例)
トナー1をトナー2に変更した以外は、二成分現像剤1の製造例と同様にして、二成分現像剤2を得た。さらに、二成分現像剤1と同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0225】
〔実施例3~12〕
(トナー3~11の製造例)
結着樹脂の種類及び量を表2のように変更した以外は、トナー2の製造例と同様にして、トナー3~11を得た。
【0226】
(二成分現像剤3~12の製造例)
トナーおよび二成分現像剤を表3のように変更した以外は、二成分現像剤1の製造例と同様にして、二成分現像剤3~12を得た。さらに、二成分現像剤1と同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0227】
【0228】
【0229】
〔比較例1~3〕
(トナー12~14の製造例)
結着樹脂の種類及び量を表4のように変更した以外は、トナー2の製造例と同様にして、トナー12~14を得た。
【0230】
【0231】
(二成分現像剤13~15の製造例)
トナーを表5のように変更した以外は、二成分現像剤1の製造例と同様にして、二成分現像剤13~15を得た。さらに、二成分現像剤1と同様に評価を行った。評価結果を表5に示す。比較例1~3はいずれも本発明の効果は得られず、ウレタン結合を有する樹脂とシリコーンユニットを有する樹脂を別々に加えた場合(比較例1)も本発明の効果が得られないことが判る。
【0232】