(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】柱脚補強構造および既存建物の柱脚補強方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20250303BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04G23/02 F
E04B1/24 F
(21)【出願番号】P 2021040239
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】脇山 祥広
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勇紀
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136929(JP,A)
【文献】特開2015-137511(JP,A)
【文献】特開2016-216993(JP,A)
【文献】特開2001-262842(JP,A)
【文献】特開2007-162448(JP,A)
【文献】特開平02-120438(JP,A)
【文献】特開平07-268956(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0142482(US,A1)
【文献】特開2016-089610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04G 23/00-23/08
E04B 1/58
E02D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管柱の柱脚部の各面部に、当該面部の面外方向外側への座屈を受け止める座屈受け補強板が、当該面部に対して隙間を形成して対向配置されており、隣り合う座屈受け補強板同士が、上記角形鋼管柱の隣り合う面部の交差部となる角部側で
、当該座屈受け補強板の側面間に配置された連結部材を介して相互に連結されており、この連結は、上記連結部材に締結部材が挿通されるとともに、この締結部材の先端側が上記座屈受け補強板の側面に設けられている締結穴部材に締結されることによって行われることを特徴とする柱脚補強構造。
【請求項2】
角形鋼管柱の柱脚部の各面部に、当該面部の面外方向外側への座屈を受け止める座屈受け補強板が、当該面部に対して隙間を形成して対向配置されており、隣り合う座屈受け補強板同士が、上記角形鋼管柱の隣り合う面部の交差部となる角部側で連結されており、
2枚の板部が山形に位置する二辺部材が、上記角形鋼管柱の上記角部の近傍の上記面部に、上記2枚の板部を当てて配置されており、上記板部を介して上記座屈受け補強板が上記面部に対向し、上記座屈受け補強板と上記角形鋼管柱の上記面部との間に上記板部の厚みによる隙間が形成されることを特徴とする柱脚補強構造。
【請求項3】
角形鋼管柱の柱脚部の各面部に、当該面部の面外方向外側への座屈を受け止める座屈受け補強板が、当該面部に対して隙間を形成して対向配置されており、隣り合う座屈受け補強板同士が、上記角形鋼管柱の隣り合う面部の交差部となる角部側で連結されており、
2枚の板部が回動自在に連結された蝶番によって隣り合う座屈受け補強板が繋がっており、且つ上記蝶番が上記角形鋼管柱の上記角部の近傍の上記面部に上記2枚の板部を当てて位置しており、
上記板部を介して上記座屈受け補強板が上記面部に対向し、上記座屈受け補強板と上記角形鋼管柱の上記面部との間に上記板部の厚みによる隙間が形成されることを特徴とする柱脚補強構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の柱脚補強構造において、上記座屈受け補強板は、プレキャストコンクリート版であることを特徴とする柱脚補強構造。
【請求項5】
請求項4に記載の柱脚補強構造において、上記座屈受け補強板である上記プレキャストコンクリート版は、上記角形鋼管柱の上記面部に対面する側に鋼板を備えることを特徴とする柱脚補強構造。
【請求項6】
請求項
2または請求項3に記載の柱脚補強構造において、上記の隣り合う座屈受け補強板の全てまたは一部が、これら座屈受け補強板の側面間に配置された連結部材を介して相互に連結されたことを特徴とする柱脚補強構造。
【請求項7】
角形鋼管柱の柱脚部の各面部に、当該面部の面外方向外側への座屈を受け止める座屈受け補強板が、当該面部に対して隙間を形成して対向配置されており、隣り合う座屈受け補強板同士が、上記角形鋼管柱の隣り合う面部の交差部となる角部側で連結されており、
上記の隣り合う座屈受け補強板の全てまたは一部が、一方の座屈受け補強板の側面を、他方の座屈受け補強板の角形鋼管柱に対向する側の面の縁側に対面させて相互に連結されたことを特徴とする柱脚補強構造。
【請求項8】
既存建物の角形鋼管柱の柱脚部における床スラブコンクリート上の露呈部分の各面部に、当該面部の面外方向外側への座屈を受け止める座屈受け補強板を、当該面部に対して隙間を形成して対向配置し、隣り合う座屈受け補強板同士を上記角形鋼管柱の隣り合う面部の交差部となる角部側で連結する
工程を含むことにより、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の柱脚補強構造を作製することを特徴とする既存建物の柱脚補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の角形鋼管柱の柱脚部での座屈を抑制できる柱脚補強構造および既存建物の柱脚補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物のスラブに立設された鉄骨柱の下部を覆って設けられる根巻きを構成する鋼製枠であって、上記スラブに上記鉄骨柱を取り囲んで取り付けられる底板と、この底板に取り付けられて、上記鉄骨柱の下部回りにコンクリート打設空間を形成する筒状の側板と、上記コンクリート打設空間内に配置されて、上記側板と上記鉄骨柱との連結をなす連結部材とを備える構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、水平部材が接合される上下の鋼管仕口部と、上記鋼管仕口部間に延びる鋼管本体部と、を有する鋼管柱と、上記鋼管柱内に充填された充填コンクリートと、上記鋼管本体部における軸方向端部の側壁に設けられ、該側壁の面外方向外側への変位を抑制する座屈抑制部材と、を備えており、上記座屈抑制部材が、上記鋼管本体部における軸方向端部の側壁と隙間を空けて対向するコンクリート充填鋼管柱の耐火補強構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-216993号公報
【文献】特開2013-87520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1による柱脚の補強構造は、コンクリート打設のタイミング調整や養生期間が必要となる湿式工法で作製されるため、迅速な補強施工が行えない欠点がある。
【0006】
また、上記特許文献2による柱脚の補強構造は、コンクリート打設のタイミング調整や養生期間を必要としないものの、既存建物の鋼管柱の柱脚部の築後施工による補強に適した構造とはいえない。特に、略コ字状や略L字状の座屈抑制部材は嵩張り易いため、座屈抑制部材の施工現場への運搬が非効率になる。また、上記のような略コ字状等の座屈抑制部材では、床スラブコンクリートの上面に不陸(凹凸)が存在する場合に、上記座屈抑制部材の一面を鉛直にできたとしても他の面が鉛直方向に対して斜めになることが生じ、上記鋼管柱の各面部との間の隙間が鉛直方向に一定幅にならないことが生じうる。また、これを避けるために、上記床スラブコンクリートから不陸を取り除く作業を行うのでは、施工手間が増えて施工コストが割高になるおそれもある。また、補強作業において溶接を伴う作業は極力避けたい要望もある。
【0007】
この発明は、既存建物の角形鋼管柱の柱脚部における床スラブコンクリート上の露呈部分に対しても、容易かつ適切に補強することが可能となる柱脚補強構造および既存建物の柱脚補強方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の柱脚補強構造は、角形鋼管柱の柱脚部の各面部に、当該面部の面外方向外側への座屈を受け止める座屈受け補強板が、当該面部に対して隙間を形成して対向配置されており、隣り合う座屈受け補強板同士が、上記角形鋼管柱の隣り合う面部の交差部となる角部側で連結されたことを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、上記座屈受け補強板をコ字状等の形状ではなく平板状にできるので、当該座屈受け補強板を効率的に作業現場へと搬送することができる。また、このように平板状にできると、コ字状等の形状に比べて各面部に対する座屈受け補強板の隙間調整が容易になるため、既存建物の角形鋼管柱の柱脚部における床スラブコンクリート上の不陸のある露呈部分に対しても容易かつ適切に補強することが可能になる。
【0010】
2枚の板部が山形に位置する二辺部材が、上記角形鋼管柱の上記角部の近傍の上記面部に、上記2枚の板部を当てて配置されており、上記板部を介して上記座屈受け補強板が上記面部に対向し、上記座屈受け補強板と上記角形鋼管柱の上記面部との間に上記板部の厚みによる隙間が形成されてもよい。これによれば、上記二辺部材の上記板部の厚みによって、上記座屈受け補強板と上記角形鋼管柱の面部との間に一定の隙間を簡単に形成することができる。また、上記二辺部材によって、上記角形鋼管柱の角部の補強も図れる。
【0011】
或いは、2枚の板部が回動自在に連結された蝶番によって隣り合う座屈受け補強板が繋がっており、且つ上記蝶番が上記角形鋼管柱の上記角部の近傍の上記面部に上記2枚の板部を当てて位置しており、上記板部を介して上記座屈受け補強板が上記面部に対向し、上記座屈受け補強板と上記角形鋼管柱の上記面部との間に上記板部の厚みによる隙間が形成されてもよい。これによれば、上記蝶番の上記板部の厚みによって、上記座屈受け補強板と上記角形鋼管柱の面部との間に一定の隙間を簡単に形成することができる。また、上記蝶番によって、上記角形鋼管柱の角部の補強も図れる。また、上記蝶番によって繋がる2個の座屈受け補強板がセットになって提供されるので、座屈受け補強板の角形鋼管柱への組付け効率が向上する。その一方、隣り合う2個の座屈受け補強板を畳んで重ねることができるので、当該座屈受け補強板の作業現場への搬送が効率的に行える。
【0012】
上記座屈受け補強板は、プレキャストコンクリート版であってもよい。このように、座屈受け補強板がプレキャストコンクリート版であると、湿式工法の欠点を回避しつつコンクリートを用いた柱脚補強が行える。
【0013】
上記座屈受け補強板である上記プレキャストコンクリート版は上記角形鋼管柱の上記面部に対面する側に鋼板を備えてもよい。これによれば、上記鋼板によって座屈受け補強板をより強固にして柱脚を補強することができる。
【0014】
上記の隣り合う座屈受け補強板の全てまたは一部が、これら座屈受け補強板の側面間に配置された連結部材を介して相互に連結されてもよい。これによれば、上記連結部材を用いて簡単かつ確実に上記角形鋼管柱を上記座屈受け補強板によって囲うことができる。
【0015】
上記の隣り合う座屈受け補強板の全てまたは一部が、一方の座屈受け補強板の側面を、他方の座屈受け補強板の角形鋼管柱に対向する側の面の縁側に対面させて相互に連結されてもよい。これによれば、上記連結部材の使用を無くす或いは減らすことができる。
【0016】
また、この発明の既存建物の柱脚補強方法は、既存建物の角形鋼管柱の柱脚部における床スラブコンクリート上の露呈部分の各面部に、当該面部の面外方向外側への座屈を受け止める座屈受け補強板を、当該面部に対して隙間を形成して対向配置し、隣り合う座屈受け補強板同士を上記角形鋼管柱の隣り合う面部の交差部となる角部側で連結することを特徴とする。
【0017】
上記の方法であれば、上記座屈受け補強板をコ字状等の形状ではなく平板状にできるので、当該座屈受け補強板を効率的に作業現場へと搬送することができ、また、各面部に対する座屈受け補強板の隙間調整が容易になるため、既存建物の角形鋼管柱の柱脚部における床スラブコンクリート上の不陸のある露呈部分に対して容易かつ適切に補強することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明であれば、座屈受け補強板を効率的に作業現場へと搬送することができ、また、既存建物の角形鋼管柱の柱脚部における床スラブコンクリート上の露呈部分に対しても容易かつ適切に補強できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の柱脚補強構造を示した図であって、同図(A)は横断面図、同図(B)は床スラブコンクリート内も示した正面図である。
【
図2】実施形態2の柱脚補強構造を示した図であって、同図(A)は横断面図、同図(B)は床スラブコンクリート内も示した正面図である。
【
図3】実施形態2の変形例を示した図であって、同図(A)は横断面図、同図(B)は床スラブコンクリート内も示した正面図である。
【
図4】実施形態3の柱脚補強構造を示した図であって、同図(A)は横断面図、同図(B)は床スラブコンクリート内も示した正面図である。
【
図5】実施形態3の変形例を示した図であって、同図(A)は横断面図、同図(B)は床スラブコンクリート内も示した正面図である。
【
図6】実施形態3の他の変形例を示した図であって、同図(A)は横断面図、同図(B)は床スラブコンクリート内も示した正面図である。
【
図7】実施形態3の他の変形例を示した図であって、同図(A)は横断面図、同図(B)は床スラブコンクリート内も示した正面図である。
【
図8】実施形態3の他の変形例を示した図であって、同図(A)は横断面図、同図(B)は床スラブコンクリート内も示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の柱脚補強構造は、既存建物の角形鋼管柱1の柱脚部11における床スラブコンクリート2上の露呈部分に対して補強を行う。上記床スラブコンクリート2は、角形鋼管柱1の下端に設けられたベースプレート11aおよび柱下部の所定高さまでの部分を覆っている。
【0021】
また、上記柱脚補強構造においては、角形鋼管柱1の柱脚部11の各面部(合計4面)に、当該各面部の面外方向外側への座屈を受け止める平板状の座屈受け補強板3が、当該面部に対して隙間Gを形成して対向配置されている。そして、隣り合う座屈受け補強板3・3同士が上記角形鋼管柱1の隣り合う面の交差部となる角部側で連結されている。
【0022】
この実施形態では、上記座屈受け補強板3は、縦横にそれぞれ複数本の鉄筋31が配置されたプレキャストコンクリート版からなる。また、上記プレキャストコンクリート版からなる上記座屈受け補強板3の側面(側面)には、高さ方向に所定間隔でインサートナットが水平方向に埋め込まれている。
【0023】
例えば、上記座屈受け補強板3の横長さは、角形鋼管柱1の幅に隙間Gの2倍の長さを足し合わせた寸法とされ、高さは1000mm~2000mm程度であり、厚みは、50mm~200mm程度である。また、隙間G(各片側)は、例えば、1mm~5mm程度とされる。なお、この座屈受け補強板3において、プレキャストコンクリート版の上記角形鋼管柱1側の面に2mm~6mm厚程度の鋼板が付着されていてもよい。
【0024】
上記の隣り合う座屈受け補強板3の側面間には、連結部材4が位置しており、上記連結部材4は締結部材5によって上記側面に固定されている。すなわち、上記の隣り合う座屈受け補強板3は、連結部材4を介して相互に連結されている。一例として、連結部材4は断面正方形状の角鋼管からなる。この角鋼管には、複数のボルト挿通孔が上記インサートナットの配置間隔に合致させて立体交差で形成されている。また、上記締結部材5としてのボルトは、上記ボルト挿通孔に通されて上記インサートナットに螺着される。これにより、4個の座屈受け補強板3が4個の連結部材4を介して相互に直角方向に引き合って固定される。
【0025】
このような柱脚補強構造であれば、座屈受け補強板3をコ字状等の形状ではなく平板状にできるので、当該座屈受け補強板3を効率的に作業現場へと搬送することができる。また、このように座屈受け補強板3が平板状であると、角形鋼管柱1の各面部に対して座屈受け補強板3の隙間Gの調整を行えばよく、一つの座屈受け補強板3の隙間Gの調整においてその隣の座屈受け補強板3の隙間Gの調整は影響を受け難いため、各面部での隙間Gの調整が容易になる。これにより、既存建物の角形鋼管柱1の柱脚部における床スラブコンクリート2上の不陸のある露呈部分に対しても容易かつ適切に補強することが可能になる。
【0026】
上記座屈受け補強板3がプレキャストコンクリート版であると、湿式工法の欠点を回避しつつコンクリートを用いた柱脚補強が行える。
【0027】
上記プレキャストコンクリート版が上記角形鋼管柱1の上記面部側に対面する鋼板を備えていると、上記座屈受け補強板3をより強固にして柱脚を補強することができる。
【0028】
そして、上記の隣り合う座屈受け補強板3は、連結部材4を介して相互に連結されるので、連結部材4を用いて簡単かつ確実に角形鋼管柱1を座屈受け補強板3によって囲うことができる。
【0029】
なお、角形鋼管柱1の各角部に配置される連結部材4は、座屈受け補強板3の高さと同程度の長さの1本物であってもよいし、座屈受け補強板3の高さよりも低い長さの物を複数本互いに離間させて配置されたものでもよい。
【0030】
(実施形態2)
図2に他の実施形態の柱脚補強構造を示す。なお、上記実施形態1と同様の部材には、同一の符号を付記して説明を省略する。
【0031】
この実施形態の柱脚補強構造は、2枚の板部6aが山形に位置する二辺部材としての等辺山形鋼6が、上記角形鋼管柱1の四か所の角部の近傍の上記面部に、上記2枚の板部6aを当てて配置されている。そして、上記板部6aを介して上記座屈受け補強板3が各面部に対向して上記角形鋼管柱1を囲み、座屈受け補強板3と上記角形鋼管柱1の上記面部との間に上記板部6aの厚みによる隙間Gが形成されている。なお、上記二辺部材(等辺山形鋼6)は、座屈受け補強板3の高さと同程度の長さに限るものではない。
【0032】
また、隣り合う座屈受け補強板3は、連結部材4Aを介して締結部材5により相互に固定されている。上記連結部材4Aは等辺山形鋼からなる。この等辺山形鋼の各板部には、座屈受け補強板3の上記インサートナットの配置間隔に合致する間隔で複数のボルト挿通孔が形成されている。また、上記締結部材5としてのボルトは、上記ボルト挿通孔に通されて上記インサートナットに螺着される。これにより、4個の座屈受け補強板3が4個の連結部材4Aを介して相互に直角方向に引き合って固定される。
【0033】
上記構成によれば、上記等辺山形鋼6の上記板部6aの厚みによって、上記座屈受け補強板3と上記角形鋼管柱1の表面部との間に一定の隙間Gを簡単に形成することができる。また、上記等辺山形鋼6は汎用の部材であるため、素材コストを低減できる。さらに、上記等辺山形鋼6によって、上記角形鋼管柱1の角部の補強も図れる。また、連結部材4Aとして等辺山形鋼を用いると、角鋼管である連結部材4を用いる構成に比べて鋼材量を少なくできる。
【0034】
なお、各座屈受け補強板3の横長さは、角形鋼管柱1の幅に隙間Gの2倍の長さを足し合わせた寸法とすることに限らず、
図3に示すように、連結部材4Aに届かない短い横長さとすることができる。
【0035】
また、この実施形態2において、連結部材4Aに代えて連結部材4を用いる構成とすることもできる。なお、実施形態1において、連結部材4に代えて連結部材4Aを用いることができる。
【0036】
(実施形態3)
図4に他の実施形態の柱脚補強構造を示す。なお、上記実施形態1と同様の部材には、同一の符号を付記して説明を省略する。
【0037】
この実施形態の柱脚補強構造は、2枚の板部7aが回動自在に連結された蝶番7によって隣り合う座屈受け補強板3が繋がっており、且つ上記蝶番7が上記角形鋼管柱1の上記角部の近傍の上記面部に上記2枚の板部7aを当てて位置している。そして、蝶番7によって繋がれた隣り合う2個の座屈受け補強板3が、各角形鋼管柱1に対して2セット適用されることで、上記板部7aを介して上記座屈受け補強板3が上記面部に対向して上記角形鋼管柱1を囲み、上記座屈受け補強板3と上記角形鋼管柱1の上記面部との間に上記板部7aの厚みによる隙間Gが形成される。
【0038】
蝶番7は、座屈受け補強板3を製作する際にコンクリート部にビス等を用いて仮固定しておくことで、硬化時にコンクリートに固定させることができる。或いは、座屈受け補強板3が上記鋼板を有する構成であれば、座屈受け補強板3の製作後において、上記鋼板にビス留め固定することもできる。また、蝶番7は、座屈受け補強板3の高さと同程度の長さの1本物であってもよいし、座屈受け補強板3の高さよりも低い長さの物を互いに間隔をあけて複数本用いる構成でもよい。
【0039】
また、この実施形態では、1セットにおける蝶番7によって繋がる一方の座屈受け補強板3の横長さは、他方の座屈受け補強板3の横長さよりも短くされており、この1セットの角形鋼管柱1への装着状態で、当該一方の座屈受け補強板3の側面位置が角形鋼管柱1の面部と面一になる長さになっている。具体的には、一方(短側)の座屈受け補強板3の横長さは、角形鋼管柱1の幅と同程度であり、他方(長側)の座屈受け補強板3の横長さは、角形鋼管柱1の横幅に座屈受け補強板3の2倍厚みおよび隙間Gの2倍幅を加算した程度の長さになっている。そして、各角形鋼管柱1に対して適用される上記2セットは、1セットにおける一方(短側)の座屈受け補強板3の側面を、別のセットにおける他方(長側)の座屈受け補強板3の角形鋼管柱に対向する側の面の縁側に対面させて相互に固定される。このように、上記の例では、蝶番7によって繋がれた2個の座屈受け補強板3からなる2セットが同一形態を有する。そして、これら2セットは、上述の連結部材4等を用いることなく相互に固定できるので、部品数の削減も図れる。
【0040】
一例として、一方(短側)の座屈受け補強板3の角形鋼管柱1に背向する側の面の縁側と他方(長側)の座屈受け補強板3の側面には、それぞれインサートナットが埋め込まれている。そして、上記一方の座屈受け補強板3の角形鋼管柱1に背向する側の面の縁側と他方の座屈受け補強板3の側面と間に連結板8が跨って配置される。上記連結板8には、上記インサートナットの配置位置に合致する間隔でボルト挿通孔が形成されている。上記ボルト挿通孔に通した締結部材5(ボルト)を上記インサートナットにねじ込むことで、1セットにおける一方の座屈受け補強板3と別のセットにおける他方の座屈受け補強板3とが相互に固定される。
【0041】
上記の構成であれば、上記蝶番7の上記板部7aの厚みによって、上記座屈受け補強板3と角形鋼管柱1の面部との間に一定の隙間Gを簡単に形成することができる。また、上記蝶番7によって、上記角形鋼管柱1の角部の補強も図れる。また、上記蝶番7によって繋がる2個の座屈受け補強板3がセットになって提供されるので、座屈受け補強板3の角形鋼管柱1への組付け効率が向上する。一方、隣り合う2個の座屈受け補強板3を畳んで重ねることができるので、当該座屈受け補強板3の作業現場への搬送が効率的に行える。
【0042】
なお、上記一方(短側)の座屈受け補強板3の横長さを、図示の寸法より短くしてもよく、これによって生じる、上記他方(長側)の座屈受け補強板3の角形鋼管柱に対向する側の面の縁側との間にできる隙間に、板状のスペーサーを介在させることで、隙間Gの調整を行うこともできる。また、上記インサートナットに代えて両切ボルトを座屈受け補強板3に埋め込む一方で、上記ボルトに代えて締結部材としてのナットを用いることもできる。
【0043】
また、
図5に示すように、上記他方の座屈受け補強板3の縁側に締結部材(ボルト)5を挿通できるパイプ9Aを埋め込んでおく一方、一方の座屈受け補強板3の側面にインサートナット9Bを埋め込んだ構成とすることもできる。このような構成であれば、締結部材5を上記パイプ9Aに通して上記インサートナット9Bにねじ込むことで、一方の座屈受け補強板3の側面と上記他方の座屈受け補強板3の縁側とを連結固定することができる。
【0044】
また、
図6に示すように、上記一方(短側)の座屈受け補強板3の横長さを短くし、上記蝶番7が位置しない箇所の角部において、二辺部材(等辺山形鋼6等)を設けた構造とすることも可能である。この二辺部材の板部の厚さは、蝶番7の板部7aにより形成される隙間Gの幅と同じとする。
【0045】
また、
図7に示す構成としてもよい。
図7に示す構成は、
図6に示す構成との相違点として、各角形鋼管柱1に対して適用される2セットにおいて、1セットは、2個の座屈受け補強板3がともに短側の座屈受け補強板3からなり、別のセットは、2個の座屈受け補強板3がともに長側の座屈受け補強板3からなっている構造を有する。そして、上記2セットに適用される2本の締結部材5は、互いに交差する方向に配置される。
【0046】
なお、
図4乃至
図7に示した構造は、連結部材4A等を必要としない構造であるが、蝶番7で繋がる隣り合う座屈受け補強板3について、蝶番7を用いずに二辺部材(等辺山形鋼6等)を角形鋼管柱1の角部に配置し、隣り合う座屈受け補強板3を締結部材5や連結板8によって連結する構造とすることもできる。すなわち、隣り合う全ての座屈受け補強板3について、一方の座屈受け補強板3の側面と他方の座屈受け補強板3の縁側とを締結部材5等によって連結固定する構造となる。
【0047】
また、
図8に示す構成としてもよい。
図8に示す構成は、
図7に示す構成との相違点として、各角形鋼管柱1に対して適用される2セットとも座屈受け補強板3の横長さが短くされており、1セットの座屈受け補強板3と別のセットの座屈受け補強板3とが、それらの側面間に配置された連結部材4Aを介して相互に連結される構造を有する。かかる構造は、隣り合う座屈受け補強板3の全部ではなく一部が連結部材4A等を介して連結された構造ともいえる。
【0048】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 :角形鋼管柱
2 :床スラブコンクリート
3 :座屈受け補強板
4 :連結部材
4A :連結部材
5 :締結部材
6 :等辺山形鋼(二辺部材)
6a :板部
7 :蝶番
7a :板部
8 :連結板
9A :パイプ
9B :インサートナット
11 :柱脚部
11a :ベースプレート
31 :鉄筋
G :隙間