(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】ハイブリッド動力伝達機構
(51)【国際特許分類】
B60K 6/365 20071001AFI20250303BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20250303BHJP
B60K 6/38 20071001ALI20250303BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20250303BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20250303BHJP
B60K 6/383 20071001ALI20250303BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20250303BHJP
B60W 20/30 20160101ALI20250303BHJP
B60W 20/40 20160101ALI20250303BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20250303BHJP
F16H 3/72 20060101ALI20250303BHJP
B60L 50/16 20190101ALN20250303BHJP
【FI】
B60K6/365
B60K6/445 ZHV
B60K6/38
B60W10/10 900
B60W10/02 900
B60K6/383
B60K6/40
B60W20/30
B60W20/40
B60K17/04 G
F16H3/72 A
B60L50/16
(21)【出願番号】P 2021123457
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柳生 壽美夫
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-019911(JP,A)
【文献】特開平05-319110(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159625(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0164560(US,A1)
【文献】特表2013-510027(JP,A)
【文献】特開2017-013682(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194419(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00-10/30,20/00-20/50
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
F16H 3/00- 3/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
ロータとステータとを有するモータ・ジェネレータと、
前記エンジン及び/又は前記モータ・ジェネレータからの動力が伝達される被動機と、
太陽歯車と、内歯車と、前記太陽歯車及び前記内歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を前記太陽歯車回りに回転可能に支持する遊星キャリア軸と、を有する遊星歯車機構と、
第1クラッチと、
第2クラッチと、
を備え、
前記遊星キャリア軸は、前記遊星歯車の回転軸方向の一方側と他方側に延伸し、前記一方側に前記エンジンの動力を出力する第1軸が接続され、前記他方側に前記被動機に動力を入力する第2軸が接続され、
前記内歯車は、前記ロータと接続され、
前記第1クラッチは、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容する接続状態と、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容しない遮断状態と、に切り替え可能であり、
前記第2クラッチは、前記太陽歯車の回転を許容する許容状態と、前記太陽歯車の回転を許容しない阻止状態と、に切り替え可能で
あり、
前記第1クラッチが前記接続状態にあるときに前記内歯車の回転を減速して前記第1軸に伝達する変速機構を備えているハイブリッド動力伝達機構。
【請求項2】
エンジンと、
ロータとステータとを有するモータ・ジェネレータと、
前記エンジン及び/又は前記モータ・ジェネレータからの動力が伝達される被動機と、
太陽歯車と、内歯車と、前記太陽歯車及び前記内歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を前記太陽歯車回りに回転可能に支持する遊星キャリア軸と、を有する遊星歯車機構と、
第1クラッチと、
第2クラッチと、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記遊星キャリア軸は、前記遊星歯車の回転軸方向の一方側と他方側に延伸し、前記一方側に前記エンジンの動力を出力する第1軸が接続され、前記他方側に前記被動機に動力を入力する第2軸が接続され、
前記内歯車は、前記ロータと接続され、
前記第1クラッチは、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容する接続状態と、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容しない遮断状態と、に切り替え可能であり、
前記第2クラッチは、前記太陽歯車の回転を許容する許容状態と、前記太陽歯車の回転を許容しない阻止状態と、に切り替え可能で
あり、
前記制御装置は、
前記モータ・ジェネレータを、前記エンジンを始動させる始動モータとして作動させるときは、前記第1クラッチを前記接続状態とし且つ前記第2クラッチを前記許容状態とし、
前記モータ・ジェネレータを、前記エンジンの動力を補助するアシストモータ又はエンジンの動力により発電するジェネレータとして作動させるときは、前記第1クラッチを前記遮断状態とし且つ前記第2クラッチを前記阻止状態とするハイブリッド動力伝達機構。
【請求項3】
エンジンと、
ロータとステータとを有するモータ・ジェネレータと、
前記エンジン及び/又は前記モータ・ジェネレータからの動力が伝達される被動機と、
太陽歯車と、内歯車と、前記太陽歯車及び前記内歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を前記太陽歯車回りに回転可能に支持する遊星キャリア軸と、を有する遊星歯車機構と、
第1クラッチと、
第2クラッチと、
を備え、
前記遊星キャリア軸は、前記遊星歯車の回転軸方向の一方側と他方側に延伸し、前記一方側に前記エンジンの動力を出力する第1軸が接続され、前記他方側に前記被動機に動力を入力する第2軸が接続され、
前記内歯車は、前記ロータと接続され、
前記第1クラッチは、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容する接続状態と、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容しない遮断状態と、に切り替え可能であり、
前記第2クラッチは、前記太陽歯車の回転を許容する許容状態と、前記太陽歯車の回転を許容しない阻止状態と、に切り替え可能で
あり、
前記第1クラッチ及び前記第2クラッチは、一方向クラッチであり、
前記ロータは、前記モータ・ジェネレータが前記エンジンを始動させる始動モータとして作動するとき第1方向に回転し、前記モータ・ジェネレータが前記エンジンの動力を補助するアシストモータ又は前記エンジンの動力により発電するジェネレータとして作動するとき第2方向に回転し、
前記第1クラッチは、前記ロータが前記第1方向に回転したときは前記接続状態となり、前記ロータが前記第2方向に回転したときは前記遮断状態となり、
前記第2クラッチは、前記ロータが前記第1方向に回転したときは前記許容状態となり、前記ロータが前記第2方向に回転したときは前記阻止状態となるハイブリッド動力伝達機構。
【請求項4】
前記変速機構は、前記第1クラッチが接続状態にあるときに前記第1軸の回転を増速して前記内歯車に伝達可能である請求項
1に記載のハイブリッド動力伝達機構。
【請求項5】
前記変速機構は、第1歯車と、前記第1歯車と接続されて前記第1歯車と同期して回転する第2歯車と、前記第2歯車よりも歯数が多く且つ前記第2歯車と噛み合う第3歯車と、を有し、
前記第1歯車は、前記内歯車と噛み合い、
前記第3歯車は、前記第1クラッチを介して前記第1軸と接続されている請求項
1又は4に記載のハイブリッド動力伝達機構。
【請求項6】
前記内歯車は、第1内歯と第2内歯とを有し、
前記第1内歯は、前記第1歯車と噛み合い、
前記第2内歯は、前記遊星歯車と噛み合う請求項
5に記載のハイブリッド動力伝達機構。
【請求項7】
前記第1クラッチは、前記ロータが前記第1方向に回転したとき、前記第1軸の回転数が所定回転数に達するまでは前記接続状態となり、前記第1軸の回転数が所定回転数に達したとき前記遮断状態となる請求項
3に記載のハイブリッド動力伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ・ジェネレータとエンジンとの組み合わせの動力を被動機に伝達することができるハイブリッド動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されたハイブリッド動力伝達機構が知られている。
特許文献1に開示されたハイブリッド動力伝達機構は、エンジンと、エンジンに設けられたクランク軸と、モータ・ジェネレータと、モータ・ジェネレータの動力が伝達される被動機と、被動機に設けられた入力軸と、クランク軸に連結されたフライホイールと、フライホイールと入力軸とを連結する弾性体カップリングと、モータ・ジェネレータに設けられ且つフライホイールに連結されたロータと、備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたハイブリッド動力伝達機構によれば、モータ・ジェネレータとエンジンとの組み合わせの動力を被動機に伝達することができる。しかしながら、このハイブリッド動力伝達機構は、モータ・ジェネレータがエンジンを始動させる始動モータとして機能する状態と、モータ・ジェネレータがエンジンの動力を補助するアシストモータ又はエンジンの動力により発電するジェネレータとして機能する状態とを切り替え可能な構成を備えているものではない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、モータ・ジェネレータが始動モータとして機能する状態と、モータ・ジェネレータがアシストモータ又はジェネレータとして機能する状態とを、容易に且つ確実に切り替えることができるハイブリッド動力伝達機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が上記課題を解決するために講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の一態様に係るハイブリッド動力伝達機構は、エンジンと、ロータとステータとを有するモータ・ジェネレータと、前記エンジン及び/又は前記モータ・ジェネレータからの動力が伝達される被動機と、太陽歯車と、内歯車と、前記太陽歯車及び前記内歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を前記太陽歯車回りに回転可能に支持する遊星キャリア軸と、を有する遊星歯車機構と、第1クラッチと、第2クラッチと、を備え、前記遊星キャリア軸は、前記遊星歯車の回転軸方向の一方側と他方側に延伸し、前記一方側に前記エンジンの動力を出力する第1軸が接続され、前記他方側に前記被動機に動力を入力する第2軸が接続され、前記内歯車は、前記ロータと接続され、前記第1クラッチは、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容する接続状態と、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容しない遮断状態と、に切り替え可能であり、前記第2クラッチは、前記太陽歯車の回転を許容する許容状態と、前記太陽歯車の回転を許容しない阻止状態と、に切り替え可能であり、前記第1クラッチが前記接続状態にあるときに前記内歯車の回転を減速して前記第1軸に伝達する変速機構を備えている。
【0007】
本発明の一態様に係るハイブリッド動力伝達機構は、エンジンと、ロータとステータとを有するモータ・ジェネレータと、前記エンジン及び/又は前記モータ・ジェネレータからの動力が伝達される被動機と、太陽歯車と、内歯車と、前記太陽歯車及び前記内歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を前記太陽歯車回りに回転可能に支持する遊星キャリア軸と、を有する遊星歯車機構と、第1クラッチと、第2クラッチと、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチの動作を制御する制御装置と、を備え、前記遊星キャリア軸は、前記遊星歯車の回転軸方向の一方側と他方側に延伸し、前記一方側に前記エンジンの動力を出力する第1軸が接続され、前記他方側に前記被動機に動力を入力する第2軸が接続され、前記内歯車は、前記ロータと接続され、前記第1クラッチは、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容する接続状態と、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容しない遮断状態と、に切り替え可能であり、前記第2クラッチは、前記太陽歯車の回転を許容する許容状態と、前記太陽歯車の回転を許容しない阻止状態と、に切り替え可能であり、前記制御装置は、前記モータ・ジェネレータを、前記エンジンを始動させる始動モータとして作動させるときは、前記第1クラッチを前記接続状態とし且つ前記第2クラッチを前記許容状態とし、前記モータ・ジェネレータを、前記エンジンの動力を補助するアシストモータ又はエンジンの動力により発電するジェネレータとして作動させるときは、前記第1クラッチを前記遮断状態とし且つ前記第2クラッチを前記阻止状態とする。
【0008】
本発明の一態様に係るハイブリッド動力伝達機構は、エンジンと、ロータとステータとを有するモータ・ジェネレータと、前記エンジン及び/又は前記モータ・ジェネレータからの動力が伝達される被動機と、太陽歯車と、内歯車と、前記太陽歯車及び前記内歯車と噛み合う遊星歯車と、前記遊星歯車を前記太陽歯車回りに回転可能に支持する遊星キャリア軸と、を有する遊星歯車機構と、第1クラッチと、第2クラッチと、を備え、前記遊星キャリア軸は、前記遊星歯車の回転軸方向の一方側と他方側に延伸し、前記一方側に前記エンジンの動力を出力する第1軸が接続され、前記他方側に前記被動機に動力を入力する第2軸が接続され、前記内歯車は、前記ロータと接続され、前記第1クラッチは、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容する接続状態と、前記第1軸と前記内歯車との間の動力の伝達を許容しない遮断状態と、に切り替え可能であり、前記第2クラッチは、前記太陽歯車の回転を許容する許容状態と、前記太陽歯車の回転を許容しない阻止状態と、に切り替え可能であり、前記第1クラッチ及び前記第2クラッチは、一方向クラッチであり、前記ロータは、前記モータ・ジェネレータが前記エンジンを始動させる始動モータとして作動するとき第1方向に回転し、前記モータ・ジェネレータが前記エンジンの動力を補助するアシストモータ又は前記エンジンの動力により発電するジェネレータとして作動するとき第2方向に回転し、前記第1クラッチは、前記ロータが前記第1方向に回転したときは前記接続状態となり、前記ロータが前記第2方向に回転したときは前記遮断状態となり、前記第2クラッチは、前記ロータが前記第1方向に回転したときは前記許容状態となり、前記ロータが前記第2方向に回転したときは前記阻止状態となる。
【0009】
好ましくは、前記変速機構は、前記第1クラッチが接続状態にあるときに前記第1軸の回転を増速して前記内歯車に伝達可能である。
好ましくは、前記変速機構は、第1歯車と、前記第1歯車と接続されて前記第1歯車と同期して回転する第2歯車と、前記第2歯車よりも歯数が多く且つ前記第2歯車と噛み合う第3歯車と、を有し、前記第1歯車は、前記内歯車と噛み合い、前記第3歯車は、前記第1クラッチを介して前記第1軸と接続されている。
好ましくは、前記内歯車は、第1内歯と第2内歯とを有し、前記第1内歯は、前記第1歯車と噛み合い、前記第2内歯は、前記遊星歯車と噛み合う。
【0010】
好ましくは、前記第1クラッチは、前記ロータが前記第1方向に回転したとき、前記第1軸の回転数が所定回転数に達するまでは前記接続状態となり、前記第1軸の回転数が所定回転数に達したとき前記遮断状態となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るハイブリッド動力伝達機構は、第1クラッチ及び第2クラッチを切り替えることによって、モータ・ジェネレータが始動モータとして機能する状態と、モータ・ジェネレータがアシストモータ又はジェネレータとして機能する状態とを、容易に且つ確実に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るハイブリッド動力伝達機構の一例を示す全体構成図である。
【
図2】モータ・ジェネレータを、エンジンを始動させる始動モータとして作動させる場合の動力伝達機構の動作(第1動作)を説明する図である。
【
図3】モータ・ジェネレータを、エンジンの動力を補助するアシストモータ又はエンジンの動力により発電するジェネレータとして作動させる場合の動力伝達機構の動作(第2動作)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係るハイブリッド動力伝達機構1(以下、単に「動力伝達機構1」という場合がある)の一例を示す全体構成図である。以下、説明の便宜上、エンジン2から被動機4に向かう方向(
図1の右方向)を一方と称し、被動機4からエンジン2に向かう方向(
図1の左方向)を他方と称する。
【0014】
動力伝達機構1は、エンジン2、モータ・ジェネレータ3、被動機4、遊星歯車機構5を備えている。
エンジン2は、ディーゼルエンジン又はガソリンエンジン等である。エンジン2には、当該エンジン2の動力を出力するクランク軸2aが設けられている。クランク軸2aは、被動機4側(一方側)を向いて突出している
モータ・ジェネレータ3は、ロータ31とステータ32とを有している。ステータ32は、円環状に構成されている。ロータ31は、ステータ32の内周側に配置されている。ロータ31は、ステータ32に対して相対的に回転する。
【0015】
モータ・ジェネレータ3としては、例えば、永久磁石埋込式の三相交流同期モータが使用されるが、これに限定はされない。例えば、ロータにコイルを巻いた積層鋼板を嵌着した同期モータ等であってもよい。また、モータ・ジェネレータ3は、交流モータでも直流モータでもよい。
モータ・ジェネレータ3は、ステータ32のコイルに電流を流すことによって、ロータ
31が回転し、モータとして機能する。また、モータ・ジェネレータ3は、ロータ31を回転させることによって、ステータ32に起電力が生じ、ジェネレータとして機能する。
【0016】
動力伝達機構1において、モータ・ジェネレータ3は、エンジン2を始動させる始動モータとして作動することができる。また、モータ・ジェネレータ3は、エンジン2の動力を補助するアシストモータとして作動することができる。さらに、モータ・ジェネレータ3は、エンジン2の動力により発電するジェネレータとして作動することができる。
被動機4は、エンジン2及び/又はモータ・ジェネレータ3からの動力を受けて駆動する。被動機4は、例えば油圧ポンプであり、具体的には静油圧式トランスミッションの油圧ポンプを例示することができる。但し、被動機4は、油圧ポンプには限定されず、トランスミッション等であってもよい。
【0017】
遊星歯車機構5は、太陽歯車51、内歯車52、遊星歯車53、遊星キャリア軸54を有している。遊星歯車機構5は、モータ・ジェネレータ3のロータ31の内周側に配置されている。内歯車52の外周面は、ロータ31の内周面と接続されている。これにより、内歯車52とロータ31とは一体的に回転可能である。内歯車52の内周面は、軸受6により支持されている。内歯車52は、第1内歯52aと第2内歯52bとを有している。第1内歯52aと第2内歯52bとは、一方側と他方側とに並んで配置されている。第1内歯52aは、他方側(エンジン2側)に設けられている。第2内歯52bは、一方側(被動機4側)に設けられている。第1内歯52aと第2内歯52bとは一体的に回転する。
【0018】
太陽歯車51は、内歯車52の内周側に配置されている。太陽歯車51の回転中心(回転軸)と、ロータ31の回転中心(回転軸)と、内歯車52の回転中心(回転軸)とは、同一直線上に配置されている。遊星歯車53は、太陽歯車51及び内歯車52(内歯車52の第2内歯52b)と噛み合っている。遊星キャリア軸54は、遊星歯車53を太陽歯車51回りに回転可能に支持している。
【0019】
遊星キャリア軸54は、遊星歯車53の回転軸方向の一方側と他方側に延伸している。本実施形態の場合、遊星キャリア軸54は、遊星歯車53の中心を貫通して、一方側と他方側に延伸している。以下、遊星キャリア軸54の、遊星歯車53の回転軸方向の一方側に延伸した軸を第1延伸軸54aという。遊星キャリア軸54の、遊星歯車53の回転軸方向の他方側に延伸した軸を第2延伸軸54bという。尚、遊星キャリア軸54についての遊星歯車53の回転軸方向の一方側と他方側の「一方」、「他方」という表現は、段落[0013]で説明した「一方」、「他方」とは逆方向となっている。
【0020】
第1延伸軸54aには、エンジン2の動力を出力する第1軸7が接続されている。本実施形態の場合、第1軸7は、エンジン2のクランク軸2aと接続されている。但し、第1軸7は、エンジン2のクランク軸2aであってもよい。第1延伸軸54aと第1軸7とは、直接的に接続されていてもよいし、他の軸又は機構等を介して間接的に接続されていてもよい。
【0021】
第2延伸軸54bには、被動機4に動力を入力する第2軸8が接続されている。本実施形態の場合、第2軸8は被動機4の入力軸である。但し、第2軸8は、被動機4の入力軸と接続された他の軸であってもよい。第2延伸軸54bと第2軸8とは、直接的に接続されていてもよいし、他の軸又は機構等を介して間接的に接続されていてもよい。
動力伝達機構1は、第1クラッチ9と第2クラッチ10とを備えている。第1クラッチ9及び第2クラッチ10は、電磁クラッチから構成されている。但し、第1クラッチ9及び第2クラッチ10は、電磁クラッチには限定されない。
【0022】
第1クラッチ9は、第1軸7と内歯車52との間の動力の伝達を許容する接続状態と、第1軸7と内歯車52との間の動力の伝達を許容しない遮断状態と、に切り替え可能である。この第1クラッチ9の切り替え動作は、後述する制御装置17の制御により実行することができる。
第2クラッチ10は、太陽歯車51の回転を許容する許容状態と、太陽歯車51の回転を許容しない阻止状態と、に切り替え可能である。この第2クラッチ10の切り替え動作は、後述する制御装置17の制御により実行することができる。第2クラッチ10は、接続状態と分離状態とが切り替わる2つの部分の一方が接地しており、他方が太陽歯車51の中心軸と接続されている。これにより、第2クラッチ10は、接続すると阻止状態とな
り、分離すると許容状態となる。
【0023】
動力伝達機構1は、第1クラッチ9が接続状態にあるときに、内歯車52の回転を減速して第1軸7に伝達する変速機構12を備えている。
変速機構12は、第1歯車13、第2歯車14、第3歯車15を有している。第1歯車13は、内歯車52の第1内歯52aと噛み合っている。第2歯車14は、入力ギア軸16を介して第1歯車13と接続されている。入力ギア軸16は、第1軸7と平行に配置されている。第2歯車14は、第1歯車13と同期して回転する。第1歯車13の歯数は、第2歯車14の歯数よりも多い。第3歯車15は、第2歯車14と噛み合っている。第3歯車15の歯数は、第2歯車14の歯数よりも多い。
【0024】
第3歯車15は、第1クラッチ9を介して第1軸7と接続されている。第1クラッチ9が接続状態にあるとき、第3歯車15の回転が第1軸7に伝達される。第1クラッチ9が遮断状態にあるとき、第3歯車15の回転は第1軸7に伝達されない。
第1クラッチ9が接続状態にあるとき、内歯車52が回転すると、第1内歯52aと噛み合う第1歯車13が回転する。第1歯車13が回転すると、第2歯車14が同期して同じ速度で回転する。第2歯車14が回転すると、第2歯車14と噛み合う第3歯車15が回転する。このとき、第3歯車15の回転速度(回転数)は、第2歯車14の回転速度(回転数)に比べて減少する。第3歯車15の回転は、第1クラッチ9を介して第1軸7に伝達される。これにより、内歯車52の回転が減速されて第1軸7に伝達される。
【0025】
動力伝達機構1は、第1クラッチ9及び第2クラッチ10の動作を制御する制御装置17を備えている。制御装置17は、CPU等の演算部と、RAM及びROM等の記憶部とを備えたコンピュータである。制御装置17は、記憶部に記憶された制御プログラム等に従って第1クラッチ9及び第2クラッチ10の動作を制御する。制御装置17は、エンジン2の駆動の制御を行うこともできる。また、制御装置17は、モータ・ジェネレータ3の回転動作の制御を行うこともできる。上記した各制御を行う制御装置17は、1つの装置から構成してもよいし、複数の装置から構成してもよい。
【0026】
制御装置17は、第1クラッチ9を接続状態とし且つ第2クラッチ10を許容状態とした状態と、第1クラッチ9を遮断状態とし且つ第2クラッチ10を阻止状態とした状態と切り替えることができる。
制御装置17は、モータ・ジェネレータ3を、エンジン2を始動させる始動モータとして作動させる場合、第1クラッチ9を接続状態とし且つ第2クラッチ10を許容状態とする。以下、
図2を参照しながら、モータ・ジェネレータ3を、エンジン2を始動させる始動モータとして作動させる場合の動力伝達機構1の動作(第1動作)について説明する。
図2は、動力伝達機構1を
一方側(
図1の右側)から見たときの図である。
【0027】
モータ・ジェネレータ3を、エンジン2を始動させる始動モータとして作動させる場合、ステータ32のコイルに電流を流してロータ31を回転させる。このときのロータ31の回転方向を第1方向(
図2の矢印A1参照)という。第1方向は、動力伝達機構1を
一方側(
図1の右側)から見たときに、左回り(反時計回り)の方向である。
ロータ31が第1方向に回転すると、ロータ31に接続された内歯車52が第1方向に回転する。内歯車52が第1方向に回転すると、第1歯車13及び第2歯車14も第1方向に回転する。第2歯車14が第1方向に回転すると、第3歯車15は第1方向と反対方向である第2方向(
図2の矢印A2方向)に回転する。第2方向は、動力伝達機構1を他方側(
図1の右側)から見たときに、右回り(時計回り)の方向である。ここで、第1クラッチ9は接続状態にあるため、第3歯車15の回転は、第1クラッチ9を介して第1軸7に伝達される。これにより、第1軸7が第2方向に回転し、エンジン2が始動する。
【0028】
上記した第1動作において、ロータ31及び内歯車52の回転は変速機構12によって減速されて第1軸7に伝達されるため、モータ・ジェネレータ3の回転トルクに比べて第1軸7の回転トルクが増加する。そのため、第1軸7から高いトルクの回転動力がエンジン2に入力され、エンジン2を確実に始動させることが可能となる。これにより、モータ・ジェネレータ3を始動モータとして作動させるために高い出力トルクを有する大型のモータ・ジェネレータ3を使用する必要がなく、モータ・ジェネレータ3を小型化することが可能となる。
【0029】
尚、上記した第1動作が実行されるとき、第2クラッチ10は許容状態にあるため、太陽歯車51はフリーで回転し、遊星歯車53は太陽歯車51の周囲を第2方向に公転する。これにより、遊星キャリア軸54が第2方向に回転し、遊星キャリア軸54と共に第2軸8が第2方向に回転する。第2軸8は、太陽歯車51がフリーで回転することにより、遊星歯車53が無い場合と同様に(遊星歯車53によって回転が規制されることなく)回転する。第2軸8の回転動力は被動機4に入力され、被動機4が駆動する。
【0030】
制御装置17は、モータ・ジェネレータ3を、エンジン2の動力を補助するアシストモータ又はエンジン2の動力により発電するジェネレータとして作動させるときは、第1クラッチ9を遮断状態とし且つ第2クラッチ10を阻止状態とする。以下、
図3を参照しながら、モータ・ジェネレータ3を、エンジン2の動力を補助するアシストモータ又はエンジン2の動力により発電するジェネレータとして作動させる場合の動力伝達機構1の動作(第2動作)について説明する。
図3は、動力伝達機構1を
一方側(
図1の右側)から見たときの図である。
【0031】
モータ・ジェネレータ3を、エンジン2の動力を補助するアシストモータ又はエンジン2の動力により発電するジェネレータとして作動させる場合、エンジン2は駆動状態にある。エンジン2の動力により第1軸7が第
2方向(
図3の矢印A3方向)に回転する。第1軸7の回転は、遊星キャリア軸54に伝達される。このとき、第1クラッチ9は遮断状態にあるため、エンジン2の動力は第1軸7から変速機構12には伝達されない。遊星キャリア軸54は、第1軸7の回転を受けて第2方向に回転し、遊星歯車53が太陽歯車51の回りを第2方向(
図3の矢印A4の方向)に公転する。このとき、第2クラッチ10は阻止状態にあるため、太陽歯車51は回転しない。遊星キャリア軸54が第2方向に回転すると、遊星キャリア軸54と共に第2軸8が第2方向(
図3の矢印A3方向)に回転する。第2軸8の回転動力は被動機4に入力され、被動機4が駆動する。
【0032】
ここで、ステータ32のコイルに電流を流してロータ31を第1方向に回転させると、ロータ31の回転は内歯車52から遊星歯車53を介して遊星キャリア軸54に伝達される。これにより、遊星キャリア軸54と共に第2軸8が第2方向に回転し、第2軸8の回転動力は被動機4に入力される。そのため、被動機4は、エンジン2の動力に加えて、モータ・ジェネレータ3のロータ31の回転による動力を受けて回転する。つまり、モータ・ジェネレータ3を、エンジン2の動力を補助するアシストモータとして作動させることができる。また、ロータ31の回転によってステータ32のコイルに起電力が生じるため、モータ・ジェネレータ3をエンジン2の動力により発電するジェネレータとして作動させることができる。
【0033】
また、動力伝達機構1において、第1クラッチ9を接続状態として、エンジン2を駆動して第1軸7を回転させると、第1軸7の回転は、変速機構12によって増速されて内歯車52及びロータ31に伝達される。つまり、変速機構12は、第1クラッチ9が接続状態にあるときに、第1軸7の回転を増速して内歯車52及びロータ31に伝達可能である。そのため、エンジン2の回転速度(回転数)に比べてモータ・ジェネレータ3の回転速度(回転数)が増加し、モータ・ジェネレータ3をエンジン2よりも高速回転で駆動することができる。そのため、モータ・ジェネレータ3を大型化して高速回転に対応する必要がなく、モータ・ジェネレータ3を小型化することができる。これにより、モータ・ジェネレータ3を高速回転するために必要な電流量が少なくなり、モータ・ジェネレータ3の発熱が減少する。その結果、モータ・ジェネレータ3の効率が向上するとともに、モータ・ジェネレータ3を冷却するための冷却装置を小型化することができる。
【0034】
上述したように、第1クラッチ9は、動力伝達機構1において、モータ・ジェネレータ3のスタータ機能(エンジン2を始動する始動モータとしての機能)の入り切りの切り替えを行うことができる。具体的には、第1クラッチ9を接続状態とすると、スタータ機能を実行することができる。第1クラッチ9を遮断状態とすると、スタータ機能を解除することができる。
【0035】
また、第2クラッチ10は、動力伝達機構1において、モータ・ジェネレータ3のアシ
スト機能(エンジン2の動力を補助するアシストモータとしての機能)及びジェネレータ機能(エンジン2の動力により発電するジェネレータとしての機能)の入り切りの切り替えを行うことができる。具体的には、第2クラッチ10を阻止状態とすると、アシスト機能及びジェネレータ機能を実行することができる。第2クラッチ10を許容状態とすると、アシスト機能及びジェネレータ機能を解除することができる。
【0036】
また、第2クラッチ10は、動力伝達機構1において、エンジン2とモータ・ジェネレータ3とが一定の回転速度比で同期回転する状態と、エンジン2とモータ・ジェネレータ3とが非同期回転する状態との切り替えを行うことができる。具体的には、第2クラッチ10を阻止状態とすると、エンジン2とモータ・ジェネレータ3とが一定の回転速度比で同期回転する。第2クラッチ10を許容状態とすると、エンジン2とモータ・ジェネレータ3とが非同期回転する。
【0037】
動力伝達機構1は、パラレルハイブリッド動力伝達機構として使用する場合は、ほぼインライン構成となり、且つ遊星歯車機構5がモータ・ジェネレータ3のロータ31の内周側に配置されているため、コンパクトな構成となる。また、動力伝達機構1は、シリーズハイブリッド動力伝達機構として使用する場合は、第2軸8が不要となるため、更にコンパクトな構成となる。
動力伝達機構1においては、第1クラッチ9及び第2クラッチ10として、回転方向に関わらず回転力を伝達するクラッチを使用してもよいし、一方向にのみ回転力を伝達する一方向クラッチを使用してもよい。
【0038】
第1クラッチ9及び第2クラッチ10として、回転方向に関わらず回転力を伝達するクラッチを使用する構成(第1構成)を採る場合、制御装置17によって第1クラッチ9及び第2クラッチ10の切り替えの制御を行う。
第1クラッチ9及び第2クラッチ10として、一方向にのみ回転力を伝達する一方向クラッチを使用する構成(第2構成)を採る場合、制御装置17の制御に依らずに第1クラッチ9及び第2クラッチ10の切り替えを自動的に行うことができる。以下、この第2構成について詳しく説明する。
【0039】
第1クラッチ9と第2クラッチ10は、回転力を伝達する方向が互いに反対である一方向クラッチが使用される。具体的には、第1クラッチ9は、ロータ31が第1方向(
図2の矢印A1参照)に回転したときは接続状態となり、ロータ31が第2方向(
図3の矢印A5方向)に回転したときは遮断状態となる。第2クラッチ10は、ロータ31が第1方向に回転したときは許容状態となり、ロータ31が第2方向に回転したときは阻止状態となる。
【0040】
上述したように、モータ・ジェネレータ3がエンジン2を始動させる始動モータとして作動するとき、ロータ31は第1方向に回転する(
図2の矢印A1参照)。すると、第1クラッチ9は接続状態となり、第2クラッチ10は許容状態となる。一方、モータ・ジェネレータ3がエンジン2の動力を補助するアシストモータ又はエンジン2の動力により発電するジェネレータとして作動するとき、ロータ31は第1方向に回転する(
図2の矢印A5参照)。すると、第1クラッチ9は遮断状態となり、第2クラッチ10は阻止状態となる。
このように、第2構成によれば、ロータ31の回転方向の切り替えによって、第1クラッチ9及び第2クラッチ10の切り替えを自動的に行うことができる。そのため、制御装置17によってロータ31の回転方向を制御すれば、第1クラッチ9及び第2クラッチ10の切り替え動作を自動的に行うことが可能となる。
【0041】
尚、第1クラッチ9は、ロータ31が第1方向に回転したとき、第1軸7の回転数が所定回転数に達するまでは接続状態となり、第1軸7の回転数が所定回転数に達したとき遮断状態となるように構成されることが好ましい。このような構成を採ることにより、エンジン2が始動するまでは、第1クラッチ9を接続状態としてモータ・ジェネレータ3の回転動力を第1軸7に伝達し、エンジン2が始動して所定回転数に達した後は、第1クラッチ9を遮断状態としてモータ・ジェネレータ3の回転動力が第1軸7に伝達されないようにすることができる。
【0042】
上記実施形態のハイブリッド動力伝達機構1は、以下の効果を奏することができる。
ハイブリッド動力伝達機構1は、エンジン2と、ロータ31とステータ32とを有するモータ・ジェネレータ3と、エンジン2及び/又は前記モータ・ジェネレータ3からの動力が伝達される被動機4と、太陽歯車51と、内歯車52と、太陽歯車51及び内歯車52と噛み合う遊星歯車53と、遊星歯車53を太陽歯車51回りに回転可能に支持する遊星キャリア軸54と、を有する遊星歯車機構5と、第1クラッチ9と、第2クラッチ10と、を備え、遊星キャリア軸54は、遊星歯車53の回転軸方向の一方側と他方側に延伸し、一方側にエンジン2の動力を出力する第1軸7が接続され、他方側に被動機4に動力を入力する第2軸8が接続され、内歯車52はロータ31と接続され、第1クラッチ9は、第1軸7と内歯車52との間の動力の伝達を許容する接続状態と、第1軸7と内歯車52との間の動力の伝達を許容しない遮断状態と、に切り替え可能であり、第2クラッチ10は、太陽歯車51の回転を許容する許容状態と、太陽歯車の回転を許容しない阻止状態と、に切り替え可能である。
【0043】
この構成によれば、第1クラッチ9及び第2クラッチ10を切り替えることによって、モータ・ジェネレータ3が始動モータとして機能する状態と、モータ・ジェネレータ3がアシストモータ又はジェネレータとして機能する状態とを、容易に且つ確実に切り替えることができる。詳しくは、第1クラッチ9を接続状態とし且つ第2クラッチ10を許容状態とすることにより、モータ・ジェネレータ3が始動モータとして機能する状態となる。また、第1クラッチ9を遮断状態とし且つ第2クラッチ10を阻止状態とすることにより、モータ・ジェネレータ3がアシストモータ又はジェネレータとして機能する状態となる。さらに、ハイブリッド動力伝達機構1は、遊星歯車機構5と第1クラッチ9及び第2クラッチ10とを組み合わせて構成されているため、コンパクトな構成により上述の切り替え機能を実現することができる。
【0044】
また、ハイブリッド動力伝達機構1は、第1クラッチ9が接続状態にあるときに内歯車52の回転を減速して第1軸7に伝達する変速機構12を備えている。
この構成によれば、モータ・ジェネレータ3の回転トルクに比べて第1軸7の回転トルクが増加する。そのため、第1軸7から高いトルクの回転動力がエンジン2に入力され、エンジン2を確実に始動させることが可能となる。そのため、モータ・ジェネレータ3を始動モータとして作動させるために高い出力トルクをもつ大型のモータ・ジェネレータ3を使用する必要がなく、モータ・ジェネレータ3を小型化することができる。
また、変速機構12は、第1クラッチ9が接続状態にあるときに第1軸7の回転を増速して内歯車52に伝達可能である。
【0045】
この構成によれば、エンジン2の回転速度(回転数)に比べてモータ・ジェネレータ3の回転速度(回転数)が増加し、モータ・ジェネレータ3をエンジン2よりも高速回転で駆動することができる。そのため、モータ・ジェネレータ3を大型化して高速回転に対応させる必要がなく、モータ・ジェネレータ3を小型化することができる。これにより、モータ・ジェネレータ3の発熱が減少し、モータ・ジェネレータ3の効率向上と、モータ・ジェネレータ3を冷却するための冷却装置の小型化を実現することができる。
また、変速機構12は、第1歯車13と、第1歯車13と接続されて第1歯車13と同期して回転する第2歯車14と、第2歯車14よりも歯数が多く且つ第2歯車14と噛み合う第3歯車15と、を有し、第1歯車13は内歯車52と噛み合い、第3歯車15は第1クラッチ9を介して第1軸7と接続されている。
【0046】
この構成によれば、変速機構12をコンパクトに構成することができるとともに、変速機構12による変速を確実に行うことができる。
また、内歯車52は第1内歯52aと第2内歯52bとを有し、第1内歯52aは第1歯車13と噛み合い、第2内歯52bは遊星歯車53と噛み合う。
この構成によれば、1つの内歯車52によって、第1歯車13との間での動力伝達と遊星歯車53と間での動力伝達とを行うことができるため、ハイブリッド動力伝達機構1を小型化することができる。
【0047】
また、ハイブリッド動力伝達機構1は、第1クラッチ9及び第2クラッチ10の動作を
制御する制御装置17を備え、制御装置17は、モータ・ジェネレータ3を、エンジン2を始動させる始動モータとして作動させるときは、第1クラッチ9を接続状態とし且つ第2クラッチ10を許容状態とし、モータ・ジェネレータ3を、エンジン2の動力を補助するアシストモータ又はエンジン2の動力により発電するジェネレータとして作動させるときは、第1クラッチ9を遮断状態とし且つ第2クラッチ10を阻止状態とする。
【0048】
この構成によれば、制御装置17による制御によって、モータ・ジェネレータ3が始動モータとして機能する状態と、モータ・ジェネレータ3がアシストモータ又はジェネレータとして機能する状態とを、確実且つ容易に切り替えることが可能となる。
また、第1クラッチ9及び第2クラッチ10は一方向クラッチであり、ロータ31は、モータ・ジェネレータ3がエンジン2を始動させる始動モータとして作動するとき第1方向に回転し、モータ・ジェネレータ3がエンジン2の動力を補助するアシストモータ又はエンジン2の動力により発電するジェネレータとして作動するとき第2方向に回転し、第1クラッチ9は、ロータ31が第1方向に回転したときは接続状態となり、ロータ31が第2方向に回転したときは遮断状態となり、第2クラッチ10は、ロータ31が第1方向に回転したときは許容状態となり、ロータ31が第2方向に回転したときは阻止状態となる。
【0049】
この構成によれば、ロータ31の回転方向の切り替えによって、第1クラッチ9及び第2クラッチ10の切り替えを自動的に行うことができる。そのため、第1クラッチ9及び第2クラッチ10の切り替え動作を制御装置17の制御に依らずに行うことができる。
また、第1クラッチ9は、ロータ31が第1方向に回転したとき、第1軸7の回転数が所定回転数に達するまでは接続状態となり、第1軸7の回転数が所定回転数に達したとき遮断状態となる。
【0050】
この構成によれば、エンジン2が始動するまでは、モータ・ジェネレータ3の回転動力を第1軸7に伝達し、エンジン2が始動して所定回転数に達した後は、モータ・ジェネレータ3の回転動力が第1軸7に伝達されないようにすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 ハイブリッド動力伝達機構
2 エンジン
3 モータ・ジェネレータ
31 ロータ
32 ステータ
4 被動機
5 遊星歯車機構
51 太陽歯車
52 内歯車
52a 第1内歯
52b 第2内歯
53 遊星歯車
54 遊星キャリア軸
7 第1軸
8 第2軸
9 第1クラッチ
10 第2クラッチ
12 変速機構
13 第1歯車
14 第2歯車
15 第3歯車
17 制御装置