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特許7642479新規なcis-ブテン-1,4-ジオール系ジホスファイト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】新規なcis-ブテン-1,4-ジオール系ジホスファイト
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20250303BHJP
   C07C 45/50 20060101ALI20250303BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20250303BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20250303BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250303BHJP
【FI】
C07F9/6574 Z CSP
C07C45/50
C07C47/02
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021127142
(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2022034532
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】20191440.5
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ゼレント
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】アンナ キアラ サレー
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105801625(CN,A)
【文献】国際公開第2006/082054(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6574
C07C 45/50
C07C 47/02
B01J 31/22
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(I)または構造(II)の化合物。
【化1】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、Rは、-H、-(C-C12)アルキル、-O-(C-C12)アルキルから選択され、前記ラジカルR、R、R、R、R、R、R、Rは、すべて同時に-Buではない。)
【請求項2】
、R、R、Rが-H、-(C-C12)アルキルから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記ラジカルR、R、R、Rがすべて同時に-Buではない、請求項1または請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記ラジカルR、R、R、Rが-Buではない、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
前記ラジカルR、R、R、Rの少なくとも1つが-Hである、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
、R、R、Rが-H、-O-(C-C12)アルキルから選択される、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
前記ラジカルR、R、R、Rの少なくとも1つが-Hである、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
前記構造(I)を有する、請求項1~請求項7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
構造(1)を有する、請求項1~請求項8のいずれか一項記載の化合物。
【化2】
【請求項10】
前記構造(II)を有する、請求項1~請求項7のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
構造(2)を有する、請求項1~請求項7のいずれか一項記載の化合物。
【化3】
【請求項12】
ヒドロホルミル化反応の触媒作用のためのリガンド-金属錯体における請求項1~請求項11のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項13】
a)最初にオレフィンを充填し、
b)請求項1~請求項11のいずれか一項記載の化合物と、Rh、Ru、Co、Irから選択される金属を含む物質とを添加し、
c)HとCOを導入し、
d)前記工程a)~c)の反応混合物を加熱し、前記オレフィンをアルデヒドに転化する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なcis-ブテン-1,4-ジオール系ジホスファイトに関する。
【背景技術】
【0002】
リン含有化合物は、多くの反応(例:水素化、ヒドロシアン化、ヒドロホルミル化)におけるリガンドとして重要な役割を果たす。
【0003】
1つ以上の炭素原子を有するアルデヒドを得るための、触媒存在下でのオレフィン化合物、一酸化炭素および水素間の反応は、ヒドロホルミル化またはオキソ法として知られている。これらの反応で使用される触媒は、多くの場合、元素の周期表の第VIII族の遷移金属の化合物である。既知のリガンドは、例えば、ホスフィン、ホスファイトおよびホスホナイト群の化合物であり、それぞれ3価のリンPIIIを含んでいる。オレフィンのヒドロホルミル化に関する状況の概要は、非特許文献1でよく知ることができる。
【0004】
特許文献1は、二座ホスファイトリガンドの調製方法、およびバックワルド・ハートウィッグ反応でのその使用を記載している。当該リガンドは、Pd触媒によるバックワルド・ハートウィッグ反応において反応活性が増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第105801625A1号
【非特許文献】
【0006】
【文献】R.フランケ、D.セレント、A.ベルナーによる「応用ヒドロホルミル化(Applied Hydroformylation)」、ケミカルレビューズ(Chemical Reviews)、2012年、DOI:10.1021/cr3001803
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的目的は、オレフィンのヒドロホルミル化において選択性が向上した新規なリガンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本目的は、請求項1記載の化合物によって達成される。
下記構造(I)または構造(II)の化合物:
【化1】
【0009】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、Rは、-H、-(C-C12)アルキル、-O-(C-C12)アルキルから選択され、ラジカルR、R、R、R、R、R、R、Rは、すべて同時に-Buではない。)
【0010】
一実施形態では、R、R、R、Rは-H、-(C-C12)アルキルから選択される。
一実施形態では、ラジカルR、R、R、Rはすべて同時に-Buではない。
一実施形態では、ラジカルR、R、R、Rは-Buではない。
一実施形態では、ラジカルR、R、R、Rの少なくとも1つは-Hである。
一実施形態では、R、R、R、Rは-Hである。
一実施形態では、R、R、R、Rは-H、-O-(C-C12)アルキルから選択される。
一実施形態では、ラジカルR、R、R、Rの少なくとも1つは-Hである。
一実施形態では、R、R、R、Rは-Hである。
一実施形態では、化合物は構造(I)を有する。
一実施形態では、化合物は構造(1)を有する。
【化2】
【0011】
一実施形態では、化合物は構造(II)を有する。
一実施形態では、化合物は構造(2)を有する。
【化3】
【0012】
化合物自体と同様に、ヒドロホルミル化反応の触媒作用のための当該化合物の使用も特許請求されている。
ヒドロホルミル化反応の触媒作用のためのリガンド-金属錯体における上記の化合物の使用。
【0013】
さらに、上記の化合物をリガンドとして使用する方法が特許請求されている。
a)最初にオレフィンを充填し、
b)上記の化合物と、Rh、Ru、Co、Irから選択される金属を含む物質とを添加し、
c)HとCOを導入し、
d)前記工程a)~c)の反応混合物を加熱し、前記オレフィンをアルデヒドに転化する工程を含む方法。
【0014】
好ましい実施形態では、金属はRhである。
リガンドは過剰量で使用することもでき、各リガンドがリガンド-金属錯体として結合した形で存在することは、自然にそうなる訳ではない。代わりに、遊離リガンドとして反応混合物中に存在する場合がある。
反応は通常の条件下で行われる。
60℃~160℃の温度と5~70バールの圧力が好ましい。
70℃~140℃の温度と15~60バールの圧力が特に好ましい。
【0015】
本発明に係る方法におけるヒドロホルミル化用反応物は、オレフィンまたはオレフィンの混合物であり、特に、2~24個、好ましくは3~16個、より好ましくは3~12個の炭素原子を有し、かつ末端または内部C-C二重結合を有するモノオレフィン(例:1-プロペン、1-ブテン、2-ブテン、1-または2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-、2-または3-ヘキセン)、プロペンの二量化で得られたCオレフィン混合物(ジプロペン)、ヘプテン、2-または3-メチル-1-ヘキセン、オクテン、2-メチルヘプテン、3-メチルヘプテン、5-メチル-2-ヘプテン、6-メチル-2-ヘプテン、2-エチル-1-ヘキセン、ブテンの二量化で得られたCオレフィン混合物(ジ-n-ブテン、ジイソブテン)、ノネン、2-または3-メチルオクテン、プロペンの三量化で得られたCオレフィン混合物(トリプロペン)、デセン、2-エチル-1-オクテン、ドデセン、プロペンの四量体化またはブテンの三量化で得られたC12オレフィン混合物(テトラプロペンまたはトリブテン)、テトラデセン、ヘキサデセン、ブテンの四量体化で得られたC16オレフィン混合物(テトラブテン)、およびオレフィンの共オリゴマー化によって生成された様々な炭素原子数(好ましくは2~4個)を有するオレフィン混合物である。
【0016】
本発明のリガンドを使用する本発明の方法は、α-オレフィン、末端分岐オレフィン、内部オレフィンおよび内部分岐オレフィンのヒドロホルミル化に使用することができる。
【0017】
本発明は、例示的な実施形態を参照して、以下に詳細に説明されるものとする。
【実施例
【0018】
作業手順
一般的な分析
以下の調製はすべて、標準的なシュレンク技術を使用して不活性ガス下で行われた。溶媒を、使用前に適切な乾燥剤で乾燥させた。
生成物をNMRスペクトル分析によって特徴づけた。化学シフト(δ)をppmで報告する。31P NMRシグナルは次のように表された:SR31P=SRH*(BF31P/BFH)=SRH*0.4048。
【0019】
(Z)-1,4-ビス(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イルオキシ)ブト-2-エン(1)の合成
【化4】
【0020】
0℃に冷却したトルエン(10mL)中にcis-ブテン-1,4-ジオール(0.206g;2.334ミリモル)とトリエチルアミン(1.0mL)を入れた混合物に、トルエン(7mL)中に6-クロロジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(1.253g;5.0ミリモル)を入れた溶液を撹拌しながら滴下した。混合物を室温まで温め、一晩撹拌し、濾過し、濾液を濃縮乾固した。粘稠な残留物を50℃/0.1ミリバールで4時間乾燥し、次にカラムクロマトグラフィーで精製した(ヘキサン/ジクロロメタン=1:1;R=0.5)。収量:0.733g(1.42ミリモル;61%)。
元素分析(C2822の計算値=516.42g/モル):C=65.02(65.12);H=4.22(4.29);P=11.96(12.00)%。
ESI-TOF HRMS、m/z=539.0787;[M+Na];計算値のm/z=539.0784。
31P NMR(CDCl):139.4(s)ppm
H NMR(CDCl):4.49(m,4H);5.79(m,2H);7.21-7.56(m,16H)ppm。
13C NMR(CDCl):60.1(d、CP=5.7Hz);121.8; 125.2;128.8;129.4;130.0;130.9;149.8ppm。
【0021】
(Z)-1,4-ビス(ナフト[1,8-デ][1,3,2]ジオキサホスフィニン-2-イルオキシ)ブト-2-エン(2)の合成
【化5】
【0022】
0℃に冷却したトルエン(5mL)中にcis-ブテン-1,4-ジオール(0.230g;2.613ミリモル)とトリエチルアミン(1.14mL)を入れた混合物に、トルエン(16mL)に2-クロロナフト[1,8-デ][1,3,2]ジオキサホスフィニン(1.232g;5.487ミリモル)を入れた溶液を撹拌しながら滴下した。混合物を室温まで温め、一晩撹拌し、濾過し、濾液を濃縮乾固した。残留物をアセトニトリル(9mL)に入れた。ろ過、濃縮、乾燥により、高粘度の生成物が得られた。収量:0.938g(2.02ミリモル;77%)。
元素分析(C2418の計算値=464.35g/モル):C=62.16(62.08);H=3.95(3.91);P=13.45(13.34)%。
ESI-TOF HRMS、m/z=487.0480;[M+Na];計算値のm/z=487.0471。
31P NMR(CDCl):112.8(s)ppm。
H NMR(CDCl):4.34(m,4H);5.52(m,2H);6.96(m,4H);7.43(m,4H);7.55(m,4H)ppm。
13C NMR(CDCl):59.5(d,CP=15.2Hz);111.9;116.5(d,CP=14.3Hz);122.1;127.3;128.8;135.0;144.2ppm。
【0023】
(Z)-1,4-ビス((4,4,5,5-テトラフェニル-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-イル)オキシ)ブト-2-エン(3)(比較リガンド)の合成
【化6】
【0024】
0℃に冷却したトルエン(2mL)中にcis-ブテン-1,4-ジオール(0.091g;1.032ミリモル)とトリエチルアミン(0.45mL)を入れた混合物に、トルエン(5mL)中に2-クロロ-4,4,5,5-テトラフェニル-1,3,2-ジオキサホスホラン(0.979g;2.271ミリモル)を入れた溶液を撹拌しながら滴下した。混合物を室温まで温め、一晩撹拌し、シリカゲルで覆われたフリットに通して濾過し、次いで蒸発乾固させた。得られた固体を0.1ミリバール/50℃で4.5時間乾燥させ、次に、高温のアセトニトリルから再結晶化した。収量:0.375g(0.428ミリモル;41%)。
元素分析(C5646の計算値=876.92g/モル):C=76.68(76.70);H=5.15(5.29);P=7.03(7.06)%。
ESI-TOF HRMS、m/z=899.2689;[M+Na];計算値のm/z=899.2667。
31P NMR(CDCl):147.6(s)ppm。
H NMR(CDCl):4.14(m,4H);5.21(m,2H);7.07-7.25(m,32H);7.49-7.53(m,8H)ppm。
13C NMR(CDCl):59.0(d,CP=24.3Hz);94.3(d,CP=8.3Hz);127.0(s,br);127.2(s);128.8(s,br);129.7(s);142.3(m); 142.9(s)ppm。
【0025】
触媒作用実験
圧力保持バルブ、ガス流量計、スパージングスターラーおよび圧力ピペットを備えた200mL容量オートクレーブ(スイス レンガウのPremex Reactor AG社製)内でヒドロホルミル化を実施した。水分と酸素の影響を最小限に抑えるために、溶媒として使用するトルエンをPure Solv MD-7システムで精製し、アルゴン下で保管した。基材として使用するオレフィン1-オクテン(Aldrich社製)をナトリウム上で還流加熱し、アルゴン下で蒸留した。触媒前駆体とリガンドのトルエン溶液をアルゴン雰囲気下のオートクレーブ内で混合した。[(acac)Rh(COD)](Umicore社製、acac=アセチルアセトナートアニオン;COD=1,5-シクロオクタジエン)を触媒前駆体として使用した。オートクレーブを(1500rpmで)撹拌しながら、全体のガス圧(合成ガス:Linde社製;H(99.999%):CO(99.997%)=1:1)が42バールで、最終圧力が50バールとなるように加熱した。反応温度に達したら、合成ガスの圧力を48.5バールに上げ、3バールの超過圧力に設定した圧力ピペットを使用して、オレフィンをオートクレーブに圧力注入した。反応を50バールの一定圧力で(オランダのBronkhorst社製の閉ループ圧力コントローラー)4時間にわたって実施した。反応時間の終わりに、オートクレーブを室温に冷却し、撹拌しながら減圧し、アルゴンでフラッシュした。攪拌機のスイッチを切った直後に各反応混合物1mLを取り出し、10mLのペンタンで希釈し、ガスクロマトグラフィーで分析した:HP 5890シリーズIIプラス、PONA、50m×0.2mm×0.5μm。
【0026】
触媒作用実験の結果
[Rh]:100ppm、Rh:L=1:2、圧力:50バール、温度:80℃、時間:4時間。
表1:1-オクテンのヒドロホルミル化
【表1】
【0027】
本発明に係る化合物(1)および(2)は、比較リガンド(3)と比較して選択性の増加を達成した。
実施された実験は、記載された目的が本発明に係る化合物によって達成されることを実証している。