(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】建築用シャッター装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/15 20060101AFI20250303BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
E06B9/15 D
E06B9/17 T
(21)【出願番号】P 2021136157
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2024-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】張 俊偉
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-164852(JP,A)
【文献】特開2016-113820(JP,A)
【文献】特開2005-23720(JP,A)
【文献】特開2004-60307(JP,A)
【文献】特開平10-159462(JP,A)
【文献】特開2004-3314(JP,A)
【文献】特開2013-174071(JP,A)
【文献】特開平9-303064(JP,A)
【文献】特開2021-55415(JP,A)
【文献】特開2020-23844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00-9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の出入口の左右方向両側において上下方向に延在され、左右方向内側へ開放されたレール溝を有する一対のガイドレールと、
左右方向に延在され且つ長手方向両端部が前記レール溝に挿入された複数のスラットを含んで構成されたシャッターカーテンと、
を備え、
前記スラットは、
前記スラットの上下方向中間部を構成し、左右方向から見て屋内外方向一方側へ凸となる円弧状に湾曲され、前記ガイドレールと係合可能に構成されたスラット側係合部を左右方向両端部に有するスラット本体部と、
前記スラット本体部に形成され、前記スラット側係合部に対して左右方向内側に配置され、屋内外方向他方側へ凹んだ凹部と、
前記スラット本体部における前記スラット側係合部と前記凹部との間に貫通形成され、上下方向に延在された逃げ孔と、
を有しており、
前記スラット本体部の上下寸法が、前記逃げ孔の上下寸法よりも大きい建築用シャッター装置。
【請求項2】
前記スラット本体部における前記逃げ孔の上下方向外側部分には、接続部が形成されており、
前記接続部は、上下方向から見て、左右方向外側へ向かうに従い屋内外方向一方側へ曲線状に湾曲している請求項1に記載の建築用シャッター装置。
【請求項3】
前記逃げ孔は、左右方向を幅方向とし且つ上下方向に延在された長孔状に形成されており、
前記逃げ孔の上下方向両端部は、上下方向内側へ開放された半円状に形成されている請求項1又は請求項2に記載の建築用シャッター装置。
【請求項4】
前記逃げ孔の左右方向外側の内周面は、ストッパ面として構成されており、
前記凹部と前記ストッパ面の上端との間の屋内外方向の寸法が、前記凹部と前記ストッパ面の下端との間の屋内外方向の寸法と一致している請求項3に記載の建築用シャッター装置。
【請求項5】
前記ガイドレールは、鋼材を押出成形により形成した押出形鋼で構成されている請求項1~請求項4の何れか1項に記載の建築用シャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用シャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の建築用シャッター装置のシャッターカーテンでは、左右方向に延在された複数のスラットが上下方向に連結されている。このスラットの本体部は、左右方向から見て、屋外側へ凸となる円弧状に湾曲しており、本体部の左右方向両側部分に、屋内側へ凹んだ平板部が形成されている。そして、本体部における左右方向両端部(平板部よりも左右方向外側部分)が、係止フックとして構成されており、係止フックは、ガイドレールの係止部と係止可能に構成されている。これにより、風圧等によって、シャッターカーテンが屋内側又は屋外側へ撓み変形すると、左右方向内側へ変位する係止フックがガイドレールの係止部に当接して、係止フックの左右方向内側への変位が阻止される。したがって、スラットのコストダウンを実現しつつ、スラットのガイドレールからの抜けを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記建築用シャッター装置では、以下に示す点において改善の余地がある。すなわち、上記建築用シャッター装置のスラットでは、上下方向に延在された切込部を平板部と係止フックとの間に形成することで、平板部を係止フックに対して屋内側へ凹ませている。この切込部は、比較的幅の狭いスリット状に形成されると共に、本体部の上下方向全体に亘って形成されている。このため、従来よりも高い風圧がシャッターカーテンに作用したときには、係止フックのガイドレールの係止部への係止時に、切込部の上下方向両端部に応力集中が生じて、スラットの左右方向両側部が、切欠部の上下方向両側において、破断する虞がある。したがって、建築用シャッター装置では、コストダウンを実現しつつ、スラットの長手方向両端部における強度を確保できる構造にすることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、コストダウンを実現しつつ、スラットの長手方向両端部における強度を確保することができる建築用シャッター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、建造物の出入口の左右方向両側において上下方向に延在され、左右方向内側へ開放されたレール溝を有する一対のガイドレールと、左右方向に延在され且つ長手方向両端部が前記レール溝に挿入された複数のスラットを含んで構成されたシャッターカーテンと、を備え、前記スラットは、前記スラットの上下方向中間部を構成し、左右方向から見て屋内外方向一方側へ凸となる円弧状に湾曲され、前記ガイドレールと係合可能に構成されたスラット側係合部を左右方向両端部に有するスラット本体部と、前記スラット本体部に形成され、前記スラット側係合部に対して左右方向内側に配置され、屋内外方向他方側へ凹んだ凹部と、前記スラット本体部における前記スラット側係合部と前記凹部との間に貫通形成され、上下方向に延在された逃げ孔と、を有しており、前記スラット本体部の上下寸法が、前記逃げ孔の上下寸法よりも大きい建築用シャッター装置である。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記スラット本体部における前記逃げ孔の上下方向外側部分には、接続部が形成されており、前記接続部は、上下方向から見て、左右方向外側へ向かうに従い屋内外方向一方側へ曲線状に湾曲している建築用シャッター装置である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記逃げ孔は、左右方向を幅方向とし且つ上下方向に延在された長孔状に形成されており、前記逃げ孔の上下方向両端部は、上下方向内側へ開放された半円状に形成されている建築用シャッター装置である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記逃げ孔の左右方向外側の内周面は、ストッパ面として構成されており、前記凹部と前記ストッパ面の上端との間の屋内外方向の寸法が、前記凹部と前記ストッパ面の下端との間の屋内外方向の寸法と一致している建築用シャッター装置である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ガイドレールは、鋼材を押出成形により形成した押出形鋼で構成されている建築用シャッター装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、コストダウンを実現しつつ、スラットの長手方向両端部における強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る建築用シャッター装置を示す後側から見た裏面図である。
【
図2】
図1に示されるシャッターカーテンのスラットとガイドレールとの嵌合状態を示す上側から見た断面図(
図1の2-2線断面図)である。
【
図3】
図1に示されるシャッターカーテンにおけるスラットの左端部を拡大して示す正面図である。
【
図4】
図3に示されるスラットの連結状態を説明するための右側から見た側面図である。
【
図5】(A)は、
図1に示されるシャッターカーテンに後側への外力が作用したときのスラットとガイドレールとの嵌合状態を示す
図2に対応する断面図であり、(B)は、
図1に示されるシャッターカーテンに前側への外力が作用したときのスラットとガイドレールとの嵌合状態を示す
図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る建築用シャッター装置10について説明する。建築用シャッター装置10は、ビルなどの建造物の出入口等の開口部に建て付けられて、当該出入口を開閉する開閉装置として構成されている。なお、図面に適宜示される矢印UP、矢印RH、矢印FRは、建築用シャッター装置10の上側、右側、前側を示している。また、建築用シャッター装置10の前後方向が建造物の屋内外方向と一致しており、前側が屋外側に対応し、後側が屋内側に対応している。
【0014】
(建築用シャッター装置10の全体構成)
図1に示されるように、建築用シャッター装置10は、建築用シャッター装置10の上端部を構成するケース12と、出入口の左右方向両側部に設けられたガイドレール20と、出入口を開閉するシャッターカーテン40と、を含んで構成されている。シャッターカーテン40は、複数のスラット50によって構成されている。スラット50は、左右方向に延在された略長尺板状に形成されており、シャッターカーテン40では、複数のスラット50が上下方向に連結されている。そして、スラット50の長手方向(左右方向)両端部がガイドレール20のレール溝25内に上下方向に移動可能に挿入されている(
図2参照)。
【0015】
ケース12の内部には、シャッターカーテン40を開閉させるための開閉機構14が設けられている。開閉機構14は、左右方向を軸方向とする略円柱状のドラム16を有しており、ドラム16は、ケース12に回転可能に支持されている。また、開閉機構14は、ドラム16を駆動するための駆動部18を有している。ドラム16には、シャッターカーテン40の上端部が連結されており、ドラム16が回転することで、シャッターカーテン40がドラム16に巻き取られる。これにより、駆動部18によってドラム16を正転又は逆転させることで、シャッターカーテン40がガイドレール20に沿って昇降して、建造物の出入口が開閉されるようになっている。以下、ガイドレール20及びシャッターカーテン40のスラット50の構成について説明する。
【0016】
(ガイドレール20について)
図2に示されるように、ガイドレール20は、単一部材で構成されると共に、鋼材を熱間押出成形により形成した熱間押出形鋼で構成されている。ガイドレール20は、上下方向に延在されると共に、上側から見て、左右方向内側へ開放された略U字形状に形成されている。具体的には、ガイドレール20は、ガイドレール20の左右方向外側端部を構成し且つ左右方向を板厚方向とする底壁21と、底壁21の後端部から左右方向内側へ延出された内側壁22と、底壁21の前端部から左右方向内側へ延出された外側壁23と、を含んで構成されている。
【0017】
外側壁23の左右方向内側端部には、抜け止めベース部24が形成されており、抜け止めベース部24によって、外側壁23の左右方向内側部分が、上側から見て、略クランク状に形成されている。具体的には、抜け止めベース部24は、外側壁23の左右方向中間部から後側へ延出された第1抜け止め壁24Aと、第1抜け止め壁24Aの先端部から左右方向内側へ延出された第2抜け止め壁24Bと、を含んで構成されている。
【0018】
また、ガイドレール20には、第1化粧板30が設けられている。第1化粧板30は、少なくとも抜け止めベース部24を左右方向両側及び後側から覆うように所定の形状に屈曲されて、ガイドレール20に固定されている。さらに、ガイドレール20には、第2化粧板32が設けられている。第2化粧板32は、少なくとも内側壁22の前面及び左右方向内側端面を覆うように所定の形状に屈曲されて、ガイドレール20に固定されている。
【0019】
そして、第1化粧板30及び第2化粧板32を含むガイドレール20の内部が、レール溝25として構成されており、レール溝25は、左右方向内側へ開放されると共に、上下方向に延在されている。また、ガイドレール20では、第1化粧板30及び抜け止めベース部24によって、後述するスラット50のガイドレール20からの抜けを防止するための抜け止め部26が構成されている。そして、レール溝25の抜け止め部26の部位における前後寸法L1が、レール溝25の他の部位の前後方向の寸法よりも小さく設定されている。
【0020】
(スラット50について)
図2及び
図3に示されるように、スラット50は、左右方向に延在された略長尺板状に形成され、左右方向から見て後側へ開放された略U字形状に屈曲されている。具体的には、スラット50は、スラット50の頂壁(前壁)を構成するスラット本体部51と、スラット本体部51の上端部から後側へ延出された上側連結片52と、スラット本体部51の下端部から後側へ延出された下側連結片53と、を含んで構成されている。
【0021】
スラット本体部51は、前後方向を板厚方向として左右方向に延在されると共に、左右方向から見て、前側(屋内外方向一方側)へ凸となる略円弧状に湾曲している。上側連結片52は、上述のように、スラット本体部51の上端部から後側へ延出されると共に、左右方向から見て後側へ向かうに従い上側へ若干傾斜している。上側連結片52の先端部(後端部)には、上側へ突出した上側インターロック係合部54が形成されている。上側インターロック係合部54は、上端部において、前側且つ下側へ折り曲げられて、左右方向から見て、下側へ開放された略逆U字形状に形成されている。また、上側インターロック係合部54がスラット50の上側の後端を構成している。
【0022】
下側連結片53は、上述のように、スラット本体部51の下端部から後側へ延出されると共に、延出方向中間部において前側へ折り曲げられている。換言すると、下側連結片53は、左右方向から見て、前側へ開放された略V字形板状に形成されて、下側連結片53の上端部がスラット本体部51の下端部に接続されている。そして、下側連結片53の延出方向中間部において前側へ折り曲げられた部分が屈曲部53Aとして構成され、下側連結片53の内側空間が、前側へ開放された下側連結溝部53Bとして構成されている。下側連結片53の先端部(下端部)には、下側へ突出した下側インターロック係合部55が形成されている。下側インターロック係合部55は、下端部において、後側且つ上側へ折り曲げられて、左右方向から見て、上側へ開放された略U字形状に形成されている。下側インターロック係合部55は、屈曲部53Aよりも前側に配置されており、屈曲部53Aがスラット50の下側の後端を構成している。
【0023】
そして、
図4に示されるように、シャッターカーテン40では、上下方向に並ぶスラット50において、上側のスラット50における下側インターロック係合部55が、下側のスラット50における上側インターロック係合部54に係合して、スラット50同士がインターロック結合されている。ここで、スラット50では、下側インターロック係合部55は、下側連結片53の下端部から下側へ突出している。このため、シャッターカーテン40では、上側のスラット50の下側連結片53の下側において、上側のスラット50の下側インターロック係合部55と下側のスラット50の上側インターロック係合部54とが係合している。これにより、スラット50同士の連結状態では、上下方向に隣接配置されるスラット50において、上側のスラット50における下側連結溝部53Bの外部で、下側インターロック係合部55と上側インターロック係合部54とが係合している。また、上側インターロック係合部54と下側インターロック係合部55との係合状態では、上側インターロック係合部が下側インターロック係合部55の後側に配置されて、上側インターロック係合部54が前側から視認不能になっている。そして、シャッターカーテン40がドラム16によって巻き取られるときには、スラット50の前面側が、ドラム16の径方向外側へ向くように巻き取られるようになっている。
【0024】
図2及び
図3に示されるように、スラット本体部51の左右方向(長手方向)外側部分には、後側(屋内外方向他方側)へ凹んだ凹部56がそれぞれ形成されており、凹部56は、前後方向に直交する面に沿った略平板状に形成されている(
図2では、スラット本体部51の右側部分の凹部56を図示しており、
図3では、スラット本体部51の左側部分の凹部56を図示している)。凹部56は、スラット50の左右方向外側端に対して左右方向内側に配置されている。そして、スラット本体部51の左右方向外側端部(スラット本体部51における凹部56よりも左右方向外側部分)が、スラット側係合部としてのストッパ部51Aとして構成されている。これにより、スラット50におけるストッパ部51Aの部位における厚み寸法T1(前後方向の寸法)が、凹部56の部位における厚み寸法T2よりも厚く設定されている。具体的には、スラット50の凹部56の部位における厚み寸法T2は、ガイドレール20のレール溝25の開口部(抜け止め部26の形成された部分)の前後寸法L1よりも小さくされており、スラット50のストッパ部51Aの部位における厚み寸法T1は、ガイドレール20のレール溝25の開口部の前後寸法L1よりも大きく設定されている。
【0025】
スラット本体部51には、凹部56とストッパ部51Aとの間において、凹部56を形成するための逃げ孔57が貫通形成されており、逃げ孔57は、左右方向を幅方向とし且つ上下方向を長手方向とする長孔状に形成されている。逃げ孔57の左右方向外側の内周面は、ストッパ面51Bとして構成されており、ストッパ面51Bがストッパ部51Aの左右方向内側端面を構成している。一方、逃げ孔57の左右方向内側の内周面は、凹部56の左右方向外側端面を構成している。これにより、スラット50では、ストッパ面51Bが左右方向内側へ露出した状態で、ストッパ部51Aが凹部56に対して前側へ膨出している。逃げ孔57の上下寸法B1は、スラット本体部51の上下寸法B2よりも小さく設定されており、逃げ孔57の上下方向両端部は、前側から見て上下方向内側へ開放された半円状に形成されている。これにより、スラット本体部51には、逃げ孔57の上下方向外側において、凹部56とストッパ部51Aとを接続する上下一対の接続部58が形成されている。接続部58は、上下方向から見て、凹部56から左右方向外側へ向かうに従い前側へ曲線状に湾曲している。具体的には、接続部58は、上下方向から見て、左右方向内側斜め前方側へ開放された略4分円弧状に湾曲している。また、凹部56の前面からストッパ面51Bの上端までの前後寸法C1と、凹部56の前面からストッパ面51Bの下端までの前後寸法C2と、が一致するように逃げ孔57の上下寸法B1が設定されている。
【0026】
そして、スラット50の長手方向両端部が、ガイドレール20のレール溝25内に上下方向に移動可能に挿入されている(
図2に参照)。具体的には、スラット50の凹部56が、レール溝25の開口部に配置され、ストッパ部51Aが、ガイドレール20の抜け止め部26よりも左右方向外側に配置されている。そして、詳細については後述するが、屋内側の内圧が屋外側の外圧と比べて高くなり、シャッターカーテン40の左右方向中央部が前方側へ撓むように、スラット50が変形したときには、ストッパ部51Aのストッパ面51Bとガイドレール20の抜け止め部26とが前後方向において所定のかかり代A(
図5(B)参照)が確保されるように、逃げ孔57の上下寸法及び凹部56のストッパ部51Aに対する凹み量等が設定されている。
【0027】
また、スラット50の下側連結片53における凹部56との接続部には、下側へ膨らんだ余肉部59(
図3参照)が形成されている。余肉部59は、凹部56をプレス加工によって成形するときに生じる余肉であり、スラット50では、当該余肉を凹部56の下側へ逃がして、余肉部59を下側連結片53の下側連結溝部53B内に配置するように構成されている。
【0028】
(作用効果)
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
上記のように構成された建築用シャッター装置10では、シャッターカーテン40を構成するスラット50の左右方向両端部が、ガイドレール20のレール溝25内に上下方向に移動可能に挿入されている。具体的には、スラット50の凹部56が、ガイドレール20の抜け止め部26の後側に配置されると共に、スラット50のストッパ部51Aが、抜け止め部26よりも左右方向外側に配置されている。
【0030】
そして、風圧等によって後方側への外力がシャッターカーテン40に作用すると、スラット50の左右方向両端部がガイドレール20の第2化粧板32に当たる。当該外力が比較的大きい場合には、スラット50の左右方向両端部はガイドレール20によって支持されているため、スラット50の左右方向中央部が後側へ凸となるように、スラット50が撓み変形する。このときに、
図5(A)に示されるように、スラット50の左右方向外側部分では、スラット50の後端が、ガイドレール20におけるレール溝25の開口端部に当接し、スラット50がガイドレール20との当接部を起点として、左右方向外側へ向かうに従い前側へ傾斜する。また、このときには、スラット50のストッパ部51Aが、左右方向内側へ変位して、ストッパ部51Aのストッパ面51Bがガイドレール20の抜け止め部26と係合する。これにより、スラット50の左右方向両端部の左右方向内側への変位が阻止される。したがって、後方側への外力がシャッターカーテン40に作用しても、スラット50のレール溝25からの抜けを防止することができる。
【0031】
一方、風圧等によって前方側への外力がシャッターカーテン40に作用すると、スラット50の凹部56がガイドレール20の抜け止め部26に当たる。当該外力が比較的大きい場合には、スラット50の左右方向両端部はガイドレール20によって支持されているため、スラット50の左右方向中央部が前側へ凸となるように、スラット50が撓み変形する。このとき、
図5(B)に示されるように、スラット50の長手方向外側部分では、スラット50の凹部56が、ガイドレール20におけるレール溝25の開口端部に当接し、スラット50がガイドレール20との当接部を起点として、左右方向外側へ向かうに従い後側へ傾斜する。また、このときには、スラット50のストッパ部51Aが、左右方向内側へ変位して、ストッパ部51Aのストッパ面51Bが、ガイドレール20の抜け止め部26と係合する。これにより、スラット50の左右方向両端部の左右方向内側への変位が阻止される。したがって、前方側への外力がシャッターカーテン40に作用しても、スラット50のレール溝25からの抜けを防止することができる。
【0032】
ところで、スラット50のストッパ部51A(ストッパ面51B)が、ガイドレール20の抜け止め部26と係合するときには、ガイドレール20からストッパ部51Aに左右方向外側への反力が作用する。すなわち、スラット50では、左右方向外側への引張力がスラット50の左右方向両端部(ストッパ部51A)に作用するようになる。一方、スラット50のスラット本体部51には、ストッパ部51Aと凹部56との間において、凹部56を形成するための逃げ孔57が形成されており、逃げ孔57は上下方向に延在された長孔状に形成されている。このため、スラット50の左右方向両側部分では、逃げ孔57が形成された部分の機械的強度が低下する。これにより、スラット50に作用する引張力によって、スラット50の左右方向両側部分が、逃げ孔57の形成部位において、破断する虞がある。
【0033】
ここで、逃げ孔57の上下寸法B1が、スラット本体部51の上下寸法B2よりも小さく設定されている。これにより、スラット本体部51の逃げ孔57の上下方向外側において、凹部56とストッパ部51Aとを接続する上下一対の接続部58を形成することができる。このため、仮に、逃げ孔57の上下寸法B1をスラット本体部51の上下寸法B2と一致するように設定した場合と比べて、スラット本体部51の左右方向外側部分の強度を高くすることができる。その結果、スラット50のストッパ部51Aとガイドレール20の抜け止め部26との係合時における、スラット50の左右方向外側部分の破断を抑制することができる。
【0034】
しかも、接続部58がスラット50に一体に形成されている。このため、スラット50の左右方向両側部分における機械的強度を確保するために、例えば、スラット本体部51の凹部56とストッパ部51Aとを連結する連結部材を別途設けることなく、スラット50の左右方向両側部分における機械的強度を高くすることができる。すなわち、凹部56を有するスラット50を単一部材で構成しつつ、スラット50の左右方向両側部分における機械的強度を確保することができる。以上により、スラット50のコストダウンを実現しつつ、スラット50の長手方向両端部における強度を確保することができる。
【0035】
また、接続部58が、上下方向から見て、左右方向外側へ向かうに従い前側へ曲線状に湾曲している。具体的には、接続部58が、上下方向から見て、左右方向内側斜め前方側へ開放された略4分円弧状に形成されている。これにより、接続部58を、上下方向から見て、直角の段差状に形成する場合と比べて、接続部58の形状変化を小さくすることができる。その結果、左右方向外側の引張力がスラット50の左右方向両端部に作用したときの接続部58における応力集中を抑制できる。したがって、スラット50のストッパ部51Aとガイドレール20の抜け止め部26との係合時における、スラット50の左右方向外側部分の破断を効果的に抑制することができる。
【0036】
さらに、逃げ孔57は、左右方向を幅方向とし且つ上下方向を長手方向とする長孔状に形成されており、逃げ孔57の上下方向両端部が、上下方向内側へ開放された半円状に形成されている。このため、逃げ孔57を前側から見て、矩形長孔状に形成する場合と比べて、逃げ孔57の長手方向両端部に発生する応力を小さくすることができる。その結果、左右方向外側の引張力がスラット50の左右方向両端部に作用したときの接続部58における応力集中を抑制できる。したがって、スラット50のストッパ部51Aとガイドレール20の抜け止め部26との係合時における、スラット50の左右方向外側部分の破断を一層効果的に抑制することができる。
【0037】
また、逃げ孔57の左右方向外側面は、ストッパ面51Bとして構成されており、凹部56の前面からストッパ面51Bの上端までの前後寸法C1と、凹部56の前面からストッパ面51Bの下端までの前後寸法C2と、が一致している。これにより、上下方向において、抜け止め部26とストッパ面51Bとを均一に係合されることができる。その結果、抜け止め部26からストッパ面51Bに作用する反力を均一化させることができる。したがって、スラット50の左右方向外側部分の破断をより一層効果的に抑制することができる。
【0038】
また、ガイドレール20は、鋼材を熱間押出成形により形成した熱間押出形鋼で構成されている。これにより、スラット50とガイドレール20との係合時において、スラット50の左右方向内側への移動を阻止するためのガイドレール20において、一部材で構成しつつ、ガイドレール20のコストダウンに寄与することができる。したがって、建築用シャッター装置10全体のコストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 建築用シャッター装置
20 ガイドレール
25 レール溝
40 シャッターカーテン
50 スラット
51A ストッパ部(スラット側係合部)
51B ストッパ面
56 凹部
57 逃げ孔
58 接続部