(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250303BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2021148551
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 真人
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-155170(JP,A)
【文献】特開平11-243077(JP,A)
【文献】特開2013-153171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を含む対象物を吸着するための静電チャックを具備し、
前記静電チャックは、
第1の領域と、前記第1の領域を囲む第2の領域と、を含む吸着面と、
前記吸着面と交差する第1方向において前記第1の領域および前記第2の領域のそれぞれに重畳する内部電極と、
を有し、
前記第1の領域は、前記吸着面に対して前記第1方向に第1の深さを有するとともに前記第1方向において前記内部電極に重畳する第1の凹部を含み、
前記第2の領域は、
複数の第2の凹部を含み、前記複数の第2の凹部のそれぞれが前記吸着面に対して前記第1方向に前記第1の深さよりも小さい第2の深さを有するとともに前記第1方向において前記内部電極に重畳
し、
前記吸着面に前記対象物を吸着するとき、前記複数の第2の凹部により生じる吸着力は、前記第1の凹部により生じる吸着力よりも高い、
半導体製造装置。
【請求項2】
前記
複数の第2の凹部は、前記第1の領域を囲
み同心円状に設けられる、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記
複数の第2の凹部は、前記第2の領域の内周縁から外周縁に向かって
放射状に延在する、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記静電チャックを加熱するためのヒータをさらに具備する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記静電チャックにより前記対象物を吸着したとき、前記基板の周縁は、前記第1方向において
前記第2の領域に重畳する、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェハ等の基板を含む対象物を吸着するための静電チャックを具備する半導体製造装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題の一つは、高い吸着力を有する静電チャックを具備する半導体製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体製造装置は、基板を含む対象物を吸着するための静電チャックを具備する。静電チャックは、第1の領域と、第1の領域を囲む第2の領域と、を含む吸着面と、吸着面と交差する第1方向において第1の領域および第2の領域のそれぞれに重畳する内部電極と、を有する。第1の領域は、吸着面に対して第1方向に第1の深さを有するとともに第1方向において内部電極に重畳する第1の凹部を含む。第2の領域は、吸着面に対して第1方向に第1の深さよりも小さい第2の深さを有するとともに第1方向において内部電極に重畳する第2の凹部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】半導体製造装置の構成例を示す断面模式図である。
【
図2】吸着面21の構造例を示す上面模式図である。
【
図3】領域21bの第1の構造例を示す上面模式図である。
【
図4】領域21bの第1の構造例を示す断面模式図である。
【
図5】領域21bの第2の構造例を示す上面模式図である。
【
図6】領域21bの第2の構造例を示す断面模式図である。
【
図7】吸着メカニズムを説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0008】
(半導体製造装置の構成例)
図1は、半導体製造装置の構成例を示す断面模式図である。半導体製造装置10は、チャンバ1と、ステージ2と、上部電極3と、外壁4と、を具備する。半導体製造装置10の例は、プラズマCVD装置、プラズマALD装置等が挙げられる。
【0009】
チャンバ1は、上部電極3および外壁4に囲まれた空間である。チャンバ1において、対象物Wに対して成膜処理等の処理を行う。対象物Wは、例えば半導体ウェハ等の基板を含む。外壁4は、対象物Wのロードおよびアンロードを行うための搬入出口を有していてもよい。
【0010】
ステージ2は、対象物Wを吸着するための静電チャックを形成する。ステージ2は、吸着面21と、内部電極22と、ヒータ23と、を有する。
【0011】
吸着面21は、対象物Wを吸着するための面である。対象物Wとの接触部は、例えばセラミック材料により形成される。
【0012】
内部電極22は、対象物Wの表面と交差するZ軸方向において吸着面21に重畳する。内部電極22は、ステージ2の内部に埋め込まれる。内部電極22は、直流電源5に接続される。直流電源5は、例えば対象物Wを吸着するための直流電圧を供給する。直流電源5は、スイッチを有し、スイッチにより直流電圧を供給の開始および停止を切り替えてもよい。内部電極22は、チャンバ1内でプラズマを発生させる際の電極としての機能を有していてもよい。
【0013】
ヒータ23は、ステージ2を加熱してステージ2の温度を調整する機能を有する。ヒータ23は、ヒータ電源6に接続される。
【0014】
上部電極3は、Z軸方向において、内部電極22に重畳する。上部電極3は、ガス導入口7を有し、ガス導入口7を介してガス供給源8から原料ガスを供給してもよい。ガス供給源8は、例えば原料タンクに接続されたマスフローコントローラを有し、マスフローコントローラによりガス流量を調整してもよい。マスフローコントローラは、原料ガス毎に複数設けられてもよい。
【0015】
上部電極3は、交流電源9に接続される。交流電源9は、原料ガスからプラズマを発生させるための高周波電力を上部電極3に印加できる。高周波電力の周波数は、特に限定されないが、例えば200kHz以上13.56MHz以下である。交流電源9は、整合器を有し、整合器を介して高周波電力を上部電極3に供給してもよい。
【0016】
ステージ2、直流電源5、ヒータ電源6、ガス供給源8、および交流電源9は、例えば図示しない制御回路により制御されてもよい。制御回路は、例えばプロセッサ等を用いたハードウェアを用いて構成されてもよい。なお、各動作を動作プログラムとしてメモリ等のコンピュータ読み取りが可能な記録媒体に保存しておき、ハードウェアにより記録媒体に記憶された動作プログラムを適宜読み出すことで各動作を実行してもよい。
【0017】
半導体製造装置10は、図示しない搬送機構を具備していてもよい。搬送機構は、チャンバ1に対する対象物Wのロードおよびアンロードが可能である。これにより、ステージ2に対象物Wを載置できる。搬送機構は、例えば上記制御回路により制御されてもよい。
【0018】
図2は、吸着面21の構造例を示す上面模式図である。
図2は、吸着面21に平行なX-Y平面を示す。吸着面21は、領域21aと、領域21bと、を含む。領域21aおよび領域21bのそれぞれは、吸着面21と交差するZ軸方向において内部電極22に重畳する。
【0019】
領域21aは、吸着面21の周縁よりも内側に設けられる。領域21aは、凹部211と、接触部212と、を有する。
【0020】
凹部211は、例えば吸着面21の外周に沿って円状に設けられる。凹部211は、吸着面21に対してZ軸方向に深さを有する。
【0021】
接触部212は、対象物Wを吸着したときに対象物Wに接する部分である。接触部212の平面形状は、例えば円状である。接触部212を設けることにより、対象物Wを吸着面21に載置したときに対象物Wの保持力を高めることができる。X-Y平面において、接触部212の径は、特に限定されないが、例えば1mm以上10mm以下である。
図2は、X-Y平面において、ドット状に設けられた複数の接触部212を示す。複数の接触部212の数は、
図2に示す接触部212の数に限定されない。複数の接触部212の平面形状は、円状に限定されない。
【0022】
領域21bは、X-Y平面において領域21aを囲む。領域21bは、吸着面21の周縁よりも内側に設けられる。すなわち、領域21bは、X-Y平面において、吸着面21の周縁と領域21aとの間に配置される。静電チャックにより対象物Wを吸着したとき、基板の周縁は、Z軸方向において領域21bに重畳する。
【0023】
[領域21bの第1の構造例]
図3は、領域21bの第1の構造例を示す上面模式図である。
図4は、領域21bの第1の構造例を示す断面模式図である。
図3および
図4に示す領域21bは、
図2に示す領域21bの一部に対応する。
【0024】
領域21bは、凹部213を有する。凹部213は、例えばX-Y平面において領域21aを囲む環状である。
図3は、同心円状に設けられた複数の環状の凹部213の一部を示す。複数の凹部213の数は、
図3および
図4に示す凹部213の数に限定されない。
【0025】
凹部213は、吸着面21と交差するZ軸方向において内部電極22に重畳する。凹部211が吸着面21に対してZ軸方向に深さD1を有するとき、凹部213は、吸着面21に対してZ軸方向に深さD1よりも小さい深さD2を有する。凹部213の断面形状は特に限定されない。
【0026】
[領域21bの第2の構造例]
図5は、領域21bの第2の構造例を示す上面模式図である。
図6は、領域21bの第2の構造例を示す断面模式図である。
図5および
図6に示す領域21bは、
図2に示す領域21bの一部に対応する。
【0027】
領域21bは、凹部213を有する。凹部213は、例えばX-Y平面において、領域21aの内周縁から外周縁に向かって延在する。
図5は、放射状に設けられた複数の凹部213の一部を示す。複数の凹部213の数は、
図5および
図6に示す凹部213の数に限定されない。
【0028】
凹部213は、Z軸方向において内部電極22に重畳する。凹部211が吸着面21に対して深さD1を有するとき、凹部213は、深さD1よりも小さい深さD2を有する。凹部213の断面形状は特に限定されない。
【0029】
第1の構造例および第2の構造例において、深さD1は、特に限定されないが、例えば20μm以上30μm以下、好ましくは22μm以上26μm以下である。深さD2は、特に限定されないが、例えば5μm以上15μm以下、好ましくは8μm以上13μm以下である。
【0030】
図7は、対象物Wを吸着したときの吸着メカニズムを説明するための断面模式図である。
図7は、領域21bが第1の構造例を有する場合の例を示す。
【0031】
内部電極22に直流電圧を印加すると、ステージ2と対象物Wとの間で正電荷と負電荷が引き合うことにより吸着力が発生する。この吸着力は、例えばステージ2と対象物Wとの間の空間で生じるジョンセン・ラーベック力(J-R力)や吸着面21と対象物Wとの間で生じるクーロン力によるものである。なお、
図7では、ステージ2側に正電荷を図示し、対象物W側に負電荷を図示しているが、これに限定されない。
【0032】
従来の静電チャックでは、例えば650℃以上の高温で成膜処理を行う場合、ステージが電気抵抗の低下により導体となるため、チャックに必要な電荷の保持が困難な場合がある。これは、チャック力の低下の原因となる。対象物に含まれる半導体基板は周縁部において反りが大きいため、吸着面と基板の周縁との重畳部(Ledgeともいう)において吸着力が高いことが好ましい。
【0033】
Ledgeにおいて吸着力を高めるために、複数の内部電極を設け、Ledgeに異なる電圧を印加して吸着力を高めることが考えられる。しかしながら、ステージの構造が複雑となり、製造が困難である。
【0034】
実施形態の半導体製造装置では、Ledgeに対応する領域21bにおいて、凹部211よりも浅い凹部213を形成する。クーロン力やJ-R力は、ステージ2と対象物Wとの間の空間の距離が短いほど高い。よって、凹部211よりも浅い凹部213を形成することにより、Ledgeにおける吸着力を高めることが可能である。
【0035】
凹部211および凹部213は、例えば吸着面21の表面をエッチング等の方法を用いて部分的に加工することにより形成可能である。吸着面21の表面を加工して凹部を形成する場合、凹部が深いほど深さのばらつきが多くなる。これに対し、実施形態の半導体製造装置では、凹部211よりも浅い凹部213を形成することにより、凹部の深さのばらつきを小さくできる。
【0036】
さらに、実施形態の半導体製造装置では、凹部213を形成することにより、領域21bにおいて、吸着面21と対象物Wとの接触面積を小さくできる。領域21bにおいて、吸着面21と対象物Wとの接触面積が大きいと、対象物Wの吸着面21との接触面が傷つきやすく、例えば基板の表面粗さが大きくなる場合がある。これに対し、吸着面21と対象物Wとの接触面積を小さくすることにより、例えば基板の表面粗さを小さくできる。
【0037】
凹部213の平面形状は、領域21bの第1の構造例および第2の構造例に示す形状に限定されない。複数の凹部213を形成する場合、領域21bの一つの箇所における凹部213の数と、他の一つの箇所における凹部213の数は、異なっていてもよい。例えば基板のX軸方向の反りの大きさとY軸方向の反りの大きさとが異なる場合、反りが大きい箇所は、凹部213の数を増やし、反りが小さい箇所は凹部213の数を減らしてもよい。
【0038】
また、領域21bの第1の構造例および第2の構造例において、凹部213がZ軸方向において内部電極22に重畳する例を示したが、凹部213を介して電荷の引き合いを発生させることができるのであれば、凹部213は、必ずしも内部電極22に重畳しなくてもよい。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…チャンバ、2…ステージ、3…上部電極、4…外壁、5…直流電源、6…ヒータ電源、7…ガス導入口、8…ガス供給源、9…交流電源、10…半導体製造装置、21…吸着面、21a…領域、21b…領域、22…内部電極、23…ヒータ、211…凹部、212…接触部、213…凹部。