(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】クリーニングユニット、印刷装置およびロール径取得方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20250303BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
B41J2/165 307
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2021156160
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】神吉 耕志
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 保紀
(72)【発明者】
【氏名】武藤 正吾
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-509810(JP,A)
【文献】特開平11-342629(JP,A)
【文献】実開昭58-155653(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0024532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する吐出ヘッドを清掃するシートがロール状に巻き付けられた巻出ローラと、
前記巻出ローラから巻き出された前記シートがロール状に巻き付けられた巻取ローラと、
前記巻取ローラを回転させることで前記巻出ローラから巻き出された前記シートを前記巻取ローラに巻き取る巻取モータと、
前記巻取モータによって前記巻出ローラから前記巻取ローラへ搬送される前記シートを前記吐出ヘッドに接触させる拭き取りローラと、
前記巻出ローラの回転数である巻出回転数を検出する回転検出器と、
前記巻取モータの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記巻取モータによって回転される前記巻取ローラの回転数である巻取回転数と、前記巻出回転数との比に基づき、前記巻取ローラにロール状に巻き取られた前記シートのロール径を算出する算出部
を含むクリーニングユニット。
【請求項2】
前記制御部は、
モータ指令値を前記巻取モータに送信し、当該モータ指令値が示す回転数で前記巻取モータが回転するように前記巻取モータを制御する巻取モータ制御部と、
前記巻取モータ制御部が巻取モータに対して送信したモータ指令値が示す回転数から巻取回転数を算定する巻取回転数算定部と、
を含む
請求項1に記載のクリーニングユニット。
【請求項3】
前記算出部は、前記巻取回転数と前記巻出回転数との比に基づき、前記巻出ローラにロール状に巻き付けられた前記シートのロール径を算出する請求項1または2に記載のクリーニングユニット。
【請求項4】
前記巻出ローラ、前記拭き取りローラおよび前記巻取ローラが配置された領域と、前記回転検出器が配置された第1領域とを区分けする第1隔壁をさらに備えた請求項1ないし3のいずれか一項に記載のクリーニングユニット。
【請求項5】
前記巻出ローラ、前記拭き取りローラおよび前記巻取ローラが配置された領域と、前記巻取モータが配置された第2領域とを区分けする第2隔壁をさらに備えた請求項1ないし4のいずれか一項に記載のクリーニングユニット。
【請求項6】
前記巻出ローラの回転を前記回転検出器に伝達する第1回転伝達部をさらに備える請求項1ないし5のいずれか一項に記載のクリーニングユニット。
【請求項7】
前記回転検出器は、前記巻出ローラに対して前記拭き取りローラの反対側に配置されている請求項1ないし6のいずれか一項に記載のクリーニングユニット。
【請求項8】
前記巻取モータの回転を前記巻取ローラに伝達する第2回転伝達部をさらに備える請求項1ないし7のいずれか一項に記載のクリーニングユニット。
【請求項9】
前記巻取モータは、前記巻取ローラに対して前記拭き取りローラの反対側に配置されている請求項1ないし8のいずれか一項に記載のクリーニングユニット。
【請求項10】
前記回転検出器は、前記巻出ローラの回転方向を検出する請求項1ないし9のいずれか一項に記載のクリーニングユニット。
【請求項11】
印刷媒体にインクを吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドを清掃する請求項1ないし10のいずれか一項に記載のクリーニングユニットと
を備えた印刷装置。
【請求項12】
インクを吐出する吐出ヘッドを清掃するシートがロール状に巻き付けられた巻出ローラから巻き出された前記シートを巻取ローラによって巻き取る工程と、
前記巻取ローラの回転数である巻取回転数と、前記巻出ローラの回転数である巻出回転数との比に基づき、前記巻取ローラにロール状に巻き取られた前記シートのロール径を算出する工程と
を備えたロール径取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクを吐出する吐出ヘッドをシートにより清掃する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドを用いた印刷装置では、吐出ヘッドに付着したインクを除去するクリーニングを適宜実行する必要がある。例えば特許文献1のクリーニング方法は、巻出ローラから巻取ローラへロール・トゥ・ロールによって搬送しつつ、巻出ローラと巻取ローラとの間の拭き取りローラによってシートを吐出ヘッドに接触させることで、吐出ヘッドに付着したインクを拭き取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなクリーニング方法によって吐出ヘッドからインクを確実に拭き取るためには、巻出ローラから巻き出されたシートを巻取ローラにより高速で巻き取って、吐出ヘッドに対して新しいシートを十分に送り出すことが好適となる。しかしながら、シートが吐出ヘッドに対して高速で摺動することで、吐出ヘッドを損傷させるおそれがあった。そのため、シートが吐出ヘッドを拭き取る速度、換言すれば、シートと吐出ヘッドとの接触部分でのシートの搬送速度には適正値が存在する。そこで、この搬送速度を巻取ローラの回転数から算出することが考えられる。ただし、そのためには、巻取ローラに巻き取られたシートのロール径が必要となる。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、吐出ヘッドからインクを拭き取るシートを巻き取る巻取ローラにおけるシートのロール径を取得可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクリーニングユニットは、インクを吐出する吐出ヘッドを清掃するシートがロール状に巻き付けられた巻出ローラと、巻出ローラから巻き出されたシートがロール状に巻き付けられた巻取ローラと、巻取ローラを回転させることで巻出ローラから巻き出されたシートを巻取ローラに巻き取る巻取モータと、巻取モータによって巻出ローラから巻取ローラへ搬送されるシートを吐出ヘッドに接触させる拭き取りローラと、巻出ローラの回転数である巻出回転数を検出する回転検出器と、巻取モータの駆動を制御する制御部と、を備え、制御部は、巻取モータによって回転される巻取ローラの回転数である巻取回転数と、巻出回転数との比に基づき、巻取ローラにロール状に巻き取られたシートのロール径を算出する算出部を含む。
【0007】
本発明に係るロール径取得方法は、インクを吐出する吐出ヘッドを清掃するシートがロール状に巻き付けられた巻出ローラから巻き出されたシートを巻取ローラによって巻き取る工程と、巻取ローラの回転数である巻取回転数と、巻出ローラの回転数である巻出回転数との比に基づき、巻取ローラにロール状に巻き取られたシートのロール径を算出する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(クリーニングユニットおよびロール径取得方法)では、巻取ローラの回転数である巻取回転数と、巻出ローラの回転数である巻出回転数との比が用いられる。つまり、後に詳述するように、本願の発明者は、巻取ローラに巻き取られたシートのロール径は、巻取回転数と巻出回転数との比を変数とする関数によって与えられるとの知見を得た。そこで、巻取回転数と巻出回転数との比からこのロール径が算出される。こうして、吐出ヘッドからインクを拭き取るシートを巻き取る巻取ローラにおけるシートのロール径を取得することが可能となっている。
【0009】
また、制御部は、モータ指令値を巻取モータに送信し、当該モータ指令値が示す回転数で巻取モータが回転するように巻取モータを制御する巻取モータ制御部と、巻取モータ制御部が巻取モータに対して送信したモータ指令値が示す回転数から巻取回転数を算定する巻取回転数算定部と、を含むように、クリーニングユニットを構成してもよい。かかる構成では、巻取ローラの回転数を検出するための検出器を別途設ける必要がないため、クリーニングユニットの簡素化や小型化を図ることができる。
【0010】
また、算出部は、巻取回転数と巻出回転数との比に基づき、巻出ローラにロール状に巻き付けられたシートのロール径を算出するように、クリーニングユニットを構成してもよい。かかる構成では、巻出ローラに巻き付けられたシートのロール径、すなわちシートの残量を取得することができる。
【0011】
また、巻出ローラ、拭き取りローラおよび巻取ローラが配置された領域と、回転検出器が配置された第1領域とを区分けする第1隔壁をさらに備えるように、クリーニングユニットを構成してもよい。かかる構成では、吐出ヘッドから拭き取られたインクが回転検出器に飛び散って回転検出器が汚染されるのを、第1隔壁によって抑制することができる。
【0012】
また、巻出ローラ、拭き取りローラおよび巻取ローラが配置された領域と、巻取モータが配置された第2領域とを区分けする第2隔壁をさらに備えるように、クリーニングユニットを構成してもよい。かかる構成では、吐出ヘッドから拭き取られたインクが巻取モータに飛び散るのを、第2隔壁によって抑制することができる。
【0013】
また、巻出ローラの回転を回転検出器に伝達する第1回転伝達部をさらに備えるように、クリーニングユニットを構成してもよい。このように第1回転伝達部を介在させることで、巻出ローラから回転検出器を離すことができる。その結果、吐出ヘッドから拭き取られたインクが回転検出器に飛び散って、回転検出器が汚染されるのを抑制することができる。
【0014】
また、回転検出器は、巻出ローラに対して拭き取りローラの反対側に配置されているように、クリーニングユニットを構成してもよい。かかる構成では、拭き取りローラから離して回転検出器が配置されている。その結果、吐出ヘッドから拭き取られたインクが回転検出器に飛び散って、回転検出器が汚染されるのを抑制することができる。
【0015】
また、巻取モータの回転を巻取ローラに伝達する第2回転伝達部をさらに備えるように、クリーニングユニットを構成してもよい。このように第2回転伝達部を介在させることで、巻取ローラから巻取モータを離すことができる。その結果、吐出ヘッドから拭き取られたインクが巻取モータに飛び散って、巻取モータが汚染されるのを抑制することができる。
【0016】
また、巻取モータは、巻取ローラに対して拭き取りローラの反対側に配置されているように、クリーニングユニットを構成してもよい。かかる構成では、拭き取りローラから離して巻取モータが配置される。その結果、吐出ヘッドから拭き取られたインクが巻取モータに飛び散って、巻取モータが汚染されるのを抑制することができる。
【0017】
また、回転検出器は、巻出ローラの回転方向を検出するように、クリーニングユニットを構成してもよい。かかる構成では、作業者がシートの補充のために巻出ローラに装着したシートの向きを間違ったことを、巻出ローラの回転方法によって確認できる。その結果、シートの誤装着を検出することができる。
【0018】
本発明に係る印刷装置は、印刷媒体にインクを吐出する吐出ヘッドと、吐出ヘッドを清掃する上記のクリーニングユニットとを備える。したがって、吐出ヘッドからインクを拭き取るシートを巻き取る巻取ローラにおけるシートのロール径を取得することが可能となっている。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、吐出ヘッドからインクを拭き取るシートを巻き取る巻取ローラにおけるシートのロール径を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図。
【
図2】
図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図。
【
図4】メンテナンスユニットの構成および動作を模式的に示す図。
【
図5】側面視においてクリーニングユニットの構成を模式的に示す部分側面図。
【
図6】平面視においてクリーニングユニットの構成を模式的に示す部分断面図。
【
図7B】
図7Aの曲線で囲まれた範囲を部分的に拡大して示す部分拡大図。
【
図9】シート搬送制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。
図1および以下に示す図では、水平方向Xおよび鉛直方向Zを適宜示す。
図1に示すように、印刷システム1は、水平方向Xに配列された印刷装置3および乾燥装置9を備える。この印刷システム1は、巻出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送する。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene
terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0022】
印刷装置3は、巻出ロール11から巻取ロール12へ搬送される印刷媒体Mの表面M1に対してインクジェット方式で水性インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に画像を印刷する。かかる印刷装置3の詳細な構成は後述する。こうして画像が印刷された印刷媒体Mは、印刷装置3から乾燥装置9へ向けて水平方向Xに搬送される。
【0023】
乾燥装置9は乾燥炉90を備え、巻出ロール11から巻取ロール12への搬送に伴って印刷装置3から搬出された印刷媒体Mを乾燥させる。乾燥炉90内には、水平方向Xに配列された2個の上段送風ユニット91uと、これら上段送風ユニット91uの下側で水平方向Xに配列された2個の中段送風ユニット91mと、これら中段送風ユニット91mの下側で水平方向Xに配列された2個の下段送風ユニット91lとが具備されている。
【0024】
印刷装置3の搬出口312から搬出された印刷媒体Mは、2個の上段送風ユニット91uを水平方向Xに通過した後に、1対のローラ92によって2個の中段送風ユニット91mへ向けて折り返される。続いて、印刷媒体Mは、2個の中段送風ユニット91mを水平方向Xに通過した後に、1対のエアターンバー93によって2下段送風ユニット91lに向けて折り返される。さらに、印刷媒体Mは、2個の下段送風ユニット91lを水平方向Xに通過した後に、乾燥装置9の外部へ搬出される。
【0025】
上段送風ユニット91uは、水平方向Xに通過する印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟むように配置された2個の送風チャンバ94を有する。各送風チャンバ94は、水平方向Xに配列された複数のノズル95を有し、各ノズル95から温風(60度以上の気体)を印刷媒体Mへ噴射する。こうして、印刷媒体Mは、上下に設けられた2個の送風チャンバ94の間を通過しつつ、これら送風チャンバ94のノズル95から噴射された温風によって乾燥される。また、中段送風ユニット91mおよび下段送風ユニット91lのそれぞれも、上段送風ユニット91uと同様に、印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む2個の送風チャンバ94を有する。
【0026】
ちなみに、上段送風ユニット91uの具体的構成はここの例に限られない。例えば、上段送風ユニット91uの上下の送風チャンバ94のうち下側の送風チャンバ94に代えて、水平方向Xに配列された複数のローラを設けてもよい。かかる構成では、複数のローラによって印刷媒体Mの裏面M2を下側から支持しつつ、上側の送風チャンバ94から印刷媒体Mの表面M1に温風を噴射できる。
【0027】
図2は
図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図である。
図2では、水平方向Xの一方側X1および他方側X2を適宜示す。ここで、一方側X1は印刷装置3から乾燥装置9へ向う側であり、他方側X2は一方側X1の反対側である。印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部4とを備える。
【0028】
カラー印刷部32は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向(他方側X2から一方側X1へ向かう方向)に配列された複数(6個)のヘッドユニット321を有する。複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0029】
また、白印刷部33は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一のヘッドユニット331を有する。ヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33のヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0030】
筐体31の他方側X2の側壁には搬入口311が開口する一方、筐体31の一方側X1の側壁には搬出口312が開口している。そして、搬送部4は、上記のカラー印刷部32および白印刷部33を経由しつつ、搬入口311から搬出口312へ印刷媒体Mを搬送する。
【0031】
この搬送部4は、カラー印刷部32の下側に設けられた搬入部41と、カラー印刷部32の一方側X1に設けられた上昇搬送部42と、カラー印刷部32の上側に設けられた上方搬送部43と、カラー印刷部32の他方側X2に設けられた下降搬送部44とを有する。搬入部41は、搬入口311から搬入された印刷媒体Mをローラ411によって一方側X1に搬送し、上昇搬送部42は、搬入部41によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ421によって上側に搬送し、上方搬送部43は、上昇搬送部42によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ431によって他方側X2へ搬送し、下降搬送部44は、上方搬送部43によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ441によって下側に搬送する。
【0032】
さらに、搬送部4は、カラー印刷部32に対向する印刷媒体Mを下方から支持するカラー搬送部45を有し、下降搬送部44を通過した印刷媒体Mはカラー搬送部45に進入する。このカラー搬送部45は、他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ451を有し、各ローラ451が印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触する。こうして、カラー搬送部45によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、カラー印刷部32の各ヘッドユニット321は、この表面M1に上方から対向しつつカラーインクを吐出する。
【0033】
また、搬送部4は、印刷媒体Mの進行方向においてカラー搬送部45と下降搬送部44との間に配置されたローラ461、462、463を有する。ローラ461は、印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。ローラ462、463は印刷媒体Mに従動して回転する従動ローラである。
【0034】
さらに、搬送部4は、カラー搬送部45から一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mを二回上下反転させる反転搬送部47を有する。この反転搬送部47は、駆動ローラ471を含む複数のローラ471~477を有し、これらローラ471~477が印刷媒体Mの裏面M2に接触しつつ、印刷媒体Mを二回上下反転させる。つまり、反転搬送部47は、カラー搬送部45から搬送された印刷媒体Mを、ローラ471、472によって下方向に向けて搬送し、さらに印刷媒体Mの進行方向をローラ472によって他方側X2に変更して搬送することにより、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを上下反転させる。続いて、反転搬送部47は、複数のローラ473によって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2に向けて搬送し、次いで、ローラ474~476によって印刷媒体Mを上方向に向けて搬送する。さらに、反転搬送部47は、ローラ476によって印刷媒体Mの進行方向を一方側X1に変更することによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを再び上下反転させるとともに、ローラ477によって印刷媒体Mを他方側X2から一方側X1に向けて搬送する。
【0035】
また、搬送部4は、白印刷部33に対向する印刷媒体Mを下方から支持する白搬送部48を有し、反転搬送部47によって二回上下反転された印刷媒体Mは白搬送部48に進入する。この白搬送部48は、印刷媒体Mの裏面M2に下側から接触するローラ481を有する。こうして、白搬送部48によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、白印刷部33のヘッドユニット331は、この表面M1に上方から対向しつつ白インクを吐出する。
【0036】
また、搬送部4は、上方搬送部43より上方に設けられた搬出部49を有する。搬出部49は、水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ491を有する。この搬出部49は、白搬送部48により搬送されてきた印刷媒体Mを、複数のローラ491によって一方側X1へと搬送することで、筐体31の搬出口312から乾燥装置9へ搬出する。
【0037】
上記のように、印刷装置3のカラー印刷部32および白印刷部33は、ヘッドユニット321、331を有する。続いては、これらヘッドユニット321、331について説明する。なお、これらの基本的な構成は、各ヘッドユニット321、331で共通する。そこで、以下では、一のヘッドユニット321について説明を行い、他のヘッドユニット321、331の説明を省略する。
【0038】
図3はヘッドユニットの底面を模式的に示す図である。
図3では、水平方向Xおよび鉛直方向Zの他に、水平方向Xに直交する水平方向Yが示されている。
図3に示すように、ヘッドユニット321では、同一の色のインクを吐出する複数の吐出ヘッドHが水平方向Yに一列に配列されている。なお、吐出ヘッドHの配列態様は
図3の例に限られず、複数の吐出ヘッドHを千鳥状に配列しても構わない。
【0039】
この吐出ヘッドHは、ハウジングHaを有し、ハウジングHaの底面は、印刷媒体Mの表面M1に対向するインク吐出平面Hbである。このインク吐出平面Hbでは、複数のノズルHcが水平方向Yに配列されて開口する。なお、
図3の例では、複数のノズルHcは1列に配列されているが、これらノズルHcの配列態様はこの例に限られず、例えば水平方向Yに千鳥状にこれらノズルHcを配列してもよい。こうしてインク吐出平面Hbに設けられた各ノズルHcは、印刷媒体Mの表面M1へ向けてインクを吐出する。なお、インクの吐出は、ピエゾ方式あるいはサーマル方式といった各種のインクジェット技術により実行できる。
【0040】
また、印刷装置3は、各吐出ヘッドHに対してメンテナンスを実行するメンテナンスユニット51(
図4)を備える。続いては、
図4を用いて、メンテナンスユニット51について説明を行う。なお、メンテナンスユニット51は、複数のヘッドユニット321,331のそれぞれに対して配置されているが、各ヘッドユニット321、331に設けられたメンテナンスユニット51の構成及び動作は共通する。そのため、ここでは一のメンテナンスユニット51について説明を行う。
【0041】
図4はメンテナンスユニットの構成および動作を模式的に示す図である。
図4に示すように、印刷装置3は、メンテナンスユニット51と、メンテナンスユニット51を水平方向Yに駆動する直動機構55とを備える。この直動機構55は、例えばボールネジやリニアモータによって構成され、対向位置Laと、水平方向Yにおいて対向位置Laに間隔を空けて設けられた退避位置Lbとの間で、メンテナンスユニット51を移動させる。対向位置Laに位置するメンテナンスユニット51は複数の吐出ヘッドHに対向する一方、退避位置Lbに位置するメンテナンスユニット51は複数の吐出ヘッドHに対向しない。また、メンテナンスユニット51との干渉を回避するために、複数の吐出ヘッドHは一体的に昇降することができる。特に複数の吐出ヘッドHは、印刷高さHl、印刷高さHlより高いキャップ高さHmおよびキャップ高さHmより高い退避高さHhのいずれかに位置する。
【0042】
このメンテナンスユニット51は、下側から吐出ヘッドHを覆うキャップ53と、後に詳述するクリーニングユニット6を有する。このクリーニングユニット6は、吐出ヘッドHのインク吐出平面Hbに付着したインクをシートSによって拭き取るクリーニングを実行する。シートSとしては長尺な帯状の布が用いられる。ただし、シートSの素材は布に限られず、例えば紙でもよい。続いては、シートSを用いたクリーニングの実行手順について、
図4のステップS101~S105を通じて説明する。
【0043】
図4のステップS101の欄では、吐出ヘッドHのノズルHcからインクを吐出して印刷媒体Mに画像を印刷する印刷動作を実行している状態を示す。このステップS101では、吐出ヘッドHは印刷高さHlに位置し、メンテナンスユニット51は退避位置Lbに位置する。この印刷動作が終了すると、複数の吐出ヘッドHは印刷高さHlから退避高さHhに上昇する(ステップS102)。これによって、各吐出ヘッドHの下方に、メンテナンスユニット51が進入するスペースが形成される。
【0044】
ステップS103では、メンテナンスユニット51は退避位置Lbから対向位置Laへ向けて移動を開始する。これによって、クリーニングユニット6は、吐出ヘッドHのインク吐出平面HbにシートSを接触させつつ、水平方向Yに速度V6で移動する。こうして、インク吐出平面Hbに付着したインクがシートSによって拭き取られる(クリーニング)。
【0045】
メンテナンスユニット51が対向位置Laに到着すると(ステップS104)、メンテナンスユニット51のキャップ53が複数の吐出ヘッドHに下方から対向する。一方、クリーニングユニット6は、水平方向Yにおいて複数の吐出ヘッドHから突出した位置で停止する。続いて、複数の吐出ヘッドHは退避高さHhからキャップ高さHmへ下降する(ステップS105)。これによって、各吐出ヘッドHがキャップ53によって下側から覆われる(キャッピング)。
【0046】
図5は側面視においてクリーニングユニットの構成を模式的に示す部分側面図であり、
図6は平面視においてクリーニングユニットの構成を模式的に示す部分断面図である。
図5では、手前の部材によって隠れる部材は破線で表している。なお、クリーニングユニット6は、クリーニングの対象となるヘッドユニット321あるいはヘッドユニット331の姿勢に応じて若干傾斜する。ただし、クリーニングユニット6の傾斜は僅かであるため、これらの図では傾斜は表していない。
【0047】
クリーニングユニット6はハウジング60を備える。このハウジング60は、水平方向Xに直交して水平方向Yに延設された隔壁601を有する。隔壁601は、水平方向Xからの側面視において矩形状を有する。また、ハウジング60は、水平方向Yに間隔を空けて配列された一対の隔壁602、603を有する。隔壁602、603のそれぞれは、隔壁601からハウジング60の内側(
図6の上側)に向けて水平方向Xに延設され、水平方向Yに直交する。このように、隔壁601は、水平方向Yにおいて隔壁602と隔壁603との間に設けられた中央部601aと、中央部601aの両側に設けられた端部601b、601cとを有する。水平方向Yにおいて、端部601bは、隔壁602より中央部601aの反対側に突出し、端部601cは、隔壁603より中央部601aの反対側に突出する。
【0048】
こうして、隔壁601の中央部601a、隔壁602および隔壁603により3方向から区分けされたクリーニング領域Ac(ハウジング60の内部領域)と、隔壁601に対してクリーニング領域Acの反対側のフロント領域Afと、隔壁601の端部601bと隔壁602によって2方向から区分けされたサイド領域Aslと、隔壁601の端部601cと隔壁603によって2方向から区分けされたサイド領域Asrとが設けられる。つまり、平面視において、クリーニング領域Acとフロント領域Afとは、隔壁601の中央部601aによって区分けされ、クリーニング領域Acとサイド領域Aslとは、隔壁602によって区分けされ、クリーニング領域Acとサイド領域Asrとは、隔壁603によって区分けされる。
【0049】
また、クリーニングユニット6は、クリーニング領域AcにおいてシートSを搬送する巻出ローラ61と巻取ローラ62とを有する。巻出ローラ61と巻取ローラ62とは、水平方向Yに間隔を空けて隔壁602と隔壁603との間に配列され、巻出ローラ61は、隔壁602、603のうち隔壁602に偏って配置され、巻取ローラ62は、隔壁602、603のうち隔壁603に偏って配置される。特にクリーニングユニット6は、上述のクリーニング(ステップS103)の実行中において、巻出ローラ61から巻取ローラ62へロール・トゥ・ロールでシートSを搬送することで、吐出ヘッドHのインク吐出平面Hbに対して新しいシートSを継続的に供給する。
【0050】
巻出ローラ61は水平方向Xに平行に配置され、水平方向Xに平行な回転中心の周りで回転可能に隔壁601によって支持される。巻出ローラ61は、円筒形のローラ本体611と、ローラ本体611と同軸に設けられた円筒形の回転軸612とを有する。回転軸612の径はローラ本体611の径よりも短く、回転軸612はローラ本体611から水平方向Xに突出する。ローラ本体611は、クリーニング領域Acに配置され、回転軸612は、隔壁601に設けられた貫通孔を介して、クリーニング領域Acからフロント領域Afへ向けて隔壁601の中央部601aを貫通する。これに対して、隔壁601の中央部601aには一対の軸受631が取り付けられている。一対の軸受631のうち、一の軸受631は、隔壁601の貫通孔において回転軸612を回転可能に支持し、他の軸受631は、フロント領域Afに配置されて、隔壁601からフロント領域Afへ突出した回転軸612の端部を回転可能に支持する。こうして、回転軸612は、一対の軸受631によって回転可能に支持されている。
【0051】
巻取ローラ62は水平方向Xに平行に配置され、水平方向Xに平行な回転中心の周りで回転可能に隔壁601によって支持される。巻取ローラ62は、円筒形のローラ本体621と、ローラ本体621と同軸に設けられた円筒形の回転軸622とを有する。回転軸622の径はローラ本体621の径よりも短く、回転軸622はローラ本体621から水平方向Xに突出する。ローラ本体621は、クリーニング領域Acに配置され、回転軸622は、隔壁601に設けられた貫通孔を介して、クリーニング領域Acからフロント領域Afへ向けて隔壁601の中央部601aを貫通する。これに対して、隔壁601の中央部601aには一対の軸受632が取り付けられている。一対の軸受632のうち、一の軸受632は、隔壁601の貫通孔において回転軸622を回転可能に支持し、他の軸受632は、フロント領域Afに配置されて、隔壁601からフロント領域Afへ突出した回転軸622の端部を回転可能に支持する。こうして、回転軸622は、一対の軸受632によって回転可能に支持されている。
【0052】
そして、巻出ローラ61のローラ本体611にはシートSの一端がロール状に巻き付けられ、巻取ローラ62のローラ本体621にはシートSの他端がロール状に巻き付けられている。つまり、ロール状のシートSで構成される巻出ロールRuが巻出ローラ61によって支持され、ロール状のシートSで構成される巻取ロールRrが巻取ローラ62によって支持される。これら巻出ロールRuおよび巻取ロールRrは、クリーニング領域Acに配置される。シートSは、インクを拭き取る表面と、表面と逆側の裏面とを有し、巻出ロールRuはシートSの表面が外側に位置するように巻かれ、巻取ロールRrはシートSの表面が内側に位置するように巻かれている。
【0053】
また、クリーニングユニット6は、クリーニング領域Acに配置された拭き取りローラ641、巻き掛けローラ642および巻き掛けローラ643を備える。拭き取りローラ641は、巻出ローラ61と巻取ローラ62との間で水平方向Xに平行に配置され、巻き掛けローラ642は、巻出ローラ61と拭き取りローラ641との間で水平方向Xに平行に配置され、巻き掛けローラ643は、拭き取りローラ641と巻取ローラ62との間で水平方向Xに平行に配置されている。ハウジング60は、これらのローラ641、642、643に対して設けられた支持プレート604を有し、隔壁601と支持プレート604とは、水平方向Xからローラ641、642、643を挟みつつ、これらを回転可能に支持する。つまり、ローラ641、642、643は、水平方向Xに平行な回転中心の周りで回転可能である。
【0054】
巻き掛けローラ642は、巻出ローラ61の巻出ロールRuから巻き出されたシートSの表面に上側から接触し、巻き掛けローラ643は、巻取ローラ62の巻取ロールRrに巻き取られるシートSの表面に上側から接触する。一方、拭き取りローラ641は、巻き掛けローラ642および巻き掛けローラ643より上側に配置され、巻き掛けローラ642から巻き掛けローラ643へ搬送されるシートSの裏面に下側から接触する。この拭き取りローラ641は、隔壁601から上側へ部分的に突出する。そのため、拭き取りローラ641に巻き掛けられたシートSは、隔壁601から上側へ突出して、吐出ヘッドHのインク吐出平面Hbに接触する。つまり、拭き取りローラ641は、シートSの表面を吐出ヘッドHのインク吐出平面Hbに接触させて、シートSの表面でインクを拭き取る機能を果たす。
【0055】
さらに、クリーニングユニット6は、クリーニング領域Acに配置された吐出ロッド644を備える。吐出ロッド644は、巻き掛けローラ642から拭き取りローラ641へ搬送されるシートSの表面に上側から対向するように、隔壁601と支持プレート604とに支持されている。この吐出ロッド644は、下側のシートSの表面に向けて洗浄液を吐出する。これによって、拭き取りローラ641に到達する前のシートSの表面に洗浄液が供給される。この洗浄液は、インクの成分のうち着色成分(顔料・染料)以外の成分で例えば構成される。
【0056】
また、クリーニングユニット6は、巻出ローラ61の回転数を検出する回転検出器65を備える。この回転検出器65は、フロント領域Afに配置され、隔壁601の端部601bに取り付けられている。具体的には、回転検出器65は、フロント領域Afに配置された回転板651(回転羽)と、回転板651を支持する回転軸652とを有する。回転軸652は回転板651と同軸に設けられて、円筒形を有する。回転軸652は、隔壁601の端部601bに設けられた貫通孔を介して、フロント領域Afからサイド領域Aslへ向けて隔壁601を貫通する。これに対して、隔壁601の端部601bには一対の軸受633が取り付けられている。一対の軸受633のうち、一の軸受633は、隔壁601の貫通孔において回転軸652を回転可能に支持し、他の軸受633は、フロント領域Afに設けられて、隔壁601からフロント領域Afへ突出した回転軸652の端部を回転可能に支持する。こうして、回転軸652と当該回転軸652に取り付けられた回転板651とは、一対の軸受633によって回転可能に支持されている。
【0057】
さらに、回転検出器65は、フロント領域Afに配置されたフォトセンサ655と、フォトセンサ655を隔壁601の端部601bに取り付ける取付金具656とを有する。フォトセンサ655は、投光部Peと受光部Pdとを有する。回転板651の周縁部は、投光部Peと受光部Pdとの間に位置し、投光部Peから射出された光が回転板651で遮られると受光部Pdが光を検出せず、投光部Peから射出された光が回転板651を通過すると受光部Pdが光を検出する。
【0058】
図7Aは回転板の構成を模式的に示す図であり、
図7Bは
図7Aの曲線で囲まれた範囲を部分的に拡大して示す部分拡大図である。
図7Aに示すように、回転板651の周縁部には、複数の歯Tが円周方向において間隔を空けて配列されている。そして、フォトセンサ655の投光部Peから射出された光が歯Tで遮られると、受光部Pdは光を検出せずに、フォトセンサ655はオフ信号を出力する。一方、フォトセンサ655の投光部Peから射出された光が歯Tと歯Tとの間のスリットを通過すると、受光部Pdが光を検出して、フォトセンサ655はオン信号を出力する。したがって、フォトセンサ655がオン信号とオフ信号とを交互に出力する時間間隔に基づき、回転板651の回転数を検出できる。
【0059】
特に、
図7Bに示すように、歯Tの幅は周期的に変化する。つまり、角度θ1(=4°)の幅の歯T、角度θ1より大きい角度θ2(=5°)の幅の歯Tおよび角度θ2より大きい角度θ3(=6°)の幅の歯Tがこの順番で周期的に配列されるように、複数の歯Tが設けられている。したがって、
図7Bにおいて、時計回りに回転板651が回転した場合には、フォトセンサ655は、角度θ1、θ2、θ3の順番で歯Tを検出し、反時計回りに回転板651が回転した場合には、フォトセンサ655は、角度θ3、θ2、θ1の順番で歯Tを検出する。したがって、フォトセンサ655がオフ信号を出力する時間間隔の変化に基づき、回転板651の回転方向を検出することができる。
【0060】
図5および
図6に戻って説明を続ける。このように、回転検出器65は、回転板651の回転数をフォトセンサ655によって検出する機構を備える。また、回転検出器65では、ワンウェイクラッチあるいはトルクリミッタが回転軸652に取り付けられており、所定値以上のトルクが加わると、回転軸652が回転するように構成されている。
【0061】
また、クリーニングユニット6は、フロント領域Afに配置された回転伝達部66を備え、この回転伝達部66によって巻出ローラ61の回転を回転検出器65に伝達する。この回転伝達部66は、巻出ローラ61の回転軸612に取り付けられたプーリ661と、回転板651の回転軸652に取り付けられたプーリ662と、プーリ661とプーリ662とに架け渡された無端状のタイミングベルト663と、タイミングベルト663に上側から接触する巻き掛けローラ664とを有する。したがって、巻出ローラ61の回転は、プーリ661、タイミングベルト663およびプーリ662によって回転板651に伝達される。よって、フォトセンサ655の出力(オン信号・オフ信号)に基づき、巻出ローラ61の回転数や回転方向を検出することができる。なお、プーリ661、662は同一の径を有しており、巻出ローラ61の回転数と回転検出器65の回転板651の回転数とは等しい。
【0062】
さらに、クリーニングユニット6は、巻取ローラ62を回転させる巻取モータ67を備える。巻取モータ67は、モータ本体671と、モータ本体671から水平方向Xに突出した回転軸672とを有する。モータ本体671はサイド領域Asrに配置される一方、回転軸672は、隔壁601の端部601cに設けられた貫通孔を介して、サイド領域Asrからフロント領域Afへと突出する。この回転軸672は、モータ本体671が出力する回転駆動力によって、水平方向Xに平行な回転中心の回りで回転する。
【0063】
また、クリーニングユニット6は、フロント領域Afに配置された回転伝達部68を備え、この回転伝達部68によってモータ本体671の回転軸672の回転を巻取ローラ62に伝達する。この回転伝達部68は、巻取モータ67の回転軸672に取り付けられたプーリ681と、巻取ローラ62の回転軸622に取り付けられたプーリ682と、プーリ681とプーリ682とに架け渡された無端状のタイミングベルト683と、タイミングベルト683に上側から接触する巻き掛けローラ684とを有する。したがって、巻取モータ67の回転軸672の回転は、プーリ681、タイミングベルト683およびプーリ682によって巻取ローラ62に伝達される。よって、巻取モータ67は、巻取ローラ62を所定の回転数で回転させることができる。なお、プーリ681、682は同一の径を有しており、巻取モータ67の回転軸672の回転数と巻取ローラ62の回転数とは等しい。
【0064】
このクリーニングユニット6では、
図5に示すように、巻出ローラ61のローラ本体611は径Dsuを有し、巻出ロールRuは径Druを有し、巻取ローラ62のローラ本体621は径Dsrを有し、巻取ロールRrは径Drrを有する。また、巻出ローラ61は回転数Nu(rpm)で回転することでシートSを巻き出し、巻取ローラ62は回転数Nr(rpm)で回転することでシートSを巻き取る。なお、ここの例では、径Dsuと径Dsrとは等しい。ただし、これらは異なっていても構わない。
【0065】
図8は印刷装置が備える電気的構成を示す図である。
図8に示すように、印刷装置3は、制御部391と記憶部392とを備える。制御部391はCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部392はHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。制御部391は、印刷装置3の各部を制御し、記憶部392は、後述するクリーニングユニット6でのシート搬送制御に使用するデータ(目標速度Vtおよび定数パラメータCp)を記憶する。目標速度Vtは、クリーニングにとって最適なシートSの搬送速度を実験的に求めた結果に基づき設定されて、記憶部392に予め記憶されている。さらに、印刷装置3は、UI(User Interface)393を備える。このUI393は、ディスプレイへの表示や、警告音等によって作業者に報知を行うことができる。
図8に示すように、制御部391は、その機能部として、直動機構駆動制御部391aと、巻取モータ制御部391b、巻出ローラ回転方向判別部391c、巻取回転数算定部391d、巻出回転数算定部391e、算出部391fと、とを含む。直動機構駆動制御部391aは、メンテナンスユニット51を水平方向Yに移動させるように直動機構55を制御する。
【0066】
上述した
図4でのクリーニングでは、直動機構駆動制御部391aは、メンテナンスユニット51を水平方向Yに駆動するように直動機構55を制御する。これによって、メンテナンスユニット51に設けられたクリーニングユニット6は、水平方向Yに速度V6で移動する。この際、巻取モータ制御部391bは、巻取モータ67にモータ指令値Cm(パルス信号)を送信して、モータ指令値Cmが示す回転数で巻取モータ67の回転軸672が回転するように制御する。この制御によって、水平方向YにシートSは、速度Vsで搬送される。これによって、拭き取りローラ641とインク吐出平面Hbとに挟まれたシートSは、速度V6で移動されつつ、当該速度V6と同じ方向に速度Vsで搬送される。続いては、クリーニングの際に実行されるシートSの搬送制御について説明する。
【0067】
図9はシート搬送制御の一例を示すフローチャートである。
図9の各ステップは、制御部391によって実行される。ステップS201では、巻出ローラ回転方向判別部391cは、フォトセンサ655の出力が示す巻出ローラ61の回転方向を確認した結果に基づき、巻出ローラ61の回転方向が適切かを判断する。この回転方向が適切でない場合(ステップS201で「NO」の場合)には、巻取モータ制御部391bは、巻取モータ67を停止させるとともに、巻出ローラ61に装着されたシートSの向きが不適切であることを示すエラー報知をUI393に実行させる(ステップS202)。
【0068】
巻出ローラ61の回転方向が適切である場合(ステップS201で「YES」の場合)には、巻取回転数算定部391dは、巻取モータ67に出力したモータ指令値Cmに基づき、巻取ローラ62の回転数Nr(rpm)を確認する(ステップS203)。上述の通り、プーリ681、682の径が等しいことから、モータ指令値Cmが示す巻取モータ67の回転軸672の回転数が、巻取ローラ62の回転数となる。ただし、プーリ681、682が異なる径を有していても構わない。この場合には、巻取回転数算定部391dは、プーリ681、682の径の違いに応じて、モータ指令値Cmが示す回転数に基づき巻取ローラ62の回転数を求めればよい。
【0069】
ステップS204では、巻出回転数算定部391eが、フォトセンサ655の出力に基づき、巻出ローラ61の回転数Nu(rpm)を確認する。上述の通り、プーリ661、662の径が等しいことから、フォトセンサ655の出力が示す回転板651の回転数が、巻出ローラ61の回転数となる。ただし、プーリ661、662が異なる径を有していても構わない。この場合には、巻出回転数算定部391eは、プーリ661、662の径の違いに応じて、フォトセンサ655の出力に基づき巻出ローラ61の回転数を求めればよい。なお、ステップS203、S204の実行順序はここの例に限られず、逆でも同時でも良い。
【0070】
ステップS205では、算出部391fは、巻取ローラ62の回転数Nrと、巻出ローラ61の回転数Nuとの比に基づき、巻取ロールRrの径Drrを算出する。この径Drrの算出は、次の知見に基づくものである。つまり、巻出ロールRuから巻取ロールRrまでのシートSの長さがシートSの全長Ltに対して十分に短い場合には、次式
Lt=Lu+Lr
が成立する。ここで、長さLuは、巻出ローラ61に巻き付けられたシートS(すなわち、巻出ロールRuを構成するシートS)の長さであり、長さLrは、巻取ローラ62に巻き付けられたシートS(すなわち、巻取ロールRrを構成するシートS)の長さである。また、巻出ローラ61に巻き付けられたシートSで構成される巻出ロールRuの側面の面積Auと、巻取ローラ62に巻き付けられたシートSで構成される巻取ロールRrの側面の面積Arと、シートSの厚みtwとを用いて、
Lu=Au/tw
Lr=Ar/tw
と表せる。これらを連立すると、
Drr2×(Dru2/Drr2+1)=4×Lt×tw/π+(Dsr2+Dsu2)
が得られる。さらに、シートSの搬送速度が一定とすると、次式
Dru/Drr=Nr/Nu
が成立する。その結果、
Drr2×(Nr2/Nu2+1)=4×Lt×tw/π+(Dsr2+Dsu2)
が得られる。したがって、巻取ローラ62の径Drrは次式
{(4×Lt×tw/π+(Dsr2+Dsu2))/(Nr2/Nu2+1)}1/2
で与えられる。つまり、径Drrの変数は、回転数Nrと回転数Nuとの比のみである。
【0071】
なお、その他の定数は、定数パラメータCpとして予め取得されて記憶部392に保存されている。すなわち、以下の定数
・シートSの全長Lt
・シートSの厚みtw
・巻出ローラ61の径Dsu
・巻取ローラ62の径Dsr
は、定数パラメータCpとして記憶部392に保存されている。
【0072】
ステップS206では、巻取モータ制御部391bは、巻取ロールRrの径Drrに基づき、シートSを目標速度Vtで搬送するために必要となる巻取ローラ62の回転数を算出して、当該回転数に基づきモータ指令値Cmを算出する。そして、巻取モータ制御部391bが、巻取モータ67にモータ指令値Cmを送信する。モータ指令値Cmを受信した、巻取モータ67は、が制御部391から受信したモータ指令値Cmに基づき巻取ローラ62を回転させる。これによって、巻出ローラ61から引き出されたシートSが巻取ローラ62に巻き取られて、シートSが目標速度Vtで搬送される。
【0073】
以上に示す実施形態では、巻取ローラ62の回転数Nr(巻取回転数)と、巻出ローラ61の回転数Nu(巻出回転数)との比が用いられる。つまり、上述のように、巻取ローラ62に巻き取られたシートSのロール径Drrは、回転数Nrと回転数Nuとの比を変数とする関数によって与えられるとの知見が得られた。そこで、これらの比からロール径Drrが算出される。こうして、吐出ヘッドHからインクを拭き取るシートSを巻き取る巻取ローラ62におけるシートSのロール径Drrを取得することが可能となっている。
【0074】
また、巻取モータ67は、巻取モータ制御部391bから受信したモータ指令値Cmが示す回転数で回転する。これに対して、巻取回転数算定部391dは、モータ指令値Cmが示す回転数に基づき巻取ローラ62の回転数Nrを求める。かかる構成では、巻取ローラ62の回転数Nrを検出するための検出器を別途設ける必要がないため、クリーニングユニット6の簡素化や小型化を図ることができる。
【0075】
また、巻出ローラ61、拭き取りローラ641および巻取ローラ62が配置されたクリーニング領域Acと、回転検出器65が配置されたフロント領域Af(第1領域)とを区分けする隔壁601(第1隔壁)が設けられている。かかる構成では、吐出ヘッドHから拭き取られたインクが回転検出器65に飛び散って回転検出器65が汚染されるのを、隔壁601によって抑制することができる。特にフォトセンサ655にインクが付着すると、巻出ローラ61の回転数を的確に求めることが難しくなるのに対して、隔壁601によってフォトセンサ655へのインクの付着を抑制できる。
【0076】
また、クリーニング領域Acと、巻取モータ67が配置されたサイド領域Asr(第2領域)とを区分けする隔壁603(第2隔壁)が設けられている。かかる構成では、吐出ヘッドHから拭き取られたインクがモータ本体671に飛び散るのを、隔壁603によって抑制することができる。特に巻取モータ67にインクが付着すると、巻取モータ67の電気系統の劣化を引き起こす恐れがあるのに対して、隔壁603によって電気系統へのインクの付着を抑制できる。
【0077】
また、巻出ローラ61の回転を回転検出器65に伝達する回転伝達部66(第1回転伝達部)が設けられている。このように回転伝達部66を介在させることで、巻出ローラ61から回転検出器65を離すことができる。その結果、吐出ヘッドHから拭き取られたインクが回転検出器65に飛び散って、回転検出器65が汚染されるのを抑制することができる。
【0078】
また、
図5および
図6に示すように、回転検出器65は、水平方向Yにおいて、巻出ローラ61に対して拭き取りローラ641の反対側に配置されている。かかる構成では、拭き取りローラ641から離して回転検出器65が配置される。その結果、吐出ヘッドHから拭き取られたインクが回転検出器65に飛び散って、回転検出器65が汚染されるのを抑制することができる。
【0079】
また、巻取モータ67の回転を巻取ローラ62に伝達する回転伝達部68(第2回転伝達部)が設けられている。このように回転伝達部68を介在させることで、巻取ローラ62から巻取モータ67を離すことができる。その結果、吐出ヘッドHから拭き取られたインクが巻取モータ67に飛び散って、巻取モータ67が汚染されるのを抑制することができる。
【0080】
また、
図5および
図6に示すように、巻取モータ67は、水平方向Yにおいて、巻取ローラ62に対して拭き取りローラ641の反対側に配置されている。かかる構成では、拭き取りローラ641から離して巻取モータ67が配置される。その結果、吐出ヘッドHから拭き取られたインクが巻取モータ67に飛び散って、巻取モータ67が汚染されるのを抑制することができる。
【0081】
また、回転検出器65は、巻出ローラ61の回転方向を検出する。かかる構成では、作業者がシートSの補充のために巻出ローラ61に装着したシートSの向きを間違ったことを、巻出ローラ61の回転方法によって確認できる。その結果、シートSの誤装着を検出することができる。
【0082】
上述の様に、本実施形態では、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、制御部391が本発明の「制御部」の一例に相当し、巻取モータ制御部391bが本発明の「巻取モータ制御部」の一例に相当し、算出部391fが、本発明の「算出部」の一例に相当し、巻取回転数算定部391dが本発明の「巻取回転数算定部」の一例に相当し、クリーニングユニット6が本発明の「クリーニングユニット」の一例に相当し、隔壁601が本発明の「第1隔壁」の一例に相当し、隔壁603が本発明の「第2隔壁」の一例に相当し、巻出ローラ61が本発明の「巻出ローラ」の一例に相当し、巻取ローラ62が本発明の「巻取ローラ」の一例に相当し、拭き取りローラ641が本発明の「拭き取りローラ」の一例に相当し、回転検出器65が本発明の「回転検出器」の一例に相当し、回転伝達部66が本発明の「第1回転伝達部」の一例に相当し、巻取モータ67が本発明の「巻取モータ」の一例に相当し、回転伝達部68が本発明の「第2回転伝達部」の一例に相当し、フロント領域Afが本発明の「第1領域」の一例に相当し、クリーニング領域Acが本発明の「巻出ローラ、拭き取りローラおよび巻取ローラが配置された領域」の一例に相当し、サイド領域Asrが本発明の「第2領域」の一例に相当し、モータ指令値Cmが本発明の「モータ指令値」の一例に相当し、径Drrが本発明の「ロール径」の一例に相当し、吐出ヘッドHが本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、回転数Nuが本発明の「巻出回転数」の一例に相当し、回転数Nrが本発明の「巻取回転数」の一例に相当し、シートSが本発明の「シート」の一例に相当する。
【0083】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、制御部391は、巻取回転数Nrと巻出回転数Nuとの比に基づき、巻出ローラ61にロール状に巻き付けられたシートSのロール径Druを算出することができる。ここで、巻取回転数Nrおよび巻出回転数Nuの比と径Druとの関係は、上述の知見で示した関係と同様にして求められる。かかる構成では、制御部391は、巻出ローラ61に巻き付けられたシートSの残量を取得することができる。かかる残量は、例えばUI393のディスプレイに表示してもよい。
【0084】
また、上記で示すメンテナンスユニット51の動作は一例に過ぎず、メンテナンスユニット51がクリーニングを実行するタイミングや方法は適宜変更できる。したがって、印刷動作の開始前にクリーニングを実行しても良いし、吐出ヘッドHのノズルHcからインクを押し出すあるいは吸い出すパージの実行後にクリーニングを実行してもよい。あるいは、クリーニングユニット6が対向位置Laから退避位置Lbへ向けて移動する際にクリーニングを実行できるように、クリーニングユニット6の構成を変更してもよい。
【0085】
また、回転伝達部66あるいは回転伝達部68の具体的な機構は、プーリとタイミングベルトとを用いた機構に限られず、例えばギア列によって回転を伝達する機構でもよい。
【0086】
また、回転伝達部66を設けずに、回転検出器65の回転板651を巻出ローラ61に同軸に設けてもよい。
【0087】
また、回転伝達部68を設けずに、巻取モータ67の回転軸672を巻取ローラ62に同軸に設けてもよい。この場合、巻取モータ67をフロント領域Afに配置するとよい。
【0088】
また、回転検出器65の回転板651の構成を適宜変更してもよい。例えば、複数の歯Tの幅を同一にしてもよい。
【0089】
また、吐出ヘッドHを水平方向Yに移動させることで、吐出ヘッドHのインク吐出平面HbのインクをシートSにより拭き取ってクリーニングを実行してもよい。要するに、吐出ヘッドHに対してクリーニングユニット6を相対的に移動させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、インクを吐出する吐出ヘッドをシートにより清掃する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
3…印刷装置
391…制御部
391b…巻取モータ制御部
391d…巻取回転数算定部
391f…算出部
6…クリーニングユニット
601…隔壁(第1隔壁)
603…隔壁(第2隔壁)
61…巻出ローラ
62…巻取ローラ
641…拭き取りローラ
65…回転検出器
66…回転伝達部(第1回転伝達部)
67…巻取モータ
68…回転伝達部(第2回転伝達部)
Af…フロント領域(第1領域)
Ac…クリーニング領域
Asr…サイド領域(第2領域)
Cm…モータ指令値
Drr…径(ロール径)
H…吐出ヘッド
Nu…回転数(巻出回転数)
Nr…回転数(巻取回転数)
S…シート