(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】新規な製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/05 20060101AFI20250303BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250303BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250303BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250303BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
A61K38/05
A61K47/10
A61K9/08
A61P35/02
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021560977
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2020060900
(87)【国際公開番号】W WO2020212594
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-24
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】524317725
【氏名又は名称】オンコペプティデス・イノベーション・エービー
【氏名又は名称原語表記】Oncopeptides Innovation AB
【住所又は居所原語表記】Luntmakargatan 46, 111 37 Stockholm, SWEDEN
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーマン、フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】テオドロビック、ペーテル
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535243(JP,A)
【文献】国際公開第2019/185859(WO,A1)
【文献】特表2021-519817(JP,A)
【文献】特表2014-512402(JP,A)
【文献】特表2004-503564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/05
A61K 47/10
A61K 9/08
A61P 35/02
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
i)メルフルフェン又はその塩;
ii)プロピレングリコール;
iii)必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び
iv)必要に応じて、1種以上の治療薬
を含有する(又は本質的にからなる)製剤であって、
前記メルフルフェン又はその塩の濃度が1mg/mL~50mg/mLであり、前記製剤はPEG又はプロピレングリコール以外の有機溶媒を実質的に含ま
ず、かつ、前記製剤はカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を実質的に含まない、製剤。
【請求項2】
前記メルフルフェン又はその塩の濃度が約10mg/mL~約50mg/mLである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記メルフルフェン又はその塩の濃度が約15mg/mL~約25mg/mLである、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
以下の成分:
i)メルフルフェン又はその塩;
ii)ポリエチレングリコール;
iii)必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び
iv)必要に応じて、1種以上の治療薬
を含有する(又は本質的にからなる)製剤であって、
前記メルフルフェン又はその塩の濃度が1mg/mL~50mg/mLであり、前記製剤はPEG又はプロピレングリコール以外の有機溶媒を実質的に含ま
ず、かつ、前記製剤はカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を実質的に含まない、製剤。
【請求項5】
前記メルフルフェン又はその塩の濃度が約10mg/mL~約50mg/mLである、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記メルフルフェン又はその塩の濃度が約15mg/mL~約25mg/mLである、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量が150~650Da、例えば150~250、250~350、350~450、450~550、550~650Daである、請求項4~6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量が250~350Daである、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記ポリエチレングリコールはPEG300である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
本質的にメルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール、及び必要に応じて、1種以上の治療薬からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
本質的にメルフルフェン又はその塩、ポリエチレングリコール、及び必要に応じて、1種以上の治療薬からなる、請求項4~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記1種以上の生理学的に許容可能な溶液は、グルコース溶液、生理食塩液又はそれらの混合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記1種以上の治療薬の少なくとも1つが、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)又はアルキル化剤である、請求項1~12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
医薬品として使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
例えば、アルキル化剤(例.メルファラン、シクロホスファミド、ベンダムスチン)といった従来の化学療法剤で治療してもよい疾患又は状態の治療又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
がんの治療若しくは予防に使用するため、又はアミロイドーシスの治療若しくは予防に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
前記がんが、多発性骨髄腫、乳がん、肺がん、卵巣がん、白血病及びリンパ腫から選択される、がんの治療又は予防に使用するための、請求項16に記載の使用のための製剤。
【請求項18】
請求項1~13に記載の製剤の調製方法であって、メルフルフェン又はその塩をプロピレングリコールに溶解することを含む、方法。
【請求項19】
請求項1~13に記載の製剤の調製方法であって、メルフルフェン又はその塩をポリエチレングリコールに溶解することを含む、方法。
【請求項20】
メルフルフェン又はその塩の保存方法であって、請求項1~13に記載の製剤を調製する工程、並びに前記製剤を約-90~25℃、好ましくは、約5℃(例.5±3℃)以下、例えば約0~4℃、約-20℃(例.-20±3℃)及び約-80℃(例.-80±3℃)で保存する工程を含む、方法。
【請求項21】
メルフルフェン又はその塩;プロピレングリコール;必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び、必要に応じて、1種以上の治療薬を含有
し、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を実質的に含有しない、キット。
【請求項22】
メルフルフェン又はその塩;ポリエチレングリコール;必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び、必要に応じて、1種以上の治療薬を含有
し、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を実質的に含有しない、キット。
【請求項23】
前記メルフルフェンは、塩酸塩、エタンスルホン酸塩、マレイン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩、好ましくは塩酸塩の形態である、請求項1~17のいずれか一項に記載の製
剤。
【請求項24】
前記メルフルフェンは、塩酸塩、エタンスルホン酸塩、マレイン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩、好ましくは塩酸塩の形態である、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記メルフルフェンは、塩酸塩、エタンスルホン酸塩、マレイン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩、好ましくは塩酸塩の形態である、請求項21又は22に記載のキット。
【請求項26】
前記メルフルフェンは重水素化メルフルフェン、例えば、前記メルフルフェンはOPD-5:
【化1】
である、請求項1~17
又は
23のいずれか一項に記載の製
剤。
【請求項27】
前記メルフルフェンは重水素化メルフルフェン、例えば、前記メルフルフェンはOPD-5:
【化2】
である、請求項18~20又は24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記メルフルフェンは重水素化メルフルフェン、例えば、前記メルフルフェンはOPD-5:
【化3】
である、請求項21、22又は25のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルフルフェン又はその塩を含む新規な製剤及びその使用に関する。また、本発明は、キット及び新規な製剤の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メルフルフェン(別名:メルファランフルフェナミド、L-メルファラニル-4-フルオロ-L-フェニルアラニンエチルエステル)はがんの治療、特に多発性骨髄腫の治療に有用な抗腫瘍剤である。メルフルフェンは国際公開第01/96367号及び国際公開第2014/065751号に記載されている。メルフルフェン塩酸塩の構造を以下に示す。
【0003】
【0004】
メルフルフェンは強力で親油性の高いアルキル化剤であり、アルキル化作用を有する代謝物を腫瘍細胞に送達する。親水性の他のアルキル化剤とは対照的に、メルフルフェンの高い親油性は、組織や細胞へのその急速な取り込みにつながる。細胞内に入ると、メルフルフェンはDNAに直接結合するか、又は細胞内のペプチダーゼによってメルファランにたやすく加水分解される若しくは細胞内のエステラーゼによってデスエチルメルフルフェン(L-メルファラニル-4-フルオロ-L-フェニルアラニンと呼ばれることがあり、この化合物もアルキル化能を有する)に加水分解される可能性がある。ヒト腫瘍におけるエステラーゼ及びペプチダーゼの高い活性は、これらの細胞でのメルフルフェンの代謝産物の急速な形成につながり、その後、より多くのメルフルフェンの流入をもたらすと考えられている(Gullbo, J., et al, J Drug Target, (2003) Vol 11, pages 355-363;Wickstrom, M., et al, Biochem Pharmacol (2010) Vol 79, pages 2381-1290)。デスエチルメルフルフェン及びメルファランは比較的親水性であることから、これらの薬剤が細胞内に捕捉される可能性がある。
【0005】
メルフルフェンは、一般的に合成された後に結晶の形態で提供される。この結晶は、製造及び製剤化には適さないことが多い強酸性の水溶液にのみ溶解する。以前の医薬品では、この結晶をジメチルアセトアミド(DMA)及びグルコースの溶液に溶解させた。しかし、この溶液は不安定で、望ましくないメルフルフェンの二量体をたやすく形成した。DMAのような有機溶媒は患者に有害であるかもしれず、投与に使用する医療機器に損傷を与える可能性がある。メルフルフェンの安定な凍結乾燥品は、国際公開第2014/065751号に記載されており、有利な安定性及び溶解特性を示す。
【0006】
有益な安定性と取り扱い特性を示すメルフルフェン又はその塩の液体製剤に対する解決されていない課題が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、以下の成分:
i)メルフルフェン又はその塩;
ii)プロピレングリコール;
iii)必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び
iv)必要に応じて、1種以上の治療薬
を含有する(又は本質的にからなる)製剤に関する。
【0008】
好ましくは、本発明の製剤に含まれるメルフルフェン又はその塩は溶解している。本発明者らは、メルフルフェン及びその塩が驚くべきことにプロピレングリコールに可溶で、以前に用いられた溶媒よりもより高濃度の溶液を調製できることを見いだした。さらに、本発明者らは、メルフルフェン又はその塩をプロピレングリコールを含む製剤として保存した場合、メルフルフェン又はその塩は驚くほど安定で、たやすく望ましくない分解生成物を形成しないことを見いだした。特に安定性の研究では、メルフルフェン塩酸塩(OPD-5)及びプロピレングリコールを含有する製剤は、約5℃(5±3℃(2~8℃))で50日以上保存した場合、(製剤の保存前の純度に対して)95%を超えるメルフルフェン純度を維持することが判明した。さらに、メルフルフェン塩酸塩(OPD-5)及びプロピレングリコールを含有する製剤は、-20℃で保存した場合は少なくとも6か月間、-70℃で保存した場合は少なくとも8か月間安定であることが判明した。また、本発明者らは、メルフルフェンのエタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩又は塩酸塩及びプロピレングリコールを含有する製剤は、室温(20~25℃)で4週間(28日)保存した場合、(製剤の保存前の純度に対して)90%を超えるメルフルフェン純度を維持し、室温で7週間(49日)保存した場合、85%を超えるメルフルフェン純度を維持することを見いだした。
【0009】
本発明は、以下の成分:
i)メルフルフェン又はその塩;
ii)ポリエチレングリコール(PEG);
iii)必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び
iv)必要に応じて、1種以上の治療薬
を含有する(又は本質的にからなる)製剤に関する。
【0010】
好ましくは、本発明の製剤に含まれるメルフルフェン又はその塩は溶解している。本発明者らは、メルフルフェン及びその塩が驚くべきことにPEGに可溶で、以前に用いられた溶媒よりもより高濃度の溶液を調製できることを見いだした。さらに、本発明者らは、メルフルフェン又はその塩をPEGを含む製剤として保存した場合、メルフルフェン又はその塩は驚くほど安定で、たやすく望ましくない分解生成物を形成しないことを見いだした。特に安定性の研究では、PEGを含有する製剤は、約5℃(5±3℃(2~8℃))で50日以上保存した場合、(製剤の保存前の純度に対して)95%を超えるメルフルフェン純度を維持することが判明した。
【0011】
本発明は、さらに、医薬品として使用するための製剤に関する。
【0012】
本発明は、さらに、例えば、アルキル化剤(例.メルファラン、シクロホスファミド、ベンダムスチン)といった従来の化学療法剤で治療してもよい疾患又は状態の治療又は予防に使用するための製剤に関する。
【0013】
本発明は、さらに、がん、例えば、多発性骨髄腫、乳がん、肺がん、卵巣がん、白血病及びリンパ腫から選択されるがんの治療又は予防に使用するための製剤に関する。
【0014】
本発明は、さらに、アミロイドーシスの治療又は予防に使用するための製剤に関する。
【0015】
本発明は、さらに、薬学的に有効な量の本発明の製剤を対象に投与する工程を含む、患者を治療する方法に関する。
【0016】
本発明の製剤は、例えば、事前の希釈(例.生理学的に許容可能な溶媒又は希釈剤による事前の希釈)を行うことなく、対象に直接投与してもよい。したがって、本発明の好ましい態様では、製剤は対象に直接投与される。別の態様では、製剤は、例えば生理学的に許容可能な溶媒又は希釈剤(例.生理食塩液、グルコース溶液又はそれらの混合物)で希釈した後に患者に投与される。
【0017】
本発明は、さらに、メルフルフェン又はその塩をプロピレングリコールに溶解する工程を含む本発明の製剤の調製方法に関する。
【0018】
本発明は、さらに、メルフルフェン又はその塩をPEGに溶解する工程を含む本発明の製剤の調製方法に関する。
【0019】
本発明は、さらに、本発明の製剤を調製する工程及び前記製剤を約-90~25℃で保存する工程を含む、メルフルフェン又はその塩の保存方法に関する。好ましくは、本発明の製剤は、約5℃以下(例.約0~4℃)、約-20℃及び約-80℃で保存される。
【0020】
本発明は、さらに、メルフルフェン又はその塩;プロピレングリコール;必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び、必要に応じて、1種以上の治療薬を含有するキットに関する。
【0021】
本発明は、さらにメルフルフェン又はその塩;PEG;必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び、必要に応じて、1種以上の治療薬を含有するキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、2~8℃、25℃又は40℃で31日間(T
1)保存後の、本質的にメルフルフェン(ODP-5)及びプロピレングリコールからなる製剤(「PG製剤」)の外観を示す。2~8℃で保存した試料に目視できる着色はない。25℃及び40℃で保存した試料は黄~茶色である。
【
図2】
図2は、2~8℃又は25℃で59日間(T
2)保存後のPG製剤の外観を示す。2~8℃で保存した試料に目視できる着色はなく、25℃で保存した試料は黄~茶色である。
【
図3】
図3は、2~8℃又は25℃で98日間(T
3)保存後のPG製剤の外観を示す。2~8℃で保存した試料に目視できる着色はなく、25℃で保存した試料は黄~茶色である。
【
図4】
図4は、2~8℃又は25℃で、168日間(T
4)保存後のPG製剤の外観を示す。2~8℃で保存した試料に目視できる着色はなく、25℃で保存した試料は黄~茶色である。
図2~4より、25℃で保存した試料の着色の強度は、時間の経過(T
2からT
4)とともに増加する。
【
図5】
図5は、25℃で保存した場合のPG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)濃度の経時変化を示す。
【
図6】
図6は、2~8℃で保存した場合のPG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)濃度の経時変化を示す。
【
図7】
図7は、25℃で保存した場合のPG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)純度の経時変化を示す。
【
図8】
図8は、2~8℃で保存した場合のPG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)純度の経時変化を示す。
【
図9】
図9は、2~8℃、25℃又は40℃で26日間(T
1a)保存後の、本質的にメルフルフェン(ODP-5)及びポリエチレングリコールからなる製剤(「PEG製剤」)の外観を示す。2~8℃で保存した試料は、わずかに黄色がかっている。25℃及び40℃で保存した試料は黄~茶色である。
【
図10】
図10は、2~8℃又は25℃で54日間(T
2a)保存後のPEG製剤の外観を示す。2~8℃で保存した試料はわずかに黄色がかっている。25℃で保存した試料は黄~茶色である。25℃で保存した試料と比較して、2~8℃で保存した試料の着色の強度は低い。
【
図11】
図11は、2~8℃又は25℃で94日間(T
3a)保存後のPEG製剤の外観を示す。2~8℃で保存した試料はわずかに黄色がかっている。25℃で保存した試料は黄~茶色である。25℃で保存した試料と比較して、2~8℃で保存した試料の着色の強度は低い。
【
図12】
図12は、2~8℃又は25℃で164日間(T
4a)保存後のPEG製剤の外観を示す。2~8℃で保存した試料はわずかに黄色がかっている。25℃で保存した試料は黄~茶色である。25℃で保存した試料と比較して、2~8℃で保存した試料の着色の強度は低い。
図10~12より、2~8℃及び25℃で保存した試料の着色の強度は、時間の経過(T
2aからT
4a)とともに増加する。
【
図13】
図13は、25℃で保存した場合のPEG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)濃度の経時変化を示す。
【
図14】
図14は、2~8℃で保存した場合のPEG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)濃度の経時変化を示す。
【
図15】
図15は、25℃で保存した場合のPEG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)純度の経時変化を示す。
【
図16】
図16は、2~8℃で保存した場合のPEG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)純度の経時変化を示す。
【
図17】
図17は、-20℃で保存した場合のPG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)濃度の経時変化を示す。エラーバーは、2回の実験の標準偏差を表す。中央の破線は、OPD-5の形態でのメルフルフェンの目標濃度(対イオンの質量を除き約20mg/mL)を表す。上下の破線は、目標濃度の±10%を表す。
【
図18】
図18は、-70℃で保存した場合のPG製剤中のメルフルフェン(OPD-5)濃度の経時変化を示す。エラーバーは、2回の実験の標準偏差を表す。中央の破線は、OPD-5の形態でのメルフルフェンの目標濃度(対イオンの質量を除き約20mg/mL)を表す。上下の破線は、目標濃度の±10%を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下でさらに詳細に説明するように、本発明は、驚くほど安定で、有利な取り扱い特性を示すメルフルフェン及びその塩の製剤を提供する。
【0024】
メルフルフェン及びその塩
本明細書では、用語「メルフルフェン」は、たとえ明記していなくても、その塩を含むことも意図している。
【0025】
また、用語「メルフルフェン」は、特に明記しない限り、メルフルフェンの同位体誘導体を含む。本発明での使用に適したメルフルフェンの同位体誘導体の例は、重水素化メルフルフェン誘導体である。重水素化メルフルフェン誘導体の例及び製造方法は、国際特許出願PCT/EP2019/078250に記載されており、その内容は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0026】
例えば、本発明での使用に適した重水素化メルフルフェン誘導体は式(I):
【0027】
【0028】
(式中、各R1~R30は、独立して、水素及び重水素からなる群から選択され、R1~R30の少なくとも1つは、天然存在比の重水素よりも存在比が大きな重水素である(例えば、R1~R30の少なくとも1つの重水素存在比は、少なくとも1モル%、5モル%、10モル%、50モル%、90モル%又は98モル%(例.少なくとも10モル%、50モル%、90モル%又は98モル%)である)
で示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩であってもよい。例えば、R1~R8の少なくとも1つの重水素存在比は少なくとも5モル%;R9~R15の少なくとも1つの重水素存在比は少なくとも5モル%;R16~R18の少なくとも1つの重水素存在比は少なくとも5モル%;R19~R25の少なくとも1つの重水素存在比は少なくとも5モル%;又はR26~R30の少なくとも1つの重水素存在比は少なくとも5モル%(例えば、R26~R30の少なくとも2つは重水素(例.R26~R30の2つが重水素、R26~R30の3つが重水素、R26~R30の4つが重水素又はR26~R30の全てが重水素)である)である。
【0029】
好ましくは、式(I)の重水素化メルフルフェン誘導体及び/又は以下に示す重水素化メルフルフェン誘導体の立体化学は、本明細書の背景技術の項に示したメルフルフェンの構造に示されている。
【0030】
ある態様では、本発明での使用に適した重水素化メルフルフェン誘導体は、以下の群:
【0031】
【0032】
から選択される化学構造式、以下の群:
【0033】
【0034】
から選択される化学構造式、以下の群:
【0035】
【0036】
から選択される化学構造式、又は、以下の群:
【0037】
【0038】
から選択される化学構造式を有する。
【0039】
ある態様では、本発明での使用に適したメルフルフェンの重水素化誘導体は、OPD-5であり、その構造を以下に示す。
【0040】
【0041】
ある態様では、本発明での使用に適した重水素化メルフルフェン誘導体は、以下の群:
【0042】
【0043】
から選択される。
【0044】
また、本明細書では、特に明記しない限り、メルフルフェンの質量は、対イオンの質量を除いた質量である。対イオンを含まないメルフルフェンの分子量は(天然の同位体存在比では)498.42g/モルである。メルフルフェン及びその塩、特に塩酸塩は、例えば、国際公開第01/96367号及び第2014/065751号で知られており、同じ塩が本発明での使用に適している。
【0045】
本発明での使用に適したメルフルフェンの塩は、対イオンが薬学的に許容可能なものである。適切な塩には、有機酸又は無機酸で形成された塩が含まれる。特に、本発明による酸で形成された適切な塩には、鉱酸、非置換若しくは例えばハロゲンで置換された1~4個の炭素原子を有するアルカンカルボン酸など、飽和若しくは不飽和ジカルボン酸など、ヒドロキシカルボン酸など、アミノ酸などの強有機カルボン酸、又は非置換若しくは例えばハロゲンで置換された(C1~C4)アルキル若しくはアリールスルホン酸などの有機スルホン酸で形成される塩が含まれる。薬学的に許容可能な酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン及びアルギニンから形成されたものが含まれる。
【0046】
メルフルフェンの好ましい塩には、塩酸、臭化水素酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、硫酸、コハク酸、リン酸、シュウ酸、硝酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸から形成されるものなどの酸付加塩が含まれる。より好ましくは、本発明で使用するメルフルフェンの塩は、塩酸塩(塩酸から形成される付加塩)である。
【0047】
メルフルフェンの他の好ましい塩には塩酸、臭化水素酸、硝酸、メタンスルホン酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸、2-メシチレンスルホン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、1,2-エタンジスルホン酸、アジピン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、エタンスルホン酸又はニコチン酸が含まれる。
【0048】
別の態様では、メルフルフェンの好ましい塩には、塩酸、臭化水素酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、硫酸、コハク酸、リン酸、シュウ酸、硝酸、メタンスルホン酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸又はエタンスルホン酸から形成されるものなどの酸付加塩が含まれる。好ましくは、本発明で使用するメルフルフェンの塩は、塩酸塩(塩酸から形成される付加塩)、エタンスルホン酸塩(エタンスルホン酸から形成される付加塩)、臭化水素酸塩(臭化水素酸から形成される付加塩)、マレイン酸塩(マレイン酸から形成される付加塩)又はp-トルエンスルホン酸塩(p-トルエンスルホン酸から形成される付加塩)である。
【0049】
別の好ましい態様では、本発明で使用するメルフルフェンの塩は、塩酸塩(塩酸から形成される付加塩)、エタンスルホン酸塩(エタンスルホン酸から形成される付加塩)、マレイン酸塩(マレイン酸から形成される付加塩)又はp-トルエンスルホン酸塩(p-トルエンスルホン酸から形成される付加塩)(例.塩酸塩、エタンスルホン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩)である。
【0050】
より好ましくは、メルフルフェンの塩はエタンスルホン酸塩又は塩酸塩である。
【0051】
当業者は、多くの有機化合物が、反応する又は沈殿若しくは結晶を形成する溶媒と複合体を形成する可能性があることを理解するであろう。このような複合体は「溶媒和物」として知られている。例えば、水との複合体は「水和物」として知られている。複合体は、化学量論又は非化学量論的な量で溶媒を組み込んでいてもよい。溶媒和物は、Water-Insoluble Drug Formulation, 2nd ed R. Lui CRC Pressの553ページ及びByrn et al Pharm Res 12(7), 1995, 945-954に記載されている。本発明で使用するメルフルフェン又はその塩は、溶液に変換される前は溶媒和物の形態であってもよい。本発明での使用に適したメルフルフェンの溶媒和物は、溶媒が薬学的に許容可能なものである。例えば、水和物は薬学的に許容可能な溶媒和物である。
【0052】
製剤
本発明は、上述した製剤を提供する。
【0053】
本発明の製剤は、メルフルフェン及びその塩の長期保存に特に適している。長期保存とは、保存開始時の製剤のメルフルフェン純度に対して、純度が0%~5%、5%~10%、10%~15%又は15%~20%以上低下することなく、製剤を1~3か月、3~6か月、6~9か月、9~12か月又はこれ以上保存できることを意味すると理解される。
【0054】
長期保存の場合、本発明の製剤は、10℃未満、例えば5℃(例.5±3℃)以下で保存される。好ましくは、本発明の製剤は0℃未満、例えば、0~-30℃、-30~-60℃又は-60~-90℃で保存される。より好ましくは、本発明の製剤は、-15~-25℃又は-75~-85℃で保存される。
【0055】
本発明の好ましい態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩及びプロピレングリコールを含む(か、又は本質的になる)。
【0056】
本発明の別の好ましい態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩及びプロピレングリコールから本質的になる。
【0057】
本発明の別の好ましい態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩及びPEGを含む(か、又は本質的になる)。
【0058】
本発明の別の好ましい態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩及びPEGから本質的になる。
【0059】
好ましくは、PEGの平均分子量は、150~650Da、例えば、150~250、250~350、350~450、450~550及び550~650Daである。例えば、PEGは、薬局方で定義されたPEG200、PEG300、PEG400又はPEG600であってもよい。より好ましくは、PEGの平均分子量は250~350Daである。さらにより好ましくは、PEGはPEG300である。
【0060】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩、及び2種以上の異なるPEG化合物の混合物(例.PEG200、PEG300、PEG400及びPEG600の1つ以上を含む混合物)から形成されたPEGを含む(か、又は本質的になる)。
【0061】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩、及び2種以上の異なるPEG化合物の混合物(例.PEG200、PEG300、PEG400及びPEG600の1つ以上を含む混合物)から形成されたPEGから本質的になる。
【0062】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール及びPEGを含む(か、又は本質的になる)。
【0063】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール及びPEGから本質的になる。
【0064】
製剤がPEG及びプロピレングリコールを含む本発明の態様では、PEGは、上述のとおり、1つのPEG化合物から形成されていてもよく、又は、上述のとおり、2つ以上の異なるPEG化合物の混合物から形成されていてもよい。
【0065】
PEG及びプロピレングリコールを含む本発明の製剤の場合、含まれるPEG及びプロピレングリコールの重量比(w/w)は、例えば、約0.5:1、1:1、1:2、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:0.5、2:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1又は50:1であってもよい。
【0066】
本発明での使用に適したプロピレングリコール及びPEGは、商業的供給源からたやすく入手可能である。
【0067】
本発明の製剤の好ましい態様は、生理学的に許容可能な溶媒(iii)を含まない。
【0068】
本発明の製剤は、場合によっては、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒を含んでいてもよい。適切な水性溶媒には、水、リンゲル液、グルコース溶液、塩化ナトリウム液(例,等張塩化ナトリウム溶液)といった非毒性で非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒が含まれる。
【0069】
本発明の製剤は、さらに、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び本発明の製剤をレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでいてもよい。
【0070】
本発明の好ましい態様では、本発明の製剤は、PEG又はプロピレングリコール以外の有機溶媒を実質的に含まない。本明細書において、有機溶媒を「実質的に含まない」という用語は、本発明の製剤に含まれる有機溶媒は、プロピレングリコール及びPEG以外、微量であることを意味するために使用される。例えば、プロピレングリコール又はPEG以外の有機溶媒は約1%w/v未満である。プロピレングリコール又はPEG以外の有機溶媒は、好ましくは0.5%w/v未満、より好ましくは0.1%w/v未満である。
【0071】
好ましい態様では、本発明の製剤は、アルカリ土類金属塩を実質的に含まない。アルカリ土類金属の塩には、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムの塩が含まれる。好ましくは、本発明の製剤は、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩を実質的に含まない。アルカリ土類金属塩の陰イオンは、グルコン酸イオン、塩素イオン、酢酸イオン、乳酸イオン又は臭素イオンであってもよい。例えば、アルカリ土類金属塩は、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムであってもよい。本明細書において、「アルカリ土類金属塩を実質的に含まない」という用語は、本発明の製剤に含まれるアルカリ土類金属塩は微量であることを意味するために使用される。例えば、アルカリ土類金属塩は約1%w/v未満である。アルカリ土類金属塩は、好ましくは0.5%w/v未満、より好ましくは0.1%w/v未満である。
【0072】
本発明の製剤におけるメルフルフェンの濃度は、約1mg/mL~約50mg/mLである。例えば、1~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45及び45~50mg/mLである。好ましくは、メルフルフェンの濃度は約10~30mg/mLである。より好ましくは、15~25mg/mL、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25mg/mLである。
【0073】
プロピレングリコール及びPEGに対するメルフルフェンの溶解性が驚くほど高いため、治療上有用な濃度のメルフルフェン又はその塩を含有する本発明の製剤を調製することが可能である。したがって、メルフルフェン又はその塩の濃度が、生理学的に許容可能で忍容性である高用量(例.一回量約150~800mg(対イオンの質量を除く))のメルフルフェン又はその塩の対象への投与を可能にする濃度であることは、本発明の1つの利点である。
【0074】
本発明の製剤ではメルフルフェン又はその塩が唯一の有効成分であるが、本発明の製剤は、さらに1つ以上の治療薬を含むことも可能である。その様な薬剤は公知である。本発明で使用する治療薬の例には、ステロイド(プレドニゾン、プレドニゾロン及びデキサメタゾン)、IMiD(サリドマイド、レナリドミド及びポマリドミド)、PI(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ及びイキサゾミブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(パノビノスタット)、従来の化学療法剤(アルキル化剤(例.メルファラン、シクロホスファミド、ベンダムスチン)、ドキソルビシン)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)及び抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)が含まれる。
【0075】
したがって、本発明のある態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール、及び必要に応じて、1つ以上の治療薬を含む(か、又は本質的になる)。
【0076】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール、及び必要に応じて、1種以上の治療薬から本質的になる。
【0077】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩、PEG、及び必要に応じて、1種以上の治療薬を含む(か、又は本質的になる)。
【0078】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、メルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール、PEG、及び必要に応じて、1種以上の治療薬から本質的になる。
【0079】
本発明の製剤中に存在してもよい治療薬の正確な量及び濃度は、投薬計画、治療薬の効力、対象(通常は哺乳類、例えば人間)の年齢、体格、性別及び状態、病気又は状態の性質と重症度、並びに他の医学的及び物理的要因によって変化してもよい。当業者は、メルフルフェン又はその塩及び本発明での使用に適した1種以上の治療薬の量及び濃度をたやすく決めることができる。
【0080】
治療
本発明の製剤は、医薬品としての用途を有する。
【0081】
本発明のある態様では、本発明の製剤は、例えば、アルキル化剤(例.メルファラン、シクロホスファミド、ベンダムスチン)といった従来の化学療法剤で治療してもよい疾患又は状態の治療及び/又は予防の用途を有する。
【0082】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、腫瘍の成長を抑制し、及び/又は腫瘍細胞を殺す、がんの治療及び/又は予防に使用するための用途を有する。したがって、本発明の製剤は、がんに苦しむ患者を治療し、及び/又は、生存期間を延長するために使用してもよい。
【0083】
本発明の別の態様では、本発明の製剤は、アミロイドーシスの治療及び/又は予防に使用するための用途を有する。
【0084】
治療効果を得るために必要なメルフルフェンの量は、投与経路、並びに、人種、年齢、体重、性別、病状、特定の疾患とその重症度、並びに他の医学的及び身体的要因といった治療中の対象の特徴によって変化する。当業者は、がんの治療又は予防に必要なメルフルフェンの有効量をたやすく決めて、投与することができる。
【0085】
本発明の製剤は、本発明の製剤の薬学的に有効な量を対象に投与することを含む、対象を治療する方法における有用性を有する。好ましくは、本発明の製剤は、例えば、事前の希釈(例.生理学的に許容可能な溶媒又は希釈剤による事前の希釈)を行うことなく、対象に直接投与する。
【0086】
本発明の製剤は、調製直後に、又は、保存後に、例えば、本明細書に記載されるように1~3月、3~6月、6~9月、9~12月若しくはそれ以上保存した後に、対象に投与してもよい。
【0087】
即時注射及び注入の溶液及び懸濁液は、本発明の製剤を使用して調製することができる。非経口投与の代表的な組成物は、例えば、適切な非毒性の生理学的に許容可能な溶媒若しくは希釈剤(例えば、非経口的に許容可能な溶媒若しくは希釈剤、例.マンニトール、ブドウ糖、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液)、又は、合成モノ若しくはジグリセリドを含む他の適切な分散剤若しくは湿潤・懸濁剤、及び、オレイン酸若しくはクレモフォールを含む脂肪酸を含むことができる、注射可能な溶液又は懸濁液を含む。
【0088】
本発明のある態様では、本発明の製剤は、例えば、生理学的に許容可能な溶媒又は希釈剤(例えば、非経口的に許容可能な溶媒又は希釈剤、例.生理食塩液、グルコース溶液又はそれらの混合物)で希釈した後に対象に投与される。好ましくは、生理学的に許容可能な溶媒は、グルコース溶液(例えば、約4.5~5.5wt%のグルコース、例,約5wt%グルコース)、生理食塩液(例えば、約0.9wt%塩化ナトリウム)又はそれらの混合物である。その様な溶液は、場合によっては緩衝化してもよい。例えば、製剤は、対象に投与する前に、生理学的に許容可能な溶媒で、例えば、メルフルフェン濃度が約0.2mg/mlといった約0.001mg/mL~1.2mg/mL(例.0.01mg/mL~1.2mg/mL、0.05mg/mL~1.2mg/mL、0.05mg/mL~1.0mg/mL、0.05mg/mL~0.5mg/mL、0.1mg/mL~0.4mg/mL又は0.1mg/mL~0.3mg/mL)に希釈してもよい。
【0089】
単位投与形態
本発明の製剤は、単位投与形態として提供してもよい。好ましい単位投与形態は、必要な量の本発明での使用に適したメルフルフェン又はその塩を含むものである。
【0090】
本発明の好ましい態様では、本発明の製剤は、単位用量のメルフルフェン又はその塩を含むバイアルで提供してもよい。例えば、本発明の製剤は、単位用量10~800mgのメルフルフェン(対イオンの質量を除く)を含むバイアルで提供してもよく、例えば、バイアルは、単位用量50~150、150~250、250~350、350~450、450~550、550~650又は650~750mgのメルフルフェン(対イオンの質量を除く)を含んでいてもよい。好ましくは、バイアルは、単位用量75~125、125~175又は175~225mgのメルフルフェン、例えば、100、150及び200mgのメルフルフェン(対イオンの質量を除く)を含む。より好ましくは、バイアルは単位用量100mgのメルフルフェン(対イオンの質量を除く)を含む。ある態様では、バイアルは単位用量20mgのメルフルフェン(対イオンの質量を除く)を含む。ある態様では、バイアルは単位用量40mgのメルフルフェン(対イオンの質量を除く)を含む。
【0091】
調製方法及び保存方法
本発明は、本発明の製剤の調製方法を提供する。
【0092】
本発明の好ましい態様では、本発明の製剤の調製方法は、メルフルフェン又はその塩をプロピレングリコールに溶解する工程を含む。
【0093】
本発明のある態様では、本発明の方法は、1つ以上の治療薬をプロピレングリコールに溶解する追加の工程を含み、製剤は、メルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール及び本明細書に記載された1つ以上の治療薬を含む(か、又は本質的になる)。
【0094】
本発明の別の好ましい態様では、本発明の製剤の調製方法は、メルフルフェン又はその塩をPEGに溶解する工程を含む。PEGは、好ましくは、本明細書に記載されたPEG化合物、又は本明細書に記載された2つ以上の異なるPEG化合物の混合物である。
【0095】
本発明のある態様では、本発明の方法は、1つ以上の治療薬をPEGに溶解する追加の工程を含み、製剤は、メルフルフェン又はその塩、PEG及び本明細書に記載された1つ以上の治療薬を含む(か、又は本質的になる)。
【0096】
本発明の別の態様では、本発明の製剤の調製方法は、メルフルフェン又はその塩をプロピレングリコール及びPEGに溶解する工程を含む。PEGは、好ましくは、本明細書に記載されたPEG化合物、又は本明細書に記載された2つ以上の異なるPEG化合物の混合物である。
【0097】
本発明の別の態様では、本発明の方法は、1つ以上の治療薬をプロピレングリコール及びPEGに溶解する追加の工程を含み、製剤は、メルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール、PEG及び本明細書に記載された1つ以上の治療薬を含む(か、又は本質的になる)。
【0098】
本発明は、さらに、本発明の製剤を調製する工程及び前記製剤を約-90~25℃で保存する工程を含む、メルフルフェン又はその塩の保存方法に関する。好ましくは、本発明の製剤は、約5℃(例.5±3℃又は5±1℃)以下、例えば、約0~4℃で保存される。
【0099】
本発明のある態様では、製剤は約-30~-10℃で、例えば、-30~-25、-25~-15及び-15~-10℃で保存される。好ましくは、-25~-5℃、例えば、約-20℃(例.-20±3℃又は-20±1℃)である。
【0100】
本発明の別の態様では、製剤は約-90~-60℃で、例えば、-90~-85、-85~-75(例えば、約-70℃(例.-70℃±3℃又は-70℃±1℃)、-75~-60℃で保存される。好ましくは、-85~-75℃、例えば、約-80℃(例.-80±3℃又は-80±1℃)である。
【0101】
本発明の別の態様では、製剤は約5~25℃で、例えば、5~12℃、12~18、18~25℃、20~25℃で保存される。特に、18~25℃又は20~25℃、例えば約25℃(例.25±3℃)で保存される。
【0102】
キット
本発明は、本発明の製剤の調製に適したキットを提供する。
【0103】
本発明の好ましい態様では、本発明のキットは、メルフルフェン又はその塩及びプロピレングリコールを含む。
【0104】
本発明の別の好ましい態様では、本発明のキットは、メルフルフェン又はその塩及び1つ以上のPEG化合物を含む。1つ以上のPEG化合物は、本明細書に記載された1つ以上のPEG化合物である。
【0105】
本発明のある態様では、本発明のキットは、メルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール及び1つ以上のPEG化合物を含む。1つ以上のPEG化合物は、本明細書に記載された1つ以上のPEG化合物である。
【0106】
プロピレングリコール及び/又はPEGは、本発明の製剤の調製に適した形態及び量で、本発明のキット中に含まれる。当業者は、本発明の製剤の調製に適したプロピレングリコール及びPEGの量をたやすく決めることができる。
【0107】
本発明のある態様では、本発明のキットは、本明細書に記載された1つ以上の治療薬をさらに含む。
【0108】
本発明の別の態様では本発明のキットは、1種以上の本明細書に記載された生理学的に許容可能な水性溶媒をさらに含む。
【0109】
メルフルフェン又はその塩、及び必要に応じて存在する1つ以上の治療薬は、本発明の製剤の調製に適した形態及び量で本発明のキット中に含まれる。当業者は、本発明での使用に適したメルフルフェン又はその塩、及び必要に応じて存在する1つ以上の治療薬の量をたやすく決めることができる。
【0110】
以下に実施例により、本発明を説明する。
【実施例】
【0111】
実施例1~3で使用したメルフルフェンは、塩酸塩の形態の重水素化メルフルフェンOPD-5である。OPD-5塩酸塩の化学構造を以下に示す。
【0112】
【0113】
実施例5で使用したメルフルフェンは、塩酸塩、エタンスルホン酸塩、マレイン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩の形態のメルフルフェンである。実施例4では、塩酸塩、エタンスルホン酸塩、マレイン酸塩及びp-トルエンスルホン酸塩の形態のメルフルフェンの構造を示し、それらの合成について記載する。
【0114】
実施例1 メルフルフェン(OPD-5)及びプロピレングリコールを含有する製剤の2~8℃、25℃及び40℃における安定性
材料及び方法
バイアル(2R type 1ガラスバイアル、Gerresheimer, #35601558)を精製水(0.2μmS/cm以下、全有機体炭素(TOC)10ppb未満)で洗浄した。その後、バイアルを乾燥させ、300℃で2時間熱処理した。ゴム栓を121℃、2barで15分間オートクレーブ滅菌した。
【0115】
メルフルフェン(OPD-5)をプロピレングリコール(1,2-プロパンジオール、EMPROVE(登録商標)exp Ph Eur, BP, USP, Merck Chemicals, #K49954578)に約20mg/mL(対イオンの質量を除く)で溶解して製剤を調製した。各バイアルに1mLのメルフルフェン溶液を入れた。次いで、バイアルにゴム栓をし、クリンプキャップした。T0(保存前)、及び、2~8℃、25℃又は40℃で、約4週間(T1)、8週間(T2)、12週間(T3)又は24週間(T4)保存した後に、試料を分析した。
【0116】
Agilent 1100シリーズ液体クロマトグラフィー及びXBridge(登録商標)Shieldカラム(RP18、3.5μm、4.6×150mm)を使用してRP-HPLCを行った。この方法は、20分で0~80%のB勾配と1.0mL/分の流量(移動相A:86/14v/vの10mM酢酸アンモニウム/アセトニトリルpH5.0;移動相B:アセトニトリル)、カラム温度20℃、サンプラー温度5℃及びUV検出波長262nmで行った。RP-HPLCの前に、エタノール/アセトニトリル(3:7v/v)を使用して、製剤をメルフルフェン濃度0.8mg/mLとなるように希釈した。
【0117】
結果
上述した方法で製剤を調製した。特に、メルフルフェンはプロピレングリコールに容易に溶解することが判明した。製剤中のメルフルフェンの濃度は約20mg/mLであった。
【0118】
図1は、2~8℃、25℃及び40℃(加速保存条件)で約4週間(T
1-31日)保存後の製剤の画像を示す。
図2は、2~8℃及び25℃で約8週間(T
2-59日)保存後の製剤の画像を示し;
図3は、2~8℃及び25℃で約12週間(T
3-98日)保存後の製剤の画像を示し;
図4は、2~8℃及び25℃で約24週間(T
4-168日)保存後の製剤の画像を示す。特に、各時点(T
1、T
2、T
3及びT
4)で、2~8℃で保存した試料に目視できる着色は認められなかった。25℃及び40℃で保存した試料は黄~茶色を示し、時間の経過とともにその強度が増加した。着色はメルフルフェンの酸化によって生じると仮定されている。
【0119】
製剤中のメルフルフェンの濃度をRP-HPLCで確認した(表1)。保存前(T
0)の製剤中のメルフルフェン濃度は約20mg/mLであった。25℃で保存した試料のメルフルフェン濃度は、時間の経過とともに減少した(表1及び
図5)。2~8℃で保存した試料に、メルフルフェン濃度の大幅な変化はなかった(表1及び
図6)。
【0120】
【0121】
製剤中のメルフルフェンの純度(相対ピーク面積%)をRP-HPLCで確認した(表3)。保存前(T
0)の製剤中のメルフルフェン純度は約99%であった。25℃で保存した試料では、メルフルフェンの純度は時間の経過とともに減少し、168日間(T
4)の保存後の純度は49.9%(試料番号1)及び48.7%(試料番号2)であった(表2及び
図7)。2~8℃で保存した試料では、メルフルフェンの純度の減少は僅かで、168日間(T
4)の保存後の純度は95.4%(試料番号1)及び95.8%(試料番号2)であった(表2及び
図8)。
【0122】
【0123】
実施例2 メルフルフェン(OPD-5)及びPEGを含有する製剤の2~8℃、25℃及び40℃における安定性
材料及び方法
バイアル(2R type 1ガラスバイアル、Gerresheimer, #35601558)を精製水(0.2μmS/cm以下、全有機体炭素(TOC)10ppb未満)で洗浄した。その後、バイアルを乾燥させ、300℃で2時間熱処理した。ゴム栓を121℃、2barで15分間オートクレーブ滅菌した。
【0124】
メルフルフェン(OPD-5)をポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール300、Emprove exp., Ph. Eur, Merck Chemicals, #K47544702)に約20mg/mL(対イオンの質量を除く)で溶解して製剤を調製した。各バイアルに1mLのメルフルフェン溶液を充填した。次いで、バイアルにゴム栓をし、クリンプキャップした。T0(保存前)、並びに、2~8℃、25℃又は40℃で、約4週間(T1a)、8週間(T2a)、12週間(T3a)又は24週間(T4a)保存した後に、試料を分析した。
【0125】
Agilent 1100シリーズ液体クロマトグラフィー及びXBridge(登録商標)Shieldカラム(RP18、3.5μm、4.6×150mm)を使用してRP-HPLCを行った。この方法は、20分で0~80%のB勾配と1.0mL/分の流量(移動相A:86/14v/vの10mM酢酸アンモニウム/アセトニトリルpH5.0;移動相B:アセトニトリル)、カラム温度20℃、サンプラー温度5℃及びUV検出波長262nmで行った。RP-HPLCの前に、エタノール/アセトニトリル(3:7v/v)を使用して、製剤をメルフルフェン濃度0.8mg/mLとなるように希釈した。
【0126】
結果
上述した方法で製剤を調製した。特に、メルフルフェンはPEG300に容易に溶解することが判明した。製剤中のメルフルフェンの濃度は約20mg/mLであった。
【0127】
図9は、2~8℃、25℃及び40℃(加速保存条件)で約4週間(T
1a-26日)保存後の製剤の画像を示す。
図10は、2~8℃及び25℃で約8週間(T
2a-54日)保存後の製剤の画像を示し;
図11は、2~8℃及び25℃で約12週間(T
3a-94日)保存後の製剤の画像を示し;
図12は、2~8℃及び25℃で約24週間(T
4a-164日)保存後の製剤の画像を示す。2~8℃で保存した試料は、約4週間(T
1a)でわずかな黄色を示し、時間の経過とともに黄色の強度がわずかに増加した。25℃及び40℃で保存した試料は黄~茶色を示し、時間の経過とともにその強度が増加した。上述のとおり、着色はメルフルフェンの酸化によって生じると仮定されている。
【0128】
製剤中のメルフルフェンの濃度をRP-HPLCで確認した(表3)。保存前(T
0)の製剤中のメルフルフェン濃度は約20mg/mLであった。25℃で保存した試料では、メルフルフェン濃度は時間の経過とともに減少した(表3及び
図13)。2~8℃で保存した試料では、メルフルフェンの濃度に大幅な変化はなかった(表3及び
図14)。
【0129】
【0130】
製剤中のメルフルフェンの純度(相対ピーク面積%)をRP-HPLCで確認した(表4)。保存前(T
0)の製剤中のメルフルフェン純度(相対ピーク面積%)は約99%であった。25℃で保存した試料では、メルフルフェンの純度(相対ピーク面積%)は時間の経過とともに減少し、164日間(T
4a)の保存後の純度は70%(試料番号1)及び68.1%(試料番号2)であった(表4及び
図15)。2~8℃で保存した試料では、メルフルフェンの純度の減少は僅かで、164日間(T
4a)の保存後の純度は91.4%(試料番号1)及び91.3%(試料番号2)であった(表4及び
図16)。
【0131】
【0132】
実施例3 メルフルフェン(OPD-5)及びプロピレングリコールを含有する製剤の-20℃及び-70℃における安定性
材料及び方法
536.25mgのメルフルフェン(OPD-5)を20mLメスフラスコに入れた。次いで、フラスコをプロピレングリコール(W294004-1Kg-K, Lot no: MKCD8681, Sigma-Aldrich)で満たした。得られた混合物を3分間ボルテックスした。次いで、混合物を28℃で時々ボルテックスしながら15分間撹拌し、濃度約20mg/mL(対イオンの質量を除く)のメルフルフェンの透明な溶液を得た。溶液を1mLバイアルに分注し、-70℃又は-20℃で保存した。
【0133】
プロピレングリコール製剤中のメルフルフェンの濃度及び純度(相対ピーク面積%)を時間0(T0b)とその後は1月ごとに、RP-HPLCで確認した。各時点で2つの試料(製剤の2つの異なるバイアル)を分析した。各時点で、色の変化、沈殿についてバイアルを目視で確認した。
【0134】
Agilent 1100シリーズ液体クロマトグラフィー及びXBridge(登録商標)C18カラム(2.1×100mm、3.5μm)を使用してRP-HPLCを行った。この方法は、6分で5~95%のB勾配と0.8mL/分の流量(移動相A:0.1%ギ酸水溶液;移動相B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸)、カラム温度55℃、サンプラー温度25℃及びUV検出波長262nmで行った。RP-HPLCに注入する前に、試料をDMAで200μg/mLに希釈した。注入量は5μLであった。
【0135】
結果
-70℃及び-20℃でのプロピレングリコール(PG)溶液中のメルフルフェン塩酸塩(OPD-5)の安定性を検討した。いずれの試料も、6~8月の試験期間中、色の変化、沈殿は確認されなかった。
図17に示すように、プロピレングリコール製剤中のメルフルフェン(OPD-5)は、-20℃において少なくとも6か月間は安定であり、6か月の試験期間中、メルフルフェン(OPD-5)の濃度に著しい変化は認められなかった。
図18に示すように、プロピレングリコール製剤中のメルフルフェン(OPD-5)は、-70℃において少なくとも6か月間は安定であり、8か月の試験期間中、メルフルフェン(OPD-5)の濃度に著しい変化は認められなかった。-20℃で6か月及び-70℃で8か月保存した場合、メルフルフェン(OPD-5)は(製剤の保存前の純度に対して)99.5%を超えるメルフルフェン純度を維持することが判明した。
【0136】
実施例4 メルフルフェンの塩の製造
メルフルフェン塩酸塩は、参照として本明細書に組み込まれる国際公開第01/96367号に開示されているように製造することができる。メルフルフェンのエタンスルホン酸塩、マレイン酸塩及びp-トルエンスルホン酸塩は、メルフルフェンの遊離塩基をジクロロメタン又は酢酸エチル中の1当量のそれぞれの酸で処理することによって製造した。必要に応じヘプタンを加え、塩を沈殿させた。全ての塩を、メルフルフェンと対イオンの比が1:1の白色固体として単離し、高真空下で乾燥した。メルフルフェンの遊離塩基は、メルフルフェン塩酸塩からNaHCO3及びジクロロメタン(DCM)を用いて製造した。メルフルフェン塩酸塩を100mLのジクロロメタンに懸濁し、NaHCO3の氷冷水溶液を添加した。混合物を30秒間振とうした後、相を分離させた。有機相を回収し、MgSO4で乾燥させ、0℃の真空中で溶媒を留去した。メルフルフェンの遊離塩基を無色の油状物として単離した。HPLCでは、メルフルフェンの分解は観察されず、油状物は室温で数日間安定であった。
【0137】
4.1 メルフルフェンエタンスルホン酸塩(エタンスルホン酸;(2S)-2-[[(2S)-2-アミノ-3-[4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル]プロパノイル]アミノ]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸エチルエステル)の製造
【0138】
【0139】
メルフルフェンの遊離塩基(120mg、0.24mmol)をDCM(1mL)に溶解し、DCM(200μL)中のエタンスルホン酸(26.4mg、0.24mmol)を加えた。ヘプタン(500μL)を加え、混合物を10分間撹拌し、真空で濃縮して白色の固体を得た。この白色の固体をヘプタン(1mL)でトリチュレーションし、真空中で乾燥し、表題の化合物を白色の固体として得た。収量 97mg(66%)。1:1(mol)の塩形成をNMRで確認した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.94 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.12 - 7.95 (m, 2H), 7.35 - 7.21 (m, 2H), 7.19 - 7.04 (m, 4H), 6.77 - 6.64 (m, 2H), 4.61 - 4.51 (m, 1H), 4.07 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.93 (s, 1H), 3.71 (s, 8H), 3.14 - 2.92 (m, 3H), 2.80 (dd, J = 14.3, 8.2 Hz, 1H), 2.38 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.13 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.06 (t, J = 7.4 Hz, 3H)。
【0140】
4.2 メルフルフェンマレイン酸塩((2S)-2-[[(2S)-2-アミノ-3-[4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル]プロパノイル]アミノ]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸エチルエステル;マレイン酸塩)の製造
【0141】
【0142】
メルフルフェンの遊離塩基(108mg、0.22mmol)をEtOAc(1080μL)に溶解し、マレイン酸(25mg、0.22mmol)を撹拌しながら少しずつ加えた。5~10分後に激しく沈殿した。混合物を1mLのEtOAcで希釈し、さらに30分間撹拌した。沈殿を吸引濾過で回収し、300μLのEtOAcで洗浄し、真空中で乾燥した。収量 104mg(78%)。HPLC純度 95%。MS m/z 498[M+H]+。1:1の塩形成をNMRで確認した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.92 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.97 (s, 3H), 7.35 - 7.22 (m, 2H), 7.18 - 7.05 (m, 4H), 6.78 - 6.65 (m, 2H), 6.02 (s, 2H), 4.55 (td, J = 8.0, 6.2 Hz, 1H), 4.12 - 4.05 (m, 2H), 3.92 (dd, J = 8.4, 5.0 Hz, 1H), 3.71 (s, 8H), 3.11 - 2.93 (m, 3H), 2.78 (dd, J = 14.3, 8.4 Hz, 1H), 1.13 (t, J = 7.1 Hz, 3H)。
【0143】
4.3 メルフルフェンp-トルエンスルホン酸塩((2S)-2-[[(2S)-2-アミノ-3-[4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル]プロパノイル]アミノ]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸エチルエステル:4-メチルベンゼンスルホン酸塩)の製造
【0144】
【0145】
メルフルフェンの遊離塩基(100.8mg、0.20mmol)をEtOAc(1008μL)に溶解し、EtOAc(850μL)中のp-トルエンスルホン酸一水和物(41mg、0.20mmol)を加えた。5~10分後に激しく沈殿した。混合物を2mLのEtOAcで希釈し、さらに1時間撹拌した。沈殿を吸引により回収した。沈殿をEtOAc(500μL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、65mg(48%)の表題化合物をHPLC純度95%の白色の固体として得た。MS m/z 498[M+H]+。1:1の塩形成をNMRで確認した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.94 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.10 - 7.95 (m, 3H), 7.55 - 7.44 (m, 2H), 7.33 - 7.24 (m, 2H), 7.19 - 7.06 (m, 6H), 6.76 - 6.65 (m, 2H), 4.55 (td, J = 8.0, 6.2 Hz, 1H), 4.07 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.94 (s, 1H), 3.71 (s, 8H), 3.11 - 2.92 (m, 3H), 2.79 (dd, J = 14.3, 8.3 Hz, 1H), 2.29 (s, 3H), 1.13 (t, J = 7.1 Hz, 3H)。
【0146】
実施例5 メルフルフェンの塩及びプロピレングリコールを含む液剤の溶解性及び安定性
材料及び方法
プロピレングリコール中のメルフルフェンのエタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及び塩酸塩の溶解性及び安定性を検討した。メルフルフェンのそれぞれの塩10mgを透明な4mLバイアルに入れ、プロピレングリコール(Merck Lot # K51750378936, 1.07478.2500)を濃度20mg/mLとなるように添加した。バイアルを短時間振とうし、室温(RT、20~25℃)で保存した。
【0147】
メルフルフェンの塩の溶液の安定性を、エレクトロスプレーインターフェースとUVダイオードアレイ検出器を備えたAgilent 1100シリーズ液体クロマトグラフ/質量選択検出器(MSD)(シングル四重極)による分析HPLC-MSで、毎週、分析した。分析は、ACE 3 C8(3.0×50mm)カラムにより、0.1%TFA水溶液中の10~97%アセトニトリルの勾配を使用して、1mL/分の流量で3分かけて行った。UVは305nmでモニターした。各時点(0、1、2、3、4、5、6及び7週)で、10μLのメルフルフェン溶液を490μLのアセトニトリルで希釈し、HPLC-MS分析を行った。
【0148】
メルフルフェンのマレイン酸塩の溶解性及び安定性は、メルフルフェンのエタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及び塩酸塩についての上記方法と同じ方法により検討する。
【0149】
結果
製剤は上記方法により調製した。各メルフルフェンの塩は、プロピレングリコールに良く溶け、20mg/mLのメルフルフェン溶液をたやすく調製できることが判明した。
【0150】
【0151】
メルフルフェンのエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び塩酸塩は、室温(RT)で保存した場合、7週間にわたり良好な安定性を示すことが判明した。RTで4週間保存した後の各溶液のメルフルフェン純度は90%を超え、RTで7週間の保存後では、少なくとも85%であることが判明した。各溶液の主な分解生成物は、以下の構造:
【0152】
【0153】
を有するN-モノデスアルキルアニリンであった。
【0154】
メルフルフェン塩酸塩の溶液では、RTで7週間保存した後に、微量(相対ピーク面積が0.5%未満)のN-ビス-デアルキル化分解生成物が検出された。N-ビス-デアルキル化分解生成物の構造は以下のとおりである。
【0155】
【0156】
実施例6 OPD5のキログラム規模での合成
OPD-5は、以下の方法により、例えばキログラム規模で合成できる。
【0157】
工程(i) p-フルオロ-L-フェニルアラニンをエタノール(d6)でエステル化することによる(2S)-2-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル塩酸塩の製造
【0158】
【0159】
p-フルオロ-L-フェニルアラニン(1.0kg、CAS番号1132-68-9)をエタノール-d6(2.5L、CAS番号1516-08-1)と1,2-ジクロロエタン(2.0L)の混合物でスラリー化した。水酸化ナトリウム(5M溶液)が入ったスクラバーを、反応容器の出口、コンデンサーの後に接続した。スクラバー液の劣化を確認するために、ブロモチモールブルー(1~2mg)を添加した。
【0160】
反応容器の内部温度を60℃に加熱した。内部温度が60℃に達した後に、塩化チオニル(600mL)をゆっくりと添加し始めた。最初に、非常に多くの沈殿が形成した。最初の濃厚なスラリーは、反応が進行するにつれ薄くなった。約3時間、添加を続けた。内部温度は最高で70℃になるようにマントルピースの温度を制御した。全ての試薬を添加した後は、マントルピースは内部温度が65℃~70℃になるように調節した。
【0161】
全ての塩化チオニルの添加が完了してから3時間後に、所望の(2S)-2-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル塩酸塩への完全な変換が達成された。完全に変換されたことを確認(以下の条件によるLC-MS分析:ACE 3 C8(3.0×50mm)カラム;3分間で10~90%のB勾配;移動相A:0.1%TFAを含有する水、移動相B:純粋なアセトニトリル、流量1mL/分、UV検出波長:215~395、254及び220nm)した後、反応物を冷却(内部温度約45℃)し、tert-ブチルメチルエーテル(12.5L)を加えて、生成物を白色の沈殿物として得た。均一な混合物を得るために、混合物を撹拌した。
【0162】
次いで、混合物を内部温度0℃に冷却し、この温度で約30分間熟成させ、濾過した。固体の(2S)-2-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル塩酸塩を約1Lのtert-ブチルメチルエーテルで洗浄し、減圧下、最高温度30℃で乾燥した。塊がある場合はそれを取り除くために、生成物を注意深くふるいにかけた。(2S)-2-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル塩酸塩の単離収率は92%であった。LC-MS:tR 1.43分、m/z [M+H]217.
【0163】
工程(ii) (2S)-2-[(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステルのキログラム規模での製造
【0164】
【0165】
メルファラン(1.663kg、5.45mol、1当量)を、精製水(16.0kg)、水酸化ナトリウム(32%水溶液、1.04kg)及びテトラヒドロフラン(10.0kg)の混合物に10~15℃で加えた。二炭酸ジtert-ブチル(1.308kg、5.99mol、1.1当量)及びテトラヒドロフラン(4.75kg)の混合物を10~15℃で加えた。反応混合物を、メルファランが少なくとも97.0%(HPLC)変換されるまで、18~23℃で4~5時間撹拌した。温度を15~20℃とし、この温度を維持しながら、1.5MのHClを用いてpHを2.5~3.0に調整した。酢酸エチル(7.34kg)を加え、相を分離した。水相を酢酸エチル(7.34kg)で抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濾過残渣を酢酸エチルで洗浄した。溶媒を真空蒸留で除去し、(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパン酸を含む残留物を、20~25℃の真空中で最低12時間乾燥した。HPLC:保持時間 11.9分(HPLCの条件は以下のとおり:試料溶媒-1:1(v/v)のアセトニトリル:水、Waters, Atlantic T3(3μ、4.6×150mm)カラム、23分間で10-90-10%のB勾配、流速1mL/分、移動相A-1.0L MQ-水中の500μL リン酸 85%、移動相B-1.0 アセトニトリル中の500μL リン酸 85%、UV262nmで検出)。
【0166】
(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパン酸残留物をジクロロメタン(44.0kg)に再溶解した。4-メチルモルホリン(1.378kg、13.63mol、2.5当量)を加え、続いて(2S)-2-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル塩酸塩(1.377kg、5.45mol、1.0当量)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、水(0.083kg、0.54mol、0.1当量)及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.045kg、5.45mol、1.0当量)を加えた。反応混合物を、(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパン酸の少なくとも97.0%(HPLC)が、(2S)-2-[(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステルに変換されるまで、18~23℃で3~4時間撹拌した(HPLCの条件は以下のとおり:試料溶媒-アセトニトリル、Waters, Atlantic T3(3μ、4.6×150mm)カラム、23分間で10-90-10%のB勾配、流速1mL/分、移動相A-1.0L MQ-水中の500μL リン酸 85%、移動相B-1.0 アセトニトリル中の500μL リン酸 85%、UV262nmで検出)。
【0167】
pHを5%KHSO4水溶液で3.0~4.0に調整した。有機相を確保し、水相をジクロロメタン(29.0kg)で抽出した。上記有機相を6%NaHCO3で洗浄した。有機相を確保し、残りの水相を第2の有機相で逆抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そしてジクロロメタンで洗浄した。乾燥した有機相を真空蒸留により22~26Lに濃縮した。得られた有機相をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル(40~63pm、22.4kg)、n-ヘプタン(6.7kg)及びジクロロメタン(52.2kg)にかけた。カラムを6%酢酸エチル/ジクロロメタンで溶出した。(2S)-2-[(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステルを含む画分(TLC)を合わせ、減圧下で26~28Lとなるまで蒸発させた。酢酸エチル(5.8kg)を加え、26~28Lとなるまで蒸発を続けた。この操作を繰り返した。酢酸エチルの添加後、(2S)-2-[(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステルの沈殿が始まった。必要に応じて、(2S)-2-[(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステルの種晶を加え、沈殿を補助してもよい。酢酸エチル(5.8kg)を再度添加し、上記種晶の播種工程を繰り返してもよい。混合物を減圧下で19~21Lとなるまで蒸発させ、n-ヘプタン(22.1kg)を35~45℃で加えた。懸濁液を-2~2℃に冷却し、2~18時間撹拌した。固体を遠心分離により単離し、濾過残渣をn-ヘプタンで洗浄した。固体を30℃で真空乾燥し、(2S)-2-[(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル(2.6kg、80%)を白色からわずかに黄色の固体として得た。HPLC:保持時間 13.4分
【0168】
工程(iii) OPD5塩酸塩((2S)-2-[(2S)-2-アミノ-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル塩酸塩)のキログラム規模での製造
【0169】
【0170】
塩化水素(1.31kg、35.9mol)及びアセトニトリル(21.7kg)から製造した、アセトニトリル中の1.3Mの塩酸中の(2S)-2-[(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル(3.10kg、5.14mol)の溶液を、29~33℃で12~24時間撹拌した。(2S)-2-[(2S)-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]-アミノ}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステルの少なくとも99.0%(HPLC)が、(2S)-2-[(2S)-2-アミノ-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル塩酸塩に変換された(HPLCの条件は以下のとおり:試料溶媒-1:9(v/v)のDMSO:アセトニトリル、Waters, Atlantic T3(3μ、4.6×150mm)カラム、23分間で10-90-10%のB勾配、流速1mL/分、移動相A-1.0L MQ-水中の500μL リン酸 85%、移動相B-1.0 アセトニトリル中の500μL リン酸 85%、UV262nmで検出)。
【0171】
反応混合物を研磨濾過し、アセトニトリル(68.9kg)で希釈した。次いで、ジャケット温度45℃で、減圧蒸留した。反応混合物の容量が86Lとなった時、アセトニトリル(22.7kg)を加え、蒸留を続けた。反応混合物の容量が86Lとなった時、アセトニトリル(22.7kg)を加え、蒸留を続けた。反応容器内の容量が86Lとなった時、アセトニトリル(22.7kg)を加え、反応容器内の容量が86Lに達するまで蒸留を続けた。
【0172】
tert-ブチルメチルエーテル(68.4kg)を35~45℃で25~45分間かけて添加し、続いて22~28℃に冷却した。この温度で60~120分間撹拌した後、粗(2S)-2-[(2S)-2-アミノ-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(2H5)エチルエステル塩酸塩を濾別し、tert-ブチルメチルエーテル(12.5kg)で洗浄した。粗生成物を、ジャケット温度を30℃に設定した反応容器内で真空乾燥した。
【0173】
アセトニトリル(84.0kg)を加え、得られた懸濁液を48~54℃で30~90分間撹拌した後、40~45℃に冷却した。tert-ブチルメチルエーテル(74.6kg)を38~45℃で40~70分間かけて添加し、続いて22~28℃に冷却した。この温度で60~120分間撹拌した後、粗(2S)-2-[(2S)-2-アミノ-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(
2H
5)エチルエステル塩酸塩を濾別し、tert-ブチルメチルエーテル(14.0kg)で洗浄した。30~35℃で真空乾燥し、(2S)-2-[(2S)-2-アミノ-3-{4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]フェニル}プロパンアミド]-3-(4-フルオロフェニル)プロパン酸(
2H
5)エチルエステル塩酸塩(OPD5塩酸塩)(2.5kg、90%)を白色からオフホワイトの固体として得た。HPLC:保持時間 9.0分
明細書の末尾に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記しました。
[1] 以下の成分:
i)メルフルフェン又はその塩;
ii)プロピレングリコール;
iii)必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び
iv)必要に応じて、1種以上の治療薬
を含有する(又は本質的にからなる)製剤。
[2] 前記メルフルフェン又はその塩の濃度が約10mg/mL~約50mg/mLである、[1]に記載の製剤。
[3] 前記メルフルフェン又はその塩の濃度が約15mg/mL~約25mg/mLである、[2]に記載の製剤。
[4] 以下の成分:
i)メルフルフェン又はその塩;
ii)ポリエチレングリコール;
iii)必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び
i
v)必要に応じて、1種以上の治療薬
を含有する(又は本質的にからなる)製剤。
[5] 前記メルフルフェン又はその塩の濃度が約10mg/mL~約50mg/mLである、[4]に記載の製剤。
[6] 前記メルフルフェン又はその塩の濃度が約15mg/mL~約25mg/mLである、[5]に記載の製剤。
[7] 前記ポリエチレングリコールの平均分子量が150~650Da、例えば150~250、250~350、350~450、450~550、550~650Daである、[4]~[6]のいずれか一つに記載の製剤。
[8] 前記ポリエチレングリコールの平均分子量が250~350Daである、[7]に記載の製剤。
[9] 前記ポリエチレングリコールはPEG300である、[8]に記載の製剤。
[10] 本質的にメルフルフェン又はその塩、プロピレングリコール、及び必要に応じて、1種以上の治療薬からなる、[1]~[3]のいずれか一つに記載の製剤。
[11] 本質的にメルフルフェン又はその塩、ポリエチレングリコール、及び必要に応じて、1種以上の治療薬からなる、[4]~[9]のいずれか一つに記載の製剤。
[12] 前記1種以上の生理学的に許容可能な溶液は、グルコース溶液、生理食塩液又はそれらの混合物である、[1]~[9]のいずれか一つに記載の製剤。
[13] 前記1種以上の治療薬の少なくとも1つが、プロテアーゼ阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMiD)又はアルキル化剤である、[1]~[12]のいずれか一つに記載の製剤。
[14] 医薬品として使用するための、[1]~[13]のいずれか一つに記載の製剤。
[15] 例えば、アルキル化剤(例.メルファラン、シクロホスファミド、ベンダムスチン)といった従来の化学療法剤で治療してもよい疾患又は状態の治療又は予防に使用するための、[1]~[13]のいずれか一つに記載の製剤。
[16] がんの治療若しくは予防に使用するため、又はアミロイドーシスの治療若しくは予防に使用するための、[1]~[13]のいずれか一つに記載の製剤。
[17] 前記がんが、多発性骨髄腫、乳がん、肺がん、卵巣がん、白血病及びリンパ腫から選択される、がんの治療又は予防に使用するための、[16]に記載の使用のための製剤。
[18] 患者を治療する方法であって、薬学的に有効な量の[1]~[13]に記載の製剤を対象に投与することを含む、方法。
[19] がんの治療又は予防方法であって、有効量の[1]~[13]に記載の製剤を対象に投与することを含む、方法。
[20] 前記製剤は前記対象に直接投与される、[19]に記載の方法。
[21] [1]~[13]に記載の製剤の調製方法であって、メルフルフェン又はその塩をプロピレングリコールに溶解することを含む、方法。
[22] [1]~[13]に記載の製剤の調製方法であって、メルフルフェン又はその塩をポリエチレングリコールに溶解することを含む、方法。
[23] メルフルフェン又はその塩の保存方法であって、[1]~[13]に記載の製剤を調製する工程、並びに前記製剤を約-90~25℃、好ましくは、約5℃(例.5±3℃)以下、例えば約0~4℃、約-20℃(例.-20±3℃)及び約-80℃(例.-80±3℃)で保存する工程を含む、方法。
[24] メルフルフェン又はその塩;プロピレングリコール;必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び、必要に応じて、1種以上の治療薬を含有するキット。
[25] メルフルフェン又はその塩;ポリエチレングリコール;必要に応じて、1種以上の生理学的に許容可能な水性溶媒;及び、必要に応じて、1種以上の治療薬を含有するキット。
[26] 前記メルフルフェンは、塩酸塩、エタンスルホン酸塩、マレイン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩、好ましくは塩酸塩の形態である、[1]~[17]のいずれか一つに記載の製剤、[18]~[23]のいずれか一つに記載の方法又は[24]若しくは[25]に記載のキット。
[27] 前記メルフルフェンは重水素化メルフルフェン、例えば、前記メルフルフェンはOPD-5:
【化18】
である、[1]~[17]若しくは[26]のいずれか一つに記載の製剤、[18]~[23]若しくは[26]のいずれか一つに記載の方法又は[24]~[26]のいずれか一つに記載のキット。