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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20250303BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021571142
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(86)【国際出願番号】 JP2021000015
(87)【国際公開番号】W WO2021145226
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020005209
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】平塚 龍将
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-289959(JP,A)
【文献】特開2009-152410(JP,A)
【文献】特開2013-155053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/02
H01L 21/52
H01L 25/065
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体基板を吸着機構により吸着した状態で第2の半導体基板の上方に配置し、
押圧体により前記第1の半導体基板の接合面と反対側の押下面を押下し、前記第1の半導体基板の前記接合面の一部を直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓ませることにより前記第2の半導体基板に接触させ、
前記第1の半導体基板の前記接合面が前記第2の半導体基板の接合面に接触した後、前記吸着機構が前記第1の半導体基板の吸着を停止し、
前記第1の半導体基板の吸着を停止した後、前記第1の半導体基板の前記押下面を押下せずに前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する
製造方法。
【請求項2】
前記第1の半導体基板は矩形であり、
前記第1の半導体基板の前記接合面の中央付近を前記第1の半導体基板の辺と略平行に直線状に撓ませる
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1の半導体基板のアスペクト比が1を超え、
前記第1の半導体基板の前記接合面の中央付近を前記第1の半導体基板の長辺と略平行に直線状に撓ませる
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
接触面が直線状の前記押圧体により、前記第1の半導体基板の前記押下面の中央付近を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記接触面の長辺が前記第1の半導体基板の長辺と略平行になるように、前記押圧体を前記第1の半導体基板の前記押下面の中央付近に押し付けることにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記接触面の長辺の長さが、(前記第1の半導体基板の長辺-前記第1の半導体基板の短辺)以上である
請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記押圧体の接触面が直線状である
請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
直線状に並べられた、接触面が点状の複数の前記押圧体により前記第1の半導体基板の前記押下面を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
各前記押圧体の先端に設けられているセンサにより押圧力を検出した結果に基づいて、各前記押圧体の押圧力が略均一になるように制御する
請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の半導体基板及び前記第2の半導体基板のうち少なくとも一方を他方の方向に移動させることにより、前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する
請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第2の半導体基板の面積が、前記第1の半導体基板以上である
請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
第1の半導体基板を保持する第1の保持部と、
前記第1の半導体基板と対向するように第2の半導体基板を保持する第2の保持部と、
前記第1の半導体基板の接合面と反対側の押下面を押下し、前記第1の半導体基板の前記接合面の一部を直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓ませる押圧部と
を備え、
前記第1の保持部が、前記第1の半導体基板を吸着した状態で前記第2の半導体基板の上方に配置し、
前記押圧部が、前記第1の半導体基板の前記押下面を押下し、前記第1の半導体基板の前記接合面の一部を直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓ませることにより前記第2の半導体基板に接触させ、
前記第1の半導体基板の前記接合面が前記第2の半導体基板の接合面に接触した後、前記第1の保持部が前記第1の半導体基板の吸着を停止し、
前記第1の半導体基板の吸着を停止した後、前記第1の半導体基板の前記押下面を押下せずに前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する
製造装置。
【請求項13】
前記押圧部は、
接触面が直線状の押圧体を
備え、
前記押圧体により前記第1の半導体基板の前記押下面を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
請求項12に記載の製造装置。
【請求項14】
前記第1の半導体基板及び前記第2の半導体基板のうち少なくとも一方を他方の方向に移動させることにより、前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する
請求項12に記載の製造装置。
【請求項15】
前記押圧部は、
直線状に並べられた、接触面が点状の複数の押圧体を
備え、
前記複数の押圧体により前記第1の半導体基板の前記押下面を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
請求項12に記載の製造装置。
【請求項16】
各前記押圧体の先端に設けられているセンサにより押圧力を検出した結果に基づいて、各前記押圧体の押圧力が略均一になるように制御する制御部を
さらに備える請求項15に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、製造装置及び製造方法関し、特に、半導体基板を接合する場合に用いて好適な製造装置及び製造方法関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大判カメラ向けセンサのコスト削減や、複数のロジック回路やメモリチップの混載を可能にする接合技術として、半導体チップ(以下、単にチップとも称する)を直接半導体ウエハ(以下、単にウエハとも称する)又はチップに接合するCoW(Chip on Wafer)及びCoC(Chip on Chip)の開発が行われている。その接合方法として、例えば、平らなボンディングヘッドによりチップ全体を押し付けて接合する全面押し付け方式や、WoW(Wafer on Wafer)技術の応用として、チップ中央を点状のプローブで押しつけるセンタープッシュ方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-175043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チップ全面押し付け方式では、チップ又はウエハが有する微細な凹凸起因のボイドの発生が避けられない。センタープッシュ方式では、接合初期における接合部(ボンディングウエーブ)の形状が円形となり、最終的に四隅に未接合部分が残るため、ボイドが発生しやすい。
【0005】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、チップ等の半導体基板の接合時のボイドの発生を抑制できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の第1の側面の製造方法は、第1の半導体基板を吸着機構により吸着した状態で第2の半導体基板の上方に配置し、押圧体により前記第1の半導体基板の接合面と反対側の押下面を押下し、前記第1の半導体基板の前記接合面の一部を直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓ませることにより前記第2の半導体基板に接触させ、前記第1の半導体基板の前記接合面が前記第2の半導体基板の接合面に接触した後、前記吸着機構が前記第1の半導体基板の吸着を停止し、前記第1の半導体基板の吸着を停止した後、前記第1の半導体基板の前記押下面を押下せずに前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する。
【0007】
本技術の第2の側面の製造装置は、第1の半導体基板を保持する第1の保持部と、前記第1の半導体基板と対向するように第2の半導体基板を保持する第2の保持部と、前記第1の半導体基板の接合面と反対側の押下面を押下し、前記第1の半導体基板の前記接合面の一部を直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓ませる押圧部とを備え、前記第1の保持部が、前記第1の半導体基板を吸着した状態で前記第2の半導体基板の上方に配置し、前記押圧部が、前記第1の半導体基板の前記押下面を押下し、前記第1の半導体基板の前記接合面の一部を直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓ませることにより前記第2の半導体基板に接触させ、前記第1の半導体基板の前記接合面が前記第2の半導体基板の接合面に接触した後、前記第1の保持部が前記第1の半導体基板の吸着を停止し、前記第1の半導体基板の吸着を停止した後、前記第1の半導体基板の前記押下面を押下せずに前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する。
【0009】
本技術の第1の側面においては、第1の半導体基板が吸着された状態で第2の半導体基板の上方に配置され、前記第1の半導体基板の接合面と反対側の押下面が押下され、前記第1の半導体基板の前記接合面の一部が直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓まされることにより前記第2の半導体基板に接触され、前記第1の半導体基板の前記接合面が前記第2の半導体基板の接合面に接触した後、前記第1の半導体基板の吸着が停止され、前記第1の半導体基板の吸着が停止された後、前記第1の半導体基板の前記押下面が押下されずに前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板が接合される。
【0010】
本技術の第2の側面においては、第1の半導体基板が吸着された状態で第2の半導体基板の上方に配置され、前記第1の半導体基板の接合面と反対側の押下面が押下され、前記第1の半導体基板の前記接合面の一部直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓まされることにより前記第2の半導体基板に接触され、前記第1の半導体基板の前記接合面が前記第2の半導体基板の接合面に接触した後、前記第1の半導体基板の吸着が停止され、前記第1の半導体基板の吸着が停止された後、前記第1の半導体基板の前記押下面が押下されずに前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板が接合される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】センタープッシュ方式の問題点を説明するための図である。
図2】本技術を適用した製造装置の構成例を示す模式図である。
図3】製造装置のプローブの先端の形状の例を示す模式図である。
図4】製造装置の保持部の吸着機構の構成例を示す模式図である。
図5】半導体基板の第1の接合方法を説明するための図である。
図6】半導体基板の第2の接合方法を説明するための図である。
図7】本技術の効果を説明するための図である。
図8】本技術の効果を説明するための図である。
図9】プローブの接触面の長辺の長さの例を示す図である。
図10】プローブの接触面の長辺の長さの条件を説明するための図である。
図11】プローブの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.センタープッシュ方式の問題点
2.実施の形態
3.変形例
4.その他
【0014】
<<1.センタープッシュ方式の問題点>>
まず、図1を参照して、センタープッシュ方式の問題点について説明する。
【0015】
センタープッシュ方式では、半導体チップ等からなる矩形の半導体基板11の中央の円形の領域11Aが、点状のプローブにより押下される。そして、図1のA乃至Cにより示されるように、接合部11Bが、半導体基板11の中央から放射状に広がっていく。
【0016】
そのため、図1のCに示されるように、半導体基板11の四隅に未接合部分が残り、ボイド発生のリスクがある。また、半導体基板11の中央から放射状にボンディングウエーブが進行することにより、半導体基板11の歪みが大きくなるおそれがある。
【0017】
<<2.実施の形態>>
次に、図2乃至図10を参照して、本技術の実施の形態について説明する。
【0018】
<製造装置の構成例>
図2は、本技術を適用した製造装置101の構成例を示している。図2のAは、製造装置101を横から見た模式図であり、図2のBは、製造装置101の保持部111の下面の模式図である。なお、図2のAで見えている保持部111の側面は、図2のBにおける保持部111の短辺側の側面である。
【0019】
製造装置101は、CoW又はCoCにより、例えばチップからなる半導体基板102と、例えばウエハ又はチップからなる半導体基板103とを接合し、半導体素子を生成する装置である。
【0020】
なお、半導体基板102の接合面及び半導体基板103の接合面の材質は、SiO2、SiCN、SiN、Si、InGaAs、GaAs等の絶縁体でもよく、Cu、Au、W、Al等の金属でもよい。また、半導体基板102の接合面と半導体基板103の接合面の材質の組み合わせは、金属と金属、絶縁体と絶縁体、又は、絶縁体と金属のいずれでもよい。さらに、半導体基板102及び半導体基板103は矩形であり、アスペクト比は1を超え、半導体基板103の面積は半導体基板102以上とされる。
【0021】
製造装置101は、保持部111、プローブ112、保持部113、及び、制御部114を備える。
【0022】
保持部111は、保持部113の上方において、半導体基板102の上面(以下、押下面と称する)を吸着することにより、半導体基板102を保持する治具である。
【0023】
プローブ112は、保持部111に対して上下方向に移動可能であり、保持部111の短辺方向の中央において保持部111の下方に突出し、半導体基板102の押下面を押下する押圧体であり、押圧部を構成する。プローブ112の半導体基板102の押下面と接触する接触面は、保持部111の長辺方向に延びる細長い矩形(直線状)である。
【0024】
保持部113は、保持部111の下方において、半導体基板103の下面を吸着することにより、半導体基板103を保持する治具である。
【0025】
制御部114は、保持部111、プローブ112、及び、保持部113の動作の制御を行う。
【0026】
<プローブ112の先端の形状>
図3は、プローブ112を矢印A1の方向から見た、すなわち、プローブ112の短辺側から見た先端の形状の例を模式的に示している。なお、プローブ112は、矢印A2の方向、すなわち、半導体基板102の押下面に対して垂直下方向に半導体基板102を押下する。
【0027】
図3のAの例では、プローブ112の先端が尖った形状になっている。従って、プローブ112の接触面は、直線状の細長い矩形となる。
【0028】
図3のBの例では、プローブ112の先端が曲率を有し、丸みを帯びている。従って、プローブ112の接触面は、直線状の細長い矩形となる。また、接触面の短辺方向の中央において押圧力が最大になり、短辺方向の両端に近づくほど押圧力が弱くなる。
【0029】
図3のCの例では、図3のAの例と同様に、プローブ112の先端が尖っている一方、接触面が平坦になっている。従って、プローブ112の接触面は、直線状の細長い矩形となり、図3のAの例より短辺方向が長くなる。
【0030】
図3のDの例では、プローブ112の先端がまっすぐ垂直に延びている。従って、プローブ112の接触面は、直線状の細長い矩形となり、他の例より短辺方向が長くなる。
【0031】
<保持部111の吸着機構>
図4のA乃至Dは、保持部111の下面の模式図であり、半導体基板102を吸着する吸着機構の例を示している。
【0032】
図4のAの例では、円形の真空吸着溝151が、保持部111の短辺方向の両端付近に長辺に沿ってそれぞれ2列に並べられている。そして、半導体基板102が、真空吸着溝151により保持部111に真空吸着される。
【0033】
なお、図4のAの真空吸着溝151の列数は一例であり、任意の列数とすることができる。また、例えば、図4のBに示されるように、真空吸着溝151をプローブ112周辺まで配置するようにしてもよい。
【0034】
図4のCの例では、細長い矩形の真空吸着溝161-1乃至真空吸着溝161-4が、保持部111の短辺方向の両端付近に長辺に沿って並べられている。具体的には、真空吸着溝161-1及び真空吸着溝161-2は、保持部111の短辺方向の一方の端付近に、長辺にそって2列に並べられている。真空吸着溝161-3及び真空吸着溝161-4は、保持部111の短辺方向の他方の端付近に、長辺にそって2列に並べられている。そして、真空吸着溝161-1乃至真空吸着溝161-4により、半導体基板102が保持部111に真空吸着される。
【0035】
なお、図4のCの真空吸着溝161の列数は一例であり、任意の列数とすることができる。また、例えば、図4のBの例と同様に、真空吸着溝161をプローブ112周辺まで配置するようにしてもよい。
【0036】
図4のDの例では、静電吸着機構171-1及び静電吸着機構171-2が、それぞれ保持部111の短辺方向の両端付近に、長辺に沿って設けられている。そして、静電吸着機構171-1及び静電吸着機構171-2により、半導体基板102が保持部111に静電吸着される。
【0037】
なお、保持部113においても、保持部111の同様の吸着機構を設けることが可能である。
【0038】
<半導体基板の第1の接合方法>
次に、図5を参照して、Z軸制御方式により半導体基板102と半導体基板103を接合する方法について説明する。
【0039】
なお、以下、垂直方向をZ軸方向とする。
【0040】
まず、図5のAに示されるように、半導体基板102が保持部111により吸着され、半導体基板103が保持部113により吸着される。これにより、半導体基板102の接合面と半導体基板103の接合面が、平行に対向する。
【0041】
また、半導体基板102の長辺が、プローブ112の接触面の長辺と平行になり、半導体基板102の押下面の短辺方向の中央付近に、プローブ112の接触面の短辺が接触するように、半導体基板102が配置される。
【0042】
次に、図5のBに示されるように、プローブ112が垂直下方向に移動するとともに、保持部113が垂直上方向に持ち上げられる。これにより、プローブ112の先端が、保持部111の下面から垂直下方向に突出し、半導体基板102の押下面を押下する。その結果、半導体基板102の接合面の短辺方向の中央付近が、長辺に対して平行な直線状に半導体基板103の方向に撓む。また、図5のCに示されるように、半導体基板102の接合面の撓んでいる部分に、半導体基板103が押し付けられる。
【0043】
そして、さらに、保持部113が垂直上方向に持ち上げられるとともに、プローブ112が垂直上方向に移動する。これにより、半導体基板102の撓みが解消されるとともに、半導体基板102の接合面と半導体基板103の接合面との接合が進行する。その結果、最終的に、図5のDに示されるように、半導体基板102の接合面と半導体基板103の接合面が接合される。
【0044】
なお、例えば、保持部113の代わりに、保持部111を垂直下方向に移動させるようにしてもよい。また、例えば、保持部111を垂直下方向に移動させるとともに、保持部113を垂直上方向に移動させるようにしてもよい。
【0045】
また、例えば、半導体基板102(保持部111)と半導体基板103(保持部113)の上下関係が逆になってもよい。例えば、半導体基板102を半導体基板103の下方に配置し、プローブ112により半導体基板102の押下面を垂直上方向に押下し、半導体基板102を半導体基板103の方向に撓ませるようにしてもよい。
【0046】
<半導体基板の第2の接合方法>
次に、図6を参照して、吸着停止方式により半導体基板102と半導体基板103を接合する方法について説明する。
【0047】
まず、図6のAに示されるように、図5のAと同様に、半導体基板102が保持部111により吸着され、半導体基板103が保持部113により吸着される。
【0048】
次に、図6のBに示されるように、プローブ112が垂直下方向に移動する。これにより、プローブ112の先端が、保持部111の下面から垂直下方向に突出し、半導体基板102の押下面を押下する。その結果、半導体基板102の接合面の短辺方向の中央付近が、長辺に対して平行な直線状に半導体基板103の方向に撓む。また、半導体基板102の接合面の撓んだ部分が、半導体基板103の接合面に接触し、押し付けられるまで、プローブ112が垂直下方向に移動する。
【0049】
そして、図6のCに示されるように、半導体基板102の接合面と半導体基板103の接合面との接合面積がある程度になった段階で、保持部111による半導体基板102の吸着が停止される。これにより、図6のDに示されるように、半導体基板102の短辺方向の端部が、重力により半導体基板103に接近し、プローブ112により押し付けられた部分を中心に、半導体基板102の接合面と半導体基板103の接合面との接合が進行する。そして、最終的に、図6のEに示されるように、半導体基板102の接合面と半導体基板103の接合面が接合される。
【0050】
<本技術の効果>
次に、図7及び図8を参照して、本技術の効果について説明する。
【0051】
図7は、製造装置101を用いた場合において、半導体基板102の半導体基板103との接合状態を模式的に示している。図内の白い部分は、接合部分を示し、斜線の部分は、未接合部分を示している。点線で示される部分は、半導体基板102の押下面にプローブ112の接触面が接触し、プローブ112により半導体基板102が押下されている部分(以下、押下部分と称する)を示している。
【0052】
図7のAは、プローブ112により押下された半導体基板102の接合面が半導体基板103の接合面と接触した直後の接合状態を示している。半導体基板102の接合面の押下部分が、半導体基板103と接合されるとともに、半導体基板102の接合面の短辺付近において、接合部分が短辺方向に少し広がっている。
【0053】
その後、ボンディングウエーブが、押下部分を中心にして、半導体基板102の接合面の短辺に対してほぼ平行に進行する。また、半導体基板102の接合面の中央付近より短辺側の端部の方が、ボンディングウエーブの進行が少し速くなる。従って、図1を参照して上述したセンタープッシュ方式と異なり、半導体基板102の接合面の四隅に未接合部分が残らずに、図7のB及びCに示されるように、半導体基板102の接合面の長辺の中央付近に未接合部分が残る。そのため、最終的に、図7のDに示されるように、半導体基板102の接合面の未接合部分が消え、半導体基板102の接合面全体が半導体基板103の接合面と接合される。
【0054】
また、図8は、ボンディングウエーブの進行方向の例を示している。図8のAは、点状プローブを用いた場合のボンディングウエーブの進行方向を示し、図8のBは、プローブ112を用いた場合のボンディングウエーブの進行方向を示している。なお、図内の矢印が、ボンディングウエーブの進行方向を示し、点線で示される部分が、プローブによる押下部分を示している。また、図8のBでは、プローブ112の接触面の長辺が、半導体基板102の長辺より短い場合の例を示している。
【0055】
点状プローブを用いた場合、ボンディングウエーブは、半導体基板102の接合面の中央から放射状に広がる。一方、プローブ112を用いた場合、ボンディングウエーブは、半導体基板102の接合面の押下部分を中心にして、短辺と略平行な方向に広がる。
【0056】
従って、プローブ112を用いた方が、点状プローブを用いた場合より、ボンディングウエーブの移動距離が短くなり、その結果、半導体基板102の接合歪みが小さくなる。
【0057】
また、点状プローブを用いた場合、接合歪みの向きは、半導体基板102の中央から放射状に広がる方向となる。一方、プローブ112を用いた場合、接合歪みの向きは、半導体基板102の接合面の押下部分を中心にして、短辺と略平行な方向となる。従って、例えば、接合後の半導体基板102のアライメントマークのズレ方向を確認することにより、点状プローブ及びプローブ112のどちらを用いて接合されたかを識別することが可能である。
【0058】
<プローブ112の接触面の長辺の長さについて>
プローブ112の接触面の長辺は、例えば、図9のAに示されるように、半導体基板102の長辺と同じ長さでもよいし、図9のBに示されるように、半導体基板102の長辺より長くてもよい。
【0059】
一方、図9のCに示されるように、プローブ112の接触面の長辺が半導体基板102の長辺より短い場合、プローブ112の接触面の長辺が短くなりすぎると、未接合部分が残るおそれがある。具体的には、図10のA及びBに示されるように、ボンディングウエーブが半導体基板102の短辺より先に長辺に達すると、点状プローブを用いた場合と同様に、半導体基板102の接合面の四隅に未接合部分が残るおそれがある。
【0060】
ここで、図10のCを参照して、プローブ112の長辺が半導体基板102の長辺より短い場合のプローブ112の長辺の長さの条件について説明する。
【0061】
以下、半導体基板102の長辺の長さをLx、短辺の長さをLy、プローブ112による押下部分と半導体基板102の短辺との間の距離をlx、プローブ112による押下部分と半導体基板102の長辺との間の距離をly、プローブ112の接触面の長辺の長さをlpとする。
【0062】
この場合、次式(1)の条件を満たすように長さlpを設定することにより、ボンディングウエーブが半導体基板102の短辺より先に長辺に達することが防止される。
【0063】
lx≧ly ・・・(1)
【0064】
ここで、プローブ112の接触面の短辺は非常に短いため、無視できるとすると、次の式(2)及び式(3)が成り立つ。
【0065】
lx=(Lx-lp)/2 ・・・(2)
ly=Ly/2 ・・・(3)
【0066】
式(2)及び式(3)を式(1)に代入し、整理すると、次式(4)となる。
【0067】
lp≧Lx-Ly ・・・(4)
【0068】
従って、式(4)を満たすように、プローブ112の接触面の長辺の長さlpを設定することにより、ボイドの発生を抑制することができる。
【0069】
<<3.変形例>>
本技術は、半導体基板102が正方形である場合、換言すれば、半導体基板102のアスペクト比が1の矩形である場合にも適用することが可能である。
【0070】
また、本技術は、半導体基板102が矩形であれば、半導体基板102の大きさや厚さは、特に制限されない。例えば、半導体基板102の長辺は300mm以下、短辺は3mm以上、厚さは775μm以下とされる。
【0071】
さらに、例えば、半導体基板103は矩形以外の形状、例えば、円形等でもよい。
【0072】
また、例えば、図11に示されるように、接触面が点状の押圧体である点状プローブを直線状に複数並べた押圧部により、半導体基板102の押下面の短辺方向の中央付近を、長辺に対して平行に押下するようにしてもよい。
【0073】
具体的には、図11の例では、点状プローブ201-1乃至点状プローブ201-5が、半導体基板102の押下面の短辺方向の中央付近において、長辺に対して平行に並べられている。
【0074】
なお、以下、点状プローブ201-1乃至点状プローブ201-5を個々に区別する必要がない場合、単に点状プローブ201と称する。
【0075】
各点状プローブ201により半導体基板102の押下面を略均等な力で押下することにより、プローブ112を用いた場合と同様に、半導体基板102の接合面の短辺方向の中央付近が、長辺に対して平行な直線状に半導体基板103の方向に撓む。その結果、ボンディングウエーブが、半導体基板102の接合面の短辺方向に進行し、ボイドの発生が抑制される。
【0076】
図11のA乃至Dは、点状プローブ201の先端の形状を模式的に示している。
【0077】
図11のAの例では、点状プローブ201の先端が尖った形状になっている。従って、点状プローブ201の接触面は、ほぼ点になる。
【0078】
図11のBの例では、点状プローブ201の先端が曲率を有し、丸みを帯びている。従って、点状プローブ201の接触面は、図11のAの例より大きい円形の点状となる。また、接触面の中心に近づくほど押圧力が強くなり、接触面の中心から遠ざかるほど押圧力は弱くなる。
【0079】
図11のCの例では、図11のAの例と同様に、点状プローブ201の先端が尖っているが、接触面が平坦になっている。従って、点状プローブ201の接触面は、図11のAの例より大きい円形の点状となり、接触面にほぼ均等に力がかかる。
【0080】
図11のDの例では、点状プローブ201の先端がまっすぐ垂直に延びている。従って、点状プローブ201の接触面は円形の点状となり、他の例より接触面が大きくなる。また、接触面にほぼ均等に力がかかる。
【0081】
なお、例えば、点状プローブ201-1乃至点状プローブ201-5の先端にそれぞれ圧力センサ202-1乃至圧力センサ202-5を設けるようにしてもよい。そして、例えば、制御部114が、圧力センサ202-1乃至圧力センサ202-5からのセンサデータに基づいて、各点状プローブ201の押圧力を検出し、検出結果に基づいて、各点状プローブ201の押圧力が略均一になるように制御するようにしてもよい。
【0082】
なお、点状プローブ201の数は、2以上であれば特に限定されない。ただし、点状プローブ201の数が多く、点状プローブ201間の間隔が短くなるほど、ボイドの抑制効果がプローブ112に近づく。一方、点状プローブ201の数が2つでも、1つの場合と比較して、ボイドの抑制効果は大きくなる。
【0083】
<<4.その他>>
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0084】
<構成の組み合わせ例>
例えば、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
【0085】
(1)
第1の半導体基板の接合面の一部を直線状に第2の半導体基板の方向に撓ませた後、前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する
製造方法。
(2)
前記第1の半導体基板は矩形であり、
前記第1の半導体基板の前記接合面の中央付近を前記第1の半導体基板の辺と略平行に直線状に撓ませる
前記(1)に記載の製造方法。
(3)
前記第1の半導体基板のアスペクト比が1を超え、
前記第1の半導体基板の前記接合面の中央付近を前記第1の半導体基板の長辺と略平行に直線状に撓ませる
前記(2)に記載の製造方法。
(4)
接触面が直線状の押圧体により、前記第1の半導体基板の前記接合面と反対側の押下面の中央付近を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
前記(3)に記載の製造方法。
(5)
前記接触面の長辺が前記第1の半導体基板の長辺と略平行になるように、前記押圧体を前記第1の半導体基板の前記押下面の中央付近に押し付けることにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
前記(4)に記載の製造方法。
(6)
前記接触面の長辺の長さが、(前記第1の半導体基板の長辺-前記第1の半導体基板の短辺)以上である
前記(4)又は(5)に記載の製造方法。
(7)
押圧体により、前記第1の半導体基板の前記接合面と反対側の押下面を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の製造方法。
(8)
前記押圧体の接触面が直線状である
前記(7)に記載の製造方法。
(9)
直線状に並べられた、接触面が点状の複数の前記押圧体により前記第1の半導体基板の前記押下面を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
前記(7)に記載の製造方法。
(10)
各前記押圧体の先端に設けられているセンサにより押圧力を検出した結果に基づいて、各前記押圧体の押圧力が略均一になるように制御する
前記(9)に記載の製造方法。
(11)
前記第1の半導体基板を吸着機構により吸着した状態で前記第2の半導体基板の上方に配置し、
前記押圧体により前記第1の半導体基板の前記接合面を撓ませることにより前記第2の半導体基板に接触させ、
前記第1の半導体基板の前記接合面が前記第2の半導体基板の接合面に接触した後、前記吸着機構が前記第1の半導体基板の吸着を停止する
前記(7)に記載の製造方法。
(12)
前記第1の半導体基板及び前記第2の半導体基板のうち少なくとも一方を他方の方向に移動させることにより、前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する
前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の製造方法。
(13)
前記第2の半導体基板の面積が、前記第1の半導体基板以上である
前記(1)乃至(12)のいずれかに記載の製造方法。
(14)
第1の半導体基板を保持する第1の保持部と、
前記第1の半導体基板と対向するように第2の半導体基板を保持する第2の保持部と、
前記第1の半導体基板の接合面の一部を直線状に前記第2の半導体基板の方向に撓ませる押圧部と
を備え、
前記第1の半導体基板を撓ませた後、前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する
製造装置。
(15)
前記押圧部は、
接触面が直線状の押圧体を
備え、
前記押圧体により前記第1の半導体基板の前記接合面と反対側の押下面を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
前記(14)に記載の製造装置。
(16)
前記第1の半導体基板及び前記第2の半導体基板のうち少なくとも一方を他方の方向に移動させることにより、前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板を接合する
前記(14)又は(15)に記載の製造装置。
(17)
前記第1の保持部は、前記第2の半導体基板の上方において、前記第1の半導体基板を吸着し、前記押圧部が前記第1の半導体基板の前記接合面を撓ませることにより前記第2の半導体基板の接合面に接触させた後、前記第1の半導体基板の吸着を停止する
前記(14)又は(15)に記載の製造装置。
(18)
前記押圧部は、
直線状に並べられた、接触面が点状の複数の押圧体を
備え、
前記複数の押圧体により前記第1の半導体基板の前記接合面と反対側の押下面を押下することにより、前記第1の半導体基板を撓ませる
前記(14)に記載の製造装置。
(19)
各前記押圧体の先端に設けられているセンサにより押圧力を検出した結果に基づいて、各前記押圧体の押圧力が略均一になるように制御する制御部を
さらに備える前記(18)に記載の製造装置。
(20)
第1の半導体基板と、
接合面の一部が直線状に撓まされた前記第1の半導体基板と接合される第2の半導体基板と
を備える半導体素子。
【0086】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0087】
101 製造装置, 102,103 半導体基板, 111 保持部, 112 プローブ, 113 保持部, 114 制御部, 201-1乃至201-5 プローブ, 202-1乃至202-5 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11