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▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】ヒトFcRn結合改変抗体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20250303BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250303BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250303BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/22
A61P43/00 111
A61P27/02
A61P9/00
A61K39/395 N
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022010878
(22)【出願日】2022-01-27
(62)【分割の表示】P 2018156366の分割
【原出願日】2014-04-25
(65)【公開番号】P2022062120
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】13165744.7
(32)【優先日】2013-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】14151316.8
(32)【優先日】2014-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,グイド
(72)【発明者】
【氏名】レグラ,イェルク・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リュート,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】シュロットハウアー,ティルマン
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のFc領域ポリペプチドび第2のFc領域ポリペプチドを含む抗体であって、
第1び第2のFc領域ポリペプチド、ヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであり、
第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235A、P329G、Y349C、T366S、L368A及びY407V(KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従うナンバリング)を有する配列番号73のアミノ酸配列を含み、
第2のFc領域ポリペプチド、突然変異L234A、L235A、P329G、S354C及びT366W(KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従うナンバリング)を有する配列番号74のアミノ酸配列を含みここで、更に、
第1及び第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異H310A、H433A及びY436A(KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従うナンバリング)を含む
前記抗体。
【請求項2】
前記抗体が、二重特異性抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体が二価抗体である、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
前記二重特異性抗体は、ヒトANG-2に特異的に結合する1つの結合特異性とヒトVEGFに特異的に結合する1つの結合特異性を有する、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位及びヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の抗体であって、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号14のCDR3H領域、配列番号15のCDR2H領域、び配列番号16のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号17のCDR3L領域、配列番号18のCDR2L領域び配列番号19のCDR1L領域を含み
i)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号22のCDR3H領域、配列番号23のCDR2H領域、び配列番号24のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号25のCDR3L領域、配列番号26のCDR2L領域、び配列番号27のCDR1L領域を含む、
前記抗体。
【請求項6】
ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の抗体であって、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインVHとして配列番号20のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号21のアミノ酸配列を含み
i)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位は、重鎖可変ドメインVHとして配列番号28のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインVLとして配列番号29のアミノ酸配列を含む、
前記抗体。
【請求項7】
以下:
a)VEGFに特異的に結合する第1の全長抗体の重鎖及び軽鎖、並びに
b)定常ドメインCL及びCH1が互いに置換されている、ANG-2に特異的に結合する第2の全長抗体の修飾重鎖及び修飾軽
む、請求項2~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
ヒトFcRnに結合しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
ブドウ球菌プロテインAと結合する、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
結合の有無が表面プラズモン共鳴によって決定される、請求項8又は9に記載の抗体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体であって、以下:
c領域ポリペプチドにおいて突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して低い血清濃度を示し、及び/又は
c領域ポリペプチドにおいて突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して、類似の全右眼溶解物中濃度を示す
前記抗体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体を含む、医薬製剤。
【請求項13】
眼血管疾患を処置するための、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔ら血液循環に輸送するための、請求項12又は13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
眼血管疾患の処置のための医薬製造するための、請求項1~12のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項16】
硝子体内適用による投与のための、請求項12又は13に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒト新生児Fcレセプターに関して改変された結合親和性を有する可溶性レセプターリガンドに特異的に結合する抗体及びFc領域融合ポリペプチド、それらの生産方法、これらの抗体を含有する医薬製剤、及びその使用に関する。
【0002】
背景
血管新生は、固形腫瘍、眼内新生血管症候群、例えば増殖性網膜症又は加齢性黄斑変性症(AMD)、関節リウマチ、及び乾癬を含む様々な障害の病因に関与する(Folkman, J., et al., J. Biol. Chem. 267 (1992) 10931-10934; Klagsbrun, M., et al., Annu. Rev. Physiol. 53 (1991) 217-239;及びGarner, A., Vascular diseases, in: Pathobiology of ocular disease, A dynamic approach, Garner, A., and Klintworth, G. K. (eds.), 2nd edition, Marcel Dekker, New York (1994), pp. 1625-1710)。
【0003】
ラニビズマブ(商品名Lucentis(登録商標))は、ベバシズマブ(アバスチン)と同じ親マウス抗体由来のモノクローナル抗体フラグメントである。しかしながら、それは、VEGF-Aへのより強い結合を提供するように親和性成熟されている(国際公開公報第98/45331号)。VEGF-Aの遮断がいくらかの全身毒性に関連し得ることが公知であるため、血中半減期及びその結果として全身毒性を減少させるために、ラニビズマブはFc領域が削除されている。それは、「湿潤」型加齢性黄斑変性症(AMD)(加齢に伴う視力低下の一般的な形態)を処置するために承認されている抗血管新生薬剤である。
【0004】
加齢性黄斑変性症(AMD)及び糖尿病性網膜症(DR)などの眼血管疾患は、それぞれ異常脈絡膜又は網膜新生血管形成に起因する。先進国では、それらは視力低下の主な原因である。網膜は、ニューロン、グリア、及び血管要素の明確に定義された層からなるので、比較的小さな障害(例えば、血管増殖又は浮腫に見られるもの)が、視覚機能の有意な減少につながり得る。網膜色素変性症(RP)などの遺伝性網膜変性もまた、細動脈狭窄及び血管萎縮などの血管異常に関連する。それらに罹患する者は3,500人に1人であり、進行性夜盲、視野欠損、視神経萎縮、細動脈減弱、及び視力の中心喪失を特徴とし、完全な失明に進行することが多い。
【0005】
虚血性網膜症は、血流の減少及び低酸素状態をもたらす網膜血管系の喪失又は機能不全を特徴とする。網膜は、新たな血管を成長させるためシグナルを生成することによって低酸素状態に応答するが、これらの新たな血管は、通常は脆弱で無秩序なものである。それはこれらの新たな異常血管の成長であり、それらは漏出して出血につながり得るか、又は網膜剥離をもたらし得る瘢痕化につながり得るため、視力への脅威の大半を作り出す。虚血性網膜症の現在の処置は病的な血管の成長を停止させようとするものであるが、それらの成長を駆動する根本的な虚血に対処するものではない。さらに、糖尿病性網膜症(これは、何百万人が罹患している虚血性網膜症である)の標準的な処置は、新たな血管の成長を停止させて中心視力を保護するために、レーザーを用いて網膜の一部を破壊することを含む。血管内皮成長因子(VEGF)(これは、血管成長の主なプロモーターである)の機能を遮断する戦略が用いられている。短期的には、抗VEGF治療は視力を改善させ得るが、根本的な虚血には対処するものではなく、有益な側副血管を含む全ての血管成長を阻害するため、実際にはこの症状を悪化させ得る。虚血性の脳、心臓又は四肢において新たな血管成長が必要であり得る高齢者及び/又は糖尿病患者では、これらの薬物の全身曝露に関する深刻な懸念もある。
【0006】
典型的には、眼疾患の場合、Fab又はFabのようなより小さな抗体フラグメントは短い血清半減期を有し、全身毒性のリスクがより低いため、硝子体内適用を介して使用されることが多い。しかしながら、典型的には、このより小さなフラグメントもより短い硝子体内半減期を有し(例えば、血清中への拡散がより速いことに起因する)、典型的にはより頻繁に投与されなければならない。
【0007】
ほとんど全てのFcレセプターは、抗体の対称的なFc領域に非対称的に結合する。
【0008】
例えば、ヒトFcγレセプターIIIAは、2つのFc領域ポリペプチド上の異なるアミノ酸残基と相互作用する。したがって、(例えば、残基233~238のより小さいヒンジ領域において)非対称的に導入された突然変異は、抗体とヒトFcγレセプターIIIAとの相互作用を増加又は減少させるのに使用されなければならない。
【0009】
しかし、ヒト新生児FcレセプターFcRn間の相互作用は対称的である:2つのFcRn分子は、2:1の化学量論比で単一のIgGと結合し得る(例えば、Huber, A.W., et al., J. Mol. Biol. 230 (1993) 1077-1083を参照のこと)。したがって、非対称的に導入された突然変異は、両方に対する/による結合ではなく1つのFcRnに対する/による結合を減少させる。
【0010】
非対称的なIgG様分子の例には、限定されないが、以下の技術を用いて得られたもの、又は以下の形式を使用するものが含まれる:Triomab/Quadroma、ノブイントゥホール(Knobs-into-Holes)、CrossMabs、静電的にマッチした抗体、LUZ-Y、Strand Exchange Engineered Domain body、Biclonic及びDuoBody。
【0011】
国際公開公報第2012/125850号では、Fc領域において非対称的な置換を含むFc含有タンパク質であって、ヒトFcγレセプターIIIAに対する結合が増加しており、ADCC活性が増強しているFc含有タンパク質が報告されている。
【0012】
国際公開公報第2012/58768号では、ヘテロ二量体Fc領域を含む単離されたヘテロ多量体であって、前記ヘテロ二量体Fc領域が、増加した安定性でヘテロ二量体形成を促進するためのアミノ酸突然変異を含む変異体CH3ドメインを含み、前記ヘテロ二量体Fc領域が、Fcガンマレセプターの選択的結合を促進するための非対称的なアミノ酸改変を含む変異体CH2ドメインをさらに含むヘテロ多量体。
【0013】
国際公開公報第2011/131746号では、2つの単一特異性出発タンパク質のCH3領域において非対称的な突然変異を導入することによって、Fabアーム交換反応を強制的に方向性にして、それにより非常に安定なヘテロ二量体タンパク質が得られ得ると報告されている。
【0014】
Kim et al. (Kim, H., et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 49 (2008) 2025-2029)は、網膜色素上皮及び脈絡膜組織を除いて、眼組織(毛様体及び虹彩、網膜、結膜、角膜、レンズ及び視神経束を含む)が、予測サイズのFcRn転写産物の存在を示したと報告している。血液眼関門はFcRnレセプターの発現を示したが、これは、眼組織から血液系へのIgG輸送がこのレセプターを使用し得ることを示している。網膜などの眼内組織は、血液眼関門によって血液系から分離されているので、硝子体内注射の直後に、血液系において全長抗体が検出されるとは予想されない。しかしながら、サル及びヒトからの最近の薬物動態データは全て、硝子体内のベバシズマブが、硝子体内注射後数時間以内に血液中に現れることを示している。したがって、結膜リンパ管におけるFcRnレセプターの機能は、結膜空間から抗原-抗体IgG複合体を効率的に排除するための流出レセプターとして機能することであり得る。同様の分子量にもかかわらず、IgG(150kDa)は房水中で検出された;しかしながら、IgA(160kDa)は検出されなかった。血清から房水へのIgG及びIgAの浸透の間の不一致は、IgG選択的なFcRnレセプターの存在によって説明され得る。
【0015】
Kimらは、網膜障害の場合、直接的な硝子体内注射が、治療抗体を眼後部に送達するための一般的なアプローチになっているとさらに報告している(Kim, H., et al., Mol. Vis. 15 (2009) 2803-2812)。硝子体内投与されたベバシズマブ(lgG)及びニワトリIgYは両方とも、内境界膜障壁を乗り越えて、より深部の網膜構造に拡散した。網膜を通って拡散した後、ベバシズマブは血液網膜関門を越えて全身循環に漏出した。網膜内のニワトリIgYは、血液網膜関門の反管腔側に沿って局在していたに過ぎなかった。さらに、脈絡膜血管は、ニワトリIgYの存在について陰性であった。硝子体内投与後のベバシズマブの生理学的に関連する血清レベルは、注射量の最大30%に相当することが見出された。これは、全身性副作用のリスクが、以前に認識されていたよりも大きいことを示唆している。血液眼関門は、全長IgGを全身循環に輸送して除去するための特異的機構を示す。Kimらの現在の研究は、この機構が新生児Fcレセプターであるという仮説を裏付けている。
【0016】
しかし、FcRnに対する結合はその循環半減期を延長して、全身性副作用を生じさせる可能性がある。
【0017】
当技術分野では、虚血性網膜症などの様々な眼血管疾患を治療及び予防するための優れた手段が必要とされている。
【0018】
Magdelaine-Beuzelin, Cらは、眼科学の治療抗体について、流行は巡ると報告している(MABS 2 (2010) 176-180)。
【0019】
Steinbrook, Rは、the price of sight - Ranibizumab, Bevacizumab, and the treatment of macular degeneration (New Eng. J. Med.355 (2006) 1409-1412)を報告している。
【0020】
米国特許出願公開第2011/236388号では、二重特異性二価抗VEGF/抗ANG-2抗体が報告されている。
【0021】
Kuo, T.Tらは、neonatal Fc receptor: from immunity to therapeutics (J. Clin. Immunol. 30 (2010) 777-789)について報告している。
【0022】
Medesan, Cらは、delineation of the amino acid residues involved in transcytosis and catabolism of mouse IgG1 (J. Immunol. 158 (1997) 2211-2217)を報告している。
【0023】
Qiao, S.-Wらは、dependence of antibody-mediated presentation of antigen on FcRn (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105 (2008) 9337-9342)を報告している。
【0024】
Kim, J.Kらは、mapping of the site on human IgG for binding of the MHC class I-related receptor, FcRn (Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2819-2825)を報告している。
【0025】
Kuo, T.Tらは、neonatal Fc receptor and IgG-based therapeutics (MABS 3 (2011) 422-438)について報告している。
【0026】
概要
眼内だけではなく残存体内にも存在する抗原をターゲティングする/に結合する抗体を使用する場合、眼から血中への血液眼関門通過後の短い全身半減期が、副作用を回避するために有益である。
【0027】
また、レセプターのリガンドに特異的に結合する抗体であって、眼疾患の処置に有効な抗体の場合、抗体-抗原複合体(=抗体-レセプターリガンド-複合体)を後で眼から除去し、その後、副作用を回避するために、(分離後に又は複合体として)抗体を全身循環から除去しなければならない(すなわち、抗体は、眼からレセプターリガンドを除去するためのビヒクルとして機能し、それにより、レセプターシグナル伝達を阻害し、全身性副作用を回避するために血液循環から迅速に除去される)。
【0028】
ヒト新生児Fcレセプターに結合しないFc領域を含む抗体は、血液眼関門を通過し得ることが見出された。前記抗体はヒトFcRnに結合しないが、FcRnに対する結合は、血液眼関門を通過する輸送に必要であると考えられるので、これは驚くべきことである。
【0029】
本明細書で報告される一態様は、可溶性レセプターリガンドを眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体の使用である。
【0030】
本明細書で報告される一態様は、医薬として使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0031】
本明細書で報告される一態様は、眼血管疾患を処置するのに使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0032】
本明細書で報告される一態様は、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体の使用である。
【0033】
本明細書で報告される一態様は、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去するのに使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0034】
本明細書で報告される一態様は、眼疾患、特に眼血管疾患を処置するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体の使用である。
【0035】
本明細書で報告される一態様は、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体の使用である。
【0036】
本明細書で報告される一態様は、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送するのに使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0037】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、表面プラズモン共鳴を使用した場合に検出可能なFcRn結合性を有しない。
【0038】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、pH6において1.7μM超のKd値で(すなわち、低い親和性で)、ヒトFcRnに結合する。
【0039】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有するFc領域を含む抗体と同じか又はそれよりも短いFcRnアフィニティークロマトグラフィーカラム保持時間を有する。
【0040】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、3分間以下のFcRnアフィニティークロマトグラフィーカラム保持時間を有する。
【0041】
一実施態様では、FcRnアフィニティーカラムは、50mm×5mmのカラム寸法を有し、ベッド高は5cmであり、ローディングは抗体50μgである。一実施態様では、平衡化緩衝液は、pH5.5に調整された150mM NaClを含む20mM MESであり、溶出緩衝液は、pH8.8に調整された150mM NaClを含む20mM Tris/HClであり、溶出は、平衡化緩衝液を7.5CVでアプライし、0%~100%溶出緩衝液を30CVでアプライし、その後、溶出緩衝液を10CVでアプライすることによる。
【0042】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有するFc領域を含む抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0043】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、配列番号01又は配列番号02又は配列番号112の重鎖アミノ酸配列と、配列番号03の軽鎖アミノ酸配列とを有する抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0044】
一実施態様では、抗体は、突然変異L251D、L251S、M252T、I253A、S254W、S254R、H310A、H433A、N434L、H435A、Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)の少なくとも1つを有するFc領域を含む抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0045】
一実施態様では、抗体は、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有するFc領域を含む抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0046】
一実施態様では、抗体は、配列番号01又は配列番号112の重鎖アミノ酸配列と、配列番号03の軽鎖アミノ酸配列とを有する抗体、又は配列番号02又は配列番号112の重鎖アミノ酸配列と、配列番号04の軽鎖アミノ酸配列とを有する抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0047】
一実施態様では、抗体は、突然変異L251D、L251S、M252T、I253A、S254W、S254R、H310A、H433A、N434L、H435A、Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)又はそれらの組み合わせの少なくとも1つを有する。
【0048】
一実施態様では、抗体は、第1のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、L251S、M252T、I253A、S254W、S254R、H310A、H433A、N434L、H435A、Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)の少なくとも1つを有し、第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、L251S、M252T、I253A、S254W、S254R、H310A、H433A、N434L、H435A、Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)の少なくとも1つを有する。
【0049】
一実施態様では、抗体は、両方のFc領域ポリペプチドにおいて、少なくとも突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有する。
【0050】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヘテロ二量体Fc領域を有する。
【0051】
一実施態様では、抗体は、全長抗体である。
【0052】
一実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0053】
一実施態様では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0054】
一実施態様では、抗体は、単一特異性抗体である。
【0055】
一実施態様では、抗体は、二重特異性抗体である。
【0056】
本明細書で報告される一態様は、眼疾患を処置するのに使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0057】
本明細書で報告される一態様は、可溶性レセプターリガンドを眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送するのに使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0058】
本明細書で報告される一態様は、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去するのに使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0059】
本明細書で報告される一態様は、眼疾患、特に眼血管疾患を処置するのに使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0060】
本明細書で報告される一態様は、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送するのに使用するための、無効化されたFcRn結合性を有するFc領域を含む抗体である。
【0061】
全ての態様の一実施態様では、抗体の処置又は適用は、硝子体内適用によるものである。
【0062】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、表面プラズモン共鳴を使用した場合に検出可能なFcRn結合性を有しない。
【0063】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、pH6において1.7μM超のKd値で(すなわち、低い親和性で)、ヒトFcRnに結合する。
【0064】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有するFc領域を含む抗体と同じか又はそれよりも短いFcRnアフィニティークロマトグラフィーカラム保持時間を有する。
【0065】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、3分間以下のFcRnアフィニティークロマトグラフィーカラム保持時間を有する。
【0066】
一実施態様では、FcRnアフィニティーカラムは、50mm×5mmのカラム寸法を有し、ベッド高は5cmであり、ローディングは抗体50μgである。一実施態様では、平衡化緩衝液は、pH5.5に調整された150mM NaClを含む20mM MESであり、溶出緩衝液は、pH8.8に調整された150mM NaClを含む20mM Tris/HClであり、溶出は、平衡化緩衝液を7.5CVでアプライし、0%~100%溶出緩衝液を30CVでアプライし、その後、溶出緩衝液を10CVでアプライすることによる。
【0067】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有するFc領域を含む抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0068】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、配列番号01又は配列番号02又は配列番号112の重鎖アミノ酸配列と、配列番号03の軽鎖アミノ酸配列とを有する抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0069】
一実施態様では、抗体は、突然変異L251D、L251S、M252T、I253A、S254W、S254R、H310A、H433A、N434L、H435A、Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)の少なくとも1つを有するFc領域を含む抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0070】
一実施態様では、抗体は、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有するFc領域を含む抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0071】
一実施態様では、抗体は、配列番号01又は配列番号112の重鎖アミノ酸配列と、配列番号03の軽鎖アミノ酸配列とを有する抗体、又は配列番号02又は配列番号112の重鎖アミノ酸配列と、配列番号04の軽鎖アミノ酸配列とを有する抗体とほぼ同じか又はそれよりも低い親和性で、ヒトFcRnに結合する。
【0072】
一実施態様では、抗体は、突然変異L251D、L251S、M252T、I253A、S254W、S254R、H310A、H433A、N434L、H435A、Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)又はそれらの組み合わせの少なくとも1つを有する。
【0073】
一実施態様では、抗体は、第1のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、L251S、M252T、I253A、S254W、S254R、H310A、H433A、N434L、H435A、Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)の少なくとも1つを有し、第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、L251S、M252T、I253A、S254W、S254R、H310A、H433A、N434L、H435A、Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)の少なくとも1つを有する。
【0074】
一実施態様では、抗体は、両方のFc領域ポリペプチドにおいて、少なくとも突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有する。
【0075】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヘテロ二量体Fc領域を有する。
【0076】
一実施態様では、抗体は、全長抗体である。
【0077】
一実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0078】
一実施態様では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体である。
【0079】
一実施態様では、抗体は、単一特異性抗体である。
【0080】
一実施態様では、抗体は、二重特異性抗体である。
【0081】
本明細書で報告される一態様は、眼血管疾患を有する個体を処置する方法であって、有効量の本明細書で報告される抗体を該個体に投与することを含む方法である。
【0082】
本明細書で報告される一態様は、個体において可溶性レセプターリガンドを眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送するための方法であって、有効量の本明細書で報告される抗体を該個体に投与して、可溶性レセプターリガンドを眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送することを含む方法である。
【0083】
本明細書で報告される一態様は、個体において1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去するための方法であって、有効量の本明細書で報告される抗体を該個体に投与して、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去することを含む方法である。
【0084】
本明細書で報告される一態様は、個体において1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送するための方法であって、有効量の本明細書で報告される抗体を該個体に投与して、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送することを含む方法である。
【0085】
本明細書で報告される一態様は、個体において可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔又は眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送するための方法であって、有効量の本明細書で報告される抗体を該個体に投与して、可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔又は眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送することを含む方法である。
【0086】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、第1のFc領域ポリペプチドと、第2のFc領域ポリペプチドとを含み、
i)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異Y436Aを含むか、又は
ii)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異I253A、H310A及びH435Aを含むか、又は
iii)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
iv)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
v)第1のFc領域ポリペプチドが突然変異Y436Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドが
a)突然変異I253A、H310A及びH435A、若しくは
b)突然変異H310A、H433A及びY436A、若しくは
c)突然変異L251D、L314D及びL432D
を含むか、
又は
vi)第1のFc領域ポリペプチドが突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドが
a)突然変異H310A、H433A及びY436A、若しくは
b)突然変異L251D、L314D及びL432D
を含むか、
又は
vii)第1のFc領域ポリペプチドが突然変異H310A、H433A及びY436Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドが
a)突然変異L251D、L314D及びL432D
を含む。
【0087】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヒトFcRnに特異的に結合しない。全ての態様の一実施態様では、抗体は、ブドウ球菌プロテインAに特異的に結合しない。
【0088】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヒトFcRnに特異的に結合しない。全ての態様の一実施態様では、抗体は、ブドウ球菌プロテインAに特異的に結合する。
【0089】
全ての態様の一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407V(「ホール」)をさらに含み、第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C及びT366W(「ノブ」)を含む。
【0090】
全ての態様の一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、ヒトIgG1サブクラスのものである。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異L234A及びL235Aをさらに含む。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異P329Gをさらに含む。
【0091】
全ての態様の一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、ヒトIgG4サブクラスのものである。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異S228P及びL235Eをさらに含む。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異P329Gをさらに含む。
【0092】
一実施態様では、ヒトIgGクラスのFc領域は、変異体ヒトIgGクラスのヘテロ二量体Fc領域である。
【0093】
一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドをペアリングしてFc領域を形成すると、ヘテロ二量体が形成される。
【0094】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号14のCDR3H領域、配列番号15のCDR2H領域及び配列番号16のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号17のCDR3L領域、配列番号18のCDR2L領域及び配列番号19のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号22のCDR3H領域、配列番号23のCDR2H領域及び配列番号24のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号25のCDR3L領域、配列番号26のCDR2L領域及び配列番号27のCDR1L領域を含み、
iii)二重特異性抗体は、突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(ヒト起源に由来する)定常重鎖領域を含む。
【0095】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号14のCDR3H領域、配列番号15のCDR2H領域及び配列番号16のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号17のCDR3L領域、配列番号18のCDR2L領域及び配列番号19のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号22のCDR3H領域、配列番号23のCDR2H領域及び配列番号24のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号25のCDR3L領域、配列番号26のCDR2L領域及び配列番号27のCDR1L領域を含み、
iii)二重特異性抗体は、突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(ヒト起源に由来する)定常重鎖領域を含み、
可変ドメインは、配列番号20、21、28及び29に対して3つ以下の突然変異を含む。
【0096】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、二重特異性抗体は、両方のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(すなわち、ヒト起源に由来する)定常重鎖領域を含む。
【0097】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】IHH-AAA突然変異(=突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)の組み合わせ)を有する<VEGF-ANG-2>IgG1又はIgG4抗体の概念及び利点のスキーム。
図2】小規模DLSベース粘度測定:200mMアルギニン/スクシナート(pH5.5)中の150mg/mLにおける推定粘度((IHH-AAA突然変異を有する)<VEGF-ANG-2>抗体VEGFang2-0016と、(このようなIHH-AAA突然変異を有しない)参照抗体VEGFang2-0015との比較)。
図3】20mMヒスチジン緩衝液、140mM NaCl(pH6.0)における温度(DLS凝集開始温度を含む)に応じたDLS凝集(本明細書で報告される(IHH-AAA突然変異を有する)<VEGF-ANG-2>抗体VEGFang2-0016と、(このようなIHH-AAA突然変異を有しない)参照抗体VEGFang2-0015との比較)。
図4】40℃、100mg/mLにおける7日間の保存(メインピークの減少及び高分子量(HMW)の増加)(低凝集を示した本明細書で報告される(IHH-AAA突然変異を有する)<VEGF-ANG-2>抗体VEGFang2-0016と、(このようなIHH-AAA突然変異を有しない)参照抗体VEGFang2-0015との比較)。
図5A】A:(IHH-AAA突然変異を有しない)VEGFang2-0015及びB:(IHH-AAA突然変異を有する)VEGFang2-0016のFcRn定常状態親和性。
図5B】A:(IHH-AAA突然変異を有しない)VEGFang2-0015及びB:(IHH-AAA突然変異を有する)VEGFang2-0016のFcRn定常状態親和性。
図6】IHH-AAA突然変異を有しないVEGFang2-0015及びIHH-AAA突然変異を有するVEGFang2-0016のFcガンマRIIIa相互作用測定(両方とも、P329G LALA突然変異を有するIgG1サブクラスである;コントロールとして、IgG1サブクラスの抗ジゴキシゲニン抗体(抗Dig)及びIgG4ベースの抗体を使用した)。
図7A】血清及び全眼溶解物中の<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体の濃度を決定するための薬物動態(PK)-ELISAアッセイ原理の概略図。
図7B】静脈内(i.v.)適用後の血清濃度:IHH-AAA突然変異を有しないVEGFang2-0015と、IHH-AAA突然変異を有するVEGFang2-0016との比較。
図7C】硝子体内適用後の血清濃度:IHH-AAA突然変異を有しないVEGFang2-0015と、IHH-AAA突然変異を有するVEGFang2-0016との比較。
図7D】(静脈内適用と比較した、右眼にのみ硝子体内適用した後の)右眼及び左眼における(IHH-AAA突然変異を有する)VEGFang2-0016の眼溶解物中濃度:硝子体内適用後の右眼においてのみ、有意な濃度を検出することができた;(IHH-AAA突然変異を有する)VEGFang2-0016の血清半減期は短いため、静脈内適用後において、眼溶解物中濃度を検出することができなかった。
図7E】(静脈内適用と比較した、右眼にのみ硝子体内適用した後の)右眼及び左眼における(IHH-AAA突然変異を有しない)VEGFang2-0015の眼溶解物中濃度:右眼では(及び左眼ではある程度)、硝子体内適用後において、VEGFang2-0015濃度を検出することができた;これは、右眼から血清へ及びそこから左眼への拡散を示しており、これは、(IHH-AAA突然変異を有しない)VEGFang2-0015の長い半減期によって説明することができる;(IHH-AAA突然変異を有しない)血清安定VEGFang2-0015の眼への拡散により、静脈内適用後においても、両眼に関する有意な眼溶解物中濃度を検出することができた。
図8A】FcRn結合能に関して操作した抗体は、SPR分析において、参照野生型(wt)抗体と比較して、長期(YTE突然変異)又は短期(IHH-AAA突然変異)のin vivo半減期、増強(YTE突然変異)又は減少した結合(IHH-AAA突然変異)だけではなく、増強又は減少したFcRnカラムクロマトグラフィー保持時間も示す;a)10mg/kgをhuFcRnトランスジェニック雄性C57BL/6Jマウス+/-276に単回静脈内(i.v.)ボーラス適用した後のPKデータ:野生型IgG並びにYTE及びIHH-AAA Fc改変IgGのAUCデータ;b)BIAcoreセンサーグラム;c)FcRnアフィニティーカラム溶出;野生型抗IGF-1R抗体(参照)、抗IGF-1R抗体のYTE突然変異体、抗IGF-1R抗体のIHH-AAA突然変異体。
図8B】FcRn結合能に関して操作した抗体は、SPR分析において、参照野生型(wt)抗体と比較して、長期(YTE突然変異)又は短期(IHH-AAA突然変異)のin vivo半減期、増強(YTE突然変異)又は減少した結合(IHH-AAA突然変異)だけではなく、増強又は減少したFcRnカラムクロマトグラフィー保持時間も示す;a)10mg/kgをhuFcRnトランスジェニック雄性C57BL/6Jマウス+/-276に単回静脈内(i.v.)ボーラス適用した後のPKデータ:野生型IgG並びにYTE及びIHH-AAA Fc改変IgGのAUCデータ;b)BIAcoreセンサーグラム;c)FcRnアフィニティーカラム溶出;野生型抗IGF-1R抗体(参照)、抗IGF-1R抗体のYTE突然変異体、抗IGF-1R抗体のIHH-AAA突然変異体。
図8C】FcRn結合能に関して操作した抗体は、SPR分析において、参照野生型(wt)抗体と比較して、長期(YTE突然変異)又は短期(IHH-AAA突然変異)のin vivo半減期、増強(YTE突然変異)又は減少した結合(IHH-AAA突然変異)だけではなく、増強又は減少したFcRnカラムクロマトグラフィー保持時間も示す;a)10mg/kgをhuFcRnトランスジェニック雄性C57BL/6Jマウス+/-276に単回静脈内(i.v.)ボーラス適用した後のPKデータ:野生型IgG並びにYTE及びIHH-AAA Fc改変IgGのAUCデータ;b)BIAcoreセンサーグラム;c)FcRnアフィニティーカラム溶出;野生型抗IGF-1R抗体(参照)、抗IGF-1R抗体のYTE突然変異体、抗IGF-1R抗体のIHH-AAA突然変異体。
図9】Fc領域に導入した突然変異の数に応じたFcRnアフィニティークロマトグラフィー保持時間の変化。
図10】Fc領域に導入した突然変異の非対称分布に応じたFcRn結合の変化。
図11】両方の重鎖において突然変異H310A、H433A及びY436Aを有する二重特異性<VEGF-ANG-2>抗体(VEGF/ANG2-0121)の、2つの連続プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出クロマトグラム。
図12】両方の重鎖において突然変異H310A、H433A及びY436Aを有する抗IGF-1R抗体(IGF-1R-0045)の、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出クロマトグラム。
図13】CM5チップ上に固定化したプロテインAに対するIgG Fc領域改変<VEGF-ANG-2>抗体の結合。
図14】FcRnアフィニティーカラムにおける異なる<VEGF-ANG-2>抗体の溶出クロマトグラム。
図15】ブドウ球菌プロテインAに対する異なる融合ポリペプチドの結合(SPR)。
図16】固定化プロテインAに対する異なる<VEGF-ANG-2>抗体及び抗IGF-1R抗体突然変異体の結合(SPR)。
図17】抗体IGF-1R0033、0035及び0045を静脈内適用した後の血清濃度の比較。
図18】抗体IGF-1R0033を硝子体内適用及び静脈内適用した後の眼溶解物中濃度の比較。
図19】抗体IGF-1R0035を硝子体内適用及び静脈内適用した後の眼溶解物中濃度の比較。
図20】抗体IGF-1R0045を硝子体内適用及び静脈内適用した後の眼溶解物中濃度の比較。
【0099】
発明の実施態様の詳細な説明
I.定義
「約」という用語は、その後に続く数値の+/-20%の範囲を意味する。一実施態様では、約という用語は、その後に続く数値の+/-10%の範囲を意味する。一実施態様では、約という用語は、その後に続く数値の+/-5%の範囲を意味する。
【0100】
本明細書の目的のために、「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義されるように、ヒト免役グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免役グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、又はアミノ酸配列変化を含有し得る。いくつかの実施態様では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下又は2以下である。いくつかの実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、配列において、VLヒト免役グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0101】
「親和性成熟」抗体は、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす変化を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)において1つ以上の変化を有する抗体を指す。
【0102】
「変化」という用語は、改変抗体又は融合ポリペプチドを得るための、親抗体又は融合ポリペプチド(例えば、少なくともFc領域のFcRn結合部分を含む融合ポリペプチド)における1つ以上のアミノ酸残基の突然変異(置換)、挿入(付加)又は欠失を意味する。「突然変異」という用語は、特定のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基で置換されることを意味する。例えば、突然変異L234Aは、抗体Fc領域(ポリペプチド)における234位のアミノ酸残基リシンがアミノ酸残基アラニンによって置換されること(リシンのアラニンによる置換)を意味する(ナンバリングは、EUインデックスに従う)。
【0103】
「アミノ酸突然変異」という用語は、少なくとも1つの既存のアミノ酸残基を別の異なるアミノ酸残基(=置換アミノ酸残基)で置換することを意味する。置換アミノ酸残基は、「天然に存在するアミノ酸残基」であり得、アラニン(3文字記号:ala、1文字記号:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、及びバリン(val、V)からなる群より選択され得る。置換アミノ酸残基は、「天然に存在しないアミノ酸残基」であり得る。例えば、米国特許第6,586,207号、国際公開公報第98/48032号、国際公開公報第03/073238号、米国特許出願公開第2004/0214988号、国際公開公報第2005/35727号、国際公開公報第2005/74524号、Chin, J.W., et al., J. Am. Chem. Soc. 124 (2002) 9026-9027; Chin, J.W. and Schultz, P.G., ChemBioChem 11 (2002) 1135-1137; Chin, J.W., et al., PICAS United States of America 99 (2002) 11020-11024;及びWang, L. and Schultz, P.G., Chem. (2002) 1-10(これらは全て、参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと。
【0104】
「アミノ酸挿入」という用語は、アミノ酸配列中の所定の位置に少なくとも1つのアミノ酸残基を(さらに)組み入れることを意味する。一実施態様では、挿入は、1つ又は2つのアミノ酸残基の挿入である。挿入されるアミノ酸残基は、任意の天然に存在するアミノ酸残基又は天然に存在しないアミノ酸残基であり得る。
【0105】
「アミノ酸欠失」という用語は、アミノ酸配列中の所定の位置において少なくとも1つのアミノ酸残基を取り除くことを意味する。
【0106】
本明細書で使用される「ANG-2」という用語は、例えば、Maisonpierre, P.C., et al, Science 277 (1997) 55-60及びCheung, A.H., et al., Genomics 48 (1998) 389-91に記載されているヒトアンギオポエチン2(ANG-2)(あるいは、ANGPT2又はANG2で省略される)(配列番号31)を指す。アンジオポエチン-1(配列番号32)及び2は、Ties(血管内皮細胞内で選択的に発現されるチロシンキナーゼのファミリー)のリガンドとして発見された(Yancopoulos, G.D., et al., Nature 407 (2000) 242-248)。現在、アンジオポエチンファミリーの4つの明確なメンバーがある。アンジオポエチン-3及び4(ANG-3及びANG-4)は、マウス及びヒトにおける同じ遺伝子座の大きく分岐したカウンターパートに相当し得る(Kim, I., et al., FEBS Let, 443 (1999) 353-356; Kim, I., et al., J. Biol. Chem. 274 (1999) 26523-26528)。ANG-1及びANG-2は、本来は、それぞれアゴニスト及びアンタゴニストとして組織培養実験において同定された(ANG-1については、Davis, S., et al., Cell 87 (1996) 1161-1169;及びANG-2については、Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60を参照のこと)。公知のアンジオポエチンは全て、Tie2(配列番号33)に主に結合し、ANG-1及び-2は両方とも、3nM(Kd)の親和性でTie2に結合する(Maisonpierre, P.C., et al., Science 277 (1997) 55-60)。
【0107】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原及び/又はプロテインA及び/又はFcRn結合活性を示す限り、限定されないが、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、三重特異性抗体)及び抗体フラグメントを含む様々な抗体構造体を包含する。
【0108】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその抗原に対する参照抗体の結合を50%以上遮断する抗体、及び逆に、競合アッセイにおいてその抗原に対する抗体の結合を50%以上遮断する参照抗体を指す。例示的な競合アッセイが本明細書で提供される。
【0109】
「非対称的なFc領域」という用語は、KabatのEUインデックスナンバリングシステムにしたがう対応する位置において異なるアミノ酸残基を有するFc領域ポリペプチドのペアを意味する。
【0110】
「FcRn結合に関して非対称的なFc領域」という用語は、KabatのEUインデックスナンバリングシステムにしたがって決定される対応する位置において異なるアミノ酸残基を有する2本のポリペプチド鎖からなるFc領域を意味し、異なる位置は、ヒト新生児Fcレセプター(FcRn)に対するFc領域の結合に影響を与える。本明細書における目的のために、「FcRn結合に関して非対称的なFc領域」におけるFc領域の2本のポリペプチド鎖間の差異は、例えば二重特異性抗体の生産の場合に、ヘテロ二量体Fc領域の形成を容易にするために導入された差異を含まない。これらの差異も非対称的であり得る(すなわち、2本の鎖は、KabatのEUインデックスナンバリングシステムにしたがう対応しないアミノ酸残基において差異を有する)。これらの差異はヘテロ二量体化を容易にし、ホモ二量体化を減少させる。このような差異の例は、いわゆる「ノブイントゥホール」置換である(例えば、米国特許第7,695,936号及び米国特許出願公開第2003/0078385号を参照のこと)。サブクラスIgG1のIgG抗体のFc領域の個々のポリペプチド鎖における以下のノブ及びホール置換は、ヘテロ二量体形成を増加させることが見出された:1)一方の鎖におけるY407T及び他方の鎖におけるT366Y;2)一方の鎖におけるY407A及び他方の鎖におけるT366W;3)一方の鎖におけるF405A及び他方の鎖におけるT394W;4)一方の鎖におけるF405W及び他方の鎖におけるT394S;5)一方の鎖におけるY407T及び他方の鎖におけるT366Y;6)一方の鎖におけるT366Y及びF405A並びに他方の鎖におけるT394W及びY407T;7)一方の鎖におけるT366W及びF405W並びに他方の鎖におけるT394S及びY407A;8)一方の鎖におけるF405W及びY407A並びに他方の鎖におけるT366W及びT394S;並びに9)一方の鎖におけるT366W並びに他方の鎖におけるT366S、L368A及びY407V(列挙されている最後のものが特に適切である)。加えて、2本のFc領域ポリペプチド鎖間において新たなジスルフィド結合を作り出す変化は、ヘテロ二量体形成を容易にする(例えば、米国特許出願公開第2003/0078385号を参照のこと)。サブクラスIgG1のIgG抗体のFc領域の個々のポリペプチド鎖において新たな鎖間ジスルフィド結合を形成するための適切な間隔のシステイン残基をもたらす以下の置換は、ヘテロ二量体形成を増加させることが見出された:一方の鎖におけるY349C及び他方におけるS354C;一方の鎖におけるY349C及び他方におけるE356C;一方の鎖におけるY349C及び他方におけるE357C;一方の鎖におけるL351C及び他方におけるS354C;一方の鎖におけるT394C及び他方におけるE397C;又は一方の鎖におけるD399C及び他方におけるK392C。ヘテロ二量体化を容易にするアミノ酸変化のさらなる例は、いわゆる「電荷対置換」である(例えば、国際公開公報第2009/089004号を参照のこと)。サブクラスIgG1のIgG抗体のFc領域の個々のポリペプチド鎖における以下の電荷対置換は、ヘテロ二量体形成を増加させることが見出された:1)一方の鎖におけるK409D又はK409E及び他方の鎖におけるD399K又はD399R;2)一方の鎖におけるK392D又はK392E及び他方の鎖におけるD399K又はD399R;3)一方の鎖におけるK439D又はK439E及び他方の鎖におけるE356K又はE356R;4)一方の鎖におけるK370D又はK370E及び他方の鎖におけるE357K又はE357R;5)一方の鎖におけるK409D及びK360D+他方の鎖におけるD399K及びE356K;6)一方の鎖におけるK409D及びK370D+他方の鎖におけるD399K及びE357K;7)一方の鎖におけるK409D及びK392D+他方の鎖におけるD399K、E356K及びE357K;8)一方の鎖におけるK409D及びK392D並びに他方の鎖におけるD399K;9)一方の鎖におけるK409D及びK392D並びに他方の鎖におけるD399K及びE356K;10)一方の鎖におけるK409D及びK392D並びに他方の鎖におけるD399K及びD357K;11)一方の鎖におけるK409D及びK370D並びに他方の鎖におけるD399K及びD357K;12)一方の鎖におけるD399K並びに他方の鎖におけるK409D及びK360D;並びに13)一方の鎖におけるK409D及びK439D並びに他方におけるD399K及びE356K。
【0111】
「(抗原に対する)結合」という用語は、in vitroアッセイにおける(一実施態様では、抗体を表面に結合させ、抗体に対する抗原の結合を表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定する結合アッセイにおける)、抗体のその抗原に対する結合を意味する。結合は、10-8M以下、いくつかの実施態様では10-13~10-8M、いくつかの実施態様では10-13~10-9Mの結合親和性(K)を意味する。
【0112】
結合は、BIAcoreアッセイ(GE Healthcare Biosensor AB, Uppsala, Sweden)によって調査され得る。結合の親和性は、k(抗体/抗原複合体からの抗体の会合速度定数)、k(解離定数)及びK(k/k)という用語によって定義される。
【0113】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来するが、重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分が異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0114】
「CH2ドメイン」という用語は、およそEU位置231位からEU位置340位(KabatのEUナンバリングシステム)に及ぶ抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。一実施態様では、CH2ドメインは、配列番号09のアミノ酸配列:APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVWDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQESTYRWSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKを有する。
【0115】
「CH3ドメイン」という用語は、およそEU位置341位からEU位置446位に及ぶ抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。一実施態様では、CH3ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列:GQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGを有する。
【0116】
抗体の「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAにさらに分類され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと称される。
【0117】
「同程度の長さ」という用語は、2つのポリペプチドが同数のアミノ酸残基を含むか、又は長さが1アミノ酸残基以上及び多くとも最大10アミノ酸残基異なり得ることを意味する。一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは同数のアミノ酸残基を含むか、又は1~10アミノ酸残基の数だけ異なる。一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは同数のアミノ酸残基を含むか、又は1~5アミノ酸残基の数だけ異なる。一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは同数のアミノ酸残基を含むか、又は1~3アミノ酸残基の数だけ異なる。
【0118】
「エフェクター機能」は、抗体クラスにより異なる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC);Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;並びにB細胞活性化が含まれる。
【0119】
薬剤(例えば、医薬製剤)の「有効量」は、必要な投与量及び期間で、所望の治療的結果又は予防的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0120】
「Fc融合ポリペプチド」という用語は、結合ドメイン(例えば、単鎖抗体などの抗原結合ドメイン、又はレセプターのリガンドなどのポリペプチド)と、所望のターゲット/プロテインA及び/又はFcRn結合活性を示す抗体Fc領域との融合物を意味する。
【0121】
「ヒト起源のFc領域」という用語は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインの少なくとも一部を含有するヒト起源の免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。一実施態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226又はPro230からカルボキシル末端に及ぶ。一実施態様では、Fc領域は、配列番号60のアミノ酸配列を有する。しかしながら、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は存在してもよいし、又は存在しなくてもよい。本明細書において特に指定がない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91 3242に記載されているEUナンバリングシステム(これは、EUインデックスとも称される)に従う。Fc領域は、ポリペプチド間ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域システイン残基を介して互いに共有結合され得る2つの重鎖Fc領域ポリペプチドから構成される。
【0122】
「FcRn」という用語は、ヒト新生児Fcレセプターを意味する。FcRnは、リソソーム分解経路からIgGをサルベージするように機能して、クリアランスの減少及び半減期の増加をもたらす。FcRnは、2つのポリペプチド(50kDaのクラスI主要組織適合遺伝子複合体様タンパク質(α-FcRn)及び15kDaのβ2-ミクログロブリン(β2m))からなるヘテロ二量体タンパク質である。FcRnは、高い親和性で、IgGのFc領域のCH2-CH3部分に結合する。IgGとFcRnとの間の相互作用は厳密にpH依存性であり、1:2の化学量論比で起こり、1つのIgGが、その2本の重鎖を介して2つのFcRn分子に結合する(Huber, A.H., et al., J. Mol. Biol. 230 (1993) 1077-1083)。酸性pH(pH<6.5)のエンドソーム中でFcRn結合が起こり、中性の細胞表面(pH約7.4)でIgGが放出される。相互作用のpH感受性は、エンドソームの酸性環境内でのレセプターに対する結合によって、細胞中へ飲作用されるIgGの細胞内分解からのFcRn媒介性保護を容易にする。次いで、FcRnは、FcRn-IgG複合体が細胞外の中性pH環境に曝露された際に、細胞表面にIgGを再循環させ、続いて血流中に放出するのを容易にする。
【0123】
「Fc領域のFcRn結合部分」という用語は、およそEU位置243位からEU位置261位、並びにおよそEU位置275位からEU位置293位、並びにおよそEU位置302位からEU位置319位、並びにおよそEU位置336位からEU位置348位、並びにおよそEU位置367位からEU位置393位及びEU位置408位、並びにおよそEU位置424位からEU位置440位に及ぶ抗体重鎖ポリペプチドの部分を意味する。一実施態様では、KabatのEUナンバリングによる以下のアミノ酸残基の1つ以上が変化される:F243、P244、P245P、K246、P247、K248、D249、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、P257、E258、V259、T260、C261、F275、N276、W277、Y278、V279、D280、V282、E283、V284、H285、N286、A287、K288、T289、K290、P291、R292、E293、V302、V303、S304、V305、L306、T307、V308、L309、H310、Q311、D312、W313、L314、N315、G316、K317、E318、Y319、I336、S337、K338、A339、K340、G341、Q342、P343、R344、E345、P346、Q347、V348、C367、V369、F372、Y373、P374、S375、D376、I377、A378、V379、E380、W381、E382、S383、N384、G385、Q386、P387、E388、N389、Y391、T393、S408、S424、C425、S426、V427、M428、H429、E430、A431、L432、H433、N434、H435、Y436、T437、Q438、K439及びS440(EUナンバリング)。
【0124】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、4つのFRドメインFR1、FR2、FR3及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)において以下の配列で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0125】
「全長抗体」という用語は、ネイティブな抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書で定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を意味する。全長抗体は、例えば、全長抗体の鎖の1本以上にコンジュゲートされたscFv又はscFabなどのさらなるドメインを含み得る。
【0126】
「ヘテロ二量体」又は「ヘテロ二量体の」という用語は、KabatのEUインデックスにしたがって決定される対応する位置において、少なくとも1つの異なるアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を有する(例えば、同程度の長さの)2本のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0127】
「ホモ二量体」又は「ホモ二量体の」という用語は、KabatのEUインデックスにしたがって決定される対応する位置において、同一のアミノ酸配列を有する同程度の長さの2本のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0128】
本明細書で報告される抗体又はFc領域融合ポリペプチドは、焦点の突然変異又は特性に関して決定されるそのFc領域に関して、ホモ二量体又はヘテロ二量体であり得る。例えば、FcRn及び/又はプロテインA結合(すなわち、焦点の特性)に関して、Fc領域(抗体)は、突然変異H310A、H433A及びY436A(これらの突然変異は、Fc領域融合ポリペプチド又は抗体のFcRn及び/又はプロテインA結合特性に関して焦点が合っている)に関してホモ二量体(すなわち、重鎖Fc領域ポリペプチドは両方とも、これらの突然変異を含む)であるが、それと同時に、それぞれ突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407V(これらの突然変異は、FcRn及び/又はプロテインA結合特性ではなく重鎖のヘテロ二量体化を対象とするので、これらの突然変異は焦点のものではない)並びに突然変異S354C及びT366Wに関してヘテロ二量体である(第1のセットは、第1のFc領域ポリペプチドにのみ含まれるのに対して、第2のセットは、第2のFc領域ポリペプチドにのみ含まれる)。さらに、例えば、本明細書で報告されるFc領域融合ポリペプチド又は抗体は、突然変異I253A、H310A、H433A、H435A及びY436A(すなわち、これらの突然変異は全て、二量体ポリペプチドのFcRn及び/又はプロテインA結合特性を対象とする)に関してヘテロ二量体であり得る(すなわち、一方のFc領域ポリペプチドは、突然変異I253A、H310A及びH435Aを含むのに対して、他方のFc領域ポリペプチドは、突然変異H310A、H433A及びY436Aを含む)。
【0129】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」という用語は同義的に使用され、外来性核酸が導入された細胞(このような細胞の子孫を含む)を意味する。宿主細胞には、「トンスフォーマント」及び「トランスフォーメーション細胞」が含まれ、継代の回数にかかわらず、初代トランスフォーメーション細胞及びそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含量が親細胞と完全に同一ではなくてもよく、突然変異を含有し得る。最初にトランスフォーメーションされた細胞においてスクリーニング又は選択されたのと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体子孫は、本明細書に含まれる。
【0130】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって産生された抗体、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0131】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免役グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基に相当するフレームワークである。一般的に、ヒト免役グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位集団から行われる。一般的に、配列の下位集団は、Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Bethesda MD (1991), NIH Publication 91-3242, Vols. 1-3にあるような下位集団である。一実施態様では、VLの場合、下位集団は、上記Kabatらにあるような下位集団カッパIである。一実施態様では、VHの場合、下位集団は、上記Kabatらにあるような下位集団IIIである。
【0132】
「に由来する」という用語は、少なくとも1つの位置において変化を導入することによって、アミノ酸配列が親アミノ酸配列から生じることを意味する。したがって、由来するアミノ酸配列は、少なくとも1つの対応する位置において、対応する親アミノ酸配列と異なる(抗体Fc領域について、ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)。一実施態様では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、対応する位置において1~15アミノ酸残基異なる。一実施態様では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、対応する位置において1~10アミノ酸残基異なる。一実施態様では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、対応する位置において1~6アミノ酸残基異なる。同様に、由来するアミノ酸配列は、その親アミノ酸配列と高いアミノ酸配列同一性を有する。一実施態様では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、80%以上のアミノ酸配列同一性を有する。一実施態様では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、90%以上のアミノ酸配列同一性を有する。一実施態様では、親アミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、95%以上のアミノ酸配列同一性を有する。
【0133】
「ヒトFc領域ポリペプチド」という用語は、「ネイティブな」又は「野生型」ヒトFc領域ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を意味する。「変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチド」という用語は、少なくとも1つの「アミノ酸変化」によって「ネイティブな」又は「野生型」ヒトFc領域ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を意味する。「ヒトFc領域」は、2つのヒトFc領域ポリペプチドからなる。「変異体(ヒト)Fc領域」は、2つのFc領域ポリペプチドであって、その両方が変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドであり得るか、又は一方がヒトFc領域ポリペプチドであり、他方が変異体(ヒト)Fc領域ポリペプチドである2つのFc領域ポリペプチドからなる。
【0134】
一実施態様では、ヒトFc領域ポリペプチドは、配列番号60のヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、又は配列番号61のヒトIgG2 Fc領域ポリペプチド、又は配列番号62のヒトIgG3 Fc領域ポリペプチド、又は配列番号63のヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドのアミノ酸配列を有する。一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号60又は61又は62又は63のFc領域ポリペプチドに由来し、配列番号60又は61又は62又は63のFc領域ポリペプチドと比較して、少なくとも1個のアミノ酸突然変異を有する。一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、約1~約10個のアミノ酸突然変異、一実施態様では約1~約5個のアミノ酸突然変異を含む/有する。一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号60又は61又は62又は63のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約80%の相同性を有する。一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号60又は61又は62又は63のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約90%の相同性を有する。一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、配列番号60又は61又は62又は63のヒトFc領域ポリペプチドと少なくとも約95%の相同性を有する。
【0135】
配列番号60又は61又は62又は63のヒトFc領域ポリペプチドに由来するFc領域ポリペプチドは、含まれるアミノ酸変化によって定義される。したがって、例えば、P329Gという用語は、ヒトFc領域ポリペプチドに由来するFc領域ポリペプチドであって、配列番号60又は61又は62又は63のヒトFc領域ポリペプチドと比べて、アミノ酸位置329位におけるプロリンからグリシンへの突然変異を有するFc領域ポリペプチドを意味する。
【0136】
本明細書で使用される、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載されているKabatナンバリングシステムにしたがってナンバリングされており、本明細書では「ナンバリングはKabatに従う」と表現されている。具体的には、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のKabatナンバリングシステム(647~660ページを参照のこと)は、カッパ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用され、KabatのEUインデックスナンバリングシステム(661~723ページを参照のこと)は、定常重鎖ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3)に使用される。
【0137】
ヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化1】
【0138】
突然変異L234A、L235Aを有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化2】
【0139】
Y349C、T366S、L368A及びY407V突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化3】
【0140】
S354C、T366W突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化4】
【0141】
L234A、L235A突然変異及びY349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化5】
【0142】
L234A、L235A及びS354C、T366W突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化6】
【0143】
P329G突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化7】
【0144】
L234A、L235A突然変異及びP329G突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化8】
【0145】
P329G突然変異及びY349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化9】
【0146】
P329G突然変異及びS354C、T366W突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化10】
【0147】
L234A、L235A、P329G及びY349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化11】
【0148】
L234A、L235A、P329G突然変異及びS354C、T366W突然変異を有するヒトIgG1 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化12】
【0149】
ヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化13】
【0150】
S228P及びL235E突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化14】
【0151】
S228P、L235E突然変異及びP329G突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化15】
【0152】
S354C、T366W突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化16】
【0153】
Y349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化17】
【0154】
S228P、L235E及びS354C、T366W突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化18】
【0155】
S228P、L235E及びY349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化19】
【0156】
P329G突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化20】
【0157】
P329G及びY349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化21】
【0158】
P329G及びS354C、T366W突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化22】
【0159】
S228P、L235E、P329G及びY349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化23】
【0160】
S228P、L235E、P329G及びS354C、T366W突然変異を有するヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域ポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
【化24】
【0161】
異なるヒトFc領域のアライメントを以下に示す(EUナンバリング):
【化25】
【0162】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRに由来するアミノ酸残基と、ヒトFRに由来するアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様では、ヒト化抗体は、HVR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに対応する少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を場合により含み得る。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0163】
本明細書で使用される「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列が超可変性であり(「相補性決定領域」又は「CDR」)、構造的に定義されたループ(超可変ループ)を形成し、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触点」)を含有する抗体可変ドメインの各領域を指す。一般的に、抗体は、6つのHVR(VHにおいて3つ(H1、H2、H3)及びVLにおいて3つ(L1、L2、L3))を含む。本明細書で示されるHVRは、
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)において存在する超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917);
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)において存在するCDR(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242.);
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)及び93-101(H3)において存在する抗原接触点(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));並びに
(d)HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(L2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)及び94-102(H3)を含む(a)、(b)及び/又は(c)の組み合わせ
を含む。
【0164】
一実施態様では、HVR残基は、本明細書の他の箇所で特定されるものを含む。
【0165】
特に指示がない限り、HVR残基及び可変ドメインにおける他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書においてKabatのEUインデックスナンバリングシステム(Kabat et al、上掲)にしたがってナンバリングされる。
【0166】
特に指示がない限り、本明細書で使用される「IGF-1R」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意のネイティブなIGF-1Rを指す。この用語は、プロセシングされていない「全長」IGF-1R、及び細胞内プロセシングから生じる任意の形態のIGF-1Rを包含する。この用語はまた、IGF-1Rの天然に存在する変異体、例えばスプライス変異体又はアレル変異体を包含する。ヒトIGF-1Rのアミノ酸配列を配列番号11に示す。
【0167】
「個体」又は「被験体」は、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。特定の実施態様では、個体又は被験体はヒトである。
【0168】
「単離された」抗体は、その天然環境の構成成分から分離された抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動法(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフ法(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー又はイオン交換又は逆相HPLC)によって決定した場合に、95%超又は99%超の純度まで精製される。抗体の純度の評価方法の概説については、例えば、Flatman, S. et al., J. Chrom. B 848 (2007) 79-87を参照のこと。
【0169】
「単離された」核酸は、その天然環境の構成成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸には、核酸分子を通常含有する細胞内に含まれる核酸分子が含まれるが、その核酸分子は、染色体外に、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0170】
「抗IGF-1R抗体をコードする単離された核酸」は、抗体重鎖及び軽鎖(又はそれらのフラグメント)をコードする1つ以上の核酸分子(単一のプラスミド又は別個のプラスミド中のこのような核酸分子、及び宿主細胞内の1つ以上の位置に存在するこのような核酸分子を含む)を指す。
【0171】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を指す。すなわち、例えば、天然に存在する突然変異を含有するか、又はモノクローナル抗体調製物の生産中に生じる可能な変異体抗体であって、一般に微量で存在する変異体抗体を除いて、この集団を含む個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られたものであるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって使用すべきモノクローナル抗体は、限定されないが、ハイブリドーマ法、リコンビナントDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含む様々な技術によって作製することができ、このような方法、及びモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0172】
「ネイティブな抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、ネイティブなIgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも称される可変領域(VH)とそれに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)とを有する。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも称される可変領域(VL)とそれに続く軽鎖定常(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と称される2種類の1つに割り当てることができる。
【0173】
「添付文書」という用語は、このような治療製品の適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌についての情報及び/又はその使用に関する警告を含有する治療製品の市販パッケージに通例含まれる説明書を指すために使用される。
【0174】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列をアライメントさせ、必要な場合にはギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを実現した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の部分とみなさない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当技術分野の技能の範囲内である様々な方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、実現することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大限のアライメントを実現するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントさせるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のためには、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して、アミノ酸配列同一性%の値を得る。配列比較コンピュータープログラムALIGN-2は、Genentech, Inc.の著作物であり、ソースコードはユーザー向け文書と共にU.S. Copyright Office, Washington D.C., 20559に提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaから公的に入手可能であり、又はソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用するためにコンパイルされるべきである。配列比較パラメータは全て、ALIGN-2プログラムによって設定され、変化しない。
【0175】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために使用される状況において、所定のアミノ酸配列Bに対する所定のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所定のアミノ酸配列Bに対する特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、又は含む所定のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は、以下のように計算される。
100×比X/Y
(式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムによるA及びBのアラインメントにおいて同一のマッチとしてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくないと認識されよう。特に明記されない限り、本明細書で使用されるアミノ酸配列同一性%の値は全て、直前の段落に記載されているように、ALIGN-2コンピュータープログラムを使用して得られる。
【0176】
「医薬製剤」という用語は、その中に含まれる有効成分の生物学的活性が有効になるのを可能にするような形態の調製物であって、その製剤を投与する被験体に対して許容し得ないほど毒性であるさらなる成分を含有しない調製物を指す。
【0177】
「薬学的に許容し得る担体」は、医薬製剤中の有効成分以外の成分であって、被験体に対して非毒性の成分を指す。薬学的に許容し得る担体には、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定化剤又は保存剤が含まれる。
【0178】
本明細書で使用される「ペプチドリンカー」という用語は、アミノ酸配列を有するペプチド(一実施態様では、これは合成起源のものである)を意味する。一実施態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも30アミノ酸長、一実施態様では32~50アミノ酸長のアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施態様では、ペプチドリンカーは、32~40アミノ酸長のアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施態様では、ペプチドリンカーは、(GS)n(G=グリシン、S=セリン)、(x=3、n=8、9又は10)又は(x=4及びn=6、7又は8)であり、一実施態様ではx=4、n=6又は7であり、一実施態様ではx=4、n=7である。一実施態様では、ペプチドリンカーは、(GS)である。
【0179】
本明細書で使用される「リコンビナント抗体」という用語は、リコンビナント手段によって調製、発現、作製又は単離される全ての抗体(キメラ、ヒト化及びヒト)を意味する。これには、NS0若しくはCHO細胞などの宿主細胞から、又はヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックな動物(例えば、マウス)から単離された抗体、又は宿主細胞にトランスフェクションされたリコンビナント発現プラスミドを使用して発現された抗体が含まれる。このようなリコンビナント抗体は、再構成された形態で可変領域及び定常領域を有する。本明細書で報告されるリコンビナント抗体は、in vivo体細胞超変異に供され得る。したがって、リコンビナント抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来しこれらに関係するが、in vivoではヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0180】
本明細書で使用される「処置」(及びその文法的変化形、例えば「処置する」又は「処置すること」)は、処置される個体の自然経過を変化させようとする臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床的病状の経過中に実施され得る。処置の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発生又は再発の予防、症候の軽減、疾患の直接的又は間接的な任意の病理学的転帰の減少、転移の予防、疾患の進行速度の減少、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後改善が含まれる。いくつかの実施態様では、本明細書で報告される抗体又はFc領域融合ポリペプチドは、疾患の発症を遅らせるために、又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0181】
本出願内で使用される「価」という用語は、(抗体)分子において指定数の結合部位が存在することを意味する。したがって、「二価」、「四価」及び「六価」という用語は、(抗体)分子においてそれぞれ2つの結合部位、4つの結合部位及び6つの結合部位が存在することを意味する。本明細書で報告されるように、本明細書で報告される二重特異性抗体は、好ましい一実施態様では「二価」である。
【0182】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体のその抗原に対する結合に関与する抗体重鎖又は抗体軽鎖のドメインを指す。一般的に、抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれVH及びVL)の可変ドメインは類似構造を有し、各ドメインは、4つのフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt, T.J. et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), page 91)を参照のこと)。1つのVHドメイン又はVLドメインは、抗原結合特異性を与えるのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、その抗原に結合する抗体に由来するVHドメイン又はVLドメインを使用して単離して、それぞれ相補的VLドメイン又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングし得る。例えば、Portolano, S. et al., J. Immunol. 150 (1993) 880-887; Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628を参照のこと)
【0183】
「眼血管疾患」という用語は、限定されないが、眼内新生血管形成症候群、例えば糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞、網膜中心静脈閉塞症、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、網膜血管腫増殖、黄斑毛細血管拡張症、虚血性網膜症、虹彩新生血管形成、眼内新生血管形成、角膜新生血管形成、網膜新生血管形成、脈絡膜新生血管形成及び網膜変性を含む(例えば、Garner, A., Vascular diseases, In: Pathobiology of ocular disease, A dynamic approach, Garner, A., and Klintworth, G.K., (eds.), 2nd edition, Marcel Dekker, New York (1994), pp. 1625-1710を参照のこと)。
【0184】
本明細書で使用される「プラスミド」という用語は、それが連結された別の核酸を増殖することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造体としてのプラスミド、及びそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたプラスミドを含む。特定のプラスミドは、それらが作動可能に連結された核酸の発現を指令することができる。このようなプラスミドは、本明細書では「発現プラスミド」と称される。
【0185】
本明細書で使用される「VEGF」という用語は、Leung, D.W., et al., Science 246 (1989) 1306-1309; Houck et al., Mol. Endocrin. 5 (1991) 1806-1814; Keck, P.J., et al., Science 246 (1989) 1309-1312及びConnolly, D.T., et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 20017-20024によって記載されているようにヒト血管内皮成長因子(VEGF/VEGF-A)、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子(ヒトVEGF165の前駆体配列のアミノ酸27~191:配列番号30;アミノ酸1~26は、シグナルペプチドに相当する)、及び関連する121、189及び206の血管内皮細胞成長因子アイソフォームと、それに加えてそれらの成長因子の天然に存在するアレル形態及びプロセシング形態とを指す。VEGFは、腫瘍及び眼内障害に関連する正常及び異常な血管新生及び新生血管のレギュレーションに関与する(Ferrara, N., et al., Endocrin. Rev. 18 (1997) 4-25; Berkman, R.A., et al., J. Clin. Invest. 91 (1993) 153-159; Brown, L.F., et al., Human Pathol. 26 (1995) 86-91; Brown, L.F., et al., Cancer Res. 53 (1993) 4727-4735; Mattern, J., et al., Brit. J. Cancer. 73 (1996) 931-934;及びDvorak, H.F., et al., Am. J. Pathol. 146 (1995) 1029-1039)。VEGFは、いくつかの供給源から単離され、いくつかのアイソフォームを含むホモ二量体糖タンパク質である。VEGFは、内皮細胞に対して高特異的な分裂促進活性を示す。
【0186】
本明細書で使用される「(前記)突然変異IHH-AAAを有する」という用語は、IgG1又はIgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異I253A(Ile253Ala)、H310A(His310Ala)及びH435A(His435Ala)の組み合わせを指し、本明細書で使用される「(前記)突然変異HHY-AAAを有する」という用語は、突然変異H310A(His310Ala)、H433A(His433Ala)及びY436A(Tyr436Ala)の組み合わせを指し、本明細書で使用される「(前記)突然変異YTEを有する」という用語は、突然変異M252Y(Met252Tyr)、S254T(Ser254Thr)及びT256E(Thr256Glu)の組み合わせを指す(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)。
【0187】
本明細書で使用される「(前記)突然変異P329G LALAを有する」という用語は、IgG1サブクラスの定常重鎖領域における突然変異L234A(Leu234Ala)、L235A(Leu235Ala)及びP329G(Pro329Gly)の組み合わせを指す(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)。本明細書で使用される「(前記)突然変異SPLEを有する」という用語は、IgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異S228P(Ser228Pro)及びL235E(Leu235Glu)の組み合わせを指す(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)。本明細書で使用される「(前記)突然変異SPLE及びP329Gを有する」という用語は、IgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異S228P(Ser228Pro)、L235E(Leu235Glu)及びP329G(Pro329Gly)の組み合わせを指す(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)。
【0188】
II.組成物及び方法
本発明は、FcRn結合性を有しない抗体は、眼内において、FcRn結合性を有する抗体と比較して実質的に変化した半減期を有しないが、全身血液循環から迅速に除去され、眼外における全身性副作用が全くないか又は非常に限定的であるため、硝子体内適用に有益であるという知見に少なくとも部分的に基づくものである。本明細書で報告される抗体は、例えば、眼血管疾患の診断又は治療に有用である。
【0189】
本発明は、新生児Fcレセプター(FcRn)に対する免疫グロブリンFc領域の結合に影響を及ぼす(すなわち、FcRnに対するFc領域の結合を減少させるか又は排除さえする)特定の突然変異又は突然変異の組み合わせは、ブドウ球菌プロテインAに対するFc領域の結合を同時に排除しないという知見に少なくとも部分的に基づくものである。例えば、カッパ軽鎖を含む抗体のみに結合する特異的及び種限定的なアフィニティークロマトグラフィー材料(例えば、KappaSelect(商標)など)が不要であるため、これは、用いられ得る精製プロセスに対して重大な影響を及ぼす。したがって、本明細書で報告される突然変異によって、プロテインAに対する結合を維持しながら、FcRnに対する結合を減少させるか又は排除さえすることが同時に可能である。
【0190】
本発明は、Fc領域の各Fc領域ポリペプチドにおいて様々な突然変異を使用することによって、オーダーメイドのFcRn結合性を有するヘテロ二量体分子(例えば、二重特異性抗体など)を提供することができ、それにより、オーダーメイドの全身半減期を有する抗体を提供することができるという知見に少なくとも部分的に基づくものである。
【0191】
本発明は、Fc領域の各Fc領域ポリペプチドにおいて様々な突然変異を使用することによって、一方では減少又は排除さえされたFcRn結合性を有するが、他方ではブドウ球菌プロテインA結合能を維持するヘテロ二量体分子(例えば、二重特異性抗体など)を提供することができるという知見に少なくとも部分的に基づくものである。プロテインAに対するこの結合は、ホモ二量体副産物からヘテロ二量体抗体を分離するのに使用され得る。例えば、ノブイントゥホールアプローチを使用して、一方のFc領域ポリペプチドにおける突然変異I253A、H310A及びH435Aを他方のFc領域ポリペプチドにおける突然変異H310A、H433A及びY436Aと組み合わせることによって、一方ではFcRnに結合しないが(両方の突然変異セットがヒトFcRnに関してサイレントである)、ブドウ球菌プロテインAに対する結合を維持するヘテロ二量体Fc領域を得ることができる(突然変異I253A、H310A及びH435Aを有するFc領域ポリペプチドはFcRnに結合せず、プロテインAに結合しないのに対して、突然変異H310A、H433A及びY436Aを有するFc領域ポリペプチドはFcRnに結合しないが、プロテインAに依然として結合する)。したがって、ホモ二量体ホール-ホール副産物はプロテインAにもはや結合しないので、標準的なプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用してこれを除去し得る。したがって、ノブイントゥホールアプローチを、ホール鎖における突然変異I253A、H310A及びH435A並びにノブ鎖における突然変異H310A、H433A及びY436Aと組み合わせることによって、ホモ二量体ホール-ホール副産物からのヘテロ二量体ノブイントゥホール産物の精製/分離を容易にし得る。
【0192】
突然変異I253A、H310A、H435A、又はL251D、L314D、L432D、又はL251S、L314S、L432Sの組み合わせは、プロテインAに対する結合の喪失をもたらすのに対して、突然変異I253A、H310A、H435A、又はH310A、H433A、Y436A、又はL251D、L314D、L432Dの組み合わせは、ヒト新生児Fcレセプターに対する結合の喪失をもたらす。
【0193】
以下の表は、相互作用に関与するか、又は相互作用を改変するために変化させたFc領域中のアミノ酸残基の例示的な概要を示す。
【0194】
【表1】


【0195】
本明細書で報告される改変/突然変異は、ヒトFcRnなどの1つ以上のFcレセプターに対する結合特異性を変化させる。同時に、ヒトFcRnに対する結合を変化させる突然変異のいくつかは、プロテインAに対する結合を変化させない。
【0196】
特定の実施態様では、突然変異は、これらの突然変異を欠く対応する抗体と比較して、抗体の血清半減期を変化させるか又は実質的に変化させる。
【0197】
さらなる特定の実施態様では、突然変異は、これらの突然変異を欠く対応する抗体と比較して、プロテインAに対する抗体の結合を変化させないか又は実質的に変化させない。
【0198】
A.新生児Fcレセプター(FcRn)
新生児Fcレセプター(FcRn)は、in vivoにおけるIgGクラスの抗体の代謝運命に重要である。FcRnは、リソソーム分解経路から野生型IgGをサルベージするように機能して、クリアランスの減少及び半減期の増加をもたらす。それは、2つのポリペプチド(50kDaのクラスI主要組織適合遺伝子複合体様タンパク質(α-FcRn)及び15kDaのβ2-ミクログロブリン(β2m))からなるヘテロ二量体タンパク質である。FcRnは、高い親和性で、クラスIgGの抗体のFc領域のCH2-CH3部分に結合する。クラスIgGの抗体とFcRnとの間の相互作用はpH依存性であり、1:2の化学量論比で起こる(すなわち、1つのIgG抗体分子は、その2つの重鎖Fc領域ポリペプチドを介して、2つのFcRn分子と相互作用し得る)(例えば、Huber, A.H., et al., J. Mol. Biol. 230 (1993) 1077-1083を参照のこと)。
【0199】
したがって、IgGのin vitroFcRn結合特性/特徴は、血液循環におけるそのin vivo薬物動態特性の指標である。
【0200】
FcRnと、IgGクラスの抗体のFc領域との間の相互作用では、重鎖CH2ドメイン及びCH3ドメインの様々なアミノ酸残基が関与している。FcRnと相互作用するアミノ酸残基は、およそEU位置243位~EU位置261位、およそEU位置275位~EU位置293位、およそEU位置302位~EU位置319位、およそEU位置336位~EU位置348位、およそEU位置367位~EU位置393位、EU位置408位及びおよそEU位置424位~EU位置440に位置する。より具体的には、KabatのEUインデックスナンバリングによる以下のアミノ酸残基が、Fc領域とFcRnとの間の相互作用に関与する:F243、P244、P245P、K246、P247、K248、D249、T250、L251、M252、I253、S254、R255、T256、P257、E258、V259、T260、C261、F275、N276、W277、Y278、V279、D280、V282、E283、V284、H285、N286、A287、K288、T289、K290、P291、R292、E293、V302、V303、S304、V305、L306、T307、V308、L309、H310、Q311、D312、W313、L314、N315、G316、K317、E318、Y319、I336、S337、K338、A339、K340、G341、Q342、P343、R344、E345、P346、Q347、V348、C367、V369、F372、Y373、P374、S375、D376、I377、A378、V379、E380、W381、E382、S383、N384、G385、Q386、P387、E388、N389、Y391、T393、S408、S424、C425、S426、V427、M428、H429、E430、A431、L432、H433、N434、H435、Y436、T437、Q438、K439及びS440。
【0201】
部位特異的突然変異誘発研究では、IgGのFc領域における重要なFcRn結合部位は、ヒスチジン310、ヒスチジン435及びイソロイシン253、並びにそれら程ではないにせよヒスチジン433及びチロシン436であることが証明されている(例えば、Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2819-2825; Raghavan, M., et al., Biochem. 34 (1995) 14649-146579; Medesan, C., et al., J Immunol. 158 (1997) 2211-2217を参照のこと)。
【0202】
FcRnに対するIgG結合を増加させるための方法が、様々なアミノ酸残基(トレオニン250、メチオニン252、セリン254、トレオニン256、トレオニン307、グルタミン酸380、メチオニン428、ヒスチジン433及びアスパラギン434)においてIgGを突然変異させることによって実施されている(Kuo, T.T., et al., J. Clin. Immunol. 30 (2010) 777-789を参照のこと)
【0203】
いくつかの場合では、減少した血液循環半減期を有する抗体が望ましい。例えば、硝子体内適用用の薬物は、患者において長い眼内半減期及び短い循環半減期を有するべきである。このような抗体はまた、例えば、眼内の疾患部位に対する曝露の増加という利点を有する。
【0204】
FcRn結合及びそれにより血液循環半減期に影響を及ぼす様々な突然変異が公知である。マウスFc-マウスFcRn相互作用に重要なFc残基が、部位特異的突然変異誘発によって同定されている(例えば、Dall'Acqua, W.F., et al. J. Immunol 169 (2002) 5171-5180を参照のこと)。残基I253、H310、H433、N434及びH435(KabatのEUナンバリング)が、相互作用に関与している(Medesan, C., et al., Eur. J. Immunol. 26 (1996) 2533-2536; Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993-1002; Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 24 (1994) 542-548)。残基I253、H310及びH435は、ヒトFcとマウスFcRnとの相互作用に重要であることが見出された(Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2819-2825)。タンパク質間相互作用研究によってFcRn結合を改善するために、残基M252Y、S254T、T256EがDall'Acquaらによって記載されている(Dall'Acqua, W.F., et al. J. Biol. Chem. 281 (2006) 23514-23524)。ヒトFc-ヒトFcRn複合体の研究により、残基I253、S254、H435及びY436が相互作用に重要であることが示されている(Firan, M., et al., Int. Immunol. 13 (2001) 993-1002; Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604)。Yeung, Y.A., et al. (J. Immunol. 182 (2009) 7667-7671)では、残基248~259位及び301~317位及び376~382位及び424~437位の様々な突然変異体が報告及び検査されている。例示的な突然変異及びFcRn結合に対するそれらの効果を以下の表に記載する。
【0205】
【表2】



【0206】
1つのFc領域ポリペプチドにおける1つの片側突然変異は、FcRnに対する結合を有意に弱めるのに十分であることが見出された。Fc領域に導入される突然変異が多いほど、FcRnに対する結合が弱くなる。しかし、片側非対称性突然変異は、FcRn結合を完全に阻害するのに十分でない。FcRn結合を完全に阻害するためには、両側突然変異が必要である。
【0207】
FcRn結合に影響を及ぼすためのIgG1 Fc領域の対称的な操作の結果を以下の表に示す(突然変異のアライメント及びFcRnアフィニティークロマトグラフィーカラム保持時間)。
【0208】
【表3】
【0209】
物質はフロースルー(ボイドピーク)にあるため、3分間未満の保持時間は非結合に対応する。
【0210】
単一突然変異H310Aは、任意のFcRn結合性を削除するための最もサイレントな対称性突然変異である。
【0211】
対称性単一突然変異I253A及びH435Aは、0.3~0.4分間の相対的な保持時間シフトをもたらす。これは、一般的に、検出不可能な結合とみなされ得る。
【0212】
単一突然変異Y436Aは、FcRnアフィニティーカラムに対する検出可能な相互作用強度をもたらす。この理論に縛られるものではないが、この突然変異は、突然変異I253A、H310A及びH435A(IHH-AAA突然変異)の組み合わせなどのゼロ相互作用と区別され得るFcRn媒介性半減期を有し得る。
【0213】
対称的に改変された抗HER2抗体を用いて得られた結果を以下の表に示す(参照用に国際公開公報第2006/031370号を参照のこと)。
【0214】
【表4】
【0215】
Fc領域におけるFcRn結合に影響を与える非対称性突然変異の導入効果が、ノブイントゥホール技術を使用してアセンブルされた二重特異性抗VEGF/ANG-2抗体で例証されている(例えば、米国特許第7,695,936号、米国特許出願公開第2003/0078385号;「ホール鎖」突然変異:S354C/T366W、「ノブ鎖」突然変異:Y349C/T366S/L368A/Y407Vを参照のこと)。FcRn結合に対する導入された突然変異の効果は、FcRnアフィニティークロマトグラフィー法を使用して容易に決定され得る(図9及び以下の表を参照のこと)。FcRnアフィニティーカラムからより遅く溶出される(すなわち、より長いFcRnアフィニティーカラム保持時間を有する)抗体は、より長いin vivo半減期を有し、その逆もまた同様である。
【0216】
【表5】
【0217】
Fc領域におけるFcRn結合に影響を与える非対称性突然変異の導入効果が、非対称性突然変異の導入を可能にするためのノブイントゥホール技術を使用してアセンブルされた単一特異性抗IGF-1R抗体でさらに例証されている(例えば、米国特許第7,695,936号、米国特許出願公開第2003/0078385号;「ホール鎖」突然変異:S354C/T366W、「ノブ鎖」突然変異:Y349C/T366S/L368A/Y407Vを参照のこと)。FcRn結合に対する導入された突然変異の効果は、FcRnアフィニティークロマトグラフィー法を使用して容易に決定され得る(以下の表を参照のこと)。FcRnアフィニティーカラムからより遅く溶出される(すなわち、より長いFcRnアフィニティーカラム保持時間を有する)抗体は、より長いin vivo半減期を有し、その逆もまた同様である。
【0218】
【表6】
【0219】
非対称性IHH-AAA突然変異及びLLL-DDD突然変異(LLL-DDD突然変異=L251D、L314D及びL432D)は、対応する親抗体又は野生型抗体よりも弱い結合を示す。
【0220】
対称性HHY-AAA突然変異(=突然変異H310A、H433A及びY436Aの組み合わせ)は、ヒトFcRnにもはや結合しないFc領域をもたらすが、プロテインAに対する結合は維持される(図11図12図13及び図14を参照のこと)。
【0221】
Fc領域におけるFcRn結合に影響を与える非対称性突然変異の導入効果が、非対称性突然変異の導入を可能にするためのノブイントゥホール技術を使用してアセンブルされた単一特異性抗IGF-1R抗体(IGF-1R)、二重特異性抗VEGF/ANG-2抗体(VEGF/ANG2)、及び両重鎖のC末端が融合した全長抗体(融合)でさらに例証されている(例えば、米国特許第7,695,936号、米国特許出願公開第2003/0078385号;「ホール鎖」突然変異:S354C/T366W、「ノブ鎖」突然変異:Y349C/T366S/L368A/Y407Vを参照のこと)。FcRn結合及びプロテインA結合に対する導入された突然変異の効果は、FcRnアフィニティークロマトグラフィー法、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー法及びSPRベースの方法を使用して容易に決定され得る(以下の表を参照のこと)。
【0222】
【表7】

【0223】
本明細書で報告される一態様は、本明細書で報告される変異体ヒトIgGクラスFc領域を含む抗体である。
【0224】
Fc領域ポリペプチドは、上記特徴を抗体又はその融合パートナーに付与する。
【0225】
融合パートナーは、生物学的活性を有する任意の分子であって、そのin vivo半減期が減少又は増加されるものである(すなわち、そのin vivo半減期が明確に定義され、その目的の用途に合わせて作られるものである)任意の分子であり得る。
【0226】
Fc領域融合ポリペプチドは、例えば、本明細書で報告される変異体(ヒト)IgGクラスFc領域と、ターゲットに結合するレセプタータンパク質(例えば、TNFR-Fc領域融合ポリペプチド(TNFR=ヒト腫瘍壊死因子レセプター)、又はIL-1R-Fc領域融合ポリペプチド(IL-1R=ヒトインターロイキン-1レセプター)、又はVEGFR-Fc領域融合ポリペプチド(VEGFR=ヒト血管内皮成長因子レセプター)、又はANG2R-Fc領域融合ポリペプチド(ANG2R=ヒトアンジオポエチン2レセプター)などのリガンドを含む)とを含み得る。
【0227】
Fc領域融合ポリペプチドは、例えば、本明細書で報告される変異体(ヒト)IgGクラスFc領域と、ターゲットに結合する抗体フラグメント(例えば、抗体Fabフラグメント、scFv(例えば、Nat. Biotechnol. 23 (2005) 1126-1136を参照のこと)又はドメイン抗体(dAb)(例えば、国際公開公報第2004/058821及び国際公開公報第2003/002609号を参照のこと)を含む)とを含み得る。
【0228】
Fc領域融合ポリペプチドは、例えば、本明細書で報告される変異体(ヒト)IgGクラスFc領域と、レセプターリガンド(天然に存在するもの又は人工的なもののいずれか)とを含み得る。
【0229】
B.眼血管疾患
眼血管疾患は、新たな血管の増殖及び眼組織(例えば、網膜又は角膜)構造への侵入の変化又はアンレギュレーションを特徴とする任意の病理学的症状である。
【0230】
一実施態様では、眼血管疾患は、滲出型加齢黄斑変性症(滲出型AMD)、乾燥型加齢黄斑変性症(乾燥型AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、血管炎(例えば、網膜中心静脈閉塞症)、乳頭浮腫、網膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎、脈絡膜炎、多巣性脈絡膜炎、眼ヒストプラスマ症、眼瞼炎、ドライアイ(シェーグレン病)及び他の眼疾患からなる群より選択され、前記眼疾患又は障害は、眼新生血管、血管漏出及び/又は網膜浮腫に関連する。
【0231】
本明細書で報告される抗体は、滲出型AMD、乾燥型AMD、CME、DME、NPDR、PDR、眼瞼炎、ドライアイ及びブドウ膜炎、また好ましい一実施態様では、滲出型AMD、乾燥型AMD、眼瞼炎及びドライアイ、また好ましい一実施態様では、CME、DME、NPDR及びPDR、また好ましい一実施態様では、眼瞼炎及びドライアイ、特に、滲出型AMD及び乾燥型AMD、また、特に、滲出型AMDの予防及び処置に有用である。
【0232】
いくつかの実施態様では、眼血管疾患は、滲出型加齢黄斑変性症(滲出型AMD)、黄斑浮腫、網膜静脈閉塞、未熟児網膜症及び糖尿病性網膜症からなる群より選択される。
【0233】
角膜新生血管に関連する他の疾患には、限定されないが、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズの過剰装着、アトピー性角膜炎、上輪部角角膜炎、翼状片乾性角膜炎、シェーグレン病、酒さ性ざ瘡、フィレクテヌローシス、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状疱疹感染、原虫感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、辺縁角質溶解、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性動脈炎、外傷、ウェゲナーサルコイドーシス、強膜炎、スティーブンジョンソン病、類天疱瘡放射状角膜切開及び角膜移植拒絶が含まれる。
【0234】
網膜/脈絡膜新生血管に関連する疾患には、限定されないが、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞性疾患、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、網膜色素変性、網膜浮腫(黄斑浮腫を含む)、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎又は脈絡膜炎を引き起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病、近視、視神経ピット、シュタルガルト病、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラズマ症、外傷及びレーザー後合併症が含まれる。
【0235】
他の疾患には、限定されないが、ルベオーシスに関連する疾患(角の新生血管)、及び線維性血管性組織又は線維組織の異常増殖によって引き起こされる疾患(全ての形態の増殖性硝子体網膜症を含む)が含まれる。
【0236】
未熟児網膜症(ROP)は、未熟児が罹患する眼疾患である。それは、網膜血管の無秩序な成長によって引き起こされ、瘢痕及び網膜剥離をもたらし得ると考えられる。ROPは軽度であり得、自然に解消し得るが、深刻な場合には失明につながり得る。このようなものとして、全ての早産乳児はROPのリスクがあり、非常に低い出生体重はさらなるリスク因子である。酸素毒性及び相対的低酸素状態は両方とも、ROPの発生に寄与し得る。
【0237】
黄斑変性症は、高齢者において主に見られる医学的症状であり、眼瞼内層の中心部(網膜の黄斑領域として公知である)が菲薄化、萎縮及び一部の場合には出血を被る。これは、中心視力の低下(これは、細部の判別不能、読み取り不能又は顔の認識不能を引き起こす)をもたらし得る。American Academy of Ophthalmologyによれば、今日の米国では、それは、50歳以上の者の中心視力の低下(失明)の主要な原因である。若者が罹患するいくつかの黄斑ジストロフィーを黄斑変性症と称することもあるが、この用語は、一般的に、加齢性黄斑変性症(AMD又はARMD)を指す。
【0238】
加齢黄斑変性は、網膜色素上皮と基礎脈絡膜との間のドルーゼンと称される黄斑(詳細な中心視力を提供する網膜の中心領域であり、中心窩と称される)における特徴的な黄色沈着で始まる。これらの初期変化(加齢性黄斑変性症とも称される)を有する大半の人々は、良好な視力を有する。ドルーゼンを有する人々は、進行性AMDの発生へと進み得る。このリスクは、ドルーゼンが大きくて多数の場合に極めて高くなり、黄斑下の色素性細胞層における障害に関連する。大きくて柔軟なドルーゼンはコレステロール沈着の増加に関連し、コレステロール降下薬又はRheo Procedureに応答し得る。
【0239】
深刻な視力低下の原因となる進行性AMDは、2つの形態を有する:乾燥型及び滲出型。中央域の萎縮(乾燥型の進行性AMD)は、網膜下の網膜色素上皮層の萎縮から生じ、眼の中央部における光レセプター(桿体及び錐体)の喪失を通じて視力低下を引き起こす。この症状に利用可能な処置はないが、National Eye Instituteなどにより、高用量の抗酸化剤、ルテイン及びゼアキサンチンを含むビタミンサプリメントが、乾燥黄斑変性の進行を遅らせ、一部の患者では視力を改善することが実証されている。
【0240】
網膜色素変性症(RP)は、一群の遺伝的眼疾患である。RPの症候の進行では、夜盲が、一般的に、トンネル視に数年又は数十年先立って起こる。RPを有する多くの人々は、40代又は50代までは法定盲人になることなく、一生を通じていくらかの視力を保持する。他の者は、一部の場合には子供のうちからRPから全盲に進行する。RPの進行は、各事例において異なる。RPは、遺伝性網膜ジストロフィー(これは、網膜の光レセプター(桿体及び錐体)又は網膜色素上皮(RPE)の異常が、進行性の視力低下につながる一群の遺伝性障害である)の一種である。罹患者は、最初に、暗順応障害又は夜盲症(夜盲)を経験し、続いて、周辺視野の低下(トンネル視として公知である)及び時として疾患の後期に中心視力の低下を経験する。
【0241】
体液及びタンパク質の沈着が眼の黄斑(黄色の網膜中心窩)の上又は下に集積すると、黄斑浮腫が生じてそれを肥厚化及び腫脹させる。黄斑は、眼球後部の網膜の中心付近にあるので、この腫脹は中心視力を歪め得る。この領域は、明瞭で明確な中心視力を提供する密集した錐体を保持して、視線の一直線上にある形、色及び細部を把握することを可能にする。嚢胞様黄斑浮腫は、嚢胞形成を含む黄斑浮腫の一種である。
【0242】
C.例示的な抗体
一態様では、本発明は、無効化されたFcRn結合性を有する単離された抗体を提供する(すなわち、これらの抗体は、Fc領域において(すなわち、両方のFc領域ポリペプチドにおいて)突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を有する抗体と同程度か又はそれ未満の親和性で、ヒトFcRnに結合する)。
【0243】
本明細書で報告される1つの例示的な抗体は、無効化されたFcRn結合性を有する抗体であって、第1のFc領域ポリペプチドと、第2のFc領域ポリペプチドとを含み、
i)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異I253A、H310A及びH435Aを含むか、又は
ii)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
iii)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iv)第1のFc領域ポリペプチドが突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドが
a)突然変異H310A、H433A及びY436A、若しくは
b)突然変異L251D、L314D及びL432D
を含むか、
又は
vi)第1のFc領域ポリペプチドが突然変異H310A、H433A及びY436Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドが
a)突然変異L251D、L314D及びL432D
を含む抗体である。
【0244】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヒトFcRnに特異的に結合しない。全ての態様の一実施態様では、抗体は、ブドウ球菌プロテインAに特異的に結合しない。
【0245】
全ての態様の一実施態様では、抗体は、ヒトFcRnに特異的に結合しない。全ての態様の一実施態様では、抗体は、ブドウ球菌プロテインAに特異的に結合する。
【0246】
全ての態様の一実施態様では、第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407V(「ホール」)をさらに含み、第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C及びT366W(「ノブ」)をさらに含む。
【0247】
全ての態様の一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、ヒトIgG1サブクラスのものである。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異L234A及びL235Aをさらに含む。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異P329Gをさらに含む。
【0248】
全ての態様の一実施態様では、Fc領域ポリペプチドは、ヒトIgG4サブクラスのものである。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異S228P及びL235Eをさらに含む。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異P329Gをさらに含む。
【0249】
一実施態様では、抗体は、二重特異性抗体である。一実施態様では、二重特異性抗体は、ヒトANG-2に特異的に結合する1つの結合特異性と、ヒトVEGFに特異的に結合する1つの結合特異性とを有する。
【0250】
本明細書で報告され、また本発明の一態様の1つの例示的な抗体は、無効化されたFcRn結合性を有する二重特異性二価抗体であって、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含み、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号14のCDR3H領域、配列番号15のCDR2H領域及び配列番号16のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号17のCDR3L領域、配列番号18のCDR2L領域及び配列番号19のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号22のCDR3H領域、配列番号23のCDR2H領域及び配列番号24のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号25のCDR3L領域、配列番号26のCDR2L領域及び配列番号27のCDR1L領域を含み、
iii)両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むIgGクラスFc領域であって、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが該IgGクラスFc領域に含まれることになるように、第1のFc領域ポリペプチドにおいて、i)群I253A、H310A及びH435A、又はii)群H310A、H433A及びY436A、又はiii)群L251D、L314D及びL432D(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)から選択される突然変異の1つ又は2つを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、I253A、H310A、L314D、L432D、H433A、H435A及びY436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含む群から選択される突然変異の1つ又は2つを含むIgGクラスFc領域を含む二重特異性二価抗体である。
【0251】
全ての態様の一実施態様では、IgGクラスFc領域は、変異体(ヒト)IgGクラスFc領域である。一実施態様では、変異体(ヒト)IgGクラスFc領域は、IgGクラスヘテロ二量体Fc領域である。
【0252】
全ての態様の一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドをペアリングして(機能的な)IgGクラスFc領域を形成すると、ヘテロ二量体が形成される。
【0253】
一実施態様では、ヒトFc領域ポリペプチドは、IgG1サブクラス又はIgG4サブクラスのヒトFc領域ポリペプチドである。
【0254】
一実施態様では、ヒトFc領域ポリペプチドは、突然変異L234A、L235A及びP329Gを有するIgG1サブクラスのヒトFc領域ポリペプチドである。
【0255】
一実施態様では、ヒトFc領域ポリペプチドは、突然変異S228P及びL235Eを有するIgG4サブクラスのヒトFc領域ポリペプチドである。
【0256】
一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wをさらに含み、第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vをさらに含む。
【0257】
一実施態様では、二重特異性抗体は、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号20のアミノ酸配列、及び軽鎖可変ドメインVLとして配列番号21のアミノ酸配列を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号28のアミノ酸配列、及び軽鎖可変ドメインVLとして配列番号29のアミノ酸配列を含む
ことを特徴とする。
【0258】
一実施態様では、二重特異性抗体は、Fc領域がiii)ヒトIgG1サブクラスのものであることを特徴とする。一実施態様では、二重特異性抗体は、ヒトIgG1サブクラスのFc領域が、突然変異L234A、L235A及びP329G(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)をさらに含むことを特徴とする。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wをさらに含み、第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vをさらに含む。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wをさらに含み、第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vをさらに含む。
【0259】
一実施態様では、二重特異性抗体は、Fc領域がiii)ヒトIgG4サブクラスのものであることを特徴とする。一実施態様では、二重特異性抗体は、ヒトIgG4サブクラスのFc領域が、突然変異S228P及びL235E(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)をさらに含むことを特徴とする。一実施態様では、二重特異性抗体は、ヒトIgG4サブクラスのFc領域が、突然変異S228P、L235E及びP329G(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)をさらに含むことを特徴とする。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C及びT366Wをさらに含み、第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C、T366S、L368A及びY407Vをさらに含む。一実施態様では、第1のFc領域ポリペプチドは、突然変異Y349C及びT366Wをさらに含み、第2のFc領域ポリペプチドは、突然変異S354C、T366S、L368A及びY407Vをさらに含む。
【0260】
一実施態様では、二重特異性抗体は、両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(すなわち、ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むFc領域であって、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが該Fc領域に含まれることになるように、第1のFc領域ポリペプチドにおいて、i)群I253A、H310A及びH435A、又はii)群H310A、H433A及びY436A、又はiii)群L251D、L314D及びL432D(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)から選択される突然変異の1つ又は2つを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、I253A、H310A、L314D、L432D、H433A、H435A及びY436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含む群から選択される突然変異の1つ又は2つを含むFc領域を含む。
【0261】
一実施態様では、二重特異性抗体は、両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(すなわち、ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むFc領域であって、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが該Fc領域に含まれることになるように、Fc領域において、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含み、それにより、全ての突然変異が第1の若しくは第2のFc領域ポリペプチド内にあるか、又は1つ若しくは2つの突然変異が第1のFc領域ポリペプチド内にあり、1つ若しくは2つの突然変異が第2のFc領域ポリペプチド内にあるFc領域を含む。
【0262】
本明細書で報告される他のさらなる態様は、二重特異性抗体を含む医薬製剤、眼血管疾患を処置するのに使用するための医薬製剤、眼血管疾患を処置するための医薬を製造するための二重特異性抗体の使用、二重特異性抗体をこのような処置を必要とする患者に投与することによって、眼血管疾患を患っている患者を処置する方法である。一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体を含む医薬製剤は、硝子体内適用を介して投与される。
【0263】
本発明に係るさらなる態様は、本明細書で報告される二重特異性抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子である。
【0264】
本発明はさらに、本明細書で報告される核酸を含有する発現プラスミドであって、原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞において該核酸を発現することができる発現プラスミド、及び本明細書で報告される二重特異性抗体をリコンビナント生産するためのこのようなプラスミドを含有する宿主細胞を提供する。
【0265】
本発明は、本明細書で報告されるプラスミドを含む原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞をさらに含む。
【0266】
本発明は、本明細書で報告される二重特異性抗体を生産するための方法であって、原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞において本明細書で報告される核酸を発現させること、及び該細胞又は該細胞培養上清から該二重特異性抗体を回収することを特徴とする方法をさらに含む。一実施態様は、本明細書で報告される二重特異性抗体を調製するための方法であって、
a)該抗体をコードする核酸分子を含むプラスミドで宿主細胞をトランスフォーメーションする工程、
b)該抗体の合成を可能にする条件下で該宿主細胞を培養する工程、及び
c)該培養物から該抗体を回収する工程
を含む方法である。
【0267】
本発明は、二重特異性抗体を生産するためのこのような方法によって得られた抗体をさらに含む。
【0268】
本明細書で報告される抗体は、Fc領域におけるそれらの特定の改変であって、眼血管疾患を患っている患者に利益をもたらす特定の改変により、非常に有益な特性を有する。それらは、(定常重鎖領域を有しないより小さな抗体フラグメントと比較して)硝子体内環境における高い安定性及び眼からの遅い拡散を示す(これらの場所において、実際の疾患が存在し、処置される)(したがって、処置スケジュールは、例えば、Fab及び(Fab)2フラグメントのような非全長IgG様抗体と比較して潜在的に改善され得る)。一方、本明細書で報告される抗体は、血清から非常に迅速に除去される(これは、全身曝露から生じる潜在的な副作用を減少させるために非常に望ましい)。驚くべきことに、それらはまた、(定常領域において突然変異I253A、H310A及びH435Aを有しないバージョンと比較して)より低い粘度を示すので(図2を参照のこと)、眼疾患の処置において細い針による硝子体内適用に特に有用である(このような適用の場合、典型的には、細い針を使用するので、高い粘度が適切な適用をかなり困難にする)。より低い粘度はまた、より高濃度の製剤を可能にする。また、驚くべきことに、(眼内の凝集はこのような処置中に合併症につながり得るので)本明細書で報告される抗体は、保存中に、(Fc領域において突然変異I253A、H310A及びH435Aを有しないバージョンと比較して)より低い凝集傾向(これは、眼内の硝子体内適用に重要である)を示す(図4を参照のこと)。本明細書で報告される二重特異性抗体は、血管疾患の阻害において優れた有効性を示す。特定の実施態様では、本明細書で報告される二重特異性抗体は、定常領域における特定の改変(例えば、P329G LALA)により、血栓及び/又は不要な細胞死(例えば、ADCCによる)のような副作用のリスクを減少させる有益な特性(例えば、Fcガンマレセプターに対する非結合/Fcガンマレセプターの非結合)を示す。
【0269】
一実施態様では、本明細書で報告されるように、本明細書で報告される二重特異性抗体は二価である。
【0270】
本発明に係る一態様では、本明細書で報告されるこのような二重特異性二価抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第1の全長抗体の重鎖及び軽鎖、並びに
b)ANG-2に特異的に結合する第2の全長抗体の改変重鎖及び改変軽鎖であって、定常ドメインCL及びCH1が互いに交換されている改変重鎖及び改変軽鎖
を含むことを特徴とする。
【0271】
ヒト血管内皮成長因子(VEGF)及びヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に特異的に結合する二重特異性抗体に関するこの二重特異性二価抗体フォーマットは、国際公開公報第2009/080253号に記載されている(ノブイントゥホール改変CH3ドメインを含む)。この二重特異性二価抗体フォーマットをベースとする抗体は、CrossMabと称される。
【0272】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号102のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号36のアミノ酸配列、並びに
b)第2の全長抗体の改変重鎖として配列番号103のアミノ酸配列、及び第2の全長抗体の改変軽鎖として配列番号37のアミノ酸配列
を含むことを特徴とする。
【0273】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号104のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号40のアミノ酸配列、並びに
b)第2の全長抗体の改変重鎖として配列番号105のアミノ酸配列、及び第2の全長抗体の改変軽鎖として配列番号41のアミノ酸配列
を含むことを特徴とする。
【0274】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号106のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号44のアミノ酸配列、並びに
b)第2の全長抗体の改変重鎖として配列番号107のアミノ酸配列、及び第2の全長抗体の改変軽鎖として配列番号45のアミノ酸配列
を含むことを特徴とする。
【0275】
したがって、本明細書で報告される一態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号102、配列番号103、配列番号36及び配列番号37のアミノ酸配列を含むことを特徴とする二重特異性二価抗体である。
【0276】
したがって、本明細書で報告される一態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号104、配列番号105、配列番号40及び配列番号41のアミノ酸配列を含むことを特徴とする二重特異性二価抗体である。
【0277】
したがって、本明細書で報告される一態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号106、配列番号107、配列番号44及び配列番号45のアミノ酸配列を含むことを特徴とする二重特異性二価抗体である。
【0278】
本明細書で報告される別の態様では、本明細書で報告される二重特異性抗体は、
a)VEGFに特異的に結合する第1の全長抗体の重鎖及び軽鎖、並びに
b)ANG-2に特異的に結合する第2の全長抗体の重鎖及び軽鎖であって、該重鎖のN末端が、ペプチドリンカーを介して該軽鎖のC末端に連結されている重鎖及び軽鎖を含むことを特徴とする。
【0279】
ヒト血管内皮成長因子(VEGF)及びヒトアンジオポエチン-2(ANG-2)に特異的に結合するこの二重特異性抗体に関するこの二重特異性二価抗体フォーマットは、国際公開公報第2011/117330号に記載されている(ノブイントゥホール改変CH3ドメインを含む)。この二重特異性二価抗体フォーマットをベースとする抗体は、ワンアーム単鎖Fab(OAscFab)と命名されている。
【0280】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号108のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号48のアミノ酸配列、並びに
b)ペプチドリンカーを介して第2の全長抗体の軽鎖に連結された第2の全長抗体の重鎖として配列番号109のアミノ酸配列
を含むことを特徴とする。
【0281】
一実施態様では、このような二重特異性二価抗体は、
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号110のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号51のアミノ酸配列、並びに
b)ペプチドリンカーを介して第2の全長抗体の軽鎖に連結された第2の全長抗体の重鎖として配列番号111のアミノ酸配列
を含むことを特徴とする。
【0282】
一実施態様では、第2の全長抗体の重鎖及び軽鎖の抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(VL)は、以下の位置:重鎖可変ドメインの44位と軽鎖可変ドメインの100位(ナンバリングは、Kabat(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))のEUインデックスに従う)との間のジスルフィド結合の導入によってさらに安定化される。安定化のためにジスルフィド結合を導入する技術は、例えば、国際公開公報第94/029350号、Rajagopal, V., et al, Prot. Eng. 10 (1997) 1453-1459, Kobayashi et al., Nuclear Medicine & Biology 25 (1998) 387-393及びSchmidt, M., et al., Oncogene 18 (1999) 1711-1721に記載されている。
【0283】
したがって、本明細書で報告される一態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号108、配列番号109及び配列番号48のアミノ酸配列を含むことを特徴とする二重特異性二価抗体である。
【0284】
したがって、本明細書で報告される一態様は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号110、配列番号111及び配列番号51のアミノ酸配列を含むことを特徴とする二重特異性二価抗体である。
【0285】
一実施態様では、本明細書で報告される二重特異性二価抗体のCH3ドメインは、例えば、国際公開公報第96/027011号、Ridgway J.B., et al., Protein Eng. 9 (1996) 617-621, 及び Merchant, A.M., et al., Nat. Biotechnol. 16 (1998) 677-681において、数例を用いて詳細に記載されている「ノブイントゥホール」技術によって変化される。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用表面が、これら2つのCH3ドメインを含有する両方の重鎖のヘテロ二量体化を増加させるように変化される。(2つの重鎖の)2つの各CH3ドメインは「ノブ」であり得る一方、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入は、ヘテロ二量体をさらに安定化し(Merchant, A.M, et al., Nature Biotech. 16 (1998) 677-681, Atwell, S., et al. J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収率を増加させる。
【0286】
本明細書で報告される全ての態様の好ましい一実施態様では、二重特異性抗体は、
一方の重鎖のCH3ドメイン及び他方の重鎖のCH3ドメインがそれぞれ、抗体CH3ドメイン間の元のインターフェイスを含むインターフェイスで接触することを特徴とし、
該インターフェイスは、該二重特異性抗体の形成を促進するように変化されており、該変化は、
a)該二重特異性抗体内の他方の重鎖のCH3ドメインの元のインターフェイスと接触する一方の重鎖のCH3ドメインの元のインターフェイス内において、
アミノ酸残基が、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、それにより、他方の重鎖のCH3ドメインのインターフェイス内のキャビティで位置決定可能な突出部が、一方の重鎖のCH3ドメインのインターフェイス内において発生するように、
一方の重鎖のCH3ドメインが変化され、
及び
b)該二重特異性抗体内の第1のCH3ドメインの元のインターフェイスと接触する第2のCH3ドメインの元のインターフェイス内において、
アミノ酸残基が、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、それにより、第1のCH3ドメインのインターフェイス内の突出部が位置決定可能であるキャビティが、第2のCH3ドメインのインターフェイス内において発生するように、
他方の重鎖のCH3ドメインが変化されることを特徴とする。
【0287】
したがって、好ましい一実施態様では、本発明に係る抗体は、
a)の全長抗体の重鎖のCH3ドメイン及びb)の全長抗体の重鎖のCH3ドメインがそれぞれ、抗体CH3ドメイン間の元のインターフェイスにおいて変化を含むインターフェイスで接触することを特徴とし、
i)一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、
アミノ酸残基が、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、それにより、他方の重鎖のCH3ドメインのインターフェイス内のキャビティで位置決定可能な突出部が、一方の重鎖のCH3ドメインのインターフェイス内において発生し、
及び
ii)他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、
アミノ酸残基が、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、それにより、第1のCH3ドメインのインターフェイス内の突出部が位置決定可能であるキャビティが、第2のCH3ドメインのインターフェイス内において発生する。
【0288】
好ましい一実施態様では、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)からなる群より選択される。
【0289】
好ましい一実施態様では、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)からなる群より選択される。
【0290】
一実施態様では、両方のCH3ドメイン間においてジスルフィド架橋が形成し得るように、CH3ドメインは両方とも、各CH3ドメインの対応する位置におけるシステイン残基(C)の導入によってさらに変化される。
【0291】
一実施態様では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいて、T366W突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいて、T366S、L368A及びY407V突然変異を含む。例えば、Y349C又はS354C突然変異を「ノブ鎖」のCH3ドメインに導入し、Y349C又はE356C又はS354C突然変異を「ホール鎖」のCH3ドメインに導入することによって、CH3ドメイン間のさらなる鎖間ジスルフィド架橋も使用され得る(Merchant, A.M, et al., Nature Biotech 16 (1998) 677-681)。
【0292】
一実施態様では、本明細書で報告される二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、突然変異Y349C又はS354C及び突然変異T366Wを含み、2つのCH3ドメインの他方において、突然変異S354C又はE356C又はY349C並びに突然変異T366S、L368A及びY407Vを含む。好ましい一実施態様では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、Y349C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、S354C、T366S、L368A、Y407V突然変異を含む(一方のCH3ドメインにおけるさらなるY349C突然変異、及び他方のCH3ドメインにおけるさらなるS354C突然変異が鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(ナンバリングは、Kabat(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))のEUインデックスに従う)。好ましい一実施態様では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、S354C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、Y349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を含む(一方のCH3ドメインにおけるさらなるY349C突然変異、及び他方のCH3ドメインにおけるさらなるS354C突然変異が鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(ナンバリングは、Kabat(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))のEUインデックスに従う)。
【0293】
しかし、欧州特許出願公開第1870459A1号に記載されている他のノブイントゥホール技術も代替的又は付加的に使用され得る。したがって、二重特異性抗体の別の例は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおけるR409D及びK370E突然変異、並びに「ホール鎖」のCH3ドメインにおけるD399K及びE357K突然変異である(ナンバリングは、Kabat(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))のEUインデックスに従う)。
【0294】
別の実施態様では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいて、T366W突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいて、T366S、L368A及びY407V突然変異を含み、それに加えて、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいてR409D、K370E突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいてD399K、E357K突然変異を含む。
【0295】
一実施態様では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、Y349C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、S354C、T366S、L368A及びY407V突然変異を含むか、又は二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、Y349C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、S354C、T366S、L368A及びY407V突然変異を含み、それに加えて、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいてR409D、K370E突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメイン内においてD399K、E357K突然変異を含む。
【0296】
一実施態様では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、S354C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、Y349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を含むか、又は二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、S354C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、Y349C、T366S、L368A及びY407V突然変異を含み、それに加えて、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいてR409D、K370E突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいてD399K、E357K突然変異を含む。
【0297】
本明細書で報告される一実施態様では、本明細書で報告される二重特異性抗体は、以下の特性の1つ以上を有することを特徴とする:
- (マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックなマウスにおいて、硝子体内適用の96時間後に)(実施例6に記載されているアッセイで決定すると)iii)に記載されている突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して低い血清濃度を示し、及び/又は
- (マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックなマウスにおいて、右眼の硝子体内適用の96時間後に)(実施例6に記載されているアッセイで決定すると)iii)に記載されている突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して、類似(係数0.8~1.2)の全右眼溶解物中濃度を示し、及び
- 無効化されたヒトFcRn結合性を有し、及び/又は
- (SPRによって決定すると)ブドウ球菌プロテインA結合性を有さず、及び/又は
- (SPRによって決定すると)維持されたブドウ球菌プロテインA結合性を有する。
【0298】
一実施態様では、二重特異性二価抗体は、
ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含むことを特徴とし、
i)第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号20のアミノ酸配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号21のアミノ酸配列を含み、
ii)第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号28のアミノ酸配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として配列番号29のアミノ酸配列を含み、
iii)二重特異性抗体が、
α)両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むIgGクラスFc領域であって、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが変異体(ヒト)IgGクラスFc領域に含まれることになるように、第1のFc領域ポリペプチドにおいて、i)群I253A、H310A及びH435A、又はii)群H310A、H433A及びY436A、又はiii)群L251D、L314D及びL432D(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)から選択される突然変異の1つ又は2つを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、I253A、H310A、L314D、L432D、H433A、H435A及びY436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含む群から選択される突然変異の1つ又は2つを含むIgGクラスFc領域、又は
β)両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(すなわち、ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むIgGクラスFc領域であって、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが該Fc領域に含まれることになるように、該Fc領域において、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を両方が含み、それにより、全ての突然変異が第1の若しくは第2のFc領域ポリペプチド内にあるか、又は1つ若しくは2つの突然変異が第1のFc領域ポリペプチド内にあり、1つ若しくは2つの突然変異が第2のFc領域ポリペプチド内にあるIgGクラスFc領域、又は
γ)両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(すなわち、ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むIgGクラスFc領域であって、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含むか、又は第1のFc領域ポリペプチドにおいて突然変異の組み合わせI253A/H310A/H435Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて突然変異の組み合わせH310A/H433A/Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含むIgGクラスFc領域
を含み、
以下の特性の1つ以上を有することを特徴とする:
- (マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックなマウスにおいて、硝子体内適用の96時間後に)(実施例6に記載されているアッセイで決定すると)iii)に記載されている突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して低い血清濃度を示し、及び/又は
- (マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックなマウスにおいて、右眼の硝子体内適用の96時間後に)(実施例6に記載されているアッセイで決定すると)iii)に記載されている突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して、類似(係数0.8~1.2)の全右眼溶解物中濃度を示し、及び/又は
- 無効化されたヒトFcRn結合性を有し、及び/又は
- (SPRによって決定すると)ブドウ球菌プロテインA結合性を有さず、及び/又は
- (SPRによって決定すると)維持されたブドウ球菌プロテインA結合性を有する。
【0299】
一実施態様では、二重特異性抗体は、ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含むことを特徴とし、
i)第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として、1個、2個又は3個のアミノ酸残基置換を有する配列番号20のアミノ酸配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として、1個、2個又は3個のアミノ酸残基置換を有する配列番号21のアミノ酸配列を含み、
ii)第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメイン(VH)として、1個、2個又は3個のアミノ酸残基置換を有する配列番号28のアミノ酸配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)として、1個、2個又は3個のアミノ酸残基置換を有する配列番号のアミノ酸配列を含み、
iii)二重特異性抗体が、
α)両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むIgGクラスFc領域であって、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが変異体(ヒト)IgGクラスFc領域に含まれることになるように、第1のFc領域ポリペプチドにおいて、i)群I253A、H310A及びH435A、又はii)群H310A、H433A及びY436A、又はiii)群L251D、L314D及びL432D(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)から選択される突然変異の1つ又は2つを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、I253A、H310A、L314D、L432D、H433A、H435A及びY436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含む群から選択される突然変異の1つ又は2つを含むIgGクラスFc領域、又は
β)両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(すなわち、ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むIgGクラスFc領域であって、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが該Fc領域に含まれることになるように、該Fc領域において、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を両方が含み、それにより、全ての突然変異が第1の若しくは第2のFc領域ポリペプチド内にあるか、又は1つ若しくは2つの突然変異が第1のFc領域ポリペプチド内にあり、1つ若しくは2つの突然変異が第2のFc領域ポリペプチド内にあるIgGクラスFc領域、又は
γ)両方ともヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(すなわち、ヒト起源に由来する)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドを含むIgGクラスFc領域であって、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含むか、又は第1のFc領域ポリペプチドにおいて突然変異の組み合わせI253A/H310A/H435Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて突然変異の組み合わせH310A/H433A/Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含むIgGクラスFc領域
を含み、
以下の特性の1つ以上を有することを特徴とする:
- (マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックなマウスにおいて、硝子体内適用の96時間後に)(実施例6に記載されているアッセイで決定すると)iii)に記載されている突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して低い血清濃度を示し、及び/又は
- (マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックなマウスにおいて、右眼の硝子体内適用の96時間後に)(実施例6に記載されているアッセイで決定すると)iii)に記載されている突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して、類似(係数0.8~1.2)の全右眼溶解物中濃度を示し、及び/又は
- 無効化されたヒトFcRn結合性を有し、及び/又は
- (SPRによって決定すると)ブドウ球菌プロテインA結合性を有さず、及び/又は
- (SPRによって決定すると)維持されたブドウ球菌プロテインA結合性を有する。
【0300】
本明細書で報告される二重特異性抗体の抗原結合部位は、様々な程度で抗原結合部位の親和性に寄与する6つの相補性決定領域(CDR)を含有する。3つの重鎖可変ドメインのCDR(CDRH1、CDRH2及びCDRH3)及び3つの軽鎖可変ドメインのCDR(CDRL1、CDRL2及びCDRL3)がある。CDR及びフレームワーク領域(FR)の程度は、配列間の変動に応じてこれらの領域が定義されたコンパイルアミノ酸配列データベースとの比較によって決定される。
【0301】
本明細書で報告される抗体は、リコンビナント手段によって生産される。したがって、本発明の一態様は、本明細書で報告される抗体をコードする核酸であり、さらなる態様は、本明細書で報告される抗体をコードする核酸を含む細胞である。リコンビナント生産のための方法が当技術水準で広く公知であり、原核細胞及び真核細胞におけるタンパク質発現と、それに続く抗体の単離及び通常は薬学的に許容され得る純度への精製を含む。宿主細胞における上記抗体の発現では、標準的な方法によって、各(改変)軽鎖及び重鎖をコードする核酸を発現プラスミドに挿入する。CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER.C6細胞、酵母又はE. coli細胞のような適切な原核宿主細胞又は真核宿主細胞において発現を実施し、前記細胞(培養上清又は溶解後の細胞)から抗体を回収する。抗体の一般的なリコンビナント生産方法が当技術水準で周知であり、例えば、Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202、Geisse, S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282、Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-160及びWerner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880の総説文献に記載されている。
【0302】
したがって、本明細書で報告される一態様は、本明細書で報告される二重特異性抗体を調製するための方法であって、
a)該抗体をコードする核酸分子を含むプラスミドで宿主細胞をトランスフォーメーションする工程、
b)該抗体の合成を可能にする条件下で該宿主細胞を培養する工程、及び
c)該培養物から該抗体を回収する工程
を含む方法である。
【0303】
一実施態様では、c)の回収工程は、軽鎖定常ドメイン特異的捕捉試薬(これは、例えば、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖が二重特異性抗体に使用されるかに応じて、カッパ定常軽鎖又はラムダ定常軽鎖に対して特異的である)の使用を含む。一実施態様では、軽鎖特異的捕捉試薬は、結合溶出モードに使用される。このような軽鎖定常ドメイン特異的捕捉試薬の例は、例えば、KappaSelect(商標)及びLambdaFabSelect(商標)(GE Healthcare/BACから入手可能)であり、これらは、高い流速及び低い背圧を大規模で可能にする高度に強固なアガロースビーズマトリックスをベースとするものである。これらの材料は、それぞれカッパ軽鎖又はラムダ軽鎖の定常領域に結合するリガンドを含有する(すなわち、該軽鎖の定常領域を欠くフラグメントは結合しない;図1)。したがって、両方とも、軽鎖の定常領域を含有する他のターゲット分子(例えば、IgG、IgA及びIgM)に結合することができる。長い親水性スペーサーアームを介してリガンドをマトリックスに付着させて、それらをターゲット分子に対する結合に容易に利用可能にする。それらは、ヒトIgカッパ又はラムダのいずれかについてスクリーニングされる単鎖抗体フラグメントをベースとする。
【0304】
一実施態様では、c)の回収工程は、Fc領域特異的捕捉試薬の使用を含む。一実施態様では、Fc領域特異的捕捉試薬は、結合溶出モードで使用される。このようなFc領域特異的捕捉試薬の例は、例えば、ブドウ球菌プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィー材料である。
【0305】
二重特異性抗体は、従来の免疫グロブリン精製手段、例えばアフィニティークロマトグラフィー(プロテインAセファロース、KappaSelect(商標)、LambdaFabSelect(商標))、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動又は透析などによって培養培地から適切に分離される。
【0306】
モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して配列決定される。B細胞又はハイブリドーマ細胞は、このようなDNA及びRNAの供給源としての役割を果たし得る。単離したら、DNAを発現プラスミドに挿入し、次いで、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(例えば、HEK293細胞、CHO細胞又はミエローマ細胞)にこれをトランスフェクションして、宿主細胞においてリコンビナントモノクローナル抗体を合成し得る。
【0307】
本明細書で報告される(二重特異性)抗体のいくつかは、ディファレンシャルに改変されたFc領域を含むことによって、単離/精製の容易性を提供し、ここで、前記改変の少なくとも1つは、i)プロテインAに対する(二重特異性)抗体のディファレンシャルな親和性、及びii)ヒトFcRnに対する(二重特異性)抗体のディファレンシャルな親和性をもたらし、(二重特異性)抗体は、プロテインAに対するその親和性に基づいて、破砕細胞から、培地から、又は抗体の混合物から単離可能である。
【0308】
細胞成分又は他の混入物(例えば、他の細胞核酸又はタンパク質)を、標準的な技術(アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動を含む)、及び当技術分野で周知の他のものによって排除するために、抗体の精製を実施する(例えば、Ausubel, F., et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照のこと)。微生物タンパク質によるアフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA又はプロテインGアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)及び混合モード交換)、チオフィリック吸着(例えば、ベータ-メルカプトエタノール及び他のSHリガンドによる)、疎水的相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニル-セファロース、アザ-アレノフィリック樹脂又はm-アミノフェニルボロン酸による)、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Ni(II)及びCu(II)親和性材料による)、サイズ排除クロマトグラフィー及び電気泳動方法(例えば、ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動)などの様々な方法が十分に確立されており、タンパク質精製に広く使用されている(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)。
【0309】
本明細書で報告されるヒトVEGF及びヒトANG-2に対する二価二重特異性抗体は、有益な有効性/安全性プロファイルを有し得、抗VEGF及び抗ANG-2治療を必要とする患者に利益を提供し得る。
【0310】
本明細書で報告される一態様は、本明細書で報告される抗体を含む医薬製剤である。本明細書で報告される別の態様は、医薬製剤を製造するための、本明細書で報告される抗体の使用である。本明細書で報告されるさらなる態様は、本明細書で報告される抗体を含む医薬製剤を製造するための方法である。別の態様では、医薬担体と一緒に製剤化された本明細書で報告される抗体を含有する製剤(例えば、医薬製剤)が提供される。
【0311】
本明細書で報告される製剤は、当技術分野で公知の様々な方法によって投与され得る。当業者によって認識されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化し得る。本明細書で報告される化合物を特定の投与経路によって投与するためには、その不活性化を防止するための材料で化合物をコーティングするか、又は前記材料と化合物を同時投与することが必要であり得る。例えば、化合物は、適切な担体(例えば、リポソーム)又は希釈剤で被験体に投与され得る。薬学的に許容され得る希釈剤には、生理食塩水及び水性緩衝溶液が含まれる。医薬担体には、滅菌注射溶液又は分散剤の即時調製のための滅菌水溶液又は分散剤及び滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で公知である。
【0312】
限定されないが、眼内適用又は局所適用を含む多くの可能な送達様式が使用され得る。一実施態様では、適用は眼内であり、限定されないが、結膜下注射、前房内注射、側頭部角膜縁を介した前眼房中への注射、基質内注射、角膜内注射、網膜下注射、眼房水注射、テノン嚢下注射又は持続送達デバイス、硝子体内注射(例えば、硝子体前部、中部又は後部注射)が含まれる。一実施態様では、適用は局所的であり、限定されないが、角膜への点眼が含まれる。
【0313】
一実施態様では、本明細書で報告される二重特異性抗体又は医薬製剤は、硝子体内適用を介して、例えば、硝子体内注射を介して投与される。これは、当技術分野で公知の標準的な手順にしたがって実施され得る(例えば、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116 (2006) 3266-3276, Russelakis-Carneiro et al., Neuropathol. Appl. Neurobiol. 25 (1999) 196-206及びWray et al., Arch. Neurol. 33 (1976) 183-185を参照のこと)。
【0314】
いくつかの実施態様では、本明細書で報告される治療キットは、本明細書に記載される医薬製剤中に存在する(二重特異性)抗体の1つ以上の用量と、医薬製剤の硝子体内注射のための適切なデバイスと、注射を行うのに適切な被験体及びプロトコールを詳述する説明書とを含み得る。これらの実施態様では、製剤は、典型的には、処置を必要とする被験体に、硝子体内注射を介して投与される。これは、当技術分野で公知の標準的な手順にしたがって実施され得る(例えば、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116 (2006) 3266-3276, Russelakis-Carneiro et al., Neuropathol. Appl. Neurobiol. 25 (1999) 196-206及びWray et al., Arch. Neurol. 33 (1976) 183-185を参照のこと)。
【0315】
製剤はまた、アジュバント、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含有し得る。微生物の存在の防止は、滅菌手順(上記)によって、並びに様々な抗菌薬剤及び抗真菌薬剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって保証され得る。また、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを製剤に含めることが望ましい場合がある。加えて、注射可能な医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0316】
選択される投与経路にかかわらず、本明細書で報告される化合物(これは、適切な水和形態で使用され得る)及び/又は本明細書で報告される医薬製剤は、当業者に公知の従来の方法によって、薬学的に許容され得る剤形に製剤化される。
【0317】
本明細書で報告される医薬製剤中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性を伴わず、特定の患者、製剤及び投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な量の有効成分が得られるように変化され得る。選択される投与量レベルは、用いられる本明細書で報告される特定の製剤の活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出速度、処置の持続期間、他の薬物、用いられる特定の製剤と組み合わせて使用される化合物及び/又は材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般健康及び過去の病歴、並びに医学分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存するであろう。
【0318】
製剤は滅菌されてなければならならず、製剤がシリンジによって送達可能である程度に液体でなければならない。水に加えて、担体は、好ましくは、等張緩衝生理食塩水である。
【0319】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合では、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール及び塩化ナトリウムを製剤に含めることが好ましい。
【0320】
製剤は、結膜下投与のための活性剤を含む眼科用デポー製剤を含み得る。眼科用デポー製剤は、本質的に純粋な活性剤、例えば本明細書で報告される二重特異性抗体の微粒子を含む。本明細書で報告される二重特異性抗体を含む微粒子は、生体適合性の薬学的に許容され得るポリマー又は脂質封入剤に包埋され得る。デポー製剤は、長期間にわたって全て又は実質的に全ての活性物質を放出するように適合され得る。ポリマー又は脂質マトリックスは、存在する場合には、全て又は実質的に全ての活性剤の放出後において、投与部位から輸送されるように十分に分解するよう適合され得る。デポー製剤は、薬学的に許容され得るポリマーと、溶解又は分散した活性剤とを含む液体製剤であり得る。注射すると、ポリマーは、例えば、ゲル化又は沈殿によって注射部位でデポーを形成する。
【0321】
本明細書で報告される別の態様は、眼血管疾患を処置するのに使用するための、本明細書で報告される二重特異性抗体である。
【0322】
本明細書で報告される一実施態様は、眼血管疾患を処置するのに使用するための、本明細書で報告される二重特異性抗体である。
【0323】
本明細書で報告される別の態様は、眼血管疾患を処置するのに使用するための、本明細書で報告される医薬製剤である。
【0324】
本明細書で報告される別の態様は、眼血管疾患を処置するための医薬を製造するための、本明細書で報告される抗体の使用である。
【0325】
本明細書で報告される別の態様は、本明細書で報告される抗体をこのような処置を必要とする患者に投与することによって、眼血管疾患を患っている患者を処置する方法である。
【0326】
ここで、本明細書で使用される「含む」という用語は、「からなる」という用語を含むことを明記する。したがって、「含む」という用語を含有する全ての態様及び実施態様は、「からなる」という用語によって同様に開示される。
【0327】
D.改変
さらなる態様では、上記実施態様のいずれかに係る抗体は、以下のセクション1~6に記載されている特徴のいずれかを単独で又は組み合わせて取り込み得る。
【0328】
1.抗体の親和性
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、100nM以下、10nM以下(例えば、10-7M以下、例えば10-7M~10-13M、例えば10-8M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0329】
一実施態様では、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000 (GE Healthcare Inc., Piscataway, NJ)を使用したアッセイは、約10反応単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて25℃で実施される。一実施態様では、供給業者の説明書にしたがって、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)によりカルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、GE Healthcare Inc.)を活性化する。10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で抗原を5μg/mL(約0.2μM)に希釈してから、5μL/分の流速で注射して、およそ10反応単位(RU)のカップリングタンパク質を達成する。抗原の注射後、1Mエタノールアミンを注射して、未反応の基をブロッキングする。反応速度測定のために、(例えば、Fabの)2倍系列希釈物(0.78nM~500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)中、25℃で、およそ25μL/分の流速で注射する。単純な1対1Langmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Software version 3.2)を使用して、会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによって、会合速度(kon)及び解離速度(koff)を計算する。平衡解離定数(Kd)は、比率koff/konとして計算する(例えば、Chen, Y. et al., J. Mol. Biol. 293 (1999) 865-881)を参照のこと)。オン速度が、上記表面プラズモン共鳴アッセイによって10-1-1を超える場合、撹拌キュベットを備えるストップトフロー装着分光光度計(Aviv Instruments)又は8000-series SLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、25℃で、PBS(pH7.2)中、20nM抗抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)の増加又は減少を測定する蛍光消光技術を使用することによって、オン速度を決定し得る。
【0330】
2.キメラ抗体及びヒト化抗体
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ又は非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合フラグメントが含まれる。
【0331】
特定の実施態様では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体をヒト化して、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を減少させる。一般的に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(又はその部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその部分)がヒト抗体配列に由来する1つ以上の可変ドメインを含む。また、ヒト化抗体は、ヒト定常領域の少なくとも一部を場合により含む。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)に由来する対応する残基で置換されている。
【0332】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633に概説されており、例えば、Riechmann, I., et al., Nature 332 (1988) 323-329; Queen, C., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 10029-10033;米国特許第5,821,337号、米国特許第7,527,791号、米国特許第6,982,321号及び米国特許第7,087,409号;Kashmiri, S.V., et al., Methods 36 (2005) 25-34(特異性決定領域(SDR)グラフティングを説明);Padlan, E.A., Mol. Immunol. 28 (1991) 489-498(「リサーフェシング」を説明);Dall'Acqua, W.F., et al., Methods 36 (2005) 43-60 (「FRシャッフリング」を説明); Osbourn, J., et al., Methods 36 (2005) 61-68;及びKlimka, A., et al., Br. J. Cancer 83 (2000) 252-260(「FRシャッフリング」に対する「誘導選択」アプローチを説明)にさらに記載されている。
【0333】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、限定されないが、「ベストフィット」法(例えば、Sims, M.J., et al., J. Immunol. 151 (1993) 2296-2308を参照のこと)を使用して選択されたフレームワーク領域;特定のサブグループの軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のヒト抗体コンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289;及びPresta, L.G., et al., J. Immunol. 151 (1993) 2623-2632を参照のこと);ヒト成熟(体細胞突然変異)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633を参照のこと);及びFRライブラリーをスクリーニングして得られたフレームワーク領域(例えば、Baca, M. et al., J. Biol. Chem. 272 (1997) 10678-10684及びRosok, M.J. et al., J. Biol. Chem. 271 (19969 22611-22618を参照のこと)が含まれる。
【0334】
3.ヒト抗体
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技術を使用して生産され得る。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk, M.A. and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Pharmacol.5 (2001) 368-374及びLonberg, N., Curr. Opin. Immunol. 20 (2008) 450-459に記載されている。
【0335】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。典型的には、このような動物は、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、又は染色体外に存在するか、若しくは動物の染色体中にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有する。このようなトランスジェニックマウスでは、一般的に、内因性免疫グロブリン遺伝子座は不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg, N., Nat. Biotech. 23 (2005) 1117-1125を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を説明する米国特許第6,075,181号及び米国特許第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を説明する米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を説明する米国特許第7,041,870号並びにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を説明する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照のこと。このような動物によって生成されるインタクトな抗体に由来するヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と結合させることによってさらに改変され得る。
【0336】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマに基づく方法によって作製され得る。ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている(例えば、Kozbor, D.,J. Immunol. 133 (1984) 3001-3005; Brodeur, B.R., et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York (1987), pp. 51-63;及びBoerner, P., et al., J. Immunol.147 (1991) 86-95を参照のこと)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって作製されたヒト抗体が、Li, J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103 (2006) 3557-3562に記載されている。さらなる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の生産を説明)及びNi, J., Xiandai Mianyixue 26 (2006) 265-268(ヒト-ヒトハイブリドーマを説明)に記載されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers, H.P. and Brandlein, S., Histology and Histopathology 20 (2005) 927-937及びVollmers, H.P. and Brandlein, S., Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27 (2005) 185-191にも記載されている。
【0337】
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーより選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって作製され得る。次いで、このような可変ドメイン配列を所望のヒト定常ドメインと組み合わせ得る。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術は、以下に記載されている。
【0338】
4.ライブラリー由来の抗体
本明細書で報告される抗体は、所望の1つ以上の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特徴を有する抗体についてこのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が、当技術分野で公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboom, H.R. et al., Methods in Molecular Biology 178 (2001) 1-37に概説されており、例えば、McCafferty, J. et al., Nature348 (1990) 552-554; Clackson, T. et al., Nature 352 (1991) 624-628; Marks, J.D. et al., J. Mol. Biol. 222 (1992) 581-597; Marks, J.D. and Bradbury, A., Methods in Molecular Biology 248 (2003) 161-175; Sidhu, S.S. et al., J. Mol. Biol. 338 (2004) 299-310; Lee, C.V. et al., J. Mol. Biol. 340 (2004) 1073-1093; Fellouse, F.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 12467-12472;及びLee, C.V. et al., J. Immunol. Methods 284 (2004) 119-132にさらに記載されている。
【0339】
特定のファージディスプレイ法では、VH遺伝子のレパートリー及びVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリーにおいて無作為に組換え、次いで、Winter, G., et al., Ann. Rev. Immunol. 12 (1994) 433-455に記載されているように、抗原結合ファージについてそれらをスクリーニングし得る。典型的には、ファージは、単鎖Fv(scFv)フラグメント又はFabフラグメントのいずれかとして抗体フラグメントを提示する。免疫化された供給源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマを構築することを必要とせずに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths, A.D., et al., EMBO J. 12 (1993) 725-734によって記載されているように、ナイーブなレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化せずに、広範囲の非自己抗原及びまた自己抗原に対する単一の抗体供給源を提供し得る。最後に、Hoogenboom, H.R. and Winter, G., J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388によって記載されているように、幹細胞由来の非再構成V遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度に可変性のCDR3領域をコードし、in vitroでの再構成を達成することによって、ナイーブなライブラリーを合成的に作製し得る。ヒト抗体ファージライブラリーを説明している特許公報には、例えば、米国特許第5,750,373号、米国特許出願公開第2005/0079574号、米国特許出願公開第2005/0119455号、米国特許出願公開第2005/0266000号、米国特許出願公開第2007/0117126号、米国特許出願公開第2007/0160598号、米国特許出願公開第2007/0237764号、米国特許出願公開第2007/0292936号及び米国特許出願公開第2009/0002360号が含まれる。
【0340】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体フラグメントは、本明細書ではヒト抗体又はヒト抗体フラグメントとみなされる。
【0341】
5.多重特異性抗体
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施態様では、結合特異性の一方は第1の抗原に対するものであり、他方は異なる第2の抗原に対するものである。特定の実施態様では、二重特異性抗体は、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体はまた、抗原の少なくとも1つを発現する細胞に細胞傷害性物質を位置決定するのにも使用され得る。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体フラグメントとして調製され得る。
【0342】
多重特異性抗体を作製するための技術には、限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対のリコンビナント同時発現(Milstein, C. and Cuello, A.C., Nature 305 (1983) 537-540、国際公開公報第93/08829号及びTraunecker, A., et al., EMBO J. 10 (1991) 3655-3659を参照のこと)及び「ノブインホール(knob-in-hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)が含まれる。また、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電気的ステアリング効果を操作すること(国際公開公報第2009/089004号);2つ以上の抗体又はフラグメントを架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号及びBrennan, M. et al., Science 229 (1985) 81-83を参照のこと);二重特異性抗体を生産するためのロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny, S.A., et al., J. Immunol. 148 (1992) 1547-1553を参照のこと);二重特異性抗体フラグメントを生産するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Holliger, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 6444-6448を参照のこと);及び単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber, M et al., J. Immunol. 152 (1994) 5368-5374を参照のこと);並びに例えばTutt, A. et al., J. Immunol. 147 (1991) 60-69に記載されているように、三重特異性抗体を調製することによって、多重特異性抗体を作製することもできる。
【0343】
「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号を参照のこと)。
【0344】
本明細書の抗体又はフラグメントはまた、「二重作用性Fab」又は「DAF」を含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号を参照のこと)。
【0345】
本明細書の抗体又はフラグメントはまた、国際公開公報第2009/080251号、国際公開公報第2009/080252号、国際公開公報第2009/080253号、国際公開公報第2009/080254号、国際公開公報第2010/112193号、国際公開公報第2010/115589号、国際公開公報第2010/136172号、国際公開公報第2010/145792号及び国際公開公報第2010/145793号に記載されている多重特異性抗体を含む。
【0346】
6.抗体変異体
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、又はペプチド合成によって調製され得る。このような改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、残基中への挿入及び/又は残基の置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合を示すことを条件として、最終構築物を得るために欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせを行い得る。
【0347】
a)置換変異体、挿入変異体及び欠失変異体
特定の実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。目的の置換突然変異誘発部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、以下の表の「好ましい置換」という項目に示されている。アミノ酸側鎖クラスに関して以下にさらに記載されているように、より実質的な変更は、以下の表の「例示的置換」という項目に提供されている。アミノ酸置換を目的の抗体に導入し、所望の活性、例えば、保持/改善した抗原結合、減少した免疫原性、又は改善したADCC若しくはCDCについて生成物をスクリーニングし得る。
【0348】
【表8】
【0349】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に基づいて分類され得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性で親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の向きに影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0350】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0351】
置換変異体の一種は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる研究のために選択される得られた変異体は、親抗体を基準として特定の生物学的特性の改変(例えば、改善)(例えば、増加した親和性、減少した免疫原性)を有し、及び/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換変異体は親和性成熟抗体であり、これは、例えば、ファージディスプレイに基づく親和性成熟技術、例えば本明細書に記載されるものを使用して簡便に作製され得る。簡潔に言えば、1つ以上のHVR残基を突然変異させ、変異体抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0352】
例えば、抗体親和性を改善させるために、HVR中に変化(例えば、置換)を行い得る。このような変化は、HVR「ホットスポット」(すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で突然変異を経験するコドンにコードされる残基(例えば、Chowdhury, P.S., Methods Mol. Biol. 207 (2008) 179-196を参照のこと)及び/又は抗原と接触する残基)中に行われ得、得られた変異体VH又は変異体VLを結合親和性について試験する。二次ライブラリーを構築し、それから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom, H.R. et al. in Methods in Molecular Biology 178 (2002) 1-37に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施態様では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリング又はオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子中に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリーを作製する。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、同時に4~6個の残基)をランダム化するHVRを対象とするアプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に同定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3がターゲティングされることが多い。
【0353】
特定の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、このような変化によって、抗体が抗原に結合する能力が実質的に減少しない限り、1つ以上のHVR内に存在し得る。例えば、結合親和性を実質的に減少させない保存的変化(例えば、本明細書で提供される保存的置換)をHVR中に行い得る。このような変化は、例えば、HVR中の抗原接触残基の外側であり得る。上記変異体VH配列及び変異体VL配列の特定の実施態様では、各HVRは変化されないか、又は1個、2個、若しくは3個以下のアミノ酸置換を含有する。
【0354】
突然変異誘発のためにターゲティングされ得る抗体の残基又は領域を同定するために有用な方法は、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と称され、Cunningham, B.C. and Wells, J.A., Science 244 (1989) 1081-1085によって記載されている。この方法では、残基又はターゲット残基群(例えば、arg、asp、his、lys及びgluなどの荷電残基)を同定し、中性アミノ酸又は負電荷を持つアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置換して、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかを決定する。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置に、さらなる置換を導入し得る。あるいは又は加えて、抗体と抗原の接触点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造が使用され得る。このような接触残基及び隣接残基は、置換の候補としてターゲティング又は排除され得る。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含有するかを決定し得る。
【0355】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100残基以上を含有するポリペプチドに及ぶアミノ末端融合及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、(例えば、ADEPTのための)酵素又は抗体の血清半減期を長くするポリペプチドへの、抗体のN末端又はC末端への融合が含まれる。
【0356】
b)グリコシル化変異体
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少するように変化される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製又は排除されるようにアミノ酸配列を変化することによって、簡便に達成され得る。
【0357】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を変化し得る。典型的には、哺乳動物細胞によって産生されるネイティブな抗体は、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって一般的に結合している分枝状の二分岐オリゴ糖を含む(例えば、Wright, A. and Morrison, S.L., TIBTECH 15 (1997) 26-32を参照のこと)。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施態様では、特定の特性が改善した抗体変異体を作製するために、本明細書で報告される抗体中のオリゴ糖に改変を行い得る。
【0358】
一実施態様では、Fc領域に(直接的に又は間接的に)結合されたフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、このような抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば国際公開公報第2008/077546号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法によって測定して、Asn297に結合した糖構造物全て(例えば、複合体構造物、ハイブリッド構造物及び高マンノース構造物)の合計に対するAsn297における糖鎖間のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域中の297位当たり(Fc領域残基のEUナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指す;しかしながら、Asn297は、抗体の軽微な配列変異が原因で、297位からアミノ酸±約3個だけ上流又は下流に、すなわち、294位と300位の間に位置し得る。このようなフコシル化変異体は、改善したADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号;米国特許出願公開第2004/0093621号を参照のこと。「脱フコシル化された」又は「フコースを欠く」抗体変異体に関連した刊行物の例には、米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開公報第2000/61739号;国際公開公報第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;米国特許出願公開第2002/0164328号;米国特許出願公開第2004/0093621号;米国特許出願公開第2004/0132140号;米国特許出願公開第2004/0110704号;米国特許出願公開第2004/0110282号;米国特許出願公開第2004/0109865号;国際公開公報第2003/085119号;国際公開公報第2003/084570号;国際公開公報第2005/035586号;国際公開公報第2005/035778号;国際公開公報第2005/053742号;国際公開公報第2002/031140号;Okazaki, A. et al., J. Mol. Biol. 336 (2004) 1239-1249; Yamane-Ohnuki, N. et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622が含まれる。脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例には、タンパク質フコシル化に欠陥があるLec13 CHO細胞(Ripka, J., et al., Arch. Biochem. Biophys. 249 (1986) 533-545;米国特許出願公開第2003/0157108号;及び国際公開公報第2004/056312号、特に実施例11)及びノックアウト細胞株、例えば、α-1,6-フコシル基転移酵素遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki, N., et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622; Kanda, Y., et al., Biotechnol. Bioeng. 94 (2006) 680-688;及び国際公開公報第2003/085107号を参照のこと)が含まれる。
【0359】
分岐オリゴ糖を有する抗体変異体であって、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって分岐している抗体変異体が提供される。このような抗体変異体は、減少したフコシル化及び/又は改善したADCC機能を有し得る。このような抗体変異体の例は、例えば、国際公開公報第2003/011878号;米国特許第6,602,684号;及び米国特許出願公開第2005/0123546号に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体もまた、提供される。このような抗体変異体は、改善したCDC機能を有し得る。このような抗体変異体は、例えば、国際公開公報第1997/30087号;国際公開公報第1998/58964号;及び国際公開公報第1999/22764号に記載されている。
【0360】
c)Fc領域変異体
特定の実施態様では、1つ以上のさらなるアミノ酸改変を本明細書で提供される抗体のFc領域中に導入し、それによりFc領域変異体を作製することができる。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換/突然変異)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域)を含み得る。
【0361】
特定の実施態様では、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有する抗体変異体を企図する。このことにより、その抗体は、in vivoでの抗体の半減期が重要ではあるが、特定のエフェクター機能(CDC及びADCCなど)が不必要又は有害である用途に望ましい候補となる。in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを行って、CDC活性及び/又はADCC活性の減少/消失を確認し得る。例えば、Fcレセプター(FcR)結合アッセイを行って、抗体はFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)がFcRn結合能を保持していることを裏付けることができる。ADCCを媒介する主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 (1986) 7059-7063;及びHellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 (1985) 1499-1502を参照のこと);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361を参照のこと)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を用い得る(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega, Madison, WI)を参照のこと)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは又は加えて、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 (1998) 652-656に開示されているもののような動物モデルにおいて評価され得る。また、C1q結合アッセイを行って、抗体はC1qに結合することができないため、CDC活性を欠くことを確認することもできる(例えば、国際公開公報第2006/029879号及び国際公開公報第2005/100402号におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと)。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施し得る(例えば、Gazzano-Santoro, H. et al., J. Immunol. Methods 202 (1996) 163-171; Cragg, M.S. et al., Blood 101 (2003) 1045-1052;及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103 (2004) 2738-2743を参照のこと)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定はまた、当技術分野で公知の方法を使用して実施され得る(例えば、Petkova, S.B. et al., Int. Immunol. 18 (2006) 1759-1769を参照のこと)。
【0362】
減少したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238位、265位、269位、270位、297位、327位及び329位の1つ以上が置換されたものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc領域変異体には、アミノ酸265位、269位、270位、297位及び327位の2つ以上において置換を有するFc領域変異体(残基265位及び297位のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc領域変異体を含む)が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0363】
改善又は減弱したFcR結合性を有する特定の抗体変異体が記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開公報第2004/056312号及びShields, R.L. et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604を参照のこと)。
【0364】
特定の実施態様では、抗体変異体は、ADCCを改善させる1つ以上のアミノ酸置換(例えば、Fc領域の298位、333位及び/又は334位(残基のEUナンバリング)における置換)を有するFc領域を含む。
【0365】
いくつかの実施態様では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開公報第99/51642号及びIdusogie, E.E. et al., J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184に記載されているように、変化(すなわち、改善又は減弱のいずれか)したC1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変化をFc領域中に行い得る。
【0366】
増加した半減期及び改善した新生児Fcレセプター(FcRn)結合性(これは、胎児への母親のIgGの移行に関与する)を有する抗体(Guyer, R.L. et al., J. Immunol. 117 (1976) 587-593及びKim, J.K. et al., J. Immunol. 24 (1994) 2429-2434)は、米国特許出願公開第2005/0014934号に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善させる1つ以上の置換をその中に有するFc領域を含む。このようなFc領域変異体には、Fc領域残基:238位、256位、265位、272位、286位、303位、305位、307位、311位、312位、317位、340位、356位、360位、362位、376位、378位、380位、382位、413位、424位又は434位の1つ以上において置換(例えば、Fc領域残基434位の置換)を有するものが含まれる(米国特許第7,371,826号)。
【0367】
Fc領域変異体の他の例に関しては、Duncan, A.R. and Winter, G., Nature 322 (1988) 738-740;米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及び国際公開公報第94/29351号も参照のこと。
【0368】
d)システイン操作抗体変異体
特定の実施態様では、システイン操作抗体、例えば、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている「チオMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施態様では、置換される残基は、抗体の接近可能な部位に存在する。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が、その結果、抗体の接近可能な部位に位置づけられ、本明細書にさらに記載されるように、薬物部分又はリンカー-薬物部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートさせて免疫コンジュゲートを作製するために使用され得る。特定の実施態様では、次の残基の任意の1つ以上をシステインで置換し得る:軽鎖のV205(Kabatのナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されているようにして作製することができる。
【0369】
e)抗体誘導体
特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、当技術分野で公知であり、容易に入手可能である付加的な非タンパク性部分を含むようにさらに改変され得る。抗体の誘導体化に適切な部分には、水溶性ポリマーが含まれるがそれに限定されるわけではない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダム共重合体のいずれか)及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリルプロピレン(prolylpropylene)オキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中で安定であるため、製造の際に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分枝状又は非分枝状であり得る。抗体に結合されるポリマーの数は変動してよく、複数のポリマーが結合される場合、それらは同じ分子又は異なる分子であり得る。通常、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又は種類は、限定されないが、改善しようとする抗体の特定の特性又は機能、その抗体誘導体が所定の条件下で治療法において使用されるかなどを含む考慮すべき事柄に基づいて決定することができる。
【0370】
別の実施態様では、抗体と放射線への曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク性部分とのコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク性部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600-11605)。放射線は、任意の波長のものであり得、普通の細胞には害を与えないが、抗体-非タンパク性部分の近位にある細胞が死滅する温度まで非タンパク性部分を加熱する波長が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0371】
f)ヘテロ二量体化
ヘテロ二量体化を強化するためのCH3改変に関するいくつかのアプローチが存在し、例えば、国際公開公報第96/27011号、国際公開公報第98/050431号、欧州特許出願公開第1870459号、国際公開公報第2007/110205号、国際公開公報第2007/147901号、国際公開公報第2009/089004号、国際公開公報第2010/129304号、国際公開公報第2011/90754号、国際公開公報第2011/143545号、国際公開公報第2012058768号、国際公開公報第2013157954号、国際公開公報第2013096291号に詳細に記載されている。典型的には、このようなアプローチの全てにおいて、各CH3ドメイン(又は、それを含む重鎖)がもはやそれ自体とホモ二量体化することができないが、相補的に操作された他のCH3ドメインと強制的にヘテロ二量体化するように(第1のCH3ドメイン及び第2のCH3ドメインがヘテロ二量体化し、2つの第1のCH3ドメイン間又は2つの第2のCH3ドメイン間でホモ二量体が形成されないように)、第1のCH3ドメイン及び第2のCH3ドメインは両方とも相補的に操作される。改善された重鎖ヘテロ二量体化のためのこれらの異なるアプローチは、本発明に係る多重特異性抗体における重鎖-軽鎖改変(一方の結合アームにおけるVH及びVL交換/置換、並びにCH1/CLインターフェイスにおける逆の電荷を有する荷電アミノ酸の置換の導入)と組み合わせた様々な代替方法として企図され、Bence-Jones型副産物と誤対合する軽鎖を減少させる。
【0372】
本発明の好ましい一実施態様では(多重特異性抗体が重鎖においてCH3ドメインを含む場合)、本発明に係る前記多重特異性抗体のCH3ドメインは、例えば、国際公開公報第96/027011号、Ridgway, J.B., et al., Protein Eng. 9 (1996) 617-621;及びMerchant, A.M., et al., Nat. Biotechnol. 16 (1998) 677-681;国際公開公報第98/050431号において、数例を用いて詳細に記載されている「ノブイントゥホール」技術によって変化され得る。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用表面が、これら2つのCH3ドメインを含有する両方の重鎖のヘテロ二量体化を増加させるように変化される。(2つの重鎖の)2つの各CH3ドメインは「ノブ」であり得る一方、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入は、ヘテロ二量体をさらに安定化し(Merchant, A.M., et al., Nature Biotech. 16 (1998) 677-681; Atwell, S., et al., J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収率を増加させる。
【0373】
したがって、本発明の一実施態様では、前記多重特異性抗体は(各重鎖においてCH3ドメインを含み)、a)の抗体の第1の重鎖の第1のCH3ドメイン、及びb)の抗体の第2の重鎖の第2のCH3ドメインはそれぞれ、抗体CH3ドメイン間の元のインターフェイスを含むインターフェイスと接触することをさらに特徴とし、
前記インターフェイスは、多重特異性抗体の形成を促進するように変化されており、該変化は、
i)該多重特異性抗体内の他方の重鎖のCH3ドメインの元のインターフェイスと接触する一方の重鎖のCH3ドメインの元のインターフェイス内において、
アミノ酸残基が、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、それにより、他方の重鎖のCH3ドメインのインターフェイス内のキャビティで位置決定可能な突出部が、一方の重鎖のCH3ドメインのインターフェイス内において発生するように、
一方の重鎖のCH3ドメインが変化され、
及び
ii)該多重特異性抗体内の第1のCH3ドメインの元のインターフェイスと接触する第2のCH3ドメインの元のインターフェイス内において、
アミノ酸残基が、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換され、それにより、第1のCH3ドメインのインターフェイス内の突出部が位置決定可能であるキャビティが、第2のCH3ドメインのインターフェイス内において発生するように、
他方の重鎖のCH3ドメインが変化されることを特徴とする。
【0374】
好ましくは、より大きな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)からなる群より選択される。
【0375】
好ましくは、より小さな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)からなる群より選択される。
【0376】
本発明の一態様では、両方のCH3ドメイン間においてジスルフィド架橋が形成し得るように、CH3ドメインは両方とも、各CH3ドメインの対応する位置におけるアミノ酸としてシステイン(C)の導入によってさらに変化される。
【0377】
好ましい一実施態様では、前記多重特異性抗体は、「ノブ鎖」の第1のCH3ドメインにおいて、アミノ酸T366W突然変異を含み、「ホール鎖」の第2のCH3ドメインにおいて、アミノ酸T366S、L368A、Y407V突然変異を含む。例えば、アミノ酸Y349C突然変異を「ホール鎖」のCH3ドメインに導入し、アミノ酸E356C突然変異又はアミノ酸S354C突然変異を「ノブ鎖」のCH3ドメインに導入することによって、CH3ドメイン間のさらなる鎖間ジスルフィド架橋も使用され得る(Merchant, A.M., et al., Nature Biotech. 16 (1998) 677-681)。
【0378】
好ましい一実施態様では、前記多重特異性抗体は(各重鎖においてCH3ドメインを含み)、2つのCH3ドメインの一方において、アミノ酸S354C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、アミノ酸Y349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を含む(一方のCH3ドメインにおけるさらなるアミノ酸S354C突然変異、及び他方のCH3ドメインにおけるさらなるアミノ酸Y349C突然変異が鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(ナンバリングは、Kabatに従う)。
【0379】
ヘテロ二量体化を強化するためのCH3改変に関する他の技術が本発明の代替方法として企図され、例えば、国際公開公報第96/27011号、国際公開公報第98/050431号、欧州特許出願公開第1870459号、国際公開公報第2007/110205号、国際公開公報第2007/147901号、国際公開公報第2009/089004号、国際公開公報第2010/129304号、国際公開公報第2011/90754号、国際公開公報第2011/143545号、国際公開公報第2012/058768号、国際公開公報第2013/157954号、国際公開公報第2013/096291号に記載されている。
【0380】
一実施態様では、欧州特許出願公開第1870459A1号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用され得る。このアプローチは、両方の重鎖間のCH3/CH3ドメインインターフェイスの特定のアミノ酸位置における逆の電荷を有する荷電アミノ酸の置換/突然変異の導入に基づくものである。前記多重特異性抗体の好ましい一実施態様は、(多重特異性抗体の)第1のCH3ドメインにおけるアミノ酸R409D;K370E突然変異、及び多重特異性抗体の第2のCH3ドメインにおけるアミノ酸D399K;E357K突然変異である(ナンバリングは、Kabatに従う)。
【0381】
別の実施態様では、前記多重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいて、アミノ酸T366W突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいて、アミノ酸T366S、L368A、Y407V突然変異を含み、それに加えて、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいてアミノ酸R409D;K370E突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいてアミノ酸D399K;E357K突然変異を含む。
【0382】
別の実施態様では、前記多重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、アミノ酸S354C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、アミノ酸Y349C、T366S、L368A、Y407V突然変異を含むか、又は前記多重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方において、アミノ酸Y349C、T366W突然変異を含み、2つのCH3ドメインの他方において、アミノ酸S354C、T366S、L368A、Y407V突然変異を含み、それに加えて、「ノブ鎖」のCH3ドメインにおいてアミノ酸R409D;K370E突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにおいてアミノ酸D399K;E357K突然変異を含む。
【0383】
一実施態様では、国際公開公報第2013/157953号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用され得る。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366K突然変異を含み、第2のCH3ドメインポリペプチドは、アミノ酸L351D突然変異を含む。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸L351K突然変異をさらに含む。さらなる実施態様では、第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349D及びL368Eから選択されるアミノ酸突然変異(好ましくは、L368E)をさらに含む。
【0384】
一実施態様では、国際公開公報第2012/058768号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用され得る。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸L351Y、Y407A突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸T366A、K409F突然変異を含む。さらなる実施態様では、第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390又はK392におけるさらなるアミノ酸突然変異(例えば、a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、c S400E、S400D、S400R又はS400K、F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、N390R、N390K又はN390D、K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392Eから選択される)を含む。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸L351Y、Y407A突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸T366V、K409F突然変異を含む。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸Y407A突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、さらなるアミノ酸T366A、K409F突然変異を含む。さらなる実施態様では、第2のCH3ドメインは、さらなるアミノ酸K392E、T411E、D399R及びS400R突然変異を含む。
【0385】
一実施態様では、例えば、368及び409からなる群より選択される位置におけるアミノ酸改変を用いて、国際公開公報第2011/143545号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用され得る。
【0386】
一実施態様では、国際公開公報第2011/090762号に記載されているヘテロ二量体化アプローチ(これは、上記ノブイントゥホール技術も使用する)が代替的に使用され得る。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366W突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸Y407A突然変異を含む。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸T366Y突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸Y407T突然変異を含む。
【0387】
一実施態様では、多重特異性抗体はIgG2アイソタイプであり、国際公開公報第2010/129304号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用され得る。
【0388】
一実施態様では、国際公開公報第2009/089004号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用され得る。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、K392又はN392の負電荷アミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK392D又はN392D)によるアミノ酸置換を含み、第2のCH3ドメインは、D399、E356、D356又はE357の正電荷アミノ酸(例えば、リジン(K)又はアルギニン(R)、好ましくはD399K、E356K、D356K又はE357K、より好ましくはD399K及びE356K)によるアミノ酸置換を含む。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、K409又はR409の負電荷アミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK409D又はR409D)によるアミノ酸置換をさらに含む。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、K439及び/又はK370の負電荷アミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))によるアミノ酸置換をさらに又は代替的に含む。
【0389】
一実施態様では、国際公開公報第2007/147901号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用され得る。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸K253E、D282K及びK322D突然変異を含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸D239K、E240K及びK292D突然変異を含む。
【0390】
一実施態様では、国際公開公報第2007/110205号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用され得る。
【0391】
E.リコンビナント方法及び組成物
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、リコンビナント法及びリコンビナント組成物を使用して作製することができる。一実施態様では、本明細書で報告される抗体をコードする単離された核酸が提供される。このような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードし得る。さらなる実施態様では、このような核酸を含む1つ以上のプラスミド(例えば、発現プラスミド)が提供される。さらなる実施態様では、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような一実施態様では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むプラスミド、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のプラスミド及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のプラスミドを含む(例えば、それらでトランスフォーメーションされている)。一実施態様では、宿主細胞は、真核生物性、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0細胞、NS0細胞、Sp20細胞)である。一実施態様では、本明細書で報告される抗体を作製する方法が提供され、この方法は、抗体の発現に適切な条件下で、上記に提供されるような抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養する段階、及び場合により、宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体を回収する段階を含む。
【0392】
本明細書で報告される抗体をリコンビナント作製する場合、例えば前述したような抗体をコードする核酸は、単離され、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/又は発現のために、1つ以上のプラスミド中に挿入される。このような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、変異体Fc領域ポリペプチド又は抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、容易に単離及び配列決定され得る。
【0393】
抗体をコードするプラスミドのクローニング又は発現に適切な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合には特に、細菌において産生させることができる。細菌における抗体フラグメント及び抗体ポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、米国特許第5,789,199号及び米国特許第5,840,523号を参照のこと。(E. coliにおける抗体フラグメントの発現を説明するCharlton, K.A., In: Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), pp. 245-254も参照のこと)。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離することができ、さらに精製することができる。
【0394】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物も、抗体をコードするプラスミドのための適切なクローニング宿主又は発現宿主であり、これらには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、その結果、部分的又は全面的にヒトグリコシル化パターンを有する抗体を産生する真菌株及び酵母株が含まれる。Gerngross, T.U., Nat. Biotech. 22 (2004) 1409-1414; 及び Li, H. et al., Nat. Biotech. 24 (2006) 210-215を参照のこと。
【0395】
グリコシル化抗体の発現のために適切な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞及び昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と組み合わせて、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0396】
植物細胞培養物もまた、宿主として使用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、米国特許第6,040,498号、米国特許第6,420,548号、米国特許第7,125,978号及び米国特許第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生させるためのPLANTIBODIES(商標)技術を説明している)を参照のこと。
【0397】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように順応させた哺乳動物細胞株が、有用である場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によってトランスフォーメーションされたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham, F.L., et al., J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74に記載されているHEK293又は293細胞);仔ハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252に記載されているTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝臓細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(HepG2);マウス乳房腫瘍(MMT060562);例えば、Mather, J.P., et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68に記載されている、TRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub, G., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、並びにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に適切ないくつかの哺乳動物宿主細胞株の概要については、例えば、Yazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2004), pp. 255-268を参照のこと。
【0398】
F.併用処置
特定の実施態様では、本明細書で報告される抗体又は医薬製剤は、本明細書に記載される1つ以上の眼血管疾患を処置するために(さらなる治療剤なしで)単独で投与される。
【0399】
他の実施態様では、本明細書で報告される抗体又は医薬製剤は、1つ以上のさらなる治療剤、又は本明細書に記載される1つ以上の眼血管疾患を処置するための方法と組み合わせて投与される。
【0400】
他の実施態様では、本明細書で報告される抗体又は医薬製剤は、1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて製剤化され、本明細書に記載される1つ以上の眼血管疾患を処置するために投与される。
【0401】
特定の実施態様では、本明細書で提供される併用処置は、本明細書で報告される抗体又は医薬製剤が、本明細書に記載される1つ以上の眼血管疾患を処置するために1つ以上のさらなる治療剤と共に逐次投与されることを含む。
【0402】
さらなる治療剤は、限定されないが、トリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)、EyeOOl(抗VEGFペグ化アプタマー)、スクアラミン、RETAANE(商標)(デポー懸濁液用の酢酸アネコルタブ;Alcon, Inc.)、コンブレタスタチンA4プロドラッグ(CA4P)、MACUGEN(商標)、MIFEPREX(商標)(ミフェプリストン-ru486)、サブテノントリアムシノロンアセトニド、硝子体内結晶トリアムシノロンアセトニド、プリノマスタット(AG3340合成マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、Pfizer)、フルオシノロンアセトニド(フルオシノン眼内インプラントを含む、Bausch & Lomb/Control Delivery Systems)、VEGFR阻害剤(Sugen)、VEGF-Trap(Regeneron/Aventis)、VEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤、例えば4-(4-ブロモ-2-フルオロアニリノ)-6-メトキシ-7-(l-メチルピペリジン-4-イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474)、4-(4-フルオロ-2-メチルインドール-5-イルオキシ)-6-メトキシ-7-(3-ピロリジン-1-イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171)、バタラニブ(PTK787)及びSU11248(スニチニブ)、リノマイド、並びにインテグリンv.ベータ.3機能及びアンギオスタチンの阻害剤を含む。
【0403】
本明細書で報告される抗体又は医薬製剤との組み合わせにおいて使用することができる他の医薬的治療は、限定されないが、非熱レーザーを用いたVISUDYNE(商標)、PKC412、Endovion(NeuroSearch A/S)、神経栄養因子(例として、グリア由来の神経栄養因子及び毛様体神経栄養因子を含む)、ジアタゼム、ドルゾラミド、フォトトロプ、9-シス-レチナール、目薬(エコー治療を含む)(ヨウ化ホスホリン又はエコチオフェート又は炭酸脱水酵素阻害剤を含む)、AE-941(AEterna Laboratories, Inc.)、Sirna-027(Sima Therapeutics, Inc.)、ペガプタニブ(NeXstar Pharmaceuticals/Gilead Sciences)、ニューロトロフィン(例として、NT-4/5、Genentechを含む)、Cand5(Acuity Pharmaceuticals)、INS-37217(Inspire Pharmaceuticals)、インテグリンアンタゴニスト(Jerini AG及びAbbott Laboratoriesからのものを含む)、EG-3306(Ark Therapeutics Ltd.)、BDM-E(BioDiem Ltd.)、サリドマイド(例えば、EntreMed, Inc.によって使用される通り)、カルジオトロフィン1(Genentech)、2-メトキシエストラジオール(Allergan/Oculex)、DL-8234(Toray Industries)、NTC-200(Neurotech)、テトラチオモリブデート(ミシガン大学)、LYN-002(Lynkeus Biotech)、微細藻類化合物(Aquasearch/Albany, Mera Pharmaceuticals)、D-9120(Celltech Group pic)、ATX-S10(Hamamatsu Photonics)、TGF-β2(Genzyme/Celtrix)、チロシンキナーゼ阻害剤(Allergan, SUGEN, Pfizer)、NX-278-L(NeXstar Pharmaceuticals/Gilead Sciences)、Opt-24(OPTIS France SA)、網膜細胞神経節神経保護剤(Cogent Neurosciences)、N-ニトロピラゾール誘導体(Texas A&M University System)、KP-102(Krenitsky Pharmaceuticals)、シクロスポリンA、Timited網膜転座、光線力学治療(例として、レセプターをターゲティングするPDT、Bristol-Myers Squibb, Co.;PDTを用いた注射用のポルフィマーナトリウム;ベルテポルフィン、QLT Inc.;PDTを伴うロスタポルフィン、Miravent Medical Technologies;PDTを伴うタラポルフィンナトリウム、Nippon Petroleum;モテキサフィンルテチウム、Pharmacyclics, Inc.)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例として、Novagali Pharma SAによってテストされた産物及びISIS-13650、Isis Pharmaceuticalsを含む)、レーザー光凝固、ドルーゼンレーザー加工、黄斑円孔手術、黄斑転座手術、移植可能ミニチュアテレスコープ、ファイモーション血管造影(また、マイクロレーザー治療及びフィーダーベッセル処置として公知である)、陽子線治療、微小刺激治療、網膜剥離及び硝子体手術、強膜バックル、黄斑下手術、経瞳孔温熱治療、光化学系I治療、RNA干渉(RNAi)の使用、体外レオフェレシス(また、膜差ろ過及びRheotherapyとして公知である)、マイクロチップ移植、幹細胞治療、遺伝子交換治療、リボザイム遺伝子治療(低酸素応答エレメント用の遺伝子治療を含む、Oxford Biomedica;Lentipak、Genetix;PDEF遺伝子治療、GenVec)、光レセプター/網膜細胞移植(移植可能な網膜上皮細胞、Diacrin, Inc.;網膜細胞移植、Cell Genesys, Inc.を含む)及び鍼を含む。
【0404】
任意の抗血管新生薬剤を、本明細書で報告される抗体又は医薬製剤(限定されないが、Carmeliet and Jain, 2000, Nature 407: 249-257によって列挙されるものを含む)との組み合わせにおいて使用することができる。特定の実施態様では、抗血管新生薬剤は、別のVEGFアンタゴニスト又はVEGFレセプターアンタゴニスト、例えばVEGFバリアント、可溶性VEGFレセプターフラグメント、VEGF又はVEGFRを遮断することが可能であるアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの低分子量阻害剤及びそれらの任意の組み合わせなどであり、これらは、抗VEGFアプタマー(例えば、ペガプタニブ)、可溶性リコンビナントデコイレセプター(例えば、VEGFトラップ)を含む。特定の実施態様では、抗血管新生薬剤は、コルチコステロイド、血管新生抑制ステロイド、酢酸アネコルタブ、アンジオスタチン、エンドスタチン、VEGFR又はVEGFリガンドの発現を減少させる低分子干渉RNA、チロシンキナーゼ阻害剤を用いたVEGFR後の遮断、MMP阻害剤、IGFBP3、SDF-1遮断薬、PEDF、ガンマ-セクレターゼ、デルタ様リガンド4、インテグリンアンタゴニスト、HIF-1アルファ遮断、プロテインキナーゼCK2遮断及び血管内皮カドヘリン(CD-144)及び間質由来因子(SDF)-I抗体を使用した新生血管部位への幹細胞(すなわち、内皮前駆細胞)ホーミングの阻害を含む。VEGFレセプター(PTK787を含む)をターゲティングする小分子RTK阻害剤を使用することもできる。必ずしも抗VEGF化合物ではない新生血管に対して活性を有する薬剤も使用することができ、抗炎症薬物、m-Tor阻害剤、ラパマイシン、エベロリムス、テムシロリムス、シクロスポリン、抗TNF薬剤、抗補体薬剤及び非ステロイド性抗炎症薬剤を含み得る。神経保護的であり、乾燥型黄斑変性の進行を潜在的に減少させることができる薬剤も使用することができる(例えば、「神経ステロイド」と称される薬物のクラスなど)。これらは、薬物、例えばデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)(ブランド名:Prastera(登録商標)及びFidelin(登録商標))、デヒドロエピアンドロステロン硫酸及びプレグネノロン硫酸などを含む。任意のAMD(加齢性黄斑変性症)治療剤は、本明細書で報告される二重特異性抗体又は医薬製剤との組み合わせにおいて使用することができ、限定されないが、PDTとの組み合わせにおけるベルテポルフィン、ペガプタニブナトリウム、亜鉛又は抗酸化剤(単独で又は任意の組み合わせにおいて)を含む。
【0405】
G.医薬製剤
本明細書に記載される抗体の医薬製剤は、所望の程度の純度を有するこのような抗体を1つ以上の任意の薬学的に許容し得る担体(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980))と混合することによって、凍結乾燥製剤又は水性液剤の形態で調製される。一般的に、薬学的に許容し得る担体は、使用される投与量及び濃度において受容者に非毒性であり、限定されないが、次のものが含まれる:リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール;メチルパラベン若しくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリ(ビニルピロリドン)のような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む、単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖;ナトリウムのような塩を形成する対イオン;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン系界面活性剤。本明細書における例示的な薬学的に許容し得る担体には、さらに、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)のような侵入型薬物分散剤、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)のようなヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が含まれる。rhuPH20を含む、いくつかの例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び米国特許出願公開第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼのような1つ以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0406】
例示的な凍結乾燥抗体製剤が、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及び国際公開公報第2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0407】
本明細書における製剤はまた、処置される特定の適応症に対する必要に応じて複数の有効成分、好ましくは、補完的な活性を有し、互いに悪影響を及ぼさないものも含み得る。このような有効成分は、意図される目的のために有効な量で組み合わせられて存在するのが適切である。
【0408】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合により調製されたマイクロカプセル中に、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中に、又はマクロエマルジョン中に閉じ込めることができる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.) (1980)に開示されている。
【0409】
徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは造形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。
【0410】
通常、in vivo投与のために使用される製剤は、滅菌済みである。無菌状態は、例えば、滅菌ろ過膜に通してろ過することによって、容易に実現することができる。
【0411】
H.治療方法及び組成物
本明細書で提供される抗体のいずれかは、治療方法に使用され得る。
【0412】
一態様では、医薬として使用するための、本明細書で報告される抗体が提供される。さらなる態様では、眼血管疾患を処置するのに使用するための抗体が提供される。特定の実施態様では、処置方法に使用のための抗体が提供される。特定の実施態様では、眼血管疾患を有する個体を処置する方法であって、有効量の抗体を該個体に投与することを含む方法に使用するための抗体が提供される。このような一実施態様では、前記方法は、有効量の(例えば、上記セクションDに記載される)少なくとも1つのさらなる治療剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施態様では、本発明は、眼における血管新生を阻害するのに使用するための抗体を提供する。特定の実施態様では、本発明は、個体における血管新生を阻害する方法であって、有効の抗体を該個体に投与して血管新生を阻害することを含む方法に使用するための抗体を提供する。好ましい一実施態様では、上記実施態様のいずれかに係る「個体」はヒトである。
【0413】
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における抗体の使用を提供する。一実施態様では、医薬は、眼血管疾患を処置するためのものである。さらなる実施態様では、医薬は、眼血管疾患を処置する方法であって、有効量の医薬を、眼血管疾患を有する個体に投与することを含む方法に使用するためのものである。このような一実施態様では、前記方法は、有効量の(例えば、上記)少なくとも1つのさらなる治療剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施態様では、医薬は、血管新生を阻害するためのものである。さらなる実施態様では、医薬は、個体における血管新生を阻害する方法であって、有効の医薬を該個体に投与して血管新生を阻害することを含む方法に使用するためのものである。上記実施態様のいずれかに係る「個体」はヒトであり得る。
【0414】
さらなる態様では、本発明は、眼血管疾患を処置するための方法を提供する。一実施態様では、前記方法は、有効量の本明細書で報告される抗体を、そのような眼血管疾患を有する個体に投与することを含む。このような一実施態様では、前記方法は、有効量の下記の少なくとも1つのさらなる治療剤を個体に投与することをさらに含む。上記実施態様のいずれかに係る「個体」はヒトであり得る。
【0415】
さらなる態様では、本発明は、個体の眼における血管新生を阻害するための方法を提供する。一実施態様では、前記方法は、有効量の本明細書で報告される抗体を個体に投与して血管新生を阻害することを含む。一実施態様では、「個体」はヒトである。
【0416】
さらなる態様では、本発明は、例えば、上記治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書で提供される抗体のいずれかを含む医薬製剤を提供する。一実施態様では、医薬製剤は、本明細書で提供される抗体のいずれかと、薬学的に許容し得る担体とを含む。別の実施態様では、医薬製剤は、本明細書で提供される抗体のいずれかと、例えば、下記の少なくとも1つのさらなる治療剤とを含む。
【0417】
本明細書で報告される抗体は、治療において、単独で又は他の薬剤と組み合わせて使用され得る。例えば、本明細書で報告される抗体は、少なくとも1つのさらなる治療剤と同時投与され得る。
【0418】
本明細書で報告される抗体(及び任意のさらなる治療剤)は、非経口、肺内及び鼻腔内、並びに局所処置のために所望される場合、病変内投与を含む、任意の適切な手段によって投与され得る。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。投薬は、任意の適切な経路による、例えば、投与が短時間であるか又は慢性的であるかに部分的に応じて、静脈内又は皮下注射などの、注射によるものであり得る。単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与及びパルス注入を含むが、これらに限定されない、様々な投薬スケジュールが本明細書で企図される。
【0419】
本明細書で報告される抗体は、良好な医療行為と一致した様式で、製剤化され、投薬され、投与されるであろう。この文脈における考慮の要因には、処置されている特定の障害、処置されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジュール管理及び医療従事者に既知の他の要因が含まれる。抗体は、必要ではないが、任意に、問題の障害を予防又は治療するために現在使用される1つ以上の薬剤と共に製剤化される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は処置の種類及び上に考察された他の要因に依存する。これらは、一般的に、本明細書に記載されるのと同じ投与量で、本明細書に記載される投与経路により、又は本明細書に記載される投与量の約1~99%、又は適切であると経験的/臨床的に決定される任意の投与量で、任意の経路によって、使用される。
【0420】
疾患の予防又は治療のために、本明細書で報告される抗体の適切な投与量(単独で又は1つ以上の他のさらなる治療剤と組み合わせて使用されるとき)は、処置される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的又は治療目的で投与されるか、以前の治療法、患者の病歴及び抗体への反応、並びに主治医の裁量に依存するであろう。抗体は、患者に、1回で又は一連の処置にわたって適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与によってであれ、連続注入によってであれ、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.5mg/kg~10mg/kg)の抗体が、患者への投与のための初回の候補投与量であり得る。1つの典型的な1日投与量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。症状に応じて数日間又はより長い日数にわたる反復投与について、処置は、一般的に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されるであろう。抗体の1つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲内であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1回以上の用量が患者に投与され得る。このような用量は、断続的に、例えば、毎週又は3週間毎に(例えば、患者が抗体の約2~約20回、又は例えば、約6回用量を受容するように)投与され得る。初回のより高い負荷用量、続いて1回以上のより低い用量が投与され得る。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0421】
III.製品
本明細書で報告される別の態様では、前述の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製品が提供される。製品は、容器及び容器の上又は容器に添えられたラベル又は添付文書を含む。適切な容器には、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなど様々な材料から形成され得る。容器は、単独であるか、又は症状を治療、予防及び/若しくは診断するのに有効な別の製剤と組み合わせられた製剤を収容し、無菌取出口を有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって突き刺すことができる栓を有する静注液バッグ又はバイアルであり得る)。製剤中の少なくとも1つの活性物質は、本明細書で報告される抗体である。ラベル又は添付文書は、その製剤が、選ばれた症状を処置するのに使用されることを示す。さらに、製品は、(a)本明細書で報告される抗体を含む製剤がその中に含まれる第1の容器;及び(b)さらなる細胞傷害剤又はそうでなければ治療剤を含む製剤がその中に含まれる第2の容器を含み得る。本明細書で報告されるこの態様の製品は、それらの製剤を使用して特定の症状を処置できることを示す添付文書をさらに含み得る。あるいは又は加えて、製品は、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液などの薬学的に許容し得る緩衝液を含む第2の(又は第3の)容器をさらに含み得る。これは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料もさらに含み得る。
【0422】
上記の製品のいずれかは、本明細書で報告される抗体の代わりに又は抗体に加えて、本明細書で報告される免疫コンジュゲートを含み得ることが理解される。
【0423】
IV.特定の実施態様
1.第1のFc領域ポリペプチドと、第2のFc領域ポリペプチドとを含む抗体であって、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異の組み合わせ
i)I253A、H310A及びH435A、又は
ii)H310A、H433A及びY436A、又は
iii)L251D、L314D及びL432D、又は
iv)i)~iii)の組み合わせ
を含む、抗体。
【0424】
2.第1のFc領域ポリペプチドと、第2のFc領域ポリペプチドとを含む抗体であって、抗体が、第1のFc領域ポリペプチド及び第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異
i)I253A、H310A及びH435A、又は
ii)H310A、H433A及びY436A、又は
iii)L251D、L314D及びL432D、又は
iv)i)~iii)の組み合わせ
を有する抗体に匹敵する、又はより低い親和性でヒトFcRnに特異的に結合する、抗体。
【0425】
3.第1のFc領域ポリペプチドと、第2のFc領域ポリペプチドとを含む抗体であって、
i)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異I253A、H310A及びH435Aを含むか、又は
ii)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異H310A、H433A及びY436Aを含むか、又は
iii)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが突然変異L251D、L314D及びL432Dを含むか、又は
iv)第1のFc領域ポリペプチドが突然変異I253A、H310A及びH435Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドが
a)突然変異H310A、H433A及びY436A、若しくは
b)突然変異L251D、L314D及びL432D
を含むか、
又は
v)第1のFc領域ポリペプチドが突然変異H310A、H433A及びY436Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドが
a)突然変異L251D、L314D及びL432D
を含む、抗体。
【0426】
4.第1のFc領域ポリペプチドと、第2のFc領域ポリペプチドとを含む抗体であって、
α)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが両方とも、ヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスのものであり(ヒト起源に由来し)、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが変異体(ヒト)IgGクラスFc領域に含まれることになるように、第1のFc領域ポリペプチドにおいて、i)群I253A、H310A及びH435A、又はii)群H310A、H433A及びY436A、又はiii)群L251D、L314D及びL432D(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)から選択される突然変異の1つ又は2つを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異L251D、I253A、H310A、L314D、L432D、H433A、H435A及びY436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含む群から選択される突然変異の1つ又は2つを含み、又は
β)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが両方とも、ヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスのものであり(すなわち、ヒト起源に由来し)、総合すると、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおける突然変異の全ての結果として、突然変異i)I253A、H310A及びH435A、又はii)H310A、H433A及びY436A、又はiii)L251D、L314D及びL432Dが該Fc領域に含まれることになるように、該Fc領域において、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D又はそれらの組み合わせ(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を両方が含み、それにより、全ての突然変異が第1の若しくは第2のFc領域ポリペプチド内にあるか、又は1つ若しくは2つの突然変異が第1のFc領域ポリペプチド内にあり、1つ若しくは2つの突然変異が第2のFc領域ポリペプチド内にあり、又は
γ)第1の及び第2のFc領域ポリペプチドが両方とも、ヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスのものであり(すなわち、ヒト起源に由来し)、第1の及び第2のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A/H310A/H435A又はH310A/H433A/Y436A又はL251D/L314D/L432D(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含むか、又は第1のFc領域ポリペプチドにおいて突然変異の組み合わせI253A/H310A/H435Aを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて突然変異の組み合わせH310A/H433A/Y436A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)を含む、抗体。
【0427】
5.二重特異性抗体である、実施態様1~4のいずれか1つに係る抗体。
【0428】
6.二価抗体である、実施態様1~5のいずれか1つに係る抗体。
【0429】
7.
i)第1のFc領域ポリペプチドが、
- ヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- ヒトIgG2 Fc領域ポリペプチド、
- ヒトIgG3 Fc領域ポリペプチド、
- ヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235Aを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S354C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、S354C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329Gを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、P329Gを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329G、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329G、S354C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、P329G、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、P329G、S354C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235Eを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、P329Gを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S354C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、S354C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329Gを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329G、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329G、S354C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、P329G、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、P329G、S354C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異K392Dを有するヒトIgG1、IgG2又はIgG4、並びに
- 突然変異N392Dを有するヒトIgG3
を含む群から選択され、
及び
ii)第2のFc領域ポリペプチドが、
- ヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- ヒトIgG2 Fc領域ポリペプチド、
- ヒトIgG3 Fc領域ポリペプチド、
- ヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235Aを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S354C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異Y349C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、S354C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、Y349C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329Gを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、P329Gを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329G、S354C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329G、Y349C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、P329G、S354C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異L234A、L235A、P329G、Y349C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235Eを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、P329Gを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S354C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異Y349C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、S354C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、Y349C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329Gを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329G、S354C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異P329G、Y349C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、P329G、S354C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異S228P、L235E、P329G、Y349C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチド、
- 突然変異D399K、D356K及び/又はE357Kを有するヒトIgG1、並びに
- 突然変異D399K、E356K及び/又はE357Kを有するヒトIgG2、IgG3又はIgG4
を含む群から選択される、実施態様1~6のいずれか1つに係る抗体。
【0430】
8.
i)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号60、61、62、63、64、65、67、69、70、71、73、75、76、78、80、81、82及び84を含む群から選択されるアミノ酸配列を有し、
ii)第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号60、61、62、63、64、66、68、69、70、72、74、75、76、77、79、81、83及び85を含む群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施態様1~6のいずれか1つに係る抗体。
【0431】
9.
i)第1のFc領域ポリペプチドがヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドがヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
ii)第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235Aを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235Aを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
iii)第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235A、P329Gを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235A、P329Gを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
iv)第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235A、S354C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235A、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
v)第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235A、P329G、S354C、T366Wを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異L234A、L235A、P329G、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
vi)第1のFc領域ポリペプチドがヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドがヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
vii)第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異S228P、L235Eを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異S228P、L235Eを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
viii)第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異S228P、L235E、P329Gを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異S228P、L235E、P329Gを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
ix)第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異S228P、L235E、S354C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異S228P、L235E、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであるか、又は
x)第1のFc領域ポリペプチドが、突然変異S228P、L235E、P329G、S354C、T366Wを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドであり、第2のFc領域ポリペプチドが、突然変異S228P、L235E、P329G、Y349C、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG4 Fc領域ポリペプチドである、実施態様1~6のいずれか1つに係る抗体。
【0432】
10.
i)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号60のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号60のアミノ酸配列を有するか、又は
ii)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号64のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号64のアミノ酸配列を有するか、又は
iii)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号70のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号70のアミノ酸配列を有するか、又は
iv)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号68のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号67のアミノ酸配列を有するか、又は
v)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号74のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号73のアミノ酸配列を有するか、又は
vi)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号63のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号63のアミノ酸配列を有するか、又は
vii)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号75のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号75のアミノ酸配列を有するか、又は
viii)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号76のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号76のアミノ酸配列を有するか、又は
ix)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号79のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号80のアミノ酸配列を有するか、又は
x)第1のFc領域ポリペプチドが、配列番号85のアミノ酸配列を有し、第2のFc領域ポリペプチドが、配列番号84のアミノ酸配列を有する、実施態様1~6のいずれか1つに係る抗体。
【0433】
11.二重特異性抗体が、ヒトANG-2に特異的に結合する1つの結合特異性と、ヒトVEGFに特異的に結合する1つの結合特異性とを有する、実施態様5~10のいずれか1つに係る抗体。
【0434】
12.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含み、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号14のCDR3H領域、配列番号15のCDR2H領域及び配列番号16のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号17のCDR3L領域、配列番号18のCDR2L領域及び配列番号19のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号22のCDR3H領域、配列番号23のCDR2H領域及び配列番号24のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号25のCDR3L領域、配列番号26のCDR2L領域及び配列番号27のCDR1L領域を含む、実施態様5~11のいずれか1つに係る抗体。
【0435】
13.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含み、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号20のアミノ酸配列、及び軽鎖可変ドメインVLとして配列番号21のアミノ酸配列を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインVHとして配列番号28のアミノ酸配列、及び軽鎖可変ドメインVLとして配列番号29のアミノ酸配列を含む、実施態様5~12のいずれか1つに係る抗体。
【0436】
14.
a)VEGFに特異的に結合する第1の全長抗体の重鎖及び軽鎖、並びに
b)ANG-2に特異的に結合する第2の全長抗体の改変重鎖及び改変軽鎖であって、定常ドメインCL及びCH1が互いに交換されている改変重鎖及び改変軽鎖を含む、実施態様5~13のいずれか1つに係る抗体。
【0437】
15.
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号102のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号36のアミノ酸配列、並びに
b)第2の全長抗体の改変重鎖として配列番号103のアミノ酸配列、及び第2の全長抗体の改変軽鎖として配列番号37のアミノ酸配列を含む、実施態様14に係る抗体。
【0438】
16.
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号104のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号40のアミノ酸配列、並びに
b)第2の全長抗体の改変重鎖として配列番号105のアミノ酸配列、及び第2の全長抗体の改変軽鎖として配列番号41のアミノ酸配列を含む、実施態様14に係る抗体。
【0439】
17.
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号106のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号44のアミノ酸配列、並びに
b)第2の全長抗体の改変重鎖として配列番号107のアミノ酸配列、及び第2の全長抗体の改変軽鎖として配列番号45のアミノ酸配列を含む、実施態様14に係る抗体。
【0440】
18.
a)VEGFに特異的に結合する第1の全長抗体の重鎖及び軽鎖、並びに
b)ANG-2に特異的に結合する第2の全長抗体の重鎖及び軽鎖であって、該重鎖のN末端が、ペプチドリンカーを介して該軽鎖のC末端に連結されている重鎖及び軽鎖を含むことを特徴とする、実施態様5~13のいずれか1つに係る抗体。
【0441】
19.
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号108のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号48のアミノ酸配列、並びに
b)ペプチドリンカーを介して第2の全長抗体の軽鎖に連結された第2の全長抗体の重鎖として配列番号109のアミノ酸配列を含む、実施態様18に係る抗体。
【0442】
20.
a)第1の全長抗体の重鎖として配列番号110のアミノ酸配列、及び第1の全長抗体の軽鎖として配列番号51のアミノ酸配列、並びに
b)ペプチドリンカーを介して第2の全長抗体の軽鎖に連結された第2の全長抗体の重鎖として配列番号111のアミノ酸配列を含む、実施態様18に係る抗体。
【0443】
21.第2の全長抗体の重鎖及び軽鎖の抗体重鎖可変ドメイン(VH)及び抗体軽鎖可変ドメイン(VL)が、重鎖可変ドメインの44位と軽鎖可変ドメインの100位(ナンバリングは、KabatのEUインデックスナンバリングシステムに従う)との間のジスルフィド結合の導入によってジスルフィド安定化されている、実施態様18~20のいずれか1つに係る抗体。
【0444】
22.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、
配列番号34、35、36及び37のアミノ酸配列を含むか、又は
配列番号38、39、40及び41のアミノ酸配列を含むか、又は
配列番号42、43、44及び45のアミノ酸配列を含むか、又は
配列番号46、47及び48のアミノ酸配列を含むか、又は
配列番号49、50及び51のアミノ酸配列を含み、
及び
両方のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスのFc領域を含む、実施態様1~21のいずれか1つに係る抗体。
【0445】
23.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、
可変ドメインが、各可変ドメインにおいて、0個、1個、2個又は3個の突然変異を有する配列番号20、21、28及び29を含み、
両方のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスのFc領域を含む、実施態様1~21のいずれか1つに係る抗体。
【0446】
24.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、
配列番号20、21、28及び29のアミノ酸配列を含み、
及び
両方のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスのFc領域を含む、実施態様1~21のいずれか1つに係る抗体。
【0447】
25.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号14のCDR3H領域、配列番号15のCDR2H領域及び配列番号16のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号17のCDR3L領域、配列番号18のCDR2L領域及び配列番号19のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号22のCDR3H領域、配列番号23のCDR2H領域及び配列番号24のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号25のCDR3L領域、配列番号26のCDR2L領域及び配列番号27のCDR1L領域を含み、
iii)突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスの(ヒト起源に由来する)定常重鎖領域を含み、
可変ドメインが、配列番号20、21、28及び29に関して3個以下の突然変異を含む、実施態様1~21のいずれか1つに係る抗体。
【0448】
26.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、
i)VEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号14のCDR3H領域、配列番号15のCDR2H領域及び配列番号16のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号17のCDR3L領域、配列番号18のCDR2L領域及び配列番号19のCDR1L領域を含み、
ii)ANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインにおいて、配列番号22のCDR3H領域、配列番号23のCDR2H領域及び配列番号24のCDR1H領域を含み、軽鎖可変ドメインにおいて、配列番号25のCDR3L領域、配列番号26のCDR2L領域及び配列番号27のCDR1L領域を含み、
iii)両方のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスのFc領域を含む、
実施態様1~21のいずれか1つに係る抗体。
【0449】
27.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではなく、
両方のFc領域ポリペプチドにおいて、突然変異I253A、H310A及びH435A(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG1又はヒトIgG4サブクラスのFc領域を含む、実施態様1~21のいずれか1つに係る抗体。
【0450】
28.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体ではない、実施態様1~21のいずれか1つに係る抗体。
【0451】
29.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号102、配列番号103、配列番号36及び配列番号37のアミノ酸配列を含む、二重特異性二価抗体。
【0452】
30.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号104、配列番号105、配列番号40及び配列番号41のアミノ酸配列を含む、二重特異性二価抗体。
【0453】
31.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号106、配列番号107、配列番号44及び配列番号45のアミノ酸配列を含む、二重特異性二価抗体。
【0454】
32.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号108、配列番号109及び配列番号48のアミノ酸配列を含む、二重特異性二価抗体。
【0455】
33.ヒトVEGFに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、ヒトANG-2に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性二価抗体であって、配列番号110、配列番号111及び配列番号51のアミノ酸配列を含む、二重特異性二価抗体。
【0456】
34.ヒトFcRnに結合しない、実施態様1~33のいずれか1つに係る抗体。
【0457】
35.ブドウ球菌プロテインAに結合するか、又はブドウ球菌プロテインAに結合しない、実施態様1~34のいずれか1つに係る抗体。
【0458】
36.結合又は非結合が表面プラズモン共鳴によって決定される、実施態様34~35のいずれか1つに係る抗体。
【0459】
37.
- (マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックなマウスにおいて、硝子体内適用の96時間後に)(実施例6に記載されているアッセイで決定すると)Fc領域ポリペプチドにおいて突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して低い血清濃度を示し、及び/又は
- (マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックなマウスにおいて、右眼の硝子体内適用の96時間後に)(実施例6に記載されているアッセイで決定すると)Fc領域ポリペプチドにおいて突然変異を有しない対応する二重特異性抗体と比較して、類似(係数0.8~1.2)の全右眼溶解物中濃度を示す、実施態様1~36のいずれか1つに係る抗体。
【0460】
38.可溶性レセプターリガンドを眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体の使用。
【0461】
39.医薬として使用するため、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0462】
40.眼血管疾患を処置するのに使用するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0463】
41.1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体の使用。
【0464】
42.1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去するのに使用するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0465】
43.眼疾患、特に眼血管疾患を処置するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体の使用。
【0466】
44.1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体の使用。
【0467】
45.1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送するのに使用するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0468】
46.眼疾患を処置するのに使用するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0469】
47.可溶性レセプターリガンドを眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送するのに使用するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0470】
48.1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去するのに使用するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0471】
49.眼疾患、特に眼血管疾患を処置するのに使用するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0472】
50.1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送するのに使用するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体。
【0473】
51.眼血管疾患を有する個体を処置する方法であって、有効量の実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体を該個体に投与することを含む、方法。
【0474】
52.個体において可溶性レセプターリガンドを眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送するための方法であって、有効量の実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体を該個体に投与して、可溶性レセプターリガンドを眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送することを含む、方法。
【0475】
53.個体において1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去するための方法であって、有効量の実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体を該個体に投与して、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを眼から除去することを含む、方法。
【0476】
54.個体において1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送するための方法であって、有効量の実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体を該個体に投与して、1つ以上の可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔から血液循環に輸送することを含む、方法。
【0477】
55.個体において可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔又は眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送するための方法であって、有効量の実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体を該個体に投与して、可溶性レセプターリガンドを硝子体内腔又は眼から血液眼関門を通して血液循環に輸送することを含む、方法。
【0478】
56.実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体を含む、医薬製剤。
【0479】
57.眼血管疾患を処置するのに使用するための医薬製剤であって、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体を含む、医薬製剤。
【0480】
58.眼血管疾患を処置するための医薬を製造するための、実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体の使用。
【0481】
59.実施態様1~37のいずれか1つに係る抗体を、このような処置を必要とする患者に投与することによって、眼血管疾患を患っている患者を処置する方法。
【0482】
60.抗体が硝子体内適用によって投与される、実施態様55~56のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【0483】
61.硝子体内適用である、実施態様51~55及び59のいずれか一項に記載の投与。
【0484】
V.実施例
以下は、本明細書で報告される方法及び製剤の実施例である。上に示されている一般的な説明を考慮して、様々な他の実施態様を実施し得ると理解される。
【0485】
理解を明確にする目的のために、例示及び実施例によって上記本発明をいくらか詳細に説明したが、前記説明及び実施例は、本明細書で報告される範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0486】
方法
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)
N-Glycanase plus (Roche)0.5μL及びリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.1)を追加してタンパク質アリコート(50μg)を脱グリコシル化し、最終サンプル容量115μLを得た。混合物を37℃で18時間インキュベーションした。その後、還元及び変性のために、0.5M TCEP(Pierce)の4Mグアニジン*HCl(Pierce)溶液60μL及び8Mグアニジン*HCl 50μLを追加した。混合物を37℃で30分間インキュベーションした。サイズ排除クロマトグラフィー(Sepharose G-25、アイソクラチック、2%ギ酸を含む40%アセトニトリル)によって、サンプルを脱塩した。nano ESI source (TriVersa NanoMate, Advion)を備えるQ-TOF機器(maXis, Bruker)において、ESI質量スペクトル(+ve)を記録した。MSパラメータの設定は以下のとおりであった:転送:ファンネルRF、400Vpp;ISCIDエネルギー、0eV;多重極RF、400Vpp;四重極:イオンエネルギー、4.0eV;低質量、600m/z;ソース:乾性ガス、8L/分;乾性ガス温度、160℃;コリジョンセル:コリジョンエネルギー、10eV;コリジョンRF:2000Vpp;イオンクーラー:イオンクーラーRF、300Vpp;転送時間:120μs;プレプラスストレージ、10μs;スキャン範囲m/z600~2000。データ評価については、自社開発のソフトウェア(MassAnalyzer)を使用した。
【0487】
FcRn表面プラズモン共鳴(SPR)分析
BIAcore T100機器(BIAcore AB, Uppsala, Sweden)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって、FcRnに対する野生型抗体及び突然変異体の結合特性を分析した。このシステムは、分子相互作用の研究のために十分に確立されている。それは、リガンド/分析物結合の連続的なリアルタイムモニタリング、及びしたがって様々なアッセイ設定における動態パラメータの決定を可能にする。SPR技術は、金コーティングバイオセンサーチップの表面付近の屈折率の測定に基づくものである。屈折率の変化は、固定化リガンドと、溶液に注入された分析物との相互作用によって引き起こされる表面の質量変化を示す。分子が表面上の固定化リガンドに結合する場合には質量が増加し、解離の場合には質量が減少する。現在のアッセイでは、アミンカップリングを介して、FcRnレセプターをBIAcoreCM5バイオセンサーチップ(GE Healthcare Bioscience, Uppsala, Sweden)上に400反応単位(RU)レベルまで固定化した。ランニング緩衝液及び希釈緩衝液としてPBS、0.05%Tween-20(商標)(pH6.0)(GE Healthcare Bioscience)を用いて、アッセイを室温で行った。流速50μL/分で200nMの抗体サンプルを室温で注入した。会合時間は180秒間であり、解離段階には360秒間を要した。HBS-P(pH8.0)の短注入によって、チップ表面の再生を達成した。注入180秒後及び注入300秒後における生物学的反応シグナルの高さの比較によって、SPRデータの評価を実施した。対応するパラメータは、RU最大レベル(注入180秒後)及び後期安定性(注入終了300秒後)である。
【0488】
プロテインA表面プラズモン共鳴(SPR)分析
アッセイは、表面プラズモン共鳴分光法に基づくものである。プロテインAをSPRバイオセンサーの表面上に固定化する。サンプルをSPRスペクトロメータのフローセルに注入することによって、それが固定化プロテインAと複合体を形成して、センサーチップ表面上の質量が増加するため、反応がより高くなる(1RUを1pg/mmと定義する)。その後、サンプル-プロテインA複合体を溶解することによって、センサーチップを再生する。次いで、得られた反応を、反応単位(RU)のシグナルの高さ及び解離挙動について評価する。
【0489】
GE Healthcareのアミンカップリングキットを使用することによって、約3,500反応単位(RU)のプロテインA(20μg/mL)をCM5チップ(GE Healthcare)上にpH4.0でカップリングした。
【0490】
サンプル及びシステム緩衝液は、HBS-P+(0.01M HEPES、0.15M NaCl、滅菌ろ過0.005%界面活性剤P20、pH7.4)であった。フローセルの温度を25℃に設定し、サンプルコンパートメントの温度を12℃に設定した。このシステムをランニング緩衝液でプライミングした。次いで、サンプル構築物の5nM溶液を流速30μL/分で120秒間注入し、次いで300秒間の解離段階を行った。次いで、流速30μL/分でのグリシン-HCl(pH1.5)の2回の30秒間の長注入によって、センサーチップ表面を再生した。各サンプルを3回反復で測定した。
【0491】
【表9】
【0492】
本明細書で使用される「(前記)突然変異IHH-AAAを有する」という用語は、IgG1又はIgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異I253A(Ile253Ala)、H310A(His310Ala)及びH435A(His435Ala)の組み合わせを指し(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)、本明細書で使用される「(前記)突然変異HHY-AAAを有する」という用語は、IgG1又はIgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異H310A(His310Ala)、H433A(His433Ala)及びY436A(Tyr436Ala)の組み合わせを指し(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)、本明細書で使用される「(前記)突然変異P329G LALAを有する」という用語は、IgG1サブクラスの定常重鎖領域における突然変異L234A(Leu234Ala)、L235A(Leu235Ala)及びP329G(Pro329Gly)の組み合わせを指し(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)、本明細書で使用される「(前記)突然変異SPLEを有する」という用語は、IgG4サブクラスの定常重鎖領域における突然変異S228P(Ser228Pro)及びL235E(Leu235Glu)の組み合わせを指す(ナンバリングは、KabatのEUインデックスに従う)。
【0493】
【表10】
【0494】
一般
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に示されている。EUナンバリングにしたがって、抗体鎖のアミノ酸残基をナンバリング及び参照する(Edelman, G.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 63 (1969) 78-85; Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。
【0495】
リコンビナントDNA技術
Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989)に記載されているように、標準的な方法を使用してDNAを操作した。製造業者の説明書にしたがって、分子生物学的試薬を使用した。
【0496】
遺伝子合成
Geneart (Regensburg, Germany)の所定の仕様にしたがって、所望の遺伝子セグメントを順に整列した。
【0497】
DNA配列決定
MediGenomix GmbH (Martinsried, Germany)又はSequiServe GmbH (Vaterstetten, Germany)で実施した二本鎖配列決定によって、DNA配列を決定した。
【0498】
DNA及びタンパク質配列分析並びに配列データ管理
GCGの(Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin)ソフトウェアパッケージバージョン10.2及びInfomaxのPlasmid NT1 Advance suite version 8.0を配列の作成、マッピング、分析、アノテーション及び図示に使用した。
【0499】
発現プラスミド
記載されている抗体の発現のために、CMV-イントロンAプロモーターを用いる若しくは用いないcDNA構築、又はCMVプロモーターを用いるゲノム構築のいずれかに基づく(例えば、HEK293-F細胞における)一過性発現のための発現プラスミドを使用した。
【0500】
抗体遺伝子の転写単位は、以下の要素から構成されていた:
- 5’末端の固有の制限部位、
- ヒトサイトメガロウイルス由来の前初期エンハンサー及びプロモーター、
- cDNA構築の場合にはイントロンA配列、
- ヒト免疫グロブリン遺伝子の5’非翻訳領域、
- 免疫グロブリン重鎖シグナル配列をコードする核酸、
- cDNAとして、又は免疫グロブリンエクソン-イントロン構築によるゲノム構築における(野生型であるか又はドメイン交換された)ヒト抗体鎖をコードする核酸、
- ポリアデニル化シグナル配列を有する3’非翻訳領域、及び
- 3’末端の固有の制限部位。
【0501】
抗体発現カセットの他に、プラスミドは、以下のものを含有していた:
- E. coliにおけるこのプラスミドの複製を可能にする複製起点、
- E. coliにおけるアンピシリン耐性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子、及び
- 真核細胞における選択可能マーカーとしての、Mus musculus由来のジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子。
【0502】
抗体鎖をコードする核酸をPCR及び/又は遺伝子合成によって作製し、公知のリコンビナント方法及び技術によって、例えば、各プラスミドにおける固有の制限部位を使用して、一致する核酸セグメントを連結することによってアセンブルした。サブクローニングした核酸配列をDNA配列決定によって確認した。一過性トランスフェクションのために、トランスフォーメーションE. coli培養物(Nucleobond AX, Macherey-Nagel)からのプラスミド調製によって、より多量のプラスミドを調製した。
【0503】
細胞培養技術
Current Protocols in Cell Biology (2000), Bonifacino, J.S., Dasso, M., Harford, J.B., Lippincott-Schwartz, J. and Yamada, K.M. (eds.), John Wiley & Sons, Inc.に記載されているように、標準的な細胞培養技術を使用した。
【0504】
下記のように、懸濁液中で成長しているHEK29-F細胞における各発現プラスミドの一過性コトランスフェクションによって、二重特異性抗体を発現させた。
【0505】
実施例1
発現及び精製
HEK293-Fシステムにおける一過性トランスフェクション
製造業者の説明書にしたがってHEK293-Fシステム(Invitrogen)を使用して、(例えば、重鎖及び改変重鎖、並びに対応する軽鎖及び改変軽鎖をコードする)各プラスミドによる一過性トランスフェクションによって、単一特異性抗体及び二重特異性抗体を作製した。簡潔に言えば、振盪フラスコ又は撹拌発酵槽のいずれかの無血清FreeStyle(商標)293発現培地(Invitrogen)において、懸濁液中で成長しているHEK293-F細胞(Invitrogen)を、各発現プラスミド及び293fectin(商標)又はフェクチン(Invitrogen)の混合物でトランスフェクションした。2L振盪フラスコ(Corning)の場合、HEK293-F細胞を600mL中、細胞1*10個/mLの密度で播種し、120rpm、8%COでインキュベーションした。翌日、A)それぞれ重鎖又は改変重鎖及び対応する軽鎖をコードする全プラスミドDNA(1μg/mL)600μgを等モル比で含むOpti-MEM(Invitrogen)20mL並びにB)293フェクチン又はフェクチン(2μl/mL)1.2mLを含むOpti-MEM 20mlの混合物約42mLを、細胞約1.5*10個/mLの細胞密度で細胞にトランスフェクションした。グルコース消費に応じて、グルコース溶液を発酵過程中に追加した。5~10日後に、分泌抗体を含有する上清を回収し、上清から抗体を直接精製したか、又は上清を凍結保存した。
【0506】
精製
MabSelectSure-Sepharose(商標)(非IHH-AAA突然変異体の場合)(GE Healthcare, Sweden)又はKappaSelect-Agarose(IHH-AAA突然変異体の場合)(GE Healthcare, Sweden)を使用するアフィニティークロマトグラフィー、butyl-Sepharose (GE Healthcare, Sweden)を使用する疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びSuperdex 200 size exclusion (GE Healthcare, Sweden)クロマトグラフィーによって、細胞培養上清から二重特異性抗体を精製した。
【0507】
簡潔に言えば、PBS緩衝液(10mM NaHPO、1mM KHPO、137mM NaCl及び2.7mM KCl、pH7.4)で平衡化(非IHH-AAA突然変異及び野生型抗体)したMabSelectSuRe樹脂上に滅菌ろ過細胞培養上清を捕捉し、平衡緩衝液で洗浄し、25mMクエン酸ナトリウム(pH3.0)で溶出した。25mMトリス、50mM NaCl(pH7.2)で平衡化したKappaSelect樹脂上にIHH-AAA突然変異体を捕捉し、平衡緩衝液で洗浄し、25mMクエン酸ナトリウム(pH2.9)で溶出した。溶出した抗体画分をプールし、2Mトリス(pH9.0)で中和した。疎水性相互作用クロマトグラフィーのために、0.8M硫酸アンモニウムの最終濃度まで1.6M硫酸アンモニウム溶液を追加することによって抗体プールを調製し、酢酸を使用してpHをpH5.0に調整した。35mM酢酸ナトリウム、0.8M硫酸アンモニウム(pH5.0)でbutyl-Sepharose樹脂を平衡化した後、抗体を樹脂にアプライし、平衡緩衝液で洗浄し、35mM酢酸ナトリウム(pH5.0)の直線勾配で溶出した。(単一特異性又は二重特異性)抗体を含有する画分をプールし、20mMヒスチジン、140mM NaCl(pH6.0)で平衡化したSuperdex 200 26/60 GL (GE Healthcare, Sweden)カラムを使用してサイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。(単一特異性又は二重特異性)抗体を含有する画分をプールし、Vivaspin ultrafiltration devices (Sartorius Stedim Biotech S.A., France)を使用して必要濃度に濃縮し、-80℃で保存した。
【0508】
【表11】
【0509】
microfluidic Labchip technology (Caliper Life Science, USA)を使用するCE-SDSによる各精製工程後に、純度及び抗体の完全性を分析した。製造業者の説明書にしたがってHT Protein Express Reagent Kitを使用して、タンパク質溶液5μLをCE-SDS分析のために調製し、HT Protein Express Chipを使用してLabChip GXII systemで分析した。LabChip GX Softwareを使用して、データを分析した。
【0510】
【表12】
【0511】
25℃の2×PBS(20mM NaHPO、2mM KHPO、274mM NaCl及び5.4mM KCl、pH7.4)ランニング緩衝液中、Superdex 200 analytical size-exclusion column (GE Healthcare, Sweden)を使用して高速SECによって、抗体サンプルの凝集体含量を分析した。流速0.75mL/分でタンパク質25μgをカラムに注入し、50分間かけてアイソクラチックに溶出した。
【0512】
同様に、以下の収量で、<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体VEGFang2-0012及びVEGFang2-0201を調製及び精製した:
【0513】
【表13】
【0514】
また、IHH-AAA突然変異及びSPLE突然変異(配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45)を有する<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体<VEGF-ANG-2>CrossMAb IgG4、IHH-AAA突然変異(配列番号46、配列番号47、配列番号48)を有する<VEGF-ANG-2>OAscFab IgG1、IHH-AAA突然変異及びSPLE突然変異(配列番号49、配列番号50、配列番号51)を有する<VEGF-ANG-2>OAscFab IgG4、HHY-AAA突然変異及びP329G LALA突然変異(配列番号90、配列番号91、配列番号40、配列番号41)を有する<VEGF-ANG-2>CrossMab IgG1、HHY-AAA突然変異及びSPLE突然変異(配列番号92、配列番号93、配列番号44、配列番号45)を有する<VEGF-ANG-2>CrossMab IgG4、HHY-AAA突然変異(配列番号94、配列番号95、配列番号48)を有する<VEGF-ANG-2>OAscFab IgG1、及びHHY-AAA突然変異及びSPLE突然変異(配列番号96、配列番号97、配列番号51)を有する<VEGF-ANG-2>OAscFab IgG4、並びにさらに<IGF-1R>単一特異性抗体<IGF-1R>野生型(配列番号88、配列番号89)、IHH-AAA突然変異(配列番号88、配列番号90)を有する<IGF-1R>IgG1、YTE突然変異(配列番号88、配列番号91)を有する<IGF-1R>IgG1、KiH突然変異(配列番号88、配列番号92、配列番号93)を有する<IGF-1R>IgG1野生型、ホール鎖においてKiH突然変異及びIHH-AAA突然変異(配列番号88、配列番号94、配列番号95)を有する<IGF-1R>IgG1、ホール鎖においてKiH突然変異及びHHY-AAA突然変異(配列番号88、配列番号96、配列番号97)を有する<IGF-1R>IgG1、KiH突然変異及びYTE突然変異(配列番号88、配列番号98、配列番号99)を有する<IGF-1R>IgG1、KiH突然変異及びDDD突然変異(配列番号88、配列番号100、配列番号101)を有する<IGF-1R>IgG1、及びHHY-AAA突然変異(配列番号88、配列番号112)を有する<IGF-1R>IgG1を同様に調製及び精製することができる。
【0515】
実施例2
分析及び発展性
小規模DLSベース粘度測定
本質的には(He, F. et al., Analytical Biochemistry 399 (2009) 141-143)に記載されているように、粘度測定を実施した。簡潔に言えば、200mMコハク酸アルギニン(pH5.5)中、サンプルを様々なタンパク質濃度に濃縮してから、ポリスチレンラテックスビーズ(直径300nm)及びポリソルベート20(0.02%v/v)を追加した。0.4μmフィルタープレートを通した遠心分離によってサンプルをオプティカル384ウェルプレートに移し、パラフィンオイルで覆った。25℃で動的光散乱によって、ラテックスビーズの見掛けの直径を決定した。η=η0(rh/rh、0)(η:粘度;η0:水の粘度;rh:ラテックスビーズの見掛けの流体力学的半径;rh、0:水中におけるラテックスビーズの流体力学半径)として、溶液の粘度を計算することができる。
【0516】
同じ濃度における様々なサンプルの比較を可能にするために、Mooney方程式(方程式1)(Mooney, M., Colloid. Sci., 6 (1951) 162-170; Monkos, K., Biochem. Biophys. Acta 304 (1997) 1339)によって粘度-濃度データをフィッティングし、それに応じてデータを補間した。
【0517】
【数1】

(S:タンパク質の流体力学的相互作用パラメータ;K:自己込み合い因子;Φ:溶解タンパク質の体積分率)
【0518】
結果を図2に示す:Fc領域においてIHH-AAA突然変異を有するVEGFang2-0016は、全ての測定温度で、Fc領域においてIHH-AAA突然変異を有しないVEGFang2-0015と比較して低い粘度を示す。
【0519】
DLS凝集開始温度
20mMヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩、140mM NaCl(pH6.0)中、1mg/mLの濃度でサンプルを調製し、0.4μmフィルタープレートを通した遠心分離によってオプティカル384ウェルプレートに移し、パラフィンオイルで覆った。サンプルを0.05℃/分の速度で25℃から80℃に加熱しながら、動的光散乱によって流体力学半径を繰り返し測定した。凝集開始温度は、流体力学半径が増加し始める温度と定義する。結果を図3に示す。図3では、IHH-AAA突然変異を有しないVEGFang2-0015対Fc領域においてIHH-AAA突然変異を有するVEGFang2-0016の凝集を示す。VEGFang2-0016は、61℃の凝集開始温度を示したのに対して、IHH-AAA突然変異を有しないVEGFang2-0015は、60℃の開始温度を示した。
【0520】
DLS時間経過
20mMヒスチジン/ヒスチジン塩酸塩、140mM NaCl(pH6.0)中、1mg/mLの濃度でサンプルを調製し、0.4μmフィルタープレートを通した遠心分離によってオプティカル384ウェルプレートに移し、パラフィンオイルで覆った。最大145時間にわたってサンプルを50℃の一定温度に維持しながら、動的光散乱によって流体力学半径を繰り返し測定した。この実験では、ネイティブなアンフォールドタンパク質の高温での凝集傾向は、経時的な平均粒径の増加につながるであろう。凝集物は散乱光強度に過比例的に寄与するため、このDLSベースの方法は、凝集物に対して非常に高感度である。50℃(凝集開始温度付近の温度、上記を参照のこと)で145時間経過した後であっても、VEGFang2-0015及びVEGFang2-0016の両方について、わずか0.5nm未満の平均粒径の増加が見出された。
【0521】
100mg/mL、40℃での7日間保存
200mMコハク酸アルギニン(pH5.5)中、サンプルを100mg/mLの最終濃度に濃縮し、滅菌ろ過し、40℃で7日間静止保存した。保存前後において、サイズ排除クロマトグラフィーによって、高分子量種及び低分子量種(それぞれHMW及びLMW)の含量を決定した。保存サンプルと、調製直後に測定したサンプルとの間のHMW及びLMW含量の差異をそれぞれ「HMW増加」及び「LMW増加」として報告する。結果は以下の表及び図4に示されており、(IHH-AAA突然変異を有しない)VEGFang2-0015は、(IHH-AAA突然変異を有する)VEGFang2-0016と比較して、主ピークの大きな減少及び大きなHMW増加を示すことが示されている。驚くべきことに、(IHH-AAA突然変異を有する)VEGFang2-0016は、(IHH-AAA突然変異を有しない)VEGFang2-0015と比較して低い凝集傾向を示した。
【0522】
【表14】
【0523】
25℃でBIAcore(登録商標)T100又はT200機器(GE Healthcare)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって、<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体の機能分析を評価した。BIAcore(登録商標)システムは、分子相互作用の研究のために十分に確立されている。SPR技術は、金コーティングバイオセンサーチップの表面付近の屈折率の測定に基づくものである。屈折率の変化は、固定化リガンドと、溶液に注入された分析物との相互作用によって引き起こされる表面の質量変化を示す。分子が表面上の固定化リガンドに結合する場合には質量が増加し、反対に、分析物が固定化リガンドから解離する場合には質量が減少する(複合体の解離を反映)。SPRは、リガンド/分析物結合の連続的なリアルタイムモニタリング、並びにしたがって会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)及び平衡定数(KD)の決定を可能にする。
【0524】
実施例3
VEGF、ANG-2、FcガンマR及びFcRnに対する結合
種交差反応性の評価を含むVEGFアイソフォームの動態親和性
GE Healthcareが供給するアミンカップリングキットを使用することによって、捕捉システム(10μg/mLヤギ抗ヒトF(ab)’;オーダーコード:28958325;GE Healthcare Bio-Sciences AB, Sweden)約12,000共鳴単位(RU)をpH5.0でCM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)上にカップリングした。サンプル及びシステム緩衝液は、PBS-T(0.05%Tween-20(商標)を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)(pH7.4)であった。フローセルを25℃に設定し、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニング緩衝液で2回プライミングした。50nM溶液を流量5μL/分で30秒間注入することによって、二重特異性抗体を捕捉した。1:3希釈の300nMから開始して、様々な濃度のヒトhVEGF121、マウスmVEGF120又はラットrVEGF164溶液を流量30μL/分で300秒間注入することによって、会合を測定した。解離段階を最大1200秒間モニタリングし、サンプル溶液からランニング緩衝液に交換することによってトリガーした。流速30μL/分のグリシン溶液(pH2.1)で60秒間洗浄することによって、表面を再生した。ヤギ抗ヒトF(ab’)表面から得られた反応を減算することによって、バルク屈折率の差異を補正した。ブランク注入も減算した(=二重参照)。見掛けのK及び他の動態パラメータの計算のために、Langmuir1:1モデルを使用した。結果を以下に示す。
【0525】
種交差反応性の評価を含むANG-2溶液の親和性
溶液の親和性では、平衡混合物中の遊離相互作用パートナーの濃度を決定することによって、相互作用の親和性を測定する。溶液の親和性アッセイは、一定濃度に維持した<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体と、様々な濃度のリガンド(=ANG-2)との混合を含む。GE Healthcareが供給するアミンカップリングキットを使用して、最大可能共鳴単位(例えば、17,000共鳴単位(RU))の抗体をpH5.0でCM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)表面上に固定化した。サンプル及びシステム緩衝液は、HBS-P(pH7.4)であった。フローセルを25℃に設定し、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニング緩衝液で2回プライミングした。較正曲線を作成するために、固定化VEGF-ANG-2>二重特異性抗体を含有するBIAcoreフローセルに漸増濃度のANG-2を注入した。結合したANG-2の量を共鳴単位(RU)として決定し、濃度に対してプロットした。各リガンドの溶液(VEGF-ANG-2>二重特異性抗体については、0~200nMの11種の濃度)を10nM ANG-2と共にインキュベーションし、室温で平衡状態にした。既知量のANG-2を用いて溶液の反応を測定する前後に作成した較正曲線から、遊離ANG-2濃度を決定した。遊離ANG-2濃度をy軸として使用し、阻害用抗体の使用濃度をx軸として使用したモデル201を使用するXLfit4 (IDBS Software)を用いて、4パラメータフィッティングを設定した。この曲線の変曲点を決定することによって、親和性を計算した。流速30μL/分の0.85%HPO溶液による30秒間の洗浄を1回行うことによって、表面を再生した。ブランクカップリング表面から得られた反応を減算することによって、バルク屈折率の差異を補正した。結果を以下に示す。
【0526】
FcRnの定常状態親和性
FcRn測定のために、定常状態親和性を使用して、互いに対する二重特異性抗体を比較した。ヒトFcRnをカップリング緩衝液(10μg/mL、酢酸Na pH5.0)中に希釈し、最終反応200RUのBIAcoreウィザードを使用してターゲティング固定化手順によって、C1チップ(GE Healthcare BR-1005-35)上に固定化した。フローセルを25℃に設定し、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニング緩衝液で2回プライミングした。サンプル及びシステム緩衝液は、PBS-T(0.05%Tween-20(商標)を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)(pH6.0)であった。各抗体の様々なIgG濃度を評価するために、62.5nM、125nM、250nM及び500nMの濃度を調製した。流速を30μL/分に設定し、180秒間の会合時間を選択して様々なサンプルをチップ表面上に連続注入した。PBS-T(pH8)を流速30μL/分で60秒間注入することによって、表面を再生した。ブランク表面から得られた反応を減算することによって、バルク屈折率の差異を補正した。緩衝液の注入も減算した(=二重参照)。定常状態親和性を計算するために、BIA評価ソフトウェアの方法を使用した。簡潔に言えば、分析濃度に対してRU値をプロットして、用量反応曲線を作成した。2パラメータフィッティングに基づいて、上側漸近線を計算して、半最大RU値及びしたがって親和性を決定することができた。結果を図5及び以下の表に示す。同様に、カニクイザル、マウス及びウサギFcRnに対する親和性を決定することができる。
【0527】
FcガンマRIIIa測定
FcガンマRIIIa測定のために、直接結合アッセイを使用した。GE Healthcareが供給するアミンカップリングキットを使用することによって、捕捉システム(1μg/mL Penta-His;Quiagen)約3,000共鳴単位(RU)をpH5.0でCM5チップ(GE Healthcare BR-1005-30)上にカップリングした。サンプル及びシステム緩衝液は、HBS-P+(pH7.4)であった。フローセルを25℃に設定し、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニング緩衝液で2回プライミングした。100nM溶液を流量5μL/分で60秒間注入することによって、FcガンマRIIIa-His-レセプターを捕捉した。100nM二重特異性抗体又は単一特異性コントロール抗体(IgG1サブクラス及びIgG4サブクラス抗体のための抗ジゴキシゲニン抗体(抗Dig))を流量30μL/分で180秒間注入することによって、結合を測定した。流速30μL/分のグリシン溶液(pH2.1)による120秒間の洗浄によって、表面を再生した。FcガンマRIIIa結合はLangmuir1:1モデルと異なるため、このアッセイを用いて結合/非結合のみを決定した。同様に、FcガンマRIa及びFcガンマRIIa結合を決定することができる。結果は図6に示されており、突然変異P329G LALAの導入によって、FcガンマRIIIaに対するより多くの結合を検出することはできなかったということである。
【0528】
<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体に対するVEGF及びANG-2独立結合の評価
GE Healthcareが供給するアミンカップリングキットを使用することによって、捕捉システム(10μg/mLヤギ抗ヒトIgG;GE Healthcare Bio-Sciences AB, Sweden)約3,500共鳴単位(RU)をpH5.0でCM4チップ(GE Healthcare BR-1005-34)上にカップリングした。サンプル及びシステム緩衝液は、PBS-T(0.05%Tween-20(商標)を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)(pH7.4)であった。フローセルの温度を25℃に設定し、サンプルブロックの温度を12℃に設定した。捕捉前に、ランニング緩衝液でフローセルを2回プライミングした。
【0529】
10nM溶液を流量5μL/分で60秒間注入することによって、二重特異性抗体を捕捉した。逐次に又は同時に追加した各リガンド(流量30μL/分)に対する活性結合能を決定することによって、二重特異性抗体に対する各リガンドの独立結合を分析した:
1.濃度200nMのヒトVEGFを180秒間注入(抗原の単一結合を同定する)。
2.濃度100nMのヒトANG-2を180秒間注入(抗原の単一結合を同定する)。
3.濃度200nMのヒトVEGFを180秒間注入し、次いで、濃度100nMのヒトANG-2をさらに180秒間注入(VEGFの存在下におけるANG-2の結合を同定する)。
4.濃度100nMのヒトANG-2を180秒間注入し、次いで、濃度200nMのヒトVEGFをさらに注入(ANG-2の存在下におけるVEGFの結合を同定する)。
5.濃度200nMのヒトVEGFの及び濃度100nMのヒトANG-2を180秒間同時注入(VEGF及びANG-2の結合を同時に同定する)。
【0530】
流速30μL/分の3M MgCl溶液による60秒間の洗浄によって、表面を再生した。ヤギ抗ヒトIgG表面から得られた反応を減算することによって、バルク屈折率の差異を補正した。
【0531】
アプローチ3、4及び5の得られた最終シグナルが、アプローチ1及び2の個々の最終シグナルの合計と同等又は類似である場合、二重特異性抗体は相互に独立して両方の抗原に結合することができた。結果は以下の表に示されており、両方の抗体(VEGFang2-0016、VEGFang2-0012)が、相互に独立してVEGF及びANG-2に結合することができることが示された。
【0532】
<VEGF-ANG-2>二特異性抗体に対するVEGF及びANG-2の同時結合の評価
第1に、GE Healthcareが供給するアミンカップリングキットを使用することによって、VEGF(20μg/mL)約1,600共鳴単位(RU)をpH5.0でCM4チップ(GE Healthcare BR-1005-34)上にカップリングした。サンプル及びシステム緩衝液は、PBS-T(0.05%Tween-20(商標)を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水)(pH7.4)であった。フローセルを25℃に設定し、サンプルブロックを12℃に設定し、ランニング緩衝液で2回プライミングした。第2に、二重特異性抗体の50nM溶液を流量30μL/分で180秒間注入した。第3に、hANG-2を流量30μL/分で180秒間注入した。hANG-2の結合反応は、VEGFに結合した二重特異性抗体の量に依存し、同時結合を示す。流速30μL/分の0.85%HPO溶液による60秒間の洗浄によって、表面を再生した。先のVEGF結合<VEGF-ANG-2>二重特異的抗体に対するhANG-2のさらなる特異的結合シグナルによって、同時結合は示される。二重特異性抗体VEGFang2-0015及びVEGFang2-0016の両方について、<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体に対するVEGF及びANG-2の同時結合を検出することができた(データは示さず)。
【0533】
【表15】
【0534】
【表16】
【0535】
【表17】
【0536】
【表18】
【0537】
【表19】
【0538】
実施例4
質量分析
このセクションでは、正確なアセンブリを重視した<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体の特性決定を説明する。脱グリコシル化した<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体、インタクトな<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体又はIdeS消化(S. pyogenesのIgG分解酵素)した<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって、予想一次構造を確認した。精製抗体100μgを100mmol/L NaHPO/NaHPO(pH7.1)中、IdeSプロテアーゼ(Fabricator)2μgと共に37℃で5時間インキュベーションして、IdeS消化を実施した。続いて、100mmol/L NaHPO/NaHPO(pH7.1)中、NグリコシダーゼF、ノイラミニダーゼ及びO-グリコシダーゼ(Roche)を用いて抗体を37℃、タンパク質濃度1mg/mLで最大16時間脱グリコシル化し、続いて、Sephadex G25 column (GE Healthcare)のHPLCによって脱塩した。TriVersa NanoMate source (Advion)を備えるmaXis 4G UHR-QTOF MS system (Bruker Daltonik)におけるESI-MSによって、全質量を決定した。
【0539】
IdeS消化した分子、脱グリコシル化した分子(以下の表)、又はインタクトな分子、脱グリコシル化した分子(以下の表)について得られた質量は、2本の異なる軽鎖LCANG-2及びLCLucentisと、2本の異なる重鎖HCANG-2及びHCLucentisとからなる<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体のアミノ酸配列から推定される予測質量に対応する。
【0540】
【表20】
【0541】
【表21】
【0542】
実施例5
FcRnクロマトグラフィー
ストレプトアビジンセファロースに対するカップリング:
1グラムストレプトアビジンセファロース(GE Healthcare)をビオチン化透析レセプターに追加し、振盪しながら2時間インキュベーションした。レセプター誘導化セファロースを1 mL XK column (GE Healthcare)に充填した。
【0543】
FcRnアフィニティーカラムを使用したクロマトグラフィー:
条件:
カラム寸法:50mm×5mm
床高さ:5cm
ローディング:サンプル50μg
平衡緩衝液:150mM NaClを含む20mM MES(pH5.5に調整)
溶出緩衝液:150mM NaClを含む20mMトリス/HCl(pH8.8に調整)
溶出:7.5CVで平衡化緩衝液、30CVで100%溶出緩衝液に、10CVで溶出緩衝液
【0544】
ヒトFcRnアフィニティーカラムクロマトグラフィー
以下の表において、ヒトFcRnを含むアフィニティーカラム上での<VEGF-ANG-2>二重特異性抗体の保持時間を示す。上記条件を使用して、データを得た。
【0545】
【表22】
【0546】
実施例6
IHH-AAA突然変異を有する抗体の薬物動態(PK)特性
ヒトFcRnについてトランスジェニックなFcRnマウスのPKデータ
生活相において:
本研究には、マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックな雌性C57BL/6Jマウス(バックグラウンド)(huFcRn、276-/tg系統)が含まれていた。
【0547】
パート1
2μL/動物の適切な溶液(すなわち、化合物21μg/動物((IHH-AAA突然変異を有しない)VEGFAng2-0015)又は化合物23.6μg/動物((IHH-AAA突然変異を有する)VEGFAng2-0016))を全てのマウスの右眼に1回硝子体内注射した。
【0548】
マウスを2つのグループ(それぞれ動物6匹)に分けた。グループ1からは投与1時間後、24時間後及び96時間後において、並びにグループ2からは投与7時間後、48時間後及び168時間後において、血液サンプルを採取した。
【0549】
World Precision Instruments, Inc., Berlin, Germanyのナノリットル注射用NanoFil Microsyringe systemを使用することによって、マウス右眼の硝子体への注射を実施した。2.5%イソフルランでマウスを麻酔し、マウスの眼の可視化のために、倍率40倍及びLeica KL 2500 LCDライトニングのリングライトと共にLeica MZFL 3顕微鏡を使用した。続いて、35ゲージ針を使用して、化合物2μLを注射した。
【0550】
血清中の化合物レベルを決定するために、各動物の対側眼の眼球後静脈叢を介して血液を採取した。
【0551】
室温で1時間経過後、4℃で3分間遠心分離(9,300×g)することによって、血液から血清サンプル少なくとも50μLを得た。遠心分離直後に血清サンプルを凍結し、分析まで-80℃で凍結保存した。処置96時間後にグループ1の動物の処置眼を単離し、処置168時間後にグループ2の動物の処置眼を単離した。サンプルを分析まで-80℃で凍結保存した。
【0552】
パート2
200μL/動物の適切な溶液(すなわち、化合物21μg/動物((IHH-AAA突然変異を有しない)VEGFAng2-0015)又は化合物23.6μg/動物((IHH-AAA突然変異を有する)VEGFAng2-0016))を全てのマウスに尾静脈を介して1回静脈内注射した。
【0553】
マウスを2つのグループ(それぞれ動物5匹)に分けた。グループ1からは投与1時間後、24時間後及び96時間後において、並びにグループ2からは投与7時間後、48時間後及び168時間後において、血液サンプルを採取した。血清中の化合物レベルを決定するために、各動物の眼球後静脈叢を介して血液を採取した。
【0554】
室温で1時間経過後、4℃で3分間遠心分離(9,300×g)することによって、血液から血清サンプル少なくとも50μLを得た。遠心分離直後に血清サンプルを凍結し、分析まで-80℃で凍結保存した。
【0555】
全眼溶解物の調製(マウス)
実験動物の眼全体の物理化学的な分解によって、眼溶解物を得た。機械的破壊のために、円錐形の底部を有する1.5mLマイクロバイアルに各眼を移した。凍結解凍後、細胞洗浄緩衝液1mL(Bio-Rad, Bio-Plex Cell Lysis Kit, Cat. No. 171-304011)で眼を1回洗浄した。次の工程では、新たに調製した細胞溶解緩衝液500μLを追加し、1.5mL組織粉砕乳棒(Kimble Chase, 1.5 mL pestle, Art. No. 749521-1500)を使用して眼を粉砕した。次いで、混合物を5回凍結解凍し、再度粉砕した。残りの組織から溶解物を分離するために、サンプルを4,500gで4分間遠心分離した。遠心分離後、上清を回収し、定量ELISAでのさらなる分析まで-20℃で保存した。
【0556】
分析
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、マウス血清及び眼溶解物中の<VEGF-ANG-2>抗体の濃度を決定した。
【0557】
マウス血清サンプル及び眼溶解物中の<VEGF-ANG-2>抗体を定量するために、捕捉抗体及び検出抗体として使用したビオチン化及びジゴキシゲニン化モノクローナル抗体を用いる標準的な固相シリアルサンドイッチイムノアッセイを実施した。分析物の二重特異性の完全性を検証するために、ビオチン化捕捉抗体はVEGF結合部位を認識するのに対して、ジゴキシゲニン化検出抗体は分析物のANG-2結合部位に結合するであろう。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼをカップリングした抗ジゴキシゲニン抗体を用いて、ストレプトアビジンコーティングマイクロタイタープレート(SA-MTP)の固相上の捕捉抗体、分析物及び検出抗体の結合免疫複合体を検出した。SA-MTPから未結合の物質を洗浄し、ABTS基質を追加した後、得られたシグナルは、SA-MTPの固相上に結合した分析物の量に比例していた。次いで、平行して分析した標準物質を参照して、サンプルの測定シグナルを濃度に変換することによって、定量を行った。
【0558】
最初の工程では、500rpmのMTPシェイカー上において、濃度1μg/mLのビオチン化捕捉抗体溶液(抗イディオタイプ抗体mAb<Id<VEGF>>M-2.45.51-IgG-Bi(DDS))を1ウェル当たり100μL用いてSA-MTPを1時間コーティングした。その間に、標準物質、QC-サンプル及びサンプルを調製した。標準物質及びQC-サンプルを2%血清マトリックスに希釈した;シグナルが標準物質の直線範囲内になるまでサンプルを希釈した。
【0559】
捕捉抗体でSA-MTPをコーティングした後、1ウェル当たり洗浄緩衝液300μLでプレートを3回洗浄した。続いて、1ウェル当たり標準物質、QC-サンプル及びサンプル100μLをSA-MTP上にピペッティングし、500rpmで再度1時間インキュベーションした。この時点で、分析物は、その抗VEGF結合部位によって捕捉抗体を介してSA-MTPの固相に結合していた。インキュベーションし、プレートを洗浄することによって未結合の分析物を除去した後、濃度250ng/mLの第1の検出抗体(抗イディオタイプ抗体mAb<Id-<ANG-2>>M-2.6.81-IgG-Dig(XOSu))をSA-MTPに1ウェル当たり100μL追加した。再度、500rpmのシェイカー上において、プレートを1時間インキュベーションした。洗浄後、濃度50mU/mLの第2の検出抗体(pAb<ジゴキシゲニン>S-Fab-POD(ポリ))をSA-MTPのウェルに1ウェル当たり100μL追加し、プレートを500rpmで再度1時間インキュベーションした。過剰の検出抗体を除去する最終洗浄工程の後、1ウェル当たり基質(ABTS)100μLを追加した。抗体-酵素コンジュゲートは、ABTS(登録商標)基質の発色反応を触媒する。次いで、ELISAリーダーによって、シグナルを波長405nm(参照波長:490nm([405/490]nm))で測定した。
【0560】
薬物動態評価
薬物動態評価プログラムWinNonlin(商標)(Pharsight)(バージョン5.2.1)を使用して非コンパートメント分析によって、薬物動態パラメータを計算した。
【0561】
結果:
A)血清濃度
血清濃度の結果を以下の表及び図7B~7Cに示す。
【0562】
【表23】
【0563】
【表24】
【0564】
【表25】
【0565】
【表26】
【0566】
結果:
B)左眼及び右眼の眼溶解物中濃度
眼溶解物中濃度の結果を以下の表及び図7D~7Eに示す。
【0567】
【表27】
【0568】
【表28】
【0569】
【表29】
【0570】
【表30】
【0571】
結果の概要:
硝子体内適用後、(IHH-AAA突然変異を有する)本明細書で報告される二重特異性<VEGF-ANG-2>抗体VEGFang2-0016は、IHH-AAA突然変異を有しない二重特異性<VEGF-ANG-2>抗体VEGFang2-0015と比較して、類似の眼溶解物中濃度(96時間後及び168時間後)を示す。
【0572】
また加えて、硝子体内適用後、(IHH-AAA突然変異を有する)本明細書で報告される二重特異性<VEGF-ANG-2>抗体VEGFang2-0016は、IHH-AAA突然変異を有しない二重特異性<VEGF-ANG-2>抗体VEGFang2-0015と比較して、速いクリアランス及び短い血清半減期を示す。
【0573】
実施例7
マウス角膜マイクロポケット血管新生アッセイ
配列番号20及び21の各VEGF結合VH及びVLと、配列番号28及び29のANG-2結合VH及びVLとを有する二重特異性<VEGF-ANG-2>抗体の、in vivoにおけるVEGF誘導性血管新生に対する抗血管新生効果を試験するために、マウス角膜マイクロポケット血管新生アッセイを実施した。このアッセイでは、角膜縁血管に対して一定距離の場所において、VEGF浸漬Nylafloディスクを無血管角膜のポケットに移植した。血管は、発達中のVEGF勾配に向かって角膜に直ぐに成長する。8~10週齢の雌性Balb/cマウスは、Charles River, Sulzfeld, Germanyから購入した。Rogers, M.S., et al., Nat. Protoc. 2 (2007) 2545-2550によって記載されている方法にしたがって、プロトコールを改変した。簡潔に言えば、麻酔マウスにおいて、手術用ナイフ及び鋭いピンセットを使用して、角膜縁から角膜上部までの約1mmの場所に、幅約500μmのマイクロポケットを顕微鏡下で調製した。直径0.6mmのディスク(Nylaflo(登録商標), Pall Corporation, Michigan)を移植し、移植領域の表面を滑らかにした。対応する成長因子又はビヒクル中で、ディスクを少なくとも30分間インキュベーションした。3日間、5日間及び7日間後において(又はあるいは、3日間、5日間又は7日間後にのみ)、眼を撮影し、血管反応を測定した。総角膜面積当たりの新たな血管面積の割合を計算することによって、アッセイを定量した。
【0574】
VEGF 300ng又はPBS(コントロールとして)でディスクをロードし、7日間移植した。3日目、5日目及び/又は7日目に、角膜縁からディスクまでの血管の伸長を経時的にモニタリングした。in vivoにおけるVEGF誘導性血管新生に対する抗血管新生効果を試験するために、ディスク移植の1日前に、抗体を用量10mg/kgで静脈内投与した(静脈内適用であるため、(IHH-AAA突然変異を有しない)血清安定VEGFang2-0015(これは、IHH-AAA突然変異の点においてのみVEGFang2-0016と異なり、有効性を媒介するための同じ抗VEGF及び抗ANG-2 VH及びVLを有する)を代わりに使用した)。コントロール群の動物にはビヒクルを投与する。適用容量は、10mL/kgであった。
【0575】
実施例8
HHY-AAA突然変異を有する抗体の薬物動態(PK)特性
ヒトFcRnについてトランスジェニックなFcRnマウスのPKデータ
生活相において:
本研究には、マウスFcRn欠損性であるが、ヒトFcRnについてヘミ接合トランスジェニックな雌性C57BL/6Jマウス(バックグラウンド)(huFcRn、276-/tg系統)が含まれていた。
【0576】
パート1:
IGF-1R0033、IGF-1R0035、IGF-1R0045の適切な溶液(すなわち、化合物22.2μg/動物のIGF-1R0033、化合物24.4μg/動物のIGF-1R0035、化合物32.0μg/動物のIGF-1R及び化合物32.0μg/動物のIGF-1R0045)を全てのマウスの右眼に1回硝子体内注射した。
【0577】
13匹のマウスを2つのグループ(それぞれ動物6匹及び7匹)に分けた。グループ1からは投与2時間後、24時間後及び96時間後において、並びにグループ2からは投与7時間後、48時間後及び168時間後において、血液サンプルを採取する。
【0578】
World Precision Instruments, Inc., Berlin, Germanyのナノリットル注射用NanoFil Microsyringe systemを使用することによって、マウス右眼の硝子体への注射を実施した。2.5%イソフルランでマウスを麻酔し、マウスの眼の可視化のために、倍率40倍及びLeica KL 2500 LCDライトニングのリングライトと共にLeica MZFL 3顕微鏡を使用した。続いて、35ゲージ針を使用して、化合物2μLを注射した。
【0579】
血清中の化合物レベルを決定するために、各動物の対側眼の眼球後静脈叢を介して血液を採取した。
【0580】
室温で1時間経過後、4℃で3分間遠心分離(9,300×g)することによって、血液から血清サンプル少なくとも50μLを得た。遠心分離直後に血清サンプルを凍結し、分析まで-80℃で凍結保存した。処置96時間後にグループ1の動物の処置眼を単離し、処置168時間後にグループ2の動物の処置眼を単離した。サンプルを分析まで-80℃で凍結保存した。
【0581】
パート2
IGF-1R0033、IGF-1R0035、IGF-1R0045の適切な溶液(すなわち、化合物22.2μg/動物のIGF-1R0033、化合物24.4μg/動物のIGF-1R0035、化合物32.0μg/動物のIGF-1R及び化合物32.0μg/動物のIGF-1R0045)を全てのマウスに尾静脈を介して1回静脈内注射した。
【0582】
12匹のマウスを2つのグループ(それぞれ動物6匹)に分けた。グループ1からは投与1時間後、24時間後及び96時間後において、並びにグループ2からは投与7時間後、48時間後及び168時間後において、血液サンプルを採取する。血清中の化合物レベルを決定するために、各動物の眼球後静脈叢を介して血液を採取した。
【0583】
室温で1時間経過後、4℃で3分間遠心分離(9,300×g)することによって、血液から血清サンプル少なくとも50μLを得た。遠心分離直後に血清サンプルを凍結し、分析まで-80℃で凍結保存した。
【0584】
細胞溶解緩衝液の調製
ファクター1 100μL、ファクター2 50μL及び細胞溶解緩衝液24.73mL(これらは全て、Bio-Rad, Bio-Plex Cell Lysis Kit, Cat. No. 171-304011のものである)を慎重に混合し、PMSF溶液125μL(DMSO 2.0mL中で希釈したフェニルメチルスルホニルフルオライド174.4mg)を追加した。
【0585】
全眼溶解物の調製(マウス)
実験動物の眼全体の物理化学的な分解によって、眼溶解物を得た。機械的破壊のために、円錐形の底部を有する1.5mLマイクロバイアルに各眼を移した。解凍後、細胞洗浄緩衝液1mL(Bio-Rad, Bio-Plex Cell Lysis Kit, Cat. No. 171-304011)で眼を1回洗浄した。次の工程では、新たに調製した細胞溶解緩衝液500μLを追加し、1.5mL組織粉砕乳棒(VWR Int., Art. No. 431-0098)を使用して眼を粉砕した。次いで、混合物を5回凍結解凍し、再度粉砕した。残りの組織から溶解物を分離するために、サンプルを4500×gで4分間遠心分離した。遠心分離後、上清を回収し、定量ELISAでのさらなる分析まで-20℃で保存した。
【0586】
分析(血清)
マウス血清サンプル中の抗体を定量するために、捕捉抗体及び検出抗体としてビオチン化及びジゴキシゲニン化モノクローナル抗体を用いる標準的な固相シリアルサンドイッチイムノアッセイを実施する。血清は、全血液サンプル容量の約50%を占める。
【0587】
ヒトIgG(Fab)特異的酵素結合免疫吸着アッセイによって、マウス血清サンプル中のより詳細な抗体濃度を決定した。アッセイ緩衝液で希釈したビオチン化抗ヒトFab(カッパ)モノクローナル抗体M-1.7.10-IgG(捕捉抗体として)と共にストレプトアビジンコーティングマイクロタイタープレートを撹拌しながら室温で1時間インキュベーションした。リン酸緩衝生理食塩水-ポリソルベート20(Tween20)で3回洗浄した後、様々な希釈の血清サンプルを追加し、次いで、2回目のインキュベーションを室温で1時間行った。3回反復洗浄した後、続いて、ジゴキシゲニンコンジュゲート抗ヒトFab(CH1)モノクローナル抗体M-1.19.31-IgGと共にインキュベーションし、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗ジゴキシゲニン抗体と共にインキュベーションすることによって、結合した抗体を検出した。ABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸);Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)をHRP基質として使用して、発色反応生成物を形成した。得られた反応生成物の吸光度を405nm(ABTS;参照波長;490nm)で読んだ。
【0588】
全てのサンプル、ポジティブコントロールサンプル及びネガティブコントロールサンプルを繰り返して分析し、規定の抗体標準に対して較正した。
【0589】
分析(眼溶解物)
非GLP条件下でELECSYS(登録商標)機器プラットフォーム(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に基づく適格な電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)法を使用して、マウス眼溶解物サンプル中の分析物の濃度を決定した。
【0590】
非希釈上清(眼溶解物)を捕捉分子及び検出分子と共に37℃で9分間インキュベーションした。ビオチン化抗ヒトFab(カッパ)モノクローナル抗体M-1.7.10-IgGを捕捉分子として使用し、ルテニウム(II)トリス(ビスピリジル) 2+標識抗ヒト-Fab(CH1)モノクローナル抗体M-1.19.31-IgGを検出に使用した。ストレプトアビジンコーティング磁性微粒子を追加し、37℃でさらに9分間インキュベーションして、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用による予形成免疫複合体の結合を可能にした。微粒子を電極上に磁気的に補足し、共反応物質トリプロピルアミン(TPA)を使用して化学発光シグナルを発生させた。光電子増倍管検出器によって、得られたシグナルを測定した。
【0591】
【表31】
【0592】
【表32】
【0593】
【表33】
【0594】
結果:
A)血清濃度
血清濃度の結果を以下の表及び図17に示す。
【0595】
【表34】
【0596】
【表35】
【0597】
【表36】
【0598】
【表37】
【0599】
結果:
B)左眼及び右眼の眼溶解物中濃度
眼溶解物中濃度の結果を以下の表及び図18~20に示す。
【0600】
【表38】
【0601】
【表39】
【0602】
【表40】
【0603】
【表41】
【0604】
【表42】
【0605】
【表43】
【0606】
【表44】
【0607】
結果の概要:
硝子体内適用後、(片側又は両側のHHY-AAA突然変異を有する)本明細書で報告される抗IGF-1R抗体0035及び0045は、HHY-AAA突然変異を有しない抗IGF-1R抗体(IGF-1R0033)と比較して、類似の眼溶解物中濃度(96時間後及び168時間後)を示す。
【0608】
また加えて、硝子体内適用後、(片側又は両側のHHY-AAA突然変異を有する)本明細書で報告される抗IGF-1R抗体0035及び0045は、HHY-AAA突然変異を有しない抗IGF-1R抗体(IGF-1R0033)と比較して、速いクリアランス及び短い血清半減期を示す。
【0609】
理解を明確にする目的のために、例示及び実施例によって上記本発明をいくらか詳細に説明したが、前記説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
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