(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】断熱扉及びこれを備える貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20250303BHJP
F25D 23/08 20060101ALI20250303BHJP
【FI】
F25D23/02 304C
F25D23/08 C
(21)【出願番号】P 2022020929
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2024-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】板倉 大
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-012292(JP,Y1)
【文献】特開2020-176806(JP,A)
【文献】特開2019-090607(JP,A)
【文献】特開2017-089981(JP,A)
【文献】実開平01-012184(JP,U)
【文献】特開平02-097883(JP,A)
【文献】実開昭49-126256(JP,U)
【文献】実開昭63-104982(JP,U)
【文献】実開昭58-025985(JP,U)
【文献】特開昭63-163768(JP,A)
【文献】特開2004-232887(JP,A)
【文献】特開2007-120795(JP,A)
【文献】特開2006-046787(JP,A)
【文献】実開昭51-147362(JP,U)
【文献】実開昭49-116651(JP,U)
【文献】実開昭52-062557(JP,U)
【文献】特開2021-038921(JP,A)
【文献】実開昭54-095070(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0010040(US,A1)
【文献】中国実用新案第201954896(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
F25D 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形断熱材又は真空断熱材としての断熱材と、
該断熱材の前方に配されたドアパネルと、
ドアフレームと、
前記ドアパネルの外周側端部に設けられ、前記断熱材の側に立設する壁と、
前記ドアフレームに設けられ、前記壁の少なくとも一部が挿入される溝と、を備え、
現場発泡による発泡断熱材が充填されておらず、
前記壁の後端部の先端が該溝の内面に対向しており、
前記ドアパネル及び前記ドアフレームは、互いに前後方向に近付く方向に付勢された状態で取付けられ
、
前記ドアパネル及び前記ドアフレームは、これらを互いに前後方向に近づく方向に付勢する螺合により取付けられている断熱扉。
【請求項2】
請求項
1に記載の断熱扉において、
前記壁は、前記ドアパネルの前面側から該壁の後端部側に向かうにつれて、前記溝の内周側から外周側に向かう傾斜部を備え、該傾斜部の一部が前記溝に挿入されて、前記ドアフレームに覆われている断熱扉。
【請求項3】
成形断熱材又は真空断熱材としての断熱材と、
該断熱材の前方に配されたドアパネルと、
ドアフレームと、
前記ドアパネルの外周側端部に設けられ、前記断熱材の側に立設する壁と、
前記ドアフレームに設けられ、前記壁の少なくとも一部が挿入される溝と、を備え、
現場発泡による発泡断熱材が充填されておらず、
前記壁の後端部の先端が該溝の内面に対向しており、
前記ドアパネル及び前記ドアフレームは、互いに前後方向に近付く方向に付勢された状態で取付けられ
、
前記壁は、前記ドアパネルの前面側から該壁の後端部側に向かうにつれて、前記溝の内周側から外周側に向かう傾斜部を備え、該傾斜部の一部が前記溝に挿入されて、前記ドアフレームに覆われている断熱扉。
【請求項4】
請求項
1に記載の断熱扉において、
前記ドアフレームは上下左右の四辺が一体成型されるとともに、各辺に沿って延在する面部を備え、
前記ドアフレームの角部には、前記面部よりも内周側又は前記断熱材側に突出する拡大部を備える断熱扉。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか一項に記載の断熱扉を備える貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は断熱扉及びこれを備える貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の要約書には「冷蔵庫扉101は、扉フレーム111と、扉フレームに取り付けられた前面板112と、扉フレーム内にその前面が前面板の裏面と対向するように配置された構造体117と、構造体の後面側に配置された平板状の真空断熱材126と、真空断熱材の前面と前面板の裏面と構造体の外側面とによって囲まれた空間に配置された成形断熱材121とを備えた。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷蔵庫等の貯蔵庫は部屋のインテリアの一部となるため、高い意匠性を奏することが好ましい。また、化粧面となる前面板(ドアパネル)は、使用者が扉を開閉するときに直接触れるため、高い質感を奏することが望ましい。特許文献1に記載の貯蔵庫では、ガラス製若しくはプラスチック製の前面板を扉フレームの前面開口部に接着して取り付ける方法が記載されているが、前面板の外周端部の形状や、概外周端部と扉フレームとの組み立て時の関係については考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の断熱扉は、成形断熱材又は真空断熱材としての断熱材と、
該断熱材の前方に配されたドアパネルと、
ドアフレームと、
前記ドアパネルの外周側端部に設けられ、前記断熱材の側に立設する壁と、
前記ドアフレームに設けられ、前記壁の少なくとも一部が挿入される溝と、を備え、
現場発泡による発泡断熱材が充填されておらず、
前記壁の後端部の先端が該溝の内面に対向しており、
前記ドアパネル及び前記ドアフレームは、互いに前後方向に近付く方向に付勢された状態で取付けられ、
前記ドアパネル及び前記ドアフレームは、これらを互いに前後方向に近づく方向に付勢する螺合により取付けられている断熱扉である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】溝に指を引っ掛けて扉を開ける動作を説明する図である。
【
図5】天面部材、テーブル、及びドアパネルとドアフレームとの組付け、の各構造を説明する図である。
【
図9】
図8のドアパネル33を正面側から観察した図である
【
図10】背面側下方から視たドアフレームの斜視図である。
【
図11】上ヒンジを構成する固定部、面部及びヒンジピンの上方からの斜視図である。
【
図12】天面部材及びテーブルを取り外した貯蔵庫の上方からの斜視図であり、上ヒンジの固定場所を説明する図である。
【
図13】上ヒンジを配置した扉の正面側からの斜視図である。
【
図15】
図14のA-A線断面図であり、ピン受部にヒンジピンを挿入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。
【0008】
図1は、本開示の貯蔵庫1の上方からの斜視図である。貯蔵庫1は、箱体2(
図2)と、扉3と、天面部材4(トップパネル)とを備える。箱体2は、外郭部材26の内部に配置される。外郭部材26は、貯蔵庫1の外郭を構成する部材であり、側面24と、背面11(
図2)と、天面部材4と、底面27(
図3)とを含む。貯蔵庫1は、図示の例では冷蔵庫であるが、例えば冷凍庫、冷蔵及び冷凍機能を有しない貯蔵庫等でもよい。
【0009】
箱体2(
図4)は、貯蔵室22(
図4)を内部に有する。扉3は、貯蔵室22と連通する開口23(
図4)を閉塞するものである。扉3は、詳細は後記するが、箱体2の少なくとも上部に対して上ヒンジ43(
図11)を介して回動可能に固定される。天面部材4は、箱体2を構成する天面21(上面)の上側に配置される。箱体2の左右側に配置された側面24と、箱体2との間には、成形断熱材又は真空断熱材の内の少なくとも一方である断熱材(不図示)が配置される。また、箱体2の背面側に配置された背面11と、箱体2との間には、成形断熱材又は真空断熱材の内の少なくとも一方である断熱材42(
図5)が配置される。ここで、或る部材に配された成形断熱材とは、或る部材の内部に発泡断熱材の原液を注入して、これを現場発泡させて製造する断熱材を指すものではなく、別の場所で所定の形状に成形された断熱材を指すと解することができる。
【0010】
天面部材4と扉3とは、使用者に対して同じ印象を与える外観を有する。これにより、貯蔵庫1を使用者が視認したときに使用者に対して統一した印象が付与でき、貯蔵庫1の意匠性を向上できる。同じ印象とは、例えば、統一した印象、まとまった印象、ちぐはぐな感じのない印象等という意味である。また、天面部材4と扉3とを対比観察した場合の印象について同じ印象であることを意味すると考えることができる。
【0011】
具体的には、天面部材4と扉3とは、使用者に対して同じ印象を与える外観を有するように、天面部材4及び扉3の材料、質感、模様、又は色彩の少なくとも何れか1つ、好ましくは全ての設計条件が設定される。これらの条件を設定することで、使用者に対して同じ印象を付与できる。本開示の例では、使用者は、扉3のうち、最も正面側に配置されるドアパネル33を視認する。そこで、ドアパネル33と天面部材4とが、使用者に対して同じ印象を与える外観を有するように、例えば同じ樹脂材料により構成される。
【0012】
通常は、上記の設計条件が同一又は類似であれば、視認した使用者に対して同じ印象が付与される。ここでいう類似は、視認した使用者に対して同じ印象が付与される範囲であり、定量的に評価できるものではない。ただし、一例を挙げるとすれば、材料であれば、組成が多少異なっていても外観がほぼ同じと判断可能な金属材料のほか、構成モノマ、重合度等が多少異なっていても外観がほぼ同じと判断可能な樹脂材料等である。
【0013】
また、質感であれば、例えば、光沢の有無、シボ加工の有無等が挙げられ、光沢、シボ加工等の程度が全く同じである必要は無く、多少異なっていても外観がほぼ同じと判断可能な差は許容される。また、模様についても、全く同じ形状、大きさの模様である必要は無く、多少異なっていても外観がほぼ同じと判断可能な差は許容される。さらに、色彩についても、全く同じ明度、彩度及び色相である必要は無く、多少異なっていても外観がほぼ同じと判断可能な差は許容される。具体的には例えば、マンセル値における明度及び彩度の差が例えば3.0以内である場合には、同じ印象を付与できると考えられる。また、マンセル値の色相における、10色相[R(赤),Y黄),G(緑),B(青),P(紫),YR(黄赤),GY(緑黄),BG(青緑),PB(紫青),RP(赤紫)]の各色範囲内においても、同じ印象を付与できると考えられる。
【0014】
本開示の例では、箱体2の側方に配置される側面24(左右側面。
図1では右側面のみ図示。外郭部材26の一部)は、使用者に対し、天面部材4及び扉3とは異なる印象を与える外観を有する。これにより、貯蔵庫1を視認した使用者に対し、メリハリのある印象を付与できる。具体的には例えば、側面24は、例えば金属材料により構成されるとともに、天面部材4及び扉3とは大きく異なる色彩を有する。
【0015】
ドアパネル33(第1板)は、例えば、射出成型された樹脂製である。また、ドアパネル33(第1板)の、開口23(
図4)との対向側(背面側)とは反対側(正面)の表面には、シボ加工がなされている。これにより、射出成型に起因するヒケ等を目立ち難くでき、使用者に違和感を付与し難くできる。シボ加工は、更に、後記する壁331の外側面(使用者が視認可能な面)、及び、ドアフレーム34(後記)の外側面(使用者が視認可能な面)になされてもよい。なお、ドアパネル33の樹脂注入ゲートを、ドアパネル33の裏面(背面)の略中央部の1箇所としたことで、ドアパネル33にウェルドが発生することを抑制できる。
【0016】
扉3の上端面には、扉3の延在方向である左右方向に溝31が形成される。溝31に使用者の指F(
図4)を引っ掛け、手前側に引っ張ることで、扉3を開けることができる。溝31は、本実施形態においては扉3の上端面の左右端にまでは達していない。これにより、貯蔵庫1の側面視で貯蔵庫1の全体的な形状をボックス状に近づけることができ、すっきりした印象を与えることができる。
【0017】
図2は、本開示の貯蔵庫1の側面図である。
図2では、参考のため、箱体2の一部を破線で示す。天面部材4は、貯蔵庫1の接地面と同じ高さの床面に立って観察する使用者が視認可能な高さ位置に配置される。これにより、通常は正面側から視認される使用者に対し、扉3と天面部材4との外観としての統一性を感じさせることができる。天面部材4の高さ位置を示す貯蔵庫1の高さHは、天面部材4を上記使用者が視認可能であれば特に制限されないが、例えば150cm以下、好ましくは100cm以下、より好ましくは75cm以下である。
【0018】
扉3の上端311は、後記する
図5にも示すように、天面部材4と、天面部材4の下方に隣接する部材であるテーブル41(トップテーブル。
図5)と、が扉3側に形成する境界線40(
図5)と同じ高さ位置、又は、境界線40よりも更に高い位置に配置される。これにより、正面側から使用者が貯蔵庫1を視認したとき、天面部材4とテーブル41との境界に起因する左右方向(
図2では紙面手前奥方向)に延在し、扉3側に現れる境界線40を認識しないようにできる。これにより、雑多な印象を回避でき、スタイリッシュな印象を付与できる。図示の例では、扉3の上端311は、天面部材4の上端である上面411と同じ高さ位置である。従って、上端311は境界線40よりも更に高い位置に配置される。なお、扉3の上端311と境界線40との上記の位置関係に代えて又は追加して、テーブル41の少なくとも前端(正面側に露出する面)を、天面部材4と扉3と同じ印象にしてもよい。
【0019】
図3は、本開示の貯蔵庫1の下方からの斜視図である。
図3では、図示の都合上、固定部441及びヒンジピン442(いずれも
図16)は図示していない。扉3の下端面には、扉3の延在方向である左右方向に沿って溝32が形成される。これにより、溝32に使用者の指F(
図4)を引っ掛け、手前側に引っ張ることで、扉3を開けることができる。溝32は、本実施形態においては扉3の下端面の左右端にまでは達していない。これにより、貯蔵庫1の側面視で貯蔵庫1の全体的な形状をボックス状に近づけることができ、すっきりした印象を与えることができる。
【0020】
図4は、溝32に指Fを引っ掛けて扉3を開ける動作を説明する図である。例えば、貯蔵庫1が台Dに載置され、溝32の高さ位置が使用者の例えば手(不図示)の高さ以上にある場合、使用者は溝32に指を引っ掛けやすい。
【0021】
溝32は、開口23との対向側とは反対側(正面側)に形成された第1壁321と、開口23との対向側(背面側)に形成された第2壁322と、の間に形成される。第2壁322のうち、溝32を臨む側(正面側)とは反対側である、開口23との対向側(背面側)の表面323と箱体2との間に、シール部材であるパッキン37が配置される。
【0022】
第1壁321の下端324は、第2壁322の下端325よりも下方に配置される。これにより、指Fを引っ張る方向である正面側に配置された第1壁321が第2壁322より下方に突出するため、指Fを引っ掛けやすくできる。図示の例では、第1壁321の溝32を臨む側端部から下方に立設するリブ(壁)326が備えられ、リブ326に、指Fを引っ掛けることができる。
【0023】
リブ326があることで、溝32の深さ(
図4での紙面上下方向の長さ。第2壁322の下端から溝32の底面までの長さ)を浅くできる。これにより、扉3内の断熱材35を収める領域を確保し易くできる。また、溝32の底面に使用者の指Fが接触する程度の寸法に、溝32の正面背面方向の長さ(
図4での紙面左右方向の長さ)を設定すると、違和感を持つユーザがあり得る。このため、指Fが溝32の底面に接触しない程度の長さに設定してもよい。
【0024】
扉3の上端面に形成された溝31は、扉3の下端面に形成された溝32に比して、掃除がし易い態様である。具体的には、図示の例では、溝31は、正面側に配置される壁310と底面312とによって形成され、背面側では、溝31は箱体2に対向する。これにより、底面312に堆積した塵埃等を拭きとり易く(掃き出し易く)できる。つまり、溝31は、溝32とは異なり、掃除のし易さ等から片側(正面側)にだけ壁310を有する。
【0025】
図5は、天面部材4、テーブル41、及びドアパネル33とドアフレーム34との組付け、の各構造を説明する図である。ただし、説明の都合上、ドアパネル33とドアフレーム34との組付けの説明については、後記する。また、
図5では、図示の都合上、背面11は図示しない。天面部材4及び側面24(
図1)は、貯蔵庫1の外郭を形成する部材であり、上記のように、使用者に視認される。なお、背面11(
図2)は、通常使用状態において使用者に視認されないが、貯蔵庫1の外郭を形成する部材である。
【0026】
天面部材4は、箱体2及びテーブル41とは別部材により構成される。これにより、共通の箱体2及びテーブル41を使用して、扉3と同じ印象を与える天面部材4を利用して貯蔵庫1を製造でき、製造コストを削減できる。天面部材4は、例えば、貯蔵庫1の背面側において例えば螺合等により背面板(不図示)に固定される。天面部材4は例えば樹脂製である。
【0027】
天面部材4の下方には、天面部材4に載置された物品等の荷重を受けるテーブル41(トップテーブル)が配置される。テーブル41は、天面部材4の下方全域に配置され、貯蔵庫1の背面側において例えば螺合等により背面板(不図示)に固定される。テーブル41の下側と天面21との間には、発泡スチロール等の成形断熱材又は真空断熱の少なくとも一方である断熱材42が配置される。
【0028】
図6は、正面側から視た扉3の分解斜視図である。扉3は、ドアパネル33(第1板)と、ドアフレーム34と、断熱材35と、ドアライナ36(第2板)と、パッキン37とを備える。扉3は、これらを正面側から背面側に固定することで構成される。これらのうち、特に断熱材35及びドアパネル33を備えることで、断熱性能を有するとともに、使用者に対して天面部材4と同じ印象を扉3に付与できる。
【0029】
ドアパネル33は板であり、上記のように例えば樹脂製である。ドアフレーム34は樹脂製の枠である。断熱材35は、例えば、発泡スチロール等の成形断熱材又は真空断熱材の少なくとも一方である。上記のドアパネル33は、断熱材35に対し、開口23(
図4)との対向側(背面側)とは反対側である正面側に配置される。また、上記のドアフレーム34は、断熱材35の側方に配置される。ドアライナ36は例えば樹脂製の板であり、開口23と対向する。従って、ドアライナ36は、断熱材35に対し、開口23との対向側(背面側)に配置される。パッキン37は、扉3を閉めたときに扉3と箱体2との間に配置される。
【0030】
図7は、背面側から視た扉3の分解斜視図である。詳細は後記するが、ねじ38は、ドアパネル33の背面側の全周に亘って所定の間隔で備えられるが、
図7では図示の都合上1つのみ図示される。ドアパネル33、ドアライナ36、又はドアフレーム34のうちの少なくとも2つの部材同士がねじ38の螺合により固定される。これにより、各部材をねじ38によって固定できる。図示の例では、少なくとも、ドアパネル33の背面側の外周の端部近傍に複数のねじボス(不図示)を備え、概ドアパネル33とドアフレーム34とが、ねじ38によって螺合される。これにより、ドアパネル33を固定できる。
【0031】
ただし、ドアパネル33とドアライナ36とを螺合してもよい。これにより、ドアフレーム34を挟むように固定できる。ドアフレーム34とドアライナ36とを螺合してもよい。ドアパネル33はねじ38により螺合されないが、例えばドアフレーム34への嵌合により、ドアパネル33を容易に脱着できる。これにより、ドアパネル33を容易に修理等できる。ドアパネル33、ドアライナ36、及びドアフレーム34を螺合してもよい。これにより、ドアパネル33、ドアライナ36、及びドアフレーム34を強固に固定できる。
【0032】
螺合は、矩形状のドアパネル33において、隣接する2つの頂点、及び、2つの頂点同士を結ぶ辺近傍(辺上でもよい)の少なくとも3か所で行われることが好ましい。このように、螺合は、好ましくは各辺と各頂点において行われる。本実施形態のように矩形状のドアパネル33においては、4辺と4頂点が存在するため、少なくとも8か所で行われていると好ましい。図示の例では、ねじ38により、ドアパネル33の全周に亘って、ドアパネル33とドアフレーム34とが螺合される。
【0033】
なお、ドアパネル33、ドアライナ36、又はドアフレーム34のうちの少なくとも2つの部材同士は、螺合に限定されず、例えば、両面テープ、接着剤等を用いて行ってもよい。この点、扉3には、接着作用を奏する、現場発泡による発泡断熱材が充填されていないことから、固定を強固に行う観点から螺合が比較的好ましい。特に、ドアパネル33の材料が、螺合が比較的困難なガラス等ではなく、樹脂であることからも、螺合が好ましい。
【0034】
ドアパネル33は、ドアパネル33の端部に、断熱材35の側に立設する壁331を備える。これにより、例えば成形後の材料の収縮により生じ得るドアパネル33の反りの方向を断熱材35の方向に向け易くでき、ドアパネル33が反った場合でも、ドアパネル33と断熱材35との間に隙間を生じ難くできる。また、ドアパネル33が撓み難くなり、補強できる。図示の例では、壁331は、矩形状のドアパネル33の端部全周に亘って備えられる。
【0035】
図8は、ドアパネル33が反る様子を説明する図である。
図9は、
図8のドアパネル33を正面側から観察した図である。ドアパネル33の成形直後には完全な平板(
図8及び
図9において実線で示す)であっても、上記のように成形後の材料の収縮により、背面側に反り得る(
図8及び
図9において二点鎖線で示す)。即ち、平板である反り前(変形前)のドアパネル33は、例えば上下方向に延びる辺335を備える。しかし、ドアパネル33は、反りにより辺335が背面側に屈曲することで、断熱材35に向かって中央側が反った第1反り部333を備える。これにより、ドアパネル33と断熱材35との間に隙間を生じ難くできる。
【0036】
なお、第1反り部333は、元々平板であったが経年により沿って形成されてもよく、成形後の材料の収縮等により元々反った状態のドアパネル33を取り付けることで形成されてもよく、平板を反るように取り付けたものであってもよい。例えば、応力を付与しながら反るように取り付けることで、平板を反った状態で取り付けることができる。ドアパネル33には、背面側に立設する壁331を設けられているため、材料の収縮により背面側に反り易くできる。
【0037】
ドアパネル33の端部の固定は、例えば、上記のようにねじ38による螺合のほか、壁331(
図7)の溝342(
図5、
図15)への挿入(後記)、ツメ332(
図7)及び留め部341(
図10)により係合(後記)等により実行できる。また、ドアフレーム34の背面側の外周近傍には、ドアパネル33と螺合するためのねじボス344aと、ドアライナ36と螺合するためのねじボス344bとが、夫々複数設けられている。これらねじボス344a及びねじボス344bは、背面側に突出する寸法を互いに異ならせている。これにより誤組み立てを抑制できる。
【0038】
図5に戻って、ドアパネル33の壁331は、ドアフレーム34の正面側に形成された溝342に挿入される。ドアパネル33が反った場合、ドアパネル33の例えば縁が波打った形状に変形することがある。この場合、ドアパネル33の縁としての壁331が露出していると、その変形が容易に目視されてしまう。一方、本実施形態のように壁331の先端が、溝342に挿入される等して外観上目視し難いようにされていれば、反りの影響が外観上目立つことが抑制される。
【0039】
また、
図17は
図5の要部拡大図であり、ドアパネル33の壁331をドアフレーム34の溝342に挿入した状態を示す。ドアパネル33は、組み立て時に壁331の後端部331aの少なくとも一部を、それと対向する溝342の内面342aと接触又は略接触させ、位置決めした状態でドアフレーム34と螺合して取付ける。これにより、螺合後の後端部331aとそれと対向する溝342の内面342aとの間の隙間S1が大きくなることを抑制できる。使用者がドアパネル33に触れるときや、扉を開閉するときに手掛け部(溝31,溝32)を掴んでも、その箇所の軋み、がたつき、「カチッ」といった異音等が生じることを抑制できる。後端部331aと内面342aとが略接触しておらず隙間S1が大きいと、軋み、がたつき、異音等が生じてしまう。
【0040】
また、ドアパネル33の背面側の外周端部とドアフレーム34の前面側の外周端部とを両面テープ等で接着する従来構造(例えば、特許文献1。)と異なり、ドアパネル33及びドアフレーム34は螺合で固定されているため、サービスマンや使用者により着脱や交換を行うことができる。
【0041】
また、壁331の外周側の端面としての外周端面331bと、これに対向する溝342の内面342bとの間の隙間S2の寸法は、意匠性の観点から、扉3の正面視において上下左右の各辺(外周の各方向)とも同じ寸法であることが好ましい。壁331には、後端部331aに向かうにつれて内周側に向かう傾斜部331cが形成される。傾斜部331cにおいて、壁331の肉厚は後端部331aに向かうにつれて薄くなっていく。これにより、外周端面331bと内壁342bとの隙間S2の寸法を小さく設計し、組立公差や寸法公差などの影響を受けた場合であっても、壁331を溝342に圧入することができる。
【0042】
また、ドアパネル33の前面と、この後方に位置する外周端面331bとを結ぶ傾斜部331dが形成されている。図示の例では、前側の第一の傾斜部331dと、後側の第二の傾斜部331eとが連続で形成されているが、何れか一方であっても、若しくは、更に第二の傾斜部331eよりも後側に第三の傾斜部を設けてもよい。この傾斜部331c,331dの少なくとも一部は溝342に挿入されてドアフレーム34に覆われる。これらにより、隙間S2を小さく設計することが可能となり、傾斜部331d,331eとドアフレーム34の前縁部とが連続的に設けられているように見せて意匠性を向上できるとともに、隙間S2に塵埃が侵入することを抑制できる。
【0043】
また、樹脂製のドアパネル33を射出成形する際に、パーティングライン331f(金型同士の合わせ目)が形成される。鋭利なパーティングライン331fが外観上露出していると、意匠性を損なうとともに、使用者が手や布巾で触れたときに引っ掛かるため好ましくない。そこで、パーティングライン331fをドアフレーム34(溝342)で覆い、外観視できないようにした。図示の例では、ドアパネル33に壁331が形成されているため、パーティングライン331fをより後側に位置させ、ドアパネル33の化粧面(外周端面331b、傾斜部331d,331e)が露出する面積を大きくでき、意匠性を向上できる。
【0044】
なお、図示の例では、溝342がドアフレーム34の内面342a、内面342b、リブ34dで囲われた断面凹状としているが、例えばリブ34dを備えない断面L字状であってもよい。
【0045】
なお、図示の例では、壁331が溝342に挿入されるが、例えば壁331がドアフレーム34の外側面を覆うようにしてもよいし、壁331が溝342に挿入される構造と、壁331がドアフレーム34の外側面を覆う構造とを双方の構造を有してもよい。
【0046】
図7に戻って、ドアパネル33は、断熱材35の側(背面側)にツメ332を備える。図示の例では、ツメ332は、矩形状のドアパネル33の四辺のそれぞれにおいて、等間隔で複数備えられる。また、ドアフレーム34の四辺の内、上辺と下辺には溝31および溝32(
図4)が設けられている。この溝31,32の範囲においてはねじボスを設けることが難しいため、強度の観点から左辺または右辺に比して、ツメ332同士の間隔を密にしてもよい。
【0047】
図10は、背面側下方から視たドアフレーム34の斜視図である。ドアフレーム34は、ドアパネル33に備えられるツメ332(
図7)を留める留め部341を備える。ツメ332を正面側から留め部341に挿入することで、留め部341により、ドアフレーム34とドアパネル33とを固定できる。また、ツメ332及び留め部341によってドアフレーム34とドアパネル33とを固定した状態で、上記のようにねじ38による螺合を行うことで、螺合作業を実行し易くできる。また、ドアフレーム34は、4辺それぞれを別部材で成形してこれらを組付ける態様でもよいが、本実施形態のように現場発泡した発泡断熱材を用いない扉3については、強度の観点から、4辺すべてを一部材で成形するのが好ましい。
【0048】
ドアフレーム34は四辺が一体成型されたロ字形状とし、各角部には、各辺に沿って形成された面部343よりも扉3の内方向に突出した拡大部345が設けられている。また、拡大部345は、面部343よりも後側(断熱材35側)に向かって突出した形状を備える。これにより、ドアフレーム34の強度を向上することができる。
【0049】
また、
図6、
図15~
図17等に示すとおり、面部343の表面側(ドアパネル33側)には、外壁34aと内壁34bと面部343で囲われた凹状の空間34cが各辺の略全域に形成される。この空間34c内には、複数のリブ34dが形成され、ドアフレーム34の強度を向上する。また、リブ34dを設ける代わりに、空間34c内に金属や樹脂からなる補強用の部品を別途取り付けてもよい。また、空間34cは面部343の裏面側(断熱材35側)に設けてもよい。
【0050】
ドアフレーム34は、上ヒンジ43(ヒンジ)を構成するピン受部431を備える。上ヒンジ43は、扉3を箱体2に対して回動可能に固定するものである。詳細は後記するが、上ヒンジ43の鉛直下方には、扉3を下側で回動可能に支持する下ヒンジ44も備えられる。ピン受部431は、扉3に配置され、ヒンジピン434を摺動可能な内面を備える開口である。この開口にヒンジピン434(
図11)が挿入されることで、扉3が下方から支持される。これにより、仮に下ヒンジ44が破損した場合であっても、上ヒンジ43によって扉3が外れることを抑制できる。
【0051】
ピン受部431は、扉3を構成するドアフレーム34に配置される。これにより、上ヒンジ43を覆うヒンジカバーとしての機能をドアフレーム34に持たせることができ、部品点数を削減できる。
【0052】
図11は、上ヒンジ43を構成する固定部432、面部433及びヒンジピン434の上方からの斜視図である。上ヒンジ43は、上記ピン受部431の他に、固定部432を備える面部433と、ヒンジピン434とを備える。これらは例えば金属により構成される。面部433は上下方向及び左右方向に屈曲して構成され、固定部432を介して、箱体2に固定される。ヒンジピン434は、面部433から上方向に立設する。ヒンジピン434が上方向に立設することで、上ヒンジ43の下方に配置される断熱材35を大きくでき、断熱性を向上できる。これは、断熱材35が、破損等が懸念される真空断熱材である場合により好適である。
【0053】
図12は、天面部材4及びテーブル41を取り外した貯蔵庫1の上方からの斜視図であり、上ヒンジ43の固定場所を説明する図である。固定部432は、箱体2の上部の一例である天面21の正面側端部に固定される。固定は、例えばボルト等による螺合により行われる。
【0054】
図13は、上ヒンジ43を固定した扉3の正面側からの斜視図である。上ヒンジ43は、扉3の右上端部に配置される。また、図示は省略するが、下ヒンジ44(
図16)は、扉3の右下端部に配置される。
図13は右開きの扉を描いている。左開きの場合は上ヒンジ43の取付位置が左右逆となり、形状が左右対称となる。
【0055】
図14は、上ヒンジ43を固定した扉3の背面図である。上ヒンジ43の上端435は扉3の上端311よりも低い位置に配置される。このようにすることで、上ヒンジ43が扉3の背面側に配置されるため、扉3を閉めた状態で使用者が上ヒンジ43を視認できなくすることができる。これにより、使用者に対し、すっきりとした印象を付与できる。なお、上ヒンジ43の上端435は、図示の例では、ピン受部431(
図10)を配置したドアフレーム34の上端と一致する。
【0056】
図15は、
図14のA-A線断面図であり、ピン受部431にヒンジピン434を挿入した状態を示す図である。
図15では、図示の簡略化のために、箱体2は図示していない。ヒンジピン434は固定部432を介して扉3と固定されるため、扉3が手前側に引っ張られる又は背面側に押されると、ヒンジピン434を回動中心として扉3が回動する。このとき、ヒンジピン434の外面は、ピン受部431の内面と接触しながら摺動する。これにより、扉3は、上ヒンジ43によって下方から支持された状態で回動する。
【0057】
また、ヒンジピン434は、ドアフレーム34を構成し鉛直方向に延在する面部343に対し、貯蔵室22(
図5)と連通する開口23(
図5)の側(即ち背面側)に配置される。これにより、ドアフレーム34がヒンジピン434を隠すヒンジカバーとして機能でき、部品点数を削減できるとともに、すっきりとした印象を使用者に付与できる。このように、ピン受部431、ヒンジピン434、固定部432等は、扉3の正面視において目視されずドアフレーム34の背後に隠される。
【0058】
上ヒンジ43に対応するピン受部431は、このように、ドアフレーム34の背面側に形成され、下方からヒンジピン434を受け入れる開口を備える。このため、ピン受部431を備える樹脂製のドアフレーム34を成形する際、ピン受部431の成形に関係する型は、ピン受部431の成型後、下方に向けて抜き取られることになる。この型は、ピン受部431より上方に位置するドアフレーム34の上辺側に干渉せずにすむため、製造性に好ましい。
【0059】
図16は、下ヒンジ44を説明する図である。下ヒンジ44は、箱体2の外側の下面25に固定され、扉3を下方から支持するものである。下ヒンジ44は、固定部441、ヒンジピン442及びピン受部443(
図3、
図10)とを備える。固定部441は平板状に構成され、下面25に例えばボルト等により固定される。ヒンジピン442は、固定部441と同一面から上方向に立設し、ピン受部443に挿入される。ピン受部443は、上記のピン受部431(
図15)と同様、扉3(具体的にはドアフレーム34)に配置され、ヒンジピン442を摺動可能な内面を備える開口である。扉3に固定されたヒンジピン442がピン受部443を摺動することで、扉3が回動する。
【符号の説明】
【0060】
1 貯蔵庫
11 背面
2 箱体
21 天面
22 貯蔵室
23 開口
24 側面
25 下面
26 外郭部材
3 扉
31 溝
310 壁
311 上端
312 底面
32 溝
321 第1壁
322 第2壁
323 表面
324 下端
325 下端
326 リブ
33 ドアパネル(第1板)
331 壁
332 ツメ
333 第1反り部
335 辺
34 ドアフレーム
341 留め部
342 溝
343 面部
35 断熱材
36 ドアライナ(第2板)
37 パッキン
38 ねじ
4 天面部材
40 境界線
41 テーブル
411 上面
42 断熱材
43 上ヒンジ(ヒンジ)
431 ピン受部
432 固定部
433 面部
434 ヒンジピン
435 上端
44 下ヒンジ
441 固定部
442 ヒンジピン
443 ピン受部
D 台
F 指
H 高さ