(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-28
(45)【発行日】2025-03-10
(54)【発明の名称】充電インレットおよび充電インレットの組付け方法
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20250303BHJP
B60L 53/16 20190101ALI20250303BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60L53/16
(21)【出願番号】P 2022168139
(22)【出願日】2022-10-20
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】平林 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 茂之
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0062111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60K 11/00-15/10
B60L 53/16
F16B 2/00-2/26
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方コネクタとの接続機構と、
前記接続機構の周囲に形成された接続機構壁面と、を有するインレットハウジングと、
前記接続機構を露出させる孔が形成された意匠面と、
前記意匠面に対して立設し、前記接続機構壁面に対向するカバー内壁面と、を有し、前記意匠面が前記接続機構の周外領域を覆って前記インレットハウジングに取り付けられた意匠カバーと、を備え、
前記カバー内壁面に前記接続機構壁面と接触する潰しリブが複数個形成されていることを特徴とする充電インレット。
【請求項2】
前記意匠カバーは、前記カバー内壁面よりも外側に形成された可撓性のロック片によるスナップフィット機構で、前記インレットハウジングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の充電インレット。
【請求項3】
前記カバー内壁面は前記接続機構を挟んで一対形成され、
前記一対のカバー内壁面それぞれの対応する位置に前記潰しリブが対となって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の充電インレット。
【請求項4】
前記一対のカバー内壁面のそれぞれに前記潰しリブが複数個形成されていることを特徴とする請求項3に記載の充電インレット。
【請求項5】
相手方コネクタとの接続機構と、前記接続機構の周囲に形成された接続機構壁面と、を有するインレットハウジングに、
前記接続機構を露出させる孔が形成された意匠面と、
前記意匠面に対して立設し、複数個のリブが形成されたカバー内壁面と、を有する意匠カバーを、前記意匠面が前記接続機構の周外領域を覆うとともに、前記カバー内壁面が前記接続機構壁面に対向し、前記複数個のリブが前記接続機構壁面との接触で潰されるように嵌め込むことを特徴とする充電インレットの組付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インレットハウジングと意匠カバーとを備えた充電インレットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やプラグインハイブリット電気自動車(PHV)等に搭載されるバッテリを外部電源から充電するための車両側コネクタとして、充電インレットが用いられている。特許文献1に記載されているように、充電インレットは、複数の端子を収容し、充電側コネクタと接続するための充電規格に対応した機構を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電インレットの製品化に当たり、車種毎のカスタマイズと標準化とを短納期で実現するためには、意匠部と機能部を別体化することが有益である。
【0005】
例えば、
図6に示すように、端子を収容し、相手方コネクタとの接続機構311が形成されたインレットハウジング310を機能部として独立させて汎用化し、別体の意匠カバー320を取り付けて充電インレット300を構成することで、車種毎のカスタマイズを容易にすることできる。この場合、意匠カバー320は、インレットハウジング310に形成された接続機構311の周外領域312を覆って、外観性を向上させるための意匠面321が外部に露出するようにする。
【0006】
意匠カバー320のインレットハウジング310への取り付けは、例えば、嵌め込み式とすることができ、意匠カバー320に可撓性のロック孔片322を形成し、インレットハウジング310に爪313を形成したスナップフィット機構を複数箇所設けることにより両者を固定することができる。
【0007】
ところで、スナップフィットのようなロック機構を採用した場合、意匠カバー320をインレットハウジング310に嵌め込むための遊びとして、両者間に隙間が設定される。
【0008】
この隙間は製造上必要なものであるが、この隙間によって、意匠カバー320がガタついて異音が発生するおそれが生じる。また、意匠カバー320が一方に片寄ることで接続機構311周囲の隙間が不均一になって充電インレットの意匠性が低下するおそれもある。
【0009】
さらには、隙間によって意匠カバー320が片寄ることで、複数箇所に設けられたスナップフィット機構の係り代のバランスが崩れてしまい、ロックの保持力が低下してしまうおそれもある。
【0010】
一方で、意匠カバー320とインレットハウジング310との間の隙間を無くすと充電インレット300の製造時の組付け作業性に支障を来たすおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、インレットハウジングと意匠カバーとを備えた充電インレットにおいて、組付け作業性を悪化させることなく、インレットハウジングに対する意匠カバーの安定性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一態様である充電インレットは、相手方コネクタとの接続機構と、前記接続機構の周囲に形成された接続機構壁面と、を有するインレットハウジングと、前記接続機構を露出させる孔が形成された意匠面と、前記意匠面に対して立設し、前記接続機構壁面に対向するカバー内壁面と、を有し、前記意匠面が前記接続機構の周外領域を覆って前記インレットハウジングに取り付けられた意匠カバーと、を備え、前記カバー内壁面に前記接続機構壁面と接触する潰しリブが複数個形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様である充電インレットによれば、インレットハウジングと意匠カバーとを備えた充電インレットにおいて、組付け性を悪化させることなく、インレットハウジングに対する意匠カバーの安定性を高めることができる。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の一態様である充電インレットの組付け方法は、相手方コネクタとの接続機構と、前記接続機構の周囲に形成された接続機構壁面と、を有するインレットハウジングに、前記接続機構を露出させる孔が形成された意匠面と、前記意匠面に対して立設し、複数個のリブが形成されたカバー内壁面と、を有する意匠カバーを、前記意匠面が前記接続機構の周外領域を覆うとともに、前記カバー内壁面が前記接続機構壁面に対向し、前記複数個のリブが前記接続機構壁面との接触で潰されるように嵌め込むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様である充電インレットの組付け方法によれば、インレットハウジングと意匠カバーとを備えた充電インレットにおいて、組付け性を悪化させることなく、インレットハウジングに対する意匠カバーの安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の充電インレットを示す斜視図である。
【
図2】本実施形態のインレットハウジングを示す図である。
【
図4】本実施形態の充電インレットを示す上面図である。
【
図5】本実施形態の充電インレットの意匠面直下の部分断面図である。
【
図6】インレットハウジングと意匠カバーとを備えた充電インレットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る充電インレット100を示す斜視図である。本図の例では、コンバインド充電システム(CCS)タイプ1のソケット形状としているが、他の充電規格のソケット形状であってもよい。
【0018】
充電インレット100は、車体に搭載されるバッテリを外部電源から充電等するために電気自動車(EV)やプラグインハイブリット電気自動車(PHV)等で用いられる部品である。本図に示すように、充電インレット100は、インレットハウジング110、意匠カバー120、DCソケットキャップ130を備えている。
【0019】
インレットハウジング110は、
図2に示すように、相手方コネクタとの接続機構であるソケット部111と、ソケット部111の周囲に形成されたソケット部壁面112と、ソケット部壁面112よりも外側に形成された外壁113と、ソケット部壁面112と外壁113との間である周外領域114とを備えている。ソケット部111は、周外領域114よりも盛り上がっており、その段差がソケット部壁面112を形成している。インレットハウジング110は、例えば、絶縁性の樹脂で形成することができる。
【0020】
ソケット部111は、充電規格に応じた形状を有し、充電に必要な複数の端子を収容する。本図の例では、ACソケット111aとDCソケット111bとを備えており、相手方コネクタとの接続方向から見て、2つの略楕円形がT字型に連結した輪郭となっている。なお、DCソケットキャップ130は、DCソケット111bのキャップであるが、本発明と直接的な関連性が薄いため、以下では言及しないものとする。
【0021】
ソケット部壁面112は、相手方コネクタとの接続方向に平行な、外側を向いた壁面であり、ソケット部111の輪郭を形成する。ソケット部壁面112は、接続機構壁面として機能する。
【0022】
外壁113は、相手方コネクタとの接続方向に平行に立設した壁であり、相手方コネクタとの接続方向から見て、略楕円形の輪郭となっている。外壁113より外側の領域は、車両への取り付け機構となっており、取り付け対象の車体により隠蔽される。外壁113の内側面には、スナップフィット機構の爪113aが内向きに4箇所形成されている。
【0023】
意匠カバー120は、
図3に示すように、意匠面121、カバー内壁面122、可撓性のロック孔片123を備えている。なお、本図は、意匠カバー120を裏面側から見た図である。意匠カバー120は、例えば、絶縁性の樹脂で形成することができる。
【0024】
意匠面121は、外部に露出する面であり、意匠カバー120の意匠面121を外観的に変更することで、容易に充電インレット100を車種毎にカスタマイズすることができる。意匠面121は、インレットハウジング110の外壁113に対応した楕円形状の輪郭となっている。意匠面121には、ソケット部111の輪郭に対応した孔が形成され、ソケット部111を外部に露出させるようになっている。
【0025】
カバー内壁面122は、意匠面121に対して直交する方向に立設した壁の内側面であり、インレットハウジング110のソケット部壁面112に対向するように形成されている。本実施形態では、カバー内壁面122はソケット部111を挟んで一対形成されている。
【0026】
カバー内壁面122には、複数個の潰しリブ122aが形成されている。潰しリブ122aは、意匠カバー120の形成時にリブとして形成されており、意匠カバー120をインレットハウジング110に嵌め込む際に、インレットハウジング110のソケット部壁面112と接触することにより潰されて塑性的に変形する。このため、意匠カバー120は、インレットハウジング110よりも柔らかい材料で形成する。
【0027】
潰される前の潰しリブ122aの厚み(意匠面に平行な方向)は、インレットハウジング110と意匠カバー120との間の設定上の隙間よりも大きいサイズとする。潰される前の潰しリブ122aの高さ(意匠面に垂直な方向)は、すべて共通とし、作業性、調芯性を向上させるために先端がテーパー状になっていることが望ましい。また、潰しリブ122aは、意匠面121の裏面に接して形成されていることが望ましい。
【0028】
本実施形態では、一対のカバー内壁面122それぞれに4個の潰しリブ122aが意匠面121の孔に沿って形成されている。片側4個、合計8個の潰しリブ122aは、ほぼ面対称に形成された一対のカバー内壁面122の対称となる位置に対となるように形成されている。これにより、安定性が増し、意匠カバー120のガタつきを防ぐとともに、調芯が容易となる。
【0029】
ロック孔片123は、可撓性を有し、カバー内壁面122よりも外側に4個形成されている。ロック孔片123が、インレットハウジング110の外壁113に設けられた爪113aにかみ合うことで、意匠カバー120がインレットハウジング110に固定される。本実施形態の充電インレット100では、意匠カバー120に潰しリブ122aが設けられ、インレットハウジング110のソケット部壁面112と接触しているため、意匠カバー120の偏芯を防ぐことができ、スナップフィット機構のロックバランスが保たれる。
【0030】
図4は、本実施形態の充電インレット100の上面図である。充電インレット100の組み付けの際には、潰しリブ122aが潰れていない状態の意匠カバー120を、意匠面121がインレットハウジング110の周外領域114を覆うように嵌め込む。
【0031】
この際に、意匠カバー120のカバー内壁面122とインレットハウジング110のソケット部壁面112とが対向し、嵌め込むに従って、各潰しリブ122aがソケット部壁面112に接触して潰される。そして、インレットハウジング110の爪113aと意匠カバー120のロック孔片123とがロックすることにより、意匠カバー120がインレットハウジング110に固定され、充電インレット100の組付けが完了する。組付けの際には、意匠カバー120とインレットハウジング110との間に隙間が確保されているため、組付け作業性が悪化することはない。
【0032】
このように組付けられた本実施形態の充電インレット100は、本図に示すように、意匠カバー120とインレットハウジング110との間の隙間が均一となり、この状態で安定している。特に、目に付きやすいソケット部111と意匠面121との間の隙間(本図の点線部分)の均一性が保たれるため、意匠性の低下を防ぐことができる。
【0033】
図5は、本実施形態の充電インレット100を、意匠カバー120の意匠面121の直下で意匠面121に平行に切り取ったときの部分断面図である。本図に示すように、本実施形態の充電インレット100は、潰しリブ122aとソケット部壁面112とが常に接触しており(本図破線円)、調芯された状態で安定している。
【0034】
このため、本実施形態の充電インレット100は、意匠カバー120のガタつきによる異音の発生を防ぐことができる。また、上述のように、意匠カバー120が一方に片寄ることがないため、隙間の不均一による充電インレット100の意匠性低下も防ぐことができる。ロック孔片123と爪113aによるスナップフィット機構の係り代のバランスが調芯により保たれるため(本図破線矩形)、ロックの保持力低下も防ぐことができる。さらには、潰しリブ122aがソケット部壁面112と接触することにより、意匠カバー120は、外周方向への応力を受ける。ロック孔片123は、カバー内壁面122よりも外側に形成されているため、ロックが強まる方向の力を受けることになる。
【0035】
なお、本実施形態では、スナップフィット機構として、意匠カバー120にロック孔を設け、インレットハウジング110にロック爪を設けていたが、意匠カバー120にロック爪を設け、インレットハウジング110にロック孔を設けるようにしてもよいし、双方にロック爪を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、意匠面121を板形状とし、カバー内壁面122が意匠面121裏面から立設していたが、意匠面121に厚みを持たせ、その側面がカバー内壁面122となるようにしてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の充電インレット100は、組付け作業性を悪化させることなく、インレットハウジングに対する意匠カバーの安定性を高めることができる。
【符号の説明】
【0038】
100 充電インレット
110 インレットハウジング
111 ソケット部
111a ACソケット
111b DCソケット
112 ソケット部壁面
113 外壁
113a 爪
114 周外領域
120 意匠カバー
121 意匠面
122 カバー内壁面
122a 潰しリブ
123 ロック孔片